WO2006064869A1

WO2006064869A1 - グリース組成物およびグリース封入転がり軸受

Info

Publication number: WO2006064869A1
Application number: PCT/JP2005/023035
Authority: WO
Inventors: Takayuki Kawamura
Original assignee: Ntn Corporation
Priority date: 2004-12-17
Filing date: 2005-12-15
Publication date: 2006-06-22
Also published as: EP1837391A1; US8058216B2; DE602005026327D1; EP1837391B1; EP1837391A4; US20080166080A1

Description

明細書

グリース組成物およびグリース封入転がり軸受

技術分野

[0001] 本発明は各種産業機械や車両等に組み込まれる転がり軸受に封入されるグリース組成物に関し、特に冷時異音の発生する低温から高温までの広い温度範囲において、高速回転で使用される軸受に好適な耐熱および耐冷時異音性グリース組成物に関する。

背景技術

[0002] 各種産業機械や車両等に組み込まれる転がり軸受には、潤滑性を付与するためにグリース組成物が封入される。このグリース組成物は基油に増ちよう剤を配合して得られ、上記基油としては鉱油やエステル油、シリコーン油、エーテル油、フッ素油等の合成潤滑油が、また増ちよう剤としてはリチウム石けん等の金属石けんゃゥレア化合物、フッ素樹脂が一般に使用されている。近年、転がり軸受は高温下、高速回転で使用される傾向にあり、それに伴ないグリース組成物にも高温耐性が要求されている。ところ力増ちよう剤として金属石けんを使用すると、高温で基油の酸化を促進して潤滑作用を低下させる。また、基油に関しては、鉱油を基油としたグリース組成物は、合成潤滑油を基油とするグリース組成物に比べて酸化されやすぐ高温における潤滑寿命が短くなる傾向にある。そこで近年では、特に高温、高速回転で使用される転力 ^軸受用には、合成潤滑油を基油とし、ゥレア化合物やフッ素樹脂を増ちよう剤としたグリース組成物が主流になりつつある。

[0003] 各種産業機械部材の小型化や高性能化にともなって、転がり軸受は、その使用条件がより厳しくなる傾向にあり、それに伴なつてグリース組成物にもさらなる潤滑性能と潤滑寿命が要求されてレ、る。

高温における潤滑寿命の長寿命化の要求は、高粘度の合成潤滑油を基油とし、ゥレア化合物を増ちよう剤としたグリース組成物に酸化防止剤や防鲭剤等の添加処方が検討されている。しかし、それにともなって寒冷時においてグリース組成物の粘度が上昇し冷時異音が発生しやすくなる。一方、自動車のエンジンによって駆動される機器のプーリ等を寒冷時に運転すると、プーリ仕様や運転条件によっては、寒冷時の特異音（笛吹き音）、いわゆる冷時異音が発生する場合がある。この冷時異音の発生原因については未だ明確には解明されていないが、グリースの油膜ムラによる転動体の自励振動によるものと推測されている。すなわち、寒冷時には、グリースの基油粘度上昇によって軌道面の油膜ムラが生じやすくなる。油膜ムラがあると、転動体と軌道面との間の摩擦係数が微小な周期的変化を起こし、これによつて転動体に自励振動を生じる。この自励振動によってプーリ系が共振し、外輪が軸方向に振動（並進運動）して冷時異音の発生に至ると考えられている。

[0004] 高温耐久性に優れ、冷時異音を抑えるグリースとして、合成炭化水素油と油の鎖状分子を構成する 8個以上の炭素原子の一側にエステル基を 8個以上櫛歯状に配置したエステル系合成油との混合油からなる基油に、増ちよう剤としてウレァ系化合物を配合し、極圧剤としてジチォリン酸塩を添加したグリースが知られている（特許文献 1)。

また、ポリ α—ォレフイン（以下、 ΡΑΟという）油とエステル油との混合油からなる基油に、増ちよう剤として脂環族ジゥレア化合物を配合し、添加剤としてジンクジチォカーバメートを添加したグリース組成物を封入した軸受であって、軸受を構成する内輪と、外輪との間に介在させた複数のボールをボールと内輪または外輪のうちの少なくとも外輪とを 2点で接触させることによって接触角を付与した自動車プーリ用軸受が知られている（特許文献 2)。

特許文献 1 :特開平 9 208982号公報

特許文献 2：特開平 11一 270566号公報

[0005] これらの試みは、冷時異音対策として低温時における油膜の安定性と、高温における長寿命化とを狙ったものであるが、単に合成炭化水素油とエステル油とを混合しただけでは、充分な冷時異音防止結果が得られていないという問題がある。

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0006] 本発明は、寒冷時における冷時異音の発生を確実に防止することができ、かつ高温における長寿命化を達成することができる耐熱および耐冷時異音性グリース組成物およびこのグリースを封入した転がり軸受の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

[0007] 本発明は、基油と増ちよう剤と添加剤とを含む耐熱および耐冷時異音性グリース組成物であって、このグリース組成物は転がり軸受に用いられるものであり、 25°Cでの混和ちよう度が 300以下であり、一 20°Cでの未混和ちよう度が 200以上であることを特徴とする。

上記グリース組成物に用いられる基油は、エーテル油、エステル油および合成炭化水素油から選ばれる少なくとも 1つの油を含み、該基油の 40°Cでの動粘度が 15 m m²/s〜200 mmVsであり、特に、合成炭化水素油を必須成分とすることを特徴とする上記グリース組成物に用いられる添加剤はポリ（メタ）アタリレートを含むことを特徴とし、また、上記基油と上記増ちよう剤との合計量に対して、上記ポリ（メタ）アタリレートが 3〜10重量％配合されてなることを特徴とする。

上記グリース組成物に用いられる増ちよう剤が、下記の化学式で示されるウレァ化合物を含むことを特徴とする。

[化 2]

O O II II

Rj— NHCNH— R,— HCNH— R,

式中、 R および R は、炭素数 6〜12の芳香族系炭化水素基、炭素数 6〜20の

1 3

脂環族系炭化水素基、炭素数 6〜20の脂肪族系炭化水素基を表し、 R および R

1 3 は同一であっても異なっていてもよレ、。 R は、炭素数 6〜12の芳香族系炭化水素

2

基を表している。

なお、ちょう度は JIS K 2220で規定される方法により測定される数値である。

[0008] 本発明のグリース封入転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する転動体とを備え、この転動体の周囲に上記耐熱および耐冷時異音性ダリース組成物を封入してなることを特徴とする。

また、グリース封入転がり軸受が、エンジン出力で回転駆動される回転軸を静止部材に回転自在に支持する自動車用電装補機に使用され、耐熱および耐冷時異音性軸受であることを特徴とする。特に上記自動車用電装補機が、ファンカップリング装置、オルタネータ、アイドラプーリ、テンションプーリ、電磁クラッチまたはコンプレッサであることを特徴とする。

発明の効果

[0009] 本発明の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物は、基油と増ちよう剤と添加剤とを含む耐熱および耐冷時異音性グリース組成物であって、 25°Cでの混和ちよう度が 300以下であり、 20°Cでの未混和ちよう度が 200以上である。上記基油はエーテル油、エステル油、合成炭化水素油から選ばれる少なくとも 1つの油を含み、該基油の 40°Cでの動粘度が 15 mmVs〜200 mmVsであり、上記添加剤はポリ（メタ）アタリレートを含む。これらのことにより、低温時の粘度低下が抑えられる。その結果、低温力高温まで広レ、温度範囲で良好な潤滑性を発揮して、低温での始動直後から冷時異音の発生を防止でき、しかも長時間にわたって高温耐久性に優れた性質を維持できる耐熱および耐冷時異音性グリース組成物となり、軸受の寿命の可及的延長を可能とする軸受封入用グリース組成物となる。

[0010] 本発明のグリース封入軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する転動体とを備え、この転動体の周囲に上記グリース組成物を封入してなる軸受であるので、低温から高温まで広い温度範囲で良好な潤滑性を発揮して、低温での始動直後から冷時異音の発生を防止でき、し力、も長時間にわたって高温耐久性に優れた性質を維持できる転がり軸受となり、転がり軸受の寿命の可及的延長が可能となる。

上記グリース封入転がり軸受が自動車用電装補機に使用される転がり軸受であるので、高温時の潤滑性能を保ちつつ、寒冷時における冷時異音の発生を確実に防止すること力 Sできる。

発明を実施するための最良の形態

[0011] 寒冷時における冷時異音の発生を確実に防止することができ、かつ高温時の長寿命化を達成することができる耐熱および耐冷時異音性グリース組成物およびグリース封入転力 Sり軸受の提供を目的として、鋭意検討を行なった結果、基油と増ちよう剤とを含む耐熱および耐冷時異音性グリース組成物であって、 25°Cでの混和ちよう度が 300以下であり、 _20°Cでの未混和ちよう度が 200以上であって、グリース組成物を構成する基油が、エーテル油、エステル油および合成炭化水素油から選ばれる少なくとも 1つの油を含み、この基油の 40°Cでの動粘度が 15 mm²/s〜200 mmVsであり、さらに添加剤としてポリ（メタ）アタリレートを含有する耐熱および耐冷時異音性ダリース組成物を封入した転がり軸受は、冷時異音の発生防止と、高温時の長寿命化とを両立できることを見出した。 25°Cでの混和ちよう度の調整により高温時の長寿命化を達成したグリース組成物に対して、 _ 20°Cでの未混和ちよう度の調整を加えることにより、寒冷時におけるグリース組成物の粘度上昇を防止し、軸受軌道面の油膜ムラの発生を抑制することによって冷時異音防止効果が増大したものと考えられる。本発明はこのような知見に基づくものである。

[0012] 本発明の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物のちょう度は、 25°Cでの混和ちよう度力 S 300以下であり、 20°Cでの未混和ちよう度が 200以上である。 25°Cでの混和ちよう度が 300をこえると高温高速運転時にグリースが漏れやすぐグリースの潤滑寿命が低下する。また、— 20°Cでの未混和ちよう度が 200未満では、冷時異音が発生しやすくなる。

[0013] 本発明の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物は、 PAO油、フィッシャートロプシュ法により合成される GTL油などの高粘度指数基油の使用、基油の粘度指数を向上させるポリ（メタ）アタリレートなどの粘度指数向上剤等の添加剤を配合することにより得られる。

[0014] 本発明に使用できるポリ（メタ）アタリレートの具体例としては、メチル (メタ）アタリレート、ェチル (メタ）アタリレート、プロピル (メタ）アタリレート、ブチル (メタ）アタリレート、ぺンチル (メタ）アタリレート、へキシル (メタ）アタリレート、ヘプチル (メタ）アタリレート、ォクチル (メタ）アタリレート、ノニル (メタ）アタリレート、デシル (メタ）アタリレート、ドデシノレ (メタ）アタリレート、テトラデシル (メタ）アタリレート、へキサデシル (メタ）アタリレート、ォクタデシル (メタ）アタリレート、ィコシル (メタ）アタリレート、ドコシル (メタ）アタリレート、テトラコシル (メタ）アタリレート、ォクタコシル (メタ）アタリレートおよびトリアコンチル (メタ）アタリレートの重合体または共重合体などが挙げられる。これらの化合物を単独またはいずれか 2種類以上混合してもよい。これらの中で好ましいのは、重量平均分子量が 2万〜 150万のポリ（メタ）アタリレートである。

[0015] 本発明に使用できる基油は、通常グリースに使用される鉱油、合成油あるいはこれらの混合油である。

具体的には、鉱油としてはパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油を挙げることができ、合成油としてはエステル油、エーテル油または合成炭化水素油等を挙げることができる。これらは任意に混合して使用してもよい。

具体的には、エーテル油としてはジアルキルフエニルエーテル油、アルキルトリフエニルエーテル油、アルキルテトラフェニルエーテル油等を、

エステル油としてはジエステル油、ポリオールエステル油またはこれらのコンプレツタスエステル油、芳香族エステル油等を挙げることができる。

また、合成炭化水素油としては PAO油等を挙げることができる。

本発明においては、耐冷時異音性と、耐高温高速耐久性とを両立させるために、耐冷時異音性を有する合成炭化水素油を必須成分として、耐高温高速耐久性に優れるエーテル油、エステル油のレ、ずれかを配合することが好ましレ、。

これらの中で、合成炭化水素油としては PAO油を、エーテル油としてはアルキルジフエニルエーテル油を、エステル油としてはポリオールエステル油を、それぞれ用いることが好ましい。

また、高温、高速での潤滑性能並びに潤滑寿命が低下しないためには、 40°Cにおける基油の動粘度は 15 mmVs 〜200 mmVsであることが好ましレ、。 15 mmVs未満では、耐熱性が低ぐ高温耐久性が劣る。また 200 mm sをこえるとトルク大となるので、発熱が大きくなり焼きつき易くなる。

[0016] 上記の PA〇油としては、通常、ひ一ォレフインまたは異性化されたひ一ォレフインのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。ひ一ォレフィンの具体例としては、 1 _ オタテン、 1 _ノネン、 1—デセン、 1—ドデセン、 1 _トリデセン、 1—テトラデセン、 1 —ペンタデセン、 1 _へキサデセン、 1 _ヘプタデセン、 1—ォクタデセン、 1 _ノナデセン、 1—エイコセン、 1—ドコセン、 1—テトラコセン等を挙げることができ、通常はこれらの混合物が使用される。

本発明に増ちよう剤として使用できるウレァ化合物は、尿素結合を分子内に 2個有するジゥレアが好ましぐ以下の化学式で示される。

[化 3] o o

II II

Rj— NHCNH— R,— HCNH— R,

R および R は、炭素数 6〜12の芳香族系炭化水素基、炭素数 6〜20の脂環族

1 3

系炭化水素基、炭素数 6〜20の脂肪族系炭化水素基を表わし、 R および R は同

1 3 一であっても異なっていてもよい。 R は、炭素数 6〜12の芳香族系炭化水素基を表

2

わす。

なお、ゥレア化合物の製造方法の一例としては、ジイソシァネートイ匕合物にイソシァネート基当量のァミン化合物を反応させて得られる。また、ジゥレア以外にポリウレァ等も使用できる。

[0018] 本発明において用いる増ちよう剤は、ゥレア化合物を必須成分として含み耐冷時異音性と、耐高温高速耐久性とを両立させるために、耐冷時異音性を有する脂肪族ァミンと、耐高温高速耐久性に優れる脂環族ァミンと、芳香族ァミンとを用いることが好ましい。

好ましいァミンとして、脂肪族アミンはォクチルァミン、脂環族アミンはシクロへキシノレアミン、芳香族ァミンは p—トルイジンを、それぞれ挙げることができる。

[0019] 本発明の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物は、上記の基油および増ちよう剤を必須成分とし、さらにポリ（メタ）アタリレートを含むものであるが、さらに従来より添加剤としてグリース組成物に添加されている、極圧剤、酸化防止剤、防鲭剤、金属不活性化剤等のグリース用添加剤を配合することができる。

極圧剤：

従来公知の極圧剤を配合することにより、耐荷重性や極圧性を向上させることができる。例えば以下の化合物を使用できる。有機金属系のものとしては、ジチォ力ルバミン酸モリブデン、ジチォリン酸モリブデン等の有機モリブデン化合物、ジチォ力ルバミン酸亜鉛、ジチォリン酸亜鉛、亜鉛フエネート等の有機亜鉛化合物、ジチォ力ルバミン酸アンチモン、ジチォリン酸アンチモン等の有機アンチモン化合物、ジチォカルバミン酸セレン等の有機セレン化合物、ナフテン酸ビスマス、ジチォ力ルバミン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、ジチォ力ルバミン酸鉄、ォクチル酸鉄等の有機鉄化合物、ジチォ力ルバミン酸銅、ナフテン酸銅等の有機銅化合物、ナフテン酸鉛、ジチォカルバミン酸鉛等の有機鉛化合物、マレイン酸スズ、ジブチルスズスルファイド等の有機スズ化合物、あるいは、アルカリ金属、アルカリ土類金属の有機スルホネート、フエネート、ホスホネート、金、銀、チタン、カドミウム等の有機金属化合物も必要なら使用できる。硫黄系化合物としては、ジベンジルジスルフイド等のスルフイドあるいはポリスルフイド化合物、硫化油脂類、無灰系力ルバミン酸化合物類、チォゥレア系化合物、もしくはチォカーボネート類等を使用することができる。リン酸系極圧剤としては、トリオクチルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物を使用すること力できる。また、その他、塩素化パラフィン等のハロゲン系の極圧剤、あるレ、は、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラフアイト、ポリテトラフルォロェチレン、硫化アンチモン、窒化硼素などの硼素化合物等の固体潤滑剤を使用することができる。

これらの極圧剤の中で、ジチォ力ルバミン酸系化合物やジチォリン酸系化合物を好適に使用できる。また、グリース組成物にポリ（メタ）アタリレートを添加する場合には、ジチォリン酸亜鉛を利用することが特に好ましい。

酸化防止剤：

酸化防止剤としては、ゴム、プラスチック、潤滑油等に添加する老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤から適宣選択して使用できる。例えば、以下の化合物が使用できる。すなわち、フエニル— 1 _ナフチルァミン、フエニル— 2_ナフチルァミン、ジフエニル一 p—フエ二レンジァミン、ジピリジルァミン、フエノチアジン、 N—メチルフエノチアジン、 N—ェチルフエノチアジン、 3， 7—ジォクチルフエノチアジン、 p， p' _ ジォクチルジフエニルァミン、 N， N'—ジイソプロピル _p—フエ二レンジァミン、 N， N 'ージ sec ブチルー p—フエ二レンジァミン等のアミン系化合物等が使用できる。

[0021] またフエノール系酸化防止剤が使用できる。フエノール系酸化防止剤としては、例えば、 2, 6 ジ t—ジブチルフエノール、 n—ォクタデシルー 3—（3', 5' ジ tert —ブチル _4—ヒドロキシフエニル）プロピオネート、テトラキス一（メチレン _ 3 _ (3'， 5 '—ジ _t _ブチル _4—ヒドロキシフエニル）プロピオネート）メタン、 2, 2 '—メチレンビス一（4—メチル _ 6 _t_ブチルフエノール）、 4， 4 '—ブチリデンビス一（3—メチル _ 6 _t_ブチルフエノール）などが挙げられる。

[0022] 防鲭剤：

防鲭剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。すなわち、有機スルホン酸のアンモニゥム塩、バリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等アルカリ金属、ァルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、有機カルボン酸塩、フエネート、ホスホネート、アルキルもしくはアルケニルこはく酸エステル等のアルキル、アルケニルこはく酸誘導体、ソルビタンモノォレエート等の多価アルコールの部分エステル、ォレオイルザルコシン等のヒドロキシ脂肪酸類、 1 メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類あるいはその金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル、 2, 5—ジメルカプト 1 , 3, 4 チアジアゾール、 2 メルカプトチアジアゾール等のチアゾール類、 2—(デシルジチォ）一べンズイミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール系化合物、あるいは、 2, 5 ビス（ドデシルジチォ）一べンズイミダゾール等のジスルフイド系化合物、あるいは、トリスノニルフエニルフォスファイト等のリン酸エステル類、ジラウリノレチォプロピオネート等のチォカルボン酸エステル系化合物等を使用することができる。また、金属表面を不動態化させる、亜硝酸塩、硝酸塩、クロム酸塩、リン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩等の腐食抑制剤も使用することができる。

金属不活性化剤：

金属不活性化剤として、例えばべンゾトリアゾールやトリルトリァゾール等のトリァゾール系化合物を使用することができる。

[0023] 油性剤：

油性剤として、例えば以下の化合物を使用することができる。すなわち、ォレイン酸ゃステアリン酸等の脂肪酸、ォレイルアルコール等の脂肪酸アルコール、ポリオキシエチレンステアリン酸エステルゃポリグリセリルォレイン酸エステル等の脂肪酸エステノレ、リン酸、トリクレジルホスフェート、ラウリル酸エステルまたはポリオキシエチレンォレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。

[0024] 本発明の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物において、ポリ（メタ）アタリレートを含めて添加剤の配合割合は、基油および増ちよう剤の合計量 100重量部に対して、 0.1〜20重量部であることが好ましい。添加剤の配合割合が、 0.1重量部未満では、添加剤を添加する効果が乏しぐまた 20重量部をこえるとグリースが軟ィ匕し洩れやすくなる。

基油の配合割合は、基油および増ちよう剤の合計量 100重量部に対して、 50〜95 重量部であることが好ましい。基油の配合割合が、 50重量部未満では、グリースが硬く低温時の潤滑性が悪レ、。また 95重量部をこえると軟質で洩れやすくなる。

増ちよう剤の配合割合は、基油および増ちよう剤の合計量 100重量部に対して 5〜 50重量部であることが好ましい。 5重量部未満では、粘度の低い液状となって漏洩しやすく軸受に密封することが困難になる。また 50重量部をこえると固化してちょう度が 100以下となるので、軸受封入用のグリースとして実用性がなくなる。

[0025] 本発明のグリース封入転がり軸受の一例を図 1に示す。図 1は深溝玉軸受の断面図である。

グリース封入転がり軸受 1は、外周面に内輪転走面 2aを有する内輪 2と内周面に外輪転走面 3aを有する外輪 3とが同心に配置され、内輪転走面 2aと外輪転走面 3aとの間に複数個の転動体 4が配置される。この複数個の転動体 4を保持する保持器 5 および外輪 3等に固定されるシール部材 6が内輪 2および外輪 3の軸方向両端開口部 8a、 8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体 4の周囲にグリース組成物 7 が封入される。

[0026] 本発明に係る自動車用電装補機の一例を図 2および図 3に示す。図 2はファンカツプリング装置の断面図である。ファンカップリング装置は、冷却用ファン 9を支持するケース 10内にシリコーンオイル等の粘性流体が充填されたオイル室 11とドライブディスク 18が組込まれた撹拌室 12とを設け、両室 11、 12間に設けられた仕切板 13にポート 14を形成し、そのポート 14を開閉するスプリング 15の端部を上記仕切板 13に固定している。

また、ケース 10の前面にバイメタル 16を取付け、そのバイメタル 16にスプリング 15 のピストン 17を設けている。バイメタル 16はラジェータを通過した空気の温度が設定温度、例えば 60 °C以下の場合、扁平の状態となり、ピストン 17はスプリング 15を押圧し、スプリング 15はポート 14を閉じる。また、上記空気の温度が設定温度をこえると、バイメタル 16は図 3に示すように、外方向にわん曲し、ピストン 17はスプリング 15の押圧を解除し、スプリング 15は弾性変形してポート 14を開放する。

上記の構成からなるファンカップリング装置の運転状態において、ラジェ一タを通過した空気の温度がバイメタル 16の設定温度より低い場合、ポート 14はスプリング 1 5によって閉じられているため、オイル室 11内の粘性流体は撹拌室 12内に流れず、その撹拌室 12内の粘性流体は、ドライブディスク 18の回転により仕切板 5に設けた流通穴 19からオイル室 11内に送られる。

このため、撹拌室 12内の粘性流体の量はわずかになり、ドライブディスク 18の回転による剪断抵抗は小さくなるので、ケース 10への伝達トルクは減少し、ファン 9は低速回転する。

ラジェータを通過した空気の温度がバイメタル 16の設定温度をこえると、図 3に示すように、ノくィメタル 16は外方向にわん曲し、ピストン 17はスプリング 15の押圧を解除する。このとき、スプリング 15は仕切板 13から離れる方向に弾性変形するため、ポート 14は開放し、オイル室 11内の粘性流体はポート 14から撹拌室 12内に流れる。このため、ドライブディスク 18の回転による粘性流体の剪断抵抗が大きくなり、ケース 10への回転トルクが増大し、転がり軸受に支持されているファン 9が高速回転するファンカップリング装置は温度の変化に応じてファン 9の回転速度が変化するため、ウォーミングアップを早めると共に、冷却水の過冷却を防止し、エンジンを効果的に冷却すること力 Sできる。エンジン温度が低いとファン 9はドライブ軸 20と切り離されているに等しぐ高温の場合は連結されているに等しい。このように、転がり軸受 1は低温から高温まで広い温度範囲および広い回転範囲で使用される。 [0027] 本発明に係る自動車用電装補機のオルタネータの一例を図 4に示す。図 4はオルタネータの断面図である。オノレタネータは、静止部材であるハウジングを形成する一対のフレーム 21a、 21bに、ロータ 22を装着されたロータ回転軸 23力一対の玉軸受 1で回転自在に支持されている。ロータ 22にはロータコイル 24が取り付けられ、口ータ 22の外周に配置されたステータ 25には、 120° の位相で 3卷のステータコイル 2 6が取り付けられている。

ロータ回転軸 23は、その先端に取り付けられたプーリ 27にベルト（図示省略）で伝達される回転トルクで回転駆動されている。プーリ 27は片持ち状態でロータ回転軸 2 3に取り付けられており、ロータ回転軸 23の高速回転に伴って振動も発生するため、特にプーリ 27側を支持する玉軸受 1は、苛酷な負荷を受ける。

[0028] 本発明に係る自動車用電装補機の駆動ベルトのベルトテンショナ一として使用されるアイドラプーリの一例を図 5に示す。図 5はアイドラプーリの断面図である。

このプーリは、鋼板プレス製のプーリ本体 28と、プーリ本体 28の内径に嵌合された単列の深溝玉軸受 1とで構成される。プーリ本体 28は、内径円筒部 28a、内径円筒部 28aの一端から外径側に延びたフランジ部 28b、フランジ部 28bから軸方向に延びた外径円筒部 28c、内径円筒部 28aの他端から内径側に延びた鍔部 28dからなる環体である。内径円筒部 28aの内径には、玉軸受 1の外輪 3が嵌合され、外径円筒部 28cの外径にはエンジンによって駆動されるベルトと接触するプーリ周面 28eが設けられている。このプーリ周面 28eをベルトに接触させることにより、プーリがアイドラとしての役割を果たす。

玉軸受 1はプーリ本体 28の内径円筒部 28aの内径に嵌合された外輪 3、図示されていない固定軸に嵌合される内輪 2、内'外輪 2、 3の転送面 2a、 3a間に組み込まれた複数の転動体 4、転動体 4を円周等間隔に保持する保持器 5、グリースを密封する一対のシール部材 6で構成され、内輪 2および外輪 3はそれぞれ一体に形成されている。

[0029] 本発明に係る自動車用電装補機の電磁クラッチおよびコンプレッサを図 6を参照して説明する。図 6は、電磁クラッチおよびスクロール型コンプレッサの断面図である。電磁クラッチ 29の動作を以下に示す。プーリ 31に組み込まれた転がり軸受 1はコンプレッサ 30のノーズ部 37に装着され、ベルト駆動で常時その外輪が回転する。ステータ 34のコイル 34aに通電すると、コンプレッサ回転軸 35に固定されたクラッチ板 36 力 Sコイル電流で発生する磁束によりプーリ 31に引き寄せられ、連結されてコンプレツサ回転軸 35を駆動する。

電磁クラッチは、上記動作によりエンジンとコンプレッサ間のトノレクの伝達と遮断、プ一リ径の選択によるコンプレッサ回転数の調達、コンプレッサ作動時の衝撃緩和と定常回転時のトルク変動吸収などの機能を有する。

スクロール型のコンプレッサ 30は、一対の渦巻き部品である可動スクロール 32と固定スクロール 33を有し、両スクロール間にできる空間が、外側から中心へ移動しながら容積を小さくし、冷媒を圧縮する構造となっている。

コンプレッサ回転軸 35の回転数は、 10000 rpm以上、最高で 12000 rpm程度となり、周辺温度も 180°C程度まで上がる場合もある。よって、図 6に示す電磁クラッチ 29 の転がり軸受 1およびコンプレッサ内の他の転がり軸受（図示省略）では、該使用条件においても十分な耐久性を備える必要がある。

実施例

[0030] 実施例 1〜実施例 6

各実施例について表 1に示す割合で基油、増ちよう剤および添加剤を配合して、グリース組成物を得た。添加剤は、増ちよう剤、基油の合計 100重量部に対する配合量を重量部で表示した。得られたグリース組成物について、ちょう度測定、冷時異音測定および高温グリース寿命試験を行ない、その結果を表 1に併記した。試験方法並びに試験条件は以下のとおりである。

[0031] 比較例 1〜比較例 6

各比較例について表 1に示す割合で基油、増ちよう剤および添加剤を配合して、グリース組成物を得た。添加剤は、増ちよう剤、基油の合計 100重量部に対する配合量を重量部で表示した。得られたグリース組成物について、実施例と同様にして、ちよう度測定、冷時異音測定および高温グリース寿命試験を行ない、その結果を表 1に併記した。試験方法並びに試験条件は以下のとおりである。

[0032] ちょう度測定：ちょう度の測定には、 JIS K2220で規定される方法により測定した。なお、 25°Cでのちよう度は 60回混和ちよう度で、 20°Cでのちよう度は未混和ちよう度で、それぞれ測定した。

[0033] 冷時異音測定：

試験プーリに組み込んだときのラジアル隙間が 0〜8 x mの転がり軸受（6203)に各実施例および各比較例にて得られたグリース組成物 0.9 gを封入し、一 60°Cの低温槽に一定時間入れた後、取り出し、室温に設置された軸受回転装置に取り付け、軸受温度が― 20°Cになった時点で、ラジアル荷重 127 Nの下で 2700 rpmの回転速度で回転させ、冷時異音の発生有無を聴覚にて確認した。

耐冷時異音性の評価は、全試験個数（ n = 10 )に対する冷時異音発生個数の割合が、 20%以下の場合に耐冷時異音性に優れていると評価して「〇」を付し、 20%未満の場合に耐冷時異音性に劣ると評価して「X」を付し、結果を表 1に併記した。

[0034] 高温グリース寿命試験：

各実施例および各比較例にて得られたグリース組成物 1.8 gを転がり軸受（6204) に封入し、アキシャル荷重 670 Nとラジアル荷重 67 Nの下で、軸受温度 150°C、回転速度 10000 rpmで回転させ、焼付けに至るまでの時間を測定した。

高温耐久性の評価は、焼付けに至るまでの時間が 500時間以上の場合に耐熱性に優れてレ、ると評価して「〇」を付し、 500時間未満の場合に耐熱性に劣ると評価して「 X」を付し、結果を表 1に併記した。

[表 1]

実施例比較例 K

〇〇〇〇〇〇〇

〇〇〇〇 O 〇〇

[0035] 表 1に示すように、 25°Cでの混和ちよう度が 300以下で、 20°Cでの未混和ちよう度を 200以上にしたグリース組成物は冷時異音が発生しにくぐ高温長寿命である。これは上記基油の配合により、寒冷時におけるグリース組成物の粘度上昇が防止され、軸受軌道面の油膜ムラの発生が抑制されたことによって、冷時異音防止効果が増大したものと考えられる。したがって、寒冷時に使用する転がり軸受、とりわけ電装補機用転がり軸受に好適に利用できる。

産業上の利用可能性

[0036] 本発明の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物は、低温から高温まで広レ、温度範囲で良好な潤滑性を発揮し、かつ低温での始動直後に冷時異音の発生を防止できるので、本発明の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物を封入した軸受は、寒冷時における自動車等の車両用軸受に好適に使用できる。

図面の簡単な説明

[0037] [図 1]転がり軸受の断面図である。

[図 2]ファンカップリング装置の断面図である。

[図 3]ファンカップリング装置の断面図である。 [図 4]ォノレタネータの断面図である。

園 5]アイドラプーリの断面図である。

[図 6]電磁クラッチおよびコンプレッサの断面図である。符号の説明

1 深溝玉軸受

2 内輪

3 外輪

4 転動体

5 保持器

6 シール部材

7 グリース組成物

8 開口部

9 冷却用ファン

10 ケース

11 才ィノレ室

12 撹拌室

13 仕切板

14 ポート

15 スプリング

16 バイメタル

17 ピストン

18 ドライブディスク

19 流通穴

20 ドライブ軸

21 フレーム

22 ロータ

23 ロータ回転軸

24 ロータコィノレステータステータコィノレプーリ

プーリ本体電磁クラッチコンプレッサプーリ

可動スクローノレ固定スクローノレステータコンプレッサ回転軸クラッチ板ノーズ部

Claims

請求の範囲

[1] 基油と増ちよう剤と添加剤とを含む耐熱および耐冷時異音性グリース組成物であつて、

該グリース組成物は転がり軸受に用いられるものであり、

25°Cでの混和ちよう度が 300以下であり、一 20°Cでの未混和ちよう度が 200以上であることを特徴とする耐熱および耐冷時異音性グリース組成物。

[2] 前記基油はエーテル油、エステル油および合成炭化水素油から選ばれる少なくとも 1つの油を含み、該基油の 40°Cでの動粘度が 15mm²/s〜 200mm²/sであることを特徴とする請求項 1記載の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物。

[3] 前記基油は、合成炭化水素油を必須成分とすることを特徴とする請求項 2記載の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物。

[4] 前記添加剤はポリ（メタ）アタリレートを含むことを特徴とする請求項 1記載の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物。

[5] 前記基油と前記増ちよう剤との合計量に対して、前記ポリ（メタ）アタリレートが 3〜10 重量％配合されてなることを特徴とする請求項 4記載の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物。

[6] 前記添加剤が、前記ポリ（メタ）アタリレートにジチォリン酸亜鉛をカ卩えたものであることを特徴とする請求項 4記載の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物。

[7] 前記増ちよう剤が、下記の化 1で示されるゥレア化合物を含むことを特徴とする請求項 1記載の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物。

[化 1] o o

II II

R,— NHCNH— R,— HCNH— R,

(式中、 R および R は、炭素数 6〜12の芳香族系炭化水素基、炭素数 6〜20の

1 3

1 は同一であっても異なっていてもよレ、。 R は、炭素数 6〜12の芳香族系炭化水素基を表している。 )

[8] 内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する転動体とを備え、この転動体の周囲にグリース組成物を封入してなる転がり軸受であって、前記グリース組成物が請求項 1記載の耐熱および耐冷時異音性グリース組成物であることを特徴とするダリース封入転がり軸受。

[9] 前記グリース封入転がり軸受が、エンジン出力で回転駆動される回転軸を静止部材に回転自在に支持する自動車用電装補機に使用され、耐熱および耐冷時異音性軸受であることを特徴とする請求項 8記載のグリース封入転がり軸受。

[10] 前記自動車用電装補機が、ファンカップリング装置、オルタネータ、アイドラプーリ、テンションプーリ、電磁クラッチまたはコンプレッサであることを特徴とする請求項 9記載のグリース封入転がり軸受。