JP5117081B2 - グラファイトフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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1.CPUと冷却ファンやヒートシンクの間に挟む放熱スペーサや
2.DVD光ピックアップ部分や筐体部分に貼り熱を拡散させる放熱スプレッダ
等が挙げられる。このような放熱部材として使用する場合、グラファイトの優れた熱伝導性を発揮させるためには、発熱源と十分密着させる必要があり、グラファイトフィルムと発熱源をエポキシ樹脂、アクリル樹脂またはポリイミド樹脂のような接着剤、粘着剤等を用いて接合させることがある。また具体的に、グラファイトフィルムと接着剤、粘着剤等を別々に用意するのではなく、グラファイトフィルムの少なくとも片面に粘着層または接着層を形成したグラファイト複合フィルムを用いるのが一般的である。
このように、様々な種類のグラファイト複合フィルム(グラファイトフィルム/粘着剤、接着剤等/剥離ライナー)が知られているが、グラファイトフィルムはその化学構造および高度な耐薬品性により、種々の粘着剤、接着剤等との密着力が不十分な場合が多かった。実際これまで、粘着剤、接着剤等の種類によっては、粘着剤、接着剤等とグラファイトフィルムの層間から剥離が見られることがあった。具体的には、グラファイト複合フィルムから剥離ライナーを剥がす際の弱い力でも、グラファイトと粘着剤、接着剤等の層間から剥離する場合もあった。また、粘着テープとグラファイトフィルムを貼り合わせる際のニップ圧が弱過ぎる場合も同様の剥離が見られることがあった。このように従来技術に記載したようなグラファイトフィルムは、剥離ライナーを剥がす際のハンドリング性が悪く、電子機器、精密機器などへの取り付けが容易におこなえない場合があった。
また、グラファイト層と粘着剤(アクリル樹脂系、シリコーン樹脂系等)の密着力が弱いために、グラファイトフィルム使用時にも、グラファイトフィルムと粘着剤の層間から剥離が発生することがあった。そのため、シートと発熱部材との密着力が悪くなり十分な放熱能力を発揮することが出来なくなった。特に、近年電子機器の発熱密度は増加しており、熱による剥がれが深刻化してきている。
また、グラファイトフィルムをプラスチックフィルムや板状の支持体と複合する場合、種々の接着剤(エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系、アクリル樹脂系、シリコーン樹脂系、ポリイミド樹脂系等)を介して貼り合わせる場合があるが、グラファイトフィルムはその化学構造および高度な耐薬品性により、種々の接着剤との密着性が不十分な場合が多かった。
また、グラファイトに電気絶縁性と高い放射率を寄与する目的で、赤外線放射効果を有する可撓性の無機熱放射膜をグラファイト表面に形成するとよい。熱放射膜の形成する方法として、シラノールを含む物質をイソプロピルアルコールなどで分散した液状体、例えばHYPER COAT−HR(マイクロコーテック(株))をスプレー等でグラファイトの片面もしくは両面に直接吹付け、その後に乾燥させた塗膜によって形成する。しかしながら、従来のグラファイトフィルムは、その化学構造および高度な耐薬品性により、濡れ性が非常に悪く均一な塗布が困難であった。また、無機物層を形成できたとしても、シートを撓ませるとグラファイト層から無機物層が剥がれ落ちるなど、グラファイトフィルムと無機物層の密着力は非常に小さいことは明らかであった。
さらに(4)前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のグラファイトフィルムであり、(5)前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾル、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする(4)に記載のグラファイトフィルムであって、(6)前記グラファイトフィルムの面方向の熱拡散率が8.0×10−4m2/s以上であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載のグラファイトフィルムであり、(7)前記グラファイトフィルムの密度が、1.5g/cm3以上であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載のグラファイトフィルムであり、(8)前記グラファイトフィルムの厚みが、100μm以下であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載のグラファイトフィルムに関する。
コロナ処理は接着の困難さを解決する手段として、プラスチック産業において広く利用されている。その効果発現は、化学反応により電気的極性を持つ官能基を表面に形成して、親水性と密着力を高めるものである(例.特許文献3)。コロナ処理は通常、高分子フィルムに施されることが多く、電極は、コロナ処理をすべき長さ、換言すれば、ほぼ高分子フィルムの幅に成型されており、高分子フィルムは高度に絶縁されたロールと線条のコロナ電極の間をロールに沿って走行する。そして、前記コロナ電極に高エネルギーを作用させてコロナ放電を起こすことにより、高分子フィルムにコロナ放電処理を施すことができる。
本発明のグラファイトフィルムの水に対する接触角は、50度以下、好ましくは21度以下、さらに好ましくは12度以下である。濡れ性改善の指標でもある水との接触角が小さいと、粘着剤、接着剤との密着力が強くなる。また、シラノールを含む物質をイソプロピルアルコールなどで分散した液状体などをグラファイト表面に塗布し、無機物層などを形成させる場合も、均一な塗布が可能となる。水との接触角が50度より大きくなると、粘着材、接着剤との密着力が弱いためグラファイトと多種材料との複合が困難になる。
本発明のようにグラファイトフィルム表面には、図5に示す、最短径0.1〜5μmの凹凸(不定形形状の模様)が観察される。具体的には、5個/25μm2以上、好ましくは10個/25μm2以上、さらに好ましくは15個/25μm2以上であるとよい。上記凹凸がグラファイトフィルム表面に存在すると、接着剤、粘着剤などとの密着力が増大する。そのメカニズムは以下に示す通りである。
グラファイトフィルムの水に対する接触角や密着性を向上させる方法としてコロナ処理の他に、火炎処理、紫外線処理、アルカリ処理、プライマー処理、サンドブラスト処理、プラズマ処理などがある。これらの方法を組み合わせて処理することで、グラファイトフィルムの濡れ性、密着性は改善できる。また、サンドペーパーなどにより、グラファイト表面を処理するとアンカー効果により、粘着材、接着剤、無機物層との密着性が向上させることができる。
本発明で使用するグラファイトフィルムの構造、性能等に特に制限を受けることなく、一般に市販されているグラファイトフィルムが使用可能である。本発明のグラファイトフィルムは、高分子を熱処理して得られるグラファイトフィルム、天然黒鉛を原料とするエキスパンドして得られるグラファイトフィルム等が適している。高分子熱分解法とは、ポリオキサジアゾール、ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリチアゾールまたはポリアミド等の高分子フィルムをアルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下や減圧下で熱処理する方法である。また、エキスパンド法は、粉状、燐片状の天然黒鉛を酸に浸漬後、加熱によりグラファイト層間を拡げることによって得られる膨張黒鉛をロールプレス加工する方法である。
コロナ処理を施し、濡れ性が改善され、粘着剤、接着剤、無機物層との密着性が特に高まるグラファイトフィルムとしては、高分子分解法により得られるグラファイトフィルムが挙げられる。高分子分解法により得られたグラファイトフィルムは、高度に配向した化学構造により、表面の濡れ性が極端に悪い(水に対する接触角が90度近い)。したがって、これまで様々な物質との複合化が困難であった。しかしながら、コロナ処理を施すことにより濡れ性を大きく向上させることができることがわかった。
グラファイトフィルムは高度に配向した化学構造を有するため、その分子構造を破壊し官能基を導入するためには多くのエネルギーを要する。また、グラファイトフィルムが導電性物質であるため、フィルム自身でコロナ放電によるエネルギーを分散させてしまう。そのため、通常のプラスチックフィルムより官能基導入が困難である。
コロナ処理を施し粘着剤、接着剤との密着性が向上し易いグラファイトフィルムとしては、厚みの薄いものが好ましい。本発明に使用するグラファイトフィルムの厚みの具体的レベルは100μm以下、好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。100μm以下のグラファイトフィルムにコロナ処理を施すことで、電子機器などの発熱部分使用時に粘着層、接着層等とグラファイト層間から剥がれにくい複合シートを得ることができる。一方、厚みが100μmより厚いと、使用時に剥がれ易くなる。これは、グラファイトフィルムは、高温になると不純物あるいは吸収していた水分をアウトガスとして排出する事に起因するものである。厚みが厚いとこのアウトガスの量が多くなり、接着剤とグラファイトフィルムの層間から剥離しやすくなる。
コロナ処理を施し粘着剤、接着剤、無機物層との密着性が向上し易いグラファイトフィルムとしては、密度の高いものが好ましい。本発明に使用するグラファイトフィルムの密度の具体的レベルは、1.5g/cm3以上、好ましくは1.6g/cm3以上、さらに好ましくは1.7g/cm3以上である。一般的に密度が大きいグラファイトフィルムは、グラファイト表面の凹凸が少ないため、コロナ処理をより高密に行なうことができ、粘着剤(接着剤)および無機物層との密着力が非常に大きなグラファイトを得ることができる。一方、密度が1.5g/cm3より小さい場合、接着剤および粘着剤とグラファイトフィルムの密着力が小さく剥離する場合がある。これは、密度が小さいとグラファイト自身が吸収する水分の量が多くなり、使用時にアウトガスの発生で剥がれやすくなるからである。また、密度が小さいグラファイトフィルムは一般的に表面の凹凸が大きく、コロナ処理を施されない面が生じるため、接着剤との密着力が低下する。
更に、従来の市販のグラファイトフィルムより、熱伝導性、強度が優れているために、コロナ処理などのフィルム表面処理をするには、次に述べるグラファイトフィルムを使用するのがより好ましい。熱伝導率、強度が優れているとコロナ処理などのフィルム表面処理に適しているためである。
本発明のグラファイトフィルムは、樹脂材料(粘着剤、接着剤等も含む)、無機物材料と貼り貼り合わせる場合がある。樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。無機物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ等のセラミック材料、銅、アルミ、マグネシウム、鉄、SUS等の金属材料が挙げられる。
本発明のグラファイトフィルムは、フィルム表面の濡れ性が高く、接着剤および粘着剤との密着性が優れているため、粘着剤や接着剤を用いて様々な材料との複合化が可能である。また、本願発明に係るグラファイトフィルム及びグラファイト複合フィルムは、熱伝導性に優れるため、あらゆる熱に関わる用途に使用することが可能である。さらに、柔軟性、電気伝導性にも優れるため、この特徴を活かした用途には特に適している。グラファイトフィルムの熱伝導に優れるという特徴は、熱を移動させる、熱を逃がす、熱を広げる、熱を均一にする、熱応答を早くする、早く暖める、早く冷ますといった効果が必要な用途には適している。熱を瞬時に広げることで急激な温度変化を防止緩和したり、局所的な熱の集中を回避したりすることが可能である。またその逆で、急激な変化を起こさせたり、わずかな熱の変化を検知したりする用途に使用することが可能である。熱が緩和されることで高温環境化においても強度、接着性を確保できる。また、均一かつ正確に熱を伝えることにより、高精度、高品位、高画質といった特性改善も可能になる。製造装置に用いた場合には、熱を早く、大量に輸送できる特長を活かし、タクトタイム短縮、加熱・冷却効率改善、乾燥効率改善、高速化、待ち時間短縮といった生産性の向上が可能になる。また、熱の均一化や素早い輸送により、不良低減、保温機能も高めることが可能となる。また、様々な機器に採用することで、省スペース化、薄膜化、軽量化、機構の単純化、設置の自由度改善を可能とし、余計な部品を無くすことで、省電力化、静音化も可能となる。また、熱を逃がすことが可能なため、ヒートサイクル環境試験やアニ−ル処理でも特性劣化なく、半田耐熱、接着層の密着性、耐熱性、信頼性、耐久性が改善でき、また断熱性を高めたり、熱に弱い部品から守ったりすることも可能となる。その結果、メンテナンスレス、コストダウンにつながり、安全性も改善することが可能となる。
本発明に係るグラファイトフィルムを実際に発熱体、ヒートシンク、ヒートパイプ、水冷冷却装置、ペルチェ素子、筐体、ヒンジ等に適用する場合には、それらとの固定性、熱拡散性、放熱性、取り扱い性を改善するために、片面及び/または両面に接着材層、樹脂層、セラミック層、金属層、絶縁層、導電層等を形成することが好ましい。
[ポリイミドフィルムAの作製方法]
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
厚さ75μmのポリイミドフィルムAを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温した後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)を行なった。この炭素化フィルムを炭素化フィルムAとした。
厚さ50μmのポリイミドフィルムBを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温した後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)を行なった。この炭素化フィルムを炭素化フィルムBとした。
[炭素化フィルムCの作製方法]
厚さ175μmのポリイミドフィルムAを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温した後、1000℃で1時間熱処理して炭化処理(炭素化処理)を行なった。この炭素化フィルムを炭素化フィルムCとした。
炭素化処理により得られた炭素化フィルムA(400cm2(縦200mm×横200mm)を、縦270mm×横270mm×厚み3mmの板状の平滑なグラファイトで上下から挟み、図6に示す縦300mm×横300mm×厚み60mmの直接通電可能な黒鉛容器(容器(A))内に保持した。
[グラファイトフィルムBの作製方法]
炭素化処理により得られた炭素化フィルムBをセットすること以外はグラファイトAと同様にしてグラファイトフィルムB(25μm)を作製した。
炭素化処理により得られた炭素化フィルムCに硝酸鉄の10wt%メタノール溶液を塗布した後、黒鉛板に挟み、黒鉛容器(容器(A))にセットしたこと、通電加熱後に圧縮しないこと以外はグラファイトフィルムAと同様にしてグラファイトフィルムC(85μm)を作製した。
グラファイトフィルムDは、松下電器産業(株)製のPGSグラファイトフィルム「EYGS182310」である。
酸化剤(過酸化水素、過塩素酸等)の存在下、天然鱗状黒鉛の層間に硫酸、硝酸等を挿入し、形成された層間化合物を900〜1200℃程度の高温で急激に加熱することで分解ガス化し、このときのガス圧によって黒鉛の層間を拡げて黒鉛を膨張させた。以上のようにして得られた膨張黒鉛を圧縮予備成形し、その後ロールで圧延する事により、厚み250μm、密度1.0g/cm3のグラファイトフィルムEを得た。
グラファイトフィルムの表面状態をXPS(アルバック・ファイ(株)製、ESCA5800型)で解析した。400Wの出力で対陰極にMgを使用し、10−6Pa以下の真空下で測定した。測定結果を元に、各元素で最も強度の強いピーク面積の比較により、表面元素の構成比率を導いた。詳細には、C(280eV付近)、O(540eV付近)のピーク面積の比率から、表面元素の構成比率を導いた。
グラファイトフィルムの表面観察は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名:日立製S−4500型)を用い、加速電圧10kVで観察した。
グラファイト化の進行状況を、フィルム面方向の熱拡散率を測定することによって判定した。熱拡散率が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、グラファイトフィルムを4×40mmのサンプル形状に切り取り、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。
グラファイトフィルムの密度は、グラファイトフィルムの重量(g)をグラファイトフィルムの縦、横、厚みの積で算出した体積(cm3)の割り算により算出した。なお、グラファイトフィルムの厚みは、任意の10点で測定した平均値を使用した。密度が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。
グラファイトフィルムの厚みの測定方法としては、50mm×50mmのフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて、任意の10点を測定し、平均して測定値とした。
剥離ライナーの引き剥がし性については、グラファイトフィルムとアクリル系接着剤(日東電工製、商品名: 5601)の張り合わせをおこない、剥離ライナーを剥がした際にグラファイト層と粘着層との層間から剥離が見られるか目視にて観察した。サンプルに全体的に剥離が確認できるものを「×」、一部確認されるものを「△」、剥離のないサンプルを「○」とした。なお、粘着剤とグラファイトフィルムの貼り合わせは日本ビージーシー株式会社から入手可能なラミネーター(GL835PRO)を使用し、貼り合わせ3時間後に引き剥がしの試験をおこなった。
アクリル系接着剤との密着性の測定は、グラファイトフィルムとポリイミドフィルム(株式会社カネカ製 アピカルAH 厚み50μm)を、アクリル系接着剤(デュポン社製、商品名: Pyralux LF0100)を介して張り合わせをおこなった。貼り合わせの条件は、積層後日本ビージーシー株式会社から入手可能なラミネーター(GL835PRO)を用いて150℃の温度で熱ラミネートをおこない、オーブン中で185℃、1時間の条件でキュアーをおこなった。
グラファイトフィルムAの表面を、前処理としてサンドペーパーで荒らし、(株)マイクロコーテック製のHYPER COAT−HRをスプレーコートで塗膜した。膜厚は20μmに調節した。乾燥はオーブン中で120℃40分おこない、放熱シートを作製した。
実施例、比較例で使用したグラファイトフィルムの厚み、密度、水との接触角、剥離ライナーの引き剥がし性、各種接着剤との密着性、無機物層との密着性について表1にまとめた。
グラファイトフィルムAに(株)信光電気計装から入手できるコロナマスターPS−10Sを用いて、コロナ放電密度が3000W・min/m2のコロナ放電処理を行った。
グラファイトフィルムBを使用したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
グラファイトフィルムCを使用したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
グラファイトフィルムDを使用したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
グラファイトフィルムEを使用したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
コロナ放電密度が500W・min/m2のコロナ放電処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、グラファイトフィルムを作製した。
コロナ放電密度が180W・min/m2のコロナ放電処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして、グラファイトフィルムを作製した。
前処理を施していないグラファイトフィルムAである。
前処理を施していないグラファイトフィルムBである。
前処理を施していないグラファイトフィルムCである。
前処理を施していないグラファイトフィルムDである。
前処理を施していないグラファイトフィルムEである。
<グラファイトフィルム表面のO/C元素の比率>
実施例1〜7、比較例1〜5について、グラファイトフィルム表面のO/C元素の比率を測定した結果、コロナ処理後の実施例1〜7では、いずれも0.01以上と高濃度に酸素が付与されていることがわかる。一方、比較例1〜5では、いずれも0.010以下であり、表面元素のほとんどが炭素であった。
実施例1〜7、比較例1〜5について、水に対する接触角を測定した結果、実施例1〜7では、いずれも50度以下と非常に優れた濡れ性を示した。一方、比較例1〜5では、いずれも50度より大きく、濡れ性が劣っていた。特に前処理を施していない比較例1〜4のグラファイトフィルムA、B、C、Dは大きな接触角を示し、濡れ性が非常に劣っていた。また、実施例1、実施例6、実施例7を比較すると、コロナ処理密度が大きいほど濡れ性は改善されることがわかった。また、実施例7では、コロナ処理前と比較して濡れ性は改善されていたものの、処理電力密度が小さかったために、実施例1〜6と比較して濡れ性はあまり改善されていなかった。
実施例1〜7、比較例1〜5について、表面のSEM観察をおこなった結果、コロナ処理後の実施例1〜7では、高倍率の観察で、図5のような不定形模様が観察された。これは、コロナ放電により、グラファイトフィルム表面にミクロな凹凸が形成されたと考えられる。
各種接着剤、無機物層との密着性の試験でも、実施例1〜7は比較例1〜5に対して非常に高い密着力を示した。詳細は以下に示す。
実施例1〜7、比較例1〜5について、剥離ライナーの引き剥がし性を調査した結果、実施例1〜7では、いずれも剥離ライナーを剥がす際にグラファイトフィルムと粘着材の層間から剥離することはなかった。一方、比較例1〜5では、一部剥離が確認される場合があった。これは実施例1〜7では、コロナ処理によりグラファイトフィルムの粘着性が改善されたためであると考えられる。
実施例1〜6では、接着直後に剥離は確認されなかったが、比較例1〜5では、ほとんど全面にわたって、グラファイト層と接着層の間から剥離が確認できた。これは、コロナ処理によりグラファイト表面の濡れ性が向上し、密着力が増大したからである。また、実施例7は、コロナ処理前と比較して密着性は改善されたものの、コロナ処理電力密度が小さかったために一部剥離が確認できた。
次に無機物層との密着性について示す。
なお、グラファイトフィルムEの熱拡散率は小さいために、実施例5のコロナ処理の際、電極を被覆しているシリコーンチューブに破けが発生した。このように、コロナ処理による発熱量は非常に大きく、熱拡散率の小さなグラファイトフィルムをコロナ処理する場合、電極に負担がかかる場合がある。そのため、できるだけ熱拡散率の大きなグラファイトフィルムがコロナ処理には適している。
コロナ処理後のグラファイトフィルムのXPS測定から、表面に微量ながらSiが寄与された。これは、今回使用した、(株)信光電気計装製のコロナマスターPS−10Sの電極がシリコーン樹脂で被覆されており、この樹脂中に含まれるSiがコロナ放電により飛散し、グラファイト表面に添加されたものと推定できた。Siの添加がグラファイトフィルムの密着性の改善に直接寄与しているわけではないが、グラファイト表面のSiの検出は、コロナ処理の有無を調査する(他社の侵害を発見する)一つの手法となり得る。
<まとめ>
以上のように、グラファイトフィルムにコロナ処理を施すことで、粘着材、接着剤、無機物層との密着性を改善することができた。これは、XPS測定、水接触角の測定からわかるように、コロナ処理を施すことでグラファイト表面に酸素由来の官能基を寄与することができたためである。またコロナ処理後のグラファイト表面には、ミクロな凹凸が形成されていることがSEM観察より確認でき、これも上述したように、密着性を改善できた一つの理由であると考えられる。
2 被覆材
11 原料フィルムを保持するための、平滑な通電可能な平板
12 容器(A)
13 原料フィルムを保持した容器(A)
21 円筒の容器(B)
22 蓋
31 容器(A)と容器(B)の間に充填された、カーボン粒子
32 容器(B)の外部周辺に充填された、カーボン粒子
Claims (10)
- XPS測定での表面元素分析によるO/C元素の比率が0.01以上0.30以下であり、かつ、水との接触角が50度以下であるグラファイトフィルム。
- 表面に最短径0.1〜5μmの凹凸が、5個/25μm2以上の存在する請求項1記載のグラファイトフィルム。
- コロナ処理、火炎処理、紫外線処理、アルカリ処理、プライマー処理、サンドブラスト処理、プラズマ処理からなる一群のフィルム表面処理の少なくとも1つの処理が施された、請求項1または請求項2に記載のグラファイトフィルム。
- 前記グラファイトフィルムが、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルムからなる原料フィルムを2000℃以上の温度で熱処理して得られるグラファイトフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
- 前記高分子フィルムが、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾル、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子からなることを特徴とする請求項4に記載のグラファイトフィルム。
- 前記グラファイトフィルムの面方向の熱拡散率が8.0×10−4m2/s以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
- 前記グラファイトフィルムの密度が、1.5g/cm3以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
- 前記グラファイトフィルムの厚みが、100μm以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
- 前記コロナ処理の処理電力密度が、200W・min/m2以上50000W・min/m2以下である請求項3〜8のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記コロナ処理において、誘電体を被覆した電極を用いて該処理をおこなうことを特徴とする請求項9に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
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