JP2004099847A - グリース組成物及び転動装置 - Google Patents

グリース組成物及び転動装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2004099847A
JP2004099847A JP2002293751A JP2002293751A JP2004099847A JP 2004099847 A JP2004099847 A JP 2004099847A JP 2002293751 A JP2002293751 A JP 2002293751A JP 2002293751 A JP2002293751 A JP 2002293751A JP 2004099847 A JP2004099847 A JP 2004099847A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
grease composition
thickener
grease
carbon black
calcium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002293751A
Other languages
English (en)
Inventor
Michita Hokao
外尾 道太
Shinya Nakatani
中谷 真也
Hirotoshi Miyajima
宮島 裕俊
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Priority to JP2002293751A priority Critical patent/JP2004099847A/ja
Publication of JP2004099847A publication Critical patent/JP2004099847A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
    • F16C33/66Special parts or details in view of lubrication
    • F16C33/6603Special parts or details in view of lubrication with grease as lubricant
    • F16C33/6633Grease properties or compositions, e.g. rheological properties

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Motor Or Generator Frames (AREA)
  • Rolling Contact Bearings (AREA)
  • Lubricants (AREA)

Abstract

【課題】耐熱性,導電性,及び生分解性に優れたグリース組成物を提供する。また、導電性を有するとともに高温,高速,高荷重という厳しい条件下で使用されても長寿命で且つ自然環境に放出されたとしても水質,土壌等に悪影響を及ぼしにくい転動装置を提供する。
【解決手段】玉軸受21の空隙部内に、カーボンブラックと第二増ちょう剤成分(カルシウムスルフォネートコンプレックス,ポリウレア,金属複合石けん,又はN−置換テレフタルアミド酸金属塩)とを増ちょう剤として含有し、ネオペンチル型ポリオールエステル油を基油として含有するグリース組成物27を充填した。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性及び導電性に優れたグリース組成物、並びに、耐熱性,導電性,及び生分解性に優れたグリース組成物に係り、特に、事務機器,自動車電装部品,及び自動車エンジン補機等の回転部位や摺動部位の潤滑に好適に使用可能なグリース組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、高温,高速,高荷重という厳しい条件下で使用されても長寿命な転動装置、及び前記のような厳しい条件下で使用されても長寿命で且つ自然環境に放出されたとしても水質,土壌等に悪影響を及ぼしにくい転動装置に係り、特に、事務機器,自動車電装部品,及び自動車エンジン補機等に好適に使用可能な転がり軸受に関する。
【0003】
【従来の技術】
OA機器、特に複写機,プリンタ等においては、熱可塑性樹脂と着色剤からなる着色微粉末(トナー)を加熱溶融して圧力により紙面に定着させるため、ローラの軸心にはヒータが挿入されているので、このローラを回転可能に支持する転がり軸受の温度は140℃から機種によっては200℃前後に達する場合がある。したがって、このような転がり軸受には耐熱性の優れたグリースを使用する必要がある。
【0004】
また、転がり軸受の内外輪は潤滑剤の油膜によって絶縁状態となっているため、回転に伴って静電気が発生する。その放射ノイズは複写機の複写画面に歪み等の悪影響を及ぼすので、例えば特公昭63−24038号公報に記載されているように、導電性グリースを転がり軸受内に充填することにより内外輪間を導電状態とし、静電気を除去するという対策がとられている。
【0005】
一方、自動車(乗用車)は小型軽量化や居住空間の拡大が望まれていることから、エンジンルーム空間の縮小が余儀なくされており、そのためオルタネータ,電磁クラッチ等の自動車電装部品やアイドラプーリ等の自動車エンジン補機の小型軽量化がより一層進められている。このことに加えて、静粛性の向上を目的としてエンジンルームの密閉化が進んでいるため、エンジンルーム内の高温化が促進されている。そのため、前記各部品には高温に耐える性質も必要とされてきている。
【0006】
また、前記各部品に使用されている転がり軸受においては、特開平11−72120号公報に記載されているように、軸受内の水分により水素が発生し、この水素が内輪,外輪,転動体を構成する軸受鋼中に侵入して水素脆性による白色組織を伴った剥離を引き起こす場合がある。潤滑剤の油膜により絶縁状態となっている内外輪間に、強振動等による金属接触のために直流電流が生じることによって、軸受内の水分からは容易に水素イオンが発生する。このような水素の発生及びそれによる白色組織を伴った剥離は、グリースに導電性を付与することによって著しく抑制することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−80879号公報
【特許文献2】
特公昭63−24038号公報
【特許文献3】
特開平11−72120号公報
【特許文献4】
特開平5−86389号公報
【特許文献5】
特開平6−1989号公報
【特許文献6】
特開平8−20789号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を増ちょう剤としパーフルオロポリエーテル油(PFPE油)を基油としたフッ素系グリースは耐熱性が優れているので、このフッ素系グリースを充填した転がり軸受は180℃以上の高温環境でも使用可能である。よって、複写機,プリンタ等において使用される前述のような転がり軸受として適用可能である。
【0009】
しかしながら、上記のようなフッ素系グリースは、一般的なグリースに配合される添加剤を添加することが難しく、潤滑性,防錆性,及び金属腐食を防ぐ性能に劣る傾向があった。さらに、フッ素系グリースは、合成油系グリースに比べて5〜20倍程度高価であるという問題点も有している。
一方、自動車電装部品や自動車エンジン補機において現在使用されている転がり軸受用のグリース組成物としては、合成油を基油としウレア化合物を増ちょう剤としたグリース組成物が主に使用されており、このウレア化合物−合成油系グリースは170〜180℃までは優れた潤滑性を有する。しかしながら、200℃以上の高温下では、基油の蒸発やそれに伴うグリースの硬化、及び増ちょう剤の破壊によるグリースの軟化が生じるため、ウレア化合物−合成油系グリースを充填した転がり軸受は早期に焼付きを生じるおそれがあった。
【0010】
他方、前述の各グリースは各種機械装置に使用されるため、自然環境中に放出される場合も多く、そうすると水質,土壌等の自然環境に悪影響を及ぼすおそれがある。このような問題点を解決するため、基油としてポリオールエステル油や植物油を使用することにより生分解性を付与したグリースが、特開平5−86389号公報,特開平6−1989号公報,及び特開平8−20789号公報に提案されている。しかし、これら公報に記載のグリースは、酸化安定性が不十分であるという問題点を有していた。
【0011】
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、耐熱性及び導電性に優れたグリース組成物、並びに、耐熱性,導電性,及び生分解性に優れたグリース組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、導電性を有するとともに高温,高速,高荷重という厳しい条件下で使用されても長寿命な転動装置、及び導電性を有するとともに前記のような厳しい条件下で使用されても長寿命で且つ自然環境に放出されたとしても水質,土壌等に悪影響を及ぼしにくい転動装置を提供することを併せて課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物は、基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう剤をカーボンブラック及び第二増ちょう剤成分で構成し、前記第二増ちょう剤成分をカルシウムスルフォネートコンプレックス,ポリウレア,金属複合石けん,又はN−置換テレフタルアミド酸金属塩としたことを特徴とする。
【0013】
本発明のグリース組成物は、増ちょう剤としてカーボンブラックを含有しているので、優れた導電性を有している。また、第二増ちょう剤成分としてカルシウムスルフォネートコンプレックス,ポリウレア,金属複合石けん,又はN−置換テレフタルアミド酸金属塩を用いたので、耐熱性及び高温下における潤滑性が優れている。なお、第二増ちょう剤成分としてカルシウムスルフォネートコンプレックスを用いた場合は、グリース組成物に優れた防錆性も付与される。
【0014】
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤を、カーボンブラック5〜95質量%と、前記第二増ちょう剤成分95〜5質量%と、で構成したことを特徴とする。
第二増ちょう剤成分が5質量%未満であると(すなわち、カーボンブラックが95質量%超過であると)、耐熱性及び高温下における潤滑性が不十分となる(第二増ちょう剤成分がカルシウムスルフォネートコンプレックスである場合には、防錆性も併せて不十分となる)。一方、第二増ちょう剤成分が95質量%超過であるとカーボンブラックが5質量%未満となるので、導電性が不十分となる。このような不都合がより生じにくくするためには、カーボンブラック10〜90質量%と第二増ちょう剤成分90〜10質量%とで増ちょう剤を構成することがより好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る請求項3のグリース組成物は、請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の3〜40質量%としたことを特徴とする。
3質量%未満であるとグリース構造を維持することが困難となり、40質量%超過であると、基油の量が少なくなるため十分な潤滑性能が得られないおそれがある。
【0016】
さらに、本発明に係る請求項4のグリース組成物は、請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物において、前記カルシウムスルフォネートコンプレックスは、カルシウムスルフォネート及び炭酸カルシウムを必須成分とし、これらにカルシウムジベヘネート,カルシウムジステアレート,カルシウムジヒドロキシステアレート,ホウ酸カルシウム,及び酢酸カルシウムのうちの2種以上を配合したものであることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明に係る請求項5のグリース組成物は、請求項4に記載のグリース組成物において、前記カルシウムスルフォネートの塩基価を50〜500mgKOH/gとしたことを特徴とする。
塩基価が前記範囲外であると、増ちょう剤の増ちょう効果に不都合が生じるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、カルシウムスルフォネートは300〜500mgKOH/gの高塩基性であることがより好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る請求項6のグリース組成物は、請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物において、前記カーボンブラックのDBP吸油量を100ml/100g以上、1次粒径を100nm未満、比表面積を50m2 /g以上としたことを特徴とする。
本発明のグリース組成物に使用されるカーボンブラックの種類は特に限定されるものではないが、グリース組成物への増粘性及び導電性の付与能力を考えると、吸油性に富むもの(DBP吸油量が100ml/100g以上であるもの)が好ましい。また、親油性を有し比表面積が大きい(1次粒径が100nm未満で、比表面積が50m2 /g以上)カーボンブラックを使用することが好ましい。カーボンブラックのDBP吸油量,1次粒径,及び比表面積が上記範囲外であると、グリース組成物の増粘性及び導電性が不十分となるおそれがある。なお、前記比表面積は、例えば窒素吸着法により測定された値である。
【0019】
さらに、本発明に係る請求項7のグリース組成物は、請求項1〜6のいずれかに記載のグリース組成物において、前記基油はネオペンチル型ポリオールエステル油を含有しており、その含有量は基油全体の80質量%以上であることを特徴とする。
このようなグリース組成物は、耐熱性及び導電性が優れていることに加えて、基油が生分解性を有するネオペンチル型ポリオールエステル油を含有しているので、優れた生分解性を有している。したがって、グリース組成物が機械装置等から漏出するなどして自然環境中に放出されたとしても、水質,土壌等の自然環境に悪影響を及ぼしにくい。
【0020】
ネオペンチル型ポリオールエステル油の含有量が基油全体の80質量%未満であると、グリース組成物の生分解性が低下するので好ましくない。グリース組成物の生分解性をより十分なものとするためには、ネオペンチル型ポリオールエステル油の含有量を基油全体の90質量%以上とすることがより好ましい。
さらに、本発明に係る請求項8のグリース組成物は、請求項7に記載のグリース組成物において、前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の3〜20質量%としたことを特徴とする。
【0021】
増ちょう剤が3質量%未満であるとグリース構造を維持することが困難となり、20質量%超過であると、ネオペンチル型ポリオールエステル油の含有量が少なくなるのでグリース組成物の生分解性が低下する。
さらに、本発明に係る請求項9のグリース組成物は、請求項7又は請求項8に記載のグリース組成物において、欧州規格諮問委員会規格のL−33−T−82に規定された生分解度が80%以上であることを特徴とする。
【0022】
このように生分解性が優れていれば、グリース組成物が機械装置等から漏出するなどして自然環境中に放出されたとしても、水質,土壌等の自然環境に悪影響を及ぼしにくい。
なお、本発明のグリース組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラックを増ちょう剤とするグリース組成物と、前述の第二増ちょう剤成分のうちのいずれかを増ちょう剤とするグリース組成物と、を別々に製造し、これらを混合することにより製造してもよい。あるいは、カーボンブラック及び第二増ちょう剤成分を基油に添加することによって、一工程で製造してもよい。
【0023】
さらに、本発明に係る請求項10の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜9のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明に係る請求項11の転動装置は、請求項10に記載の転動装置において、複写機,プリンタ等の事務機器に使用される転がり軸受であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項12の転動装置は、請求項10に記載の転動装置において、オルタネータ,電磁クラッチ等の自動車電装部品に使用される転がり軸受又はアイドラプーリ等の自動車エンジン補機に使用される転がり軸受であることを特徴とする。
【0025】
このようなグリース組成物を備えた転動装置は、優れた導電性を有するとともに高温,高速,高荷重という厳しい条件下で使用されても長寿命である。よって、複写機,プリンタ等の事務機器、オルタネータ,電磁クラッチ等の自動車電装部品、アイドラプーリ等の自動車エンジン補機のように、高温,高速,高荷重条件下で使用される機器の回転部位や摺動部位に好適に使用可能である。
【0026】
また、このような転動装置は、導電性を有しているので静電気が発生しにくい。よって、この転動装置を複写機に使用した場合には、静電気の放射ノイズによって複写画面に歪み等の悪影響が生じることが抑制される。また、転動装置内の水分からの水素の発生も抑制されるので、転動装置を構成する鋼が水素脆性を起こして白色組織を伴った剥離が生じることも抑制される。
【0027】
さらに、生分解性を有するグリース組成物を備える転動装置においては、該グリース組成物が転動装置から漏出するなどして自然環境中に放出されたとしても、水質,土壌等の自然環境に悪影響を及ぼしにくい。
本発明は、種々の転動装置に適用することができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等があげられる。
【0028】
なお、本発明における前記内方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールねじの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合には案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそれぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合にはナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意味する。
【0029】
以下に、本発明のグリース組成物を構成する各成分について説明する。
〔カルシウムスルフォネートコンプレックスについて〕
本発明において増ちょう剤として使用されるカルシウムスルフォネートコンプレックスとは、カルシウムスルフォネートを必須成分とし、これに(a)炭酸カルシウム、(b)カルシウムジベヘネート,カルシウムジステアレート,カルシウムジヒドロキシステアレート等の高級脂肪酸カルシウム塩、(c)酢酸カルシウム等の低級脂肪酸カルシウム塩、(d)ホウ酸カルシウム、などから選択されるカルシウム塩(カルシウム石けん)を組み合わせたものである。
【0030】
特に、カルシウムスルフォネート及び炭酸カルシウムを必須成分とし、これらにカルシウムジベヘネート,カルシウムジステアレート,カルシウムジヒドロキシステアレート,ホウ酸カルシウム,及び酢酸カルシウムのうちの2種以上を配合したものが好ましい。
なお、カルシウムスルフォネートコンプレックスは、別途合成したものをカーボンブラックとともに基油に分散させてもよいし、基油中で合成することによって基油に分散させてもよい。ただし、後者の方法の方が、基油中に増ちょう剤を良好に分散させやすいので、工業的に製造する場合には有利である。
【0031】
〔ポリウレアについて〕
本発明においてカーボンブラックとともに増ちょう剤として使用されるポリウレアは、ジウレア,トリウレア,テトラウレア等のポリウレア化合物が使用できるが、特に、下記の一般式(I)で表されるジウレアが好ましい。
【0032】
【化1】
Figure 2004099847
【0033】
なお、式(I)中のR2 は、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を表す。また、R1 及びR3 は脂肪族炭化水素基,芳香族炭化水素基,又は縮合炭化水素基を表し、R1 とR3 は同一であってもよいし異なっていてもよい。縮合炭化水素基の炭素数は9〜19が好ましく、9〜13がさらに好ましい。これらの炭化水素基の炭素数が前記下限値より小さいと、増ちょう剤が基油に分散しにくく、また、増ちょう剤と基油とが分離しやすくなる。一方、炭化水素基の炭素数が前記上限値より大きい増ちょう剤は、工業的に非現実的である。
【0034】
このようなジウレアをはじめとするポリウレアは、別途合成したものを基油に分散させてもよいし、基油中で合成することによって基油に分散させてもよい。ただし、後者の方法の方が、基油中に増ちょう剤を良好に分散させやすいので、工業的に製造する場合には有利である。
ジウレアを基油中で合成する場合の合成方法は、特に限定されるものではないが、R2 の芳香族炭化水素基を有するジイソシアネート1モルと、R1 ,R3 の炭化水素基を有するモノアミン2モルとを、反応させる方法が最も好ましい。
【0035】
ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート,トリレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,ビフェニレンジイソシアネート,ジメチルジフェニレンジイソシアネート,又はこれらのアルキル基置換体等を好適に使用できる。
また、R1 ,R3 が脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である場合のモノアミンとしては、例えば、アニリン,シクロヘキシルアミン,オクチルアミン,トルイジン,ドデシルアニリン,オクタデシルアミン,ヘキシルアミン,ヘプチルアミン,ノニルアミン,エチルヘキシルアミン,デシルアミン,ウンデシルアミン,ドデシルアミン,テトラデシルアミン,ペンタデシルアミン,ノナデシルアミン,エイコデシルアミン,オレイルアミン,リノレイルアミン,リノレニルアミン,メチルシクロヘキシルアミン,エチルシクロヘキシルアミン,ジメチルシクロヘキシルアミン,ジエチルシクロヘキシルアミン,ブチルシクロヘキシルアミン,プロピルシクロヘキシルアミン,アミルシクロヘキシルアミン,シクロオクチルアミン,ベンジルアミン,ベンズヒドリルアミン,フェネチルアミン,メチルベンジルアミン,ビフェニルアミン,フェニルイソプロピルアミン,フェニルヘキシルアミン等を好適に使用できる。
【0036】
さらに、R1 ,R3 が縮合炭化水素基である場合のモノアミンとしては、例えば、アミノインデン、アミノインダン、アミノ−1−メチレンインデン等のインデン系アミン化合物、アミノナフタレン(ナフチルアミン)、アミノメチルナフタレン、アミノエチルナフタレン、アミノジメチルナフタレン、アミノカダレン、アミノビニルナフタレン、アミノフェニルナフタレン、アミノベンジルナフタレン、アミノジナフチルアミン、アミノビナフチル、アミノ−1,2−ジヒドロナフタレン、アミノ−1,4−ジヒドロナフタレン、アミノテトラヒドロナフタレン、アミノオクタリン等のナフタレン系アミン化合物、アミノペンタレン、アミノアズレン、アミノヘプタレン等の縮合二環系アミン化合物、アミノフルオレン、アミノ−9−フェニルフルオレン等のアミノフルオレン系アミン化合物、アミノアントラセン、アミノメチルアントラセン、アミノジメチルアントラセン、アミノフェニルアントラセン、アミノ−9,10−ジヒドロアントラセン等のアントラセン系アミン化合物、アミノフェナントレン、アミノ−1,7−ジメチルフェナントレン、アミノレテン等のフェナントレンアミン化合物、アミノビフェニレン、アミノ−sym−インダセン、アミノ−as−インダセン、アミノアセナフチレン、アミノアセナフテン、アミノフェナレン等の縮合三環系アミン化合物、アミノナフタセン、アミノクリセン、アミノピレン、アミノトリフェニレン、アミノベンゾアントラセン、アミノアセアントリレン、アミノアセアントレン、アミノアセフェナントリレン、アミノアセフェナントレン、アミノフルオランテン、アミノプレイアデン等の縮合四環系アミン化合物、アミノペンタセン、アミノペンタフェン、アミノピセン、アミノペリレン、アミノジベンゾアントラセン、アミノベンゾピレン、アミノコラントレン等の縮合五環系アミン化合物、アミノコロネン、アミノピラントレン、アミノビオラントレン、アミノイソビオラントレン、アミノオバレン等の縮合多環系(六環以上)アミン化合物などが好適に用いられる。
【0037】
〔金属複合石けんについて〕
本発明においてカーボンブラックとともに増ちょう剤として使用される金属複合石けんとしては、周期律表の1,2,及び13族の金属の化合物(例えば、金属水酸化物)と、少なくとも1個のヒドロキシル基を有する炭素数12〜24の脂肪族モノカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸と、から合成されるものがあげられる。
【0038】
金属としては、例えば、リチウム,ナトリウム,バリウム,アルミニウム等があげられる。
また、脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸としては、例えば、9 −ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9 ,10−ジヒドロキシステアリン酸等があげられる。この中では、12−ヒドロキシステアリン酸が最も好ましい。
【0039】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカン二酸等があげられ、この中ではアゼライン酸が最も好ましい。
なお、脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との量比は、両者の合計を100として脂肪族ジカルボン酸を20〜40質量%とすることが重要である。この範囲外であると、グリース組成物の熱安定性が不十分となるおそれがある。
【0040】
〔N−置換テレフタルアミド酸金属塩について〕
本発明においてカーボンブラックとともに増ちょう剤として使用されるN−置換テレフタルアミド酸金属塩は、下記の一般式(II)で表される。
【0041】
【化2】
Figure 2004099847
【0042】
なお、式(II)中の窒素原子に結合した置換基Rは、直鎖状,分岐鎖状,又は環式で飽和又は不飽和の1価の炭化水素基であり、Mは金属であり、nは金属の原子価に等しい数である。
置換基Rが直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基である場合は、炭化水素基の炭素数は10〜32、好ましくは12〜22であり、環式の炭化水素基である場合は、炭化水素基の炭素数は6〜28、好ましくは7〜22である。炭化水素基の炭素数が前記下限値より小さいと、増ちょう剤が基油に分散しにくく、また、増ちょう剤と基油とが分離しやすくなる。一方、炭化水素基の炭素数が前記上限値より大きい増ちょう剤は、工業的に非現実的である。
【0043】
置換基Rの例としては、デシル基,テトラデシル基,ヘキサデシル基,オクタデシル基,シクロヘキシル基,ベンジル基,フェニル基,トリル基,ブチルフェニル基等があげられる。また、金属Mとしては、周期律表の1,2,12,及び13族の金属、例えば、リチウム,カリウム,ナトリウム,マグネシウム,カルシウム,バリウム,亜鉛,アルミニウム等があげられる。特に、ナトリウム,バリウム,リチウム,カリウムが好ましく、ナトリウムが最も現実的である。
【0044】
このようなN−置換テレフタルアミド酸金属塩は、別途合成したものを基油に分散させてもよいし、基油中で合成することによって基油に分散させてもよい。ただし、後者の方法の方が、基油中に増ちょう剤を良好に分散させやすいので、工業的に製造する場合には有利である。
〔基油について〕
本発明のグリース組成物の基油としては、鉱物系潤滑油や合成潤滑油を使用することができる。その種類は特に制限されるものではないが、鉱物系潤滑油としては、パラフィン系鉱物油,ナフテン系鉱物油,及びそれらの混合油を使用でき、また、合成潤滑油としては、合成炭化水素油,エーテル油,エステル油,及びフッ素油等を使用できる。
【0045】
具体的には、合成炭化水素油としてはポリα−オレフィン油等を、エーテル油としてはジアルキルジフェニルエーテル油,アルキルトリフェニルエーテル油,アルキルテトラフェニルエーテル油等を、エステル油としてはジエステル油,ネオペンチル型ポリオールエステル油,これらのコンプレックスエステル油,芳香族エステル油等を、フッ素油としてはパーフルオロエーテル油,フルオロシリコーン油,クロロトリフルオロエチレン油,フルオロフォスファゼン油等を使用することができる。
【0046】
これらの基油は、単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
高温,高速,高荷重下での潤滑性能及び寿命を考慮すると、基油には合成潤滑油が含有されていることが好ましく、特に、エステル油,エーテル油,及びフッ素油の少なくとも1種が含有されていることが好ましい。
【0047】
そして、基油の動粘度は40℃において10〜600mm2 /s(100℃においては1〜60mm2 /s)であることが好ましい。10mm2 /s未満では、蒸発損失や潤滑性の問題から適当ではない。すなわち、基油の粘度が低すぎると、高温において例えば軸受の回転中に軌道面と転動体との金属接触を避けるのに十分な潤滑油膜の形成が困難となる。
【0048】
また、600mm2 /s超過では、グリース組成物を充填した転動装置のトルクが上昇しやすくなるため好ましくない。また、低温での流動性が不十分となって、前記転動装置を低温下で起動する際に異音が発生するおそれがある。さらに、油膜が比較的厚くなって電気抵抗値が大きくなるおそれがある。
このような問題点がより生じにくくするためには、基油の動粘度は40℃において20〜500mm2 /s(100℃においては3〜40mm2 /s)であることがより好ましい。
【0049】
一方、基油中にエステル油が含有されていると、グリース組成物に生分解性が付与される。エステル油の種類は特に限定されるものではないが、酸化安定性が優れていることからネオペンチル型ポリオールエステル油が好ましい。
ネオペンチル型ポリオールエステルとは、下記の化学式(III )で表されるようなネオペンチル構造を有する多価アルコール(以降は、ネオペンチル型ポリオールと記す)と有機酸との反応によって得られるエステル油である。
【0050】
【化3】
Figure 2004099847
【0051】
ネオペンチル型ポリオールの炭素数は5〜12が好ましく、5〜9がより好ましい。また、有機酸の炭素数は4〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。ネオペンチル型ポリオール及び有機酸の炭素数が上記範囲から外れると、グリース組成物の酸化安定性が損なわれるおそれがある。
ネオペンチル型ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール(すなわち、ネオペンチルグリコール(以降はNPGと記す))、2−エチル−2−ブチルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン(以降はTMPと記す)、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ペンタエリスルリトール(以降はPEと記す)等があげられる。この中では、NPG、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、TMP、PEが好ましく、NPG、TMP、PEが特に好ましい。これらのネオペンチル型ポリオールは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
また、有機酸としては、例えば、n−ブタン酸、イソ酪酸、n−ペンタン酸、イソ吉草酸、n−ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、イソヘキサン酸、ヘキサヒドロ安息香酸、n−ヘプタン酸、イソヘプタン酸、メチルヘキサヒドロ安息香酸、n−オクタン酸、ジメチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、2,4,4−トリメチルペンタン酸、イソオクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、、n−ノナン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、2−ブチルオクタン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、へキサデカン酸、オクタデカン酸等があげられ、この中では、n−ヘプタン酸、イソヘプタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸が好ましい。これらの有機酸は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
さらに、ネオペンチル型ポリオールエステルの具体例をあげると、NPGとヘプタン酸とのジエステル化合物、NPGと2−エチルブタン酸とのジエステル化合物、NPGとヘキサン酸及びヘプタン酸の混合物とのジエステル化合物、TMPとペンタン酸とのトリエステル化合物、TMPとヘキサン酸とのトリエステル化合物、TMPとブタン酸及びオクタデカン酸の混合物とのトリエステル化合物、TMPとヘキサン酸,ヘプタン酸,及びオクタン酸の混合物とのトリエステル化合物、PEとペンタン酸とのテトラエステル化合物、PEと直鎖状又は分岐鎖状の炭素数4〜8の有機酸のうち2種以上の混合物とのテトラエステル化合物等がある。
【0054】
また、NPG,TMP,PE以外のネオペンチル型ポリオール、すなわち、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールヘキサン等と、上記の有機酸(単独又は2種以上の混合物)との反応によって得られるネオペンチル型ポリオールエステルも使用可能である。
【0055】
ネオペンチル型ポリオールと有機酸とからネオペンチル型ポリオールエステルを合成する方法としては、従来から知られている慣用の方法(エステル化法)、例えば、酸性触媒の存在下で脱水縮合反応を行う方法等を問題なく用いることができる。
〔添加剤について〕
本発明のグリース組成物には、各種性能をさらに向上させるため、所望により種々の添加剤を混合してもよい。例えば、酸化防止剤,防錆剤,極圧剤,油性向上剤,金属不活性化剤など、グリース組成物に一般的に使用される添加剤を、単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0056】
酸化防止剤としては、例えば、アミン系,フェノール系,硫黄系,ジチオリン酸亜鉛等があげられる。
アミン系酸化防止剤の具体例としては、フェニル−1−ナフチルアミン,フェニル−2−ナフチルアミン,ジフェニルアミン,フェニレンジアミン,オレイルアミドアミン,フェノチアジン等があげられる。
【0057】
また、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、p−t−ブチル−フェニルサリシレート、2,6−ジ−t−ブチル−p−フェニルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−オクチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−6−t−ブチル−m−クレゾール、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2−n−オクチル−チオ−4,6−ジ(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル)フェノキシ−1,3,5−トリアジン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のヒンダードフェノールなどがあげられる。
【0058】
防錆剤としては、例えば、エステル類等があげられる。エステル類の具体例としては、多塩基カルボン酸及び多価アルコールの部分エステルであるソルビタンモノラウレート,ソルビタントリステアレート,ソルビタンモノオレエート,ソルビタントリオレエート等のソルビタンエステル類や、ポリオキシエチレンラウレート,ポリオキシエチレンオレエート,ポリオキシエチレンステアレート等のアルキルエステル類などがあげられる。
【0059】
油性向上剤としては、例えば、オレイン酸,ステアリン酸等の脂肪酸、ラウリルアルコール,オレイルアルコール等のアルコール、ステアリルアミン,セチルアミン等のアミン、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル、及び動植物油等があげられる。
さらに、リン系,ジチオリン酸亜鉛,有機モリブデン等の極圧剤や、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤などが使用される。
【0060】
なお、これら添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば特に限定されるものではないが、通常はグリース組成物全体に対して0.1〜20質量%である。0.1質量%未満では添加剤の添加効果が乏しく、また、20質量%を超えて添加しても添加効果の向上が望めない上、基油の量が相対的に少なくなるため潤滑性が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0061】
【発明の実施の形態】
本発明に係るグリース組成物及び転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
A.第二増ちょう剤成分としてカルシウムスルフォネートコンプレックスを用いたグリース組成物について
〔実施例A1〕
まず、以下のようにして、基油中でカルシウムスルフォネートコンプレックスを合成した。
【0062】
40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステル500gに、塩基価300mgKOH/gの高塩基性カルシウムスルフォネート2gを添加し、50℃にて十分に撹拌した。そこに、ホウ酸0.04g,酢酸0.16g,ベヘン酸0.08g,ステアリン酸0.08g,水0.02g,及び水酸化カルシウム1.4gを加え、80〜95℃に加熱して水を揮発させて除去した。さらに、この混合物に二酸化炭素を導入して炭酸カルシウムを生成させた。そして、この混合物を赤外分光分析機で分析し、882〜886cm−1のピークから炭酸カルシウムの安定化(カルサイト化)が確認されたところで、二酸化炭素の導入を終了した。
【0063】
次に、上記の操作によって得られた混合物を60℃に冷却し、カーボンブラック76gとペンタエリスリトールテトラエステル400gを加え撹拌した。100℃で60分間保持した後、アミン系酸化防止剤10gを加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。生成した増ちょう剤であるカーボンブラックとカルシウムスルフォネートコンプレックスとの質量比は、95:5であった。また、このグリース組成物について、欧州規格諮問委員会規格(CEC)のL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ95%で、優れた生分解性を有していた。
【0064】
なお、使用したカーボンブラックの1次粒径は30nm、ジブチルフタレートアプソープメータによるDBP吸油量は350ml/100g、窒素吸着法による比表面積は800m2 /gである。
〔実施例A2〕
カルシウムスルフォネート等の原料の使用量を変える以外は実施例A1と同様の方法により、カーボンブラックとカルシウムスルフォネートコンプレックスとの質量比が90:10となるようにグリース組成物を製造した。このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ93%で、優れた生分解性を有していた。
【0065】
〔実施例A3〕
カルシウムスルフォネート等の原料の使用量を変える以外は実施例A1と同様の方法により、カーボンブラックとカルシウムスルフォネートコンプレックスとの質量比が50:50となるようにグリース組成物を製造した。このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ80%で、優れた生分解性を有していた。
【0066】
〔実施例A4〕
カルシウムスルフォネート等の原料の使用量を変える以外は実施例A1と同様の方法により、カーボンブラックとカルシウムスルフォネートコンプレックスとの質量比が10:90となるようにグリース組成物を製造した。このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ65%で、優れた生分解性を有していた。
【0067】
〔実施例A5〕
カルシウムスルフォネート等の原料の使用量を変える以外は実施例A1と同様の方法により、カーボンブラックとカルシウムスルフォネートコンプレックスとの質量比が5:95となるようにグリース組成物を製造した。
〔比較例A1〕
40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステル500gにカーボンブラック76gを加え、60℃で十分に撹拌した。さらに、ペンタエリスリトールテトラエステル400gを加え撹拌した後、100℃に加熱した。そして、アミン系酸化防止剤10gを加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。
【0068】
〔比較例A2〕
以下のようにして、基油中でカルシウムスルフォネートコンプレックスを合成した。
40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステル500gに、塩基価300mgKOH/gの高塩基性カルシウムスルフォネート180gを添加し、50℃にて十分に撹拌した。そこに、ホウ酸3.6g,酢酸14.4g,ベヘン酸7.2g,ステアリン酸7.2g,水1.8g,及び水酸化カルシウム126gを加え、80〜95℃に加熱して水を揮発させて除去した。さらに、この混合物に二酸化炭素を導入して炭酸カルシウムを生成させた。そして、この混合物を赤外分光分析機で分析し、882〜886cm−1のピークから炭酸カルシウムの安定化(カルサイト化)が確認されたところで、二酸化炭素の導入を終了した。
【0069】
次に、上記の操作によって得られた混合物を60℃に冷却し、ペンタエリスリトールテトラエステル130gを加え撹拌した。100℃で60分間保持した後、アミン系酸化防止剤10gを加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。
〔比較例A3〕
市販品のリチウム石けん系グリースである。なお、基油はポリα−オレフィン油である。
【0070】
これら8種のグリース組成物(実施例A1〜A5及び比較例A1〜A3)について、混和ちょう度,滴点,油分離率,及び水洗耐水度を測定した(JIS K2220による)。その結果をグリース組成物の組成と併せて表1及び表2にまとめて示す。なお、表1及び表2の「増ちょう剤の種類」の欄に記載されている数値は、増ちょう剤全体を100とした場合における増ちょう剤を構成する各成分の量比である。また、「増ちょう剤の量」,「基油の量」,及び「添加剤の量」の欄に記載されている数値は、グリース組成物全体を100とした場合における増ちょう剤,基油,添加剤の量比である。
【0071】
【表1】
Figure 2004099847
【0072】
【表2】
Figure 2004099847
【0073】
また、これらのグリース組成物の耐荷重性,防錆性,及び導電性を併せて評価した。以下にその方法を説明する。
〔耐荷重性の評価方法について〕
ASTMに規定される試験装置を用いた四球試験により評価した。すなわち、3個の試験球(玉軸受用のSUJ2製鋼球で、直径は1/2インチである)を相互に接するように正三角形状に配置して固定し、その中心に形成された凹部に1個の試験球を載置した。
【0074】
そして、評価対象であるグリース組成物をすべての試験球に塗布した後、荷重を負荷した状態で載置した試験球を一定の回転速度(4000min−1)で回転させた。前記荷重は、回転初期1分間は98Nとし、その後は毎分392Nの割合で徐々に増加させていった。そして、回転トルクが急激に上昇した時点の荷重を焼付き荷重とし、この焼付き荷重をもって耐荷重性を評価した。
【0075】
その結果を表1及び表2に併せて示す。なお、表1及び表2に記載されている焼付き荷重の数値は、比較例A1のグリース組成物の焼付き荷重を1とした場合の相対値で示してある。
次に、グリース組成物の防錆性及び導電性については、転がり軸受に充填して評価した。
【0076】
〔導電性の評価方法について〕
実施例A1〜A5及び比較例A1〜A3のグリース組成物をそれぞれ充填した深溝玉軸受を用意した。この深溝玉軸受の構成を、図1を参照しながら説明する。
この深溝玉軸受21(呼び番号608ZZ,内径8mm,外径22mm,幅7mm)は、外輪22と、内輪23と、外輪22と内輪23との間に転動自在に配設された複数の玉24と、複数の玉24を保持する保持器25と、外輪22のシールみぞ22bに取り付けられた鋼板製のシールド26,26と、で構成されている。また、外輪22と内輪23とシールド26,26とで囲まれた軸受空間には所定量(例えば、軸受空間容積の50%)のグリース組成物27が充填され、シールド26により玉軸受21内部に密封されている。
【0077】
グリース組成物27がカーボンブラックを含有しているので、グリース組成物27によって前記両輪22,23の軌道面22a,23aと玉24との接触面が潤滑されるとともに、外輪22と内輪23と玉24とが導電状態となっている。さらに、外輪22又は内輪23が接地されていて(図示せず)、玉軸受21の回転により発生する静電気が除去されるようになっている。なお、シールド26を導電性ゴム製の接触シールとすれば、このシールに導電性が付与されるから、玉軸受21の導電性をより良好にすることができる。
【0078】
このような深溝玉軸受を、抵抗値を測定する装置に装着した。そして、回転中の内外輪間の電気抵抗値(最大値)を測定した。ここで、抵抗値を測定する装置の構成を、図2の概略構成図を参照しながら説明する。
図2中、符号1は測定対象の玉軸受を表し、その内輪1aに取付けられた軸部材2をモータ3で回転駆動することによって軸受1を回転するように構成されている。そして、内輪1aと一体となっている軸部材2と外輪1bとの間に、定電圧電源4によって所定の定電圧が印加される。
【0079】
この定電圧電源4と並列に接続されている抵抗測定装置5は、測定した電圧値(アナログ値)をA/D変換回路6に出力する。A/D変換回路6は、予め設定されたサンプリング周期でデジタル値に変換し、当該変換したデジタル信号を演算処理装置7に出力する。本実施形態では、サンプリング周期を50kHz(サンプリング時間間隔=0.02ms)に設定してある。
【0080】
演算処理装置7は、最大抵抗値演算部7Aと、閾値処理部7Bと、波数カウント部7Cとを備える。最大抵抗値演算部7Aは、入力したデジタル信号に基づき最大抵抗値を演算する。閾値処理部7Bは、入力したデジタル信号について所定閾値で閾値処理を行い雑音を除去する。波数カウント部7Cは、閾値処理部7Bからのパルスカウントについて、経時的なパルス値の増減変化によって、所定時間単位毎の変動回数つまり波山の波数をカウントし、その単位時間当たりの波数の平均値を求める。また演算処理装置7は、求めた最大抵抗値及び単位時間当たりの波数の平均値を表示装置8に出力する。本実施形態では、上記波数をカウントする単位時間を0.328秒に設定してある。表示装置8は、ディスプレイなどから構成され、演算処理装置7が求めた最大抵抗値及び単位時間当たりの波数の平均値を表示する。
【0081】
次に、上記構成の装置を使用した、玉軸受1の抵抗値評価の方法について説明する。
モータ3を駆動して軸部材2つまり内輪1aを所定回転速度で回転させた状態で、定電圧電源4から軸受1の内外輪1a,1b間に所定の定電圧を印加する。このとき、内外輪1a,1b間に電流が流れるが、スパーク等によって電圧が変動する。その電圧が抵抗測定装置5で測定され、続いて、A/D変換回路6によってデジタル値に変換され、そのデジタル信号に基づいて、演算処理装置7が最大抵抗値及び所定単位時間当たりの波数を求め、その値が表示装置8に表示される。
【0082】
測定条件を以下に示す。
内輪回転速度:100min−1
軸受1に与えるラジアル荷重(Fr):19.6N
印可電圧  :6.2V
最大電流  :100μA
シリーズ抵抗:62kΩ
雰囲気温度 :40℃
雰囲気湿度 :50%RH
導電性の評価結果を表1,2に示す。なお、表1,2に記載の軸受抵抗値は、比較例A2の軸受抵抗値を1とした場合の相対値で示してある。
【0083】
〔防錆性の評価方法について〕
転がり軸受(呼び番号6202VV,内径15mm,外径35mm,幅8mm)の空隙部内に、その容積の35%のグリース組成物を充填し、アキシアル予圧39.2Nを負荷した状態で、80℃,90%RHに調整された恒温恒湿槽内に静置した。その際には、転がり軸受に結露を生じさせるために、転がり軸受を予熱することなく常温の状態で恒温恒湿槽内に入れた。そして、恒温恒湿槽に1ヶ月間静置した後、転がり軸受を分解して軌道面に発生している錆の状況を肉眼で観察した。そして、以下のようなランクに評価した。
【0084】
#7:錆の発生なし
#6:シミ状の微小な錆あり
#5:直径0.3mm以下の点状の錆あり
#4:直径1.0mm以下の錆あり
#3:直径5.0mm以下の錆あり
#2:直径10.0mm以下の錆あり
#1:軌道面のほぼ全面に錆が発生
なお、#7〜#5を防錆性良好とし、#4〜#1を防錆性不良とした。評価結果を表1及び表2に併せて示す。
【0085】
次に、上記の各種性能の評価結果について、表1及び表2を参照しながら考察する。
〔耐荷重性の評価結果について〕
実施例A1〜A5のグリース組成物はカルシウムスルフォネートコンプレックスを含有しているので、それを含有していない比較例A1や比較例A3と比べて焼付き荷重が大きく、耐荷重性が優れていた。
【0086】
〔導電性の評価結果について〕
実施例A1〜A5のグリース組成物はカーボンブラックを含有しているので、それを含有していない比較例A2や比較例A3と比べて転がり軸受の抵抗値が小さく、導電性が優れていた。
〔防錆性の評価結果について〕
実施例A1〜A5のグリース組成物はカルシウムスルフォネートコンプレックスを含有しているので、それを含有していない比較例A1や比較例A3と比べて錆の発生が少なく、防錆性が優れていた。
【0087】
実施例A1〜A5及び比較例A1,A2のグリース組成物の防錆性,耐荷重性,導電性の評価の結果をグラフ化したものを、図3及び図4に示す。両グラフの横軸は、増ちょう剤におけるカルシウムスルフォネートコンプレックスの割合を示している。
これらのグラフから、増ちょう剤におけるカルシウムスルフォネートコンプレックスの割合が5〜95質量%の場合(すなわち、カーボンブラックの割合は95〜5質量%)には、防錆性,耐荷重性,及び導電性がいずれも優れていることが分かる。
【0088】
また、実施例A3のグリース組成物において増ちょう剤の含有量を種々変更したものを用意して、それらの混和ちょう度と生分解性(CECのL−33−T−82に規定された生分解度)とを評価した。その結果を図5のグラフに示す。
このグラフから、混和ちょう度を適正なもの(200〜300)とするためには、増ちょう剤の含有量は5〜35質量%とする必要があることが分かる。混和ちょう度が200〜300のグリース組成物を充填した転動装置は、低トルク且つ低発塵であるため、情報機器等に好適に適用することができる。なお、増ちょう剤の含有量が1質量%の場合のプロットには、上向きの矢印を付してあるが、これは、増ちょう剤の含有量が少なすぎるため、グリース状とならなかったことを示している。
【0089】
そして、グリース組成物の生分解性を良好なもの(生分解度が80%以上)とするためには、増ちょう剤の含有量は20質量%以下とする必要があることが分かる。ただし、増ちょう剤の含有量が3質量%未満であると、前述のようにグリース構造を維持することが困難となるので、増ちょう剤の含有量は3〜20質量%とする必要がある。
B.第二増ちょう剤成分としてポリウレアを用いたグリース組成物について
〔実施例B1〕
まず、以下のようにして、基油中でジウレアを合成した。
【0090】
40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステル150gにジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート1.1gを加えて、60℃に加熱して完全に溶解させた後、シクロへキシルアミン0.95gとペンタエリスリトールテトラエステル150gを加え撹拌した。100℃で60分間保持した後、150℃まで加熱してジウレアの生成反応を終了させた。
【0091】
上記の操作によって得られた混合物を60℃に冷却し、カーボンブラック38gとジアルキルジフェニルエーテル140gを加え撹拌した。さらに、アミン系酸化防止剤10g及びスルフォネート系防錆剤10gを加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。増ちょう剤であるカーボンブラックとジウレアとの質量比は、95:5であった。
【0092】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ89%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例B2〕
ジウレアの原料等の使用量を変える点と、40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステルと40℃における動粘度が47.1mm2 /sのポリα−オレフィン油との混合油(混合比は、質量比でペンタエリスリトールテトラエステル:ポリα−オレフィン油=80:20)を基油として用いる点と、を除いては実施例B1と同様にして、カーボンブラックとジウレアとの質量比が90:10であるグリース組成物を得た。
【0093】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ80%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例B3〕
ジウレアの原料等の使用量を変える点を除いては実施例B1と同様にして、カーボンブラックとジウレアとの質量比が50:50であるグリース組成物を得た。
【0094】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ84%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例B4〕
ジウレアの原料等の使用量を変える点を除いては実施例B1と同様にして、カーボンブラックとジウレアとの質量比が10:90であるグリース組成物を得た。
【0095】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ48%であった。
〔実施例B5〕
ジウレアの原料等の使用量を変える点を除いては実施例B1と同様にして、カーボンブラックとジウレアとの質量比が5:95であるグリース組成物を得た。
【0096】
〔比較例B1〕
市販品のリチウム石けん系グリースである。なお、基油はパラフィン系鉱油である。
〔比較例B2〕
40℃における動粘度が75mm2 /sのパラフィン系鉱油300gにカーボンブラック40gを加え、60℃で十分に撹拌した。さらに、パラフィン系鉱油153.5gを加え撹拌した後、100℃に加熱した。そして、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールとフェニル−1−ナフチルアミンとソルビタンモノオレートとをそれぞれ2.5g加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。
【0097】
〔比較例B3〕
40℃における動粘度が75mm2 /sのパラフィン系鉱油200gにジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート40gを加えて、60℃に加熱して完全に溶解させた後、シクロへキシルアミン35gとパラフィン系鉱油205gを加え撹拌した。100℃で60分間保持した後、150℃まで加熱してジウレアの生成反応を終了させた。
【0098】
上記の操作によって得られた混合物にアミン系酸化防止剤10g及びスルフォネート系防錆剤10gを加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。
これら8種のグリース組成物(実施例B1〜B5及び比較例B1〜B3)について、混和ちょう度及び滴点を測定した(JIS K2220による)。その結果をグリース組成物の組成と併せて表3及び表4にまとめて示す。なお、表3及び表4の「増ちょう剤の種類」の欄に記載されている数値は、増ちょう剤全体を100とした場合における増ちょう剤を構成する各成分の量比である。また、「増ちょう剤の量」,「基油の量」,及び「添加剤の量」の欄に記載されている数値は、グリース組成物全体を100とした場合における増ちょう剤,基油,添加剤の量比である。
【0099】
【表3】
Figure 2004099847
【0100】
【表4】
Figure 2004099847
【0101】
また、これらのグリース組成物の耐久性(潤滑寿命)及び導電性を併せて評価した。以下にその方法を説明する。
〔耐久性の評価方法について〕
実施例B1〜B5及び比較例B1〜B3のグリース組成物5gをそれぞれ充填した深溝玉軸受(呼び番号6306VV、内径30mm,外径72mm,幅19mm)を用意した。
【0102】
これらの深溝玉軸受を、図6に示すようなASTM D 1741の軸受寿命試験機に類似の試験機に装着した。そして、温度120℃、ラジアル荷重690N、アキシアル荷重490Nの下で、1000min−1の回転速度でモータ(図示せず)により回転させ、該モータが過負荷にて停止するまでの時間、又は深溝玉軸受の温度が130℃を超えるまでの時間を寿命とした。
【0103】
耐久性の評価結果を表3及び表4に併せて示す。なお、表3及び表4に記載されている寿命の数値は、比較例B1のグリース組成物の寿命を1とした場合の相対値で示してある。
〔導電性の評価方法について〕
導電性の評価は、前述と全く同様にして行った。導電性の評価結果を表3及び表4に併せて示す。なお、表3及び表4に記載の軸受抵抗値は、比較例B1の軸受抵抗値を1とした場合の相対値で示してある。
【0104】
〔耐久性の評価結果について〕
実施例B1〜B5のグリース組成物はジウレアを含有しているので、それを含有していない比較例B1や比較例B2と比べて長寿命で、高温下においても優れた耐久性を有していた。
〔導電性の評価結果について〕
実施例B1〜B5のグリース組成物はカーボンブラックを含有しているので、それを含有していない比較例B1や比較例B3と比べて転がり軸受の抵抗値が小さく、導電性が優れていた。
【0105】
次に、増ちょう剤におけるカーボンブラックとジウレアとの割合について検討した。すなわち、カーボンブラックとジウレアとの割合が異なる種々のグリース組成物について、耐久性(潤滑寿命)及び導電性(軸受抵抗値)を前述と同様にして評価した。なお、増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全体の18質量%に統一した。また、基油には、40℃における動粘度が33.6mm2 /sであるペンタエリスリトールテトラエステルを用いた。
【0106】
評価の結果を図7のグラフに示す。なお、このグラフにおける潤滑寿命及び軸受抵抗値の数値は、前述の比較例B1のグリース組成物の潤滑寿命及び軸受抵抗値を1とした場合の相対値で示してある。
図7のグラフから、カーボンブラックの割合が5〜95質量%であると(すなわち、ジウレアの割合が95〜5質量%であると)潤滑寿命が優れており、10〜90質量%であると潤滑寿命がさらに優れていることが分かる。また、カーボンブラックの割合が5質量%以上であると、軸受抵抗値が低く導電性が優れていることが分かる。
【0107】
次に、グリース組成物中の増ちょう剤の含有量が異なる種々のグリース組成物を用意して、その生分解度(CECのL−33−T−82に規定されたもの)を評価した。なお、増ちょう剤におけるカーボンブラックとジウレアとの割合は、カーボンブラック:ジウレア=50:50(質量比)に統一した。また、基油には、40℃における動粘度が33.6mm2 /sであるペンタエリスリトールテトラエステルを用いた。
【0108】
生分解度の評価の結果を図8のグラフに示す。増ちょう剤の含有量が20質量%以下であると、グリース組成物は80%以上という優れた生分解度を示すことが分かる。
C.第二増ちょう剤成分として金属複合石けんを用いたグリース組成物について
〔実施例C1〕
まず、以下のようにして、基油中で金属複合石けんを合成した。
【0109】
40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステル240gに、12−ヒドロキシステアリン酸1.4gを加え、90℃に加熱して完全に溶解させた。そこに、50%水酸化リチウム水溶液0.2gを加えて撹拌し、けん化反応及び脱水を行った。
さらに、アゼライン酸0.43gを加えて均一になるまで撹拌した後、50%水酸化リチウム水溶液0.2gを加えて撹拌した。そして、200℃に加熱してアゼライン酸のけん化反応及び脱水を行い、金属複合石けんの生成反応を終了させた。
【0110】
このようにして得られた混合物を60℃に冷却し、カーボンブラック38gとペンタエリスリトールテトラエステル200gを加えた。その後、アミン系酸化防止剤10g及びスルフォネート系防錆剤10gを加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。増ちょう剤であるカーボンブラックとリチウム複合石けんとの質量比は、95:5であった。
【0111】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ93%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例C2〕
リチウム複合石けんの原料等の使用量を変える点と、40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステルと40℃における動粘度が47.1mm2 /sのポリα−オレフィン油との混合油(混合比は、質量比でペンタエリスリトールテトラエステル:ポリα−オレフィン油=80:20)を基油として用いる点と、を除いては実施例C1と同様にして、カーボンブラックとリチウム複合石けんとの質量比が90:10であるグリース組成物を得た。
【0112】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ82%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例C3〕
リチウム複合石けんの原料等の使用量を変える点を除いては実施例C1と同様にして、カーボンブラックとリチウム複合石けんとの質量比が50:50であるグリース組成物を得た。
【0113】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ82%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例C4〕
リチウム複合石けんの原料等の使用量を変える点を除いては実施例C1と同様にして、カーボンブラックとリチウム複合石けんとの質量比が10:90であるグリース組成物を得た。
【0114】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ58%であった。
〔実施例C5〕
リチウム複合石けんの原料等の使用量を変える点を除いては実施例C1と同様にして、カーボンブラックとリチウム複合石けんとの質量比が5:95であるグリース組成物を得た。
【0115】
〔比較例C1〕
前述の比較例B1と同様の市販品のリチウム石けん系グリースである。
〔比較例C2〕
前述の比較例B2と同様のものである。
〔比較例C3〕
40℃における動粘度が75mm2 /sのパラフィン系鉱油230gに12−ヒドロキシステアリン酸34.1gを加え、90℃に加熱して完全に溶解させた。そこに、50%水酸化リチウム水溶液5.1gを加えて撹拌し、けん化反応及び脱水を行った。
【0116】
さらに、アゼライン酸10.8gを加えて均一になるまで撹拌した後、50%水酸化リチウム水溶液5.1gを加えて撹拌した。そして、200℃に加熱してアゼライン酸のけん化反応及び脱水を行い、金属複合石けんの生成反応を終了させた。
その後、パラフィン系鉱油200g,アミン系酸化防止剤10g,及びスルフォネート系防錆剤10gを加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。
【0117】
これら8種のグリース組成物(実施例C1〜C5及び比較例C1〜C3)について、混和ちょう度及び滴点を測定した(JIS K2220による)。その結果をグリース組成物の組成と併せて表5及び表6にまとめて示す。なお、表5及び表6の「増ちょう剤の種類」の欄に記載されている数値は、増ちょう剤全体を100とした場合における増ちょう剤を構成する各成分の量比である。また、「増ちょう剤の量」,「基油の量」,及び「添加剤の量」の欄に記載されている数値は、グリース組成物全体を100とした場合における増ちょう剤,基油,添加剤の量比である。
【0118】
【表5】
Figure 2004099847
【0119】
【表6】
Figure 2004099847
【0120】
また、これらのグリース組成物の耐久性(潤滑寿命)及び導電性を併せて評価した。その方法は前述と同様であるので説明は省略する。
耐久性及び導電性の評価結果を表5及び表6に併せて示す。なお、表5及び表6に記載されている寿命の数値及び軸受抵抗値は、比較例C1のグリース組成物の寿命及び軸受抵抗値を1とした場合の相対値で示してある。
【0121】
〔耐久性の評価結果について〕
実施例C1〜C5のグリース組成物はリチウム複合石けんを含有しているので、それを含有していない比較例C1や比較例C2と比べて長寿命で、高温下においても優れた耐久性を有していた。
〔導電性の評価結果について〕
実施例C1〜C5のグリース組成物はカーボンブラックを含有しているので、それを含有していない比較例C1や比較例C3と比べて転がり軸受の抵抗値が小さく、導電性が優れていた。
【0122】
次に、増ちょう剤におけるカーボンブラックとリチウム複合石けんとの割合について検討した。すなわち、カーボンブラックとリチウム複合石けんとの割合が異なる種々のグリース組成物について、耐久性(潤滑寿命)及び導電性(軸受抵抗値)を前述と同様にして評価した。なお、増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全体の18質量%に統一した。また、基油には、40℃における動粘度が33.6mm2 /sであるペンタエリスリトールテトラエステルを用いた。
【0123】
評価の結果を図9のグラフに示す。なお、このグラフにおける潤滑寿命及び軸受抵抗値の数値は、前述の比較例C1のグリース組成物の潤滑寿命及び軸受抵抗値を1とした場合の相対値で示してある。
図9のグラフから、カーボンブラックの割合が5〜95質量%であると(すなわち、リチウム複合石けんの割合が95〜5質量%であると)潤滑寿命が優れており、10〜90質量%であると潤滑寿命がさらに優れていることが分かる。また、カーボンブラックの割合が5質量%以上であると、軸受抵抗値が低く導電性が優れていることが分かる。
【0124】
次に、グリース組成物中の増ちょう剤の含有量が異なる種々のグリース組成物を用意して、その生分解度(CECのL−33−T−82に規定されたもの)を評価した。なお、増ちょう剤におけるカーボンブラックとリチウム複合石けんとの割合は、カーボンブラック:リチウム複合石けん=50:50(質量比)に統一した。また、基油には、40℃における動粘度が33.6mm2 /sであるペンタエリスリトールテトラエステルを用いた。
【0125】
生分解度の評価の結果を図10のグラフに示す。増ちょう剤の含有量が20質量%以下であると、グリース組成物は80%以上という優れた生分解度を示すことが分かる。
D.第二増ちょう剤成分としてN−置換テレフタルアミド酸金属塩を用いたグリース組成物について
〔実施例D1〕
まず、以下のようにして、基油中でN−オクタデシルテレフタルアミド酸金属塩を合成した。
【0126】
40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステル150gに、N−オクタデシルテレフタルアミド酸のメチルエステル1.8gを加え、130℃に加熱して溶解した。その後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液0.4gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐々に加熱し、けん化を行った。けん化終了後、150℃においてさらにペンタエリスリトールテトラエステル150gを加え、200℃まで加熱した。
【0127】
上記の操作によって得られた混合物を60℃に冷却し、カーボンブラック38gとペンタエリスリトールテトラエステル152.5gを加えた。その後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールとフェニル−1−ナフチルアミンとソルビタンモノオレートとをそれぞれ2.5g加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。増ちょう剤であるカーボンブラックとN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムとの質量比は、95:5であった。
【0128】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ95%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例D2〕
N−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムの原料等の使用量を変える点と、40℃における動粘度が33.6mm2 /sのペンタエリスリトールテトラエステルと40℃における動粘度が47.1mm2 /sのポリα−オレフィン油との混合油(混合比は、質量比でペンタエリスリトールテトラエステル:ポリα−オレフィン油=80:20)を基油として用いる点と、を除いては実施例D1と同様にして、カーボンブラックとN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムとの質量比が90:10であるグリース組成物を得た。
【0129】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ84%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例D3〕
N−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムの原料等の使用量を変える点を除いては実施例D1と同様にして、カーボンブラックとN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムとの質量比が50:50であるグリース組成物を得た。
【0130】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ82%で、優れた生分解性を有していた。
〔実施例D4〕
N−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムの原料等の使用量を変える点を除いては実施例D1と同様にして、カーボンブラックとN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムとの質量比が10:90であるグリース組成物を得た。
【0131】
このグリース組成物について、CECのL−33−T−82に規定された生分解度を測定したところ55%であった。
〔実施例D5〕
N−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムの原料等の使用量を変える点を除いては実施例D1と同様にして、カーボンブラックとN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムとの質量比が5:95であるグリース組成物を得た。
【0132】
〔比較例D1〕
前述の比較例B1と同様の市販品のリチウム石けん系グリースである。
〔比較例D2〕
前述の比較例B2と同様のものである。
〔比較例D3〕
40℃における動粘度が75mm2 /sのパラフィン系鉱油150gに、N−オクタデシルテレフタルアミド酸のメチルエステル157.5gを加え、130℃に加熱して溶解した。その後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液35gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐々に加熱し、けん化を行った。けん化終了後、150℃においてさらにパラフィン系鉱油150gを加え、200℃まで加熱した。
【0133】
その後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールとフェニル−1−ナフチルアミンとソルビタンモノオレートとをそれぞれ2.5g加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。
これら8種のグリース組成物(実施例D1〜D5及び比較例D1〜D3)について、混和ちょう度及び滴点を測定した(JIS K2220による)。その結果をグリース組成物の組成と併せて表7及び表8にまとめて示す。なお、表7及び表8の「増ちょう剤の種類」の欄に記載されている数値は、増ちょう剤全体を100とした場合における増ちょう剤を構成する各成分の量比である。また、「増ちょう剤の量」,「基油の量」,及び「添加剤の量」の欄に記載されている数値は、グリース組成物全体を100とした場合における増ちょう剤,基油,添加剤の量比である。
【0134】
【表7】
Figure 2004099847
【0135】
【表8】
Figure 2004099847
【0136】
また、これらのグリース組成物の耐久性(潤滑寿命)及び導電性を併せて評価した。以下にその方法を説明する。
〔耐久性の評価方法について〕
実施例D1〜D5及び比較例D1〜D3のグリース組成物5gをそれぞれ充填した深溝玉軸受(呼び番号6306VV、内径30mm,外径72mm,幅19mm)を用意した。
【0137】
これらの深溝玉軸受を、図6に示すようなASTM D 1741の軸受寿命試験機に類似の試験機に装着した。そして、温度90℃、ラジアル荷重690N、アキシアル荷重490Nの下で、1000min−1の回転速度でモータ(図示せず)により回転させ、該モータが過負荷にて停止するまでの時間、又は深溝玉軸受の温度が100℃を超えるまでの時間を寿命とした。
【0138】
耐久性の評価結果を表7及び表8に併せて示す。なお、表7及び表8に記載されている寿命の数値は、比較例D1のグリース組成物の寿命を1とした場合の相対値で示してある。
〔導電性の評価方法について〕
導電性の評価は、前述と全く同様にして行った。導電性の評価結果を表7及び表8に併せて示す。なお、表7及び表8に記載の軸受抵抗値は、比較例D1の軸受抵抗値を1とした場合の相対値で示してある。
【0139】
〔耐久性の評価結果について〕
実施例D1〜D5のグリース組成物はN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムを含有しているので、それを含有していない比較例D1や比較例D2と比べて長寿命で、高温下においても優れた耐久性を有していた。
〔導電性の評価結果について〕
実施例D1〜D5のグリース組成物はカーボンブラックを含有しているので、それを含有していない比較例D1や比較例D3と比べて転がり軸受の抵抗値が小さく、導電性が優れていた。
【0140】
次に、増ちょう剤におけるカーボンブラックとN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムとの割合について検討した。すなわち、カーボンブラックとN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムとの割合が異なる種々のグリース組成物について、耐久性(潤滑寿命)及び導電性(軸受抵抗値)を前述と同様にして評価した。なお、増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全体の18質量%に統一した。また、基油には、40℃における動粘度が33.6mm2 /sであるペンタエリスリトールテトラエステルを用いた。
【0141】
評価の結果を図11のグラフに示す。なお、このグラフにおける潤滑寿命及び軸受抵抗値の数値は、前述の比較例D1のグリース組成物の潤滑寿命及び軸受抵抗値を1とした場合の相対値で示してある。
図11のグラフから、カーボンブラックの割合が5〜95質量%であると(すなわち、N−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムの割合が95〜5質量%であると)潤滑寿命が優れており、10〜90質量%であると潤滑寿命がさらに優れていることが分かる。また、カーボンブラックの割合が5質量%以上であると、軸受抵抗値が低く導電性が優れていることが分かる。
【0142】
次に、グリース組成物中の増ちょう剤の含有量が異なる種々のグリース組成物を用意して、その生分解度(CECのL−33−T−82に規定されたもの)を評価した。なお、増ちょう剤におけるカーボンブラックとN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムとの割合は、カーボンブラック:N−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウム=50:50(質量比)に統一した。また、基油には、40℃における動粘度が33.6mm2 /sであるペンタエリスリトールテトラエステルを用いた。
【0143】
生分解度の評価の結果を図12のグラフに示す。増ちょう剤の含有量が20質量%以下であると、グリース組成物は80%以上という優れた生分解度を示すことが分かる。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0144】
例えば、基油及び増ちょう剤の種類及び量は前述のものに限定されるものではなく、また、グリース組成物にはその他の添加剤をさらに添加してもよい。
また、本実施形態においては転動装置の例として深溝玉軸受をあげて説明したが、本発明は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用することができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受である。
【0145】
また、本発明は、高温,高速,高荷重という厳しい条件下で使用され、導電性が要求される場合には、転がり軸受に限らず、他の種類の様々な転動装置に対して適用することができる。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベアリング等である。
【0146】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る請求項1〜6のグリース組成物は、耐熱性及び導電性に優れている。
また、本発明に係る請求項7〜9のグリース組成物は、耐熱性及び導電性に優れていることに加えて、優れた生分解性を有している。よって、自然環境に放出されたとしても、水質,土壌等に悪影響を及ぼしにくい。
【0147】
さらに、本発明に係る請求項10〜12の転動装置は、高温,高速,高荷重という厳しい条件下で使用されても長寿命で且つ自然環境に放出されたとしても水質,土壌等に悪影響を及ぼしにくい。よって、事務機器,自動車電装部品,及び自動車エンジン補機等に好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態である深溝玉軸受の構造を示す部分縦断面図である。
【図2】軸受の抵抗値を測定する装置の概略構成図である。
【図3】増ちょう剤におけるカルシウムスルフォネートコンプレックスの割合と、グリース組成物の防錆性及び玉軸受の軸受抵抗値と、の相関を示すグラフである。
【図4】増ちょう剤におけるカルシウムスルフォネートコンプレックスの割合と、グリース組成物の焼付き荷重及び玉軸受の軸受抵抗値と、の相関を示すグラフである。
【図5】増ちょう剤としてカルシウムスルフォネートコンプレックスを含有するグリース組成物において、増ちょう剤の含有量と、グリース組成物の混和ちょう度及び生分解度と、の相関を示すグラフである。
【図6】グリース組成物を封入した軸受の潤滑寿命を評価する軸受寿命試験機の構成を示す断面図である。
【図7】増ちょう剤としてジウレアを含有するグリース組成物において、増ちょう剤におけるカーボンブラックの割合と、玉軸受の潤滑寿命及び軸受抵抗値と、の相関を示すグラフである。
【図8】増ちょう剤としてジウレアを含有するグリース組成物において、増ちょう剤の含有量とグリース組成物の生分解度との相関を示すグラフである。
【図9】増ちょう剤としてリチウム複合石けんを含有するグリース組成物において、増ちょう剤におけるカーボンブラックの割合と、玉軸受の潤滑寿命及び軸受抵抗値と、の相関を示すグラフである。
【図10】増ちょう剤としてリチウム複合石けんを含有するグリース組成物において、増ちょう剤の含有量とグリース組成物の生分解度との相関を示すグラフである。
【図11】増ちょう剤としてN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムを含有するグリース組成物において、増ちょう剤におけるカーボンブラックの割合と、玉軸受の潤滑寿命及び軸受抵抗値と、の相関を示すグラフである。
【図12】増ちょう剤としてN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリウムを含有するグリース組成物において、増ちょう剤の含有量とグリース組成物の生分解度との相関を示すグラフである。
【符号の説明】
21  玉軸受
22  外輪
22a 外輪軌道面
23  内輪
23a 内輪軌道面
24  玉
27  グリース組成物

Claims (12)

  1. 基油と増ちょう剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう剤をカーボンブラック及び第二増ちょう剤成分で構成し、前記第二増ちょう剤成分をカルシウムスルフォネートコンプレックス,ポリウレア,金属複合石けん,又はN−置換テレフタルアミド酸金属塩としたことを特徴とするグリース組成物。
  2. 前記増ちょう剤を、カーボンブラック5〜95質量%と、前記第二増ちょう剤成分95〜5質量%と、で構成したことを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の3〜40質量%としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物。
  4. 前記カルシウムスルフォネートコンプレックスは、カルシウムスルフォネート及び炭酸カルシウムを必須成分とし、これらにカルシウムジベヘネート,カルシウムジステアレート,カルシウムジヒドロキシステアレート,ホウ酸カルシウム,及び酢酸カルシウムのうちの2種以上を配合したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のグリース組成物。
  5. 前記カルシウムスルフォネートの塩基価を50〜500mgKOH/gとしたことを特徴とする請求項4に記載のグリース組成物。
  6. 前記カーボンブラックのDBP吸油量を100ml/100g以上、1次粒径を100nm未満、比表面積を50m2 /g以上としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のグリース組成物。
  7. 前記基油はネオペンチル型ポリオールエステル油を含有しており、その含有量は基油全体の80質量%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のグリース組成物。
  8. 前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の3〜20質量%としたことを特徴とする請求項7に記載のグリース組成物。
  9. 欧州規格諮問委員会規格のL−33−T−82に規定された生分解度が80%以上であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のグリース組成物。
  10. 外面に軌道面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成され前記転動体が配設された空隙部内に、請求項1〜9のいずれかに記載のグリース組成物を充填したことを特徴とする転動装置。
  11. 複写機,プリンタ等の事務機器に使用される転がり軸受であることを特徴とする請求項10に記載の転動装置。
  12. オルタネータ,電磁クラッチ等の自動車電装部品に使用される転がり軸受又はアイドラプーリ等の自動車エンジン補機に使用される転がり軸受であることを特徴とする請求項10に記載の転動装置。
JP2002293751A 2002-07-16 2002-10-07 グリース組成物及び転動装置 Pending JP2004099847A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002293751A JP2004099847A (ja) 2002-07-16 2002-10-07 グリース組成物及び転動装置

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002206902 2002-07-16
JP2002293751A JP2004099847A (ja) 2002-07-16 2002-10-07 グリース組成物及び転動装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004099847A true JP2004099847A (ja) 2004-04-02

Family

ID=32300248

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002293751A Pending JP2004099847A (ja) 2002-07-16 2002-10-07 グリース組成物及び転動装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004099847A (ja)

Cited By (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005090529A1 (ja) * 2004-03-24 2005-09-29 Jtekt Corporation 潤滑剤組成物とそれを用いた減速機ならびにそれを用いた電動パワーステアリング装置
WO2006090779A1 (ja) * 2005-02-23 2006-08-31 Kyodo Yushi Co., Ltd. グリース組成物および軸受
CN100378209C (zh) * 2005-01-31 2008-04-02 中国石油化工股份有限公司 高滴点润滑脂及预制皂的制备方法
US8535457B2 (en) 2007-05-17 2013-09-17 Ntn Corporation Rolling member, rolling bearing and process for manufacturing rolling member
CN103819945A (zh) * 2014-01-27 2014-05-28 江苏爱特恩东台新材料科技有限公司 一种改性炭黑及其制备方法
JP2016176027A (ja) * 2015-03-20 2016-10-06 出光興産株式会社 潤滑油組成物
CN108728202A (zh) * 2017-04-19 2018-11-02 科聚亚(南京)化工有限公司 聚脲/高碱值磺酸钙复合润滑脂
WO2019172275A1 (ja) * 2018-03-06 2019-09-12 日本グリース株式会社 グリース組成物
CN110484327A (zh) * 2018-05-15 2019-11-22 天津科技大学 一种防硬化的钙基滚动轴承润滑脂的制备
CN111117729A (zh) * 2019-12-27 2020-05-08 中国科学院兰州化学物理研究所 一种烧结机滑道密封润滑脂及其制备方法
CN113484217A (zh) * 2021-07-06 2021-10-08 西南石油大学 一种去白云石化过程的模拟实验方法
US20230332646A1 (en) * 2020-09-16 2023-10-19 Ntn Corporation Grease-sealed bearing

Cited By (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005090529A1 (ja) * 2004-03-24 2005-09-29 Jtekt Corporation 潤滑剤組成物とそれを用いた減速機ならびにそれを用いた電動パワーステアリング装置
US8039423B2 (en) 2004-03-24 2011-10-18 Jtekt Corporation Lubricant composition, speed reduction gear using the lubricant composition, and electric power steering apparatus using the speed reduction gear
CN100378209C (zh) * 2005-01-31 2008-04-02 中国石油化工股份有限公司 高滴点润滑脂及预制皂的制备方法
WO2006090779A1 (ja) * 2005-02-23 2006-08-31 Kyodo Yushi Co., Ltd. グリース組成物および軸受
JP2006232921A (ja) * 2005-02-23 2006-09-07 Kyodo Yushi Co Ltd グリース組成物および軸受
US8535457B2 (en) 2007-05-17 2013-09-17 Ntn Corporation Rolling member, rolling bearing and process for manufacturing rolling member
CN103819945A (zh) * 2014-01-27 2014-05-28 江苏爱特恩东台新材料科技有限公司 一种改性炭黑及其制备方法
JP2016176027A (ja) * 2015-03-20 2016-10-06 出光興産株式会社 潤滑油組成物
CN108728202A (zh) * 2017-04-19 2018-11-02 科聚亚(南京)化工有限公司 聚脲/高碱值磺酸钙复合润滑脂
CN108728202B (zh) * 2017-04-19 2022-12-20 朗盛公司 聚脲/高碱值磺酸钙复合润滑脂
WO2019172275A1 (ja) * 2018-03-06 2019-09-12 日本グリース株式会社 グリース組成物
JPWO2019172275A1 (ja) * 2018-03-06 2021-02-25 日本グリース株式会社 グリース組成物
US11697786B2 (en) 2018-03-06 2023-07-11 Nippon Grease Co., Ltd. Grease composition
JP7348894B2 (ja) 2018-03-06 2023-09-21 日本グリース株式会社 グリース組成物
CN110484327A (zh) * 2018-05-15 2019-11-22 天津科技大学 一种防硬化的钙基滚动轴承润滑脂的制备
CN111117729A (zh) * 2019-12-27 2020-05-08 中国科学院兰州化学物理研究所 一种烧结机滑道密封润滑脂及其制备方法
US20230332646A1 (en) * 2020-09-16 2023-10-19 Ntn Corporation Grease-sealed bearing
CN113484217A (zh) * 2021-07-06 2021-10-08 西南石油大学 一种去白云石化过程的模拟实验方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6919301B2 (en) Grease composition and rolling apparatus
JP2003301190A (ja) グリース組成物及び転動装置
WO2013031705A1 (ja) グリース組成物及び転動装置
JP2004099847A (ja) グリース組成物及び転動装置
JPWO2004061058A1 (ja) 自動車電装補機用グリース組成物及び前記グリース組成物を封入した転がり軸受
EP1719813A1 (en) Grease composition and rolling device
JP2004269789A (ja) グリース組成物及び転動装置
JP2008088386A (ja) グリース組成物及び車両用ハブユニット軸受
JP3982364B2 (ja) グリース組成物及び転動装置
JP2009209179A (ja) グリース組成物及び転動装置
JP2004091764A (ja) グリース組成物,転がり軸受,及び電動モータ
JP2004083798A (ja) グリース組成物及び転動装置
JP2013035946A (ja) グリースおよび密封軸受
WO2019083022A1 (ja) グリース組成物
JP2004339448A (ja) グリース組成物、転がり軸受、及び電動モータ
WO2022045234A1 (ja) 転がり軸受
EP4053252B1 (en) Low-dust grease composition for high-speed rotation, and bearing enclosing same
CN1723270A (zh) 汽车电子组件的辅助设备用的润滑脂组合物和其内填充有该润滑脂组合物的滚动轴承
JP2003097571A (ja) 転がり軸受
JP2004301167A (ja) テンタークリップ用転がり軸受,テンタークリップ,及びフィルム延伸機
JP5267074B2 (ja) 正逆回転モータ用転がり軸受ユニット
JP2003193081A (ja) グリース組成物及び転動装置
JP2004210971A (ja) 自動車電装補機用グリース組成物及び前記グリース組成物を封入した転がり軸受
WO2022210531A1 (ja) 密封型転がり軸受
JP2005048044A (ja) 転動装置用グリース組成物及び転動装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051005

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080507

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080930