JP5586469B2 - 炭素質フィルムの製造方法、およびグラファイトフィルムの製造方法 - Google Patents

炭素質フィルムの製造方法、およびグラファイトフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子機器、精密機器などにおいて放熱部材として使用される炭素質フィルムの製造方法に関する。
グラファイトは抜群の耐熱性、耐薬品性、熱伝導性、電気伝導性、低ガス透過性のため熱拡散・放熱材料、耐熱シール材、ガスケット、燃料電池用セパレータ等として広く使用されている。グラファイトはa−b面方向と、c軸方向でその熱的・電気的性質が大きく異なり、a−b面方向とc軸方向の熱伝導度の異方性は50〜400倍に達する。グラファイト放熱フィルムは、この様な性質を利用して、発生した熱をすばやく広範囲に拡散させるために使用される。放熱用途として用いられるグラファイトの製造方法として、以下に述べる二つの方法がある。
その一つは、一般に膨張グラファイト法と呼ばれる方法である。これは天然グラファイト鉛を硫酸などの強酸で処理することで層間化合物を形成させ、これを加熱・膨張させた際に生じる膨張グラファイトを圧延したシート状のグラファイトのフィルムを得る方法である(以下本発明ではこの方法で作製されたグラファイトフィルムを膨張グラファイトフィルムと呼ぶことにする)(非特許文献1)。
この様な膨張グラファイトフィルムは面状方向に100〜400W/(m・K)程度の熱伝導度を示し、放熱材料として使用されている。放熱材料として見た膨張グラファイトフィルムには、大面積シートの作製が容易であるという長所がある反面、400W/(m・K)以上の熱伝導度の実現は困難、50μm以下の薄いフィルムの作製が困難であるという欠点がある。
もう一つの方法は、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、またはポリアミド等の高分子フィルムをアルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下や真空下で熱処理する高分子熱分解法(特許文献1、2、3)である。この方法では、これらの高分子フィルムを、例えば不活性ガス中、好ましくは窒素ガス中で1000℃程度の予備加熱を行なってガラス状の炭素質フィルムを調製する炭化工程と、その後に調製した炭素質フィルムを2400℃以上の温度で処理する黒鉛化工程の二つの工程を経ることによってグラファイトフィルムが得られる。放熱材料として見た場合、高分子グラファイトフィルムは、600〜1800W/(m・K)の非常に高い熱伝導度を示し、薄いシートの作製が可能で25μm以下のシートも容易に作製できる、という長所がある反面、大面積シートの作製が困難であるという欠点がある。
この高分子熱分解法によるグラファイトフィルムの製造方法として、
(方法1)枚葉の原料フィルムを黒鉛板に挟んで熱処理する方法
(方法2)長尺の原料フィルムを円筒に巻き付けて熱処理する方法
の二つの方法が知られている。より詳細にその方法を説明すると以下の通りである。
(方法1)枚葉の原料フィルムを黒鉛板に挟んで熱処理する方法
特許文献1、2の実施例1、2には、以下のように、枚葉で原料フィルムを熱処理する方法が開示されている。25ミクロンのPAフィルム(ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド))、PI(ポリ(ピロメリットイミド)) 、PBI(ポリ(m−フェニレンベンゾイミダゾール)) 、PBBI(ポリ(m−フェニレンベンゾビスイミダゾール))をステンレスの枠に固定し、電気炉を用いて、アルゴン中毎分10℃ の速度で室温から700℃まで予備的な加熱処理が行われる。ステンレスの枠がない場合、PAフィルムはこの温度領域でもとの寸法の50%に縮むので、ステンレス枠による固定は結果的に張力を加えながら予備加熱処理をしたことを意味する。この様にして予備熱処理したフィルムは、黒鉛板でサンドイッチされ、アルゴン気流中、毎分10℃ の速度で昇温し、所望の温度(Tp)で1時間熱処理される。次に、熱処理後毎分20℃ の降温速度で冷却される。使用される炉は、カーボンヒーターを用いた電気炉である。得られた黒色のフィルムはTpが1400℃ 以下ではもろくフレキシビリティのないものであるが、1800℃ 以上ではフレキシビリティのあるフィルムである。
(方法2)長尺の原料フィルムを円筒に巻き付けて熱処理する方法
特許文献3の実施例1には、以下のように、長尺の原料フィルムを円筒に巻き付けて熱処理する方法が開示されている。幅180mm・厚さ50μmのPODフィルムを外径68mm・内径64mm・長さ200mmのグラファイト質炭素円筒に3重に巻き付け(3枚重ねており、3周に巻き付けているのではない)、アルゴン気流中で室温より毎分10℃ の速度で昇温し、所望の温度Tpで1時間処理し、その後、毎分20℃ の速度で降温が行われる。使用される炉は、進成電炉社製46−6型カーボンヒーター炉である。得られた黒色のフィルムは熱処理温度Tpが1600℃ 以下ではもろくフレキシビリティのないものであるが、1800℃ 以上ではフレキシビリティのあるフィルムである。フィルムの大きさは170×180mmである。また、特許文献4では、原料フィルム同士の融着を防ぐために、セパレータとしてのフィルムを共に円筒に巻きつけて同時に熱処理を行なう方法を提案している。更に、特許文献4の発明が解決しようとする課題の部分には、セパレータを用いなければ円筒の円周以上の長さのグラファイトフィルムを得ることが困難であることが記載されている。
特開昭61−275116号公報 特開昭61−275117号公報 特開昭63−256508号公報 特開平5−132360号公報
炭素材料の新展開、日本学術振興会 炭素材料 第117委員会 60周年記念出版
高分子熱分解法で得られたグラファイトフィルムは、高い熱伝導率と薄さを有しており、膨張グラファイトフィルムと比較して省スペースで高い放熱効果が期待できる。電子機器の薄型化・高密度実装化が進む昨今の状況においては、狭いスペースにおいても効率的に熱を放熱できることは大きな利点となる。しかし高分子グラファイトフィルムは大面積化が困難であり、その高い能力にも関わらず使用が小型機器の一部等に制限されていた。従来品の高分子グラファイトフィルムを大面積部分に使用する場合は、何枚ものグラファイトフィルムを貼り合わせて使用する必要があった。つなぎ合わせた部分は大きな熱抵抗となるため、長所となる高熱伝導率が生かせなくなってしまい、また製造コストの観点から見ても大きな欠点となってしまっていた。
枚葉型の原料フィルムを焼成してグラファイトフィルムを得る方法は、作製可能なグラファイトのサイズが炉の焼成部の内寸で限定されてしまうため、大面積のグラファイトフィルムを作製するという目的には不向きであった。一方、長尺の原料フィルムを巻芯に巻き付けて焼成する方法は、枚葉タイプでは得られない大面積および長尺のグラファイトフィルムを簡便に得られるという点で大変に優れている。しかし、円筒容器による焼成方法には以下のような問題点があった。
前述のように高分子フィルムを焼成してグラファイトフィルムを得るには途中段階で非常に機械的強度が弱いガラス状の炭素質フィルムを経る必要がある。この炭化工程ではフィルムが元の原料フィルムの長さの6〜8割ほどに収縮する。長尺のグラファイトフィルムを得るために巻芯への巻数が多くなってくると、炭化過程でフィルム同士が収縮と同時に割れてしまったり、フィルム同士が融着を起こしてしまったりするという大きな問題点があった。一度融着を起こしてしまった炭素質フィルムは、その後の黒鉛化過程においても元に戻ることはなく、結果として割れたグラファイトフィルムや、表面状態が極めて悪いグラファイトフィルムが得られてくる。以上の理由のため、巻芯に巻き付けた状態で製造できるグラファイトフィルムには長さの限界があった。
また、上記特許文献4(特開平5−132360)の方法では、原料フィルム同士の割れおよび融着を防ぐために、フィルム状のセパレータと共に円筒状に巻きつけて熱処理を行なう方法を提案している。しかし、この方法では、原料フィルムと同じ面積のセパレータを用いる必要があるため、炭素質フィルムの生産効率が極端に悪くなってしまう。例えば、原料フィルムと同じ厚みのセパレータを使用した場合、同一容積内で処理できる原料フィルムの量は約半分となってしまう。処理量が半分になるということはすなわち、処理可能な原料フィルムの連続長さが半分になるということであり、長尺が作製可能な円筒型の長所を生かせなくなってしまう。なお、特許文献4には、セパレータからもグラファイトフィルムが得られるという記載があるが、実際には、添加剤を含むセパレータからは良好なグラファイトフィルムは得られない。
種々の検討の結果、融着の原因は、巻いた原料フィルムからの分解ガスが系外に排出されずに炭化固着してしまったものであることを突き止め、分解ガスを速やかに系外に除去することを目的として減圧条件での炭化処理検討を行なった。
本発明の第一は、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て炭素質フィルムを製造する方法であって、炭化工程の少なくとも一部が減圧で行なわれることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。ここで「炭化工程の少なくとも一部が減圧で行なわれる」とは、炭化工程の少なくとも一部において、加熱装置(炉ともいう)内の気体の圧力を加熱装置外よりも低くすることをいう。
本発明の第二は、減圧の範囲が−0.01kPa〜−0.08MPaであることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第三は、炭化熱分解が生じる温度領域において前記減圧が行われることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第四は、500℃〜700℃の温度領域において前記減圧が行われることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第五は、不活性ガスを導入しながら−0.01kPa〜−0.08MPaの範囲で減圧して炭化することを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第六は、処理物の体積をV(L)、導入する不活性ガスの量をV1(L/s)とした場合にV/V1(s)の値が0.01以上1000以下であることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第七は、巻芯を横向きに置いて熱処理を行なうことを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第八は、高分子フィルムの厚みが10μm以上250μm以下であることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第九は、前記高分子フィルムの長さが10m以上であることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十は、前記巻芯の直径が70mm以上であることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十一は、前記巻芯と、巻芯を収納する外筒とにより構成される容器を備え、該容器が通気性を有することを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
また、炭素質フィルムの割れや融着の原因は、炭化途中でフィルムにシワや波打ちが入ることにより、長さ方向のフィルムの収縮が阻害されてしまうことであることが分かった。このフィルムのシワや波打ちフィルムの収縮は、高分子フィルムの膨張および収縮に際して、巻芯に巻き付けた高分子フィルムの外周端部を束縛する束縛手段を設けることにより抑制することができることを見出した。束縛手段として、例えば、外筒と巻芯から構成される容器を使用し、外筒の内径と巻芯の直径を調整することによって、高分子フィルムの外周端部を束縛することができ、これによってシワや波打ちを起こすことなく長尺フィルムの炭化が行なえることを見出した。
本発明の第十二は、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て炭素質フィルムを製造する方法であって、前記炭化工程における前記高分子フィルムの膨張および収縮に際して前記高分子フィルムの外周端部を束縛する束縛手段を設けたことを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十三は、前記炭化工程の少なくとも一部が減圧で行なわれることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十四は、前記巻芯と外筒とを有する容器を更に備え、前記束縛手段は前記外筒であり、(外筒の内径−巻芯の直径)を2で割った値をa(mm)、高分子フィルムの巻き厚みをb(mm)とした場合にbをaで除した値(b/a)が0.2〜0.9の範囲にあることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十五は、(b/a)が0.5〜0.8の範囲にあることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十六は、(b/a)が0.3〜0.7の範囲にあることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十七は、前記外筒は、柱状体から円柱形状をくり抜いて除去した構造であることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十八は、前記外筒の少なくとも一部分に通気用の穴が設けられていることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第十九は、前記巻芯を横置きにして高分子フィルムを熱処理することを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第二十は、高分子フィルムの厚みが10μm以上250μm以下であることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第二十一は、前記高分子フィルムの長さが10m以上であることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第二十二は、前記巻芯の直径が70mm以上であることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第二十三は、セパレータフィルムを用いることなく、一種類の高分子フィルムのみを用いることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第二十四は、減圧の範囲が−0.01kPa〜−0.08MPaであることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第二十五は、巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態のものを、ヒーター内に保持し、間接的な熱処理を行なうことを特徴とする炭素質フィルムの製造方法である。
本発明の第二十六は、上記何れかの炭素質フィルムの製造方法で製造した炭素質フィルムを2400℃以上で処理することによって得られるグラファイトフィルムである。
本発明により、炭化工程で原料フィルム同士の融着が防止され、長尺・大面積の炭素質フィルムを生産性良く得ることが可能となる。得られた炭素質フィルムは既知の技術を用いて良質なグラファイトフィルムに容易に転換が可能である。本発明の方法を用いることで、これまで作製が困難であった長尺・大面積のグラファイトフィルムを容易に作製することができる。
また、前述の特許文献4(特開平5−132360)には、他のフィルムをセパレータとして用いなければ円筒の円周以上の長さのグラファイトフィルムを得ることが困難であると記載されているが、本発明の製造方法により、長尺・大面積のグラファイトフィルムを容易に作製することが可能となった。なお、前述の特許文献3(特開昭63−256508)には、2個の円筒状グラファイト質炭素の間に高分子フィルムを挟むことが開示されているが、本発明の束縛手段に係る構成や効果は示されていない。
本発明に係る容器の一例を示す概略図である。 本発明に係る容器と原料フィルムの配置を示す概略図である。 本発明に係る容器と原料フィルムの他の配置例を示す概略図である。 本発明に係る外筒を示す概略図である。 本発明にかかる容器を示す概略図である。 本発明に係る容器と原料フィルムのさらに他の一例を示す概略図である。 本発明に係るaとbの関係を示す概略図である。 本発明の実施例A1における炭素質フィルムの製造方法を示す概略図である。 本発明に係る昇温過程でのフィルムの伸びと炭化収縮を説明するための概略図である。 本発明に係る炭素質フィルムの波打ちを示す概略図である。 本発明に係るフィルムの外周端部の束縛手段である、外周面を部分的に取り囲む一又は複数のリング状部材を示す概略図である。 本発明に係るフィルムの外周端部の束縛手段である、フィルムの外周面に沿って巻芯に平行に並べた複数の棒状部材を示す概略図である。
(高分子フィルム)
本発明で用いることができる高分子フィルムは、特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの熱伝導性が大きくなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために好ましい。また、ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、結晶性、熱伝導性に優れたグラファイトとなりやすい。
(減圧度に関して)
ポリイミドフィルムを不活性ガス下1000℃まで処理すると、500℃付近から徐々に分解が始まり、フィルムの収縮は、分解ガスが発生する500〜700℃の間で大部分が進行し、700℃以降ではほとんどフィルムの収縮は起こらない。一酸化炭素や二酸化炭素、窒素やアンモニアなどの低分子気体やベンゼン、アニリンやフェノール、ベンゾニトリルなどの低分子有機物が分解ガスとして観測される。900℃付近になるとこれらの分解ガスの発生はほぼ収束し、最終的に1000℃まで処理した後は6割ほどに重量が減少した炭素質フィルムが得られてくる。上記成分の他にも同定困難な低分子量物質が多数観測され、これらの有機物成分は炭化処理後に不揮発性のタール成分として回収される。
このタール成分はフィルムから分解ガスとして発生した直後ではガス状、もしくは微細な霧状として存在している。フィルムとフィルムが密着している場合、すなわち原料フィルムが巻芯に巻かれている状態ではフィルム間にガスが滞留してしまう虞がある。フィルム間で滞留したガス成分は凝集を起こしてタールとなり、このタールが接着剤のように働いて昇温とともにそのまま固化して融着が発生する。ガス分の凝集を抑えるためには、減圧雰囲気での炭化処理を行なえば良い。減圧下で炭化処理を行なうことによって、分解ガスの凝集を防ぎ融着の発生を大幅に抑制することができる。その抑制効果は減圧度が大きいほど高い。例えば幅の広いポリイミドフィルムを黒鉛板に挟んで炭化処理を行なう場合には、幅の狭いポリイミドフィルムに比べてガスが抜ける行程が長くなるためにより融着が発生しやすくなることが予測される。こういった場合においても、減圧度をさらに高めて炭化処理を行なうことによって融着の発生を抑えることができる。一方、熱拡散能力の高いグラファイトフィルムを得るためには、黒鉛化工程において、グラファイトを層状に配向させる必要がある。このようなグラファイト層が揃った良質なグラファイトフィルムを得るには、黒鉛化工程の前工程である炭化工程において、炭化処理を穏やかに進行させ、炭化処理後の時点である程度炭素平面を発達および配向させることが好ましい。よって、減圧度を上げていくと、フィルム内部からより多くガスが発生するが、過度に減圧度を上げると、炭素の平面構造が一部破壊された炭素質フィルムが得られやすく、減圧度をある程度に制御することが効果的である。
本発明における減圧の範囲は、−0.01kPa以上であれば構わないが、好ましくは−0.01kPa以上−0.08MPa以下、より好ましくは−0.1kPa以上−0.06MPa以下、さらに好ましくは−0.5kPa以上−0.04MPa以下である。減圧度が−0.01kPa以上であると融着抑制効果が十分に発揮され、−0.08MPa以下であると良好な熱拡散率のグラファイトフィルムを得ることができる。ここで「減圧が−0.01kPa」とは、加熱装置内の気体の圧力が加熱装置外の気体の圧力(通常は大気圧と考えられる)よりも0.01kPa低いことをいう。同様に「減圧が−0.08MPa」は、加熱装置内の気体の圧力が加熱装置外の気体の圧力よりも0.08MPa低いことを意味する。
また、減圧は炭化工程の全温度範囲で行っても構わないが、減圧を行う温度範囲の下限は好ましくは400℃、より好ましくは500℃であり、減圧を行う温度範囲の上限は好ましくは800℃、より好ましくは700℃である。炭化熱分解する温度領域もしくは500℃〜700℃において行われていることが特に好ましい。分解ガスが多く発生する温度領域において減圧を行うことで、フィルム間での分解ガスの滞留を効果的に防ぐことができ、結果として融着を抑制することができる。また、炭化が進行するとガラス状の脆い状態となるため、この脆い状態に何らかの力が加わると割れやすい。そこで、炭化熱分解が進行してからの温度領域では、常圧や小さい減圧度で穏やかに熱処理することで、より割れの少ないフィルムを得ることができる。また、熱処理途中で常圧または加圧状態から減圧に切り替えると、フィルム間に滞留していたガスは、減圧により系外へ引っ張られるのと同時に、炉内を満たしていた気体によって押し出される。そのため、炭化熱分解によりガスが多く出る温度領域で減圧に切り替えることで、より効果的に融着を防止することができる。
(不活性ガスの導入)
巻芯への巻き数が増えてくるとフィルム同士の密着性が高くなり炭化処理の際に融着が起こりやすくなってくる。特に巻芯に近い部分は外側部分に比べてより力がかかるために融着が起こりやすい。ある程度の長さ以上のポリイミドフィルムを処理する場合、融着が起こりやすくなる。このような場合は、減圧下で処理を行なうと同時に不活性ガスを導入するとより効果的に融着を防止することが可能となる。焼成部の一方から不活性ガスを導入し、もう一方から排気を同時に行なうことによって焼成部に不活性ガスの流路が発生し、フィルム間に滞留する分解ガスをさらに速やかに系外に除去することができる。このとき、不活性ガスの流量V1(単位:L/s)と排気量V2(単位:L/s)を調整して、炉内部を適当な減圧状態に維持することが重要である。導入する不活性ガスの量は多いほど効果が高いが、不活性ガスの使用が多くなるとコストが高くなってしまうので好ましくない。処理物の体積をVとした場合、処理物の体積と必要な不活性ガスの量は比例関係で表わすことができる。ここでいう処理物の体積Vとは、処理するポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムの容器など、加熱装置内に配置して加熱する全ての部材の総体積を表す。処理物の体積Vを不活性ガスの流量V1で除した値V/V1の値(単位:s)が好ましくは0.01以上1000以下、より好ましくは0.1以上100以下、さらに好ましくは1以上10以下である。V/V1の値が0.01未満である場合は、導入する不活性ガスの量が処理物に対して多すぎるので良くない。また、V/V1の値が1000より大きい場合は不活性ガスの量が少なすぎるために融着を十分に防止できない可能性がある。ここで「不活性ガスの量V1」とは、加熱装置外の気体の圧力(通常は大気圧と考えられる)における不活性ガスの導入速度(L/s)をいう。
使用する不活性ガスの種類に関しては、窒素やアルゴン、ヘリウム等が挙げられる。前記不活性ガスであるならばどのガスを使用しても炭化処理の際にフィルムに影響を与えることはなく、同品質のものが得られてくる。この中でもコストの観点から窒素が好ましく用いられる。
前記雰囲気条件に関して、炭化処理中において常に上記の雰囲気条件で処理を行なう必要はなく、少なくとも分解ガスが一番多く発生する400〜750℃付近、好ましくは、400℃〜700℃付近がこの雰囲気条件であれば良い。分解ガスが発生する温度領域において不活性ガスを流すことで、フィルム間での分解ガスの滞留を効果的に防ぐことができ、結果として融着を防ぐことができる。例えば、400℃付近まで不活性ガスを導入せず減圧下で処理を行ない、その後不活性ガスを導入しながら所定の減圧度を維持する方法や、700℃を過ぎた時点で不活性ガスの流量を減らして処理する方法が考えられる。このような処理方法にすることで不活性ガスを処理中に常に流し続ける必要性がなくなり、不活性ガスの消費量を削減することができる。
多くの枚数のポリイミドフィルムを処理した場合はガスの発生時に一時的に炉内が常圧・もしくは加圧状態になってしまうことが想定できる。分解ガスの量を予測してなるべく処理雰囲気を減圧状態に保つことも、異物や融着を改善するポイントとなる。よって、本発明の効果をさらに発揮させるために、炉内の不活性ガス流路を最適化することは好ましい。焼成部や焼成する容器の形状に合わせて不活性ガス導入口および排気口を設計することや、ポリイミドフィルムを入れる容器自体を通気性が良くなる構造にすることはさらに効果的である。
(フィルム厚みに関して)
原料ポリイミドフィルムの厚みが厚いほど、炭化処理の際に発生する分解ガスの量は多くなり、より融着が起こりやすくなってくる。グラファイトフィルム自体の熱拡散能力は熱伝導率(単位:W/(m・K))で表わされるが、実際に熱を輸送する能力は、この熱伝導率の値にグラファイトフィルムの厚みを掛けた値が指標となる。例えば平面方向の熱伝導率が同じ1000W/(m・K)のグラファイトフィルムであっても、厚みが25μmと40μmでは40μmのグラファイトフィルムの方が高い熱輸送能力を有するということとなる。すなわち、同一面積を使用した場合に40μmのグラファイトフィルムはより熱源からの熱を拡散しやすいということとなる。最小限の面積で大量の熱輸送を行ないたいという観点において、厚いグラファイトフィルムを作製することは極めて有用である。
一般的に、高分子グラファイト法によりでき上がり厚みの厚いフィルムを作製する場合、厚みの厚いポリイミドフィルムを原料として用いることが必要である。前述のように厚みの厚いポリイミドフィルムは炭化処理においてより融着が発生しやすい。これを解消するために例えばセパレーター(原料フィルム間に挟み込むシートやフィルムである。例えばグラファイトフィルムや黒鉛板を挙げることができる。)を用いることもできる。さらに厚みの厚いポリイミドフィルムは薄いものに比べて、同一容積内での処理長さが低下してしまうためにフィルム間に挟むセパレータ等はなるべく使用しないことが好まれる。本発明の減圧下での炭化方法を用いることで、厚みの厚いポリイミドフィルムでもセパレータを用いることなく炭化処理が可能となる。この場合も不活性ガスを流しながらの減圧炭化処理は極めて効果的である。厚みの厚いポリイミドフィルムを処理する場合は、薄い場合に比べ不活性ガスの流量をさらに多くすれば良い。
本発明に使用する高分子フィルムの厚みとしては、好ましくは10μm以上250μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下、20μm以上100μm以下、さらに好ましくは30μm以上150μm以下、最も好ましくは30μm以上80μm以下である。高分子フィルムの厚みが10μm以上であれば、でき上がりのグラファイトフィルムの熱拡散能力は十分高いものとなる。また、厚みが250μm以下であれば、高度に配向したグラファイト層を形成することが可能となる。フィルムの融着制御の視点からは、高分子フィルムの厚みは、10μm〜100μmが好ましく、10μm〜80μmがより好ましく、10μm〜60μmが更に好ましく、10μm〜50μmが特に好ましい。
(原料フィルムの長さ)
本発明の巻芯に高分子フィルムを巻き付けてグラファイトフィルムを作製する方法は、枚葉タイプでは作製が困難な長尺・大面積のグラファイトフィルムを作製できる利点がある。しかし、ある程度の長さの高分子フィルムを使用しないと同一容積内で処理できる原料フィルムの面積が枚葉タイプに比べて減少してしまう場合がある。そのために使用する原料フィルムの長さは、好ましくは10m以上、より好ましくは20m以上、さらに好ましくは50m以上である。また、巻芯に巻く長さが増えるほど原料フィルム同士が炭化処理の際に融着を起こしやすいということは言うまでもなく、その際に本発明の作製方法はさらに効果的となる。
(排気方法に関して)
排気方法に関しては、真空ポンプや排気ファンを使用した方法など、焼成炉自体の安全性を損なわない範囲であれば既知のあらゆる方法を用いることができる。特に真空ポンプは様々な種類のものが各社から市販されており、操作も簡便なことから本発明に好適に用いられる。本発明の圧力範囲−0.01kPa〜−0.08MPaで用いることができる真空ポンプとしては、アスピレーター(水流ポンプ)、ドライ真空ポンプ、メカニカルブースターポンプ、油回転ポンプ、ソープションポンプ、油エゼクタポンプなどが挙げられる。減圧度の調整は真空ポンプの排気部にバルブを取り付け、排気量を調節して使用すれば良い。ここで「圧力−0.01kPa」とは真空ポンプで0.01kPaだけ減圧することをいい、「圧力−0.08MPa」とは真空ポンプで0.08MPaだけ減圧することをいう。
(出ガスの処理に関して)
ポリイミドフィルムの分解ガスには前述した成分の他に様々な低分子量物質が含まれていて、ポリイミドフィルムを炭化処理した際にはこれらの物質が不揮発性のタール状物質として得られてくる。多くの枚数のポリイミドフィルムを一度に炭化する場合には、この発生したタールの処理は一つの課題となってくる。タールの成分には有毒なものも多く、掃除の手間や人体に対する危険性などを考えると出ガスは効率的に処理する必要がある。また、ヒーターや断熱材にタールが付着したまま連続運転を続けると劣化が促進するという虞もある。このことから炭化処理時の分解ガスは発生後、素早く炉の外部に誘導する必要性がある。このような場合に上手く炉の外へ出ガスを誘導するためには、一方から不活性ガスを導入し、一方から排気を行ない炉内に不活性ガスの流れを作ることが好ましい。こうすることで発生した出ガスが速やかに炉外に排出され、炉内を汚染する危険性が大幅に減少する。本発明の炭化処理方法においては分解ガスの処理も有効に行なうことができる。
(高分子フィルムの外周端部の束縛)
ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムを1000℃まで炭化処理した場合、高分子フィルムは加熱とともに線膨張を起こし、長尺高分子フィルムの場合は、熱分解により炭化収縮が始まる前までに図9のBのように一度伸びることとなる。例えば、50mの長さのポリイミドフィルムを500℃まで熱処理した場合、その伸びは約1mとなる。このため、初めに巻芯に緊密に巻き付けられた高分子フィルムは、炭化収縮が起こる温度付近では伸びて緩んでいることとなる。その後、炭化が進行すると、図9のCのように最終的にフィルム長さは初期の長さの約80%まで収縮する。このように、長尺高分子フィルムを巻芯に巻き付けて炭化処理する場合、フィルムの外周端部は、初期ではフィルムの伸びにより緩んだ状態となり、図9のDのように外周端部を束縛するものが何もなければ垂れ下がった状態となる。その後、炭化の進行に伴って高分子フィルムは収縮する。この収縮によりフィルムの巻き数が減少するため、フィルムの外周端部は巻いたフィルムの外周面を大きく後退し巻き数が減少することになる。このように、高分子フィルムの外周端部は、炭化処理の過程で大きく移動するため、割れが発生し易く、また、フィルム同士が密着していないためにフィルム間の摩擦も働かず、結果として、図9のEのように巻芯から広がり端部が大きく波打った炭素質フィルムが得られてくることとなる。従って、長尺高分子フィルムを巻芯に巻き付けて炭化処理する場合、フィルムの外周端部を、その移動を妨げることなく外周面に束縛することによって、長尺の炭素質フィルムは、割れや波打ちが抑制されたフィルムとして得ることができる。このようにフィルムの外周端部の束縛手段として、巻芯に巻いた高分子フィルムを収納する外筒、図11に示すようにフィルム30の外周面を部分的に取り囲む一又は複数のリング状部材81、図12に示すようにフィルム30の外周面に沿って巻芯10に平行に並べた複数の棒状部材82などを挙げることができる。これらの束縛手段のうち、フィルムの外周端部に均一に接触して一様に束縛することができるという理由から、円筒状の外筒がより好ましい。以下、外筒について更に説明する。なお、本明細書では、巻芯と外筒とを含めて容器と称している。
尚、炭素化工程の少なくとも一部が減圧で行われて、且つ長尺高分子フィルムの外周端部にこの束縛手段を設けた場合には、割れや波打ちに加えて、フィルムの融着も抑制することができるために、より好ましい。
(フィルムの波打ちと融着について)
後述するように炭素質フィルムの製造においてフィルムの波打ちと融着の問題が発生しやすい。これらの問題を解決する方法として本発明においては、図7に示すように、(外筒の内径R−巻芯の直径r)を2で割った値をa(mm)、高分子フィルムの巻き厚みをb(mm)としたときにbをaで除した値(b/a)が重要な要素となる。
炭素質フィルムの波うちと融着防止の両方の観点から考えると、(b/a)の値が好ましくは0.2〜0.9である。0.2以上であれば、フィルムが弛んでも外筒に支持されるため、弛んだままになりにくく、波打ちやシワの無い長尺の炭素質フィルムを得ることができる。0.9以下であれば、容器内にフィルムからの出ガスが抜ける隙間が確保され、フィルム同士が融着を起こしにくくなる。以下で波打ちと融着について詳しく説明する。
<フィルムの波打ちについて>
200mm角サイズにカットしたポリイミドフィルムを全く固定しない状態で1000℃まで熱処理すると大きく波打った炭素質フィルムが得られてくる。この波打ちは上からある一定荷重の重しを加えてフィルムを熱処理することによって解決されるが、その場合においても端部に細かいシワが入るなど、枚葉タイプでシワのない表面を有する炭素質フィルムを得るのは困難である。一方、巻芯に高分子フィルムを巻き付けて熱処理を行なう長尺タイプでは処理方法を上手く選択することによって波打ちやシワのない長尺炭素質フィルムを得ることが可能となる。以下にそのメカニズムについて説明を行なう。
巻芯に巻いた長尺原料フィルムの炭化を行なうと、フィルムの長さ方向の収縮とその収縮の力に対して逆方向にフィルム同士の摩擦が働き、結果としてフィルム上に一定の張力が発生する。一定の張力が掛かったままフィルムの炭化収縮が進行することによって、フィルムにシワや歪みのない表面を有する平面性の高い長尺の炭素質フィルムを得ることが可能となる。図9のBとD、CとEをそれぞれ比較するとわかるように、外周端部を束縛する束縛手段を備えているBとCではフィルムがある程度の範囲で接触しているので、その接触している範囲において、摩擦が働くために好ましい。枚葉タイプにおいて、フィルムを重ねて炭化処理を行なったとしても、収縮の際にフィルム間で摩擦力が働かないので(もしくは働いたとしてもバラバラのベクトルとなるので)、フィルム上に一定の張力は発生しない。また張力を発生させるために、仮に原料フィルムの端部を固定して炭化処理を行なったとしても、炭素質フィルムはガラス状なので収縮の際にフィルムが割れてしまう。長尺タイプは巻いたフィルム同士が収縮の際にお互いに動くことができるためにフィルムが収縮によって断裂することもなく、また一定の張力がフィルム上に働くことによってシワ・波打ちの無い炭素質フィルムを得ることが可能となる。
ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムを1000℃まで炭化処理した場合、前述のように最終的に長さが80%ほどに収縮するが、高分子フィルムは加熱とともに線膨張を起こすために熱分解収縮が始まる前までに高分子フィルムは一度伸びることとなる。例えば線膨張係数が40ppm/℃のポリイミドフィルム50mを500℃まで熱処理した場合、その伸びは約1mとなる。このために初めに巻芯に緊密に巻いた原料フィルムは炭化収縮が起こる温度付近では伸びて緩んでいることとなる。これに対して、円筒状の巻芯にポリイミドフィルムを巻いて横向きで熱処理を行なった場合、初めに原料フィルムが巻芯に緊密に巻いてあったとしても、熱分解収縮が起きる直前はフィルムが伸びているために下側にフィルムが弛んで垂れ下がった状態となる。このまま炭化処理を進めた場合、フィルム同士が密着していないためにフィルム間に摩擦力が働かず、結果として波打ちの起こった長尺炭素質フィルムが得られてくることとなる。また、長尺のフィルムにおいては炭化途中で入ったシワや波打ちによって長さ方向のフィルムの収縮が阻害されてしまい、結果としてフィルム同士が断裂を起こしてしまう虞もある。
また、炭化処理工程の後で、炭素質フィルムはさらに2400℃以上で処理することによりグラファイトフィルムに転換することができる。黒鉛化工程の最終段階(2600℃以上)においてグラファイト骨格を形成しないN2、および原料フィルムに添加されたフィラー(リン酸系)などの内部ガス発生によりグラファイト層が持ち上げられフィルムが発泡する。黒鉛化処理後の発泡したグラファイトフィルムを圧縮処理することで耐屈曲性の優れたグラファイトフィルムを得ることができる。発泡させたグラファイトフィルムを圧縮することで発泡を無くし、耐屈曲性が得られる理由は、圧縮後のグラファイトの層間にわずかな空間が存在するために、折り曲げ時にかかるグラファイト層の歪みを逃がすことができるためである。しかし、炭化処理工程において炭素質フィルムに波打ちやシワがはいっていると、黒鉛化後も波打ちやシワがそのまま残ってしまうため、その後に圧縮処理を行っても波打ちやシワは解消されず、更に深いシワが入ってしまう。
次に、図2に示すように、巻芯10と外筒20とを有する容器を使用して高分子フィルム30の炭化を行なう場合について説明する。巻芯10に巻いたフィルム30は、炭化熱分解収縮が始まる前に伸びて垂れ下がるが、図2の容器を使用した場合、この垂れ下がりを外筒20で支持することができ、巻かれたフィルム同士が密着したまま炭化を行なうことが可能である。密着したままフィルムが収縮を起こすことによってフィルムに一定の張力が働き、処理途中でフィルムが伸びて緩んだとしても波打ちやシワのない炭素質フィルムを得ることが可能となる。
弛んだフィルムを支持してフィルム同士を上手く密着させるためには、外筒の内径を適切に選択する必要がある。外筒内径が大き過ぎる場合はフィルムが弛んだままになってしまうので波打ったフィルムのみが得られてくる。
(b/a)が、0.2以上であれば、フィルムが弛んでも外筒に支持されるため、弛んだままになりにくく、波打ちやシワの無い長尺の炭素質フィルムを得ることができる。
さらに、炭素質フィルムの波うちの観点からは、(b/a)の値は、より好ましくは0.5〜0.8である。0.5以上であれば、フィルムと外筒の密着度が高くなり、波打ちやシワの無い長尺の炭素質フィルムを得ることができる。0.8以下であれば、弛んだフィルムが外筒との接触で、過大な支持を受けることなく、歪みのない平坦な炭素質フィルムを得ることができる。
<フィルムの融着について>
前述のように、ポリイミドフィルムは熱分解時に様々な分解ガスを発生し、これが炭化処理後に不揮発性のタール成分となり、接着剤のように機能してフィルム同士を融着させる。巻芯に高分子フィルムを巻き付けて炭化処理をする場合はフィルム同士が密着するので、融着が発生しやすい。また、長尺の炭素質フィルムを得るために原料フィルムの巻き数が多くなってくると更に融着は起こりやすくなってくる。通常は、前述のように処理時に不活性ガスを流すことによって分解ガスを押し流し融着を防ぐことができる。しかし、本発明のように巻芯に巻いたポリイミドフィルム自体を外筒で覆い、容器全体のガス通気性が悪くなってしまった場合などは、不活性ガスを流しながら炭化処理を行なっても出ガスが容器内部で滞留してフィルム同士が融着を起こしてしまう虞がある。この問題は、容器内部に出ガスが抜ける隙間を設ける、すなわち外筒の内径を大きく取ることによって解決される。
(b/a)が、0.9以下であれば、容器内にフィルムからの出ガスが抜ける隙間が確保され、フィルム同士が融着を起こしにくくなる。さらに、炭素質フィルムの融着防止の観点からは、より好ましくは、0.3〜0.7である。0.7以下であれば、容器内にフィルムからの出ガスが抜ける隙間が十分確保され、フィルム同士が融着を起こしにくくなる。0.3以上であれば、フィルムが弛んで外筒にうまく支持されず、フィルムの波うちが過度に発生し、大きく波うったフィルム同士が接触してしまうことによる融着を防止することができる。
(外筒の形状)
外筒の形状に関しては特に制限があるわけではないが、外筒の内表面において弛んだフィルムを支持するので、内表面の形状は炭素質フィルムの表面を決める重要な要素となる。仮に外筒の内表面に凸凹があると得られる炭素質フィルムの表面も凹凸が付いてしまう虞がある。炭素質フィルムの形状を綺麗にするためにも、外筒の内表面はなるべく円柱形に近い形であることが好ましい。しかし、必ずしも円柱形である必要性はなく楕円柱のような形であっても構わない。なお、楕円形のように断面が円形でないものに関しては、図4に示すように巻芯の中心を点A、点Aからの垂線と外筒との交点を点Bとした場合に点Aと点B間の距離によって外筒の内径に相当する値を設定することができる。
フィルム同士の融着を防止するためには、外筒の内径を大きくして容器内部のスペースを取り、ガスの抜けを良くすることが効果的である。このとき、外筒にさらに通気用の穴を設けることによってガスの抜けを良くすることはさらに好ましい。しかし、外筒の内表面の形状は炭素質フィルム表面に転写されてしまう虞がある。そのため大きな通気穴を開けてしまうとフィルム表面に大きな凹凸が転写されたり、炭素質フィルムが引っ掛って割れを起こしてしまう可能性がある。通気穴を開ける際には穴一つ一つの面積を小さくすることでフィルムへの凹凸転写を最小限に抑え、引っ掛かりによる割れを防ぐことができる。その面積としては好ましくは20mm2以下、より好ましくは10mm2以下、さらに好ましくは5mm2以下である。穴の形状に特に制限は無いが、四角形よりも円形の方が引っ掛かりが少なくなるのでより好ましい。図5に示すような容器の場合、フィルムが直接に接触する虞の無い部分、即ち、縦置きの場合の外筒20の上側部分、横置き(図2)の場合の外筒20の両側部分や、外筒20のフタとなる円板15の部分に通気穴を設ければ、フィルムに影響を与えないので良い。その場合はフィルムが引っ掛かる虞がないので穴の面積に制限は無く、広ければ広いほど通気が良くなるので好ましい。
(巻芯に関して)
巻芯の形状は円柱状であることが本発明において必要であるが、断面が真円である必要はなく、少し楕円形や歪んだもの、また溝が入ったもののような形であっても良い。容器の重量が増加するとヒーターへの負荷が大きくなるので、容器全体の重量を減らすという観点から巻芯内部を中空構造にしたり、さらに巻芯に細かい穴を開けたりすることは効果的である。これら中空構造や穴を開けることによって通気性が向上し、フィルムからの出ガスが効果的に系外に排出されるという効果も得られる。
直径が小さい巻芯を使用して炭化を行ない、続いて黒鉛化処理を行なうと、巻き癖のあるグラファイトフィルムが得られてくる。このような癖の付いたグラファイトフィルムは、その後の圧縮柔軟化工程でシワが入りやすくなってしまうという問題がある。この問題はある程度の直径を有する巻芯を用いることで解決され、その後の圧縮工程においてもシワが入ることなく柔軟化を行なうことが可能となる。柔軟化処理する方法として、フィルムを圧延する方法や圧縮する方法等が挙げられる。特にグラファイトは裂けやすいため、厚みのバラツキのない長尺のグラファイトを裂けることなく取得するためには、圧縮する方法が好ましい。特に、圧縮方法としては、特に高分子フィルムで挟み、面状に圧縮する方法が好ましい。圧縮は、圧延のような剪断力が加わらず、グラファイトの裂けや厚みバラツキを発生させることなく、グラファイトを柔軟化することができる。
巻芯の径の大きさとしては、70mm以上が好ましく、80mm以上はより好ましく、90mm以上はさらに好ましい。70mmより径が大きければ、得られる炭素質フィルムに巻き癖が付きにくくなる。径の大きさに上限は無いが、単位容積あたりの処理量を確保するためにも、巻芯の直径としては、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましい。このような場合は、巻芯を中空にくり抜き内部に更に巻芯を設けることでスペースを有効に活用でき、一度の処理量を増やすことが可能となる。
(巻芯の素材)
本発明に使用される巻芯の素材としての条件として、500℃以上での連続使用環境に耐えることが挙げられる。この条件を満たす容器の素材としては押出成型品・型込成型品・冷間等方圧加圧品などの等方性黒鉛素材や、アルミナ(Al2O3)・ジルコニア(ZrO2)・石英(SiO2)・炭化珪素(SiC)・チタニア(TiO2)、マグネシア(MgO)・窒化珪素(Si3N4)・窒化アルミ(AlN)・イットリア(Y2O3)・ムライト(3Al2O3・2SiO2)・コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)・ステアタイト(MgO・SiO2)・フォルステライト(2MgO・SiO2)などのセラミックス、また黒鉛を炭素繊維で補強した複合材C/Cコンポジット等が考えられる。この中でも、加工の容易さや製造コスト、汎用性という観点から見てカーボンが好適に用いられる。
セラミックスや一部の黒鉛素材は、その後の黒鉛化過程で必要な処理温度(2400℃以上)で溶融や分解、または変形を起こしてしまう可能性があるが、一度1000℃以上で処理した炭素質フィルムはその後再度熱処理を行なっても新たな波打ちや融着を起こすことはないので、炭素質フィルムを調製後に黒鉛化温度に耐える素材からなる別の容器に移し替えて黒鉛化を行なえば良い。黒鉛化過程は炭化処理後に降温過程を経て一度容器を取り出した後に行なっても良いし、そのまま取り出さずに連続で黒鉛化を行なっても良い。
(炉内への容器設置)
本発明の炭化処理方法を効果的なものとするためには、炉内への容器セット方向が非常に重要となってくる。本発明のように容器外側から加熱を行う場合、例えば、図3に示すように炉内に縦向きに容器をセットした場合、当然のことながら外筒は弛んで解けた原料フィルムを支持することはできないので、波打った炭素質フィルムのみが得られてくることとなる。また、縦向きに容器を置いた場合、ヒーターからの熱は容器の下部から伝導していくのでフィルム下端部と上端部で温度ムラが発生し、シワや割れが起こりやすくなってしまう。更に、フィルム下部からの出ガスが抜けにくくなるために、横向きに置いた場合に比べて融着が起こりやすくなってしまう。一方、横向きに置いた場合は縦置きに比べてフィルム内で温度差が発生しにくく、シワ・割れは起こりにくい。また、縦向きにフィルムをセットした場合はフィルムの収縮の際にフィルム下部が容器と摩擦を起こして割れてしまう虞がある。横置きで容器を置いた場合もフィルムの両端部はなるべく容器に触れさせないことが、フィルムに割れを起こさせず、出ガスの抜けを容易にして融着を防止するためのポイントとなる。以上から、縦置きよりも横置きにすることが好ましい。ここで横置きとは巻芯がほぼ水平に置かれている状態を、縦置きとは巻芯がほぼ垂直に置かれている状態をいう。
また、容器を平らな面上に設置する場合、外筒の外側の形状は円筒よりも直方体の方が安定性が高く、また熱的接触が良いという利点がある。しかし直方体形状の場合は、円筒形状と比較して容器の重量が大きくなるためにヒーターへの負荷が大きくなってしまう虞がある。作業性および容器重量の軽減という観点から考えると外筒は円筒形状であることが好ましい。
(その他)
巻芯に巻いたポリイミドフィルムをそのまま電気炉に入れて炭化処理すると、上述のように巻芯から広がり端部が大きく波打った炭素質フィルムが得られてくる。ヒーターに通電して加熱する方式の炉では広がったフィルムがヒーターに接触しショートする虞があるので、接触防止のために巻芯を外筒に入れて炭化を行なうことは好ましい。
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明していく。なお実施例及び比較例における窒素気流の流量は、電気炉外の大気圧における窒素ガスの流量を表す。
<評価>
(融着)
全体に融着があったものを「多い」、20周以上の範囲に融着が生じているものを「少し多い」、10周以上の範囲に融着が生じているものを「あり」、5周以下の範囲に融着が生じているものを「少しあり」、3周以下の範囲に融着が生じているものを「僅かにあり」、3周以下の範囲に融着が生じており、かつ手で剥がせる場合を「ほとんどなし」、融着のないものを「なし」とした。
(波打ち)
図10において、長さが30mm以下で且つ、振幅が2mm以下の波打ちが1カ所以上5カ所以下の場合を「僅かにあり」、長さが30mm以上、60mm以下波打ちが1カ所以上5カ所以下の場合を「少しあり」、長さが61mm以上の波打ちが5カ所以上10カ所以下の場合を「あり」、振幅が6mm以上で且つ、長さが61mm以上の波打ちが5カ所以上10カ所以下の場合を「大きい波打ち」、長さが61mm以上の波打ちが10カ所以上19カ所以下の場合を「あり」、長さが61mm以上の波打ちが20カ所以上の場合を「全面波打ち」、波打ちがなかったものを「なし」、フィルムに折れおよび2周以上のフィルムを跨ぐように50mm以上の割れが発生している場合を「折れと断裂」とした。
(割れ)
炭素質フィルム250mm*10mの範囲で、割れが11カ所以上あったものを「あり」、割れが6カ所以上10カ所以下あったものを「少しあり」、割れが5カ所以下のものを「僅かにあり」、割れがないものを「なし」とした。
(黒鉛化フィルムプレス後シワ)
200mm*200mm角の黒鉛化フィルムをプレスした際、シワが2カ所以下の場合を「少しあり」、シワが3カ所以上の場合を「あり」、シワが発生しなかった場合を「なし」とした。
(容器aの作製)
図1を参照して、容器aは縦150mm×横150mm×高さ300mmの直方体(柱状体)から直径120mm×高さ300mmの円柱形状をくり抜いて除去した形状である外筒20と、直径100mm×高さ280mmの円柱の両端に直径120mm×厚さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、直径120mm×厚さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(容器bの作製)
図1を参照して、容器bは縦150mm×横150mm×高さ300mmの直方体(柱状体)から直径120mm×高さ300mmの円柱形状をくり抜いて除去した形状である外筒20と、直径60mm×高さ280mmの円柱の両端に直径120mm×厚さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、直径120mm×円板10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(容器cの作製)
図1を参照して、容器cは縦150mm×横150mm×高さ300mmの直方体(柱状体)から直径125mm×高さ300mmの円柱形状をくり抜いて除去した形状である外筒20と、直径100mm×高さ280mmの円柱の両端に直径125mm×厚さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、直径125mm×厚さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(容器dの作製)
図1を参照して、容器dは縦170mm×横170mm×高さ300mmの直方体(柱状体)から直径140mm×高さ300mmの円柱形状をくり抜いて除去した形状である外筒20と、直径100mm×高さ280mmの円柱の両端に直径140mm×厚さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、直径140mm×円板10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例A1)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル50AHフィルム、厚み50μm)を準備した。図2を参照して、この高分子フィルムを容器aの巻芯10の中央部に50周分巻き付け、フィルムを巻いた巻芯10を外筒20に入れ、円板15で蓋をした状態で、さらにインナーケース55に入れた。このようにセットした容器aを、図8のように、電気炉内に横向きに置き、容器外側に設置されたヒーター50に通電加熱を行い、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理雰囲気は窒素を流さずに行ない、内圧は減圧孔70から真空ポンプにて減圧し、−0.01kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)を測定した。またフィルム処理前後において炉内汚れの評価も行なった。続けてこの炭素質フィルムを、容器aに再投入し、グラファイト化炉を用いて2900℃まで2℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイトフィルムの一部を200mm角に切り取り、縦250mm×横250mm×厚み125μmの高分子フィルムで上下から挟み圧縮成型機を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。最終的に得られたグラファイトフィルムの熱拡散率を、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な(商品名)「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。その結果を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
なお、容器bを用いた場合は容器aを用いた場合と同様の結果が得られたが、グラファイト化処理後のフィルムに巻き癖が付いてしまい、後面状加圧工程でシワが入ってしまった。
(実施例A2)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−0.1kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.1kPa低いことをいう。
(実施例A3)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−0.5kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.5kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.5kPa低いことをいう。
(実施例A4)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−1kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
(実施例A5)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−10kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
減圧下でポリイミドフィルムを炭化処理したところ、融着を起こすことなく長尺の炭素質フィルムが得られた。
(実施例A6)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−10kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
窒素気流中、減圧下でポリイミドフィルムを炭化処理したところ、融着を起こすことなく長尺の炭素質フィルムを得ることができた。また、炉内汚れが窒素を流さない場合に比べて減少した。
(実施例A7)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−80kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
比較的高い減圧度においても、融着を起こすことなく長尺の炭素質フィルムが得られた。しかし、炉内汚れは窒素を流す場合に比べて増加した。
(実施例A8)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−90kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−90kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも−90kPa高いことをいう。
減圧度が比較的高い条件であり、得られるグラファイトフィルムの熱拡散率が多少低下したが、融着は起こらず、良好な炭化フィルムを得ることができた。
(比較例A1)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧±0kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表1にまとめた。
常圧下でポリイミドフィルムを炭化処理したところ、融着が起こってしまった。
(比較例A2)
容器aを用い、炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を+2kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表1にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて+2kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも2kPa高いことをいう。
加圧条件下では常圧下に比べてさらに融着が進行してしまった。
Figure 0005586469
(実施例A9)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。図2を参照して、この高分子フィルムを容器aの巻芯の中央部に50周分巻き付け、フィルムを巻いた巻芯を外筒に入れた。フィルムをセットした容器aを電気炉内に横向きに置き、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理雰囲気は窒素を流さずに行ない、内圧は真空ポンプにて−0.01kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)を測定した。またフィルム処理前後において炉内汚れの評価も行なった。続けてこの炭素質フィルムを、容器aに再投入し、グラファイト化炉を用いて2900℃まで2℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイトフィルムの一部を200mm角に切り取り、縦250mm×横250mm×厚み125μmの高分子フィルムで上下から挟み圧縮成型機を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。最終的に得られたグラファイトフィルムの熱拡散率を、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な(商品名)「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。その結果を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
(実施例A10)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−0.1kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.1kPa低いことをいう。
(実施例A11)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−0.5kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.5kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.5kPa低いことをいう。
(実施例A12)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−1kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
(実施例A13)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−10kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
75μmのポリイミドフィルムは50μmに比べて融着を起こしやすく、−10kPa程度の減圧では完全に融着を抑えることはできなかった。
(実施例A14)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−10kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
窒素を流しながら−10kPaで炭化を行なった場合、融着を完全に抑えることができた。
(実施例A15)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−80kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
減圧度をさらに高くして炭化処理を行なった場合も融着を抑えることができた。
(実施例A16)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧−90kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−90kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも−90kPa高いことをいう。
減圧度が比較的高い条件であり、得られるグラファイトフィルムの熱拡散率が多少低下したが、融着は起こらず、良好な炭化フィルムを得ることができた。
(比較例A3)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧±0kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表2にまとめた。
(比較例A4)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を+2kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表2にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて+2kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも2kPa高いことをいう。
加圧条件下ではさらに融着が進行してしまった。
Figure 0005586469
表1及び表2の結果から、75μmのポリイミドフィルムは50μmに比べて融着の度合いが大きいことが分かった。
(実施例A17)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル50AHフィルム、厚み50μm)を準備した。図2を参照して、この高分子フィルムを容器cの巻芯の中央部に75周分巻き付け、フィルムを巻いた巻芯を外筒に入れた。フィルムをセットした容器cを電気炉内に横向きに置き、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.01kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
(実施例A18)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−0.1kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.1kPa低いことをいう。
(実施例A19)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−0.5kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.5kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.5kPa低いことをいう。
(実施例A20)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−1kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
(実施例A21)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−10kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
減圧下、窒素を流しながら炭化処理を行なうことによって融着を抑制することができた。流す窒素流量が同じ場合は、減圧度が大きいほど融着抑制能力が高いということも分かった。
(実施例A22)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧を−10kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
(実施例A23)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧を−80kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
窒素を流さずに減圧のみでの炭化処理でもいくらかは融着が抑制されるが、窒素を流しながらの場合と比較すると抑制効果は低下してしまった。
(実施例A24)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(5.0L/min)で内圧を−10kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
流す窒素の流量を増やしたところ、さらに融着の改善効果が見られた。
(比較例A5)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を±0kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。
(比較例A6)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を+2kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A17と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表3にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて+2kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも2kPa高いことをいう。
常圧下、もしくは加圧条件下での炭化処理ではフィルムが融着を起こしてしまった。
Figure 0005586469
(実施例A25)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。図2を参照して、この高分子フィルムを容器dの巻芯の中央部に75周分巻き付け、フィルムを巻いた巻芯を外筒に入れた。フィルムをセットした容器dを電気炉内に横向きに置き、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量1L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−0.01kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
(実施例A26)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−0.1kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.1kPa低いことをいう。
(実施例A27)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−0.5kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.5kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.5kPa低いことをいう。
(実施例A28)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−1kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
(実施例A29)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を−10kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
75μmのポリイミドフィルムは50μmに比べ融着が起こりやすいことが分かった。75μmの場合でも減圧下で窒素を流しながら炭化処理を行なうことによって融着を抑制することができた。流す窒素流量が同じ場合は、減圧度が大きいほど融着抑制能力が高いということも分かった。
(実施例A30)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧を−10kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
(実施例A31)
炭化処理雰囲気を、窒素を流さずに内圧を−80kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−80kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも80kPa低いことをいう。
窒素を流さずに減圧のみでの炭化処理でもいくらかは融着が抑制されるが、窒素を流しながらの場合と比較すると抑制効果は低下してしまった。
(実施例A32)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(5.0L/min)で内圧を−10kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
流す窒素の流量を増やしたところ、さらに融着の改善効果が見られた。
(実施例A33)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。図3を参照して、この高分子フィルムを容器aの巻芯の下部に75周分巻き付け、フィルムを巻いた巻芯を外筒に入れた。フィルムをセットした容器aを電気炉内に縦向きに置き、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中(流量5L/min)で行ない、内圧は真空ポンプにて−10kPaを保ったまま昇温を続けた。室温まで冷却後、得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
縦向きに容器を置いて炭化処理を行なった場合、横置きの場合に比べて融着が起こりやすいことが分かった。
(比較例A7)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を±0kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。
(比較例A8)
炭化処理雰囲気を、窒素気流中(1.0L/min)で内圧を+2kPaに保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A25と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。得られた炭素質フィルムが融着しているかどうかを、○:融着なし、△:わずかに融着、×:全面的に融着の3段階で評価を行なった。同様の工程で100周、125周、150周、175周、および200周分巻き付けたものに関しても、炭化処理後に融着しているかどうかの評価を行なった。その結果を表4にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて+2kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも2kPa高いことをいう。
常圧下、もしくは加圧条件下での炭化処理ではフィルムが融着を起こしてしまった。
Figure 0005586469
これら全ての実施例および比較例(実施例A1〜A33、比較例A1〜A8)は、250mm幅の東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム(商品名:カプトンHフィルム、厚み75μmおよび50μm)を用いても同様の効果を得ることができた。
次に、束縛手段としての外筒を有する容器について、種々の実施例および比較例に基づいて説明する。
(容器Aの作製)
図5を参照して、容器Aは内径155mm、外径165mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径155mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径155mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B1)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。図2を参照して、この高分子フィルムを容器Aの巻芯の中央部に100周分(巻き厚み7.5mm)巻き付け、フィルムを巻いた巻芯を外筒に入れた。フィルムをセットした容器Aを電気炉内に横向きに置き、室温から1000℃までを1℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中で行なった。室温まで冷却後、得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無を調べた。続けてこの炭素質フィルムを、容器Aに再投入し、グラファイト化炉を用いて2900℃まで2℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイトフィルムの一部を200mm角に切り取り、表面状態を調べた後に縦250mm×横250mm×厚み125μmの高分子フィルムで上下から挟み圧縮成型機を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無を調べた。その結果を表5にまとめた。
得られた炭素質フィルムは一部表面が波打っていたものの、グラファイト化後の圧縮柔軟化処理ではシワが入ることなく行なうことができた。炭素質フィルムに融着は全く見られなかった。
(容器Bの作製)
図5を参照して、容器Aは内径130mm、外径140mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径130mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径130mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B2)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Bを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
得られた炭素質フィルムは一部表面が波打っていたが、実施例B1の場合よりもその波打ち度合いが小さく、シワが入ることなく圧縮柔軟化処理を行なうことができた。炭素質フィルムに融着は全く見られなかった。
(容器Cの作製)
図5を参照して、容器Cは内径110mm、外径120mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径110mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径110mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B3)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Cを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
実施例B3においては表面波打ちの無い綺麗な炭素質フィルムを得ることができた。フィルムの融着も全く見られなかった。
(容器Dの作製)(新規追加)
図5を参照して、容器Dは内径105mm、外径115mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径100mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径100mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B4)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Dを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
実施例B4においては表面波打ちの無い綺麗な炭素質フィルムを得ることができた。フィルムの融着も全く見られなかった。
(容器Eの作製)
図5を参照して、容器Eは内径100mm、外径110mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径100mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径100mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B5)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Eを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
実施例B5においては表面波打ちの無い綺麗な炭素質フィルムを得ることができた。フィルムの融着は、わずかに存在していたが、手で剥がせる程度であった。
(容器Fの作製)
図5を参照して、容器Fは内径98.8mm、外径108.8mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径97.5mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径97.5mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B6)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Fを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
実施例B6においては炭素質フィルムの表面波打ちは全く無かったものの、わずかにフィルム同士が融着を起こしている部分があった。この融着はフィルムの断裂を引き起こすほど度合いの大きいものでは無く、続く黒鉛化工程にも問題なく投入することができた。
(容器Gの作製)
図5を参照して、容器Gは内径96.6mm、外径106.6mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径97.5mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径97.5mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B7)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Gを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
実施例B7においては炭素質フィルムの表面波打ちは全く無かったものの、わずかにフィルム同士が融着を起こしている部分があった。この融着はフィルムの断裂を引き起こすほど度合いの大きいものでは無く、続く黒鉛化工程にも問題なく投入することができた。
(容器Hの作製)
図5を参照して、容器Hは内径280mm、外径290mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径260mm×高さ280mmの円柱の両端に径280mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径280mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B8)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Hを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
比較例B2および実施例B8の結果より、同じサイズの外筒を使用していても(b/a)の値が0.2以上0.9以下の範囲に入るような巻芯を選択すれば波打ちを起こさずに炭素質フィルムを作製可能であることが分かった。
(容器Iの作製)
図5を参照して、容器Iは内径380mm、外径390mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径380mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径380mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(比較例B1)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Iを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
容器Iを用いて炭化処理を行なった場合、表面が大きく波打った炭素質フィルムが得られてきた。またフィルムの一部が融着を起こしていた。これはフィルムが波打ったためにフィルムからの出ガス抜けが悪くなった部分が発生したためであると考えられる。黒鉛化後もフィルムの波打ちが大きく、圧縮柔軟化処理後においてもフィルムに大きなシワが入ってしまった。
(容器Jの作製)
図5を参照して、容器Jは内径280mm、外径290mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径280mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径280mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(比較例B2)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Jを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
容器Jを用いた場合も容器Iと同様に大きく波打った炭素質フィルムが得られてきてしまった。圧縮柔軟化処理後もシワが入ってしまった。
(容器Kの作製)
図5を参照して、容器Kは内径96mm、外径106mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径96mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径96mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(比較例B3)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Kを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
容器Kを用いた場合、炭素質フィルムが全面的に融着および断裂を起こしてしまった。また得られた炭素質フィルムは大きく波打ちを起こしていた。これは容器内のスペースがほとんど無かったために、線膨張を起こしたフィルムが容器内で波打ったためであると考えられる。黒鉛化処理後に圧縮柔軟化処理を行なったがシワも入ってしまった。
(容器Lの作製)
図5を参照して、容器Lは内径155mm、外径165mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径60mm×高さ280mmの円柱の両端に径155mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径155mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(比較例B4)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。容器Aの代わりに容器Lを用いたこと以外は全て実施例B1と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表5にまとめた。
実施例B1および比較例B4の結果より、同じサイズの外筒を使用していても(b/a)の値が0.2より小さな巻芯を使用すると炭素質フィルムが波打ってしまうことが分かった。また直径が60mmの巻芯を使用して炭素質フィルムを作製した場合、巻き癖の強いグラファイトフィルムとなり圧縮工程の際にシワが多く入ってしまった。
Figure 0005586469
(容器Mの作製)
図5を参照して、容器Mは内径115mm、外径125mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径115mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径115mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B9)
高分子フィルムとして、250mm幅のカネカ社製ポリイミドフィルム(商品名:アピカル75AHフィルム、厚み75μm)を準備した。図2を参照して、この高分子フィルムを容器Mの巻芯の中央部に25m分(巻き厚み6.7mm)巻き付け、フィルムを巻いた巻芯を外筒に入れた。フィルムをセットした容器Mを電気炉内に横向きに置き、室温から1000℃までを1℃/minで昇温して炭化処理を行なった。炭化処理は窒素気流中で行なった。室温まで冷却後、得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無を調べた。続けてこの炭素質フィルムを、容器Mに再投入し、グラファイト化炉を用いて2900℃まで2℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイトフィルムの一部を200mm角に切り取り、表面状態を調べた後に縦250mm×横250mm×厚み125μmの高分子フィルムで上下から挟み圧縮成型機を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無を調べた。その結果を表6にまとめた。
(実施例B10)
アピカル75AHフィルムを容器Mの巻芯中央部に30m分(巻き厚み8.1mm)を巻き付けたこと以外は全て実施例B9と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表6にまとめた。
(実施例B11)
アピカル75AHフィルムを容器Mの巻芯中央部に40m分(巻き厚み10.5mm)を巻き付けたこと以外は全て実施例B7と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表6にまとめた。
(実施例B12)
アピカル75AHフィルムを容器Mの巻芯中央部に50m分(巻き厚み12.8mm)を巻き付けたこと以外は全て実施例B9と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表6にまとめた。
(実施例B13)
アピカル75AHフィルムを容器Mの巻芯中央部に60m分(巻き厚み15mm)を巻き付けたこと以外は全て実施例B9と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表6にまとめた。
(b/a)の値が0.2以上0.9以下の範囲に入っていればポリイミドフィルムの巻き数を増やしていっても波打ちを起こすことなく、綺麗な表面を有する炭素質フィルムを得ることができた。実施例B13においては得られた炭素質フィルムの一部が融着を起こしてしまっていたが、この融着はフィルムの断裂を引き起こすほど度合いの大きいものでは無かった。
(実施例B14)
容器Mを電気炉内に縦置きにセットしたこと以外は全て実施例B10と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表6にまとめた。
実施例B10と比較して、容器を縦置きにして炭化処理を行なった場合、表面の波打った炭素質フィルムが得られてきた。またフィルムの一部が融着を起こしていた。本発明を実施する最良の形態としては容器のセット方法は縦置きよりも横置きの方が良いことが分かる。
(実施例B15)
図6を参照して容器Mの外筒20に直径2mmの通気用の穴を容器上半分に数個ほど開けたこと以外は全て実施例B13と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表6にまとめた。
外筒20に通気用の穴を開けたことによって融着が改善された。得られた炭素質フィルム表面には通気用の穴の跡は転写されていなかった。
(比較例B5)
アピカル75AHフィルムを容器Mの巻芯中央部に65m分(巻き厚み16.1mm)を巻き付けたこと以外は全て実施例B9と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表6にまとめた。
容器Mでは融着を起こすことなく65mのポリイミドフィルムを炭化することができなかった。
(容器Lの作製)
図5を参照して、容器Lは内径125mm、外径135mm、肉厚5mm、高さ300mmの形状である外筒20と、径80mm×高さ280mmの円柱の両端に径125mm×高さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、径125mm×高さ10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例B16)
アピカル75AHフィルムを容器Lの巻芯中央部に65m分(巻き厚み16.1mm)を巻き付けたこと以外は全て実施例B9と同様の方法で炭素質フィルムおよびグラファイトフィルムを作製した。得られた炭素質フィルムの波打ちと融着の有無、および最終的に得られたグラファイトフィルムのシワの有無の結果を表6にまとめた。
外筒の内径が大きい容器を使用した場合、融着を起こさず炭化をすることができた。比較例B5と実施例B16の結果より、ある程度以上の長さのポリイミドフィルムを処理する際は適切なb/aの値をとり得る容器を設計する必要があることが分かった。
なお、これら実施例および比較例(実施例B1〜B16、比較例B1〜B5)においてアピカル50AHの代わりに、アピカル75AH(カネカ社製、厚み75μm)や東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム(商品名:カプトンHフィルム、厚み75μmおよび50μm)を用いても同様の効果が得られた。
Figure 0005586469
(実施例C1)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から700℃まで窒素を流さずに内圧−0.01kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
炭化熱分解領域のみを減圧にすることでも実施例A1と同様の効果を与えることがわかった。また、炭化熱分解温度領域で減圧に切り替えたことで、フィルム間に滞留していたガスが炉内の窒素と共に系外へ押し出され、実施例A1よりも融着は少なかった。
(実施例C2)
炭化処理雰囲気を、室温から700℃まで窒素を流さずに内圧−0.01kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
炭化温熱分解が進行し、脆いフィルムとなっている700℃以上の温度領域を常圧で熱処理したことで、穏やかな状態で処理が進行し、割れのない炭素質フィルムを得ることができた。
(実施例C3)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から1000℃まで窒素を流さずに内圧−0.01kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
炭化熱分解温度領域で減圧に切り替えたことで、フィルム間に滞留していたガスが炉内の窒素と共に系外へ押し出され、実施例A1よりも融着は少なかった。
(実施例C4)
炭化処理雰囲気を、室温から400℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、400℃から800℃まで窒素を流さずに内圧−0.01kPaを保ったまま昇温を続け、800℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A1と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
減圧温度領域が400℃から800℃の場合でも、実施例A1と同様の効果を与えることがわかった。
(実施例C5)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から700℃まで窒素を流さずに内圧−10kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A5と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
炭化温熱分解が進行し、脆いフィルムとなっている700℃以上の温度領域を常圧で熱処理したことで、穏やかな状態で処理が進行し、割れのない炭素質フィルムを得ることができた。
(実施例C6)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から700℃まで窒素気流中(1.0L/min)で内圧−10kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A6と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
窒素気流中の減圧条件においても、炭化熱分解領域のみを減圧にすることで融着を抑制できることがわかった。
(実施例C7)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から700℃まで窒素を流さずに内圧−0.01kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A9と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−0.01kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも0.01kPa低いことをいう。
75AHのポリイミドフィルムを用いた場合も、50AHのポリイミドフィルムを用いた場合と同様に融着と割れを抑制することができた。
(実施例C8)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から700℃まで窒素を流さずに内圧−10kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A13と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
炭化温熱分解が進行し、脆いフィルムとなっている700℃以上の温度領域を常圧で熱処理したことで、穏やかな状態で処理が進行し、割れのない炭素質フィルムを得ることができた。
(実施例C9)
炭化処理雰囲気を、室温から700℃まで窒素を流さずに内圧−10kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A13と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
割れの程度は、減圧温度領域が実施例C8よりも長かったため、実施例C8より多少多かったが、実施例A13よりは少なくなった。
(実施例C10)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から1000℃まで窒素を流さずに内圧−10kPaを保ったまま昇温を続けたこと以外は全て実施例A13と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
炭化熱分解温度領域で減圧に切り替えたことで、フィルム間に滞留していたガスが炉内の窒素と共に系外へ押し出され、実施例A13よりも融着は少なかった。割れの程度については、減圧温度領域が1000℃までと炭化分解温度領域よりも高い温度までであったので、実施例C8、C9に比べ、多少多かった。
(実施例C11)
炭化処理雰囲気を、室温から400℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、400℃から800℃まで窒素を流さずに内圧−10kPaを保ったまま昇温を続け、800℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A13と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
400℃から800℃までの減圧でも実施例A13に比べ、割れ、融着ともに改善された。
(実施例C12)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から700℃まで窒素気流中(1.0L/min)で内圧−10kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A14と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−10kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも10kPa低いことをいう。
窒素気流中の減圧条件においても、炭化熱分解領域のみを減圧にすることで実施例A14と同様に融着を抑制できることがわかった。また、割れの程度も実施例A14に比べて抑制することができた。
(実施例C13)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から700℃まで窒素気流中(1.0L/min)で内圧−1kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A20と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
炭化熱分解温度領域で減圧に切り替えたことで、フィルム間に滞留していたガスが炉内の窒素と共に系外へ押し出され、実施例A20よりも融着は少なかった。また、炭化分解温度領域のみを減圧にしたことで、割れの程度も実施例A20に比べ改善された。
(実施例C14)
容器dを用いたこと以外は、実施例C13と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。
実施例C13に比べ内径の大きい容器を用いたことで、分解ガスの滞留を抑制することができ、融着なく炭化することができた。また、割れもなかった。これは、フィルムと外筒との過度な接触をさけることができたためであると考えられる。
(実施例C15)
炭化処理雰囲気を、室温から500℃まで窒素雰囲気中(熱処理中窒素は流さずに)内圧±0kPaで処理を行い、500℃から700℃まで窒素気流中(1.0L/min)で内圧−1kPaを保ったまま昇温を続け、700℃で窒素を導入し、1000℃まで内圧±0kPaで処理をしたこと以外は全て実施例A28と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。なおここで「内圧が真空ポンプにて−1kPaである」とは、電気炉の内圧が電気炉外よりも1kPa低いことをいう。
炭化熱分解温度領域で減圧に切り替えたことで、フィルム間に滞留していたガスが炉内の窒素と共に系外へ押し出され、実施例A28よりも融着は少なかった。また、炭化分解温度領域のみを減圧にしたことで、割れの程度も実施例A28に比べ改善された。
(容器eの作製)
図1を参照して、容器eは縦190mm×横190mm×高さ300mmの直方体(柱状体)から直径160mm××高さ300mmの円柱形状をくり抜いて除去した形状である外筒20と、直径100mm×高さ280mmの円柱の両端に直径160mm×厚さ10mmの円板15が接続した形状である巻芯10から構成されている。なお、直径160mm×円板10mmの円板15には通気のために直径10mmの穴が数個ほど空けられている。外筒20および巻芯10は全て等方性黒鉛で作製した。
(実施例C16)
容器eを用いたこと以外は、実施例C15と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表7にまとめた。
実施例C15に比べ内径の大きい容器を用いたことで、分解ガスの滞留を抑制することができ、融着なく炭化することができた。また、割れもなかった。
Figure 0005586469
(実施例A34)
外筒を設けなかったこと以外は、実施例A13と同様の方法で炭素質フィルムを作製した。炭素質フィルムの厚みと表面状態、および単位面積当たりの重量(g/m2)、またグラファイト化処理後の熱拡散率を表8にまとめた。
減圧処理を行ったことで、融着はA13と同等であった。しかし、外筒を設けなかったことで、フィルムの外周端部の束縛手段がなくなり、割れが多く、また、波打ったフィルムが得られてきた。黒鉛化後のフィルムについても得られた炭素質フィルムの波打ちが残っており、圧縮処理した場合、波打ちは解消されず、更なるシワも発生した。
Figure 0005586469
ここに開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、電子機器、精密機器などにおいて放熱部材として使用し得るグラファイトフィルムの製造に使用し得る炭素質フィルムを得ることができるので、電子部品等の分野で利用可能である。
10 巻芯
15 円板
20 外筒
30 フィルム
40 通気穴
50 ヒーター
55 インナーケース
60 台
65 ガス導入孔
70 減圧孔
81 リング状部材
82 棒状部材

Claims (22)

  1. 巻芯に長さが10m以上の高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て炭素質フィルムを製造する方法であって、炭化工程の少なくとも一部が減圧で行なわれ、減圧の範囲が−0.01kPa〜−0.08MPaであることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法。
  2. 巻芯に長さが10m以上の高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て炭素質フィルムを製造する方法であって、炭化工程の少なくとも一部が減圧で行なわれ、前記巻芯と、巻芯を収納する外筒とにより構成される容器を備え、該容器が通気性を有することを特徴とする炭素質フィルムの製造方法。
  3. 炭化熱分解が生じる温度領域において前記減圧が行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素質フィルムの製造方法。
  4. 500℃〜700℃の温度領域において前記減圧が行われることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  5. 不活性ガスを導入しながら−0.01kPa〜−0.08MPaの範囲で減圧して炭化することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  6. 処理物の体積をV(L)、導入する不活性ガスの量をV1(L/s)とした場合にV/V1(s)の値が0.01以上1000以下であることを特徴とする請求項5記載の炭素質フィルムの製造方法。
  7. 巻芯を横向きに置いて熱処理を行なうことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  8. 高分子フィルムの厚みが10μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  9. 前記巻芯の直径が70mm以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  10. 巻芯に長さが10m以上の高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て炭素質フィルムを製造する方法であって、前記炭化工程における前記高分子フィルムの膨張および収縮に際して前記高分子フィルムの外周端部を束縛する束縛手段として外筒を設け、前記外筒の少なくとも一部分に通気用の穴が設けられていることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法。
  11. 前記炭化工程の少なくとも一部が減圧で行なわれることを特徴とする請求項10に記載の炭素質フィルムの製造方法。
  12. 巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態で熱処理を行なう炭化工程を経て炭素質フィルムを製造する方法であって、前記炭化工程における前記高分子フィルムの膨張および収縮に際して前記高分子フィルムの外周端部を束縛する束縛手段として外筒を設け、前記外筒の少なくとも一部分に通気用の穴が設けられ、(外筒の内径−巻芯の直径)を2で割った値をa(mm)、高分子フィルムの巻き厚みをb(mm)とした場合にbをaで除した値(b/a)が0.2〜0.9の範囲にあることを特徴とする炭素質フィルムの製造方法。
  13. (b/a)が0.5〜0.8の範囲にあることを特徴とする請求項12記載の炭素質フィルムの製造方法。
  14. (b/a)が0.3〜0.7の範囲にあることを特徴とする請求項12記載の炭素質フィルムの製造方法。
  15. 前記外筒は、柱状体から円柱形状をくり抜いて除去した構造であることを特徴とする請求項1014の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  16. 前記巻芯を横置きにして高分子フィルムを熱処理することを特徴とする請求項1015の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  17. 高分子フィルムの厚みが10μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項1016の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  18. 前記巻芯の直径が70mm以上であることを特徴とする請求項1017の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  19. セパレータフィルムを用いることなく、一種類の高分子フィルムのみを用いることを特徴とする請求項1018の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  20. 減圧の範囲が−0.01kPa〜−0.08MPaであることを特徴とする請求項1019の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  21. 巻芯に高分子フィルムを巻き付けた状態のものを、ヒーター内に保持し、間接的な熱処理を行なうことを特徴とする請求項1〜20の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法。
  22. 請求項1〜21の何れかに記載の炭素質フィルムの製造方法で炭素質フィルムを製造し、得られた炭素質フィルムを2400℃以上で処理することを特徴とする、グラファイトフィルムの製造方法。
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