JP2006242331A - ロボット用転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】
断続的に加速度や減速度が加えられる産業用ロボットの回転部に用いた場合でも、水素脆性による転がり軸受転走面での剥離を効果的に防止できるロボット用転がり軸受の提供を目的とする。
【解決手段】
ロボット用転がり軸受は、該軸受に封入されたグリース組成物が、基油に、増ちょう剤と添加剤とを配合してなり、該添加剤が少なくともモリブデン酸塩、またはモリブデン酸塩および有機酸塩を含み、上記モリブデン酸塩がモリブデン酸のアルカリ金属塩であり、該アルカリ金属塩がモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよびモリブデン酸リチウムから選ばれた少なくとも一つのモリブデン酸のアルカリ金属塩であり、上記有機酸塩が炭素数 1 から炭素数 20 の有機酸のアルカリ金属塩である。
【選択図】図1
断続的に加速度や減速度が加えられる産業用ロボットの回転部に用いた場合でも、水素脆性による転がり軸受転走面での剥離を効果的に防止できるロボット用転がり軸受の提供を目的とする。
【解決手段】
ロボット用転がり軸受は、該軸受に封入されたグリース組成物が、基油に、増ちょう剤と添加剤とを配合してなり、該添加剤が少なくともモリブデン酸塩、またはモリブデン酸塩および有機酸塩を含み、上記モリブデン酸塩がモリブデン酸のアルカリ金属塩であり、該アルカリ金属塩がモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよびモリブデン酸リチウムから選ばれた少なくとも一つのモリブデン酸のアルカリ金属塩であり、上記有機酸塩が炭素数 1 から炭素数 20 の有機酸のアルカリ金属塩である。
【選択図】図1
Description
本発明はロボット用転がり軸受に関し、特に産業用ロボットの作動部位に用いられる転がり軸受に関する。
自動車の製造ラインには組み立て、溶接、塗装などのさまざまな産業用ロボットが用いられている。生産性の向上を目的としたタクトタイムの短縮のため、ロボットの運動速度が高められる傾向にある。ロボットの作動は連続回転ではなく、断続的な作動であり、この作動速度を速めることは、回転部に用いられる転がり軸受にとっては、単位時間当りの停止−起動−運転−停止動作の切換えの回数が増加し、その都度転がり軸受に加えられる加速度や減速度が大きくなり、それにともない軸受に生じるすべりが大きくなってきている。このように使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化をともなった特異的な剥離が生じ、問題になっている。
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性と考えられている。
このような早期に発生する白色組織変化をともなった特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、近年の産業用ロボットに用いられる転がり軸受の使用条件が過酷になるにつれて、不動態化剤を添加する方法では充分な対策ができなくなってきている。
特開平3−210394号公報
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性と考えられている。
このような早期に発生する白色組織変化をともなった特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、近年の産業用ロボットに用いられる転がり軸受の使用条件が過酷になるにつれて、不動態化剤を添加する方法では充分な対策ができなくなってきている。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、断続的に加速度や減速度が加えられる産業用ロボットの回転部に用いた場合でも、水素脆性による転がり軸受転走面での剥離を効果的に防止できるロボット用転がり軸受の提供を目的とする。
本発明のロボット用転がり軸受は、産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持するロボット用転がり軸受であって、上記転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物を封止するためのシール部材を上記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けてなり、上記グリース組成物は、基油に、増ちょう剤と添加剤とを配合してなるグリース組成物であって、上記添加剤は少なくともモリブデン酸塩を含むことを特徴とする。
上記モリブデン酸塩は、モリブデン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする。
上記モリブデン酸のアルカリ金属塩は、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよびモリブデン酸リチウムから選ばれた少なくとも一つのモリブデン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする。
上記モリブデン酸塩は、モリブデン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする。
上記モリブデン酸のアルカリ金属塩は、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよびモリブデン酸リチウムから選ばれた少なくとも一つのモリブデン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする。
上記モリブデン酸塩は、 基油および増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して、0.01〜10 重量部配合されてなることを特徴とする。
上記添加剤は、有機酸塩を含むことを特徴とする。また、上記有機酸塩は、炭素数 1 から炭素数 20 の有機酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする。
基油および増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して、上記モリブデン酸塩が 0.01〜5 重量部、該モリブデン酸塩の添加量 100 重量部に対して、上記有機酸塩が 5〜70 重量部配合されてなることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする。
産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持するロボット用転がり軸受であって、該軸受に封入されたグリース組成物が、軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において酸化鉄とともにモリブデン化合物を含有する膜を形成できるモリブデン酸塩と該膜の形成を促進する有機酸塩とを含有することを特徴とする。
本発明のロボット用転がり軸受は、該軸受に封入されたグリース組成物が、基油と増ちょう剤とからなるグリースに少なくともモリブデン酸塩を配合するので、単位時間当りの停止−起動−運転−停止動作の切換えの回数が多く、その都度転がり軸受に加えられる加速度や減速度が大きくなることを原因とする、ロボットに使用される転がり軸受で見られる水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができ、ロボット用転がり軸受の長寿命化が可能となる。
産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持するロボット用転がり軸受の一例を図1に示す。図1はグリース組成物が封入されている深溝玉軸受の断面図である。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。
ロボット用転がり軸受において、水素脆性による転走面での剥離を防止すべく鋭意検討した結果、モリブデン酸塩を配合したグリース組成物を封入したロボット用転がり軸受は、軸受寿命が延長することがわかった。この軸受転走面を観察したところ、配合されたモリブデン酸塩が軸受の摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面で分解・反応し、軸受転走面に酸化鉄とともにモリブデン化合物を含有する膜が生成していることを見出した。この生成された膜が、潤滑油の分解により発生した水素の軸受鋼内への侵入を防止し、水素脆性による剥離が抑制されるものと考えられる。
また、モリブデン酸塩と有機酸塩とを併用した場合は、モリブデン酸塩のみを配合した場合に比較して、酸化膜が厚く、モリブデン含有量が多いことがわかった。よって、有機酸塩は、軸受転走面への酸化鉄およびモリブデン化合物被膜の生成を助長する作用があるものと考えられる。本発明はこれらの知見に基づくものである。
また、モリブデン酸塩と有機酸塩とを併用した場合は、モリブデン酸塩のみを配合した場合に比較して、酸化膜が厚く、モリブデン含有量が多いことがわかった。よって、有機酸塩は、軸受転走面への酸化鉄およびモリブデン化合物被膜の生成を助長する作用があるものと考えられる。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明に使用できるモリブデン酸塩は、金属塩であることが好ましい。金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛、バリウム等が例示できる。
軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において反応して、酸化鉄とともにモリブデン化合物を含有する膜を形成しやすい金属としてはアルカリ金属であることから、本発明においては、モリブデン酸塩のアルカリ金属塩が好ましい。好適なアルカリ金属のモリブデン酸塩はモリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウムまたはモリブデン酸カリウムが挙げられ、これらは単独でも混合物としても使用できる。
軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において反応して、酸化鉄とともにモリブデン化合物を含有する膜を形成しやすい金属としてはアルカリ金属であることから、本発明においては、モリブデン酸塩のアルカリ金属塩が好ましい。好適なアルカリ金属のモリブデン酸塩はモリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウムまたはモリブデン酸カリウムが挙げられ、これらは単独でも混合物としても使用できる。
本発明に使用できる有機酸塩は、芳香族系有機酸、脂肪族系有機酸、または脂環族系有機酸等の塩であればいずれも使用できる。また、有機酸としては一塩基性、多塩基性有機酸を使用できる。これらの中で特に炭素数 1 から炭素数 20 を有する化学構造の有機酸がモリブデン化合物を含有する膜生成を助長するので好ましい。
有機酸の具体例を例示すれば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキン酸等の1価飽和脂肪酸、アクリル酸、クロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ガドレイン酸等の1価不飽和脂肪酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸、ピメリン酸、テトラメチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の2価飽和脂肪酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸等の2価不飽和脂肪酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪酸誘導体、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族有機酸が挙げられる。
有機酸はリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であることが好ましく、アルカリ金属塩の中でもナトリウム塩がより好ましい。好ましい有機酸のナトリウム塩としては、安息香酸ナトリウム、セバシン酸一ナトリウム塩、セバシン酸二ナトリウム塩、コハク酸一ナトリウム塩、コハク酸二ナトリウム塩が挙げられる。
本発明に使用できる基油は、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高精製度鉱油、流動パラフィン、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、ポリブテン、ポリαオレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂、ポリオールエステル油、リン酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等を使用できる。
本発明に使用できる増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
ウレア系化合物は、例えば、ジウレア化合物、ポリウレア化合物が挙げられる。ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
ウレア化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物を反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
基油にウレア化合物を配合して各種配合剤を配合するためのベースグリースが得られる。ベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
基油にウレア化合物を配合して各種配合剤を配合するためのベースグリースが得られる。ベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
ベースグリースにおける増ちょう剤の配合割合は、ベースグリース全体 100 重量部に対して、増ちょう剤が 1〜40 重量部、好ましくは 3〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
モリブデン酸塩の配合割合は、基油および増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して、0.01〜10 重量部 である。また、モリブデン酸塩を有機酸塩とともに用いる場合は、基油および増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して、上記モリブデン酸塩が 0.01〜5 重量部、該モリブデン酸塩の添加量 100 重量部に対して、上記有機酸塩が 5〜70 重量部配合される。モリブデン酸塩および有機酸塩の配合割合が上記配合範囲未満だと水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また上記範囲をこえても剥離防止効果がそれ以上に向上しない。
また、モリブデン酸塩および有機酸塩の混合配合剤とともに、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系、イオウ系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、リン系などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独または 2 種類以上組み合せて添加できる。
本発明に使用するグリース組成物は、水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができるので、グリース封入軸受の寿命を向上させることができる。このため、深溝またはアンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受等の封入グリースとして使用できる。
実施例1〜実施例13、実施例16
表1および表2に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を表1および表2に示す割合で溶解し、残りの半量の基油に4,4−ジフェニルメタンジイソシアナートの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1および表2のとおりである。
4,4−ジフェニルメタンジイソシアナートを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これにモリブデン酸塩、有機酸塩および酸化防止剤を表1および表2に示す配合割合で加えてさらに 100〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
表1および表2に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を表1および表2に示す割合で溶解し、残りの半量の基油に4,4−ジフェニルメタンジイソシアナートの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1および表2のとおりである。
4,4−ジフェニルメタンジイソシアナートを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これにモリブデン酸塩、有機酸塩および酸化防止剤を表1および表2に示す配合割合で加えてさらに 100〜120℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
表1および表2において、基油として用いたアルキルジフェニルエーテル油は松村石油社製商品名のLB100を、合成炭化水素油は新日鉄化学社商品名のシンフルード601を、ポリオールエステルは花王社商品名のカオルーブ268をそれぞれ用いた。また鉱油は動粘度 30.7 mm2/s( 40℃)のパラフィン系鉱油を用いた。
酸化防止剤はアルキル化ジフェニルアミンを用いた。
酸化防止剤はアルキル化ジフェニルアミンを用いた。
得られたグリース組成物の高温高速試験、急加減速試験、日本工業規格による混和ちょう度測定を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1および表2に示す。
高温高速試験
ロボット用転がり軸受(6204)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 1.8 g 封入し、軸受外輪外径部温度 180℃、ラジアル荷重 67 N 、アキシャル荷重 67 N の下で、 10000 rpm の回転数で回転させ、焼きつきに至るまでの時間を測定した。
ロボット用転がり軸受(6204)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 1.8 g 封入し、軸受外輪外径部温度 180℃、ラジアル荷重 67 N 、アキシャル荷重 67 N の下で、 10000 rpm の回転数で回転させ、焼きつきに至るまでの時間を測定した。
急加減速試験
ロボット用転がり軸受(6204)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 1.8 g 封入し、負荷荷重をかけるために、電装補機の一例であるオルタネータの回転軸を支持する内輸回転の転がり軸受に組み込み、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 3234 N 、回転速度は 0〜18000 rpm で運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間を計測した。試験は 100 時間で打ち切った。
ロボット用転がり軸受(6204)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 1.8 g 封入し、負荷荷重をかけるために、電装補機の一例であるオルタネータの回転軸を支持する内輸回転の転がり軸受に組み込み、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 3234 N 、回転速度は 0〜18000 rpm で運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間を計測した。試験は 100 時間で打ち切った。
実施例14および実施例15
表2に示した基油にLi−12−ヒドロキシステアレートを投入し、撹拌しながら 200℃にて加熱溶解した。なお、それぞれの配合割合は表2の通りである。その後冷却し、これに、モリブデン酸塩、有機酸塩および酸化防止剤を表2に示す配合割合で加えて、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。このグリース組成物について、実施例1と同様に高温高速試験および急加減速試験を行なった。ただし、Li石けんグリースの耐熱性を考え、高温高速試験は 150℃にて行なった。
表2に示した基油にLi−12−ヒドロキシステアレートを投入し、撹拌しながら 200℃にて加熱溶解した。なお、それぞれの配合割合は表2の通りである。その後冷却し、これに、モリブデン酸塩、有機酸塩および酸化防止剤を表2に示す配合割合で加えて、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。このグリース組成物について、実施例1と同様に高温高速試験および急加減速試験を行なった。ただし、Li石けんグリースの耐熱性を考え、高温高速試験は 150℃にて行なった。
比較例1〜比較例5
実施例1に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリ一スを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に示す。
実施例1に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリ一スを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に示す。
表1および表2に示すように、各実施例はロボット用転がり軸受の転走面で生じる白色組織変化をともなった特異的な剥離を効果的に防止できるので、高温高速試験および急加減速試験に優れている。各実施例の急加減速試験は全て 100 時間以上を示した。
本発明のロボット用転がり軸受は、転がり軸受に封入されたグリース組成物が転がり軸受転走面で生じる白色組織変化をともなった特異的な剥離を効果的に防止でき軸受寿命に優れるので、ロボット用転がり軸受やカーエアコン用電磁クラッチ、中間プーリ、電動ファンモータ等の自動車電装部品、補機等の転がり軸受に利用できる。
1 グリース封入軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
Claims (9)
- 産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持するロボット用転がり軸受であって、
前記転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物を封止するためのシール部材を前記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けてなり、前記グリース組成物は、基油に、増ちょう剤と添加剤とを配合してなるグリース組成物であって、前記添加剤は少なくともモリブデン酸塩を含むことを特徴とするロボット用転がり軸受。 - 前記モリブデン酸塩は、モリブデン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1記載のロボット用転がり軸受。
- 前記モリブデン酸のアルカリ金属塩は、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよびモリブデン酸リチウムから選ばれた少なくとも一つのモリブデン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項2記載のロボット用転がり軸受。
- 前記モリブデン酸塩は、基油および増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して、0.01〜10 重量部配合されてなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のロボット用転がり軸受。
- 前記添加剤は、有機酸塩を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載のロボット用転がり軸受。
- 前記有機酸塩は、炭素数 1 から炭素数 20 の有機酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項5記載のロボット用転がり軸受。
- 基油および増ちょう剤の合計量 100 重量部に対して、前記モリブデン酸塩が 0.01〜5 重量部、該モリブデン酸塩の添加量 100 重量部に対して、前記有機酸塩が 5〜70 重量部配合されてなることを特徴とする請求項5または請求項6記載のロボット用転がり軸受。
- 前記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載のロボット用転がり軸受。
- 産業用ロボットの回転部位を回転自在に支持するロボット用転がり軸受であって、
該軸受に封入されたグリース組成物が、軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において酸化鉄とともにモリブデン化合物を含有する膜を形成できるモリブデン酸塩と該膜の形成を促進する有機酸塩とを含有することを特徴とするロボット用転がり軸受。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014070270A (ja) * | 2012-10-02 | 2014-04-21 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 鋼材中への水素侵入抑制方法 |
WO2021153258A1 (ja) * | 2020-01-31 | 2021-08-05 | Ntn株式会社 | グリース組成物およびグリース封入軸受 |
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2005
- 2005-03-04 JP JP2005060910A patent/JP2006242331A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014070270A (ja) * | 2012-10-02 | 2014-04-21 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 鋼材中への水素侵入抑制方法 |
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