JP3954149B2 - カタラーゼ遺伝子を導入した耐冷性イネ及びこの耐冷性イネに由来するカタラーゼの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コムギのカタラーゼをコードする特定の遺伝子を導入したイネの植物体細胞及びイネの植物体、このイネの植物体の製造方法、このイネの植物体の増殖方法、並びに、このカタラーゼ遺伝子を導入したイネに由来する耐冷性カタラーゼの製造方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
植物は、様々な環境ストレス(高低温,強光,大気汚染物質,農薬,ウイルス等)にさらされている。そして、これらの環境ストレスに対する耐性が向上した有用植物、特に穀物植物を作出してこれらの穀物の生産効率を向上させることは、そう遠くない将来の人口爆発に伴って起こるであろう深刻な食料危機を考慮すると、人類の存亡にもかかわり得るほどの重要事項である。
そこで、近年は、遺伝子組換え技術を積極的に活用して、様々な外来遺伝子を植物に導入することにより、その植物の優良品種の作出を目的とした品種改良の試みがなされている。
【0003】
例えば、大気汚染物質耐性(Plant Cell Physiol.,34,129-135,1993) 、乾燥耐性(Science,259,508-510,1993)、低温耐性(Nature,356,710-703,1992;Plant Physiol.,105,601-605,1994)、ウイルス耐性(R.N.Beachy,“Viral Gene and Plant Pathogenesis" ed. by Pirne, J.G.Shaw, p13(1990)Springer-Verlag) 、農薬耐性(E.Oxtoby,M.A.Hughes, Trends Biotechnol., 8:61(1990)) 等を遺伝子組換え技術により付与された植物が作出されている。
【0004】
我々は、上記のような技術的背景のもとで、イネの低温耐性についてのメカニズムについて検討を重ねた結果、イネの低温発芽能及び幼苗低温ストレス耐性にカタラーゼが関与していることを、既に明らかにしている(Plant Science,109,105-113,1995 ;Plant Breeding,46,23-27,1996) 。
【0005】
カタラーゼは、スーパーオキサイドディスムターゼやアスコルビン酸ペルオキシダーゼ等と共に、呼吸,光合成,環境ストレス等を通じて発生し、タンパク質,膜構造,核酸等を過度に酸化して、細胞に致命的な損傷を与える「活性酸素」と呼ばれるスーパーオキサイドラディカル(O2 - )や過酸化水素(H2O2 )やハイドロキシラディカル(OH-)を除去して、これらの過酸化物質による損傷から細胞を守る働きを有する生体にとって非常に重要な酵素である(Advance in Genetics,28,1-41,1990 ;Ann.Rev.Plant Physiol.Mol.,Biol.,43,83-116,1992)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の課題は、耐冷性に優れるカタラーゼをコードする遺伝子を見出し、この遺伝子を用いて植物に低温耐性を付与する手段を提供することにある。
【0007】
また、工業的に漂白,洗浄等に一層使用量の増加が見込まれる過酸化水素の生理的な分解処理の目的等に用いられるカタラーゼ、殊に耐冷性に優れたカタラーゼの上記遺伝子を用いた大量生産手段を提供することをもその課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題について鋭意検討を重ねた結果、コムギに由来する特定のカタラーゼ遺伝子を用いて、イネに、低温ストレスに対して優れた耐性を付与する手段を提供することが可能であることを見出した。
【0009】
また驚くべきことに、この耐冷性イネに由来するカタラーゼは、非常な低温下においても他のカタラーゼに比べて格段に強い酵素活性を有することを見出した。すなわち、本発明者は、本願において以下の発明を提供する。
【0010】
すなわち、本発明は、(1)コムギの特定のカタラーゼ遺伝子、すなわち、配列番号6で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子、あるいは、配列番号6で表されるアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、若しくは、付加されたアミノ酸配列からなり、イネに耐冷性を付与することができ、かつ、カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む遺伝子、を自己の遺伝子中に組み込んでなる、イネの植物体細胞及びイネの植物体、(2)当該イネの植物体の製造方法と増殖方法、(3)配列番号6で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子を自己の遺伝子中に組み込んでなる、イネの植物体細胞及びイネの植物体から得られるカタラーゼの製造方法、を提供する発明である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
A.本発明は、特定のカタラーゼ遺伝子(以下、本発明カタラーゼ遺伝子ともいう。)に関する。
本発明カタラーゼ遺伝子は、これを植物に導入して、この植物を形質転換することにより、特に耐冷性に優れる植物を作出するための遺伝子である。この遺伝子の起源となる生物として、コムギが挙げられる。
【0025】
コムギ(品種は問わない)は、一般に5℃の低温下でも発芽可能であり、幼苗が雪の下でも越冬可能な耐冷性に優れる植物である。そして、本発明者らは、この事実に着目してコムギカタラーゼの耐冷性について検討したところ、イネのカタラーゼと比べるとコムギのカタラーゼ自体が耐冷性に優れることを見出した(後述する実施例を参照のこと)。
【0026】
本発明カタラーゼ遺伝子のクローニングは、通常公知の方法により行うことができる。
例えば、本発明カタラーゼ遺伝子の出所となる生物のmRNAを分離し、このmRNAを鋳型として、逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、このcDNAを基にして本発明カタラーゼ遺伝子をクローニングすることができる。
【0027】
mRNAの分離は、通常公知の方法により行うことができる。
すなわち、先ず本発明カタラーゼ遺伝子の出所となる生物の細胞を分離して、この細胞から全RNAを抽出する。この全RNAの抽出は、例えばフェノール抽出,グアニジン・ホットフェノール法等の通常公知の方法により行うことができる。次いで、この全RNAから、mRNAのみを分離する。この分離法としては、オリゴdTセルロースを用いてpolyA+ RNAとして所望のmRNAを分離する方法が代表的な方法である。
【0028】
cDNAの合成も、通常公知の方法を用いて行うことができる。
すなわち、得られたmRNAを鋳型とし、オリゴdT又はランダムプライマーをプライマーとして、逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、さらにds化等の過程を経て所望するcDNAを調製することができる。
【0029】
次に、このcDNAの断片群を調製して、これを増幅用のベクターに組み込み、さらにこれを適切な宿主中で増幅させて、本発明カタラーゼ遺伝子の出所となる生物のcDNAの遺伝子ライブラリーを調製することができる。なお、この増殖用のベクターにcDNA断片が組み込まれたか否かは、このベクターが保有する薬剤耐性マーカー等によって確認することができる。
【0030】
増幅用のベクターとしては、特に限定されず、例えばpUC8,pUC9,pUC118,pUC119,pBR322,pBR325,pBluescript II ,pBluescript SK ,λgt10,λgt11,λZapII 等の通常クローニングに用いられる公知の増幅用ベクターを用いることができる。
【0031】
これらの増幅用ベクターは、通常公知の方法により作出することも可能であるが、市販品を用いることも勿論可能である。
なお、上記で合成したcDNAに、カタラーゼ遺伝子に関連する塩基配列のDNAプライマーを用いて、PCR(Polymerase chain reaction)法を施すことにより、カタラーゼ遺伝子の塩基配列に関連するcDNAの断片群を増幅して、これをクローニングすることも可能である。
【0032】
上記の遺伝子ライブラリーの調製は、市販のキットにより簡便に行うことも可能(PCR法用のキットも含む)である。また、生物の種類によっては、市販の遺伝子ライブラリーを用いて、そのまま以下に記載するクローンのスクリーニングを行うこともできる。
【0033】
所望するクローンのスクリーニングは、上記のごとくして得た本発明カタラーゼ遺伝子の出所となる生物の遺伝子ライブラリーから、所望するカタラーゼ遺伝子を含むクローンを選別することにより行われる。このスクリーニング方法としても、上記の遺伝子ライブラリーの形態に応じた通常公知の方法を用いることができる。例えば、プラークハイブリダイゼーション法は、上記の遺伝子ライブラリーがファージ系の遺伝子ライブラリーである場合に有効なスクリーニング法である。すなわち、生じたプラークをナイロン膜、ニトロセルロースフィルター等の薄膜上に写しとり,その薄膜上で標識したカタラーゼ遺伝子のプローブと接触させ,標識された部分に相当するプラークを選択して、この選択したプラーク中のファージを増幅させて,所望のカタラーゼ遺伝子をクローニングすることができる。
【0034】
上記のカタラーゼ遺伝子のプローブとして用いるDNA断片は、少なくとも所望のカタラーゼ遺伝子の塩基配列の一部を含むことが必要である。
このような配列を有するプローブは、例えば既知のカタラーゼ遺伝子同士で共通する部分の配列を化学合成したDNA断片や;本発明カタラーゼ遺伝子の出所となる植物のgenomic DNAを細胞核部分から抽出して、このgenomic DNAを鋳型とし、既知のカタラーゼ遺伝子同士で共通する部分の配列を化学合成したDNA断片をプライマーとした、前出のPCR法により得られるDNA断片を用いることができる。
【0035】
このようにして得られたクローンから、マキサム−ギルバート(Maxam-Gilbert )法(Maxam, A., and Gilbert, W.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74:560(1977) ),ゲノミック・シークエンス法(Church, G.M.,Gilbert,W.:Genomic sequencing. Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:1991-1995(1984) ),マルチプレックス法(Church, G.M.,Science, 240:185-188(1988) ),サイクルシークエンス法(Nature,321,674(1986)) ,サンガー(Sanger)法(F.Sanger, S. Nicklen, A.R.Coulson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,74,5463(1977))等の方法を用いて、所望するカタラーゼ遺伝子の塩基配列を決定することができる。なお、これらの原理を応用した塩基配列自動解析装置〔例えばABI PRISMTM 310 Genetic Analyzer ,ABI Model 373A(両者共、パーキンエルマー(PERKIN ELMER)社製)、ALF DNA sequencer II(ファルマシア(Pharmacia)社製)等〕を用いて塩基配列を決定することも勿論可能である。
【0036】
上記のごとく決定された本発明カタラーゼ遺伝子の塩基配列を基にして、本発明カタラーゼ遺伝子そのものを入手することができる。
すなわち、上記と同様に調製した本発明カタラーゼ遺伝子の出所となる生物のcDNAを鋳型とし、上記のごとく決定されたカタラーゼ遺伝子の塩基配列の5’末端側と3’末端側の配列を含むDNA断片をプライマーとした前出のPCR法により、本発明カタラーゼ遺伝子を大量に増幅させて入手することができる。
【0037】
また、上記のプライマーをプローブとして、作出したcDNAの遺伝子ライブラリーから本発明カタラーゼ遺伝子を有するクローンを選別して、本発明カタラーゼ遺伝子を入手する伝統的な方法を用いることも勿論可能である。
【0038】
なお、いわゆる部位特異的突然変異法等の通常公知の遺伝子の塩基配列の変更手段を講ずることで、前記の工程により調製した本発明カタラーゼ遺伝子の塩基配列の一部を改変して、その遺伝子がコードするアミノ酸配列を変更することも可能である。このようなカタラーゼ遺伝子の塩基配列又はそれがコードするアミノ酸配列の一部を人為的に変更した遺伝子若しくはアミノ酸配列に基づくカタラーゼ遺伝子又はカタラーゼが、本発明の技術的範囲に含まれることを本発明者は認識する。
【0039】
B.植物への上記カタラーゼ遺伝子の導入用ベクター
本発明は、本発明カタラーゼ遺伝子をイネ属に属する植物に導入して、この植物を形質転換して耐冷性等を有するイネ属に属する植物を作出することを主な目的の一つとする。
【0040】
そして、本発明カタラーゼ遺伝子をイネ属に属する植物に導入する前提として、優れた本発明カタラーゼ遺伝子の導入効率を有する遺伝子導入用ベクター(以下、本発明導入用ベクターともいう)を作出することが必要である。
【0041】
本発明導入用ベクターは、本発明カタラーゼ遺伝子の他に、例えばCaMVの35Sプロモーター,イネツングロウイルスプロモーター,イネアクチンプロモーター,イネワキシープロモーター等のプロモーター;例えばトウモロコシのAc/Ds系トランスポゾン等のAc/Ds系トランスポゾン等の遺伝子発現調節機構;例えばノパリンターミネーター,35Sターミネーター等のターミネーター等を含み得るものである。
その具体的な態様は、後述する実施例において記載する。
【0042】
C.本発明カタラーゼ遺伝子の植物への導入
上記のように調製したカタラーゼ遺伝子の導入用ベクターをイネに導入する。具体的には、遺伝子導入可能な状態にしたイネの植物体細胞に、本発明カタラーゼ遺伝子導入用ベクターを用いて本発明カタラーゼ遺伝子を導入する。
【0043】
本発明カタラーゼ遺伝子を導入する対象となるイネは、元来耐冷性に乏しく、かつ実際に穀物植物として食用に供されており、本発明カタラーゼ遺伝子を導入する格好の対象植物である。
【0044】
遺伝子導入可能な状態にしたイネの植物体細胞は、通常は細胞壁を除去したプロトプラストとしての形態をとる。このプロトプラストの調製は、通常公知の方法を用いて行うことができる。すなわち、懸濁培養細胞にセルラーゼ処理等の細胞壁除去手段を施してその細胞の細胞壁を除去することにより所望するプロトプラストを調製することができる。
【0045】
このようにして調製したプロトプラストに、上記の本発明カタラーゼ遺伝子導入用ベクターを導入する。
この導入法としては、例えばエレクトロポレーション法、すなわち本発明カタラーゼ遺伝子導入用ベクターを含む高抵抗の電解質液に、プロトプラストを懸濁し、細胞膜に高電圧をかけ一時的に穴を空けて、このベクターを取り込ませる技術を挙げることができる(K.Toriyama et al.,Bio/Technology,6,1072(1988) 等)。また、ポリエチレングリコールによって単子葉植物に遺伝子を挿入する方法(W.Zhang and R.Wu. Theor.Appl.Genet.,76,835-840(1988)) によっても本発明カタラーゼ導入用遺伝子をプロトプラストに導入することもできる。
【0046】
さらに、プロトプラストを用いないカタラーゼ遺伝子導入法として、例えば超微粒子金属に載せた本発明カタラーゼ遺伝子導入用ベクターを組織内に撃ち込む、パーティクルガンを用いた方法(W.J.Gordon-kamm et al.,Plant Cell,2,603(1990) 等);花粉管からの本発明カタラーゼ遺伝子導入用ベクターの導入法(X.-L.Zhong et al.,Plant Mol.Biol.Rep.,6,165(1988));組織又は胚を本発明カタラーゼ遺伝子導入用ベクターの溶液に浸す方法(R.Topfer et al.,Plant Cell,1,133(1989)) ;アグロバクテリウムによって、単子葉植物に遺伝子を導入する方法(Yukoh Hiei et al.,The Plant Journal,6(2),271-282(1994)) 等を挙げることができる。
【0047】
このように本発明カタラーゼ遺伝子の導入操作を行ったイネ細胞群において、本発明カタラーゼ遺伝子が組み込まれたイネ細胞の選抜は、例えば個々のイネ細胞のDNAの電気泳動の染色パターンを検討する方法を代表的な手段として挙げることができる。なお、この際、適切なマーカーを含んだベクターを同時にイネ細胞群に対して導入操作を行い、このマーカー用ベクターが導入されたイネ細胞群をまず選抜して、本発明カタラーゼ遺伝子が導入されたイネ細胞の存在確率を高める等の補助的な手段を講ずることが好ましい。このようなマーカー遺伝子としては、ハイグロマイシン耐性遺伝子,除草剤バスタ耐性遺伝子(Bar遺伝子)等を挙げることができる。
【0048】
D.本発明カタラーゼ遺伝子を導入した植物の植物体の再分化方法及び増殖方法
上記のように、調製した本発明カタラーゼ遺伝子を導入したプロトプラストから再分化させ、本発明カタラーゼ遺伝子を導入したイネの植物体(以下、本発明遺伝子導入植物ともいう)を作出する。
【0049】
例えば、前記の本発明カタラーゼ遺伝子を導入したプロトプラストからカルスを誘導し、このカルスからイネの幼植物体を再分化させて、さらにこの幼植物体を鉢上げ、馴化して所望する植物体を得ることができる。
【0050】
このカルスの誘導工程において、例えば再生能が高くかつ分裂能の旺盛な懸濁培養細胞からプロトプラストを分離し、培養する方法(Y.Yamada et al.,Rice Genetics Newsletter, Vol.2, p.94 (1985)等);アガロースビーズ法とナース培養法とを組み合わせた方法(J.Kyozuka et al.,Mol.Gen.Genet.,206,408(1987))等の方法を利用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、カルスから幼植物体の再分化は、例えば2,4−D、カイネチン、インドール酢酸、ゼアチン等の植物成長調整ホルモンを含んだ再分化用培地でカルスを培養すること等により行うことができる。
【0052】
そして、幼植物体が得られた時点で、この幼植物体を馴化用培土等に鉢上げして馴化すること等により、所望するイネの植物体を得ることができる。
【0053】
なお、本発明において、植物体とは、植物の根,茎,葉,花,実(種籾)を総称するものである。
従って、本発明遺伝子導入植物の技術的範囲は、本発明カタラーゼ遺伝子を導入して作出した種苗のみならず、その収穫物にも及ぶものである。
【0054】
また、植物体細胞とは、プロトプラスト及びカルスの両者を含むものである。
従って、本発明遺伝子を導入して得た植物体細胞(以下、本発明遺伝子導入細胞ともいう。)の技術的範囲には、その植物のプロトプラスト及びカルスの両者を含むものである。
【0055】
本発明遺伝子導入植物であるイネの場合は、他のイネ科の植物と同様に自家受粉によってF1 植物を作出することが可能であり、本発明遺伝子導入植物の特徴は、安定して後代に遺伝する。また、同じ範疇の他のイネ科植物とかけ合わせる交配親として用いて、新たな品種を作出するために本発明遺伝子導入植物を用いることができる。
【0056】
このようにして作出、増殖させた本発明遺伝子導入植物は、元来その植物が有しているカタラーゼの他に、新たに組み込んだ本発明カタラーゼが相乗的に生産され、さらに本発明遺伝子導入植物であるイネの場合は、従来のイネと比べて耐冷性に優れたイネが提供される。なお、ここまで述べた一連の本発明遺伝子導入植物作出工程等については、後述する実施例において具体的に説明する。
【0057】
E.本発明カタラーゼの製造
前述のように、本発明遺伝子導入植物(イネ)(本発明遺伝子導入植物細胞を含む)は、カタラーゼの生産能が相乗的に向上していることが明らかになっている。本発明は、本発明遺伝子導入植物を原材料とした、産業上非常に有用なカタラーゼ(以下、本発明カタラーゼともいう。)の製造方法をも含むものである。
【0058】
本発明カタラーゼは、本発明カタラーゼ遺伝子導入植物の本発明遺伝子を発現している部位であれば、根,茎,葉,カルス等どこの部分でも、その原料として用いることができる。なお、植物体に由来するカルス(植物培養細胞)は、通年タンク内で培養できることから、本発明カタラーゼの製造原料としては特に好ましい素材である。
【0059】
これらの原料から、本発明カタラーゼは通常公知の方法により製造することができる。例えば、これらの原料を適当な緩衝液と共に磨碎等することにより、本発明カタラーゼの粗抽出液を得ることができる。例えば、これらの原料を0.1M トリス塩酸緩衝液(pH8.0) 中で氷冷しながら乳鉢又はポリトロン(キネマティカ社製)等の磨砕機で破砕し、この破砕液を遠心分離〔遠心条件は、例えば(4℃,15000 ×g,20分)程度の条件で行うのがこのましい〕して遠心上清液を得て、粗酵素液とすることができる。また、凍結したこれらの原料を液体窒素等と共に磨碎して粉末状とし、これを冷却したアセトン等の溶媒で抽出し、リン酸カリウム緩衝液(pH7.0) 等に再懸濁し、その再懸濁液に遠心分離を施した上清を粗酵素液とすることも可能である。
次いで、この粗酵素液に硫酸アンモニウム等のタンパク質沈澱剤を加え、目的とするカタラーゼを粗酵素の沈澱物として得ることができる。
【0060】
カタラーゼの用途によっては、この粗酵素の段階でも目的を達成することができるが、さらに純度の高い本発明カタラーゼを所望する場合には、透析,限外濾過,分子篩クロマトグラフィー,イオンクロマトグラフィー,アフィニテイ ークロマトグラフィー,電気泳動又はこれらの手段を組み合わせて用いることができる。
【0061】
例えば、得られた粗酵素の沈澱物を、適当な緩衝液(例えば、上記のリン酸カリウム緩衝液(pH7.0) 中に溶解して、これと同様の緩衝液中で1昼夜から数日程度の透析を行い、透析後、得られた酵素液に遠心分離を施して不溶物を除去する。次に、例えば得られた上清液に陰イオン交換クロマトグラフィーを施すことで、より一層の精製を行うことができる。このクロマトグラフィーの担体としては、例えばDEAE-Sepharose CL-6B(Pharmacia 社製) ,DE-52 Cellulose(Whatman 社製) 等を用いることができる。このクロマトグラフィーを施すことにより得られた本発明カタラーゼの活性画分につき、先の硫安分画と陰イオンクロマトグラフィーを繰り返し施すことが有効な精製手段の一つである。そして、さらに例えば、Sepharose 6B(Pharmacia社製) を用いたゲル濾過を組み合わせることによって本発明カタラーゼの比活性の向上を図ることができる。
本発明カタラーゼの活性やタンパク量の測定手段は、後述の実施例において説明する。
【0062】
驚くべきことに、本発明の遺伝子導入イネに由来するカタラーゼは、本来のイネカタラーゼよりも、耐冷性において格段に優れるカタラーゼである(以下、本発明カタラーゼともいう。)。具体的には、5℃という低温においても、工業的な使用が十分可能である程のカタラーゼ活性を有するカタラーゼが提供される。
【0063】
これは異種のカタラーゼの組み合わせによって、カタラーゼの異種複合体が形成されることにより、耐冷性が現れるものと推測される。
この耐冷性カタラーゼは、例えばカズノコの漂白剤として用いられている過酸化水素の除去剤として非常に有望なカタラーゼである。すなわち、カタラーゼの酵素活性を確保するために系の温度を上昇させる必要が殆どなく、カズノコの品質管理上非常に有用である。
驚くべきことに、本発明遺伝子を導入したイネにおいては、本来のイネのカタラーゼ量の約5倍ものカタラーゼが、イネの体内で生産されることが明らかになった。
【0064】
なお、配列番号6(第1図及び第2図参照)で表される本発明カタラーゼは、例えば上記の本発明カタラーゼの活性画分の中から、相当する画分を選別することにより製造することができる。
【0065】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらの実施例により限定されるべきものではない。
【0066】
A.コムギカタラーゼ遺伝子の取得
1.プローブの調製
9cmシャーレの中に水で湿らせた濾紙をひき、その上にコムギ(チホクコムギ)の種子を置床し、室温で発芽させた。発芽7日目の葉を採取し、乳鉢で液体窒素中で磨砕した。これによりパウダー状になったコムギの葉からCTAB法(Murray, M.G. and Thompson, W.F.[Nucleic Acids Res.8,4321-4325(1980)]) によりコムギgenomic DNAを抽出した。
【0067】
このgenomic DNAを鋳型として、既に報告されているカタラーゼ遺伝子のアミノ酸配列をもとに作成したプライマー(既知のイネ,マメ及びトウモロコシのカタラーゼ遺伝子の塩基配列同士で共通して高度に保存されている配列を基にして作成した。配列番号1:5’−ACCTAAGCTTCCTCTTCGACGACGTCGGC−3’;配列番号2:5’−GTTCTAGAACACCCTGCACTGCAGCATCT−3’)を用いて、PCR法によって増幅した(熱サイクル25回)。次に、その増幅DNAの塩基配列をサイクルシークエンス法により決定し、イネカタラーゼcDNAの塩基配列との高い相同性から、コムギカタラーゼDNAの一部であることを確認した。さらに、その塩基配列を基にしてプライマー(配列番号3:5’−TGAATTCGTCGGAGTAGTAGATCCCCG−3’;配列番号4:5’−CCGAATTCCGCCACATGGACGGCTTC−3’)を製造し、上記と同じくPCR法によって、428塩基のDNAプローブを調製した。
【0068】
このDNAプローブの標識は、ランダムプライム標識システム(ベーリンガーマンハイム社製)によって、ジゴキシゲニン標識デオキシウリジン三リン酸(DIG−dUTP)で標識して使用した。
【0069】
2.cDNAライブラリーのスクリーニング
大腸菌C600−Hfl株(ストラテジーン社製)に、コムギcDNA遺伝子ライブラリー(クローンテク社製:Triticum aestivum L. variety : Tam 107 Hard Red Winter : lambda gt10 phage Cat.#FL1092a )のラムダファージを感染、増殖させ、溶菌プラークが直径約1mmになるまで生育させた。これらのプラークから、ナイロン膜(ベーンガーマンハイム社製:positively charged nylon membrane )にプラーク中のDNAを転写した後、上記1.で調製した標識DNAプローブを用いて、コムギカタラーゼ遺伝子を有するクローンをスクリーニングした結果、計12個のクローンを得た。これらのクローンから、カタラーゼcDNA部分をEcoRI で切出し、pUC118ベクター(タカラ社製)にサブクローニングを行った。このうち、最長のcDNA断片を有するクローン(p6-22 )を選び、DNAの塩基配列の決定に用いた。
【0070】
3.コムギカタラーゼcDNAの塩基配列の解析
クローンp6−22のプラスミドDNAをダイプライマーサイクルシーケンシング法(Nature 321,674.1986 )、並びにジデオキシヌクレオチド法(Messing J.,Method in Enzymology,101,20-78.1983)に従って決定した塩基配列を配列番号5(第1図及び第2図参照)に示す。クローンp6−22が有するコムギカタラーゼcDNAの断片は、全長1573塩基からなり、5’末端に22塩基,3’末端に75塩基よりなる非転写部位を有し、492個のアミノ酸からなるポリペプチドをコードする1476塩基の読み取り可能枠から構成されていることが判明した(アミノ酸配列:配列番号6;第1図及び第2図参照)。
【0071】
4.本発明カタラーゼ遺伝子導入用ベクターの作出
上記3.において得られたプラスミドp6−22から、EcoRI でカタラーゼ(以下、CATともいう。)遺伝子を切出し、クレノウフラグメント(Takara社製)で平滑末端にした断片をカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(以下、35Sともいう。)、β−グルクロニダーゼ遺伝子(以下、GUSともいう)及びノパリンターミネーター(以下、nosともいう。)を有するプラスミドpBI221(クローンテック社製)をSmaIで切断した部位にクローニングした。こうして得られたプラスミドをSacIで切断し、GUS遺伝子とCAT遺伝子の大部分を除去した。このプラスミドのSacI切断部位に、新たにp6−22からSacIで切り出したCAT遺伝子を挿入し、そのCAT遺伝子を発現するプラスミドpTNCAT39を作出した(以上の組換えプラスミドpTNCAT39の作出工程を第3図に示す。)。
【0072】
なお、この組換えプラスミドpTNCAT39は、大腸菌(Escherichia coli JM109) に組み込まれ、「Escherichia coli JM109/pTNCAT39 」として工業技術院生命工学研究所に寄託されている(受託番号:FERM P−15505)。
【0073】
5.ハイグロマイシン耐性遺伝子導入ベクターの作出
ハイグロマイシン耐性遺伝子は、既に報告されている塩基配列(Gritz,L. andDavies,J Gene vol.25, 179-188(1983))を基にして作成したプライマー(配列番号7:5'-GACCCGGGGAGATGACGTTGGAGGGGC-3' 及び配列番号8:5'-TAGAGCTCGCGGCGATCTCCAATCTGCGG-3' を用いて、プラスミドDNApHph(ベーリンガー社製)を鋳型として用いてPCR法でハイグロマイシン耐性遺伝子を増幅させた。
【0074】
次いで、プラスミドpBI221(クローンテック社製)から、Sma I とSac I で切り出したプラスミドpBI221が保有するGUS遺伝子の代わりに、上記の増幅したハイグロマイシン耐性遺伝子断片を挿入し、これをハイグロマイシン耐性遺伝子導入用ベクターp35S-HPT-Nosとした。
この組換えプラスミドp35S-HPT-Nosの作出工程を第4図に示す。
【0075】
B.コムギカタラーゼ遺伝子のイネへの導入と発現
1.イネプロトプラストの単離
イネプロトプラストは、懸濁培養細胞から単離した。すなわち、イネの種子を70%エタノールに30秒浸漬し、次いで1%次亜塩素酸ナトリウム溶液に30分間浸漬して滅菌した後に、滅菌水で3回種子を洗浄し、2ppm の2,4−ジクロロフェノキシ酢酸を含むMS培地(I.Major Elements:KNO3(1900.0mg/L),NH4 ・NO3(1650.0mg/L),MgSO4・7H2O(370.0mg/L),CaCl2・2H2O(440.0mg/L),KH2PO4(170.0mg/L) 、II.Minor Elements:MnSO4 ・4H2O(22.3mg/L),H3BO3(6.2mg/L),ZnSO4・7H2O(8.6mg/L),KI(0.83 mg/L),Na2MoO4・2H2O(0.25mg/L),CoCl2・6H2O(0.025mg/L),CuSO4・5H2O(0.025mg/L) 、III.Fe,ETA:Na2EDTA(37.3mg/L),FeSO4・7H2O(27.8mg/L)、IV.Vitamins:Myo-inositol(100.0mg/L),Thiamin・HCl(0.1mg/L),Pyridoxine・HCl(0.5mg/L),Nicotinic acid(0.5mg/L),Glycine(2.0mg/L),Sucrose(30g/ml),Agar(9g/ml)[pH5.8〜6.0]:Physiol, Plant, 15:473(1962))上に置床して培養し、胚盤からカルスを誘導した。カルスをR2溶液培地(I.Major Elements:KNO3(4040.0mg/L),NH4・NO3(330.0mg/L),NaH2PO4(240.0mg/L),MgSO4・7H2O(247.0mg/L),CaCl2(147.0mg/L)、II.Minor Elements:MnSO4・4H2O(Mn 0.5ppm),H3BO3(B 0.5ppm),ZnSO4・7H2O(Zn 0.5ppm),Na2MoO4・2H2O(Mo 0.05ppm),0.25mg/L),CuSO4・5H2O(Cu 0.05ppm)、III.Fe,ETA:Na2EDTA(7.46mg/L),FeSO4・7H2O(5.56mg/L)、IV.Vitamins:Myo-inositol(100.0mg/L),Thiamin・HCl(0.1mg/L),Pyridoxine・HCl(0.5mg/L),Nicotinic acid(0.5mg/L),Glycine(2.0mg/L),Sucrose(30g/ml),2・4-D(1 mg/L)[pH5.8〜6.0]:Mol.Gen.Genet. 206, 408(1987))に植え直し、懸濁培養細胞を調製した。R2溶液培地で継代を2〜3ヵ月行い、増殖することを確認した培養細胞から、プロトプラストを単離した。この単離したプロトプラストを4%セルラーゼオノズカRS(ヤクルト本社製),マセロザイムR−10(ヤクルト本社製),0.4M マンニトール,25mM MES(pH5.6)中に懸濁し、室温で3時間静置した。この懸濁液を20μm のナイロンメッシュで濾過し、プロトプラストを分離精製した。次に遠心分離(100 ×g,5分間)によってプロトプラストを集め、ASP緩衝液(L-Asparatic acid monopotassium salt(11.98g/l),Calcium gluconate monohydrate(2.24g/l),MES(1.07g/l),Mannitol(72.868g/l):Theor.Appl. Genet. 80,475(1990))に懸濁した。遠心分離(100 ×g,3分間)で懸濁したプロトプラストを集め、再度ASP緩衝液に懸濁した。この操作を再度繰り返した後、プロトプラスト数を計数し、以下の実施例に供した。
【0076】
2.エレクトロポレーション法による遺伝子導入
エレクトロポレーションは、抗生物質ハイグロマイシンを分解する酵素をコードする遺伝子を本発明カタラーゼ遺伝子と同時に導入することで、ハイグロマイシン耐性を形質転換細胞の選抜指標として用いた。20μg/mlの前記pTNCAT39と前記p35S-HPT-NOS、キャリアーとして50μg/ml子牛由来のDNAを含むASP緩衝液にプロトプラストを4×106 個/ ml濃度となるように懸濁した。この懸濁液0.8mlをプラスチックセルに移し、氷中で10分間冷却後、660μF ,450V ,30msecの電荷をかけた。氷中で10分間冷却後、遠心分離(100 ×g,3分間)によってプロトプラストを集め、R2プロトプラスト液体培地(I.Major Elements:KNO3(4040.0mg/L),NH4・NO3(330.0mg/L),NaH2PO4(240.0mg/L),MgSO4・7H2O(247.0mg/L),CaCl2(147.0mg/L)、II.Minor Elements:MnSO4・4H2O(Mn 0.5ppm),H3BO3(B 0.5ppm),ZnSO4・7H2O(Zn 0.5ppm),Na2MoO4・2H2O(Mo 0.05ppm),0.25mg/L),CuSO4・5H2O(Cu 0.05ppm)、III.Fe,ETA:Na2EDTA(7.46mg/L),FeSO4・7H2O(5.56mg/L)、IV.Vitamins:Myo-inositol(100.0mg/L),Thiamin・HCl(0.1mg/L),Pyridoxine・HCl(0.5mg/L),Nicotinic acid(0.5mg/L),Glycine(2.0mg/L),Sucrose(136.92g/ml),2・4-D(2mg/L)[pH5.8 〜6.0]:Mol. Gen. Genet. 206, 408(1987))1mlに懸濁し、これを1mlの2.5%アガロース(シープラークアガロース:FMC社製)を溶解したR2プロトプラスト液体培地と混合後、3.5cmシャーレにまいて、4℃で固めた。このアガロースをビーズに切り分けた後、9cmシャーレに15mlのR2プロトプラスト液体培地を加え、さらにイネ懸濁細胞T(Tai Chun65) をナース細胞として添加した中に、前記ビーズを浮遊させ、暗黒下,25℃で振盪培養(30回転/分)を行った。
【0077】
3.形質転換細胞の選抜と再分化
上記2.の振盪培養したイネプロトプラストが数十細胞まで増殖した時点で、上記液体培地からナース細胞を除去し、系においてハイグロマイシンを20μg/mlの濃度になるように添加し、10日間培養した。培養ビーズを液体培地中から、30μg/mlのハイグロマイシンを含むソフトアガロース培地(I.Major Elements:KNO3(2830.0mg/L),(NH4)2SO4(463.0mg/L),KH2PO4(400.0mg/L),MgSO4・7H2O(185.0mg/L),CaCl2(166.0mg/L)、II.Minor Elements:MnSO4・4H2O(4.4mg/L),H3BO3(1.6.mg/L),ZnSO4・7H2O(1.5mg/L),KI(0.8mg/L) 、III.Fe,ETA:Na2EDTA(37.3mg/L),FeSO4・7H2O(27.8mg/L)、IV.Vitamins:Glycine(2.0mg/L),Thiamin・HCl(1.0mg/L),Pyridoxine・HCl(0.5mg/L),Nicotinic acid(0.5mg/L),Sucrose(60g/ml),Kinetin(2mg/L),Agar(2.5g/L)[pH5.8 〜6.0]:Mol. Gen. Genet. 206, 408(1987))上に置き培養すると、ハイグロマイシン耐性細胞が10-5の頻度で得られた。得られたハイグロマイシン耐性細胞は、その細胞集塊から一部をとり、N6再分化培地(I.Major Elements:KNO3(2830.0mg/L),(NH4)2SO4(463.0mg/L),KH2PO4(400.0mg/L),MgSO4・7H2O(185.0mg/L),CaCl2(166.0mg/L)、II.Minor Elements:MnSO4・4H2O(4.4mg/L),H3BO3(1.6.mg/L),ZnSO4・7H2O(1.5mg/L),KI(0.8mg/L) 、III.Fe,ETA:Na2EDTA(37.3mg/L),FeSO4・7H2O(27.8mg/L)、IV.Vitamins:Glycine(2.0mg/L),Thiamin ・HCl(1.0mg/L),Pyridoxine・HCl(0.5mg/L),Nicotinic acid(0.5mg/L),Sucrose(60g/ml),Kinetin(2mg/L),Agar(10g/L)[pH5.8〜6.0]:Mol. Gen. Genet. 206, 408(1987))上に置床し、再分化させた。
【0078】
4.イネカルスでのコムギカタラーゼの発現確認
上記3.で得たハイグロマイシン耐性カルスを1%triton X-100を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)中で磨砕し、卓上エッペンドルフ用遠心機を用いて遠心分離を行い(4℃,14000回転,20分間)、その上清を粗酵素液とした。タンパク質濃度はブラッドフォード法(Bradford M.M.,Anal. Biochem. 72,248-254(1976)) により、プロテインアッセイキット(バイオラッド社製)を用いて測定した。粗酵素液のタンパク質濃度を0.4μg/mlに調整後、等量の泳動試料用緩衝液(125mM トリス塩酸緩衝液(pH6.8) ,20%グリセロール,10% 2−メルカプトエタノール,0.002% ブロムフェノールブルー)を加えた試料15μl を10%ポリアクリルアミド電気泳動に供試した。泳動用緩衝液には、25mMトリス,1.4% グリシン(pH6.8)を用い、氷中、15mAの定電流で8時間泳動を行った。泳動後のゲルを純水で洗浄し、0.03%過酸化水素水に3分間浸漬した後、再度純水で洗浄した。このゲルを8%塩化第二鉄、8%フェリシアン化カリウム溶液中に5分間浸漬してカタラーゼの活性によるバンドが検出できた。
【0079】
この結果は、第5図(参考写真1)に示した通りである。この第5図において、形質転換カルスからは、コントロール(ユーカラカルス)とは異なる位置に数本のバンドが検出された。
【0080】
5.形質転換したカルスでのカタラーゼの活性
石英セル(1ml容量)に50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)を0.695ml加え、さらに上述の3.で得たイネカルスからの粗酵素液を5μl 加えた。これに、50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)及び30mMの過酸化水素水を200μl 加え、これを素早く攪拌し、吸光度(240nm)の値を経時的に測定した。この測定値から算出したカタラーゼ活性を第6図に示す。この第6図では、形質転換カルスCat2−10,Cat1−24,Cat2−6,Cat2−10,Cat2−15,Cat2−17では、対照として用いたイネ(ユーカラ)に比べて数倍のカタラーゼ活性が認められ、特にCat1−24では、この対照の7倍以上のカタラーゼ活性が認められた。
【0081】
この結果より、本発明カタラーゼ遺伝子を導入したイネのカルスにおいては、相乗的にカタラーゼが生産されていることが明らかになった。
【0082】
6.形質転換したイネ葉でのカタラーゼの発現の確認
上記3.において作出した形質転換イネの葉にその生重量の6倍容量の50mMリン酸緩衝液pH7.0(1% tritonX-100を含む)を添加して乳鉢で磨砕した。この磨砕液に卓上エッペンドルフ用遠心機を用いて遠心分離を施し(4℃,14000回転,20分間)、その上清を粗酵素液とした。この粗酵素液を、前述のカルス由来の粗酵素液と同様に調製して10%アクリルアミド電気泳動し、活性染色を行った。その結果を、第7図(参考写真2)に示す。第7図では、コントロールのコムギの葉とイネ(ユーカラ)の葉のカタラーゼバンドの位置がそれぞれ示され、形質転換イネの葉のカタラーゼがその間に数本のバンドとして検出された。
【0083】
7.形質転換イネの葉のカタラーゼ活性
前記6.において調製した粗酵素液のカタラーゼ活性を、上記5.で述べた方法により測定した。その結果を第8図に示す。第8図では、コントロール〔コムギ(チホクコムギ)及びイネ(ユーカラ)〕の葉のカタラーゼ活性に対して形質転換イネのカタラーゼ活性が、1.5倍から4.5倍まで増加していた。
【0084】
この結果より、本発明カタラーゼ遺伝子を導入したイネの葉においても、相乗的にカタラーゼが生産されていることが明らかになった。
【0085】
8.低温下で育成した形質転換イネの葉のカタラーゼ活性
コントロール〔イネ(ユーカラ)〕と形質転換イネ(Cat.1-24) を15℃で発芽させた後、25℃で2葉期まで生育させた。さらに、4℃下での低温処理を1週間施し、その低温処理葉から前記6.の方法により粗酵素液を調製し、そのカタラーゼ活性を前記の方法で測定した結果を第9図に示す。第9図では、形質転換イネを低温下に置くと、葉のカタラーゼ活性が25℃で生育させたときよりも低下するが、コントロールを25℃で生育させたときの葉のカタラーゼ活性よりも高い活性を保持していることが示された。
【0086】
この結果と、前記の従来技術の欄に記載した「イネの低温発芽能及び幼苗低温ストレス耐性にカタラーゼが関与している」(Plant Science,109,105-113,1995 ;Plant Breeding,46,23-27,1996) という知見を実際に確認するために、本発明カタラーゼ遺伝子で形質転換したイネの耐冷性試験を行った。
【0087】
9.形質転換イネの耐冷性試験
この耐冷性試験は、“Nagamine,T.and Nagahara,M.[Japan J.Breed,40:449-455(1990)'"に開示された幼苗の低温傷害評価法を改変した方法により行った。
すなわち、コントロール(イネ:マツマエ)と本発明カタラーゼ遺伝子で,前述の方法に準じた方法で形質転換した形質転換イネ(Cat.1-6-1)の種籾13〜15粒を25℃の暗所で10日間生育させ、次いで5℃の低温処理(暗所)を10日間行った後、25℃の明所に戻して4日間経過したときの茎葉への傷害の程度で、そのイネの耐冷性を評価した。
この傷害の程度を第10図及び参考写真3(生物の形態写真)に示す。また、25℃の明所に戻して4日間経過した時点の生育植物体数の数を第1表に示す。
【0088】
第10図及び参考写真3において、左側の株はカタラーゼ遺伝子を導入したイネであり,右側の株はこの遺伝子を導入していないコントロール株である。
また第1表において、実験1と実験2の「生残数」の欄における分母は播種した種籾数,分子は前述の耐冷性試験を行った後,生存していたイネの個体数を表す。また「カタラーゼ活性」の欄は、それぞれの葉のカタラーゼ活性を測定した結果を表す。
【0089】
【表1】
【0090】
第10図及び参考写真3から、カタラーゼ遺伝子を導入した株の方がコントロール株に比べて明らかに生育状況が良好であることがわかる。
また第1表においては、コントロールよりもカタラーゼ遺伝子を導入した株の方が低温処理に対して抵抗性を有し、さらに葉におけるカタラーゼ活性もカタラーゼ遺伝子を導入した株の方が活性値が高かった。
すなわち、確かに本発明遺伝子で形質転換したイネの耐冷性が向上しており、これらの株においてはカタラーゼ遺伝子が高度に発現していることから,このカララーゼが株の耐冷性向上に大きく関わっていることがわかる。
【0091】
10.形質転換イネの葉のカタラーゼの耐冷性の検討
前記6.において調製した粗酵素液(Cat2-6) のカタラーゼ活性を、5℃,10℃,15℃,20℃及び25℃において、上記5.で述べた方法で測定した。
その結果を第11図(それぞれの反応温度でのカタラーゼ活性の具体的活性値を表した図面)及び第12図(25℃で反応させたそれぞれのカタラーゼ活性の値を100%とした場合の,各温度での相対的なカタラーゼ活性を示した図面)に示す。
【0092】
第11図において、25℃での本発明耐冷性カタラーゼ(Cat2-6) の活性は、イネ(ユーカラ)やコムギ(チホクコムギ)の4.7倍及び4.3倍と著しく高かった(第11図)。また、それだけではなく、酵素にとっては過酷ともいえる低温下(5℃)でのそれぞれのカタラーゼ活性は、25℃での活性を100%とした場合、イネ(ユーカラ)では20%に減少したが、本発明耐冷性カタラーゼ(Cat2-6) の活性は64%と高く保持されていた(第12図)ことは驚くべきことである。
この結果より、本発明耐冷性カタラーゼが耐冷性において非常に優れ、前記したカズノコの漂白剤の除去等の用途において非常に有用なカタラーゼであるということが明らかになった。
【0093】
【発明の効果】
本発明により、コムギのカタラーゼをコードする特定の遺伝子を導入した耐冷性に優れるイネの植物体細胞及びイネの植物体、このイネの植物体の製造方法、このイネの植物体の増殖方法、並びに、このカタラーゼ遺伝子を導入したイネに由来する冷環境においても高活性が維持されるカタラーゼの製造方法、が提供される。
【0094】
【配列表】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明カタラーゼ遺伝子の塩基配列と、この塩基配列から推定される本発明カタラーゼのアミノ酸配列を示した図(前半部)である。
【図2】本発明カタラーゼ遺伝子の塩基配列と、この塩基配列から推定される本発明カタラーゼのアミノ酸配列を示した図(後半部)である。
【図3】本発明カタラーゼ遺伝子を植物で発現する発現ベクターpTNCAT39の構築図である。
【図4】ハイグロマイシン耐性遺伝子導入用ベクターp35S-HPT-No
sの構築図である。
【図5】本発明遺伝子導入イネのカルスとコントロールのイネ(ユーカラ)のカルスに由来するカタラーゼの電気泳動後の活性染色の結果を示す図である。
【図6】本発明遺伝子導入イネのカルスとコントロールのイネ(ユーカラ)のカルスに由来するカタラーゼの活性を比較した図である。
【図7】本発明遺伝子導入イネの葉とコントロールのイネ(ユーカラ)の葉とコムギ(チホクコムギ)の葉に由来するカタラーゼの電気泳動後の活性染色の結果を示す図である。
【図8】本発明遺伝子導入イネの葉とコントロールのイネ(ユーカラ)の葉とコムギ(チホクコムギ)の葉に由来するカタラーゼの活性を比較した図である。
【図9】25℃生育、又は25℃生育後4℃で一週間生育させた本発明遺伝子導入イネの葉とコントロールのイネ(ユーカラ)の葉に由来するカタラーゼ活性を比較した図である。
【図10】本発明遺伝子による形質転換イネの耐冷傷害性を,コントロールのイネと比較した図である。
【図11】それぞれの反応温度でのカタラーゼ活性の具体的活性値を表した図である。
【図12】25℃で反応させたそれぞれのカタラーゼ活性の値を100%とした場合の、各反応温度での相対的なカタラーゼ活性を示した図である。
Claims (9)
- 配列番号6で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子、あるいは、配列番号6で表されるアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、若しくは、付加されたアミノ酸配列からなり、イネに耐冷性を付与することができ、かつ、カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む遺伝子、を自己の遺伝子中に組み込んでなる、イネの植物体細胞。
- 前記イネの植物体細胞において、組み込む遺伝子が配列番号5で表される塩基配列を含む遺伝子であることを特徴とする、請求項1記載のイネの植物体細胞。
- 配列番号6で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子、あるいは、配列番号6で表されるアミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸が、欠失、置換、若しくは、付加されたアミノ酸配列からなり、イネに耐冷性を付与することができ、かつ、カタラーゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む遺伝子、を自己の遺伝子中に組み込んでなる、イネの植物体。
- 前記イネの植物体において、組み込む遺伝子が配列番号5で表される塩基配列を含む遺伝子であることを特徴とする、請求項3記載のイネの植物体。
- 請求項1又は2に記載のイネの植物体細胞から幼植物体を再分化させて、これを馴化することを特徴とする、イネの植物体の製造方法。
- 請求項3又は4に記載のイネの植物体を自家交配することを特徴とする、イネの植物体の増殖方法。
- 配列番号6で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む遺伝子を自己の遺伝子中に組み込んでなるイネの植物体細胞又はイネの植物体に対して抽出処理を行ってカタラーゼを得ることを特徴とする、カタラーゼの製造方法。
- 前記製造方法において、イネの植物体細胞又はイネの植物体に組み込む遺伝子が、配列番号5で表される塩基配列を含む遺伝子であることを特徴とする、請求項7記載のカタラーゼの製造方法。
- 前記製造方法において、イネの植物体細胞又はイネの植物体に組み込む遺伝子が、配列番号5で表される塩基配列の一部の塩基を置換してなる塩基配列を含む遺伝子であることを特徴とする、請求項7記載のカタラーゼの製造方法。
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