JP2004359823A - グリース組成物及び転動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能を転動装置に付与できるグリース組成物を提供する。また、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能に優れた転動装置を提供する。
【解決手段】40℃における動粘度が15〜60mm2 /sであるポリオールエステル油とステアリン酸リチウムとを含有するグリース組成物Gを、深溝玉軸受1の空隙部内に充填した。ステアリン酸リチウムの含有量Xは、グリース組成物G全体の15〜30質量%である。また、グリース組成物Gの混和ちょう度は、260以上且つ330以下、及び、335−3X以上且つ395−3X以下の両条件を満たしている。
【選択図】 図1
【解決手段】40℃における動粘度が15〜60mm2 /sであるポリオールエステル油とステアリン酸リチウムとを含有するグリース組成物Gを、深溝玉軸受1の空隙部内に充填した。ステアリン酸リチウムの含有量Xは、グリース組成物G全体の15〜30質量%である。また、グリース組成物Gの混和ちょう度は、260以上且つ330以下、及び、335−3X以上且つ395−3X以下の両条件を満たしている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能を転動装置に付与できるグリース組成物に関する。また、本発明は、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能に優れた転動装置に係り、特に、エアコンディショナ等の家庭用電器に用いられるモータ、工作機械主軸用のサーボモータ、情報機器(ハードディスクドライブ(HDD),コンパクトディスクドライブ(CD),ビデオテープレコーダ(VTR)等)に用いられる小型スピンドルモータなどに使用される転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアコンディショナ等の家庭用電器に用いられるモータには、近年の省エネルギー化の流れから、より低トルク(エネルギー消費量が低い)であることが求められている。また、前記家庭用電器は、ほとんどの場合は、回転支持部の故障、すなわち軸受の軽微な損傷が引き起こす大きな音響不良によって寿命とされているため、軸受の音響寿命のさらなる向上が望まれている。
【0003】
また、従来は低発塵性が求められていた電子計算機等に使用される軸受については、軸受のシール技術の向上や軸受周りの改善により低発塵化が進んだので、低トルクや優れた音響寿命が求められる傾向にある。
さらに、道路舗装が行き届いていない中国等の地域において輸送時にしばしば発生していた軸受のフレッチングも、軸受設計の最適化(例えば、軸受内部の設計の最適化)や材料の改良(例えば、セラミック製転動体の採用)により改善されてきているので、グリースに求められる耐フレッチング性能は重要度が低下してきている。しかし、音響寿命及びトルク性能は、グリースが重要な要因となっており、さらなる性能の向上が求められている。なお、セラミック製転動体の採用等はコスト上昇の要因となるため、グリースにより耐フレッチング性能を改善できることが望ましい。
【0004】
そして、前述の各機器は様々な環境で使用されることが多いので、低温(−30℃程度)から高温(120℃程度)まで安定した性能を示すことが併せて要求されている。
このような各種性能を向上させることを目的として、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、増ちょう剤であるステアリン酸リチウムと、酸化パラフィン及びジフェニルハイドロゲンホスファイトとを含有する低発塵性グリース組成物が記載されている。このグリース組成物は、耐フレッチング性能も優れている。
また、特許文献2〜4には、炭素数12〜24のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩と、炭素数12〜24のヒドロキシル基を有する脂肪酸のリチウム塩との一方又は両方を含有する低発塵性グリース組成物が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−139975号公報
【特許文献2】
特許第3324628号公報
【特許文献3】
特開平5−9489号公報
【特許文献4】
特開平6−330070号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した各特許文献に記載のグリース組成物は、音響寿命,トルク性能,耐フレッチング性能の全てが優れているわけではなかった。また、それぞれの性能についても、さらなる高性能化が求められている。
例えば、特許文献1に記載のグリース組成物は、低トルクではあるものの音響性能については考慮されていない。また、酸化パラフィンのようなワックス類を含有しているので、低温時のトルクが高くなりやすい。
【0007】
また、特許文献2に記載のグリース組成物は、不混和ちょう度が250以下であるため起動時のトルクが高く、また、初期の音響性能は良好であるものの音響寿命が十分でない場合がある。
さらに、特許文献3,4に記載のグリース組成物は、低発塵性を重視したものであり、長期間にわたる使用においては音響性能の低下や軌道面の損傷が生じる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、優れた音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能を転動装置に付与できるグリース組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能に優れた転動装置を提供することを併せて課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう剤は脂肪酸のリチウム塩であり、その含有量Xは組成物全体の15〜30質量%であるとともに、前記基油の40℃における動粘度は15〜60mm2 /sであり、混和ちょう度は、260以上且つ330以下、及び、335−3X以上且つ395−3X以下の両条件を満足することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤の含有量Xは組成物全体の18〜27質量%であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3のグリース組成物は、請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤は繊維状であり、その長さは3μm以下であることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る請求項4のグリース組成物は、請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤は、炭素数が10以上のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩を含有しており、その割合は増ちょう剤全体の70質量%以上であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項5のグリース組成物は、請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物において、イオウを有する極圧剤を、組成物全体の0.1〜10質量%含有することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係る請求項6の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0013】
本発明のグリース組成物について、増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との関係(すなわち前記両条件)をグラフ化したものを図3に示す。増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との関係が太線で囲まれた六角形の領域(斜線を付した部分)内に位置するものが、本発明のグリース組成物である。この領域の中でも、増ちょう剤の含有量Xが18〜27質量%である領域(すなわち、本発明に係る請求項2のグリース組成物)がより好ましい。
【0014】
本発明は、種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
なお、本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係るグリース組成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のグリース組成物は、増ちょう剤である脂肪酸のリチウム塩と基油とを含有している。
脂肪酸の種類は特に限定されるものではないが、炭素数10〜30のヒドロキシル基を有していない脂肪酸が好ましい。炭素数が9以下のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩は、融点が高く、基油の引火点を超える場合が出てくるので、グリース組成物の製造上好ましくない。また、炭素数が30を超えると、増ちょう性が弱くなるため好ましくない。これらの点は、ヒドロキシル基を有している脂肪酸のリチウム塩でも同様である。
【0016】
なお、前記のような問題点がより生じにくくするためには、炭素数は14〜22がより好ましい。最も好ましくは、炭素数が18のものを70質量%以上含有する脂肪酸リチウムを増ちょう剤として使用するとよい。炭素数18のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩の具体例としては、堺化学株式会社製のリチウムステアレートS−7000があげられる。
【0017】
炭素数が10以上のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩の具体例としては、ステアリン酸リチウム(炭素数18),カプリン酸リチウム(炭素数10),ラウリン酸リチウム(炭素数12),ミリスチン酸リチウム(炭素数14),パルミチン酸リチウム(炭素数16),アラキン酸リチウム(炭素数20),ベヘン酸リチウム(炭素数22),リグノセリン酸リチウム(炭素数24),ヘキサコサン酸リチウム(炭素数26)等があげられる。
【0018】
このような増ちょう剤は、長さが3μm以下の繊維状で基油中に分散されていることが好ましい。そうすれば、増ちょう剤の増ちょう作用と基油への溶解性とのバランスが良好となる。増ちょう剤を長さ3μm以下の繊維状とするためには、基油と増ちょう剤との混合物を220〜230℃に加熱して増ちょう剤を完全に溶解させた後、急冷するとよい。
【0019】
また、基油の種類は特に限定されるものではないが、増ちょう剤の溶解性を考えると、極性分子を有する基油(例えば、エステル油,エーテル油,シリコーン油等)であることが好ましい。あるいは、エステル油を主成分とし(好ましくは50質量%以上で、より好ましくは70質量%以上)、合成炭化水素油,エーテル油,鉱油,シリコーン油,フッ素油等を含有する混合油でもよい。エステル油としては、ジエステル油,ポリオールエステル油,芳香族エステル油,炭酸エステル油等が好ましい。
【0020】
基油の40℃における動粘度は、15〜60mm2 /sである必要がある。15mm2 /s未満であると、蒸発損失が生じたり油膜厚さの不足が生じたりするため、低トルクとはなるものの優れた耐久寿命が得られないおそれがある。また、動粘度が60mm2 /sを超えると、耐久寿命に対しては若干有利になるが、油膜の剪断抵抗が大きくなるためトルクが上昇するおそれがある。
【0021】
本発明の主用途である家庭用電器,情報機器等のように、−30〜120℃程度の温度環境で使用する場合であれば、耐久寿命とトルクとのバランスを考えて、基油の40℃における動粘度は20〜60mm2 /sとすることがより好ましく、25〜55mm2 /sとすることがさらに好ましく、25〜35mm2 /sとすることが最も好ましい。なお、最終的な基油の動粘度が上記の範囲となるならば、40℃における動粘度が10〜500mm2 /sの基油を混合して用いてもよい。
【0022】
本発明のグリース組成物は、EHL油膜下での潤滑状態に増ちょう剤が介在し、且つ、EHL潤滑状態で発生する局部的な高温,高圧状態において増ちょう剤が基油へ溶解もしくは金属表面近傍で溶解し金属表面に吸着して基油の粘度がさらに上昇するため、転動体と軌道面との直接接触を良好に防止する効果(ミクロ的な効果)を有するものと思われる。このミクロ的な効果はおそらく局部的であるため、全体のトルクに影響を与えることが少なく、結果として低トルクを維持できる。
【0023】
EHL油膜内に局部的に脂肪酸リチウムが固形状のまま残ると、そのときの硬度は高圧下で大きくなっているため、軌道面や転動体を損傷させ、長期的には音響性能の劣化を招くことは容易に想像できる。この場合、溶解度が低く融点が高いヒドロキシル基を有する脂肪酸のリチウム塩では、音響性能の劣化の度合いが大きくなり、ヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩と比べると長期的(例えば10年)にはかなりの差になることも容易に想像できる。よって、ヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩を用いるか、又は、ヒドロキシル基を有する脂肪酸のリチウム塩の割合を低く抑えることが好ましい。
【0024】
つまり、ヒドロキシル基を有する脂肪酸のリチウム塩は、ヒドロキシル基を有していないものに比べ、融点が高く溶解度も劣るため、前述の転動体と軌道面との直接接触を防止する効果は比較的小さい。このことは、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムを増ちょう剤とするグリース組成物とステアリン酸リチウムを増ちょう剤とするグリース組成物との滴点を比較すると、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムを増ちょう剤とするグリース組成物の方が高いことからも明らかである。なお、長さが3μm超過の増ちょう剤は、結局EHL部に入っていかないので、前述のミクロ的な効果や問題点には関係しない。
【0025】
また、本発明のグリース組成物は、以下のようなマクロ的な効果も有している。すなわち、増ちょう剤が転動体と軌道面との間に介在して、いわゆるグリース膜を生成するため、転動体と軌道面との直接接触が効果的に防止される。このグリース膜は、増ちょう剤の含有量が多いほど良好に形成される。しかしながら、ほとんどの場合は、増ちょう剤の含有量が多いほど混和ちょう度が低くなってグリース組成物の流動性が低下するので、転動体と軌道面との潤滑は、初期にグリース組成物から離油した基油のみで行われることとなり、寿命に対して不利となる。
【0026】
本発明のグリース組成物は、増ちょう剤の含有量と混和ちょう度との関係が、260以上且つ330以下、及び、335−3X以上且つ395−3X以下の両条件を満足するので、良好なグリース膜とグリース組成物の良好な流動性とが両立される。
グリース組成物の混和ちょう度が低すぎるとトルク変動が大きくなり、逆に混和ちょう度が高すぎるとグリース組成物が転動装置から漏洩しやすくなる。また、前述の転動体と軌道面との直接接触を防止する効果を得るためには、増ちょう剤の含有量はできるだけ多い方が好ましく、しかも、混和ちょう度で表されるグリース組成物の硬さは軟らかい方が好ましい。さらに、耐フレッチング性能を考慮した場合には、転動体と軌道面との間にグリース組成物が良好に保持される必要があるので、グリース組成物が硬いと比較的不利となる場合が多い。よって、音響性能,トルク性能,耐フレッチング性能のバランスを考えると、混和ちょう度は260以上且つ330以下である必要がある。
【0027】
330を超えると、転動装置から漏出しやすくなったり、転動装置内でのグリース組成物の動きが不安定になることによるトルクの変動が発生しやすくなったりするので、転動装置に封入して用いるには適さない場合がある。特に、両側シール付き又は両側シールド付きの密封軸受の場合には、260以上且つ330以下とすることが好ましい。
【0028】
増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全体の15〜30質量%である必要がある。グリース組成物が軟質の場合は剪断力を受けたときに過度に軟化して微粒子が形成され飛散しやすいが、増ちょう剤を15〜30質量%と通常のグリース組成物よりも多量に用いることにより、剪断力が負荷された時の軟化度合が抑制され、且つ、基油が良好に保持されるため、グリース組成物の飛散が生じにくくなる。また、過度の剪断力が負荷された時のみならず、長期間にわたって保管された場合等においても、グリース組成物の性状がより安定したものとなる。
【0029】
増ちょう剤の含有量が15質量%未満であると、上記のような飛散が生じにくいという効果が十分に得られず、30質量%超過であると混和ちょう度が260以上となりにくい。このような問題点がより生じにくくするためには、増ちょう剤の含有量は18〜27質量%であることがより好ましい。
さらに、増ちょう剤の大きさは、転動装置が微小揺動した際の潤滑性や耐フレッチング性能を考えると小さい方が好ましく、その長さは3μm以下であることが好ましい。小さい増ちょう剤の方が比較的多量にグリース組成物中に含有され、また、グリース組成物が微小な揺動部に入り込みやすいので、転動体と軌道面との直接接触を防止する効果が優れたものとなる。このような効果は、混和ちょう度が低すぎる場合は当然期待できない。
【0030】
さらに、本発明のグリース組成物には、耐フレッチング性能を重要視する場合には、ジチオカルバミン酸モリブデン,ジチオカルバミン酸亜鉛,イオウ−リン系添加剤等のような分子中にイオウを有する極圧剤を添加することが好ましい。フレッチング摩耗による損傷は、例えばモータ機器の輸送時等において外部振動を受けることによって発生する。そして、転動体と軌道面とが微小揺動により金属接触し、これによって輸送後に音響性能が低下する。このようなフレッチングを抑制するためには、前述のミクロ的な効果を発現させる増ちょう剤の溶解,介入や、マクロ的な効果を発現させるグリース膜も有効であるが、前述の極圧剤を添加すれば、前述の効果がより高められる。なお、本発明のグリース組成物には、必要に応じて、腐食防止剤,防錆剤等の慣用の添加剤を、音響性能やトルク性能が損なわれない程度に添加してもよい。
【0031】
音響寿命に対しては、転動装置の内部に存在する異物の影響も大きいため、転動装置の各メーカーは転動装置の洗浄を強化している。また、グリース組成物のメーカーにおいては、製造工程において異物の混入がないように努めている。
グリース組成物の製造においては、一般的には、最終工程でフィルタを通すことによって異物を取り除いているが、フィルタの孔径は5〜10μm程度である。なぜなら、通常のグリース組成物は、増ちょう剤の大きさが3μm以上あるので、孔径の小さいフィルタで濾過すると、異物とともに増ちょう剤も取り除かれて大きな性状変化が生じたり、増ちょう剤が構成している繊維の3次元構造が一定方向に配向して、濾過によるグリース組成物の性状変化をコントロールすることが困難となるからである。
【0032】
しかしながら、本発明のグリース組成物は、増ちょう剤の長さは3μm以下であるので、孔径が3μm以上のフィルタであれば、特に問題なく使用可能である。より優れた音響寿命を実現するためには、増ちょう剤の長さを1μm以下にして、孔径が1μmのフィルタを用いて異物を除去することが好ましい。
【0033】
また、優れた音響寿命を実現する上で忘れてはならないことは、保持器のポケットと転動体表面との間の潤滑である。優れた音響寿命が要求される機器には、トルク変動が比較的小さいことから樹脂製保持器が組み込まれた転動装置を用いる場合がほとんどであるが、このとき樹脂製保持器と転動体とが十分に潤滑されていないと、トルク変動をきたすばかりでなく、長期的には樹脂が削れ異物となって、転動体表面や軌道面に圧痕を生じさせてしまう。よって、このようなことを避けるために、いわゆる内部潤滑油をあらかじめ塗布する方法や、保持器のポケットと転動体との間の隙間を大きくする方法等が提案されている。
【0034】
本発明のグリース組成物は、増ちょう剤の大きさが小さく且つ柔軟であるので、より微小な隙間までグリース状のままで入り込みやすい。よって、保持器のポケットと転動体との間に十分に入り込んで保持されるため、安定した潤滑を行うことができる。もちろん、内部潤滑油との併用も可能である。
本発明のグリース組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、脂肪酸リチウムを基油に完全に溶解させた後、急冷して結晶の成長を抑える方法が好ましい。
【0035】
そして、その後に、極性を有する添加剤(例えば酸化防止剤)を加え、ニーダー,プラネタリミキサー,又はホモジナイザを用いて混和ちょう度が260〜330となるまで混練する。このとき、グリース組成物が劣化しない程度であれば加熱してもよい。さらに、必要に応じて所望の添加剤を加え、さらに混練を行った後、3本ロールミルで仕上げを行い、さらにフィルタで濾過する。これらの工程は、室内環境がコントロールされたクリーンルーム内で実施されることが好ましい。
【0036】
前記極性を有する添加剤は、グリース組成物の製造工程中においてグリース組成物の劣化を効果的に防止する効果を有する酸化防止剤であることが好ましく、アミン系酸化防止剤であることがさらに好ましい。そして、モリブデンジチオフォスフェート及びスルホン酸金属塩の少なくとも一方とアミン系酸化防止剤との両者を用いることが最も好ましい。
【0037】
このように急冷するとともに極性物質を加えて混練することによって、増ちょう剤の3次元的な構造の保持力が弱まるので、増ちょう剤の含有量が比較的多くても混和ちょう度の高いグリース組成物を得ることができる。そして、増ちょう剤の含有量が比較的多いため、剪断が負荷されても軟らかくなりにくい。
【0038】
さらに、本発明のグリース組成物のより好ましい製造方法を、以下に説明する。まず、所定量の脂肪酸リチウムを基油に完全に溶解させ急冷した後、所望の混和ちょう度よりも20〜80小さい混和ちょう度となるまで、ニーダ,プラネタリミキサー,又はホモジナイザを用いて混練して、ベースグリースを製造する。ベースグリースを製造する際には40〜80℃程度に加熱しても差し支えないが、添加剤は加えない(ただし酸化防止剤は添加してもよい)。このベースグリースに極圧剤等の添加剤を加え、所望の混和ちょう度になるまで3本ロールミルで混練する。そして、フィルタで異物を濾過してグリース組成物を得る。
【0039】
〔実施例〕
以下に、本発明のグリース組成物及び転動装置を、さらに具体的な実施例を示して説明する。
ポリオールエステル油を基油とし、脂肪酸リチウムを増ちょう剤とするとともに、数種の添加剤を含有する26種のグリース組成物(表2〜6に示す実施例1〜20及び比較例1〜6)を用意した。これらのグリース組成物は、まずベースグリースを製造し、それを希釈して増ちょう剤の含有量を調整することによって製造した。以下にその方法を説明する。
【0040】
40℃における動粘度が24.2mm2 /sであるポリオールエステル油(花王株式会社製のカオルーブ390)と、40℃における動粘度が33.0mm2 /sであるポリオールエステル油(花王株式会社製のカオルーブ268)とを、質量比50:50で混合して、混合基油を得た。この混合基油の40℃における動粘度は、28mm2 /sである。
【0041】
この混合基油に、表1に示す含有量となるような量の増ちょう剤を加え、230℃に加熱して溶解させた。220〜230℃で3分間保持した後、ドライアイス(登録商標)で−40℃に冷却したステンレス板上に薄く広げて急冷し、ベースグリースを得た。得られた7種(A〜G)のベースグリースの組成,増ちょう剤の繊維長,及び混和ちょう度を、表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
なお、表1の増ちょう剤の欄に記載された数値は、ベースグリースにおける増ちょう剤の含有量であり、その単位は質量%である。また、表1に記載の増ちょう剤のうち、ステアリン酸リチウム及び12−ヒドロキシステアリン酸リチウムは堺化学株式会社社製であり、アラキン酸リチウム及びリグノセリン酸リチウムは別途合成したものである。
【0044】
次に、このようなベースグリースを、3本ロールミルに3回通して均一化した。そこに、増ちょう剤の含有量が表2〜6に示す値となるような量の前記混合基油と、所定量の添加剤とを加え、井上製作所製のタンジェンシャル型ニーダを用いて所定の混和ちょう度となるまで混練した。なお、混練条件(ニーダの回転速度,ニーダ温度,混練時間)は表2〜6に示す通りであり、添加剤は、混練を開始してから所定時間(表2〜6に記載の添加剤添加時期)経過した後に添加して、さらに混練を続けた。
【0045】
そして、表2〜6に記載のような孔径を有するフィルタ(エスエムシー株式会社製の焼結ステンレスフィルタで、厚さは3mmである)で濾過し、さらに遠心式脱抱処理を行ってグリース組成物を得た。得られた26種(実施例1〜20及び比較例1〜6)のグリース組成物の組成を、表2〜6に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
なお、表2〜6の「増ちょう剤の含有量」及び「添加剤の含有量」の欄に記載されている数値は、グリース組成物全体を100とした場合における増ちょう剤の質量比及び各添加剤の質量比である。また、基油の含有量は表2〜6には記載されていないが、グリース組成物全体から前述の増ちょう剤の含有量及び添加剤の含有量を差し引いた残部である。
【0052】
さらに、表2〜6に記載の添加剤のうち、アミン系酸化防止剤はチバガイギー社製のイルガノックスL57、フェノール系酸化防止剤はチバガイギー社製のイルガノックスL06、防錆剤Aはスルホン酸亜鉛(KING社製のNasul ZS)、防錆剤Bはスルホン酸バリウム(KING社製のNasul BSN)、腐食防止剤はベンゾトリアゾール(チバガイギー社製のイルガメット39)、極圧剤Aはジチオリン酸モリブデン(旭電化社製のサクラルーブ300)、極圧剤Bはイオウ−リン系添加剤であるトリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のイルガルーブ232)である。
【0053】
さらに、本発明における増ちょう剤の長さとは、以下のようにして測定したものである。グリース組成物をワセリンで5〜20倍に希釈し、電子顕微鏡用の金属メッシュ上に塗布した。次に、溶剤(n−ヘキサン等)を入れたシャーレに金属メッシュを載置することにより、グリース組成物から油成分を除去した。溶剤から金属メッシュを取り出し乾燥した後、電子顕微鏡(株式会社明石製作所製のLEM−2000)にセットし、増ちょう剤を観察した。測定倍率は6000倍とし、一視野の主流を占める代表的大きさの繊維5点の長さを測定し、その平均値を算出した。
【0054】
次に、このようにして製造した26種のグリース組成物の混和ちょう度,混和安定度,及び離油度(測定条件は100℃,24時間)を、JIS K2220に規定された方法により測定した。その結果を表2〜6に併せて示す。また、実施例1〜15及び比較例1〜4のグリース組成物については、増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との関係を、図3のグラフにプロットすることにより示した。実施例は○印でプロットし、比較例は□印でプロットした。各プロット内の数字は、実施例番号又は比較例例番を示している。
【0055】
さらに、これらのグリース組成物を、それぞれ十分に洗浄した深溝玉軸受(呼び番号608)に充填し、該深溝玉軸受の音響寿命(加速試験及び通常試験),トルク性能(初期トルク値及び回転後のトルク値),及び耐フレッチング性能を評価した。以下のその方法を説明する。
〔音響寿命の評価方法について〕
まず、深溝玉軸受の構成を、図1を参照しながら説明する。この深溝玉軸受1は、内輪10と、外輪11と、内輪10と外輪11との間に転動自在に配設された複数の玉12と、内輪10と外輪11との間に複数の玉12を保持する保持器13と、接触形のゴムシール14,14と、で構成されている。そして、内輪10と外輪11との間に形成され玉12が内設された空隙部内にはグリース組成物Gが充填され、シール14,14により軸受内部に密封されている。
【0056】
なお、グリース組成物Gの量は前記空隙部の容積の5体積%であり、外輪11の軌道溝狙いで封入してある。グリース組成物の封入量は通常は25〜40体積%であるが、これより少ない量とすることで該音響寿命の評価を加速試験としている。
この深溝玉軸受1を、58.8Nの予圧を負荷した状態で、90℃の環境下、回転速度7200min−1で回転させた。そして、回転168時間毎にアンデロン値(ハイバンド値)をアンデロンメータを用いて測定し、アンデロン値が3アンデロンを超えるまでの時間を加速試験における音響寿命とした。
【0057】
加速試験ではなく通常試験を行う場合には、グリース組成物Gの封入量を前記空隙部の容積の35体積%とする。そして、58.8Nの予圧を負荷した状態で、80℃の環境下、回転速度3600min−1で回転させた。そして、回転5000時間毎にアンデロン値(ハイバンド値)をアンデロンメータを用いて測定し、アンデロン値が3アンデロンを超えるまでの時間を通常試験における音響寿命とした。
【0058】
両試験の結果を表2〜6に併せて示す。なお、表2〜6に示した音響寿命の数値は、両試験ともに、増ちょう剤がリチウム石けんで基油がエステル油である市販のグリース組成物(協同油脂株式会社製のマンテルプSRL)を充填した深溝玉軸受の音響寿命を1とした場合の相対値で示してある。
〔トルク性能の評価方法について〕
音響寿命の評価方法と同様に、深溝玉軸受1の空隙部内にグリース組成物Gを充填した。グリース組成物Gの量は前記空隙部の容積の35体積%であり、外輪11の軌道溝狙いで封入してある。
【0059】
このような深溝玉軸受1を、図2に示すようなスピンドルモータに組み込んだ。すなわち、モータ33のシャフト31とケーシング32との間に、一対の深溝玉軸受1,1を取り付けた。深溝玉軸受1,1に58.8Nの予圧を負荷した状態で、25℃の環境下、スピンドルモータをモータ33により回転速度7200min−1で2時間回転させた後に、同条件で回転時のトルク値を10分間測定した。そして、10分間のトルク値の平均値、及び、最大値と最小値との差をそれぞれ算出した。
【0060】
そして、算出した両値を、前述の市販のグリース組成物を充填した深溝玉軸受の場合と比較することにより、深溝玉軸受1のトルク性能(初期トルク値)を評価した。すなわち、前記両値のうち少なくとも一方が、市販のグリース組成物の50%以下であった場合は◎、50%超過80%以下であった場合は○、80%超過120%以下であった場合は△、120%超過であった場合は×とした。結果を表2〜6に併せて示す。
【0061】
さらに、前述の音響寿命の評価(通常試験)において5000時間回転させた深溝玉軸受1を、室温まで冷却した後、初期トルク値を測定した前述の方法と同様にして、トルク値(回転後のトルク値)を測定した。このように長時間回転させた後のトルク値についても、初期トルク値の場合と同様に、市販のグリース組成物のトルク値を基準にして評価した。
【0062】
〔耐フレッチング性能の評価方法について〕
前述の初期トルク値を測定し終わったスピンドルモータを利用して、耐フレッチング性能の評価を行った。すなわち、シャフト31を振り幅0.5°、周波数5Hzで1時間揺動させ、揺動の前後でのアンデロン値(ハイバンド値)を比較した。そして、アンデロン値の上昇量が0.2以下であった場合は◎、0.2超過0.5以下であった場合は○、0.5超過1以下であった場合は△、1超過であった場合は×とした。結果を表2〜6に併せて示す。なお、アンデロン値の測定方法は、試験温度が25℃であることを除いては、前述の音響寿命の場合と同様である。
【0063】
表2〜6から分かるように、実施例1〜20のグリース組成物を充填した深溝玉軸受は、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能のいずれにおいても優れた結果を示した。また、混和安定度も優れていた。
また、実施例1〜5と実施例16〜20とを比較すると、極圧剤を添加した実施例16〜20の方が耐フレッチング性能は優れていたが、音響寿命は若干劣っていた。これは、極圧剤に由来する金属や遊離イオウによって、基油の酸化劣化が若干促進されたためであると思われる。
【0064】
次に、実施例1のグリース組成物において、基油の動粘度のみを種々変更したものを用意した。この時、各グリース組成物の混和ちょう度は、295〜305となるようにした。そして、各グリース組成物を深溝玉軸受に充填し、前述と同様の方法による初期トルク値、及び、前述と同様の加速試験による音響寿命を評価した。その結果を図4のグラフに示す。
【0065】
なお、このグラフにおいては、初期トルク値は○印でプロットしてあり、音響寿命は●印でプロットしてある。また、音響寿命の数値は、前述の市販のグリース組成物(協同油脂株式会社製のマンテルプSRL)を充填した深溝玉軸受の値を1とした場合の相対値で示してある。
初期トルク値が上限値(前述の市販のグリース組成物の場合の80%超過120%以下)以下であり、音響寿命が下限値(1.5)以上であるためには、40℃における基油の動粘度は15〜60mm2 /sとする必要があることが、図4のグラフから分かる。
【0066】
次に、実施例1のグリース組成物において、混和ちょう度のみを種々変更したものを用意した(増ちょう剤の含有量Xは20質量%である)。そして、各グリース組成物を深溝玉軸受に充填し、前述と同様の加速試験による音響寿命を評価した。その結果を図5のグラフに示す。
音響寿命を好ましいレベル以上とするためには、混和ちょう度は270以上330以下(すなわち、335−3×20以上、且つ、395−3×20以下)とする必要があることが、図5のグラフから分かる。
【0067】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
さらに、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグリース組成物は、所定の動粘度を有する基油に脂肪酸のリチウム塩を所定量含有させてなり、所定の混和ちょう度を有しているので、優れた音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能を転動装置に付与できる。
また、本発明の転動装置は、前述のような優れた性能を有するグリース組成物を備えているので、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構成を示す縦断面図である。
【図2】トルク性能及び耐フレッチング性能の評価に使用するスピンドルモータの縦断面図である。
【図3】本発明のグリース組成物において、増ちょう剤の含有量と混和ちょう度との相関を示すグラフである。
【図4】40℃における基油の動粘度と、初期トルク値及び音響寿命と、の相関を示すグラフである。
【図5】混和ちょう度と音響寿命との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 深溝玉軸受
10 内輪
11 外輪
12 玉
G グリース組成物
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能を転動装置に付与できるグリース組成物に関する。また、本発明は、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能に優れた転動装置に係り、特に、エアコンディショナ等の家庭用電器に用いられるモータ、工作機械主軸用のサーボモータ、情報機器(ハードディスクドライブ(HDD),コンパクトディスクドライブ(CD),ビデオテープレコーダ(VTR)等)に用いられる小型スピンドルモータなどに使用される転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアコンディショナ等の家庭用電器に用いられるモータには、近年の省エネルギー化の流れから、より低トルク(エネルギー消費量が低い)であることが求められている。また、前記家庭用電器は、ほとんどの場合は、回転支持部の故障、すなわち軸受の軽微な損傷が引き起こす大きな音響不良によって寿命とされているため、軸受の音響寿命のさらなる向上が望まれている。
【0003】
また、従来は低発塵性が求められていた電子計算機等に使用される軸受については、軸受のシール技術の向上や軸受周りの改善により低発塵化が進んだので、低トルクや優れた音響寿命が求められる傾向にある。
さらに、道路舗装が行き届いていない中国等の地域において輸送時にしばしば発生していた軸受のフレッチングも、軸受設計の最適化(例えば、軸受内部の設計の最適化)や材料の改良(例えば、セラミック製転動体の採用)により改善されてきているので、グリースに求められる耐フレッチング性能は重要度が低下してきている。しかし、音響寿命及びトルク性能は、グリースが重要な要因となっており、さらなる性能の向上が求められている。なお、セラミック製転動体の採用等はコスト上昇の要因となるため、グリースにより耐フレッチング性能を改善できることが望ましい。
【0004】
そして、前述の各機器は様々な環境で使用されることが多いので、低温(−30℃程度)から高温(120℃程度)まで安定した性能を示すことが併せて要求されている。
このような各種性能を向上させることを目的として、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、増ちょう剤であるステアリン酸リチウムと、酸化パラフィン及びジフェニルハイドロゲンホスファイトとを含有する低発塵性グリース組成物が記載されている。このグリース組成物は、耐フレッチング性能も優れている。
また、特許文献2〜4には、炭素数12〜24のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩と、炭素数12〜24のヒドロキシル基を有する脂肪酸のリチウム塩との一方又は両方を含有する低発塵性グリース組成物が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−139975号公報
【特許文献2】
特許第3324628号公報
【特許文献3】
特開平5−9489号公報
【特許文献4】
特開平6−330070号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した各特許文献に記載のグリース組成物は、音響寿命,トルク性能,耐フレッチング性能の全てが優れているわけではなかった。また、それぞれの性能についても、さらなる高性能化が求められている。
例えば、特許文献1に記載のグリース組成物は、低トルクではあるものの音響性能については考慮されていない。また、酸化パラフィンのようなワックス類を含有しているので、低温時のトルクが高くなりやすい。
【0007】
また、特許文献2に記載のグリース組成物は、不混和ちょう度が250以下であるため起動時のトルクが高く、また、初期の音響性能は良好であるものの音響寿命が十分でない場合がある。
さらに、特許文献3,4に記載のグリース組成物は、低発塵性を重視したものであり、長期間にわたる使用においては音響性能の低下や軌道面の損傷が生じる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、優れた音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能を転動装置に付与できるグリース組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能に優れた転動装置を提供することを併せて課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう剤は脂肪酸のリチウム塩であり、その含有量Xは組成物全体の15〜30質量%であるとともに、前記基油の40℃における動粘度は15〜60mm2 /sであり、混和ちょう度は、260以上且つ330以下、及び、335−3X以上且つ395−3X以下の両条件を満足することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤の含有量Xは組成物全体の18〜27質量%であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3のグリース組成物は、請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤は繊維状であり、その長さは3μm以下であることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る請求項4のグリース組成物は、請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤は、炭素数が10以上のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩を含有しており、その割合は増ちょう剤全体の70質量%以上であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項5のグリース組成物は、請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物において、イオウを有する極圧剤を、組成物全体の0.1〜10質量%含有することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係る請求項6の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0013】
本発明のグリース組成物について、増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との関係(すなわち前記両条件)をグラフ化したものを図3に示す。増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との関係が太線で囲まれた六角形の領域(斜線を付した部分)内に位置するものが、本発明のグリース組成物である。この領域の中でも、増ちょう剤の含有量Xが18〜27質量%である領域(すなわち、本発明に係る請求項2のグリース組成物)がより好ましい。
【0014】
本発明は、種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
なお、本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係るグリース組成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のグリース組成物は、増ちょう剤である脂肪酸のリチウム塩と基油とを含有している。
脂肪酸の種類は特に限定されるものではないが、炭素数10〜30のヒドロキシル基を有していない脂肪酸が好ましい。炭素数が9以下のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩は、融点が高く、基油の引火点を超える場合が出てくるので、グリース組成物の製造上好ましくない。また、炭素数が30を超えると、増ちょう性が弱くなるため好ましくない。これらの点は、ヒドロキシル基を有している脂肪酸のリチウム塩でも同様である。
【0016】
なお、前記のような問題点がより生じにくくするためには、炭素数は14〜22がより好ましい。最も好ましくは、炭素数が18のものを70質量%以上含有する脂肪酸リチウムを増ちょう剤として使用するとよい。炭素数18のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩の具体例としては、堺化学株式会社製のリチウムステアレートS−7000があげられる。
【0017】
炭素数が10以上のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩の具体例としては、ステアリン酸リチウム(炭素数18),カプリン酸リチウム(炭素数10),ラウリン酸リチウム(炭素数12),ミリスチン酸リチウム(炭素数14),パルミチン酸リチウム(炭素数16),アラキン酸リチウム(炭素数20),ベヘン酸リチウム(炭素数22),リグノセリン酸リチウム(炭素数24),ヘキサコサン酸リチウム(炭素数26)等があげられる。
【0018】
このような増ちょう剤は、長さが3μm以下の繊維状で基油中に分散されていることが好ましい。そうすれば、増ちょう剤の増ちょう作用と基油への溶解性とのバランスが良好となる。増ちょう剤を長さ3μm以下の繊維状とするためには、基油と増ちょう剤との混合物を220〜230℃に加熱して増ちょう剤を完全に溶解させた後、急冷するとよい。
【0019】
また、基油の種類は特に限定されるものではないが、増ちょう剤の溶解性を考えると、極性分子を有する基油(例えば、エステル油,エーテル油,シリコーン油等)であることが好ましい。あるいは、エステル油を主成分とし(好ましくは50質量%以上で、より好ましくは70質量%以上)、合成炭化水素油,エーテル油,鉱油,シリコーン油,フッ素油等を含有する混合油でもよい。エステル油としては、ジエステル油,ポリオールエステル油,芳香族エステル油,炭酸エステル油等が好ましい。
【0020】
基油の40℃における動粘度は、15〜60mm2 /sである必要がある。15mm2 /s未満であると、蒸発損失が生じたり油膜厚さの不足が生じたりするため、低トルクとはなるものの優れた耐久寿命が得られないおそれがある。また、動粘度が60mm2 /sを超えると、耐久寿命に対しては若干有利になるが、油膜の剪断抵抗が大きくなるためトルクが上昇するおそれがある。
【0021】
本発明の主用途である家庭用電器,情報機器等のように、−30〜120℃程度の温度環境で使用する場合であれば、耐久寿命とトルクとのバランスを考えて、基油の40℃における動粘度は20〜60mm2 /sとすることがより好ましく、25〜55mm2 /sとすることがさらに好ましく、25〜35mm2 /sとすることが最も好ましい。なお、最終的な基油の動粘度が上記の範囲となるならば、40℃における動粘度が10〜500mm2 /sの基油を混合して用いてもよい。
【0022】
本発明のグリース組成物は、EHL油膜下での潤滑状態に増ちょう剤が介在し、且つ、EHL潤滑状態で発生する局部的な高温,高圧状態において増ちょう剤が基油へ溶解もしくは金属表面近傍で溶解し金属表面に吸着して基油の粘度がさらに上昇するため、転動体と軌道面との直接接触を良好に防止する効果(ミクロ的な効果)を有するものと思われる。このミクロ的な効果はおそらく局部的であるため、全体のトルクに影響を与えることが少なく、結果として低トルクを維持できる。
【0023】
EHL油膜内に局部的に脂肪酸リチウムが固形状のまま残ると、そのときの硬度は高圧下で大きくなっているため、軌道面や転動体を損傷させ、長期的には音響性能の劣化を招くことは容易に想像できる。この場合、溶解度が低く融点が高いヒドロキシル基を有する脂肪酸のリチウム塩では、音響性能の劣化の度合いが大きくなり、ヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩と比べると長期的(例えば10年)にはかなりの差になることも容易に想像できる。よって、ヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩を用いるか、又は、ヒドロキシル基を有する脂肪酸のリチウム塩の割合を低く抑えることが好ましい。
【0024】
つまり、ヒドロキシル基を有する脂肪酸のリチウム塩は、ヒドロキシル基を有していないものに比べ、融点が高く溶解度も劣るため、前述の転動体と軌道面との直接接触を防止する効果は比較的小さい。このことは、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムを増ちょう剤とするグリース組成物とステアリン酸リチウムを増ちょう剤とするグリース組成物との滴点を比較すると、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムを増ちょう剤とするグリース組成物の方が高いことからも明らかである。なお、長さが3μm超過の増ちょう剤は、結局EHL部に入っていかないので、前述のミクロ的な効果や問題点には関係しない。
【0025】
また、本発明のグリース組成物は、以下のようなマクロ的な効果も有している。すなわち、増ちょう剤が転動体と軌道面との間に介在して、いわゆるグリース膜を生成するため、転動体と軌道面との直接接触が効果的に防止される。このグリース膜は、増ちょう剤の含有量が多いほど良好に形成される。しかしながら、ほとんどの場合は、増ちょう剤の含有量が多いほど混和ちょう度が低くなってグリース組成物の流動性が低下するので、転動体と軌道面との潤滑は、初期にグリース組成物から離油した基油のみで行われることとなり、寿命に対して不利となる。
【0026】
本発明のグリース組成物は、増ちょう剤の含有量と混和ちょう度との関係が、260以上且つ330以下、及び、335−3X以上且つ395−3X以下の両条件を満足するので、良好なグリース膜とグリース組成物の良好な流動性とが両立される。
グリース組成物の混和ちょう度が低すぎるとトルク変動が大きくなり、逆に混和ちょう度が高すぎるとグリース組成物が転動装置から漏洩しやすくなる。また、前述の転動体と軌道面との直接接触を防止する効果を得るためには、増ちょう剤の含有量はできるだけ多い方が好ましく、しかも、混和ちょう度で表されるグリース組成物の硬さは軟らかい方が好ましい。さらに、耐フレッチング性能を考慮した場合には、転動体と軌道面との間にグリース組成物が良好に保持される必要があるので、グリース組成物が硬いと比較的不利となる場合が多い。よって、音響性能,トルク性能,耐フレッチング性能のバランスを考えると、混和ちょう度は260以上且つ330以下である必要がある。
【0027】
330を超えると、転動装置から漏出しやすくなったり、転動装置内でのグリース組成物の動きが不安定になることによるトルクの変動が発生しやすくなったりするので、転動装置に封入して用いるには適さない場合がある。特に、両側シール付き又は両側シールド付きの密封軸受の場合には、260以上且つ330以下とすることが好ましい。
【0028】
増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全体の15〜30質量%である必要がある。グリース組成物が軟質の場合は剪断力を受けたときに過度に軟化して微粒子が形成され飛散しやすいが、増ちょう剤を15〜30質量%と通常のグリース組成物よりも多量に用いることにより、剪断力が負荷された時の軟化度合が抑制され、且つ、基油が良好に保持されるため、グリース組成物の飛散が生じにくくなる。また、過度の剪断力が負荷された時のみならず、長期間にわたって保管された場合等においても、グリース組成物の性状がより安定したものとなる。
【0029】
増ちょう剤の含有量が15質量%未満であると、上記のような飛散が生じにくいという効果が十分に得られず、30質量%超過であると混和ちょう度が260以上となりにくい。このような問題点がより生じにくくするためには、増ちょう剤の含有量は18〜27質量%であることがより好ましい。
さらに、増ちょう剤の大きさは、転動装置が微小揺動した際の潤滑性や耐フレッチング性能を考えると小さい方が好ましく、その長さは3μm以下であることが好ましい。小さい増ちょう剤の方が比較的多量にグリース組成物中に含有され、また、グリース組成物が微小な揺動部に入り込みやすいので、転動体と軌道面との直接接触を防止する効果が優れたものとなる。このような効果は、混和ちょう度が低すぎる場合は当然期待できない。
【0030】
さらに、本発明のグリース組成物には、耐フレッチング性能を重要視する場合には、ジチオカルバミン酸モリブデン,ジチオカルバミン酸亜鉛,イオウ−リン系添加剤等のような分子中にイオウを有する極圧剤を添加することが好ましい。フレッチング摩耗による損傷は、例えばモータ機器の輸送時等において外部振動を受けることによって発生する。そして、転動体と軌道面とが微小揺動により金属接触し、これによって輸送後に音響性能が低下する。このようなフレッチングを抑制するためには、前述のミクロ的な効果を発現させる増ちょう剤の溶解,介入や、マクロ的な効果を発現させるグリース膜も有効であるが、前述の極圧剤を添加すれば、前述の効果がより高められる。なお、本発明のグリース組成物には、必要に応じて、腐食防止剤,防錆剤等の慣用の添加剤を、音響性能やトルク性能が損なわれない程度に添加してもよい。
【0031】
音響寿命に対しては、転動装置の内部に存在する異物の影響も大きいため、転動装置の各メーカーは転動装置の洗浄を強化している。また、グリース組成物のメーカーにおいては、製造工程において異物の混入がないように努めている。
グリース組成物の製造においては、一般的には、最終工程でフィルタを通すことによって異物を取り除いているが、フィルタの孔径は5〜10μm程度である。なぜなら、通常のグリース組成物は、増ちょう剤の大きさが3μm以上あるので、孔径の小さいフィルタで濾過すると、異物とともに増ちょう剤も取り除かれて大きな性状変化が生じたり、増ちょう剤が構成している繊維の3次元構造が一定方向に配向して、濾過によるグリース組成物の性状変化をコントロールすることが困難となるからである。
【0032】
しかしながら、本発明のグリース組成物は、増ちょう剤の長さは3μm以下であるので、孔径が3μm以上のフィルタであれば、特に問題なく使用可能である。より優れた音響寿命を実現するためには、増ちょう剤の長さを1μm以下にして、孔径が1μmのフィルタを用いて異物を除去することが好ましい。
【0033】
また、優れた音響寿命を実現する上で忘れてはならないことは、保持器のポケットと転動体表面との間の潤滑である。優れた音響寿命が要求される機器には、トルク変動が比較的小さいことから樹脂製保持器が組み込まれた転動装置を用いる場合がほとんどであるが、このとき樹脂製保持器と転動体とが十分に潤滑されていないと、トルク変動をきたすばかりでなく、長期的には樹脂が削れ異物となって、転動体表面や軌道面に圧痕を生じさせてしまう。よって、このようなことを避けるために、いわゆる内部潤滑油をあらかじめ塗布する方法や、保持器のポケットと転動体との間の隙間を大きくする方法等が提案されている。
【0034】
本発明のグリース組成物は、増ちょう剤の大きさが小さく且つ柔軟であるので、より微小な隙間までグリース状のままで入り込みやすい。よって、保持器のポケットと転動体との間に十分に入り込んで保持されるため、安定した潤滑を行うことができる。もちろん、内部潤滑油との併用も可能である。
本発明のグリース組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、脂肪酸リチウムを基油に完全に溶解させた後、急冷して結晶の成長を抑える方法が好ましい。
【0035】
そして、その後に、極性を有する添加剤(例えば酸化防止剤)を加え、ニーダー,プラネタリミキサー,又はホモジナイザを用いて混和ちょう度が260〜330となるまで混練する。このとき、グリース組成物が劣化しない程度であれば加熱してもよい。さらに、必要に応じて所望の添加剤を加え、さらに混練を行った後、3本ロールミルで仕上げを行い、さらにフィルタで濾過する。これらの工程は、室内環境がコントロールされたクリーンルーム内で実施されることが好ましい。
【0036】
前記極性を有する添加剤は、グリース組成物の製造工程中においてグリース組成物の劣化を効果的に防止する効果を有する酸化防止剤であることが好ましく、アミン系酸化防止剤であることがさらに好ましい。そして、モリブデンジチオフォスフェート及びスルホン酸金属塩の少なくとも一方とアミン系酸化防止剤との両者を用いることが最も好ましい。
【0037】
このように急冷するとともに極性物質を加えて混練することによって、増ちょう剤の3次元的な構造の保持力が弱まるので、増ちょう剤の含有量が比較的多くても混和ちょう度の高いグリース組成物を得ることができる。そして、増ちょう剤の含有量が比較的多いため、剪断が負荷されても軟らかくなりにくい。
【0038】
さらに、本発明のグリース組成物のより好ましい製造方法を、以下に説明する。まず、所定量の脂肪酸リチウムを基油に完全に溶解させ急冷した後、所望の混和ちょう度よりも20〜80小さい混和ちょう度となるまで、ニーダ,プラネタリミキサー,又はホモジナイザを用いて混練して、ベースグリースを製造する。ベースグリースを製造する際には40〜80℃程度に加熱しても差し支えないが、添加剤は加えない(ただし酸化防止剤は添加してもよい)。このベースグリースに極圧剤等の添加剤を加え、所望の混和ちょう度になるまで3本ロールミルで混練する。そして、フィルタで異物を濾過してグリース組成物を得る。
【0039】
〔実施例〕
以下に、本発明のグリース組成物及び転動装置を、さらに具体的な実施例を示して説明する。
ポリオールエステル油を基油とし、脂肪酸リチウムを増ちょう剤とするとともに、数種の添加剤を含有する26種のグリース組成物(表2〜6に示す実施例1〜20及び比較例1〜6)を用意した。これらのグリース組成物は、まずベースグリースを製造し、それを希釈して増ちょう剤の含有量を調整することによって製造した。以下にその方法を説明する。
【0040】
40℃における動粘度が24.2mm2 /sであるポリオールエステル油(花王株式会社製のカオルーブ390)と、40℃における動粘度が33.0mm2 /sであるポリオールエステル油(花王株式会社製のカオルーブ268)とを、質量比50:50で混合して、混合基油を得た。この混合基油の40℃における動粘度は、28mm2 /sである。
【0041】
この混合基油に、表1に示す含有量となるような量の増ちょう剤を加え、230℃に加熱して溶解させた。220〜230℃で3分間保持した後、ドライアイス(登録商標)で−40℃に冷却したステンレス板上に薄く広げて急冷し、ベースグリースを得た。得られた7種(A〜G)のベースグリースの組成,増ちょう剤の繊維長,及び混和ちょう度を、表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
なお、表1の増ちょう剤の欄に記載された数値は、ベースグリースにおける増ちょう剤の含有量であり、その単位は質量%である。また、表1に記載の増ちょう剤のうち、ステアリン酸リチウム及び12−ヒドロキシステアリン酸リチウムは堺化学株式会社社製であり、アラキン酸リチウム及びリグノセリン酸リチウムは別途合成したものである。
【0044】
次に、このようなベースグリースを、3本ロールミルに3回通して均一化した。そこに、増ちょう剤の含有量が表2〜6に示す値となるような量の前記混合基油と、所定量の添加剤とを加え、井上製作所製のタンジェンシャル型ニーダを用いて所定の混和ちょう度となるまで混練した。なお、混練条件(ニーダの回転速度,ニーダ温度,混練時間)は表2〜6に示す通りであり、添加剤は、混練を開始してから所定時間(表2〜6に記載の添加剤添加時期)経過した後に添加して、さらに混練を続けた。
【0045】
そして、表2〜6に記載のような孔径を有するフィルタ(エスエムシー株式会社製の焼結ステンレスフィルタで、厚さは3mmである)で濾過し、さらに遠心式脱抱処理を行ってグリース組成物を得た。得られた26種(実施例1〜20及び比較例1〜6)のグリース組成物の組成を、表2〜6に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
なお、表2〜6の「増ちょう剤の含有量」及び「添加剤の含有量」の欄に記載されている数値は、グリース組成物全体を100とした場合における増ちょう剤の質量比及び各添加剤の質量比である。また、基油の含有量は表2〜6には記載されていないが、グリース組成物全体から前述の増ちょう剤の含有量及び添加剤の含有量を差し引いた残部である。
【0052】
さらに、表2〜6に記載の添加剤のうち、アミン系酸化防止剤はチバガイギー社製のイルガノックスL57、フェノール系酸化防止剤はチバガイギー社製のイルガノックスL06、防錆剤Aはスルホン酸亜鉛(KING社製のNasul ZS)、防錆剤Bはスルホン酸バリウム(KING社製のNasul BSN)、腐食防止剤はベンゾトリアゾール(チバガイギー社製のイルガメット39)、極圧剤Aはジチオリン酸モリブデン(旭電化社製のサクラルーブ300)、極圧剤Bはイオウ−リン系添加剤であるトリ(アルキル化フェニル)フォスフォロチオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製のイルガルーブ232)である。
【0053】
さらに、本発明における増ちょう剤の長さとは、以下のようにして測定したものである。グリース組成物をワセリンで5〜20倍に希釈し、電子顕微鏡用の金属メッシュ上に塗布した。次に、溶剤(n−ヘキサン等)を入れたシャーレに金属メッシュを載置することにより、グリース組成物から油成分を除去した。溶剤から金属メッシュを取り出し乾燥した後、電子顕微鏡(株式会社明石製作所製のLEM−2000)にセットし、増ちょう剤を観察した。測定倍率は6000倍とし、一視野の主流を占める代表的大きさの繊維5点の長さを測定し、その平均値を算出した。
【0054】
次に、このようにして製造した26種のグリース組成物の混和ちょう度,混和安定度,及び離油度(測定条件は100℃,24時間)を、JIS K2220に規定された方法により測定した。その結果を表2〜6に併せて示す。また、実施例1〜15及び比較例1〜4のグリース組成物については、増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との関係を、図3のグラフにプロットすることにより示した。実施例は○印でプロットし、比較例は□印でプロットした。各プロット内の数字は、実施例番号又は比較例例番を示している。
【0055】
さらに、これらのグリース組成物を、それぞれ十分に洗浄した深溝玉軸受(呼び番号608)に充填し、該深溝玉軸受の音響寿命(加速試験及び通常試験),トルク性能(初期トルク値及び回転後のトルク値),及び耐フレッチング性能を評価した。以下のその方法を説明する。
〔音響寿命の評価方法について〕
まず、深溝玉軸受の構成を、図1を参照しながら説明する。この深溝玉軸受1は、内輪10と、外輪11と、内輪10と外輪11との間に転動自在に配設された複数の玉12と、内輪10と外輪11との間に複数の玉12を保持する保持器13と、接触形のゴムシール14,14と、で構成されている。そして、内輪10と外輪11との間に形成され玉12が内設された空隙部内にはグリース組成物Gが充填され、シール14,14により軸受内部に密封されている。
【0056】
なお、グリース組成物Gの量は前記空隙部の容積の5体積%であり、外輪11の軌道溝狙いで封入してある。グリース組成物の封入量は通常は25〜40体積%であるが、これより少ない量とすることで該音響寿命の評価を加速試験としている。
この深溝玉軸受1を、58.8Nの予圧を負荷した状態で、90℃の環境下、回転速度7200min−1で回転させた。そして、回転168時間毎にアンデロン値(ハイバンド値)をアンデロンメータを用いて測定し、アンデロン値が3アンデロンを超えるまでの時間を加速試験における音響寿命とした。
【0057】
加速試験ではなく通常試験を行う場合には、グリース組成物Gの封入量を前記空隙部の容積の35体積%とする。そして、58.8Nの予圧を負荷した状態で、80℃の環境下、回転速度3600min−1で回転させた。そして、回転5000時間毎にアンデロン値(ハイバンド値)をアンデロンメータを用いて測定し、アンデロン値が3アンデロンを超えるまでの時間を通常試験における音響寿命とした。
【0058】
両試験の結果を表2〜6に併せて示す。なお、表2〜6に示した音響寿命の数値は、両試験ともに、増ちょう剤がリチウム石けんで基油がエステル油である市販のグリース組成物(協同油脂株式会社製のマンテルプSRL)を充填した深溝玉軸受の音響寿命を1とした場合の相対値で示してある。
〔トルク性能の評価方法について〕
音響寿命の評価方法と同様に、深溝玉軸受1の空隙部内にグリース組成物Gを充填した。グリース組成物Gの量は前記空隙部の容積の35体積%であり、外輪11の軌道溝狙いで封入してある。
【0059】
このような深溝玉軸受1を、図2に示すようなスピンドルモータに組み込んだ。すなわち、モータ33のシャフト31とケーシング32との間に、一対の深溝玉軸受1,1を取り付けた。深溝玉軸受1,1に58.8Nの予圧を負荷した状態で、25℃の環境下、スピンドルモータをモータ33により回転速度7200min−1で2時間回転させた後に、同条件で回転時のトルク値を10分間測定した。そして、10分間のトルク値の平均値、及び、最大値と最小値との差をそれぞれ算出した。
【0060】
そして、算出した両値を、前述の市販のグリース組成物を充填した深溝玉軸受の場合と比較することにより、深溝玉軸受1のトルク性能(初期トルク値)を評価した。すなわち、前記両値のうち少なくとも一方が、市販のグリース組成物の50%以下であった場合は◎、50%超過80%以下であった場合は○、80%超過120%以下であった場合は△、120%超過であった場合は×とした。結果を表2〜6に併せて示す。
【0061】
さらに、前述の音響寿命の評価(通常試験)において5000時間回転させた深溝玉軸受1を、室温まで冷却した後、初期トルク値を測定した前述の方法と同様にして、トルク値(回転後のトルク値)を測定した。このように長時間回転させた後のトルク値についても、初期トルク値の場合と同様に、市販のグリース組成物のトルク値を基準にして評価した。
【0062】
〔耐フレッチング性能の評価方法について〕
前述の初期トルク値を測定し終わったスピンドルモータを利用して、耐フレッチング性能の評価を行った。すなわち、シャフト31を振り幅0.5°、周波数5Hzで1時間揺動させ、揺動の前後でのアンデロン値(ハイバンド値)を比較した。そして、アンデロン値の上昇量が0.2以下であった場合は◎、0.2超過0.5以下であった場合は○、0.5超過1以下であった場合は△、1超過であった場合は×とした。結果を表2〜6に併せて示す。なお、アンデロン値の測定方法は、試験温度が25℃であることを除いては、前述の音響寿命の場合と同様である。
【0063】
表2〜6から分かるように、実施例1〜20のグリース組成物を充填した深溝玉軸受は、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能のいずれにおいても優れた結果を示した。また、混和安定度も優れていた。
また、実施例1〜5と実施例16〜20とを比較すると、極圧剤を添加した実施例16〜20の方が耐フレッチング性能は優れていたが、音響寿命は若干劣っていた。これは、極圧剤に由来する金属や遊離イオウによって、基油の酸化劣化が若干促進されたためであると思われる。
【0064】
次に、実施例1のグリース組成物において、基油の動粘度のみを種々変更したものを用意した。この時、各グリース組成物の混和ちょう度は、295〜305となるようにした。そして、各グリース組成物を深溝玉軸受に充填し、前述と同様の方法による初期トルク値、及び、前述と同様の加速試験による音響寿命を評価した。その結果を図4のグラフに示す。
【0065】
なお、このグラフにおいては、初期トルク値は○印でプロットしてあり、音響寿命は●印でプロットしてある。また、音響寿命の数値は、前述の市販のグリース組成物(協同油脂株式会社製のマンテルプSRL)を充填した深溝玉軸受の値を1とした場合の相対値で示してある。
初期トルク値が上限値(前述の市販のグリース組成物の場合の80%超過120%以下)以下であり、音響寿命が下限値(1.5)以上であるためには、40℃における基油の動粘度は15〜60mm2 /sとする必要があることが、図4のグラフから分かる。
【0066】
次に、実施例1のグリース組成物において、混和ちょう度のみを種々変更したものを用意した(増ちょう剤の含有量Xは20質量%である)。そして、各グリース組成物を深溝玉軸受に充填し、前述と同様の加速試験による音響寿命を評価した。その結果を図5のグラフに示す。
音響寿命を好ましいレベル以上とするためには、混和ちょう度は270以上330以下(すなわち、335−3×20以上、且つ、395−3×20以下)とする必要があることが、図5のグラフから分かる。
【0067】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
さらに、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグリース組成物は、所定の動粘度を有する基油に脂肪酸のリチウム塩を所定量含有させてなり、所定の混和ちょう度を有しているので、優れた音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能を転動装置に付与できる。
また、本発明の転動装置は、前述のような優れた性能を有するグリース組成物を備えているので、音響寿命,トルク性能,及び耐フレッチング性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構成を示す縦断面図である。
【図2】トルク性能及び耐フレッチング性能の評価に使用するスピンドルモータの縦断面図である。
【図3】本発明のグリース組成物において、増ちょう剤の含有量と混和ちょう度との相関を示すグラフである。
【図4】40℃における基油の動粘度と、初期トルク値及び音響寿命と、の相関を示すグラフである。
【図5】混和ちょう度と音響寿命との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 深溝玉軸受
10 内輪
11 外輪
12 玉
G グリース組成物
Claims (6)
- 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、
前記増ちょう剤は脂肪酸のリチウム塩であり、その含有量Xは組成物全体の15〜30質量%であるとともに、
前記基油の40℃における動粘度は15〜60mm2 /sであり、
混和ちょう度は、260以上且つ330以下、及び、335−3X以上且つ395−3X以下の両条件を満足することを特徴とするグリース組成物。 - 前記増ちょう剤の含有量Xは組成物全体の18〜27質量%であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
- 前記増ちょう剤は繊維状であり、その長さは3μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物。
- 前記増ちょう剤は、炭素数が10以上のヒドロキシル基を有していない脂肪酸のリチウム塩を含有しており、その割合は増ちょう剤全体の70質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物。
- イオウを有する極圧剤を、組成物全体の0.1〜10質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物。
- 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする転動装置。
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