JP2007056906A - モータ用グリース封入軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】
水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できるモータ用グリース封入軸受の提供
を目的とする。
【解決手段】
モータ用グリース封入軸受であって、該軸受に封入されたグリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、該添加剤は無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有し、該ビスマス系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であり、上記無機ビスマスは三酸化ビスマス、ビスマス粉末、炭酸ビスマスから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであり、上記有機ビスマスは有機酸ビスマスであり、上記増ちょう剤はウレア系増ちょう剤である。
【選択図】図1
水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できるモータ用グリース封入軸受の提供
を目的とする。
【解決手段】
モータ用グリース封入軸受であって、該軸受に封入されたグリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、該添加剤は無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有し、該ビスマス系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であり、上記無機ビスマスは三酸化ビスマス、ビスマス粉末、炭酸ビスマスから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであり、上記有機ビスマスは有機酸ビスマスであり、上記増ちょう剤はウレア系増ちょう剤である。
【選択図】図1
Description
本発明はモータ用グリース封入軸受に関し、特に産業機械用、電装機器用のモータ用グリース封入軸受に関する。
近年、モータの小型化が進み、軸受がより高面圧下で運転される傾向にある。またサーボモータでは、停止−運転に加速度や減速度が大きくなり、それにともない軸受に生じるすべりが大きくなってきている。このように使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じ、問題になっている。
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性と考えられている。
このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)やビスマスジチオカーバメートを添加する方法(特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、近年のモータの回転子を支持するために用いられる転がり軸受の使用条件の過酷化に伴い、不動態化剤を添加する方法やビスマスジチオカーバメートを添加する方法では充分な対策ができなくなってきている。
特開平3−210394号公報
特開2005−42102号公報
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性と考えられている。
このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)やビスマスジチオカーバメートを添加する方法(特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、近年のモータの回転子を支持するために用いられる転がり軸受の使用条件の過酷化に伴い、不動態化剤を添加する方法やビスマスジチオカーバメートを添加する方法では充分な対策ができなくなってきている。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できるモータ用グリース封入軸受の提供を目的とする。
本発明のモータ用グリース封入軸受はモータの回転子を支持するモータ用グリース封入軸受であって、該グリース封入軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物を封止するためのシール部材を上記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けてなり、上記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であり、上記添加剤は無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有し、該ビスマス系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とする。
上記無機ビスマスは、三酸化ビスマス、ビスマス粉末および炭酸ビスマスから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであることを特徴とする。
上記有機ビスマスは、有機酸ビスマスであることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ウレア系またはリチウム石けん系増ちょう剤であることを特徴とする。
上記無機ビスマスは、三酸化ビスマス、ビスマス粉末および炭酸ビスマスから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであることを特徴とする。
上記有機ビスマスは、有機酸ビスマスであることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ウレア系またはリチウム石けん系増ちょう剤であることを特徴とする。
本発明のモータ用グリース封入軸受は、モータの回転子を支持するモータ用グリース封入軸受であって、該軸受に封入されたグリース組成物が、軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において酸化鉄とともにビスマス化合物を含有する膜を形成できる、無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有することを特徴とする。
本発明のモータ用グリース封入軸受は、該軸受に封入されたグリース組成物が、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースに無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を配合するので、始動−急加速運転−高速運転−急減速運転−急停止の繰り返しが頻繁に行なわれる自動車や産業機械に使用されるモータ用軸受で見られる水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができ、長期間の使用が可能となる。
モータの回転子を支持するモータ用グリース封入軸受の一例を図1に示す。図1はグリース組成物が封入されている深溝玉軸受の断面図である。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。
モータの一例を図2に示す。図2はモータの構造の断面図である。モータは、ジャケット9の内周壁に配置されたモータ用マグネットからなる固定子10と、回転軸11に固着された巻線12を巻回した回転子13と、回転軸11に固定された整流子14と、ジャケット9に支持されたエンドフレーム17に配置されたブラシホルダ15と、このブラシホルダ15内に収容されたブラシ16とを備えている。上記回転軸11は、ボールベアリングなどの軸受1と、該軸受1のための支持構造とにより、ジャケット9に回転自在に支持されている。
ACモータ、DCモータなどの汎用モータでは、モータの小型化が進み、軸受がより高面圧下で運転される傾向にある。また、サーボモータなどの産業機械用電気モータ、自動車のスタータモータ、電動パワーステアリングモータ、ステアリング調整用チルトモータ、ブロワーモータ、ワイパーモータ、パワーウィンドウモータ等の電装機器用モータは、始動−急加速運転−高速運転−急減速運転−急停止の繰り返しが頻繁に行なわれるため、それにともないモータ用転がり軸受に生じるすべりが大きくなる。このように使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じるため、モータ用転がり軸受には長期間、安定に運転可能な耐久性および信頼性が要求される。
上記モータ用転がり軸受のグリースに、無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を配合することにより、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面でビスマス系添加剤が分解・反応し、酸化鉄とともにビスマス化合物被膜が軸受転走面に生成される。軸受転走面に生成したビスマス化合物被膜は、グリースの分解による水素の発生を抑制するとともに、軸受内の空気中またはグリース中の水分がモータに流れる電流により電気分解されて発生する可能性のある水素の侵入を防止して、水素ぜい性による特異な剥離を防止できる。
本発明に使用できる無機ビスマスとしては、ビスマス粉末、炭酸ビスマス、塩化ビスマス、硝酸ビスマスおよびその水和物、硫酸ビスマス、フッ化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、オキシフッ化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、オキシ臭化ビスマス、オキシヨウ化ビスマス、酸化ビスマスおよびその水和物、水酸化ビスマス、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、リン酸ビスマス、オキシ過塩素酸ビスマス、オキシ硫酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、チタン酸ビスマス、ジルコン酸ビスマス、モリブデン酸ビスマス等が挙げられるが、本発明において、特に好ましいのは、耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果の高い三酸化ビスマス、ビスマス粉末および炭酸ビスマスである。
これら無機ビスマスは、1 種類、または 2 種類を混合してグリースに添加してもよい。
これら無機ビスマスは、1 種類、または 2 種類を混合してグリースに添加してもよい。
本発明に使用できる有機ビスマスは、有機酸ビスマス、フェニルビスマス等が挙げられ、硫黄成分を含まない有機ビスマスであることが好ましい。硫黄成分を含むと腐食が進行し水素の鋼への侵入が加速され好ましくない。上記有機ビスマスの中で、潤滑性、耐熱性に優れることから、有機酸ビスマスが好ましい。
有機酸ビスマス塩を構成する有機酸としては、芳香族系有機酸、脂肪族系有機酸、または脂環族系有機酸等の塩であればいずれも使用できる。
有機酸ビスマス塩を構成する有機酸としては、芳香族系有機酸、脂肪族系有機酸、または脂環族系有機酸等の塩であればいずれも使用できる。
有機酸の具体例を例示すれば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、2-エチルヘキシル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキン酸等の1価飽和脂肪酸、アクリル酸、クロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ガドレイン酸等の1価不飽和脂肪酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸、ピメリン酸、テトラメチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の2価飽和脂肪酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸等の2価不飽和脂肪酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪酸誘導体、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族有機酸、ナフテン酸等の脂環族有機酸が挙げられる。
これらの中でも潤滑性に優れた2-エチルヘキシル酸、ナフテン酸等を用いることが好ましい。これらは単独でも混合物としても使用できる。
これらの中でも潤滑性に優れた2-エチルヘキシル酸、ナフテン酸等を用いることが好ましい。これらは単独でも混合物としても使用できる。
本発明に使用できる基油は、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高精製度鉱油、流動パラフィン、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、ポリブテン、ポリ-α-オレフィン油、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂、ポリオールエステル油、リン酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油等のエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等を使用できる。
これらの中でも耐熱性と潤滑性と低騒音性とに優れたエステル油、ポリ-α-オレフィン油を用いることが好ましい。
これらの中でも耐熱性と潤滑性と低騒音性とに優れたエステル油、ポリ-α-オレフィン油を用いることが好ましい。
本発明に使用できる増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。低騒音性、耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物を反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
基油にウレア系化合物を配合して各種配合剤を配合するためのベースグリースが得られる。ベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
基油にウレア系化合物を配合して各種配合剤を配合するためのベースグリースが得られる。ベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
ベースグリースにおける増ちょう剤の配合割合は、ベースグリース全体 100 重量部の中で、増ちょう剤が 1〜40 重量部、好ましくは 3〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤の配合割合は、上記ベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部である。すなわち、(1)ビスマス系添加剤が無機ビスマスのみである場合、ベースグリース 100 重量部に対して無機ビスマスを0.05〜10 重量部、(2)ビスマス系添加剤が有機ビスマスのみである場合、ベースグリース 100 重量部に対して有機ビスマスを 0.05〜10 重量部、(3)ビスマス系添加剤が無機ビスマスと有機ビスマスとである場合、ベースグリース 100 重量部に対して、無機ビスマスと有機ビスマスとを合せて 0.05〜10 重量部配合する。
ビスマス系添加剤の配合割合が上記配合範囲未満であると水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また上記範囲をこえると異常摩耗を生じる。
ビスマス系添加剤の配合割合が上記配合範囲未満であると水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また上記範囲をこえると異常摩耗を生じる。
また、ビスマス系添加剤とともに、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、リン系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独または 2 種類以上組み合せて添加できる。
実施例1〜実施例5、実施例8、実施例9
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油に4,4−ジフェニルメタンジイソシアナートの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1の通りである。
4,4−ジフェニルメタンジイソシアナートを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120 ℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これに無機ビスマスまたは硫黄成分を含まない有機ビスマスと、酸化防止剤とを表1に示す配合割合で加えてさらに 100〜120 ℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油に4,4−ジフェニルメタンジイソシアナートの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1の通りである。
4,4−ジフェニルメタンジイソシアナートを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120 ℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これに無機ビスマスまたは硫黄成分を含まない有機ビスマスと、酸化防止剤とを表1に示す配合割合で加えてさらに 100〜120 ℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
表1および表2において、基油として用いたアルキルジフェニルエーテル油は松村石油社製LB100を、合成炭化水素油は新日鉄化学社製シンフルード601を、ポリオールエステル油は花王社製カオルーブ268を、ポリマーエステル油はアクゾノーベル社製ケッチェンルーブ115をそれぞれ用いた。また鉱油は動粘度 30.7 mm2/s( 40 ℃)のパラフィン系鉱油を用いた。
酸化防止剤はアルキル化ジフェニルアミンまたはヒンダードフェノールを用いた。
酸化防止剤はアルキル化ジフェニルアミンまたはヒンダードフェノールを用いた。
得られたグリース組成物の高温高速試験、急加減速試験、日本工業規格による混和ちょう度測定を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
高温高速試験
モータ用転がり軸受(6204)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 1.8 g 封入し、軸受外輪外径部温度 180 ℃(実施例7および8では150℃)、ラジアル荷重 67 N 、アキシャル荷重 67 N の下で、10000 rpm の回転数で回転させ、焼きつきに至るまでの時間を測定した。
モータ用転がり軸受(6204)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 1.8 g 封入し、軸受外輪外径部温度 180 ℃(実施例7および8では150℃)、ラジアル荷重 67 N 、アキシャル荷重 67 N の下で、10000 rpm の回転数で回転させ、焼きつきに至るまでの時間を測定した。
急加減速試験
転がり軸受(6303)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 2.3 g 封入し、負荷荷重をかけるために、電装補機の一例であるオルタネータの回転軸を支持する内輸回転の転がり軸受に組み込み、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 3234 N 、回転速度は 0〜18000 rpm で運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間を、剥離発生寿命時間として計測した。
この剥離発生寿命時間が 300 時間以上ある転がり軸受は、剥離の発生を防止する性能が優れていると評価した。
転がり軸受(6303)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 2.3 g 封入し、負荷荷重をかけるために、電装補機の一例であるオルタネータの回転軸を支持する内輸回転の転がり軸受に組み込み、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 3234 N 、回転速度は 0〜18000 rpm で運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって発電機が停止する時間を、剥離発生寿命時間として計測した。
この剥離発生寿命時間が 300 時間以上ある転がり軸受は、剥離の発生を防止する性能が優れていると評価した。
実施例6および実施例7
表1に示した基油にLi−12−ヒドロキシステアレートを投入し、撹拌しながら 200℃にて加熱溶解した。なお、それぞれの配合割合は表1の通りである。その後冷却し、これに無機ビスマスまたは硫黄成分を含まない有機ビスマスと、酸化防止剤とを表1に示す配合割合で加えて、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。このグリース組成物について、実施例1と同様に高温高速試験および急加減速試験を行なった。ただし、Li石けんグリースの耐熱性を考え、高温高速試験は 150℃にて行なった。
表1に示した基油にLi−12−ヒドロキシステアレートを投入し、撹拌しながら 200℃にて加熱溶解した。なお、それぞれの配合割合は表1の通りである。その後冷却し、これに無機ビスマスまたは硫黄成分を含まない有機ビスマスと、酸化防止剤とを表1に示す配合割合で加えて、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。このグリース組成物について、実施例1と同様に高温高速試験および急加減速試験を行なった。ただし、Li石けんグリースの耐熱性を考え、高温高速試験は 150℃にて行なった。
比較例1〜比較例8
実施例1に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に示す。
実施例1に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリースを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に示す。
表1に示すように、各実施例の剥離発生寿命は全て 300 時間以上を示した。各実施例のグリース組成物を用いた転がり軸受は転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止できることがわかる。
本発明のモータ用グリース封入軸受は、軸受に封入されたグリース組成物が軸受転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止でき軸受寿命に優れるので、電動ファンモータ等のモータ用の転がり軸受として好適に利用できる。
1 グリース封入軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8a 両端開口部
8b 両端開口部
9 ジャケット
10 固定子
11 回転軸
12 巻き線
13 回転子
14 整流子
15 ブラシホルダ
16 ブラシ
17 エンドフレーム
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8a 両端開口部
8b 両端開口部
9 ジャケット
10 固定子
11 回転軸
12 巻き線
13 回転子
14 整流子
15 ブラシホルダ
16 ブラシ
17 エンドフレーム
Claims (5)
- モータの回転子を支持するモータ用グリース封入軸受であって、
該グリース封入軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物を封止するためのシール部材を前記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けてなり、前記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であり、
前記添加剤は、無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有し、該ビスマス系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とするモータ用グリース封入軸受。 - 前記無機ビスマスは、三酸化ビスマス、ビスマス粉末および炭酸ビスマスから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであることを特徴とする請求項1記載のモータ用グリース封入軸受。
- 前記有機ビスマスは、有機酸ビスマスであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のモータ用グリース封入軸受。
- 前記増ちょう剤は、ウレア系またはリチウム石けん系増ちょう剤であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のモータ用グリース封入軸受。
- モータの回転子を支持するモータ用グリース封入軸受であって、該軸受に封入されたグリース組成物が、軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において酸化鉄とともにビスマス化合物を含有する膜を形成できる、無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有することを特徴とするモータ用グリース封入軸受。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005240105A JP2007056906A (ja) | 2005-08-22 | 2005-08-22 | モータ用グリース封入軸受 |
US11/918,566 US7910525B2 (en) | 2005-04-20 | 2006-04-20 | Grease composition, grease-enclosed bearing, and rotation-transmitting apparatus with built-in one way clutch |
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