JP5586210B2 - グラファイトフィルムおよびグラファイト複合フィルム - Google Patents

グラファイトフィルムおよびグラファイト複合フィルム Download PDF

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Description

本発明は、電子機器、精密機器、航空機部材などの放熱フィルムおよびヒートスプレッダ材料として使用されるグラファイトフィルムおよびグラファイト複合フィルムに関し、特に発熱体からの熱を拡散し、且つ、断熱性に優れたグラファイトフィルムおよびグラファイト複合フィルムに関するものである。
近年、電子機器の半導体素子は、高性能化、高集積化が進む一方でサイズは小型化が進み、その発熱量も増大しており、その発熱は局所的なものとなっている。このような熱を拡散する材料として重要な位置づけを占めているのが、軽量で熱伝導性に優れたグラファイトフィルムである(特許文献1)。特に、高分子フィルムを熱処理して作製されるグラファイトフィルムは、グラファイトフィルムの面に対して平行な方向(以下、面方向と略す)に層状のグラファイト構造が高度に発達しており、グラファイトフィルムの面に対して垂直な方向(以下、厚み方向と略す)の熱伝導率に対して面方向の熱伝導率が100倍以上という高い異方性を有している。
グラファイトフィルムの使用形態において、面方向には熱を効率的に伝達し、厚み方向には熱を伝えない事を求められる事が多い。しかしながら、従来、厚み方向の伝熱性能を制御し、断熱効果を持たせることは十分には出来ていなかった。
特開昭61−275117号公報
本発明は、上記課題を解決し、フィルムの厚み方向の断熱性に優れたグラファイトフィルム及び、グラファイト複合フィルムを提供することを課題としている。
(1) 高分子フィルムを熱処理して作製されるグラファイトフィルムであって、該グラファイトフィルムの内部にグラファイトフィルムの面に対して平行な空間が形成されていることを特徴とするグラファイトフィルムである。
ここで、グラファイトフィルムの「内部」とは、「表層部」及び「中央部」をいう。グラファイトフィルムの「表層部」とは、グラファイトフィルムの厚さの厚さ方向についてグラファイトフィルム表面から1μmまでの範囲に存在するグラファイト層をいい、「中央部」とは、前記「表層部」以外の範囲に存在するグラファイト層をいう。
また、「グラファイトフィルムの面に対して平行な空間が形成されている」とは、「空間を挟んで相対する2つのグラファイト層が少なくとも200μm以上の範囲で、一方のグラファイト層に対する他方のグラファイト層の成す角度が15゜以下であること」をいう。
(2)グラファイトフィルムの面に垂直な断面における前記空間の厚みが3μm以上であることを特徴とする(1)に記載のグラファイトフィルムである。
(3)グラファイトフィルムの面に垂直な断面における前記空間の厚みの最小部分が3μm以上で、且つ、前記空間が200μm以上連続して形成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載のグラファイトフィルムである。
(4)前記空間の面積がグラファイトフィルムの面に平行な断面における面積の5%以上形成されていることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載のグラファイトフィルムである。
(5)前記グラファイトフィルムの表面粗さが3以下であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載のグラファイトフィルムである。
(6)前記グラファイトフィルムの面方向の熱伝導率が750W/m・K以上、厚さ方向の熱伝導率が10W/m・K以下、厚さが100μm以下であることを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載のグラファイトフィルムである。
(7)前記高分子フィルムの前記熱処理の温度は、2400℃以上であることを特徴とする(1)〜(6)の何れかに記載のグラファイトフィルムである。
(8)(1)〜(7)の何れかに記載の1又は2以上のグラファイトフィルムと、1又は2以上の樹脂層とを備えたことを特徴とするグラファイト複合フィルムである。
(9)高分子フィルムを熱処理して作製される1又は2以上のグラファイトフィルムと、1又は2以上の樹脂層とを備えたグラファイト複合フィルムであって、該グラファイトフィルムの内部にグラファイトフィルムの面に対して平行な空間が形成されていることを特徴とするグラファイト複合フィルムである。
(10)前記グラファイトフィルムの面方向の熱伝導率が750W/m・K以上、厚さ方向の熱伝導率が10W/m・K以下、厚さが100μm以下であることを特徴とする(9)に記載のグラファイト複合フィルムである。
(11)前記高分子フィルムの前記熱処理の温度は、2400℃以上であることを特徴とする(9)又は(10)に記載のグラファイト複合フィルムである。
(12)前記樹脂層は、絶縁層、粘着層および接着層からなる群から選択される何れかの層である(9)〜(11)の何れかに記載のグラファイト複合フィルムである。
(13)前記グラファイトフィルムに対し、その厚さ方向に引き剥がす力を加えることにより、前記グラファイトフィルムの内部に空間を形成することを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法である。
(14)前記グラファイトフィルムが圧縮処理もしくは圧延処理された後、グラファイトフィルムの厚さ方向に引き剥がす力を加えることにより、前記グラファイトフィルムの内部に空間を形成することを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法である。
(15)グラファイトフィルムと樹脂層とを有するグラファイト複合フィルムの製造方法であって、グラファイトフィルムおよび/またはグラファイト複合フィルムに対し、グラファイトフィルムの厚さ方向に引き剥がす力を加えることにより、前記グラファイトフィルムの内部に空間を形成することを特徴とするグラファイト複合フィルムの製造方法である。
(16)前記グラファイトフィルムに対し、微粘着テープを貼った後、前記微粘着テープを引き剥がすことにより、前記グラファイトフィルムの内部に空間を形成することを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法である。
(17)グラファイトフィルムと樹脂層とを有するグラファイト複合フィルムの製造方法であって、グラファイトフィルムおよび/またはグラファイト複合フィルムに対し、微粘着テープを貼った後、前記微粘着テープを引き剥がすことにより、前記グラファイトフィルムの内部に空間を形成することを特徴とするグラファイト複合フィルムの製造方法である。
本発明によれば、グラファイトフィルムの厚み方向の優れた断熱性が得られる。
高分子フィルムの複屈折の測定方法を示す平面図である。 グラファイト複合フィルムの評価方法を示す断面図である。 中央部に空間が形成されたグラファイトフィルムのSEM写真である。 表層部に空間が形成されたグラファイトフィルムのSEM写真である。 空間を有していないグラファイトフィルムのSEM写真である。 (a)及び(b)は、不均一に空間が形成されたグラファイトフィルムのSEM写真である。
本発明のグラファイトフィルムは、グラファイトフィルムの内部に、グラファイトフィルムの面に対して平行に形成された空間を有しているものである。
ここで、高分子フィルムを熱処理して作製されるグラファイトフィルムとは、一般的に500W/m・K以上の熱伝導率を有するグラファイトフィルムを示す。
(グラファイトフィルムの厚さ)
本発明のグラファイトフィルム及び本発明のグラファイト複合フィルムを構成するグラファイトフィルムの厚みに制限はないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。厚さの薄いグラファイトフィルム、具体的には厚さが、100μm以下のグラファイトフィルムは厚さ方向に熱が伝わりやすい傾向があるので、空間を設けた場合の温度低減効果は、厚さの厚いグラファイトフィルムに比べて相対的に大きなものになる。
(グラファイトフィルムの厚さ測定)
グラファイトフィルムの厚さは、厚さゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HElDENH:AIN−CERTO)を用いて、25℃の恒温室にて50mm×50mmのフィルムの任意の10点における平均厚さとして測定される。
(グラファイトフィルムの面方向の熱伝導率)
本発明におけるグラファイトフィルムの面方向の熱伝導率は750W/m・K以上であり、900W/m・K以上、1100W/m・Kであることがより好ましい。グラファイトフィルムの層間に空間を設けると、空間を設けていないグラファイトフィルムに比べ、厚さ方向の断熱性は高くなる。グラファイトフィルムの熱伝導率が、750W/m・K以上であれば、面方向に熱を十分に拡散させることができ、その結果としてフィルムの厚さ方向に熱が伝わることを抑制することができる。
(グラファイトフィルムの面方向の熱伝導率の算出)
グラファイトフィルムの熱伝導率は、次式(1)によって算出することができる。
ここで、Aは熱伝導率、αは熱拡散率、dは密度、そしてCpは比熱容量をそれぞれ表わしている。なお、グラファイトフィルムの熱拡散率、密度、および比熱容量は以下に述べる方法で求めることができる。
(光交流法によるグラファイトフィルムの面方向の熱拡散率測定)
グラファイトフィルムの熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用い、4mm×40mmの形状に切り取ったグラファイトフィルムのサンプルについて、20℃の雰囲気下で10Hzの交流条件で測定した。
(グラファイトフィルムの比熱測定)
グラファイトフィルムの比熱測定は、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製の熱分析システムである示差走査熱量計DSC220CUを使用して、20℃から260℃まで10℃/minの昇温条件で測定を行なった。
(グラファイトフィルムの厚さ方向の熱伝導率)
本発明におけるグラファイトフィルムの厚さ方向の熱伝導率は、10W/m・K以下であればよい。厚さ方向の熱伝導率が10W/m・K以下であれば、発熱部品から厚さ方向への熱伝導が抑制され、面方向に拡散する熱の割合が大きくなる。
(グラファイトフィルムの厚さ方向の熱伝導率測定)
熱拡散率および熱伝導率測定は、Bruker製のナノフラッシュを用い、グラファイトフィルムを直径25.4mmにカットした試験片により、室温でレーザーフラッシュ法に基づいて行った。また、グラファイトフィルムの熱容量を熱容量が既知である参照標準物質Moとの比較から求めた。これらの測定したグラファイト複合フィルムの熱伝導率は、熱拡散率、密度、および比熱により、下式(2)に基づいて算出した。
ここで、λ:熱伝導率(W/mK)
α:熱拡散率(m2/s)
d:密度(kg/m3)
C:比熱(J/kg・K)
厚さ方向の熱拡散率および熱伝導率の値が大きいほど、厚さ方向の熱伝導性が高いことを意味している。
<グラファイトフィルムの作製>
(グラファイトフィルム)
本発明において好適に用いられるグラファイトフィルムは、高分子フィルムを熱処理することによって製造することができる。グラファイトフィルムの製造に適した高分子フィルムとしては、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾールのうちから選ばれた少なくとも一種類以上の高分子フィルムを例示することができる。
特に、高分子フィルムとして好ましいのは、ポリイミドフィルムである。ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりも、炭化および黒鉛化によりグラファイトの層構造が発達し易いためである。
さらに、本願発明ではポリイミドフィルムの複屈折について特に制限はないが、複屈折が0.08以上であれば、フィルムの炭化、黒鉛化が進行し易くなるため、グラファイトの層が発達したグラファイトフィルムが得られ易くなり、層同士が平行に形成されやすく、厚み方向に力を加えた際に、層間が剥がれやすくなり、グラファイトフィルムの面に対して平行な空間を形成しやすい。また、ポリイミドフィルムの複屈折がより高い方が、得られるグラファイトフィルムの面方向の熱伝導率、電気伝導率、熱拡散係数などが高くなるために好ましい。
また、グラファイトフィルムの厚みが薄ければ、例えばグラファイトフィルムの一面に熱源を接触させた場合に、熱源の影響を受けてグラファイトフィルムの他面の表面温度が十分に低減されないことがあるが、このような場合において、本発明の空間を有するグラファイトフィルムは、他面の表面温度を効果的に低減させることができる。
(複屈折)
ここにいう複屈折とは、フィルム面内の任意方向の屈折率と厚さ方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意方向Xの複屈折△nxは次式(3)で与えられる。
(複屈折の測定)
高分子フィルムの複屈折は、25℃の雰囲気下で、メトリコン社製の屈折率・膜厚測定システム(型番:2010、プリズムカプラ)を使用して測定できる。測定は、波長594nmの光源を用い、TEモードとTMモードでそれぞれ屈折率を測定し、その差(TE−TM)の値を複屈折の値とすることができる。なお、前述の「フィルム面内の任意方向X」とは、例えばフィルム形成時における材料流れの方向を基準として、図1のように、X方向が面内の0°方向、45°方向、90°方向、135°方向のどの方向においても、の意味である。従って、複屈折の測定は、上記装置に、サンプルを0°方向、45°方向、90°方向、135°方向でセットし、各角度で複屈折を測定し、その平均を複屈折とするのが好ましい。
(炭化および黒鉛化)
高分子フィルムからグラファイトフィルムを得るには、炭化工程、黒鉛化工程は連続で行われても良いし、非連続で行われても良い。炭化工程では、出発物質である高分子フィルムを減圧下もしくは不活性ガス中で予備加熱処理して炭化する。この炭化は、通常1000℃程度の温度で行う。炭化工程の次の黒鉛化工程は、減圧下もしくは不活性ガス中で行われるが、不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムが適している。本発明の製造方法における黒鉛化の熱処理温度としては、最低でも2400℃以上、より好ましくは2600℃以上、さらに好ましくは2800℃以上であり、特に好ましくは、2900℃以上である。2400℃以上に熱処理すると、グラファイトの層が発達し、層状構造を形成するために、厚み方向に力を加えた際に、層間が剥がれやすくなり、空間を形成しやすいグラファイトフィルムとなる。
<樹脂層>
本発明のグラファイト複合フィルムは、上記のグラファイトフィルムに加えて、樹脂層を有している。樹脂層は1層であっても、2層以上であってもよい。樹脂層には、図2、符号3、5で示される、保護層、絶縁層、粘着層、接着層等の機能を持たせることができる。
(保護層)
図2、符号3で示される、グラファイトフィルム1を保護するための層であり、公知の各種フィルムを使用することができる。保護層は、グラファイトフィルム1の少なくとも片面に形成することが好ましい。
(絶縁層)
本発明の絶縁層は、図2、符号3で示されるように用いられ、導電性を有するグラファイトフィルム1が電子機器内で用いられる場合に、電子部品との接触により生ずるショートを防ぐ目的で設けられる。絶縁層としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの樹脂フィルムの片面に、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系、ポリイミド系等の粘着材や接着材が形成された絶縁テープが好ましい。また、ポリエステル系などのホットメルトタイプ(熱可塑性)のテープであってもよい。エポキシ、フェノールまたはゴム系の塗料などを用いてコーティングによって絶縁層を形成してもよい。
(粘着層)
グラファイトフィルム1を筐体や電子部品等に固定する場合、図2、符号5で示されるように用いられ、粘着材や両面テープにより貼り付けられる。粘着材の材質としては、アクリル系、シリコーン系等の樹脂がある。また両面テープとしては、樹脂フィルムに粘着材が塗布されたものを使用することができる。
(接着層)
また、グラファイトフィルム1を筐体や電子部品等に固定する場合、図2、符号5で示されるように用いられ、接着材により貼り付ける場合もある。接着材の材質としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等を使用することができる。
(空間)
本発明のグラファイトフィルムおよびグラファイト複合フィルムにおいては、グラファイトフィルムと空間とを設けることによって、空間が厚さ方向に熱抵抗性を発揮して断熱効果を奏する。特に、面方向にグラファイト層が発達し、面方向の熱伝導率が750W/m・K以上のグラファイトフィルムを用いた場合、厚さ3μm以上、好ましくは5μm以上の空間が存在すれば、厚さ方向への熱伝導が大きく抑制される。換言すれば、発熱部品からの熱を空間によって断熱し、さらに、グラファイトフィルムにより熱を拡散させて均一化することによって、筐体の温度上昇を抑制することが可能となる。さらに、グラファイトフィルムに断熱材を積層する場合のように、グラファイトフィルムと断熱材との貼り合わせが不良となる、使用時に層間剥離が生じる、各層の線膨張係数の違いから高温度下でのひずみが生じる、といった問題を改善することができる。また、余分な断熱材を使用することなく、容易に薄くて放熱性および断熱性に優れたフィルムを作製することができる。
(空間の形態)
本発明の空間は、連続し、該空間がグラファイトフィルムの面に対して平行に設けられることが好ましい。このように空間を設けることにより、グラファイト層の配向の乱れを抑えることができ、グラファイトフィルムの面方向への熱拡散の能力を保持しつつ、空間により厚さ方向の断熱を図ることができる。本発明において、空間とは、グラファイト層の間に3μm以上の空隙が存在する状態をいい、厚み方向の断熱効果を奏するために、空間の厚さは3μm以上であることが好ましく、5μm以上、10μm以上、20μm以上、50μm以上が特に好ましい。ここで空間の厚みとは、空間の平均厚みのことをいう。またこの空間は、1.0mm以上連続して形成されていることが好ましく、5.0mm以上、10mm以上、50mm以上連続して形成されていることが特に好ましい。ここで、本発明においてはグラファイト層の少しの破れであれば許容することができ、この空間には、体積密度5.0mass%以内であればグラファイト層が混在していても良い。また平行とは、グラファイトフィルムの面と空間を形成している2つのグラファイト層との角度が15°以下である状態のことをいう。
空間の面積とは、グラファイトフィルムの面に平行な断面における面積、即ち、グラファイトフィルムの厚み方向に垂直な面にグラファイトフィルムを切断した場合に切断面に現れるグラファイト以外の部分(空間に相当する箇所)の面積をいう。
空間の形成される面積は、グラファイトフィルムの面積の5%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%以上である。空間の面積がグラファイトフィルムの面積の5%以上存在すれば、グラファイトフィルムの厚み方向への熱伝導を効果的に阻害することができる。
また、空間は、グラファイトフィルム表面の最高温度となる部分の内部、例えば、グラファイトフィルムが発熱体と接触している部分の内部に形成されていることが好ましい。熱量の一番多い部分に空間が形成されていることで、断熱効果がより発揮され、グラファイトフィルムの面方向への熱の拡散がより促進されるために良い。
空間を形成する場所は、グラファイトフィルムの内部である。
(空間の形成方法)
グラファイトフィルムおよび/またはグラファイト複合フィルムに微粘着テープを貼り合わせ、この微粘着テープを引き剥がしてフィルムの厚さ方向に引き剥がす力を加えることによって、グラファイトフィルムに空間を形成することができる。空間の形成は、高分子フィルムを熱処理後、得られるグラファイトフィルムを圧延および/または圧縮した後に行うのがよい。特に、結晶性に優れたポリイミドフィルムを原料とするグラファイトフィルムにおいては、グラファイト層が高度に発達しているため、上記のように粘着テープや微粘着テープ等を貼付して剥がした際、層間が剥がれ易く、空間を形成しやすい。また、高分子フィルムを熱処理後、得られるグラファイトフィルムを圧延および/または圧縮することで、熱処理後のグラファイトフィルム中に不均一に存在する空間を除去することができ、その後、厚み方向に引き剥がす力を加えることでグラファイトフィルムの面に平行な空間を形成することができる。
(空間の種類)
空間の種類として、本発明のような(1)グラファイトフィルムの面に対して平行な空間と(2)不均一に形成された空間がある。
(1)グラファイトフィルムの面に対して平行な空間・・・本発明の空間は、厚み3μm以上の空間が、グラファイトフィルムの面に対して平行に設けられることを特徴とし、この空間は、200μm以上連続していることが好ましく、1mm以上連続していることがより好ましい。このような空間の形成方法としては、グラファイトフィルムの層間を剥離させることによる形成方法やグラファイトフィルムを二枚以上重ねることによる形成方法などが考えられる。しかし、グラファイトフィルムを単純に二枚以上重ねるような空間の形成方法の場合、グラファイトフィルム間に空間が形成されるが、空間厚みはわずかであり、厚みの厚い空間を形成することは難しく、厚み方向への断熱効果を大きくすることは難しい。また、グラファイトフィルム間に部分的に粘着剤などを形成し、グラファイトフィルム間に空間を形成する方法も考えられるが、グラファイトフィルムを二枚以上重ねる場合、グラファイトフィルムを数枚使う必要があり、コスト的に高くなってしまう。また、より薄いグラファイト複合フィルムを作成しようとした場合、グラファイトフィルムを二枚以上重ねて作成する方法では、厚くなりがちである。
(2)不均一に形成された空間・・・不均一に形成された空間は、図6(a)及び(b)に示すように大きさ、形などが不均一な空間がいくつも存在しており、それらの厚みは一定ではなく、また、空間の長さは、1mm以上のものは存在していなかった。また、不均一に形成された空間では、グラファイト層がグラファイトシートの厚さ方向への成長が目立ち、本発明のようなグラファイトフィルムの面に平行に形成されたグラファイトフィルムに比べ、厚み方向へ熱を伝達しやすくなると考えられる。また、不均一に形成された空間により、表面粗さが大きくなり発熱源との接触が悪くなり、発熱源に熱がこもりやすくなり、温度低減効果が少なくなると予測される。
<微粘着テープ>
(微粘着テープの基材)
基材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリエステルなどの樹脂フィルムが良い。PETなどの剛性弾性率の高い樹脂フィルムを用いると、層間の剥がれが大きくなり、空間が大きくできやすい。また、PEなどの比較的弾性率の低い樹脂フィルムを用いると、引き剥がし部分の樹脂フィルムがよりしなり、引き剥がしの力を分散させるために、空間はコシのあるフィルムに比べて小さくなる。さらに、同じ基材であってもその厚みが薄くなれば、コシは小さくなるので、空間もより小さく形成される。
(引き剥がし角度)
微粘着テープの引き剥がし角度に規定はないが、角度が大きくなるとグラファイトフィルムの層間剥離はより小さくなり、空間もより小さく形成される。
(微粘着テープの粘着層)
粘着層としては、アクリル系、シリコーン系等の粘着材が好ましい。粘着層の厚みとしては、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下である。この範囲であれば、効果的にグラファイトフィルムに空間を形成することができ、グラファイトフィルムやグラファイト複合フィルムから剥がれなくなるといったこともないために良い。また、粘着層の厚みが厚いほど、粘着力が強くなるために、空間はより大きく形成されることになる。
(空間の形成される場所)
空間の形成される場所としては、グラファイトフィルム内部が考えられるが、これらは微粘着テープを貼る場所によって制御できる。具体的には、(1)グラファイトフィルムに微粘着テープを貼り合わせた後引き剥がす場合には、空間はグラファイトフィルム中央部に形成されやすい。(2)グラファイトフィルムと樹脂層からなるグラファイト複合フィルムに微粘着テープを貼り合わせた後引き剥がす場合には、空間はグラファイトフィルム表層部に形成されやすい。これは、グラファイトフィルムに直接微粘着テープを貼ることで、微粘着テープを引き剥がしたときの力がグラファイトフィルム内部にまで及ぶためで、グラファイト複合フィルムの状態で同様の操作を行うと、引き剥がしの力がグラファイト内部まで達せず、表層部のみに及ぶためであると考えられる。
(グラファイトフィルムの表面粗さ)
グラファイトフィルムの表面粗さが小さければ、発熱体との接触面積が大きくなるため、発熱体からの熱を効率よくグラファイトフィルムに伝達することができる。
表面粗さを小さくする方法としては、グラファイトフィルムをグラファイト化の後に圧縮処理または圧延処理を行うと良い。特に圧縮処理を行った場合は、面でフィルムに圧力をかけるため、表面がより平坦になり、表面粗さを小さくすることができるために良い。ここで、「圧延処理」とは、グラファイトフィルムの厚さより小さい間隙を有する2本のロールの間を通過させることをいう。
グラファイトフィルムの表面粗さRaは、JIS B 0601に基づいて得られる値である。具体的には、表面粗さ測定機SE3500((株)小坂研究所製)を使用し、25℃の雰囲気下で表面粗さRaを測定した。グラファイトフィルムの表面粗さRaは、グラファイトフィルムを長さ100mm×幅3mmのサイズに切り取り、カットオフ0.8mm、送り速度2mm/secとしてチャートを描かせ、基準長さLの部分を切り取り、その切り取り部分の中心線をX軸、縦方向をY軸として、粗さ曲線Y=f(X)で表したとき、次の式(4)で得られる値をμmで表したものである。
この測定は、基準長(L)を80mmとする3個の試料について行い、その平均値を算出したものを、本明細書における「表面粗さRa」とする。
以下に実施例により発明の実施態様、効果を示すが、本願発明はこれに限られるものではない。
<グラファイトフィルム>
[グラファイトフィルムA]
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ピロメリツト酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリンおよびDMFを含むイミド化触媒を添加し、脱泡を行った。次に、この混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布した。次に、アルミ箔上の混合溶液層を熱風オーブンおよび遠赤外線ヒーターを用いて乾燥させた。以上により、厚さ75μmのポリイミドフィルム(弾性率3.1GPa、吸水率2.5%、複屈折0.10、線膨張係数3.0×10−5/℃)を製造した。
このようにして作製したポリイミドフィルムを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで昇温して炭化処理(炭素化処理)を行った。炭素化処理により得られた炭素化フィルムAを黒鉛板に挟み、黒鉛化炉を用いて、昇温速度1℃/mimで2900℃まで昇温して黒鉛化処理を行い、グラファイトフィルムA(厚さ60μm)を得た。
[グラファイトフィルムAa]
グラファイトフィルムAを20MPaの圧力で単板プレスにて厚さ方向に圧縮して、グラファイトフィルムAa(厚さ37μm)を得た。
[グラファイトフィルムAb]
グラファイトフィルムAを圧延処理により厚さ方向に圧延することにより、グラファイトフィルムAb(厚さ37μm)を得た。ここでの圧延処理とは、ローラ間隔37μmに設定した、2本のステンレス製のロールの間を通過させる事によって行われる処理のことをいう。
[グラファイトフィルムB]
黒鉛化処理を昇温速度2℃/mimで行ったこと以外はグラファイトフィルムAと同様にして、グラファイトフィルムB(厚さ100μm)を得た。
[グラファイトフィルムCa]
厚さ50μmのポリイミドフィルムを用いたこと以外はグラファイトフィルムAaと同様にしてグラファイトフィルムCa(厚さ25μm)を得た。
[グラファイトフィルムDa]
厚さ25μmのポリイミドフィルムを用いたこと以外はグラファイトフィルムAaと同様にしてグラファイトフィルムDa(厚さ10μm)を得た。
[グラファイトフィルムE]
酸化処理(過酸化水素、過塩素酸等)の存在下、天然鱗状黒鉛の層間に、硫酸、硝酸等を挿入し、形成された層間化合物を900〜1200℃程度の高温で急激に加熱することで分解ガス化し、このときのガス圧によって黒鉛の層間を拡げて黒鉛を膨張させた。以上のようにして得られた膨張黒鉛を圧縮予備成形し、その後ロールで圧延することによりグラファイトフィルム(厚さ100μm)を得た。
[PETテープ]
厚さ10μm(PET:6μm/アクリル系粘着剤:4μm)のPET(ポリエチレンテレフタレート)テープを用いた。
[両面テープ]
厚さ10μm(アクリル系粘着剤:4μm/PET:2μm/アクリル系粘着剤:4μmの両面テープを用いた。
[微粘着テープA]
厚さ76μm(PET:70μm/アクリル系粘着剤:6μm)のPETテープ(45mm×45mm)を用いた。
[微粘着テープAa]
厚さ76μm(PET:70μm/アクリル系粘着剤:6μm)のPETテープ(30mm×30mm)を用いた。
[微粘着テープB]
厚さ31μm(PET:25μm/アクリル系粘着剤:6μm)のPETテープ(45mm×45mm)を用いた。
[微粘着テープC]
厚さ76μm(PET:70μm/アクリル系粘着材:6μm)のPETテープ(45mm×45mm)を用いた。
[微粘着テープD]
厚さ80μm(PET:70μm/アクリル系粘着材:10μm)のPETテープ(45mm×45mm)を用いた。
<評価方法>
グラファイト複合フィルムは、図2に示すように、グラファイトフィルム1の一方の面に保護フィルム3を、他方の面に接着層5を設けた構成である。発熱体2(10mm×10mm、厚さ1mm、1W)を、エポキシ樹脂製基板4(50mm×50mm、厚さ1mm)の中央部に固定した。グラファイト複合フィルム7(51mm×51mm)は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂製の支持体6(60mm×60mm、厚さ1.5mm)に貼り合わせた後、グラファイト複合フィルム7が発熱体2に接触するように配置した。この状態では、発熱体2の中央部とグラファイト複合フィルム7の中央部とが対向している。発熱開始から600秒経過後(定温状態となったとき)の発熱体2の中心部の温度(℃)および支持体6の外面中央部(この部分は発熱体2の中心部の真上に位置する)の温度(℃)を測定することにより、放熱および断熱特性を評価した。
支持体6の外面中央部の温度の評価は、40℃未満の場合を「◎」、40℃〜45℃の場合を「○」、45℃〜50℃の場合を「△」、50℃より高い場合を「×」とした。
発熱体2の中心部の温度の評価は、45℃未満の場合を「◎」、45℃〜50℃の場合を「△」、50℃より高い場合を「×」とした。
厚みの評価は、グラファイト複合フィルム7の総厚みが100μm未満の場合を「〇」、100〜200μmの場合を「△」とした。
(実施例1)
グラファイトフィルムAa(50mm×50mm)の片面に微粘着テープAを貼り合わせた後、90゜、速度100mm/minで引き剥がすことにより、中央部に空間を有するグラファイトフィルムを作成した。このグラファイトフィルムをPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、中央部に空間を有するグラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(実施例2)
グラファイトフィルムAa(50mm×50mm)の片面に微粘着テープAaを貼り合わせた後、90゜、速度100mm/minで引き剥がすことにより、中央部に空間を有するグラファイトフィルムを作成した。このグラファイトフィルムをPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、中央部に空間を有するグラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(実施例3)
グラファイトフィルムAa(50mm×50mm)の片面に微粘着テープBを貼り合わせた後、90゜、速度100mm/minで引き剥がすことにより、中央部に空間を有するグラファイトフィルムを作成した。このグラファイトフィルムをPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、中央部に空間を有するグラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(実施例4)
グラファイトフィルムAa(50mm×50mm)の片面に微粘着テープAを貼り合わせた後、180゜、速度100mm/minで引き剥がすことにより、中央部に空間を有するグラファイトフィルムを作成した。このグラファイトフィルムをPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、中央部に空間を有するグラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した.その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(実施例5)
グラファイトフィルムAa(50mm×50mm)の片面に微粘着テープCを貼り合わせた後、180°、速度100mm/minで引き剥がすことにより、中央部に空間を有するグラファイトフィルムを作成した。このグラファイトフィルムをPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、中央部に空間を有するグラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(実施例6)
グラファイトフィルムAb(50mm×50mm)の片面に微粘着テープAを貼り合わせた後、180°、速度100mm/minで引き剥がすことにより、中央部に空間を有するグラファイトフィルムを作成した。このグラファイトフィルムをPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、中央部に空間を有するグラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(実施例7)
グラファイトフィルムAa(50mm×50mm)の片面に微粘着テープDを貼り合わせた後、90°、速度100mm/minで引き剥がすことにより、中央部に空間を有するグラファイトフィルムを作成した。このグラファイトフィルムをPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、中央部に空間を有するグラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(実施例8)
グラファイトフィルムAa(50mm×50mm)の片面をPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。この評価用サンプルのPETテープ側に微粘着テープAを貼り合わせた後、90゜、速度100mm/minで引き剥がすことにより、グラファイトフィルムの表層部に空間を有するグラファイト複合フィルムの評価用サンプルを作成した。この評価用サンプルについての評価結果を表1及び表2に示した。
(実施例9)
グラファイトフィルムAa(50mm×50mm)の片面に微粘着テープAを貼り合わせた後、90°、速度100mm/minで引き剥がすことにより、中央部に空間を有するグラファイトフィルムを作成した。このグラファイトフィルムをPETテープの粘着面に載せた。次に、この複合フィルムと両面テープとを貼り合わせ、中央部に空間を有するグラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。この評価用サンプルのPETテープ側に微粘着テープAを貼り合わせた後、90°、速度100mm/minで引き剥がすことにより、グラファイトフィルムの中央部と表層部とに空間を有するグラファイト複合フィルムの評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルについての評価結果を表1及び表2に示した。
(実施例10)
グラファイトフィルムCa(50mm×50mm)をPETテープの粘着面に載せた。次に、グラファイトフィルムDaの片面に両面テープを貼り合わせ、先ほど作成したグラファイトフィルム/PETテープ複合フィルムとをグラファイトフィルム同士が対向し、重なるようにして貼り合わせた。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(比較例1)
PETテープの粘着面にグラファイトフィルムAa(50mm×50mm)を載せた。次に、この複合フィルムと両面テープ(粘着層)とを貼り合わせ、グラファイトフィルムの片面にPET絶縁層、片面に粘着層が形成されたグラファイト複合フィルムを作製した。その後、51mm×51mmの大きさにサンプルを切り取り、その周囲1mmが絶縁層と粘着層で被覆された評価用サンプルを作成した。評価結果は表1及び表2に示した。
(比較例2)
グラファイトフィルムAb(50mm×50mm)を用いたこと以外は、比較例1と同様にグラファイト複合フィルムを作製し、評価用サンプルを得た。評価結果は表1及び表2に示した。
(比較例3)
グラファイトフィルムA(50mm×50mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にグラファイト複合フィルムを作製し、評価用サンプルを得た。評価結果は表1及び表2に示した。
(比較例4)
グラファイトフィルムB(50mm×50mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にグラファイト複合フィルムを作製し、評価用サンプルを得た。評価結果は表1及び表2に示した。
(比較例5)
グラファイトフィルムE(50mm×50mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にグラファイト複合フィルムを作製し、評価用サンプルを得た。評価結果は表1及び表2に示した。
(比較例6)
放熱材を用いず、ブランク状態において測定を行った。評価結果は表1及び表2に示した。
(電子顕微鏡写真の結果)
図3は、中央部に空間が形成されたグラファイトフィルムのSEM写真であり、実施例1のようにグラファイトフィルムに直接微粘着テープを貼った後、剥がすことで、グラファイトフィルム中央部に空間が形成されていることがわかる。図4は、表層部に空間が形成されたグラファイトフィルムのSEM写真であり、実施例7のようにグラファイト複合フィルムに微粘着テープを貼った後、剥がすことで、グラファイトフィルム表層部に空間が形成されていることがわかる。図5は、空間を有していないグラファイトフィルムのSEM写真であり、比較例1のように圧縮処理することで、空間がなくなっていることがわかる。図6(a)及び(b)は、不均一に空間が形成されたグラファイトフィルムのSEM写真であり、比較例4のように高分子フィルムを熱処理した後、圧縮処理や圧延処理を行わなわない状態では、空間が不均一に存在している様子がわかる。
<評価結果>
(支持体外面中央部温度)
(1)空間の存在…空間を設けた実施例1〜9は、空間を設けていない比較例1、2と比較して、支持体外面中心温度は低くなった。これは、空間によるフィルムの厚さ方向における断熱効果により、支持体外面への熱伝導が抑制されたためであると考えられる。
(2)空間の形態…また、いずれも空間を有している実施例1〜9と比較例3〜5を比較した場合、実施例1〜9の方が支持体外面中心温度は低くなった。比較例3〜5の場合、空間は存在するものの、グラファイトフィルム中に不均一に存在しているため、グラファイトの層構造を乱しており、さらに、部分的には厚さ方向にグラファイトの層の接触も存在するため、厚さ方向の熱を遮断しきれず、温度が上昇してしまうものと思われる。また、比較例3,4のように未処理(発泡したまま)のグラファイトフィルムは、フィルム中に不均一に空間が存在するため、フィルム表面が粗く、発熱体との接触が不十分となり、発熱体から発生した熱のグラファイトフィルムへの拡散が不十分であるという問題点もある。比較例5の場合、膨張黒鉛から作成されたグラファイトフィルムもフィルム中に空間を有しているものの、このようにして作成されたグラファイトフィルムは、高分子を熱処理して作成されるグラファイトフィルムに比べ、グラファイト層の乱れが大きく、且つ、空気層も不均一に存在するため、温度低減効果が低いと考えられる。一方、実施例1〜9のグラファイトフィルムは、その面に平行に空間を設けたことにより、グラファイトフィルムの層構造の乱れを極力抑えることができ、面方向への熱拡散も十分に行われると考えられる。
空間の長さとしては、実施例1と実施例2に比較から長さが長く、空間の範囲が広い実施例1の方が温度低減効果が大きかった。このことから、より広い空間を形成することで厚み方向への断熱効果が大きいといえる。
携帯電話などでは、低温火傷予防を目的として、外部に熱を伝え過ぎないような配慮することが求められる場合があるが(実際に42℃以下に制限される場合がある)、空間を設けた本発明のグラファイト複合フィルムを使用することによりこのような要望に応えることができる。
(発熱体中心部温度)
本発明のグラファイト複合フィルムを使用する場合の発熱体中心部温度(発熱体温度)は、100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、43℃以下であることが最も好ましい。発熱体中心部温度が100℃以下であると、発熱する部品は破損することなく正常に機能することができる。
発熱体中心部温度は、空間を設けたもののほうが、高くなっていることがわかる。携帯電話などの小型電子機器に使用される発熱量の小さな(出力2W以下)半導体チツプは、耐熱性に関しては余裕があるために、発熱体温度の上昇をある程度は犠牲にして、外部に熱を伝えすぎないよう空間を設けた構造をとることが有用であると言える。ただし、グラファイトフィルムを用いていない比較例6に比べ、何れの実施例も発熱体中心温度は大幅に低減しており、この結果から、グラファイトフィルムを用いることにより、発熱体からの熱は効率的に除去されているといえる。
(その他)
微粘着テープの厚さの影響については、同じPET製のテープで厚さが異なるものを使用した実施例1と実施例3とを比較すると、テープの厚さが厚い場合の方が層剥離が起こり易いことが分かる。
また、微粘着テープが同じ厚さであっても、PEの方がPETより柔らかいため、層剥離は起こり難くなっていることが分かる。
また、実施例1と実施例7との比較から、層剥離に使用するテープの粘着性が大きい方が層剥離が起こり易いことが分かる。
更に、微粘着テープを剥離させる角度については、実施例1と実施例4との比較から、180゜より90゜の方が層剥離が起こり易いことが分かる。
また、空間を形成する位置については、グラファイトフィルム自体に微粘着テープを貼り合わせて引き剥がすことによりグラファイトフィルム中央部に空間を形成した実施例1と、グラファイトフィルムにPETテープと両面テープを貼り合わせた複合フィルムの状態でこのPETテープに微粘着テープを貼り合わせて引き剥がすことにより、グラファイトフィルムの表層部に空間を設けた実施例8との比較から、空間はグラファイトフィルムの中央部に設けられていても表層部のみに設けられていても同等の効果を与えることが分かる。
また、グラファイト化の後に圧縮処理を行う場合と圧延処理を行う場合とでは、比較例1と比較例2との比較から、圧縮処理の方が僅かに放熱効果が高いことが分かる。これは、圧延処理の方が圧縮処理よりもグラファイトフィルムの表面が粗くなるためであると考えることができる。グラファイトフィルムの表面が粗くなると、発熱体との接触が不十分となり、発熱体から発生した熱が効率よく拡散されないために温度が上昇したものである。
実施例10のようにグラファイトフィルムを二枚重ねることでも空間を形成することができ、厚み方向への断熱効果を示した。しかし、積層する方法では、空間の大きさを制御することができず、さらにフィルム同士を重ねただけであるので、5μm以上の空間を形成することができなかった。
本発明のグラファイト複合フィルムは、熱拡散性および断熱性に優れているので、携帯電話などの小型電子機器等の分野で利用可能である。
1 グラファイトフィルム
2 発熱体
3 保護フィルム
4 基板
5 接着層
6 支持体
7 グラファイト複合フィルム

Claims (12)

  1. 高分子フィルムを熱処理して作製されるグラファイトフィルムであって、該グラファイトフィルムの内部にグラファイトフィルムの面に対して平行な空間が形成されており、厚さ方向の熱伝導率が5W/m・K以下であることを特徴とするグラファイトフィルム。
  2. グラファイトフィルムの面に垂直な断面における前記空間の厚みが3μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のグラファイトフィルム。
  3. グラファイトフィルムの面に垂直な断面における前記空間の厚みの最小部分が3μm以上で、且つ、前記空間が200μm以上連続して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグラファイトフィルム。
  4. 前記空間の面積がグラファイトフィルムの面に平行な断面における面積の5%以上形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のグラファイトフィルム。
  5. 前記グラファイトフィルムの表面粗さRaが3.0以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のグラファイトフィルム。
  6. 前記グラファイトフィルムの面方向の熱伝導率が750W/m・K以上厚さが100μm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のグラファイトフィルム。
  7. 前記高分子フィルムの前記熱処理の温度は、2400℃以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のグラファイトフィルム。
  8. 密度が1.17〜1.76であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のグラファイトフィルム。
  9. 高分子フィルムを熱処理して作製される1又は2以上のグラファイトフィルムと、1又は2以上の樹脂層とを備えたグラファイト複合フィルムであって、該グラファイトフィルムの内部にグラファイトフィルムの面に対して平行な空間が形成されており、該グラファイトフィルムの厚さ方向の熱伝導率が5W/m・K以下であることを特徴とするグラファイト複合フィルム。
  10. 前記グラファイトフィルムの面方向の熱伝導率が750W/m・K以上厚さが100μm以下であることを特徴とする請求項9に記載のグラファイト複合フィルム。
  11. 前記高分子フィルムの前記熱処理の温度は、2400℃以上であることを特徴とする請求項9又は10に記載のグラファイト複合フィルム。
  12. 前記樹脂層は、絶縁層、粘着層および接着層からなる群から選択される少なくとも一つの層である請求項9〜11の何れかに記載のグラファイト複合フィルム。
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