JP2005097513A - 転動装置用フッ素系グリース組成物、及び、転動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 内輪10と、外輪11と、玉13と、を備えた深溝玉軸受1において、基油としてパーフルオロポリエーテル油と、増ちょう剤としてフッ素樹脂と、シリカ超微粒子と、を含有したフッ素系グリース組成物Gを用いて潤滑する。これにより、深溝玉軸受1は、耐焼付き性及び耐摩耗性に優れる。
【選択図】図1
Description
本発明は上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、転動装置の耐熱性を維持しつつ、転動装置に優れた耐摩耗性を付与し、潤滑寿命がより長い転動装置用フッ素系グリース組成物、及び、耐焼付き性及び耐摩耗性に優れた転動装置を提供することを目的とする。
本発明者は上記従来のグリースの欠点を克服し、耐熱性、耐摩耗性及び潤滑寿命に優れたグリースを創作すべく鋭意研究した結果、パーフルオロポリエーテル油(PFPE油)を基油として、フッ素樹脂を増ちょう剤として含有するフッ素系グリース組成物にシリカ超微粒子を添加すると、該フッ素系グリース組成物を用いて潤滑した転動装置が耐熱性に優れるとともに、耐摩耗性及び潤滑寿命にも優れていることを見いだし、本発明を完成するに至った。
一次粒径が100nm以下であると、転動装置の転走面に形成される潤滑膜中に超微粒子が入り込みやすくなるので好ましい。
本発明の請求項3による転動装置用フッ素系グリース組成物は、請求項1又は2において、前記シリカ超微粒子は、疎水性付与剤を用いた疎水化処理が施されて、表面が疎水化されていることを特徴とする。
このようなフッ素系グリース組成物であれば、表面が疎水化されたシリカ超微粒子が互いに凝集しにくく安定的に分散するため、転動装置の転走面に耐摩耗性に優れた潤滑膜を均一に形成することができる。
このような転動装置は、高温条件下でも優れた酸化安定性、機械的安定性を有するパーフルオロポリエーテル油を基油としたフッ素系グリース組成物を用いているため耐焼付き性に優れるとともに、シリカ超微粒子の上記作用により耐摩耗性に優れる。
[転動装置について]
図1には、本発明の実施形態に係る深溝玉軸受を示す。この深溝玉軸受1は、内輪(内方部材)10と、外輪(外方部材)11と、転動自在に装填された玉13と、これを保持する保持器12と、を備えるものである。また、内輪10と外輪11との間に形成され玉13が内設された空隙部内(図1中に網掛けで示す。)には、本発明のフッ素系グリース組成物Gが充填されており、このフッ素系グリース組成物Gは接触形のシール14,14によって軸受内部に密封されている。
なお、本発明における内方部材は、転動装置がリニアガイドの場合には案内レール、同じくリニアベアリングの場合には軸、同じくボールねじ装置の場合にはねじ軸にそれぞれ相当する。また、本発明における外方部材は、転動装置がリニアガイドの場合にはスライダ、同じくリニアベアリングの場合には外筒、同じくボールねじ装置の場合にはナットにそれぞれ相当する。
これらの転動装置は、本発明のフッ素系グリース組成物により潤滑されているので、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れている。
次に、本発明におけるフッ素系グリース組成物について説明する。
本発明のフッ素系グリース組成物は、基油としてPFPE油と、増ちょう剤としてフッ素樹脂と、シリカ超微粒子と、を含有する。
本発明に用いるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は、テトラフルオロエチレンと全体もしくは部分的にフッ素化されたエチレン系不飽和モノマーとの共重合体(以下、「テトラフルオロエチレン共重合体」と記すこともある。)が挙げられる。
(1)パーフルオロアルキル−トリフルオロエチレンエーテル類、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロイソブテン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロオレフィン類(例えば、パーフルオロプロペン)のうちの1種以上のコモノマーを少量、一般に0.01〜3モル%、好ましくは0.05〜0.5モル%、PTFEに共重合させた変性ポリテトラフルオロエチレン。
(4)0.5〜13モル%のパーフルオロメチルビニルエーテルと、0.05〜5モル%の以下の(i)〜(iii)に示すうちの1種以上のフッ素化合物モノマーと、を共重合させたTFE熱可塑性共重合体。
(i) RFO−CF=CF2 ・・・式(I)
(a)2〜12個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキル基
(b)以下の式(II)に示すもの
−(CF2−CF(CF3)−O)r−(CF2)r´−CF3 ・・・式(II)
なお、この式(II)中のrは1〜4の整数であり、r´は0〜3の整数である。
(c)以下の式(III)に示すもの
−Z−(OCFX)q−(OCF2−CFY)q´−O−T ・・・式(III)
(ii) RF‐CH=CH2 ・・・式(IV)
なお、式(IV)中、RFは(i)において記述した意味を有する。
(iii)
しくはCF3である。また、式(V)中のX1、X2は、互いに独立したフッ素原子又は1〜3個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、好ましくはCF3である。
なお、(1)〜(4)には、分子式中の数値、共重合比、及び平均分子量について好適な数値範囲が上述のように規定されているが、これらの数値が前記範囲の下限値未満であると、フッ素系グリース組成物をグリース状とするのに十分な増ちょう性がテトラフルオロエチレン共重合体に付与されない。また、前記範囲の上限値超過であると、フッ素系グリース組成物が硬化して十分な潤滑性を発揮することが困難となる。
本発明に用いるパーフルオロポリエーテル油は、低温流動性不足による転動装置における低温起動時の異音発生や、油膜が形成され難い高温条件下で起こる焼付きを避けるために、400℃における動粘度が20〜400mm2/sであることが好ましく、30〜200mm2/sであることがさらに好ましい。
超微粒子の製法としては、公知の方法を用いることができ、例えば化学気相析出法(CVD法)、物理気相析出法(PVD)等の気相法や共沈法、金属アルコキシド法、ゾル−ゲル法等の液相法を用いることができる。特に金属アルコキシド法やゾル−ゲル法等の液相法を用いれば、シリカ超微粒子の二次凝集を防ぎやすいので好適である。
酸化防止剤としては、一般的に使用される酸化防止剤を使用でき、例えば、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、フェニル−1−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等を使用することができる。
その他、極圧剤(リン系極圧剤、ジチオリン酸亜鉛、モリブデン化合物等)や、油性向上剤(脂肪酸、動植物油等)、金属不活性化剤(ベンゾトリアゾール等)等の添加剤を使用することができる。
上記のようにして得られる本発明のフッ素系グリース組成物は、高温条件下で優れた酸化安定性、機械的安定性を示し、かつ、優れた耐摩耗性を有する潤滑膜を形成するため潤滑寿命に優れる。また、本発明の転動装置は、上記のような本発明のフッ素系グリース組成物が使用されているため、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れる。
[フッ素系グリース組成物について]
本実施例のフッ素系グリース組成物は、以下のようにして調製した。まず、側鎖を有するパーフルオロポリエーテル油(400℃における動粘度88mm2/s)を基油として含有し、ポリテトラフルオロエチレンを増ちょう剤として含有したベースとなるフッ素系グリース組成物を調製した。そして、イソプロピルアルコール溶媒中に分散した一次粒径が12nmの球状のシリカ超微粒子を上記ベースとなるフッ素系グリース組成物に所定量添加した。その後、このシリカ超微粒子を添加したフッ素系グリース組成物を80℃に保ちながら撹拌することにより、溶媒のイソプロピルアルコールを蒸発させた。この溶媒蒸発後のフッ素系グリース組成物を3本ロールにかけて、本実施例のフッ素系グリース組成物とした。
図2は、本実施例のフッ素系グリース組成物で潤滑された深溝玉軸受の転走面の深さ方向元素分析の結果を示すグラフである。分析対象とした深溝玉軸受は後述の焼付き寿命試験後の深溝玉軸受1であり、フッ素系グリース組成物(シリカ超微粒子添加量:0.1質量%)を用いた潤滑によりケイ素化合物層が形成された外輪の軌道面について分析した。
次に、本発明の効果を確認するために行った焼付き寿命試験について説明する。
焼付き寿命試験は、ASTM D 1741に規定された試験機に類似の軸受寿命試験機を用いて行った。図3に軸受寿命試験機を示す。
軸受寿命試験機には、深溝玉軸受1の外輪がハウジング91に、内輪が主軸93に固定されており、プーリ92を介してモータ(不図示)の回転駆動力が主軸93に伝わると深溝玉軸受1の内輪が回転するようになっている。また、主軸93にはシーズヒータ94が取り付けられており、深溝玉軸受1の温度を調節可能になっている。そして、深溝玉軸受1の外輪に接続するZスプリング95を用いることによって、深溝玉軸受1に負荷されるアキシアル荷重及びラジアル荷重の調節が可能になっている。なお、同図中の符号96はヒーター取付金具であり、符号97は電源接続端子である。
同図に示すように、シリカ超微粒子の添加量がいずれの場合にも、焼付き寿命が比較例の2倍以上であり、耐焼付き性に優れることが確認された。
次に、本発明の効果を確認するために行った耐摩耗試験について説明する。
耐摩耗試験はASTM D 2596に規定されるものに類似の超高速四球試験機を用い、以下の方法により行った。すなわち、3つの試験球(玉軸受用鋼球、鋼種:SUJ2、径:1/2インチ)を互いに接するように正三角形状に配置して固定し、その中心に形成された窪み上に1つの試験球を配置する。そして、各フッ素系グリース組成物を試験球に塗布した状態で、窪み上に配置した試験球を一定条件(面圧:1.5GPa、滑り速度:1.5m/s)で10分間回転させた後、下側に固定された3つの試験球の摩耗面積をそれぞれ測定した。なお、実施例のフッ素系グリース組成物は、種々の量のシリカ超微粒子を添加して、上記のようにして調製した。試験は各5回行い、計15個の試験球から摩耗面積の平均値を求めた。なお、比較例として、シリカ超微粒子を添加していないフッ素系グリース組成物(シリカ超微粒子添加量:0質量%)を塗布した場合の摩耗面積を測定し、この摩耗面積を1とした場合の相対値を比摩耗面積として算出し、比較評価を行った。試験結果を図4に示す。
10 内輪
11 外輪
12 保持器
13 玉
14 シール
G フッ素系グリース組成物
Claims (4)
- パーフルオロポリエーテル油を基油として含有し、フッ素樹脂を増ちょう剤として含有した転動装置用のフッ素系グリース組成物において、
シリカ超微粒子をさらに含有することを特徴とする転動装置用フッ素系グリース組成物。 - 前記シリカ超微粒子は、一次粒径が100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の転動装置用フッ素系グリース組成物。
- 前記シリカ超微粒子は、疎水性付与剤を用いた疎水化処理が施されて、表面が疎水化されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の転動装置用フッ素系グリース組成物。
- 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面の間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備え、グリース組成物により潤滑が行われる転動装置において、
前記グリース組成物は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の転動装置用フッ素系グリース組成物であることを特徴とする転動装置。
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