JP5571874B2 - 高速軸受用グリース - Google Patents
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しかし、このような潤滑方法は、圧縮空気や給油装置などの付帯設備が必要なものであり、工作機械のイニシャルコストおよびランニングコストを高める原因の一つであり、これらに対してグリース潤滑は、メンテナンスの必要が少なくて好ましい潤滑方法であるといえる。例えば、2000〜8000 rpm またはそれ以上の高速で回転する回転軸を支持する高速転がり軸受としては、工作機械主軸(スピンドル)などを支持するアンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受などが挙げられる。
アンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受などからなる高速転がり軸受に使用される潤滑剤としては、給油などのメンテナンスが必要でなく、周囲の環境を汚染しないちょう度に調整された潤滑グリースを採用することが好ましい。
(a)長寿命性転がり軸受の潤滑寿命を可及的に延長するためには、以下の(i) 〜(iii) に説明するように、転がり軸受から潤滑剤(グリースまたはその基油)が漏れにくいこと、グリースの耐熱性に優れること、潤滑に必要な油膜厚さを形成できることが必要である。
高速運転されない転がり軸受の場合、転動体や保持器の運動により摩擦部分から押し出されてしまう余分なグリースは、回転条件によっては軸受内部をある程度還流して再び潤滑に寄与することが考えられる。しかし、高速で回転する工作機械などの回転軸支持用転がり軸受では、軸受内部に発生する風圧がこの還流を妨げるため潤滑不良を起こしやすくなる。このため、高速で回転する転がり軸受では、僅かな量のグリースしか潤滑に寄与しておらず、グリースの性状は特に重要となる。また、高速転がり軸受用グリースは、少量のグリースでも潤滑性能を維持する必要がある。
(iii) 潤滑性(油膜厚さ)を向上させた従来のグリースは、基油粘度を高くすると剪断摩擦抵抗が上昇して回転トルクが増加し、発熱量が増大するので、これらを抑制するために基油粘度は低く抑えている。そのため、高速に伴う温度上昇で低粘度となった潤滑油の油膜は薄くなって摺動摩耗を起こす場合があった。
例えば、特許文献3には、40℃における動粘度が 15 mm2/sec 以上 40 mm2/sec 以下である基油と、含有量がグリース組成物全体の 9 質量%以上 14 質量%以下であるジウレア化合物の増ちょう剤とを含有し、混和ちょう度が 220 以上 320 以下であるグリース組成物が開示されている。
しかし、上記グリース組成物においても、グリース封入量を少なくすることが困難であり、軸受の高速回転に十分に対応でき、工作機械のコンパクト化や運転経費の削減を可能にすることは困難である。
また、近年ますます転がり軸受の使用状態が過酷になり、ピッチ円径dm( mm )と回転数N( rpm )との積であるdmN値が 170 万以上という高速回転で使用されるスピンドル用転がり軸受なども多くなってきている。このような軸受の回転速度の高速化に伴って、既存のグリースで軸受に要求される性能を全て満足させることは困難である。
また、上記スピンドル用転がり軸受がアンギュラ玉軸受または円筒ころ軸受であることを特徴とする。
ウレア系化合物を構成するモノアミン成分は、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するので、増ちょう剤の高速下でのせん断力に容易に破壊されず、増ちょう剤繊維の毛細管現象により、転走面に安定的にグリース中の油分を供給することができる。
このアンギュラ軸受は、図1に示すように、内輪2と外輪3との間に転動体4が保持器5に保持された軸受空間を、外輪3の内周面に設けられた係止溝に固定したシール部材6で密封したアンギュラ玉軸受である。少なくとも転動体4の周囲にグリースが封入され、外輪3の内径面に周溝状のグリースポケット7を形成して、グリースの漏洩を物理的に防止している。転動体4と、内輪2および外輪3との接触点を結ぶ直線がラジアル方向に対して接触角βを有しており、ラジアル荷重と一方向のアキシャル荷重を負荷することができる。また、転動体4は、窒化珪素や炭化珪素等のセラミック製とすることもできる。本発明においては、内輪2と外輪3と転動体4とで形成される軸受空間に、下記に示す本発明の高速転がり軸受用グリースが封入される。
また、合成炭化水素油、エステル油、アルキルジフェニルエーテル油、それぞれの動粘度が 15〜40 mm2/sec であることが好ましい。この範囲であると混合油とした場合であっても、動粘度の範囲を 15〜40 mm2/sec とすることができる。混合油とする場合、合成炭化水素油を必須成分とすることが好ましく、また、合成炭化水素油はエステル油またはアルキルジフェニルエーテル油よりも重量割合で同量以上であることが好ましい。
エステル油としては、例えばジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、炭酸エステル油等が挙げられる。
アルキルジフェニルエーテル油としては、モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリアルキルジフェニルエーテル等が挙げられる。
ポリイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられる。これらの中でも芳香族ジイソシアネートが好ましい。
また、ジアミンと該ジアミンに対してモル比で過剰のジイソシアネートとの反応で得られるポリイソシアネートを使用することができる。ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミン以外のモノアミンとしては芳香族モノアミンが挙げられる。
脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンが挙げられ、これらの中でもオクチルアミンが好ましい。
脂環式モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
芳香族モノアミンとしては、アニリン、p-トルイジンが挙げられ、これらの中でp-トルイジンが好ましい。
鉱油としては、原油から得られる潤滑油を減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等の精製を行なったものを用いることができる。
フッ素油としては、脂肪族炭化水素ポリエーテルの水素原子をフッ素原子で置換した化合物であれば使用でき、例えばパーフルオロポリエーテル油が挙げられる。パーフルオロポリエーテル油を例示すれば、フォンブリンY(モンテジソン社商品名)およびクライトックス(デュポン社商品名)などの側鎖を有するパーフルオロポリエーテルや、フォンブリンZ(モンテジソン社商品名)、フォンブリンM(モンテジソン社商品名)およびデムナム(ダイキン社商品名)などの直鎖状のパーフルオロポリエーテルが挙げられる。
シリコーン油としては、ジメチルシリコーン油やメチルフェニルシリコーン油等のいわゆるストレートシリコーン油、およびアルキル変性シリコーン油やアラルキル変性シリコーン油等のいわゆる変性シリコーン油のいずれも使用できる。
上記金属石けんは、金属水酸化物などの金属源と、脂肪族モノカルボン酸(例えば、ステアリン酸)、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む脂肪族モノカルボン酸(例えば、12-ヒドロキシステアリン酸)などの脂肪酸とから合成される。また、上記金属源と、上記脂肪族モノカルボン酸と、脂肪族ジカルボン酸などの二塩基酸とから合成される複合金属石けんも用いることができる。
金属種の違いにより、例えば、リチウム石けん、複合リチウム石けん、バリウム石けん、複合バリウム石けん、アルミニウム石けん、複合アルミニウム石けん、カルシウム石けん、複合カルシウム石けん、ナトリウム石けん、複合ナトリウム石けん、亜鉛石けん、複合亜鉛石けん等を挙げることができる。
また、分子内にアミド結合を有する金属石けん(アミド金属石けん)および分子内にアミド結合を有する複合金属石けん(複合アミド金属石けん)としては、アミドナトリウム石けん、複合アミドナトリウム石けん、アミドバリウム石けん、複合アミドバリウム石けん、アミドアルミニウム石けん、複合アミドアルミニウム石けん、アミドカルシウム石けん、複合アミドカルシウム石けん、アミド亜鉛石けん、複合アミド亜鉛石けんを挙げることができる。
これらの中で油供給性とせん断安定性に優れた複合リチウム石けん、複合バリウム石けん、Naテレフタラメート、または複合アミドバリウム石けんが特に好ましい。
本発明において非ウレアグリースは、グリース全量に対して 10〜80 重量%の割合で配合することが好ましい。特に、20〜50 重量%の配合量とすることが好ましい。非ウレアグリースとして、配合量が 10 重量%未満では転走部への油供給性が悪い。また、配合量が 80 重量%をこえると、高速下で増ちょう剤の繊維が破壊されやすく、増ちょう剤の毛細管現象により基油を転走部へ供給できない。
<ウレアグリースの調製>
ウレアグリースU1〜ウレアグリースU5
表1に示した基油の半量に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させウレアグリース試料を得た。
非ウレアグリースNU1〜非ウレアグリースNU6
表1に示した基油に、増ちょう剤を溶解させ非ウレアグリース試料を得た。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
なお、Naテレフタラメートについてはメチルテレフタレートモノ-N-オクタデシルアミドを、基油を溶媒として水酸化ナトリウムと反応させ、ナトリウム-N-オクタデシルテレフタラメートを生成させた。
上記ウレアグリースと非ウレアグリースとを表2に示す割合で混合しグリース試料を得た。このグリース試料を以下に示す遠心油分離試験および常温高速グリース試験に供し、遠心離油度およびグリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表2に併記する。
なお、実施例2の非ウレアグリース(グリースNU7)としては、NOKクリューバー社製ISOFLEX NBU 15を用いた。
遠心分離機を用い、50 g のグリース試料を遠心分離管に入れ、40℃で 23000 G の加速度を 7 時間かけたときの遠心離油度を次式により求めた。
(遠心離油度、%)=(1−試験前の増ちょう剤濃度/試験後の増ちょう剤濃度)×100
深溝玉軸受(6204)に、グリース試料を転走面狙いで 0.14 g (軸受全空間容積の約 3 体積%)封入し、非接触シールして試験軸受を作製した。試験軸受に、アキシャル荷重 670 N とラジアル荷重 67 N とを負荷し、常温環境下で 15000 rpm の回転速度で回転させ、焼き付きに至るまでの時間をグリース寿命時間として測定した。この耐久試験における軸受のピッチ円径(mm)と回転数(rpm)との積であるdmN値は 52 万である。
表2に示したウレアグリースまたは非ウレアグリース(比較例10は併用)をグリース試料とした。このグリース試料について参考例1と同様の項目を測定した。これらの測定結果を表2に併記する。
アンギュラ玉軸受(外径 150 mm×内径 100 mm、内外輪SUJ2、転動体 13/32 インチ窒化珪素球)に、参考例1、参考例2、実施例1、実施例2、比較例1、比較例5、比較例10および比較例12のグリース試料を転走面狙いで 3.0 g (軸受全空間容積の約 10 体積%)封入し、非接触シールして試験軸受を作成した。試験軸受を、1.8 GPa 定圧与圧下で、外筒冷却により軸受を冷却し、軸受外輪を 50℃以下に保ちつつ 14500 rpm の回転速度で回転させ、焼き付きに至るまでの時間をグリース寿命時間として測定した。この耐久試験における軸受のピッチ円径(mm)と回転数(rpm)との積であるdmN値は 185 万である。測定結果を表2に併記する。
2、12 内輪
3、13 外輪
4、14 転動体(鋼球)
5 保持器
6 シール部材
7 グリースポケット
Claims (2)
- ウレア系化合物を増ちょう剤とするウレアグリースに、前記ウレア系化合物を含まない非ウレアグリースを配合してなる高速転がり軸受用グリースであって、
前記高速転がり軸受用グリースは、前記ウレアグリースと前記非ウレアグリースとからなる混合グリースであり、該混合グリース全体に対する前記非ウレアグリースの配合割合が 20〜50 重量%であり、
前記ウレアグリースおよび前記非ウレアグリースの基油は、40℃における動粘度が 18〜30 mm 2 /sec であり、
前記ウレア系化合物は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られ、前記モノアミン成分が脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するモノアミン成分であり、
前記非ウレアグリースの増ちょう剤は、バリウムを金属種とし、分子内にアミド結合を有するアミド金属石けんまたは複合アミド金属石けんであり、前記非ウレアグリース全体に対する配合割合が 10〜40 重量%であることを特徴とする高速転がり軸受用グリース。 - 前記ウレアグリースの基油は合成炭化水素油、エステル油およびアルキルジフェニルエーテル油から選ばれた少なくとも1つの油であることを特徴とする請求項1記載の高速転がり軸受用グリース。
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