JP2003193081A - グリース組成物及び転動装置 - Google Patents

グリース組成物及び転動装置

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JP2003193081A
JP2003193081A JP2002024520A JP2002024520A JP2003193081A JP 2003193081 A JP2003193081 A JP 2003193081A JP 2002024520 A JP2002024520 A JP 2002024520A JP 2002024520 A JP2002024520 A JP 2002024520A JP 2003193081 A JP2003193081 A JP 2003193081A
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真也 中谷
Hirotoshi Miyajima
裕俊 宮島
Michita Hokao
道太 外尾
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性,酸化安定性,及び潤滑寿命に優れた
グリース組成物を提供する。 【解決手段】 N−置換テレフタルアミド酸金属塩及び
第二増ちょう剤成分(ポリウレア,金属石けん,金属複
合石けん)からなる増ちょう剤を基油に混合してグリー
ス組成物を製造した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性,酸化安定
性,及び潤滑寿命に優れたグリース組成物、並びに、耐
熱性,酸化安定性,潤滑寿命,及び生分解性に優れたグ
リース組成物に関する。また、このようなグリース組成
物を備える転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の機械技術の進歩に伴い、機械装置
は小型軽量化,高速回転化の傾向が著しい。そのため、
ベアリングやギヤ等の機械部分は、従来にも増して高温
化の傾向にある。一方、最近の省資源化,省力化の要望
から、機械装置はメンテナンスフリー化が進展してい
る。そのため、これら機械装置に使用されるグリース
は、従来にも増して優れた耐熱性,潤滑寿命が要求され
ている。
【0003】現在、高温用グリースとしては、増ちょう
剤としてCa,Al,及びLiコンプレックス等の金属
石けんを用いた金属石けん系グリース、ポリウレア,テ
レフタルアミド酸金属塩,及びポリテトラフルオロエチ
レン(PTFE)等の有機化合物を用いた有機系グリー
ス、並びにベントナイト等の無機化合物を用いた無機系
グリースなどがある。
【0004】また、汎用グリースとしては、金属石け
ん、特にリチウム石けんを増ちょう剤として用いたグリ
ースが広く使用されている。これは、金属石けんが増ち
ょう性及び取り扱い性に優れるとともに安価であり、ま
た、リチウム石けんが耐熱性,トルク特性,音響特性,
構造安定性等のグリースとして要求される諸特性のバラ
ンスに優れるためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
のグリースはそれぞれ問題点を有している。例えば、ア
ルミニウムコンプレックスグリース等の金属石けん系グ
リースは、潤滑性は優れるが高温ではグリース構造が長
期間維持されにくく、最も耐熱性を有するリチウム石け
ん系グリースでも、130℃を超える高温では著しく潤
滑寿命が低下する。また、ポリウレア系グリースは硬化
現象を起こしやすく、テレフタルアミド酸金属塩を用い
たグリースは耐熱性は優れるが油分離が大きく、ベント
ナイトを用いたグリースは潤滑性及び防錆性が不十分で
ある。
【0006】一方、上記グリースは各種機械装置に使用
されるため、自然環境中に放出される場合も多く、そう
すると自然環境に悪影響を及ぼすおそれがある。このよ
うな問題点を解決するため、基油としてポリオールエス
テル油や植物油を使用することにより生分解性を付与し
たグリースが、特開平5−86389号公報,特開平6
−1989号公報,及び特開平8−20789号公報に
提案されている。しかし、これら公報に記載のグリース
は、潤滑寿命及び酸化安定性が不十分であるという問題
点を有していた。
【0007】そこで、本発明は上記のような従来技術が
有する問題点を解決し、耐熱性,酸化安定性,及び潤滑
寿命に優れたグリース組成物、並びに、耐熱性,酸化安
定性,潤滑寿命,及び生分解性に優れたグリース組成物
を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明に係る請求項1のグリース組成物は、基油と増ちょう
剤とを含有するグリース組成物において、前記増ちょう
剤をN−置換テレフタルアミド酸金属塩と第二増ちょう
剤成分とで構成したことを特徴とする。
【0009】また、本発明に係る請求項2のグリース組
成物は、請求項1のグリース組成物において、前記第二
増ちょう剤成分をポリウレアとしたことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3のグリース組成物は、請
求項1のグリース組成物において、前記第二増ちょう剤
成分を金属石けんとしたことを特徴とする。さらに、本
発明に係る請求項4のグリース組成物は、請求項1のグ
リース組成物において、前記第二増ちょう剤成分を金属
複合石けんとしたことを特徴とする。
【0010】このようなグリース組成物は、増ちょう剤
としてN−置換テレフタルアミド酸金属塩とポリウレ
ア,金属石けん,金属複合石けんのような第二増ちょう
剤成分との混合物を用いたので、耐熱性及び酸化安定性
が優れており、高温下においても長寿命である。さら
に、本発明に係る請求項5のグリース組成物は、請求項
1〜4のいずれかのグリース組成物において、前記増ち
ょう剤を、N−置換テレフタルアミド酸金属塩5〜95
質量%と、前記第二増ちょう剤成分95〜5質量%と、
で構成したことを特徴とする。
【0011】増ちょう剤の組成が前記範囲外であると、
潤滑寿命が不十分となるおそれがある。潤滑寿命を確実
に十分なものとするためには、増ちょう剤は、N−置換
テレフタルアミド酸金属塩10〜90質量%と、前記第
二増ちょう剤成分90〜10質量%と、で構成すること
がより好ましい。さらに、本発明に係る請求項6のグリ
ース組成物は、請求項1〜5のいずれかのグリース組成
物において、前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の3
〜40質量%としたことを特徴とする。
【0012】3質量%未満であるとグリース構造を維持
することが困難となり、40質量%超過であると、グリ
ース組成物が硬化しすぎて十分な潤滑性を発揮すること
が困難となる。さらに、本発明に係る請求項7のグリー
ス組成物は、請求項1〜5のいずれかのグリース組成物
において、前記基油はネオペンチル型ポリオールエステ
ル油を含有しており、その含有量は基油全体の80質量
%以上であることを特徴とする。
【0013】このようなグリース組成物は、高温下にお
いても長寿命であるとともに、基油が生分解性を有する
ネオペンチル型ポリオールエステル油を含有しているの
で、優れた生分解性を有している。したがって、グリー
ス組成物が機械装置等から漏出するなどして自然環境中
に放出されたとしても、自然環境に悪影響を及ぼしにく
い。
【0014】ネオペンチル型ポリオールエステル油の含
有量が基油全体の80質量%未満であると、グリース組
成物の生分解性が低下するので好ましくない。グリース
組成物の生分解性をより十分なものとするためには、ネ
オペンチル型ポリオールエステル油の含有量を基油全体
の90質量%以上とすることがより好ましい。さらに、
本発明に係る請求項8のグリース組成物は、請求項7の
グリース組成物において、前記基油80〜97質量部
と、前記増ちょう剤3〜20質量部と、を含有すること
を特徴とする。
【0015】前記増ちょう剤が3質量部未満であるとグ
リース構造を維持することが困難となり、20質量部超
過であるとグリース組成物の生分解性が低下する。さら
に、本発明に係る請求項9のグリース組成物は、請求項
7又は請求項8のグリース組成物において、欧州規格諮
問委員会規格のL−33−T−82に規定された生分解
度が80%以上であることを特徴とする。
【0016】このような構成であれば、グリース組成物
が機械装置等から漏出するなどして自然環境中に放出さ
れたとしても、自然環境に悪影響を及ぼしにくい。さら
に、本発明に係る請求項10の転動装置は、内方部材
と、外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に
転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転動装
置において、前記内方部材と前記外方部材との間に形成
され前記転動体が内設された空隙部内に、請求項1〜9
のいずれかのグリース組成物を充填したことを特徴とす
る。
【0017】このような構成であれば、転動装置が長寿
命であり、また、前記グリース組成物が漏出するなどし
て自然環境中に放出されたとしても、自然環境に悪影響
を及ぼしにくい。本発明は、種々の転動装置に適用する
ことができる。例えば、転がり軸受,ボールねじ,リニ
アガイド装置,直動ベアリング等である。
【0018】なお、本発明における前記内方部材とは、
転動装置が転がり軸受の場合には内輪、同じくボールね
じの場合にはねじ軸、同じくリニアガイド装置の場合に
は案内レール、同じく直動ベアリングの場合には軸をそ
れぞれ意味する。また、前記外方部材とは、転動装置が
転がり軸受の場合には外輪、同じくボールねじの場合に
はナット、同じくリニアガイド装置の場合にはスライ
ダ、同じく直動ベアリングの場合には外筒をそれぞれ意
味する。
【0019】以下に、本発明のグリース組成物を構成す
る各成分について説明する。 〔N−置換テレフタルアミド酸金属塩について〕本発明
において増ちょう剤として使用されるN−置換テレフタ
ルアミド酸金属塩は、下記の一般式(I)で表される。
【0020】
【化1】
【0021】なお、式(I)中の窒素原子に結合した置
換基Rは、直鎖状,分岐鎖状,又は環式で飽和又は不飽
和の1価の炭化水素基であり、Mは金属であり、nは金
属の原子価に等しい数である。置換基Rが直鎖状又は分
岐鎖状の炭化水素基である場合は、炭化水素基の炭素数
は10〜32、好ましくは12〜22であり、環式の炭
化水素基である場合は、炭化水素基の炭素数は6〜2
8、好ましくは7〜22である。炭化水素基の炭素数が
前記下限値より小さいと、増ちょう剤が基油に分散しに
くく、また、増ちょう剤と基油とが分離しやすくなる。
一方、炭化水素基の炭素数が前記上限値より大きい増ち
ょう剤は、工業的に非現実的である。
【0022】置換基Rの例としては、デシル基,テトラ
デシル基,ヘキサデシル基,オクタデシル基,シクロヘ
キシル基,ベンジル基,フェニル基,トリル基,ブチル
フェニル基等があげられる。また、金属Mとしては、
1,2,12,及び13族の金属、例えば、リチウム,
カリウム,ナトリウム,マグネシウム,カルシウム,バ
リウム,亜鉛,アルミニウム等があげられる。特に、ナ
トリウム,バリウム,リチウム,カリウムが好ましく、
ナトリウムが最も現実的である。
【0023】このようなN−置換テレフタルアミド酸金
属塩は、別途合成したものを基油に分散させてもよい
し、基油中で合成することによって基油に分散させても
よい。ただし、後者の方法の方が、基油中に増ちょう剤
を良好に分散させやすいので、工業的に製造する場合に
は有利である。 〔ポリウレアについて〕本発明においてN−置換テレフ
タルアミド酸金属塩とともに増ちょう剤(第二増ちょう
剤成分)として使用されるポリウレアは、ジウレア,ト
リウレア,テトラウレア等のポリウレア化合物が使用で
きるが、特に、下記の一般式(II)で表されるジウレア
が好ましい。
【0024】
【化2】
【0025】なお、式(II)中のR2 は、炭素数6〜1
5の芳香族炭化水素基を表す。また、R1 及びR3 は脂
肪族炭化水素基,芳香族炭化水素基,又は縮合炭化水素
基を表し、R1 とR3 は同一であってもよいし異なって
いてもよい。縮合炭化水素基の炭素数は9〜19が好ま
しく、9〜13がさらに好ましい。これらの炭化水素基
の炭素数が前記下限値より小さいと、増ちょう剤が基油
に分散しにくく、また、増ちょう剤と基油とが分離しや
すくなる。一方、炭化水素基の炭素数が前記上限値より
大きい増ちょう剤は、工業的に非現実的である。
【0026】このようなジウレアは、別途合成したもの
を基油に分散させてもよいし、基油中で合成することに
よって基油に分散させてもよい。ただし、後者の方法の
方が、基油中に増ちょう剤を良好に分散させやすいの
で、工業的に製造する場合には有利である。ジウレアを
基油中で合成する場合の合成方法は、特に限定されるも
のではないが、R2 の芳香族炭化水素基を有するジイソ
シアネート1モルと、R1 ,R3 の炭化水素基を有する
モノアミン2モルとを、反応させる方法が最も好まし
い。
【0027】ジイソシアネートとしては、例えば、ジフ
ェニルメタンジイソシアネート,トリレンジイソシアネ
ート,キシリレンジイソシアネート,ビフェニレンジイ
ソシアネート,ジメチルジフェニレンジイソシアネー
ト,又はこれらのアルキル基置換体等を好適に使用でき
る。また、R1 ,R3 が脂肪族炭化水素基又は芳香族炭
化水素基である場合のモノアミンとしては、例えば、ア
ニリン,シクロヘキシルアミン,オクチルアミン,トル
イジン,ドデシルアニリン,オクタデシルアミン,ヘキ
シルアミン,ヘプチルアミン,ノニルアミン,エチルヘ
キシルアミン,デシルアミン,ウンデシルアミン,ドデ
シルアミン,テトラデシルアミン,ペンタデシルアミ
ン,ノナデシルアミン,エイコデシルアミン,オレイル
アミン,リノレイルアミン,リノレニルアミン,メチル
シクロヘキシルアミン,エチルシクロヘキシルアミン,
ジメチルシクロヘキシルアミン,ジエチルシクロヘキシ
ルアミン,ブチルシクロヘキシルアミン,プロピルシク
ロヘキシルアミン,アミルシクロヘキシルアミン,シク
ロオクチルアミン,ベンジルアミン,ベンズヒドリルア
ミン,フェネチルアミン,メチルベンジルアミン,ビフ
ェニルアミン,フェニルイソプロピルアミン,フェニル
ヘキシルアミン等を好適に使用できる。
【0028】さらに、R1 ,R3 が縮合炭化水素基であ
る場合のモノアミンとしては、例えば、アミノインデ
ン、アミノインダン、アミノ−1−メチレンインデン等
のインデン系アミン化合物、アミノナフタレン(ナフチ
ルアミン)、アミノメチルナフタレン、アミノエチルナ
フタレン、アミノジメチルナフタレン、アミノカダレ
ン、アミノビニルナフタレン、アミノフェニルナフタレ
ン、アミノベンジルナフタレン、アミノジナフチルアミ
ン、アミノビナフチル、アミノ−1,2−ジヒドロナフ
タレン、アミノ−1,4−ジヒドロナフタレン、アミノ
テトラヒドロナフタレン、アミノオクタリン等のナフタ
レン系アミン化合物、アミノベンタレン、アミノアズレ
ン、アミノヘプタレン等の縮合二環系アミン化合物、ア
ミノフルオレン、アミノ−9−フェニルフルオレン等の
アミノフルオレン系アミン化合物、アミノアントラセ
ン、アミノメチルアントラセン、アミノジメチルアント
ラセン、アミノフェニルアントラセン、アミノ−9,1
0−ジヒドロアントラセン等のアントラセン系アミン化
合物、アミノフェナントレン、アミノ−1,7−ジメチ
ルフェナントレン、アミノレテン等のフェナントレンア
ミン化合物、アミノビフェニレン、アミノ−sym−イ
ンダセン、アミノ−as−インダセン、アミノアセナフ
チレン、アミノアセナフテン、アミノフェナレン等の縮
合三環系アミン化合物、アミノナフタセン、アミノクリ
セン、アミノピレン、アミノトリフェニレン、アミノベ
ンゾアントラセン、アミノアセアントリレン、アミノア
セアントレン、アミノアセフェナントリレン、アミノア
セフェナントレン、アミノフルオランテン、アミノプレ
イアデン等の縮合四環系アミン化合物、アミノペンタセ
ン、アミノペンタフェン、アミノピセン、アミノペリレ
ン、アミノジベンゾアントラセン、アミノベンゾピレ
ン、アミノコラントレン等の縮合五環系アミン化合物、
アミノコロネン、アミノピラントレン、アミノビオラン
トレン、アミノイソビオラントレン、アミノオバレン等
の縮合多環系(六環以上)アミン化合物などが好適に用
いられる。
【0029】〔金属石けん及び金属複合石けんについ
て〕本発明においてN−置換テレフタルアミド酸金属塩
とともに増ちょう剤(第二増ちょう剤成分)として使用
される金属石けんとしては、1,2,及び13族の金
属、例えば、リチウム,ナトリウム,カルシウム,バリ
ウム,アルミニウム等と、炭素数10以上の高級脂肪酸
又は1個以上の水酸基を有する炭素数10以上の高級ヒ
ドロキシ脂肪酸と、から合成されたものがあげられる。
【0030】また、本発明においてN−置換テレフタル
アミド酸金属塩とともに増ちょう剤(第二増ちょう剤成
分)として使用される金属複合石けんとしては、1,
2,及び13族の金属の水酸化物、例えば、リチウム,
ナトリウム,カルシウム,バリウム,アルミニウム等の
水酸化物と、脂肪酸及び二塩基酸の混合物と、をけん化
させて合成されたものがあげられる。このような金属複
合石けんを用いたグリース組成物は、通常の金属石けん
を用いたグリース組成物よりも滴点が高く耐熱性に優れ
ている。
【0031】〔基油について〕本発明のグリース組成物
の基油としては、鉱物系潤滑油や合成潤滑油を使用する
ことができる。その種類は特に制限されるものではない
が、鉱物系潤滑油としては、パラフィン系鉱物油,ナフ
テン系鉱物油,及びそれらの混合油を使用でき、また、
合成潤滑油としては、合成炭化水素油,エーテル油,エ
ステル油,及びフッ素油等を使用できる。
【0032】具体的には、合成炭化水素油としてはポリ
−α−オレフィン油等を、エーテル油としてはジアルキ
ルジフェニルエーテル油,アルキルトリフェニルエーテ
ル油,アルキルテトラフェニルエーテル油等を、エステ
ル油としてはジエステル油,ネオペンチル型ポリオール
エステル油,これらのコンプレックスエステル油,芳香
族エステル油等を、フッ素油としてはパーフルオロエー
テル油,フルオロシリコーン油,クロロトリフルオロエ
チレン油,フルオロフォスファゼン油等を使用すること
ができる。
【0033】これらの基油は、単独で用いてもよいし、
2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。高温,高速
での潤滑性能及び寿命を考慮すると、基油には合成潤滑
油が含有されていることが好ましく、特に、エステル
油,エーテル油,及びフッ素油の少なくとも1種が含有
されていることが好ましい。さらに、コスト面からは、
エステル油及びエーテル油の少なくとも一方が含有され
ていることが好ましい。
【0034】そして、基油の動粘度は40℃において1
0〜600mm2 /sであることが好ましい。10mm
2 /s未満では、高温において蒸発しやすく、グリース
組成物の製造が困難となる。また、600mm2 /s超
過では、転動装置のトルクが上昇しすぎるため好ましく
ない。このような問題点がより生じにくくするために
は、基油の動粘度は40℃において20〜500mm2
/sであることがより好ましい。
【0035】一方、基油としてネオペンチル型ポリオー
ルエステル油を使用すると、グリース組成物に生分解性
が付与される。ネオペンチル型ポリオールエステルと
は、下記の式(III )で表されるようなネオペンチル構
造を有する多価アルコール(以降は、ネオペンチル型ポ
リオールと記す)と有機酸との反応によって得られるエ
ステル油である。
【0036】
【化3】
【0037】ネオペンチル型ポリオールの炭素数は5〜
12が好ましく、5〜9がより好ましい。また、有機酸
の炭素数は4〜18が好ましく、6〜12がより好まし
い。ネオペンチル型ポリオール及び有機酸の炭素数が上
記範囲から外れると、グリース組成物の耐熱性,酸化安
定性が損なわれるおそれがある。ネオペンチル型ポリオ
ールとしては、例えば、2,2−ジメチルプロパン−
1,3−ジオール(すなわち、ネオペンチルグリコール
(以降はNPGと記す))、2−エチル−2−ブチルプ
ロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン
−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパ
ン−1,3−ジオール、トリメチロールエタン、トリメ
チロールプロパン(以降はTMPと記す)、トリメチロ
ールブタン、トリメチロールヘキサン、ペンタエリスル
リトール(以降はPEと記す)等があげられる。この中
では、NPG、2−メチル−2−プロピルプロパン−
1,3−ジオール、TMP、PEが好ましく、NPG、
TMP、PEが特に好ましい。これらのネオペンチル型
ポリオールは、単独又は2種以上を組み合わせて用いる
ことができる。
【0038】また、有機酸としては、例えば、n−ブタ
ン酸、イソ酪酸、n−ペンタン酸、イソ吉草酸、n−ヘ
キサン酸、2−エチルブタン酸、イソヘキサン酸、ヘキ
サヒドロ安息香酸、n−ヘプタン酸、イソヘプタン酸、
メチルヘキサヒドロ安息香酸、n−オクタン酸、ジメチ
ルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、2,4,4−ト
リメチルペンタン酸、イソオクタン酸、3,5,5−ト
リメチルヘキサン酸、、n−ノナン酸、イソノナン酸、
イソデカン酸、イソウンデカン酸、2−ブチルオクタン
酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、へキサデカン酸、
オクタデカン酸等があげられ、この中では、n−ヘプタ
ン酸、イソヘプタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘ
キサン酸が好ましい。これらの有機酸は、単独又は2種
以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】さらに、ネオペンチル型ポリオールエステ
ルの具体例をあげると、NPGとヘプタン酸とのジエス
テル化合物、NPGと2−エチルブタン酸とのジエステ
ル化合物、NPGとヘキサン酸及びヘプタン酸の混合物
とのジエステル化合物、TMPとペンタン酸とのトリエ
ステル化合物、TMPとヘキサン酸とのトリエステル化
合物、TMPとブタン酸及びオクタデカン酸の混合物と
のトリエステル化合物、TMPとヘキサン酸,ヘプタン
酸,及びオクタン酸の混合物とのトリエステル化合物、
PEとペンタン酸とのテトラエステル化合物、PEと直
鎖状又は分岐鎖状の炭素数4〜8の有機酸のうち2種以
上の混合物とのテトラエステル化合物等がある。
【0040】また、NPG,TMP,PE以外のネオペ
ンチル型ポリオール、すなわち、2−メチル−2−プロ
ピルプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプ
ロパン−1,3−ジオール、トリメチロールエタン、ト
リメチロールヘキサン等と、上記の有機酸(単独又は2
種以上の混合物)との反応によって得られるネオペンチ
ル型ポリオールエステルも使用可能である。
【0041】ネオペンチル型ポリオールと有機酸とから
ネオペンチル型ポリオールエステルを合成する方法とし
ては、従来から知られている慣用の方法(エステル化
法)、例えば、酸性触媒の存在下で脱水縮合反応を行う
方法等を問題なく用いることができる。〔添加剤につい
て〕本発明のグリース組成物には、各種性能をさらに向
上させるため、所望により種々の添加剤を混合してもよ
い。例えば、アミン系,フェノール系,硫黄系,ジチオ
リン酸亜鉛等の酸化防止剤、石油スルフォン酸,カルシ
ウムスルフォネート,ソルビタンエステル等の防錆剤、
リン系,ジチオリン酸亜鉛,有機モリブデン等の極圧
剤、脂肪酸,動植物油等の油性向上剤、ベンゾトリアゾ
ール等の金属不活性化剤など、グリース組成物に一般的
に使用される添加剤を、単独又は2種以上混合して用い
ることができる。なお、これら添加剤の添加量は、本発
明の目的を損なわない程度であれば特に限定されるもの
ではない。
【0042】
【発明の実施の形態】本発明に係るグリース組成物及び
転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説
明する。 (第二増ちょう剤成分としてポリウレアを用いたグリー
ス組成物について) 〔実施例A1〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル85.7gを250.0gのジアルキル
ジフェニルエーテル(40℃における動粘度は97.5
mm2/s)に加え、130℃に加熱して溶解した。そ
の後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム
水溶液18.6gを加えた。そして、十分撹拌しながら
徐々に加熱し、けん化を行った。
【0043】けん化終了後、150℃においてさらにジ
アルキルジフェニルエーテル250.0gを加え、20
0℃まで加熱した。そして、60℃まで冷却し、ジフェ
ニルメタン−4,4’−ジイソシアネート51.0gを
加えて完全に溶解させた後、シクロへキシルアミン4
4.0gとジアルキルジフェニルエーテル280.7g
を加え撹拌した。100℃で60分間保持した後、15
0℃まで加熱して反応を終了させた。
【0044】その後、アミン系酸化防止剤10.0g及
びスルフォネート系防錆剤10.0gを加え、ミル処理
及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。生成した増
ちょう剤であるN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナ
トリウムとジウレアとの重量比は、50:50であっ
た。 〔実施例A2〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル57.8gを300.0gのジアルキル
ジフェニルエーテル(40℃における動粘度は97.5
mm2/s)に加え、130℃に加熱して溶解した。そ
の後、100℃以下に冷却し、30%水酸化バリウム水
溶液42.0gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐
々に加熱し、けん化を行った。
【0045】けん化終了後、150℃においてさらにジ
アルキルジフェニルエーテル23.2gを加え、200
℃まで加熱した。そして、60℃まで冷却し、ジフェニ
ルメタン−4,4’−ジイソシアネート36.3gを加
えて完全に溶解させた後、シクロヘキシルアミン28.
7gとジアルキルジフェニルエーテル120.0gを加
え撹拌した。100℃で60分間保持した後、150℃
まで加熱して反応を終了させた。
【0046】その後、アミン系酸化防止剤10.0g及
びスルフォネート系防錆剤10.0gを加え、ミル処理
及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。生成した増
ちょう剤であるジ(N−オクタデシルテレフタラミン
酸)バリウムとジウレアとの重量比は50:50であっ
た。 〔実施例A3〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル42.9gを250.0gのジアルキル
ジフェニルエーテル(40℃における動粘度は97.5
mm2/s)に加え、130℃に加熱して溶解した。そ
の後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム
水溶液9.3gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐
々に加熱し、けん化を行った。
【0047】けん化終了後、150℃においてさらにジ
アルキルジフェニルエーテル50.0gを加え、200
℃まで加熱した。そして、60℃まで冷却し、ジフェニ
ルメタン−4,4’−ジイソシアネート76.5gを加
えて完全に溶解させた後、シクロヘキシルアミン66.
0gとジアルキルジフェニルエーテル280.7gを加
え撹拌した。100℃で60分間保持した後、150℃
まで加熱して反応を終了させた。
【0048】その後、アミン系酸化防止剤10.0g及
びスルフォネート系防錆剤10.0gを加え、ミル処理
及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。生成した増
ちょう剤であるN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナ
トリウムとジウレアとの重量比は、25:75であっ
た。 〔実施例A4〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル85.7gを、250.0gのジアルキ
ルジフェニルエーテルとペンタエリスリトールのテトラ
エステルとの混合基油(40℃における動粘度は85.
3mm2 /s)に加え、130℃に加熱して溶解した。
その後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウ
ム水溶液18.6gを加えた。そして、十分撹拌しなが
ら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0049】けん化終了後、150℃においてさらに前
記混合基油250.0gを加え、200℃まで加熱し
た。そして、60℃まで冷却し、ジフェニルメタン−
4,4’−ジイソシアネート52.6gを加えて完全に
溶解させた後、p−トルイジン9.0g及びシクロヘキ
シルアミン33.4gと前記混合基油280.7gを加
え撹拌した。100℃で60分間保持した後、150℃
まで加熱して反応を終了させた。
【0050】その後、アミン系酸化防止剤10.0g及
びスルフォネート系防錆剤10.0gを加え、ミル処理
及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。生成した増
ちょう剤であるN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナ
トリウムとジウレアとの重量比は、50:50であっ
た。 〔実施例A5〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル94.0gを、250.0gのジアルキ
ルジフェニルエーテルとポリ−α−オレフィンとの混合
基油(40℃における動粘度は92.2mm2 /s)に
加え、130℃に加熱して溶解した。その後、100℃
以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液19.4
gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐々に加熱し、
けん化を行った。
【0051】けん化終了後、150℃においてさらに前
記混合基油250.0gを加え、200℃まで加熱し
た。そして、60℃まで冷却し、ジフェニルメタン−
4,4’−ジイソシアネート10.5gを加えて完全に
溶解させた後、ステアリルアミン24.1gと前記混合
基油341.7gを加え撹拌した。100℃で60分間
保持した後、120℃まで加熱して反応を終了させた。
【0052】その後、アミン系酸化防止剤10.0g及
びスルフォネート系防錆剤10.0gを加え、ミル処理
及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。生成した増
ちょう剤であるN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナ
トリウムとジウレアとの重量比は、75:25であっ
た。 〔実施例A6〕ジアルキルジフェニルエーテルの代わり
にペンタエリスリトールのテトラエステル(40℃にお
ける動粘度は70.3mm2 /s)を使用した以外は、
実施例A1と全く同様にしてグリース組成物を得た。
【0053】このグリース組成物について、欧州規格諮
問委員会規格(CEC)のL−33−T−82に規定さ
れた生分解度を測定したところ93%で、優れた生分解
性を有していた。 〔実施例A7〕ジアルキルジフェニルエーテルの代わり
にペンタエリスリトールのテトラエステル(40℃にお
ける動粘度は70.3mm2 /s)を使用した以外は、
実施例A2と全く同様にしてグリース組成物を得た。
【0054】このグリース組成物について、CECのL
−33−T−82に規定された生分解度を測定したとこ
ろ90%で、優れた生分解性を有していた。 〔実施例A8〕ジアルキルジフェニルエーテルの代わり
にペンタエリスリトールのテトラエステル(40℃にお
ける動粘度は70.3mm2 /s)を使用した以外は、
実施例A3と全く同様にしてグリース組成物を得た。
【0055】このグリース組成物について、CECのL
−33−T−82に規定された生分解度を測定したとこ
ろ92%で、優れた生分解性を有していた。 〔比較例A1〕500.0gのジアルキルジフェニルエ
ーテル(40℃における動粘度は97.5mm2 /s)
に、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート1
02.0gを加えて完全に溶解させた後、シクロヘキシ
ルアミン88.0gとジアルキルジフェニルエーテル2
90.0gを加え撹拌した。100℃で60分間保持し
た後、150℃まで加熱して反応を終了させた。
【0056】その後、アミン系酸化防止剤10.0g及
びスルフォネート系防錆剤10.0gを加え、ミル処理
及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。 〔比較例A2〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル85.7gを、500.0gのジアルキ
ルジフェニルエーテル(40℃における動粘度は97.
5mm 2 /s)に加え、130℃に加熱して溶解した。
その後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウ
ム水溶液18.6gを加えた。そして、十分撹拌しなが
ら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0057】けん化終了後、150℃においてさらにジ
アルキルジフェニルエーテル385.0gを加え、20
0℃まで加熱した。冷却後、アミン系酸化防止剤10.
0g及びスルフォネート系防錆剤10.0gを加え、ミ
ル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得た。 〔比較例A3〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル85.7gを、500.0gのパラフィ
ン系鉱油(40℃における動粘度は100.2mm2
s)に加え、130℃に加熱して溶解した。その後、1
00℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液1
8.6gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐々に加
熱し、けん化を行った。
【0058】けん化終了後、150℃においてさらにパ
ラフィン系鉱油385.0gを加え、200℃まで加熱
した。冷却後、アミン系酸化防止剤10.0g及びスル
フォネート系防錆剤10.0gを加え、ミル処理及び脱
泡処理を行いグリース組成物を得た。 〔比較例A4〜A6〕3種の市販品のグリース組成物を
用意した。比較例A4のグリース組成物は、増ちょう剤
がウレア系化合物で、基油がジアルキルジフェニルエー
テルである。また、比較例A5のグリース組成物は、増
ちょう剤がウレア系化合物で、基油がペンタエリスリト
ールのテトラエステルである。さらに、比較例A6のグ
リース組成物は、増ちょう剤がN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムで、基油がペンタエリスリトー
ルのテトラエステルである。
【0059】これら14種のグリース組成物(実施例A
1〜A8及び比較例A1〜A6)について、混和ちょう
度,滴点,及び油分離率を測定した(JIS K222
0による)。結果を表1及び表2にまとめて示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】実施例A1〜A8のグリース組成物は、増
ちょう剤がN−オクタデシルテレフタルアミド酸ナトリ
ウムのみである比較例A2,A3,及びA6のグリース
組成物と比較して滴点及び油分離率が優れており、高温
性能が優れていることが分かる。また、これらのグリー
ス組成物の潤滑寿命を併せて評価した。以下にその方法
を説明する。
【0063】14種のグリース組成物5gをそれぞれ転
がり軸受に封入し、図1に示すようなASTM D 1
741の軸受寿命試験機に類似の試験機に装着した。そ
して、温度150℃、ラジアル荷重98N、アキシアル
荷重294Nの下で1000rpmの回転速度で回転さ
せ、モータが過負荷にて停止した時間、又は軸受の温度
が160℃を超えた時間を寿命とした。
【0064】ここで、試験に使用した転がり軸受の構成
について、図2の部分縦断面図を参照しながら説明す
る。この転がり軸受(呼び番号6306VV,内径30
mm,外径72mm,幅19mm)は、 内輪1と、外
輪2と、内輪1と外輪2との間に転動自在に配設された
複数の玉3と、内輪1と外輪2との間に複数の玉3を保
持する保持器4と、非接触形のゴムシール5,5と、で
構成されている。
【0065】ゴムシール5は外輪2のシールみぞ2aに
取り付けられていて、内輪1の外周面と外輪2の内周面
との間の開口部分をほぼ覆っている。そして、内輪1と
外輪2との間に形成され玉3が内設された空隙部内には
グリース組成物Gが充填され、シール5,5により軸受
内部に密封されている。なお、ゴムシール5は接触形で
もよい。
【0066】潤滑寿命の試験結果を表1及び表2に示
す。なお、表に示した数値は、1種の軸受につき10個
ずつ試験を行って、ワイブル分布曲線から求めたL50寿
命である。また、ここで言う潤滑寿命とは、軸受自体の
転がり疲れ寿命ではなく、グリース組成物の劣化等が原
因で軸受が回転不能等に至るグリースの寿命を言う。表
1及び表2から分かるように、実施例A1〜A8のグリ
ース組成物は比較例A1〜A6のグリース組成物と比較
して潤滑寿命が優れており、高温下においても長寿命で
あった。 (第二増ちょう剤成分として金属石けんを用いたグリー
ス組成物について) 〔実施例B1〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル27.1gを150.0gのパラフィン
系鉱油(40℃における動粘度は120mm2 /s)に
加え、130℃に加熱して溶解した。その後、100℃
以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液5.9g
を加えた。そして、十分撹拌しながら徐々に加熱し、け
ん化を行った。
【0067】けん化終了後、150℃においてさらにパ
ラフィン系鉱油150.0gを加え、200℃まで加熱
した。そして、60℃まで冷却し、12−ヒドロキシス
テアリン酸27.9gを加えて完全に溶解させた後、5
0%水酸化リチウム水溶液4.5gとパラフィン系鉱油
132.5gを加え撹拌した。100℃で60分間保持
した後、200℃まで加熱して反応を終了させた。
【0068】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムと12−ヒドロキシステアリン
酸リチウムとの重量比は、50:50であった。
【0069】〔実施例B2〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル67.7gを150.0g
のジエステル油(ジトリデシルアジペート、40℃にお
ける動粘度は26.1mm2 /s)に加え、130℃に
加熱して溶解した。その後、100℃以下に冷却し、5
0%水酸化ナトリウム水溶液14.7gを加えた。そし
て、十分撹拌しながら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0070】けん化終了後、150℃においてさらにジ
エステル油100.0gを加え、200℃まで加熱し
た。そして、60℃まで冷却し、12−ヒドロキシステ
アリン酸9.3gを加えて完全に溶解させた後、50%
水酸化リチウム水溶液1.5gとジエステル油155g
を加え撹拌した。100℃で60分間保持した後、20
0℃まで加熱して反応を終了させた。
【0071】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムと12−ヒドロキシステアリン
酸リチウムとの重量比は、88:12であった。
【0072】〔実施例B3〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル67.7gを150.0g
のポリα−オレフィン油(40℃における動粘度は60
mm2 /s)に加え、130℃に加熱して溶解した。そ
の後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム
水溶液14.6gを加えた。そして、十分撹拌しながら
徐々に加熱し、けん化を行った。
【0073】けん化終了後、150℃においてさらにポ
リα−オレフィン油100.0gを加え、200℃まで
加熱した。そして、60℃まで冷却し、12−ヒドロキ
システアリン酸46.3gを加えて完全に溶解させた
後、50%水酸化リチウム水溶液7.4gとポリα−オ
レフィン油117.5gを加え撹拌した。100℃で6
0分間保持した後、200℃まで加熱して反応を終了さ
せた。
【0074】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムと12−ヒドロキシステアリン
酸リチウムとの重量比は、67:33であった。
【0075】〔実施例B4〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル22.6gを150.0g
のジアルキルジフェニルエーテル油(40℃における動
粘度は97.5mm 2 /s)に加え、130℃に加熱し
て溶解した。その後、100℃以下に冷却し、50%水
酸化ナトリウム水溶液4.9gを加えた。そして、十分
撹拌しながら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0076】けん化終了後、150℃においてさらにジ
アルキルジフェニルエーテル油100.0gを加え、2
00℃まで加熱した。そして、60℃まで冷却し、12
−ヒドロキシステアリン酸37.0gを加えて完全に溶
解させた後、50%水酸化リチウム水溶液6.0gとジ
アルキルジフェニルエーテル油127.5gを加え撹拌
した。100℃で60分間保持した後、200℃まで加
熱して反応を終了させた。
【0077】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムと12−ヒドロキシステアリン
酸リチウムとの重量比は、61:39であった。
【0078】〔実施例B5〕ジアルキルジフェニルエー
テル油の代わりにペンタエリスリトールエステル油(4
0℃における動粘度は34mm2 /s)を使用した以外
は、実施例B4と全く同様にしてグリース組成物を得
た。このグリース組成物について、欧州規格諮問委員会
規格(CEC)のL−33−T−82に規定された生分
解度を測定したところ96%で、優れた生分解性を有し
ていた。
【0079】〔実施例B6〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル18.0gを150.0g
のペンタエリスリトールエステル油(40℃における動
粘度は34mm2 /s)に加え、130℃に加熱して溶
解した。その後、100℃以下に冷却し、50%水酸化
ナトリウム水溶液3.9gを加えた。そして、十分撹拌
しながら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0080】けん化終了後、150℃においてさらにペ
ンタエリスリトールエステル油100.0gを加え、2
00℃まで加熱した。そして、60℃まで冷却し、12
−ヒドロキシステアリン酸32.4gを加えて完全に溶
解させた後、50%水酸化リチウム水溶液5.2gとペ
ンタエリスリトールエステル油160.0g及びパラフ
ィン系鉱油(40℃における動粘度は120mm2
s)27.5gを加え撹拌した。100℃で60分間保
持した後、200℃まで加熱して反応を終了させた。
【0081】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムと12−ヒドロキシステアリン
酸リチウムとの重量比は、36:64であった。
【0082】また、このグリース組成物について、欧州
規格諮問委員会規格(CEC)のL−33−T−82に
規定された生分解度を測定したところ93%で、優れた
生分解性を有していた。 〔実施例B7〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル45.1gを150.0gのペンタエリ
スリトールエステル油(40℃における動粘度は34m
2 /s)に加え、130℃に加熱して溶解した。その
後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水
溶液9.8gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐々
に加熱し、けん化を行った。
【0083】けん化終了後、150℃においてさらにペ
ンタエリスリトールエステル油142.0gを加え、2
00℃まで加熱した。そして、60℃まで冷却し、12
−ヒドロキシステアリン酸23.2gを加えて完全に溶
解させた後、50%水酸化リチウム水溶液3.7gとジ
エステル油(ジトリデシルアジペート、40℃における
動粘度は26.1mm2 /s)75.0gを加え撹拌し
た。100℃で60分間保持した後、200℃まで加熱
して反応を終了させた。
【0084】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムと12−ヒドロキシステアリン
酸リチウムとの重量比は、67:33であった。
【0085】また、このグリース組成物について、欧州
規格諮問委員会規格(CEC)のL−33−T−82に
規定された生分解度を測定したところ82%で、優れた
生分解性を有していた。 〔比較例B1〕12−ヒドロキシステアリン酸44.0
gを200.0gのパラフィン系鉱油(40℃における
動粘度は120mm2 /s)に加えて完全に溶解させた
後、50%水酸化リチウム水溶液7.0gとパラフィン
系鉱油245.0gとを加え撹拌した。100℃で60
分間保持した後、200℃まで加熱して反応を終了させ
た。
【0086】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。 〔比較例B2〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル54.2gを200.0gのパラフィン
系鉱油(40℃における動粘度は120mm2 /s)に
加え、130℃に加熱して溶解した。その後、100℃
以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液11.7
gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐々に加熱し、
けん化を行った。けん化終了後、150℃においてさら
にパラフィン系鉱油232.5gを加え、200℃まで
加熱した。
【0087】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。 〔比較例B3〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル117.3gを150.0gのジエステ
ル油(ジトリデシルアジペート、40℃における動粘度
は26.1mm2 /s)に加え、130℃に加熱して溶
解した。その後、100℃以下に冷却し、50%水酸化
ナトリウム水溶液25.4gを加えた。そして、十分撹
拌しながら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0088】けん化終了後、150℃においてさらにジ
エステル油100.0gを加え、200℃まで加熱し
た。そして、60℃まで冷却し、12−ヒドロキシステ
アリン酸69.5gを加えて完全に溶解させた後、50
%水酸化リチウム水溶液11.1gとジエステル油3
7.5gを加え撹拌した。100℃で60分間保持した
後、200℃まで加熱して反応を終了させた。
【0089】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムと12−ヒドロキシステアリン
酸リチウムとの重量比は、63:37であった。
【0090】これら10種のグリース組成物(実施例B
1〜B7及び比較例B1〜B3)について、混和ちょう
度及び滴点を測定した(JIS K2220による)。
結果を表3及び表4にまとめて示す。また、これらのグ
リース組成物の潤滑寿命を前述と同様の方法(図1の試
験機を用いた回転試験)により評価した結果を、表3及
び表4に併せて示す。ただし、試験温度は120℃と
し、モータが過負荷にて停止した時間、又は軸受の温度
が130℃を超えた時間を寿命とした。そして、各グリ
ース組成物の寿命は、比較例B1の寿命を1とした場合
の相対値示してある。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】表から分かるように、実施例B1〜B7の
グリース組成物は、増ちょう剤としてN−オクタデシル
テレフタルアミド酸ナトリウム及び12−ヒドロキシス
テアリン酸リチウム(金属石けん)を用いたので、いず
れか一方のみの比較例B1,B2のグリース組成物と比
較して、高温での潤滑寿命が優れており、高温下におい
ても長寿命であった。ただし、比較例B3のように増ち
ょう剤の量が多すぎると、高温での潤滑寿命が不十分で
あった。
【0094】また、実施例B5〜B7のグリース組成物
のように、基油がネオペンチル型ポリオールエステル油
を80質量%以上含有している場合には、グリース組成
物の生分解性が優れており、90質量%以上含有してい
る場合には生分解性が特に優れていた。 (第二増ちょう剤成分として金属複合石けんを用いたグ
リース組成物について) 〔実施例C1〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル27.1gを150.0gのパラフィン
系鉱油(40℃における動粘度は120mm2 /s)に
加え、130℃に加熱して溶解した。その後、100℃
以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水溶液5gを加
えた。そして、十分撹拌しながら徐々に加熱し、けん化
を行った。
【0095】けん化終了後、150℃においてさらにパ
ラフィン系鉱油150.0gを加え、200℃まで加熱
した。そして、60℃まで冷却し、12−ヒドロキシス
テアリン酸20.9gを加え、90℃に加熱して完全に
溶解させた後、50%水酸化リチウム水溶液3.3gと
パラフィン系鉱油132.5gとを加え撹拌した。そし
てさらに、アゼライン酸6.7gを加え、50%水酸化
リチウム水溶液3.4gを滴下しながら撹拌してリチウ
ムコンプレックス石けんを得た。得られたものを100
℃で60分間保持した後、200℃まで加熱して反応を
完全に終了させた。
【0096】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムとリチウムコンプレックス石け
ん(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム及びアゼラ
イン酸リチウム)との重量比は、約50:50であっ
た。
【0097】〔実施例C2〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル67.7gを150.0g
のジエステル油(ジトリデシルアジペート、40℃にお
ける動粘度は26.1mm2 /s)に加え、130℃に
加熱して溶解した。その後、100℃以下に冷却し、5
0%水酸化ナトリウム水溶液12.6gを加えた。そし
て、十分撹拌しながら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0098】けん化終了後、150℃においてさらにジ
エステル油100.0gを加え、200℃まで加熱し
た。そして、60℃まで冷却し、12−ヒドロキシステ
アリン酸7.0gを加え、90℃に加熱して完全に溶解
させた後、50%水酸化リチウム水溶液1.1gとジエ
ステル油125.0gとを加え撹拌した。そしてさら
に、アゼライン酸2.2gを加え、50%水酸化リチウ
ム水溶液1.1gを滴下しながら撹拌してリチウムコン
プレックス石けんを得た。得られたものを100℃で6
0分間保持した後、200℃まで加熱して反応を完全に
終了させた。
【0099】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムとリチウムコンプレックス石け
んとの重量比は、88:12であった。
【0100】〔実施例C3〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル67.7gを150.0g
のポリα−オレフィン油(40℃における動粘度は60
mm2 /s)に加え、130℃に加熱して溶解した。そ
の後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム
水溶液12.6gを加えた。そして、十分撹拌しながら
徐々に加熱し、けん化を行った。
【0101】けん化終了後、150℃においてさらにポ
リα−オレフィン油100.0gを加え、200℃まで
加熱した。そして、60℃まで冷却し、12−ヒドロキ
システアリン酸34.7gを加え、90℃に加熱して完
全に溶解させた後、50%水酸化リチウム水溶液5.5
gとポリα−オレフィン油94.5gとを加え撹拌し
た。そしてさらに、アゼライン酸11.6gを加え、5
0%水酸化リチウム水溶液5.9gを滴下しながら撹拌
してリチウムコンプレックス石けんを得た。得られたも
のを100℃で60分間保持した後、200℃まで加熱
して反応を完全に終了させた。
【0102】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムとリチウムコンプレックス石け
んとの重量比は、60:40であった。
【0103】〔実施例C4〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル22.6gを150.0g
のジアルキルジフェニルエーテル油(40℃における動
粘度は97.5mm 2 /s)に加え、130℃に加熱し
て溶解した。その後、100℃以下に冷却し、50%水
酸化ナトリウム水溶液4.2gを加えた。そして、十分
撹拌しながら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0104】けん化終了後、150℃においてさらにジ
アルキルジフェニルエーテル油100.0gを加え、2
00℃まで加熱した。そして、60℃まで冷却し、12
−ヒドロキシステアリン酸27.8gを加え、90℃に
加熱して完全に溶解させた後、50%水酸化リチウム水
溶液4.4gとジアルキルジフェニルエーテル油14
1.5gとを加え撹拌した。そしてさらに、アゼライン
酸9.3gを加え、50%水酸化リチウム水溶液4.7
gを滴下しながら撹拌してリチウムコンプレックス石け
んを得た。得られたものを100℃で60分間保持した
後、200℃まで加熱して反応を完全に終了させた。
【0105】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムとリチウムコンプレックス石け
んとの重量比は、37:63であった。
【0106】〔実施例C5〕ジアルキルジフェニルエー
テル油の代わりにペンタエリスリトールエステル油(4
0℃における動粘度は34mm2 /s)を使用した以外
は、実施例C4と全く同様にしてグリース組成物を得
た。このグリース組成物について、欧州規格諮問委員会
規格(CEC)のL−33−T−82に規定された生分
解度を測定したところ96%で、優れた生分解性を有し
ていた。
【0107】〔実施例C6〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル18.0gを150.0g
のペンタエリスリトールエステル油(40℃における動
粘度は34mm2 /s)に加え、130℃に加熱して溶
解した。その後、100℃以下に冷却し、50%水酸化
ナトリウム水溶液3.3gを加えた。そして、十分撹拌
しながら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0108】けん化終了後、150℃においてさらにペ
ンタエリスリトールエステル油100.0gを加え、2
00℃まで加熱した。そして、60℃まで冷却し、12
−ヒドロキシステアリン酸24.3gを加え、90℃に
加熱して完全に溶解させた後、50%水酸化リチウム水
溶液3.9gとペンタエリスリトールエステル油16
0.0g及びパラフィン系鉱油(40℃における動粘度
は120mm2 /s)27.5gとを加え撹拌した。そ
してさらに、アゼライン酸8.1gを加え、50%水酸
化リチウム水溶液2.1gを滴下しながら撹拌してリチ
ウムコンプレックス石けんを得た。得られたものを10
0℃で60分間保持した後、200℃まで加熱して反応
を完全に終了させた。
【0109】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムとリチウムコンプレックス石け
んとの重量比は、50:50であった。
【0110】また、このグリース組成物について、欧州
規格諮問委員会規格(CEC)のL−33−T−82に
規定された生分解度を測定したところ93%で、優れた
生分解性を有していた。 〔実施例C7〕基油の組成を変更した以外は、実施例C
6と全く同様にしてグリース組成物を得た。すなわち、
パラフィン系鉱油の割合を多くして、ペンタエリスリト
ールエステル油の基油全体における含有量を約80質量
%とした。
【0111】このグリース組成物について、欧州規格諮
問委員会規格(CEC)のL−33−T−82に規定さ
れた生分解度を測定したところ81%で、優れた生分解
性を有していた。 〔比較例C1〕12−ヒドロキシステアリン酸33.0
gを200.0gのパラフィン系鉱油(40℃における
動粘度は120mm2 /s)に加えて完全に溶解させた
後、50%水酸化リチウム水溶液5.3gとパラフィン
系鉱油247.0gとを加え撹拌した。
【0112】そこに、アゼライン酸11gを加え、50
%水酸化リチウム水溶液5.6gを滴下しながら撹拌し
てリチウムコンプレックス石けんを得た。そして、10
0℃で60分間保持した後、200℃まで加熱して反応
を完全に終了させた。その後、添加剤として2,6−ジ
−t−ブチル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチ
ルアミン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.
5g加え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物
を得た。
【0113】〔比較例C2〕N−オクタデシルテレフタ
ルアミド酸のメチルエステル54.2gを200.0g
のパラフィン系鉱油(40℃における動粘度は120m
2 /s)に加え、130℃に加熱して溶解した。その
後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナトリウム水
溶液11.5gを加えた。そして、十分撹拌しながら徐
々に加熱し、けん化を行った。けん化終了後、150℃
においてさらにパラフィン系鉱油232.5gを加え、
200℃まで加熱した。
【0114】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。 〔比較例C3〕N−オクタデシルテレフタルアミド酸の
メチルエステル72.2gを150.0gのジエステル
油(ジトリデシルアジペート、40℃における動粘度は
26.1mm2 /s)に加え、130℃に加熱して溶解
した。その後、100℃以下に冷却し、50%水酸化ナ
トリウム水溶液13.4gを加えた。そして、十分撹拌
しながら徐々に加熱し、けん化を行った。
【0115】けん化終了後、150℃においてさらにジ
エステル油100.0gを加え、200℃まで加熱し
た。そして、60℃まで冷却し、12−ヒドロキシステ
アリン酸52.1gを加えて完全に溶解させた後、50
%水酸化リチウム水溶液8.3gとジエステル油87.
5gとを加え撹拌した。そしてさらに、アゼライン酸1
7.3gを加え、50%水酸化リチウム水溶液8.8g
を滴下しながら撹拌してリチウムコンプレックス石けん
を得た。得られたものを100℃で60分間保持した
後、200℃まで加熱して反応を完全に終了させた。
【0116】その後、添加剤として2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、フェニル−α−ナフチルアミ
ン、及びソルビタンモノオレートをそれぞれ2.5g加
え、ミル処理及び脱泡処理を行いグリース組成物を得
た。生成した増ちょう剤であるN−オクタデシルテレフ
タルアミド酸ナトリウムとリチウムコンプレックス石け
んとの重量比は、51:49であった。
【0117】また、このグリース組成物について、欧州
規格諮問委員会規格(CEC)のL−33−T−82に
規定された生分解度を測定したところ78%で、優れた
生分解性を有していた。これら10種のグリース組成物
(実施例C1〜C7及び比較例C1〜C3)について、
混和ちょう度及び滴点を測定した(JIS K2220
による)。また、JIS K2220 5.7に記載さ
れる試験法に準拠して、150℃雰囲気中にグリース組
成物を24時間放置した後に、離油度を測定した。これ
らの結果を表5及び表6にまとめて示す。
【0118】さらに、これらのグリース組成物の潤滑寿
命を前述と同様の方法(図1の試験機を用いた回転試
験)により評価した結果を、表5及び表6に併せて示
す。ただし、試験温度は140℃とし、モータが過負荷
にて停止した時間、又は軸受の温度が150℃を超えた
時間を寿命とした。そして、各グリース組成物の寿命
は、比較例C1の寿命を1とした場合の相対値示してあ
る。
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】表から分かるように、実施例C1〜C7の
グリース組成物は、増ちょう剤としてN−オクタデシル
テレフタルアミド酸ナトリウム及びリチウムコンプレッ
クス石けん(金属複合石けん)を用いたので、いずれか
一方のみの比較例C1,C2のグリース組成物と比較し
て、高温での潤滑寿命が優れており、高温下においても
長寿命であった。
【0122】また、実施例C5〜C7のグリース組成物
のように、基油がネオペンチル型ポリオールエステル油
を80質量%以上含有している場合には、グリース組成
物の生分解性が優れており、90質量%以上含有してい
る場合には生分解性が特に優れていた。なお、本実施形
態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実
施形態に限定されるものではない。
【0123】例えば、本実施形態においては、転動装置
の例として深みぞ玉軸受をあげて説明したが、本発明
は、他の種類の様々な転がり軸受に対して適用すること
ができる。例えば、アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸
受,円筒ころ軸受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自
動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラス
ト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸
受である。
【0124】また、本発明は、転がり軸受に限らず、他
の種類の様々な転動装置に対して適用することができ
る。例えば、ボールねじ,リニアガイド装置,直動ベア
リング等である。
【0125】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る請求項1〜
6のグリース組成物は、耐熱性,酸化安定性に優れてい
るため、高温下においても長寿命である。また、本発明
に係る請求項7〜9のグリース組成物は、耐熱性,酸化
安定性に優れていることに加えて、優れた生分解性を有
している。よって、自然環境に放出されたとしても、自
然環境に悪影響を及ぼしにくい。さらに、本発明に係る
請求項10の転動装置は、長寿命であり、また、自然環
境に悪影響を及ぼしにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】グリース組成物の潤滑寿命を評価する軸受寿命
試験機の構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る転動装置の一実施形態である転が
り軸受の構成を示す部分縦断面図である。
【符号の説明】
1 内輪 2 外輪 3 玉 G グリース組成物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16C 33/66 F16C 33/66 Z // C10N 10:02 C10N 10:02 30:08 30:08 30:10 30:10 40:02 40:02 50:10 50:10 (72)発明者 外尾 道太 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J101 AA02 AA32 AA42 AA52 AA62 BA80 CA32 EA64 FA06 FA32 4H104 BA07A BB08A BB18B BB19B BB33A BB34A BE11B BE13B DA02A FA01 QA18

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基油と増ちょう剤とを含有するグリース
    組成物において、前記増ちょう剤をN−置換テレフタル
    アミド酸金属塩と第二増ちょう剤成分とで構成したこと
    を特徴とするグリース組成物。
  2. 【請求項2】 前記第二増ちょう剤成分をポリウレアと
    したことを特徴とする請求項1に記載のグリース組成
    物。
  3. 【請求項3】 前記第二増ちょう剤成分を金属石けんと
    したことを特徴とする請求項1に記載のグリース組成
    物。
  4. 【請求項4】 前記第二増ちょう剤成分を金属複合石け
    んとしたことを特徴とする請求項1に記載のグリース組
    成物。
  5. 【請求項5】 前記増ちょう剤を、N−置換テレフタル
    アミド酸金属塩5〜95質量%と、前記第二増ちょう剤
    成分95〜5質量%と、で構成したことを特徴とする請
    求項1〜4のいずれかに記載のグリース組成物。
  6. 【請求項6】 前記増ちょう剤の含有量を組成物全体の
    3〜40質量%としたことを特徴とする請求項1〜5の
    いずれかに記載のグリース組成物。
  7. 【請求項7】 前記基油はネオペンチル型ポリオールエ
    ステル油を含有しており、その含有量は基油全体の80
    質量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいず
    れかに記載のグリース組成物。
  8. 【請求項8】 前記基油80〜97質量部と、前記増ち
    ょう剤3〜20質量部と、を含有することを特徴とする
    請求項7に記載のグリース組成物。
  9. 【請求項9】 欧州規格諮問委員会規格のL−33−T
    −82に規定された生分解度が80%以上であることを
    特徴とする請求項7又は請求項8に記載のグリース組成
    物。
  10. 【請求項10】 内方部材と、外方部材と、前記内方部
    材と前記外方部材との間に転動自在に配設された複数の
    転動体と、を備える転動装置において、前記内方部材と
    前記外方部材との間に形成され前記転動体が内設された
    空隙部内に、請求項1〜9のいずれかに記載のグリース
    組成物を充填したことを特徴とする転動装置。
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CN108728202A (zh) * 2017-04-19 2018-11-02 科聚亚(南京)化工有限公司 聚脲/高碱值磺酸钙复合润滑脂

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