JP2008078380A - 放熱シート - Google Patents

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Yusuke Ota
雄介 太田
Kiyoyuki Minamimura
清之 南村
Taiji Nishikawa
泰司 西川
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Abstract

【課題】発熱部品からの熱を速やかに移動させることができる十分な熱輸送能力を有し、モバイル電子機器などに取り付けても問題にならない程度に軽く、カットなどの加工性に優れており、機器などの湾曲部分に容易に取り付けが可能な柔軟性を示す放熱シートを、提供することを課題・目的としている。
【解決手段】熱伝導層として熱輸送能力の非常に大きなグラファイトフィルムを用い、その表面に無機物層(赤外線放射効果を有する可撓性の熱放射膜)を形成させることによって解決する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光部品やパワー半導体等の各種電子部品や電子・電気製品の冷却に用いる放熱シートに関する。
近年、電子機器等に使用されているIC等の電子部品は、その集積度の向上及び動作の高速化により消費電力が増大すると共に発熱量も増大し、電子機器の誤動作や電子部品自体の故障の一因となっているため、その放熱対策が大きな問題となっている。そこで、電子機器等においては、その使用中に電子部品の温度上昇を抑えるために、金属薄板などの可撓性の熱伝導層に、赤外線放射効果を有する可撓性の無機熱放射膜を形成した放熱シートが使用されている。この放熱シートは、熱伝導層により熱を拡散させ、拡散された熱を無機熱放射膜(熱放射膜層)の表面から熱を効率的に放熱するものである。(特許文献1)。
特開2004−200199号公報。
しかしながら、従来(特許文献1)の放熱シートは、面方向へ熱拡散性をある程度は有するものの、
<1>発熱部品の発熱密度が急速に増加している現在においては、その熱輸送能力は不十分であり、温度の高いヒートスポットが発生している。そのため、従来の放熱シートより、高い熱輸送能力を示す放熱シートの開発が求められている。
<2>また、従来の放熱シートは、熱伝導層に密度の大きな金属薄板を使用しているために、重量が重く、可能な限り重量を小さくしたいモバイル電子機器などへの使用は敬遠される。そのため、従来の放熱シートより重量の小さな放熱シートの開発が求められている。
<3>また、従来の放熱シートは、柔軟で加工性がある程度は優れているものの、吸熱層に金属薄板を使用しているために、はさみやカッターなどで加工する場合、切り難い場合があった。そこで、加工性に優れた放熱シートの開発が求められている。
本発明は上記の<1>〜<3>の問題点を解決するためになされたもので、発熱部品からの熱を速やかに移動させることができる十分な熱輸送能力を有し、非常に軽く、加工性に優れており、柔軟性に優れた放熱シートを、提供することを課題・目的としている。
(1)本発明の第1は、
「グラファイトフィルムの表面に無機物層を形成させたことを特徴とする、放熱シート」、
である。
(2)本発明の第2は、
「前記無機物層が赤外線放射効果を有する可撓性の熱放射膜であることを特徴とする、1に記載の放熱シート」、
である。
(3)本発明の第3は、
「前記熱放射膜の放射率が0.90以上であることを特徴とする、1〜2いずれかに記載の放熱シート」、
である。
(4)本発明の第4は、
「前記赤外線放射効果を有する熱放射膜が、シラノールを含有する液状体を塗布して形成した塗膜であることを特徴とする、2〜3いずれかに記載の放熱シート」、
である。
(5)本発明の第5は、
「前記赤外線放射効果を有する熱放射膜が、二酸化珪素、酸化アルミニウムのいずれかを含有する液状体を塗布して形成した塗膜であることを特徴とする、2〜3いずれかに記載の放熱シート」、
である。
(6)本発明の第6は、
「前記赤外線放射効果を有する熱放射膜が、カオリンを含有するエマルジョン性組成物を塗布して形成した塗膜であることを特徴とする、2〜3いずれかに記載の放熱シート」、
である。
(7)本発明の第7は、
「前記グラファイトフィルムが、表面を粗面化されたグラファイトフィルムであることを特徴とする、1〜6に記載の放熱シート」、
である。
(8)本発明の第8は、
「前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して作製されることを特徴とする、1〜7のいずれかに記載の放熱シート」、
である。
(9)本発明の第9は、
「前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする1〜8のいずれかに記載の放熱シート」、
である。
(10)本発明の第10は、
「前記グラファイトフィルムの密度が1.3g/cm3以上であることを特徴とする、1〜9のいずれかに記載の放熱シート」、
である。
(11)本発明の第11は、
「前記グラファイトフィルムの熱拡散率が、9.0×10-42/s以上であることを特徴とする、1〜10のいずれかに記載の放熱シート」、
である。
(12)本発明の第12は、
「前記グラファイトフィルムの厚みが、95μm以下であることを特徴とする、1〜11のいずれかに記載の放熱シート」、
である。
(13)本発明の第13は、
「前記グラファイトフィルムが、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有することを特徴とする、1〜12のいずれかに記載の放熱シート」、
である。
(14)本発明の第14は、
「前記グラファイトフィルムが、内部に、最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様が観察されることを特徴とする、1〜13のいずれかに記載の放熱シート」、である。
(15)本発明の第15は、
「前記グラファイトフィルムが、電圧を印加し直接通電可能な容器内に、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながら黒鉛化することによって得られることを特徴とする、1〜14いずれか記載の放熱シート」、
である。
本発明による、グラファイトフィルムの表面に無機物層を形成させることで
<1>発熱部品からの熱を速やかに移動させることができる十分な熱輸送能力を有し
<2>非常に軽く
<3>加工性に優れた、
放熱シートを、提供できた。
本発明の第一は、グラファイトフィルムの表面に無機物層を形成させたことを特徴とする、放熱シートである。
<グラファイトフィルム>
本発明のグラファイトフィルムは、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛粉末をシート化して得られるグラファイトフィルム、高分子フィルムを熱処理して得られるグラファイトフィルムが挙げられる。グラファイトフィルムは、面方向に高い熱伝導性を有し、面方向の熱伝導性と厚み方向の熱伝導性に大きな異方性があり、電子機器・精密機器などのようにスポットで熱が高くなる電子部材において、有効に熱を拡散することできる。大きな特徴として密度は金属と比較して非常に小さいこと、熱伝導率が非常に大きいことが挙げられる。他種放熱材料の銅と比較して密度は1/6程度、熱伝導率は2〜3倍程度である。
<無機物層(熱放射膜層)>
本発明の無機物層とは、銅、アルミなどの金属および/もしくは金属化合物および/もしくはホウ素、珪素などの非金属化合物を含む塗膜である。塗膜形成は、無機物層を形成するための液状体(ポリシロキサンの前駆体シラノールを溶媒に溶かしたものなど)をハケ、スプレー、印刷、ディッピング等により直接塗布して均一な膜を形成し乾燥させる方法、あるいは電解メッキ、無電解メッキで金属塗膜を形成する方法、あるいは無機物のシートを粘着材などを使用し、グラファイト表面に貼り付ける方法などがあるが、無機物層の形成は上記の例に限るものではなく、無機化合物を含む塗膜を形成することができるものであればどのようなものであってもよい。
<熱放射膜>
本発明の熱放射膜とは、表面処理等の前処理を施したグラファイトの片面もしくは両面に形成された無機物層であって、伝導された熱を赤外線および/ もしくは遠赤外線に変換して放射する赤外線放射効果を有すると共に比較的小さな力で撓ませることができる可撓性を有している。このような熱放射膜は、シラノールを含む物質をイソプロピルアルコールなどで分散した液状体、例えばHYPER COAT−HR(マイクロコーテック(株))あるいは、酸化珪素、酸化アルミニウムを含有する粉体にバインダを配合した液状体、例えばセラックα(マイクロコーテック(株))をスプレー等でグラファイトの片面もしくは両面に直接吹付け、その後に乾燥させた塗膜によって形成する。なお、この場合の乾燥は乾燥炉で行ってもよく、例えば125 ℃ 程度の乾燥炉によって約1 時間乾燥させてもよい。これによって製作速度を向上することができる。また、同様の塗膜を形成するためには、カオリン、酸化珪素、酸化アルミニウム等の粉体をシリコーン樹脂を含むエマルジョンに含有させた組成物(エマルジョン性組成物という。)等があるが、熱放射膜の形成は上記の例に限るものではなく、赤外線放射効果および可撓性を有する塗膜を形成することができるものであればどのようなものであってもよい。本発明の熱放射膜の放射率としては、0.90以上、好ましくは0.93以上、さらに好ましくは0.96以上である。放射率が0.90以上であれば、グラファイトフィルムそのものの場合よりも、優れた熱放射性を有するために好ましい。
<放熱シートの構成および使用方法>
通常、放熱シートとして使用する場合、熱伝導層(グラファイト)の片面に無機物層を形成し、もう一方の面には粘着材などを貼り付け、発熱体あるいは発熱体付近のヒートスポット部と接続する(図1、2)。シートの作製手順としては、グラファイトシートの片面に熱放射性の無機物層を形成し、乾燥処理を行った後、使用形状に合わせてハサミ、打抜き、押切り、レーザー等の切断手段によって放熱シートを所望の形状に成形する。このような放熱シートを、図に示すように放熱シートの熱放射膜を外側にして接着剤もしくは粘着材により放熱シートを発熱体あるいはヒートスポット部に貼付して用いる。この時、本実施の形態の熱放射膜は比較的軟らかいく、可撓性を有するグラファイトフィルムのおもて面を接着しているため、放熱シート自体が可撓性を有しており、発熱体の表面形状が凸形状や凹形状であっても、放熱シートを容易に貼付することができる。これによって、冷却を要する発熱体あるいはヒートスポット部への放熱シートの取付けを容易かつ即座に行うことができる。
<放熱機構>
上記の構成の放熱機構について説明する。
図2のように、発熱体が通電等によって発熱を開始すると、その熱は、周囲の空気層への熱伝達による放熱が極めて悪いために粘着層へ集中して伝導し、更にグラファイトへ伝導する。グラファイトに流入した熱は、グラファイトにおいて均一化され、この均一化された熱が熱放射膜へ伝達される。熱放射膜へ流入した熱は、熱放射膜によって赤外線および/ もしくは遠赤外線に変換され、熱放射膜から外部へ熱放射される。これによって、放熱シートを貼付した発熱体が冷却されて発熱体の温度が低下し、温度依存性を有する電子部品等の性能を維持してその誤動作等を防止する。
<高分子フィルム>
本発明で用いることができる高分子フィルムは、特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの熱伝導性が大きくなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために好ましい。また、ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりもフィルムの炭素化、黒鉛化が進行しやすいため、結晶性、熱伝導性に優れたグラファイトとなりやすい。
<炭素化した高分子フィルム>
本発明で用いられる炭素化した高分子フィルムとしては、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは不活性ガス中で予備加熱処理して得られる。この予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度保持を行うことが望ましい。
<炭素化>
一般に炭素化とは、高分子フィルムを1000℃まで熱処理して、炭素分が主成分となる物質に変化させる過程のことを意味する。具体的には、高分子フィルムを分解温度で熱処理すると結合の開裂が起こり、分解成分は二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素等のガスとなって離脱し、1000℃まで熱処理されると、炭素が主成分の材料となる。
<ポリイミドフィルム>
ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする原料フィルムよりもフィルムの炭素化、黒鉛化が進行しやすいため、フィルムの電気伝導度が低温で均一に高くなりやすく、かつ電気伝導度そのものも高くなりやすい。その結果、後述の電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながら黒鉛化する場合には、フィルム部分に炭素化の進行に伴って均一に電流が流れ、表面及び内部での均一な発熱が起こり、厚みが薄い場合に加え、厚い場合においても熱伝導性の高いグラファイトとなる。また、出来上がるグラファイトの結晶性が優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
<黒鉛化の方法>
本発明の高分子フィルムの黒鉛化は、2000℃以上の温度で熱処理して行う。
熱処理は、高分子フィルムを炭素化させる工程と黒鉛化させる工程の二つの工程からなる。炭素化と黒鉛化は、別々に行っても良いし、連続的に行っても良い。
炭素化は、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは窒素ガス中で予備加熱処理して炭素化を行う。この予備加熱は通常800〜1500℃の温度で行われる。また、炭素化の最高温度に達した時点で30分から1時間程度、最高温度のまま温度の保持を行っても良い。例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度の保持を行っても良い。昇温の段階では、出発高分子フィルムの分子配向性が失われないように、フィルムの破損が起きない程度に膜面に垂直方向に圧力を加えてもよい。
次に、黒鉛化は、炭素化した高分子フィルムを一度取り出した後、黒鉛化用の炉に移し変えてからおこなっても良いし、炭素化から黒鉛化を連続的におこなっても良い。黒鉛化は、減圧下もしくは不活性ガス中でおこなわれるが、不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムが適当である。熱処理温度としては最低でも2000℃以上が必要で、最終的には2400℃以上、より好ましくは、2600℃以上さらに好ましくは2800℃以上で熱処理することが、熱伝導性、表面硬度、密度、表面の接着性、外観に優れたグラファイトを得るためにはよい。
熱処理温度が高いほど良質のグラファイトへの転化が可能であるが、経済性の観点からはできるだけ低温で良質のグラファイトに転化できることが好ましい。2500℃以上の超高温を得るには、通常はグラファイトヒーターに直接電流を流して、そのジュ−ル熱を利用した加熱が行なわれる。グラファイトヒーターの消耗は2700℃以上で進行し、2800℃ではその消耗速度が約10倍になり、2900℃ではさらにその約10倍になる。したがって、原材料の高分子フィルムの改善によって、良質のグラファイトへの転化が可能な温度を例えば2800℃から2700℃に下げることは大きな経済的効果を生じる。なお、一般に入手可能な工業的炉において、熱処理可能な最高温度は3000℃が限界である。高分子フィルムを一旦炭素化して取り出した後、これを黒鉛化しても、炭素化と黒鉛化を連続的におこなっても良い。
<高分子フィルムの固定方法・保持方法>
本発明の熱処理では、容器に高分子フィルムを固定して行われてもよい。本発明のような2000℃の温度領域まで加熱されるような用途では、取り扱いの容易さや、工業的な入手の容易さ等を勘案すると、黒鉛製の容器が、特に好ましい。ここでいう黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、等方性黒鉛、押出製黒鉛、が挙げられ、電気伝導性、熱伝導性に優れ、均質性にも優れる等方性黒鉛が、繰り返し用いる場合には好ましい。容器の形状は、特に制約を受けず、単純な平板などの形状でよい。また容器は円筒状で、高分子フィルムを容器に巻きつける方法でも良い。容器の形状は、高分子フィルムを接触させることができる限りにおいて、特に制約を受けない。
なお、黒鉛製容器内に、高分子フィルムを接触させる方法(例えば、保持する方法・固定する方法を含む)とは、例えば、高分子フィルムをグラファイト板で挟んだ上で、グラファイト板の自重以外には特には加圧しない状態で容器壁や容器底に接するように接触させる方法(保持させたり、固定させたりしてもよい)や円筒の黒鉛容器に巻きつける方法が有るが、必ずしもこれらの方法だけに制約を受けるものではない。
<高分子フィルムの黒鉛化>
高分子フィルムの黒鉛化機構について説明する。
高分子フィルムの黒鉛化は、炭素化と黒鉛化の2段階を経由して起こる。まず、一般に炭素化とは、上述のように、高分子フィルムを1000℃まで熱処理して、炭素分が主成分となる物質に変化させる過程のことを意味する。次に黒鉛化とは、炭素質材料を2800℃以上の温度で熱処理し、芳香環が平面状に繋がったグラファイト層が多数積層した構造に変換させる過程のことを意味する。
しかし、高分子を熱処理して得られた炭素質材料が全て黒鉛になるわけではなく、エポキシやフェノール樹脂を熱処理して作製した炭素質材料は、2800℃以上の温度で熱処理しても黒鉛になることはなくガラス状炭素のままであり、ポリイミド、ポリオキサジアゾール等の芳香環を有する高分子で芳香環が面内にある程度配向し、耐熱性が高い限られた高分子材料を熱処理して得られる炭素質材料でのみが黒鉛となる。
<ポリイミドフィルムを含む、原料フィルムの黒鉛化>
高分子フィルムの黒鉛化は上述の通り、炭素化と黒鉛化の2段階を経由しておこり、熱処理により炭素化した後、さらに高温で熱処理することでグラファイト構造に転化させられる。この過程では炭素−炭素結合の開裂と再結合が起きなければならない。黒鉛化をできる限り起こしやすくするためには、その開裂と再結合が最小のエネルギーで起こるようにする必要がある。出発原料フィルム(例えば、上記に列記した高分子フィルム、特にポリイミドフィルム)の分子配向は炭素化フィルム中の炭素原子の配列に影響を与え、その分子配向は黒鉛化の際に炭素−炭素結合の開裂と再結合化のエネルギーを少なくする効果を生じ得る。したがって、高度な分子配向が生じやすくなるように分子設計を行うことによって、比較的低温での黒鉛化が可能になる。この分子配向の効果は、フィルム面に平行な二次元的分子配向とすることによって一層顕著になる。
黒鉛化反応における第2の特徴は、原料フィルムが厚ければ低温で黒鉛化が進行しにくいということである。したがって、厚い原料フィルムを黒鉛化する場合には、表面層ではグラファイト構造が形成されているのに内部ではまだグラファイト構造になっていないという状況が生じ得る。原料フィルムの分子配向性はフィルム内部での黒鉛化を促進し、結果的により低温で良質のグラファイトへの転化を可能にする。
原料フィルムの表面層と内部とでほぼ同時に黒鉛化が進行するということは、内部から発生するガスのために表面層に形成されたグラファイト構造が破壊されるという事態を避けることにも役立ち、より厚いフィルムの黒鉛化を可能にする。本発明において作製される原料フィルム(例えば、上記に列記した高分子フィルム、特にポリイミドフィルム)は、まさにこのような効果を生じるのに最適な分子配向を有していると考えられる。
<圧縮したグラファイトフィルムの可撓性>
さらに、得られたグラファイトフィルムを圧縮する圧縮工程を有し、フィルムの均質性や柔軟性を向上させてもよい。本発明でグラファイト化したグラファイトフィルムは発泡状態を有するものがあり、このような発泡状態を有するフィルムにおいては、特に、圧縮することで柔軟性が付与できる。柔軟性を寄与することで、グラファイトフィルムのハンドリング性、耐久性が向上する。
<グラファイトフィルムの密度>
本発明の放熱シートに使用されるグラファイトフィルムの密度の具体的レベルは、1.3g/cm3以上、好ましくは1.5g/cm3以上、さらに好ましくは1.7g/cm3以上である。グラファイトフィルムの密度が1.3g/cm3よりも小さいと、熱輸送能力が不足する。同じ密度で熱輸送能力を高めるためには、厚みを増加させる必要があるが、省スペース化が期待される電子機器においては、不利な要素となる。
<グラファイトフィルムの厚み>
本発明の放熱シートに使用されるグラファイトフィルムの厚みの具体的レベルは、95μm以下、好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。省スペース化が期待される電子機器においては、グラファイトフィルムの厚みが95μmよりも厚くなると、取り付けスペースを確保することが困難になる。一般に、厚みが薄くなると、強度に劣るものとなる。しかし、本発明の放熱シートで使用されるグラファイトは、厚みが薄くても十分な強度を有し、作業性・取り扱い性に優れ、安定した取り付けが可能となり、熱輸送量が向上し、従来よりも優れた放熱性を発現することが可能となる。
放熱シートおよび熱伝導層(グラファイト、銅、アルミ)の厚みの測定方法としては、50mm×50mmのフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社から入手可能な「厚みゲージ」)を用い、室温25℃の恒温室にて、任意の10点を測定し、平均して測定値とした。熱放射膜層は、放熱シートの厚みと熱伝導層の厚みの差をとった。
<グラファイトフィルムの面方向の熱拡散率>
本発明の放熱シートに使用されるグラファイトフィルムの熱拡散率は、7.5×10-42/s以上、好ましくは9.0×10-42/s以上、さらに好ましくは10.0×10-42/s以上であると良い。7.5×10-42/s以上になると、熱伝導性が高いために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。一方、7.5×10-42/s未満になると、熱伝導性が悪いために、発熱機器から熱を逃がすことができなくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることができなくなる。
なお、放熱シートの熱拡散率は、4mm×40mmのグラファイトフィルムを光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。
<金属を含む物質と接触させる方法>
本発明の金属を含む物質と接触させる方法としては、熱処理中に<<1>>固体状、<<2>>液体状、<<3>>気体状の金属を含む物質と接触させることが挙げられる。
具体的な方法としては、例えば、次のような方法(1)−(4)が好ましい。
(1)熱処理する前に、高分子フィルムの表面に金属を含む物質を形成する方法。
表面に金属を含む物質を形成する方法としては、金属を含む物質を塗布したり、蒸着したりする方法が挙げられる。この方法では、熱処理を開始する前は、高分子フィルムと金属を含む物質が直接接している。熱処理中に、金属を含む物質が、直接高分子フィルムと相互作用し内部に不定形形状の模様が形成される。熱処理温度が高くなるに従い、金属を含む物質が液体状態および/または気体状態となり、さらにより活発かつ均一にフィルムと相互作用し内部に不定形形状の模様が形成されると推定する。
(2)黒鉛化する前に、炭素化した高分子フィルムの表面に金属を含む物質を形成する方法。
この方法では、操作としては(1)の方法と同じである。但し、金属を含む物質が接触するのは、高分子フィルムではなく、既に炭素化したフィルムである。熱処理中に、金属を含む物質が、直接炭素化したフィルムと相互作用し内部に不定形形状の模様が形成される。熱処理温度が高くなるに従い、金属を含む物質が液体状態および/または気体状態となり、フィルムと相互作用し内部に不定形形状の模様が形成されると推定する。(2)の方法は、(1)の方法よりも好ましいと考えられる。(1)の方法では、炭素化中に高分子フィルムと直接接するため、炭素化過程で金属を含む物質が高分子フィルムと相互作用することとなり、炭素化と同時に副反応を起こす場合が考えられる。一方(2)の方法では、原料が既に炭素化しているため、熱処理中に副反応を起こすことがなくなり、より品質の高いグラファイトが得られると推定される。
(3)高分子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムを、金属を含む容器に入れる方法。
金属を含む容器は、金属を含有させた容器、金属を含む物質や粉末を入れておいた容器等を挙げられる。金属を含有させた容器とは、一例として、予め容器に金属イオンを含む溶液などを浸透、乾燥させて金属を含有させた容器などが挙げられる。この方法では、高分子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムは、一部金属を含む物質と接触しているが、(1)(2)の方法よりもその接触の程度は低いものとも考えられる。(3)の方法では、熱処理中に金属を含む物質が、容器内で拡散し、順次原料フィルムと接触することになると考えられる。また、金属を含む物質の種類によっては、気体となり、気体状で原料フィルムに接触することになる。(3)の方法は、(1)の方法よりも好ましいと考えられる。(3)の方法では、低温では接触が少ないが、熱処理温度が高くなってはじめて、金属を含む物質と原料フィルムの十分な接触が起こる。その結果、原料に高分子フィルムを用いた場合には、熱処理温度が高くなる炭素化過程で金属を含む物質と相互作用しにくくなり、炭素化中に副反応を起こしにくくなると推定される。またさらに、(3)の方法では、熱処理温度が高くなり、金属を含む物質の拡散が高くなってはじめて、原料フィルムと金属を含む物質との接触が起こり、金属を含む物質の拡散の度合いが高いために、フィルムに表面全体に非常に均一に相互作用する。特に気体状態ではその相互作用の均一性がより高まる。その結果、非常に品質の高いグラファイトが得られる。
(4)高分子フィルムに金属を含む物質を添加する方法。
具体的な方法としては、粉末状の微粒子を添加する方法が挙げられる。但し、ポリイミドを作製する前のポリアミド酸溶液の状態に、金属を含む物質を溶かした溶液を添加する方法は好ましくない。というのは、原料フィルム全体に分子状に金属が分散すると、ポリイミドを作製する過程で、副反応が起こり、均一なポリイミドフィルムを得ることが困難となる。さらに、ポリイミドフィルムに均一に分散していると、炭素化過程の副反応がひどくなり、品質の高いグラファイトを得るのが困難となる。この方法は(1)の方法よりも好ましくない。
<金属を含む物質>
金属を含む物質としては、金属単体、の化合物(酸化物、窒化物、ハロゲン化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が挙げられるが、これに限定されるものではない)、金属塩等が挙げられる。原料フィルムに直接接触させる場合には、金属を含む物質が溶媒に溶けることがよい。というのは、塗布という簡単な方法で、原料フィルムの表面に均一に金属を含む物質を接触させることが出来るからである。金属の種類としては、IUPAC(国際純正・応用化学連合)無機化学命名法改訂版(1989年)による族番号4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、12族、13族、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、セレン、錫、鉛、ビスマス、が挙げられる。中でも、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、リチウム、ベリリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ホウ素、シリコン、ゲルマニウムが良く、さらに好ましくは、チタン、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケルである。特に好ましくは、鉄、コバルトである。これらは、熱拡散率、表面硬度、表面の接着性、外観に優れるために好ましい。
<従来の原料フィルムの熱処理による黒鉛化>
従来の原料フィルムの熱処理による黒鉛化では、熱処理により熱伝導性に優れたグラファイトを得ることは可能であるものの、表面硬度、表面の接着性、外観においてはまだ改善の余地が有る。特に原料フィルムの厚みが大きくなるなるほど、この傾向は顕著になると考えられる。この理由について説明する。
従来の黒鉛化法では、炭素化及び黒鉛化は、原料フィルムの内部よりも表面から優先的に起こると考えられる。その結果、表面の緻密な層が内部に残留した未炭素化成分由来の分解ガスを閉じ込め、高温に加熱された時に、内部に残留したガスが表面層を破って抜け出し、表面がはがれ、外観においてまだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。さらに、黒鉛化過程のグラフェン層の再配列で、配列しきれない余分なグラフェン層が分解ガスとして発生し、表面層を破って抜け出し、表面がはがれ、外観においてまだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。またさらに、表面部分のみ黒鉛化が進行し、内部歪みを受け、表面の黒鉛層が脱落したり、全体に黒鉛化が進行しすぎた結果、面間の剥離を起こしやすくなり、黒鉛層が脱落しやすいという点で、まだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。
その結果、表面の破損や表面の剥がれによって、表面に脆弱層ができ、その結果として、表面硬度、表面の接着性、外観にまだ改善の余地が有る結果となる場合が有った。このことから、表面硬度、表面の接着性、外観を兼ね備えた熱伝導性の高いグラファイトを得ることは依然として非常に困難な課題である。さらに、原料厚みが厚くなると、厚みの薄いものに比べて、熱処理における表面と内部の炭素化と黒鉛化の進行度により大きな差がでる傾向が有るため、各特性はまだ改善の余地が有る結果となる場合が多かった。
さらに、金属と接触させない場合では、面配向が高すぎると、黒鉛化が進行しすぎ、表面から黒鉛がはがれることがあり、原料フィルムの面配向と均一にきれいなグラファイトを得ることを両立させることは非常に難しいことであった。
<本発明の、金属を含む物質を接触させる黒鉛化>
しかし、本発明の金属を含む物質を接触させる黒鉛化では、従来困難であった表面硬度、表面の密着性、外観を兼ね備えた熱伝導性の高いグラファイトを得ることができた。さらに、原料に面配向の高い高分子フィルムを用い、この原料を金属と接触させて熱処理をおこなえば、従来の技術では改善の余地のあった表面からの黒鉛剥がれという問題を改善するだけにとどまらず、熱伝導性にも優れ、表面硬度、密度、表面の密着性に優れたグラファイトを得ることが可能となる。面配向の高い高分子フィルムと、金属と接触させて熱処理することとを組み合わせることで、従来の技術では予見できない効果が得られた。この金属の影響について説明する。
従来の金属を含む物質と接触させない場合には、分解ガスや余分なグラフェン成分の気化による表層の破壊や表層の部分的な黒鉛化や黒鉛化の進行しすぎによる黒鉛脱離が生じた。
一方、本発明の金属を含む物質をフィルムに接触させて熱処理する場合には、(1)熱処理中に金属を含む物質が原料フィルムと相互作用し、熱処理中のフィルムを取り出しSEM断面観察をすると、該フィルム内部に当初の原料フィルムには観察されなかった最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様が形成され、フィルムの表面および/または内部で不均一層・不均一相が形成される。不均一層・不均一相が形成される理由としては、熱処理中に分解ガスや余分なグラフェン成分の気化による表層や内部の破壊した部分に、金属を含む物質が浸透拡散し、部分的にフィルムと反応することが考えられる。また、フィルムの内部まで不均一層・不均一相が形成される理由としては、熱処理が高温でおこなわれるために、フィルム内部に浸透拡散し、反応がおこったと考えられる。また原料フィルムに含まれるリン酸水素カルシウム、リン酸カルシウムといったフィラーと反応することやフィラーの抜け落ちた部分に金属を含む物質が浸透拡散し、不均一層・不均一相が形成されることが推定される。このような不均一層・不均一相が形成されることにより、黒鉛化過程で発生する分解ガスが不均一層・不均一相から抜け出すことにより、熱処理中にフィルムが破損することを防止できたと考えられる。また従来のグラファイト過程では、グラフェン層が面に発達し、グラフェン層が層状に剥離するが、内部に不均一層・不均一相が形成されることにより、剥離を部分的に固定し、剥離を防止することが可能となる。またさらに、不均一層・不均一相が形成されることにより、熱処理中にたまる歪を緩和することができると考えられる。
(2)また別の効果として、金属を含む物質と接触されることにより、表面部分の黒鉛化の進行を抑えることなり、黒鉛化が進行しすぎることを防ぎ、フィルム全体が均一に黒鉛化することとなると推定される。表面の黒鉛化が進行しすぎることにより、表面部分が一部はがれかけたとしても、はがれ端部は反応性が高いため、金属を含む物質が接触することにより、端部と端部が金属を介してゆるい結合状態をもち、剥がれることを抑制するものと推定される。但し、このような金属によって表面の黒鉛層が保持・維持された状態では、金属が不純物となり、熱伝導性を悪化させることも考えられる。しかし、内部のガス発生が終了、表面と内部の黒鉛化の均一化が進行した後では、熱力学的に安定な、金属を含まない黒鉛の状態となるために、端部と端部をつなぎとめていた金属がはずれ、端部の再結合が起こり、金属は炭素の結合から外れることになると推定する。さらに、2000℃以上という黒鉛化温度は、金属を含む化合物の沸点を超えるものであり、黒鉛化過程で、金属を含む物質が気化し、最終的には不純物を含まない炭素のみからなる物質となり、熱伝導性の優れたグラファイトとなると考えられる。
<通電しながら黒鉛化する工程>
本発明の通電しながら黒鉛化する工程は、原料フィルムによって、大きく下記の3つに分類できる。
後述する「電圧を印加し直接通電可能な容器」内に、
(その1)「炭素化した高分子フィルム」を保持し、または、
(その2)「高分子フィルム」を予備加熱処理することで「炭素化した高分子フィルム」を得た後、その「炭素化した高分子フィルム」を保持し、または、
(その3)絶縁体である「高分子フィルム」を保持し、
該容器に電圧を印加し通電しながら、黒鉛化する工程を含むことを特徴とする。
下記に、(その1)から(その3)について、具体的に説明する。
(その1)原料に炭素化した高分子フィルムを用い、該フィルムを電圧印加による直接通電が可能な容器内に保持し、該容器へ電圧印加することで通電して黒鉛化する場合、該フィルムは、発熱した容器からの直接熱伝導<<1>>及びフィルムの自己発熱<<2>>による2つの手段で加熱され、品質の優れたグラファイトフィルムとなる。詳細を説明すると以下の通りである。
従来の通常の雰囲気及び減圧下での熱処理では、加熱は、雰囲気ガスの熱伝導及び/またはヒーターからの輻射熱によりおこなわれるため、フィルムが加熱される手段は基本的には、フィルム表面から内部への熱伝導の1つのみである。
しかし本発明の方法では、炭素化した高分子フィルムと導電体(容器(黒鉛製容器であってもよい)及び/又はカーボン粉末)が接している部分がフィルムの一方の表面と他方の表面であるため、電圧印加により発生したジュール熱が、炭素化した高分子フィルムの一方の表面と他方の表面の両方から直ちに伝熱する。その結果、一方の表面と他方の表面の両方から、炭素化が進行する。発熱した容器からの直接熱伝導及び後述するフィルムの自己発熱による2つの手段で加熱されフィルム内部まで十分加熱され、フィルムの表層及び内部で均一に熱処理される。
本発明では、電圧を印加し直接通電可能な容器に通電にすると、通電による発熱が生じる。
また、出発原料に炭素化した高分子フィルムを用いた場合、容器に電圧を印加すると、該フィルムは既に炭素化しているために炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて電流が流れ、黒鉛化の進行に伴い、抵抗が低くなるために、より電流が流れ、フィルム自体が発熱する。特に、電流は表層及び内部の両方に流れるため、発熱は表層及び内部の両方で同時に進行する。その結果、均一な黒鉛化が起こる。
さらに、電流は、炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて流れ、黒鉛化の進行に伴い、抵抗が低くなるために、フィルムに流れる電流量が増え、フィルムの発熱量が増加し、黒鉛化が進行しやすくなる。特に、部分的に発熱が大きくなったとしても、フィルムそのものが発熱しかつ黒鉛化が進行するに従い熱伝導性が高まるために、フィルム全体に熱が伝わり、フィルムは均一に加熱される。
グラファイトになる前の炭素化した高分子フィルムは、グラファイトと比べて熱伝導性に劣る傾向が有る。そのため、従来のような通常の雰囲気及び減圧下での熱処理では加熱手段が熱伝導の1つのみであることから、内部まで熱が十分伝わりにくく、表層と内部で黒鉛化の状態に差ができやすく、表層のみ黒鉛化し、内部に黒鉛化の不十分な部分が残る傾向が有る。結果、従来の方法では、高温に熱処理した場合に、内部の不十分な部分が発泡破裂し、フィルムがボロボロになった。
一方、本発明の方法では、電圧を印加し直接通電可能な容器そのものが電圧印加に伴い発熱しているのと同時に、炭素化・黒鉛化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じて、炭素化した高分子フィルムの炭素化部分に、電流が流れ、フィルム自体が発熱する。したがって、発熱した容器からの直接熱伝導及びフィルムの自己発熱による2つの手段によって、フィルムに十分熱を供給することが可能となり、内部の熱伝導性が悪い部分にも充分熱が供給され、表層のみ黒鉛化されることなく、表層と内部が同時に黒鉛化が進行する。その結果、本発明の方法で作製されたグラファイトフィルムは、従来の方法で作製されたグラファイトフィルムよりもフィルムの凝集力に優れ、無機物層を形成した場合、強固な接着力を有することが可能になる。
さらに、フィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。また、熱処理後のグラファイトが結晶性に非常に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
(その2)また、原料フィルムとして絶縁体の高分子フィルムを用いる場合、該フィルムを、不活性ガス雰囲気下および/または減圧下で予備加熱処理して得られる、炭素化した高分子フィルムを使用できる。このようにして炭素化した高分子フィルムは、(その1)で上記記載したとおりの方法で、黒鉛化が可能である。
(その3)また、原料フィルムとして絶縁体の高分子フィルムを用いる場合、グラファイトに至るまでの炭素化過程の最初から通電しているので、炭素化も均一に起こりやすい。また、絶縁体の高分子フィルムであっても、本発明の製造方法によれば、その絶縁体の高分子フィルムと導電体(黒鉛製容器及び/又はカーボン粉末)が接している部分がフィルムの一方の表面と他方の表面であるため、電圧印加により発生したジュール熱が、絶縁体高分子フィルムの一方の表面と他方の表面の両方から直ちに伝熱する。従って、一方の表面と他方の表面の両方から、炭素化が進行する。
このように本発明では、絶縁体の高分子フィルムであっても、両方の表面に導電体が接しているため、電圧を印加し通電して加熱する場合、当初は、フィルムの両方の表面から炭素化が進行し、引き続き、フィルム内部の炭素化の進行に応じた電気抵抗の変化に応じてフィルム内部にも電流が流れ、また炭素化の進行に伴いフィルムに流れる電流量が増え、最終的に表面及び内部での均一な発熱が起こるため、均一な黒鉛化が進行しやすくなる。またフィルム面内で均一に電気伝導度が高くなるため、フィルム内で部分的な電界集中を起すことなく、局所的な発熱が起こらず、結果として表面及び内部で均一な黒鉛化が進行する。また、熱処理後のグラファイトの結晶性に非常に優れ、耐熱性にも優れたものとなるため、電界が集中し局所的な加熱が生じたとしても破損することなく、品質の高いグラファイトとなる。
本発明によるグラファイトフィルムが従来製造方法によるグラファイトフィルムよりも優れた均一性を発現する理由や機構については、学術的詳細研究がさらに必要ではあるが、上記のとおり、推定できる。
<電圧を印加し通電する方法>
本発明において、電圧を印加し通電する方法としては、交流電圧および/又は直流電圧を印加し、通電することをいう。
本発明の原料フィルムの黒鉛化プロセスは、電圧を印加し直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながら黒鉛化する工程を含むことによって行なわれる。例えば次のよう方法「1」−「4」で通電されるのが好ましい。ここでは特に、黒鉛製容器の場合について記載するが、必ずしも、黒鉛製容器にのみ制約されるものではない。
「1」黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「2」黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器の外部周辺をカーボン粉末で覆い(充填し)、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「3」黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持し(黒鉛製容器と原料フィルムとの間に、カーボン粉末が充填されている状態で、保持し)、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
「4」黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持し(黒鉛製容器と原料フィルムとの間に、カーボン粉末が充填されている状態で、保持し)、さらに該黒鉛製容器をカーボン粉末で覆い(黒鉛製容器の外部周辺にカーボン粉末が充填されてい状態で)、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法。
直接通電可能な容器及び製造されたフィルムの電気伝導性から考えて、サンプルの大きさにもよるが、通電の結果、例えば原料フィルムには10mA以上の電流が流れ、ジュ−ル熱により容器および/またはフィルムが発熱する。特に、初期絶縁体で途中から導電体に変換する場合であっても、投入電力を制御することにより急激な温度上昇を防止することで、安定的に高品質のグラファイトフィルムを製造できる。
従来の雰囲気加熱や減圧下での加熱では、加熱は、ヒーターと接触している部分や雰囲気ガスからの熱伝導、ヒーターからの輻射熱によって原料フィルムの表面からおこなわれ、フィルムの内部と表面で不均一に黒鉛化が進行し、フィルム全体としての熱伝導性が低下した。特に、原料フィルムが厚い場合には、表面から黒鉛化が進行することで、内部からの分解ガスが出にくくなり、無理な分解ガス放出により、フィルムが破壊した。また破損しない場合であったとしても、フィルムが薄い場合に比べると内部の黒鉛化は十分進行せず、熱伝導性は非常に劣るものとなった。
しかし、本発明では、直接通電可能な容器内に、該原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながら黒鉛化する工程である。結果として原料フィルムに電圧を印加し通電して加熱するため、原料フィルムそのものの発熱が寄与する。従って、フィルムの内部と表面で均一に加熱され、またフィルム周辺からも十分均一に加熱が行なわれるため、従来よりも電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。さらに、125μmや225μm程度の、従来より厚い原料フィルムを用いた場合にも、フィルムの内部、表面、周辺から均一に加熱されるため、表面と内部が同時に黒鉛化し、急速な表面層の黒鉛化が起こらないため、表層に分解ガスの発生を妨げる黒鉛層が形成されず、内部の分解ガスが抜けやすくなり、分解ガスによるフィルム破損が起こらず、厚みの厚い電気伝導性、熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
通電方法「2」である、黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器の外部周辺をカーボン粉末で覆い、カーボン粉末を介して、黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法は、通電方法「1」での黒鉛製容器内に、原料フィルムを保持し、該黒鉛製容器自体に電圧を印加し通電する方法よりも、熱伝導性が高く、特性にバラツキのない優れたグラファイトフィルムを得るうえでは、優れている。というのは、黒鉛製容器をカーボン粉末で覆うことにより、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一に起こるためである。
またさらに、通電方法「3」「4」にあるように、黒鉛製容器内に、カーボン粉末で覆った原料フィルムを保持することも、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一になるために好ましい。
通電の結果生じる熱から与えられ、原料フィルムに結果として与えられる熱処理温度としては最低でも2400℃以上が必要で、好ましくは2600℃以上、より好ましく2800℃以上で熱処理すると、均一に黒鉛化されたグラファイトフィルムが得られる。
<電圧を印加し直接通電可能な容器内に保持する方法>
電圧を印加し直接通電可能な容器(例えば黒鉛製容器)内に、原料フィルムを保持する方法とは、例えば、原料フィルムを金属板やグラファイト板で挟んだ上で、金属板やグラファイト板の自重以外には特には加圧しない状態で容器壁や容器底に接するように保持する方法が有るが、必ずしもこれらの方法だけに制約を受けるものではない。
<通電可能な容器(A)内に、原料フィルムを保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、全体に通電しながら黒鉛化する方法>
本発明のグラファイトフィルムの通電加熱による黒鉛化方法は、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを後述する「電圧を印加し直接通電可能な容器」(A)内に保持し、さらに該容器(A)を通電可能な容器(B)内に保持し、全体に通電しながら黒鉛化する工程を含むことを特徴とする。
<直接通電可能な容器(A)の直接通電可能な容器(B)内への保持方法>
まず、本発明の通電による黒鉛化方法について述べる。容器(A)を容器(B)内に保持しないような場合、すなわち、容器を2つ使用せず1つの容器を使用して高分子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムの直接通電によるグラファイトの製造方法では、原料フィルムを1つの直接通電可能な容器内に保持して、該容器一つ一つの外部周辺にカーボン粉末で充填し、全体に通電してグラファイトフィルムを作製する。この場合、多数の該容器をそれぞれカーボン粉末で覆って通電し、グラファイトフィルムを作製した場合には、カーボン粉末の充填密度や該容器自身それぞれの電気抵抗の差に起因して、作製したグラファイトフィルムの品質が、原料フィルムを保持した容器によって、品質に差が生じる場合があった。
しかしながら、本発明の原料フィルムの黒鉛化プロセスは、直接通電可能な容器内(A)に該原料フィルムを保持し、さらに直接通電可能な容器(B)に該原料フィルムが保持されている容器(A)を保持する。例えば図3〜5のいずれかで示されている保持方法がある。ここでは、該容器(A)を直方体、該容器(B)を円筒として記載しているが、該容器(A)と該容器(B)の形状は、必ずしも、直方体と円筒に制約されるものではない。
1.図3は、該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆い(容器(A)の外部周辺にカーボン粉末が存在している状態)、直接通電可能な容器(B)内に、該容器(A)が該容器(B)と接触しないように保持されている状態である。
2.図4は、該容器(A)が該容器(B)と接触するように保持されている状態であること以外は図3と同じである。
3.図5は、該容器(B)内への該容器(A)の保持にはカーボン粉末が使われていないこと以外は図4と同じである。
本発明では、原料フィルムを保持した該容器(A)を該容器(B)内に保持することで、該容器(A)に加わる電圧および/または熱を均一化でき該容器(A)間で作製されたグラファイトの品質には、差が生じないという特徴がある。さらに、原料フィルムを保持した該容器(A)の外部周辺のカーボン粉末の存在密度(充填する場合には充填密度)を均一にでき、多数の該容器(A)を用いた場合であっても、該容器(A)間で作製されたグラファイトの品質には、差が生じないという特徴がある。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)を直接通電可能な容器(B)内に保持し、電圧を印加し、通電する場合には、該容器(A)と該容器(B)が接触していないほうが好ましい。その理由は以下に示す通りである。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で(好ましくは、充填している状態で)、直接通電可能な容器(B)内に該容器(A)を該容器(B)と接触しないように保持していれば、電圧を印加し通電する場合、該原料フィルムを保持した該容器(A)への通電が、該容器(A)の外部周辺に存在する(好ましくは充填した)カーボン粉末を介して該容器(A)全面に均一に起きる。このために、該容器(A)には、部分的な電圧の偏りが生じず均一な通電発熱が発生し、該原料フィルムが品質のバラツキがない優れたグラファイトとなる。
一方で、該容器(A)と該容器(B)が接触している状態で、電圧を印加し通電すると、該容器(A)と該容器(B)が接触している部分からのみ該容器(A)への通電が起こるために、該容器(A)には均一な通電発熱の発生が達成されず、該原料フィルムの黒鉛化の均一性が1.の場合より不充分なものとなる。
該原料フィルムが保持されている直接通電可能な容器(A)の外部周辺にカーボン粉末を覆い(好ましくは、充填している状態で)、直接通電可能な容器(B)内に、該容器(A)が該容器(B)と接触するように保持されている状態では、該容器(A)への通電が、該容器(B)と接触している部分と、該容器(A)の外部周辺を覆っているカーボン粉末から2つの経路で通電が起きるが、該容器(B)とカーボン粉末とでは電気抵抗が異なるために、電気抵抗が低いほうから通電が起き、該容器(A)の通電発熱の均一性が2.の場合より不充分なものとなる。
従って、該容器(B)への該容器(A)の保持方法として、一番好ましいのは、前記1.であり、次に2.、次に3.である。
また、図3〜5のいずれかの保持状態に加えて、さらに、原料フィルムの周辺をカーボン粉末で覆っている状態(該容器(A)と原料フィルムとの間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)、または、該容器(B)の外部周辺にカーボン粉末が覆っている状態(該容器(B)の外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)であっても良い。
<該原料フィルムを保持した直接通電可能な容器(A)に通電する方法>
本発明の原料フィルムの黒鉛化プロセス、特に、通電方法について説明する。
該原料フィルムを保持した直接通電可能な容器(A)/原料フィルムへの通電方法は、例えば次のような方法(1)と(2)がある。ここでは特に、黒鉛製容器の場合について記載するが、必ずしも、黒鉛製容器にのみ制約されるものではない。また、該容器(A)を直方体、該容器(B)を円筒として記載しているが、該容器(A)と該容器(B)の形状は、必ずしも、直方体と円筒に制約されるものではない。
(1)図6に示すような該容器(A)の保持方法であり、黒鉛製容器(B)内に外部周辺をカーボン粉末で覆った黒鉛製容器(A)を黒鉛製容器(B)と接触しないように保持し(該容器(A)と該容器(B)の間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、保持し)、直接、黒鉛製容器(B)に電圧を印加し、黒鉛製容器(B)およびカーボン粉末を介して、黒鉛容器(A)/または原料フィルムに通電する方法。
(2)図7に示すような保持方法であり、黒鉛製容器(B)内に黒鉛製容器(A)を黒鉛製容器(B)と接触しないように黒鉛製容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で保持し(該容器(A)と該容器(B)の間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、保持し)、さらには、黒鉛製容器(B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、(黒鉛製容器Bの外部周辺にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態で、)該容器(B)の外部周辺に存在している(このましくは充填されている)カーボン粉末に電圧を印加し、該容器(B)を覆っているカーボン粉末、黒鉛製容器(B)、そして該容器Aと該容器Bの間のカーボン粉末を介して、黒鉛容器(A)/または原料フィルムに通電する方法。
図7に示す保持方法は、図6に示す保持方法よりも、熱伝導性が高く、特性にバラツキのない優れたグラファイトフィルムを得るうえでは、優れている。というのは、黒鉛製容器(B)をカーボン粉末で覆うことにより、黒鉛製容器および/または原料フィルムに加わる通電および加熱が均一におこるためである。
(1)〜(2)のいずれかに記載した、該容器(A)/原料フィルムへの通電方法に加えて、原料フィルムの周辺をカーボン粉末で覆っている状態(該容器(A)と原料フィルムとの間にカーボン粉末が存在している(好ましくは充填されている)状態)、または、該容器(A)と該容器(B)が接触している状態であっても良いことは、いうまでもない。
なお、本発明で記載の温度は、例えば直接通電可能な容器の外壁や内部の一部などにおいて、放射温度計などを使用して計測することができる。
なお、本明細書で使う「熱処理」という言葉は、下記のような広義の意味で用いる。従来技術の場合は、概ね、「熱処理」とは、減圧下での加熱や、ガス雰囲気での加熱を指す。一方で、本発明の特徴である通電についても、通電の結果生じる熱が原料フィルムに伝わることを「熱処理」と概括的に表現している場合が有る。従来技術との対比で説明する場合に、従来の減圧下での加熱や、ガス雰囲気での加熱、通電の結果生じる熱が原料フィルムに伝わる場合を、区別なく説明する際に、特に注釈を付けずに複数の原理が有りうる「熱処理」という表現をすることが有る。
<通電方向と原料フィルムの法線との成す角度>
本発明では、通電方向と該原料フィルムの位置関係は、原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの法線との、成す角度が0度より大きく180度未満であればよい。ここでいう、成す角度とは、通電における正極から負極への通電方向を直線で表した場合の、原料フィルムの面方向に対する法線との成す角度を意味する。
原料フィルムの面方向に対する法線と、通電方向を示す直線との、成す角は、好ましくは60度以上120度以下、さらに好ましくは75度以上105度以下、最も好ましくは90度である。
原料フィルムへの通電方向と原料フィルムの法線の成す角と90度がもっとも好ましい理由としては、成す角が90度であれば、通電方向が原料フィルムの面方向であるために、原料フィルムに均一な通電が可能であり、品質の優れたグラファイトフィルムが得られる。
一方で、通電方向と原料フィルムの面方向に対する法線との成す角が0度で、通電方向が原料フィルムの厚み方向である場合、原料フィルムを容器(A)内に保持するために用いられている板状の通電可能な黒鉛を介して、原料フィルムに通電が起きるために、成す角が90度に比べて、原料フィルムへの通電が妨げられる場合がある。このために、成す角が0度に比べて、90度のほうが原料フィルム自身の通電による加熱には有利である。
また、成す角が0度では、通電方向が原料フィルムの厚み方向であるのに対して、成す角90度では、通電方向が原料フィルムの面方向であることから、成す角90度のほうが通電距離が長く、このために、成す角90度であるほうが通電時の原料フィルム自身の発熱にも有利である。
<電圧を印加し直接通電可能な容器>
本発明の、直接通電可能な容器とは、例えば、タングステン製、モリブデン製、黒鉛製の容器である。容器の形状は、特に制約を受けず、単純な平板などの形状でよい。また容器は円筒状で、原料フィルムを容器に巻きつける方法でも良い。容器の形状は、原料フィルムを保持できる限りにおいて、特に制約を受けないが、作製の容易さ、工業的入手の容易さという観点から、例えば、直方体や立方体の形状をしており、ブロック状、蓋などが有る弁当箱状などの形状が、好ましい。
なお、使用される容器や、本明細書中に記載の容器(A)や容器(B)は、それぞれ独立に、容器内を密閉状態で使用してもよいし、密閉状態で使用しなくてもよい。
密閉状態にする方法としては、それぞれの容器に、密閉状態が実現できるような覆いを設ける方法が考えられる。密閉状態の場合には、加温・降温された結果膨張・収縮した気体の存在に伴って、容器内部が、常圧に比べて加圧されている状態や、常圧に比べて減圧されている状態を達成しうる。
密閉状態にしない方法は、それぞれの容器(容器(A)、容器(B)、それぞれ独立に)に覆い(例えば蓋など)を設けるものの、容器と覆い(例えば蓋など)との間を通じて、加温・降温された結果膨張・収縮した気体が、出入り可能な状態であるような状態を実現する方法などが有る。もちろん、容器(容器(A)、容器(B))をそのまま用いて、覆いを設けない方法も、密閉状態にしない方法の一態様である。
本発明においては、容器の内部が、密閉されても、密閉されなくても良い。
<黒鉛製容器>
本発明のような2500℃の温度領域まで通電によって加熱されるような用途では、取り扱いの容易さや、工業的な入手の容易さ等を勘案すると、使用される容器(A)や容器(B)としては、黒鉛製の容器が、特に好ましい。ここでいう黒鉛とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、黒鉛を主に含むような材料までを含む広い概念であるが、例えば、等方性黒鉛、押出製黒鉛、が挙げられ、電気伝導性、熱伝導性に優れ、均質性にも優れる等方性黒鉛が、電流を流しまた繰り返し用いる場合には好ましい。
<直接通電可能な容器(B)>
本発明では、該容器(B)は特に形状の限定はないが、円筒であることが好ましい。これは、通電時に、円筒であるほうが、角筒であるよりも、電圧の偏りが生じにくいため、該容器(A)の全体にわたって均一な通電加熱に有利であるためである。容器(А)については特には形状の制限はないが、工業的な入手の容易さ等を勘案すると立方体、直方体などの角筒、もしくは円筒の形状で、操作上の利便性から蓋つきのものが良い。
<通電加熱しながら金属を含む物質と接触させる方法>
また、原料フィルムと金属を含む物質とを接触させた状態(金属、金属を含むカーボン粉末、金属を含むカーボン容器が存在する)に通電がなされると、原料フィルムに加え、金属も加熱され、拡散が起こりやすくなり、原料フィルムと均一に相互作用をおこし、フィルム全体で均一な黒鉛化が進行する。さらに、金属に通電されると、金属の反応性が高まり、原料フィルムとの反応が促進されたために、各特性に優れたグラファイトフィルムが得られたと推定する。また、通電中は、フィルムが容器および/またはカーボン粉末で覆われているために、十分金属の効果が発揮しやすくなり好ましい。
<フィルム内における最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様>
本発明のグラファイトフィルムは、内部に、最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様を有する、グラファイトフィルムである。
本発明のフィルム内に存在する不定形形状の模様の大きさは、最短径が0.1〜50μmの範囲であることが好ましい。内部の不均一層・不均一相は硬度が高く、0.1μm以上であると、表面硬度を高める働きをするために好ましい。また50μm以下であると、フィルムの熱伝導性を悪化させないために好ましい。また、グラファイトフィルム内部は密な状態であり、不均一層・不均一相で層間が結合して形成されているため、硬度が高く、接着剤や粘着剤に対する表面の接着性に優れ、表面の緻密な剥がれのない外観に優れたグラファイトを得ることが出来る。また、0.1μm以上であると、フィルムに内部からの発生するガスをうまく逃がすことが出来、フィルム内の応力を緩和し、グラファイトの層間の相互作用を高め、フィルムが熱処理中に剥離するのを抑制し、表面及び内部で黒鉛化が進行し、熱伝導性に優れたグラファイトとなる。また、表層と内部で黒鉛化が同時に進行するため、従来の方法で作製されたグラファイトフィルムよりもフィルムの凝集力に優れ、無機物層を形成した場合、強固な接着力を有することが可能になる。
本発明のグラファイトフィルムの表面硬度は、JIS K 5400に基づいて測定される鉛筆硬度の値で2B以上、好ましくはB以上、さらに好ましくはHB以上である。鉛筆硬度が2B以上では、グラファイトの取り付け時や取り扱い時に傷が入らない程度に十分な表面硬度となる。
<表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分>
本発明のグラファイトフィルムは、少なくとも表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、異なる部分を有する、グラファイトフィルムである。
本明細書で使う「表面層」とは、グラファイトフィルムの断面を見た場合に、フィルム全体の厚みの外側30%以内の厚みの部分であるフィルム両表面からの範囲をいう。すなわち、片側(ここで上側とする)からの表面だけから表現すると、フィルム断面の上側(反対側は下側)から0〜30%の部分、および、上側から70%〜100%の部分)を、「表面層」という。
表面層以外とは、グラファイトフィルムの断面を見た場合に上記の表面層以外の部分をいう。片側(ここで上側とする)からの表面だけから表現すると、フィルム断面の上側(反対側は下側)から30%を越えて、70%未満の部分を、「表面層以外」という。
初めに断面模様について説明する。断面模様の観察には、一般に提供されているグラファイトフィルムの厚みを考慮すると、電子顕微鏡(SEM(走査型電子顕微鏡)を含む)を用いることが好ましいが、断面が観察できれば特に制限はない。また、ここでは断面模様についてのみ記述するものであって、これらは、表面層および/または表面層以外のどこの部分に存在してもよい。
グラファイトフィルムの断面模様としては、以下の(1)〜(6)が考えられる。
(1)グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらがフィルム表面形状に平行に積層した高密度なグラファイト層の断面模様。
(2)グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらが積層しているが、フィルム表面形状に平行ではなく、うねった状態で存在している高密度のグラファイト層の断面模様。
(3)グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、フィルム表面形状に平行に存在している低密度な空気層に富んだグラファイト層の断面模様。
(4)グラファイト結晶子が面方向に発達しているが、これらは積層しておらず、またフィルム表面形状に平行ではなく、うねった状態で存在している低密度な空気層に富んだグラファイト層の断面模様。
(5)グラファイト結晶子が発達しておらず、燐片状のグラファイト層の断面模様。
(6)上記(1)〜(5)以外の断面模様。
上記(6)は、例えば、黒鉛化工程において不純物などの影響により形成された、グラフェン構造ではない炭素塊などの、グラファイト層を形成していないものをいう。
面方向の優れた熱伝導性には、グラファイト結晶子が面方向に発達し、これらが積層した高密度のグラファイト層が必要である。高密度のグラファイト層であれば、熱伝導のロスが少なく効率が良い。したがって、観察される上記(1)〜(6)の断面模様のなかで、高熱伝導性を示す断面模様として、好ましいのは(1)と(2)であり、次に好ましいのは(3)と(4)であり、次に好ましいのは(5)、次にこのましいのは(6)である。
一方で、フィルムの柔軟性のためには、空気層を含んだグラファイト層が必要である。これは、グラファイト層が高密度に積層し、空気層を含んでいないグラファイトフィルムでは、屈曲した場合、緩衝する部位がないために、フィルムが破損してしまうためである。また、放熱材料として使用時の形状の自由度から、柔軟性のあるグラファイトフィルムが好ましい。したがって、観察される上記(1)〜(6)の断面模様のなかで、柔軟性を示す断面模様として、好ましいのは(3)と(4)であり、次に好ましいのは(5)であり、次に好ましいのは(1)と(2)であり、次に好ましいのは(6)である。
<表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、少なくとも異なる部分>
本発明のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有している。
なお、この<表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、少なくとも異なる部分>項目中でのすべての括弧内数字
((1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6))で示される断面模様は、
上記<断面模様について>項目中での括弧内数字
((1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6))で示される断面模様を意味している。
仮に、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が高密度なグラファイト層である(1)の断面模様だけであれば、熱拡散率に優れ、フィルムの強度にも優れるが、一方で、屈曲した場合などに緩衝する部位がないために、柔軟性に乏しいグラファイトフィルムになる。また、仮に、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が、空気層を含んだ低密度なグラファイト層である(3)の断面模様だけであれば、柔軟性に優れるが、熱拡散率に劣り、フィルムの強度も劣るグラファイトフィルムになる。したがって、高熱伝導性と柔軟性を兼ね備えたグラファイトフィルムには、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、上記の観察される断面模様(1)〜(6)で異なった組み合わせが好ましい。以下に示す、上記の観察される断面模様(1)〜(6)での異なった組み合わせは、表面層全体と表面層以外全体であっても、表面層の一部分、表面層以外の一部分であってもよい。
高熱伝導性と柔軟性を兼ね備えたグラファイトフィルムであるためには、組み合わせとして特に好ましくは、表面層に(1)の断面模様であって、表面層以外に(3)の断面模様である。この組み合わせにより、表面近傍に高密度なグラファイト層が存在することから面方向の熱拡散率に優れ、また表面層以外に空気層を含んだグラファイト層を有することで柔軟性を有することができる。また、表面近傍に高密度なグラファイト層が存在するために高強度のグラファイトフィルムである。
したがって、さらに拡張して一般的に、熱拡散率に優れ、柔軟性に富み、高強度のグラファイトフィルムを達成するためには、
表面層に高密度にグラファイト層が積層した(1)(2)の断面模様が存在し、表面層以外には空気層を含んだグラファイト層である(3)(4)の断面模様が存在することが好ましい。
上述したとおり、組み合わせとして特に好ましくは、
表面層に(1)の断面模様であって、表面層以外に(3)の断面模様の組み合わせである。
同様の理由で、次に好ましくは、
表面層に(1)の断面模様で、表面層以外に(4)の断面模様の組み合わせ、
次に好ましくは
表面層に(2)の断面模様で表面層以外に(3)の断面模様の組み合わせ、
次に好ましくは、
表面層に(2)の断面模様で表面層以外に(4)の断面模様の組み合わせである。
<表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状>
本発明では、断面模様の一部として観測される層状の構造を、あえて略長方形で、表現したものである。従い、実際の層状の構造が、略長方形で囲まれた閉じた空間で有る必要は無い。層状の構造が半無限に拡がっているような場合であっても、略長方形という視点で切り出して、層状の構造を表現するものである。
本発明のグラファイトフィルムは、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有するグラファイトフィルムである。
少なくとも表面層の断面模様の一部に、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層したグラファイト層が形成されていることが望ましい。略平行に積層すれば、1μm未満の厚みの略長方形が空気層を生じることなく、高密度に積層することができ、結果として高熱伝導性のグラファイトフィルムを得ることができる。
また、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される略長方形の短辺は5μm以上であることが好ましい。これは、表面層の上記の略長方形の短辺が5μm以上であることで、面方向の熱伝導性に優れ、またフィルムの強度が十分なものとなるからである。
したがって、上記の略長方形の形状は、好ましくは短辺5μm以上、さらに好ましくは短辺10μm以上である。
1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される略長方形の長辺については、特に制限はないが、熱伝導性やフィルム強度を勘案すると、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、熱伝導性のためには上記の略長方形の長辺が長ければ長いほど好ましい。これは、上記の略長方形の長辺は、途切れることなく長ければ長いほうが、面方向の熱伝導の効率がよいためである。
以上のように、グラファイトフィルムには、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状が存在するため、従来の方法で作製されたグラファイトフィルムよりもフィルムの凝集力に優れ、無機物層を形成した場合、強固な接着力を有することが可能になる。
<グラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成する方法>
グラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成するには、カッターナイフおよび/または剃刀で割断、ミクロトームで切削、樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムをミクロトームで切削すればよいが、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が観察できれば、これらだけに限定されることはない。
グラファイトフィルムの断面・切断面を出す・断面を形成する場合、グラファイトフィルムは一般に厚み方向の層構造を有するために、厚み方向から力を加えて切削すると、断面が潰れやすいために注意を要する。
カッターナイフおよび/または剃刀で割断してグラファイトフィルムの断面を出す・断面を形成する場合は、カッターナイフおよび/または剃刀などの鋭利な刃で、グラファイトフィルムの一端に微小な切り目をいれ、その切り目の反対側から力を加えることによりフィルムを割断させる。この割断する方法は、断面を切削することではないので、断面が潰れないために、好ましく、簡便性に優れる。
ミクロトームは、切片の厚さを調節でき、また切断面の平坦性にも優れる。さらに、樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムであれば、ミクロトームで切削するときの固定安定性や操作性に優れるために、さらに好ましい。
したがって、グラファイトフィルムの断面を出す方法として、好ましくはカッターナイフおよび/または剃刀で割断、次に好ましくは樹脂に埋包した状態のグラファイトフィルムをミクロトームで切削、次に好ましくはミクロトームによる切削である。ミクロトームは、滑走式と回転式のどちらであってもよい。ただし、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様が観察できれば、これらだけに限定されることはない。
<粗面化されたグラファイトフィルム>
本発明のグラファイトフィルムは、グラファイトフィルムと無機物層の接着強度を高めるために、粗面化グラファイトフィルムであると良い。粗面化の方法としては、ヤスリによる研磨、コロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト等が良い。
<用途など>
本発明のグラファイトフィルムは、熱伝導性、温度に対する寸法安定性、フィルム強度、電気伝導性が高いために、例えば、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器、ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器、液晶ディスプレイ(バックライトを含む)、プラズマディスプレイ、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器、インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置、半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品、リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(以上左記の配線板とは、プリント配線板なども含む)、真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置、断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置、DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器、カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置、充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池等のバッテリー機器等の放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁シールド部品として好適である。
以下において、本発明の種々の実施例がいくつかの比較例と共に説明される。
<その他の効果>
以上のように、本発明の、グラファイトフィルムの表面に無機物層を形成させたことで熱輸送能力、放熱能力、加工性に優れた放熱シートが作製できた。また、放熱シートに柔軟性を有するグラファイトフィルムを使用した場合、従来の放熱シートより柔軟性の優れた放熱シートが得られた。従来の放熱シートは、ある程度の柔軟性を有するものの、シートを機器の湾曲部分に取り付ける際、柔軟性が不足しているためフィットしない場合があった。そこで、湾曲部分へのシートの取り付けが容易におこなえる、柔軟性に優れた放熱シートの開発が求められていた。
本発明の放熱シートは、以下のようなグラファイトの弱点も補足する効果も同時に得られた。
(1)コシがあるため、ハンドリング性に優れた放熱シートである。
従来のグラファイトフィルムは厚みが薄く、コシがないためにフィルムの加工時あるいは機器への取り付け時に傷を付けてしまうことがあった。また、粘着材などを使用し、機器の筐体などに貼り付ける際、狙った部分に思うように貼り付けられないといった問題点もあった。
本発明の放熱シートは、グラファイト表面に形成した無機物層のため、シートのコシが増加し、加工時あるいは機器への取り付け時のハンドリング性が向上した。また、粘着材などを使用し、機器の筐体などに貼り付ける際も、狙った部分に貼り付けが可能となった。
(2)電気絶縁性が付与できた放熱シートである。
従来のグラファイトシートは電気伝導性を示すため、電気絶縁性が求められる電子機器内への使用は難しかった。これまでは、グラファイトシート取り付ける際、表面にPETテープ、ポリイミドテープなどの絶縁テープを貼り付け絶縁性を付与していた。しかしながら、本発明による放熱シートは、グラファイト表面に形成した無機物層が、絶縁膜としての役割も同時に担い、グラファイトシートに電気絶縁性を付与できた。
(3)表面強度の高い放熱シートである。
通常、グラファイトシートは表面強度が弱く、表面に少しの力で傷が入り、粉落ちが発生し、電子機器内を汚染するという問題が発生していた。そのため、グラファイトシートを電子機器に取り付ける際には、表面にPETテープなどの保護テープを貼り付けて使用していた。しかしながら、グラファイト表面に形成した無機物層が、保護膜としての役割も同時に担い、グラファイト表面の傷、黒鉛剥離が抑制できた。
(ポリイミドフィルムAの作製方法)
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布された。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブン、遠赤外線ヒーターを用いて乾燥された。
出来上がり厚みが75μmの場合におけるフィルム作製用の乾燥条件を示す。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで120℃において240秒乾燥されて、自己支持性を有するゲルフィルムにされた。そのゲルフィルムはアルミ箔から引き剥がされ、フレームに固定された。さらに、ゲルフィルムは、熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒーターにて460℃で23秒段階的に加熱されて乾燥された。
以上のようにして、厚さ75μmのポリイミドフィルム(ポリイミドフィルムA:弾性率3.1GPa、吸水率2.5%、複屈折0.10、線膨張係数3.0×10-5/℃)が製造された。なお、その他厚みのフィルムを作製する場合には、厚みに比例して焼成時間が調整された。例えば厚さ225μmのフィルムの場合には、75μmの場合よりも焼成時間を3倍に設定した。また、厚みが厚い場合には、ポリイミドフィルムの溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必要がある。
(炭素化フィルムAの作製方法)
厚さ75μmのポリイミドフィルムAを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭素化処理が行われた。この炭素化フィルムを炭素化フィルムAとする。
(炭素化フィルムBの作製方法)
厚さ175μmのポリイミドフィルムAを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温された後、1000℃で1時間熱処理して炭素化処理が行われた。この炭素化フィルムを炭素化フィルムBとする。
(グラファイトフィルムAの作製方法)
炭素化処理により得られた炭素化フィルムA(400cm2(縦200mm×横200mm)を、縦270mm×横270mm×厚み3mmの板状の平滑なグラファイトで上下から挟み、図8に示す縦300mm×横300mm×厚み60mmの直接通電可能な黒鉛容器(容器(A))内に、保持した。
該容器(A)は、図9に模式的に示すように原料フィルムの面方向が直接通電可能な円筒容器(B)(さらに詳細に説明すると具体的には、図10に模式的に示すような、直接通電可能な、蓋付きの円筒容器(B))の円筒の高さ方向と平行になるように保持し、該容器(A)の外部周辺をカーボン粉末で覆い(容器(A)と容器(B)の間にカーボン粉末を充填し)、また図11に示すように該容器(A)を該容器(B)と接触しないように、保持した。図11に示すように該容器(B)の外部周辺をカーボン粉末で覆った状態で、電圧を該容器(B)の円筒の直径方向(原料フィルムの面方向と平行)に印加し、通電することで、3000℃まで加熱し、グラファイトフィルムが作製された。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線との成す角度は、90度である。
なお前述した図10は、容器(B)に蓋をする前の模式図である。
熱処理後のグラファイトフィルムを、(株)金陽社製のゴムシートで挟み(株)神藤金属工業所製の圧縮成形機(SFA−50)を使用して10MPaの圧力で圧縮することで、グラファイトフィルムAを得た。
(グラファイトフィルムBの作製方法)
炭素化処理により得られた炭素化フィルムBに硝酸鉄の10wt%メタノール溶液を塗布した後、黒鉛板に挟み、黒鉛容器(容器(A))にセットした以外はグラファイトフィルムAと同様にしてグラファイトフィルムBが作製された。
(グラファイトフィルムの断面SEM像観察)
グラファイトフィルムを、縦20mm×横10mmの短冊状の大きさにカッターナイフで切り取った。さらにこのフィルムの一端に面方向に剃刀で微小な切り目を入れ、その切り目の反対側から力を加え、フィルムを割断させることで、グラファイトフィルムの断面を出し、SEMによるフィルムの断面の観察をおこなった。
なお、この割断の模式図を図12に示した。図12の121は短冊状のグラファイトフィルムである。図と対応して、再度説明すると、次の通りである。
グラファイトフィルムを、縦20mm×横10mmの短冊状の大きさにカッターナイフで切り取ったものが、図12の122である。さらにこのフィルムの一端に面方向に剃刀で微小な切り目を入れ、その切り目の反対側から力を加え(割断時に、グラファイトフィルムに軽く力をかける方向が、図12の123である)、剃刀刃がグラファイトフィルムに対して相対的に進む方向(図12の124)に向かって進む結果、フィルムを割断させることで、グラファイトフィルムの断面を出し、SEMによるフィルムの断面の観察をおこなった。
グラファイトフィルムの断面の観察装置には、日立製走査型電子顕微鏡S−4500型を用い、加速電圧5kVで観察した。
(グラファイトフィルムの断面SEM観察)
グラファイトフィルムA、グラファイトフィルムBの断面SEM像を図13、図14に示す。
グラファイトフィルムAの断面SEM像は、図13である。グラファイトフィルムAは、表面層ではグラファイト結晶子が面方向に発達しこれらが積層した高密度なグラファイト層の断面模様であり、表面層以外ではグラファイト結晶子が面方向に発達しているがこれらは積層しておらず空気層に富んだグラファイト層の断面模様であるといえる。
また、このグラファイトフィルムAの断面模様は、フィルム全体にわたって、表面層に高密度にグラファイト層が積層しており(1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有する)、表面層以外では空気層に富んだグラファイト層であることがわかる。また、この表面層に積層したグラファイト層が非常に高密度であり、厚みが10μm以上(略長方形とみなすと、短辺10μm以上である)であることがわかる。この様にグラファイトフィルムAは、フィルム全体にわたって、表面層の断面模様と表面層以外の断面模様とが、少なくとも異なる部分を有する、グラファイトフィルムであり、このために、熱伝導特性に優れている。グラファイトフィルムAは、グラファイト層の結晶性に優れるために、その密度が1.9g/cm3以上である。
グラファイトフィルムBの断面模様は、図14のとおり、該グラファイトフィルム内部に、当初の原料フィルムには観察されなかった最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様(不均一層)が形成されていた。さらに、グラファイトフィルムAのような層間に空気層はなく、密な状態であった。このような構造を有しているために、優れた熱伝導特性に加え、鉛事硬度はHB以上、密度1.9g/cm3以上と各特性に優れていた。
(グラファイトフィルムの熱拡散率)
グラファイトフィルムA、グラファイトフィルムBの熱拡散率は9.0×10-42/s以上であった。同様に測定した、銅、アルミの熱拡散率は、1.0×10-42/s程度で、本発明で使用したグラファイトフィルムの熱拡散率は非常に高い。
熱拡散率が7.5×10-42/s以上になると、熱伝導性が高いために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。一方、7.5×10-42/s未満になると、熱伝導性が悪いために、発熱機器から熱を逃がすことができなくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることができなくなる。
なお、放熱シートの熱拡散率は、4mm×40mmのグラファイトフィルムを光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。

(実施例1)
グラファイトフィルムAの表面を、前処理としてサンドペーパーで荒らし、(株)マイクロコーテック製のHYPER COAT−HRをスプレーコートで塗膜した。膜厚は20μmに調節した。乾燥はオーブン中で120℃40分おこない、放熱シートを作製した。
(実施例2)
膜厚を5μmに調節したこと以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
(実施例3)
グラファイトフィルムBを使用したこと以外は実施例1と同様にして、放熱シートを作製した。
(実施例4)
膜厚を5μmに調節したこと以外は実施例3と同様にして、放熱シートを作製した。
(比較例1)
一般に入手可能な40μm厚の銅箔を前処理として、サンドペーパーで表面を荒らし、(株)マイクロコーテック製のHYPER COAT−HRをスプレーコートで塗膜した。膜厚は20μmに調節した。乾燥はオーブン中で120℃40分おこない、放熱シートを作製した。
(比較例2)
一般に入手可能な85μm厚の銅箔を使用した以外は比較例1と同様にして放熱シートを作製した。
(比較例3)
一般に入手可能な40μm厚のアルミ箔を使用した以外は比較例1と同様にして放熱シートを作製した。
(比較例4)
無機物層はない、グラファイトフィルムAである。
(比較例5)
無機物層はない、グラファイトフィルムBである。

得られた結果を表1に示す。
(得られた放熱シートの評価方法)
○厚みの測定
放熱シートおよび熱伝導層(グラファイト、銅、アルミ)の厚みの測定方法としては、50mm×50mmのフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて、任意の10点を測定し、平均して測定値とした。無機物層厚は、放熱シートの厚みと熱伝導層の厚みの差をとった。
○放熱シートの単位面積当たりの重量
放熱シートの単位面積当たりの重量は、放熱シートを10cm2角に切り取り、その重量(g)を測定し、次式により算出した。
単位面積当たりの重量(mg/cm2)=10cm角の重量(mg)/100cm2
○放熱シートの鉛筆強度
放熱シートの鉛筆硬度は、JIS K 5400(1990年)(JIS K 5600(1999年))「塗料一般試験方法」の8.4.1 試験機法に準じて、評価された。評価値は2B、B、HB、F、Hといった鉛筆硬度で示され、この順で、表面硬度が高いことを意味している。
○放熱シートの耐電圧
放熱シートの耐電圧は、放熱シートの表裏に50Vの電圧をかけて、電流が流れないものを○、流れるものを×として評価した。
○放熱シートの放射率
放熱シートの放射率は、(株)ジャパンセンサー製の放射率測定装置(TSS−5X)を使用し、放熱シートの表面の測定をおこなった。無機物層(熱放射膜層)が片面のみのサンプルは無機物層側の表面の放射率を測定値とした。放射率が高いほど、熱を赤外線/遠赤外線に変換し、放射する能力が高いため、放熱特性に優れていることを意味する。
○放熱シートの加工性(カットのし易さ)
放熱シートの加工性は、OLFA製のカッターナイフを使用し、150gの加重を加えてシートがカットできるかで評価した。1度の引き切りで切れるものを○、2度の引き切りで切れるものを△、3度以上の引き切りが必要なものを×とする。1度の引き切りで切れるものほど加工性がよく、作業性が向上する。また、カッターナイフの使用時に限らず、トムソン歯などを用いた打ち抜き性も、同様の傾向がある。
○放熱シートの熱伝導率
放熱シートの熱伝導率は熱拡散率、密度、比熱容量の実測値から次式により求めた。
λ=αdC・・・(1)
λ:熱伝導率(W/mK)
α:熱拡散率(m2/s)
d:密度(kg/m3
C:比熱容量(J/kg)
なお、放熱シートの熱拡散率は、4mm×40mmのグラファイトフィルムを光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社製、「LaserPit」)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。
熱伝導率の値が大きいシートほど、放熱効果が高い。
○放熱シートの冷却性能評価
グラファイトフィルムの冷却性能の評価は、実際の使用形態に近い形でおこなった。
具体的には、図15に示すように、圧縮して得られた柔軟なグラファイトを5cm角に切り取り、中心に発熱体として1cm角セラミックヒーター(坂口電熱製)を接続した。接続には、ヒートシンクとCPU間の接触などに使用される高熱伝導性シリコーンゴムシート(GELTEC製、6.5W/mK)を使用した。また、室温は22.5±0.5℃に調節し、対流(風)による冷却効果をできるだけ一定とするため、測定領域を発泡スチロールで覆い測定をおこなった。電源のワット数を2Wに保ち測定をおこなった。定常状態(ヒーター温度が±1℃以下)になったところで、ヒーター温度を計測した。ヒーターの測定は、発熱体から発生する赤外線を読み取る放射温度計を用いて測定をおこなった。実際には、(株)NEC三栄社製、サーモトレサTH9100MV/WVを用いヒーター温度の測定をおこなった。ヒーターの温度が低いほどグラファイトの冷却性能が優れていると言える。

実施例1〜4で作製した放熱シートは、冷却性能の評価の結果、比較例1〜5と比較してヒーター温度は低く、冷却性能が高い。以下、具体的に見てみる。
実施例1と比較例1、3は同じ厚みの熱伝導層(グラファイトフィルムA、銅、アルミ)に20μmの熱放射膜層を塗布したものであるが、ヒーター温度は、実施例1が56.1℃、比較例1が72.2℃、比較例3が76.3℃とグラファイトフィルムAに熱放射膜層を塗布したものが、高い冷却性能を示した。これは、グラファイトフィルムA単体、銅単体、アルミ単体の熱伝導率の値がそれぞれ1320、398、237m/WKであり、熱伝導層の熱伝導率の差が、ヒーター温度の差に反映している。
次に、実施例3と比較例2は同じ厚みの熱伝導層(グラファイトフィルムB、銅)に20μmの熱放射膜層を塗布したものであるが、ヒーター温度は、実施例3が50.5℃、比較例2が58.4℃とグラファイトフィルムBに熱放射膜層を塗布したものが、高い冷却性能を示した。これも、グラファイトフィルムB単体、銅単体の熱伝導率の値がそれぞれ1350、398m/WKであり、熱伝導層の熱伝導率の差が、ヒーター温度の差に反映している。
また、実施例1と比較例2を比較しても、熱伝導層の厚みは比較例2の方が厚いものの熱伝導率が大幅に大きなグラファイトフィルムAに熱放射膜層を塗布した実施例1の方が、ヒーター温度は小さく高い冷却性能を示した。厚みが薄く、冷却性能が高いため、金属を熱伝導層とした放熱シートよりグラファイトフィルムを熱伝導層とした放熱シートの方が、省スペースでの熱拡散性を期待される電子機器の放熱材料としては適している。
次に実施例1、3と比較例4、5を比較する。実施例1、3は熱放射膜層を塗布しているために、放射率の値が0.96と大きな値を示す。一方、比較例4、5はグラファイトフィルムの放射率であり、グラファイトフィルムAの放射率は0.65、表面の光沢度が高いグラファイトフィルムBの放射率は0.54と小さな値を示す。これは、熱を赤外線/遠赤外線に変換して放射する能力が、熱放射膜層を塗布することで増大したことを意味する。冷却性能の評価でも、表面に熱放射膜層を塗布した、実施例1、3のヒーター温度は56.1℃、50.5と熱放射膜層を塗布してない比較例4、5の60.5℃、54.3℃と比較して、5℃程度低かった。
続いて加工性(カットのし易さ)についてだが、実施例1〜4の放熱シートは、加工性のよい柔らかいグラファイトフィルムを熱伝導層として使用しているため、加工性の試験は○であった。一方、熱伝導膜層に金属箔を使用した、比較例1〜3では、加工性は△〜×であり、加工性の観点からも熱伝導層にグラファイトフィルムを使用した放熱シートは優れていると言える。
続いて単位面積辺りの質量について、実施例1と比較例1、3を比較した。総厚および熱伝導層厚はすべて同様であるにもかかわらず、実施例1の単位面積辺りの質量は15.2mg/cm2であり、比較例1のおおよそ1/3倍、比較例3のおおよそ2/3倍と非常に軽いものとなった。また、実施例3と比較例2を比較しても、総厚および熱伝導層厚はすべて同様であるにもかかわらず、実施例3の単位面積辺りの質量は24.0mg/cm2であり、比較例2のおおよそ1/3.5倍と非常に軽いものとなった。低重量が望まれる小型電子機器の放熱材料として実施例1〜4の放熱シートが非常に優れていると言える。
表面の鉛筆強度について、実施例1〜4と比較例4、5を比較すると、表面に熱放射膜層を塗布したことで、表面強度の弱いグラファイトフィルムの強度が高くなった。これにより、電子機器への取り付けの際の傷、粉落ちを防止し、電子機器内のグラファイト粉汚染を防止できた放熱シートとなった。
耐電圧の観点から、実施例1〜4と比較例4、5を比較すると、表面に熱放射膜層を塗布したことで、耐電圧が高くなった。これは、絶縁性が求められる電子機器内の材料として、実施例1〜4のシートが有用であることを意味する。
また、実施例1、2のシートは、基材であるグラファイトフィルム、セラミック層が共に可撓性を有するため、放熱シートも可撓性を有し、電子機器内の湾曲部分への取り付けが可能であるシートと言える。
放熱シートの構成。 放熱シートの放熱機構。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)と容器(B)への通電方法。 容器(A)と容器(B)への通電方法。 原料フィルムの容器(A)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)の容器(B)への保持方法。 容器(A)、容器(B)の保持方法および原料フィルムの面方向と通電方向の関係。原料フィルムへの通電方向を示す直線と、原料フィルムの面方向に対する法線との、成す角が、90度。容器(A)と容器(B)は非接触。 グラファイト断面の割断方法の模式図。 グラファイトフィルムAの断面SEM像。 グラファイトフィルムBの断面SEM像。 冷却性能評価方法
符号の説明
1 無機物層(熱放射膜層)
2 熱伝導
3 粘着層
4 発熱体
5 熱伝導層中の熱の均熱化
6 熱伝導層から熱放射膜層への熱伝達
7 熱放射膜層からの熱放射
11 原料フィルムを保持するための、平滑な通電可能な平板
12 容器(A)
13 原料フィルムを保持した容器(A)
21 円筒の容器(B)
22 蓋
31 容器(A)と容器(B)の間に充填された、カーボン粒子
32 容器(B)の外部周辺に充填された、カーボン粒子
121 グラファイトフィルム(カッターナイフで短冊状に切り取ったもの)
122 剃刀刃
123 割断時に、グラファイトフィルムに軽く力をかける方向
124 割断時に、剃刀刃がグラファイトフィルムに対して相対的に進む方向
151 ヒーター
152 放熱シート
153 シリコーンゴム
154 上図
155 横図

Claims (15)

  1. グラファイトフィルムの表面に無機物層を形成させたことを特徴とする、放熱シート。
  2. 前記無機物層が赤外線放射効果を有する可撓性の熱放射膜であることを特徴とする、請求項1に記載の放熱シート。
  3. 前記熱放射膜の放射率が0.90以上であることを特徴とする、請求項1〜2いずれかに記載の放熱シート。
  4. 前記赤外線放射効果を有する熱放射膜が、シラノールを含有する液状体を塗布して形成した塗膜であることを特徴とする、請求項2〜3いずれかに記載の放熱シート。
  5. 前記赤外線放射効果を有する熱放射膜が、二酸化珪素、酸化アルミニウムのいずれかを含有する液状体を塗布して形成した塗膜であることを特徴とする、請求項2〜3いずれかに記載の放熱シート。
  6. 前記赤外線放射効果を有する熱放射膜が、カオリンを含有するエマルジョン性組成物を塗布して形成した塗膜であることを特徴とする、請求項2〜3いずれかに記載の放熱シート。
  7. 前記グラファイトフィルムが、表面を粗面化されたグラファイトフィルムであることを特徴とする、請求項1〜6に記載の放熱シート。
  8. 前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して作製されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の放熱シート。
  9. 前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の放熱シート。
  10. 前記グラファイトフィルムの密度が1.3g/cm3以上であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の放熱シート。
  11. 前記グラファイトフィルムの熱拡散率が、9.0×10-42/s以上であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の放熱シート。
  12. 前記グラファイトフィルムの厚みが、95μm以下であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の放熱シート。
  13. 前記グラファイトフィルムが、表面層の断面模様の一部が、1μm未満の厚みの略長方形が略平行に積層した結果形成される短辺5μm以上の略長方形の形状を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の放熱シート。
  14. 前記グラファイトフィルムが、内部に、最短径0.1〜50μmの不定形形状の模様が観察されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の放熱シート。
  15. 前記グラファイトフィルムが、電圧を印加し直接通電可能な容器内に、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを保持し、該容器に電圧を印加し通電しながら黒鉛化することによって得られることを特徴とする、請求項1〜14いずれか記載の放熱シート。
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