JP4257759B2 - 新規なプロモーター、及びそれを用いたタンパク質の発現方法 - Google Patents

新規なプロモーター、及びそれを用いたタンパク質の発現方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、糸状菌におけるタンパク質の発現に利用できる新規なプロモーター、及びそれを用いたタンパク質の発現方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糸状菌アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus)は糖化力の強いセルラーゼを生産することが特徴であり(Yamanobe, T. et al. Agric. Biol. Chem.(1987), 51, 65)、飼料用途やサイレージ用途で、高い有用性を持つことが報告されている(特開平7-264994号、特許第2531595号、特開平7-236431号)。また、含有されているセルラーゼ成分やキシラナーゼ成分(Yamanobe, T. et al. Agric. Biol. Chem.(1987), 51, 65、Yamanobe, T. et al. Agric. Biol. Chem.(1988), 52, 2493、Yamanobe, T. and Mitsuishi, Y. Agric. Biol. Chem.(1989), 53, 3359、Yamanobe, T. and Mitsuishi, Y. Agric. Biol. Chem.(1990), 54, 301、Yamanobe, T. and Mitsuishi, Y. Agric. Biol. Chem.(1990), 54, 309、 WO9839423号)に関しても詳細な検討がなされている。
【0003】
一般に微生物の生産するセルラーゼ類を産業上利用する場合は、その微生物が生産する様々な酵素の混合物として利用されるが、ある用途に限った場合は、特定の酵素成分がその用途に重要であると考えられている。しかしながら、その作用は他の成分の存在下で相乗的に高められ、各種の用途に応じて、特定の酵素成分を増強しつつ、元来の酵素活性も合わせ持つ微生物を育種することが望まれる。
【0004】
このために最良の方法は、遺伝子組換えの手法により特定の酵素遺伝子を導入して過剰発現させることである。アクレモニウム・セルロリティカスを宿主として特定のタンパク質を過剰発現させることは、本糸状菌の生産する酵素複合体の特徴を持つとともに、ある用途に重要な作用を示すタンパク質の過剰発現が行えるため、産業上極めて有用であると考えられる。
【0005】
微生物におけるタンパク質の発現系としては、主に大腸菌や酵母菌を宿主としたタンパク質発現系が利用されてきたが、最近では、糸状菌によるタンパク質の発現系も幅広く利用されるようになってきている。糸状菌による異種タンパク質の発現例としては、アスペルギルス・ニデュランスにおけるアルコールデヒドロゲナーゼIプロモーターを用いたセルロモナス・フィミ由来のエンドグルカナーゼの発現やアスペルギルス・ニガーにおけるグルコアミラーゼプロモーターを用いたヒトインターフェロンα-2の発現(特許2873002号、特許2868179号)、トリコデルマ・リーセイにおけるセロビオヒドロラーゼI(cbh1)遺伝子のプロモーターを用いたウシ由来のキモシンの発現(Harkki, A. et al. Biotechnology(1989), 7, 596)等、数多くの報告がなされている(Cees, A.M.J.J.V.D.H. et al. More gene manipulations in fungi (1991), Academic press, Inc., 397)。
【0006】
また、糸状菌による同種タンパク質の発現例としても、トリコデルマ・リーセイにおけるcbh1遺伝子のプロモーターを用いたエンドグルカナーゼIの過剰発現(Harkki, A. et al. Enzyme Microb. Technol. (1991), 13, 227)等の報告がなされている。また、本発明の宿主と同じ属のペニシリン生産菌、アクレモニウム・クリソゲナムにおいても外来遺伝子の発現に関する報告がなされている(特開昭61-158787号、特開昭64-80295号)。アクレモニウム・セルロリティカスにおける形質転換も既に報告されており、セルラーゼACC2ゲノム遺伝子を宿主に導入することにより、培養上清のACC2タンパク質量が増加し、この形質転換体のアビセル分解活性が向上した(WO9733982号)。
【0007】
しかし、アクレモニウム・セルロリティカスにおけるACC2タンパク質の発現増加の程度は小さく、プロモーターにとって異種遺伝子を連結し、発現させることが可能な組換えベクターも開発されておらず、産業上利用できるレベルには達していない。そのため、さらに効率の良い発現系の構築が望まれていた。
【0008】
目的とするタンパク質の生産量は、プロモーター、ターミネーター等の転写に関わる因子、アミノ酸コドンの種類等翻訳に関わる因子、タンパク質への糖鎖付加、発現したタンパク質の細胞内での存在様式(分泌過程における移動も含む)等の翻訳後に関わる因子、遺伝子のコピー数の因子、宿主由来のプロテアーゼ等発現タンパク質の安定性に関わる因子等、多くの因子により影響を受ける。
【0009】
これらのうち最も重要であり制御しやすい因子は、プロモーターの選択である。遺伝子の効率的な発現には、どのようなプロモーターを使用するかが極めて重要であり、その宿主において、できるだけ転写効率の高いプロモーターを利用することがタンパク質の生産量を増加させるために必要である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
糸状菌において、所望のタンパク質を大量に発現させるための新規なプロモーター、それを用いた遺伝子発現用の組換えベクター、この組換えベクターを発現する糸状菌、及びこの組換えベクターを用いたタンパク質の発現方法を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、アクレモニウム・セルロリティカスにおいて、最も発現量の多いタンパク質をCBH1(エキソ-1,4-β-グルカナーゼ)の相同タンパク質であると同定し、それをコードする遺伝子(cbh1)及びそのプロモーター(配列表の配列番号3に示すcbh1プロモーター)を単離した。
【0012】
また、本発明のcbh1プロモーターを用いた遺伝子発現用の組換えベクターを作製し、アクレモニウム・セルロリティカスに導入し、得られた形質転換体で、該プロモーターの下流に連結した遺伝子の機能を損なうことなく効率的に発現させ、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)以下の(a)又は(b)のDNAを有するプロモーター。
(a)配列番号3に示す塩基配列を有するDNA。
(b)(a)の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ下流に連結した遺伝子を発現させ得るDNA。
(2)(1)に記載のプロモーターを含有する組換えベクター。
(3)配列番号4に示す塩基配列からなるDNAを含有する組換えベクター。
(4)(2)又は(3)に記載の組換えベクターを含み、かつプロモーターの下流に連結した遺伝子を発現する糸状菌。
(5)(4)に記載の糸状菌がアクレモニウム・セルロリティカスである糸状菌。
(6)(4)又は(5)に記載の糸状菌を用いるタンパク質の発現方法。
に係るものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のcbh1プロモーターは、例えば以下の方法によりアクレモニウム・セルロリティカスから単離することができる。
【0015】
アクレモニウム・セルロリティカスからゲノムDNAを抽出し、適当な制限酵素にて切断後、ファージベクター又はプラスミドベクターを用いて、アクレモニウム・セルロリティカスのゲノムDNAからなるライブラリーを作製する。
【0016】
アクレモニウム・セルロリティカスを適当な条件下で培養後、その培養物を回収する。培養物中のタンパク質を測定し、例えば電気泳動で分離し、最も大量に発現しているタンパク質を抽出し、そのアミノ酸配列を決定する。ここで用いる「培養物」とは、培養菌体及び培養上清のいずれをも意味する。
【0017】
上記タンパク質のアミノ酸配列を決定し、ホモロジー検索を行った結果、アクレモニウム・セルロリティカスで最も大量に発現しているタンパク質は、糸状菌のCBH1に相同性を示すことが分った。
【0018】
そこで、既知のCBH1タンパク質のアミノ酸配列の保存領域、又はアクレモニウム・セルロリティカスから精製したCBH1タンパク質の部分アミノ酸配列を元に、適当なプライマーを合成し、それを用いてアクレモニウム・セルロリティカス由来のゲノムDNAを鋳型としたpolymerase chain reaction(PCR)を行い、cbh1遺伝子のDNA断片を増幅する。
【0019】
ここで用いる「プライマー」とは、例えばDNA自動合成機等を用いて化学的にオリゴヌクレオチドを合成することにより調製することができる。合成するオリゴヌクレオチドの長さは、遺伝子増幅法のプライマーとして使用できる範囲であれば特に限定されないが、15〜55塩基程度が好ましい。
【0020】
このDNA断片をプローブとして用い、前記ゲノムライブラリーのスクリーニングを行う。このようにして、cbh1遺伝子の全域並びにその5′上流域及び3′下流域を単離することができる。このDNA断片の塩基配列を決定した後、翻訳開始コドンより上流約1 kbを有するDNA断片をプロモーター、翻訳終始コドンより下流約1 kbを有するDNA断片をターミネーターとして遺伝子発現用の組換えベクターの作製に用いる。
【0021】
ここで用いる「遺伝子発現用の組換えベクター」とは、宿主染色体DNAに組込まれるもの、或いは自己複製可能な自律的複製配列を有するベクターを宿主細胞内で、プラスミド状態で存在させるものである。尚、宿主細胞内に存在する異種遺伝子又は同種遺伝子のコピー数は、1コピーでも複数であっても良い。
【0022】
また、組換えベクターには、生成タンパク質の効率的な分泌のため、CBH1タンパク質のシグナル配列をコードするDNAをプロモーターの下流に付加することもできる。本発明のプロモーターは上述のようにして決定された塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列をも包含する。
【0023】
また、遺伝子工学の慣行法(例えば部位指定変異など)を用いて本発明の組換えベクターの各構成(プロモーター、シグナル配列、ターミネーター)に関して、付加、挿入、欠失又は置換等の改変を行ったDNA断片も本発明に包含される。また、プロモーター、シグナル配列及びターミネーターの塩基配列を各々単独で、或いはいずれかを組合わせた形で(取り出して)使用する場合も本発明に包含される。
【0024】
上記の方法で単離したcbh1遺伝子のプロモーターとターミネーターは、例えばPCRにより適当な制限酵素切断部位を導入し、プラスミドベクターに挿入した後、薬剤耐性や栄養要求性相補等の選択マーカー遺伝子を連結して遺伝子発現用の組換えベクターを作製することができる。
【0025】
遺伝子発現用の組換えベクターに連結する選択マーカー遺伝子としては、デストマイシン、ベノミル、オリゴマイシン、ハイグロマイシン、G418、ブレオマイシン、フレオマイシン、フォスフィノスリシン等に対する薬剤耐性遺伝子、pyrGargBtrpCniaD等の栄養要求性相補遺伝子が挙げられる。
【0026】
さらに、本発明のプロモーターの下流に所望の遺伝子を連結することにより、遺伝子産物であるタンパク質を生産させ得る組換えベクターを作製することができる。
【0027】
本発明のプロモーターへの所望のタンパク質をコードする遺伝子の連結、ベクターへの挿入は、常法に従い行うことができる。所望のタンパク質をコードする遺伝子とは、発現の対象となる任意の遺伝子を意味し、異種遺伝子又は同種遺伝子のどちらでも良く、特にこれらに限定されるものではない。異種遺伝子又は同種遺伝子としては、例えばアミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、キチナーゼ又はペプチド等をコードする遺伝子が挙げられる。また、異種遺伝子及び同種遺伝子は、いかなる手法によって得られるものでも良い。
【0028】
このようにして得られた組換えベクターにより、宿主を形質転換し、得られた形質転換体を培養することにより、所望のタンパク質を著量生産させることができる。すなわち、本発明は、前記形質転換体を培地にて培養し、得られる培養物から異種遺伝子又は同種遺伝子の発現産物を採取することを特徴とする前記発現産物の生産方法をも含むものである。
【0029】
使用される宿主としては、遺伝子組換えの宿主として使用可能なアスペルギルス属、トリコデルマ属、リゾプス属、ムコール属、ペニシリウム属等の任意の糸状菌を用いることができ、特に限定されるものではないが、好ましくはアクレモニウム属に属する糸状菌、特に好ましくはアクレモニウム・セルロリティカスである。
【0030】
宿主への遺伝子発現用の組換えベクターの導入は、常法に従ってすることができ、例えばエレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法、アグロバクテリウム法等が用いられ、特に限定されるものではないが、好ましくはポリエチレングリコール法である。
【0031】
また、形質転換体の培養も常法に従って、培地、培養条件等を適宜選択することにより行うことができる。培地としては、慣用の成分、例えば炭素源としては、グルコース、シュークロース、セルロース、水飴、デキストリン、澱粉、グリセロール、糖蜜、動・植物油等が使用できる。また、窒素源としては、大豆粉、小麦胚芽、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、ブイヨン、ペプトン、イーストエキス、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、尿素等が使用できる。その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、燐酸、硫酸及びその他のイオンを生成することのできる無機塩類、例えば塩化カリウム、硫酸マグネシウム、燐酸一カリウム、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸銅等を添加することも有効である。また、必要に応じて各種ビタミン、アミノ酸、ヌクレオチド等の微量栄養素、抗生物質等の選抜薬剤を添加することもできる。さらに、菌の発育を助け、導入遺伝子の発現を促進するような有機物及び無機物を適当に添加することができる。
【0032】
培養方法は、これらの成分を選択的に含む培地で行うことができ、液体培地では、好気的条件での培養法、振とう培養法、通気撹拌培養法又は深部培養法により行うことができる。培地のpHは、例えば7〜8程度である。培養温度は、糸状菌の培養に採用される通常の条件、例えば温度15℃〜45℃、好ましくは15℃〜30℃、培養日数は、1日〜10日間程度の条件で行うことができる。
【0033】
得られた培養物から異種遺伝子発現産物又は同種遺伝子発現産物を採取することにより、目的とする遺伝子発現産物であるタンパク質を取得することができる。ここで用いる「遺伝子発現産物を採取する」とは、培養菌体から遺伝子発現産物を抽出すること及び培養菌体から遺伝子産物を精製すること、並びに培養上清自体を回収すること及び培養上清から遺伝子発現産物を精製すること、並びに培養菌体及び培養上清の両方から抽出、回収及び精製の手法を用いることのいずれをも意味する。
【0034】
「抽出する」とは、特に限定はしないが、常法により菌体を磨砕処理、加圧破砕、超音波処理等により遺伝子発現産物を抽出することを意味し、「回収する」とは、特に限定はしないが、常法により培養上清をろ過、遠心分離等により固形部分を除去し、粗タンパク質溶液を得ることを意味し、「精製する」とは、特に限定はしないが、常法により塩析法、溶媒沈殿法、透析法、限外ろ過法、ゲル電気泳動法等、又はイオン交換、疎水性、逆相、ゲルろ過、アフィニティー等の各種クロマトグラフィーの精製手法を組合わせ、目的遺伝子発現産物を分離精製することを意味する。
【0035】
また、これらの過程において、必要に応じてフェニルメタンスルホン酸、ロイペプチン、アンチパイン等のプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例1 アクレモニウム・セルロリティカスのcbh1遺伝子のクローニング
【0038】
1. ゲノムDNAの単離とゲノムライブラリーの作製
アクレモニウム・セルロリティカスY-94株(FERM BP-5826)を(S)培地(2%ブイヨン、0.5%イーストエキス及び2%グルコース)で32℃にて2日間培養し、遠心分離により菌体を回収した。得られた菌体を液体窒素で凍結後、乳鉢と乳棒を用いて磨砕した。この磨砕した菌体からISOPLANT(ニッポンジーン社)により、添付のプロトコールに従いゲノムDNAを単離した。単離したゲノムDNAをSau3A Iにより部分分解した後、アガロースゲル電気泳動により15〜20 kbのDNA断片を回収し、これをアルカリフォスファターゼで処理し、DNA断片の末端を脱リン酸化した。このDNA断片をファージベクターのLambda DASH II(ストラタジーン社)に挿入した。このようにして得られた組換えファージベクターについて、Gigapack III Gold Packaging Extract(ストラタジーン社)により、添付のプロトコールに従ってin vitroパッケージングを行った。その後、この組換えファージを大腸菌XL1-Blue MRA (P2)株に感染させ、プレートにて培養しプラークを形成させた。
【0039】
2.アクレモニウム・セルロリティカスY-94株において高発現するタンパク質の同定
アクレモニウム・セルロリティカスY-94株(FERM BP-5826)において、高発現するタンパク質を同定し、そのプロモーター及びターミネーター領域を遺伝子発現用の組換えベクターに用いれば、所望のタンパク質を高発現させることができると考えられた。そこで、このようなタンパク質の同定を行った。
【0040】
アクレモニウム・セルロリティカスY-94株(FERM BP-5826)をセルラーゼ誘導培地(4%セルロース、1%ペプトン、0.6%硝酸カリウム、0.2%尿素、0.16%塩化カリウム、0.12%硫酸マグネシム、1.2%燐酸一カリウム、0.001%硫酸亜鉛、0.001%硫酸マンガン及び0.001%硫酸銅(pH 4.0))で32℃にて7日間培養した。培養物を遠心分離して得られた培養上清を電気泳動(Sodium Dodecyl sulfate - polyacrylamide gel electrophoresis(SDS-PAGE))した。SDS-PAGEは、電気泳動システム(テフコ社)と12%のポリアクリルアミドゲルを用い、添付のプロトコールに従って行った。
【0041】
その結果、約70 kDaのタンパク質が最も大量に発現していることが明らかとなった。SDS-PAGE後のポリアクリルアミドゲル中のタンパク質を、マルチフォーII(ファルマシアバイオテク社)にて、添付のプロトコールに従い、ポリビニリデンジフルオライド膜(Immobilon-PSQ、ミリポア社)に転写した。この膜をクーマシー・ブリリアント・ブルーR250(ナカライテスク社)で染色した後、約70 kDaのタンパク質がブロットされている部分を切り出した。ポリビニルピロリドン-40(シグマ社)にて、膜上のタンパク質未結合部分をブロックし、Podell, D. N. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun.(1978)81, 176の方法に従い、牛肝臓ピログルタメートペプチダーゼ(ベーリンガー・マンハイム社)処理により、修飾N末端残基を除去した。
【0042】
このタンパク質のN末端アミノ酸配列の決定は、プロテインシークエンサー Model 492(パーキンエルマー社)を用い、添付のプロトコールに従って行った。その結果、N末端アミノ酸配列を15残基決定し、BLAST(Altschul, S. F. et al. Nucleic Acids Res.(1997), 25, 3389)を用いてホモロジー検索を行ったところ、このタンパク質は糸状菌のCBH1に相同性を示すことが分った。
【0043】
3.cbh1遺伝子の部分DNA断片の単離
既知の糸状菌のCBH1タンパク質のマルチプルアライメントを行い、CBH1タンパク質間で良好に保存された領域として、EMDIWEAとCDPDGCDを見出した。これらの配列を元に、5′- GARATGGAYATHTGGGARGC -3′(配列番号7)及び5′- TCRCANCCRTCNGGRTCRCA -3′(配列番号8)のプライマーを合成した。これらのプライマーを用い、アクレモニウム・セルロリティカスY-94株から単離したゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、50μlの反応液中、ゲノムDNA50 ngを鋳型とし、1.25 unitのExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社)、添付のバッファー、dNTP Mixture及び10μMの上記プライマーを用い、以下の条件で反応を行った。94℃ 3分間、(94℃ 1分間、65℃(1サイクル毎に0.5℃下げる) 1分間、72℃ 1分間)×30回、72℃ 3分間。この反応により約150 bpのDNA断片が増幅し、このDNA断片をOriginal TA Cloning Kit(インビトロジェン社)を用い、添付のプロトコールに従ってpCR2.1プラスミドベクターに挿入した。
【0044】
このようにしてクローニングしたDNA断片の塩基配列の決定は、DNA Sequencing Kit dRhodamine Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction(パーキンエルマー社)とABI PRISM 310 Genetic Analyzer(パーキンエルマー社)を用いて、添付のプロトコールに従い行った。その結果、単離したDNA断片の塩基配列は、糸状菌のcbh1遺伝子と相同性を示し、目的とするCBH1タンパク質をコードする遺伝子の一部であることが明らかとなった。
【0045】
4.cbh1遺伝子及びその周辺領域のクローニング
ゲノムライブラリーのスクリーニングに使用したプローブは、PCRにより、フルオレセイン標識dUTPをDNA断片に取り込ませることにより調製した。PCRは、50μlの反応液中、100 ngのcbh1DNA断片が挿入されたpCR2.1プラスミドベクターを鋳型とし、1.25 unitのExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社)、添付のバッファー、0.2 mM dATP、0.2 mM dCTP、0.2 mM dGTP、0.02 mM dTTP、0.18 mM フルオレセイン標識dUTP(FluoroGreen、アマシャム社)及び10μMのプライマー(配列番号7及び配列番号8)を用い、以下の条件で反応を行った。94℃ 2分間、(94℃ 30秒間、55℃ 1分間、72℃ 1分間)×25回、72℃ 3分間。この反応により、約150
bpからなるフルオレセイン標識プローブが作製された。
【0046】
実施例1の1において作製したプラークの形成されたプレート上に、Hybond-N+メンブレン(アマシャム社)をのせ、プラークを付着させた。このメンブレンをアルカリ処理し、メンブレン上の組換えファージDNAを1本鎖に変性しメンブレンに吸着させた。ファージDNAが吸着したメンブレンを、Hybridization Buffer Tablets(アマシャム社)を用いて調製したバッファーに入れた後、60℃で1時間インキュベートした。これに、上記のフルオレセイン標識プローブを熱変性して添加し、60℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。その後、メンブレンを1×SSC(SSC:15 mMクエン酸三ナトリウム、150 mM塩化ナトリウム)−0.1% SDS溶液で60℃、15分間洗浄し、さらに、0.2×SSC−0.1% SDS溶液で60℃、15分間洗浄した。フルオレセイン標識プローブが結合したプラークの可視化は、DIG洗浄ブロックバッファーセット(ベーリンガー・マンハイム社)、アルカリフォスファターゼでラベルされた抗フルオレセイン抗体(Anti-fluorescein-AP、Fab fragments、ベーリンガー・マンハイム社)、発色基質としてニトロブルーテトラゾリウムクロライド(ベーリンガー・マンハイム社)及びX-フォスフェート(ベーリンガー・マンハイム社)を用い、添付のプロトコールに従って行った。このようにして選抜した陽性クローンから、プローブに相同な領域の5′上流域及び3′下流域を含むDNA断片をHind IIIにより約5 kbの断片として切り出し、pBluescript II KS+(ストラタジーン社)に挿入した。
【0047】
5.塩基配列の決定
このようにして単離されたDNA断片の制限酵素地図を作製し、幾つかのDNA断片に分けて、再度pBluescript II KS+(ストラタジーン社)に挿入した。これらのDNA断片の塩基配列の決定は、 pBluescript II KS+のマルチクローニングサイト近傍のシークエンス用プライマーや、解析された塩基配列を元に作製したプライマーを用い、DNA Sequencing Kit dRhodamine Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction(パーキンエルマー社)とABI PRISM 310 Genetic Analyzer(パーキンエルマー社)を用いて、添付のプロトコールに従い行った。このようにしてcbh1遺伝子の5′上流域及び3′下流域を含むHind IIIサイトからKpn Iサイトまでの領域4270 bpの塩基配列を決定した。この領域の塩基配列を、配列表の配列番号1に示した。
【0048】
この塩基配列は1590 bpからなる1個のオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、このORFから予測されるタンパク質のN末端から27アミノ酸残基以降の配列は実施例1の2において決定した70 kDaのタンパク質のN末端配列に一致し、本遺伝子はこのタンパク質をコードすることが明らかとなった。また、本知見からこのORFの1〜26アミノ酸残基の配列は、本タンパク質を細胞外に分泌させるためのシグナル配列であると考えられた。本ORFから予測されるタンパク質に関してBLASTを用いてホモロジー検索を行ったところ、ペニシリウム・ジャンシネラムのCBH1(Q06886)に約64%の相同性を示し、また、その全域に渡って相同性が見られたことから、本遺伝子はイントロンを持たないと考えられた。一方、本遺伝子のプロモーター領域の塩基配列に関してBLASTを用いてホモロジー検索を行ったが、有意な相同性を示す塩基配列は見いだされなかった。
【0049】
実施例2 遺伝子発現用の組換えベクターの構築
実施例1の4において作製した組換えpBluescript IIを鋳型とし、A:5′- AGCATCCTGCAGCTCGTGAAAGCTGCCCTCACAA -3′(配列番号9)及び 5′- AGCATCGTTAACTGCTTCTGACTGTTGCGGTTGATA -3′(配列番号10)、B:5′- AGCATCGTTAACACAATGTCTGCCTTGAACTCT -3′(配列番号11)及び 5′- AGCATCAAGCTTGCTGAGCACCAGCTGTTGCCA -3′(配列番号12)、C:5′- AGCATCAAGCTTGCTAGCGCATGCACTTCTTTCTTCGCCTATTGATTGG -3′(配列番号13)及び 5′- AATTAACCCTCACTAAAGGG -3′(配列番号14)をプライマーとして、A、B、Cの各プライマー対を用いてそれぞれについてPCRを行った。PCRは、50μlの反応液中、プラスミドDNA150 ngを鋳型とし、2.5 unitのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績社)、添付のバッファー、dNTP Mixture、1 mM塩化マグネシウム及び0.5μMの上記プライマーを用い、以下の条件で反応を行った。98℃ 30秒間、(98℃ 15秒間、65℃ 2秒間、74℃ 30秒間)×10回、74℃ 1分間。各プライマーを用いて得られたPCR反応液をエタノール沈殿し、PCR産物を回収した。これを制限酵素処理(A:Pst IとHpa I;B:Hpa IとHind III;C:Hind IIIとKpn I)した後、アガロースゲル電気泳動し、DNA断片をアガロースゲルから回収した。Pst IとKpn Iで切断後、アルカリホスファターゼ処理したpBluescript II KS+とこれら3種の制限酵素処理済みのPCR断片(A、B、C)をライゲーションし、プラスミドpCBHEXを作製した。プロモーター領域からなるDNA断片(A)の塩基配列を配列表の配列番号3に示し、またpCBHEX中のA、B(シグナル配列)及びC(ターミネーター領域)が連結されてなるDNA断片の配列を配列表の配列番号4に示した。
【0050】
pCBHEXのXba I 部位に、WO9803667号に記載のpMKD01からXba Iにより切り出したアスペルギルス・ニデュランス由来のtrp Cのプロモーター及びターミネーターを持つデストマイシン耐性遺伝子(DtR)を挿入し、プラスミドpCBHEX/DtR2を作製した。pCBHEX/DtR2の構造を図1に示す。
【0051】
実施例3 アクレモニウム・セルロリティカス由来キシラナーゼの過剰発現
1.mRNAの単離とcDNAライブラリーの作製
アクレモニウム・セルロリティカスY-94株をセルラーゼ誘導培地で32℃にて4日間培養し、遠心分離により菌体を回収した。得られた菌体を液体窒素で凍結後、乳鉢と乳棒を用いて磨砕した。磨砕した菌体からISOGEN(ニッポンジーン社)により、添付のプロトコールに従い全RNAを単離した。さらに全RNAから、mRNA Purification Kit(ファルマシア社)により、添付のプロトコールに従い、mRNAを精製した。
【0052】
こうして得られたmRNAから、TimeSaver cDNA Synthesis Kit(ファルマシア社)により、添付のプロトコールに従い、cDNAを合成した。このcDNAをファージベクターのLambda ZAP II(ストラタジーン社)に挿入した。このようにして作製した組換えファージベクターについて、Gigapack III Gold Packaging Extract(ストラタジーン社)により、添付のマニュアルに従ってin vitroパッケージングを行った。その後、この組換えファージを大腸菌XL1-Blue MRF′株に感染させ、プレートにて培養しプラークを形成させた。このようにして作製したcDNAライブラリーは、5.5×105 plaque forming unitsであった。さらに、このcDNAライブラリーを、Lambda ZAP IIに添付のプロトコールに従い増幅した。この増幅したcDNAライブラリー中の組換えファージを大腸菌XL1-Blue MRF′株に感染させ、プレートにて培養しプラークを形成させた。
【0053】
2.キシラナーゼ遺伝子の単離
5′- ATGGTCTCCTTCACCTCCCT -3′(配列番号15)及び 5′- TTAGCTGACGGTGATGGAAG -3′(配列番号16)をプライマーとして用い、WO9811239号に記載の方法により抽出したトリコデルマ・ビリデ MC300-1株(FERM BP-6047)のゲノムDNAを鋳型として、PCRによりキシラナーゼ遺伝子(XYN I、Trrnen, A. et al. Bio/Technology(1992)10, 1461)を増幅した。PCRは、50μlの反応液中、50 ngのゲノムDNAを鋳型とし、1.25 unitのExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社)、添付のバッファー、0.2 mM dATP、0.2 mM dCTP、0.2 mM dGTP、0.02 mM dTTP、0.18 mMフルオレセイン標識dUTP(FluoroGreen、アマシャム社)及び1μMの上記プライマーを用い、以下の条件で反応を行った。94℃ 3分間、(94℃ 30秒間、55℃ 1分間、72℃ 1分間)×35回、72℃ 3分間。この反応により、約780 bpの塩基配列からなるフルオレセイン標識プローブが作製された。
【0054】
実施例3の1において作製したプラークの形成されたプレート上に、Hybond-N+メンブレン(アマシャム社)をのせ、プラークを付着させた。このメンブレンをアルカリ処理し、メンブレン上の組換えファージDNAを1本鎖に変性しメンブレンに吸着させた。ファージDNAが吸着したメンブレンを、Hybridization Buffer Tablets(アマシャム社)を用いて調製したバッファーに入れた後、60℃で1時間インキュベートした。これに、上記のフルオレセイン標識プローブを熱変性して添加し、60℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。その後、メンブレンを1×SSC−0.1% SDS溶液で室温下15分間洗浄し、さらに、0.2×SSC−0.1% SDS溶液で室温下15分間洗浄した。フルオレセイン標識プローブが結合したプラークの可視化は、DIG洗浄ブロックバッファーセット(ベーリンガー・マンハイム社)、アルカリフォスファターゼでラベルされた抗フルオレセイン抗体(Anti-fluorescein-AP、Fab fragment、ベーリンガー・マンハイム社)、発色基質としてニトロブルーテトラゾリウムクロライド(ベーリンガー・マンハイム社)及びX-フォスフェート(ベーリンガー・マンハイム社)を用い、添付のプロトコールに従って行った。このようにして選抜した陽性クローンからプラスミドベクターpBluescript SK (-)へのin vivo excisionは、Lambda ZAP IIに添付のプロトコールに従い実施した。
【0055】
プラスミドベクター中のキシラナーゼcDNAの塩基配列の決定は、pBluescript SK (-)のマルチクローニングサイト近傍のシークエンス用プライマー、又は解析された塩基配列を元に作製したプライマーを用い、DNA Sequencing Kit dRhodamine Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction(パーキンエルマー社)とABI PRISM 310 Genetic Analyzer(パーキンエルマー社)を用いて、添付のプロトコールに従い行った。このようにしてアクレモニウム・セルロリティカスのキシラナーゼcDNAの1027 bpの塩基配列を決定し、この塩基配列を、配列表の配列番号5に示した。本cDNAは849 bpの塩基配列からなる1個のORFを含み、本キシラナーゼ遺伝子は29.5 kDaのタンパク質をコードすることが明らかとなった。
【0056】
本ORFから予測されるタンパク質に関してBLASTを用いてホモロジー検索を行ったところ、本キシラナーゼはトリコデルマ・リーセイのキシラナーゼ I(P36218)に最も高い相同性を示した。また、本キシラナーゼは、そのC末端にトリコデルマ・リーセイのキシラナーゼ Iには見られない62アミノ酸残基の配列が付加されており、これ以外の部分では、トリコデルマ・リーセイのキシラナーゼ Iに約59%の相同性を示した。
【0057】
一方、本キシラナーゼの40アミノ酸残基以降の配列はWO9839423号のキシラナーゼ IのN末端配列に一致していた。そのため、本キシラナーゼ遺伝子は、WO9839423号のキシラナーゼ Iをコードしており、1〜39アミノ酸残基まではシグナル配列であることが明らかとなった。
【0058】
3.キシラナーゼ遺伝子発現用の組換えベクターの作成
アクレモニウム・セルロリティカスY-94株から単離したゲノムDNAを鋳型とし、5′- GGGAGGCCTAACACAATGGGCATCTCATCTATTC -3′(配列番号17)及び 5′- GGGGCATGCCTATTGGCACTGACTGTAG -3′(配列番号18)をプライマーとしてPCRを行った。PCRは、50μlの反応液中、1.25 unitのExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社)、添付のバッファーとdNTP Mixture、50 ng ゲノムDNA及び1μMの上記プライマーを用い、以下の条件で反応を行った。94℃ 3分間、(94℃ 30秒間、55℃ 30秒間、72℃ 1分間)×30回、72℃ 3分間。こうして得られたPCR反応液をエタノール沈殿し、PCR産物を回収した後、Stu IとSph Iで切断し、pCBHEX/DtR2のHpa IとSph Iの間に挿入し、タンパク質発現用プラスミドpCBHEX/DtR2/XYLを作製した。
【0059】
4.キシラナーゼ遺伝子の宿主への導入
アクレモニウム・セルロリティカスY-94株を(S)培地において30℃で16時間培養し、3500rpm、10分間遠心することにより集菌した。得られた菌体を0.5 Mシュークロースで洗浄し、0.45μmのフィルターで濾過したプロトプラスト化酵素溶液(10 mg/mlキチナーゼ、10 mg/mlザイモリアーゼ、30 mg/mlβ-グルクロニダーゼ及び0.5 M シュークロース)に懸濁した。30℃で60分〜90分間振盪し、菌糸をプロトプラスト化させた。脱脂綿によりこの懸濁液を濾過した後、2500 rpm、10分間遠心してプロトプラストを回収し、SUTCバッファー(0.5 M シュークロース、10 mM 塩化カルシウム及び10 mMトリス-塩酸(pH7.5))で洗浄した。以上のようにして調製したプロトプラストを1 mlのSUTCバッファーに懸濁し、この100μlに対し10μgのDNA溶液(10μl)を加え、氷上に5分間静置した。次に、400μlのPEG溶液(60% PEG4000、10 mM 塩化カルシウム及び10 mMトリス-塩酸(pH7.5))を加え、氷中に20分間静置した後、10 mlのSUTCバッファーを加え、2500 rpm、10分間遠心した。遠心分離したプロトプラストを1 mlのSUTCバッファーに懸濁した後、4000 rpmで5分間遠心して、最終的に100μlのSUTCバッファーに懸濁した。
【0060】
以上の処理をしたプロトプラストを、ハイグロマイシンB(500μg/ml)添加(A)培地(3.9%ポテトデキストロース寒天培地(日水製薬社)、17.1%シュークロース及び 1%バクトアガー(pH 6.0))上に、(A)軟寒天とともに重層し、30℃、5〜9日間培養後、形成したコロニーを形質転換体とした。
【0061】
5.アクレモニウム・セルロリティカス形質転換体におけるキシラナーゼの発現と酵素活性の測定
ハイグロマイシンBに対する耐性度の高いもの1株をセルラーゼ誘導培地で培養した。培養上清をSDS-PAGEにより解析したところ、キシラナーゼは親株より分泌量が向上していた。
【0062】
キシラナーゼ活性は、DNS法により測定した。0.5 mlの2%キシラン(オート麦由来、アルドリッヒ社)溶液(0.1 N 酢酸-酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.5))を50℃で10分間加熱した後、0.5 mlの培養上清を添加し、50℃で30分間反応させた。これに、3 mlのDNS溶液(10.6 g 3,5-ジニトロサリチル酸、19.8 g 水酸化ナトリウムを1416 mlの精製水に溶解し、その後、306 g 酒石酸カリウム・ナトリウム、7.6 mlフェノール(50℃で溶解)、8.3 g ピロ亜硫酸ナトリウムを溶解した溶液)を添加し、沸騰水中で5分間加熱した後、水に入れ冷却した。精製水8 mlを添加した後、540 nmの吸光度を測定した。ブランクは、0.5 mlの培養上清に3 mlのDNS溶液を添加し混合した後、0.5 mlの2%キシラン溶液を加え、沸騰水中で5分間加熱し水に入れ冷却したものを用いた。キシラナーゼ活性(u/ml)は、1 mlの培養上清あたり1分間に生成したキシロースの量(μmol)として表した。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
Figure 0004257759
【0064】
このように、形質転換体は親株の約4倍の比活性を示した。
【0065】
実施例4 トリコデルマ・ビリデ由来エンドグルカナーゼの過剰発現
1.エンドグルカナーゼ発現用の組換えベクターの構築
WO9811239号に記載のトリコデルマ・ビリデのエンドグルカナーゼSCE3遺伝子の挿入されたプラスミドpUC-Eg3Xを鋳型とし、5′- GGGAGGCCTAACACAATGAACAAGTCCGTGGC -3′(配列番号19)及び 5′- GGGGCATGCCTACAATCTTGCAGAACACG -3′(配列番号20)をプライマーとしてPCRを行った。PCRは、50μlの反応液中、プラスミドDNA150 ngを鋳型とし、2.5 unitのKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績社)、添付のバッファー、dNTP Mixture、1 mM塩化マグネシウム及び0.5μMの上記プライマーを用い、以下の条件で反応を行った。98℃ 30秒間、(98℃ 15秒間、50℃ 2秒間、74℃ 1分間)×10回、74℃ 1分間。こうして得られたPCR反応液をエタノール沈殿し、PCR産物を回収した後、Stu IとSph Iで切断し、pCBHEX/DtR2のHpa IとSph Iの間に挿入し、蛋白質発現用プラスミドpCBHEX/DtR2/EG3を作製した。
【0066】
2.トリコデルマ・ビリデ由来エンドグルカナーゼ遺伝子の宿主への導入
エンドグルカナーゼ遺伝子のアクレモニウム・セルロリティカスへの導入は、実施例3の4の方法に従い行った。
【0067】
3.アクレモニウム・セルロリティカス形質転換体におけるトリコデルマ・ビリデ由来エンドグルカナーゼの発現と酵素活性の測定
ハイグロマイシンBに対する耐性度の高いもの1株をセルラーゼ誘導培地で培養した。培養上清をSDS-PAGEにより解析したところ、エンドグルカナーゼは親株より分泌量が向上していた。
【0068】
培養上清中のエンドグルカナーゼ活性は、実施例3の5に記載したDNS法に従い、基質としてキシランの代わりにカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC;n = 500、東京化成社)を用いて測定した。エンドグルカナーゼ活性(u/ml)は、1 mlの培養上清あたり1分間に生成したグルコースの量(μmol)として表した。その結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
Figure 0004257759
【0070】
このように、形質転換体は親株の約1.6倍の比活性を示し、本発明のプロモーターを用いることにより、異種タンパク質の発現も可能であることが明らかとなった。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の新規プロモーターの下流に所望のタンパク質をコードする遺伝子を連結し、アクレモニウム・セルロリティカスに導入することにより、所望のタンパク質を大量に発現させることが可能である。
【0072】
【配列表】
Figure 0004257759
Figure 0004257759
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Figure 0004257759

【図面の簡単な説明】
【図1】第1図にプラスミドpCBHEX/DtR2の制限酵素地図を示す。

Claims (6)

  1. 以下の(a)又は(b)のDNAを有するプロモーター。
    (a)配列番号3に示す塩基配列を有するDNA。
    (b)(a)の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ下流に連結した遺伝子を発現させ得るDNA。
  2. 請求項1に記載のプロモーターを含有する組換えベクター。
  3. 配列番号4に示す塩基配列からなるDNAを含有する組換えベクター。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の組換えベクターを含み、かつプロモーターの下流に連結した遺伝子を発現する糸状菌。
  5. 請求項4に記載の糸状菌がアクレモニウム・セルロリティカスである糸状菌。
  6. 請求項4又は請求項5に記載の糸状菌を用いるタンパク質の発現方法。
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