JP3503662B2 - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

Info

Publication number
JP3503662B2
JP3503662B2 JP02456795A JP2456795A JP3503662B2 JP 3503662 B2 JP3503662 B2 JP 3503662B2 JP 02456795 A JP02456795 A JP 02456795A JP 2456795 A JP2456795 A JP 2456795A JP 3503662 B2 JP3503662 B2 JP 3503662B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lubricating oil
cage
polyolefin
bearing
oil
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP02456795A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08200372A (ja
Inventor
貴彦 内山
庸一郎 杉森
敏己 高城
雅雄 山本
恵美子 白石
敦 横内
道治 中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Priority to JP02456795A priority Critical patent/JP3503662B2/ja
Priority to US08/499,375 priority patent/US5575570A/en
Publication of JPH08200372A publication Critical patent/JPH08200372A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3503662B2 publication Critical patent/JP3503662B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Rolling Contact Bearings (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、苛酷な条件下でHDD
やVTR、DAT、LBP等の回転支持部に使用される
各種転がり軸受に関し、より詳細には、潤滑性(トル
ク、音響特性)を向上させ、且つ寿命が長く、防錆性に
富んだ転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】転がり軸受は、図1に示されるように、
外周面に内輪軌道1を有する内輪2と、内周面に外輪軌
道3を有する外輪4とを同心に配置し、内輪軌道1と外
輪軌道3との間に複数個の転動体5を転動自在に設ける
事で構成されている。外輪4の両端部内周面には、それ
ぞれ円輪状のシール板6の外周縁を係止し、両シール板
6によって転動体5の設置部分に存在するグリースや発
生したダスト(発塵)が外部に漏洩したり、或は外部に
浮遊する塵芥が転動体5の設置部分に侵入したりするの
を防止している。
【0003】また、複数個の転動体5は、図2に示す様
な保持器7に転動自在に保持されている。この保持器7
は、合成樹脂を射出成形する事により、一体に形成され
ている。即ち、この保持器7は、円環状の主部8と、こ
の主部8の片面に設けられた複数組の保持部9とを備え
ている。各保持部9は、互いに間隔をあけて配置された
1対の弾性片10から成る。各保持部9を構成する1対
の弾性片10の互いに対向する面は、互いに同心の球状
又は円筒状の凹面をなしている。各転動体5は、各弾性
片10の間隔を弾性的に押し広げつつ、上記1対の弾性
片10の間に押し込む事により、各保持部9に転動自在
に保持される。
【0004】一般に保持器7に使用されている材料は、
金属、又はポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ
ブチレンテレフタレート樹脂等の射出成形可能な合成樹
脂が単体、若しくはガラス繊維、カーボン繊維、有機繊
維等で強化した合成樹脂組成物が使用されている。ま
た、保持器7は転動体5を保持する機能しか有しておら
ず、転がり軸受の潤滑には、多量の潤滑油、又はグリー
ス等の半固体状潤滑剤が使用されている。特に、多量の
潤滑油が使用できずにグリース等の半固体状潤滑剤を使
用した場合、該潤滑剤に起因する攪拌抵抗のため、軸受
により支持された軸等を回転させるために要するトルク
が大きく、しかも回転に伴ってのトルク変動も大きくな
りやすい。
【0005】そこで、従来より保持器7自体に潤滑機能
を付与した転がり軸受も提案されている。例えば、特開
昭61−6429号公報には、圧縮成形により多孔質に
成形されたポリアミドイミド樹脂にフッ素化油を含浸さ
せた軸受保持器が開示されている。また、特開平1−9
3623号公報には、油を含有するバインダと母材とか
らなる含油プラスチックを成形した保持器を、潤滑油中
に含浸させた保持器が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開昭61−6429号公報や特開平1−93623号公
報等に記載されているような潤滑油を含浸させた保持器
を組み込んだ転がり軸受においては、転がり軸受の回転
に伴って保持器の表面から潤滑油が徐々に滲み出し、長
期にわたり潤滑作用が付与されるものの、回転初期や低
速回転時における潤滑性に関しては必ずしも充分とはい
えない状況にある。また、含浸される潤滑油は、保持器
を形成する樹脂との親和性から、例えば防錆剤等の他の
物質を添加して転がり軸受に潤滑性と共に他の特性を付
与することは困難である。
【0007】そこで本発明の目的は、長期にわたる潤滑
性を維持するとともに、回転初期や低速回転時における
潤滑性にも優れ、しかも低トルクでトルク変動もなく、
また防錆性等の潤滑性以外の特性も容易に付与できる転
がり軸受を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の請求項1に係る転がり軸受は、外周面に内
輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪
と、内輪軌道と外輪軌道との間に転動自在に設けられた
複数個の転動体と、該転動体を保持する保持器とを有す
る転がり軸受において、ポリオレフィンと、ポリオレフ
ィンよりも大きな射出成形時における溶融粘度を有する
樹脂とからなる樹脂組成物を所望の保持器形状に成形し
てなる成形体を潤滑油中に浸漬して得られた保持器を組
み込み、且つオイルプレーティングを施したことを特徴
とする。また、本発明の請求項2に係る転がり軸受は、
前記保持器において、ポリオレフィンよりも大きな射出
成形時における溶融粘度を有する樹脂100重量部に対
して、ポリオレフィンが5〜100重量部の割合で配合
されることを特徴とする
【0009】
【作用】ポリオレフィンよりも大きな射出成形時におけ
る溶融粘度を有する樹脂(以下、高溶融粘度樹脂と称す
る)とポリオレフィンとからなる樹脂組成物を軸受用保
持器の形状に成形した成形体を潤滑油中で浸漬処理する
ことによって、保持器には一定量の潤滑油が含浸され
る。ここで、保持器となる前記樹脂組成物が潤滑油と親
和性の高いポリオレフィンを含むことにより、保持器中
の潤滑油の含有量が多くなるとともに、潤滑油の保持力
も大きくなり、もって潤滑油が長期間安定して転動体の
転動部分に供給される。そのため、この保持器を組込ん
だ転がり軸受は回転に要するトルクが低減すると共に、
このトルクの変動が小さくなる。しかも、樹脂組成物の
母材となる高溶融粘度樹脂とポリオレフィンとは、射出
成形時における剪断速度下での溶融粘度が異なり、この
粘度差により高溶融粘度樹脂中に分散するポリオレフィ
ンの縦横比が大きくなり吸油性能が向上する。特に、射
出成形時のポリオレフィンの溶融粘度が高溶融粘度樹脂
の溶融粘度より低いほど、射出成形品の表面をポリオレ
フィンが多く占有し、表面にポリオレフィンの特性が付
与されるため、更に吸油性能が向上する。また、保持器
の機械的強度に関しても、保持器形状に成形した後に、
潤滑油中に浸漬するために、成形時におけるウエルドラ
インの発生もなく、機械的強度に優れる。更に、前記保
持器を組み込んだ転がり軸受にオイルプレーティングを
施すことにより、転がり軸受の全露出面に一定量の潤滑
油が均一に付着される。従って、回転初期や低速回転時
のように、前記保持器からの潤滑油の滲み出しが充分で
ない場合でも、表面に付着した潤滑油により潤滑性が付
与される。また、オイルプレーティング用の潤滑油に他
の特性付与剤を添加することにより、潤滑性に加えて他
の特性を付与できる。例えば、オイルプレーティング用
潤滑油に防錆剤を添加することにより、特に高温度で使
用される転がり軸受に多く見られる、錆の発生を抑制す
ることができる。
【0010】以下、本発明に係る転がり軸受に関して詳
細に説明する。本発明に係る転がり軸受に組み込まれる
保持器は、高溶融粘度樹脂とポリオレフィンとの混合樹
脂組成物を所望の保持器形状に成形し、潤滑油中に浸漬
することにより得られる。
【0011】前記高溶融粘度樹脂は、保持器の形状を形
成および維持する役割を果たすために耐熱性能および耐
油性能に優れることが好ましく、例えばポリアミド、ポ
リアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチ
レンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレ
ンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテ
ルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケ
トン等を好適に例示できる。特に、ポリアミド樹脂は耐
熱性能や耐油性能に加えて、価格が安価な事やポリオレ
フィンによる改質の容易性から好適である。
【0012】前記ポリオレフィンは、高溶融粘度樹脂中
に分散されて、潤滑油を保持する役割を果たす。例えば
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポ
リ−4−メチル−1−ペンテン、及びそれらの共重合体
を単独、又は2種以上を組合わせて用いてよい。また、
これらポリオレフィンは前記高溶融粘度樹脂と混合した
際に、単に溶融混練しただけで優れた機械的特性が発揮
されない場合は、該ポリオレフィンを適当な官能基でグ
ラフト変性したグラフト変性ポリオレフィンとしてもよ
いし、又はそのグラフト変性ポリオレフィン、若しくは
適当な相溶化剤を母材とポリオレフィンの相溶化のため
に適宜添加してもよい。
【0013】本発明に係る転がり軸受に組み込まれる保
持器は、前記高溶融粘度樹脂と前記ポリオレフィンとを
混合してなる樹脂組成物を成形母材とする。ここで、
溶融粘度樹脂とポリオレフィンとは、射出成形時におけ
る剪断速度下での溶融粘度の差が大きいほど、高溶融粘
樹脂中に分散されるポリオレフィンの縦横比が大きく
なり、吸油性能が向上する。この高溶融粘度樹脂および
ポリオレフィン個々の溶融粘度の大きさは特に限定され
るものではなく、溶融粘度に差があればよく、またその
差は大きいほど好ましい。特に、射出成形時のポリオレ
フィンの溶融粘度が低いほど、射出成形品の表面をポリ
オレフィンが多く占有して、射出成形品の表面にポリオ
レフィンの特性が付与されるため、更に吸油性能が向上
する。
【0014】また、高溶融粘度樹脂とポリオレフィンと
は、好ましくは高溶融粘度樹脂100重量部に対してポ
リオレフィン5〜100重量部の割当で混合される。こ
こで、ポリオレフィンの配合量が5重量部未満の場合に
は、保持器の吸油性が十分ではなく、一方ポリオレフィ
ンが100重量部を越えて配合された場合には、保持器
としての耐熱性、機械的特性に劣るとともに、潤滑油に
含浸させた際に潤滑油によりポリオレフィンが膨潤して
寸法精度が著しく低下してしまうため好ましくない。
【0015】更に、高溶融粘度樹脂およびポリオレフィ
ンからなる成形母材には、機械的強度の増強のために、
潤滑性能を低下させない程度に繊維状充填材を添加する
ことができる。例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド
繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、窒化ケイ
素繊維、ステンレス繊維等を挙げることができるが、よ
り好適にはガラス繊維、炭素繊維、デュポン社製のケブ
ラー、ノーメックス、帝人(株)製のテクノーラ、コー
ネックスで代表される高耐熱性のアラミド繊維等を例示
できる。但し、これら繊維状充填材の配合量は、150
重量部を越えると溶融混練が難しくなり、良好な組成物
を得ることができなくなる。
【0016】前記成形母材には、更に適量の各種充填材
(剤)や各種安定剤を配合してもよい。例えば、有機充
填材、無機充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光保護
剤、耐熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、過酸化物分解
剤、流動性改良剤、非粘着性付与剤、離型剤、増核剤、
可塑剤、固体潤滑剤、顔料、染料等を配合することがで
きる。
【0017】これら樹脂組成物、並びに必要に応じて配
合される繊維状充填材や各種添加剤は、各々別々に溶融
混練することが可能であり、また予めこれらの材料をヘ
ンシェルミキサー、タンブラー、リボンミキサー等の混
合機で予備混合した後に溶融混練機へ供給する事もでき
る。溶融混練機としては単軸又は、二軸押出機、混合ロ
ール、加圧ニーダー、ブラベンダープラストグラフ等の
公知の溶融混練装置が使用できる。溶融混練する際の温
度は、繊維状充填材を除く各成分の溶融が十分進行し、
且つ分解しない温度を適宜選定すればよい。
【0018】本発明に係る転がり軸受に組み込まれる保
持器は、前記高溶融粘度樹脂および前記ポリオレフィン
からなる樹脂組成物、あるいは必要に応じて更に前記繊
維状充填材や各種添加剤を混合してなる成形母材を所望
の保持器形状に成形した後、該成形体を潤滑油中に浸漬
することにより完成される。成形方法は通常の射出成形
法であり、例えばインラインスクリュー式射出成形機を
用いて行うことができる。
【0019】前記含浸用潤滑油は特に限定されないが、
パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油の他、炭化水素系
(ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキル芳香
族)、ポリアルキレングリコール、ジエステル、ヒンダ
ードエステル、ネオペンチルグリコールエステル、トリ
メチロールエステル、ペンタエリスリトールエステル、
ジペンタエリスリトールエステル、芳香族エステル、シ
リコーン系(シリコーンオイル、ケイ酸エステル)、フ
ッ素系(クロロフルオロカーボン、パーフルオロポリエ
ーテル、フルオロエステル)、フェニルエーテル、リン
酸エステル等の合成潤滑油が例示できるが、ポリオレフ
ィンに吸収されやすい鉱油、又は炭化水素系、脂肪酸エ
ステル、ポリアルキレングリコール、フェニルエーテ
ル、リン酸エステル系の合成潤滑油が好ましく、特にジ
エステル、ヒンダードエステル系の合成潤滑油及びエー
テル系の合成潤滑油が好ましい。
【0020】これら含浸用潤滑油は、前記樹脂組成物を
成形してなる保持器100重量部に0.1〜15重量
%、更に好ましくは0.1〜10重量%の範囲となるよ
うに含浸される。ここで、潤滑油の含浸量が0.1重量
%未満の場合は、絶対的に潤滑油の量が不足し、保持器
から転動体の転動部分に供給される潤滑油が早期に枯渇
し、軸受の耐久性を損なう。一方、潤滑油を15重量%
を越えて含浸させても、軸受の潤滑性の向上を図れない
にもかかわらず、保持器の寸法精度の低下並びに機械的
特性の低下をきたすこととなる。しかも潤滑油の含浸に
伴う時間が長くなるため、生産効率が低下し保持器の価
格高騰の原因となる。
【0021】前記含浸用潤滑油の粘度は特に限定されな
いが、40℃での動粘度が10〜150mm2 /sが好
ましく、より好ましくは10〜130mm2 /sであ
る。この理由として40℃での動粘度が10mm2 /s
未満の低粘度の潤滑油は、保持器内部への浸透速度が速
く、保持器の含油量も大きくなるものの、保持器に含浸
させた潤滑油の保持性が悪く(早期に保持器から染み出
し)、早期に潤滑油が枯渇してしまう。反対に40℃で
の動粘度が150mm2 /sを超えるような高粘度の潤
滑油を使用した場合には、この潤滑油が保持器を構成す
るポリオレフィン中に含浸しずらくなるだけでなく、本
発明の保持器を組込んだ転がり軸受の回転トルクも大き
くなる。
【0022】前記含浸用潤滑油の保持器中の含浸量は、
高溶融粘度樹脂の融点以下の温度で、含浸用潤滑油を加
温することにより、また浸漬時間を長くすることによっ
て多くなる。但し、潤滑油の液温が高過ぎると保持器が
熱変形をきたすため、潤滑油の液温を高溶融粘度樹脂の
融点より概ね50℃以上低く設定して、浸漬処理するこ
とが好ましい。また、前記含浸用潤滑油は、本発明の目
的を損なわない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、防錆
剤、極圧剤、油性剤、粘度指数向上剤、摩耗防止剤等を
含んでいてもよい。
【0023】本発明に係る転がり軸受は、上記の如く潤
滑油が含浸された保持器を軸受本体に組み込み、更にオ
イルプレーティングを施して完成される。このオイルプ
レーティングに使用される潤滑油は特に限定されず、前
記含浸用潤滑油と同一であっても、異なっていても良
く、含浸用潤滑油として列挙された前記潤滑油を少なく
とも1種類であれば良い。また、オイルプレーティング
に使用される潤滑油には、保持器に含浸用潤滑油と同様
に、酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、油性剤、粘度指数向
上剤、摩耗防止剤等を含んでいてもよい。
【0024】前記オイルプレーティングの適用方法は特
に限定されない。例えば、保持器を組み込んだ転がり
軸受を潤滑油を溶かし込んだ揮発性溶媒中に浸漬し、そ
の後引き上げ、揮発性溶媒を蒸発させる方法、前記揮
発性溶媒に代えて灯油等の揮発性の低い溶媒を使用し、
遠心脱油により付着量を調整しながら適用する方法、
潤滑油単独あるいは潤滑油を溶かし込んだ溶媒を、保持
器を組み込んだ転がり軸受に直接噴霧する方法等を適宜
選択して行うことができる。特に、前記およびの方
法が、潤滑油を転がり軸受の全面にわたり均一に、しか
も一定量付着させることができると共に、処理効率も高
いために好ましい。また、オイルプレーティングによる
潤滑油の付着量は、回転初期や低速回転時における潤滑
性の付与に寄与する量であれば特に限定されない。
【0025】
【実施例】以下、本発明の効果を説明するために実施例
および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。
【0026】本発明の転がり軸受の効果を確認するた
め、潤滑油を含浸させた保持器を組み込んだ内径5m
m、外形13mm、幅4mmのミニアチュア玉軸受を用
いて回転試験を行った。尚、保持器の形状は、図1およ
び図2に示すような冠型保持器とした。試験条件は次の
通りである。 内輪回転数 :3600r.p.m. スラスト荷重:2kgf 雰囲気 :80℃,5%RH
【0027】また、評価方法は以下の通りである。 (a)音響寿命 音響寿命の評価は、軸受の音響特性の評価に一般的に使
用されているアンデロン値を用いた。アンデロン値に
は、高周波の数値(H.B.)、中周波の数値(M.
B.)、低周波の数値(L.B.)があるが、L.B.
は転がり軸受の性能にあまり影響しないため、本実施例
ではH.B.およびM.B.により音響寿命の評価を行
った。音響特性の判定は、保持器を組み込んで完成され
た前記ミニアチュア玉軸受のうち、初期値がH.B.、
M.B.共に1.0以下であることを確認したものを試
験軸受として用い、前記の試験条件下で500時間毎に
アンデロン値を測定した。そして、H.B.、M.B.
の何れかが3.0以上となった時点で試験を中止し、そ
れまでの時間を音響耐久時間とした。 (b)トルク トルクの測定は、図3に概略を示す軸受トルク測定装置
により行った。試験軸受20を3600r.p.m.で
回転させ、ストレインゲージ21を用いて測定したトル
ク値をレコーダに記録し、回転10分後のトルクがほぼ
安定した時の値を採用した。尚、同図において、符号2
2はエアスピンドル、23はアーバ、24はアルミキャ
ップ、25はエアベアリングである。トルクの合否判定
は、初期値が1.2g・cm以下であり、試験終了時の
値が2.0g・cm以下であれば合格とした。
【0028】○実施例1 ナイロン66を70重量%、低粘度高密度ポリエチレン
を23重量%、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレ
ン7重量%を溶融混練した樹脂組成物を射出成形して得
た保持器に、その重量に対して4.8重量%のポリ−α
−オレフィン系合成潤滑油(40℃の動粘度が46mm
2 /s)を含浸させた後、前記玉軸受に組み込み、更に
オイルプレーティング用の潤滑油〔ポリ−α−オレフィ
ン系合成潤滑油(40℃の動粘度が46mm2 /s)〕
を3重量%の割合で溶かし込んだ揮発性溶媒に浸漬し、
その後引き上げて揮発性溶媒を蒸発させ、全体として前
記潤滑油を3mg付着させて試験軸受を完成した。そし
て、この試験軸受の音響寿命およびトルクを前記の測定
条件で測定した。測定結果を第1表に示す。
【0029】○実施例2 実施例1と同様に作成した保持器に、その重量に対して
0.25重量%のジ−2−エチルヘキシルセバケート系
合成潤滑油(40℃の動粘度が12mm2 /s)を含浸
させた後、前記玉軸受に組み込み、更に実施例1と同様
の方法でオイルプレーティング用の潤滑油〔ジ−2−エ
チルヘキシルセバケート系合成潤滑油(40℃の動粘度
が12mm2 /s)〕を全体として3mg付着させて試
験軸受を完成した。そして、この試験軸受の音響寿命お
よびトルクを前記の測定条件で測定した。測定結果を第
1表に示す。
【0030】○実施例3 実施例1と同様に作成した保持器に、その重量に対して
0.58重量%のジ−2−エチルヘキシルセバケート系
合成潤滑油(40℃の動粘度が12mm2 /s)を含浸
させた後、前記玉軸受に組み込み、更に実施例1と同様
の方法でオイルプレーティング用の潤滑油〔ジ−2−エ
チルヘキシルセバケート系合成潤滑油(40℃の動粘度
が12mm2 /s)〕を全体として3mg付着させて試
験軸受を完成した。そして、この試験軸受の音響寿命お
よびトルクを前記の測定条件で測定した。測定結果を第
1表に示す。
【0031】○実施例4 実施例1と同様に作成した保持器に、その重量に対して
1.20重量%のジ−2−エチルヘキシルセバケート系
合成潤滑油(40℃の動粘度が12mm2 /s)を含浸
させた後、前記玉軸受に組み込み、更に実施例1と同様
の方法でオイルプレーティング用の潤滑油〔ジ−2−エ
チルヘキシルセバケート系合成潤滑油(40℃の動粘度
が12mm2 /s)〕を全体として2mg付着させて試
験軸受を完成した。そして、この試験軸受の音響寿命お
よびトルクを前記の測定条件で測定した。測定結果を第
1表に示す。
【0032】○実施例5 実施例1と同様に作成した保持器に、その重量に対して
4.60重量%のジ−2−エチルヘキシルセバケート系
合成潤滑油(40℃の動粘度が12mm2 /s)を含浸
させた後、前記玉軸受に組み込み、更に実施例1と同様
の方法でオイルプレーティング用の潤滑油〔ジ−2−エ
チルヘキシルセバケート系合成潤滑油(40℃の動粘度
が12mm2 /s)〕を全体として3mg付着させて試
験軸受を完成した。そして、この試験軸受の音響寿命お
よびトルクを前記の測定条件で測定した。測定結果を第
1表に示す。
【0033】○実施例6 実施例1と同様に作成した保持器に、その重量に対して
6.20重量%の(ジ)アルキルジフェニルエーテル系
合成潤滑油(40℃の動粘度が22mm2 /s)を含浸
させた後、前記玉軸受に組み込み、更に実施例1と同様
の方法でオイルプレーティング用の潤滑油〔(ジ)アル
キルジフェニルエーテル系合成潤滑油(40℃の動粘度
が22mm2 /s)〕を全体として2mg付着させて試
験軸受を完成した。そして、この試験軸受の音響寿命お
よびトルクを前記の測定条件で測定した。測定結果を第
1表に示す。
【0034】○比較例1 実施例1と同様に作成した保持器に、その重量に対して
0.07重量%のジ−2−エチルヘキシルセバケート系
合成潤滑油(40℃の動粘度が12mm2 /s)を含浸
させた後、前記玉軸受に組み込み、更に実施例1と同様
の方法でオイルプレーティング用の潤滑油〔ジ−2−エ
チルヘキシルセバケート系合成潤滑油(40℃の動粘度
が12mm2 /s)〕を全体として5mg付着させて試
験軸受を完成した。そして、この試験軸受の音響寿命お
よびトルクを前記の測定条件で測定した。測定結果を第
1表に示す。
【0035】○比較例2 実施例1と同様に作成した保持器に、その重量に対して
4.60重量%のジ−2−エチルヘキシルセパケート系
合成潤滑油(40℃の動粘度が12mm2 /s)を含浸
させた後、前記玉軸受に組み込み試験軸受を完成した。
そして、この試験軸受の音響寿命およびトルクを前記の
測定条件で測定した。測定結果を第1表に示す。
【0036】○比較例3 ナイロン66を射出成形した保持器を、潤滑油を含浸さ
せることなく前記玉軸受に組み込み試験軸受を完成し
た。そして、この試験軸受の音響寿命およびトルクを前
記の測定条件で測定した。測定結果を第1表に示す。
【0037】○比較例4 ナイロン66を射出成形した保持器を、リチウム石鹸グ
リース15mgを充填した前記玉軸受に組み込み試験軸
受を完成した。そして、この試験軸受の音響寿命および
トルクを前記の測定条件で測定した。測定結果を第1表
に示す。
【0038】○比較例5 ナイロン66を90重量%、ガラス繊維を10重量%の
割合で溶融混練した樹脂組成物を射出成形して得た保持
器に、その重量に対して0.4重量%のジ−2−エチル
ヘキシルセバケート系合成潤滑油(40℃の動粘度が1
2mm2 /s)を含浸させた後、前記玉軸受に組み込
み、更にオイルプレーティング用の潤滑油〔ジ−2−エ
チルヘキシルセバケート系合成潤滑油(40℃の動粘度
が12mm2 /s)〕を3重量%の割合で溶かし込んだ
揮発性溶媒に浸漬し、その後引き上げて揮発性溶媒を蒸
発させ、全体として前記潤滑油を3mg付着させて試験
軸受を完成した。そして、この試験軸受の音響寿命およ
びトルクを前記の測定条件で測定した。測定結果を第1
表に示す。
【0039】
【表1】
【0040】第1表に記したデータが示すように、本実
施例1〜6の玉軸受は、保持器の潤滑油の保持能力に優
れるため、この保持器を組み込んだ玉軸受はグリースを
用いなくとも長期間にわたり保持器が潤滑油を供給し、
良好に潤滑され、高温下における潤滑性が大幅に改善さ
れた。しかも、軸受全体にオイルプレーティングを施し
ているため、軸受の回転初期からトルク並びに音響特性
が良好となった。また、軸受にグリースを充填していな
いために、グリースの攪拌に起因するトルク上昇がな
い。
【0041】更に、上記実施例および比較例において、
オイルプレーティング用潤滑油には、リン酸トリクレジ
ル4重量%およびカルシウムスルホネート6重量%を配
合して防錆性を付与してある。この防錆性の評価のため
に、各試験軸受を温度60℃、相対湿度90%の大気中
に7日間放置し、7日間経過後に表面に錆が発生してい
るか否かを目視により観察し、錆の発生が確認されない
場合を合格とした。尚、本試験に使用したミニアチュア
玉軸受を構成する外輪、内輪および転動体は予め完全脱
脂したものを使用した。試験結果を第1表に併記する。
試験結果から、実施例1〜6の玉軸受は、苛酷な温度、
湿度下においても防錆性に優れていることが判る。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の転がり軸
受用保持器を組込んだ軸受は、高溶融粘度樹脂とポリオ
レフィンとからなる樹脂組成物を軸受用保持器の形状に
成形した成形体を潤滑油中で浸漬処理することによっ
て、保持器には一定量の潤滑油が含浸される。ここで、
保持器となる前記樹脂組成物が潤滑油と親和性の高いポ
リオレフィンを含むことにより、保持器中の潤滑油の含
有量が多くなるとともに、潤滑油の保持力も大きくな
り、もって潤滑油が長期間安定して転動体の転動部分に
供給される。そのため、この保持器を組込んだ転がり軸
受は回転に要するトルクが低減すると共に、このトルク
の変動が小さくなる。しかも、樹脂組成物の母材となる
高溶融粘度樹脂とポリオレフィンとは、射出成形時にお
ける剪断速度下での溶融粘度が異なり、この粘度差によ
高溶融粘度樹脂中に分散するポリオレフィンの縦横比
が大きくなり吸油性能が向上する。特に、射出成形時の
ポリオレフィンの溶融粘度が高溶融粘度樹脂の溶融粘度
より低いほど、射出成形品の表面をポリオレフィンが多
く占有し、表面にポリオレフィンの特性が付与されるた
め、更に吸油性能が向上する。また、保持器の機械的強
度に関しても、保持器形状に成形した後に、潤滑油中に
浸漬するために、成形時におけるウエルドラインの発生
もなく、機械的強度に優れる。更に、前記保持器を組み
込んだ転がり軸受にオイルプレーティングを施すことに
より、転がり軸受の全露出面に一定量の潤滑油が均一に
付着される。従って、回転初期や低速回転時のように、
前記保持器からの潤滑油の滲み出しが充分でない場合で
も、表面に付着した潤滑油により潤滑性が付与される。
また、オイルプレーティング用の潤滑油に他の特性付与
剤を添加することにより、潤滑性に加えて他の特性を付
与できる。例えば、オイルプレーティング用潤滑油に防
錆剤を添加することにより、特に高温度で使用される転
がり軸受に多く見られる、錆の発生を抑制することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】転がり軸受を示す要部断面図である。
【図2】図1に示される転がり軸受の保持器を示す斜視
図である。
【図3】軸受トルク測定装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1 内輪軌道 2 内輪 3 外輪軌道 4 外輪 5 転動体 6 シール板 7 保持器 8 主部 9 保持部 10 弾性片 20 試験軸受 21 ストレインゲージ 22 エアスピンドル 23 アーバ 24 アルミキャップ 25 エアベアリング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 雅雄 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 白石 恵美子 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 横内 敦 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 中 道治 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−327024(JP,A) 特開 平4−29617(JP,A) 特開 平6−249244(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 19/00 - 19/56 F16C 33/30 - 33/66

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周
    面に外輪軌道を有する外輪と、内輪軌道と外輪軌道との
    間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、該転動体
    を保持する保持器とを有する転がり軸受において、ポリ
    オレフィンと、ポリオレフィンよりも大きな射出成形時
    における溶融粘度を有する樹脂とからなる樹脂組成物を
    所望の保持器形状に成形してなる成形体を潤滑油中に浸
    漬して得られた保持器を組み込み、且つオイルプレーテ
    ィングを施したことを特徴とする転がり軸受。
  2. 【請求項2】 前記保持器において、ポリオレフィンよ
    りも大きな射出成形時における溶融粘度を有する樹脂1
    00重量部に対して、ポリオレフィンが5〜100重量
    部の割合で配合されることを特徴とする請求項1記載の
    転がり軸受。
JP02456795A 1994-07-08 1995-01-20 転がり軸受 Expired - Fee Related JP3503662B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP02456795A JP3503662B2 (ja) 1995-01-20 1995-01-20 転がり軸受
US08/499,375 US5575570A (en) 1994-07-08 1995-07-07 Cage for rolling bearing

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP02456795A JP3503662B2 (ja) 1995-01-20 1995-01-20 転がり軸受

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08200372A JPH08200372A (ja) 1996-08-06
JP3503662B2 true JP3503662B2 (ja) 2004-03-08

Family

ID=12141741

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP02456795A Expired - Fee Related JP3503662B2 (ja) 1994-07-08 1995-01-20 転がり軸受

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3503662B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7234872B2 (en) 1997-06-06 2007-06-26 Nsk, Ltd. Rolling Bearing
JP4631256B2 (ja) * 2003-08-08 2011-02-16 日本精工株式会社 プラスチック成形品の改質方法及びプラスチック成形品
JP5251931B2 (ja) * 2010-07-08 2013-07-31 日本精工株式会社 プラスチック成形品の改質方法及びプラスチック成形品

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08200372A (ja) 1996-08-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3365449B2 (ja) 転がり軸受
JP5460671B2 (ja) 熱可逆性ゲル状の潤滑性を有する組成物及び軸受用潤滑剤及びこれらを用いた軸受システム
JP5035315B2 (ja) パーフルオロポリエーテル油組成物
US5575570A (en) Cage for rolling bearing
JP5634661B2 (ja) 転がり軸受
WO2007132626A1 (ja) 潤滑油組成物
JP4074703B2 (ja) 焼結含油軸受ユニット
JP2010185043A (ja) 樹脂潤滑用グリース組成物
JP3918520B2 (ja) 含油軸受用潤滑剤組成物
JP3503662B2 (ja) 転がり軸受
JP5170856B2 (ja) 導電性摺動材組成物
EP3211063B1 (en) Rolling bearing grease composition and rolling bearing
CN111876218A (zh) 一种导电型轴承润滑脂组合物及其制备方法
JP4409474B2 (ja) 焼結含油軸受
JP2000169872A (ja) 高速転がり軸受用グリ―スおよびスピンドル用転がり軸受
JP2014091762A (ja) 摺動グリース組成物
JP2009191173A (ja) グリース組成物及び転動装置
JPH0821449A (ja) 転がり軸受用保持器
JP2008144777A (ja) オルタネータ用転がり軸受
JP2004352953A (ja) グリース組成物及び転動装置
JP2007303661A (ja) 転がり軸受及びその製造方法、並びに転がり軸受の製造方法を評価する方法
JPH10339326A (ja) ハードディスクドライブ用転がり軸受
JPH08152026A (ja) 転がり軸受
JP7381786B2 (ja) 転がり軸受、ピボットアッシー軸受、およびディスク駆動装置
JP2007002140A (ja) グリース組成物および転がり軸受

Legal Events

Date Code Title Description
A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20031202

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees