JP2016039191A - コイル - Google Patents

コイル Download PDF

Info

Publication number
JP2016039191A
JP2016039191A JP2014159906A JP2014159906A JP2016039191A JP 2016039191 A JP2016039191 A JP 2016039191A JP 2014159906 A JP2014159906 A JP 2014159906A JP 2014159906 A JP2014159906 A JP 2014159906A JP 2016039191 A JP2016039191 A JP 2016039191A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
graphite sheet
thickness
graphite
coil
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014159906A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6440295B2 (ja
Inventor
篤 多々見
Atsushi Tadami
篤 多々見
村上 睦明
Mutsuaki Murakami
睦明 村上
正満 立花
Masamitsu Tachibana
正満 立花
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kaneka Corp
Original Assignee
Kaneka Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kaneka Corp filed Critical Kaneka Corp
Priority to JP2014159906A priority Critical patent/JP6440295B2/ja
Publication of JP2016039191A publication Critical patent/JP2016039191A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6440295B2 publication Critical patent/JP6440295B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】本発明は、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが少なく、かつ高いキャリア移動度を有するグラファイトシートを導電部材として用いたコイルを提供する。【解決手段】導電部材と、絶縁部材とが積層されたコイルであって、前記導電部材は、25℃におけるa−b面方向のキャリア移動度が5000cm2/V・sec以上であって、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが膜厚の50%以下であるグラファイトシートである。【選択図】図5

Description

本発明は、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、キャリア移動度が高いグラファイトシートを導電材料として用いたコイルに関するものである。
電気デバイスの導電材料として、長年、銅が用いられてきた。その理由は、銅が銀に次いで高い電気伝導性を有していること(銅の比抵抗:1.72×10-6Ωcm)、銀よりも安価であること、銀よりも耐熱性に優れていること(銀の融点:961.78℃、銅の融点:1084.62℃)などが挙げられる。しかしながら、電気部品をさらに小型化したい、また大電流を流したいという要求が高まるにつれて、銅に代わり得る材料の検討がなされている。
将来の導電材料として注目されている材料の一つにグラファイトがある。グラファイトの比重は2.26で、銅の比重8.65のおよそ1/3.8と軽い。また、銅の融点が1084℃であるのに対して、グラファイトの分解・昇華温度はおよそ3000℃であることから、耐電流密度(単位面積当たりに流せる電流)が大きい。さらに、銅に比べてキャリア濃度が小さく、キャリア移動度が大きいことも銅に代わりうる材料となる理由の一つである。キャリア濃度については、銅が8.9×1022cm-3であるのに対して、グラファイト単結晶は約1×1019cm-3程度と小さく、銅の1/10000〜1/100000であるため、粒界効果や側壁効果の抑制に非常に効果的であると考えられる。一方、キャリア移動度については、銅が16cm2/V・secであるのに対して、グラファイト単結晶のBasal面方向では12500〜14000cm2/V・secであって、銅の780〜875倍である(非特許文献1)。このため、グラファイトのBasal面方向の電気伝導度の大きさは、銅のおよそ1/20と劣るが、銅に比べて温度依存性が小さいので、周囲の温度環境によらず安定した動作が期待できる。このほか、銅の熱伝導率が400W/m・Kであるのに対して、天然グラファイトシートの熱伝導率は、200〜500W/m・Kであることから、熱伝導率の点でも銅と同等以上の優れた特性を有している。
以上のような特徴を有するグラファイトを、銅に代わる電気部品の導電材料とすることが検討されている。例えば、特許文献1には、薄膜グラファイトを導電材料に用いたチョークコイル、トランスコイルなどの電気部品が開示されている。特許文献1では、薄膜グラファイトを次のような方法で得ている。まず、矩形ブロック状で高配向のグラファイトの表層面に粘着テープを貼り付け、その後粘着テープを剥離し、一部をグラファイトから離間させる。粘着テープの粘着面側に貼り付いている薄膜のグラファイト素材に対して、さらに別の粘着テープを貼り付け、その後、この粘着テープを剥離し、一部をグラファイト素材から離間させて、さらに薄膜のグラファイト素材を得る。以上の操作を繰り返し行うことにより、所望の厚さ寸法の薄膜グラファイトを得ている。
特開2013−187415号公報
松本里香著、炭素TANSO、2003[No.209]、p.174−178
特許文献1には薄膜グラファイトを用いた電気部品が開示されているが、キャリア移動度等、電気部品としての性能は十分ではなく改善の余地がある。
そこで、本発明は、厚さのバラツキが少なく、かつ高いキャリア移動度を有するグラファイトシートを導電部材として用いたコイルを提供することを目的とする。
すなわち、前記課題を解決することができた本発明のコイルは、導電部材と、絶縁部材とが積層されたコイルであって、前記導電部材は、25℃におけるa−b面方向のキャリア移動度が5000cm2/V・sec以上であって、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが膜厚の50%以下のグラファイトシートであることを特徴とする。本発明のコイルは、導電部材にグラファイトシートを用いているため、銅を用いた場合と比べて軽量で、銅と同程度の電気伝導度を得ることができる。また、グラファイトシートのキャリア移動度が高いため、粒界効果や側壁効果を抑制することができる。
仮に、粘着テープにより薄膜グラファイトを剥離すると、グラファイト表層に毛羽立ちや欠損を引き起こすことがある。グラファイト層に毛羽立ちや欠損があると、グラファイトシートの表層には凹凸ができて、角部や段差が生じる。そうすると、グラファイトシートのキャリア移動度が低下したり、角部や段差で不規則電流が発生したりする。また、粘着テープにより薄膜グラファイトを剥離する方法はグラファイトの厚さを制御できるものではなく、グラファイト全体の厚みを均一にすることは困難である。グラファイトシートの厚みが均一でないと、電気抵抗にバラツキが生じて局所的な発熱が起こる。
したがって、本発明では粘着テープによる表層剥離欠陥があるグラファイトシートを除くものとする。このため、グラファイト表層に毛羽立ちや欠損に由来するキャリア移動度の低下や不規則電流の発生を防止することが可能である。加えて、グラファイトシートの厚さのバラツキが少ないため、電気抵抗のバラツキによる局所的な発熱を抑えることができるほか、歩留まりが高いコイルを製造することができる。
本発明に用いられるグラファイトシートの面積は、3×3mm2以上であることが好ましい。グラファイトシートの面積が大きければ大きいほど、構造不整、歪み、割れの発生や不純物の混入の可能性は高まるため、キャリア移動度が低下する可能性は高くなる。したがって、上記範囲の面積の場合であっても、均一な特性を有するグラファイトシートを得ることができれば、歩留まりの高いコイルを製造することが可能である。
本発明者らは、コイルの導電部材として最適なグラファイトの製造について詳細な検討を行った。本発明者らは検討の中で、軽量化と高いキャリア移動度を確保しつつ、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが少ない高品質のグラファイトを得ることができないものかと考えた。
まず、本発明者らは、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが少ないグラファイトシートを得るために、高分子薄膜をグラファイト化する高分子焼成法を用いることを考えた。高分子焼成法は、特殊な高分子シートを熱処理してグラファイト化するものであるため、粘着テープによる表層剥離欠陥がない。また、高分子焼成法では、高分子薄膜全体を一様に熱処理することによりグラファイトシートを得るため、厚さのバラツキが発生し難い。
さらに、本発明者らは、より薄い高分子薄膜を作製し、そのグラファイト化によってグラファイトフィルムの高品質化を図り、キャリア移動度の大きなグラファイトを作製することに挑戦した。その理由は、高分子膜のグラファイト化は膜の表面から進行するため、薄膜では構造不整の少ないグラファイトシートを得ることが出来ると考えられることにある。もう一つの理由は、高分子の炭素化、グラファイト化は高分子中の異種元素を含む各種の不純物が除去されて進行するが、超薄膜ではその様な不純物は取り除かれ易いのでグラファイト中の不純物をより少なくすることが出来ると考えられることである。
鋭意検討の結果、芳香族高分子を用いた高分子焼成法によって、25℃におけるa−b面方向のキャリア移動度が5000cm2/V・sec以上で、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが膜厚の50%以下のグラファイトシートを製造することに成功し、この様な特性を持つグラファイトシートがコイルの導電部材に最適であることに想到した。
本発明に用いられるグラファイトシートは、芳香族高分子フィルムを炭素化した後、温度2500℃以上で熱処理することによって得られるものであることが好ましい。
本発明に用いられる芳香族高分子がポリイミド、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明に用いられるグラファイトシートの電気伝導度が15000S/cm以上であることが好ましい。導電部材の長さと断面積が一定の場合、電気伝導度が大きいほど導電部材の電気抵抗は小さくなる。コイルの電気抵抗は小さいほどエネルギー損失が少ないため、電気伝導度は大きい方がよい。グラファイトシートの電気伝導度が上記の範囲にあれば、グラファイトシートを銅に代わる導電部材として用いることができる。
本発明に用いられるグラファイトシートの厚さが30μm以下であることが好ましい。グラファイトシートの厚さが上記の範囲にあれば、整ったグラファイト層構造と、コイルの小型化を両立できる。
本発明に用いられるグラファイトシートの密度が、1.7g/cm3以上であることが好ましい。グラファイトシート中に欠損や空洞が少ない、非常に密な構造をしていれば、キャリア移動度、耐電流密度は大きくなる。
本発明に用いられるグラファイトシートの熱伝導率が1500W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が高ければ、コイル内で局所的に熱が発生した場合でも発熱部から非発熱部への熱移動が起こるため、コイルの誤動作や破損を防止することができる。
本発明に用いられるグラファイトシートの耐電流密度が2×106A/cm2以上であることが好ましい。グラファイトシートの耐電流密度が上記の範囲にあれば、銅と同等以上の耐電流密度を有することになるため、グラファイトシートを銅に代わる導電部材として用いることができる。
本発明に用いられる絶縁部材の厚さが10nm〜1mmであることが好ましい。絶縁部材の厚さが上記の範囲にあれば、絶縁部材を積層して用いる場合であっても、コイルを小型化することができる。
本発明に用いられる絶縁部材の一端面に2つの外部電極が形成されていることが好ましい。2つの外部電極を絶縁部材の両端面に形成する場合と比較して、導電部材と絶縁部材の積層方向におけるコイルの寸法を小さくすることができる。
本発明のコイルは、導電部材にグラファイトシートを用いているため、銅よりも軽量であり、銅と同程度の電気伝導度を得ることができる。また、グラファイトシートのキャリア移動度が高いため、粒界効果や側壁効果を抑制することができる。さらに、グラファイトシートには粘着テープによる表層剥離欠陥がないことから、グラファイト表層の毛羽立ちや欠損に由来するキャリア移動度の低下や不規則電流の発生を防止することが可能である。加えて、グラファイトシートの厚さのバラツキが少ないため、電気抵抗のバラツキによる局所的な発熱を抑えることができるほか、歩留まりが高いコイルを製造することができる。
図1は、本発明の実施の形態1に係る積層体の斜視図である。 図2は、本発明の実施の形態1に係るコイルの斜視図である。 図3は、本発明の実施の形態1に係るコア材の斜視図である。 図4は、本発明の実施の形態1に係るコア材が設けられた場合のコイルの斜視図である。 図5は、本発明の実施の形態2に係る積層体の斜視図である。 図6は、本発明の実施の形態2に係るコイルの斜視図である。 図7は、本発明の実施の形態3に係る積層体の斜視図である。 図8は、本発明の実施の形態3に係るコイルの側面図である。
本発明の実施の形態におけるコイルは、導電部材と、絶縁部材とが積層されたコイルであって、前記導電部材は、25℃におけるa−b面方向のキャリア移動度が5000cm2/V・sec以上であって、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが膜厚の50%以下のグラファイトシートである。本発明のコイルは、導電部材にグラファイトシートを用いているため、銅を用いた場合と比べて軽量で、銅と同程度の電気伝導度を得ることができる。また、グラファイトシートのキャリア移動度が高いため、粒界効果や側壁効果を抑制することができる。さらに、グラファイトシートには粘着テープによる表層剥離欠陥がないことから、グラファイト表層に毛羽立ちや欠損に由来するキャリア移動度の低下や不規則電流の発生を防止することが可能である。加えて、グラファイトシートの厚さのバラツキが少ないため、電気抵抗のバラツキによる局所的な発熱を抑えることができるほか、歩留まりが高いコイルを製造することができる。
本明細書においてシートとは、その厚さが限定されるものではなく、膜、薄膜、フィルムを含むものである。
コイルは、ループ状の導電部材に流れる電流が変化するのに伴い、磁場の強さが変化する現象を利用した受動素子であり、インダクタと同義である。コイルは、電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄積することから、電圧を安定化する降圧型のDC−DCコンバータなどに用いられている。また、コイルは特定の周波数の信号を通さないことから、高周波フィルタや低周波フィルタにも用いられている。
コイルの構造は、銅線などの導電部材を磁性体の鉄芯にらせん状に巻き付けた巻線型と、導電部材と絶縁部材が積層されかつらせん状に形成された積層型に大別することが出来る。
本発明のコイルの導電部材にはグラファイトシートが用いられる。グラファイト結晶の基本的な構造は、六角網目状に結ばれた炭素原子のつくる基底面が規則正しく積み重なった層状構造(層が積み重なった方向をc軸と言い、六角網目状に結ばれた炭素原子のつくる基底面の広がる方向をBasal面(a−b面)方向と言う)である。基底面内の炭素原子は共有結合で強く結ばれ、一方、積み重なった層面間の結合は弱いファンデルワールス力で結合しており、理想的な構造での層間距離は0.3354nmである。グラファイトにおける電気伝導度や熱伝導率はこのような異方性を反映してa−b面方向に大きく、この方向の電気伝導度や熱伝導率はグラファイトの品質を判定する良い指標となる。例えば、最高品質グラファイト結晶におけるa−b面方向の電気伝導度は24000〜25000S/cmである。
グラファイトの電子的性質は基本的にはπ電子の挙動によって決定され、ブリリアンゾーンの稜の近傍に生じるごくわずかの電子と正孔によって半金属的な性質を示す。しかし、これは理想的なグラファイト結晶の場合であって、現実には室温では不純物キャリアなどの影響で熱励起によるキャリア数が敏感に増加し電気物性値に影響を与える。物質の電気伝導度はキャリア濃度とキャリア移動度の積で決まるが、キャリア濃度とキャリア移動度が相殺される結果、一般的に高品質グラファイトでの電気伝導度の差はあまり大きくならない。先に述べたように銅に代わり得るグラファイトの作製には、高キャリア移動度特性を実現することが必須であるので、不純物キャリアなどの存在による不純物キャリアの増加は可能な限り抑えることが好ましい。
本発明のコイルに用いられる導電部材は、25℃におけるa−b面方向のキャリア移動度が5000cm2/V・sec以上のグラファイトシートである。キャリア移動度は、試料であるグラファイトシートに磁場を印加したときのホール効果測定を実施することにより行う。試料は薄膜状であるため、ホール効果の測定にはファン・デル・ポー法を用いる(非特許文献1)。なお、グラファイトの場合は、ホールと電子の数がほぼ同数であるため、2キャリアモデルから個別に算出した電子の濃度とホール濃度の和をキャリア濃度とし、ホール効果測定により得られたホール係数、電気伝導度、磁気抵抗値からキャリア濃度、キャリア移動度を算出する。
グラファイトシートの25℃におけるa−b面方向のキャリア移動度は、5000cm2/V・sec以上であることが好ましく、6000cm2/V・sec以上であることがより好ましく、8000cm2/V・sec以上であることがさらに好ましく、8050cm2/V・sec以上であることがさらにより好ましく、9000cm2/V・sec以上であることが特に好ましく、9200cm2/V・sec以上であることが最も好ましい。当該キャリア移動度の上限は特に限定されるものではなく、例えば20000cm2/V・sec以下であってもよく、18000cm2/V・sec以下であってもよい。キャリア移動度が大きければ、粒界効果や側壁効果を抑えることができる。また、キャリア移動度が大きいほど、耐電流密度は大きくなるため、銅に代わる導電部材として使用することができる。
本発明に係るグラファイトシートは、粘着テープによる表層剥離欠陥がないものである。ここで表層とはグラファイトのa−b面方向の層の表面を意味し、グラファイトの表側も裏側も含まれ、層には単層も複数層も含まれる。表層剥離欠陥とは、粘着テープによりグラファイトシートの表層を剥離させることで、グラファイトシートの表層に毛羽立ちや欠損が生じる、あるいは単層と複数層が混在するなどの欠陥を意味する。このような表層剥離欠陥が存在していると、グラファイトシートの表層には凹凸ができて、角部や段差が生じる。そうすると、グラファイトシートのキャリア移動度が低下したり、角部や段差で不規則電流が発生したりする。
粘着テープによる表層剥離欠陥の有無は、SEM(走査型電子顕微鏡)でグラファイトシートの断面を観察することにより判定する。SEM観察用のグラファイトシートは樹脂に埋め込まれたり、導電性両面テープなどを使用して、サンプルステージにセットされる。そして、観察試料は必要に応じて所望の形状や大きさへの切り出しや鏡面加工などの表面処理がされる。SEMでグラファイトシートの断面を観察したときに、例えば、グラファイトシートの表面に毛羽立ち、剥がれ、欠損などがあれば、粘着テープによる表層剥離欠陥があると判定することができる。
本発明に係るグラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下である。グラファイトシートの厚さのバラツキが少なければ少ないほど、電気抵抗のバラツキによる局所的な発熱を抑えることができるほか、歩留まりが高いコイルを製造することができる。本発明において膜厚Tとは、グラファイトシートの任意の10点において膜厚T1〜T10を測定したときの算術平均値Taveを指す。膜厚T1〜T10のうち、膜厚算術平均値Taveとの差の絶対値が最も大きい膜厚をTmaxとする。本発明におけるグラファイトシートの厚さのバラツキV(%)は、以下の(1)式で表されるとおり、膜厚Tmaxと膜厚の算術平均値Taveとの差の絶対値に100を乗じた値を、膜厚の算術平均値Taveで除した値で定義される。
V=100×|Tmax−Tave|/Tave・・・(1)
グラファイトシートの厚さのバラツキの好ましい範囲は、40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超である場合、キャリア移動度、電気伝導度が低下する傾向がある。
グラファイトシートの膜厚の測定は、グラファイトシートに少なくとも2本の探針を接触させて、この探針に一定電流を流したときの電圧を測定して、電気抵抗を算出することにより膜厚を求める電気抵抗式膜厚計を用いる。グラファイトシートが絶縁部材等の部材に固定されていて膜厚の測定が困難な場合には、例えば、予めクロロホルムやジメチルホルムアミド(DMF)、アセトンなどでグラファイトシート以外の部材を溶解する、あるいは処理温度1500℃以上で加熱・燃焼しグラファイトシート以外の部材を灰化することにより、グラファイトシートのみを取り出してから膜厚を測定する。
グラファイトシートの面積は、3×3mm2(9mm2)以上であることが好ましく、5×5mm2(25mm2)以上であることがより好ましく、1×1cm2(1cm2)以上であることがさらに好ましい。グラファイトシートの面積が大きければ大きいほど、構造不整、歪み、割れの発生や不純物の混入の可能性は高まるため、キャリア移動度が低下する可能性は高くなる。したがって、上記範囲の面積の場合であっても、均一な特性を有するグラファイトシートを得ることができれば、設計通りのコイルを製造することができ、コイルの歩留まりが向上する。
粘着テープによる表層剥離欠陥の発生を防止するためには、粘着テープ転写法以外の方法でグラファイトシートを作製する必要がある。グラファイトシートの作製方法は、粘着テープ転写法のほか、CVD法(化学気相成長法)、SiC表面分解法、高分子焼成法がある。中でも、高分子焼成法は、グラファイトが大面積のフィルム状として得られるので、極めて工業的にメリットのある方法である。以下、高分子焼成法によるグラファイトシートの形成方法について述べる。
<高分子原料>
最初に本発明のグラファイトシート作製に用いられる高分子フィルム原料について記述する。本発明のグラファイトシート作製に好ましく用いられる高分子原料は芳香族高分子であることが好ましく、芳香族高分子が、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらのフィルムは公知の製造方法で製造すればよい。
特に好ましい芳香族高分子として芳香族ポリイミドを例示することができる。中でも以下に記載する酸二無水物(特に芳香族酸二無水物)とジアミン(特に芳香族ジアミン)からポリアミド酸を経て作製される芳香族ポリイミドは本発明のグラファイト作製のための原料高分子として特に好ましい。
本発明のグラファイトシートは、例えば芳香族高分子を成膜して厚さが60μm〜80nmまたは厚さが6μm〜80nmの範囲のフィルムにし、得られた芳香族高分子フィルムを2500℃以上の温度で熱処理することで得られてもよい。
<芳香族ポリイミドの合成、製膜>
以下、本発明の高分子原料として特に好ましい、芳香族ポリイミドフィルムの作製方法について詳述する。芳香族ポリイミドフィルムの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。特に、直線的で剛直な構造を有した高分子構造を持つほどポリイミドフィルムの配向性が高くなること、さらには入手性の観点から、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
本発明において芳香族ポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独で、または任意の割合の混合物で用いることができる。さらにポリイミドフィルムの配向性を高くすること、入手性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成することが好ましい。
以上から、前記芳香族高分子のポリイミドはピロメリット酸無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも一つと、4,4−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンから選ばれる少なくとも一つから作製されてもよい。
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種を有機溶媒中に溶解させて、得られた原料溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。これらのポリアミド酸溶液は通常5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得ることが出来る。
前記原料溶液中の酸二無水物とジアミンとは、実質的には等モル量にすることが好ましく、モル比は例えば、1.5:1〜1:1.5、好ましくは1.2:1〜1:1.2、より好ましくは1.1:1〜1:1.1である。
芳香族ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤や、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類の両方または片方をイミド化促進剤として用い、イミド転化するケミカルキュア法がある。本発明の高キャリア移動度特性、高耐電流密度特性のグラファイトシートを実現するためにはケミカルキュア法であることが好ましい。熱キュア法では150〜200℃の間で解重合反応と呼ばれるアミド酸形成の逆反応が起こることが避けられないが、ケミカルキュア法では解重合反応が起こりにくく、連鎖配列を制御したポリイミドを作製しやすい。そのためケミカルキュア法による薄膜のポリイミドフィルムはより高配向性を持ち、良好なグラファイトを得やすいと考えられる。
後述するように、本発明のグラファイトシートは厚さが30μm以下40nm以上の範囲であることが好ましい。芳香族ポリイミドを用いた場合、最終的に得られるグラファイトシートの厚さは、一般に出発高分子フィルムの80〜30%の範囲となり、一般的には出発高分子フィルムの厚さが薄いほど厚さの減少率は大きくなる傾向にあることから、出発高分子フィルムの厚さは60μm〜80nmまたは6μm〜80nmの範囲であることが好ましい。出発高分子フィルムの厚さは、例えば50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、さらにより好ましくは10μm以下、特に好ましくは6μm以下、最も好ましくは4μm以下であってもよい。出発高分子フィルムの厚さは、例えば80nm以上、特に好ましくは100nm以上、最も好ましくは200nm以上であってもよい。一方、長さ方向は100〜70%程度に縮小することが多いので、製造されるシートの面積はこのような条件を考慮して決定すればよい。高分子フィルムは、前記高分子原料又はその合成原料から公知の種々の手法によって製造できる。このような高分子フィルムの超薄膜を作製するには、エンドレスベルト、ドラム、金属フィルムなどの基板上へのワイヤバーによる薄膜作製、スピンコート法による薄膜作製、さらには真空中で蒸着して反応させる真空薄膜作製法などを好ましく用いることが出来る。なお、本発明では、50〜1μmのシートを得るためにワイヤバーを使用し、1μm〜20nmのシートを得るためにスピンコートを使用することが好適である。
以下に本発明の芳香族ポリイミド薄膜の作製方法の一例について述べる。本発明のポリイミド薄膜は、上記ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶剤溶液をエンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延し、乾燥・イミド化させることにより製造される。具体的にケミカルキュアによるフィルムの製造法は以下のようになる。まず上記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒量のイミド化促進剤を加え支持板やPET等の有機フィルム、ドラム又はエンドレスベルト等の支持体上に流延又は塗布後、ワイヤバーまたはスピンコートを用いて薄膜状とし、有機溶媒を蒸発させることにより自己支持性を有する膜を得る。次いで、これを更に加熱・乾燥させながらイミド化させてポリイミドフィルムを得る。加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲の温度が好ましい。さらに、ポリイミドの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを固定したり、延伸したりする工程を含むことが好ましい。これは、分子構造およびその高次構造が制御されたフィルムを用いることでグラファイトへの転化がより容易に進行すると言うことによっている。すなわち、グラファイト化反応をスムーズに進行させるためには炭素前駆体中の炭素分子が再配列する必要があるが、配向性にすぐれたポリイミドではその再配列が最小で済むために、低温でもグラファイトへの転化が進み易いと推測される。
芳香族ポリイミド薄膜の作製時には通常製膜時の耐電防止、基板との接着防止、量産時の巻取りを容易にするなどのためにフィラーと言われる粉体が添加される。最も一般的に使用されるフィラーは例えば燐酸カルシウムであり、通常、ポリイミド全体の10〜1質量%程度の量が添加され、フィラーの粒径は3〜1μm程度であることが多い。燐酸カルシウムの融点は1230℃であって通常のポリイミド膜にフィラーが含まれることは問題にならない。また、ポリイミド薄膜の厚さが25μm以上であり、これを用いてグラファイトシートを作製する場合、フィラーは分解・ガス化してしまうので最終的に得られるグラファイトシートの特性に影響を与えることはほとんど無い。しかしながら例えば9.6μm未満のグラファイトシートであって、8000cm2/V・sec以上のキャリア移動度の実現にはフィラーは悪影響を与える虞がある。具体的には本発明のように薄いグラファイトシートの場合には炭素化の過程で分解・ガス化して抜け出したフィラーの後がグラファイト化過程でのグラファイト層形成を妨げ、結果的にキャリア移動度特性の実現や耐電流密度特性に悪影響を与える。従って本発明において燐酸カルシウムに代表されるフィラーは可能な限り含まないことが好ましい。
本発明において、前記芳香族高分子の成膜時に添加されるフィラーの量は、芳香族高分子フィルム全体の0.1質量%以下であることが好ましく、実質的にフィラーを含まないことが最も好ましい。
<炭素化・グラファイト化反応>
次に、芳香族ポリイミドに代表される高分子フィルムの炭素化・グラファイト化の手法について述べる。本発明では出発物質である高分子フィルムを不活性ガス中で予備加熱し、炭素化を行う。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。予備加熱は通常1000℃程度の温度で行う。通常ポリイミドフィルムは500〜600℃付近で熱分解し、1000℃付近で炭素化する。予備処理の段階では出発高分子フィルムの配向性が失われないように、フィルムの破壊が起きない程度の面方向の圧力を加えることが有効である。
グラファイト化反応は、上記の方法で炭素化されたフィルムを超高温炉内にセットして行う。炭素化フィルムのセットはCIP材やグラッシーカーボン基板に挟んで行うことが好ましい。グラファイト化は通常2500℃以上の高温で行われるが、本発明においては2800℃以上、特に3000℃以上の温度でグラファイト化することが望ましい。この様な高温を作り出すには、通常グラファイトヒーターに直接電流を流し、そのジュ−ル熱を利用して加熱を行なう。グラファイト化は不活性ガス中で行なうが、不活性ガスとしてはアルゴンが最も適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えてもよい。処理温度は高ければ高いほど良質のグラファイトに転化出来る。熱分解と炭素化によりその面積は元のポリイミドフィルムより約10〜40%程度収縮し、グラファイト化の過程では逆に約10%程度拡大することが多い。このような収縮、拡大によってグラファイトシート内には内部応力が発生しグラファイトシート内部にひずみが発生する。この様なひずみや内部応力は3000℃以上で処理することにより緩和されてグラファイトの層が規則正しく配列し、さらに、電気移動度、熱伝導率、キャリア移動度、耐電流密度が高くなる。本発明のグラファイトシートを得るための処理温度(最高処理温度)は3000℃以上が好ましく、3100℃以上の温度で処理することがより好ましく、3200℃以上であることが最も好ましい。無論、この処理温度はグラファイト化過程における最高処理温度としてもよく、得られたグラファイトシートをアニーリングの形で再熱処理してもよい。なお熱処理温度の上限は、例えば、3600℃以下、より好ましくは3500℃以下である。当該最高処理温度での保持時間は、例えば、20分以上、好ましくは30分以上であり、1時間以上であってもよい。保持時間の上限は、特に限定されないが、通常、8時間以下、特に4時間以下程度としてもよい。温度3000℃以上で熱処理してグラファイト化する場合、高温炉内の雰囲気は前記不活性ガスによって加圧されているのが好ましい。
本発明のグラファイトシートは、3000℃以上での熱処理が不活性ガス中で行われる場合、そのガスの雰囲気圧力(ゲージ圧)が0.09MPa以上(好ましくは0.10MPa以上)とする条件で得られてもよい。この時、雰囲気圧力(ゲージ圧)の上限は、特に限定されないが、例えば5MPa以下であってもよい。
加圧下でグラファイト化反応を行う理由としては(1)加圧下での処理により厚さが不均一となるのを防止する、(2)表面が荒れるのを防止する、(3)熱処理炉のヒーターの長寿命化を実現する、の3点を挙げることが出来る。例えば、0.09MPa以下の圧力下、3000℃以上の温度で熱処理すると、シートから炭素が昇華しやすくなりシート表面が毛羽立ち、グラファイトが不均一に薄くなる場合がある。本発明の様に極めて薄いグラファイトシートを作製する場合には、シート全体で均一に厚さが減少することが重要であり、厚さを均一にするためにも3000℃以上の温度での熱処理を加圧下で行うことが重要である。
グラファイトシートの電気伝導度は15000S/cm以上であることが好ましく、24000S/cm以上であることがより好ましく、24500S/cm以上であることがさらに好ましい。前記電気伝導度は、27000S/cm以下であることが好ましく、26000S/cm以下であることがより好ましい。導電部材の長さと断面積が一定の場合、電気伝導度が大きいほど導電部材の電気抵抗は小さくなる。理想的なコイルは、インダクタンスはあるが電気抵抗や静電容量を全く持たない。一方で、実際のコイルは電気抵抗や静電容量を有しているためエネルギーを損失する。したがって、コイルに用いられる導電部材は、エネルギーの損失を抑制する観点から、電気抵抗率が小さい、すなわち電気伝導度が大きい方が好ましい。これにより、グラファイトシートを銅に代わる導電部材として用いることができる。
電気伝導度は、試料であるグラファイトシートに磁場を印加したときのホール効果を測定することにより求めることができる。試料は薄膜状であるため、キャリア移動度の測定と同様に、ホール効果の測定にはファン・デル・ポー法を用いる(非特許文献1)。
また、グラファイトシートの厚さは、薄ければ薄いほど良いという訳ではなく、厚さが40nm未満になると、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超となり、電気的特性が低下する。その理由は必ずしも明確ではないが、一つの理由としては高分子焼成法で作製したグラファイトシートが40nm未満になるとひずみや皺の発生が顕著となり、皺に起因するひずみの導入が避けられないためである、と推定している。また、第二の理由としては先に述べた様に3000℃以上の温度で処理する場合、均一な厚さのグラファイトシートを作製することが極めて難しいことが挙げられる。本発明のコイルにおいては、導電部材として用いられるグラファイトシートのキャリア移動度が均一であることが必要であるので、厚さの均一性は必要条件となる。従って、導電部材に用いられるグラファイトシートの厚さは、40nm以上であることが好ましく、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上、さらにより好ましくは200nm以上、特に好ましくは350nm以上、最も好ましくは750nm以上である。また、グラファイトシートは、厚ければ厚いほどインダクタンスが大きくなるが、整った層構造とコイルの小型化を両立する観点からは、グラファイトシートの厚さは30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、9.6μm以下であることがさらに好ましく、8μm以下であることがさらにより好ましく、6μm以下であることが特に好ましく、2.1μm以下であることが最も好ましい。グラファイトシートの厚さが30μm超である場合、高品質のグラファイトシートを得ることが困難となり、各物性が低下する虞がある。
キャリア移動度の大きいグラファイトシートは、シート中に欠損や空洞が少ない、非常に密な構造である。欠損や空洞がグラファイトシート中に入ると、密度が小さくなり、熱伝導率、キャリア移動度、耐電流密度も低下する傾向がある。このことから、グラファイトシートの密度は大きいことが好ましい。具体的には、密度が1.7g/cm3以上であることが好ましく、1.8g/cm3以上であることがより好ましく、2.0g/cm3以上であることがさらに好ましい。密度の上限は、例えば2.26g/cm3以下であり、2.20g/cm3以下であってもよい。さらに、グラファイトシートの面積が2×2mm2以上であり、厚さが40nm以上30μm以下のときに、グラファイトシートの密度が2.0g/cm3以上であることが最も好ましい。
グラファイトシートのa−b面方向の熱伝導率は、1500W/m・K以上であることが好ましく、より好ましくは1950W/m・K以上、さらに好ましくは1960W/m・K以上、さらにより好ましくは2000W/m・K以上、特に好ましくは2050W/m・K以上、最も好ましくは2100W/m・K以上である。当該熱伝導率は、例えば2400W/m・K以下であってもよく、2300W/m・K以下であってもよい。アルミ、銅、天然グラファイトシートの熱伝導率は、それぞれ220W/m・K、400W/m・K、200〜500W/m・Kであるが、これらの材料と比較して、本発明のグラファイトシートの熱伝導率は高い。熱伝導率が高ければ、コイル内で局所的に熱が発生した場合でも発熱部から非発熱部への熱移動が起こるため、コイルの誤動作や破損を防止することができる。
耐電流密度は、単位断面積当たりに流すことができる電流の大きさであり、特に大電流を流すパワーエレクトロニクス回路にコイルを適用するときに考慮すべき因子である。銅の耐電流密度は2×106A/cm2程度であるが、コイルの導電部材として銅に代えてグラファイトシートを適用する観点からは、銅と同等以上の耐電流密度を有していることが好ましい。具体的には、グラファイトシートの耐電流密度は、2×106A/cm2以上であることが好ましく、5×106A/cm2以上であることがより好ましく、1×107A/cm2以上であることがさらに好ましい。当該耐電流密度の上限は、銅よりも高い耐電流密度を示す限り、特に限定されるものではない。
絶縁部材の積層方向の厚さが薄ければ薄いほど、コイルの巻数の増大、小型化、軽量化に寄与する。したがって、導電部材と絶縁部材の積層方向における絶縁部材の厚さの下限は10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。また、コイルを小型化する観点から、絶縁部材の厚さの上限は、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
絶縁部材は、絶縁性を有している材料であれば特に限定されない。絶縁部材は、コイルの直流重畳特性を向上させるために非磁性体材料を選択してもよい。コイルの直流重畳特性とは、直流バイアス電流を流したときに、インダクタンスが低下する特性のことである。絶縁部材は、例えば、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)などの絶縁膜、導電部材との接着剤としても利用可能なポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の高分子材料、Zn−Cu系フェライトなどの非磁性フェライトでもよい。
また、絶縁部材は、大きなインダクタンス値を得るために透磁性の高い鉄、磁性フェライト、けい素鋼板、パーマロイ、ダストコアなどの磁性体材料を用いてもよい。
絶縁部材は、非磁性体材料または磁性体材料の原料粉末をバインダと混合してペースト状にして薄く延ばして乾燥させた、いわゆるグリーンシートであることも好ましい。導電部材との積層が容易になる。
さらに、コイルを所望の大きさ、インダクタンス値にするために、非磁性体の絶縁部材と磁性体の絶縁部材とを組み合わせてもよい。例えば、コイルを上下方向に三分割したときの中央部には非磁性体の絶縁部材を用いて、コイルを上下方向に三分割したときの上部および下部には磁性体の絶縁部材を用いることも可能である。
コイルのインダクタンス値を大きくするために、導電部材と絶縁部材の積層体にはコア部材が設けられてもよい。コア部材としては、鉄、フェライト、けい素鋼板、パーマロイ、ダストコアなどの磁性体材料を用いることができる。例えば、特定の周波数を上回る高周波電流をカットするフィルタとして機能するチョークコイルの場合には、インダクタンス値が高いことが求められるため、磁性体材料のコア部材を設けることは有効である。
一方、高周波数帯域で使用される場合には、高いQ値が求められるため、コア部材が設けられない、あるいはコア部材として非磁性体が用いられる、いわゆる空芯とすることも好ましい。コイルの抵抗成分(R)に対する周波数(f)に応じたインダクタンスの比(R/2πfL)を損失係数という。Q値は、損失係数の逆数(Q=2πfL/R)であり、この値が大きいほど共振が鋭く良いコイルといわれる。周波数が高い場合、表皮効果、ヒステリシス損、渦電流損が増加してQ値が下がることが知られている。
本発明のコイルは、導電部材と絶縁部材を交互に積層した後、所望の大きさ及び形状に加工してもよいし、導電部材と絶縁部材をそれぞれ所望の大きさ及び形状に加工してから積層してもよい。
(実施の形態1)
実施の形態1は、導電部材であるグラファイトシートと絶縁部材を個別に製造して交互に積層した後、所望の形状や大きさに加工する方法である。
実施の形態1では、導電部材として、高分子焼成法により作製されたグラファイトシート、及び絶縁部材として非磁性体の高分子材料から作製された絶縁シートを用いる。
図1には、本発明の実施の形態1に係る積層体の斜視図が示されている。まず、絶縁シート31とグラファイトシート20を積層させた二層体(図示しない)を形成する。所定数の二層体を形成した後、絶縁シート31とグラファイトシート20が隣合わせになるように、同一方向に二層体を積層していく。最終的には、グラファイトシート20が露出する面に絶縁シート31を積層することにより、積層体15が形成される。
グラファイトシートと絶縁部材の固定は、接着剤を用いて行ってもよく、熱圧着で行ってもよい。また、熱で溶着する絶縁部材を用いれば、絶縁部材と接着剤を兼ねることができ、接着層を設ける必要がないため、グラファイトシートと絶縁部材の積層方向における厚みが増加することを抑制できる。
グラファイトシートと絶縁部材の積層体を、所望の形状および大きさに切り出し、コイルとする。図2には、本発明の実施の形態1に係るコイルの斜視図が示されている。実施の形態1では、積層体15がカギ穴形のコイル10になるように切り出しているが、形状や大きさは特に限定されるものではなく、コイル10の用途にあわせて適宜選択することができる。
積層体の切り出しには、酸素またはアルゴンを用いたプラズマ等のプラズマ、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザー等のレーザーを使用することができる。中でもレーザーは、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、ファイバーレーザー、エキシマレーザーなどの公知の加工用レーザーが好ましい。
電気的に非接触状態で積層されたグラファイトシート同士を電気的に接続する。具体的には各グラファイトシートに配線用の端子が設けられて、銅線などの配線材料により各配線用端子を直列、または並列に接続する。
さらに、コイルのインダクタンスを大きくするためにコア材を設けることも可能である。図3は本発明の実施の形態1に係るコア材の斜視図であり、図4は本発明の実施の形態1に係るコア材が設けられた場合のコイルの斜視図である。図4では、導電部材と絶縁体の積層方向(Y軸方向)の上下から、コイル10を挟むように2つのE型のコア材40が設けられている。E型のコア材は、幅方向(X軸方向)において、例えば、図3に示すように、左側部40a、中央部40b、右側部40cの3つに分割することができる。E型のコア材40のうち、コイル10の中央の開口部10aに挿入されるコア材中央部40bの高さ(Y軸方向)を調節して、上下2つのコア材中央部40b同士に隙間を設けることにより、コイル10の磁気特性を調整することが可能である。
(実施の形態2)
実施の形態2は、導電部材であるグラファイトシートを絶縁部材上に一体化して形成し、内部電極を形成した後、内部電極が形成された絶縁部材を積層していく方法である。図5は、本発明の実施の形態2に係る積層体の斜視図である。
実施の形態2では、絶縁部材30として磁性体材料からなる公知のグリーンシート32を用いる。まず、グリーンシート32とグラファイトシート20を複合化し、二層体を形成する。グリーンシート32とグラファイトシート20の複合化は接着剤を用いて行ってもよく、必要に応じて熱圧着等の物理的手段で作製してもよい。
次に、複合化した二層体のグラファイトシート20側の面に内部電極50およびホール(ビアホール70)を形成する。ビアホール70は、グラファイトシート20が形成する内部電極50間を電気的に接続するビア電極71を貫通させるものである。
ビアホールを形成した後、必要に応じて水酸化ナトリウムや硫酸等によるデスミア処理、無電解メッキや電解メッキ等のメッキ処理等を行い、ビアホール内に導体を形成して層間を電気的に接続可能なものとする。
グラファイトシート20の内部電極50は、グラファイトシート20とグリーンシート32の積層方向(Y軸方向)から見て、矩形状のらせん軌道を形成するように、グラファイトシートの不要な部分が除去される。本発明のコイル10において、導電部材として用いるグラファイトシート20は、40nm以上30μm以下の厚さと極めて薄いため、絶縁部材30であるグリーンシート32を損傷することなくレーザーエッチングできる。グラファイトは、炭素のみから成っているので基本的にはレーザーの熱によって容易に燃焼して炭酸ガスとなるためである。さらに、熱圧着によってグリーンシート32とグラファイトシート20が接着されている場合には、レーザーエッチングにより、接着層が溶解して熱吸収をするため、グリーンシート32にほとんどダメージを与えることなく、グラファイトシート20のみをエッチング除去することができる。
内部電極50を多パターン化または多層化することによりインダクタンスを大きくすることができる。また、内部電極50の長さを短くしたり、内部電極50の線幅を全体的に太くすれば、コイルの直流抵抗を低減することができる。
ビアホール70の形成では、実施の形態1に係るグラファイトシート20と絶縁シート31の積層体15の切り出しと同様に、酸素またはアルゴンを用いたプラズマ等のプラズマ、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザー等のレーザーを使用することができる。
所定数の二層体を形成した後、グラファイトシート20とグリーンシート32が隣合わせになるように、同一方向に二層体を積層していく。最終的には、グラファイトシート20が露出する面にグリーンシート32を積層し、積層体15を形成する。グラファイトシート20とグリーンシート32との固定は、実施の形態1と同様に、接着剤による接着や熱圧着などにより行うことができる。
図6は、本発明の実施の形態2に係るコイルの斜視図である。積層体15は、焼成炉などで焼成された後、外部電極60の塗布および焼き付けがなされる。外部電極60の材料は特に限定されないが、内部電極50と同じグラファイトシート20を用いてもよいし、銀や銅などの公知の電極材料を用いてもよい。さらに、外部電極60にニッケル、スズなどでめっきを行えばコイル10が完成する。
外部電極60の位置は、内部電極端部51と接触していれば特に限定されないが、絶縁部材の一端面に2つの外部電極が形成されていることが好ましい。2つの外部電極を絶縁部材の両端面に形成する場合と比較して、導電部材と絶縁部材の積層方向(Y軸方向)におけるコイル寸法を小さくすることができる。また、外部電極は積層体の積層方向(Y軸方向)と直交する片側面および両側面に形成されてもよい。積層体の側面に外部電極を配置すれば、コイルを薄型化したい場合に有効である。
(実施の形態3)
実施の形態3は、導電部材であるグラファイトシートと絶縁部材を積層して積層体を形成した後、この積層体の一辺から対向する辺に向かって積層体を巻き回していく方法である。
図7は、本発明の実施の形態3に係る積層体の斜視図である。図7に示すように、実施の形態3では、まず、導電部材であるグラファイトシート20と絶縁部材30を個別に製造して交互に積層して積層体15を形成する。後工程において、積層体15を巻き回すことによりコイル10を形成することから、絶縁部材30は可撓性を有していることが好ましい。
グラファイトシートと絶縁部材の固定は、接着剤を用いて行ってもよく、熱圧着で行ってもよい。また、熱で溶着する絶縁部材を用いれば、絶縁部材と接着剤を兼ねることができ、接着層を設ける必要がないため、グラファイトシートと絶縁部材の積層方向における厚みが増加することを抑制できる。
次に、積層体の一辺から対向する辺に向かって積層体を巻回していく。図7において、積層体15のB辺から、B辺と対向するA辺に向かって積層体15が巻回しされている。巻き回された積層体15を所望の大きさのコイルとするために、巻き軸方向(Z軸方向)と直交する方向(X−Y面方向)に切り出すことが好ましい。
積層体の切り出しは、実施の形態1および2に係るグラファイトシートと絶縁部材の積層体の切り出しと同様に、酸素またはアルゴンを用いたプラズマ等のプラズマ、固体レーザー、液体レーザー、ガスレーザー等のレーザーを使用することができる。
図8は、本発明の実施の形態3に係るコイルの側面図である。図8において、グラファイトシート20と絶縁部材30が交互に積層され、かつ巻物状に巻回された積層体15が、コイル10として示されている。この後、コイル10の導電部材20に配線用の端子(図示しない)が設けられて、コイル10の製造が完了する。
以下実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明はこれら実施例によって限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能である。
以下、グラファイトシートの物性測定方法及び作製手順について説明する。
(物性測定方法)
<膜厚>
原料である有機高分子シート、グラファイトシートの厚さは、フィルム(シート)の測定場所によって±5%程度の誤差があった。そのため得られたシートの10点平均の厚さを本発明における試料の厚さとした。薄膜グラファイトシートの膜厚の測定は、電気抵抗式膜厚計を用いた。
<密度>
作製したグラファイトシートの密度は、ヘリウムガス置換式密度計[AccuPyc II 1340(株)島津製作所]によりグラファイトシートの体積を測定し、質量を別途測定し、密度(g/cm3)=質量(g)/体積(cm3)の式から算出した。なお、この方法で測定可能なグラファイトシートは500nm以上の厚さの試料であり、厚さ500nm未満のグラファイトシートの密度測定はこの測定手法では誤差が大きすぎて不可能であった。
<電気伝導度、キャリア移動度>
グラファイトシートの電気伝導度の測定はファン・デル・ポー法によって行った。この方法は薄膜状の試料の電気伝導度を測定するのに最も適した方法である。この測定法の詳細は(第四版)実験化学講座9 電気・磁気(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行(平成3年6月5日発行))のP170に記載されている。この手法の特徴は、任意の形状の薄膜試料端部の任意の4点に電極をとり測定を行うことが出来ることであり、試料の厚さが均一であれば正確な測定が行える点である。本発明においては正方形に切断した試料を用い、それぞれの4つの角(稜)に銀ペースト電極を取り付けて行った。測定は(株)東洋テクニカ製、比抵抗/DC&ACホール測定システム、ResiTest 8300を用いて行った。
キャリア移動度の測定は上記ファン・デル・ポー法による電気伝導度測定に用いた試料に磁場を印加し、そのホール係数を測定することで行った。グラファイトの様に電子とホールがほぼ同じ数だけ存在する場合の計算は、Newton法を用いてその解析を行う必要がある(非特許文献1)。この計算のポイントは、電子とホールの密度、両者の移動度で合計4個のパラメータがあり、3種の測定値、電気伝導度、ホール係数、磁気抵抗から3つの連立方程式となるので、仮定が必要になると言う点である。その仮定はグラファイトでは電子とホールの移動度(あるいは密度)が等しいとすることである。実際に高品質グラファイトでは電子とホールの数がほぼ等しいことが知られているので(I.L.Spain,in:P.L.Warker Jr.,P.A.Thrower(Eds).Chemistry and Physics of Carbon,vol,8,Marcel Dekker,Inc.,New York,1973,pp.1−150.)、この仮定は問題ない。我々の計算も非特許文献1の手法に従い、上記仮定を用いてプログラムで数値計算を行い、キャリア移動度を算出した。
<耐電流密度>
耐電流密度は作製したグラファイトシートを幅2mm、長さ20mmに切断し、その両端を電極間隔10mmとしたグラファイトブロック電極で挟み、そこに直流電流を印加して測定した。測定は不活性ガス(アルゴンまたは窒素)中、250℃の環境下で行った。比較のために10μm〜1μmの範囲の銅箔を準備し、同じ形状に切り出した銅箔の耐電流密度を測定しグラファイト試料との比較を行った。グラファイトシートの耐電流密度値が銅を上回った場合、当該グラファイトシートの耐電流密度特性を銅以上であるとした。10μm〜1μmの範囲の厚さの銅箔の耐電流密度は(線幅が2mmの場合)およそ1×106〜2×106A/cm2であった。ちなみに幅2mm、厚さ1μmの試料の場合20Aを印加した場合、60分後の電圧値が変化しなければその耐電流密度は1×106A/cm2と言うことになる。
<グラファイトシートの厚さのバラツキ>
本発明におけるグラファイトシートの厚さのバラツキV(%)は、上述した(1)式で表されるとおり、膜厚Tmaxと膜厚の算術平均値Taveとの差の絶対値に100を乗じた値を、膜厚の算術平均値Taveで除した値である。
<熱伝導率>
グラファイトシートの熱拡散率は、周期加熱法による熱拡散率測定装置(アルバック理工株式会社「LaserPit」装置)を用いて、20℃、真空下(10-2Pa程度)、10Hzの周波数を用いて測定した。これはレーザー加熱の点から一定距離だけ離れた点に熱電対を取り付け、その温度変化を測定する方法である。ここで熱伝導率(W/m・K)は、熱拡散率(m2/s)と密度(kg/m3)と比熱(798kJ/(kg・K))を掛け合わせることによって算出した。ただし、この装置ではグラファイトシートの厚さが1μm以上で、面積が25mm2以上の場合は熱拡散率の測定が可能であった。しかし、グラファイトシートの厚さが1μm以下の場合や、グラファイトシートの面積が25mm2以下の場合では測定誤差が大きくなりすぎて正確な測定は不可能であった。
そこで第二の測定方法として、周期加熱放射測温法((株)BETHEL製サーモアナライザーTA3)を用いて測定をおこなった。これは周期加熱をレーザーで行い、温度測定を放射温度計で行う装置であり、測定時にグラファイトシートとは完全に非接触であるため、グラファイトシートの厚さ1μm以下、面積25mm2以下の試料でも測定が可能である。両装置の測定値の信頼性を確認するために、幾つかの試料については両方の装置で測定を行い、その数値が一致することを確認した。
BETHEL社の装置では周期加熱の周波数を最高800Hzまでの範囲で変化させることができる。すなわち、この装置の特徴は通常熱電対で接触的に行われる温度の測定が放射温度計により行われ、測定周波数を可変できる点である。原理的に周波数を変えても一定の熱拡散率が測定されるはずなので、本装置を用いた計測では周波数を変えてその測定を行った。1μm以下の厚さの試料や、グラファイトシートの面積が25mm2以下の試料の測定を行った場合は、10Hzや20Hzの測定においては測定値がばらつくことが多かったが、70Hzから800Hzの測定では、その測定値はほぼ一定になった。そこで、周波数に寄らず一定の値を示した数値(70Hz〜800Hzでの値)を用いて熱拡散率とした。
(原料高分子膜製造例1)
ピロメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18質量%のジメチルホルムアミド(DMF)溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布し、さらにワイヤバーを用いて厚さ調整を行った。この様な方法で50μmから1μmの範囲の厚さの異なるフィルムを調製した。1μm〜20nmの範囲の均一な厚さの高分子フィルムはこの様な方法では作製が困難であるため、スピンコーターを用いて、アミド酸溶液の濃度、回転数を変えることで厚さの異なる何種類かのフィルムを作製した。なお、本発明の実施例において特に記載のない場合には、製膜時にフィラー成分を一切添加しないで成膜しており、実質的にフィラー成分は0.1質量%以下である。
攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱した後、アルミ箔を除去しポリイミドフィルム(高分子試料A)を作製した。また前記試料Aと同様にしてピロメリット酸無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用い、ポリイミドフィルム(高分子試料B)と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンを原料に用いポリイミドフィルム(高分子試料C)とを作製した。この様な方法で50μmから20nmの範囲の厚さの異なる何種類かのフィルムを作製した。
(実施例1〜8)
製造例1で作製した厚さの異なる8種類のポリイミドフィルム(高分子試料A、面積10×10cm2)を、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化シートを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で3000℃の処理温度(最高処理温度)まで昇温した。この温度で30分間(処理時間)保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイトシートを作製した(粘着テープによる表面剥離で作製したものではない)。処理はアルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kgf/cm2)の加圧下で行った。得られたグラファイトシートの面積は厚さの違いによって収縮、膨張の比率が異なるために一定ではなかったが、いずれも6.5×6.5cm2〜9.5×9.5cm2の範囲にあった。なお、実施例1〜8に示したキャリア移動度の値はいずれも試料を1cm×1cmの正方形に切り出し、試料の稜部分に電極をつけて測定したものである。
また、耐電流密度の評価は幅1mm長さ20mmに切り出した試料を用いて行った。測定環境はアルゴンガス(常圧)中であった。比較のために、同じ形状に切り出した銅フィルムの耐電流密度を測定し、各グラファイト試料の耐電流密度がほぼ同じ厚さの銅フィルムを上回った試料を○、銅以下であった場合を×で示す。
所定の厚さで得られたグラファイトシートに関し、使用された高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、密度(g/cm3)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価を表1に示す。表1の結果から明らかな様に、これらの実施例1〜8ではグラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%以下となり、キャリア移動度はいずれも5000cm2/V・sec以上(特に8000cm2/V・sec以上)の特性を示した。さらに、電気伝導度は15000S/cm以上(特に24000S/cm以上)、熱伝導率は1500W/m・K以上(特に1900W/m・K以上)、耐電流密度特性も銅と同等以上(すなわち2×106A/cm2以上)の特性であることが分かった。
(実施例9〜11、比較例1〜3)
高分子試料Aを用い、厚さの異なるシートについて最高処理温度3000℃、3100℃、または3200℃とした以外は実施例1と同じ処理を行い、得られたグラファイトシートに関し、使用された高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、密度(g/cm3)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価を表1に示す。
実施例9〜11では、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の1〜2%となり、キャリア移動度はいずれも5000cm2/V・sec以上の特性を示した。
比較例1〜2(厚さ0.02μm)では、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超となり、キャリア移動度及び電気伝導度の一方または両方が低下した。このことから、グラファイトシートの厚さは、0.04μm(40nm)以上であることが好ましいと結論づけた。
比較例3(最高処理温度3200℃、厚さ0.02μm)でも、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超となった。この比較例3では、同じ厚さの比較例1(最高処理温度3000℃)、比較例2(最高処理温度3100℃)よりもキャリア移動度、電気伝導度が高くなる傾向が見られたが、より高いキャリア移動度、電気伝導度を達成する為には、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%以下を満たすことが必要であると考えられた。
(実施例12〜17)
高分子試料B、および高分子試料Cを用いた以外は実施例1と同じ方法で厚さの異なる幾つかの試料の炭素化・グラファイト化を行った。得られたグラファイトシートに関し、高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、密度(g/cm3)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価の結果を表1に示す。なお、この表に示した厚さのシートでは高分子試料Bでも、高分子試料Cでも3000℃、30分の熱処理を行えば、グラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下であり、キャリア移動度は5000cm2/V・sec以上であった。
(実施例18〜21)
実施例3で用いた試料(高分子試料A,厚さ1.2μm、最高処理温度3000℃、面積10×10mm2)を切断してより小さな正方形の試料を切り出し、すなわち測定面積5×5mm2(実施例18)、2×2mm2(実施例19)、1×1mm2(実施例20)、0.5×0.5mm2(実施例21)とし、それぞれの試料について、厚さ(μm)、密度(g/cm3)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)を測定し、耐電流密度評価を行った。その結果(実施例18〜21)を表1に示す。表1の結果から試料面積が大きくなっても小さくなってもキャリア移動度、膜厚のバラツキ、電気伝導度、熱伝導率の大きさはほとんど変わらないことが分かった。これは本発明のグラファイトシートが極めて均一な特性を持つことを示す結果である。
(実施例22〜25)
実施例3で用いたのと同じ厚さのポリイミドフィルム(高分子試料A)を原料として用い、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化シートを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で、それぞれ2800℃、または2900℃(最高処理温度)まで昇温した。この温度でそれぞれ30分間、または120分間(2時間)保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイトシートを作製した。処理はアルゴン雰囲気で0.05MPa(0.5kgf/cm2)の加圧下でおこなった。得られたグラファイトシートに関し、使用された高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、処理時間(分)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価の結果を表2に示す。2800℃または2900℃の処理では処理時間を30分または120分としても、グラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下であり、5000cm2/V・sec以上のキャリア移動度を実現できた。最高処理温度が高く、処理時間が長いとキャリア移動度、電気伝導度は若干高くなる傾向があるが、より高いキャリア移動度(特に8000cm2/V・sec以上)及びより高い電気伝導度を実現するためには3000℃以上の温度が好ましいと結論づけた。
(実施例26〜31)
厚さ25μm、または50μmのポリイミドフィルム(高分子試料A)を用い、最高処理温度3100℃30分、3200℃30分、3200℃120分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で炭素化・グラファイト化を行った。得られたグラファイトシートの厚さはそれぞれ3100℃処理では12μm(実施例26)、28μm(実施例29)、3200℃処理では11μm(実施例28)、12μm(実施例27)、26μm(実施例31)、28μm(実施例30)であった。得られた結果を表2に示す。グラファイトシートの厚さが厚くなるに従い、キャリア移動度、電気伝導度の値が低下する傾向があったが、グラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下であり、キャリア移動度は5000cm2/V・sec以上であった。このことから、グラファイトシートの厚さが30μm以下であることが好ましいと結論した。
(比較例4〜7)
厚さ30nmのポリイミドフィルム(高分子試料A)を用い、最高処理温度3000℃30分、3100℃30分、3200℃30分、3000℃120分とした以外は、実施例1と同じ条件で炭素化・グラファイト化を行った。得られたグラファイトシートの厚さはそれぞれ3000℃30分処理では0.017μm(17nm)(比較例4)、3100℃30分処理では0.015μm(15nm)(比較例5)、3200℃30分処理では0.012μm(12nm)(比較例6)、3000℃120分処理では0.011μm(11nm)(比較例7)であった。得られたシートに関し、高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価の結果を表2に示す。グラファイトシートの厚さが40nm未満になると、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超となった。このことから、バラツキが膜厚の50%以下であることを実現するためにはグラファイトシートの厚さが40nm以上であることが好ましいと結論した。
(実施例32〜35)
実施例27で用いた試料(高分子試料A,厚さ12μm、最高処理温度3200℃、面積10×10mm2)を切断してより小さな正方形の試料を切り出し、すなわち測定面積5×5mm2(実施例32)、2×2mm2(実施例33)、1×1mm2(実施例34)、0.5×0.5mm2(実施例35)とし、それぞれの試料について厚さ(μm)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)を測定し、耐電流密度評価を行った。その結果(実施例32〜35)を表2に示す。実施例32〜35の結果は試料測定面積が小さくなればなるほどそのキャリア移動度は大きくなる傾向にあったが、この様に小さな面積の測定でもキャリア移動度は5000cm2/V・sec以上であり、グラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下であることを実現できた。
(参考例1〜3)
実施例4と同じ手法で、燐酸カルシウムのフィラー10質量%添加(参考例1)、フィラー1質量%添加(参考例2)、フィラー0.1質量%添加(参考例3)、実質的にフィラーを含まない高分子原料(実施例4)を用いて参考例1〜3の試料を作製し、その耐電流密度を比較した。実験はそれぞれの試料(実施例4、参考例1〜3)から1mm幅に測定サンプルを切り出し、任意に選別した10本について行った。実施例4ではこの様な測定を行ってもその耐電流密度に変わりは無かった。しかし、フィラー10質量%添加の試料では10本中3本が銅の耐電流密度以下で破断した。またフィラー1質量%添加の試料では10本中1本が破断した。フィラー0.1質量%添加試料、および実質的にフィラーを含まない試料では破断した試料は無かった。このことから高分子原料中のフィラー濃度は0.1質量%以下であることが必要で、実質的にフィラーなどの不純物を含まないことが好ましいことが分かった。
(参考例4)
実施例4と同じ方法で、アルゴン雰囲気中常圧、3200℃の処理を常圧(加圧なし)で行った試料(参考例4)を作製し、実施例4の加圧下(0.1MPa(1.0kgf/cm2))で処理したものとの比較を行った。実験はそれぞれの試料(実施例4と参考例4)から1mm幅に測定サンプルを切り出し、任意に選別した10本についてその耐電流密度を測定することで行った。実施例4ではこの様な測定を行ってもその耐電流密度に変わりは無かった。しかし、参考例4では実施例4の試料の50%印加電流で破断した試料が1本存在した。これは参考例4の試料では3200℃の処理において部分的に厚さの薄い部分が形成されたためであろうと考えられる。すなわち、3000℃以上の温度での熱処理を加圧中で行うことが、厚さの均一なグラファイトフィルム作製のため有効な手段であることを示している。この様な現象は20nm以下の極めて薄いグラファイトの場合にはより顕著になると考えられ、グラファイトシートの薄さの限界を示すものであると考えられる。
(参考例5〜7)
実施例7で作製したグラファイトフィルム(厚さ0.06μm、キャリア移動度9100cm2/V・sec)を線幅1mm(参考例5、a−b面に対して垂直方向の断面積0.06×10-3mm2)、0.2mm(参考例6、a−b面に対して垂直方向の断面積0.012×10-3mm2)、0.1mm(参考例7、a−b面に対して垂直方向の断面積0.006×10-3mm2)の線状に加工し、その時の耐電流密度を測定した。耐電流密度はややばらついていたがいずれも2×106〜2×107A/cm2の範囲にあった。このことからグラファイト配線材料の線幅が変化しても耐電流密度は変わらないことが分かった。
(参考例8〜10)
同様に、厚さ0.06μmの銅箔を線幅1mm(参考例8)、0.2mm(参考例9)、0.1mm(参考例10)の線状に加工し、耐電流密度を測定した。耐電流密度は線幅1mmでは約2×106A/cm2、線幅0.1mmでは約1×106A/cm2、線幅0.02mmでは4×105A/cm2になり、銅線の場合には線幅(銅線断面積)が小さくなると耐電流密度が悪くなることが分かった。このことは微細配線回路においてはグラファイト配線材料が銅よりも耐電流密度の点で優れていることを示す。
(実施例36)
<積層体の製造>
実施例3で作製したグラファイトシート(高分子原料A,厚さ1.2μm、キャリア移動度9800cm2/V・sec)を用いて積層体の作製を行った。
絶縁性基板として(株)カネカ製ポリイミド(厚さ12μm)、接着剤としてデュポン社製パイララックス(登録商標)LF0100(変性アクリル系接着剤シート;厚さ25μm)を貼り合わせた有機高分子フィルムを使用した。最初に、グラファイトシートと上記有機高分子フィルムを、熱ラミネータを用いて150℃で張り合わせて、積層体を作製した。
次に、IEC規格(IEC60825−1)でClass 4に相当するYVO4レーザーマーカー(KEYENCE社製MD−V9900)を用いて加工を行った。このレーザーを用いて線幅0.4mmに加工した。これにより基板のポリイミドをほとんど損傷すること無くグラファイト層のみをエッチング除去できることが分かった。最後に上記方法でエッチング加工した積層体の表面を保護フィルムでカバーした。用いた保護フィルムはPET(厚さ12μm)/熱可塑性ポリエステルフィルム樹脂層(25μm)(Shinchang Hotmelt CO.,LTD製SC−501)である。このようにして作製した積層体は優れた柔軟性を有することが分かった。
上記の通り作製されたグラファイトシートまたは積層体は、コイルに必要な種々の特性を備えており、例えば図1〜8に示される実施の形態に用いられることは明らかであるが、これら以外のコイルに用いることも可能である。
10:コイル、15:積層体
20:導電部材(グラファイトシート)
30:絶縁部材、31:絶縁シート、32:グリーンシート
40:コア材、40a:コア材左側部、40b:コア材中央部、40c:コア材右側部
50:内部電極、51:内部電極端部
60:外部電極
70:ビアホール、71:ビア電極

Claims (11)

  1. 導電部材と、絶縁部材とが積層されたコイルであって、
    前記導電部材は、25℃におけるa−b面方向のキャリア移動度が5000cm2/V・sec以上であって、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが膜厚の50%以下であるグラファイトシートであることを特徴とするコイル。
  2. 前記グラファイトシートの面積は、3×3mm2以上である請求項1に記載のコイル。
  3. 前記グラファイトシートは、芳香族高分子フィルムを炭素化した後、温度2500℃以上で熱処理することによって得られるものである請求項1または2に記載のコイル。
  4. 前記芳香族高分子がポリイミド、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種である請求項3に記載のコイル。
  5. 前記グラファイトシートの電気伝導度が15000S/cm以上である請求項1〜4のいずれかに記載のコイル。
  6. 前記グラファイトシートの厚さが30μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載のコイル。
  7. 前記グラファイトシートの密度が、1.7g/cm3以上である請求項1〜6のいずれかに記載のコイル。
  8. 前記グラファイトシートの熱伝導率が1500W/m・K以上である請求項1〜7のいずれかに記載のコイル。
  9. 前記グラファイトシートの耐電流密度が2×106A/cm2以上である請求項1〜8のいずれかに記載のコイル。
  10. 前記絶縁部材の厚さが10nm〜1mmである請求項1〜9のいずれかに記載のコイル。
  11. 前記絶縁部材の一端面に2つの外部電極が形成されている請求項1〜10のいずれかに記載のコイル。
JP2014159906A 2014-08-05 2014-08-05 コイル Active JP6440295B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014159906A JP6440295B2 (ja) 2014-08-05 2014-08-05 コイル

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014159906A JP6440295B2 (ja) 2014-08-05 2014-08-05 コイル

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016039191A true JP2016039191A (ja) 2016-03-22
JP6440295B2 JP6440295B2 (ja) 2018-12-19

Family

ID=55530058

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014159906A Active JP6440295B2 (ja) 2014-08-05 2014-08-05 コイル

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6440295B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017209469A1 (ko) * 2016-05-30 2017-12-07 주식회사 엔젤 전자석 및 그 제조방법
KR101937167B1 (ko) 2018-12-17 2019-01-10 주식회사 미다온 전력 손실 저감장치
CN109554130A (zh) * 2019-01-31 2019-04-02 常德力元新材料有限责任公司 一种石墨胶带及其制备方法

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01218107A (ja) * 1988-02-25 1989-08-31 Sumitomo Electric Ind Ltd 高周波通信用アンテナ
JP2009107904A (ja) * 2007-10-31 2009-05-21 Kaneka Corp グラファイトフィルムおよびその製造方法
JP2010089344A (ja) * 2008-10-07 2010-04-22 Kaneka Corp グラファイト複合フィルム
JP2013187415A (ja) * 2012-03-08 2013-09-19 Fujitsu Ltd 薄膜グラファイトを含有する構造体の製造方法、及び電気部品
JP2013189013A (ja) * 2013-03-28 2013-09-26 Kaneka Corp グラファイト複合フィルム
JP2013212938A (ja) * 2012-03-30 2013-10-17 Kaneka Corp 黒鉛薄膜およびその製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01218107A (ja) * 1988-02-25 1989-08-31 Sumitomo Electric Ind Ltd 高周波通信用アンテナ
JP2009107904A (ja) * 2007-10-31 2009-05-21 Kaneka Corp グラファイトフィルムおよびその製造方法
JP2010089344A (ja) * 2008-10-07 2010-04-22 Kaneka Corp グラファイト複合フィルム
JP2013187415A (ja) * 2012-03-08 2013-09-19 Fujitsu Ltd 薄膜グラファイトを含有する構造体の製造方法、及び電気部品
JP2013212938A (ja) * 2012-03-30 2013-10-17 Kaneka Corp 黒鉛薄膜およびその製造方法
JP2013189013A (ja) * 2013-03-28 2013-09-26 Kaneka Corp グラファイト複合フィルム

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017209469A1 (ko) * 2016-05-30 2017-12-07 주식회사 엔젤 전자석 및 그 제조방법
KR101937167B1 (ko) 2018-12-17 2019-01-10 주식회사 미다온 전력 손실 저감장치
CN109554130A (zh) * 2019-01-31 2019-04-02 常德力元新材料有限责任公司 一种石墨胶带及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6440295B2 (ja) 2018-12-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6406760B2 (ja) グラファイトシート、その製造方法、配線用積層板、グラファイト配線材料、および配線板の製造方法
JP5340637B2 (ja) グラファイト複合フィルム
EP3257811B1 (en) Smooth-surfaced graphite membrane and method for producing same
JP5744969B2 (ja) 多層グラファイトフィルムおよびその製造方法、電子機器、ディスプレイならびにバックライト
JP6440295B2 (ja) コイル
TWI690487B (zh) 石墨片之製造方法及石墨片用之聚醯亞胺膜
KR20180109937A (ko) 흑연막 및 흑연 테이프
US20180148339A1 (en) Fabrication of a roll of a graphite film based on a rolled polyimide film
JP5905766B2 (ja) 黒鉛薄膜およびその製造方法
US20200402850A1 (en) Wiring circuit and method for producing same
JP6424036B2 (ja) グラファイトの接合方法、およびグラファイト接着用積層体
JP2010234556A (ja) グラファイト・ポリイミド積層体
JP2008091463A (ja) 両面フレキシブル銅張積層基板及びキャリア付両面フレキシブル銅張積層基板の製造方法
CN117616073A (zh) 石墨片用的聚酰亚胺薄膜、石墨片和它们的制造方法
JP4324399B2 (ja) グラファイトフィルム及びポリイミドフィルム
WO2017018444A1 (ja) ビームセンサ用グラファイトシート、それを用いたビームセンサ用電極及びビームセンサ
US20150190982A1 (en) Graphite composite material
JP2012046368A (ja) グラファイトフィルムの製造方法
US10988384B2 (en) Graphite-sheet processed article and graphite sheet processed article manufacturing method
US20230111677A1 (en) Production method for graphite sheet, and polyimide film for graphite sheet
US20230128003A1 (en) Production method for graphite sheet, and polyimide film for graphite sheet
JPWO2005031767A1 (ja) 磁性基材の積層体およびその製造方法
US20220194801A1 (en) Surface layer porous graphite sheet
TWI784955B (zh) 撓性金屬貼合積層板之製造方法
JP5310345B2 (ja) 積層体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170620

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180615

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180626

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180822

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181113

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20181119

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181119

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6440295

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250