JP6440295B2 - コイル - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、厚さのバラツキが少なく、かつ高いキャリア移動度を有するグラファイトシートを導電部材として用いたコイルを提供することを目的とする。
仮に、粘着テープにより薄膜グラファイトを剥離すると、グラファイト表層に毛羽立ちや欠損を引き起こすことがある。グラファイト層に毛羽立ちや欠損があると、グラファイトシートの表層には凹凸ができて、角部や段差が生じる。そうすると、グラファイトシートのキャリア移動度が低下したり、角部や段差で不規則電流が発生したりする。また、粘着テープにより薄膜グラファイトを剥離する方法はグラファイトの厚さを制御できるものではなく、グラファイト全体の厚みを均一にすることは困難である。グラファイトシートの厚みが均一でないと、電気抵抗にバラツキが生じて局所的な発熱が起こる。
したがって、本発明では粘着テープによる表層剥離欠陥があるグラファイトシートを除くものとする。このため、グラファイト表層に毛羽立ちや欠損に由来するキャリア移動度の低下や不規則電流の発生を防止することが可能である。加えて、グラファイトシートの厚さのバラツキが少ないため、電気抵抗のバラツキによる局所的な発熱を抑えることができるほか、歩留まりが高いコイルを製造することができる。
V=100×|Tmax−Tave|/Tave・・・(1)
グラファイトシートの厚さのバラツキの好ましい範囲は、40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超である場合、キャリア移動度、電気伝導度が低下する傾向がある。
グラファイトシートの膜厚の測定は、グラファイトシートに少なくとも2本の探針を接触させて、この探針に一定電流を流したときの電圧を測定して、電気抵抗を算出することにより膜厚を求める電気抵抗式膜厚計を用いる。グラファイトシートが絶縁部材等の部材に固定されていて膜厚の測定が困難な場合には、例えば、予めクロロホルムやジメチルホルムアミド(DMF)、アセトンなどでグラファイトシート以外の部材を溶解する、あるいは処理温度1500℃以上で加熱・燃焼しグラファイトシート以外の部材を灰化することにより、グラファイトシートのみを取り出してから膜厚を測定する。
最初に本発明のグラファイトシート作製に用いられる高分子フィルム原料について記述する。本発明のグラファイトシート作製に好ましく用いられる高分子原料は芳香族高分子であることが好ましく、芳香族高分子が、ポリアミド、ポリイミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらのフィルムは公知の製造方法で製造すればよい。
本発明のグラファイトシートは、例えば芳香族高分子を成膜して厚さが60μm〜80nmまたは厚さが6μm〜80nmの範囲のフィルムにし、得られた芳香族高分子フィルムを2500℃以上の温度で熱処理することで得られてもよい。
以下、本発明の高分子原料として特に好ましい、芳香族ポリイミドフィルムの作製方法について詳述する。芳香族ポリイミドフィルムの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。特に、直線的で剛直な構造を有した高分子構造を持つほどポリイミドフィルムの配向性が高くなること、さらには入手性の観点から、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
前記原料溶液中の酸二無水物とジアミンとは、実質的には等モル量にすることが好ましく、モル比は例えば、1.5:1〜1:1.5、好ましくは1.2:1〜1:1.2、より好ましくは1.1:1〜1:1.1である。
本発明において、前記芳香族高分子の成膜時に添加されるフィラーの量は、芳香族高分子フィルム全体の0.1質量%以下であることが好ましく、実質的にフィラーを含まないことが最も好ましい。
次に、芳香族ポリイミドに代表される高分子フィルムの炭素化・グラファイト化の手法について述べる。本発明では出発物質である高分子フィルムを不活性ガス中で予備加熱し、炭素化を行う。不活性ガスは、窒素、アルゴンあるいはアルゴンと窒素の混合ガスが好ましく用いられる。予備加熱は通常1000℃程度の温度で行う。通常ポリイミドフィルムは500〜600℃付近で熱分解し、1000℃付近で炭素化する。予備処理の段階では出発高分子フィルムの配向性が失われないように、フィルムの破壊が起きない程度の面方向の圧力を加えることが有効である。
加圧下でグラファイト化反応を行う理由としては(1)加圧下での処理により厚さが不均一となるのを防止する、(2)表面が荒れるのを防止する、(3)熱処理炉のヒーターの長寿命化を実現する、の3点を挙げることが出来る。例えば、0.09MPa以下の圧力下、3000℃以上の温度で熱処理すると、シートから炭素が昇華しやすくなりシート表面が毛羽立ち、グラファイトが不均一に薄くなる場合がある。本発明の様に極めて薄いグラファイトシートを作製する場合には、シート全体で均一に厚さが減少することが重要であり、厚さを均一にするためにも3000℃以上の温度での熱処理を加圧下で行うことが重要である。
実施の形態1は、導電部材であるグラファイトシートと絶縁部材を個別に製造して交互に積層した後、所望の形状や大きさに加工する方法である。
実施の形態1では、導電部材として、高分子焼成法により作製されたグラファイトシート、及び絶縁部材として非磁性体の高分子材料から作製された絶縁シートを用いる。
実施の形態2は、導電部材であるグラファイトシートを絶縁部材上に一体化して形成し、内部電極を形成した後、内部電極が形成された絶縁部材を積層していく方法である。図5は、本発明の実施の形態2に係る積層体の斜視図である。
ビアホールを形成した後、必要に応じて水酸化ナトリウムや硫酸等によるデスミア処理、無電解メッキや電解メッキ等のメッキ処理等を行い、ビアホール内に導体を形成して層間を電気的に接続可能なものとする。
実施の形態3は、導電部材であるグラファイトシートと絶縁部材を積層して積層体を形成した後、この積層体の一辺から対向する辺に向かって積層体を巻き回していく方法である。
<膜厚>
原料である有機高分子シート、グラファイトシートの厚さは、フィルム(シート)の測定場所によって±5%程度の誤差があった。そのため得られたシートの10点平均の厚さを本発明における試料の厚さとした。薄膜グラファイトシートの膜厚の測定は、電気抵抗式膜厚計を用いた。
作製したグラファイトシートの密度は、ヘリウムガス置換式密度計[AccuPyc II 1340(株)島津製作所]によりグラファイトシートの体積を測定し、質量を別途測定し、密度(g/cm3)=質量(g)/体積(cm3)の式から算出した。なお、この方法で測定可能なグラファイトシートは500nm以上の厚さの試料であり、厚さ500nm未満のグラファイトシートの密度測定はこの測定手法では誤差が大きすぎて不可能であった。
グラファイトシートの電気伝導度の測定はファン・デル・ポー法によって行った。この方法は薄膜状の試料の電気伝導度を測定するのに最も適した方法である。この測定法の詳細は(第四版)実験化学講座9 電気・磁気(社団法人日本化学会編、丸善株式会社発行(平成3年6月5日発行))のP170に記載されている。この手法の特徴は、任意の形状の薄膜試料端部の任意の4点に電極をとり測定を行うことが出来ることであり、試料の厚さが均一であれば正確な測定が行える点である。本発明においては正方形に切断した試料を用い、それぞれの4つの角(稜)に銀ペースト電極を取り付けて行った。測定は(株)東洋テクニカ製、比抵抗/DC&ACホール測定システム、ResiTest 8300を用いて行った。
耐電流密度は作製したグラファイトシートを幅2mm、長さ20mmに切断し、その両端を電極間隔10mmとしたグラファイトブロック電極で挟み、そこに直流電流を印加して測定した。測定は不活性ガス(アルゴンまたは窒素)中、250℃の環境下で行った。比較のために10μm〜1μmの範囲の銅箔を準備し、同じ形状に切り出した銅箔の耐電流密度を測定しグラファイト試料との比較を行った。グラファイトシートの耐電流密度値が銅を上回った場合、当該グラファイトシートの耐電流密度特性を銅以上であるとした。10μm〜1μmの範囲の厚さの銅箔の耐電流密度は(線幅が2mmの場合)およそ1×106〜2×106A/cm2であった。ちなみに幅2mm、厚さ1μmの試料の場合20Aを印加した場合、60分後の電圧値が変化しなければその耐電流密度は1×106A/cm2と言うことになる。
本発明におけるグラファイトシートの厚さのバラツキV(%)は、上述した(1)式で表されるとおり、膜厚Tmaxと膜厚の算術平均値Taveとの差の絶対値に100を乗じた値を、膜厚の算術平均値Taveで除した値である。
グラファイトシートの熱拡散率は、周期加熱法による熱拡散率測定装置(アルバック理工株式会社「LaserPit」装置)を用いて、20℃、真空下(10-2Pa程度)、10Hzの周波数を用いて測定した。これはレーザー加熱の点から一定距離だけ離れた点に熱電対を取り付け、その温度変化を測定する方法である。ここで熱伝導率(W/m・K)は、熱拡散率(m2/s)と密度(kg/m3)と比熱(798kJ/(kg・K))を掛け合わせることによって算出した。ただし、この装置ではグラファイトシートの厚さが1μm以上で、面積が25mm2以上の場合は熱拡散率の測定が可能であった。しかし、グラファイトシートの厚さが1μm以下の場合や、グラファイトシートの面積が25mm2以下の場合では測定誤差が大きくなりすぎて正確な測定は不可能であった。
ピロメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成したポリアミド酸の18質量%のジメチルホルムアミド(DMF)溶液100gに無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布し、さらにワイヤバーを用いて厚さ調整を行った。この様な方法で50μmから1μmの範囲の厚さの異なるフィルムを調製した。1μm〜20nmの範囲の均一な厚さの高分子フィルムはこの様な方法では作製が困難であるため、スピンコーターを用いて、アミド酸溶液の濃度、回転数を変えることで厚さの異なる何種類かのフィルムを作製した。なお、本発明の実施例において特に記載のない場合には、製膜時にフィラー成分を一切添加しないで成膜しており、実質的にフィラー成分は0.1質量%以下である。
製造例1で作製した厚さの異なる8種類のポリイミドフィルム(高分子試料A、面積10×10cm2)を、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化シートを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で3000℃の処理温度(最高処理温度)まで昇温した。この温度で30分間(処理時間)保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイトシートを作製した(粘着テープによる表面剥離で作製したものではない)。処理はアルゴン雰囲気で0.10MPa(1.0kgf/cm2)の加圧下で行った。得られたグラファイトシートの面積は厚さの違いによって収縮、膨張の比率が異なるために一定ではなかったが、いずれも6.5×6.5cm2〜9.5×9.5cm2の範囲にあった。なお、実施例1〜8に示したキャリア移動度の値はいずれも試料を1cm×1cmの正方形に切り出し、試料の稜部分に電極をつけて測定したものである。
高分子試料Aを用い、厚さの異なるシートについて最高処理温度3000℃、3100℃、または3200℃とした以外は実施例1と同じ処理を行い、得られたグラファイトシートに関し、使用された高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、密度(g/cm3)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価を表1に示す。
実施例9〜11では、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の1〜2%となり、キャリア移動度はいずれも5000cm2/V・sec以上の特性を示した。
比較例1〜2(厚さ0.02μm)では、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超となり、キャリア移動度及び電気伝導度の一方または両方が低下した。このことから、グラファイトシートの厚さは、0.04μm(40nm)以上であることが好ましいと結論づけた。
比較例3(最高処理温度3200℃、厚さ0.02μm)でも、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超となった。この比較例3では、同じ厚さの比較例1(最高処理温度3000℃)、比較例2(最高処理温度3100℃)よりもキャリア移動度、電気伝導度が高くなる傾向が見られたが、より高いキャリア移動度、電気伝導度を達成する為には、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%以下を満たすことが必要であると考えられた。
高分子試料B、および高分子試料Cを用いた以外は実施例1と同じ方法で厚さの異なる幾つかの試料の炭素化・グラファイト化を行った。得られたグラファイトシートに関し、高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、密度(g/cm3)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価の結果を表1に示す。なお、この表に示した厚さのシートでは高分子試料Bでも、高分子試料Cでも3000℃、30分の熱処理を行えば、グラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下であり、キャリア移動度は5000cm2/V・sec以上であった。
実施例3で用いた試料(高分子試料A,厚さ1.2μm、最高処理温度3000℃、面積10×10mm2)を切断してより小さな正方形の試料を切り出し、すなわち測定面積5×5mm2(実施例18)、2×2mm2(実施例19)、1×1mm2(実施例20)、0.5×0.5mm2(実施例21)とし、それぞれの試料について、厚さ(μm)、密度(g/cm3)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)を測定し、耐電流密度評価を行った。その結果(実施例18〜21)を表1に示す。表1の結果から試料面積が大きくなっても小さくなってもキャリア移動度、膜厚のバラツキ、電気伝導度、熱伝導率の大きさはほとんど変わらないことが分かった。これは本発明のグラファイトシートが極めて均一な特性を持つことを示す結果である。
実施例3で用いたのと同じ厚さのポリイミドフィルム(高分子試料A)を原料として用い、電気炉を用いて窒素ガス中、10℃/分の速度で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化シートを円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で、それぞれ2800℃、または2900℃(最高処理温度)まで昇温した。この温度でそれぞれ30分間、または120分間(2時間)保持し、その後40℃/分の速度で降温し、グラファイトシートを作製した。処理はアルゴン雰囲気で0.05MPa(0.5kgf/cm2)の加圧下でおこなった。得られたグラファイトシートに関し、使用された高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、処理時間(分)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価の結果を表2に示す。2800℃または2900℃の処理では処理時間を30分または120分としても、グラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下であり、5000cm2/V・sec以上のキャリア移動度を実現できた。最高処理温度が高く、処理時間が長いとキャリア移動度、電気伝導度は若干高くなる傾向があるが、より高いキャリア移動度(特に8000cm2/V・sec以上)及びより高い電気伝導度を実現するためには3000℃以上の温度が好ましいと結論づけた。
厚さ25μm、または50μmのポリイミドフィルム(高分子試料A)を用い、最高処理温度3100℃30分、3200℃30分、3200℃120分としたこと以外は、実施例1と同じ条件で炭素化・グラファイト化を行った。得られたグラファイトシートの厚さはそれぞれ3100℃処理では12μm(実施例26)、28μm(実施例29)、3200℃処理では11μm(実施例28)、12μm(実施例27)、26μm(実施例31)、28μm(実施例30)であった。得られた結果を表2に示す。グラファイトシートの厚さが厚くなるに従い、キャリア移動度、電気伝導度の値が低下する傾向があったが、グラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下であり、キャリア移動度は5000cm2/V・sec以上であった。このことから、グラファイトシートの厚さが30μm以下であることが好ましいと結論した。
厚さ30nmのポリイミドフィルム(高分子試料A)を用い、最高処理温度3000℃30分、3100℃30分、3200℃30分、3000℃120分とした以外は、実施例1と同じ条件で炭素化・グラファイト化を行った。得られたグラファイトシートの厚さはそれぞれ3000℃30分処理では0.017μm(17nm)(比較例4)、3100℃30分処理では0.015μm(15nm)(比較例5)、3200℃30分処理では0.012μm(12nm)(比較例6)、3000℃120分処理では0.011μm(11nm)(比較例7)であった。得られたシートに関し、高分子試料、最高処理温度(℃)、厚さ(μm)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)、耐電流密度評価の結果を表2に示す。グラファイトシートの厚さが40nm未満になると、グラファイトシートの厚さのバラツキが膜厚の50%超となった。このことから、バラツキが膜厚の50%以下であることを実現するためにはグラファイトシートの厚さが40nm以上であることが好ましいと結論した。
実施例27で用いた試料(高分子試料A,厚さ12μm、最高処理温度3200℃、面積10×10mm2)を切断してより小さな正方形の試料を切り出し、すなわち測定面積5×5mm2(実施例32)、2×2mm2(実施例33)、1×1mm2(実施例34)、0.5×0.5mm2(実施例35)とし、それぞれの試料について厚さ(μm)、キャリア移動度(cm2/V・sec)、厚さのバラツキ(%)、電気伝導度(S/cm)、熱伝導率(W/m・K)を測定し、耐電流密度評価を行った。その結果(実施例32〜35)を表2に示す。実施例32〜35の結果は試料測定面積が小さくなればなるほどそのキャリア移動度は大きくなる傾向にあったが、この様に小さな面積の測定でもキャリア移動度は5000cm2/V・sec以上であり、グラファイトシートの厚さのバラツキは膜厚の50%以下であることを実現できた。
実施例4と同じ手法で、燐酸カルシウムのフィラー10質量%添加(参考例1)、フィラー1質量%添加(参考例2)、フィラー0.1質量%添加(参考例3)、実質的にフィラーを含まない高分子原料(実施例4)を用いて参考例1〜3の試料を作製し、その耐電流密度を比較した。実験はそれぞれの試料(実施例4、参考例1〜3)から1mm幅に測定サンプルを切り出し、任意に選別した10本について行った。実施例4ではこの様な測定を行ってもその耐電流密度に変わりは無かった。しかし、フィラー10質量%添加の試料では10本中3本が銅の耐電流密度以下で破断した。またフィラー1質量%添加の試料では10本中1本が破断した。フィラー0.1質量%添加試料、および実質的にフィラーを含まない試料では破断した試料は無かった。このことから高分子原料中のフィラー濃度は0.1質量%以下であることが必要で、実質的にフィラーなどの不純物を含まないことが好ましいことが分かった。
実施例4と同じ方法で、アルゴン雰囲気中常圧、3200℃の処理を常圧(加圧なし)で行った試料(参考例4)を作製し、実施例4の加圧下(0.1MPa(1.0kgf/cm2))で処理したものとの比較を行った。実験はそれぞれの試料(実施例4と参考例4)から1mm幅に測定サンプルを切り出し、任意に選別した10本についてその耐電流密度を測定することで行った。実施例4ではこの様な測定を行ってもその耐電流密度に変わりは無かった。しかし、参考例4では実施例4の試料の50%印加電流で破断した試料が1本存在した。これは参考例4の試料では3200℃の処理において部分的に厚さの薄い部分が形成されたためであろうと考えられる。すなわち、3000℃以上の温度での熱処理を加圧中で行うことが、厚さの均一なグラファイトフィルム作製のため有効な手段であることを示している。この様な現象は20nm以下の極めて薄いグラファイトの場合にはより顕著になると考えられ、グラファイトシートの薄さの限界を示すものであると考えられる。
実施例7で作製したグラファイトフィルム(厚さ0.06μm、キャリア移動度9100cm2/V・sec)を線幅1mm(参考例5、a−b面に対して垂直方向の断面積0.06×10-3mm2)、0.2mm(参考例6、a−b面に対して垂直方向の断面積0.012×10-3mm2)、0.1mm(参考例7、a−b面に対して垂直方向の断面積0.006×10-3mm2)の線状に加工し、その時の耐電流密度を測定した。耐電流密度はややばらついていたがいずれも2×106〜2×107A/cm2の範囲にあった。このことからグラファイト配線材料の線幅が変化しても耐電流密度は変わらないことが分かった。
同様に、厚さ0.06μmの銅箔を線幅1mm(参考例8)、0.2mm(参考例9)、0.1mm(参考例10)の線状に加工し、耐電流密度を測定した。耐電流密度は線幅1mmでは約2×106A/cm2、線幅0.1mmでは約1×106A/cm2、線幅0.02mmでは4×105A/cm2になり、銅線の場合には線幅(銅線断面積)が小さくなると耐電流密度が悪くなることが分かった。このことは微細配線回路においてはグラファイト配線材料が銅よりも耐電流密度の点で優れていることを示す。
<積層体の製造>
実施例3で作製したグラファイトシート(高分子原料A,厚さ1.2μm、キャリア移動度9800cm2/V・sec)を用いて積層体の作製を行った。
絶縁性基板として(株)カネカ製ポリイミド(厚さ12μm)、接着剤としてデュポン社製パイララックス(登録商標)LF0100(変性アクリル系接着剤シート;厚さ25μm)を貼り合わせた有機高分子フィルムを使用した。最初に、グラファイトシートと上記有機高分子フィルムを、熱ラミネータを用いて150℃で張り合わせて、積層体を作製した。
20:導電部材(グラファイトシート)
30:絶縁部材、31:絶縁シート、32:グリーンシート
40:コア材、40a:コア材左側部、40b:コア材中央部、40c:コア材右側部
50:内部電極、51:内部電極端部
60:外部電極
70:ビアホール、71:ビア電極
Claims (11)
- 導電部材と、絶縁部材とが積層されたコイルであって、
前記導電部材は、25℃におけるa−b面方向のキャリア移動度が9200cm2/V・sec以上であって、粘着テープによる表層剥離欠陥がなく、厚さのバラツキが膜厚の32%以下であるグラファイトシートであり、
前記グラファイトシートの厚さが100nm以上9.6μm以下であり、
前記グラファイトシートの面積は、9mm 2 以上であることを特徴とするコイル。 - 前記グラファイトシートは、芳香族高分子フィルムを炭素化した後、温度2500℃以上で熱処理することによって得られるものである請求項1に記載のコイル。
- 前記グラファイトシートは、芳香族高分子フィルムを炭素化した後、雰囲気圧力(ゲージ圧)が0.09MPa以上、温度3000℃以上で熱処理することによって得られるものである請求項1または2に記載のコイル。
- 前記芳香族高分子がポリイミド、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ベンズイミダゾベンゾフェナントロリンラダーポリマー、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一種である請求項2または3に記載のコイル。
- 前記グラファイトシートの電気伝導度が15000S/cm以上である請求項1〜4のいずれかに記載のコイル。
- 前記グラファイトシートの密度が、1.7g/cm3以上である請求項1〜5のいずれかに記載のコイル。
- 前記グラファイトシートの密度が、2.0g/cm 3 以上である請求項1〜6のいずれかに記載のコイル。
- 前記グラファイトシートの熱伝導率が1500W/m・K以上である請求項1〜7のいずれかに記載のコイル。
- 前記グラファイトシートの耐電流密度が2×106A/cm2以上である請求項1〜8のいずれかに記載のコイル。
- 前記絶縁部材の厚さが10nm〜1mmである請求項1〜9のいずれかに記載のコイル。
- 前記絶縁部材の一端面に2つの外部電極が形成されている請求項1〜10のいずれかに記載のコイル。
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