JP5305556B2 - グラファイトフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子機器、精密機器などの放熱フィルムとして使用されるグラファイトフィルムに関するものである。
現在、一般に入手できるグラファイトフィルムとして、高分子熱分解法またはエキスパンド法により製造されたグラファイトフィルムがある。
電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得る方法として、ポリオキサジアゾール、ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリチアゾール、またはポリアミド等の高分子フィルムをアルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下や減圧下で熱処理する高分子熱分解法(特許文献1、2)が知られている。
特開昭61−275116号公報。 特許公報 第2976481号。
しかし、従来(特許文献1〜2)の高分子フィルムを雰囲気加熱や減圧下で加熱して得たグラファイトでは、熱伝導性が十分でなく、近年発熱量が急増している電子機器の放熱材料、ヒートスプレッダー材料としては十分ではなかった。
これは、雰囲気加熱による高分子熱分解法では、加熱が原料フィルムの表面から起こり、フィルムの内部と表面では不均一な黒鉛化が進行し、フィルム全体としての熱伝導性が低下したためである。
減圧下での加熱による高分子熱分解法では、加熱は、ヒーターと接触している部分からの熱伝導やヒーターからの輻射熱によっておこなわれる。しかし、このような加熱では、原料フィルムへの熱処理が不均一となるために、黒鉛化も不均一に進行し、熱伝導性が低下した。
また、従来(特許文献1〜2)の雰囲気加熱や減圧下での熱処理では、不均一な加熱であるために、フィルムの内部からのガスの発生に伴いフィルムが破損したり、またフィルムが破損しない場合であっても、内部からのガスの発生に伴い、グラファイト結晶子間が押し広げられ空気層を生じ、低密度のグラファイト層となるために面方向の熱拡散率に劣り、フィルムの強度も弱かった。
(特許文献2)では、明細書中に「圧延処理によって強靭で柔軟性に富むフィルム状グラファイトに転化することができる」、「圧延処理によって結晶子が一方向にそろった優れた物性を有するフィルムに転化できる」との記載があるが、この圧延処理が施され品質が改善されたグラファイトにおいても、フィルムの強度や柔軟性は改善されるものの、現在の電子機器などの熱問題を解決するには、熱伝導性が不十分であった。
また、上記の高分子熱分解法以外に人工的なグラファイトの製造方法としてエキスパンド法がある。しかし、エキスパンド法によるグラファイトフィルムは、粉状、燐片状の天然黒鉛を原料として、これを酸で処理後、高圧プレス加工によりフィルム形状としているために、柔軟性は有するものの、グラファイト結晶子が小さく結晶性が悪いために、熱伝導性に劣り、またフィルムの強度も弱く脆いものであった。
このように現在、一般に入手できるグラファイトフィルムは、柔軟性は有するものの、熱伝導性は満足できるものでなかった。
熱伝導性に優れたグラファイトフィルム、特に、高熱伝導性と柔軟性を兼ね備えたグラファイトフィルムを提供する。
<1>本発明の第1は、
表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルム、
である。
<2>本発明の第2は、
表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有することを特徴とする、<1>記載のグラファイトフィルム、
である。
<3>本発明の第3は、
前記の断面が、カッターナイフおよび/または剃刀を用いて割断した断面である、<1>〜<2>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<4>本発明の第4は、
前記の断面が、ミクロトームで切削した断面である、<1>〜<2>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<5>本発明の第5は、
前記の断面が、樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムを、ミクロトームで切削した断面である、<1>〜<2>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<6>本発明の第6は、
前記グラファイトフィルムが高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られることを特徴とする、<1>〜<5>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<7>本発明の第7は、
高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、電圧を印加し直接通電可能な容器内に保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程を含むことを特徴とする製造方法により得られることを特徴とする、<1>〜<6>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<8>本発明の第8は、
前記グラファイトフィルムが、前記原料フィルムを、通電可能な容器(A)内に該原料フィルムを保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、全体に通電しながらグラファイト化する工程を含むことを特徴とする製造方法により得られることを特徴とする、<1>〜<7>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<9>本発明の第9は、
前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする、<6>〜<8>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<10>本発明の第10は、
前記高分子フィルムが、複屈折0.08以上のポリイミドフィルムであることを特徴とする、<6>〜<9>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<11>本発明の第11は、
前記ポリイミドフィルムが、前駆体であるポリアミド酸を脱水剤とイミド化促進剤を用いてイミド化して作製されるポリイミドフィルムであることを特徴とする、<9>、<10>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<12>本発明の第12は、
前記ポリイミドフィルムが、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンを含むポリアミド酸を、脱水剤とイミド化促進剤とを用いてイミド化して作製されるポリイミドフィルムであることを特徴とする、<9>〜<11>に記載のグラファイトフィルム、
である。
<13>本発明の第13は、
前記ポリイミドフィルムが、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマを合成し、前記プレポリマに前記とは異なるジアミンを反応させてポリアミド酸を合成し、前記ポリアミド酸をイミド化して作製されるポリイミドフィルムであることを特徴とする、<9>〜<12>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<14>本発明の第14は、
面方向の熱拡散率が8×10-42/s以上であることを特徴とする、<1>〜<13>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<15>本発明の第15は、
前記グラファイトフィルムの厚みが60μm以上であることを特徴とする、<1>〜<14>のいずれかに記載のグラファイトフィルム、
である。
<16>本発明の第16は、
高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理してグラファイト化する工程を含むことを特徴とする、<1>〜<15>のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法、
である。
<17>本発明の第17は、
高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、電圧を印加し直接通電可能な容器内に保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程を含むことを特徴とする、<1>〜<15>のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法、
である。
<18>本発明の第18は、
高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、通電可能な容器(A)内に該原料フィルムを保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、全体に通電しながらグラファイト化する工程を含むことを特徴とする、<1>〜<17>のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法、
である。
本発明では、下記に示すとおり、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有することで、柔軟性に富み、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを提供することができる。
本発明のグラファイトフィルムは、その断面を見ると、フィルム表面近傍に非常に高密度なグラファイト層を形成し、内部は空気層に富んだ空気層/グラファイト層の混層を形成している、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有するグラファイトフィルムである。
面方向の熱伝導性の改善には、面方向に発達した高密度のグラファイト層が必要である。一方で、フィルムの柔軟性のためには、空気層を含んだグラファイト層が必要である。
本発明のグラファイトフィルムは、表面近傍に5μm以上の厚みの面方向に発達した高密度のグラファイト層を持ち、かつ内部は空気層に富んだ空気層/グラファイト層の混層の構成からなるグラファイトフィルムであるために、従来の提供されているグラファイトフィルムに比べて、面方向の熱拡散率に優れ、柔軟性が良いグラファイトフィルムが達成されている。また、前記表面近傍の高密度のグラファイト層のうねり(凹凸)は20μm以下であり、フィルム内をうねることなく面方向に発達しており、100μm以上にわたって途切れていないことから、熱伝導の効率がよい熱拡散率に優れたグラファイトフィルムである。
また一般に、非常に空気層に富みグラファイト層の密度が低いと、フィルムの柔軟性には有利であるが、グラファイトフィルムそのものの強度は減少し、脆くなってしまう。しかし、本発明のグラファイトフィルムは、その断面SEM像を見ると、内部に空気層に富んでいながらも、表面近傍に高密度に積層したグラファイト層が存在することで、高強度のグラファイトフィルムを達成している。
<グラファイトフィルム>
本発明の製造方法で作製されるグラファイトフィルムは、熱伝導性、電気伝導性が高いために、例えば、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器、ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器、インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置、半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品、リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(以上左記の配線板とは、プリント配線板なども含む)、真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置、断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置、DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器、カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置、充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池等のバッテリー機器等の放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁シールド部品として好適である。
<高分子フィルム>
本発明に用いることができる高分子フィルムとしては、特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBBO)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフェニレンベンゾイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾビスイミダゾール(PPBI)、ポリチアゾール(PT)が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの電気伝導性、熱伝導性が高くなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために好ましい。
<炭素化した高分子フィルム>
本発明で用いられる炭素化した高分子フィルムとしては、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは不活性ガス中で予備加熱処理して得られる。この予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度保持を行うことが望ましい。
<表面層と表面層以外>
本明細書で使う「表面層」とは、グラファイトフィルムの断面を見た場合に、フィルム全体の厚みの外側30%以内の厚みの部分であるフィルム両表面からの範囲をいう。すなわち、片側(ここで上側とする)からの表面だけから表現すると、フィルム断面の上側(反対側は下側)から0〜30%の部分、および、上側から70%〜100%の部分)を、「表面層」という。
表面層以外とは、グラファイトフィルムの断面を見た場合に上記の表面層以外の部分をいう。片側(ここで上側とする)からの表面だけから表現すると、フィルム断面の上側(反対側は下側)から30%を越えて、70%未満の部分を、「表面層以外」という。
<断面模様について>
本発明のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルムである。
初めに断面模様について説明する。断面模様の観察には、一般に提供されているグラファイトフィルムの厚みを考慮すると、電子顕微鏡(SEM(走査型電子顕微鏡)を含む)を用いることが好ましいが、断面が観察できれば特に制限はない。また、ここでは断面模様についてのみ記述するものであって、これらは、表面層および/または表面層以外のどこの部分に存在してもよい。
グラファイトフィルムの断面模様としては、以下の(1)〜(6)が考えられる。
(1)グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらがフィルム表面形状に平行に積層した高密度なグラファイト層の断面模様。
(2)グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらが積層しているが、フィルム表面形状に平行ではなく、うねった状態で存在している高密度のグラファイト層の断面模様。
(3)グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、フィルム表面形状に平行に存在している低密度な空気層に富んだグラファイト層の断面模様。
(4)グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、またフィルム表面形状に平行ではなく、うねった状態で存在している低密度な空気層に富んだグラファイト層の断面模様。
(5)グラファイト結晶子が発達しておらず、燐片状のグラファイト層の断面模様。
(6)上記(1)〜(5)以外の断面模様。
上記(6)は、例えば、グラファイト化工程において不純物などの影響により形成された、グラフェン構造ではない炭素塊などの、グラファイト層を形成していないものをいう。
面方向の優れた熱伝導性には、グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらが積層した高密度のグラファイト層が必要である。高密度のグラファイト層であれば、熱伝導のロスが少なく効率が良い。したがって、観察される上記(1)〜(6)の断面模様のなかで、高熱伝導性を示す断面模様として、好ましいのは(1)と(2)であり、次に好ましいのは(3)と(4)であり、次に好ましいのは(5)、次にこのましいのは(6)である。
一方で、フィルムの柔軟性のためには、空気層を含んだグラファイト層が必要である。これは、グラファイト層が高密度に積層し、空気層を含んでいないグラファイトフィルムでは、屈曲した場合、緩衝する部位がないために、フィルムが破損してしまうためである。また、放熱材料として使用時の形状の自由度から、柔軟性のあるグラファイトフィルムが好ましい。したがって、観察される上記(1)〜(6)の断面模様のなかで、柔軟性を示す断面模様として、好ましいのは(3)と(4)であり、次に好ましいのは(5)であり、次に好ましいのは(1)と(2)であり、次に好ましいのは(6)である。
<表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、少なくとも異なる部分>
本発明のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有している。
なお、この<表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、少なくとも異なる部分>項目中でのすべての括弧内数字
((1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6))で示される断面模様は、
上記<断面模様について>項目中での括弧内数字
((1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6))で示される断面模様を意味している。
仮に、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が高密度なグラファイト層である(1)の断面模様だけであれば、熱拡散率に優れ、フィルムの強度にも優れるが、一方で、屈曲した場合などに緩衝する部位がないために、柔軟性に乏しいグラファイトフィルムになる。また、仮に、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、空気層を含んだ低密度なグラファイト層である(3)の断面模様だけであれば、柔軟性に優れるが、熱拡散率に劣り、フィルムの強度も劣るグラファイトフィルムになる。したがって、高熱伝導性と柔軟性を兼ね備えたグラファイトフィルムには、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、上記の観察される断面模様(1)〜(6)で異なった組み合わせが好ましい。以下に示す、上記の観察される断面模様(1)〜(6)での異なった組み合わせは、表面層全体と表面層以外全体であっても、表面層の一部分、表面層以外の一部分であってもよい。
高熱伝導性と柔軟性を兼ね備えたグラファイトフィルムであるためには、組み合わせとして特に好ましくは、表面層に(1)の断面模様であって、表面層以外に(3)の断面模様である。この組み合わせにより、表面近傍に高密度なグラファイト層が存在することから面方向の熱拡散率に優れ、また表面層以外に空気層を含んだグラファイト層を有することで柔軟性を有することができる。また、表面近傍に高密度なグラファイト層が存在するために高強度のグラファイトフィルムである。
したがって、さらに拡張して一般的に、熱拡散率に優れ、柔軟性に富み、高強度のグラファイトフィルムを達成するためには、
表面層に高密度にグラファイト層が積層した(1)(2)の断面模様が存在し、表面層以外には空気層を含んだグラファイト層である(3)(4)の断面模様が存在することが好ましい。
上述したとおり、組み合わせとして特に好ましくは、
表面層に(1)の断面模様であって、表面層以外に(3)の断面模様の組み合わせである。
同様の理由で、次に好ましくは、
表面層に(1)の断面模様で、表面層以外に(4)の断面模様の組み合わせ、
次に好ましくは
表面層に(2)の断面模様で表面層以外に(3)の断面模様の組み合わせ、
次に好ましくは、
表面層に(2)の断面模様で表面層以外に(4)の断面模様の組み合わせである。
<表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状>
本発明では、断面模様の一部として観測される層状の構造を、あえて略長方形で、表現したものである。従い、実際の層状の構造が、略長方形で囲まれた閉じた空間で有る必要は無い。層状の構造が半無限に拡がっているような場合であっても、略長方形という視点で切り出して、層状の構造を表現するものである。
本発明のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有するグラファイトフィルムである。
少なくとも表面層の断面模様の一部に、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層したグラファイト層が形成されていることが望ましい。略平行に積層すれば、1μm未満の厚みの略長方形が空気層を生じることなく、高密度に積層することができ、結果として高熱伝導性のグラファイトフィルムを得ることができる。
また、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される略長方形の短辺は5μm以上であることが好ましい。これは、表面層の上記の略長方形の短辺が5μm以上であることで、面方向の熱伝導性に優れ、またフィルムの強度が十分なものとなるからである。
したがって、上記の略長方形の形状は、好ましくは短辺5μm以上、さらに好ましくは短辺10μm以上である。
1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される略長方形の長辺については、特に制限はないが、熱伝導性やフィルム強度を勘案すると、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、熱伝導性のためには上記の略長方形の長辺が長ければ長いほど好ましい。これは、上記の略長方形の長辺は、途切れることなく長ければ長いほうが、面方向の熱伝導の効率がよいためである。
<グラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成する方法>
グラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成するには、カッターナイフおよび/または剃刀で割断、ミクロトームで切削、樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムをミクロトームで切削すればよいが、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が観察できれば、これらだけに限定されることはない。
グラファイトフィルムの断面・切断面を出す・断面を形成する場合、グラファイトフィルムは一般に厚み方向の層構造を有するために、厚み方向から力を加えて切削すると、断面が潰れやすいために注意を要する。
カッターナイフおよび/または剃刀で割断してグラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成する場合は、カッターナイフおよび/または剃刀などの鋭利な刃で、グラファイトフィルムの一端に微小な切り目をいれ、その切り目の反対側から力を加えることによりフィルムを割断させる。この割断する方法は、断面を切削することではないので、断面が潰れないために、好ましく、簡便性に優れる。
ミクロトームは、切片の厚さを調節でき、また切断面の平坦性も優れる。さらに、樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムであれば、ミクロトームで切削するときの固定安定性や操作性に優れるために、さらに好ましい。
したがって、グラファイトフィルムの断面を出す方法として、好ましくはカッターナイフおよび/または剃刀で割断、次に好ましくは樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムをミクロトームで切削、次に好ましくはミクロトームで切削である。ミクロトームは、滑走式と回転式のどちらであってもよい。ただし、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が観察できれば、これらだけに限定されることはない。
<通電しながらグラファイト化する工程>
本発明の通電しながらグラファイト化する工程は、原料フィルムによって、大きく下記の3つに分類できる。
後述する「電圧を印加し直接通電可能な容器」内に、
(その1)「炭素化した高分子フィルム」を保持し、または、
(その2)「高分子フィルム」を予備加熱処理することで「炭素化した高分子フィルム」を得た後、その「炭素化した高分子フィルム」を保持し、または、
(その3)絶縁体である「高分子フィルム」を保持し、
該容器に電圧を印加し通電しながら、グラファイト化する工程を含むことを特徴とする。
下記に、(その1)から(その3)について、具体的に説明する。
(その1)原料に炭素化した高分子フィルムを用い、該フィルムを電圧印加による直接通電が可能な容器内に保持し、該容器へ電圧印加することで通電してグラファイト化する場合、該フィルムは、発熱した容器からの直接熱伝導<<1>>及びフィルムの自己発熱<<2>>による2つの手段で加熱され、品質の優れたグラファイトフィルムとなる。詳細を説明すると以下の通りである。
従来の通常の雰囲気及び減圧下での熱処理では、加熱は、雰囲気ガスの熱伝導及び/またはヒーターからの輻射熱によりおこなわれるため、フィルムが加熱される手段は基本的には、フィルム表面から内部への熱伝導の1つのみである。
しかし本発明の方法では、炭素化した高分子フィルムと導電体(容器(黒鉛製容器であってもよい)及び/又はカーボン粉末)が接している部分がフィルムの一方の表面と他方の表面であるため、電圧印加により発生したジュール熱が、炭素化した高分子フィルムの一方の表面と他方の表面の両方から直ちに伝熱する。その結果、一方の表面と他方の表面の両方から、炭素化が進行する。発熱した容器からの直接熱伝導及び後述するフィルムの自己発熱による2つの手段で加熱されフィルム内部まで十分加熱され、フィルムの表層及び内部で均一に熱処理される。
本発明では、電圧を印加し直接通電可能な容器に通電にすると、通電による発熱が生じる。
また、出発原料に炭素化した高分子フィルムを用いた場合、容器に電圧を印加すると、該フィルムは既に炭素化しているために炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて電流が流れ、黒鉛化の進行に伴い、抵抗が低くなるために、より電流が流れ、フィルム自体が発熱する。特に、電流は表層及び内部の両方に流れるため、発熱は表層及び内部の両方で同時に進行する。その結果、均一な黒鉛化が起こる。
さらに、電流は、炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて流れ、黒鉛化の進行に伴い、抵抗が低くなるために、フィルムに流れる電流量が増え、フィルムの発熱量が増加し、黒鉛化が進行しやすくなる。特に、部分的に発熱が大きくなったとしても、フィルムそのものが発熱しかつ黒鉛化が進行するに従い熱伝導性が高まるために、フィルム全体に熱が伝わり、フィルムは均一に加熱される。
グラファイトになる前の炭素化した高分子フィルムは、グラファイトと比べて熱伝導性に劣る傾向が有る。そのため、従来のような通常の雰囲気及び減圧下での熱処理では加熱手段が熱伝導の1つのみであることから、内部まで熱が十分伝わりにくく、表層と内部で黒鉛化の状態に差ができやすく、表層のみ黒鉛化し、内部に黒鉛化の不十分な部分が残る傾向が有る。結果、従来の方法では、高温に熱処理した場合に、内部の不十分な部分が発泡破裂し、フィルムがボロボロになった。
一方、本発明の方法では、電圧を印加し直接通電可能な容器そのものが電圧印加に伴い発熱しているのと同時に、炭素化・黒鉛化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて、炭素化した高分子フィルムの炭素化部分に、電流が流れ、フィルム自体が発熱する。したがって、発熱した容器からの直接熱伝導及びフィルムの自己発熱による2つの手段によって、フィルムに十分熱を供給することが可能となり、内部の熱伝導性が悪い部分にも充分熱が供給され、表層のみ黒鉛化されることなく、表層と内部が同時に黒鉛化が進行する。
さらに、フィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。また、熱処理後のグラファイトが結晶性に非常に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
(その2)また、原料フィルムとして絶縁体の高分子フィルムを用いる場合、該フィルムを、不活性ガス雰囲気下および/または減圧下で予備加熱処理して得られる、炭素化した高分子フィルムを使用できる。このようにして炭素化した高分子フィルムは、(その1)で上記記載したとおりの方法で、グラファイト化が可能である。
(その3)また、原料フィルムとして絶縁体の高分子フィルムを用いる場合、グラファイトに至るまでの炭素化過程の最初から通電によるため、炭素化も均一に起こりやすい。また、絶縁体の高分子フィルムであっても、本発明の製造方法によれば、その絶縁体の高分子フィルムと導電体(黒鉛製容器及び/又はカーボン粉末)が接している部分がフィルムの一方の表面と他方の表面であるため、電圧印加により発生したジュール熱が、絶縁体高分子フィルムの一方の表面と他方の表面の両方から直ちに伝熱する。従って、一方の表面と他方の表面の両方から、炭素化が進行する。
このように本発明では、絶縁体の高分子フィルムであっても、両方の表面に導電体が接しているため、電圧を印加し通電して加熱する場合、当初は、フィルムの両方の表面から炭素化が進行し、引き続き、フィルム内部の炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じてフィルム内部にも電流が流れ、また炭素化の進行に伴いフィルムに流れる電流量が増え、最終的に表面及び内部での均一な発熱が起こるため、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。またフィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。また、熱処理後のグラファイトの結晶性に非常に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
本発明によるグラファイトフィルムが従来製造方法によるグラファイトフィルムよりも優れた均一性を発現する理由や機構については、学術的詳細研究がさらに必要ではあるが、上記のとおり、推定できる。
<電圧を印加し通電する方法>
本発明において、電圧を印加し通電する方法としては、交流電圧および/又は直流電圧を印加し、通電することをいう。
本発明の原料フィルムのグラファイト化プロセスは、電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程を含むことによって行なわれる。例えば次のよう方法「1」−「4」で通電されるのが好ましい。ここでは特に、黒鉛製容器の場合について記載するが、必ずしも、黒鉛製容器にのみ制約されるものではない。
「1」黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「2」黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器の外部周辺をカーボン粉末で覆い(充填し)、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「3」黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持し(黒鉛製容器と原料フィルムとの間に、カーボン粉末が充填されている状態で、保持し)、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「4」黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持し(黒鉛製容器と原料フィルムとの間に、カーボン粉末が充填されている状態で、保持し)、さらに該黒鉛製容器をカーボン粉末で覆い(黒鉛製容器の外部周辺にカーボン粉末が充填されてい状態で)、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
直接通電可能な容器及び製造されたフィルムの電気伝導性から考えて、サンプルの大きさにもよるが、通電の結果、例えば原料フィルムには10mA以上の電流が流れ、ジュ−ル熱により容器および/またはフィルムが発熱する。特に、初期絶縁体で途中から導電体に変換する場合であっても、投入電力を制御することにより急激な温度上昇を防止することで、安定的に高品質のグラファイトフィルムを製造できる。
従来の雰囲気加熱や減圧下での加熱では、加熱は、ヒーターと接触している部分や雰囲気ガスからの熱伝導、ヒーターからの輻射熱によって原料フィルムの表面からおこなわれ、フィルムの内部と表面で不均一に黒鉛化が進行し、フィルム全体としての熱伝導性が低下した。特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進行することで、内部からの分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィルムが破壊した。また破損しない場合であったとしても、フィルムが薄い場合に比べると内部の黒鉛化は十分進行せず、熱伝導性は非常に劣るものとなった。
しかし、本発明にある電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程では、結果として原料フィルムに電圧を印加し通電して加熱するため、原料フィルムそのものの発熱が寄与する。従って、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺からも十分均一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。さらに、125μmや225μm程度の、従来より厚い原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表面、周辺から均一に加熱されるため、表面と内部が同時に黒鉛化し、表層に分解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形成されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分解ガスによるフィルム破損が起こらず、厚みの厚い電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
通電方法「2」である、黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器の外部周辺をカーボン粉末で覆い、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法は、通電方法「1」である黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法よりも、熱伝導性が高く、特性にバラツキのない優れたグラファイトフィルムを得るうえでは、優れている。というのは、黒鉛製容器をカーボン粉末で覆うことにより、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一におこるためである。
またさらに、通電方法「3」「4」にあるように、黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持することも、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一になるために好ましい。
通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与えられる熱処理温度としては最低でも2400℃以上が必要で、好ましくは2600℃以上、最終的には2700℃以上の温度で熱処理することが好ましく、2800℃以上で熱処理することがより好ましい。
<電圧を印加し直接通電可能な容器内に保持する方法>
電圧を印加し直接通電可能な容器(例えば黒鉛製容器)内に、原料フィルムを保持する方法とは、例えば、原料フィルムを金属板やグラファイト板で挟んだ上で、金属板やグラファイト板の自重以外には特には加圧しない状態で容器壁や容器底に接するように保持する方法が有るが、必ずしもこれらの方法だけに制約を受けるものではない。
<通電可能な容器(A)内に、原料フィルムを保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、全体に通電しながらグラファイト化する方法>
本発明のグラファイトフィルムの通電加熱によるグラファイト化方法は、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを後述する「電圧を印加し直接通電可能な容器」(A)内に保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、全体に通電しながらグラファイト化する工程を含むことを特徴とする。
<直接通電可能な容器(A)の直接通電可能な容器(B)内への保持方法>について
まず、本発明の第一のグラファイト化方法について述べる。容器(A)を容器(B)内に保持しないような場合、すなわち、容器を2つ使用せず1つの容器を使用して高分子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムの直接通電によるグラファイトの製造方法では、原料フィルムを1つの直接通電可能な容器内に保持して、該容器一つ一つの外部周辺にカーボン粉末で充填し、全体に通電してグラファイトフィルムを作製する。この場合、多数の該容器をそれぞれカーボン粉末で覆って通電し、グラファイトを作製した場合には、カーボン粉末の充填密度や該容器自身それぞれの電気抵抗の差に起因して、作製したグラファイトの品質が、原料フィルムを保持した容器によって、品質に差が生じる場合があった。
次に、本発明の第二のグラファイト化方法について述べる。本発明の原料フィルムのグラファイト化プロセスは、電圧を印加し、直接通電可能な容器内(A)に、該原料フィルムを保持し、さらに直接通電可能な容器(B)に該原料フィルムが保持されている容器(A)を保持する。例えば図1〜3のいずれかで示されている保持方法がある。ここでは、該容器(A)を直方体、該容器(B)を円筒として記載しているが、該容器(A)と該容器(B)の形状は、必ずしも、直方体と円筒に制約されるものではない。
1.図1は、該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆い(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している状態)、直接通電可能な容器(B)内に、該容器(A)が該容器(B)と接触しないように保持されている状態である。
2.図2は、該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺にカーボン粉末を覆い(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している状態)、直接通電可能な容器(B)内に、該容器(A)が該容器(B)と接触するように保持されている状態である。
3.図3は、該原料フィルムが保持されている直接可能な容器(A)を、直接通電可能な容器(B)に、該容器(A)が該容器(B)と接触するように保持されている状態である。図3では該容器(B)内への該容器(A)の保持にはカーボン粉末が使われていない。
本発明では、原料フィルムを保持した該容器(A)を該容器(B)内に保持することで、該容器(A)に加わる電圧および/または熱を均一化でき該容器(A)間で作製されたグラファイトの品質には、差が生じないという特徴がある。さらに、原料フィルムを保持した該容器(A)の外部周辺のカーボン粉末の存在密度(充填する場合には充填密度)を均一にでき、多数の該容器(A)を用いた場合であっても、該容器(A)間で作製されたグラファイトの品質には、差が生じないという特徴がある。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)を直接通電可能な容器(B)内に保持し、電圧を印加し、通電する場合には、該容器(A)と該容器(B)が接触していないほうが好ましい。その理由は以下に示す通りである。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは、充填している状態で、))直接通電可能な容器(B)内に該容器(A)を該容器(B)と接触しないように保持していれば、電圧を印加し通電する場合、該原料フィルムを保持した該容器(A)への通電が、該容器(A)の外部周辺に存在する(好ましくは充填した)カーボン粉末を介して該容器(A)全面に均一に起きる。このために、該容器(A)には、部分的な電圧の偏りが生じず均一な通電発熱が発生し、該原料フィルムが品質のバラツキがない優れたグラファイトとなる。
一方で、該容器(A)と該容器(B)が接触している状態で、電圧を印加し通電すると、該容器(A)と該容器(B)が接触している部分からのみ該容器(A)への通電が起こるために、該容器(A)には均一な通電発熱の発生が達成されず、該原料フィルムのグラファイト化の均一性が1.の場合より不充分なものとなる。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺にカーボン粉末を覆い(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填している)状態)、直接通電可能な容器(B)内に、該容器(A)が該容器(B)と接触するように保持されている状態では、該容器(A)への通電が、該容器(B)と接触している部分と、該容器(A)の外部周辺を覆っているカーボン粉末から2つの経路で通電が起きるが、該容器(B)とカーボン粉末とでは電気抵抗が異なるために、電気抵抗が低いほうから通電が起き、該容器(A)の通電発熱の均一性が2.の場合より不充分なものとなる。
従って、該容器(B)への該容器(A)の保持方法として、一番好ましいのは、前記1.であり、次に2.、次に3.である。
また、図1〜3のいずれかの保持状態に加えて、さらに、原料フィルムの周辺をカーボン粉末で覆っている状態(該容器(A)と原料フィルムとの間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)、または、該容器(B)の外部周辺にカーボン粉末が覆っている状態(該容器(B)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)であっても良い。
<該原料フィルムを保持した直接通電可能な容器(A)に通電する方法>
本発明の原料フィルムのグラファイト化プロセス、特に、通電方法について説明する。
本発明において、電圧を印加し通電する方法としては、交流電圧および/又は直流電圧を印加し、通電することをいう。
該原料フィルムを保持した直接通電可能な容器(A)/原料フィルムへの通電方法は、例えば次のような方法(1)と(2)がある。ここでは特に、黒鉛製容器の場合について記載するが、必ずしも、黒鉛製容器にのみ制約されるものではない。また、該容器(A)を直方体、該容器(B)を円筒として記載しているが、該容器(A)と該容器(B)の形状は、必ずしも、直方体と円筒に制約されるものではない。
(1)図4に示すような該容器(A)の保持方法であり、黒鉛製容器(B)内に外部周辺をカーボン粉末で覆った黒鉛製容器(A)を黒鉛製容器(B)と接触しないように保持し(該容器(A)と該容器(B)の間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、保持し)、直接、黒鉛製容器(B)に電圧を印加し、黒鉛製容器(B)およびカーボン粉末を介して、黒鉛容器(A)/または原料フィルムに通電する方法。
(2)図5に示すような保持方法であり、黒鉛製容器(B)内に黒鉛製容器(A)を黒鉛製容器(B)と接触しないように黒鉛製容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で保持し(該容器(A)と該容器(B)の間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、保持し)、さらには、黒鉛製容器(B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、(黒鉛製容器Bの外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、)該容器(B)の外部周辺に存在している(このましくは充填されている)カーボン粉末に電圧を印加し、該容器(B)を覆っているカーボン粉末、黒鉛製容器(B)、そして該容器Aと該容器Bの間のカーボン粉末を介して、黒鉛容器(A)/または原料フィルムに通電する方法。
図5に示す保持方法は、図4に示す保持方法よりも、熱伝導性が高く、特性にバラツキのない優れたグラファイトフィルムを得るうえでは、優れている。というのは、黒鉛製容器(B)をカーボン粉末で覆うことにより、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一におこるためである。
(1)〜(2)のいずれかに記載した、該容器(A)/原料フィルムへの通電方法に加えて、原料フィルムの周辺をカーボン粉末で覆っている状態(該容器(A)と原料フィルムとの間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)、または、該容器(A)と該容器(B)が接触している状態であっても良いことは、いうまでもない。
従来の雰囲気加熱や減圧下での加熱では、加熱は、ヒーターと接触している部分や雰囲気ガスからの熱伝導、ヒーターからの輻射熱によって原料フィルムの表面からおこなわれ、フィルムの内部と表面で不均一に黒鉛化が進行し、フィルム全体としての熱伝導性が低下した。特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進行することで、内部からの分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィルムが破壊した。また破損しない場合であったとしても、フィルムが薄い場合に比べると内部の黒鉛化は十分進行せず、熱伝導性は非常に劣るものとなった。
しかし、本発明にある電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程では、結果として原料フィルムに電圧を印加し通電して加熱するため、原料フィルムそのものの発熱が寄与する。従って、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺からも十分均一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。さらに、125μmや225μm程度の、従来より厚い原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表面、周辺から均一に加熱されるため、表面と内部が同時に黒鉛化し、表層に分解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形成されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分解ガスによるフィルム破損が起こらず、厚みの厚い電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与えられる熱処理温度としては最低でも2400℃以上が必要で、好ましくは2600℃以上、最終的には2700℃以上の温度で熱処理することが好ましく、2800℃以上で熱処理することがより好ましい。
なお、本発明で記載の温度は、例えば直接通電可能な容器の外壁や内部の一部などにおいて、放射温度計などを使用して計測することができる。
なお、本明細書で使う「熱処理」という言葉は、下記のような広義の意味で用いる。従来技術の場合は、概ね、「熱処理」とは、減圧下での加熱や、ガス雰囲気での加熱を指す。一方で、本発明の特徴である通電についても、通電の結果生じる熱が原料フィルムに伝わることを「熱処理」と概括的に表現している場合が有る。従来技術との対比で説明する場合に、従来の減圧下での加熱や、ガス雰囲気での加熱、通電の結果生じる熱が原料フィルムに伝わる場合を、区別なく説明する際に、特に注釈を付けずに複数の原理が有りうる「熱処理」という表現をすることが有る。
<通電方向と原料フィルムの法線との成す角度>について
本発明では、通電方向と該原料フィルムの位置関係は、原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの法線との、成す角度が0度より大きく180度未満であればよい。ここでいう、成す角度とは、通電における正極から負極への通電方向を直線で表した場合の、原料フィルムの面方向に対する法線との成す角度を意味する。
原料フィルムの面方向に対する法線と、通電方向を示す直線との、成す角は、好ましくは60度以上120度以下、さらに好ましくは75度以上105度以下、最も好ましくは90度である。
原料フィルムへの通電方向と原料フィルムの法線の成す角と90度がもっとも好ましい理由としては、成す角が90度であれば、通電方向が原料フィルムの面方向であるために、原料フィルムに均一な通電が可能であり、品質の優れたグラファイトフィルムが得られる。
一方で、通電方向と原料フィルムの面方向に対する法線との成す角が0度で、通電方向が原料フィルムの厚み方向である場合、原料フィルムを容器(A)内に保持するために用いられている板状の通電可能な黒鉛を介して、原料フィルムに通電が起きるために、成す角が90度に比べて、原料フィルムへの通電が妨げられる場合がある。このために、成す角が0度に比べて、90度のほうが原料フィルム自身の通電による加熱には有利である。
また、成す角が0度では、通電方向が原料フィルムの厚み方向であるのに対して、成す角90度では、通電方向が原料フィルムの面方向であることから、成す角90度のほうが通電距離が長く、このために、成す角90度であるほうが通電時の原料フィルム自身の発熱にも有利である。
<電圧を印加し直接通電可能な容器>
本発明の、電圧を印加し直接通電可能な容器とは、例えば、タングステン製、モリブデン製、黒鉛製の容器である。容器の形状は、特に制約を受けず、単純な平板などの形状でよい。また容器は円筒状で、原料フィルムを容器に巻きつける方法でも良い。容器の形状は、原料フィルムを保持できる限りにおいて、特に制約を受けないが、作製の容易さ、工業的入手の容易さという観点から、例えば、直方体や立方体の形状をしており、ブロック状、蓋などが有る弁当箱状などの形状が、好ましい。
なお、使用される容器や、本明細書中に記載の容器(A)や容器(B)は、それぞれ独立に、容器内を密閉状態で使用してもよいし、密閉状態で使用しなくてもよい。
密閉状態にする方法としては、それぞれの容器に、密閉状態が実現できるような覆いを設ける方法が考えられる。密閉状態の場合には、加温・降温された結果膨張・収縮した気体の存在に伴って、容器内部が、常圧に比べて加圧されている状態や、常圧に比べて減圧されている状態を達成しうる。
密閉状態にしない方法は、それぞれの容器(容器(A)、容器(B)、それぞれ独立に)に覆い(例えば蓋など)を設けるものの、容器と覆い(例えば蓋など)との間を通じて、加温・降温された結果膨張・収縮した気体が、出入り可能な状態であるような状態を実現する方法などが有る。もちろん、容器(容器(A)、容器(B))をそのまま用いて、覆いを設けない方法も、密閉状態にしない方法の一態様である。
本発明においては、容器の内部が、密閉されても、密閉されなくても良い。
<黒鉛製容器>
本発明のような2500℃の温度領域まで通電によって加熱されるような用途では、取り扱いの容易さや、工業的な入手の容易さ等を勘案すると、使用される容器(A)や容器(B)としては、黒鉛製の容器が、特に好ましい。ここでいう黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、等方性黒鉛、押出製黒鉛、が挙げられ、電気伝導性、熱伝導性に優れ、均質性にも優れる等方性黒鉛が、電流を流しまた繰り返し用いる場合には好ましい。
<直接通電可能な容器(B)が円筒である>について
本発明では、該容器(B)は特に形状の限定はないが、円筒であることが好ましい。これは、通電時に、円筒であるほうが、角筒であるよりも、電圧の偏りが生じにくいため、該容器(A)の全体にわたって均一な通電加熱に有利であるためである。容器(А)については特には形状の制限はないが、工業的な入手の容易さ等を勘案すると立方体、直方体などの角筒、もしくは円筒の形状で、操作上の利便性から蓋つきのものが良い。
<原料フィルムが絶縁体>
また、製造工程の初期において原料フィルムが絶縁体であるとよい。というのは、炭化処理を通電加熱によって行われると、均一な炭化が起こり、その結果、黒鉛化中にフィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。その結果として、熱伝導性の優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
<カーボン粉末>
本発明において用いられるカーボン粉末は、本発明のような2500℃の温度領域まで(通電によって)加熱される。
ここでいうカーボン粉末とは、炭素を主に含む粉末である限りにおいて、特に限定されるものではない、広い概念である。例えば、有機物を主に含む物質や粉末や繊維を熱処理した後、粉末状に粉砕したものや、造粒したものでもよい。熱処理の温度は、200℃以上、好ましくは、500℃以上、さらに好ましくは1000℃以上や1500℃以上である。また、天然および/または人工のピッチ、コークス、カーボンブラックのような炭素を主に含む物質を用いてもよい。また、カーボン粉末は黒鉛であっても良い。ここでいう黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、グラファイトクロスを粉砕したもの、等方性黒鉛を粉砕したもの、押出製黒鉛を粉砕したもの、等が挙げられる。カーボン粉末の粉末形状、粒子径、粒子径分布などは、特に制限されるものではない。
本発明のカーボン粉末は、下記に説明するカーボン粒子や、黒鉛粒子であってもよい。
<黒鉛粒子>
本発明において用いられる黒鉛粒子は、本発明のような2500℃の温度領域まで(通電によって)加熱される。ここでいう黒鉛粒子の素材である黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、グラファイトクロスを粉砕したもの、等方性黒鉛を粉砕したもの、押出製黒鉛を粉砕したもの、カーボンブラック、等が挙げられる。黒鉛粒子の粒子形状、粒子径、粒子径分布などは、特に制限されるものではない。
<カーボン粒子>
本発明において用いられるカーボン粒子は、本発明のような2500℃の温度領域まで(通電によって)加熱される。
ここでいうカーボン粒子とは、炭素を主に含む粒子である限りにおいて、特に限定されるものではない、広い概念である。例えば、有機物を主に含む物質や粉末や繊維を熱処理した後、粒子状に粉砕したものや、造粒したものでもよい。熱処理の温度は、200℃以上、好ましくは、500℃以上、さらに好ましくは1000℃以上や1500℃以上である。
<ポリイミドフィルム>
ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする原料フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、フィルムの電気伝導度が低温で均一に高くなりやすく、かつ電気伝導度そのものも高くなりやすい。その結果、電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する場合には、フィルム部分に炭素化の進行に伴って均一に電流が流れ、表面及び内部での均一な発熱が起こり、厚みが薄い場合に加え、厚い場合においても熱伝導性の高いグラファイトとなる。また、出来上がるグラファイトの結晶性が優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
<ポリイミドフィルムと複屈折>
本発明に用いられるポリイミドフィルムにおいて、分子の面内配向性に関連する複屈折Δnは、フィルム面内のどの方向に関しても0.08以上、好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.12以上、最も好ましくは0.14以上である。
<原料フィルムと複屈折>
複屈折が高くなるほど、フィルムの炭化(炭素化)、黒鉛化が進行しやすいため、フィルムの電気伝導度が高くなりやすい。その結果、電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながらグラファイト化する工程では、フィルム部分に炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて均一に電流が流れ、また炭素化の進行に伴いフィルムに流れる電流量が増え、表面及び内部での均一な発熱が起こるため、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。またフィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。
また、低温で炭化(炭素化)及び黒鉛化が進行するために、低温の熱処理中からフィルムの電気伝導度が高くなり、表面及び内部での均一な発熱が起こり、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。
また、複屈折が高くなるほど、結晶性に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトフィルムとなる。
また、原料の厚みが厚くなったとしても、表面と内部で均一に黒鉛化が進行するため、熱伝導性の優れたグラファイトが得られる。
また、複屈折が高くなるほど、得られるグラファイトフィルムの熱伝導性が顕著に改善される。従って、通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与えられる最高処理温度を下げることが可能となり、消費電力の低減が可能となる。短時間の熱処理でも品質の高いグラファイトフィルムとなる。
複屈折が高くなると黒鉛化しやすくなる理由は明らかではないが、グラファイト化のためには分子が再配列する必要があり、複屈折の高い分子配向性に優れたポリイミドフィルムでは分子の再配列が最小で済むことから、ポリイミドフィルムの中でも、より配向性に優れたポリイミドフィルムの方が、比較的低温の通電処理による熱発生に伴う最高処理温度で、厚みが厚くても、結晶性の高いグラファイトフィルムになると推測される。
<複屈折>
ここでいう複屈折とは、フィルム面内の任意方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意方向Xの複屈折Δnxは次式(数式1)で与えられる。
図6と図7において、複屈折の具体的な測定方法が図解されている。図6の平面図において、フィルム1から細いくさび形シート2が測定試料として切り出される。このくさび形シート2は一つの斜辺を有する細長い台形の形状を有しており、その一底角が直角である。このとき、その台形の底辺はX方向と平行な方向に切り出される。図7は、このようにして切り出された測定試料2を斜視図で示している。台形試料2の底辺に対応する切り出し断面に直角にナトリウム光4を照射し、台形試料2の斜辺に対応する切り出し断面側から偏光顕微鏡で観察すれば、干渉縞5が観察される。この干渉縞の数をnとすれば、フィルム面内X方向の複屈折Δnxは、次式(数式2)で表される。
ここで、λはナトリウムD線の波長589nmであり、dは試料2の台形の高さに相当する試料の幅3である。
なお、前述の「フィルム面内の任意方向X」とは、例えばフィルム形成時における材料流れの方向を基準として、X方向が面内の0゜方向、45゜方向、90゜方向、135゜方向のどの方向においても、の意味である。
<ポリイミドフィルムの熱的性質、機械的性質、物理的性質、化学的性質>
また、本発明に用いられるグラファイトの原料となるポリイミドフィルムは、100〜200℃の範囲において2.5×10-5/℃未満の平均線膨張係数を有しているとよい。線膨張係数が2.5×10-5/℃未満であれば、熱処理中の伸びが小さく、スムースに黒鉛化が進行し、脆くなく、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。 このようなポリイミドフィルムを原料に用いることで、グラファイトへの転化が2400℃から始まり、2700℃で十分結晶性の高いグラファイトに転化が生じ得る。なお、その線膨張係数は、2.0×10-5/℃以下であることがより好ましい。
なお、原料フィルムの線膨張係数は、TMA(熱機械分析装置)を用いて、まず試料を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させた後に一旦室温まで空冷し、再度10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させ、2回目の昇温時の100℃〜200℃における平均線膨張係数を測定することによって得られる。具体的には、熱機械分析装置(TMA:セイコー電子製SSC/5200H;TMA120C)を用いて、3mm幅×20mm長のサイズのフィルム試料を所定の治具にセットし、引張モードで3gの荷重をかけて窒素雰囲気下で測定が行われる。
また、本発明に用いられるポリイミドフィルムは、その弾性率が2.5GPa以上、好ましくは3.4GPa以上であれば、グラファイト化をより容易に行い得るということから好ましい。すなわち、弾性率が2.5GPa以上、好ましくは3.4GPa以上であれば、熱処理中のフィルムの収縮によるフィルムの破損を防止することができ、種々の特性に優れたグラファイトを得ることができる。
なお、フィルムの弾性率は、ASTM−D−882に準拠して測定することができる。ポリイミドフィルムのより好ましい弾性率は3.0GPa以上であり、好ましくは4.0GPa以上であり、さらに好ましくは5.0GPa以上である。フィルムの弾性率が2.5GPaより小さければ、熱処理中のフィルムの収縮で破損および変形しやすくなり、得られるグラファイトの結晶性は劣り、密度および熱伝導性が劣る傾向にある。
フィルムの吸水率は、下記のごとく測定した。フィルムを絶乾するために、100℃で30分乾燥して、25μm厚み10cm角のサンプルを作製した。この重量を測定してA1とする。25μm厚み10cm角のサンプルを蒸留水に23℃で24時間浸漬し、表面の水を拭いて除去し直ちに重量を測定した。この重量をA2とする。下記式より吸水率を求めた。
吸水率(%)=(A2−A1)÷A1×100
<ポリイミドフィルムの作製方法>
本発明で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常は、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種が実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解させられる。そして、得られた有機溶液は酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで制御された温度条件下で攪拌され、これによってポリアミド酸が製造され得る。このようなポリアミド酸溶液は、通常は5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に、適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、例えば次のような重合方法(1)−(5)が好ましい。
(1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
(2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマを得る。続いて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
これは、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマを合成し、前記プレポリマに前記とは異なるジアミンを反応させてポリアミド酸を合成する方法と同様である。
(3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマを得る。続いて、このプレポリマに芳香族ジアミン化合物を追加添加後に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
(4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後に、その酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
(5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
これらの中でも(2)、(3)に示すプレポリマを経由するシーケンシャル制御(シーケンスコントロール)(ブロックポリマー同士の組み合わせ・ブロックポリマー分子同士の繋がりの制御)をして重合する方法が好ましい。というのは、この方法を用いることで、複屈折が大きく、線膨張係数が小さいポリイミドフィルムが得られやすく、このポリイミドフィルムを熱処理することにより、結晶性が高く、密度および熱伝導性が優れたグラファイトを得やすくなるからである。また、規則正しく、制御されることで、芳香環の重なりが多くなり、低温の熱処理でもグラファイト化が進行しやすくなると推定される。また複屈折を高めるために、イミド基含有量を増やすと、樹脂中の炭素比率が減り、黒鉛処理後の炭素化収率が減るが、シーケンシャル制御をして合成されるポリイミドフィルムは、樹脂中の炭素比率を落とすことなく、複屈折を高めることが出来るために好ましい。
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−オキシジアニリン)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル(3,3’−オキシジアニリン)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−オキシジアニリン)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
特に、線膨張係数を小さくして弾性率を高くかつ複屈折を大きくし得るという観点から、本発明におけるポリイミドフィルムの製造では、下記式(1)で表される酸二無水物を原料に用いることが好ましい。
ここで、R1は、下記の式(2)〜式(14)に含まれる2価の有機基の群から選択されるいずれかであって、
ここで、R2、R3、R4、およびR5の各々は−CH3、−Cl、−Br、−F、または−OCH3の群から選択されるいずれかであり得る。
上述の酸二無水物を用いることによって比較的低吸水率のポリイミドフィルムが得られ、このことはグラファイト化過程において水分による発泡を防止し得るという観点からも好ましい。
特に、酸二無水物におけるR1として式(2)〜式(14)に示されているようなベンゼン核を含む有機基を使用すれば、得られるポリイミドフィルムの分子配向性が高くなり、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が高く、さらには吸水率が低くなるという観点から好ましい。
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きく、吸水率を小さくするためには、本発明におけるポリイミドの合成に下記式(15)で表される酸二無水物を原料に用いればよい。
特に、2つ以上のエステル結合でベンゼン環が直線状に結合された構造を有する酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムは、屈曲鎖を含むけれども全体として非常に直線的なコンフォメーションをとりやすく、比較的剛直な性質を有する。その結果、この原料を用いることによってポリイミドフィルムの線膨張係数を小さくすることができ、例えば1.5×10-5/℃以下にすることができる。また、弾性率は500kgf/mm2以上に大きくすることができ、吸水率は1.5%以下に小さくすることができる。
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きくするためには、本発明におけるポリイミドは、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成されることが好ましい。
また、本発明においてポリイミドの合成に用いられる最も適当なジアミンは4,4’−オキシジアニリンとp−フェニレンジアミンであり、これらの単独または2者の合計モルが全ジアミンに対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。さらに、p−フェニレンジアミンが10モル%以上、さらには20モル%以上、さらには30モル%以上、またさらには40モル%以上を含むことが好ましい。これらのジアミンの含有量がこれらのモル%範囲の下限値未満になれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。但し、ジアミンの全量をp−フェニレンジアミンにすると、発泡の少ない厚みの厚いポリイミドフィルムを得るのが難しくなるため、4,4’−オキシジアニリンを使用するのが良い。
本発明においてポリイミドフィルムの合成に用いられる最も適当な酸二無水物はピロメリット酸二無水物および/または式(15)で表されるp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸二無水物)であり、これらの単独または2者の合計モルが全酸二無水物に対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。これら酸二無水物の使用量が40モル%未満であれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。
また、ポリイミドフィルム、ポリアミド酸、ポリイミド樹脂に対して、カーボンブラック、グラファイト等の添加剤を添加しても良い。
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。
次に、ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、またはポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤やピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用いてイミド転化するケミカルキュア法のいずれを用いてもよい。中でも、イソキノリンのように沸点の高いものほど好ましい。というのは、フィルム作製中の初期段階では蒸発せず、乾燥の最後の過程まで、触媒効果が発揮されやすいため好ましい。特に、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすく、また比較的低温で迅速なグラファイト化が可能で、品質のよいグラファイトを得ることができるという観点からケミカルキュアの方が好ましい。特に、脱水剤とイミド化促進剤を併用することは、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が大きくなり得るので好ましい。また、ケミカルキュア法は、イミド化反応がより速く進行するので加熱処理においてイミド化反応を短時間で完結させることができ、生産性に優れた工業的に有利な方法である。
具体的なケミカルキュアによるフィルムの製造においては、まずポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒からなるイミド化促進剤を加えて、支持板、PET等の有機フィルム、ドラム、またはエンドレスベルト等の支持体上に流延または塗布して膜状にし、有機溶媒を蒸発させることによって自己支持性を有する膜を得る。次いで、この自己支持性膜をさらに加熱して乾燥させつつイミド化させてポリイミド膜を得る。この加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲内にあることが好ましい。加熱の際の昇温速度には特に制限はないが、連続的もしくは段階的に、徐々に加熱して最高温度がその所定温度範囲内になるようにするのが好ましい。加熱時間はフィルム厚みや最高温度によって異なるが、一般的には最高温度に達してから10秒から10分の範囲が好ましい。さらに、ポリイミドフィルムの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを固定したり延伸したりする工程を含めば、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすい傾向にあるので好ましい。
<ポリイミドフィルムを含む、原料フィルムのグラファイト化>
グラファイト化処理では、熱処理により炭素化した後、グラファイト構造に転化させられるが、その際には炭素−炭素結合の開裂と再結合が起きなければならない。グラファイト化をできる限り起こしやすくするためには、その開裂と再結合が最小のエネルギーで起こるようにする必要がある。出発原料フィルム(例えば、上記に列記した高分子フィルム、特にポリイミドフィルム)の分子配向は炭素化フィルム中の炭素原子の配列に影響を与え、その分子配向はグラファイト化の際に炭素−炭素結合の開裂と再結合化のエネルギーを少なくする効果を生じ得る。したがって、高度な分子配向が生じやすくなるように分子設計を行うことによって、比較的低温でのグラファイト化が可能になる。この分子配向の効果は、フィルム面に平行な二次元的分子配向とすることによって一層顕著になる。
グラファイト化反応における第二の特徴は、原料フィルムが厚ければ低温でグラファイト化が進行しにくいということである。したがって、厚い原料フィルムをグラファイト化する場合には、表面層ではグラファイト構造が形成されているのに内部ではまだグラファイト構造になっていないという状況が生じ得る。原料フィルムの分子配向性はフィルム内部でのグラファイト化を促進し、結果的により低温で良質のグラファイトへの転化を可能にする。
原料フィルムの表面層と内部とでほぼ同時にグラファイト化が進行するということは、内部から発生するガスのために表面層に形成されたグラファイト構造が破壊されるという事態を避けることにも役立ち、より厚いフィルムのグラファイト化を可能にする。本発明において作製される原料フィルム(例えば、上記に列記した高分子フィルム、特にポリイミドフィルム)は、まさにこのような効果を生じるのに最適な分子配向を有していると考えられる。
<グラファイトフィルムの熱拡散率>
本発明の製造方法で作製されるグラファイトフィルムの熱拡散率は、5.0×10-42/s以上、好ましくは8.0×10-42/s以上、さらに好ましくは9.0×10-42/s以上であると良い。5.0×10-42/s以上になると、熱伝導性が高いために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。一方、5.0×10-42/s未満になると、熱伝導性が悪いために、発熱機器から熱を逃がすことができなくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることができなくなる。
<用途など>
本発明の製造方法で作製されるグラファイトフィルムは、熱伝導性、電気伝導性が高いために、例えば、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器、ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器、インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置、半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品、リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(以上左記の配線板とは、プリント配線板なども含む)、真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置、断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置、DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器、カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置、充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池等のバッテリー機器等の放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁シールド部品として好適である。
<使用形態など>
また、使用において、発熱体、ヒートシンク、ヒートパイプ、水冷冷却装置、ペルチェ素子、筐体、ヒンジとの固定、熱拡散性、放熱性、取り扱い性を改善するために、片面および/または両面に樹脂層、セラミック層、金属層、絶縁層、導電層を形成しても良い。
以下において、本発明の実施例がいくつかの比較例と共に説明されるが、本発明は、下記の実施例だけに限定されるものではない。
(ポリイミドフィルムAの作製)
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布された。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブン、遠赤外線ヒーターを用いて乾燥された。
出来上がり厚みが75μmの場合におけるフィルム作製用の乾燥条件を示す。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで120℃において240秒乾燥されて、自己支持性を有するゲルフィルムにされた。そのゲルフィルムはアルミ箔から引き剥がされ、フレームに固定された。さらに、ゲルフィルムは、熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒーターにて460℃で23秒段階的に加熱されて乾燥された。
以上のようにして、厚さ75μmのポリイミドフィルム(ポリイミドフィルムA:弾性率3.1GPa、吸水率2.5%、複屈折0.10、線膨張係数3.0×10-5/℃)が製造された。なお、その他厚みのフィルムを作製する場合には、厚みに比例して焼成時間が調整された。厚みが厚い場合には、ポリイミドフィルムの溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必要がある。
実際のグラファイト化においては、上記方法と同様にして作製された(株)カネカ製・アピカルAHの厚さ75μmのポリイミドフィルムを用いた。
(ポリイミドフィルムBの作製方法)
ポリアミド酸に4,4’−オキシジアニリンの3当量を溶解したDMF溶液にピロメリット酸二無水物の4当量を溶解して、両末端に酸無水物を有するプレポリマが合成された後、そのプレポリマを含む溶液にp−フェニレンジアミンの1当量を溶解することによって得られたポリアミド酸を用いた以外はポリイミドフィルムAと同様にして厚さ75μmのポリイミドフィルム(ポリイミドフィルムB:弾性率4.1GPa、吸水率2.1%、複屈折0.14、線膨張係数1.6×10-5/℃)が製造された。
実際のグラファイト化においては、上記方法と同様にして作製された(株)カネカ製・アピカルNPIの厚さ75μmのポリイミドフィルムを用いた。
(炭素化フィルムの作製方法)
ポリイミドフィルムA、Bを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まて昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)が行われた。この炭素化フィルムを炭素化フィルムA’、B’(原料フィルム厚み:75μm)とする。
また、東レ・デュポン(株)製のKAPTОN300H(フィルム厚み:75μm)を用いた以外は、上記と同様にして、炭素化フィルムC’を作製した。
(実施例1)
炭素化処理により得られた炭素化フィルムA’、B’(400cm2(縦200mm×横200mm))を、縦270mm×横270mm×厚み3mmの板状の平滑なグラファイトで上下から挟み、 図8に示す縦300mm×横300mm×厚み60mmの直接通電可能な黒鉛容器(容器(A))内に、保持した。
該容器(A)は、図9に模式的に示すように原料フィルムの面方向が直接通電可能な円筒容器(B)(さらに詳細に説明すると具体的には、図10に模式的に示すような、直接通電可能な、蓋付きの円筒容器(B))の円筒の高さ方向と平行になるように保持し、該容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆い(容器(A)と容器(B)の間にカーボン粉末を充填し)、また図11に示すように該容器(A)を該容器(B)と接触しないように、保持した。図11に示すように該容器(B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、電圧を該容器(B)の円筒の直径方向(原料フィルムの面方向と平行)に印加し、通電することで、3000℃まで加熱し、グラファイトフィルムA’’、B’’が作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線との、成す角度は、90度である。
なお前述した図10は、容器(B)に蓋をする前の模式図である。なお、本実施例では、蓋をしても、容器(B)の中は密閉状態にはならない。すなわち、蓋と容器(B)との間を通じて、膨張・収縮した気体が、出入り可能な状態である。
グラファイトフィルムA’’を、縦20mm×横10mmの短冊状の大きさにカッターナイフで切り取った。さらにこのフィルムの一端に面方向に剃刀で微小な切り目を入れ、その切り目の反対側から力を加え、フィルムを割断させることで、グラファイトフィルムの断面を出し、SEMによるフィルムの断面の観察をおこなった。
なお、この割断の模式図を図12に示した。図12の6は短冊状のグラファイトフィルムである。図と対応して、再度説明すると、次の通りである。
グラファイトフィルムA’’を、縦20mm×横10mmの短冊状の大きさにカッターナイフで切り取ったものが、図12の5である。さらにこのフィルムの一端に面方向に剃刀で微小な切り目を入れ、その切り目の反対側から力を加え(割断時に、グラファイトフィルムに軽く力をかける方向が、図12の8である)、剃刀刃がグラファイトフィルムに対して相対的に進む方向(図12の9)に向かって進む結果、フィルムを割断させることで、グラファイトフィルムの断面を出し、SEMによるフィルムの断面の観察をおこなった。
グラファイトフィルムの断面の観察には、日立製走査型電子顕微鏡S−4500型を用い、加速電圧5kVで観察した。得られた断面SEM像を図13に示す。また、図13の観察部位以外の断面部位での断面SEM像を図14に示す。図15には、図14の表面層を拡大した断面SEM像を示す。
(比較例1)
一般に入手可能な松下電器産業(株)製のPGSグラファイトシート「EYGS182310」を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムの断面の観察をおこなった。得られた断面SEM像を図16に示す。
(比較例2)
一般に入手可能な大塚電気(株)のeGRAF「1210」を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムの断面の観察をおこなった。得られた断面SEM像を図17に示す。
(比較例3)
炭素化フィルムCを黒鉛板に挟み、グラファイトヒーターを有する超高温炉を用いて0.09MPaの減圧アルゴン雰囲気下で3000℃まで昇温され、その最高温度で1時間保持された。その後に冷却され、グラファイトフィルムC’’が得られた。
雰囲気加熱により得られたグラファイトフィルムC’’を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムの断面の観察をおこなった。得られた断面SEM像を図18に示す。
実施例1、比較例1〜3で得られたグラファイトフィルムの熱拡散率(今回、発明者・出願人が測定したもの)、密度(今回、発明者・出願人が測定したもの)、フィルムの柔軟性が表1に示されている。熱拡散率の値は、実施例1では10.0×10-42/sである。比較例1では7.2×10-42/s、比較例2では2.5×10-42/s、比較例3では、7.3×10-42/sである。
なお、表1に記載の比較例のグラファイト作製方法は、公知文献によって推定したものである。また、表1に記載の比較例1の原料は、ポリイミドフィルム((株)カネカ製ではない)であると推定している。
グラファイト化の進行状況は、フィルム面方向の熱拡散率を測定することによって判定され、熱拡散率が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定された。
実施例1の本発明のグラファイトフィルムの断面模様は、図13より、表面層ではグラファイト結晶子が面方向に発達しこれらが積層した高密度なグラファイト層の断面模様であり、表面層以外ではグラファイト結晶子が面方向に発達しているがこれらは積層しておらず空気層に富んだグラファイト層の断面模様であるといえる。
また、図13の観察部位以外の断面部位での断面SEM像である図14においても、図14は図13と同様な断面模様であり、実施例1のグラファイトフィルムの断面模様は、フィルム全体にわたって、表面層に高密度にグラファイト層が積層しており(1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有する)、表面層以外では空気層に富んだグラファイト層であることがわかる。また、図14の表面層を拡大した図15の断面SEM像を見ると、この表面層に積層したグラファイト層が非常に高密度であり、厚みが10μm以上(略長方形とみなすと、短辺10μm以上である)であることがわかる。実施例1のグラファイトフィルムは、この表面層に高密度に積層したグラファイト層が存在するために、比較例1〜3に比べて密度が高い。この様に実施例1のグラファイトフィルムは、フィルム全体にわたって、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルムである。これは、グラファイトフィルムの切断面をミクロトームにより作製した場合も同様の断面模様であった。また、グラファイトフィルムB’’の断面模様も、グラファイトフィルムA’’の断面模様と同様であった。
比較例1の原料にポリイミドフィルムを用いていると推定しているPGSグラファイトシートでは、図16より、表面層および表面層以外の断面模様は、グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、実施例1の表面層に比べて低密度なグラファイト層の断面模様といえる。
比較例2の原料に天然黒鉛を用いているグラフテック社製のeGRAFでは、図17より、表面層および表面層以外の断面模様は、グラファイト結晶子が発達しておらず、低密度なグラファイト層の断面模様といえる。
比較例3の原料フィルムにKAPTОN300Hを用いて、雰囲気加熱により得られたグラファイトフィルムの断面は、図18より、表面層および表面層以外の断面模様は、グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、実施例1の表面層に比べて、低密度なグラファイト層の断面模様であるといえる。また、この断面模様は比較例1のPGSグラファイトシートの断面模様と類似していることがわかる。
熱拡散率の値は、実施例1の本発明のグラファイトフィルムが比較例1〜3に比べて優れており、その値は10.0×10-42/sであった。これは、実施例1のグラファイトフィルムは、表面層に非常に高密度に積層したグラファイト層が少なくとも5μm以上の厚みで形成されており、厚いものでは20μmの厚みを有しているため優れたと考えられる。実施例1は通電加熱により作製されており、比較例3の雰囲気加熱に比べて均一加熱が達成されるために、面方向にグラファイト結晶子が発達し、それが高密度に積層したグラファイト層が形成されたと考えられる。比較例1、3においても、表面層に積層したグラファイト層が見られるが、実施例1のほうが明らかに表面層に積層したグラファイト層が厚いことがわかる。比較例2のグラファイトフィルムは、表面層に積層したグラファイト層は観察されなかった。このために、本発明のグラファイトフィルムは従来のグラファイトフィルムに比べて熱拡散率に優れていると考えられる。
また、この実施例1の前記表面層の高密度に積層したグラファイト層のうねりは20μm以下であり、フィルムの面方向に発達しており、100μm以上にわたって途切れていないことも、熱拡散率に優れた理由として考えられる。
実施例1のグラファイトフィルムは、比較例1〜3のグラファイトフィルムと同様に柔軟性にも優れていた。これは、表面層が高密度に積層したグラファイト層である一方で、表面層以外で空気層に富んだグラファイト層が形成されているため柔軟性に優れたと考えられる。また、実施例1のグラファイトフィルムは表面層に高密度なグラファイト層を形成しているために高強度なグラファイトフィルムである。
以上より、実施例1のグラファイトフィルムは、表面層に高密度に積層したグラファイト層を形成し、表面層以外に空気層に富んだ低密度なグラファイト層を形成することにより、柔軟性に優れ、従来よりも面方向に高熱伝導性のグラファイトフィルムを達成している。
容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)と容器(B)への通電方法。 容器(A)と容器(B)への通電方法。 ポリイミドフィルム及びくさび形シート。 くさび形シートの斜視図。 原料フィルムの容器(A)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法の模式図。 容器(A)の容器(B)への保持方法の模式図(図9の容器(B)には実際には蓋を付けることを示す図)。 容器(A)、容器(B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線との、成す角が、90度。容器(A)と容器(B)は非接触。 グラファイト断面の割断方法の模式図 実施例1の断面SEM像。 図13の観察部位以外での実施例1の断面SEM像。 図14の表面層を拡大した実施例1の断面SEM像。 比較例1(松下電器産業(株)製のPGSグラファイトシート)の断面SEM像。 比較例2(大塚電気(株)のeGRAF)の断面SEM像。 比較例3の断面断面SEM像。
符号の説明
1 ポリイミドフィルム
2 くさび形シート
3 くさび形シートの幅
4 ナトリウム光
5 干渉縞
11 原料フィルムを保持するための、平滑な通電可能な平板
12 容器(A)
13 原料フィルムを保持した容器(A)
21 円筒の容器(B)
22 蓋
31 容器(A)と容器(B)の間に充填された、カーボン粒子
32 容器(B)の外部周辺に充填された、カーボン粒子
6 グラファイトフィルム(カッターナイフで短冊状に切り取ったもの)
7 剃刀刃
8 割断時に、グラファイトフィルムに軽く力をかける方向
9 割断時に、剃刀刃がグラファイトフィルムに対して相対的に進む方向

Claims (10)

  1. 高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを、電圧を印加し通電可能な容器内に保持し、該容器に電圧を印加して、前記容器、及び、炭素化した原料フィルムの炭素化部分に通電しながらグラファイト化する工程を含む製造方法か、又は、前記原料フィルムを、通電可能な容器(A)内に該原料フィルムを保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、炭素化した原料フィルムの炭素化部分を含む全体に通電しながらグラファイト化する工程を含む製造方法により得られる、グラファイトフィルム。
  2. 面方向の熱拡散率が8×10−4/s以上であることを特徴とする、請求項1に記載のグラファイトフィルム。
  3. 前記通電により前記原料フィルムに与えられる熱処理温度が2400℃以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のグラファイトフィルム。
  4. 前記通電により前記原料フィルムに与えられる熱処理温度が2600℃以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のグラファイトフィルム。
  5. 前記グラファイトフィルムの厚みが60μm以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
  6. 前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
  7. 前記高分子フィルムが、複屈折0.08以上のポリイミドフィルムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
  8. 前記ポリイミドフィルムが、前駆体であるポリアミド酸を脱水剤とイミド化促進剤を用いてイミド化して作製されるポリイミドフィルムであることを特徴とする、請求項7に記載のグラファイトフィルム。
  9. 前記ポリイミドフィルムが、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンを含むポリアミド酸を、脱水剤とイミド化促進剤とを用いてイミド化して作製されるポリイミドフィルムであることを特徴とする、請求項7又は8に記載のグラファイトフィルム。
  10. 前記ポリイミドフィルムが、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマを合成し、前記プレポリマに前記とは異なるジアミンを反応させてポリアミド酸を合成し、前記ポリアミド酸をイミド化して作製されるポリイミドフィルムであることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
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