JP2004108442A - 直動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】外周面にボール転動溝を有する案内軸と、内周面に前記案内軸の前記ボール転動溝と対向してボール転動空間を形成するボール転動溝を有する可動体と、前記ボール転動空間に転動自在に収容される多数のボールと、前記ボール転動空間の一端でボールを掬い上げ該ボール転動空間の他端にボールを移動させるボール循環路を有するボール循環部材とを備え、40℃における動粘度が20〜400mm2/sであるパーフルオロポリエーテル油を基油とし、増ちょう剤としてフッ素樹脂を配合し、更にフッ化エーテル系ジアミド及びフッ化エーテル系リン酸の少なくとも一方を添加したグリース組成物を封入したことを特徴とする直動装置。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直動駆動装置であるボールねじ装置や、直動案内装置であるリニアガイド装置などに代表される直動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、直動装置では、鉱油やポリα−オレフィン油等の潤滑油を基油とするグリースや、これら潤滑油を封入し、転動体並びに転動体と接触する部材の摩耗を防止している。このような潤滑剤を封入した直動装置は、通常の使用条件下では問題なく使用されるが、高温や真空、あるいは高速下で駆動される場合には、潤滑剤の直動装置外部への飛散や蒸発によるガスの発生を生じ、直動装置の外部環境を汚染してしまう。そのため、例えば、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、ハードディスク製造装置のように高度な清浄環境を必要とする装置や、高温、真空下で使用される装置では、フッ素系グリースが直動装置の潤滑に多用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
このフッ素系グリースは、液体フッ素化ポリマー油を基油とし、固体フッ素化ポリマー(フッ素樹脂)を増ちょう剤とするものであり、極めて揮発性が低く、直動装置の外部への飛散量(発塵量)も比較的少ないため、外部環境の汚染は比較的生じ難い。
【特許文献1】
特開平13−72987号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平13−59094号公報(第2頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、フッ素系グリースは、一方で鉱油やポリα−オレフィン油等を基油とするグリースに比べて流動性に乏しく、潤滑性能に劣るため、転動体及び転動体と接触する部材が摩耗しやすいという問題を抱えている。このような摩耗は、特に半導体製造装置等の位置決め装置に使用される直動装置では、位置決め精度が低下するため深刻な問題となる。
【0005】
また、摩耗によって摩耗粉が発生し、これがグリース中に混入してトルクの増大や焼付きを比較的短時間で生じさせる。その結果、トルクの増大による発熱やモータへの過負荷等の問題が生じてしまう。
【0006】
近年、半導体製造装置や液晶パネル製造装置、ハードディスク製造装置では、生産性向上のためにより高速で稼動されており、それに組み込まれる直動装置も高速の作動が要求されているが、上記のような発塵や、摩耗に起因するトルクの増大が従来以上に発生しやすくなっている。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、発塵量が少なく、優れたトルク寿命を有する直動装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、外周面にボール転動溝を有する案内軸と、内周面に前記案内軸の前記ボール転動溝と対向してボール転動空間を形成するボール転動溝を有する可動体と、前記ボール転動空間に転動自在に収容される多数のボールと、前記ボール転動空間の一端でボールを掬い上げ該ボール転動空間の他端にボールを移動させるボール循環路を有するボール循環部材とを備える直動装置において、40℃における動粘度が20〜400mm2/sであるパーフルオロポリエーテル油を基油とし、増ちょう剤としてフッ素樹脂を配合し、更にフッ化エーテル系ジアミド及びフッ化エーテル系リン酸の少なくとも一方を添加したグリース組成物を封入したことを特徴とする直動装置を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0010】
本発明において、直動装置自体の構成や構造は制限されるものではなく、例えば図1に示すようなボールねじ装置を例示することができる。図示されるボールねじ装置を示す一部断面図である。図示されるように、ボールねじ装置は外周面にらせん状のボールねじ溝12が形成されたボールねじ軸10と、内周面22に上記ボールねじ溝12に対向するらせん状のボールねじ溝24が形成されたボールナット20と、対向する両ボールねじ溝間に転動自在に介装された多数のボール30と、それらのボール30を循環させるチューブ式循環路40とを備えている。チューブ式循環路40は外形略コ字状のチューブからなり、その両端部42をそれぞれボールナット20を両ボールねじ溝12,24の接線方向に貫通するチューブ取付け孔29からボールナット20内のボール転動空間に差し込み、止め金46でボールナット20の外面に固定されている。らせん状のボール転動空間を転動するボール30は、ボールねじ溝12,24を複数回回って移動してから、チューブ式循環路40の一方の端部42ですくい上げられてチューブ式循環路40の中を通り、他方の端部(図示せず)からボールナット20内のボール転動空間に戻る循環を繰り返すようになっている。ボールナット20の両端の開口部には円形の凹部26が形成されており、これに嵌着した円板状のシール部材28の内周面がボールねじ軸10の外周面及びボールねじ溝12の面に摺接して外部からボールナット20内部に異物が入り込みボール30のスムーズな循環を阻害したり、ボール30またはボールねじ溝12が異常摩耗するのを防止したり、ボール転動空間に封入されたグリースが外部に流出しないようにシールする。このようなボールねじ装置によれば、ボールねじ軸10とボールナット20とはボール30の転がりを介して接触することになるので、ボールナット20をボールねじ軸10に対して、小さい駆動力で相対的にらせん運動させることができる。
【0011】
封入されるグリースは、基油として、40℃における動粘度が20〜400mm2/s、好ましくは40〜300mm2/sであるパーフルオロポリエーテル油を用いる。40℃における動粘度が400mm2/sを超えるパーフルオロポリエーテル油では、攪拌抵抗が大きくなり発熱が多くなるため、直動装置の各要素が膨張して内部隙間が減少し、異常摩耗や焼付きを生じるおそれがある。また、40℃における動粘度が20mm2/s未満のパーフルオロポリエーテル油では、十分な油膜を生じ得ず、金属接触を引き起こし早期に焼付くおそれがある。
【0012】
また、パーフルオロポリエーテル油の種類には制限はないが、下記(1)〜(5)式で表される構造を有するものが好ましい。これらのパーフルロポリエーテル油は単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
【化1】
【0014】
上記の基油には、増ちょう剤としてフッ素樹脂が配合される。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。また、その形状は制限されるものではなく、球形、多面体(立方体や直方体)、直端には針状でも構わない。これらポリテトラフルオロエチレンは単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
尚、増ちょう剤の配合量としては、グリースの混和ちょう度がNLGIに規定された等級でNo.1〜3となる量が好ましい。
【0016】
上記の基油及び増ちょう剤で構成されるベースグリースには、フッ化エーテル系ジアミド及びフッ化エーテル系リン酸の少なくとも一方が添加される。フッ化エーテル系アミドとしては、下記一般式(6)で示されるものが好ましい。
【0017】
【化2】
【0018】
ここで、Rは炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜12のシクロヘキシル基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。また、Rf0は下記で表される基(但し、mは1〜50)である。
【0019】
【化3】
【0020】
フッ化エーテル系リン酸としては、下記一般式(7)で示されるものが好ましい。
【0021】
【化4】
【0022】
ここで、Rは炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜12のシクロヘキシル基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。また、Rf0は下記で表される基(但し、mは1〜50)である。
【0023】
【化5】
【0024】
フッ化エーテル系ジアミド及びフッ化エーテル系リン酸の添加量は、共にグリース全量の0.1〜10質量%、特に0.25〜8質量%の範囲が好ましい。フッ化エーテル系ジアミド及びフッ化エーテル系リン酸を添加することによりトルクの低減が可能になるが、添加量が0.1質量%未満ではこのトルク低減効果が得られず、10質量%を超える場合には逆にトルクが高くなってしまう。また、フッ化エーテル系ジアミド及びフッ化エーテル系リン酸は混合して使用することもでき、その場合は合計量で上記の添加量とする必要がある。
【0025】
更に、上記グリースには、必要に応じて、従来より公知の酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、油性剤、極圧剤、摩耗防止剤等を配合することができる。
【0026】
グリースの製法も従来法に従うことができ、例えば、基油に増ちょう剤を加え、加熱、攪拌して得られる半固体上の生成物に、徐冷後にフッ化エーテル系ジアミド及びフッ化エーテル系リン酸の少なくとも一方と、更に必要に応じて他の添加剤を添加し、ロールミル等により均一に混合することにより得られる。加熱温度や攪拌・混合時間等の製造条件は、使用する配合物により適宜設定される。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(実施例1〜2、比較例1〜5)
表1に示す配合にて、表2に示す基油、増ちょう剤及び添加剤を配合して試験グリースを調製した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
(トルク試験)
図2に示すように、調製した試験グリースを試験ボールねじ装置A(日本精工(株)製「型番W2503SA−2P−C5Z5」:軸径25mm、リード5.08mm)のボールナット20に5ml封入し、ボールねじ軸10をスピンドルBにより500min−1で回転させ、荷重検出器Cにより回転開始10分後における動トルクを測定した。図3に測定結果を示すが、比較例1の試験グリースを封入したトルク値を1とする相対値で示してある。
【0031】
図3から、本発明に従い、40℃における動粘度が20〜400mm2/sであるパーフルオロポリエーテル油を基油とし、増ちょう剤としてフッ素樹脂を配合し、更にフッ化エーテル系ジアミド、フッ化エーテル系リン酸を0.1〜10質量%添加したグリースを封入することにより、直動装置のトルクが低減することがわかる。
【0032】
以上、本発明に関してボールねじを例示して説明したが、他の直動装置であるリニアガイド装置等でも同様の効果が得られる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来のグリースを封入した場合に比べて、大幅な低トルク化を実現した直動装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の直動装置の一実施形態であるボールねじ装置を示す断面図である。
【図2】実施例においてトルク試験に用いた試験装置の構成を示す概略図であり、(a)はその側面図、(b)は(a)のbb矢視図である。
【図3】実施例で得られた、フッ化エーテル系ジアミドまたはフッ化エーテル系リン酸の添加量とトルクとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10 ボールねじ軸
12 ボールねじ溝
20 ボールナット
24 ボールねじ溝
30 ボール
40 チューブ式循環路
Claims (1)
- 外周面にボール転動溝を有する案内軸と、内周面に前記案内軸の前記ボール転動溝と対向してボール転動空間を形成するボール転動溝を有する可動体と、前記ボール転動空間に転動自在に収容される多数のボールと、前記ボール転動空間の一端でボールを掬い上げ該ボール転動空間の他端にボールを移動させるボール循環路を有するボール循環部材とを備える直動装置において、
40℃における動粘度が20〜400mm2/sであるパーフルオロポリエーテル油を基油とし、増ちょう剤としてフッ素樹脂を配合し、更にフッ化エーテル系ジアミド及びフッ化エーテル系リン酸の少なくとも一方を添加したグリース組成物を封入したことを特徴とする直動装置。
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