JP5589590B2 - 応力緩和性に優れるPbフリーはんだ合金 - Google Patents

応力緩和性に優れるPbフリーはんだ合金 Download PDF

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本発明はPbフリーのはんだ合金に関し、特にBiが主成分である高温用のはんだ合金に関する。
近年、環境に有害な化学物質に対する規制がますます厳しくなってきており、この規制は電子部品等を基板に接合する目的で使用されるはんだ材料に対しても例外ではない。はんだ材料には古くからPb(鉛)が主成分として使われ続けてきたが、すでにRohs指令などで規制対象物質になっている。このため、Pbを含まないはんだ(以降、Pbフリーはんだとも称する)の開発が盛んに行われている。
電子部品を基板に接合する際に使用するはんだは、その使用限界温度によって高温用(約260℃〜400℃)と中低温用(約140℃〜230℃)に大別され、それらのうち、中低温用はんだに関してはSnを主成分とするものでPbフリーが実用化されている。例えば、特許文献1にはSnを主成分とし、Agを1.0〜4.0質量%、Cuを2.0質量%以下、Niを0.5質量%以下、Pを0.2質量%以下含有するPbフリーはんだ合金組成が記載されている。また、特許文献2にはAgを0.5〜3.5質量%、Cuを0.5〜2.0質量%含有し、残部がSnからなる合金組成のPbフリーはんだが記載されている。
一方、高温用のPbフリーはんだ材料に関しても、さまざまな機関で開発が行われている。例えば、特許文献3には、Biを30〜80質量%含み、溶融温度が350〜500℃のBi/Agろう材が開示されている。また、特許文献4には、Biを含む共晶合金に2元共晶合金を加え、さらに添加元素を加えたはんだ合金が開示されており、このはんだ合金は、4元系以上の多元系はんだではあるものの、液相線温度の調整とばらつきの減少が可能となることが示されている。
さらに、特許文献5には、BiにCu−Al−Mn、Cu、またはNiを添加したはんだ合金が開示されており、これらはんだ合金は、Cu層を表面に備えたパワー半導体モジュールに使用した場合、はんだとの接合界面において不要な反応生成物が形成されにくくなるため、クラックなどの不具合の発生を抑制できると記載されている。
また、特許文献6には、はんだ組成物100質量%のうち、94.5質量%以上のBiからなる第1金属元素と、2.5質量%のAgからなる第2金属元素と、Sn:0.1〜0.5質量%、Cu:0.1〜0.3質量%、In:0.1〜0.5質量%、Sb:0.1〜3.0質量%、およびZn:0.1〜3.0質量%よりなる群から選ばれる少なくとも1種を合計0.1〜3.0質量%含む第3金属元素とからなるはんだ組成物が示されている。
また、特許文献7には、副成分としてAg、Cu、ZnおよびSbのうちの少なくとも1種を含有するBi基合金に、0.3〜0.5質量%のNiを含有するPbフリーはんだ組成物が開示されており、このPbフリーはんだは、固相線温度が250℃以上であり、液相線温度が300℃以下であることが記載されている。さらに特許文献8にはBiを含む2元合金が開示されており、この2元合金は、はんだ付け構造体内部において、クラックの発生を抑える効果を有していることが記載されている。
特開1999−077366号公報 特開平8−215880号公報 特開2002−160089号公報 特開2006−167790号公報 特開2007−281412号公報 特許第3671815号 特開2004−025232号公報 特開2007−181880号公報
高温用のPbフリーはんだ材料に関しては、上記のようにさまざまな機関で開発されてはいるものの、未だ実用化の面で許容できる特性を有するはんだ材料は見つかっていないのが実情である。
すなわち、一般的に電子部品や基板には熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの比較的耐熱温度の低い材料が多用されているため、作業温度を400℃未満、望ましくは370℃以下にする必要がある。しかしながら、例えば特許文献3に開示されているBi/Agろう材では、液相線温度が400〜700℃と高いため、接合時の作業温度も400〜700℃以上になると推測され、接合される電子部品や基板の耐熱温度を超えてしまうことになる。
また、高温用はんだに一般的に求められる特性としては、高い固相線温度、適度な液相線温度、低温と高温のヒートサイクルに対する高耐久性、良好な熱応力緩和特性、良好な濡れ広がり性などが挙げられるが、はんだ合金の主成分がBiの場合は、これらの諸特性に加えて、Bi系はんだに特有の問題を解決する必要がある。
具体的には、はんだとの接合性を高めるために電子部品の表面にNi層が形成されている場合、このNi層がはんだに含まれるBiと急激に反応してNiとBiとの脆い合金を生成するとともに、Ni層に破壊や剥離が生じてBi中に拡散し、接合強度を著しく低下させることがある。Ni層の上にはAgやAuなどの層を設けることもあるが、この場合のAgやAuはNi層の酸化防止や濡れ性向上を目的としているため、すぐにはんだ合金中に拡散してしまい、Ni拡散を抑制する効果はほとんどない。
特許文献5においても、はんだとの接合表面がCu層ではなくNi層である場合が比較例としてとりあげられており、BiにCu−Al−Mn、Cu、またはNiを添加したはんだ合金では接合界面に多量のBiNiが形成され、その周囲には多数の空隙が観察されると記載されている。また、このBiNiは非常に脆い性質を有し、過酷な条件のヒートサイクルに対して信頼性が得られにくいことが確認できたとも記載されている。
また、特許文献6に開示されているようなAgを2.5質量%含有するはんだ組成物では、AgがBiとNiとの反応を助長してしまうため、例えばSnを0.5質量%以上、Znを3.0質量%以上含有しても、BiとNiの反応やBi中へのNiの拡散は抑えることはできず、接合強度が低くて実用に耐えられないはんだ材料であることが実験で確認されている。
さらに、はんだ付け時の基板の損傷を抑制するためには、はんだ凝固時に生じる応力を緩和させることが有効であることが記載されており、そのための方策として、凝固時に収縮しない合金組成を選択することが記載されている。また、凝固時に収縮しない合金組成としては、凝固時に体積膨張する金属元素であるBiやGaが挙げられている。そして、はんだ組成物の主成分としてBiを選択し、融点、作業性等を考慮してBi−2.5重量%Agはんだ組成物が有力視されたと記載されている。
しかし、凝固時の収縮率(−は膨張、+は収縮を意味する)は、Biが−3.2〜−3.4%、Agが+6.4%〜+6.8%であるため、Agの含有量が2.5質量%では、凝固時にBiによって膨張する割合が依然として多すぎて残留応力が発生する。したがって、はんだ付け時に生じ得る基板の損傷を抑えることや、実用性に耐え得る接合性や信頼性を得ることは困難であると考えられる。
また、特許文献7に開示されているPbフリーはんだ組成物では、上記したようにNiがBiと脆い合金を生成してしまう。つまり、Bi−Niの2元系状態図を見れば分かるように、Biが多く存在する場合、BiNi合金という脆い合金を作ってしまう。Niを0.3〜0.5質量%含有した場合、非常に脆い合金相がはんだ内に分散することになり、もともと脆いBi系はんだをさらに脆化させてしまうことが推測される。
また、特許文献4や特許文献8には、Bi中へのNiの拡散の問題やその防止対策に対しては何も触れられていない。特に、特許文献8にはBi−Ag系、Bi−Cu系、Bi−Zn系などについて開示されているが、Bi−Ag系については特にNi拡散対策が必要であるにもかかわらず、そのことに関しては何も触れられていない。Bi−Cu系については、CuのBi中への固溶量が微量であるため、融点の高いCu相が析出して接合性に問題がでることを確認しているが、これに対する対策が述べられていない。さらに、Bi−Zn系では、還元性の強いZnにより濡れ性が下がり、電子部品等の接合が困難であることが推測できるが、これに関しても触れられておらず、NiとBiの反応に関する記述もない。
以上述べたように、Pbを含まない高温用のBi系はんだ合金を用いて電子部品と基板を接合する際、Biが凝固時に膨張して残留応力を生じてしまい、これによって接合強度が下がり、中・長期的な耐久性が得られにくい。したがって、この凝固時の体積膨張によって発生する残留応力を下げることは、接合強度や信頼性を向上させるために解決すべき大きな課題である。
加えて、電子部品や基板にNiが存在すると、BiとNiとが反応して脆い合金を形成するとともに、NiがBiはんだ中に拡散する。したがって、かかるBiとNiとの反応やBi中へのNi拡散を抑制することも、接合強度や信頼性を向上させるために解決すべき課題である。
本発明は、Bi系はんだにおいて、凝固時の残留応力が小さく、高い接合強度と高い信頼性とを有し、Niを含む電子部品や基板を接合する際にNi−Biの反応やNi拡散を抑制できる高温用Pbフリーはんだ合金を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明のPbフリーはんだ合金は、はんだ接合面がNi層で形成される部材の接合に用いるPbフリーはんだ合金であって、Znを21.0質量%以上30.0質量%以下含有し、Alは1.0質量%以上含有しておらず、Snは10.0質量%を超えて含有しておらず、Pは0.5質量%を超えて含有しておらず、残部がBiからなることを特徴としている。上記本発明のPbフリーはんだ合金は、Al、SnおよびPのうちの1種以上が、Alの場合は0.02質量%以上、Snの場合は0.3質量%以上、Pの場合は0.001質量%以上含まれていてもよい。
本発明によれば、電子部品と基板との接合に必要な強度を有する高温用のPbフリーはんだ合金を提供することができる。すなわち、主成分としてのBiに、所定の金属元素を所定の含有率となるように添加することによって、凝固時の残留応力が小さくなり、高い接合強度と高い信頼性を得ることができる。また、電子部品等が有するNi層とはんだ合金中のBiとの反応や、はんだ合金中へのNi拡散を抑えることできる。さらには実質的にリフロー温度260℃以上の耐熱温度を有するBi系はんだ合金を提供することができる。
本発明のPbフリーはんだ合金の組成は、Biを第1元素すなわち主成分とするPbフリーはんだ合金であって、Znを21.0質量%以上30.0質量%以下含有し、Alは3.0質量%を超えて含有しておらず、Snは10.0質量%を超えて含有しておらず、Pは0.5質量%を超えて含有していない。そして、このPbフリーはんだ合金は、Al、SnおよびPのうちの1種以上が、Alの場合は0.02質量%以上、Snの場合は0.3質量%以上、Pの場合は0.001質量%以上含まれていてもよい。
上記のようなBiを主成分とするはんだ合金に生じる非常に特徴的な現象として、電子部品等の接合時において、溶融したはんだが冷却されて凝固する際に膨張する現象を挙げることができる。この凝固時の膨張によって、はんだや電子部品等に残留応力が発生する。この残留応力が、接合強度や耐久性に何らかの悪影響を及ぼすことは明確である。
さらに、上記はんだ合金で接合されて製品となった電子部品には、使用時に断続的に電流が流されるため、これによって繰り返される加熱・冷却からも応力がかかる。例えばCu基板のCuと半導体素子のSiの熱膨張係数は約5倍も異なっており、加熱・冷却が繰り返し加わることによって熱応力が繰り返し加わることになる。このように、Biを主成分とするはんだ合金で接合された電子部品等の接合部は、凝固時の残留応力に加え、使用時の電流によって生ずる熱応力によってクラックが入りやすくなり、大きく信頼性を損なう問題を潜在的にかかえている。
この問題を解決するため、本発明では主成分であるBiに凝固時に収縮するZnを添加している。すなわち、凝固時に生ずるBiの体積膨張をほぼ打ち消す程度の量のZnを添加することによって、Biの膨張分をZnの収縮分で相殺し、はんだ全体としての体積変化を小さくしている。これにより、はんだ合金の残留応力を低減することが可能となる。
加えて、ZnはBiとNiとの反応を抑制し、脆いBi−Ni相の生成を抑え、これよって接合強度、信頼性等を向上させる効果も持ち合わせている。なお、Znは還元性が強いため、BiにZnのみを添加した2元系合金の場合は濡れ性が悪くなる場合がある。また、加工性に問題を生ずることもある。そのため、濡れ性をより向上させることが望まれる場合は、Sn、AlおよびPのうちの1種以上を適宜添加することが有効である。また、加工性をより向上させることが望まれる場合は、Alを適宜添加することが有効である。以下、かかる特徴的な効果を有する本発明のPbフリーはんだ合金に含まれる元素に関してより具体的に説明する。
<Bi>
Biは本発明の高温用Pbフリーはんだ合金の第1元素、すなわち主成分をなしている。BiはVa族元素(N、P、As、Sb、Bi)に属し、その結晶構造は、対称性の低い三方晶(菱面体晶)で非常に脆い金属であり、引張試験などを行うとその破面は脆性破面であることが容易に見て取れる。つまり純Biは延性的な性質に乏しく、実験結果ではBiの伸び率は、1.0%未満であった。また、Biは凝固時に膨張する金属であり、この凝固時の収縮率(−が膨張、+が収縮を意味する)は−3.2%〜−3.4%である。この膨張により残留応力が発生し、接合強度や信頼性が低下する。また、BiはNiと容易に反応し、脆い合金を生成し、接合性等が低下してしまうという問題も持っている。
このようなBiの脆さや凝固時の膨張による残留応力の問題、そしてNiとの反応による脆い相の生成の問題などを克服するため、後述する各種元素が添加される。添加する元素の種類や量は、Biが有する脆さ等の諸特性のうちどの特性をどの程度改善するかによって異なる。したがって、添加する元素の種類やその含有量に応じて、はんだ合金中のBiの含有量は必然的に変化する。なお、Va族元素の中からBiを選定した理由は、Va族元素はBiを除き、半金属、非金属に分類され、Biよりもさらに脆いためであり、加えて、Biは271℃の融点を有し、高温はんだの使用条件である約260℃のリフロー温度を超えており、後述する元素を添加しても実質的に260℃以上のリフローに耐えうるからである。
<Zn>
Znは本発明の高温用Pbフリーはんだ合金の第2元素であり、必須の添加元素である。BiにZnを添加することによって、脆さや接合強度、信頼性等が格段に改善する。さらに、Znの添加により、BiとNiの反応の抑制や、はんだ合金中へのNiの拡散の抑制が可能となる。これは、ZnはNiとの反応においてBiよりも反応性が高く、Ni層の上面に薄いZn−Ni層を作り、これがバリアーとなってNiとBiの反応を抑えることによる。その結果、脆いBi−Ni合金が生成されず、さらにはNiがBi中に拡散することもなく、強固な接合性を実現することができる。さらにZnはBiとの2元系合金において、固相温度が約255℃であり、Zn含有量に左右されず、実質的に260℃以上のリフローに耐えることが可能であることも、本発明の高温用Pbフリーはんだの第2元素としての選定理由である。
このような優れた効果を発揮するZnの最適な含有量は、電子部品の接合面積やはんだ厚み、Ni層の厚さやリフロー温度、リフロー時間等に左右されるものの、概ね21.0質量%以上30.0質量%以下である。このZnの含有量の範囲は、基本的にBiとZnの凝固時の収縮率により算出することができる。なお、この計算値は、後述するように、実施例で示す実験データにより裏づけされている。
すなわち、凝固時の収縮率はBiが−3.2%〜−3.4%であるのに対して、Znは+4.9%〜+6.8%である。これらの収縮率から凝固前後で体積が変わらないようにするためのZnの含有量を計算すると21.0〜30.0質量%となる。したがって、この範囲をはずれてZnを添加すると体積変化が大きくなって残留応力が増加し、その結果、接合強度の低下等の問題に繋がる。つまり、Znの含有量が21.0質量%未満では凝固時の膨張によって残留応力が発生する。一方、Znの含有量が30.0質量%を超えると逆に凝固時に収縮して残留応力を発生する。
Znの効果は上記した残留応力の緩和のみならず、加工性向上やBi−Niの過剰反応抑制などの効果も有する。すなわち、非常に脆いBiよりも高い延性を有するZnを添加することにより加工性が向上する。さらにすでに述べたように、BiよりもNiとの反応性に富むZnが存在することによりNi層の上面にNi−Zn層が生成される。その結果、BiとNiとの反応が抑制されて脆いBi−Ni相の生成が抑制されるとともに、Ni層のBi中への拡散が抑えられる。これらの効果は上記したZnの含有量の範囲内で良好に発揮される。
<Al>
Alは必要に応じて添加する元素であり、Alの添加によって、はんだ合金の濡れ性向上の効果と、加工性向上効果と、融点調整効果とを得ることができる。濡れ性が向上する理由は、AlはBiやZnより還元性が強いため、少量の添加であっても自らが酸化して濡れ性を改善することによる。
また、Alの添加によりはんだの加工性が向上し、より使い易いはんだ材料となる理由は、Bi−Znの2元系状態図を見れば分かるように、本発明のBi/Zn系合金には、Znの含有量を適宜調整することによって、Znリッチな相を発現させることができ、AlはこのZnリッチな相の加工性を変えることができることによる。また、AlはZnに固溶して加工性を向上させるとともに、共晶組成付近では結晶を微細化して加工性をさらに向上させることもできる。このためには、Alの含有量はZnに対して質量比で10分の1程度となるように添加するのが最適である。
Alの添加によって得られる効果は、上記した濡れ性向上および加工性向上に留まることなく、さらに融点調整にも大きな効果を発揮する。すなわち、Zn−Al状態図から分かるように、Alの添加によりZn−Al合金の液相温度を調整でき、Bi−Zn合金の融点とバランスを取りながらAlを適量添加することにより、いっそう使い易いはんだ材料を得ることができる。
このように、Alの添加は濡れ性、加工性そして融点調整の3つの特性を考慮しながら適量添加することになる。具体的には、はんだ合金中のAlの含有量が3.0質量%以下、好ましくは0.02質量%以上3.0質量%以下となるように添加する。Alにはんだ特性の改善効果を期待する場合、0.02質量%未満では効果が得られにくい。一方、3.0質量%より多くなると、融点の高いAlが偏析してしまい、接合性を落とすなどの問題が生じる。
<Sn>
Snは本発明の高温用Pbフリーはんだ合金の特性をさらに向上させたい場合に添加する元素である。Snは、はんだ合金の濡れ性を向上させる役割を担っている。また、Snのもう一つ重要な役割に、Ni拡散の抑制効果がある。すなわち、SnはZnよりもイオン半径が小さく、3元共晶を引き起こし易いため、Niとの反応性に富んでいる。加えて、SnはZnより還元性が弱く酸化しにくいため、Znの一部と置換すべくZnに比べて少量のSnを添加することによって、Ni拡散の抑制効果を確保しながら濡れ性を向上させることができる。
また、微量のSnを添加することによって、比較的多数の拡散サイトが形成され、これによりZnのZn−Ni合金化が促進される。その結果、Ni層の上に効率的にZn−Ni合金が形成され、Bi中へのNi拡散が抑制される。なお、当然のことながら、Sn自身もNi層の上面で合金化し、Ni拡散の防止に寄与する。以上のように、Snを添加することによってZnの含有量を減らすことができ、その結果、濡れ性を向上させることができる。なお、Bi−Snの2元系合金の場合は、Znよりも少量でNi拡散を抑制できるが、加工性を確保することが困難になる。
はんだ合金中の最適なSnの含有量は、10.0質量%以下、好ましくは0.3質量%以上1.5質量%以下である。Snに上記したはんだ合金の特性向上の効果を求める場合、0.3質量%未満では少なすぎてそれら効果が十分に現れない場合がある。一方、10.0質量%より多いと、リフロー時に液相の割合が多くなりすぎて電子部品が固定できず、電子部品が基板上で移動するなどの問題が起きるおそれがある。
<P>
Pは必要に応じて添加する元素であり、Pを添加することによって、Bi/Zn合金の濡れ性および接合性をさらに向上させることができる。この効果は、AlやSnが添加されている場合においても同様に発揮される。Pの添加により濡れ性向上の効果が大きくなる理由は、Pは還元性が強く、自ら酸化することによりはんだ合金表面の酸化を抑制することによる。
Pの添加は、さらに接合時にボイドの発生を低減させる効果がある。これは、Pは自らが酸化しやすいため、接合時にはんだの主成分であるBi、さらにはZnよりも優先的に酸化が進むことによる。これにより、はんだ母相の酸化が抑えられ、濡れ性を確保することができる。その結果、良好な接合が可能となり、ボイドの生成も起こりにくくなる。
Pは、前述したように非常に還元性が強いため、微量の添加でも濡れ性向上の効果を発揮する。逆にある含有量以上では添加しても濡れ性向上の効果は変わらず、過剰な添加ではPの酸化物がはんだ表面に生成されたり、Pが脆弱な相を作り脆化したりするおそれがある。したがって、Pは微量添加が好ましい。
具体的には、はんだ合金中のPの含有量が0.001質量%以上となるように添加するのが好ましく、その上限値は0.500質量%である。Pがこの上限値を超えると、その酸化物がはんだ表面を覆い、濡れ性を落とすおそれがある。さらに、PはBiへの固溶量が非常に少ないため、含有量が多いと脆いP酸化物が偏析するなどして信頼性を低下させる。とくにワイヤなどを加工する場合に、断線の原因になりやすいことを確認している。一方、Pの含有量が0.001質量%未満では期待する還元効果が得られず、添加する意味がない。
以上説明した本発明の高温用Pbフリーはんだ合金を、電子部品と基板との接合に使用することによって、ヒートサイクルが繰り返される環境などの過酷な条件下で使用される場合であっても、耐久性のある信頼性の高い電子基板を提供することができる。よって、この電子基板を、例えば、サイリスタやインバータなどのパワー半導体装置、自動車などに搭載される各種制御装置、太陽電池などの過酷な条件下で使用される装置に搭載することによって、それら各種装置の信頼性をより一層高めることができる。
原料として、それぞれ純度99.9質量%以上のBi、Zn、Al、およびSn、ならびに純度99.95質量%以上のPを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく均一になるように留意しながら切断、粉砕等を行い、3mm以下の大きさに細かくした。次に、高周波溶解炉用グラファイトるつぼに、これら原料から所定量を秤量して入れた。Pは溶融し難く、また酸化して揮発しやすいうえ、第2類の危険物であり、そのまま添加すると発火してしまうため、予めAlまたはBiと合金を作ってから砕いて再溶解させた。
原料の入ったるつぼを高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7L/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかにるつぼを取り出してるつぼ内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。鋳型には、はんだ合金の製造の際に一般的に使用している形状と同様のものを使用した。
このようにして各原料の混合比率を変えることにより試料1〜23のはんだ母合金を作製した。これら試料1〜23のはんだ母合金の組成を、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて分析した。その分析結果を下記の表1に示す。
Figure 0005589590
次に、上記表1に示す試料1〜23のはんだ母合金の各々に対して、下記に示すワイヤ加工性の評価、濡れ性(接合性)評価、ヒートサイクル試験、および大気中耐熱試験を行った。なお、はんだ合金の濡れ性等の評価は、通常、はんだ形状に依存しないため、ワイヤ、ボール、ペーストなどの形状で評価してもよいが、本実施例においては、ワイヤに成形して評価した。
<ワイヤ加工性の評価>
上記表1に示す試料1〜23のはんだ母合金を各々押出機にセットし、外径0.80mmのワイヤを加工した。具体的には、あらかじめ押出機をはんだ組成に適した温度に加熱しておき、各はんだ母合金をセットした。押出機出口から押し出されるワイヤ状のはんだは、まだ熱く酸化が進行し易いため、押出機出口は密閉構造とし、その内部に不活性ガスを流した。これにより、可能な限り酸素濃度を下げて酸化が進まないようにした。油圧で圧力を上げていき、はんだ母合金をワイヤ形状に押し出していった。ワイヤの押出速度はワイヤが切れたり変形したりしないように予め調整しておいた速度とし、同時に自動巻取機を用いて同じ速度で巻き取るようにした。
このようにしてワイヤ状に加工するとともに自動巻取機で60mを巻き取ったとき、1度も断線しなかった場合を「○」、1〜3回断線した場合を「△」、4回以上断線した場合を「×」として評価した。
<濡れ性(接合性)評価>
濡れ性(接合性)評価は、上記ワイヤ加工性の評価の際に得たワイヤ状のはんだ合金を用いて行った。まず、濡れ性試験機(装置名:雰囲気制御式濡れ性試験機)を起動し、加熱するヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部の周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。その後、ヒーター設定温度を340℃にして加熱した。
ヒーター温度が340℃で安定した後、Niメッキ層(膜厚:4.0μm)とその上層のAg蒸着層(膜厚:0.15μm)とが形成されたCu基板(板厚:約0.70mm)をヒーター部にセッティングし、25秒加熱した。次に、はんだ合金を上記Cu基板の上に載せ、25秒加熱した。加熱が完了した後はCu基板をヒーター部から取り上げてその横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦移して冷却した。十分に冷却した後、大気中に取り出して接合部分を確認した。接合できなかった場合を「×」、接合できたが濡れ広がりが悪かった場合(はんだが盛り上がった状態)を「△」、接合でき良好に濡れ広がった場合(はんだがCu基板に薄く広がった場合)を「○」と評価した。
<ヒートサイクル試験>
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験を行った。なお、この試験は、上記濡れ性評価と同様にして得たはんだ合金が接合されたCu基板を用いて行った。まず、はんだ合金が接合されたCu基板に対して、−40℃の冷却と150℃の加熱を1サイクルとして、これを300サイクルと500サイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(装置名:HITACHI S−4800)により接合面の観察を行った。接合面に剥がれやはんだにクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。
<大気中耐熱試験>
はんだ接合の信頼性を評価するために大気中耐熱試験を行った。なお、この試験は、ヒートサイクル試験で用いた試料と同様のはんだ合金が接合されたCu基板を用いて行った。まず、150℃に加熱したオーブンに試料を入れ、1000時間経過後、取り出した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(装置名:HITACHI S−4800)により接合面の観察を行った。接合面に剥がれやはんだにクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。上記の評価および試験の結果を表2に示す。
Figure 0005589590
上記表2から分かるように、本発明の要件を満たしている試料1〜15のはんだ母合金は、各評価項目において良好な特性を示している。つまり、ワイヤに加工しても切れることなく自動巻き取りができ、良好な加工性を示した。また、Ag蒸着している面への濡れ性は非常に良好であり、とくにPを添加した試料は非常に濡れ広がり方が早く、試料がCu基板に接した瞬間に薄く濡れ広がった。信頼性に関する試験である、ヒートサイクル試験および大気中耐熱試験においても良好な結果が得られており、ヒートサイクル試験では500サイクル経過後も不良は現れず、大気中耐熱試験では1000時間経過後でも不良が現れなかった。
一方、本発明の要件を満たしていない比較例の試料16〜23のはんだ母合金は、少なくともいずれかの特性において好ましくない結果となった。つまり、ワイヤに加工した際に少なくとも1回以上は断線し、Ag蒸着している面への濡れ性も悪いものが多かった。ヒートサイクル試験では500回までに全ての試料で不良が発生し、特に試料18〜23では300回までに不良が発生した。大気中耐熱試験では1000時間経過後、全ての試料で不良が発生した。

Claims (2)

  1. はんだ接合面がNi層で構成される部材の接合に用いるPbフリーはんだ合金であって、Znを21.0質量%以上30.0質量%以下含有し、Alは1.0質量%以上含有しておらず、Snは10.0質量%を超えて含有しておらず、Pは0.5質量%を超えて含有しておらず、残部がBiからなることを特徴とするPbフリーはんだ合金。
  2. Al、SnおよびPのうちの1種以上が、Alの場合は0.02質量%以上、Snの場合は0.3質量%以上、Pの場合は0.001質量%以上含まれていることを特徴とする、請求項1に記載のPbフリーはんだ合金。
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