JP4401754B2 - 熱電変換モジュールの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基板と熱電材料とをはんだ接合してなる熱電変換モジュールの製造方法に係り、とくに、はんだ接合部の高温強度向上に関する。
熱電半導体モジュールは、熱電材料であるp型半導体素子とn型半導体素子とを一対の基板の対向面側に設けられた電極を介して、p、nの素子が電気的に直列になるように、基板により挟持されたもので、ゼーベック効果を利用して独立した電源又は補助電源として、あるいはペルチェ効果を利用して、各種機器や光通信用レーザの温度制御用として用いられている。このような熱電半導体モジュールは、組み立ての際の半導体素子と電極の接合工程や、モジュールの機器への実装工程などで、はんだを用いて接合されることが多い。
使用するはんだとしては、例えば、共晶温度が183 ℃であるPb−Sn共晶合金が一般的である。しかし、最近ではPbの環境汚染の問題から、Pb−Sn共晶合金のような鉛含有合金ではなく、鉛フリーの合金を用いることが要望されている。このようなはんだは、Pb−Sn共晶合金と比べると、共晶温度または固相線温度が高い。
またさらに、熱電変換モジュールを実装する際のはんだについても、鉛フリーはんだとする要請があることから、共晶温度または固相線温度の高いものが選択される結果、実装温度も高くなる。つまり、モジュール本体は、 例えば240 ℃以上といった実装温度以上の耐熱性があることが必要となる。なお、実装温度は、共晶温度または固相線温度から20〜30℃高い範囲内で設定することが多い。ところが、上記したPb−Sn共晶合金を用いたモジュールを、かかる鉛フリーはんだを用いて高温で実装した場合、実装時にモジュールのはんだ接合部が融解する。接合部が再溶融すると、はんだが基板等と反応して金属間化合物を生成して脆くなり、接合部の信頼性が低下したり、溶融時に半導体素子が移動してショートするなどの問題があった。
また、例えば、光通信装置などに使用する半導体レーザモジュール内には、温度制御用としてぺルチェモジュールが組み込まれている。半導体レーザモジュールにおいては、半導体レーザ素子とレンズ等をパッケージ内に一体的に収容して光ファイバーに結合するようになされている。半導体レーザはその雰囲気温度が変化すると波長が変化するため、半導体レーザモジュール内にぺルチェモジュールを備えて半導体レーザ素子の温度を制御している。
ぺルチェモジュールは、一般に、放熱側基板となる一方の基板を電子装置の底蓋に接合し、冷却側基板となる他方の基板の上に、半導体レーザ素子を接合することにより搭載される。ぺルチェモジュール本体に用いられるはんだは、レーザモジュールの電子装置への実装時に融けないように、ぺルチェモジュールと電子装置を接合する接合材の実装温度より高い共晶温度もしくは固相線温度を有するはんだを用いる必要がある。例えば、特許文献1には、ぺルチェモジュールの電子装置への搭載をPb-Sn合金(融点183 ℃)を220 〜230 ℃程度に加熱して接合すること、およびぺルチェモジュール内の半導体素子とセラミック基板との接続に、これよりも融点の高い、Sn-Sb系はんだ(融点235〜240℃)を使用することが従来技術として紹介されている。これらぺルチェモジュールとパッケージの実装に用いられるPb-Sn系合金の代替として有力な鉛フリーはんだである、Sn−Ag−Cuはんだは共晶温度が217 ℃、Sn−Agはんだは共晶温度が221 ℃である。これらはんだの実装温度は約250℃となるため、上記したSn−Sb系はんだでは実装中に再溶解する。したがって、ぺルチェモジュール本体に用いられるはんだは、これらより高い共晶温度もしくは固相線温度を持つものとする必要がある。
熱電変換モジュールの実装に、このような比較的実装温度(共晶温度もしくは固相線温度)の高い鉛フリーはんだを使用すると、先の工程で接合される別の部位では、このはんだより高い共晶温度もしくは固相線温度のはんだを使用せざるを得ない。このような共晶温度もしくは固相線温度が高いはんだとしては、Pb−5Sn合金(固相線温度:310 ℃)、Au−20Sn合金(固相線温度:280 ℃)(非特許文献1参照)がある。これらはんだは、240 ℃でも融解することはなく、実装温度の上昇には有効である。
特開2003-110154 号公報 溶接学会編:第2版 溶接・接合便覧、平成15年2月25日発行、丸善株式会社、第416 頁〜第423 頁
しかしながら、Pb−5Sn 合金は鉛含有合金であり、またAu−20Sn合金は延性が低い。このため、熱電変換モジュールのような温度差の大きい環境下では、接合部に大きな熱応力が負荷されるため、はんだ接合部の延性が不足して、素子自体の信頼性、耐久性が不足するという問題があった。
本発明は、上記したような従来技術の問題を解決し、信頼性、耐久性に優れた熱電変換モジュールの製造方法を提供することを目的とする。 なお、本発明でいう「熱電変換モジュール」とは、冷却・ 発熱作用を有するペルチェモジュール、熱発電作用のある熱発電モジュールを包含するものとする。
本発明者らは、熱電変換モジュールの接合部の信頼性を向上させるため、高温強度、耐クリープ性、耐熱サイクル性に及ぼす各種要因の影響について検討した。その結果、接合材として、固相線温度がマトリックス相より高い第2相を分散させたはんだを用いて、接合部を接合することにより、接合部の高温強度、耐クリープ性が向上し、また基板とはんだとの界面に化合物相の生成がなく、接合部の信頼性が顕著に向上することを見出した。
本発明は、上記した知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)熱電材料と、片面に電極パターンを有する一対の基板とを備え、該熱電材料を該一対の基板の間に配設し、該熱電材料の接合端と前記電極パターンとをはんだを用いて接合してなる熱電変換モジュールの製造方法であって、前記はんだが、マトリックス相中に1種以上の分散相を分散させた組織を有し、該分散相が前記マトリックス相の固相線温度より高い固相線温度を有するはんだであることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(2)(1)において、前記マトリックス相の固相線温度が240 ℃以上であることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(3)(1)または(2)において、前記分散相が球形であることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記分散相が、平均粒径で5μm 以下の微細相であることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記はんだが、前記分散相の体積分率が40%以下となる組成を有する合金からなることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(6)(5)において、前記合金が、Bi−Cu−X基合金またはBi−Zn−X基合金であることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(7)(6)において、前記Bi−Cu−X基合金が、質量%で、Cu:1〜40%を含み、Xとして、Zn:2〜30%、Al:0.5〜8%、Sn:10〜20%、Sb:3〜35%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Biおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(8)(6)において、前記Bi−Zn−X基合金が、質量%で、Zn:1〜60%を含み、Xとして、Ag:3〜30%、Al:1〜20%、Sb:6〜18%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Biおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(9)(1)ないし(8)のいずれかにおいて、前記はんだが、液体急冷して得られた前記分散相を分散させた組織を有する粉体または薄帯であることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(10)(1)ないし(9)において、前記熱電材料の接合端と前記電極パターンとのはんだによる接合が、液体急冷法により作製された平均粒径が100μm以下の粉末をはんだペーストとして用いた接合であることを特徴とする熱電変換モジュール熱電変換モジュールの製造方法
(11)(1)ないし(9)において、前記熱電材料への接合端と前記電極パターンとのはんだによる接合が、液体急冷法により作製された平均膜厚が500μm以下の薄帯を前記基板上の電極パターン上に配置して行う接合であることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
(12)(1)ないし(11)のいずれかにおいて、前記熱電材料が、BiおよびSbのうちの少なくとも1種とTeおよびSeのうちの少なくとも1種とからなる組成を有することを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法。
本発明によれば、熱電変換モジュール接合部の高温強度、耐クリープ性が向上し、デバイスの実装温度が高温の場合や、また使用環境が厳しい場合でも、熱電変換モジュールの信頼性、耐久性を高く維持でき、産業上格段の効果を奏する。
図5に本発明の熱電変換モジュール10の一例を示す。本発明の熱電変換モジュール10は、p型半導体素子1bとn型半導体素子1aからなる少なくとも一対、好ましくは複数対の熱電材料10aと、片面に電極パターンを有する一対の基板2a,2b とを備え、この一対の基板に形成された電極パターン3a,3b に、p型半導体素子1bとn型半導体素子1aとを交互に電気的に直列になるように配置し、はんだにより接合した接合部(層)4a,4b を有してなる構成のモジュールである。すなわち、各熱電材料の接合端と電極パターンとの間には、はんだからなる接合部(層)4a、4bが存在する。なお、端部のp型半導体素子、n型半導体素子を接合した電極には、電源供給用(あるいは電力取出し用)リード線(図示せず)が接続されることはいうまでもない。なお、熱電材料(半導体素子)とはんだとの接合層には、Ni、Au等などのはんだ成分の拡散防止層を設けてもよい。
使用する熱電材料は、熱電変換モジュールの用途によって異なるが、ペルチェ素子として熱電冷却・熱電加熱に利用する場合や300 ℃以下の熱電発電に利用する場合には、キャリア制御してp型、n型とした、BiおよびSbのうちの少なくとも1種とTeおよびSeののうちの少なくとも1種とからなる組成を有する材料とすることが好ましい。このような材料としては、例えば、Bi2Te3系化合物、Sb2Te3系化合物が存在し、Bi1.9Sb0.1Te2.7Se0.3、Bi0.4Sb1.6Te3 等の組成が例示される。また、300 ℃を超える温度での熱電発電に利用する材料としては、例えば、FeSi2 系化合物、Na−Co−O系化合物、CoSb3が例示できる。
また、基板は、アルミナ(Al2O3 )、窒化アルミ(AlN )、炭化珪素(SiC )等のセラミック材、あるいはAl等の金属材料の表面に絶縁膜を設けたものとすることが好ましい。基板上には、好ましくは銅めっきとエッチングにより、所望形状の電極パターンが形成されている。この形成された電極パターンに、熱電材料である複数のp型半導体素子とn型半導体素子とを、交互に電気的に直列になるように、はんだにより接合する。なお、電極には、接合性向上のために銅めっきの表面にNiめっきまたはAuめっきを施すことが好ましい。
本発明の熱電変換モジュールの製造方法で使用するはんだは、マトリックス相中に1種以上の分散相を分散させた組織を有するはんだとする。このはんだは、分散相がマトリックス相と異なる1種以上の組成を有し、かつマトリックス相の固相線温度より高い固相線温度を有する。さらに、分散相は球形で、好ましくは平均粒径5μm 以下の微細相とすることが好ましい。これにより、実装後の接合部にもマトリックス相中にマトリックス相より高い固相線温度を有する微細な分散相が分布した組織となり、接合部の高温強度を高強度化でき、しかも耐クリープ特性が顕著に向上し、接合部の信頼性が向上する。
図1に、Bi−Cu−Sb系合金(70質量%Bi−10質量%Cu−20質量%Sb)における、試験温度:100 ℃でのクリープ特性(負荷応力と破断時間の関係)に及ぼすマトリックス相中に分散する分散相の平均粒径の影響を示す。なお、Sn−5Sb 合金(固相線温度:232 ℃)のクリープ特性も併記する。図1から、Sn−5Sb 合金(固相線温度:232 ℃)以上の耐クリープ特性を確保するためには、分散相の大きさを平均粒径で5μm 以下とすることが好ましいことがわかる。
また、本発明の熱電変換モジュールの製造方法で使用するはんだのマトリックス相は、240 ℃以上の固相線温度を有することが好ましい。使用するはんだのマトリックス相固相線温度が240 ℃以上とすることにより、熱電変換モジュールの実装に、鉛フリーはんだであるSn−5Sb 合金(固相線温度:232 ℃)が使用できる。
また、本発明で接合に用いるはんだは、分散相の体積分率が40%以下となる組成を有する合金とすることが好ましい。このような組成を有する合金であれば、マトリックス相と1種以上の分散相からなる組織を容易に形成でき、しかも分散相をマトリックス相固相線温度より高い固相線温度を有する相とすることができる。このような合金としては、Bi−Cu−X基合金、Bi−Zn−X基合金等が挙げられる。
なかでも、Bi−Cu−X基合金は、第三元素Xとして、所定量の、Zn、Al、Sn、Sbのうちから選ばれた1種または2種以上を含有することにより、広範囲に、高融点相が分散した組織が得られるようになる。Bi−Cu−X基合金では、質量%で、Cu:1〜40%を含み、第三元素Xとして、質量%で、Zn:2〜30%、Al:0.5〜8%、Sn:10〜20%、Sb:3〜35%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Biおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。また、Bi−Zn−X基合金では、質量%で、Zn:1〜60%を含み、第三元素Xとして、質量%で、Ag:3〜30%、Al:1〜20%、Sb:6〜18%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Biおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
なお、Bi−Cu−X基合金、Bi−Zn−X基合金では、第三元素Xがそれぞれ上記した範囲を外れると、マトリックス相とマトリックス相の固相線温度より高い固相線温度を有する1種以上の分散相を分散させた組織を形成できなくなる。
本発明で接合に用いるはんだの組織写真の一例を図2、図3に示す。図2に示す例は、単ロール液体急冷法により作製されたBi−Cu−Sb系合金(70質量%Bi−10質量%Cu−20質量%Sb)薄帯の場合である。図3に示す例は、ガスアトマイズ法で作製されたBi−Cu−Zn系合金(70質量%Bi−20質量%Cu−10質量%Zn)粉末の場合である。
図2、図3に示す組織では、いずれも白いマトリックス相がBiリッチ相であり、固相線温度が240℃以上、マトリックス相内に分散する黒い微細粒が高い固相線温度を有する分散相であり、図2の場合はCu−Sb系化合物、図3の場合は、Cu−Zn系化合物であることが電子線マイクロアナライザー(EPMA)による分析で明らかとなっている。
つぎに、図4に示差熱分析結果を示す。図4に示す例は、Bi−Cu−Sb系合金(55質量%Bi−15質量%Cu−30質量%Sb)粉末の場合である。昇温過程における最初の変態ピークは305℃付近にあり、これがマトリックス相の固相線温度である。さらに昇温を続けると560℃付近に次のピークがあり、これが分散相の固相線温度を示している。
本発明で接合に用いるはんだは、上記した組織を有し、粉末時平均粒径が100μm 以下の略球形の粉末とすることが好ましい。粉末時平均粒径が100μm を超えて大きくなると、マトリックス相中に分散する分散相が粗大化し、5μm 以下の微細な分散相とならず、接合部(層)の高温強度、耐クリープ特性が低下する。なお、分散相の大きさは、好ましくは1μm 以下である。はんだが粉末の場合には、はんだ粉末に、フラックス、増粘材、溶媒を添加してはんだペーストとして用いることが好ましい。
また、本発明で接合に用いるはんだは、上記した組織を有し、平均膜厚500μm以下の薄帯とすることが好ましい。平均膜厚が500μmを超えて厚くなると、マトリックス相中に分散する分散相が粗大化し、5μm 以下の微細な分散相とならない。
このようなはんだを製造するには、まず上記した組成を満足する合金の溶湯を、溶製する。溶製方法は、公知の方法がいずれも適用できる。ついで、この合金溶湯を、液体急冷法により、急冷する。これにより、マトリックス相中に微細な分散相が分散した組織を有するはんだが得られる。
液体急冷法としては、アトマイズ法があり、合金溶湯を高圧の流体で噴霧・急冷して微細粉末とする。アトマイズ法では、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、真空アトマイズ等があるが、いずれも本発明のはんだ粉末の製造には好適である。アトマイズ法以外の液体急冷法としては、単ロール液体急冷法、双ロール液体急冷法、回転ディスク法等があり、いずれも本発明のはんだ薄帯の製造に適用できる。各急冷法を図6(a)〜図6(d)に模式的に示す。(a)はアトマイズ法、(b)は単ロール液体急冷法、(c)は双ロール液体急冷法、(d)は回転ディスク法である。
次に、 熱電変換モジュールの好ましい作製方法について説明する。
まず、一対の基板と、熱電材料である複数のp型半導体素子とn型半導体素子を用意する。基板には、複数のp型素子とn型素子とが交互に直列に電気的に接合できるように所望の電極パターンが形成されている。また、半導体素子の電極パターンとの接合面にははんだ拡散防止のためにNiめっきが、さらにその上層として、Niめっきの酸化防止のためにAuめっきが施されることが好ましい。なお、熱電材料、基板は熱電変換素子の用途に応じて上記したような適正な材料を選択するものとする。
用意した一対の基板、複数対の熱電材料と、上記したはんだを用いて、つぎのような(1)〜(4)の各工程を順次経て、熱電変換モジュールとすることが好ましい。
使用するはんだは、上記した組織、さらには組成を有する合金粉末、あるいは薄帯状合金材とすることが好ましい。はんだが、粉末の場合ははんだペーストとし、薄帯の場合は電極サイズにカットしたものを用いる。
(1)はんだ塗布工程
基板に形成された電極パターン、および/または半導体素子(熱電材料)の接合端部に、はんだペーストを塗布する。はんだペーストの塗布は、はんだディスペンサー等を用いて行うことが好ましい。一点ずつ、接合箇所に塗布してもよいが、スクリーン印刷法、転写法等を利用して、すべての接合箇所に一括して塗布してもよい。一方、薄帯状はんだを用いる場合には、基板上の電極パターンにはんだの濡れ広がり性を向上させるためにフラックスを塗布したのち、電極サイズにカットした薄帯状はんだを電極パターン上に、または熱電材料の接合端に載せておく。
(2)成形工程
一対の基板のうちの一方の電極パターンの所定の箇所に、熱電材料の一方の接合端が接するように複数のp型およびn型半導体素子(熱電材料)をそれぞれ実装したのち、これら半導体素子(熱電材料)を挟むように、かつ半導体素子(熱電材料)の他方の接合端と電極パターンの所定の箇所が接するように、一対の基板のうちの他方を配置し、成形品とする。
(3)リフロー工程
成形品をリフロー炉に装入し接合部の実装を行い、組立品とする。リフロー条件は、フラックス溶媒成分が揮発する温度に加熱したのち、はんだが溶解する温度に加熱する、多段加熱とすることが好ましい。はんだを溶解する温度としては、(はんだの固相線温度+30℃)が望ましい。
(4)リード付け工程
リフロー処理後の組立品(熱電変換モジュール)に電源用リードを実装したのち、フラックスを洗浄し最終製品とする。
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す組成のBi−Cu−X系合金、Bi−Zn−X系合金、Sn−Sb系合金、Au−Sn系合金を高周波コイルで溶解し、ガスアトマイズ法あるいは単ロール液体急冷法で、噴霧条件を表1に示す条件に調整して粉末(粉体)または薄帯とした。なお、マトリックス相と組成の異なる第二相(分散相)の体積分率は、実験状態図や計算状態図から求め、表1に併記して示す。
得られた粉末または薄帯について、断面組織を観察し、分散相の形成状況(分散相の平均粒径)を測定するとともに、マトリックス相と分散相の固相線温度を測定した。マトリックス相と分散相の固相線温度の測定は、示差熱分析法により行った。得られた結果を表1に併記した。
得られた粉末を、 篩により粒径100μm 以下の粉体に分級し、これら粉末に溶媒と、フラックス、増粘剤を添加してはんだペーストとした。また、得られた薄帯を、電極パターンサイズに切断した。
ついで、片面に銅めっき(厚さ:100 μm )したのち、不要な部分をエッチングにより削除して所定の電極パターンを形成した基板(アルミナ)を一対、用意した。さらに、熱電材料として、p型:Bi0.4Sb1.6Te3、n型:Bi1.9Sb0.1Te2.7Se0.3からなるp型、n型のBi2Te3系化合物半導体素子を15対用意した。なお、熱電材料の接合端にはNiめっきおよびAuめっきが施されている。
ついで、基板の電極パターンにディスペンサを用いて、表1に示す各合金のはんだペーストを塗布するはんだ塗布工程、またはフラックスを塗布したのち、電極パターンサイズに切断したはんだ薄帯を電極上に載せるはんだ塗布工程を施した。ついで、はんだペーストが塗布された電極パターンまたははんだ薄帯が載せられた電極パターンの所定の位置に、p型半導体素子、n型半導体素子を交互にかつ電気的に直列に接続されるように、実装したのち、これら半導体素子(熱電材料)を挟むように、かつ半導体素子(熱電材料)の他方の接合端と電極パターンの所定の箇所が接するように、一対の基板のうちの他方を配置し、成形品とする成形工程を施した。
ついで、これら成形品をリフロー炉に装入し、接合部の実装を行い、組立品とするリフロー工程を施した。なお、リフロー温度は、表2に示す温度(固相線温度+30℃)に設定した。リフロー工程後、電源供給用電極を実装し、製品(熱電変換モジュール)とした。
得られた熱電変換モジュールを用いて、熱冷サイクル試験を実施した。また、熱冷サイクル試験後にモジュール特性評価を行った。熱冷サイクル試験は次の通りとした。
(1)熱冷サイクル試験
各熱電変換モジュールに、最高温度を85℃とし、最低温度を−40℃とするサイクルを5000回負荷し、負荷後熱電変換モジュールの交流抵抗ACRの変化率を求め、熱電変換モジュールの信頼性を評価した。
(2)モジュールの耐熱温度
モジュールの耐熱温度を、完成したモジュールから一対の基板、電極、はんだ、半導体素子を有する部位を切り出し、示差熱分析にて、溶融温度を測定して求めた。
(3)モジュール特性評価
サイクル試験後熱電変換モジュールについて、最大温度差測定と熱発電変換効率測定を実施した。最大温度差測定は、モジュールの高温端を100℃とした際の両基板間の最大付与温度差を測定した。
熱発電変換効率測定はモジュールの高温端を220℃、低温端を50℃とした際の投入熱量Qに対する熱発電力Pの比率を熱発電変換効率η=P/(Q+P)として測定した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0004401754
Figure 0004401754
本発明例はいずれも、耐熱温度も高く、熱冷サイクル試験後のACRの変化率も少ない。これに対し、本発明の範囲を外れるはんだNo.34を用いて接合した熱電変換モジュールは、耐熱温度が215℃と低く、熱冷サイクル試験後のACRの変化率が大きいことがわかる。また、はんだNo.34を用いて接合した熱電変換モジュールは、熱発電変換効率測定では高温端温度がモジュール耐熱温度を上回ったため測定不能となった。また、本発明の範囲を外れるはんだNo.35を用いて接合した熱電変換モジュールはACR変化率が5%を上回り、かつ熱電変換効率測定にて4.2%と他に比較し悪いことから熱電変換モジュールが劣化していることがわかる。
本発明は、半導体製造工程の機器や光通信用レーザの精密温度制御用以外にも、無線通信素子の冷却、微小電力発電用などにも利用できる
はんだのクリープ特性に及ぼす分散相の大きさの影響を示すグラフである。 本発明ではんだとして使用する薄帯の断面組織の一例を示す組織写真である。 本発明ではんだとして使用する粉末の断面組織の一例を示す組織写真である。 本発明ではんだとして使用する粉末の示差熱分析により得られた、変態ピークを示すグラフである。 熱電変換モジュールの一例を模式的に示す説明図である。 (a)はアトマイズ法、(b)単ロール液体急冷法、(c)双ロール液体急冷法、(d)回転ディスク法をそれぞれ模式的に示す説明図である。
符号の説明
1a n型半導体素子(熱電材料)
1b p型半導体素子(熱電材料)
2a, 2b 基板
3a,3b 電極パターン
4a,4b 接合部(層)
10 熱電変換モジュール
1 真空チャンバー
2 排気ポンプ
3 雰囲気ライン導入ライン
4 射出ノズル
5 高周波加熱コイル
6 射出ガス導入ライン

Claims (12)

  1. 熱電材料と、片面に電極パターンを有する一対の基板とを備え、該熱電材料を該一対の基板の間に配設し、該熱電材料の接合端と前記電極パターンとをはんだを用いて接合する熱電変換モジュールの製造方法であって、前記はんだが、マトリックス相中に1種以上の分散相を分散させた組織を有し、該分散相が前記マトリックス相の固相線温度より高い固相線温度を有するはんだであることを特徴とする熱電変換モジュールの製造方法
  2. 前記マトリックス相の固相線温度が240 ℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換モジュールの製造方法
  3. 前記分散相が球形であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱電変換モジュールの製造方法
  4. 前記分散相が、平均粒径で5μm 以下の微細相であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法
  5. 前記はんだが、前記分散相の体積分率が40%以下となる組成を有する合金からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法
  6. 前記合金が、Bi−Cu−X基合金またはBi−Zn−X基合金であることを特徴とする請求項5に記載の熱電変換モジュールの製造方法
  7. 前記Bi−Cu−X基合金が、質量%で、Cu:1〜40%を含み、Xとして、Zn:2〜30%、Al:0.5〜8%、Sn:10〜20%、Sb:3〜35%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Biおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項6に記載の熱電変換モジュールの製造方法
  8. 前記Bi−Zn−X基合金が、質量%で、Zn:1〜60%を含み、Xとして、Ag:3〜30%、Al:1〜20%、Sb:6〜18%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部Biおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項6に記載の熱電変換モジュールの製造方法
  9. 前記はんだが、液体急冷して得られた前記分散相を分散させた組織を有する粉体または薄帯であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法。
  10. 前記熱電材料の接合端と前記電極パターンとのはんだによる接合が、液体急冷法により作製された平均粒径が100μm以下の粉末をはんだペーストとして用いた接合であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法
  11. 前記熱電材料の接合端と前記電極パターンとのはんだによる接合が、液体急冷法により作製された平均膜厚が500μm以下の薄帯を前記基板上の電極パターン上に配置して行う接合であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法
  12. 前記熱電材料が、BiおよびSbのうちの少なくとも1種とTeおよびSeのうちの少なくとも1種とからなる組成を有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の熱電変換モジュールの製造方法
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