JP2009174657A - トランスミッション用転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】トランスミッション用転がり軸受の軸受の転走面での水素脆化による特異性剥離抑制し、振動による軸受とプーリに掛けたベルトの損傷を防止する。
【解決手段】転がり軸受の両端に接触式シール部材5を設け、内輪1、外輪2および転動体3を1.5〜6%のCr含有鋼により形成し、その転走面に水素の侵入を防止するためのCrの酸化被膜1a、2a、3aを形成する。潤滑グリースGは、基油と増ちょう剤とからなる基油100重量部に対して、アルミニウム系添加剤0.05〜10重量部を配合した組成物とする。摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面にアルミニウム粉末またはアルミニウム化合物が反応し、クロム酸化皮膜と共にアルミニウムを含有する被膜が軸受転走面に生成する。これにより水素の発生が防止され、潤滑油が分解してもその際に発生した水素が鋼中に侵入することを防ぐことができ、水素脆化による特異性剥離は防止される。
【選択図】図1
【解決手段】転がり軸受の両端に接触式シール部材5を設け、内輪1、外輪2および転動体3を1.5〜6%のCr含有鋼により形成し、その転走面に水素の侵入を防止するためのCrの酸化被膜1a、2a、3aを形成する。潤滑グリースGは、基油と増ちょう剤とからなる基油100重量部に対して、アルミニウム系添加剤0.05〜10重量部を配合した組成物とする。摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面にアルミニウム粉末またはアルミニウム化合物が反応し、クロム酸化皮膜と共にアルミニウムを含有する被膜が軸受転走面に生成する。これにより水素の発生が防止され、潤滑油が分解してもその際に発生した水素が鋼中に侵入することを防ぐことができ、水素脆化による特異性剥離は防止される。
【選択図】図1
Description
この発明は、自動車のトランスミッション内で歯車装置などに用いられる玉軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受などからなるトランスミッション用転がり軸受に関するものである。
自動車等のトランスミッションは、エンジンからの駆動力を変速して駆動軸などへ伝達する主変速機であり、マニュアルタイプとオートマチックタイプに大別され、また車輌の駆動方式によって前輪駆動(FWD)用トランスアクスル、後輪駆動(RWD)用トランスミッション、および四輪駆動(4WD)用トランスファ(副変速機)がある。
転がり軸受は、例えばメインシャフトとメインドライブギヤとの間に介在するように取り付けられ、このようなトランスミッション用転がり軸受は、回転に伴って油浴の油が潤滑油として軸受内部に流入する。
自動車のトランスミッションは、近年、ミッションのAT化、CVT化および低燃費化等のために低粘度の油が使われる傾向にある。低粘度オイルが使用される環境下では、(1)油温が高い、(2)油量が少ない、(3)予圧抜けが発生するなどの悪条件が重なった場合に、潤滑不良に起因する非常に短寿命の表面起点剥離が面圧の高い内輪軌道面に生じることがある。
特異性剥離は、軸受の高速化による振動が転走面の鏡面摩耗を引き起こし、それによる新生面の形成が触媒作用をしてグリースを分解し、その際に発生した水素が鋼中に侵入し、水素脆(ぜい)性を引起こすことが原因であることが知られており、上記の特異性剥離を防止する手段として軸受転走面に酸化皮膜を形成することが周知である。
グリース封入転がり軸受においては、上記の特異性剥離を防止する手段として、固定側軌道輪が1.5〜6%Cr含有鋼から成り、その転走面に水素の侵入を防止するためのCrの酸化被膜を形成することが有効であることが先の本出願人の出願に開示されている(特許文献1)。
またCr酸化皮膜が、厚み0.1μm以上、かつ表面粗さがRyで1.1μm未満のCr酸化被膜とすることも知られている(特許文献2)。
またCr酸化皮膜が、厚み0.1μm以上、かつ表面粗さがRyで1.1μm未満のCr酸化被膜とすることも知られている(特許文献2)。
しかし、上記した従来技術でも、トランスミッション用転がり軸受の水素脆化による特異性剥離を完全に抑制することは容易ではなく、さらに改良された技術によって、より確実に水素脆化による特異性剥離を解消させる技術が求められている。
また、トランスミッション用転がり軸受に表面起点剥離による短寿命が起きる場合の他にも、軸受の回転時にアキシャル方向に振動(ガタツキと呼ばれる現象も含む)が起こる場合があり、このような状態で振動しながら回転する回転軸のプーリに掛けたベルトが摩耗損傷しやすくなるという問題点もある。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、第1にトランスミッション用転がり軸受の転走面での水素脆化による特異性剥離をより充分に抑制し、特に軸受に振動が生じることなく、さらに軸受とプーリに掛けたベルトの損傷を防止できるトランスミッション用転がり軸受とすることである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、内輪および外輪と、これら内外輪の転走面間に介在する複数の転動体とを有すると共に、軸受両端に接触式シールを備え、前記転動体の周囲に潤滑グリースを密封したトランスミッション用転がり軸受において、この転がり軸受の内輪、外輪および転動体から選ばれる1以上の部品を1.5〜6%Cr含有鋼で形成し、前記潤滑グリースは、基油と増ちょう剤とからなる基油100重量部に対してアルミニウム粉末もしくはアルミニウム化合物または両者併用したアルミニウム系添加剤0.05〜10重量部を配合した潤滑グリース組成物であることを特徴とするトランスミッション用転がり軸受としたのである。
上記した構成のトランスミッション用転がり軸受では、内輪、外輪および転動体から選ばれる1以上の部品を1.5〜6%Cr含有鋼で成形したことにより、空気中での酸化によって転がり軸受の転動体表面、内輪外径面および外輪内径面から選ばれた少なくとも一つの面に強い緻密なCrの酸化皮膜〔FeCrO4 〕が形成され、転走面を不活性にする。そのため、潤滑油の分解による水素の発生が抑制され、水素脆化による特異性剥離は防止される。
特に、トランスミッション用転がり軸受が、自動車の無断変速機用転がり軸受である場合には、使用される潤滑油が低粘度であることから、転がり面に金属接触が起こりやすく活性面が作られやすいが、軸受両端に接触式シールを備え、前記転動体の周囲に潤滑グリースを密封しているため、水素脆化による特異性剥離は確実に防止される。
また、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面において潤滑グリースに配合した所定量のアルミニウム系添加剤が作用し、すなわち、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面にアルミニウム粉末が付着し、またはアルミニウム化合物が反応し、クロム酸化皮膜と共にアルミニウム、酸化アルミニウムを含有する被膜が軸受転走面に生成する。
この軸受転走面に生成した被膜が、潤滑グリースの分解による水素の発生を抑制すると共に水素の侵入を防止して、水素脆性による特異的な剥離を防止できる。すなわち、軸受転走面に生成した被膜が水素の発生を防止し、潤滑油が分解してもその際に発生した水素が鋼中に侵入することを防ぎ、水素脆化による特異性剥離は防止される。
この発明において、アルミニウム系添加剤は、耐熱耐久性、耐熱分解性、極圧効果が優れている点でアルミニウム粉末が好ましく、これに順ずる炭酸アルミニウムおよび硝酸アルミニウムも水素脆化による特異性剥離の防止性は確実であり好ましいものである。
アルミニウム系添加剤の配合割合は、基油100重量部に対して0.05重量部〜10重量部である。すなわち、(1)アルミニウム系添加剤がアルミニウム粉末のみである場合、基油100重量部に対してアルミニウム粉末を0.05〜10重量部、(2)アルミニウム系添加剤がアルミニウム化合物のみである場合、基油100重量部に対してアルミニウム化合物を0.05〜10重量部、(3)アルミニウム系添加剤がアルミニウム粉末とアルミニウム化合物とである場合、基油100重量部に対して、アルミニウム粉末とアルミニウム化合物とを合せて0.05〜10重量部配合する。このようなアルミニウム粉末は、ジグリースに安定して均一分散性があるように適宜な粒径で採用される。
上記したアルミニウム系添加剤の配合割合が、0.05重量部未満であれば水素脆性等による転走面での剥離を効果的に充分防止できない。また10重量部を超えて多量を配合しても、それ以上は剥離防止効果が顕著に向上せず却って実用性が低下する。
この発明では、内輪外径面および外輪内径面から選ばれた少なくとも一つの面に形成された軌道溝が、転動体直径の102%以下(100〜102%)の曲率直径の円曲面からなる円形軌道溝である転がり軸受とすることが好ましい。
なぜなら、転走面に形成された円溝が、転動体直径(D)の102%以下の曲率直径(Cd)の円曲面からなる円溝であることにより、転動体と転走面の接触面積が充分に確保されて転動体の円溝に接する面圧が低くなるため、Crの酸化皮膜が損傷され難くなり、酸化抑制性を充分に示す厚さを安定的に保って水素脆性を確実に防止するからである。
このようなトランスミッション用転がり軸受は、ラジアル方向に予圧をかけてトランスミッションに組み込んで固定された際、その固定状態で軸受のラジアル内部隙間が−10μm〜5μm(但し、圧縮された状態を負の隙間として−記号で示す)になるように調整された軸受であることが好ましい。
ラジアル内部隙間が上記の所定範囲内であることにより、回転した際の転がり軸受の軸方向(アキシャル)のガタツキ(振動)を抑制し、トランスミッションに用いるベルトなどの損耗を抑制できる。
このような特性の転がり軸受とすることにより、特に自動車トランスミッション用転がり軸受は、使用される潤滑油が低粘度で転がり面に金属の活性面が形成されやすい無断変速機用転がり軸受であっても、軌道輪の酸化皮膜は充分に厚く形成され、水素脆化による特異性剥離が確実に防止される。
このようなトランスミッション用転がり軸受は、玉軸受、円筒ころ軸受または円錐ころ軸受であるものを採用することができる。また、トランスミッション用転がり軸受は、自動車のトランスミッションにおける歯車装置の駆動軸に用いられる転がり軸受に適用できる。
この発明のトランスミッション用転がり軸受は、1.5〜6%Cr含有鋼が、金属表面に水素脆性防止に効果的な厚みの強い緻密なCrの酸化皮膜〔FeCrO4 〕を形成するため、転走面を不活性にし、その内・外輪および転動体から選ばれる1以上の構成部品の材料自体により特異性剥離を防止することができる利点があり、また特別な酸化皮膜処理を別途必要としないので、製造コストを低減することができる利点もある。
また、この発明では金属新生面において潤滑グリースに配合したアルミニウム系添加剤が反応し、酸化鉄と共にアルミニウム被膜が軸受転走面に生成し、トランスミッション用転がり軸受で見られる水素脆性等による特異な剥離の発生を抑制することができ、トランスミッション用転がり軸受の長寿命化を図ることができる。
また、転動体の102%以下の曲率直径(Cd)の円曲面からなる円溝を形成したので、トランスミッション用転がり軸受の水素脆化による特異性剥離をより充分に抑制され、軸受に振動(ガタツキ)が生じることなく、このような軸受にプーリを介して取り付けたベルトを損傷させないトランスミッション用転がり軸受となる利点もある。
また、転がり軸受は、その固定状態で軸受のラジアル内部隙間が所定範囲内になるように調整された軸受であることにより、回転した際の転がり軸受の軸方向の振動がより抑制され、トランスミッションに用いるベルトなどの損耗を抑制できる。
これらの効果は、トランスミッション用転がり軸受が、自動車の無断変速機用転がり軸受である場合、または自動車のトランスミッションにおける歯車装置に用いられる転がり軸受である場合にその効果が顕著である。
この発明の実施形態を、以下に添付図面に基づいて説明する。
図1、2に示すように、実施形態は、自動車トランスミッションに使用される転がり軸受(深溝玉軸受)であり、内輪1と外輪2との間に介在される転動体3を保持器4により回転自在に保持し、潤滑グリースGをシール部材5で封入して潤滑し、内輪1が回転軸Aを保持し、外輪2がハウジングHに固定されている。
図1、2に示すように、実施形態は、自動車トランスミッションに使用される転がり軸受(深溝玉軸受)であり、内輪1と外輪2との間に介在される転動体3を保持器4により回転自在に保持し、潤滑グリースGをシール部材5で封入して潤滑し、内輪1が回転軸Aを保持し、外輪2がハウジングHに固定されている。
実施形態の内輪1、外輪2および転動体3は、すべての部品が1.5〜6%望ましくは2〜6%のCr含有鋼により形成されたものである。これらは少なくとも1つの部品が前記のCr含有鋼で構成されていればよく、特にハウジング固定側のみをこの材料で構成してもよい。他の材料としては、通常の軸受鋼を採用できる。
このように構成すると、内輪1、外輪2および転動体3の金属表面に効果的な厚みの強い緻密なCrの酸化皮膜〔FeCrO4 〕1a、2a、3a、が形成され、転走面を不活性にする。転動体3が接する内輪1と外輪2の表面のうち、円溝1cと円溝2cからなる転走面も不活性である。
1.5〜6%Cr含有鋼には、空気に触れた際に金属表面に強く緻密なCrの酸化皮膜〔FeCrO4〕が効果的な厚さで形成されるため、使用状態の転走面は常に不活性である。このため、潤滑不良時に発生しやすい水素が鋼中に侵入することは防止され、特異性剥離現象は防止される。
1.5〜6%Cr含有の鋼を採用する理由は、1.5%未満のCr含有鋼を使用した軸受部品では転走面に特異性剥離が起こる可能性があり、Cr含有量が6%を越えると、焼入温度が高くなり、熱処理コストなどの実用性を持たせるためには6%以下であることが望ましいからである。
図2に示すように、実施形態の転がり軸受において、転走面に形成された円溝1c、2cは、転動体直径(D)に対して102%以下の曲率直径(外輪側:Cdo、内輪側:Cdi)の円曲面で形成され、好ましくは転動体直径(D)に対して100〜102%の曲率直径Cdo、Cdiの円曲面で形成されている。
円溝1c、2cが、転動体直径(D)に対して102%を超える曲率直径では、転動体3が円溝1c、2cに対して接する面積が相当に減少し、そのために接触面の面圧が相当に上昇する結果、潤滑油による潤滑不良の状態になりやすく、そのとき水素脆化による特異性剥離も起こりやすくなるからである。
転がり軸受に封入される潤滑グリースは、アルミニウム系添加剤を配合したグリースを使用する。
アルミニウム系添加剤は、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれる一種以上を採用する。アルミニウム化合物としては、例えば炭酸アルミニウム、硫化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびその水和物、水酸化アルミニウム、セレン化アルミニウム、テルル化アルミニウム、りん酸アルミニウム、リン化アルミニウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、セレン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ジルコン酸アルミニウム等の無機アルミニウム化合物、または安息香酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム等の有機アルミニウム化合物が挙げられる。これらアルミニウム系添加剤は、1種類または2種類を混合して添加してもよい。
アルミニウム系添加剤は、アルミニウム粉末およびアルミニウム化合物から選ばれる一種以上を採用する。アルミニウム化合物としては、例えば炭酸アルミニウム、硫化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびその水和物、水酸化アルミニウム、セレン化アルミニウム、テルル化アルミニウム、りん酸アルミニウム、リン化アルミニウム、アルミン酸リチウム、アルミン酸マグネシウム、セレン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、ジルコン酸アルミニウム等の無機アルミニウム化合物、または安息香酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム等の有機アルミニウム化合物が挙げられる。これらアルミニウム系添加剤は、1種類または2種類を混合して添加してもよい。
この発明に用いる潤滑グリースの主な成分である基油は、特に種類を限定されるものではなく、例えばスピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高精製度鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、ポリ-α-オレフィン油、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または天然油脂、ポリオールエステル油、りん酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等を使用できる。
これらの中でも耐熱性と潤滑性に優れた基油成分として、アルキルジフェニルエーテル油、または、ポリ−α−オレフィン油を用いることが好ましい。
潤滑グリースを所要粘性にするための増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。
これらの中で、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
ジウレア化合物は、例えばジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えばジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
基油にウレア系化合物等の増ちょう剤を配合し、さらにアルミニウム系添加剤等を配合するためのベースグリースが得られる。ウレア系化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
ベースグリース100重量部中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40重量部、好ましくは3〜25重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
また、アルミニウム化合物とともに、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、リン系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独または 2 種類以上組み合せて添加できる。
これらの種々の種類のトランスミッション用転がり軸受は、ラジアル方向に予圧をかけてトランスミッションに組み込んで固定され、その固定状態で軸受のラジアル内部隙間が−10μm〜5μmになるように調整される。
ラジアル内部隙間が5μm以下であれば、隙間がない状態と同等であり、潤滑油膜を介して転動体が転送面に接している。また、転動体と転走面が加圧状態で接触していて−10μm程度の弾性圧縮の状態であれば、潤滑油による液体潤滑にも支障はなく、回転時のアキシャル方向の遊動がなくなって回転時の振動(いわゆるガタツキ)を減少させることができる。
この発明に採用できるトランスミッション用転がり軸受の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受などが代表的なものとして挙げられる。
[実施例1〜実施例8]
図1に示す構造の深溝玉軸受の内輪1と外輪2と転動体3のうち、内輪、外輪を1.8%Cr含有鋼により形成し、その他の部品は軸受鋼で形成した。
図1に示す構造の深溝玉軸受の内輪1と外輪2と転動体3のうち、内輪、外輪を1.8%Cr含有鋼により形成し、その他の部品は軸受鋼で形成した。
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(日本ポリウレタン工業社製商品名のミリオネートMT、以下、MDIと記す)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合(重量部)および種類は表1のとおりである。
MDIを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100℃〜120℃で30分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これにアルミニウム化合物および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加え、さらに100℃〜120℃で10分間撹拌した。その後、冷却して三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
これにアルミニウム化合物および酸化防止剤を表1に示す配合割合で加え、さらに100℃〜120℃で10分間撹拌した。その後、冷却して三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
表1において、基油として用いた合成炭化水素油は、40℃における動粘度30mm2/secの新日鉄化学社製商品名のシンフルード601であり、アルキルジフェニルエーテル油は、40℃ における動粘度97mm2/secの松村石油社製商品名のモレスコハイルーブLB100である。また、酸化防止剤は住友化学社製ヒンダードフェノールを用いた。また、アルミニウム粉末、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウムは試薬を用いた。
得られたグリース組成物の急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示し、結果を表1に示した。
得られたグリース組成物の急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示し、結果を表1に示した。
<耐久性試験>
自動車用トランスミッションを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受に上記グリース組成物を封入し、耐久試験を行なった。試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重がP/c=0.10〜0.50になるように運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって転がり軸受の回転が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、耐久性試験は、最長500時間とした。
自動車用トランスミッションを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受に上記グリース組成物を封入し、耐久試験を行なった。試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重がP/c=0.10〜0.50になるように運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって転がり軸受の回転が停止する時間(剥離発生寿命時間、h)を計測した。なお、耐久性試験は、最長500時間とした。
[比較例1〜比較例3]
実施例1に準じる方法で、表1に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と全く同様の試験を行なって評価し、結果を表1中に併記した。
実施例1に準じる方法で、表1に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と全く同様の試験を行なって評価し、結果を表1中に併記した。
表1の結果からも明らかなように、比較例は、耐久時間が最長220時間に留まったが、実施例では、急加減速試験は、いずれも400時間以上(剥離発生寿命時間)の優れた耐久性を示す結果が得られた。
1 内輪
2 外輪
3 転動体
4 保持器
5 シール部材
1a、2a、3a 酸化被膜
1c、2c 円溝
A 回転軸
H ハウジング
2 外輪
3 転動体
4 保持器
5 シール部材
1a、2a、3a 酸化被膜
1c、2c 円溝
A 回転軸
H ハウジング
Claims (6)
- 内輪および外輪と、これら内外輪の転走面間に介在する複数の転動体とを有すると共に、軸受両端に接触式シールを備え、前記転動体の周囲に潤滑グリースを密封したトランスミッション用転がり軸受において、
この転がり軸受の内輪、外輪および転動体から選ばれる1以上の部品を1.5〜6%Cr含有鋼で形成し、前記潤滑グリースは、基油と増ちょう剤とからなる基油100重量部に対してアルミニウム粉末もしくはアルミニウム化合物または両者併用したアルミニウム系添加剤0.05〜10重量部を配合した潤滑グリース組成物であることを特徴とするトランスミッション用転がり軸受。 - アルミニウム化合物は、炭酸アルミニウムおよび硝酸アルミニウムから選ばれた少なくとも一つのアルミニウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション用転がり軸受。
- 内輪外径面および外輪内径面から選ばれた少なくとも一つの面に形成された軌道溝が、転動体直径の100〜102%の曲率直径の円曲面からなる円形軌道溝であることを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション用転がり軸受。
- トランスミッション用転がり軸受が、ラジアル方向に予圧をかけてトランスミッションに組み込んで固定された際、その固定状態で軸受のラジアル内部隙間が−10μm〜5μmになるように調整された軸受である請求項1に記載のトランスミッション用転がり軸受。
- トランスミッション用転がり軸受が、自動車の無断変速機用転がり軸受である請求項1に記載のトランスミッション用転がり軸受。
- トランスミッション用転がり軸受が、自動車のトランスミッションにおける歯車装置に用いられる転がり軸受である請求項1に記載のトランスミッション用転がり軸受。
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CN108534935A (zh) * | 2018-04-08 | 2018-09-14 | 青岛理工大学 | 一种球-三斜面接触纯滑动工况摩擦磨损与润滑油膜测量装置 |
CN108534935B (zh) * | 2018-04-08 | 2019-11-22 | 青岛理工大学 | 一种球-三斜面接触纯滑动工况摩擦磨损与润滑油膜测量装置 |
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