明 細 書
グラフアイトフィルムの製造方法、およびその方法で製造されたグラフアイ トフイルム 技術分野
[0001] 本発明は、放熱フィルムとして使用されるグラフアイトフィルムの製造方法、およびそ の方法で製造されたグラフアイトフィルムに関するものである。
背景技術
[0002] 電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフアイトフィルムを得る方法として、ポリオキサ ジァゾール、ポリイミド、ポリフエ二レンビニレン、ポリべンゾイミダゾール、ポリべンゾォ キサゾール、ポリチアゾール、またはポリアミド等の高分子フィルムをアルゴン、へリウ ム等の不活性雰囲気下や減圧下で熱処理する高分子熱分解法 (特許文献 1、 2)が 知られている。
[0003] また、電気伝導性、熱伝導性には劣るものの、軸受け、シール、るつぼ、発熱体等 に用レ、られる黒鉛を大量かつ大容積で生産性良く製造する方法として、コータスなど の炭素原料粉とタールピッチなどの粘結材からなる混練物を焼成した後、この焼成体 を通電加熱して黒鉛とする方法(特許文献 3)が知られてレ、る。
特許文献 1 :特開昭 60— 181129号公報
特許文献 2 :特開平 61— 275116号公報
特許文献 3 :特開平 5— 78111号公報 しかし、従来の高分子フィルムを雰囲気加熱 や減圧下で加熱して得たグラフアイトでは、熱伝導性が十分でなぐ近年発熱量が急 増している電子機器の放熱材料としては十分ではなかった。
[0004] またさらに、放熱性をあげるために、グラフアイトの厚みを厚くして熱輸送量を増や すことも考えられる力 従来の高分子熱分解法ではフィルムが破損しやすぐまた破 損しない場合には熱伝導性の低いグラフアイトしか得られなかった。これは、雰囲気 加熱による高分子熱分解法では、加熱が原料フィルムの表面から起こり、フィルムの 内部と表面では不均一な黒鉛化が進行し、フィルム全体としての熱伝導性が低下し たためである。
[0005] また、減圧下での加熱による高分子熱分解法では、加熱は、ヒーターと接触してい る部分からの熱伝導やヒーターからの輻射熱によっておこなわれる。しかし、このよう な加熱では、原料フィルムへの熱処理が不均一となるために、黒鉛化も不均一に進 行し、熱伝導性が低下した。
[0006] 特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進行することで、内部から の分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィルムが破壊した。また破 損しない場合であったとしても、フィルムが薄い場合に比べると内部の黒鉛化は十分 進行せず、熱伝導性は非常に劣るものとなった。
[0007] 炭素原料粉と粘結材から得られる焼成体を通電加熱して黒鉛化する方法が知られ ている。しかし、従来の方法では、原料に焼成体を用いており、焼成体の導電性が不 均一であるために、焼成体に流れる電流に偏りが生じ、局所的な温度上昇を起こし、 黒鉛化が不均一に起こり、亀裂が入って破損しやすかつた。その結果従来の方法で 得たグラフアイトの熱伝導性、電気伝導性は、高分子フィルムを熱処理して得られる グラフアイトフィルムに比べて非常に劣るものであった。
[0008] また特に、複数の焼成体を得る場合には、加熱中の位置ずれにより特性悪化が起 こりやすぐこれを防止するために、焼成体を接着剤で接着後、通電加熱する方法が 提案されているが、亀裂は入らないグラフアイトは得られるものの、熱伝導性、電気伝 導性に非常に劣るものであった。
[0009] また、複数枚のフィルム状のグラフアイトを得る場合に、原料フィルムを接着剤で固 定する方法を適用すると、接着剤が出来上がり品の品質低下を引き起こすために好 ましくなかった。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0010] 熱伝導性に優れたグラフアイトフィルム、特に厚みが厚くても熱処理により破損を起 こさない高熱伝導性グラフアイトフィルムを得る。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明の第 1は、
高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムをグ
ラファイ H匕するグラフアイトフィルムの製造方法であって、電圧を印加し直接通電可 能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラフ アイトイ匕する工程を含むことを特徴とする、グラフアイトフィルムの製造方法、 である。
[0012] 本発明の第 2は、
製造工程の初期において前記原料フィルムが絶縁体であることを特徴とする、請求 項 1記載のグラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0013] 本発明の第 3は、
前記の、電圧を印加し直接通電可能な容器が、黒鉛製容器であることを特徴とする、 請求項 1または請求項 2に記載のグラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0014] 本発明の第 4は、
請求項 3に記載のグラフアイトフィルムの製造方法であって、さらに、前記黒鉛製容器 と原料フィルムとの間および/または前記黒鉛製容器の外部周辺に、カーボン粉末 が充填されている状態で、前記通電がなされることを特徴とする、グラフアイトフィルム の製造方法、
である。
[0015] 本発明の第 5は、
高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムをグ ラファイ H匕するグラフアイトフィルムの製造方法であって、通電可能な容器 (A)内に 該原料フィルムを保持し、さらに該容器 (A)を通電可能な容器 (B)内に保持し、全体 に通電しながらグラフアイトイ匕する工程を含むことを特徴とする、グラフアイトフィルム の製造方法、
である。
[0016] 本発明の第 6は、
請求項 5記載のグラフアイトフィルムの製造方法であって、前記容器 (B)の周辺に、力 一ボン粉末が存在している状態で、前記通電がなされることを特徴とする、グラフアイ
トフイルムの製造方法、
である。
[0017] 本発明の第 7は、
請求項 5〜6のレ、ずれかに記載のグラフアイトフィルムの製造方法であって、前記容 器 (A)と前記容器 (B)の間に、カーボン粉末が存在している状態で、前記通電がな されることを特徴とする、グラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0018] 本発明の第 8は、
前記容器 (A)と前記容器 (B)が接触してレ、なレ、ことを特徴とする、請求項 5〜7のレヽ ずれかに記載のグラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0019] 本発明の第 9は、
前記容器 (B)が円筒であることを特徴とする、請求項 5〜8のいずれかに記載の、グ ラファイトフイルムの製造方法、
である。
[0020] 本発明の第 10は、
原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線との、 成す角度が 0度より大きく 180度未満であることを特徴とする、請求項 5〜9のいずれ 力に記載のグラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0021] 本発明の第 11は、
前記容器 (A)および Zまたは前記容器 (B)が、黒鉛製容器であることを特徴とする、 請求項 5〜: 10のいずれかに記載のグラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0022] 本発明の第 12は、
製造工程の初期において前記原料フィルムが絶縁体であることを特徴とする、請求 項 5〜: 11記載のグラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0023] 本発明の第 13は、
前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジァゾール、ポリべンゾチア ゾール、ポリべンゾビスチアゾール、ポリべンゾォキサゾール、ポリべンゾビスォキサゾ ール、ポリパラフエ二レンビニレン、ポリべンゾイミダゾール、ポリべンゾビスイミダゾー ノレ、ポリチアゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを 特徴とする、請求項 1〜: 12のいずれかに記載のグラフアイトフィルムの製造方法、 である。
[0024] 本発明の第 14は、
前記高分子フィルムが、複屈折 0. 08以上のポリイミドフィルムであることを特徴とする
、請求項 13に記載のグラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0025] 本発明の第 15は、
前記高分子フィルムが、複屈折 0. 12以上のポリイミドフィルムであることを特徴とする
、請求項 13に記載のグラフアイトフィルムの製造方法、
である。
[0026] 本発明の第 16は、
前記ポリイミドフィルム力 ピロメリット酸二無水物、 p—フエ二レンジアミンを含むポリア ミド酸を、脱水剤とイミド化促進剤とを用いてイミドィ匕して作製されるポリイミドフィルム であることを特徴とする、請求項 13〜: 15のいずれかに記載のグラフアイトフィルムの 製造方法、
である。
[0027] 本発明の第 17は、
前記ポリイミドフィルム力 S、ジァミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端 に有するプレボリマを合成し、前記プレボリマに前記とは異なるジァミンを反応させて ポリアミド酸を合成し、前記ポリアミド酸をイミド化して作製されるポリイミドフィルムであ ることを特徴とする、請求項 13〜: 16のいずれかに記載のグラフアイトフィルムの製造 方法、
である。
[0028] 本発明の第 18は、
請求項 1〜: 17のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、グラファ ィトフイノレム、
である。
[0029] 本発明の第 19は、
請求項 1〜: 17のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、グラファ イトフィルムであって、原料フィルム 25cm2以上、面方向の熱拡散率が 5 X 10— 4m2Z S以上、かつ、面方向の熱拡散率のバラツキが 40%以下であることを特徴とする、グ ラファイトフイノレム、
である。
[0030] 本発明の第 20は、
請求項 19に記載のグラフアイトフィルムであって、 90 z m以上の厚みを有することを 特徴とする、グラフアイトフィルム、
である。
発明の効果
[0031] 従来技術である炭素原料粉と粘結材から得られる焼成体を通電加熱して黒鉛化す る方法では、焼成体の電気伝導性に偏りがあるため、通電加熱時に加熱の偏りが生 じ、品質の高いグラフアイトを得ることができなかったが、本発明による場合は、下記 に示すとおり、品質の高いグラフアイトフィルムを得ることができる。
[0032] 本発明では、従来の雰囲気加熱や減圧下での加熱ではなぐ電圧を印加し直接通 電可能な容器内に、原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらダラ ファイトィ匕する工程を含む。従って、結果として原料フィルムに電圧を印加し通電して 加熱するため、原料フィルムの炭素化の進行に伴う電気抵抗の低減に伴って電流が 流れる結果、ジュール熱により、原料フィルムそのものの発熱が寄与し、フィルムの内 部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺からも通電可能な容器によって十分均 一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフアイト フイノレムを得ることができる。
[0033] 225 /i m程度の、従来より厚い原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表
面、周辺から均一に加熱されるため、表面と内部がほぼ同時に黒鉛化し、表層に分 解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形成されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分 解ガスによるフィルム破損が起こらず、厚みの厚い電気伝導性、熱伝導性に優れた グラフアイトフィルムを得ることができる。
[0034] また、特にポリイミドフィルム、中でも、本発明の作製方法および/または特定の複 屈折を持つ、高度な分子配向が生じやすくなるように分子設計したポリイミドフィルム を原料フィルムに用いることにより、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフ アイトフィルムを得ることができる。
[0035] 本発明では、原料フィルムを保持した通電可能な容器 (A)の複数個を、通電可能 な容器 (B)内に保持し、全体を通電することで、それぞれの用いた該容器 (A)間で、 品質のバラツキが少ないグラフアイトフィルムを得ることができる。
図面の簡単な説明
[0036] [図 1]容器 (A)の容器 (B)への保持方法。
[図 2]容器 (A)の容器 (B)への保持方法。
[図 3]容器 (A)の容器 (B)への保持方法。
[図 4]容器 (A)と容器 (B)への通電方法。
[図 5]容器 (A)と容器 (B)への通電方法。
[図 6]ポリイミドフィルム及びくさび形シート。
[図 7]くさび形シートの斜視図。
[図 8]原料フィルムの容器 (A)への保持方法。
[図 9]容器 (A)の容器 (B)への保持方法の模式図。
[図 10]容器 (A)の容器 (B)への保持方法の模式図(図 9の容器 (B)には実際には蓋 を付けることを示す図)。
[図 11]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と の、成す角力 90度。容器 (A)と容器 (B)は非接触。
[図 12]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と
の、成す角 、 90度。容器 (A)と容器 (B)は接触。
園 13]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と の、成す角力 90度。容器 (A)と容器 (B)は接触。
園 14]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と の、成す角が、 45度。容器 (A)と容器 (B)は非接触。
園 15]容器 (A)の容器 (B)への保持方法の模式図
園 16]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と の、成す角力 90度。容器 (A)と容器 (B)は非接触。
園 17]容器 (A)の容器 (B)への保持方法の模式図
園 18]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と の、成す角が、 0度。容器 (A)と容器 (B)は非接触。
園 19]容器 (A)の容器 (B)への保持方法の模式図
園 20]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と の、成す角力 90度。容器 (A)と容器 (B)は非接触。
[図 21]容器 (A)の容器 (B)への保持方法の模式図
園 22]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と の、成す角が、 0度。容器 (A)と容器 (B)は非接触。
[図 23]容器 (A)の容器 (B)への保持方法の模式図
園 24]容器 (A)、容器 (B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関 係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線と の、成す角が、 90度。容器 (B)と容器 (A)は非接触。
符号の説明
[0037] ポリイミドフィルム
2 くさび形シート
3 くさび形シートの幅
4 ナトリウム光
5 干渉縞
11 原料フィルムを保持するための、平滑な通電可能な平板
12 容器 (A)
13 原料フィルムを保持した容器 (A)
21 円筒の容器 (B)
22 角筒の容器 (B)
23
31 容器 (A)と容器 (B)の間に充填された、カーボン粉末
32 容器 (B)の外部周辺に充填された、カーボン粉末
発明を実施するための最良の形態
[0038] 本発明のグラフアイトフィルムの第一の製造方法は、高分子フィルムおよび/または 炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムをグラフアイトイ匕するグラフアイトフィ ルムの製造方法であって、通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器 に電圧を印加し通電しながらグラフアイトイ匕する工程を含むことを特徴とする、グラファ イトフィルムの製造方法、である。
[0039] 本発明のグラフアイトフィルムの第二の製造方法は、高分子フィルムおよび/または 炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムをグラフアイトイ匕するグラフアイトフィ ルムの製造方法であって、通電可能な容器 (A)内に、該原料フィルムを保持し、さら に該容器 (A)を通電可能な容器 (B)内に保持し、全体に通電しながらグラフアイトイ匕 する工程を含むことを特徴とする、グラフアイトフィルムの製造方法である。
[0040]
本発明の製造方法で作製されるグラフアイトフィルムは、熱伝導性が高いために、 例えば、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器や、ノー トパソコン、電子辞書、 PDA,携帯電話、 PDP、ポータブル音楽プレイヤ一等の携帯
電子機器等の放熱材料として好適である。
[0041] <原料フィルム >
本発明で用いることができる原料フィルムとしては、高分子フィルムおよび/または 炭素化した高分子フィルムである。
[0042] <高分子フィルム >
本発明に用いることができる高分子フィルムとしては、特に限定はされないが、ポリ イミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジァゾール(P〇D)、ポリべンゾチアゾール(P BT)、ポリべンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリべンゾォキサゾール(PBO)、ポリベン ゾビスォキサゾール(PBBO)、ポリパラフエ二レンビニレン(PPV)、ポリフエ二レンべ ンゾイミダゾール(PBI)、ポリフエ二レンべンゾビスイミダゾール(PPBI)、ポリチアゾー ノレ (PT)が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも 1種を含む耐熱芳香族性高 分子フィルムであることが、最終的に得られるグラフアイトの電気伝導性、熱伝導性が 高くなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。 この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および 特性を有するものを得ることができるために好ましレ、。
[0043] <炭素化した高分子フィルム >
本発明で用いられる炭素化した高分子フィルムとしては、出発物質である高分子フ イルムを減圧下もしくは不活性ガス中で予備加熱処理して得られる。この予備加熱は 通常 1000°C程度の温度で行い、例えば 10°C/分の速度で昇温した場合には 100 0°Cの温度領域で 30分程度の温度保持を行うことが望ましい。
[0044] <本発明の第一である、通電可能な容器内に、原料フィルムを保持し、該容器に 通電しながらグラフアイトィヒする方法 >
本発明のグラフアイトフィルムの第一の製造方法は、高分子フィルムおよび/または 炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを後述する「電圧を印加し直接通電 可能な容器」内に、原料フィルムを保持し、該通電可能な容器および原料フィルムに 後述する方法で通電し、グラフアイト化する工程を含むことを特徴とする。
[0045] 本発明の第一の方法は、原料フィルムによって、大きく下記の 3つに分類できる。
[0046] 後述する「電圧を印加し直接通電可能な容器」内に、
(その 1)「炭素化した高分子フィルム」を保持し、または、
(その 2)「高分子フィルム」を予備加熱処理することで「炭素化した高分子フィルム」を 得た後、その「炭素化した高分子フィルム」を保持し、または、
(その 3)絶縁体である「高分子フィルム」を保持し、
該容器に電圧を印加し通電しながら、グラフアイトィヒする工程を含むことを特徴とする
[0047] 下記に、(その 1)から(その 3)について、具体的に説明する。
[0048] (その 1)原料に炭素化した高分子フィルムを用レ、、該フィルムを電圧印加による直 接通電が可能な容器内に保持し、該容器へ電圧印加することで通電してグラフアイト 化する場合、該フィルムは、発熱した容器からの直接熱伝導(1)及びフィルムの自己 発熱(2)による 2つの手段で加熱され、品質の優れたグラフアイトフィルムとなる。詳細 を説明すると以下の通りである。
[0049] 従来の通常の雰囲気及び減圧下での熱処理では、加熱は、雰囲気ガスの熱伝導 及び/またはヒーターからの輻射熱によりおこなわれるため、フィルムが加熱される手 段は基本的には、フィルム表面から内部への熱伝導の 1つのみである。
[0050] しかし本発明の方法では、炭素化した高分子フィルムと導電体 (容器 (黒鉛製容器 であってもよレ、)及び/又はカーボン粉末)が接している部分がフィルムの一方の表 面と他方の表面であるため、電圧印加により発生したジュール熱が、炭素化した高分 子フィルムの一方の表面と他方の表面の両方から直ちに伝熱する。その結果、一方 の表面と他方の表面の両方から、炭素化が進行する。発熱した容器からの直接熱伝 導及び後述するフィルムの自己発熱による 2つの手段で加熱されフィルム内部まで 十分加熱され、フィルムの表層及び内部で均一に熱処理される。
[0051] 本発明では、電圧を印加し直接通電可能な容器に通電にすると、通電による発熱 が生じる。
[0052] また、出発原料に炭素化した高分子フィルムを用いた場合、容器に電圧を印加す ると、該フィルムは既に炭素化しているために炭素化の進行に応じた電気抵抗の変 化に応じて電流が流れ、黒鉛化の進行に伴い、抵抗が低くなるために、より電流が流 れ、フィルム自体が発熱する。特に、電流は表層及び内部の両方に流れるため、発
熱は表層及び内部の両方で同時に進行する。その結果、均一な黒鉛化が起こる。
[0053] さらに、電流は、炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて流れ、黒鉛化の 進行に伴い、抵抗が低くなるために、フィルムに流れる電流量が増え、フィルムの発 熱量が増加し、黒鉛化が進行しやすくなる。特に、部分的に発熱が大きくなつたとし ても、フィルムそのものが発熱しかつ黒鉛化が進行するに従い熱伝導性が高まるた めに、フィルム全体に熱が伝わり、フィルムは均一に加熱される。
[0054] グラフアイトになる前の炭素化した高分子フィルムは、グラフアイトと比べて熱伝導性 に劣る傾向が有る。そのため、従来のような通常の雰囲気及び減圧下での熱処理で は加熱手段が熱伝導の 1つのみであることから、内部まで熱が十分伝わりにくぐ表 層と内部で黒鉛化の状態に差ができやすぐ表層のみ黒鉛化し、内部に黒鉛化の不 十分な部分が残る傾向が有る。結果、従来の方法では、高温に熱処理した場合に、 内部の不十分な部分が発泡破裂し、フィルムがボロボ口になつた。
[0055] 一方、本発明の方法では、電圧を印加し直接通電可能な容器そのものが電圧印加 に伴い発熱しているのと同時に、炭素化'黒鉛化の進行に応じた電気抵抗の変化に 応じて、炭素化した高分子フィルムの炭素化部分に、電流が流れ、フィルム自体が発 熱する。したがって、発熱した容器からの直接熱伝導及びフィルムの自己発熱による 2つの手段によって、フィルムに十分熱を供給することが可能となり、内部の熱伝導性 が悪い部分にも充分熱が供給され、表層のみ黒鉛化されることなぐ表層と内部が同 時に黒鉛化が進行する。
[0056] さらに、フィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な 電界集中を起すことなぐ局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一 な黒鉛化が進行する。また、熱処理後のグラフアイトが結晶性に非常に優れ、耐熱性 にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損すること なぐ品質の高いグラフアイトとなる。
[0057] (その 2)また、原料フィルムとして絶縁体の高分子フィルムを用いる場合、該フィノレ ムを、不活性ガス雰囲気下および Zまたは減圧下で予備加熱処理して得られる、炭 素化した高分子フィルムを使用できる。このようにして炭素化した高分子フィルムは、 (その 1)で上記記載したとおりの方法で、グラフアイト化が可能である。
[0058] (その 3)また、原料フィルムとして絶縁体の高分子フィルムを用いる場合、グラフアイ トに至るまでの炭素化過程の最初から通電によるため、炭素化も均一に起こりやすい 。また、絶縁体の高分子フィルムであっても、本発明の製造方法によれば、その絶縁 体の高分子フィルムと導電体 (黒鉛製容器及び/又はカーボン粉末)が接している 部分がフィルムの一方の表面と他方の表面であるため、電圧印加により発生したジュ ール熱が、絶縁体高分子フィルムの一方の表面と他方の表面の両方から直ちに伝 熱する。従って、一方の表面と他方の表面の両方から、炭素化が進行する。
[0059] このように本発明では、絶縁体の高分子フィルムであっても、両方の表面に導電体 が接しているため、電圧を印加し通電して加熱する場合、当初は、フィルムの両方の 表面から炭素化が進行し、引き続き、フィルム内部の炭素化の進行に応じた電気抵 抗の変化に応じてフィルム内部にも電流が流れ、また炭素化の進行に伴レ、フィルム に流れる電流量が増え、最終的に表面及び内部での均一な発熱が起こるため、均 一な黒鉛化が進行しやすくなる。またフィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるた め、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなぐ局所的な発熱が起こらず、結果 として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。また、熱処理後のグラフアイトの結 晶性に非常に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱 が生じたとしても破損することなぐ品質の高いグラフアイトとなる。
[0060] 本発明によるグラフアイトフィルムが従来製造方法によるグラフアイトフィルムよりも優 れた均一性を発現する理由や機構については、学術的詳細研究がさらに必要では あるが、上記のとおり、推定できる。
[0061] <本発明の第一である、通電可能な容器内に、原料フィルムを保持し、該容器に 通電しながらグラフアイト化する方法における、原料フィルムを保持する方法 > なお、電圧を印加し直接通電可能な容器 (例えば黒鉛製容器)内に、原料フィルム を保持する方法とは、例えば、原料フィルムを金属板やグラフアイト板で挟んだ上で、 金属板やグラフアイト板の自重以外には特には加圧しない状態で容器壁や容器底に 接するように保持する方法が有るが、必ずしもこれらの方法だけに制約を受けるもの ではない。
[0062] <通電方法/黒鉛製容器と原料フィルムとの間および Zまたは前記黒鉛製容器の
外部周辺に、カーボン粉末が充填されてレ、る状態 >につレヽて。
[0063] 本発明の原料フィルムのグラフアイトイ匕プロセス、特に、通電方法について説明する 。本発明において、電圧を印加し通電する方法としては、交流電圧および/又は直 流電圧を印加し、通電することをいう。
[0064] 本発明の原料フィルムのグラフアイトイ匕プロセスは、電圧を印加し直接通電可能な 容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラフアイト 化する工程を含むことによって行なわれる。例えば次のよう方法(1) - (4)で通電さ れるのが好ましい。ここでは特に、黒鉛製容器の場合について記載するが、必ずしも 、黒鉛製容器にのみ制約されるものではない。
[0065] (1)黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し 通電する方法。
[0066] (2)黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器の外部周辺をカーボ ン粉末で覆レ、(充填し)、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通 電する方法。
[0067] (3)黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持し (黒鉛製容器と 原料フィルムとの間に、カーボン粉末が充填されている状態で、保持し)、該黒鉛製 容器自体に電圧を印加し通電する方法。
[0068] (4)黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持し (黒鉛製容器と 原料フィルムとの間に、カーボン粉末が充填されている状態で、保持し)、さらに該黒 鉛製容器をカーボン粉末で覆い (黒鉛製容器の外部周辺にカーボン粉末が充填さ れてい状態で)、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する 方法。
[0069] 直接通電可能な容器及び製造されたフィルムの電気伝導性から考えて、サンプノレ の大きさにもよる力 通電の結果、例えば原料フィルムには 10mA以上の電流が流 れ、ジュ—ル熱により容器および/またはフィルムが発熱する。特に、初期絶縁体で 途中から導電体に変換する場合であっても、投入電力を制御することにより急激な温 度上昇を防止することで、安定的に高品質のグラフアイトフィルムを製造できる。
[0070] 従来の雰囲気加熱や減圧下での加熱では、加熱は、ヒーターと接触してレ、る部分
や雰囲気ガスからの熱伝導、ヒーターからの輻射熱によって原料フィルムの表面から おこなわれ、フィルムの内部と表面で不均一に黒鉛化が進行し、フィルム全体として の熱伝導性が低下した。特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進 行することで、内部からの分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィル ムが破壊した。また破損しない場合であったとしても、フィルムが薄い場合に比べると 内部の黒鉛化は十分進行せず、熱伝導性は非常に劣るものとなった。
[0071] しかし、本発明にある電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保 持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラフアイトイ匕する工程では、結果として原 料フィルムに電圧を印加し通電して加熱するため、原料フィルムそのものの発熱が寄 与する。従って、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺からも十 分均一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフ アイトフィルムを得ることができる。さらに、 125 111ゃ225 111程度の、従来より厚い 原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表面、周辺から均一に加熱される ため、表面と内部が同時に黒鉛化し、表層に分解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形成 されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分解ガスによるフィルム破損が起こらず、 厚みの厚レ、電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフアイトフィルムを得ることができる。
[0072] 通電方法(2)である、黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器の外 部周辺をカーボン粉末で覆い、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印 カロし通電する方法は、通電方法(1)である黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、 該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法よりも、熱伝導性が高ぐ特性にバ ラツキのない優れたグラフアイトフィルムを得るうえでは、優れている。というのは、黒 鉛製容器をカーボン粉末で覆うことにより、黒鉛製容器および Zまたは原料フィルム に加わる通電および加熱が均一におこるためである。
[0073] またさらに、通電方法(3) (4)にあるように、黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆つ た原料フィルムを保持することも、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる 通電および加熱が均一になるために好ましレ、。
[0074] 通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与えられる熱処理温 度としては最低でも 2400°C以上が必要で、好ましくは 2600°C以上、最終的には 27
00°C以上の温度で熱処理することが好ましぐ 2800°C以上で熱処理することがより 好ましい。
[0075] く本発明の第二である、通電可能な容器 (A)内に、原料フィルムを保持し、さらに 該容器 (A)を通電可能な容器 (B)内に保持し、全体に通電しながらグラフアイトイ匕す る方法 >
本発明のグラフアイトフィルムの第二の製造方法は、高分子フィルムおよび/または 炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを後述する「電圧を印加し直接通電 可能な容器」(A)内に保持し、さらに該容器 (A)を通電可能な容器 (B)内に保持し、 全体に通電しながらグラフアイトイ匕する工程を含むことを特徴とする。
[0076] <直接通電可能な容器 (A)の直接通電可能な容器 (B)内への保持方法 >につレヽ て
まず、本発明の第一のグラフアイトイ匕方法について述べる。容器 (A)を容器 (B)内 に保持しないような場合、すなわち、容器を 2つ使用せず 1つの容器を使用して高分 子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムの直接通電によるグラフアイトの製造方 法では、原料フィルムを 1つの直接通電可能な容器内に保持して、該容器一つ一つ の外部周辺にカーボン粉末で充填し、全体に通電してグラフアイトフィルムを作製す る。この場合、多数の該容器をそれぞれカーボン粉末で覆って通電し、グラフアイトを 作製した場合には、カーボン粉末の充填密度ゃ該容器自身それぞれの電気抵抗の 差に起因して、作製したグラフアイトの品質が、原料フィルムを保持した容器によって 、品質に差が生じる場合があった。
[0077] 次に、本発明の第二のグラフアイ H匕方法について述べる。本発明の原料フィルム のグラフアイトイ匕プロセスは、電圧を印加し、直接通電可能な容器内 (A)に、該原料 フィルムを保持し、さらに直接通電可能な容器 (B)に該原料フィルムが保持されてい る容器 (A)を保持する。例えば図:!〜 3のレ、ずれかで示されてレ、る保持方法がある。 ここでは、該容器 (A)を直方体、該容器 (B)を円筒として記載しているが、該容器 (A )と該容器 (B)の形状は、必ずしも、直方体と円筒に制約されるものではない。
[0078] (1) 図 1は、該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器 (A)の外部周 辺をカーボン粉末で覆レ、(容器 (A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している状態
)、直接通電可能な容器 (B)内に、該容器 (A)が該容器 (B)と接触しないように保持 されている状態である。
[0079] (2) 図 2は、該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器 (A)の外部周 辺にカーボン粉末を覆レ、(容器 (A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している状態 )、直接通電可能な容器 (B)内に、該容器 (A)が該容器 (B)と接触するように保持さ れている状態である。
[0080] (3) 図 3は、該原料フィルムが保持されている直接可能な容器 (A)を、直接通電 可能な容器 (B)に、該容器 (A)が該容器 (B)と接触するように保持されてレ、る状態で ある。図 3では該容器 (B)内への該容器 (A)の保持にはカーボン粉末が使われてい ない。
[0081] 本発明では、原料フィルムを保持した該容器 (A)を該容器 (B)内に保持することで 、該容器 (A)に加わる電圧および/または熱を均一化でき該容器 (A)間で作製され たグラフアイトの品質には、差が生じないという特徴がある。さらに、原料フィルムを保 持した該容器 (A)の外部周辺のカーボン粉末の存在密度(充填する場合には充填 密度)を均一にでき、多数の該容器 (A)を用いた場合であっても、該容器 (A)間で作 製されたグラフアイトの品質には、差が生じないという特徴がある。
[0082] 該原料フィルムが保持されてレ、る直接通電可能な容器 (A)を直接通電可能な容器
(B)内に保持し、電圧を印加し、通電する場合には、該容器 (A)と該容器 (B)が接触 していないほうが好ましレ、。その理由は以下に示す通りである。
[0083] 該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器 (A)の外部周辺をカーボン 粉末で覆った状態で (容器 (A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましく は、充填してレ、る状態で、 ) )直接通電可能な容器 (B)内に該容器 (A)を該容器 (B) と接触しないように保持していれば、電圧を印加し通電する場合、該原料フィルムを 保持した該容器 (A)への通電が、該容器 (A)の外部周辺に存在する (好ましくは充 填した)カーボン粉末を介して該容器 (A)全面に均一に起きる。このために、該容器 (A)には、部分的な電圧の偏りが生じず均一な通電発熱が発生し、該原料フィルム が品質のバラツキがない優れたグラフアイトとなる。
[0084] 一方で、該容器 (A)と該容器 (B)が接触してレ、る状態で、電圧を印加し通電すると
、該容器 (A)と該容器 (B)が接触してレ、る部分からのみ該容器 (A)への通電が起こ るために、該容器 (A)には均一な通電発熱の発生が達成されず、該原料フィルムの グラフアイト化の均一性が(1)の場合より不充分なものとなる。
[0085] 該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器 (A)の外部周辺にカーボン 粉末を覆い(容器 (A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填し ている)状態)、直接通電可能な容器 (B)内に、該容器 (A)が該容器 (B)と接触する ように保持されている状態では、該容器 (A)への通電が、該容器 (B)と接触している 部分と、該容器 (A)の外部周辺を覆っているカーボン粉末から 2つの経路で通電が 起きる力 該容器 (B)とカーボン粉末とでは電気抵抗が異なるために、電気抵抗が低 いほうから通電が起き、該容器 (A)の通電発熱の均一性が(2)の場合より不充分なも のとなる。
[0086] 従って、該容器 (B)への該容器 (A)の保持方法として、一番好ましいのは、前記(1 )であり、次に(2)、次に(3)である。
[0087] また、図 1〜3のいずれかの保持状態に加えて、さらに、原料フィルムの周辺をカー ボン粉末で覆っている状態(該容器 (A)と原料フィルムとの間にカーボン粉末が存在 している(好ましくは充填されている)状態)、または、該容器 (B)の外部周辺にカーボ ン粉末が覆ってレ、る状態(該容器 (B)の外部周辺にカーボン粉末が存在してレ、る ( 好ましくは充填されている)状態)であっても良い。
[0088] <該原料フィルムを保持した直接通電可能な容器 (A)に通電する方法 >
本発明の原料フィルムのグラフアイ H匕プロセス、特に、通電方法について説明する 本発明において、電圧を印加し通電する方法としては、交流電圧および Z又は直流 電圧を印加し、通電することをいう。
[0089] 該原料フィルムを保持した直接通電可能な容器 (A) /原料フィルムへの通電方法 は、例えば次のような方法(1)と(2)がある。ここでは特に、黒鉛製容器の場合につい て記載するが、必ずしも、黒鉛製容器にのみ制約されるものではなレ、。また、該容器( A)を直方体、該容器 (B)を円筒として記載しているが、該容器 (A)と該容器 (B)の 形状は、必ずしも、直方体と円筒に制約されるものではない。
[0090] (1)図 4に示すような該容器 (A)の保持方法であり、黒鉛製容器 (B)内に外部周辺 をカーボン粉末で覆った黒鉛製容器 (A)を黒鉛製容器 (B)と接触しなレ、ように保持 し (該容器 (A)と該容器 (B)の間にカーボン粉末が存在してレ、る(好ましくは充填され てレ、る)状態で、保持し)、直接、黒鉛製容器 (B)に電圧を印加し、黒鉛製容器 (B) およびカーボン粉末を介して、黒鉛容器 (A) Zまたは原料フィルムに通電する方法。
[0091] (2)図 5に示すような保持方法であり、黒鉛製容器 (B)内に黒鉛製容器 (A)を黒鉛 製容器 (B)と接触しないように黒鉛製容器 (A)の外部周辺をカーボン粉末で覆った 状態で保持し (該容器 (A)と該容器 (B)の間にカーボン粉末が存在してレ、る (好まし くは充填されている)状態で、保持し)、さらには、黒鉛製容器 (B)の外部周辺をカー ボン粉末で覆った状態で、(黒鉛製容器 Bの外部周辺にカーボン粉末が存在してレ、 る(好ましくは充填されてレ、る)状態で、)該容器 (B)の外部周辺に存在してレ、る(この ましくは充填されてレ、る)カーボン粉末に電圧を印加し、該容器 (B)を覆ってレ、るカー ボン粉末、黒鉛製容器 (B)、そして該容器 Aと該容器 Bの間のカーボン粉末を介して 、黒鉛容器 (A) /または原料フィルムに通電する方法。
[0092] 図 5に示す保持方法は、図 4に示す保持方法よりも、熱伝導性が高ぐ特性にバラ ツキのない優れたグラフアイトフィルムを得るうえでは、優れている。というのは、黒鉛 製容器 (B)をカーボン粉末で覆うことにより、黒鉛製容器および/または原料フィル ムに加わる通電および加熱が均一におこるためである。
[0093] (1)〜(2)のいずれかに記載した、該容器 (A) /原料フィルムへの通電方法に加 えて、原料フィルムの周辺をカーボン粉末で覆っている状態(該容器 (A)と原料フィ ルムとの間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)、または 、該容器 (A)と該容器 (B)が接触している状態であっても良いことは、レ、うまでもない
[0094] 従来の雰囲気加熱や減圧下での加熱では、加熱は、ヒーターと接触してレ、る部分 や雰囲気ガスからの熱伝導、ヒーターからの輻射熱によって原料フィルムの表面から おこなわれ、フィルムの内部と表面で不均一に黒鉛化が進行し、フィルム全体として の熱伝導性が低下した。特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進 行することで、内部からの分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィル
ムが破壊した。また破損しない場合であったとしても、フィルムが薄い場合に比べると 内部の黒鉛化は十分進行せず、熱伝導性は非常に劣るものとなった。
[0095] しかし、本発明にある電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保 持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラフアイトイ匕する工程では、結果として原 料フィルムに電圧を印加し通電して加熱するため、原料フィルムそのものの発熱が寄 与する。従って、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺からも十 分均一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフ アイトフィルムを得ることができる。さらに、 125 111ゃ225 111程度の、従来より厚い 原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表面、周辺から均一に加熱される ため、表面と内部が同時に黒鉛化し、表層に分解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形成 されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分解ガスによるフィルム破損が起こらず、 厚みの厚レ、電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフアイトフィルムを得ることができる。
[0096] 通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与えられる熱処理温 度としては最低でも 2400°C以上が必要で、好ましくは 2600°C以上、最終的には 27 00°C以上の温度で熱処理することが好ましぐ 2800°C以上で熱処理することがより 好ましい。
[0097] なお、本発明で記載の温度は、例えば直接通電可能な容器の外壁や内部の一部 などにおいて、放射温度計などを使用して計測することができる。
[0098] なお、本明細書で使う「熱処理」という言葉は、下記のような広義の意味で用いる。
従来技術の場合は、概ね、「熱処理」とは、減圧下での加熱や、ガス雰囲気での加熱 を指す。一方で、本発明の特徴である通電についても、通電の結果生じる熱が原料 フィルムに伝わることを「熱処理」と概括的に表現している場合が有る。従来技術との 対比で説明する場合に、従来の減圧下での加熱や、ガス雰囲気での加熱、通電の 結果生じる熱が原料フィルムに伝わる場合を、区別なく説明する際に、特に注釈を付 けずに複数の原理が有りうる「熱処理」という表現をすることが有る。
[0099] く通電方向と原料フィルムの法線との成す角度 >につレ、て
本発明では、通電方向と該原料フィルムの位置関係は、原料フィルムへの通電方 向を示す直線と、原料フィルムの法線との、成す角度が 0度より大きく 180度未満であ
ればよい。ここでいう、成す角度とは、通電における正極から負極への通電方向を直 線で表した場合の、原料フィルムの面方向に対する法線との成す角度を意味する。
[0100] 原料フィルムの面方向に対する法線と、通電方向を示す直線との、成す角は、好ま しくは 60度以上 120度以下、さらに好ましくは 75度以上 105度以下、最も好ましくは 90度である。
[0101] 原料フィルムへの通電方向と原料フィルムの法線の成す角と 90度がもっとも好まし い理由としては、成す角が 90度であれば、通電方向が原料フィルムの面方向である ために、原料フィルムに均一な通電が可能であり、品質の優れたグラフアイトフィルム が得られる。
[0102] 一方で、通電方向と原料フィルムの面方向に対する法線との成す角が 0度で、通電 方向が原料フィルムの厚み方向である場合、原料フィルムを容器 (A)内に保持する ために用いられている板状の通電可能な黒鉛を介して、原料フィルムに通電が起き るために、成す角が 90度に比べて、原料フィルムへの通電が妨げられる場合がある 。このために、成す角が 0度に比べて、 90度のほうが原料フィルム自身の通電による 加熱には有利である。
[0103] また、成す角が 0度では、通電方向が原料フィルムの厚み方向であるのに対して、 成す角 90度では、通電方向が原料フィルムの面方向であることから、成す角 90度の ほうが通電距離が長ぐこのために、成す角 90度であるほうが通電時の原料フィルム 自身の発熱にも有利である。
[0104] <電圧を印加し直接通電可能な容器 >
本発明の、電圧を印加し直接通電可能な容器とは、例えば、タングステン製、モリ ブデン製、黒鉛製の容器である。容器の形状は、特に制約を受けず、単純な平板な どの形状でよい。また容器は円筒状で、原料フィルムを容器に巻きつける方法でも良 レ、。容器の形状は、原料フィルムを保持できる限りにおいて、特に制約を受けないが 、作製の容易さ、工業的入手の容易さという観点から、例えば、直方体や立方体の形 状をしており、ブロック状、蓋などが有る弁当箱状などの形状が、好ましい。
[0105] なお、使用される容器や、本明細書中に記載の容器 (A)や容器 (B)は、それぞれ 独立に、容器内を密閉状態で使用してもよいし、密閉状態で使用しなくてもよい。
[0106] 密閉状態にする方法としては、それぞれの容器に、密閉状態が実現できるような覆 レ、を設ける方法が考えられる。密閉状態の場合には、加温'降温された結果膨張'収 縮した気体の存在に伴って、容器内部が、常圧に比べて加圧されている状態や、常 圧に比べて減圧されている状態を達成しうる。
[0107] 密閉状態にしない方法は、それぞれの容器 (容器 (A)、容器 (B)、それぞれ独立に )に覆レ、 (例えば蓋など)を設けるものの、容器と覆レ、 (例えば蓋など)との間を通じて 、加温 '降温された結果膨張 '収縮した気体が、出入り可能な状態であるような状態を 実現する方法などが有る。もちろん、容器 (容器 (A)、容器 (B) )をそのまま用いて、 覆レ、を設けなレ、方法も、密閉状態にしなレ、方法の一態様である。
[0108] 本発明においては、容器の内部が、密閉されても、密閉されなくても良い。
[0109] <黒鉛製容器 >
本発明のような 2500°Cの温度領域まで通電によって加熱されるような用途では、 取り扱いの容易さや、工業的な入手の容易さ等を勘案すると、使用される容器 (A)や 容器 (B)としては、黒鉛製の容器が、特に好ましい。ここでレ、う黒鉛とは、上記の温度 領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む 広い概念であるが、例えば、等方性黒鉛、押出製黒鉛、が挙げられ、電気伝導性、 熱伝導性に優れ、均質性にも優れる等方性黒鉛が、電流を流しまた繰り返し用いる 場合には好ましい。
[0110] <直接通電可能な容器 (B)が円筒である >につレ、て
本発明では、該容器 (B)は特に形状の限定はないが、円筒であることが好ましい。 これは、通電時に、円筒であるほうが、角筒であるよりも、電圧の偏りが生じにくいため 、該容器 (A)の全体にわたって均一な通電加熱に有利であるためである。容器(A ) については特には形状の制限はないが、工業的な入手の容易さ等を勘案すると立 方体、直方体などの角筒、もしくは円筒の形状で、操作上の利便性から蓋つきのもの が良い。
[0111] <原料フィルムが絶縁体 >
また、製造工程の初期において原料フィルムが絶縁体であるとよい。というのは、炭 化処理を通電加熱によって行われると、均一な炭化が起こり、その結果、黒鉛化中に
フィルム内で部分的な電界集中を起すことなぐ局所的な発熱が起こらず、表面及び 内部で均一な黒鉛化が進行する。その結果として、熱伝導性の優れたグラフアイトフ イルムを得ることができる。
[0112] <カーボン粉末 >
本発明において用いられるカーボン粉末は、本発明のような 2500°Cの温度領域ま で(通電によって)加熱される。
[0113] ここでレ、うカーボン粉末とは、炭素を主に含む粉末である限りにおいて、特に限定さ れるものではない、広い概念である。例えば、有機物を主に含む物質や粉末や繊維 を熱処理した後、粉末状に粉砕したものや、造粒したものでもよい。熱処理の温度は 、 200°C以上、好ましくは、 500°C以上、さらに好ましくは 1000°C以上や 1500°C以 上である。また、天然および/または人工のピッチ、コータス、カーボンブラックのよう な炭素を主に含む物質を用いてもよい。また、カーボン粉末は黒鉛であっても良レ、。 ここでいう黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を 主に含むような材料までを含む広い概念である力 例えば、グラフアイトクロスを粉砕 したもの、等方性黒鉛を粉碎したもの、押出製黒鉛を粉碎したもの、等が挙げられる 。カーボン粉末の粉末形状、粒子径、粒子径分布などは、特に制限されるものでは ない。
[0114] 本発明のカーボン粉末は、下記に説明するカーボン粒子や、黒鉛粒子であっても よい。
[0115] く黒鉛粒子〉
本発明において用いられる黒鉛粒子は、本発明のような 2500°Cの温度領域まで( 通電によって)加熱される。ここでレ、う黒鉛粒子の素材である黒鉛とは、上記の温度 領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む 広い概念であるが、例えば、グラフアイトクロスを粉砕したもの、等方性黒鉛を粉砕し たもの、押出製黒鉛を粉砕したもの、カーボンブラック、等が挙げられる。黒鉛粒子の 粒子形状、粒子径、粒子径分布などは、特に制限されるものではない。
[0116] <カーボン粒子 >
本発明において用いられるカーボン粒子は、本発明のような 2500°Cの温度領域ま
で(通電によって)加熱される。
[0117] ここでいうカーボン粒子とは、炭素を主に含む粒子である限りにおいて、特に限定さ れるものではない、広い概念である。例えば、有機物を主に含む物質や粉末や繊維 を熱処理した後、粒子状に粉砕したものや、造粒したものでもよい。熱処理の温度は 、 200°C以上、好ましくは、 500°C以上、さらに好ましくは 1000°C以上や 1500°C以 上である。
[0118] 素材の例示に関して、例えば、繊維に関して説明すると、有機繊維としては、植物 繊維、動物繊維、再生繊維、半合成繊維および合成繊維から選ばれる繊維を単独 あるいは混合したものが使用されうる。
[0119] 植物繊維としては、綿(コットン)、麻(亜麻、ラミー)が、例示される。
[0120] 動物繊維としては、絹、羊毛(カシミヤ、ウール、モヘア、キャメル)などの繊維が挙 げられる。
[0121] 再生繊維としては、レーヨン、キュブラが、例示される。
[0122] 半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス力 例示される。
[0123] 合成繊維としては、ナイロン、ァラミド、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニ ノレ、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ベンゾエート、ポリクラール、フエノー ル系、ポリウレタンなどの繊維力 例示される。
[0124] 上記の繊維の他に、植物繊維として、広葉樹パルプ針葉樹パルプ、などの木材パ ルプゃ藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプなどの木本類、草本類を含むものとする。 さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維も含まれる。
[0125] 上記の各種繊維の定義は、繊維ハンドブック(日本化学繊維協会 1993年度版)な どを用いた。
[0126] もちろん、有機繊維と下記の無機繊維の混合物であってもよい。無機繊維としては 、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維およびウイスカーから選ばれる繊維を単独あ るいは混合したものが使用されうる。
[0127] 上記のように、繊維に関して説明したが、カーボン粉末の原料は、上記に限らず、 熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂であってもよい。
[0128] また、カーボン粉末の一つの例示である黒鉛粉末の素材である黒鉛とは、上記の
温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを 含む広い概念であるが、例えば、グラフアイトクロスを粉碎したもの、等方性黒鉛を粉 砕したもの、押出製黒鉛を粉碎したもの、カーボンブラック、等が挙げられる。
[0129] カーボン粉末の粉末形状、粒子径、粒子径分布などは、特に制限されるものでは ない。
[0130] また、カーボン粉末は、下記のような、熱可塑性樹脂や熱硬化性化合物を熱処理し て得たものであっても良い。
[0131] 熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプ レン、ポリブタジエン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩ィ匕ビュル、スチレン樹脂、耐衝撃性 ポリスチレン、アクリロニトリル一スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル一ブタジェ ン一スチレン樹脂 (ABS樹脂)、メチルメタタリレート一ブタジエン一スチレン樹脂(M BS樹脂)、メチルメタタリレート一アクリロニトリル一ブタジエン一スチレン樹脂(MAB S樹脂)、アクリロニトリル—アクリルゴム—スチレン樹脂 (AAS樹脂)、ポリメチル (メタ )アタリレート、ポリカーボネート、変性ポリフエ二レンエーテル(PPE)、ポリアミド(脂肪 族系及び/又は芳香族系)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレン テレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリフエ二レンスルフイド、ポリイミド、ポ リエ一テルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエー テルニトリル、ポリチォエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリべンズイミダゾ ール、ポリカルポジイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、複合プ ラスチック等を挙げることができる。
[0132] 熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、イソシァネー H匕合物、シアン酸エステ ル化合物、アクリルゃメタクリルやビュル等のビュル基を有する化合物、キシレン樹脂 、グアナミン樹脂、 DFK樹脂、フエノール樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、マレイン 酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等を例示することが出来る。
[0133] エポキシ化合物としては例えば、ェピコート 828 (ジャパンエポキシレジン株式会社 製)等のビスフヱノール樹脂、 180S65 (ジャパンエポキシレジン株式会社製)等のォ ルソクレゾールノボラック樹脂、 157S70 (ジャパンエポキシレジン株式会社製)等の ビスフエノール Aノボラック樹脂、 1032H60 (ジャパンエポキシレジン株式会社製)等
のトリスヒドロキシフエニルメタンノボラック樹脂、 ESN375等のナフタレンァラルキルノ ポラック樹脂、テトラフエ二ロールェタン 1031S (ジャパンエポキシレジン株式会社製) 、 YGD414S (東都化成)、トリスヒドロキシフヱニルメタン EPPN502H (日本化薬)、 特殊ビスフエノール VG3101L (三井化学)、特殊ナフトール NC7000 (日本化薬)、 TETRAD -X, TETRAD _C (三菱瓦斯化学社製)等のグリシジルァミン型樹脂な どがあげられる。
[0134] またイソシァネートイ匕合物として例えば、脂肪族、脂環族または芳香族のジイソシァ ネート等があり、例えば 1 , 4—テトラメチレンジイソシァネート、 1, 5 ^ンタメチレン ジイソシァネ一ト、 1 , 6 _へキサメチレンジイソシァネ一ト、 2, 2, 4_トリメチル一1 , 6 —へキサメチレンジイソシァネート、リジンジイソシァネート、 3_イソシァネ一トメチノレ —3, 5, 5—トリメチルシクロへキシルイソシァネ一ト(イソホロンジイソシァネ一ト)、 1 , 3 _ビス(イソシァネ一トメチル)一シクロへキサン、 4, 4'—ジシクロへキシルメタンジ イソシァネート、トリレンジイソシァネート、 4, 4'ージフエニルメタンジイソシァネート、 ト等を挙げることが出来る。
[0135] さらに、イソシァネート化合物として、脂肪族、脂環族または芳香族のイソシァネート 力 誘導されるもの、例えばイソシァヌレ一ト変性イソシァネ一ト、ビュレット変性イソシ ァネ一ト、ウレタン変性イソシァネ一ト等であってもよい。また、イソシァネ一ト化合物 のイソシァネート基をブロック剤でブロックしたブロックイソシァネートなどであってもよ レ、。
[0136] 前記のブロック化剤としては例えば、アルコール系、フエノール系、活性メチレン系 、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾ一ル系、尿素系、ォキシム系、アミ ン系、重亜硫酸塩、イミン系、イミド系化合物、ピリジン系化合物等があり、これらを単 独あるいは、混合して使用してもよい。具体的なブロック化剤としては、アルコ―ル系 としてメタノ一ノレ、ェタノ一ノレ、プロパノ一ノレ、ブタノ一ノレ、 2ェチルへキサノ一ノレ、メチ ノレセロソルブ、ブチルセ口ソルブ、メチルカルビト一ノレ、ベンジルアルコ一ノレ、シクロ へキサノ一ノレ等、フエノーノレ系として、フエノーノレ、クレゾ一ノレ、 ェチノレフエノ一ノレ、ブ チルフエノ一ノレ、ノユルフェノ一ノレ、ジノユルフェノ一ノレ、スチレン化フエノール、ヒドロ
キシ安息香酸エステル等、活性メチレン系として、マロン酸ジメチル、マロン酸ジェチ ル、ァセト酢酸メチル、ァセト酢酸ェチル、ァセチルアセトン等、メルカプタン系として 、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、酸アミド系として、ァセトァニリド、酢 酸アミド、 ε—力プロラタタム、 δ—バレロラタタム、 y—ブチ口ラタタム等、酸イミド系 として、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、イミダゾ一ル系として、イミダゾ一ル、 2—メチ ノレイミダゾ一ル、尿素系として、尿素、チォ尿素、エチレン尿素等、ォキシム系として、 ホルムアルデヒドォキシム、ァセトアルデヒドォキシム、ァセトォキシム、メチルェチル ケトォキシム、シクロへキサノンォキシム等、アミン系として、ジフエニルァミン、ァニリ ン、力ルバゾール等、イミン系として、エチレンィミン、ポリエチレンイミン等、重亜硫酸 塩として、重亜硫酸ソ一ダ等、ピリジン系として、 2—ヒドロキシピリジン、 2—ヒドロキシ キノリン等が挙げられる。
アクリルゃメタクリルやビュル等のビュル基を有する化合物等としては、ビスフエノー ル F EO変性(n= 2〜50)ジアタリレート、ビスフエノーノレ A E〇変性(n= 2〜50) ジアタリレート'ビスフエノール S E〇変性(n= 2〜50)ジアタリレート、 1, 6—へキサ ンジオールジアタリレート、ネオペンチルグリコールジアタリレート、エチレングリコール ジアタリレート、ペンタエリスリトールジアタリレート、トリメチロールプロパントリアタリレ ート、ペンタエリスリトールトリアタリレート、ジペンタエリスリトールへキサアタリレート、 テトラメチロールプロパンテトラアタリレート、テトラエチレングリコールジアタリレート、 1
, 6—へキサンジオールジメタタリレート、ネオペンチルグリコールジメタタリレート、ェ チレングリコールジメタタリレート、ペンタエリスリトールジメタタリレート、トリメチロール プロパントリメタタリレート、ペンタエリスリトールトリメタタリレート、ジペンタエリスリトー ルへキサメタタリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタタリレート、テトラエチレング リコールジメタタリレート、メトキシジエチレングリコールメタタリレート、メトキシポリェチ レングリコールメタタリレート、 /3—メタクロィルォキシェチルハイドロジェンフタレート、 β—メタクロィルォキシェチルハイドロジェンサクシネート、 3 _クロ口 _ 2—ヒドロキシ プロピルメタタリレート、ステアリルメタタリレート、フエノキシェチルアタリレート、フエノ キシジエチレングリコールアタリレート、フヱノキシポリエチレングリコールアタリレート、 β—アタリロイルォキシェチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアタリレート、ェチ
レングリコールジメタタリレート、ジエチレングリコールジメタタリレート、トリエチレングリ コールジメタタリレート、ポリエチレングリコールジメタタリレート、 1, 3—ブチレングリコ ールジメタタリレート、 1 , 6—へキサンジオールジメタタリレート、ネオペンチルグリコ ールジメタタリレート、ポリプロピレングリコールジメタタリレート、 2—ヒドロキシ一1 , 3 —ジメタクロキシプロパン、 2, 2_ビス [4— (メタクロキシエトキシ)フエニル]プロパン 、 2, 2_ビス [4— (メタクロキシ 'ジェトキシ)フエニル]プロパン、 2, 2_ビス [4— (メタ クロキシ.ポリエトキシ)フエニル]プロパン、ポリエチレングリコールジアタリレート、トリ プロピレングリコールジアタリレート、ポリプロピレングリコールジアタリレート、 2, 2—ビ ス [4—(アタリロキシ 'ジェトキシ)フエニル]プロパン、 2, 2_ビス [4—(アタリロキシ' ポリエトキシ)フエニル]プロパン、 2—ヒドロキシ _ 1—アタリロキシ 3 _メタクロキシプロ パン、トリメチロールプロパントリメタタリレート、テトラメチロールメタントリアタリレート、 テトラメチロールメタンテトラアタリレート、メトキシジプロピレングリコールメタタリレート、 メトキシトリエチレングリコールアタリレート、ノニルフエノキシポリエチレングリコールァ タリレート、ノニルフエノキシポリプロピレングリコールアタリレート、 1—アタリロイルォキ シプロピルー2—フタレート、イソステアリルアタリレート、ポリオキシエチレンアルキル エーテルアタリレート、ノユルフェノキシエチレングリコールアタリレート、ポリプロピレン グリコールジメタタリレート、 1 , 4 ブタンジオールジメタタリレート、 3—メチノレー 1 , 5 ペンタンジオールジメタタリレート、 1, 6—メキサンジオールジメタタリレート、 1 , 9 ノナンジオールメタタリレート、 2, 4—ジェチルー 1, 5—ペンタンジオールジメタクリレ ート、 1, 4ーシクロへキサンジメタノールジメタタリレート、ジプロピレングリコールジァ タリレート、トリシクロデカンジメタノールジアタリレート、 2, 2—水添ビス [4—(アタリ口 キシ.ポリエトキシ)フエニル]プロパン、 2, 2_ビス [4—(アタリロキシ 'ポリプロポキシ) フエ二ノレ]プロパン、 2, 4—ジェチル一1 , 5 _ペンタンジオールジアタリレート、ェトキ シ化トリメチロールプロパントリアタリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリア タリレート、イソシァヌル酸トリ(ェタンアタリレート)、ペンタスリトールテトラアタリレート、 エトキシ化ペンタスリトールテトラアタリレート、プロポキシ化ペンタスリトールテトラァク リレート、ジトリメチロールプロパンテトラアタリレート、ジペンタエリスリトールポリアタリ レート、イソシァヌル酸トリアリル、グリシジルメタタリレート、グリシジルァリルエーテル、
1 , 3, 5—トリ了クリロイノレへキサヒドロー s トリ了ジン、トリ了リノレー 1 , 3, 5—ベンゼン カルボキシレート、トリアリルァミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、ァロ バービタル(5, 5—ジァリルバルビツル酸)、ジァリルァミン、ジァリルジメチルシラン、 ジァリルジスルフイド、ジァリルエーテル、ザリルシアルレート、ジァリルイソフタレート、 ジァリルテレフタレート、 1, 3—ジァリロキシ一 2 _プロパノール、ジァリルスルフイドジ ァリルマレエート、 4, 4'—イソプロピリデンジフエノールジメタタリレート、 4, 4'—イソ プロピリデンジフヱノールジアタリレート等が好ましいが、これらに限定されなレ、。架橋 密度を向上するためには、特に 2官能以上のモノマーを用いることが望ましい。
[0138] なお、熱硬化性化合物として、 1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合して 用いてもよい。
[0139] シアン酸エステル化合物とは、シアン酸エステルを分子内にもっていれば特に限定 されないが、以下のように例示することができる。
[0140] シアン酸エステルの例としては、 1 , 3 ジシァネートベンゼン、 1, 4 ジシァネート ベンゼン、 1 , 3, 5—トリシアネートベンゼン 1 , 3—ジシァネートナフタレン、 1, 4ージ シァネートナフタレン、 1 , 6—ジシァネートナフタレン、 1, 8—ジシァネートナフタレン 、 2, 6 ジシァネートナフタレン、 2, 7 ジシァネートナフタレン、 1 , 3, 6 トリシアネ ートナフタレン、 2, 2 ビス(3, 5 ジシクロー 4ーシァネートフエ二ノレ)プロパン、トリ ス(4ーシァネートフエ二ノレ)ホスファイト、トリス(4ーシァネートフエ二ノレ)ホスフェート、 およびフエノール樹脂とハロゲンィヒシアンとの反応により得られるベンゼン多核体の ポリシァネートイ匕合物等が挙げられる。例示したシアン酸エステルを加熱してオリゴマ 一化したものも同様に使用することができる。
[0141] シアン酸エステル化合物として、 1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合し て用いてもよい。
[0142] くポリイミドフィルム〉
ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする原料フィルムよりもフィルムの炭化 、黒鉛化が進行しやすいため、フィルムの電気伝導度が低温で均一に高くなりやすく 、かつ電気伝導度そのものも高くなりやすい。その結果、電圧を印加し直接通電可能 な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファ
ィ M匕する場合には、フィルム部分に炭素化の進行に伴って均一に電流が流れ、表 面及び内部での均一な発熱が起こり、厚みが薄い場合に加え、厚い場合においても 熱伝導性の高いグラフアイトとなる。また、出来上がるグラフアイトの結晶性が優れ、耐 熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損す ることなく、品質の高いグラフアイトとなる。
[0143] くポリイミドフィルムと複屈折 >
本発明に用いられるポリイミドフィルムにおいて、分子の面内配向性に関連する複 屈折 Δ ηは、フィルム面内のどの方向に関しても 0. 08以上、好ましくは 0. 10以上、 さらに好ましくは 0. 12以上、最も好ましくは 0. 14以上である。
[0144] <原料フィルムと複屈折 >
複屈折が高くなるほど、フィルムの炭化 (炭素化)、黒鉛化が進行しやすいため、フ イルムの電気伝導度が高くなりやすレ、。その結果、電圧を印加し直接通電可能な容 器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラフアイ Η匕 する工程では、フィルム部分に炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて均一 に電流が流れ、また炭素化の進行に伴いフィルムに流れる電流量が増え、表面及び 内部での均一な発熱が起こるため、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。またフィルム 面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すこ となぐ局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行 する。
[0145] また、低温で炭化 (炭素化)及び黒鉛化が進行するために、低温の熱処理中からフ イルムの電気伝導度が高くなり、表面及び内部での均一な発熱が起こり、均一な黒鉛 化が進行しやすくなる。
[0146] また、複屈折が高くなるほど、結晶性に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電 界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなぐ品質の高いグラフアイト フィルムとなる。
[0147] また、原料の厚みが厚くなつたとしても、表面と内部で均一に黒鉛化が進行するた め、熱伝導性の優れたグラフアイトが得られる。
[0148] また、複屈折が高くなるほど、得られるグラフアイトフィルムの熱伝導性が顕著に改
善される。従って、通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与え られる最高処理温度を下げることが可能となり、消費電力の低減が可能となる。短時 間の熱処理でも品質の高レ、グラフアイトフィルムとなる。
[0149] 複屈折が高くなると黒鉛化しやすくなる理由は明らかではないが、グラフアイト化の ためには分子が再配列する必要があり、複屈折の高い分子配向性に優れたポリイミ ドフィルムでは分子の再配列が最小で済むことから、ポリイミドフィルムの中でも、より 配向性に優れたポリイミドフィルムの方力 比較的低温の通電処理による熱発生に伴 う最高処理温度で、厚みが厚くても、結晶性の高いグラフアイトフィルムになると推測 される。
[0150] <複屈折 >
ここでいぅ複屈折とは、フィルム面内の任意方向の屈折率と厚み方向の屈折率との 差を意味し、フィルム面内の任意方向 Xの複屈折 Δ ηχは次式 (数式 1)で与えられる
[0151] [数 1] 複屈折 Δ η X
= (面内 X方向の屈折率 Ν χ ) - (厚み方向の屈折率 Ν ζ )
(数式 1 )
[0152] 図 6と図 7において、複屈折の具体的な測定方法が図解されている。図 6の平面図 において、フィルム 1から細レ、くさび形シート 2が測定試料として切り出される。このくさ び形シート 2は一つの斜辺を有する細長い台形の形状を有しており、その一底角が 直角である。このとき、その台形の底辺は X方向と平行な方向に切り出される。図 7は 、このようにして切り出された測定試料 2を斜視図で示している。台形試料 2の底辺に 対応する切り出し断面に直角にナトリウム光 4を照射し、台形試料 2の斜辺に対応す る切り出し断面側から偏光顕微鏡で観察すれば、干渉縞 5が観察される。この干渉 縞の数を ηとすれば、フィルム面内 X方向の複屈折 Δ ηχは、次式 (数式 2)で表される
[0153] [数 2]
(数式 2 )
[0154] ここで、 えはナトリウム D線の波長 589nmであり、 dは試料 2の台形の高さに相当す る試料の幅 3である。
[0155] なお、前述の「フィルム面内の任意方向 X」とは、例えばフィルム形成時における材 料流れの方向を基準として、 X方向が面内の 0°方向、 45°方向、 90°方向、 135°方 向のどの方向においても、の意味である。
[0156] <ポリイミドフィルムの熱的性質、機械的性質、物理的性質、化学的性質 >
また、本発明に用いられるグラフアイトの原料となるポリイミドフィルムは、 100-200 °Cの範囲において 2. 5 X 10— 5/°C未満の平均線膨張係数を有しているとよい。線膨 張係数が 2. 5 X 10— 5/°C未満であれば、熱処理中の伸びが小さぐスムースに黒鉛 化が進行し、脆くなぐ種々の特性に優れたグラフアイトを得ることができる。 このよう なポリイミドフィルムを原料に用いることで、グラフアイトへの転化が 2400°Cから始まり 、 2700°Cで十分結晶性の高いグラフアイトに転化が生じ得る。なお、その線膨張係 数は、 2. 0 X 10— 5/°C以下であることがより好ましい。
[0157] なお、原料フィルムの線膨張係数は、 TMA (熱機械分析装置)を用いて、まず試料 を 10°C/分の昇温速度で 350°Cまで昇温させた後に一旦室温まで空冷し、再度 10 °C /分の昇温速度で 350°Cまで昇温させ、 2回目の昇温時の 100°C〜200°Cにお ける平均線膨張係数を測定することによって得られる。具体的には、熱機械分析装 置(TMA:セイコー電子製 SSC/5200H ;TMA120C)を用いて、 3mm幅 X 20m m長のサイズのフィルム試料を所定の治具にセットし、弓 [張モードで 3gの荷重をかけ て窒素雰囲気下で測定が行われる。
[0158] また、本発明に用いられるポリイミドフィルムは、その弾性率が 2. 5GPa以上、好ま しくは 3. 4GPa以上であれば、グラフアイト化をより容易に行い得るということから好ま しレ、。すなわち、弾性率が 2. 5GPa以上、好ましくは 3. 4GPa以上であれば、熱処理 中のフィルムの収縮によるフィルムの破損を防止することができ、種々の特性に優れ たグラフアイトを得ることができる。
[0159] なお、フィルムの弾性率は、 ASTM— D— 882に準拠して測定することができる。
ポリイミドフィルムのより好ましい弾性率は 3. OGPa以上であり、好ましくは 4. OGPa 以上であり、さらに好ましくは 5. OGPa以上である。フィルムの弾性率が 2. 5GPaより
小さければ、熱処理中のフィルムの収縮で破損および変形しやすくなり、得られるグ ラフアイトの結晶性は劣り、密度および熱伝導性が劣る傾向にある。
[0160] フィルムの吸水率は、下記のごとく測定した。フィルムを絶乾するために、 100°Cで 30分乾燥して、 25 z m厚み 10cm角のサンプノレを作製した。この重量を測定して A1 とする。 25 z m厚み 10cm角のサンプルを蒸留水に 23°Cで 24時間浸漬し、表面の 水を拭いて除去し直ちに重量を測定した。この重量を A2とする。下記式より吸水率 を求めた。
[0161] 吸水率(%) = (八2_八1) ÷八1 100
<ポリイミドフィルムの作製方法 >
本発明で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機 溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支 持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
[0162] 本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ 、通常は、芳香族酸二無水物の少なくとも 1種とジァミンの少なくとも 1種が実質的に 等モル量で有機溶媒中に溶解させられる。そして、得られた有機溶液は酸二無水物 とジァミンの重合が完了するまで制御された温度条件下で攪拌され、これによつてポ リアミド酸が製造され得る。このようなポリアミド酸溶液は、通常は 5〜35wt%、好まし くは 10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に、適当な分子量と 溶液粘度を得ることができる。
[0163] 重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができる力 例えば次のような重 合方法(1)一(5)が好ましい。
[0164] (1)芳香族ジァミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テ トラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
[0165] (2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過小モル量の芳香族ジァミン 化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレボリマを 得る。続いて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して実質的に等モルになるよう に芳香族ジァミンィ匕合物を用いて重合させる方法。
[0166] これは、請求項 17で記載した、ジァミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を
両末端に有するプレボリマを合成し、前記プレボリマに前記とは異なるジァミンを反応 させてポリアミド酸を合成する方法と同様である。
[0167] (3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジァミン化 合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレボリマを得る。 続いて、このプレボリマに芳香族ジァミン化合物を追加添加後に、芳香族テトラカル ボン酸二無水物と芳香族ジァミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラ カルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
[0168] (4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および Zまたは分 散させた後に、その酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジァミン 化合物を用いて重合させる方法。
[0169] (5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジァミンの混合物 を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
[0170] これらの中でも(2)、 (3)に示すプレボリマを経由するシーケンシャル制御(シーケ ンスコントロール)(ブロックポリマー同士の組み合わせ.ブロックポリマー分子同士の 繋がりの制御)をして重合する方法が好ましい。というのは、この方法を用いることで、 複屈折が大きぐ線膨張係数が小さいポリイミドフィルムが得られやすぐこのポリイミ ドフィルムを熱処理することにより、結晶性が高ぐ密度および熱伝導性が優れたダラ ファイトを得やすくなるからである。また、規則正しぐ制御されることで、芳香環の重 なりが多くなり、低温の熱処理でもグラフアイト化が進行しやすくなると推定される。ま た複屈折を高めるために、イミド基含有量を増やすと、樹脂中の炭素比率が減り、黒 鉛処理後の炭素化収率が減るが、シーケンシャル制御をして合成されるポリイミドフィ ルムは、樹脂中の炭素比率を落とすことなぐ複屈折を高めることが出来るために好 ましい。
[0171] 本発明においてポリイミドの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸二無 水物、 2, 3, 6, 7_ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、 3, 3' , 4, 4 '—ビフエニル テトラカルボン酸二無水物、 1 , 2, 5, 6 _ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、 2, 2 ' , 3, 3 '—ビフエニルテトラカルボン酸二無水物、 3, 3' , 4, 4' _ベンゾフエノンテト ラカルボン酸二無水物、 2, 2_ビス(3, 4—ジカルボキシフヱニル)プロパン二無水
物、 3, 4, 9, 10—ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3, 4—ジカルボキシフエ ニル)プロパン二無水物、 1 , 1 ビス(2, 3—ジカルボキシフエニル)エタンニ無水物 、 1 , 1 ビス(3, 4—ジカルボキシフエニル)エタンニ無水物、ビス(2, 3 ジカルボ キシフヱ二ノレ)メタン二無水物、ビス(3, 4—ジカルボキシフヱ二ノレ)エタンニ無水物、 ォキシジフタル酸二無水物、ビス(3, 4—ジカルボキシフヱニル)スルホン二無水物、 p_フエ二レンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モ ノエステル酸無水物)、ビスフヱノール Aビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、お よびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いるこ とができる。
[0172] 本発明においてポリイミドの合成に用いられ得るジァミンとしては、 4, 4'—ォキシジ ァニリン、 p—フエ二レンジァミン、 4, 4'—ジアミノジフエニルプロパン、 4, 4'—ジアミ ノジフエニルメタン、ベンジジン、 3, 3'—ジクロ口べンジジン、 4, 4'—ジアミノジフエ ニルスルフイド、 3, 3 'ージァミノジフヱニルスルホン、 4, 4'ージアミノジフエニルスル ホン、 4, 4'ージアミノジフエニルエーテル(4, 4' ォキシジァニリン)、 3, 3 'ージアミ ノジフエニルエーテル(3, 3'—ォキシジァニリン)、 3, 4'—ジアミノジフエニルエーテ ノレ(3, 4'—ォキシジァニリン)、 1, 5—ジァミノナフタレン、 4, 4'ージアミノジフエ二ノレ ジェチノレシラン、 4, 4'ージアミノジフエニノレシラン、 4, 4'ージアミノジフエニノレエチノレ ホスフィンォキシド、 4, 4'ージアミノジフエ二ノレ N—メチノレアミン、 4, 4'ージアミノジフ ェニル N フエニルァミン、 1, 4—ジァミノベンゼン(p フエ二レンジァミン)、 1, 3 ージァミノベンゼン、 1 , 2—ジァミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを 単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
[0173] 特に、線膨張係数を小さくして弾性率を高くかつ複屈折を大きくし得るという観点か ら、本発明におけるポリイミドフィルムの製造では、下記式(1)で表される酸二無水物 を原料に用いることが好ましい。
式 (1)
[0175] ここで、 Rは、下記の式(2)〜式(14)に含まれる 2価の有機基の群から選択されるい
1
ずれかであって、
[0176] [化 2]
式 (1 4 )
[0177] ここで、 R、 R、 R、および Rの各々は一 CH、一 Cl、一 Br、一 F、または一〇CHの
2 3 4 5 3 3 群から選択されるレ、ずれかであり得る。
[0178] 上述の酸二無水物を用いることによって比較的低吸水率のポリイミドフィルムが得ら れ、このことはグラフアイトイ匕過程にぉレ、て水分による発泡を防止し得るとレ、う観点か らも好ましい。
[0179] 特に、酸二無水物における Rとして式(2)〜式(14)に示されているようなベンゼン
1
核を含む有機基を使用すれば、得られるポリイミドフィルムの分子配向性が高くなり、
線膨張係数が小さぐ弾性率が大きぐ複屈折が高ぐさらには吸水率が低くなるとい う観点から好ましい。
[0180] さらに線膨張係数を小さぐ弾性率を高ぐ複屈折を大きぐ吸水率を小さくするた めには、本発明におけるポリイミドの合成に下記式(15)で表される酸二無水物を原 料に用いればよい。
[0181] [化 3]
式 (1 5 )
[0182] 特に、 2つ以上のエステル結合でベンゼン環が直線状に結合された構造を有する 酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムは、屈曲鎖を含むけれども全 体として非常に直線的なコンフオメーシヨンをとりやすぐ比較的剛直な性質を有する 。その結果、この原料を用いることによってポリイミドフィルムの線膨張係数を小さくす ること力 Sでき、例えば 1. 5 X 10— 5/°C以下にすることができる。また、弾性率は 500kg f/mm2以上に大きくすることができ、吸水率は 1. 5%以下に小さくすることができる
[0183] さらに線膨張係数を小さぐ弾性率を高ぐ複屈折を大きくするためには、本発明に おけるポリイミドは、 p _フエ二レンジアミンを原料に用いて合成されることが好ましい。
[0184] また、本発明においてポリイミドの合成に用いられる最も適当なジァミンは 4, 4 ' - ォキシジァニリンと p _フエ二レンジァミンであり、これらの単独または 2者の合計モル が全ジァミンに対して 40モル%以上、さらには 50モル%以上、さらには 70モル%以 上、またさらには 80モル%以上であることが好ましレ、。さらに、 p _フエ二レンジァミン 力 S 10モル%以上、さらには 20モル%以上、さらには 30モル%以上、またさらには 40 モル0 /0以上を含むことが好ましい。これらのジァミンの含有量がこれらのモル0 /0範囲 の下限値未満になれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きぐ弾性率が
小さぐ複屈折が小さくなる傾向になる。但し、ジァミンの全量を p—フエ二レンジアミ ンにすると、発泡の少ない厚みの厚いポリイミドフィルムを得るのが難しくなるため、 4 , 4' ォキシジァニリンを使用するのが良い。
[0185] 本発明においてポリイミドフィルムの合成に用いられる最も適当な酸二無水物はピ ロメリット酸二無水物および Zまたは式(15)で表される p_フエ二レンビス(トリメリット 酸モノエステル酸二無水物)であり、これらの単独または 2者の合計モルが全酸二無 水物に対して 40モル%以上、さらには 50モル%以上、さらには 70モル%以上、また さらには 80モル%以上であることが好ましい。これら酸二無水物の使用量が 40モル %未満であれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きぐ弾性率が小さく 、複屈折が小さくなる傾向になる。
[0186] また、ポリイミドフイノレム、ポリアミド酸、ポリイミド樹脂に対して、カーボンブラック、グ ラフアイト等の添加剤を添加しても良い。
[0187] ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒である N, N ジメチル フオルムアミド、 N, N ジメチルァセトアミド、 N メチル 2—ピロリドンなどであり、 N, N ジメチルフオルムアミド、 N, N ジメチルァセトアミドが特に好ましく用いられ 得る。
[0188] 次に、ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する 熱キュア法、またはポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤やピコ リン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第 3級アミン類をイミド化促進剤として用いて イミド転化するケミカルキュア法のいずれを用いてもよレ、。中でも、イソキノリンのように 沸点の高いものほど好ましい。というのは、フィルム作製中の初期段階では蒸発せず 、乾燥の最後の過程まで、触媒効果が発揮されやすいため好ましい。特に、得られる フィルムの線膨張係数が小さぐ弾性率が高ぐ複屈折が大きくなりやすぐまた比較 的低温で迅速なグラフアイト化が可能で、品質のょレ、グラフアイトを得ることができると レ、う観点からケミカルキュアの方が好ましい。特に、脱水剤とイミド化促進剤を併用す ることは、得られるフィルムの線膨張係数が小さぐ弾性率が大きぐ複屈折が大きく なり得るので好ましい。また、ケミカルキュア法は、イミド化反応がより速く進行するの で加熱処理にぉレ、てイミド化反応を短時間で完結させることができ、生産性に優れた
工業的に有利な方法である。
[0189] 具体的なケミカルキュアによるフィルムの製造においては、まずポリアミド酸溶液に 化学量論以上の脱水剤と触媒力もなるイミド化促進剤を加えて、支持板、 PET等の 有機フィルム、ドラム、またはエンドレスベルト等の支持体上に流延または塗布して膜 状にし、有機溶媒を蒸発させることによって自己支持性を有する膜を得る。次いで、 この自己支持性膜をさらに加熱して乾燥させつつイミド化させてポリイミド膜を得る。こ の加熱の際の温度は、 150°Cから 550°Cの範囲内にあることが好ましレ、。加熱の際 の昇温速度には特に制限はないが、連続的もしくは段階的に、徐々に加熱して最高 温度がその所定温度範囲内になるようにするのが好ましい。加熱時間はフィルム厚 みや最高温度によって異なるが、一般的には最高温度に達してから 10秒から 10分 の範囲が好ましい。さらに、ポリイミドフィルムの製造工程中に、収縮を防止するため にフィルムを固定したり延伸したりする工程を含めば、得られるフィルムの線膨張係数 力 S小さぐ弾性率が高ぐ複屈折が大きくなりやすい傾向にあるので好ましい。
[0190] くポリイミドフィルムを含む、原料フィルムのグラフアイトィ匕>
グラフアイト化処理では、熱処理により炭素化した後、グラフアイト構造に転化させら れる力 その際には炭素 炭素結合の開裂と再結合が起きなければならない。ダラ ファイト化をできる限り起こしやすくするためには、その開裂と再結合が最小のェネル ギ一で起こるようにする必要がある。出発原料フィルム(例えば、上記に列記した高分 子フィルム、特にポリイミドフィルム)の分子配向は炭素化フィルム中の炭素原子の配 歹 IJに影響を与え、その分子配向はグラフアイト化の際に炭素—炭素結合の開裂と再 結合化のエネルギーを少なくする効果を生じ得る。したがって、高度な分子配向が生 じやすくなるように分子設計を行うことによって、比較的低温でのグラフアイト化が可 能になる。この分子配向の効果は、フィルム面に平行な二次元的分子配向とすること によって一層顕著になる。
[0191] グラフアイトイ匕反応における第二の特徴は、原料フィルムが厚ければ低温でグラファ ィトイ匕が進行しにくいということである。したがって、厚い原料フィルムをグラフアイトイ匕 する場合には、表面層ではグラフアイト構造が形成されているのに内部ではまだダラ ファイト構造になっていないという状況が生じ得る。原料フィルムの分子配向性はフィ
ルム内部でのグラフアイト化を促進し、結果的により低温で良質のグラフアイトへの転 化を可能にする。
[0192] 原料フィルムの表面層と内部とでほぼ同時にグラフアイトイ匕が進行するということは、 内部から発生するガスのために表面層に形成されたグラフアイト構造が破壊されると レ、う事態を避けることにも役立ち、より厚レ、フィルムのグラフアイト化を可能にする。本 発明において作製される原料フィルム (例えば、上記に列記した高分子フィルム、特 にポリイミドフィルム)は、まさにこのような効果を生じるのに最適な分子配向を有して レ、ると考えられる。
[0193] くグラフアイトフイノレムの厚み >
本発明の製造方法で作製されるグラフアイトフィルムの厚みは、 20 z m以上、好ま しくは 50 μ m以上、さらに好ましくは 90 μ m以上であると良い。特に 90 μ m以上にな ると、熱輸送量が増えるために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、温度上昇を抑 えることが可能となる。
[0194] <グラフアイトフィルムの熱拡散率 >
本発明の製造方法で作製されるグラフアイトフィルムの熱拡散率は、 5. 0 X 10— 2 /S以上、好ましくは 8. 0 X 10— 4m2/S以上、さらに好ましくは 9. 0 X 10— 4m2/S以 上であると良い。 5. 0 X 10— 4m2/S以上になると、熱伝導性が高いために、発熱機器 力 熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。一方、 5 . 0 X 10— 4m2/S未満になると、熱伝導性が悪いために、発熱機器から熱を逃がすこ とができなくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることができなくなる。
[0195] 本発明の実施例で後述するように、 90 / m以上の厚みを有し、かつ、熱拡散率が 8
X 10— 4m2/S以上であることを特徴とする、グラフアイトフィルム (原料フィルムが 225 μ mの場合)を実現できてレ、る。
[0196] 以上のように、本発明において製造工程中に原料フィルムに電圧を印加し通電す ることで加熱する工程を含むグラフアイトフィルムの製造方法を用いれば、従来よりも 熱伝導性に優れたグラフアイトを得ることができ、また従来グラフアイト化が困難であつ た厚いフィルムのグラフアイトイ匕が可能となる。具体的には、厚さが例えば 125 z m、 175 μ m、 200 μ mや 225 μ m程度のフィルムにおいても、適当な熱処理を選択する
ことにより、良質なグラフアイトへの転化が可能となる。
[0197] <用途など >
本発明の製造方法で作製されるグラフアイトフィルムは、熱伝導性、電気伝導性が 高いために、例えば、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子 機器、ノートパソコン、電子辞書、 PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤ一等の 携帯電子機器、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、 LED、有機 EL、無機 EL、 液晶プロジェクタ、時計等の表示機器、インクジェットプリンタ (インクヘッド)、電子写 真装置 (現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置、半導 体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、 CPU,メ モリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品、リジッド配 線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配 線基板(以上左記の配線板とは、プリント配線板なども含む)、真空処理装置、半導 体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置、断熱材、真空断熱材、輻射断熱材 等の断熱装置、 DVD (光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハ ードディスクドライブ等のデータ記録機器、カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジ タルビデオカメラ、顕微鏡、 CCD等の画像記録装置、充電装置、リチウムイオン電池 、燃料電池等のバッテリー機器等の放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品 、電磁シールド部品として好適である。
[0198] <使用形態など >
また、使用において、発熱体、ヒートシンク、ヒートパイプ、水冷冷却装置、ペルチェ 素子、筐体、ヒンジとの固定、熱拡散性、放熱性、取り扱い性を改善するために、片 面および/または両面に樹脂層、セラミック層、金属層、絶縁層、導電層を形成して も良い。
[0199] 以下において、本発明の種々の実施例がいくつかの比較例と共に説明される。
実施例
[0200] (ポリイミドフイルム Aの作製方法)
4, 4' ォキシジァニリンの 1当量を溶解した DMF (ジメチルフオルムアミド)溶液に 、ビロメリット酸二無水物の 1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18. 5wt%)を得た。
[0201] この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、 1当量の 無水酢酸、 1当量のイソキノリン、および DMFを含むイミド化触媒を添力卩し脱泡した。 次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布された。ァ ルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブン、遠赤外線ヒーターを用いて乾燥された。
[0202] 出来上がり厚みが 75 μ mの場合におけるフィルム作製用の乾燥条件を示す。アル ミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで 120°Cにおいて 240秒乾燥されて、 自己支 持性を有するゲルフィルムにされた。そのゲルフィルムはアルミ箔から引き剥がされ、 フレームに固定された。さらに、ゲルフィルムは、熱風オーブンにて 120°Cで 30秒、 2 75。Cで 40禾少、 400°Cで 43禾少、 450。Cで 50禾少、および遠赤外線ヒーター (こて 460。C で 23秒段階的に加熱されて乾燥された。
[0203] 以上のようにして、厚さ 25、 50、 75、 125、 225 μ mのポリイミドフイノレム(ポリイミドフ イルム A:弾性率 3. lGPa、吸水率 2. 5。/。、複屈折0. 10、線膨張係数 3. O X IO °C)が製造された。なお、その他厚みのフィルムを作製する場合には、厚みに比例し て焼成時間が調整された。例えば厚さ、 225 μ ΐηのフィルムの場合には、 75 /i mの 場合よりも焼成時間を 3倍に設定した。また、厚みか厚い場合には、ポリイミドフィルム の溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必 要がある。
[0204] 実際のグラフアイト化においては、上記方法と同様にして作製された (株)カネ力製 · アビ力ノレ AHの厚さ 25、 50、 75、 125、 225 /i mのポリイミドフイノレムを用いた。
[0205] (ポリイミドフィルム Bの作製方法)
ポリアミド酸に 4, 4' ォキシジァニリンの 1当量, p—フエ二レンジァミンの 1当量を 溶解した DMF (ジメチルフオルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の 2当量を溶 解して得られたポリアミド酸を用いた以外は実施例 1と同様にして厚さ 25、 50、 75、 1 25、 225 x mのポリイミドフイノレム(ポリイミドフイノレム B : 単十生率 4. 9GPa、吸水率 3. 0 %.複屈折 0. 14.線膨張係数 1. 5 X 10—ソ° が製造された。
[0206] (ポリイミドフィルム Cの作製方法)
ポリアミド酸に 4, 4'—ォキシジァ二リンの 3当量を溶解した DMF溶液にピロメリット 酸二無水物の 4当量を溶解して、両末端に酸無水物を有するプレボリマが合成され
た後、そのプレボリマを含む溶液に p—フエ二レンジァミンの 1当量を溶解することに よって得られたポリアミド酸を用いた以外はポリイミドフィルム Aと同様にして厚さ 25、 50、 75、 125、 225 /i mのポリイミドフイノレム(ポリイミドフイノレム C : 3単十生率 4. lGPa、 吸水率 2. 1 %、複屈折 0. 14、線膨張係数 1. 6 X 10—ソ。 C)が製造された。
[0207] 実際の黒鉛化においては、上記方法と同様にして作製された (株)カネ力製'ァピカ ノレ NPIの厚さ 25、 50、 75、 125、 225 μ mのポリイミドフイノレムを用レヽた。
[0208] (ポリイミドフィルム Dの作製方法)
4, 4'—ォキシジァ二リンの 1当量を溶解した DMF (ジメチルフオルムアミド)溶液に 、ピロメリット酸二無水物の 1当量を溶解することによって得られたポリアミド酸を用レ、、 触媒を添加されてレ、なレ、ポリアミド酸溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ 箔上に塗布された。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで 120°Cにおいて 10 分乾燥されて、自己支持性を有するゲルフィルムにされた。そのゲルフィルムはアル ミ箔から引き剥がされ、フレームに固定された。さらに、ゲノレフィルムは、熱風オーブ ンにて 120。C力ら 400。Cまで 1時間力けて昇温して乾燥され、厚さ 25、 50、 75、 125 、 225 /i mのポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム D :弾性率 2· 9GPa、吸水率 2· 5% 、複屈折 0. 08、線膨張係数 3. 5 X 10—ソ° が製造された。
[0209] (実施例 1)
ポリイミドフィルム Αを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、 1000°Cま で昇温された後、 1000°Cで 1時間熱処理して炭化処理 (炭素化処理)が行われた。 この炭素化フィルムを炭素化フィルム A'とする。
[0210] 得られた炭素化フィルム A'を縦 6cm X横 6cm X厚み 5mmの板状の平滑なグラフ アイトで上から挟んだ状態で、直方体状の黒鉛容器内に保持した状態で、容器をコ 一タスを主成分とするカーボン粉末で覆レ、、雰囲気加熱ではなぐ容器及びカーボン 粉末全体に直流電圧を通電することで 3000°Cまで加熱し、グラフアイトフィルムが作 製された。
[0211] (実施例 2)
ポリイミドフィルム Bを用いて、実施例 1と同様に一旦炭素化処理をし炭素化フィノレ ム B'を経由して、ひきつづいて実施例 1と同様に通電することで、グラフアイトフィノレ
ムが作製された。
[0212] (実施例 3)
ポリイミドフィルム Cを用いて、実施例 1と同様に一旦炭素化処理をし炭素化フィル ム C'を経由して、ひきつづいて実施例 1と同様に通電することで、グラフアイトフィノレ ムが作製された。
[0213] (実施例 4)
実施例 1で得られた炭素化フィルム A'を黒鉛容器内に保持した状態で、容器に直 接通電して 3000°Cまで加熱し、グラフアイトフィルムが作製された。
[0214] (実施例 5)
実施例 3で得られた炭素化フィルム C'を黒鉛容器内に保持した状態で、容器に直 接通電して 3000°Cまで加熱し、グラフアイトフィルムが作製された。
[0215] (実施例 6)
実施例 1で得られたポリイミドフィルム Aを黒鉛容器内に保持した状態で、容器を力 一ボン粉末で覆い、容器及びカーボン粉末全体に通電して 3000°Cまで加熱し、グ ラファイトフイルムが作製された。
[0216] (実施例 7)
実施例 3で得られたポリイミドフィルム Cを黒鉛容器内に保持した状態で、容器を力 一ボン粉末で覆い、容器及びカーボン粉末全体に通電して 3000°Cまで加熱し、グ ラファイトフイルムが作製された。
[0217] (比較例 1)
実施例 1で得られたポリイミドフィルム Aを黒鉛板に挟み、グラフアイトヒーターを有 する超高温炉を用いて減圧下で 1000°Cまで昇温され炭素化処理が行われた。引き 続いて、超高温炉を用いて 0. 09MPaの減圧アルゴン雰囲気下で 3000°Cまで昇温 され、その最高温度で 1時間保持された。その後に冷却され、グラフアイトフィルムが 得られた。
[0218] 実施例:!〜 7、比較例 1で得られたグラフアイトフィルムの熱拡散率が表 1に示されて いる。
[0219] [表 1]
散率は、光交流法による熱拡散率測定装置 (アルバック理工 (株)社から入手可能な
「LaserPit」)を用いて、 20°Cの雰囲気下、 10Hzにおいて測定された。
[0221] 実施例 1〜7で得られたグラフアイトフィルムの熱拡散率は、いずれの水準も 8. 0 X 10— 4m2ZS以上と高い熱伝導性を示した。原料厚みが薄くなるほど、高い傾向にある ものの、最も厚みの厚い例(225 z m)でも熱拡散率は 8. 0 X 10— 2/Sを有してお り、原料フィルムの厚みが 25 μ mや 50 μ m等に比べて厚みが厚くなつても十分ダラ ファイト化が進行していた。これら実施例では、電圧を印加し直接通電可能な容器内 に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラフアイトィヒする ため、原料フィルムに通電して加熱を行っているため、原料フィルムそのものの発熱 が寄与し、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺力、らも十分均 一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフアイト フィルムを得ることができたと考える。さらに、 125 111ゃ225 111程度の、従来より厚 い原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表面、周辺から均一に加熱され るため、表面と内部が同時に黒鉛化し、表層に分解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形 成されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分解ガスによるフィルム破損が起こらず 、厚みの厚い電気伝導性、熱伝導性に優れたグラフアイトフィルムを得ることができた と考える。
[0222] 一方、比較例 1で得られたグラフアイトフィルムの熱拡散率は、ポリイミドフィルム Aの 厚みが厚くなるに従い低下し、最も厚みが厚い 225 μ ΐηのポリイミドフィルムを出発原 料に用いたものでは、熱処理後フィルムが破損していた。比較例 1では加熱を不活 性ガス雰囲気及び減圧下で行っているため、ヒーターと接触している部分や雰囲気 ガスの熱伝導、ヒーターからの輻射熱によって原料フィルムの表面からおこなわれ、 フィルムの内部と表面で不均一に黒鉛化が進行し、フィルム全体としての熱伝導性が 低下したと考えられる。特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進行 することで、内部からの分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィルム が破壊したと考えられる。
[0223] 実施例 1〜3で得られたグラフアイトフィルムでは、実施例 1、 2、 3の順で優れていた 。実施例 2と 3が実施例 1よりも優れていた理由としては、実施例 2と 3の方が出発原
料の面配向が高かったためと考えられる。実施例 3が実施例 2に比べて優れていた のは、実施例 3では出発原料がシーケンスコントロールされて製造されているため、 黒鉛化中の分子の再配列を容易にしたものと考える。また、出発原料の面配向度合 いが高いほど炭素比率が高いために、分解ガスの発生量が少なぐスムースに黒鉛 化が進行したものと考える。実施例 5が実施例 4より、実施例 7が実施例 6よりも優れて いたのは同様の理由と考えられる。
[0224] 実施例 1が実施例 4より、また実施例 3が実施例 5より優れていた理由としては、実 施例 1、 3では容器に直接通電するのではなぐ容器を覆ったカーボン粉末から通電 したため、炭化が均一に起こり、品質の高いグラフアイトになったと考えられる。
[0225] 実施例 6が実施例 1より、また実施例 7が実施例 3より優れていた理由としては、実 施例 6、 7では出発フィルムにポリイミドフィルムを用いており、炭化過程より通電により 加熱されたため、炭化が均一に起こり、品質の高いグラフアイトになったと考えられる
[0226] 表 1に示すとおり、実施例 1〜7で得られたグラフアイトフィルムは原料フィルムの 40 〜50%の厚みに減少しており、十分黒鉛化が進行していることが確認できた。なお、 表 1に記載したフィルムの厚みは、レーザーホロゲージを使用して測定したものを、 1 0点平均の値を四捨五入して μ mの単位で記載した。
[0227] また、実施例:!〜 7の内、原料フィルムが 225 μ m厚みの場合、 90 μ m以上の厚み を有し、かつ、熱拡散率が 8. 0 X 10— 4m2/S以上であるグラフアイトフィルムが実現で きた。
[0228] (実施例 8)
炭化処理により得られた炭素化フィルム A' (ポリイミドフィルムの厚み 75 x m、 100c m2 (縦 100mm X横 100mm) )を、縦 150mm X横 140mm X厚み 4mmの板状の平 滑なグラフアイトで上下力 挟んだ状態で、図 8に示す縦 180mm X横 170mm X厚 み 60mmの直接通電可能な黒鉛容器 (容器 (A) )内に、保持した。該容器 (A)は、 図 9に模式的に示すように原料フィルムの面方向が直接通電可能な円筒容器 (B) ( さらに詳細に説明すると具体的には、図 10に模式的に示すような、直接通電可能な 、蓋付きの円筒容器 (B) )
の円筒の高さ方向と平行になるように保持し、該容器 (A)の外部周辺をカーボン粉 末で覆レヽ (容器 (A)と容器 (B)の間にカーボン粉末を充填し)、また図 11に示すよう に該容器 (A)を該容器 (B)と接触しないように、保持した。図 11に示すように該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、電圧を該容器 (B)の円筒の直径方 向(原料フィルムの面方向と平行)に印加し、通電することで、 3000°Cまで加熱し、グ ラファイトフイルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィ ルムの面方向に対する法線との、成す角度は、 90度である。
[0229] なお前述した図 10は、容器 (B)に蓋をする前の模式図である。なお、本実施例で は、蓋をしても、容器 (B)の中は密閉状態にはならなレ、。すなわち、蓋と容器 (B)との 間を通じて、膨張'収縮した気体が、出入り可能な状態である。
[0230] なお、以下の実施例では同様に容器 (B)の蓋を使用した。すなわち、以下の実施 例では同様に実際には、本実施例のような状態で (すなわち、蓋と容器 (B)との間を 通じて、膨張'収縮した気体が、出入り可能な状態で)、蓋を使用したものである。
[0231] ただし、以下の実施例では簡単のために、容器 (B)の蓋を図示しないこととする。
[0232] (実施例 9)
炭素化フィルム B,(ポリイミドフィルムの厚み 75 μ ΐη、 100cm2 (縦 100mm X横 10 Omm) )を使用すること以外は実施例 8と同様にして、グラフアイトフィルムが作製され た。
[0233] (実施例 10)
炭素化フィルム C,(ポリイミドフィルムの厚み 75 /i m、 100cm2 (縦 lOOmm X横 10 Omm) )を使用すること以外は実施例 8と同様にして、グラフアイトフィルムが作製され た。
[0234] (実施例 11)
炭素化フィルム D' (ポリイミドフィルムの厚み 75 X m、 100cm2 (縦 lOOmm X横 10 Omm) )を使用すること以外は実施例 8と同様にして、グラフアイトフィルムが作製され た。
[0235] (実施例 12)
図 12に示すように容器 (B)内に、該容器 (A)と該容器 (B)が接触するように、保持
すること以外は、実施例 8と同様にして、グラフアイトフィルムが作製された。
[0236] (実施例 13)
図 13に示すように容器 (A)と容器 (B)の間に何も充填しなレ、こと以外は、実施例 1 2と同様にして、グラフアイトフィルムが作製された。
[0237] (実施例 14)
図 14に示すように原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方 向に対する法線との、成す角度が、 45度であること以外は、実施例 8と同様にして、 グラフアイトフィルムが作製された。
[0238] (実施例 15)
炭化処理により、得られた炭素化フィルム A'を実施例 8と同様に原料フィルムを容 器 (A)内に保持し、図 15に示すように、容器 (A)内に保持された原料フィルムの面 方向が円筒の容器 (B)の円筒の高さ方向と垂直になるように保持し、容器 (A)の外 部周辺をカーボン粉末で覆レ、 (容器 (A)と容器 (B)の間にカーボン粉末を充填し)、 図 16に示すように容器 (B)内に該容器 (A)と該容器 (B)が接触しなレ、ように、保持し た。引き続いて、図 16に示すように該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った 状態で、電圧を該容器 (B)の円筒の直径方向(原料フィルムの面方向と平行)に通 電することで、 3000°Cまで加熱し、グラフアイトフィルムが作製された。原料フィルム への通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線との、成す角度は 、 90度である。
[0239] (実施例 16)
炭化処理により得られた炭素化フィルム A'を実施例 8と同様に原料フィルムを容器 (A)内に保持し、図 17に示すように原料フィルムの面方向が円筒の容器 (B)の円筒 の高さ方向と平行になるように保持し、容器 (A)の外部周辺をカーボン粉末で覆レ、( 容器 (A)と容器 (B)の間にカーボン粉末を充填し)、図 18に示すように容器 (B)内に 該容器 (A)と該容器 (B)が接触しないように、保持した。引き続いて、図 18に示すよ うに該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、該容器 (B)の直径方向 (原料フィルムの面方向とは垂直)に通電することで、 3000°Cまで加熱し、グラフアイ トフイルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの
面方向に対する法線との、成す角度は、 0度である。
[0240] (実施例 17)
炭化処理により、得られた炭素化フィルム A'を実施例 8と同様に原料フィルムを容 器 (A)内に保持し、図 19に示すように原料フィルムの面方向が円筒の容器 (B)の円 筒の高さ方向と平行になるように保持し、容器 (A)の外部周辺をカーボン粉末で覆 レ、 (容器 (A)と容器 (B)の間にカーボン粉末を充填し)、図 20に示すように容器 (B) 内に該容器 (A)と該容器 (B)が接触しないように、保持した。引き続いて、図 20に示 すように該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、該容器 (B)の円筒 の高さ方向(原料フィルムの面方向とは平行)に通電することで、 3000°Cまで加熱し 、グラフアイトフィルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料 フィルムの面方向に対する法線との、成す角度は、 90度である。
[0241] (実施例 18)
炭化処理により、得られた炭素化フィルム A'を実施例 8と同様に原料フィルムを容 器 (A)内に保持し、図 21に示すように原料フィルムの面方向が円筒の容器 (B)の円 筒の高さ方向と垂直になるように保持し、容器 (A)の外部周辺をカーボン粉末で覆 レ、 (容器 (A)と容器 (B)の間にカーボン粉末を充填し)、図 22に示すように円筒の容 器 (B)内に該容器 (A)と該容器 (B)が接触しなレ、ように、保持した。弓 [き続レ、て、実 施例 8と同様に該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、該容器 (B) の円筒の高さ方向(原料フィルムの面方向とは垂直)に通電することで、 3000°Cまで 加熱し、グラフアイトフィルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と 、原料フィルムの面方向に対する法線との、成す角度は、 0度である。
[0242] (実施例 19)
炭化処理により、得られた炭素化フィルム A'を実施例 8と同様に原料フィルムを容 器 (A)内に保持し、図 23に示すような角筒の容器 (B)内に該容器 (A)を保持し、さら に該容器 (A)の外部周辺をカーボン粉末で覆レ、 (容器 (A)と容器 (B)の間にカーボ ン粉末を充填し)、該容器 (A)と該容器 (B)が接触しないように、保持した。図 24に 示すように該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、原料フィルムの 面方向(角筒(B)の長辺と平行な方向)に電圧を印加し、通電することで、 3000°Cま
で加熱し、グラフアイトフィルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線 と、原料フィルムの面方向に対する法線との、成す角度は、 90度である。
[0243] (実施例 20)
炭化処理により、得られた炭素化フィルム A' (ポリイミドフイノレムの厚み 225 z m)を 実施例 8と同様に原料フィルムを容器 (A)内に、また実施例 8と同様に容器 (A)を容 器 (B)内に保持し、該原料フィルムを保持した該容器 (A)の外部周辺をカーボン粉 末で覆レ、 (容器 (A)と容器 (B)の間にカーボン粉末を充填し)、図 11に示すように容 器 (B)内に該容器 (A)と該容器 (B)が接触しなレ、ように、保持した。 § Iき続レ、て、実 施例 8と同様に該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、該容器 (B) の直径方向(原料フィルムの面方向と平行)に通電することで、 3000°Cまで加熱し、 グラフアイトフィルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フ イルムの面方向に対する法線との、成す角度は、 90度である。
[0244] (実施例 21)
炭化処理により、得られた炭素化フィルム C' (ポリイミドフィルムの厚み 225 μ m)を 実施例 8と同様に原料フィルムを容器 (A)内に、また実施例 8と同様に容器 (A)を容 器 (B)内に保持し、該原料フィルムを保持した該容器 (A)の外部周辺をカーボン粉 末で覆レヽ (容器 (A)と容器 (B)の間にカーボン粉末を充填し)、図 11に示すように容 器 (B)内に該容器 (A)と該容器 (B)が接触しなレ、ように、保持した。弓 [き続レ、て、実 施例 8と同様に該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、該容器 (B) の直径方向(原料フィルムの面方向と平行)に通電することで、 3000°Cまで加熱し、 グラフアイトフィルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フ イルムの面方向に対する法線との、成す角度は、 90度である。
[0245] (実施例 22)
得られた厚み 75 μ mのポリイミドフィルム Αを実施例 8と同様に原料フィルムを容器 (A)内に、また実施例 8と同様に容器 (A)を容器 (B)内に保持し、該原料フィルムを 保持した該容器 (A)の外部周辺をカーボン粉末で覆レ、、図 11に示すように容器 (B) 内に該容器 (A)と該容器 (B)が接触しないように、保持した。引き続いて、実施例 8と 同様に該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、該容器 (B)の直径
方向(原料フィルムの面方向と平行)に通電することで、 3000°Cまでカロ熱し、グラファ イトフィルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの 面方向に対する法線との、成す角度は、 90度である。
[0246] (実施例 23)
炭化処理により、得られた炭素化フィルム A' (ポリイミドフィルムの厚み 75 z m)を実 施例 8と同様に原料フィルムを容器 (A)内に、また実施例 8と同様に容器 (A)を容器 (B)内に保持し、該原料フィルムを保持した該容器 (A)の外部周辺をカーボン粉末 で覆レ、、図 11に示すように容器 (B)内に該容器 (A)と該容器 (B)が接触しなレ、ように 、保持した。引き続いて、該容器 (B)の外部周辺をカーボン粉末で覆わず、該容器( B)の直径方向(原料フィルムの面方向と平行)に通電することで、 3000°Cまで加熱 し、グラフアイトフィルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原 料フィルムの面方向に対する法線との、成す角度は、 90度である。
[0247] 実施例 8〜23、比較例 1で得られたグラフアイトフィルムの熱拡散率の値、原料、原 料厚み、容器 (A)と容器 (B)のセット方法、電圧印加方法、熱拡散率のバラツキ、表 面状態の均一性が表 2に示されている。原料厚みとは、炭素化する前の高分子フィ ルムの厚みである
表 2に示されている面方向の熱拡散率のバラツキは、得られたグラフアイトフィルム の熱拡散率の最大値 (MAX)と最小値 (MIN)の差を、全体平均(MEAN)と比較し た時のずれの百分率を意味し、次の式で表される。バラツキ = (MAX— MIN) / (M EAN) X 100 [%]。表中の、例えば「く 10%」とは、 10%未満であることを表す。
[0248] 表 2に示している表面状態は、 目視および粉落ち程度で表面状態の均一性を確認 し、均一性の特に優れたものを「◎」、均一性の優れたものを「〇」、少し劣るものを「 △」とした。
[0249] [表 2]
表 2
(* 1) 原料厚みとは、 炭素化前のポリイミドフィルム、 すなわち、 未炭素化ポリイミドフィルムの厚みを表す。 (* 2) 成す角とは、 原料フィルムの面方向に対する法線と電圧印加方向との成す角を表す。
[0250] 実施例 11を除ぐ実施例で得られたグラフアイトフィルムの熱拡散率は、すべての 水準で 8. 0 X 10— 4m2/S以上と高い熱伝導性を示した。
[0251] 雰囲気加熱により作製された比較例 1のグラフアイトよりも、通電加熱により作製され た実施例 8〜23のグラフアイトのほうが熱拡散率の値がすべての水準において高レ、。 また、実施例 20および実施例 21で、原料厚みが 225 z mであっても、本発明の通電 加熱によるグラフアイトイ匕により、表面状態が良好なグラフアイトフィルムが作製された
[0252] 実施例 8〜23では、直接通電可能な容器内に、原料フィルムを保持し、カーボン粉 末を介して電圧を印加し、通電しながらグラフアイトイ匕するため、炭素化の度合いに 応じて原料フィルム内にも通電され、該原料フィルム自身が発熱する。結果、原料フ イルムそのものの発熱が寄与し、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィル ム周辺からも十分均一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性 に優れたグラフアイトフィルムを得ることができたと考える。
[0253] 同じ通電方法である実施例 8〜: 11で得られたグラフアイトフィルムでは、実施例 8〜 10、 9、 8、 11の順で熱拡散率の値が優れていた。実施例 8〜: 11のなかで、実施例 1 0がもっとも優れていた理由は、出発原料がシーケンスコントロールされ製造されてい るため、面配向が高ぐ黒鉛化中の分子の再配列を容易にしたものと考える。実施例 10ではまた、出発原料の面配向度合いが高いほど炭素比率が高いために、分解ガ スの発生量が少なぐスムースに黒鉛化が進行したものと考える。実施例 21が実施 例 20より優れた理由も同様であると考える。
[0254] 同じ出発原料である実施例 8、 12、 13では、実施例 8がもっとも優れたグラフアイト であった。実施例 8では、容器 (A)と容器 (B)が接触していなレ、が、実施例 12では、 容器 (A)と容器 (B)が接触してレ、る。実施例 8では、容器 (A)と容器 (B)が接触して いないために、電圧を印加時に、容器 (A)は容器 (A)の外部周辺を覆ったカーボン 粉末から、均一な通電を受け、優れたグラフアイトが作製されたと考える。一方で、実 施例 12では、容器 (A)と容器 (B)が接触しているために、印加時に、容器 (A)の外 部周辺を覆ったカーボン粉末からと、容器 (A)と容器 (B)との接触部からの通電が生 じ、容器 (A)には、実施例 8ほどには均一な通電が達成されるのが困難と考えられ、
このために、均一な通電が達成される実施例 8で優れたグラフアイトが作製されたと推 測する。また、実施例 13では、容器 (A)の外部周辺にカーボン粉末が充填されてお らず、印加時の容器 (A)への通電は、容器 (A)と容器 (B)との接触部からのみであり 、このために、容器 (A)には、実施例 8ほどには均一な通電は達成されるのが困難と 考えられ、カーボン粉末が充填されている実施例 8、および実施例 12で実施例 13よ り優れたグラフアイトが作製されたと考える。
[0255] 実施例 8、実施例 14および実施例 16で得られたグラフアイトフィルムは、特に熱拡 散率に着目すると実施例 8が最も優れ、次に実施例 14、次に実施例 16が優れてい た。実施例 14では原料フィルムへの通電方向を示す直線と原料フィルムの面方向に 対する法線との、成す角が 45度、実施例 16では成す角が 0度であるが、実施例 8で は、成す角が 90度である。この角度の違いが、優れたグラフアイトフィルムを達成する 理由であると考えられる。すなわち、上記の成す角度が 90度である実施例 8で均一 な通電加熱が有利であるためと考えられる。実施例 17が実施例 18より熱拡散率にお レ、て優れた理由も、同様であると考える。
[0256] 実施例 8が実施例 17より優れていた理由は、以下のようであると考える。すなわち、 実施例 8では通電面が容器 (B)の円筒の直径方向であるのに対して、実施例 17で は通電面が容器 (B)の高さ方向である。電圧の偏りがない通電には実施例 8の方が 有利であるためと考えられる。
[0257] 実施例 8が実施例 19より優れていた理由は、以下のようであると考える。すなわち、 容器 (B)の形状が、実施例 8では円筒であるのに対して、実施例 19では角筒である ためである。印加通電したときに、角筒であるよりも円筒であるほうが、電圧の偏りなく 通電が可能であるためであると考えられる。
[0258] 実施例 8が実施例 23より優れていた理由としては、実施例 8では容器 (B)に直接通 電するのではなぐ容器(B)を覆ったカーボン粉末から通電したため、炭化が均一に 起こり、品質の高いグラフアイトになったと考えられる。
[0259] 実施例 10が実施例 21より表面の均一性において優れていた理由としては、実施 例 10のほうが原料フィルムの厚みが薄ぐこのために、実施例 21に比較して、通電 加熱によるグラフアイト化が表面付近と内部付近とで均一に進行するため品質の優
れたグラフアイトフィルムが作製されたと考える。とはいえ、従来、原料フィルムの厚み 力 S225 μ mのような厚いフィルムであって、原料フィルム 25cm2以上、熱拡散率が 5 X 10— 4m2/S以上、かつ、面内の熱拡散率のバラツキが 40%以下であるような例は 実現されていないため、本発明は、従来技術に比べて、大変優位である。
[0260] すべての実施例で、バラツキが 20%以下でグラフアイトフィルムが作製された力 こ れは、通電加熱による均一な原料フィルムへの加熱が達成され、および本発明にお ける容器形状に起因して、著しい通電時の電圧の偏りが発生しなかったためであると 考える。
[0261] 実施例 10で、通電加熱により非常に均一な表面状態を持つグラフアイトフィルムが 作製されたが、これは、原料フィルムの配向性が高いこと、容器 (A)と容器 (B)が接 触していないこと、前記成す角が 90度であるため、と考える。