JP5330021B2 - グラファイトフィルムおよびグラファイトフィルムの製造方法 - Google Patents
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(1)厚みが5μm以上45μm以下の高分子フィルム、または厚みが5μm以上45μm以下の炭素化した該高分子フィルムからなる原料フィルムを2枚以上直接積層して、2600℃以上の温度で熱処理する工程を含むことを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。
近年の電子機器の発熱密度増加に対する対策として熱拡散性の非常に優れたグラファイトフィルムが注目を集めている。現在、一般に入手できるグラファイトフィルムとして、高分子熱分解法またはエキスパンド法により製造されたグラファイトフィルムがある。
本願発明で用いることができる高分子フィルムは、特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)が挙げられ、これらのうちから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの柔軟性、熱拡散性が大きくなることから好ましい。これらのフィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でもポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために好ましい。また、ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりもフィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、柔軟性、熱拡散性に優れたグラファイトフィルムとなりやすい。
本願発明で用いることができる高分子フィルムの厚みは、5μm以上45μm以下、好ましくは7μm以上40μm以下、さらに好ましくは10μm以上30μm以下である。
本発明で用いられる炭素化した高分子フィルムは、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは不活性ガス中で予備加熱処理して得ることができる。この予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば2℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で60分程度の温度保持を行うことが望ましい。
本発明で用いることができる原料フィルムは、高分子フィルムまたは炭素化した高分子フィルムである。
炭素化は、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは窒素ガス中で予備加熱処理して炭素化を行う。この予備加熱は通常室温〜1500℃の温度で行われる。炭化の熱処理温度としては、最低でも800℃以上が必要で、好ましくは900℃以上、より好ましくは1000℃以上で熱処理することが、柔軟性、熱拡散性に優れたグラファイトを得るためにはよい。
本発明の炭素化工程のフィルムセット方法として、1枚以上(すなわち複数枚)の高分子フィルムと、熱伝導性シートとを交互に積層する方法が挙げられる。ここで、「交互に積層」とは、熱伝導性シートの間に複数枚の高分子フィルムが挟まれて積層されていることをいう。
次に、黒鉛化は、炭素化した高分子フィルムを一度取り出した後、黒鉛化用の炉に移し変えてからおこなっても良いし、炭素化から黒鉛化を連続的におこなっても良い。黒鉛化は、減圧下もしくは不活性ガス中でおこなわれるが、不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムが適当である。熱処理温度としては最低でも2000℃以上が必要で、最終的には2600℃以上、好ましくは2800℃以上、更に好ましくは2900℃以上まで処理するとよい。最高温度が高いほど、柔軟性、熱拡散性に優れたグラファイトフィルムが得られる。
特許文献3のように、複数枚の炭素化フィルムを、1600℃以上の温度領域で、4kg/cm2以上の圧力を加えながら炭素質フィルム同士を圧着することを特徴とするグラファイトブロックの製造方法が知られていが、前述のように本手法ではグラファイトフィルムを得ることができない。
本発明は、原料フィルムの厚み方向に圧力を加えた状態で熱処理することが好ましい。原料フィルムの厚み方向に圧力を加えた状態で熱処理することは、柔軟性、熱拡散性に優れたグラファイトフィルムを得ることができるために好ましい。これは、フィルムの厚み方向に圧力を加えることで、皺およびひずみを抑制でき、原料フィルム同士の隙間から逃げる、発泡を引き起こすアウトガスをフィルム内に留めることができ、また、硬質化の一要因である外部からの金属不純物の進入も防ぐことができる。本発明における、原料フィルムの厚み方向への圧力は1.0g/cm2以上200g/cm2以下であることが好ましい。原料フィルムが黒鉛化する際には、原料フィルムのサイズが膨張および/または収縮する過程を経る。該圧力が1.0g/cm2未満の状態で熱処理すると、原料フィルムの黒鉛化に伴う不均一なフィルムの膨張および/または収縮が生じ、フィルム平面性が損なわれ、原料フィルムの隙間から不純物が進入し、硬質化してしまう。また、該圧力が200g/cm2より高くなると、原料フィルム同士が圧着してしまうためよくない。また、厚み方向への物理的な圧力により発泡が抑制され、硬質なフィルムが得られる場合もある。本発明により、原料フィルムの厚み方向への圧力は、好ましくは1.0g/cm2以上200/cm2以下、さらに好ましくは5.0g/cm2以上100/cm2以下、さらに好ましくは7.0g/cm2以上80/cm2以下である。
原料フィルムのフィルム厚み方向への圧力の加え方としては、フィルムを保持するために用いた冶具による自重、フィルムを保持する容器に蓋を用いた場合には該蓋から受ける圧力、また加熱によるフィルム周囲の容器の膨張、およびフィルムを保持するために用いた冶具の膨張による圧力によって達成されるが、これらに限定されるものではない。なお、前記圧力は、熱処理する原料フィルムの面積に対して算出している。
本願発明で用いることができる高分子フィルムは、分子の面内配向性に関連する複屈折Δnが、フィルム面内のどの方向に関しても0.12以上、好ましくは0.13以上、さらに好ましくは0.14以上である高分子フィルムである。
ここでいう複屈折とは、フィルム面内の任意方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意方向Xの複屈折Δnxは次式(数式1)で与えられる。
本願発明で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
本願発明のポイントとして、金属不純物の原料フィルムへ作用をいかに抑えるかが重要である。前述のように、金属不純物の作用により、フィルムの発泡が阻害され、硬質なフィルムとなる。特に本発明のように、薄物の高分子フィルム(45μm以下)を原料として用いる場合は顕著である。筆者らは、これまでの検討から、この金属不純物のフィルムへの作用が、金属物質が気化する1000℃以上2400℃以下の温度領域で、起こっていることを解明した。そこで、この温度領域にて、炉内に気体として充満している金属成分を取り除くため、1000℃以上2400℃以下の温度領域の少なくとも一部を減圧にした。その結果、フィルムの発泡は劇的に増加し、柔軟なフィルムを得ることができることを発見した。減圧での処理により金属不純物の作用を抑制し、発泡できたことは予期し難い効果であった。
また、減圧の程度としても、−0.08MPa以下、好ましくは−0.09MPa以下、更に好ましくは、−0.099MPa以下がよい。減圧の程度についても−0.08MPaより高い圧力であると、金属不純物の作用抑制の効果が得られにくい。
本発明で使用される原料フィルムのサイズは100cm2以上、好ましくは200cm2以上、更に好ましくは400cm2以上である。
本発明に係るグラファイトフィルムの製造方法においては、前記黒鉛化工程を経て黒鉛化した原料フィルム、つまりグラファイトフィルムを、さらに、面状に加圧する「後面状加圧工程」を含むことが好ましく、耐屈曲性、熱拡散率に優れ、表面に傷、凹みがなく、皺のない、平坦性に優れたグラファイトフィルムが得られ、特に耐屈曲性を向上させるためには重要な工程である。このような「後面状加圧工程」は室温でも行うことができる。このような「後面状加圧工程」においては、前記グラファイトフィルム以外のフィルム状媒質とともに、面状に加圧することが好ましい。
本発明の後面状加圧工程のグラファイトフィルムを面状に加圧する圧力は、2MPa以上40MPa以下、好ましくは4MPa以上20MPa以下、更に好ましく8MPa以上15MPa以下である。グラファイトフィルムを面状に加圧する圧力が2MPaより小さい場合は、圧力が小さすぎて十分に圧縮処理できず、耐屈曲性の悪いグラファイトフィルムとなる。一方、グラファイトフィルムを面状に加圧する圧力が40MPaより大きいと、圧力が大きすぎて圧縮処理時にグラファイトフィルムが破壊されてしまい、耐屈曲性、熱拡散性、外観の悪いグラファイトフィルムとなる。
前記グラファイトフィルム以外のフィルム状媒体としては、天然黒鉛から得られたグラファイトフィルムや、樹脂フィルムや、金属板、金属箔等が例示される。具体的には、天然黒鉛から得られたグラファイトフィルム、緩衝ゴム材、鉄板、テフロン(登録商標)フィルム、ポリイミドフィルム、PETフィルム等が挙げられる。電子の移動を可能にする化学構造を持った、いわゆる導電性ポリマーと、界面活性剤、電解質などの化合物や金属粉、カーボンブラックなどの導電性フィラーを練り込んだ、導電性樹脂組成物などの導電性高分子材料は、静電気除去の観点から特に適している。
本願発明のグラファイトフィルムのMIT耐屈曲試験おける折り曲げ回数(Rが2mm、左右の折り曲げ角度90°)は、500回以上、好ましくは1000回以上、更に好ましくは10000回以上がよい。500回以上になると、耐屈曲性に優れているため屈曲部分に使用しても破壊されにくくなる。具体的には、携帯電話のヒンジや小型電子機器の折り曲げ部分で使用する場合でも、機能を落とすことなく使用することが可能となる。また、耐屈曲性に優れているため、電子機器への取り付け時などのハンドリング性も向上する。また、粘着材や保護フィルムなどの複合材と複合する場合も割れ、折れ、粉落ちなどが発生し難いためによい。一方、100回未満になると、耐屈曲性が劣るために、屈曲部分での使用中にフィルムが破壊されやすい。また取り扱い時のハンドリング性も悪くなる。また、複合材と貼り合わせるためにラミネーターを通す際など、割れや折れが発生しやすい。特に折り曲げ角度が大きい場合、折り曲げ半径が小さい場合フィルムが劣化しやすい。
グラファイトフィルムのMIT耐屈曲試験は、東洋精機(株)製のMIT耐揉疲労試験機型式Dなどを用いて測定することができる。測定では、折り曲げ半径R、折り曲げ角度、荷重などを選択することが可能であり、Rが2mm、1mm等が選択することができる。通常、折り曲げ半径Rが小さいほど、折り曲げ角度が大きいほど、荷重が重いほど厳しい試験となる。特に、携帯電話、ゲーム機、液晶テレビ、PDP等のスペース小さい電子機器においては、小さな折り曲げ半径と大きな折り曲げ角度での折り曲げ性が優れることは、機器の省スペース設計が可能となり、非常に重要である。なお、MIT試験方法の詳細は実施例の欄に記載した。
本願発明のグラファイトフィルムの厚みは、1μm以上21m以下、好ましくは3μm以上15μm以下、さらに好ましくは5μm以上12μm以下である。
本願発明のグラファイトフィルムの面積は、25cm2以上、好ましくは50cm2以上、さらに好ましくは100cm2以上であると良い。
本願発明で使用するグラファイトフィルムの面方向の熱拡散率は、3.0×10-4m2/s以上、好ましくは5.0×10-4m2/s以上、さらに好ましくは8.0×10-4m2/s以上であると良い。3.0×10-4m2/s以上になると、グラファイトフィルムの熱伝導率が向上するため、厚みが薄くても十分な熱輸送能力を示す。
本願発明に係るグラファイトフィルムは、熱伝導性に優れるため、あらゆる熱に関わる用途に使用することが可能である。また、厚みが薄く柔軟性にも優れるため、この特徴を活かした用途、例えば、小型電子機器など小スペース部分での使用や、折り曲げ部分などの用途に適している。グラファイトフィルムの熱伝導に優れるという特徴は、熱を移動させる、熱を逃がす、熱を広げる、熱を均一にする、熱応答を早くする、早く暖める、早く冷ますといった効果が必要な用途には適している。熱を瞬時に広げることで急激な温度変化を防止緩和したり、局所的な熱の集中を回避したりすることが可能である。またその逆で、急激な変化を起こさせたり、わずかな熱の変化を検知したりする用途に使用することが可能である。熱が緩和されることで高温環境化においても強度、接着性を確保できる。また、均一かつ正確に熱を伝えることにより、高精度、高品位、高画質といった特性改善も可能になる。製造装置に用いた場合には、熱を早く、大量に輸送できる特長を活かし、タクトタイム短縮、加熱・冷却効率改善、乾燥効率改善、高速化、待ち時間短縮といった生産性の向上が可能になる。また、熱の均一化や素早い輸送により、不良低減、保温機能も高めることが可能となる。また、様々な機器に採用することで、省スペース化、薄膜化、軽量化、機構の単純化、設置の自由度改善を可能とし、余計な部品を無くすことで、省電力化、静音化も可能となる。また、熱を逃がすことが可能なため、ヒートサイクル環境試験やアニ−ル処理でも特性劣化なく、半田耐熱、接着層の密着性、耐熱性、信頼性、耐久性が改善でき、また断熱性を高めたり、熱に弱い部品から守ったりすることも可能となる。その結果、メンテナンスレス、コストダウンにつながり、安全性も改善することが可能となる。
[ポリイミドフィルムAの作製方法]
4,4’−オキシジアニリンの3当量を溶解したDMF溶液にピロメリット酸二無水物の4当量を溶解して、両末端に酸無水物を有するプレポリマを合成した後、そのプレポリマを含む溶液にp−フェニレンジアミンの1当量を溶解して得られたポリアミド酸を18.5wt%含む溶液を得た。
4,4’−オキシジアニリンの3当量、p−フェニレンジアミンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の4当量を溶解して得られたポリアミド酸を用いた以外はポリイミドフィルムAと同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルムB(弾性率3.9GPa、吸水率3.0%、複屈折0.12、線膨張係数23.7×10-6/℃)を作製した。
ポリイミドフィルムCは、東レ・デュポン(株)から入手できる厚み25μmの「KAPTON H」である。(弾性率3.4GPa、吸水率3.0%、複屈折0.10、27.9×10-6/℃)
文献によるとKAPTON Hは、4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の1当量を溶解して得られたポリアミド酸を用いて製造されていると推定される。
サイズ200mm×200mm、厚み25μmのポリイミドフィルムAを、サイズ220mm×220mmのグラファイトシートで挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、2℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温した後、1000℃で1時間熱処理して炭素化した。
得られた180mm×180mmのフィルム1枚を、サイズ200mm×200mm×厚み400μmの高分子フィルムで挟み、圧縮成型機を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例2)
炭素化フィルムを、直接5枚端を揃えて積層したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例3)
炭素化フィルムを、直接10枚端を揃えて積層したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例4)
炭素化フィルムを、直接30枚端を揃えて積層したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例5)
炭素化フィルムを、直接100枚端を揃えて積層したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例6)
炭素化フィルムを、直接500枚端を揃えて積層したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例7)
厚み45μmのポリイミドフィルムAを原料として用いたこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例8)
厚み12.5μmのポリイミドフィルムAを原料として用いたこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例9)
厚み25μmのポリイミドフィルムBを原料として用いたこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例10)
厚み25μmのポリイミドフィルムCを原料として用いたこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例11)
黒鉛化炉を用いて、室温から1600℃以下は、−0.0999Mpa以下の減圧下(実際にはピラニー真空計にて、100Pa以下)、1600℃より高い温度領域はアルゴン雰囲気下で黒鉛化したこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例12)
黒鉛化炉を用いて、室温から2900℃までアルゴン雰囲気下(大気圧程度)で黒鉛化したこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例13)
厚み25μmのポリイミドフィルムAを、端を揃えて直接30枚積層し、炭素化したこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例14)
予備加熱(炭素化)を実施せず、高分子フィルムを黒鉛化炉にて処理した。具体的には、サイズ200mm×200mm、厚み25μmのポリイミドフィルムAを、端を揃えて直接30枚積層し、この積層体をサイズ220mm×220mmのグラファイトシートで挟み、厚み方向の圧力が20g/cm2となるように、サイズ220mm×220mm、重量5.12Kgの黒鉛板を上に置いた。黒鉛化炉を用いて、室温から2200℃以下は、−0.0999Mpa以下の減圧下(実際にはピラニー真空計にて、100Pa以下)、2200℃より高い温度領域はアルゴン雰囲気下で、黒鉛化昇温速度2.5℃/minで2900℃まで昇温した後、2900℃で30分保持してグラファイトフィルムを作製した。
(実施例15)
後面上加圧処理を施していないこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例16)
黒鉛化最高温度が2700℃であること以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(実施例17)
厚み方向の圧力が1000g/cm2となるように、重量256Kgの黒鉛板を上に置いたこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(比較例1)
ポリイミドフィルムAを原料として得られた炭素化フィルム1枚を、サイズ220mm×220mmのグラファイトシートで挟み黒鉛化したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(比較例2)
ポリイミドフィルムBを原料として得られた炭素化フィルム1枚を、サイズ220mm×220mmのグラファイトシートで挟み黒鉛化したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(比較例3)
ポリイミドフィルムCを原料として得られた炭素化フィルム1枚を、サイズ220mm×220mmのグラファイトシートで挟み黒鉛化したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
(比較例4)
黒鉛化最高温度を2400℃と変更したこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。
グラファイトフィルムの厚みの測定方法としては、得られたグラファイトフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて、任意の10点を測定し、平均して測定値とした。
グラファイトフィルムのMIT耐屈曲試験を行った。グラファイトフィルムを15×100mmにカットし、東洋精機(株)製のMIT耐揉疲労試験機型式Dを用いて、試験荷重100gf(0.98N)、速度90回/分、折り曲げクランプの曲率半径Rは2mmでおこなった。折り曲げ角度は左右へ90°について測定した。
図12のような、黒鉛化処理後に発生するグラファイトフィルムのシワの最大長さを測定した。目視にて観察可能なシワの最大長さが、0〜5mmは◎、5〜10mmは○、10〜20mmは△、20mm以上は×と記載した。
直接積層し黒鉛化したグラファイトフィルム同士の圧着の程度を測定した。破れることなく剥がせる場合を◎、破れの最大長さが0〜10mmで剥がせるものを○、破れの最大長さが10〜20mmで剥がせるものを△、剥がせないものを×と記載した。
グラファイトフィルムの熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、グラファイトフィルムを4×40mmのサンプル形状に切り取り、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。グラファイト化の進行状況を、フィルム面方向の熱拡散率を測定することによって判定した。熱拡散率が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。
実施例1〜6、比較例1を比較すると、積層枚数が1枚の場合は図5のような硬質なグラファイトフィルムが得られたのに対し、2枚以上積層することで、図3のような柔軟なグラファイトフィルムが得られた。MIT試験においても、比較例1では、100回未満であるのに対し、実施例1〜6では、1000回以上と、本発明により柔軟性を付与できたことがわかる。また、積層枚数を増やすと得られるグラファイトフィルムの柔軟性は大きくなり、10枚以上の積層では、MIT試験100000回以上と非常に優れた柔軟性を示すことがわかった。
原料として使用する高分子フィルムの厚みについて、実施例4、7、8を比較すると、高分子フィルムの厚みが薄いほど、厚みの薄いグラファイトフィルムが得られる。
原料として使用する高分子フィルムの複屈折について、実施例4、9、10を比較すると、複屈折が高い方が、柔軟なグラファイトフィルムが得られた。特に複屈折が0.14のポリイミドAを原料として用いると、MIT試験が100000回以上と非常に柔軟性に優れたグラファイトフィルムが作製できた。一方、複屈折0.10の原料フィルムを同様の方法で黒鉛化してもMIT試験が500回以上と柔軟性は劣化した。
黒鉛化処理における1000℃以上2400℃以下の雰囲気について、実施例4、11、12を比較すると、1000〜2400℃の領域のできるだけ広い温度領域を減圧で処理するほど、柔軟なグラファイトフィルムが得られることがわかった。
炭素化工程の有無とセット方法について、実施例4、13、14を比較する。実施例14のように炭素化工程を省略すると、柔軟性が劣化することもさることながら、シワが発生し収率が低下した。また、実施例13のように、炭素化を直接積層で実施した場合も、柔軟性が劣化し、シワが発生した。以上のことから、柔軟性、収率を高めるためには、実施例4のように、高分子フィルムをグラファイトシートと交互に積層した状態で炭素化し、シワのない炭素化フィルムを得た後で、改めて黒鉛化処理のために直接積層し直して、黒鉛化を実施するほうがよいことがわかった。
後面状加圧工程の有無について、実施例4、15を比較すると、後面状加圧工程を施した方が優れた柔軟性を示すことがわかった。
実施例4、16、比較例4を比較すると、最高温度が高いほど、優れた柔軟性を示すことがわかった。
実施例4、17を比較すると、黒鉛化時に原料フィルムの厚み方向に加える圧力が高すぎると、フィルム同士が圧着してグラファイトフィルムが得られにくいことがわかった。また、圧力が大きいと、発泡しにくく柔軟なグラファイトフィルムが得られにくいことがわかった。
21 グラファイト層の空間
31 柔軟
41 硬質化したグラファイトフィルム
51 割れ
61 密に詰まった層間
62 金属不純物の作用により、面方向の発達を阻害するように発達した炭素質塊
71 グラファイト層
72 アウトガス
73 面方向へ発達できなかった小さなグラファイト結晶子の隙間
81 炭素質シート
82 原料フィルム
1 ポリイミドフィルム
2 くさび形シート
3 くさび形シートの幅
4 ナトリウム光
5 干渉縞
121 シワ
Claims (9)
- 厚みが5μm以上45μm以下の高分子フィルム、または厚みが5μm以上45μm以下の炭素化した該高分子フィルムからなる原料フィルムを2枚以上直接積層して、2600℃以上の温度で熱処理する工程を含み、
1000℃以上2400℃以下の温度領域の少なくとも一部において、−0.08MPa以下の減圧で熱処理されることを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。 - 前記高分子フィルムの複屈折が0.12以上であることを特徴とする請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記高分子フィルムがポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記直接積層した原料フィルムの厚み方向に、1.0g/cm2以上200g/cm2以下の圧力を加えた状態で熱処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記原料フィルムの面積が100cm2以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記炭素化において、前記2枚以上直接積層した高分子フィルムと熱伝導性シートを交互に積層して炭素化することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造されたグラファイトフィルムを面状に圧力4MPa以上20MPa以下で加圧する後面状加圧工程を施すことを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。
- 内容積125〜17000Lである黒鉛化炉中でおこなうことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とするグラファイトフィルム。
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