JP2009121531A - 高速用転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】少ないグリース封入量であっても、dmN値が 170 万以上という高速回転に十分に対応でき、工作機械等のコンパクト化や運転経費の削減を可能にする高速用転がり軸受を提供する。
【解決手段】内輪2および外輪3と、複数の転動体4と、内・外輪間の隙間の開口を覆うシール部材6とを備え、転動体4の周囲に基油とウレア系増ちょう剤とを含むグリース7を封入してなり、グリース7と接触する軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜8aが形成され、基油は 40℃における動粘度が 15〜30 mm2/sec であり、ウレア系増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られ、該モノアミン成分が脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するモノアミン成分であり、グリース全体に対して、上記ウレア系増ちょう剤を 3 重量%以上 9 重量%未満配合する。
【選択図】図1
【解決手段】内輪2および外輪3と、複数の転動体4と、内・外輪間の隙間の開口を覆うシール部材6とを備え、転動体4の周囲に基油とウレア系増ちょう剤とを含むグリース7を封入してなり、グリース7と接触する軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜8aが形成され、基油は 40℃における動粘度が 15〜30 mm2/sec であり、ウレア系増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られ、該モノアミン成分が脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するモノアミン成分であり、グリース全体に対して、上記ウレア系増ちょう剤を 3 重量%以上 9 重量%未満配合する。
【選択図】図1
Description
この発明は、工作機械主軸(スピンドル)などの高速回転軸を支持する転がり軸受に用いられる高速用転がり軸受に関する。
工作機械の主軸は、加工能率を上げるために高速で回転するものが好ましく、その軸受には種々の潤滑技術が適用されている。高速回転する主軸に適した潤滑方法としては、例えば、オイルミスト潤滑、エアオイル潤滑、ジェット潤滑などの方法が知られている。
しかし、このような潤滑方法は、圧縮空気や給油装置などの付帯設備が必要なものであり、工作機械のイニシャルコストおよびランニングコストを高める原因の一つであり、これらに対してグリース潤滑は、メンテナンスの必要が少なくて好ましい潤滑方法であるといえる。例えば、2000〜8000 rpm またはそれ以上の高速で回転する回転軸を支持する高速用転がり軸受としては、工作機械主軸(スピンドル)などを支持するアンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受などが挙げられる。
しかし、このような潤滑方法は、圧縮空気や給油装置などの付帯設備が必要なものであり、工作機械のイニシャルコストおよびランニングコストを高める原因の一つであり、これらに対してグリース潤滑は、メンテナンスの必要が少なくて好ましい潤滑方法であるといえる。例えば、2000〜8000 rpm またはそれ以上の高速で回転する回転軸を支持する高速用転がり軸受としては、工作機械主軸(スピンドル)などを支持するアンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受などが挙げられる。
図9に示すようにアンギュラ玉軸受11は、ラジアル荷重のほかに一方向からのアキシアル荷重を負荷することができるものであり、鋼球14と内輪12および外輪13との接触点を結ぶ直線がラジアル方向に対して角度(接触角)αをもっている。内輪12と外輪13と鋼球14とで形成される軸受空間に、グリースが封入されている。
アンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受などからなる高速用転がり軸受に使用される潤滑剤としては、給油などのメンテナンスが必要でなく、周囲の環境を汚染しないちょう度に調整されたグリースを採用することが好ましい。
アンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受などからなる高速用転がり軸受に使用される潤滑剤としては、給油などのメンテナンスが必要でなく、周囲の環境を汚染しないちょう度に調整されたグリースを採用することが好ましい。
以下に、スピンドル用転がり軸受などの高速用転がり軸受に用いられるグリースに要求される潤滑特性と問題点をまとめて示す。
(a)長寿命性転がり軸受の潤滑寿命を可及的に延長するためには、以下の(i) 〜(iii) に説明するように、転がり軸受から潤滑剤(グリースまたはその基油)が漏れにくいこと、グリースの耐熱性に優れること、潤滑に必要な油膜厚さを形成できることが必要である。
(a)長寿命性転がり軸受の潤滑寿命を可及的に延長するためには、以下の(i) 〜(iii) に説明するように、転がり軸受から潤滑剤(グリースまたはその基油)が漏れにくいこと、グリースの耐熱性に優れること、潤滑に必要な油膜厚さを形成できることが必要である。
(i) 転がり軸受を高速運転するとき、遠心力によって転がり軸受内のグリースが軸受外部へ流出するか、またはグリース中の基油が分離流出して、潤滑への寄与が大きい転走面近傍に留まり難く、潤滑不良になりやすい。そのような事態を防止するために、シールド板などのシール部材を転がり軸受に装着する対応がなされるが、軸受の構造によっては装着できない場合があり、またシール部材を装着しても潤滑剤や潤滑油を完全に密封できない場合もある。
高速運転されない転がり軸受の場合、転動体や保持器の運動により摩擦部分から押し出されてしまう余分なグリースは、回転条件によっては軸受内部をある程度還流して再び潤滑に寄与することが考えられる。しかし、高速で回転する工作機械などの回転軸支持用転がり軸受では、軸受内部に発生する風圧がこの還流を妨げるため潤滑不良を起こしやすくなる。このため、高速で回転する転がり軸受では、僅かな量のグリースしか潤滑に寄与しておらず、グリースの性状は特に重要となる。また、高速用転がり軸受に用いられるグリースは、少量のグリースでも潤滑性能を維持する必要がある。
高速運転されない転がり軸受の場合、転動体や保持器の運動により摩擦部分から押し出されてしまう余分なグリースは、回転条件によっては軸受内部をある程度還流して再び潤滑に寄与することが考えられる。しかし、高速で回転する工作機械などの回転軸支持用転がり軸受では、軸受内部に発生する風圧がこの還流を妨げるため潤滑不良を起こしやすくなる。このため、高速で回転する転がり軸受では、僅かな量のグリースしか潤滑に寄与しておらず、グリースの性状は特に重要となる。また、高速用転がり軸受に用いられるグリースは、少量のグリースでも潤滑性能を維持する必要がある。
(ii) 運転条件が高速化すると軸受の転がり面は局部的に発熱して高温度になり、このとき耐熱性の乏しいグリースは熱劣化し、グリースの寿命は著しく縮まる。このような問題に対しては、耐熱性のある増ちょう剤や基油を使用したり、酸化防止剤を添加したりする試みがなされた。しかし、これらの試みは、耐久性の十分な向上には至らなかった。
(iii) 潤滑性(油膜厚さ)を向上させた従来のグリースは、基油粘度を高くすると剪断摩擦抵抗が上昇して回転トルクが増加し、発熱量が増大するので、これらを抑制するために基油粘度は低く抑えている。そのため、高速に伴う温度上昇で低粘度となった潤滑油の油膜は薄くなって摺動摩耗を起こす場合があった。
(iii) 潤滑性(油膜厚さ)を向上させた従来のグリースは、基油粘度を高くすると剪断摩擦抵抗が上昇して回転トルクが増加し、発熱量が増大するので、これらを抑制するために基油粘度は低く抑えている。そのため、高速に伴う温度上昇で低粘度となった潤滑油の油膜は薄くなって摺動摩耗を起こす場合があった。
(b)低トルク性(温度上昇の抑制性)について既存の高速軸受用のグリースは、前述のように基油粘度を低く抑えているが、軸受が高速度で回転すると、温度上昇により粘度が著しく低下し、潤滑に必要な厚さの油膜を形成できなくなるという問題がある。
(c)低振動性については、グリースの増ちょう剤の種類によって軸受の振動を増大させる場合がある。すなわち、大きくて硬い凝集体を形成する増ちょう剤を含有するグリースで潤滑する転がり軸受の振動は大きくなる。
このように従来のグリースは、高速用転がり軸受に用いた場合に軸受の長寿命性、低トルク性および低振動性といった所要物性を満足させることができないという問題点があった。対策として、ウレア化合物を配合したグリースが提案されている(特許文献1〜特許文献3参照)が、油の転走部への供給量が少なく、より高速性能を得るためには不十分である。
例えば、特許文献3には、40 ℃における動粘度が 15 mm2/sec 以上 40 mm2/sec 以下である基油と、含有量がグリース組成物全体の 9 質量%以上14 質量%以下であるジウレア化合物の増ちょう剤とを含有し、混和ちょう度が 220 以上 320 以下であるグリース組成物が開示されている。
しかし、上記グリース組成物においても、増ちょう剤の配合量を減らし、グリース封入量を少なくすることが困難であり、軸受の高速回転への十分な対応や工作機械のコンパクト化、運転経費の削減を可能にすることは困難である。
また、近年ますます転がり軸受の使用状態が過酷になり、ピッチ円径dm( mm )と回転数N( rpm )との積であるdmN値が 170 万以上という高速回転で使用されるスピンドル用転がり軸受なども多くなってきている。このような軸受の回転速度の高速化に伴って、既存のグリースで軸受に要求される性能を全て満足させることは困難である。
特開2000−169872号公報
特開2003−83341号公報
特開2006−29473号公報
例えば、特許文献3には、40 ℃における動粘度が 15 mm2/sec 以上 40 mm2/sec 以下である基油と、含有量がグリース組成物全体の 9 質量%以上14 質量%以下であるジウレア化合物の増ちょう剤とを含有し、混和ちょう度が 220 以上 320 以下であるグリース組成物が開示されている。
しかし、上記グリース組成物においても、増ちょう剤の配合量を減らし、グリース封入量を少なくすることが困難であり、軸受の高速回転への十分な対応や工作機械のコンパクト化、運転経費の削減を可能にすることは困難である。
また、近年ますます転がり軸受の使用状態が過酷になり、ピッチ円径dm( mm )と回転数N( rpm )との積であるdmN値が 170 万以上という高速回転で使用されるスピンドル用転がり軸受なども多くなってきている。このような軸受の回転速度の高速化に伴って、既存のグリースで軸受に要求される性能を全て満足させることは困難である。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、少ないグリース封入量であっても、例えばピッチ円径dm( mm )と回転数N( rpm )との積であるdmN値が 170 万以上という高速回転に十分に対応でき、工作機械のコンパクト化や運転経費の削減を可能にする高速用転がり軸受の提供を目的とする。
本発明の高速用転がり軸受は、高速回転する軸を支持する高速用転がり軸受であって、該転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、上記内輪および外輪間の隙間の開口を覆うシール部材とを備え、上記転動体の周囲にグリースを封入してなり、上記グリースと接触する軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜が形成され、上記グリースは基油とウレア系増ちょう剤とを含んでなり、上記基油は 40℃における動粘度が 15 mm2/sec〜30 mm2/sec であり、上記ウレア系増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られ、該モノアミン成分が脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するモノアミン成分であり、グリース全体に対して、上記ウレア系増ちょう剤を 3 重量%以上 9 重量%未満配合することを特徴とする。
上記撥水・撥油性被膜は、(1)シール部材の軸受内部側表面の一部、(2)外輪の軌道面を除く内径面およびシール部材の軸受内部側表面、(3)内輪の軌道面を除く外径面およびシール部材の軸受内部側表面、(4)転動体との接触面を除く保持器の表面から選ばれた少なくとも一つに形成されていることを特徴とする。
上記撥水・撥油性被膜は、シリコン系化合物またはフッ素系化合物を用いて形成されていることを特徴とする。
また、上記シリコン系化合物はシロキサンであり、上記フッ素系化合物はフルオロアルキルシランであることを特徴とする。
また、上記シリコン系化合物はシロキサンであり、上記フッ素系化合物はフルオロアルキルシランであることを特徴とする。
上記基油は表面張力が 25 mN/m 以上で、かつ密度が 0.95 g/cm3 以下であることを特徴とする。
また、上記基油は合成炭化水素油、エステル油およびアルキルジフェニルエーテル油から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする。
また、上記基油は合成炭化水素油、エステル油およびアルキルジフェニルエーテル油から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする。
上記高速用転がり軸受が工作機械の主軸を支持する軸受であることを特徴とする。また、該軸受は、アンギュラ玉軸受または円筒ころ軸受であることを特徴とする。
本発明の高速用転がり軸受に封入するグリースは、40℃における動粘度が 15〜30 mm2/sec である基油に、所定のウレア系増ちょう剤を 3 重量%以上 9 重量%未満配合するので、少量のグリース封入量であっても、このグリースを封入した転がり軸受の耐荷重性を保ちつつ高速回転下で軌道面への油の供給能力に優れる。
特にウレア系増ちょう剤のモノアミン成分は、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するので、高速下で高いせん断力を受けても増ちょう剤が容易に破壊されず、増ちょう剤繊維の毛細管現象により、転走面に安定的にグリース中の油分を供給することができる。
特にウレア系増ちょう剤のモノアミン成分は、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するので、高速下で高いせん断力を受けても増ちょう剤が容易に破壊されず、増ちょう剤繊維の毛細管現象により、転走面に安定的にグリース中の油分を供給することができる。
本発明の高速用転がり軸受は、上記グリースを封入し、さらに上記グリースと接触する軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜を形成しているので、高遠心力が負荷されてもグリースの油分が転走面の方に移動するようにでき、軸受外に流出せず、かつ軸受潤滑に必要な油量が長期間安定して供給され、高速で摺接する軌道面に対して潤滑に所要の厚さの油膜を形成する。このため高速回転下での軸受耐久寿命が飛躍的に向上する。
少ないグリース封入量であっても、高速回転に十分に対応でき、工作機械のコンパクト化や運転経費の削減を可能にする高速用転がり軸受について鋭意検討の結果、高速用転がり軸受を形成する部材の軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜を設け、所定のグリースを封入することで、高速使用時の寿命が長い転がり軸受となることを見出した。
潤滑油やグリース等の軸受に封入される潤滑剤と接触する軸受内部表面の少なくとも一部に、撥水・撥油性被膜が形成されていると、潤滑剤は撥水・撥油性被膜の表面張力によってはじかれて該被膜表面に留まらず活発に移動する。このため、転動面や転走面等の摺動表面には活発に移動する所定の潤滑剤を常に存在させることができることから、潤滑作用の持続性が向上し長寿命の転がり軸受が得られるものと考えられる。本発明はこのような知見に基づくものである。
潤滑油やグリース等の軸受に封入される潤滑剤と接触する軸受内部表面の少なくとも一部に、撥水・撥油性被膜が形成されていると、潤滑剤は撥水・撥油性被膜の表面張力によってはじかれて該被膜表面に留まらず活発に移動する。このため、転動面や転走面等の摺動表面には活発に移動する所定の潤滑剤を常に存在させることができることから、潤滑作用の持続性が向上し長寿命の転がり軸受が得られるものと考えられる。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明の高速用転がり軸受は、封入するグリースと接触する軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜が形成されていればよい。軸受の構造的には特に制限されるものではなく、例えば図1に示されるアンギュラ玉軸受1を例示することができる。図1は本発明の一実施形態であるアンギュラ玉軸受の撥水・撥油性被膜の形成位置の一例を示す断面図である。本発明において撥水・撥油性被膜は、グリース7と接触する軸受内部表面の少なくとも一部に形成されていればよく、特に摺動表面以外に形成されることが好ましい。ここで摺動表面とは、内輪軌道面2a、外輪軌道面3a、保持器5と転動体4との接触面、転動体4の表面等である。
図1において、アンギュラ玉軸受1は内輪2と外輪3との間に転動体4が保持器5に保持された軸受空間を、外輪3の内周面に設けられた係止溝に固定したシール部材6で密封され、シール部材6の軸受内部側表面の一部に撥水・撥油性被膜8aが形成されている。また、内輪2と外輪3と転動体4とで形成される軸受空間に、下記に示すグリースが封入される。
なお、転動体4と、内輪2および外輪3との接触点を結ぶ直線がラジアル方向に対して接触角βを有しており、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を負荷することができる。また、転動体4は、窒化珪素や炭化珪素等のセラミックス製とすることもできる。
図1において、アンギュラ玉軸受1は内輪2と外輪3との間に転動体4が保持器5に保持された軸受空間を、外輪3の内周面に設けられた係止溝に固定したシール部材6で密封され、シール部材6の軸受内部側表面の一部に撥水・撥油性被膜8aが形成されている。また、内輪2と外輪3と転動体4とで形成される軸受空間に、下記に示すグリースが封入される。
なお、転動体4と、内輪2および外輪3との接触点を結ぶ直線がラジアル方向に対して接触角βを有しており、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を負荷することができる。また、転動体4は、窒化珪素や炭化珪素等のセラミックス製とすることもできる。
図2〜図4は上記撥水・撥油性被膜の形成位置の他の例を示す断面図である。図2においては外輪の軌道面3aを除く内径面と、シール部材6の軸受内部側表面とに撥水・撥油性被膜8bが、図3においては内輪の軌道面2aを除く外径面と、シール部材6の軸受内部側表面とに撥水・撥油性被膜8cが、図4においては転動体4との接触面を除く保持器5の表面に撥水・撥油性被膜8dが、それぞれ形成されている。図2〜図4において撥水・撥油性被膜を除く他の構成は図1と同様である。
図1〜図4において撥水・撥油性被膜の形成位置を個別に示したが、これらの形成位置は単独で用いても、2個以上組み合わせて用いてもよい。
図1〜図4において撥水・撥油性被膜の形成位置を個別に示したが、これらの形成位置は単独で用いても、2個以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の高速用転がり軸受の他の実施形態として、例えば図5に示される深溝玉軸受21を例示することができる。図5は本発明の他の実施形態である深溝玉軸受の撥水・撥油性被膜の形成位置の一例を示す断面図である。本発明において撥水・撥油性被膜は、グリース27と接触する軸受内部表面の少なくとも一部に形成されていればよく、特に摺動表面以外に形成されることが好ましい。ここで摺動表面とは、内輪軌道面22a、外輪軌道面23a、保持器25と転動体24との接触面、転動体24の表面等である。
図5において、深溝玉軸受21は内輪22と外輪23との間に転動体24が保持器25に保持された軸受空間を、外輪23の内周面に設けられた係止溝に固定したシール部材26で密封され、シール部材26の軸受内部側表面の一部に撥水・撥油性被膜28aが形成されている。また、内輪22と外輪23と転動体24とで形成される軸受空間に、下記に示すグリースが封入される。
なお、転動体24は、窒化珪素や炭化珪素等のセラミックス製とすることもできる。
図5において、深溝玉軸受21は内輪22と外輪23との間に転動体24が保持器25に保持された軸受空間を、外輪23の内周面に設けられた係止溝に固定したシール部材26で密封され、シール部材26の軸受内部側表面の一部に撥水・撥油性被膜28aが形成されている。また、内輪22と外輪23と転動体24とで形成される軸受空間に、下記に示すグリースが封入される。
なお、転動体24は、窒化珪素や炭化珪素等のセラミックス製とすることもできる。
図6〜図8は上記撥水・撥油性被膜の形成位置の他の例を示す断面図である。図6においては外輪の軌道面23aを除く内径面と、シール部材26の軸受内部側表面とに撥水・撥油性被膜28bが、図7においては内輪の軌道面22aを除く外径面と、シール部材26の軸受内部側表面とに撥水・撥油性被膜28cが、図8においては転動体24との接触面を除く保持器25の表面に撥水・撥油性被膜28dが、それぞれ形成されている。図6〜図8において撥水・撥油性被膜を除く他の構成は図5と同様である。
図5〜図8において撥水・撥油性被膜の形成位置を個別に示したが、これらの形成位置は単独で用いても、2個以上組み合わせて用いてもよい。
図5〜図8において撥水・撥油性被膜の形成位置を個別に示したが、これらの形成位置は単独で用いても、2個以上組み合わせて用いてもよい。
撥水・撥油性被膜8a〜8d、28a〜28dを図1〜図8に示すような軸受内部表面に形成することで、封入されているグリース7、27が撥水・撥油性被膜8a〜8d、28a〜28dの表面張力によってはじかれて該被膜表面に留まらず活発に移動する。このため、例えば、これらの被膜8a〜8d、28a〜28dを形成しない、内輪軌道面2a、22a、外輪軌道面3a、23a、保持器5、25と転動体4、24との接触面、転動体4、24の表面等に、グリース7、27が継続的に供給され、潤滑作用の持続性が向上し長寿命の転がり軸受となる。
また、摺動表面以外に撥水・撥油性被膜を形成することで、摺接による該被膜の剥がれ等も起こらない。
また、摺動表面以外に撥水・撥油性被膜を形成することで、摺接による該被膜の剥がれ等も起こらない。
撥水・撥油性被膜の形成に用いる材料としては、シリコン系やフッ素系の撥水・撥油剤を用いることができ、特に限定されるものではない。撥水・撥油性被膜は、シロキサン等のシリコン系撥水・撥油剤からなる被膜、または、フルオロアルキルシランを用いて形成されている撥水・撥油性被膜であることが好ましい。
市販品としては、例えば日本メクトロン株式会社製のノックスガードST−420、ダイキン工業社製ユニダイン、信越化学社製、パーフルオロアルキルシランKBM7803などが挙げられる。
市販品としては、例えば日本メクトロン株式会社製のノックスガードST−420、ダイキン工業社製ユニダイン、信越化学社製、パーフルオロアルキルシランKBM7803などが挙げられる。
本発明の高速用転がり軸受は、グリースに接する軸受の内部表面に撥水・撥油性被膜が形成されていればよく、被膜の形成方法は特に限定されない。グリースに接する軸受の内部表面に撥水・撥油性被膜を形成するには、例えば、転がり軸受をシロキサン等のシリコン系撥水・撥油剤を分散させた液中に浸漬した後、その後、乾燥させることにより撥水・撥油性被膜を形成させることができる。また、真空蒸着、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、イオンプレーティングなどの乾式めっき、または、電気めっきなどがある。
また、市販の撥水・撥油剤を用いて、グリースに接する軸受の内部表面に塗布して撥水・撥油性被膜を形成することもできる。これらの中で、各部品ごとに撥水・撥油処理をする必要がなく、加工コストが有利であることから、撥水・撥油剤を分散させた液中に転がり軸受を浸漬する方法を採用することが好ましい。
また、市販の撥水・撥油剤を用いて、グリースに接する軸受の内部表面に塗布して撥水・撥油性被膜を形成することもできる。これらの中で、各部品ごとに撥水・撥油処理をする必要がなく、加工コストが有利であることから、撥水・撥油剤を分散させた液中に転がり軸受を浸漬する方法を採用することが好ましい。
本発明の高速用転がり軸受は、軸受空隙部の容積の 1 体積%以上 10 体積%未満のグリースを封入することが好ましい。1 体積%未満であると、潤滑に必要なグリース量が不足して枯渇しやすい。10 体積%以上であると、撹拌によるトルクが大きく発熱が大きくなり潤滑寿命が向上しないし、またコスト増につながり、環境上も好ましくない。
本発明の高速用転がり軸受としては、図1〜図4に示すアンギュラ玉軸受および図5〜図8に示す深溝玉軸受のほか、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受等も使用できる。これらの中で高速回転での回転精度と耐荷重性能を両方備えることから、アンギュラ玉軸受または円筒ころ軸受を用いることが好ましい。
本発明の高速用転がり軸受は、グリースに接する軸受の内部表面に撥水・撥油性被膜を形成することに加えて、以下の基油とウレア系増ちょう剤とを含んでなるグリースを使用することを特徴としている。
本発明に使用できるグリースの基油は、40℃における動粘度(以下、単に動粘度と記す)が 15〜30 mm2/sec の潤滑油を用いることができる。特に、動粘度が 15〜25 mm2/sec の潤滑油が好ましい。動粘度が 15 mm2/sec 未満の場合、粘度が低すぎて十分な耐荷重性が得られない。また、動粘度が 30 mm2/sec をこえる場合、高速回転に伴って軌道面への油の供給が不足し、早期に軸受寿命に至るようになる。
上記潤滑油の種類としては、合成炭化水素油、エステル油、アルキルジフェニルエーテル油、またはこれらの混合油が好ましい。
また、合成炭化水素油、エステル油、アルキルジフェニルエーテル油、それぞれの動粘度が 15〜30 mm2/sec であることが好ましい。この範囲であると混合油とした場合であっても、動粘度の範囲を 15〜30 mm2/sec とすることができる。
混合油とする場合、合成炭化水素油およびエステル油の混合油とすることが好ましい。混合比率としては、合成炭化水素油/エステル油(重量比)=8/2〜2/8が好ましく、特に合成炭化水素油はエステル油よりも重量割合で同量以上であることが好ましい。
また、アルキルジフェニルエーテル油は単独でも使用できる。
また、合成炭化水素油、エステル油、アルキルジフェニルエーテル油、それぞれの動粘度が 15〜30 mm2/sec であることが好ましい。この範囲であると混合油とした場合であっても、動粘度の範囲を 15〜30 mm2/sec とすることができる。
混合油とする場合、合成炭化水素油およびエステル油の混合油とすることが好ましい。混合比率としては、合成炭化水素油/エステル油(重量比)=8/2〜2/8が好ましく、特に合成炭化水素油はエステル油よりも重量割合で同量以上であることが好ましい。
また、アルキルジフェニルエーテル油は単独でも使用できる。
合成炭化水素系油としては、例えばノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンコオリゴマー等のポリ-α-オレフィン等が挙げられる。
エステル油としては、例えばジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、炭酸エステル油等が挙げられる。
アルキルジフェニルエーテル油としては、モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリアルキルジフェニルエーテル等が挙げられる。
エステル油としては、例えばジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、炭酸エステル油等が挙げられる。
アルキルジフェニルエーテル油としては、モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリアルキルジフェニルエーテル等が挙げられる。
本発明に使用できる基油は、表面張力が 25 mN/m 以上、好ましくは 27〜40 mN/m で、かつ密度が 0.95 g/cm3 以下、好ましくは 0.8〜0.93 g/cm3 である。表面張力が 25 mN/m 未満であると、毛細管現象により転走部へ移動しにくく、高速下で必要な油量を安定的に供給できなくなり、密度が 0.95 g/cm3 をこえると同じく毛細管現象により転走部へ移動しにくく、高速下で必要な油量を安定的に供給できなくなる。
本発明に使用できるウレア系増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られる。
ポリイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられる。これらの中でも芳香族ジイソシアネートが好ましい。
また、ジアミンと該ジアミンに対してモル比で過剰のジイソシアネートとの反応で得られるポリイソシアネートを使用することができる。ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
ポリイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられる。これらの中でも芳香族ジイソシアネートが好ましい。
また、ジアミンと該ジアミンに対してモル比で過剰のジイソシアネートとの反応で得られるポリイソシアネートを使用することができる。ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
モノアミン成分は、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上、好ましくは 80 モル%以上含有するモノアミン成分である。50 モル%以上含むことにより増ちょう剤の高速下でのせん断力に容易に破壊されず、増ちょう剤繊維の毛細管現象により、転走面に安定的にグリース中の油分を供給することができる。
脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミン以外のモノアミンとしては芳香族モノアミンが挙げられる。
脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンが挙げられ、これらの中でもオクチルアミンが好ましい。
脂環式モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
芳香族モノアミンとしては、アニリン、p-トルイジンが挙げられ、これらの中でp-トルイジンが好ましい。
脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミン以外のモノアミンとしては芳香族モノアミンが挙げられる。
脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンが挙げられ、これらの中でもオクチルアミンが好ましい。
脂環式モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
芳香族モノアミンとしては、アニリン、p-トルイジンが挙げられ、これらの中でp-トルイジンが好ましい。
本発明においてウレア系増ちょう剤は、グリース全体に対して、3 重量%以上 9 重量%未満、好ましくは 3〜5 重量%含有する。配合量が 3 重量%未満では基油保持能力が十分ではなく、特に回転初期に一時に大量の油分が分離してグリースの漏洩が起こり、軸受耐久寿命が短くなる。また、配合量が 9 重量%以上であると、相対的に基油の量が少なくなり、油供給性が不十分で、早期に潤滑不足に陥って同様に軸受耐久寿命が短くなる。
また、グリースには、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、りん系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独または 2 種類以上組み合せて添加できる。これらの添加剤の含有量は、個別にはグリース全量の 0.05 重量%以上、合計量でグリース全量の 0.15〜10 重量%の範囲となることが好ましい。特に、合計量で 10 重量%をこえる場合は、含有量の増加に見合う効果が期待できないばかりか、相対的に他の成分の含有量が少なくなり、またグリース中でこれら添加剤が凝集し、トルク上昇等の好ましくない現象を招くこともある。
以下に試験例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。なお、各実施例および各比較例に用いた基油の密度( 15 ℃)および動粘度( 40℃)のデータを表1に示す。また、表1に示したちょう度はJISK2220 5.3に基づき測定した 60 回混和ちょう度を表し、25℃における基油の表面張力は、デュヌイ式簡易表面張力計にて測定した値を示す。
実施例1〜実施例4および比較例3
表1に示した基油の半量に、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながら、これにモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させグリース試料を得た。用いた基油の表面張力を測定した。得られたグリース試料についてはちょう度を測定するとともに、以下に示す遠心油分離試験に供し、遠心離油度を測定した。
また、以下に示す撥油剤処理を施した転がり軸受に、得られたグリース試料を封入し常温高速グリース試験に供し、常温高速グリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
表1に示した基油の半量に、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながら、これにモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させグリース試料を得た。用いた基油の表面張力を測定した。得られたグリース試料についてはちょう度を測定するとともに、以下に示す遠心油分離試験に供し、遠心離油度を測定した。
また、以下に示す撥油剤処理を施した転がり軸受に、得られたグリース試料を封入し常温高速グリース試験に供し、常温高速グリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
<遠心油分離試験>
遠心分離機を用い、50 g のグリース試料を遠心分離管に入れ、40℃で 23000 G の加速度を 7 時間かけたときの遠心離油度を次式により求めた。
(遠心離油度、%)=(1−試験前の増ちょう剤濃度/試験後の増ちょう剤濃度)×100
遠心分離機を用い、50 g のグリース試料を遠心分離管に入れ、40℃で 23000 G の加速度を 7 時間かけたときの遠心離油度を次式により求めた。
(遠心離油度、%)=(1−試験前の増ちょう剤濃度/試験後の増ちょう剤濃度)×100
<撥油剤処理>
シール部材の軸受内部側表面にフッ素系の撥水・撥油処理剤(LION社製:レインガード)を塗布し、室温にて 1 時間乾燥した転がり軸受(深溝玉軸受:軸受寸法:外径 47 mm×内径 20 mm×幅 14 mm、アンギュラ玉軸受:軸受寸法:外径 150 mm×内径 100 mm×幅 24 mm )を用意した。
シール部材の軸受内部側表面にフッ素系の撥水・撥油処理剤(LION社製:レインガード)を塗布し、室温にて 1 時間乾燥した転がり軸受(深溝玉軸受:軸受寸法:外径 47 mm×内径 20 mm×幅 14 mm、アンギュラ玉軸受:軸受寸法:外径 150 mm×内径 100 mm×幅 24 mm )を用意した。
<常温高速グリース試験−深溝玉軸受(6204)>
深溝玉軸受(6204)に、グリース試料を転走面狙いで 0.0235 g (軸受全空間容積の約 0.5 体積%)封入し、非接触シールして試験軸受を作成した。試験軸受に、アキシアル荷重 670 N とラジアル荷重 67 N とを負荷し、常温環境下で 10000 rpm の回転速度で回転させ、焼き付きに至るまでの時間をグリース寿命時間として測定した。この耐久試験における軸受のピッチ円径(mm)と回転数(rpm )との積であるdmN値は 35 万である。
深溝玉軸受(6204)に、グリース試料を転走面狙いで 0.0235 g (軸受全空間容積の約 0.5 体積%)封入し、非接触シールして試験軸受を作成した。試験軸受に、アキシアル荷重 670 N とラジアル荷重 67 N とを負荷し、常温環境下で 10000 rpm の回転速度で回転させ、焼き付きに至るまでの時間をグリース寿命時間として測定した。この耐久試験における軸受のピッチ円径(mm)と回転数(rpm )との積であるdmN値は 35 万である。
<常温高速グリース試験−アンギュラ玉軸受>
アンギュラ玉軸受(外径 150 mm×内径 100 mm、内外輪SUJ2、転動体 13/32 インチ窒化珪素球)に、実施例2および比較例1〜比較例4のグリース試料を転走面狙いで 3.0 g (軸受全空間容積の約 10 体積%)封入し、非接触シールして試験軸受を作成した。試験軸受を、1.8 GPa 定圧与圧下で、外筒冷却により軸受を冷却し、軸受外輪を 50℃以下に保ちつつ 14500 rpm の回転速度で回転させ、焼き付きに至るまでの時間をグリース寿命時間として測定した。この耐久試験における軸受のピッチ円径(mm)と回転数(rpm )との積であるdmN値は 185 万である。測定結果を表1に併記する。
アンギュラ玉軸受(外径 150 mm×内径 100 mm、内外輪SUJ2、転動体 13/32 インチ窒化珪素球)に、実施例2および比較例1〜比較例4のグリース試料を転走面狙いで 3.0 g (軸受全空間容積の約 10 体積%)封入し、非接触シールして試験軸受を作成した。試験軸受を、1.8 GPa 定圧与圧下で、外筒冷却により軸受を冷却し、軸受外輪を 50℃以下に保ちつつ 14500 rpm の回転速度で回転させ、焼き付きに至るまでの時間をグリース寿命時間として測定した。この耐久試験における軸受のピッチ円径(mm)と回転数(rpm )との積であるdmN値は 185 万である。測定結果を表1に併記する。
比較例1
基油と、ステアリン酸リチウムとを表1に示す割合で配合させてグリース試料を得た。用いた基油の表面張力を測定した。得られたグリース試料についてはちょう度を測定するとともに、上記遠心油分離試験に供し、遠心離油度を測定した。また、上記撥油剤処理を施した転がり軸受に、得られたグリース試料を封入し常温高速グリース試験に供し、常温高速グリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
基油と、ステアリン酸リチウムとを表1に示す割合で配合させてグリース試料を得た。用いた基油の表面張力を測定した。得られたグリース試料についてはちょう度を測定するとともに、上記遠心油分離試験に供し、遠心離油度を測定した。また、上記撥油剤処理を施した転がり軸受に、得られたグリース試料を封入し常温高速グリース試験に供し、常温高速グリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
比較例2
基油と、ステアリン酸リチウムとを表1に示す割合で配合させてグリース試料を得た。用いた基油の表面張力を測定した。得られたグリース試料についてはちょう度を測定するとともに、上記遠心油分離試験に供し、遠心離油度を測定した。また、上記撥油剤処理を施していない転がり軸受に、得られたグリース試料を封入し、上記常温高速グリース試験に供し、常温高速グリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
基油と、ステアリン酸リチウムとを表1に示す割合で配合させてグリース試料を得た。用いた基油の表面張力を測定した。得られたグリース試料についてはちょう度を測定するとともに、上記遠心油分離試験に供し、遠心離油度を測定した。また、上記撥油剤処理を施していない転がり軸受に、得られたグリース試料を封入し、上記常温高速グリース試験に供し、常温高速グリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
比較例4
表1に示す配合割合で実施例1と同様に処理してグリース試料を得た。用いた基油の表面張力を測定した。得られたグリース試料についてはちょう度を測定するとともに、上記遠心油分離試験に供し、遠心離油度を測定した。また、上記撥油剤処理を施していない転がり軸受に、得られたグリース試料を封入し、上記常温高速グリース試験を実施し常温高速グリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で実施例1と同様に処理してグリース試料を得た。用いた基油の表面張力を測定した。得られたグリース試料についてはちょう度を測定するとともに、上記遠心油分離試験に供し、遠心離油度を測定した。また、上記撥油剤処理を施していない転がり軸受に、得られたグリース試料を封入し、上記常温高速グリース試験を実施し常温高速グリース寿命時間を測定した。これらの測定結果を表1に併記する。
表1に示すように、グリースと接触する軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜が形成され、上記グリースは基油とウレア系増ちょう剤とを含んでなり、上記基油は 40℃における動粘度が 15〜30 mm2/sec であり、上記ウレア系増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られ、該モノアミン成分が脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するモノアミン成分であり、グリース全体に対して、上記ウレア系増ちょう剤を 3 重量%以上 9 重量%未満配合したグリースを封入した高速用転がり軸受が、常温高速グリース試験において優れた常温高速グリース寿命時間を示すことがわかる。
本発明の高速用転がり軸受は、グリースと接触する軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜を形成し、所定の動粘度を有する基油に、脂肪族成分を所定量含むウレア化合物を増ちょう剤として所定量配合してなるグリースを封入した転がり軸受であるので高速回転下での軸受耐久寿命が向上する。このため、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、研削盤、ホーニング盤、超仕上盤、ラップ盤等の高速で摺動、回転する工作機械の主軸支持部に組み込まれる転がり軸受として好適に利用できる。しかも、オイルエア潤滑法等のように潤滑油を連続して供給する方式と異なり、グリースを封入して使用できるため、運転コストの削減、省スペース化も可能になる。
1、11 アンギュラ玉軸受
2、12 内輪
3、13 外輪
4、14 転動体(鋼球)
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
8a、8b、8c、8d 撥水・撥油性被膜
21 深溝玉軸受
22 内輪
22a 内輪転走面
23 外輪
23a 外輪転走面
24 転動体
25 保持器
26 シール部材
27 グリース
28a、28b、28c、28d 撥水・撥油性被膜
2、12 内輪
3、13 外輪
4、14 転動体(鋼球)
5 保持器
6 シール部材
7 グリース
8a、8b、8c、8d 撥水・撥油性被膜
21 深溝玉軸受
22 内輪
22a 内輪転走面
23 外輪
23a 外輪転走面
24 転動体
25 保持器
26 シール部材
27 グリース
28a、28b、28c、28d 撥水・撥油性被膜
Claims (8)
- 高速回転する軸を支持する高速用転がり軸受であって、
該転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、前記内輪および外輪間の隙間の開口を覆うシール部材とを備え、前記転動体の周囲にグリースを封入してなり、前記グリースと接触する軸受内部表面の少なくとも一部に撥水・撥油性被膜が形成され、
前記グリースは基油とウレア系増ちょう剤とを含んでなり、前記基油は 40℃における動粘度が 15〜30 mm2/sec であり、前記ウレア系増ちょう剤は、ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られ、該モノアミン成分が脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンから選ばれた少なくとも1つのモノアミンをモノアミン全体に対して 50 モル%以上含有するモノアミン成分であり、グリース全体に対して、前記ウレア系増ちょう剤を 3 重量%以上 9 重量%未満配合することを特徴とする高速用転がり軸受。 - 前記撥水・撥油性被膜は、(1)シール部材の軸受内部側表面の一部、(2)外輪の軌道面を除く内径面およびシール部材の軸受内部側表面、(3)内輪の軌道面を除く外径面およびシール部材の軸受内部側表面、(4)転動体との接触面を除く保持器の表面から選ばれた少なくとも一つに形成されていることを特徴とする請求項1記載の高速用転がり軸受。
- 前記撥水・撥油性被膜は、シリコン系化合物またはフッ素系化合物を用いて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高速用転がり軸受。
- 前記シリコン系化合物はシロキサンであり、前記フッ素系化合物はフルオロアルキルシランであることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の高速用転がり軸受。
- 前記基油は表面張力が 25 mN/m 以上で、かつ密度が 0.95 g/cm3 以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の高速用転がり軸受。
- 前記基油は合成炭化水素油、エステル油およびアルキルジフェニルエーテル油から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の高速用転がり軸受。
- 前記高速用転がり軸受が、工作機械の主軸を支持する軸受であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の高速用転がり軸受。
- 前記高速用転がり軸受がアンギュラ玉軸受または円筒ころ軸受であることを特徴とする請求項7記載の高速用転がり軸受。
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Cited By (3)
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JP2018087638A (ja) * | 2012-04-25 | 2018-06-07 | 日本精工株式会社 | 工作機械主軸用転がり軸受 |
-
2007
- 2007-11-13 JP JP2007293879A patent/JP2009121531A/ja active Pending
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