JP2009107904A - グラファイトフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本グラファイトフィルムは、厚さ1μm以上21μm以下であり、MIT耐折曲試験において、折り曲げクランプの曲率半径Rが2mm、左右の折り曲げ角度90度、折り曲げ速度90回/minおよび荷重0.98Nの測定条件で、グラファイトフィルムの幅15mmの短冊型試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数が5000回以上である。本グラファイトフィルムの製造方法は、厚さ10μm以上45μm以下の高分子フィルムを準備する工程と、高分子フィルムを熱処理して炭素化フィルムを形成する炭素化工程と、炭素化フィルムをさらに熱処理してグラファイトフィルムを形成するグラファイト化工程とを備え、グラファイト化工程の熱処理における最高温度が2600℃以上である。
【選択図】なし
Description
本発明にかかるグラファイトフィルムの一実施形態は、厚さ1μm以上21μm以下のグラファイトフィルムであって、MIT耐折曲試験において、折り曲げクランプの曲率半径Rが2mm、左右の折り曲げ角度90度、折り曲げ速度90回/minおよび荷重0.98Nの測定条件で、グラファイトフィルムの幅15mmの短冊型試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数(以下、耐折回数という。)が5000回以上である。かかるグラファイトフィルムは、厚さが21μm以下と薄く、高い柔軟性および高い耐折れ曲げ性を有する。
本実施形態のグラファイトフィルムは、厚さ1μm以上21μm以下で、MIT耐折曲試験における耐折回数が5000回以上であれば、特に制限はなく、高分子熱分解法、エキスパンド法、いずれの製造方法により得られるものであってもよい。ここで、高分子熱分解法とは、原料の高分子フィルムを、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下または減圧雰囲気下で熱処理処理して、グラファイトフィルムを形成する方法をいう。高分子熱分解法により得られるグラファイトフィルムは、耐折れ曲げ性、熱拡散性などに優れている。一方、エキスパンド法とは、原料の粉状または燐片状の天然グラファイトを加圧処理して、グラファイトフィルムを形成する方法をいう。エキスパンド法により得られるグラファイトフィルムは、柔軟性を有するが、グラファイト結晶の粒径が小さく結晶性が低いため、高分子熱分解法により得られるグラファイトフィルムに比べて、熱拡散性が低く、また機械的強度も小さい。かかる観点から、本実施形態のグラファイトフィルムは、高分子熱分解法により得られるグラファイトフィルムが好ましい。
本実施形態のグラファイトフィルムのMIT耐折曲試験における耐折回数は、5000回以上であり、10000回以上が好ましく、50000回以上がさらに好ましい。耐折回数が5000回以上になると、耐折曲性に優れているため電子機器の折り曲げ部分に使用しても破壊されにくくなる。具体的には、携帯電話のヒンジや小型電子機器の折り曲げ部分で使用する場合でも、機能を落とすことなく使用することが可能となる。また、耐折曲性に優れているため、電子機器への取り付け時などのハンドリング性も向上する。また、粘着材や保護フィルムなどの複合材と複合する場合も割れ、折れ、粉落ちなどが発生し難いためによい。一方、耐折回数が5000回未満になると、耐折曲性が劣るために、電子機器の折れ曲げ部分での使用中にフィルムが破壊されやすい。また取り扱い時のハンドリング性も悪くなる。また、複合材と貼り合わせるためにラミネーターを通す際など、割れや折れが発生しやすい。特に折り曲げ角度が大きい場合、折り曲げ半径が小さい場合フィルムが劣化しやすい。
グラファイトフィルムのMIT耐折曲試験は、たとえば、東洋精機(株)製MIT耐揉疲労試験機型式Dなどを用いて行なうことができる。MIT耐折曲試験における耐折回数の測定においては、折り曲げクランプの曲率半径R、左右の折り曲げ角度、折り曲げ速度、荷重などを選択することが可能である。本発明においては、グラファイトフィルムの耐折回数は、折り曲げクランプの曲率半径Rが2mm、左右の折り曲げ角度90度、折り曲げ速度90回/minおよび荷重0.98Nの測定条件で、グラファイトフィルムの幅15mmの短冊型試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数とする。ここで、通常、折り曲げの曲率半径Rが小さいほど、折り曲げ角度が大きいほど、また折り曲げ速度が大きいほど、荷重が重いほど厳しい試験となる。特に、携帯電話、ゲーム機、液晶テレビ、PDP(プラズマディスプレイ)などのスペース小さい電子機器においては、小さな折り曲げ半径と大きな折り曲げ角度での折り曲げ性が優れることは、機器の省スペース設計が可能となり、非常に重要である。なお、MIT耐折曲試験の方法の詳細は実施例の欄に記載した。
本実施形態のグラファイトフィルムの厚さは、1μm以上21m以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましく、さらに好ましくは5μm以上12μm以下がさらに好ましい。厚さが1μm未満のグラファイトフィルムは、機械的強度が弱いため、ハンドリング性が悪く複合シートの作製や電子機器への取り付けが困難である。また厚さが薄すぎて熱輸送能力が小さいために、放熱シートとしての使用が難しい。また、21μmより厚いグラファイトフィルムは、厚さが大きいために、小型化された電子機器の小スペースに搭載できない場合がある(搭載するためにはグラファイトフィルムを搭載するスペースを予め設計しなければならない)。また、21μmより厚いグラファイトフィルムを作製するためには厚さの大きい原料フィルムが必要となり、単位面積あたりの原料コストの割合が大きくなる。
本実施形態のグラファイトフィルムの面積(グラファイトフィルムの主面であるフィルム面の面積をいう。以下同じ。)は、25cm2以上が好ましく、50cm2以上がより好ましく、100cm2以上がさらに好ましい。グラファイトフィルムを放熱シートとして使用するためには、フィルムの面積が25cm2以上である方が大面積に熱を拡散できるのでよい。また、フィルムの面積が50cm2以上、さらに好ましくは100cm2以上の大面積のシートが作製できれば、1枚のシートから3cm角程度の放熱シートとして適したサイズのグラファイトフィルムが複数枚抜き取れるために、量産性が高くなるので特によい。
本実施形態のグラファイトフィルムの厚さのバラツキは、3μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚さのバラツキが3μm以下であれば、グラファイトフィルムと複合材を複合する場合に貼りあわせし易い。また、厚さが一定であるために発熱体と密着させることができ、高い熱拡散性を示すことができる。一方、フィルムの厚さのバラツキが3μmより大きい場合は、発熱体と密着させることができず、接触部分が大きな熱抵抗となる。
本実施形態のグラファイトフィルムの面方向(フィルム面に平行な任意の方向をいう。以下同じ)の熱拡散率は、3.0×10-4m2/s以上が好ましく、5.0×10-4m2/s以上がより好ましく、8.0×10-4m2/s以上がさらに好ましい。3.0×10-4m2/s以上になると、グラファイトフィルムの熱伝導率が向上するため、厚さが小さくても十分な熱輸送能力を示す。このような熱拡散率は、グラファイト化の進行状況の指標となる。たとえば、フィルムの面方向の熱拡散率が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。そして、熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社製LaserPit)を用いて、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定できる。
本実施形態のグラファイトフィルムの原料となるフィルムは、高分子フィルムまたはこの高分子フィルムを熱処理により炭素化した炭素化フィルムである。
本実施形態のグラファイトフィルムの原料となる高分子フィルムは、特に限定はされないが、最終的に得られるグラファイトフィルムの電気伝導性、熱伝導性が大きくなることから、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが好ましい。かかる高分子フィルムは、公知の製造方法で製造すればよい。この中でも、ポリイミドは、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができるために特に好ましい。また、ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムに比べて、フィルムの炭素化およびグラファイト化が進行しやすいため、結晶性、熱伝導性に優れたグラファイトとなりやすい。
本実施形態のグラファイトフィルムの原料となる高分子フィルムの厚さは、10μm以上45μm以下が好ましく、10μm以上35μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下がさらに好ましい。かかる高分子フィルムの厚さが10μm以上45μm以下であれば、厚さが十分に小さく柔軟性を有するグラファイトフィルムが得られる。しかしながら、厚さが10μm未満の高分子フィルムから柔軟性を有するグラファイトフィルムの作製は、本願発明においても困難である。一方、高分子フィルムの厚さが45μmより大きい場合は、厚さの大きいグラファイトフィルムしか作製できないため、小型電子機器に搭載できない場合がある。
本実施形態のグラファイトフィルムの原料となる高分子フィルムは、分子面配向性に関連する複屈折Δnが、フィルムの面内のどの方向に関しても、好ましくは0.12以上、より好ましくは0.13以上、さらに好ましくは0.14以上である高分子フィルムである。
ここでいう複屈折とは、フィルム面内の任意に特定される方向の屈折率と厚さ方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意に特定される方向Xの複屈折Δnxは以下の式(A)
Δnx=(X方向の屈折率Nx)−(厚さ方向の屈折率Nz) ・・・(A)
で与えられる。
Δnx=n×λ/W ・・・(B)
で表される。なお、図3において、Tは、くさび形シート13pの厚さ(すなわち、フィルム13の厚さ)を示す。
本実施形態のグラファイトフィルムの原料となる炭素化フィルムは、上記の高分子フィルム(すなわち、好ましくは厚さが10μm以上45μm以下、複屈折が0.12以上の高分子フィルム)を、不活性ガス雰囲気下または減圧雰囲気下で熱処理されて、炭素化されているものが好ましい。かかる熱処理は、通常1000℃程度までの温度で行なわれる。たとえば、炭素化の際の熱処理は、10℃/minで昇温させて、1000℃程度で30分程度の温度保持を行うことが望ましい。
本発明にかかるグラファイトフィルムの製造方法の一実施形態は、実施形態1のグラファイトフィルムの製造方法であって、厚さ10μm以上45μm以下の高分子フィルムを準備する工程と、高分子フィルムを熱処理して炭素化フィルムを形成する炭素化工程と、炭素化フィルムをさらに熱処理してグラファイトフィルムを形成するグラファイト化工程とを備え、グラファイト化工程の熱処理における最高温度が2600℃以上である。かかる製造方法により、厚さが21μm以下で柔軟性を有するグラファイトフィルムが得られる。
上述のように、準備する高分子フィルムは、高分子フィルムは、特に限定はされないが、最終的に得られるグラファイトフィルムの電気伝導性、熱伝導性が大きくなることから、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザール(PBBO)、ポリチアゾール(PT)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリベンゾビスイミダゾール(PBBI)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムが好ましい。これらの中でも、原料モノマーを種々選択することによって様々な構造および特性を有するものを得ることができることから、ポリイミドフィルムが特に好ましい。したがって、以下、高分子フィルムとしてポリイミドフィルムを準備する工程について詳しく説明する。
本実施形態で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
上記のようにして準備された高分子フィルムから、以下の炭素化工程およびグラファイト化工程を経て、グラファイトフィルムが得られる。かかる炭素化工程およびグラファイト化工程は、別々に行っても良いし、連続的に行っても良い。
炭素化工程は、不活性ガス(たとえば窒素ガス)雰囲気下または減圧(たとえば1000Pa以下)雰囲気下で、原料である高分子フィルムを熱処理することにより行う。この熱処理は、通常、室温から1000℃程度の温度領域で行われる。炭素化のための熱処理温度としては、最低でも800℃以上が必要である。また、熱輸送能力に優れたグラファイトを得るために、炭素化のための熱処理の最高温度は、900℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましい。
グラファイト化工程は、不活性ガス(たとえば、アルゴンガスまたはヘリウムガス)雰囲気下または減圧(たとえば1000Pa以下)雰囲気下で、上記炭素化フィルムを熱処理することにより行なう。この熱処理は、通常1000℃程度から2000℃以上までの温度領域で行なわれる。不活性ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガスなどが好適に用いられる。グラファイト化のための熱処理の最高温度は、最低でも2000℃が必要であり、最終的には2400℃以上であることが多い。ここで、グラファイト化工程は、炭素化工程で炭素化した高分子フィルムを一度取り出した後、グラファイト化(黒鉛化)用の炉に移し変えてからおこなっても良いし、炭素工程後連続的にグラファイト化工程を行なってもよい。ここで、柔軟性を有するグラファイトフィルムを得るためのグラファイト化工程における熱処理条件については、後述する。
本実施形態の熱処理では、容器に高分子フィルムを固定して行なってもよい。本実施形態のような2000℃の温度領域まで加熱されるような用途では、取り扱いの容易さや、工業的な入手の容易さなどを勘案すると、グラファイト製の容器が、特に好ましい。ここでいうグラファイト製容器とは、上記の温度領域まで加熱することができる限りにおいて、材料としてグラファイトを主に含む容器までを含む広い概念であるが、たとえば、等方性グラファイトを含む容器、押出製グラファイトを含む容器、が挙げられる。これらのグラファイト製容器の内、電気伝導性、熱伝導性に優れ均質性にも優れる等方性グラファイトを含む容器が、繰り返し用いる場合には好ましい。容器の形状は、特に制約を受けず、単純な平板などの形状でよい。また容器は円筒状で、高分子フィルムを容器に巻きつける方法でもよい。容器の形状は、高分子フィルムを接触させることができる限りにおいて、特に制約を受けない。
厚さの小さい原料フィルム(たとえば、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルム)を使用することで、厚さの小さいグラファイトフィルムを製造することができる。しかしながら、厚さの小さい原料フィルム(高分子フィルム)を使用した場合、柔軟性を有するグラファイトフィルムを製造することは難しく、これまで25μm未満の厚さで十分な柔軟性を示すグラファイトフィルムは製造されていなかった。原料フィルムの厚さが小さくなると柔軟なフィルムが製造し難いのは、フィルムが薄くなると発生するアウトガスの量が少ない上に、内部から表面までの距離が近いために、スムーズにフィルムからガスが抜けてしまうためにフィルムが発泡し難くなるためと考えられる。
現在、一般的に用いられる複屈折が0.12未満の高分子フィルム(たとえばポリイミドフィルム)を用いてグラファイトフィルムを製造する場合、グラファイト化工程におけるフィルムの発泡度を大きくして、厚さが小さく柔軟性を有するフィルムを製造するためには、以下の熱処理条件が必要とされる。
フィルムの発泡度を大きくする方法のひとつとして、上述のように、方法[4]が挙げられる。方法[4]は、グラファイトフィルムの原料フィルムとして、分子配向性の高い高分子フィルムを用いる方法である。かかる方法[4]により、かかる高分子フィルムを熱処理して得られるグラファイトフィルムはアウトガスが抜けにくいことから、フィルムの発泡度が大きくなると考えられる。
本実施形態の高分子フィルムの炭素化工程は、原料フィルムである複屈折が0.12以上の高分子フィルムを、不活性ガス(たとえば、窒素ガス)雰囲気下または減圧雰囲気下(たとえば、1000Pa以下)で熱処理して行われる。この熱処理は、室温(たとえば、25℃)から1000℃まで、特に500℃以上1000℃以下の温度で行われる。また、炭素化工程の熱処理において最高温度に達した時点で30分から1時間程度の保持を行ってもよい。
本実施形態の高分子フィルムのグラファイト化工程は、上記の炭素化フィルムを、不活性ガス(たとえば、アルゴンガス、ヘリウムガス)雰囲気下または減圧雰囲気下(たとえば、1000Pa以下)で熱処理して行われる。この熱処理は、1000℃〜2000℃以上の温度領域で行われる。また、炭素化工程の熱処理において最高温度に達した時点で30分から1時間程度の保持を行ってもよい。
複屈折0.12以上の原料フィルムを用いた場合、フィルムの発泡度を大きくするために適正なグラファイト化最高温度は、2600℃以上、好ましくは2700℃以上、さらに好ましくは2800℃以上である。グラファイト化最高温度が2600℃未満であると、アウトガスの発生量が十分でなく発泡しにくいため柔軟なグラファイトフィルムが得られない。
通常、厚さの大きい原料フィルム(高分子フィルム)を用いると、アウトガスの発生量が多くフィルム内部から表面までの距離が長いことから、ガスがスムーズに抜けることができない。そのため、ガスがフィルムを抜ける際にグラファイトの層を破壊しながら抜けるために、表面剥がれが発生する。
しかしながら、原料フィルムが薄い場合は、フィルムにこしがないために、炭素化昇温速度を大きくし過ぎると、炭素化工程の段階でフィルムに皺が発生する。この皺が原因で、フィルムに割れが発生したり、グラファイト化工程後のフィルムに厚さムラが発生したりする。
したがって、複屈折が非常に大きく表面剥がれが発生し易いフィルムでも炭素化工程の熱処理における昇温速度を大きくしても表面剥がれを抑制したい。この場合、重要となる温度領域が1000〜2000℃の範囲である。複屈折0.12以上の原料フィルムを用いた場合、1000〜2000℃の温度領域における適正なグラファイト化昇温速度は、0.1〜2.5℃/minがであり、好ましくは0.5〜2℃/minであり、さらに好ましく0.7〜1.5℃/minである。1000〜2000℃の温度領域におけるグラファイト化昇温速度が0.1〜2.5℃/minであると、炭素化昇温速度が1〜10℃/minの範囲の炭素化フィルムを用いた場合でも、グラファイト化(黒鉛化)設備に負担をかけずに表面剥がれを抑制することができる。
本実施形態のグラファイトフィルムの製造方法において、グラファイト化工程により形成されたグラファイトフィルムを、フィルム面に垂直な方向に圧縮する圧縮工程をさらに含むことが好ましい。圧縮は、面状に均一に加圧する、すなわち、フィルム面上を均一に加圧することが好ましい。発泡したグラファイトフィルムが、フィルム面に垂直な方向に均等な圧力で圧縮されることにより、フィルムの柔軟性がさらに向上し、フィルムの耐折曲性がさらに向上する。また、熱拡散性に優れ、表面に傷および/または凹部がなく、皺のない、平坦性に優れたグラファイトフィルムが得られる。このような圧縮工程は、室温でも行うことができる。
上記圧縮工程において、グラファイトフィルムを圧縮する圧力は、0.98MPa(10kgf/cm2)以上39.2MPa(400kgf/cm2)以下、好ましくは4.9MPa(50kgf/cm2)以上29.4MPa(300kgf/cm2)以下、さらに好ましくは6.87MPa(70kgf/cm2)以上24.5MPa(250kgf/cm2)以下であるとよい。圧縮圧力が0.98MPa(10kgf/cm2)未満であると、グラファイトフィルムの厚さが小さいために押しムラが発生しやすく、十分な柔軟性を付与することができない。一方、39.2MPa(400kgf/cm2)より強く加圧すると、本実施形態のグラファイトフィルムと本実施形態のグラファイトフィルム以外のフィルム状媒質とが圧着し、本実施形態のグラファイトフィルムを壊してしまう場合がある。
本実施形態のグラファイトフィルム以外のフィルム状媒質としては、天然黒鉛から得られたグラファイトフィルムや、樹脂フィルムや、金属箔などが例示される。具体的には、天然黒鉛から得られたグラファイトフィルム、緩衝ゴム材、鉄板、テフロン(登録商標)フィルムなどが挙げられる。
[ポリイミドフィルムAの作製方法]
4,4’−オキシジアニリンの3当量を溶解したDMF溶液にピロメリット酸二無水物の4当量を溶解して、両末端に酸無水物を有するプレポリマーを合成した後、そのプレポリマーを含む溶液にp−フェニレンジアミンの1当量を溶解して得られたポリアミド酸を18.5質量%含む溶液を得た。
4,4’−オキシジアニリンの1当量、p−フェニレンジアミンの1当量を溶解したDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の2当量を溶解して得られたポリアミド酸を用いた以外はポリイミドフィルムAと同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルムB(弾性率4.8GPa、吸水率3.0%、複屈折0.14、線膨張係数18.4×10-6℃-1)を作製した。
4,4’−オキシジアニリンの3当量、p−フェニレンジアミンの1当量を溶解したDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の4当量を溶解して得られたポリアミド酸を用いた以外はポリイミドフィルムAと同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルムC(弾性率3.9GPa、吸水率3.0%、複屈折0.12、線膨張係数23.7×10-6℃-1)を作製した。
ポリイミドフィルムDは、東レ・デュポン(株)製の厚さ25μmの「KAPTON H」(弾性率3.4GPa、吸水率3.0%、複屈折0.10、線膨張係数27.9×10-6℃-1)である。文献によると、ポリイミドフィルムD(東レ・デュポン(株)製KAPTON H)は、4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(東レ・デュポン(株)製ジメチルホルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の1当量を溶解して得られたポリアミド酸を用いて製造されていると推定される。得られたポリイミドフィルムA〜Dの製造方法と諸物性を表1にまとめた。
サイズ70mm×70mmで厚さ25μmのポリイミドフィルムAをグラファイト板で挟み、電気炉を用いて窒素ガス雰囲気下で、5℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温した後、1000℃で1時間保持する熱処理をして炭素化フィルムを得た。
1000℃以下における炭素化昇温速度を1℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム2を作製した。
1000℃以下における炭素化昇温速度を2.5℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム3を作製した。
1000℃以下における炭素化昇温速度を10℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム4を作製した。
1000℃以下における炭素化昇温速度を15℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム5を作製した。
1000℃以下における炭素化昇温速度を20℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム6を作製した。
2000℃以上におけるグラファイト化昇温速度を1℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム7を作製した。
2000℃以上におけるグラファイト化昇温速度を2.5℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム8を作製した。
2000℃以上におけるグラファイト化昇温速度を7℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム9を作製した。
2000℃以上におけるグラファイト化昇温速度を10℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム10を作製した。
2000℃以上におけるグラファイト化昇温速度を20℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム11を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を1℃/minとしたこと以外は、実施例2と同様にしてグラファイトフィルム12を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を1℃/minとしたこと以外は、実施例3と同様にしてグラファイトフィルム13を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を1℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム14を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を1℃/minとしたこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルム15を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を5℃/minとしたこと以外は、実施例2と同様にしてグラファイトフィルム16を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を5℃/minとしたこと以外は、実施例3と同様にしてグラファイトフィルム17を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を5℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム18を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を5℃/minとしたこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルム19を作製した。
グラファイト化最高温度を2800℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム20を作製した。
グラファイト化最高温度を3000℃と変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム21を作製した。
ポリイミドフィルムBを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム22を作製した。
ポリイミドフィルムCを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム23を作製した。
厚さ12.5μmのポリイミドフィルムAを用いて、1000℃以下における炭素化昇温速度を1℃/minとし、1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を1℃/minとしたこと以外は、実施例10と同様にしてグラファイトフィルム24を作製した。
1000℃までの炭素化昇温速度を0.5℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム25を作製した。
1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を10℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム26を作製した。
2000℃以上におけるグラファイト化昇温速度を0.5℃/minと変更したこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム27を作製した。
グラファイト化最高温度を2500℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム28を作製した。
厚さ50μmのポリイミドフィルムAを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム29を作製した。
ポリイミドフィルムDを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム30を作製した。
ポリイミドフィルムDを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてグラファイトフィルム31を作製した。
ポリイミドフィルムDを用いたこと以外は、実施例3と同様にしてグラファイトフィルム32を作製した。
ポリイミドフィルムDを用いたこと以外は、実施例4と同様にしてグラファイトフィルム33を作製した。
ポリイミドフィルムDを用いたこと以外は、実施例7と同様にしてグラファイトフィルム34を作製した。
ポリイミドフィルムDを用いたこと以外は、実施例8と同様にしてグラファイトフィルム35を作製した。
ポリイミドフィルムDを用いたこと以外は、実施例10と同様にしてグラファイトフィルム36を作製した。
ポリイミドフィルムDを用いたこと以外は、実施例11と同様にしてグラファイトフィルム37を作製した。
厚さ25μmのポリイミドフィルムDをグラファイト板で挟み、1000℃までの炭素化昇温速度を10℃/minとし、1000〜2000℃のグラファイト化昇温速度を20℃/minとし、2000℃以上のグラファイト化昇温速度を20℃/minとして、グラファイト化最高温度を3000℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてグラファイトフィルム38を作製した。
室温(たとえば25℃)から1000℃までの熱処理により、原料フィルム(ポリイミドフィルム)を炭素化させた炭素化フィルムの外観を目視にて確認した。フィルムに高さ2mm以上の皺が確認できる場合は×、高さ0.5mm以上2mm未満の皺が確認できるものを△、0.5mm未満の皺しか確認できないものを○、皺の発生が確認できないものを◎とした。またフィルムに割れが発生しているものは無条件で×とした。
通常、炭素化工程における熱処理は室温から1000℃までの温度領域で行う。ここで、炭素化昇温速度は1〜10℃/min程度が好ましい。昇温速度が1℃/minより小さい場合は、処理にかかる時間が長くなり炭素化装置にかかる負荷が大きくなる。一方、昇温速度が10℃/minより大きい場合も、消費電力の増大、ヒータの消耗などの様々な負荷が炭素化装置にかかる。したがって、炭素化昇温速度について、16℃/min以上のものを×、1℃/min未満あるいは10℃/min以上16℃/min未満のものを△、1℃/min以上2℃/未満あるいは4℃/min以上10min未満のものを○、2℃/min以上4℃/min未満のものを◎とした。
<グラファイトフィルムにおけるグラファイト不良(皺および破れ)>
上述のように、厚さの小さい原料フィルムを熱処理する場合、グラファイト化工程の熱処理における昇温速度を大きくすることでフィルムを発泡させることができる。しかしながら、グラファイト化の際もフィルムは膨張および/または収縮が生じるために、急激に温度上昇させると大面積のフィルムを作製する場合は、皺などの不良が発生する場合がある。
そのため、グラファイト化昇温速度は1〜10℃/min程度が好ましい。したがって、2000℃以上のグラファイト化昇温速度について、20℃/min以上のものを×、1℃/min未満あるいは10℃/min以上20℃/min未満のものを△、1℃/min以上2℃/min未満あるいは6℃/min以上10℃/min未満のものを○、2℃/min以上6℃/min未満のものを◎とした。
また、上述のように、厚さの小さい原料フィルムを熱処理する場合、グラファイト化昇温速度を大きくして、グラファイト化最高温度を高めることで発泡させることができる。ここで、グラファイト化昇温速度は1〜10℃/min程度が適当である。昇温速度が1℃/minより小さい場合は、処理にかかる時間が長くなりグラファイト化装置にかかる負荷が大きくなる。一方、昇温速度が10℃/minより大きい場合も、消費電力の増大、ヒータの消耗などの様々な負荷がグラファイト化装置にかかる。
グラファイトフィルムの厚さの測定方法としては、得られたグラファイトフィルムを厚さゲージ(ハイデンハイン(株)社製HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて、フィルムの任意の10点を測定し、平均して測定値とした。
グラファイトフィルムの厚さのバラツキの測定方法としては、得られたグラファイトフィルムを厚さゲージ(ハイデンハイン(株)社製HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて、フィルムの任意の10点を測定して最大値と最小値の差をとった。
グラファイトフィルム化後のグラファイトフィルムの外観を目視および微粘着テープによる引き剥がし試験にて評価した。微粘着テープによる引き剥がし試験では、微粘着テープ((株)パナック社製CT−38)を2kgローラで1往復の条件で貼り合わせ、10min後に引き剥がした。その後、目視にて微粘着テープにグラファイト粉が確認されるかどうかで判断した。微粘着テープによる引き剥がし試験にて、グラファイト粉が確認されないものを◎、グラファイト粉が確認されるが目視にてグラファイト表面に剥がれが確認できないものは○、目視にて表面剥がれが確認されるが粉落ちしないものを△、表面剥がれが発生しており粉落ちするものは×として判断した。
グラファイトフィルムのMIT耐折曲試験は、以下の要領で行った。グラファイトフィルムを幅15×長さ100mmの短冊型試験片にカットし、東洋精機(株)製MIT耐揉疲労試験機型式Dを用いて、試験荷重0.98N(100gf)、折り曲げクランプの曲率半径R2mm、左右の折り曲げ角度90°折り曲げ速度90回/minの測定条件で、短冊型試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数(耐折回数)を測定した。
グラファイトフィルムの熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社製LaserPit)を用いて、グラファイトフィルムを4×40mmのサンプル形状に切り取り、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。グラファイト化の進行状況を、フィルム面方向の熱拡散率を測定することによって判定した。熱拡散率が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。
実施例1〜11のように、複屈折0.14の原料フィルムを用いると、炭素化速度1〜20℃/minおよび2000℃以上のグラファイト化昇温速度1〜20℃/minで熱処理することで、MIT耐折曲試験の耐折回数が5000回以上の柔軟性に優れたグラファイトフィルムが得られた。一方、複屈折0.10の従来の原料フィルムを同様の方法でグラファイト化しても屈折曲性の悪いグラファイトフィルムしか得られなかった(比較例6〜14のグラファイトフィルムについてMIT耐折曲試験の耐折回数は1000回以下)。このように原料フィルムの分子配向性を高めることで従来は製造できなかった柔軟性の優れた10μm程度のグラファイトフィルムを得ることができた。
実施例1〜6、比較例1を比較すると、比較例1のグラファイトフィルムの耐折曲特性は、実施例1〜6のグラファイトフィルムに比べて非常に劣っていた。これは、比較例1は炭素化速度が遅すぎ、炭素化フィルムの分子配向が緻密になりすぎたために、グラファイト化の際に表面剥がれが発生したからと考えられる。
実施例1、7〜11および比較例3を比較すると、比較例3のグラファイトフィルムの耐折曲特性は、実施例1、7〜11のグラファイトフィルムに比べて、非常に劣っていた。これは、比較例3では、グラファイト化昇温速度が遅すぎたためにグラファイトフィルムを発泡させることができず、硬質なグラファイトフィルムが形成されたためと考えられる。また、実施例1、9、8のグラファイトフィルムに比べて、実施例7、8、11のグラファイトフィルムの耐折曲特性が劣っていた。これも、実施例7、8でも、まだグラファイト化昇温速度が遅すぎたために、グラファイトフィルムを十分発泡させることができなかったためと考えられる。一方、実施例11においては、グラファイト化昇温速度が速すぎて、グラファイトフィルムに皺が発生してしまい、耐折曲特性の低下を招いてしまったものと考えられる。
実施例1〜4、12〜19および比較例2を比較すると、1000〜2000℃までのグラファイト化昇温速度を小さくすると、炭素化昇温速度が1〜10℃/minの広い領域において、表面剥がれがなく均一で耐折曲特性に優れたグラファイトフィルムが得られることがわかった。したがって、1000〜2000℃におけるグラファイト化昇温速度を小さくすることで、グラファイト化の際に均一発泡させることができる炭素化昇温速度の範囲を広げることができた。
実施例1、20、21および比較例4を比較すると、比較例4のグラファイトフィルムの耐折曲特性は、実施例1、20、21のグラファイトフィルムに比べて、非常に劣っていた。これは、比較例4では、グラファイト化最高温度が低すぎたために、十分にグラファイト化が進行せず、グラファイトフィルムを発泡させることができなかったためと考えられる。また、同様の理由により、実施例20のグラファイトフィルムの耐折曲特性は、実施例1、21のグラファイトフィルムに比べて、僅かに劣っていたものと考えられる。
実施例1、24および比較例5を比較すると、比較例5のグラファイトフィルムの厚さは26μmと実施例1、24のグラファイトフィルムに比べて厚い。これは当然のことであり、比較例5においては厚い原料フィルムを用いているからである。また、実施例24は原料フィルムの厚さが12.5μmであるので5μm程度のグラファイトフィルムが作製できた。
Claims (13)
- 厚さ1μm以上21μm以下のグラファイトフィルムであって、
MIT耐折曲試験において、折り曲げクランプの曲率半径Rが2mm、左右の折り曲げ角度90度、折り曲げ速度90回/minおよび荷重0.98Nの測定条件で、前記グラファイトフィルムの幅15mmの短冊型試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数が5000回以上であるグラファイトフィルム。 - 前記グラファイトフィルムは、厚さが3μm以上15μm以下、面積が25cm2以上であり、
前記MIT耐折曲試験における前記往復折り曲げ回数が10000回以上である請求項1記載のグラファイトフィルム。 - 前記グラファイトフィルムの厚さのバラツキが3μm以下である請求項1〜2のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
- 前記グラファイトフィルムは、厚さ10μm以上45μm以下の高分子フィルムを熱処理して得られるグラファイトフィルムである請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイトフィルム。
- 前記高分子フィルムは、複屈折0.12以上のポリイミドフィルムである請求項4に記載のグラファイトフィルム。
- 請求項1のグラファイトフィルムの製造方法であって、
厚さ10μm以上45μm以下の高分子フィルムを準備する工程と、
前記高分子フィルムを熱処理して炭素化フィルムを形成する炭素化工程と、
前記炭素化フィルムをさらに熱処理してグラファイトフィルムを形成するグラファイト化工程と、を備え、
前記グラファイト化工程の熱処理における最高温度が2600℃以上であるグラファイトフィルムの製造方法。 - 前記炭素化工程と前記グラファイト化工程とを連続的に行う請求項6に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記高分子フィルムは、複屈折0.12以上のポリイミドフィルムである請求項6または7に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記炭素化工程の熱処理において、1000℃以下の温度領域における昇温速度が1〜10℃/minである請求項8のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記グラファイト化工程の熱処理において、2000℃以上の温度領域における昇温速度が2.5〜10℃/minである請求項8または9に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記グラファイト化工程の熱処理において、1000℃から2000℃までの温度領域における昇温速度が0.1〜2.5℃/minである請求項8〜10のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記グラファイトフィルムをフィルム面に垂直な方向に圧縮する圧縮工程をさらに備える請求項6〜11のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
- 前記圧縮工程において、圧縮する圧力が0.98MPa以上39.2MPa以下である請求項12に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
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