JP2006153182A - リニアガイド - Google Patents

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Abstract

【課題】グリースを特定することで負荷容量の高いリニアガイドを提供する。
【解決手段】増ちょう剤がジウレア化合物からなり、基油が、ポリαオレフィン油、鉱油、ジエステル油、ポリオールエステル油、およびアルキル化ジフェニルエーテル油から選択される少なくとも一種からなり、基油の動粘度が40℃で20mm2 /s以上400mm2 /s以下であり、極圧添加剤として、金属ジチオカルバミン酸塩および金属ジチオリン酸塩の少なくともいずれかを、0.5質量%以上5.0質量%以下の割合で含有し、混和ちょう度が220以上320以下であるグリースで潤滑する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、各種機器および装置の位置決め用として好適なリニアガイドに関する。
リニアガイドには、転動体としてローラを用いるローラガイドがある。ローラガイドの従来例としては、図1に示すものが挙げられる。
このローラガイドは、案内レール1とスライダ2とローラ(転動体)6を備えている。案内レール1の両側面に、長手方向に延びる軌道面3が形成されている。この軌道面3は各側面の上下に、互いに直交する向きで形成されている。
スライダ2は、直動方向でスライダ本体2Aとエンドキャップ2Bとに分割され、エンドキャップ2Bが本体2Aの直動方向両端に配置されている。スライダ本体2Aの両内側面に、案内レール1の各軌道面3と平行に対向する各軌道面5が形成されている。これらの軌道面3と軌道面5で、ローラ6が負荷状態で転動する軌道が形成される。また、スライダ本体2Aの脚部4には、直線状の戻し路7が形成されている。この戻し路7は、脚部4に貫通孔41を形成し、この貫通孔41に合成樹脂製のチューブ71を挿入することで形成されている。
エンドキャップ2Bの内面には、図1に一点鎖線で示す配置で、軌道と戻し路23を連通する方向転換路8が形成されている。この方向転換路8と軌道と戻し路23により、ローラ6を無限に循環させる循環経路が形成される。そして、二対四列の各循環経路をローラ6が転動することによって、スライダ2が案内レール1に沿ってスライドする。なお、ローラ6は合成樹脂製の保持部材9で保持されている。
このようなリニアガイドの潤滑には、従来より、増ちょう剤がリチウム石けんであり、基油が鉱油またはポリαオレフィンであるグリースが使用されている。
近年、工作機械等の高性能化に伴って、高負荷に耐えられる(負荷容量の大きな)ローラガイドが求められている。この場合には、前述のリチウム石けん−鉱油またはポリαオレフィン系グリースに極圧剤を添加したものを使うことが多い(特許文献1等参照)。
特開2001−139975号公報
しかしながら、リチウム石けん−鉱油またはポリαオレフィン系グリースに極圧剤を添加すると、いわゆる剪断安定性が低下し、往復動で使用されるリニアガイドでは、軟化流出の度合が大きいため、多くの場合、頻繁にグリースを供給することが求められるという問題点がある。
本発明の課題は、グリースを特定することで負荷容量の高いリニアガイドを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のリニアガイドは、案内レールとスライダと複数個の転動体とで構成され、案内レールの幅方向両側面に、転動体の軌道面が形成され、スライダは案内レールの幅方向両側に配置される脚部を有し、その両脚部の内側面に、案内レールの軌道面に対向配置される軌道面を有し、この軌道面と案内レールの軌道面とにより、転動体が負荷状態で転動する軌道が形成され、前記両脚部に転動体の戻し路が形成され、前記両脚部にはまた、前記戻し路と前記軌道を連通させる方向転換路が形成され、前記軌道、戻し路、および方向転換路で構成された循環経路内を転動体が転動することにより、案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直動するリニアガイドにおいて、増ちょう剤がジウレア化合物(好ましくは芳香族ジウレア化合物)からなり、基油が、ポリαオレフィン油、鉱油、ジエステル油、ポリオールエステル油、およびアルキル化ジフェニルエーテル油から選択される少なくとも一種からなり、基油の動粘度が40℃で20mm2 /s以上400mm2 /s以下であり、極圧添加剤として、金属ジチオカルバミン酸塩および金属ジチオリン酸塩の少なくともいずれかを、0.5質量%以上5.0質量%以下の割合で含有し、混和ちょう度が220以上320以下であるグリースで潤滑されていることを特徴とする。
増ちょう剤のジウレア化合物は、下記の(1)式および(2)式で示されるものであって、(1)式および(2)式中の「R1−」および「R2−」が、下記の(3)式で表されるp−トリル基および(4)式で表されるシクロヘキシル基のいずれかであるものが好ましい。R1とR2は同じであっても異なるものであってもよい。
Figure 2006153182
Figure 2006153182
Figure 2006153182
Figure 2006153182
増ちょう剤のジウレア化合物は、また、前記(5)式および(6)式で示され、(5)式および(6)式中の「R1−」および「R2−」が炭素数8以上18以下の直鎖アルキル基であるものが好ましい。R1とR2は同じであっても異なるものであってもよい。
Figure 2006153182
Figure 2006153182
極圧添加剤は、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸亜鉛、およびジチオリン酸モリブデンから選択される少なくとも一つであり、基油はポリαオレフィン油または鉱油であることが好ましい。
本発明のリニアガイドによれば、使用するグリースの増ちょう剤がダンパー性に優れたジウレア化合物からなるため、特に、転動体がローラであるローラガイドのように、戻し路の内壁とローラとの衝突が避けられない場合でも、衝突時に発生する応力が緩和できる。そして、増ちょう剤をジウレア化合物に特定するとともに、基油および極圧添加剤を前述のように特定することにより、リニアガイドの負荷容量を大きくすることができる。
なお、グリースの基油の動粘度が40℃で20mm2 /s未満であると、油膜の形成が不十分となって、耐摩耗性が損なわれる。グリースの基油の動粘度が40℃で400mm2 /sを超えると、粘性抵抗が高くなって、リニアガイドの動トルクが大きくなる。
また、グリースの混和ちょう度が220未満であると、グリースが硬すぎてリニアガイドの起動トルクが増大し、グリースの混和ちょう度が320よりも大きいと、グリースが柔らかすぎてリニアガイドから漏洩する恐れがある。
本発明によれば、リニアガイドを特定のグリースで潤滑することにより、リニアガイドの負荷容量を、例えば、増ちょう剤がリチウム石けん、基油がポリαオレフィンであり、極圧添加剤を含有しないグリースで潤滑した場合の2倍以上にすることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示す構造のリニアガイドとして、日本精工(株)製のローラガイド「RA 35 1000 AN C」を用意し、下記の表1に示す組成の各グリースで潤滑して、許容荷重を調べる試験を行った。
グリースの増ちょう剤としては、下記の(7)式で表されるジウレア、すなわち(1)式のジウレアで「R1−」および「R2−」が(3)式で表されるp−トリル基であるものと、下記の(8)式で表されるジウレア、すなわち(1)式のジウレアで「R1−」および「R2−」が(4)式で表されるシクロヘキシル基であるものを用意した。
Figure 2006153182
Figure 2006153182
また、下記の(9)式で表されるジウレア、すなわち(5)式のジウレアで「R1−」および「R2−」が「CH3 (CH2 17−」であるものと、下記の(10)式で表されるジウレア、すなわち(5)式のジウレアで「R1−」および「R2−」が「CH3 (CH2 7 −」であるものを用意した。
Figure 2006153182
Figure 2006153182
さらに、下記の(11)式で表されるジウレア、すなわち(2)式のジウレアで「R1−」および「R2−」が(4)式で表されるp−トリル基であるものを用意した。
Figure 2006153182
また、リチウム石けん(昭和シェル石油(株)製の「アルバニアEP No. 2」)も用意した。
基油としては、ポリαオレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、鉱油、アルキルジフェニルエーテルを用意した。
極圧添加剤としては、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)を用意した。
そして、いずれのグリースも、混和ちょう度が280となるように増ちょう剤添加量を調節した。
得られた各グリースをグリースニップルからリニアガイド内に供給して、一定荷重を掛けた状態で、動トルクを測定しながら往復運動させる試験を、初期荷重を1kNとし、100km往復運動させる毎に荷重を1kNずつ増加させて段階的に行った。往復運動の速度は1.0m/sとし、雰囲気温度は室温とした。また、この試験は、トルク測定値が基準値を超えるとリニアガイドの往復運動が停止する仕組みの試験装置を用いて行った。そして、リニアガイドの往復運動が停止した(トルク測定値が基準値を超えた)時点で掛けていた荷重を、許容荷重として測定した。途中でグリースの供給は行わなかった。
得られた許容荷重を、従来のグリースであるNo. 19のグリースを用いた場合の許容荷重で除算することにより、許容荷重比を算出した。この結果を、各グリースの組成とともに下記の表1に示す。
Figure 2006153182
表1に示すように、増ちょう剤として(5)式〜(9)式で表されるいずれかを用い、基油として、ポリαオレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、鉱油、またはアルキルジフェニルエーテルであって、40℃での動粘度が20または30mm2 /sであるものを用い、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、およびジチオリン酸モリブデン(MoDTP)の少なくとも一つを0.5質量%以上5.0質量%以下の範囲で含有するグリースで潤滑すること(No. 1〜18)により、増ちょう剤がリチウム石けんで基油がポリαオレフィンで極圧添加剤を含有しないグリースで潤滑した場合(No. 19)と比較して、リニアガイドの許容荷重を2.2〜3.1倍にすることができる。
増ちょう剤の種類、基油の種類および動粘度、極圧添加剤の種類が同じで、極圧添加剤の含有率のみが異なるNo. 1、5、6、13、21、22の結果について、極圧添加剤の含有率と許容荷重比との関係を図2のグラフに示した。このグラフから、極圧添加剤(MoDTP)の含有率を0.5質量%以上5.0質量%以下とすることで、0.3質量%および6.0質量%の場合よりも許容荷重比が著しく高くなることが分かる。
増ちょう剤の種類、基油の種類、極圧添加剤の種類および含有率が同じで、基油の動粘度のみが異なるNo. 1、19、20の結果から、基油(ポリαオレフィン)の40℃での動粘度を20mm2 /sまたは30mm2 /sとすることで、基油(ポリαオレフィン)の40℃での動粘度が15mm2 /sの場合(No. 20)の1.4〜1.5倍の許容荷重にできることが分かる。
基油の種類のみが異なるNo. 1、11、12、14、15の結果から、ジエステル、ポリオールエステル、アルキルジフェニルエーテルのように、極性の大きな分子構造の基油よりも、ポリαオレフィンや鉱油のように分子構造が無極性である基油を用いる方が、許容荷重を大きくできることが分かる。これは、極圧添加剤は基油との相溶性が良好なほど極圧添加剤としての作用を発揮し難く、MoDTP(金属ジチオリン酸塩、金属ジチオカルバミン酸塩)は極性の大きな分子構造の基油との相溶性が良好なためである。
極圧添加剤の種類のみが異なるNo. 1〜4、16、17の結果から、極圧添加剤としてモリブデン系と亜鉛系の混合物を用いる(No. 16,17)ことで、いずれかを単独で用いた場合(No. 1〜4)よりも許容荷重を大きくできることが分かる。これは、亜鉛系極圧添加剤が酸化防止剤としての機能を発揮することで、モリブデン系極圧添加剤が極圧添加剤としての機能を十分に発揮できるためである。なお、No. 16と17では、モリブデン系と亜鉛系の各極圧添加剤を質量比で1:1の割合で添加した。
リニアガイドの構造の一例を示す正面図である。 極圧添加剤(MoDTP)の含有率と許容荷重比との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 案内レール
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
3 軌道面
4 脚部
41 貫通孔
5 軌道面
6 ローラ(転動体)
7 戻し路
71 チューブ
8 方向転換路
9 保持部材

Claims (5)

  1. 案内レールとスライダと複数個の転動体とで構成され、
    案内レールの幅方向両側面に、転動体の軌道面が形成され、
    スライダは案内レールの幅方向両側に配置される脚部を有し、その両脚部の内側面に、案内レールの軌道面に対向配置される軌道面を有し、この軌道面と案内レールの軌道面とにより、転動体が負荷状態で転動する軌道が形成され、
    前記両脚部に転動体の戻し路が形成され、前記両脚部にはまた、前記戻し路と前記軌道を連通させる方向転換路が形成され、
    前記軌道、戻し路、および方向転換路で構成された循環経路内を転動体が転動することにより、案内レールおよびスライダの一方が他方に対して相対的に直動するリニアガイドにおいて、
    増ちょう剤がジウレア化合物からなり、
    基油が、ポリαオレフィン油、鉱油、ジエステル油、ポリオールエステル油、およびアルキル化ジフェニルエーテル油から選択される少なくとも一種からなり、
    基油の動粘度が40℃で20mm2 /s以上400mm2 /s以下であり、
    極圧添加剤として、金属ジチオカルバミン酸塩および金属ジチオリン酸塩の少なくともいずれかを、0.5質量%以上5.0質量%以下の割合で含有し、
    混和ちょう度が220以上320以下であるグリースで潤滑されていることを特徴とするリニアガイド。
  2. 増ちょう剤のジウレア化合物は、下記の(1)式および(2)式で示されるものである請求項1記載のリニアガイド。
    Figure 2006153182
    Figure 2006153182
    (1)式および(2)式中、「R1−」および「R2−」は、下記の(3)式で表されるp−トリル基および(4)式で表されるシクロヘキシル基のいずれかであり、(1)式および(2)式中で、R1とR2は同じであっても異なるものであってもよい。
    Figure 2006153182
    Figure 2006153182
  3. 増ちょう剤のジウレア化合物は、下記の(5)式および(6)式で示されるものである請求項1記載のリニアガイド。
    Figure 2006153182
    Figure 2006153182
    (5)式および(6)式中、「R1−」および「R2−」は、炭素数8以上18以下の直鎖アルキル基であり、R1とR2は同じであっても異なるものであってもよい。
  4. 極圧添加剤は、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸亜鉛、およびジチオリン酸モリブデンから選択される少なくとも一つであり、
    基油はポリαオレフィン油または鉱油である請求項1、2、3のいずれか1項に記載のリニアガイド。
  5. 転動体がローラである請求項1〜4のいずれか1項に記載のリニアガイド。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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