JP5460053B2 - グリース - Google Patents
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Description
グリースの種類は多く、例えば、JIS(JIS K2220の表1)に、各種用途のグリースが記載されており、それぞれの用途に要求される性状や性能が規定されている。例えば、「転がり軸受用グリース3種」は、広温度範囲用として適用されるものであり、低温性、耐熱性等に優れ、−30〜130℃の温度範囲で転がり軸受用として使用されると規定されている。
近年、自動車や各種産業機械の機械部品は、これまでのものに比べて、より広範囲の温度及びより厳しい潤滑条件下で作動するように設計されている。これに加えて新しい機械や機械部品が開発され、より広範囲の温度及びより厳しい潤滑条件下で作動することに加えて、その機械等に特有な性能も要求されることが多い。
(i)低温におけるクラッチ係合性(噛み合い性)が良好であること。
冬季極寒冷地でエンジンを始動させるときに、オルタネータ等が低温下で、円滑に作動するために、良好なクラッチ係合性(噛み合い性)が求められる。
(ii) 高温性能が優れ、高温軸受寿命が長いこと。
エンジンの運転条件が苛酷になってきたことに伴い、その近傍の温度も上昇し、自動車用補機も高温下で長時間作動する。そのため高温軸受寿命が長いことが要求される。
(iii)高遠心力(加速度)下においても、油分離が少ないこと。
オルタネータ等の自動車用補機は、高速回転していて、高遠心力下で使用されるので、このような状況下でも、油分離が少ないことが求められる。
つまり、前記(i)低温におけるクラッチ係合性が良好であることと、(ii)の、高温軸受試験の寿命が長いことは、通常相反する性能であり、一方を改良すれば、他方の性能が低下する関係にある。したがって、これらの性能を同時に改善し向上することは困難である。また(iii)高遠心力下で油分離を少なくすることも、前記(i)低温性を改良することと相反する関係にある。
しかしながら、アルキルジフェニルエーテルを基油とするものは、低温性、すなわち低温におけるクラッチ係合性が充分とは言えず、またポリオールエステルからなる基油を用いたものは、高温特性、すなわち高温軸受試験における寿命が不十分であり、いずれも低温性能と高温性能とを同時に満足すものではない。またこれら以外の鉱油やポリ−α−オレフィン油などについても同様な問題がある。したがって、いずれもさらに改良する余地があった。
すなわち、本発明は、
(1)基油及びウレア系増ちょう剤を用いてなるグリースであって、
前記基油が、一般式(I)
R1OOC−(R2)n−COOR3 (I)
[式中、R1及びR3は、同一であって、炭素数6〜17の1価の脂肪族炭化水素基、R2は、炭素数3〜15の2価の炭化水素基、nは1を示す。]
で表される全炭素数28〜40のジエステル化合物を50質量%以上含み、
前記ウレア系増ちょう剤が、一般式(V)
R4−NHCONH−R5−NHCONH−R6 (V)
[式中、R4及びR6は、それぞれ独立に、炭素数6〜24の1価の鎖式炭化水素基、炭素数6〜12の1価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基を示し、R5は、炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基を示す。]
で表され、
一般式(V)のR4及びR6における鎖式炭化水素基の含有率(Xモル%)と脂環式炭化水素基の含有率(Yモル%)及び芳香族炭化水素基の含有率(Zモル%)が、下記の式(a)及び(b)を満たすグリース、
[(X+Y)/(X+Y+Z)]×100≧90 (a)
X/Y=40/60〜5/95 (b)、
(2)一般式(I)において、R1及びR3が、イソヘキシル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルヘプチル基、2−ブチルオクチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、イソノニル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−ペンチルノニル基、及び2−ヘキシルデシル基からなる群より選ばれる同一の分岐を有する1価の脂肪族炭化水素基である前記(1)に記載のグリース、
(3)一般式(I)において、R2が、2−メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ヘキセン二酸、オクテン二酸、デセン二酸、ドデセン二酸、テトラデセン二酸、ヘキサデセン二酸、シクロペンタン二カルボン酸、シクロペンテン二カルボン酸、シクロヘキサン二カルボン酸、シクロヘキセン二カルボン酸、テトラリン二カルボン酸、デカリン二カルボン酸フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸からなる群から選ばれるジカルボン酸類由来の炭素数3〜15の2価の炭化水素基である、前記(1)に記載のグリース、
(4)一般式(I)のジエステル化合物の全炭素数が30である前記(1)に記載のグリース、
(5)潤滑性向上剤、酸化防止剤及び防錆剤の中から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含む前記(1)に記載のグリース、
(6)グリースから増ちょう剤を除いた成分である油分の40℃における動粘度が、15〜150mm2/sである前記(1)に記載のグリース、
(7)一般式(V)のR4及びR6における鎖式炭化水素基の炭素数が8〜20である前記(1)に記載のグリース、
(8)前記鎖式炭化水素基の炭素数が12〜20である前記(7)に記載のグリース、
(9)前記鎖式炭化水素基の炭素数が14〜18である前記(7)に記載のグリース、
(10)前記X/Y=30/70〜5/95である前記(1)に記載のグリース、
(11)前記X/Y=20/80〜8/92である前記(1)に記載のグリース、
(12)回転伝達装置に用いられる前記(1)〜(11)のいずれかに記載のグリース、
(13)一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に用いられる前記(1)〜(11)のいずれかに記載のグリース、
を提供するものである。
R1OOC−(R2)n−COOR3 (I)
[式中、R1及びR3は、それぞれ独立に炭素数4〜20の1価の脂肪族炭化水素基、R2は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、nは0又は1を示す。]
で表される全炭素数28〜40のジエステル化合物を50質量%以上含む基油を用いることを特徴とする。
前記一般式(I)において、R2で示される炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキレン基、炭素数2〜20の直鎖もしくは分岐アルケニレン基、炭素数5〜20の2価の脂環構造含有基又は炭素数6〜20の2価の芳香環構造含有基を挙げることができる。
HOOC−(R2)n−COOH (II)
[式中、R2及びnは前記と同じである。]
で表されるジカルボン酸類としては、nが0であるシュウ酸及びnが1である下記の化合物を挙げることができる。
R2が、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキレン基である場合、マロン酸、コハク酸、2−メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、さらにはピメリン酸などの各種ヘプタン二酸、スベリン酸などの各種オクタン二酸、アゼライン酸などの各種ノナン二酸、セバシン酸などの各種デカン二酸、各種ウンデカン二酸、各種ドデカン二酸、各種トリデカン二酸、各種テトラデカン二酸、各種ペンタデカン二酸、各種ヘキサデカン二酸、各種ヘプタデカン二酸、各種オクタデカン二酸、各種イコサン二酸、各種ドコサン二酸などが挙げられる。
R2が炭素数5〜20の2価の脂環構造含有基である場合、各種シクロペンタン二カルボン酸、各種シクロペンテン二カルボン酸、各種シクロヘキサン二カルボン酸、各種シクロヘキセン二カルボン酸、各種テトラリン二カルボン酸、各種デカリン二カルボン酸などが挙げられる。これらの脂環構造含有ジカルボン酸においては、環上にアルキル基などの適当な置換基を有していてもよい。
R2が炭素数6〜20の2価の芳香環構造含有基である場合、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、などが挙げられる。これらの芳香環構造含有ジカルボン酸においては、環上にアルキル基などの適当な置換基を有していてもよい。
前記一般式(I)において、R1及びR3で示される炭素数4〜20の1価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐アルキル基、直鎖もしくは分岐アルケニル基又は脂環構造含有基を挙げることができる。この1価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、当該ジエステル化合物の全炭素数が28〜40の範囲になるように、前記R2の炭素数によって選定される。
前述のように、nが1でR2が炭素数3〜15の2価の炭化水素基である場合、製造上の容易さの点からR1及びR3が同一であって、炭素数6〜17の1価の脂肪族炭化水素基であり、当該ジエステル化合物の全炭素数が28〜40であることが好ましく、R1及びR3が同一であって、炭素数6〜14の1価の脂肪族炭化水素基であり、当該ジエステル化合物の全炭素数が28〜34であることがより好ましく、R1及びR3が同一であって、炭素数7〜14の1価の脂肪族炭化水素基であり、当該ジエステル化合物の全炭素数が30〜34であることがさらに好ましく、全炭素数が30であることが特に好ましい。
R1−OH (III)
R3−OH (IV)
[式中、R1、R3は前記と同じである。]
で表されるアルコール類としては、R1、R3が直鎖もしくは分岐アルキル基である場合、各種ブチルアルコール、各種ペンチルアルコール、各種ヘキシルアルコール、各種オクチルアルコール、各種ノニルアルコール、各種デシルアルコール、各種ドデシルアルコール、各種テトラデシルアルコール、各種ヘキサデシルアルコールなどが挙げられる。
R1、R3が直鎖もしくは分岐アルケニル基である場合、各種ブテニルアルコール、各種ヘキセニルアルコール、各種オクテニルアルコール、各種デセニルアルコール、各種ドデセニルアルコール、各種テトラデセニルアルコール、各種ヘキサデセニルアルコールなどが挙げられる。
R1、R3が脂環式構造含有基である場合、シクロペンチルアルコール、シクロペンタンメタノール、シクロペンテニルアルコール、シクロペンテンメタノール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキセニルアルコール、シクロヘキセンメタノールなどが挙げられる。これらの脂環構造含有アルコールにおいては、環上にアルキル基などの適当な置換基を有していてもよい。
この分岐を有する1価の脂肪族炭化水素基としては、分岐を有するアルキル基が好ましく、具体的には、イソペンチル基、tert−ペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルヘプチル基、2−ブチルオクチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、イソノニル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−ペンチルノニル基、2−ヘキシルデシル基などが挙げられる。
前記一般式(III)、(IV)で示されるアルコール類の中で、分岐を有するアルコールは、例えば第一アルコールを高温高圧下にて2分子縮合反応させるゲルベ反応により、あるいはオキソ合成法やα−オレフィンの二量化以上のオリゴマー化反応などを経由して製造することができる。
本発明においては、前記ジエステル化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、当該ジエステル化合物は、基油中に50質量%以上含まれていることを要す。基油中の当該ジエステル化合物の含有量が50質量%以上であれば、各用途のグリースとして、所望の要求特性を満たすグリースを得ることができ、特に一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に用いるグリースとして利用できる。好ましい含有量は70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
本発明のグリースには、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望によりその他の基油を、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下の割合で含有させることができる。
脂環式炭化水素化合物としては、例えば、2,4−ジシクロヘキシル−2−メチルペンタン、2,4−ジシクロヘキシルペンタンなどシクロヘキサン環を2個以上有するアルカン誘導体、1−シクロヘキシル−1−デカリルエタンなどのデカリン環とシクロヘキシル環をそれぞれ1個以上有するアルカン誘導体、endo−2−メチル−exo−3−メチル−exo−2−[(exo−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−exo−2−イル)メチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどのビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環及びビシクロ[3.3.0]オクタン環を少なくとも2個有する脂環式化合物が挙げられる。
また、鉱油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油が、各種合成油としては、例えば1−デセンのオリゴマーなどのポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
前記増粘剤の具体例としては、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメタクリレート(PMA)、オレフィン共重合体(OCP)、ポリアルキルスチレン(PAS)、スチレン-ジエン共重合体(SCP)等が挙げられる。特に、数平均分子量が800〜10,000、より好ましくは1,000〜5,000のポリブテンやポリイソブチレン、スチレン−イソプレン共重合体及びエチレン−α−オレフィン共重合体、並びに重量平均分子量が1万〜100万、好ましくは10万〜80万のポリメタアクリレートの中から選ばれる少なくとも1種以上を配合することが好ましい。これら増粘剤の配合量は、通常組成物基準で、樹脂量として0.01〜20質量%程度であるが、後述する、油分の粘度が目的の値になるよう適宜調整して配合量を選定する。
本発明において油分とは、グリースから増ちょう剤を除いたものをいい、具体的には、前記基油、増粘剤及び後述する各種添加剤の混合物を意味してる。つまり増粘剤及び添加剤を配合しない場合は、基油のみが油分であり、基油と増粘剤とを配合し、添加剤を配合しない場合は、基油と増粘剤の混合物が油分であり、基油、増粘剤及び添加剤を配合する場合は、これらの混合物が油分である。
この油分は、例えば、グリースを遠心分離することにより分離物として得ることができるものである。
本発明のグリースにおいては、油分の40℃における動粘度が、15〜150mm2/sであることが好ましく、20〜90mm2/sであることがより好ましく、30〜60mm2/sであることがさらに好ましい。油分の40℃における動粘度が、15mm2/s以上であれば、グリースの油分離を抑制することができ、また油分の40℃における動粘度が、150mm2/s以下であればグリースの低温特性を良好に保つことができる。
本発明に用いられる増ちょう剤としては、特に制限がなく、石鹸系、非石鹸系いずれも使用できる。この増ちょう剤としては、グリースの滴点が230℃以上となるものが好ましい。該滴点が230℃以上であれば、潤滑上の問題、例えば、高温での軟化やそれに伴う漏洩、焼付け等が生じるのを抑制することができる。
金属としては、ナトリウム、カルシウム、リチウム、アルミニウム等が挙げられ、カルボン酸としては、油脂を加水分解してグリセリンを除いた粗製脂肪酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸や、12−ヒドロキシステアリン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、アゼライン酸等の二塩基酸、テレフタル酸、サリチル酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
具体的には、12−ヒドロキシステアリン酸を用いたリチウム系のリチウム石鹸が好適である。この石鹸系の増ちょう剤を配合するに当たっては、基油にカルボン酸と上記金属水酸化物を投入して、基油中でケン化させて配合してもよい。
この内、リチウム系のリチウムコンプレックス石鹸は、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸及び/又は分子中に1個以上のヒドロキシル基を有する炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸と、芳香族カルボン酸及び/又は炭素数2〜12(より好ましくは炭素数4〜9)の脂肪族ジカルボン酸とを、例えば、水酸化リチウムなどのリチウム化合物と反応させることにより得られ、前記リチウム石鹸と比べて耐熱性に優れるので、増ちょう剤として、より好ましい。
上記炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸としては、特に制限はなく、例えば12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシラウリン酸、16−ヒドロキシパルミチン酸などが挙げられるが、これらの中で特に12−ヒドロキシステアリン酸が好適である。
また、上記炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限はなく、例えばアゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などを挙げることができるが、これらの中でアゼライン酸が好適である。
ここで、脂肪酸及び/又は分子中に1個以上のヒドロキシル基を有する炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸と、芳香族カルボン酸及び/又は炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸との全質量中、芳香族カルボン酸及び/又は炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸が20〜90質量%であることが好ましい。20〜90質量%の範囲内であれば、熱的に安定な増ちょう剤が得られ、グリースの高温での長寿命化を実現するのに有利である。
ここで、増ちょう剤としてのウレア化合物としては、従来、ウレア系増ちょう剤として使用されているウレア化合物の中から、任意のものを用いることができる。このウレア化合物には、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などがある。
ウレア化合物は、耐熱性、耐水性ともに優れ、特に高温での安定性が良好なため、高温箇所に好適に用いられる。
また、ウレア系増ちょう剤の中でも、特にジウレア化合物が好適である。
該ジウレア化合物としては、例えば一般式(V)
R4NHCONHR5NHCONHR6 (V)
[式中、R4、R6はそれぞれ独立に、炭素数6〜24の1価の鎖式炭化水素基、炭素数6〜12の1価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基を示し、R5は炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基を示す。]
で示される化合物が挙げられる。
前記一般式(V)におけるR5で示される炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ジフェニルメタン基、トリレン基などが挙げられる。
また、前記一般式(V)におけるR4、R6で示される炭素数6〜12の1価の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基または炭素数7〜12のアルキル基置換シクロヘキシル基が含まれ、例えば、シクロヘキシル基の他に、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、1−メチル−プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アミルシクロヘキシル基、アミル−メチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、製造上の理由で、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基などが好ましい。
また、前記一般式(V)におけるR4、R6で示される炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トルイル基、ベンジル基、エチルフェニル基、メチルベンジル基、キシリル基、プロピルフェニル基、クメニル基、エチルベンジル基、メチルフェネチル基、ブチルフェニル基、プロピルベンジル基、エチルフェネチル基、ペンチルフェニル基、ブチルベンジル基、プロピルフェネチル基、ヘキシルフェニル基、ペンチルベンジル基、ブチルフェネチル基が挙げられる。
[(X+Y)/(X+Y+Z)]×100≧90 (a)
X/Y=50/50〜0/100 (b)
式(a)及び(b)を満たせば、油分離性、特に高遠心力(加速度)下における油分離をより抑制することができる。
(a)の[(X+Y)/(X+Y+Z)]×100の値は、95以上であることがさらに好ましく、98以上であることが特に好ましい。
また、(b)のX/Yは、30/70〜5/95であることがさらに好ましく、25/75〜15/85であることが特に好ましい。
本発明に係るグリースに用いる増ちょう剤は、ちょう度を付与するためのもので配合量が少なすぎると所望のちょう度が得られず、一方配合量が多すぎるとグリースの潤滑性が低下する。
本発明のグリースには、本発明の目的が損なわれない範囲で公知の各種添加剤、例えば潤滑性向上剤、清浄分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、消泡剤などを適宜添加することができる。
潤滑性向上剤としては、例えば硫黄化合物(硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、硫化鉱油、トリフェニルホスホロチオエートなどのチオリン酸類、チオカルバミン酸類、チオテルペン類、ジアルキルチオジピロピオネート類等)、リン酸エステル、亜リン酸エステル(トリクレジルホスフェート、トリフェニルフォスファイト等)などが、清浄分散剤としては、例えばこはく酸イミド、ボロン系こはく酸イミドなどが挙げられる。
これらの添加剤の配合量は、目的に応じて適宜選定すればよいが、通常、これらの添加剤の合計が潤滑剤を基準にして30質量%以下になるように配合する。
先ず、基油に所定の割合の増ちょう剤及び所望により増粘剤を配合し、所定の温度に加熱して均質化する。
その後冷却し、所定の温度に達したところで所望により各種添加剤を、所定量配合することにより、本発明に係るグリースを得ることができる。
なお、諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)基油、油分の40℃動粘度
JIS K2283に準拠して測定した。
(2)グリースの混和ちょう度
JIS K2220.7.5に準拠して測定した。
(3)低温特性:係合性(噛み合い性)試験
特開2006−64136号公報の図−1に記載されるクラッチプーリユニット(実機)にグリースを封入し、ロックした状態において外輪を回転させた場合に、内輪の回転が追従しなくなる外輪の角加速度(限界角速度:rad/sec2)を測定した。この値が大きいほど係合性(噛み合い性)が高い。
(4)高温特性:高温軸受寿命試験
6305VV軸受(日本精工株式会社製)にグリースを3.4g封入し、160℃、10000rpm、スラスト荷重98N、ラジアル荷重98Nの条件で軸受を連続運転し、グリースの劣化によって軸受が固着するまでの時間〈軸受寿命時間〉を測定した。
上記の実験は、複数(5個)の軸受を用いて測定し、各測定値をワイブルプロットすることにより、累積確立50%の寿命(L50寿命)を求め、L50寿命を軸受寿命とした。
(5)高遠心力下の油分離
日立工機(株)製の超遠心分離機「Himac CP70G」を用い、容器内にグリースを充填し、グリース充填部分に、1.8×105 m2 /s(2万G)の加速度を40℃で5時間与えた際、グリースから分離した油分を重量比率で求め、油分離(量)として表した。
<基油−1>
セバシン酸と3,7−ジメチルオクチルアルコール(イソデシルアルコール)を用い、常法に従ってエステル化反応を行うことにより得られたセバシン酸ジイソデシルを用いた。このセバシン酸ジイソデシルは、全炭素数30、40℃動粘度20mm2/s、引火点262℃、密度0.913g/cm3である。
<基油−2>
アルキルベンゼン、40℃動粘度56mm2/s、引火点192℃、密度0.895g/cm3である。
<基油−3>
無水フタル酸と3,5,5−トリメチルヘキシルアルコール(イソノニルアルコール)を用い、常法に従ってエステル化反応を行うことにより得られたフタル酸ジイソノニルを用いた。
このフタル酸ジイソノニルは、全炭素数26、40℃動粘度28mm2/s、引火点236℃、密度0.978g/cm3である。
<基油−4>
ネオペンチルグリコール3,5,5−トリメチルヘキサン酸ジエステル、40℃動粘度13mm2/s、引火点200℃、密度0.913g/cm3である。
基油1とウレア系増ちょう剤1を用い、第1表に示す配合組成のグリースを、以下に示す方法で調製した。
使用すべき基油1(増粘剤:重量平均分子量45万のポリメタクリレートを含む)の2/3量に、使用すべき量のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを加熱溶解した。一方、残りの基油−1に、前記のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート量に対し、2倍モルの混合アミン(n−オクタデシルアミンとシクロヘキシルアミンのモル比20:80混合物)を加熱溶解した。
まず、グリース製造釜に、前記のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含有する基油1を仕込み、50〜60℃で激しく攪拌しながら、これに前記の混合アミンを含有する基油1を徐々に加え、加熱した。グリースの温度が160℃に達した時点で、その温度にて1時間保持した。ウレア系増ちょう剤の配合量は、グリース全量基準で17質量%である。
次いで、50℃/hrで80℃まで冷却したのち、酸化防止剤、潤滑性向上剤及び防錆剤を添加した。さらに室温まで自然放冷したのち、3本ロール装置を用いて仕上げ処理を行うことにより、グリースを調製した。
このようにして得られたグリースについて、混和ちょう度、係合性試験(−30℃、−20℃、0℃、80℃),高温軸受寿命試験及び高遠心力下における油分離試験を行った。その結果を第1表に示す。
増粘剤及び潤滑性向上剤を配合しなかったこと、並びにウレア系増ちょう剤1の配合量を第1表に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてグリースを調製した。得られたグリースについて、混和ちょう度、係合性試験(−30℃、−20℃、0℃、80℃),高温軸受寿命試験及び高遠心力下における油分離試験を行った。その結果を第1表に示す。
第1表に示す基油、若しくは基油及び増粘剤並びにウレア系増ちょう剤を用い、実施例1と同様にして、第1表に示す配合組成の各グリースを調製した。
このようにして得られた各グリースについて、混和ちょう度、係合性試験(−30℃、−20℃、0℃、80℃),高温軸受寿命試験及び高遠心力下における油分離試験を行った。その結果を第1表に示す。
市販品A、B及びCについて、混和ちょう度、係合性試験(−30℃、−20℃、0℃、80℃),高温軸受寿命試験及び高遠心力下における油分離試験を行った。その結果を第1表に示す。
市販品Aは、アルキル置換ジフェニルエーテルを基油とする市販ウレアグリース、市販品Bは、ペンタエリスリトールエステルを基油とする市販ウレアグリース、市販品Cは、ポリアルファオレフィンを基油とする市販ウレアグリースである。
1)増粘剤:ポリメタクリレート、重量平均分子量=45万
2)ウレア系増ちょう剤1:ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートと、2倍モルの混合アミン(n−オクタデシルアミンとシクロヘキシルアミンの混合物)の反応物、[(X+Y)/(X+Y+Z)]×100=100,X/Y=20/80
3)酸化防止剤:オクチルフェニル−1−ナフチルアミン(2重量部)、p,p'−ジオクチルジフェニルアミン(2重量部)及びオクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(1重量部)の混合物
4)潤滑性向上剤:トリフェニルホスホロチオエート
5)防錆剤:ステアリン酸亜鉛
第2表に示す基油、増粘剤並びにウレア系増ちょう剤を用い、実施例1と同様にして、第2表に示す配合組成の各グリースを調製した。
ここで用いたウレア系増ちょう剤2は、ウレア系増ちょう剤の原料である混合アミン(n−オクタデシルアミンとシクロヘキシルアミン)の混合比率を変化させて調製した。
このようにして得られた各グリースについて、混和ちょう度、高遠心力下における油分離試験を行った。その結果を第2表に示す。
6)ウレア系増ちょう剤2:ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートと、2倍モルの混合アミン(n−オクタデシルアミンとシクロヘキシルアミンの混合物)の反応物、[(X+Y)/(X+Y+Z)]×100=100,X/Y=0/100〜80/20
1)〜5)は、第1表と同じ
第3表に示す基油、増粘剤並びにウレア系増ちょう剤を用い、実施例1と同様にして、第3表に示す配合組成の各グリースを調製した。
ここで用いたウレア系増ちょう剤は、原料混合アミン中の鎖式炭化水素アミンを変更してグリースを調製した。
このようにして得られた各グリースについて、混和ちょう度、高遠心力下における油分離試験を行った。その結果を第3表に示す。
7)ウレア系増ちょう剤3:ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートと、2倍モルの混合アミン(各種鎖式炭化水素アミンとシクロヘキシルアミンの混合物)の反応物、[(X+Y)/(X+Y+Z)]×100=100,X/Y=20/80
1)〜5)は、第1表と同じ
また第2表によれば、本発明のグリース(実施例9〜12)は、いずれも高遠心力下の油分離は20質量%以下であり、特にX/Yが、8/92及び20/80のグリース(実施例5,6)が良好である。
さらに第3表によれば、原料混合アミンの鎖式炭化水素(アルキル)アミンが炭素数12である場合(実施例10)、炭素数14である場合(実施例11)及び炭素数18である場合(実施例12)の油分離がより少なく、特に、実施例11(炭素数14)と実施例12(炭素数18)のグリースが良好であることが分かる。
Claims (13)
- 基油及びウレア系増ちょう剤を用いてなるグリースであって、
前記基油が、一般式(I)
R1OOC−(R2)n−COOR3 (I)
[式中、R1及びR3は、同一であって、炭素数6〜17の1価の脂肪族炭化水素基、R2は、炭素数3〜15の2価の炭化水素基、nは1を示す。]
で表される全炭素数28〜40のジエステル化合物を50質量%以上含み、
前記ウレア系増ちょう剤が、一般式(V)
R4−NHCONH−R5−NHCONH−R6 (V)
[式中、R4及びR6は、それぞれ独立に、炭素数6〜24の1価の鎖式炭化水素基、炭素数6〜12の1価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基を示し、R5は、炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基を示す。]
で表され、
一般式(V)のR4及びR6における鎖式炭化水素基の含有率(Xモル%)と脂環式炭化水素基の含有率(Yモル%)及び芳香族炭化水素基の含有率(Zモル%)が、下記の式(a)及び(b)を満たすグリース。
[(X+Y)/(X+Y+Z)]×100≧90 (a)
X/Y=40/60〜5/95 (b) - 一般式(I)において、R1及びR3が、イソヘキシル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルヘプチル基、2−ブチルオクチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、イソノニル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−ペンチルノニル基、及び2−ヘキシルデシル基からなる群より選ばれる同一の分岐を有する1価の脂肪族炭化水素基である請求項1に記載のグリース。
- 一般式(I)において、R2が、2−メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ヘキセン二酸、オクテン二酸、デセン二酸、ドデセン二酸、テトラデセン二酸、ヘキサデセン二酸、シクロペンタン二カルボン酸、シクロペンテン二カルボン酸、シクロヘキサン二カルボン酸、シクロヘキセン二カルボン酸、テトラリン二カルボン酸、デカリン二カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸からなる群から選ばれるジカルボン酸類由来の炭素数3〜15の2価の炭化水素基である、請求項1に記載のグリース。
- 一般式(I)のジエステル化合物の全炭素数が30である請求項1に記載のグリース。
- 潤滑性向上剤、酸化防止剤及び防錆剤の中から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含む請求項1に記載のグリース。
- グリースから増ちょう剤を除いた成分である油分の40℃における動粘度が、15〜150mm2/sである請求項1に記載のグリース。
- 一般式(V)のR4及びR6における鎖式炭化水素基の炭素数が8〜20である請求項1に記載のグリース。
- 前記鎖式炭化水素基の炭素数が12〜20である請求項7に記載のグリース。
- 前記鎖式炭化水素基の炭素数が14〜18である請求項7に記載のグリース。
- 前記X/Y=30/70〜5/95である請求項1に記載のグリース。
- 前記X/Y=20/80〜8/92である請求項1に記載のグリース。
- 回転伝達装置に用いられる請求項1〜11のいずれかに記載のグリース。
- 一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置に用いられる請求項1〜11のいずれかに記載のグリース。
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