JP2004083798A - グリース組成物及び転動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリウレア10〜90質量%と金属複合石けん90〜10質量%とからなる増ちょう剤を、40℃における動粘度が50〜500mm2 /sである基油に混合してグリース組成物を製造した。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速,高温下においても優れた性能を有し、転動装置の焼付き寿命を大幅に向上させることが可能なグリース組成物に関する。また、本発明は、高速,高温下においても優れた焼付き寿命を有する転動装置に係り、特に、自動車,鉄道車両,電動機,製鉄用機械,工作機械等に好適な転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車,鉄道車両,電動機,製鉄用機械,工作機械等のような各種機械は小型軽量化,高速化が進んでおり、このことに伴って、前記各種機械に組み込まれた転動装置(転がり軸受,リニアガイド装置,ボールねじ等)に使用されるグリースの使用条件はますます高速,高温となっていて、極めて過酷になっている。
【0003】
例えば、ディスクブレーキを装着した自動車においては、ブレーキの作動で生じた摩擦熱によって、ホイールベアリングに使用されたグリースが150〜200℃の高温となる可能性がある。グリースがこのような高温となると、軟化して流動しハブ内から流出したり、酸化劣化が急速に進んで潤滑不良を起こしたりするおそれがある。
【0004】
また、鉄道車両の電動機は直流電動機から誘導電動機へ変更が図られているため、電動機用グリースの使用条件は高速化,高温化している。すなわち、電動機に使用される軸受のdmN値は30万から80万に上昇し、それに伴って軸受温度は80℃程度から100℃程度に上昇している。
このようなことから、前記各種機械に組み込まれた転動装置に使用されるグリースには、高速,高温下という極めて過酷な条件下においても優れた性能を有することが求められている。
【0005】
さらに、前記各種機械においては、小型軽量化,高速化に加えてメンテナンスフリー化の要望がより一層強くなっている。このため前記各種機械に組み込まれた転動装置には、優れた焼付き寿命が求められている。
このような前記各種機械に組み込まれた転動装置に使用されるグリース組成物としては、従来はリチウム石けん等の金属石けんを用いたグリース組成物が使用されてきたが、近年においては耐熱性向上のため金属複合石けんを用いたグリース組成物が多く使用されている。
【0006】
例えば、特許第2544952号公報,特許第286212号公報,特開2001−187891号公報等に記載のリチウムコンプレックス石けんを用いたグリース組成物があげられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなリチウムコンプレックス石けんを用いたグリース組成物は、経時的に硬化する傾向があるという問題点を有していた。また、カルシウムコンプレックス石けんを用いたグリース組成物も同様の問題点を有していた。さらに、アルミニウムコンプレックス石けんを用いたグリース組成物は、長期安定性に問題があった。このように、従来の金属複合石けんを用いたグリース組成物には、種々の問題点があった。
【0008】
一方、高速,高温下において使用されるグリース組成物としては、ウレアを増ちょう剤として用いたものが従来から知られている。このウレアグリースは、自動車の電装部品,エンジン補機等に組み込まれる軸受に使用されていた。しかしながら、このウレアグリースは、玉軸受に用いた場合は十分な焼付き寿命を付与することができるが、ころ軸受に用いた場合は満足する焼付き寿命を付与することができない場合があるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、高速,高温下においても優れた性能を有し、転動装置の焼付き寿命を優れたものとすることが可能なグリース組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、高速,高温下においても優れた焼付き寿命を有する転動装置を提供することを併せて課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう剤をポリウレア10〜90質量%と金属複合石けん90〜10質量%とで構成したことを特徴とする。
【0011】
このようなグリース組成物は、増ちょう剤としてポリウレアを含有しているので、高速,高温下においても優れた性能を有する。また、増ちょう剤として金属複合石けんを含有しているので、このグリース組成物が充填された転動装置、特にころ軸受の焼付き寿命を優れたものとすることができる。
増ちょう剤の組成が前記範囲外であると、グリース組成物の高速,高温下における性能が不十分となるおそれがある。また、グリース組成物をころ軸受等の転動装置に充填した際に、転動装置の焼付き寿命が不十分となるおそれがある。
【0012】
高速,高温下における性能をより優れたものとし、さらにこのグリース組成物を充填した転動装置の焼付き寿命をより優れたものとするためには、増ちょう剤はポリウレア25〜75質量%と金属複合石けん75〜25質量%とで構成することがより好ましい。
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の3〜40質量%としたことを特徴とする。
【0013】
3質量%未満であるとグリース状態を維持することが困難となり、40質量%超過であると、グリース組成物が硬化しすぎて十分な潤滑性を発揮することが困難となる。ただし、グリース組成物の混和ちょう度及びこのグリース組成物を充填した転動装置の耐久性を考慮すると、増ちょう剤の含有量は組成物全体の10〜30質量%とすることがより好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る請求項3のグリース組成物は、請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物において、前記基油の40℃における動粘度を50〜500mm2 /sとしたことを特徴とする。
動粘度が50mm2 /s未満であると、高温時に十分な厚さの油膜を形成しにくくなるので、グリース組成物を充填した転動装置の耐久性が不十分となるおそれがある。また、500mm2 /s超過であると、グリース組成物を充填した転動装置のトルクが大きくなって作動性に問題が生じる場合がある。これらの問題がより生じにくくするためには、基油の40℃における動粘度は100〜400mm2 /sであることがより好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る請求項4のグリース組成物は、請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物において、混和ちょう度を220〜385としたことを特徴とする。
混和ちょう度が220未満であると、硬すぎるためにグリース組成物を充填した転動装置の音響性能やトルク性能が低下する。また、385を超えると、転動装置からの発塵量が多くなる。
【0016】
さらに、本発明に係る請求項5の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0017】
このような構成の転動装置(特に、ころ軸受)は、ポリウレアと金属複合石けんとの両方を増ちょう剤として含有するグリース組成物が充填されているので、高速,高温下においても優れた焼付き寿命を有する。
本発明は、種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
【0018】
なお、本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0019】
以下に、本発明のグリース組成物を構成する各成分について説明する。
〔ポリウレアについて〕
本発明において金属複合石けんとともに増ちょう剤として使用されるポリウレアは、ジウレア,トリウレア,テトラウレア等のポリウレアが使用できるが、特に、下記の一般式(I)で表されるジウレアが好ましい。
【0020】
【化1】
【0021】
なお、式(I)中のR2 は、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を表す。また、R1 及びR3 は脂肪族炭化水素基,芳香族炭化水素基,又は縮合炭化水素基を表し、R1 とR3 は同一であってもよいし異なっていてもよいが、グリース組成物を充填した転動装置の音響性能を考慮すると脂肪族炭化水素基が好ましい。縮合炭化水素基の炭素数は9〜19が好ましく、9〜13がさらに好ましい。これらの炭化水素基の炭素数が前記下限値より小さいと、増ちょう剤が基油に分散しにくく、また、増ちょう剤と基油とが分離しやすくなる。一方、炭化水素基の炭素数が前記上限値より大きい増ちょう剤は、工業的に非現実的である。
【0022】
このようなジウレアをはじめとするポリウレアは、別途合成したものを基油に分散させてもよいし、基油中で合成することによって基油に分散させてもよい。ただし、後者の方法の方が、基油中に増ちょう剤を良好に分散させやすいので、工業的に製造する場合には有利である。
ジウレアを基油中で合成する場合の合成方法は、特に限定されるものではないが、R2 の芳香族炭化水素基を有するジイソシアネート1モルと、R1 ,R3 の炭化水素基を有するモノアミン2モルとを、反応させる方法が最も好ましい。
【0023】
ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート,トリレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,ビフェニレンジイソシアネート,ジメチルジフェニレンジイソシアネート,又はこれらのアルキル基置換体等を好適に使用できる。
また、R1 ,R3 が脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である場合のモノアミンとしては、例えば、アニリン,シクロヘキシルアミン,オクチルアミン,トルイジン,ドデシルアニリン,オクタデシルアミン,ヘキシルアミン,ヘプチルアミン,ノニルアミン,エチルヘキシルアミン,デシルアミン,ウンデシルアミン,ドデシルアミン,テトラデシルアミン,ペンタデシルアミン,ノナデシルアミン,エイコデシルアミン,オレイルアミン,リノレイルアミン,リノレニルアミン,メチルシクロヘキシルアミン,エチルシクロヘキシルアミン,ジメチルシクロヘキシルアミン,ジエチルシクロヘキシルアミン,ブチルシクロヘキシルアミン,プロピルシクロヘキシルアミン,アミルシクロヘキシルアミン,シクロオクチルアミン,ベンジルアミン,ベンズヒドリルアミン,フェネチルアミン,メチルベンジルアミン,ビフェニルアミン,フェニルイソプロピルアミン,フェニルヘキシルアミン等を好適に使用できる。
【0024】
さらに、R1 ,R3 が縮合炭化水素基である場合のモノアミンとしては、例えば、アミノインデン、アミノインダン、アミノ−1−メチレンインデン等のインデン系アミン化合物、アミノナフタレン(ナフチルアミン)、アミノメチルナフタレン、アミノエチルナフタレン、アミノジメチルナフタレン、アミノカダレン、アミノビニルナフタレン、アミノフェニルナフタレン、アミノベンジルナフタレン、アミノジナフチルアミン、アミノビナフチル、アミノ−1,2−ジヒドロナフタレン、アミノ−1,4−ジヒドロナフタレン、アミノテトラヒドロナフタレン、アミノオクタリン等のナフタレン系アミン化合物、アミノペンタレン、アミノアズレン、アミノヘプタレン等の縮合二環系アミン化合物、アミノフルオレン、アミノ−9−フェニルフルオレン等のアミノフルオレン系アミン化合物、アミノアントラセン、アミノメチルアントラセン、アミノジメチルアントラセン、アミノフェニルアントラセン、アミノ−9,10−ジヒドロアントラセン等のアントラセン系アミン化合物、アミノフェナントレン、アミノ−1,7−ジメチルフェナントレン、アミノレテン等のフェナントレンアミン化合物、アミノビフェニレン、アミノ−sym−インダセン、アミノ−as−インダセン、アミノアセナフチレン、アミノアセナフテン、アミノフェナレン等の縮合三環系アミン化合物、アミノナフタセン、アミノクリセン、アミノピレン、アミノトリフェニレン、アミノベンゾアントラセン、アミノアセアントリレン、アミノアセアントレン、アミノアセフェナントリレン、アミノアセフェナントレン、アミノフルオランテン、アミノプレイアデン等の縮合四環系アミン化合物、アミノペンタセン、アミノペンタフェン、アミノピセン、アミノペリレン、アミノジベンゾアントラセン、アミノベンゾピレン、アミノコラントレン等の縮合五環系アミン化合物、アミノコロネン、アミノピラントレン、アミノビオラントレン、アミノイソビオラントレン、アミノオバレン等の縮合多環系(六環以上)アミン化合物などが好適に用いられる。
【0025】
〔金属複合石けんについて〕
本発明においてポリウレアとともに増ちょう剤として使用される金属複合石けんとしては、周期律表の1,2,及び13族の金属の化合物(例えば、金属水酸化物)と、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸と、から合成されたものがあげられる。
【0026】
金属としては、例えば、リチウム,ナトリウム,バリウム,アルミニウム等があげられる。
また、脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸としては、例えば、9 −ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9 ,10−ジヒドロキシステアリン酸等があげられる。この中では、12−ヒドロキシステアリン酸が最も好ましい。
【0027】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカン二酸等があげられ、この中ではアゼライン酸が最も好ましい。
なお、脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との量比は、両者の合計を100として脂肪族ジカルボン酸を20〜40質量%とすることが重要である。この範囲外であると、グリース組成物の熱安定性が不十分となるおそれがある。
【0028】
〔基油について〕
本発明のグリース組成物の基油としては、鉱物系潤滑油や合成潤滑油を使用することができる。その種類は特に制限されるものではないが、鉱物系潤滑油としては、パラフィン系鉱物油,ナフテン系鉱物油,及びそれらの混合油を使用でき、また、合成潤滑油としては、合成炭化水素油,エーテル油,エステル油,及びフッ素油等を使用できる。
【0029】
具体的には、合成炭化水素油としてはポリα−オレフィン油等を、エーテル油としてはジアルキルジフェニルエーテル油,アルキルトリフェニルエーテル油,アルキルテトラフェニルエーテル油等を、エステル油としてはジエステル油,ネオペンチル型ポリオールエステル油,これらのコンプレックスエステル油,芳香族エステル油等を、フッ素油としてはパーフルオロエーテル油,フルオロシリコーン油,クロロトリフルオロエチレン油,フルオロフォスファゼン油等を使用することができる。これらの基油は、単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ただし、高速,高温下における潤滑性能及び耐久性を考慮すると、基油には合成潤滑油が含有されていることが好ましく、特にエステル油やエーテル油が好ましい。また、コストを考慮すると鉱油が含有されていることが好ましい。
〔添加剤について〕
本発明のグリース組成物には、各種性能をさらに向上させるため、所望により種々の添加剤を混合してもよい。例えば、酸化防止剤,防錆剤,極圧剤,油性向上剤,金属不活性化剤など、グリース組成物に一般的に使用される添加剤を、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0031】
酸化防止剤としては、例えば、アミン系,フェノール系,硫黄系,ジチオリン酸亜鉛等があげられる。
アミン系酸化防止剤の具体例としては、フェニル−1−ナフチルアミン,フェニル−2−ナフチルアミン,ジフェニルアミン,フェニレンジアミン,オレイルアミドアミン,フェノチアジン等があげられる。
【0032】
また、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−フェニルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−オクチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−6−t−ブチル−m−クレゾール、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2−n−オクチル−チオ−4,6−ジ(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル)フェノキシ−1,3,5−トリアジン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のヒンダードフェノールなどがあげられる。
【0033】
防錆剤としては、例えば、石油スルフォン酸,有機系スルフォン酸金属塩(金属はアルカリ金属,アルカリ土類金属等),エステル類等があげられる。
有機系スルフォン酸金属塩の具体例としては、ジノニルナフタレンスルホン酸や重質アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩(カルシウムスルフォネート,バリウムスルフォネート,ナトリウムスルフォネートなど)等があげられる。
【0034】
また、エステル類の具体例としては、多塩基カルボン酸及び多価アルコールの部分エステルであるソルビタンモノラウレート,ソルビタントリステアレート,ソルビタンモノオレエート,ソルビタントリオレエート等のソルビタンエステル類や、ポリオキシエチレンラウレート,ポリオキシエチレンオレエート,ポリオキシエチレンステアレート等のアルキルエステル類などがあげられる。
【0035】
また、アルキルコハク酸エステル,アルケニルコハク酸エステル等のようなアルキルコハク酸誘導体,アルケニルコハク酸誘導体も、防錆剤として好ましく使用できる。
油性向上剤としては、例えば、オレイン酸,ステアリン酸等の脂肪酸、ラウリルアルコール,オレイルアルコール等のアルコール、ステアリルアミン,セチルアミン等のアミン、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル、及び動植物油等があげられる。
【0036】
さらに、リン系,ジチオリン酸亜鉛,有機モリブデン等の極圧剤や、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤などが使用される。
なお、これら添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば特に限定されるものではないが、
なお、これら添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば特に限定されるものではないが、通常は、各種添加剤のそれぞれの添加量はグリース組成物全体に対して0.1〜10質量%とすることが好ましく、全添加剤の総添加量はグリース組成物全体に対して0.2〜10質量%とすることが好ましい。0.1質量%未満では各添加剤の添加効果が乏しく、また、10質量%を超えて添加しても添加効果の向上が望めない上、基油や増ちょう剤の量が相対的に少なくなるため潤滑性が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明に係るグリース組成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
表1〜表4に実施例及び比較例のグリース組成物の組成(数値の単位は質量%である)を示し、さらにその混和ちょう度と滴点を併せて示す。なお、混和ちょう度及び滴点の測定法は、それぞれJIS K2220 5.3とJIS K2220 5.4である。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
各表から分かるように、実施例1〜14のグリース組成物は、ポリウレアと金属複合石けんとの両方を増ちょう剤として含有するものである。これに対して、比較例1のグリース組成物は、金属複合石けんのみを増ちょう剤として含有しているものであり、比較例2のグリース組成物は、ポリウレアのみを増ちょう剤として含有しているものである。また、比較例3のグリース組成物は、使用した基油の動粘度が低いものであり、比較例4のグリース組成物は、混和ちょう度が大きすぎるものである。
【0043】
なお、各表中の金属複合石けんAとは、12−ヒドロキシステアリン酸とアゼライン酸とから合成されたリチウム複合石けんである。このとき12−ヒドロキシステアリン酸とアゼライン酸との量比は、75質量%:25質量%である。また、金属複合石けんBとは、12−ヒドロキシステアリン酸とアゼライン酸とから合成されたリチウム−カルシウム複合石けんである。このとき12−ヒドロキシステアリン酸とアゼライン酸との量比は80質量%:20質量%で、リチウムとカルシウムとの量比は50質量%:50質量%である。
【0044】
さらに、各表中のジウレアAとは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとシクロヘキシルアミンとから合成されたウレア化合物である。また、ジウレアBとは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとシクロヘキシルアミン,p−トルイジンとから合成されたウレア化合物である。なお、シクロヘキシルアミンとp−トルイジンとの質量比は80:20である。さらに、ジウレアCとは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとシクロヘキシルアミン,p−トルイジンとから合成されたウレア化合物である。なお、シクロヘキシルアミンとp−トルイジンとの質量比は50:50である。
【0045】
さらにまた、各表中の鉱油Aとは、40℃における動粘度が98.3mm2 /sの鉱油であり、鉱油Bとは、40℃における動粘度が460mm2 /sの鉱油であり、鉱油Cとは、40℃における動粘度が33.1mm2 /sの鉱油である。そして、各表中のポリα−オレフィン油の40℃における動粘度は68.0mm2 /sであり、ポリオールエステル油の40℃における動粘度は68.3mm2 /sであり、アルキルジフェニルエーテル油の40℃における動粘度は97.0mm2 /sである。
【0046】
次に、これら18種のグリース組成物を充填した転がり軸受を用意して、その耐久性を評価した。
使用した転がり軸受は呼び番号30205の円すいころ軸受(内径25mm,外径52mm,幅16.25mm)であり、内輪1と、外輪2と、内輪1と外輪2との間に転動自在に配設された複数のころ3と、で構成されている(図1を参照)。そして、軸受内部には図示しないグリース組成物が充填されている。
【0047】
この円すいころ軸受にラジアル荷重980Nとアキシアル荷重980Nとを負荷し、外輪2の温度を150℃として、内輪1を8000min−1の回転速度で回転させた。そして、外輪2の温度が155℃に上昇するまでの時間、又は、軸受トルクが上昇しモータ過電流となるまでの時間を焼付き寿命とし、この焼付き寿命によって耐久性を評価した。なお、200時間経過しても焼付き寿命に至らなかった場合を合格とする。このようにして評価した円すいころ軸受の耐久性を、表1〜表4に併せて示す。
【0048】
表1〜表4から分かるように、ポリウレアと金属複合石けんとの両方を増ちょう剤として含有する実施例1〜14のグリース組成物を充填した軸受は、一方のみしか含有していない比較例1及び比較例2のグリース組成物を充填した軸受と比べて、耐久性が格段に優れていた。
比較例3のグリース組成物は使用した基油の動粘度が低いので、実施例9のグリース組成物を充填した軸受と比べて耐久性が劣っていた。また、比較例4のグリース組成物は混和ちょう度が大きすぎるので、各実施例のグリース組成物を充填した軸受と比べて耐久性が劣っていた。
【0049】
次に、増ちょう剤におけるポリウレアと金属複合石けんとの比率について、図2を参照しながら考察する。図2は、実施例1〜5のグリース組成物を充填した軸受の耐久性をグラフ化したものである。このグラフから、増ちょう剤におけるポリウレアの比率が10〜90質量%であると耐久性が優れており、25〜75質量%であると耐久性がさらに優れていることが分かる。
【0050】
次に、グリース組成物における増ちょう剤の含有量について検討した。すなわち、実施例3のグリース組成物において増ちょう剤の含有量を種々変更したグリース組成物を用意し、前述と同様の方法により耐久性を評価した。その結果を図3のグラフに示す。
このグラフから、増ちょう剤の含有量が10〜30質量%であると軸受の耐久性が優れていることが分かる。
【0051】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては、転動装置の例として円すいころ軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、深溝玉軸受,アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0052】
また、本発明は、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る請求項1〜4のグリース組成物は、高速,高温下においても優れた性能を有し、転動装置の焼付き寿命を優れたものとすることが可能である。
また、本発明に係る請求項5の転動装置は、高速,高温下においても優れた焼付き寿命を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である円すいころ軸受の構成を示す部分縦断面図である。
【図2】増ちょう剤におけるポリウレアの比率と軸受の耐久性との相関を示すグラフである。
【図3】グリース組成物全体における増ちょう剤の含有量と軸受の耐久性との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 転動体
Claims (5)
- 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう剤をポリウレア10〜90質量%と金属複合石けん90〜10質量%とで構成したことを特徴とするグリース組成物。
- 前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の3〜40質量%としたことを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
- 前記基油の40℃における動粘度を50〜500mm2 /sとしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物。
- 混和ちょう度を220〜385としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物。
- 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする転動装置。
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