JP2013174334A

JP2013174334A - ハードディスクドライブ装置のアクチュエータ用転がり軸受

Info

Publication number: JP2013174334A
Application number: JP2012040232A
Authority: JP
Inventors: Kentaro Sakagami; 賢太郎坂上; Takashi Shimokawa; 隆志下川; Shigeki Maehara; 茂樹前原; Toru Nanasawa; 透七澤; Naoto Horiuchi; 直人堀内
Original assignee: NSK Ltd
Current assignee: NSK Ltd
Priority date: 2012-02-27
Filing date: 2012-02-27
Publication date: 2013-09-05

Abstract

【課題】低トルク化や耐久性能向上とともに、アウトガスの発生量を抑えたハードディスクドライブ装置のアクチュエータ用転がり軸受を提供する。
【解決手段】内外輪のビッカース硬度が７２０〜７８０、転動体表面のビッカース硬度が９４５〜１０５０の何れか一方もしくは両方であり、かつ、動粘度が４０〜８０ｍｍ^２／ｓ（４０℃）のポリα−オレフィン油を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、金属カルバミン酸塩を０．１〜５質量％の割合で添加してなるグリース組成物を封入したハードディスクドライブ装置のアクチュエータ用転がり軸受。
【選択図】図１

Description

本発明は、ハードディスクドライブ装置（以下「ＨＤＤ」と称する）の構成部品であるアクチュエータ（特にスイングアーム）に組込まれる転がり軸受に関する。

近年のＨＤＤの高記録密度化、高精度化及び小型化（薄肉化）に伴うボイスコイルモータ（ＶＣＭ）の出力低下に対応するため、アクチュエータに組み込まれる軸受ユニットには低トルク化や耐久性能向上が要求されている。このような要求に対して、特許文献１では、鉱油を基油とし、モリブデン化合物や有機脂肪酸化合物、有機リン酸化合物から選ばれる極圧剤を添加したグリース組成物を封入することを提案している。

しかしながら、特許文献１に記載のグリース組成物は、鉱油からのアウトガスが多く、発生したアウトガス由来の異物が磁気ディスク面に付着することが多い。その結果、磁気ディスクと磁気ヘッドとが吸着を起こして正常な読み込み／書き込みができなくなる。ＨＤＤ装置では、薄肉化に伴ってフライングハイトが極端に狭くなってきており、磁気ディスク上への異物の付着は致命的な障害になりかねない。

特開２００３−２３９９５４号公報

本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、低トルク化や耐久性能向上とともに、アウトガスの発生量を抑えたＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受を提供することを目的とする。

上記課題を解決するために本発明は、以下のＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受を提供する。
（１）内外輪のビッカース硬度が７２０〜７８０で、転動体表面のビッカース硬度が９４５〜１０５０であり、かつ、
動粘度が４０〜８０ｍｍ^２／ｓ（４０℃）のポリα−オレフィン油を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、金属カルバミン酸塩を０．１〜５質量％の割合で添加してなるグリース組成物を封入したことを特徴とするＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受。
（２）転動体表面のビッカース硬度が９４５〜１０５０であり、かつ、
動粘度が４０〜８０ｍｍ^２／ｓ（４０℃）のポリα−オレフィン油を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、金属カルバミン酸塩を０．１〜５質量％の割合で添加してなるグリース組成物を封入したことを特徴とするＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受。
（３）内外輪のビッカース硬度が７２０〜７８０であり、かつ、
動粘度が４０〜８０ｍｍ^２／ｓ（４０℃）のポリα−オレフィン油を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、金属カルバミン酸塩を０．１〜５質量％の割合で添加してなるグリース組成物を封入したことを特徴とするＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受。
（４）前記金属カルバミン酸塩が、カルバミン酸の亜鉛塩またはモリブデン塩であることを特徴とする上記（１）〜（３）の何れか１項に記載のＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受。

本発明のＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受は、内外輪や転動体表面の硬度を規定して耐久性を向上させるとともに、封入グリース組成物において、基油として低アウトガス性のポリα−オレフィン油を用いたため、アウトガス由来の異物が磁気ディスク面に付着することが抑えられ、装置の薄肉化に大きく貢献する。

ＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受の一例を示す断面図である。

以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。

本発明のＨＤＤのアクチュエータ用転がり軸受（以下、単に「転がり軸受」という）は、その構成自体には制限が無く、例えば図１に示されるように、外周面に内輪軌道１を有する内輪２と、内周面に外輪軌道３を有する外輪４とを同心に配置し、内輪軌道１と外輪軌道３との間に複数個の玉５を保持器７により転動自在に設け、内輪２と外輪４との隙間をシール部材６で密封して構成される。そして、内輪２、外輪４及び玉５で形成される軸受内部空間にグリース組成物（図示せず）を封入して構成される。

本発明では、内輪２及び外輪４を、ビッカース硬度で７２０〜７８０とする。更に、玉５の表面のビッカース硬度を９４５〜１０５０とする。内輪２、外輪４、玉５をこのような硬度にするには、浸炭処理や浸炭窒化処理等の硬化処理を行えばよい。そして、このような硬度にすることにより、転がり軸受の耐久性を高めることができる。尚、内輪２と外輪４とを同じビッカース硬度にしてもよく、それぞれを異なるビッカース硬度とすることもできる。

グリース組成物の基油も、ポリα−オレフィン油を用いる。ポリα−オレフィン油は、鉱油に比べて低アウトガスであり、磁気ディスク面にアウトガス由来の異物の付着を抑える。また、潤滑性を維持しつつ低トルク化を図るために、動粘度を４０〜８０ｍｍ^２／ｓ（４０℃）とする。

また、増ちょう剤には、耐熱性に優れるジウレア化合物を用いる。ジウレア化合物には制限はなく、脂肪族ジウレア化合物、脂環式ジウレア化合物及び芳香族ジウレア化合物から適宜選択することができる。尚、増ちょう剤量には制限はない。

グリース組成物には、金属カルバミン酸塩が添加される。ＨＤＤのスイングアームは往復動を繰り返すため、転がり軸受に封入されるグリース組成物に金属カルバミン酸塩を添加して耐フレッチング摩耗性を付与する。金属カルバミン酸塩は、他の極圧剤に比べてポリα−オレフィン油との親和性に優れ、アウトガスの発生を抑える効果もある。中でも、ジアルキルジチオカルバミン産亜鉛（Ｚｎ−ＤＴＣ）やジアルキルジチオカルバミ酸モリブデン（Mo−ＤＴＣ）のようなカルバミン酸の亜鉛塩及びモリブデン塩が好ましい。

金属カルバミン酸塩の添加量は、グリース全量の０．１〜５質量％である。添加量が０．１質量％未満では耐フレッチング摩耗性が不十分となる。但し、５質量％を超えて添加しても耐フレッチング摩耗性が飽和して不経済となるばかりでなく、アウトガスの発生量も多くなる。

また、金属カルバミン酸塩は、単独で添加してもよく、２種以上を混合して添加してもよい。但し、２種以上を混合する場合は、合計量で上記の添加量とする。

尚、グリース組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の添加物を添加してもよい。例えば、フェニル−１−ナフチルアミン等のアミン系、２−ｔｅｒｔ−ブチルフェノール等のフェノール系、硫黄系、ジチオリン酸系等の酸化防止剤；アルカリ金属およびアルカリ土類金属等の有機スルホン酸塩、アルキル、アルケニルコハク酸エステル等のアルキル、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル等の防錆剤；脂肪酸、動植物油等の油性向上剤；ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤等をそれぞれ単独で、あるいは適宜組み合わせて添加することができる。

グリース組成物は、一般的なウレア系グリースと同様の方法により製造することができ、例えばポリα−オレフィン油中でイソシアネート成分とアミン成分とを反応させることにより製造することができる。

以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。

（実施例１〜３、比較例１〜８）
日本精工（株）製名番「ＳＭＲ８５Ａ１０−Ｈ−２６Ｔ１２Ｃ」（内径５ｍｍ、外径８ｍｍ、幅２．５ｍｍ）を基に、内外輪のビッカース硬度を７２０〜７８０、玉表面のビッカース硬度を９４５〜１０５０に調整した。そして、表１に示す組成のグリース組成物を保持器乗せで１．２ｍｇずつ封入した後、２個１組で各６５０ｇの予圧を付与し、ピボット軸受ユニットを作製した。各ピボット軸受ユニットを用いて下記に示す耐久試験を行い、試験前後のトルク値を測定した。

（耐久試験）
・揺動試験
揺動角度：１８°
周波数：１００Ｈｘ
総シーク回数：１億シーク
雰囲気温度：５５℃
・トルク測定
雰囲気温度：２５℃
回転測定：２ｒｐｍ
測定角度：７２０°
揺動試験前後にトルク測定を行い、各ピボット軸受ユニットの平均トルク比（試験後トルク平均値／試験前トルク平均値）を求めた。そして、下記基準により評価し、評価結果を表１に併記した。
トルクの上昇がほとんど見られない・・・◎
平均トルク比が１より大きく１．５以下・・・〇
平均トルク比が１．５より大きく２．０以下・・・△
平均トルク比が２．０より大きい・・・×

また、調製したグリース組成物について、下記のアウトガス試験を行った。
（アウトガス試験）
各グリース組成物１０ｍｇを容器に入れ、一定量の空気を送りながら１００℃に１時間加熱した。その際、空気の排出口に吸着管を取り付け、アウトガスのサンプリングを行った。その後、各吸着管を質量分析型ガスクロマトグラフィー（ＧＣＭＳ）にて分析し、発生した炭化水素の量を測定した。そして、比較例６のグリース組成物の測定値を基に、下記基準により評価し、評価結果を表１に併記した。
炭化水素量が比較例６の８０％未満・・・◎
炭化水素量が比較例６の８０％以上１１０％未満・・・〇
炭化水素量が比較例６の１１０％以上１３０％未満・・・△
炭化水素量が比較例６の１３０％以上・・・×

表１に示すように、本発明に従う実施例では、耐久性に優れるとともに、低アウトガスでもある。

これに対し、内外輪及び玉が共通でも、ジアルキルジチオリン酸亜鉛（Ｚｎ−ＤＴＰ）や亜リン酸エステル、オレイン酸を添加したグリース組成物を用いた比較例１〜４では、耐久性に劣り、更には亜リン酸エステルまたはオレイン酸を添加した比較例３、４ではアウトガスも多くなっている。また、比較例５のようにＺｎ−ＤＴＣが５質量％を超えるとアウトガス量が多くなる。また、比較例７、８では基油が鉱油を含むため、アウトガスが多くなっている。

１内輪軌道
２内輪
３外輪軌道
４外輪
５玉
６シール部材
７保持器

Claims

内外輪のビッカース硬度が７２０〜７８０で、転動体表面のビッカース硬度が９４５〜１０５０であり、かつ、
動粘度が４０〜８０ｍｍ^２／ｓ（４０℃）のポリα−オレフィン油を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、金属カルバミン酸塩を０．１〜５質量％の割合で添加してなるグリース組成物を封入したことを特徴とするハードディスクドライブ装置のアクチュエータ用転がり軸受。
転動体表面のビッカース硬度が９４５〜１０５０であり、かつ、
動粘度が４０〜８０ｍｍ^２／ｓ（４０℃）のポリα−オレフィン油を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、金属カルバミン酸塩を０．１〜５質量％の割合で添加してなるグリース組成物を封入したことを特徴とするハードディスクドライブ装置のアクチュエータ用転がり軸受。
内外輪のビッカース硬度が７２０〜７８０であり、かつ、
動粘度が４０〜８０ｍｍ^２／ｓ（４０℃）のポリα−オレフィン油を基油とし、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、金属カルバミン酸塩を０．１〜５質量％の割合で添加してなるグリース組成物を封入したことを特徴とするハードディスクドライブ装置のアクチュエータ用転がり軸受。
前記金属カルバミン酸塩が、カルバミン酸の亜鉛塩またはモリブデン塩であることを特徴とする請求項１〜３の何れか１項に記載のハードディスクドライブ装置のアクチュエータ用転がり軸受。