JP2004323541A - グリース組成物の製造方法,グリース組成物,及び転動装置 - Google Patents

グリース組成物の製造方法,グリース組成物,及び転動装置 Download PDF

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雅彦 山崎
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Abstract

【課題】音響性能に優れるグリース組成物の製造方法を提供する。また、長期間にわたって優れた音響性能を発現するグリース組成物及び転動装置を提供する。
【解決手段】ロール間のクリアランスが5μm未満であるロールミルで混合することにより、グリース組成物を製造した。このようにして得られたグリース組成物Gを、深溝玉軸受1の空隙部内に充填した。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響性能に優れるグリース組成物の製造方法に関する。また、本発明は、音響性能に優れるグリース組成物及び転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスクドライブ(HDD)等の情報機器やエアコンディショナ,掃除機等の家庭用電器には小型モータが内蔵されており、このモータには小径,ミニアチュアの転がり玉軸受がモータ回転軸の支持用途で組み込まれている。このような用途に用いられる玉軸受に要求される性能は機器に応じて様々であり多岐にわたるが、情報機器,家庭用電器は身の回りで使用される機器であるだけに、軸受の回転に伴って発生する騒音はなるべく小さいことが好ましい。また、転がり軸受は回転時間の経過に従って、回転中に発生する騒音が次第に増大していく傾向があるが、情報機器,家庭用電器は数年以上使用されることが殆どであるので、その使用期間中にはなるべく音響上昇せず、低騒音であり続けることが要求される。
【0003】
軸受の寿命というと、通常は焼き付いて軸受がもはや回転不能となるまでの時間を考えるが、情報機器,家庭用電器の場合は軸受の使用条件がさほど厳しくないことが多いので、軸受が焼き付くまでには相当の長期間を要し、機器の種類にもよるが焼付き寿命が実際に問題となることは少ない。むしろ、生活空間において快適に使用し続けるために、機器の使い始めから廃棄まで長期間にわたって低騒音であり続けること、すなわち音響寿命が長いことが実際の市場の要求に即している。さらに、高速条件のみならず高温条件下においても、低騒音であることを求められる場合も多い。
【0004】
従来、情報機器,家庭用電器に使用される転がり軸受には、長期間にわたって優れた音響性能を発現するリチウム石けんグリースやリチウムコンプレックス石けんグリースが使用されていた。また、特許第2546707号公報には音響性能に優れるウレアグリースが開示されており、特公平7−796号公報には高速転がり軸受用のウレアグリースが開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2546707号公報
【特許文献2】
特公平7−796号公報
【特許文献3】
特開2002−180077号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許第2546707号公報に記載のウレアグリースは、極初期(使用開始から120秒間)の音響性能が優れていることしか確認されておらず、音響寿命については不明である。また、前述のリチウム石けんグリースやリチウムコンプレックス石けんグリースは、100℃程度の雰囲気温度までは問題なく使用することができるが、120℃以上の高温環境では音響性能は十分とは言えない。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、長期間にわたって優れた音響性能を発現するグリース組成物及び転動装置を提供することを課題とする。また、音響性能に優れるグリース組成物の製造方法を提供することを併せて課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物の製造方法は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物をロールミルで混合することにより製造するに際して、ロール間のクリアランスを5μm未満とすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物の製造方法は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物をロールミルで混合することにより製造するに際して、ロール間のクリアランスを3μm以下とすることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3のグリース組成物の製造方法は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物をロールミルで混合することにより製造するに際して、ロール間のクリアランスを1μm以下とすることを特徴とする。
【0009】
このようにロール間のクリアランスが小さいロールミルで混合すると、グリース組成物中に増ちょう剤を良好に分散させることができるので、少量の増ちょう剤で小さい混和ちょう度のグリース組成物を製造することができる(すなわち、増ちょう剤の含有量から予想される通常の混和ちょう度よりも小さい混和ちょう度のグリース組成物が得られる)。したがって、所定の混和ちょう度を有するグリース組成物を、通常よりも少量の増ちょう剤で製造することができる。
【0010】
このようなグリース組成物は増ちょう剤の含有量が少ないから音響性能が優れており、しかも適度な混和ちょう度を有していてグリース組成物の漏出等の問題が生じにくいから、初期のみならず長期間にわたって音響性能が優れている(すなわち、音響寿命が優れている)。
さらに、本発明に係る請求項4のグリース組成物は、請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物の製造方法によって製造されたグリース組成物であって、組成物全体における前記増ちょう剤の含有量X(質量%)は8〜14質量%であり、混和ちょう度は、210以上且つ280以下、及び、330−10X以上且つ380−10X以下の両条件を満足することを特徴とする。
【0011】
このようなグリース組成物は増ちょう剤の含有量が少ないから音響性能が優れており、しかも適度な混和ちょう度を有していてグリース組成物の漏出等の問題が生じにくいから、初期のみならず長期間にわたって音響性能が優れている(すなわち、音響寿命が優れている)。
増ちょう剤の含有量Xが8〜14質量%の範囲を外れると、混和ちょう度が前述の条件を満足することが困難となり、転動装置への使用が不適となる。また、増ちょう剤の含有量Xが14質量%超過であると、基油への分散性が悪くなり音響性能が低下するという問題も生じる。
【0012】
なお、本発明に係る請求項4のグリース組成物について、増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との関係(すなわち前記条件)をグラフ化したものを図1に示す。増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との関係が太線で囲まれた六角形の領域内に位置するものが、本発明に係る請求項4のグリース組成物である。細線で囲まれた2つの三角形の領域内に位置するものも、長期間にわたって音響性能が優れているが、前述の太線で囲まれた六角形の領域内に位置するものの方が、より長期間にわたって音響性能が優れている。
さらに、本発明に係る請求項5のグリース組成物は、請求項4に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤は下記の化学式(I)で表されるジウレア化合物であることを特徴とする。
【0013】
【化2】
Figure 2004323541
【0014】
なお、化学式(I)中のRは炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、R及びRは炭素数6〜18の飽和炭化水素基を表す。
このような構成のグリース組成物は、増ちょう剤としてジウレア化合物を含有しているので、高温性能が優れている。よって、高温環境下においても音響性能が優れている。
また、R及びRは、二重結合や三重結合を有していない飽和炭化水素基であることが好ましい。R及びRが芳香族炭化水素基等の不飽和炭化水素基であると、増ちょう剤の含有量Xを14質量%としても、混和ちょう度を280以下とすることが困難である。さらに、基油に対するジウレア化合物の分散性が悪くなり音響性能が低下するという問題も生じる。
【0015】
なお、前述の炭化水素基(R,R,及びR)の炭素数が前記下限値より小さいと、増ちょう剤が基油に分散しにくく、また、増ちょう剤と基油とが分離しやすくなる。一方、炭化水素基の炭素数が前記上限値より大きい増ちょう剤は、工業的に非現実的である。
さらに、本発明に係る請求項6のグリース組成物は、請求項5に記載のグリース組成物において、前記基油は合成炭化水素油及び高度精製された鉱油の少なくとも一方を主成分としており、該基油の40℃における動粘度は20〜500mm/sであることを特徴とする。
【0016】
本発明のグリース組成物の基油として、エステル油やエーテル油を使用することは可能であるが、ジウレア化合物の分散性を考慮すると、粘度指数が120以上と高い合成炭化水素油や高度精製された鉱油が好ましい。なお、本発明においては、「高度精製された鉱油」とは、ASTM D3238−95に規定されたn−d−M法環分析による芳香族系成分の比率(%C)が1質量%未満で、且つ、パラフィン系成分の比率(%C)が90質量%以上である鉱油を意味する。
【0017】
また、基油の40℃における動粘度が20mm/s未満であると、耐熱性が不十分になるとともに、引火点が低くグリース組成物を製造する際の危険性が高まるので好ましくない。一方、500mm/sを超えると、基油の剪断抵抗が大きく、グリース組成物を充填した転動装置のトルクが大きくなるので好ましくない。
【0018】
以下に、本発明における基油について、さらに詳細に説明する。増ちょう剤がリチウム石けん等である場合には、音響寿命を優れたものとするためには基油としてエステル油を用いることが好ましいが、増ちょう剤がウレア化合物である場合には、基油としてエステル油を用いることには問題がある。以下にその理由を説明する。
【0019】
エステル油中には微量の水分が存在し、さらに、ウレア化合物を合成する際の高温(180℃以下)によりエステル油が若干分解して生じた高級アルコールが存在する。ウレア化合物は、反応性の高いアミンとイソシアネートとを基油中で反応させることによって得られるが、基油中に水,アルコール等のようなイソシアネートと反応する物質が存在すると、ウレア化合物を合成する際に該物質とイソシアネートとが反応して、音響性能に悪影響を及ぼす化合物が生成するおそれがある。エステル油の分解を抑制する薬剤を添加したり、ウレア化合物の合成を低温で行う等の方法も考えられるが、十分な対策とは言えない。
【0020】
合成炭化水素油や高度精製された鉱油を基油として使用すれば前述のような問題がなく、音響性能に悪影響を及ぼす化合物が生成することなく純粋なウレア化合物が合成されるため、優れた音響寿命を転動装置に付与することが可能なグリース組成物が得られる。
始めに合成炭化水素油や高度精製された鉱油を基油として増ちょう剤の含有量が高いグリース組成物(これ以降は高濃度グリース組成物と記す)を製造し、それにエステル油等を混合して増ちょう剤の含有量を所定量とする方法を採用すれば、エステル油等を含有するグリース組成物を製造することができる。このようなグリース組成物は、エステル油等を含有しているため音響性能がより優れている。
【0021】
ただし、この方法を用いる場合は、基油に対する増ちょう剤の分散性から、始めに製造する高濃度グリース組成物の増ちょう剤の含有量を20質量%以下とすることが好ましく、18質量%以下とすることがより好ましい。このように高濃度グリース組成物の増ちょう剤の含有量には上限があるので、後に混合するエステル油の使用量にも限度が生じ、基油全体におけるエステル油の比率が35質量%以下となるような量しか使用できない(すなわち、基油全体における合成炭化水素油及び高度精製された鉱油の少なくとも一方の比率は65質量%以上である)。さらに、エステル油を混合した場合でも、基油の40℃における動粘度は20〜500mm/sであることが好ましい。使用可能なエステル油の種類は特に限定されるものではないが、ポリオールエステル油,芳香族エステル油等が好ましい。
【0022】
さらに、本発明に係る請求項7の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項4〜6のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0023】
このような構成の転動装置は、長期にわたって音響性能が優れている。特に、グリース組成物の増ちょう剤が前記ジウレア化合物であれば、高温環境下においても長期にわたって音響性能が優れている。
本発明は、種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
【0024】
なお、本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明に係るグリース組成物,その製造方法,及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、ポリα−オレフィン油(PAO)又はエステル油を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤(含有量は組成物全体の18質量%である)とする8種類の高濃度グリース組成物(表1に記載のA〜G)を製造した。
【0026】
【表1】
Figure 2004323541
【0027】
基油は、40℃における動粘度がいずれも48mm/sであり、口径1μmのフィルター(例えばエスエムシー株式会社製の焼結フィルター)で濾過したものを用いた。そして、基油中でアミンと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と(いずれも東京化成株式会社製の試薬)を反応させジウレア化合物を生成させ、さらに160℃で30分間撹拌することにより反応を完結させた。なお、前記アミンは、2種のアミンを表1に示すようなモル比で混合して用いた。
【0028】
このようにして製造した高濃度グリース組成物を基油で希釈して、表2,3に示すような増ちょう剤含有量とすることにより、14種類のグリース組成物を製造した。すなわち、前記高濃度グリース組成物を撹拌しながら放冷し、100℃になったところで所定量の基油で希釈し、さらに添加剤を添加した。この混合物を撹拌しながら室温まで徐冷した後、3段ロールミル等のロールミルを用いてさらに混合し、口径5μm以下のフィルター(例えばエスエムシー株式会社製の焼結フィルター)で濾過した。そして、自転公転型の脱泡処理機で脱泡を行ってグリース組成物を得た。
【0029】
【表2】
Figure 2004323541
【0030】
【表3】
Figure 2004323541
【0031】
なお、希釈に使用した基油の種類は表2,3に示す通りであり、その40℃における動粘度はいずれも48mm/sである。また、添加剤の種類及び添加量は表2,3に示す通りであるが、酸化防止剤としてはチバガイギー社製のイルガノックスL57、防錆剤としては亜鉛スルホネート、金属不活性化剤としてはベンゾトリアゾールを用いた。さらに、ジウレア化合物の反応に用いた反応容器等の器具は、電子工業用試薬アセトン及びヘキサンで洗浄し乾燥したものを用いた。
【0032】
ここで、ロールミルを用いた混合について、さらに詳細に説明する。グリース組成物中に増ちょう剤を良好に分散させるためには、3段ロールミル等のロールミルを用いることが好ましい。グリース組成物を3段ロールミルに2〜3回通せば、増ちょう剤を十分に分散させることができる。その際には、少なくとも最下流側のロール間のクリアランスは5μm未満とすることが好ましく、3μm以下とすることがより好ましく、1μm以下とすることがさらに好ましい。例えば、3段ロールミルに3回通す場合であれば、1回目は最下流側のロール間のクリアランスを5μm未満(例えば4.9μm)とし、2回目は3μm、3回目は1μmとするとよい。
【0033】
このようにして混合したグリース組成物は、増ちょう剤が良好に分散しているので、少量の増ちょう剤でも小さい混和ちょう度となる(すなわち、増ちょう剤の含有量から予想される通常の混和ちょう度よりも小さい混和ちょう度となる)。したがって、所定の混和ちょう度を有するグリース組成物を、通常よりも少量の増ちょう剤で製造することができる。
【0034】
このようなグリース組成物は増ちょう剤の含有量が少ないから音響性能が優れており、しかも適度な混和ちょう度を有していてグリース組成物の漏出等の問題が生じにくいから、初期のみならず長期間にわたって音響性能が優れている(すなわち、音響寿命が優れている)。
なお、ロールミルを用いた場合と同等以上に増ちょう剤を分散させることが可能であれば、他の方法により混合しても差し支えない。例えば、ホモジナイザ等の慣用の混合装置を用いて混合してもよい。
【0035】
また、ウレア化合物を含有するグリース組成物は加熱処理によって硬化する傾向があるので、この現象を利用することによって、少量の増ちょう剤で小さい混和ちょう度のグリース組成物を製造することが可能である。例えば、グリース組成物を製造する工程の最終段階で、140〜160℃で10〜100時間加熱処理することが好ましい。勿論、ロールミル等を用いて前述のように混合した後に、さらに加熱処理を施せば、より少量の増ちょう剤で小さい混和ちょう度のグリース組成物を製造することが可能である。
【0036】
ただし、空気中で加熱処理を行うと、酸化によりグリース組成物中の酸化防止剤が消費されるので、加熱処理は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、表面部分は加熱処理によって過剰に固化する傾向があるとともに、ゴミ等の夾雑物が付着するおそれがあるので、加熱処理の後にこの部分を取り除いて、3段ロールミルに通し仕上げることが好ましい。その際のロール間のクリアランスは、1μm以下とすることが好ましい。
【0037】
次に、表2,3に記載の14種のグリース組成物(実施例1〜8及び比較例1〜6)について、JIS K2220に規定された方法により混和ちょう度を測定した。その結果を表2,3に併せて示す。また、実施例1〜8のグリース組成物については、増ちょう剤の含有量と混和ちょう度との関係を、図1のグラフにプロットすることにより示した。各プロット内の数字は、実施例番号を示している。
【0038】
さらに、前記14種のグリース組成物を呼び番号608の深溝玉軸受(内径8mm,外径22mm,幅7mm)に充填して、その軸受の初期音響性能及び音響寿命を評価した。
まず、この深溝玉軸受の構成を、図2を参照しながら説明する。この深溝玉軸受1は、内輪10と、外輪11と、内輪10と外輪11との間に転動自在に配設された複数の玉12と、内輪10と外輪11との間に複数の玉12を保持する保持器13と、接触形のゴムシール14,14と、で構成されている。そして、内輪10と外輪11との間に形成され玉12が内設された空隙部内にはグリース組成物Gが充填され、シール14,14により軸受内部に密封されている。
【0039】
このような深溝玉軸受1を、図3に示すようなスピンドルモータに組み込んだ。すなわち、一対の転がり軸受1,1をモータ33のシャフト31に取り付け、ケーシング32で固定した。そして、スピンドルモータをモータ33により回転させ、その際の騒音によって初期音響性能及び音響寿命を評価した。
初期音響性能の評価の場合は、深溝玉軸受1に前記空隙部の容積の50体積%(250mg)のグリース組成物を充填して、39.2Nの予圧を負荷した状態で室温下、回転速度1800min−1で回転させた。そして、回転2分後の音響の大きさ(アンデロン値)をアンデロンメータを用いて測定し、このアンデロン値によって初期音響性能を評価した。
【0040】
また、音響寿命の評価の場合は、深溝玉軸受1に前記空隙部の容積の10体積%(50mg)のグリース組成物を充填して、98Nの予圧を負荷した状態で130℃の雰囲気下、回転速度10000min−1で回転させた。そして、回転中の音響の大きさ(アンデロン値)をアンデロンメータを用いて測定し、このアンデロン値が初期値の2倍に上昇するまでの時間を音響寿命とした。
【0041】
初期音響性能及び音響寿命の評価結果を表2,3に併せて示す。なお、初期音響性能及び音響寿命の数値は、増ちょう剤がリチウム石けんで基油がエステル油である市販のグリース組成物(協同油脂株式会社製のマンテルプSRL)を充填した深溝玉軸受の値を1とした場合の相対値で示してある。
表2,3から分かるように、実施例1〜8のグリース組成物を充填した深溝玉軸受は、初期音響性能及び音響寿命の両方が良好な値を示しており、比較例1〜6のグリース組成物を充填した深溝玉軸受よりも優れていた。特に、比較例4〜6の場合は基油全体におけるエステル油の比率が高いので、合成炭化水素油が主成分である(基油全体における合成炭化水素油の比率が65質量%以上)実施例5,6の場合と比べて、初期音響性能が劣っている。
【0042】
次に、実施例1のグリース組成物において、増ちょう剤の含有量を種々変更したものを用意した。そして、各増ちょう剤を深溝玉軸受に充填し、前述と同様の方法により音響寿命を評価した。結果を図4に示す。なお、このグラフの音響寿命の数値は、前述の市販のグリース組成物(協同油脂株式会社製のマンテルプSRL)を充填した深溝玉軸受の値を1とした場合の相対値で示してある。
【0043】
グラフから、音響寿命を優れた値(10以上)とするためには、増ちょう剤の含有量は8〜14質量%とする必要があることが分かる。
次に、実施例1のグリース組成物において、製造時の混合方法が異なるものを用意した。すなわち、一方は、前述の混合方法において、最下流側のロール間のクリアランスを1μmとした方法であり、他方は、最下流側のロール間のクリアランスを5μmとした方法である。そして、それぞれの方法で混合したものについて、増ちょう剤の含有量を種々変更し、増ちょう剤の含有量と混和ちょう度との関係、及び、増ちょう剤の含有量と初期音響性能との関係をそれぞれ評価した。初期音響性能の評価方法は前述と同様である。
【0044】
結果を図5に示す。このグラフにおいては、ロール間のクリアランスが1μmの場合を丸印で示し、5μmの場合を四角印で示してある。そして、それぞれの印においては、白抜き印は初期音響性能を示し、黒抜き印は混和ちょう度を示している。なお、このグラフの初期音響性能の数値は、前述の市販のグリース組成物(協同油脂株式会社製のマンテルプSRL)を充填した深溝玉軸受の値を1とした場合の相対値で示してある。
【0045】
グラフから、増ちょう剤の含有量が同量である場合には、ロール間のクリアランスが1μmである方が、混和ちょう度が格段に小さく、且つ、初期音響性能が優れていることが分かる。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、本発明において使用可能なジウレア化合物は、本実施形態で使用した前述のものに限定されるものではない。例えば、オクタデシルアミンとMDIとの反応生成物、オクチルアミンとMDIとの反応生成物、シクロヘキシルアミンとMDIとの反応生成物等があげられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
また、本発明のグリース組成物には、各種性能をさらに向上させるため、グリース組成物に一般的に使用される添加剤を所望により添加してもよい。例えば、酸化防止剤,防錆剤,極圧剤,油性向上剤,金属不活性化剤などを、単独又は2種以上混合して用いることができる。ただし、音響性能に悪影響を及ぼすおそれがあることから、固体潤滑剤等のような基油に溶解しにくい添加剤の使用は避けるべきである。
【0048】
さらに、本実施形態においては、転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
さらに、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明のグリース組成物の製造方法によれば、音響性能に優れるグリース組成物を製造することができる。また、本発明のグリース組成物は、長期間にわたって優れた音響性能を発現する。さらに、本発明の転動装置は、音響性能が長期間にわたって優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のグリース組成物において、増ちょう剤の含有量Xと混和ちょう度との相関を示すグラフである。
【図2】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構成を示す縦断面図である。
【図3】初期音響性能及び音響寿命を評価に使用するスピンドルモータの縦断面図である。
【図4】増ちょう剤の含有量と音響寿命との相関を示すグラフである。
【図5】増ちょう剤の含有量と、初期音響性能及び混和ちょう度と、の相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 深溝玉軸受
10 内輪
11 外輪
12 玉
G グリース組成物

Claims (7)

  1. 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物をロールミルで混合することにより製造するに際して、ロール間のクリアランスを5μm未満とすることを特徴とするグリース組成物の製造方法。
  2. 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物をロールミルで混合することにより製造するに際して、ロール間のクリアランスを3μm以下とすることを特徴とするグリース組成物の製造方法。
  3. 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物をロールミルで混合することにより製造するに際して、ロール間のクリアランスを1μm以下とすることを特徴とするグリース組成物の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物の製造方法によって製造されたグリース組成物であって、
    組成物全体における前記増ちょう剤の含有量X(質量%)は8〜14質量%であり、
    混和ちょう度は、210以上且つ280以下、及び、330−10X以上且つ380−10X以下の両条件を満足することを特徴とするグリース組成物。
  5. 前記増ちょう剤は下記の化学式(I)で表されるジウレア化合物であることを特徴とする請求項4に記載のグリース組成物。
    Figure 2004323541
    なお、化学式(I)中のRは炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、R及びRは炭素数6〜18の飽和炭化水素基を表す。
  6. 前記基油は合成炭化水素油及び高度精製された鉱油の少なくとも一方を主成分としており、該基油の40℃における動粘度は20〜500mm/sであることを特徴とする請求項5に記載のグリース組成物。
  7. 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項4〜6のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする転動装置。
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