JP5531288B2 - 光学異性体用分離剤 - Google Patents
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Description
従来より、クロマトグラフィーによる光学分割は、分析化学、有機化学、医学、薬学など多方面で非常に注目されており、多くのキラル固定相が世界中で報告されている。特に光学活性高分子であるセルロースやアミロースのような多糖を化学的に修飾したエステル誘導体やカルバメート誘導体等は、キラル固定相として高い光学分割能を有し、これを用いたクロマトグラフィー用充填剤が広く知られている。これらの高分子化合物誘導体を用いたクロマトグラフィー用充填剤は、カラムへの充填率を高め、ハンドリングを容易にし、機械的強度を高める等の目的から、シリカゲル等の担体に担持させた状態で使用されている。
しかし、無機担体上へ担持できる高分子化合物誘導体の量にも限界があり、光学異性体の大量分取に最適な分離剤について、更なる開発の余地があった。
しかし、かかる光学異性体用分離剤は有機化合物のみから構成されているため、その機械的強度が低く、高圧、高流速での使用が制限される。また、有機化合物が膨潤、収縮するため、分析の途中で使用溶媒を変えることができないという問題もある。
本発明による、上記一般式(I)で表わされた化合物で修飾されてなる高分子化合物誘導体と、上記一般式(II)〜(V)で表わされた化合物の一種以上と、を反応させてなる複合体は機能材料として極めて有用であり、特に光学異性体の分離に用いる分離剤の作製に有効に用いられる。
本発明の複合体では、光学異性体の分離に寄与する高分子化合物誘導体の割合が高いので、光学異性体の分離に用いる分離剤として用いた場合、一度に大量の光学異性体を分離することができる。
また、本発明の複合体は、該複合体中に三次元的に架橋している無機物を含むので、光学異性体の分離に用いる分離剤として用いた場合、機械的強度が高い。
また、本発明の複合体において、高分子化合物誘導体と三次元的に架橋している無機物とが化学的に結合しているので、高分子化合物誘導体を溶解するような溶媒を使用することも可能になり、耐溶剤性に優れる。
また、本発明の複合体は、該複合体中にアルコキシシリル基と反応する官能基を有する化合物を含むので、光学異性体の分離に用いる分離剤として用いた場合、膨潤・収縮が抑えられ、分析のみならず分取用途にも適している。
本発明に用いる高分子化合物誘導体は、水酸基又はアミノ基を有する高分子化合物の水酸基又はアミノ基の一部が、下記一般式(I)で表わされた化合物で修飾されてなる。
この中で、好ましいものは、高純度の多糖を容易に得ることのできるセルロース、アミロース、β−1,4−キトサン、キチン、β−1,4−マンナン、β−1,4−キシラン、イヌリン、カードランなどであり、さらに好ましくは、セルロース、アミロースである。
上記一般式(I)で表された化合物の上記水酸基又はアミノ基を有する高分子化合物の水酸基又はアミノ基への導入位置は、特に限定されない。
また、上記「一部」とは、上記一般式(I)で表された化合物の、水酸基又はアミノ基を有する高分子化合物の水酸基又はアミノ基への導入率として表すことが可能である。該導入率は、1.0〜35%が好ましく、1.5〜20%がより好ましく、2.0〜10%が特に好ましい。この理由については、上記一般式(I)で表された化合物の導入率が1.0%よりも小さいと高分子化合物誘導体及びビーズの収率が低下するために好ましくなく、35%を超えると光学分割能が低下するためである。
上記官能基は、分離対象の光学異性体を含有する試料中の光学異性体に作用する官能基である。光学異性体に対する官能基の作用は、分離対象の光学異性体の種類に応じて官能基の種類が異なるので一概には言えないが、上記高分子化合物誘導体による上記光学異性体の光学分割を行うのに十分な程度の作用であれば特に限定されない。上記官能基としては、置換基を有していても良い芳香族基を含む基や、環状構造を有する脂肪族基等が挙げられる。上記芳香族基は、複素環や縮合環を含むことも可能である。上記芳香族基が有していても良い置換基としては、例えば炭素数8程度までのアルキル基、ハロゲン、アミノ基、アルコキシル基等が挙げられる。上記官能基は、分離対象の上記光学異性体の種類に応じて選択される。
本発明の複合体の作製に用いられる高分子化合物誘導体は、次のようにして製造することができる。すなわち、本発明に用いる高分子化合物誘導体の第一の製造方法は、少なくとも、溶解された水酸基又はアミノ基を有する高分子化合物を、上記一般式(I)で表わされた化合物以外の化合物で水酸基又はアミノ基を有する高分子化合物の水酸基又はアミノ基を修飾する第1修飾工程と、
上記第1修飾工程において、上記一般式(I)で表わされた化合物以外の化合物で修飾されていない上記高分子化合物の水酸基又はアミノ基を上記一般式(I)で表わされた化合物で修飾する第2修飾工程とを含む。
上記第1修飾工程及び第2修飾工程は、第1修飾工程、第2修飾工程の順番に実施することが、上記一般式(I)で表された化合物を、上記高分子化合物に効率的かつ制御的に導入するために好ましい。
なお、本発明における高分子化合物誘導体における、少なくとも光学異性体に作用する官能基と水酸基又はアミノ基と反応し得る官能基とを有する化合物の導入位置は、特に限定されるものではない。
なお、本発明における高分子化合物誘導体における、上記一般式(I)で表わされた化合物の導入位置は、特に限定されるものではない。上記、第2修飾工程終了時に未反応の水酸基又はアミノ基が存在する場合は、第1修飾工程で使用した官能基を有する化合物と反応させる。
水酸基又はアミノ基への保護基の導入、修飾する化合物による水酸基又はアミノ基の修飾は、水酸基又はアミノ基と反応させる化合物の種類に応じた公知の適当な反応によって行うことができる。また脱離工程における前記保護基の水酸基又はアミノ基からの脱離は、特に限定されず、例えば酸やアルカリによる加水分解等の公知の方法によって行うことができる。
(1)上記一般式(I)で表わされた化合物を導入する前の高分子化合物誘導体の元素分析値から、上記一般式(I)で表わされた化合物以外の化合物の高分子化合物誘導体における導入率を求める。その後、上記一般式(I)で表わされた化合物を導入した高分子化合物誘導体の上記一般式(I)で表わされた化合物以外の化合物の官能基のプロトンと、上記一般式(I)で表わされた化合物のケイ素に直接結合している官能基のプロトンの比から、高分子化合物誘導体におけるシリル基の導入率を算出し、これを高分子化合物誘導体における上記一般式(I)で表わされた化合物の導入率とする。
(2)修飾工程の終了後、本発明の高分子化合物誘導体の水酸基又はアミノ基が修飾基により完全に修飾されていると仮定して、上記一般式(I)で表わされた化合物以外の化合物の官能基のプロトンと、上記一般式(I)で表わされた化合物のケイ素に直接結合している官能基のプロトンの比を求め、高分子化合物誘導体における上記一般式(I)で表わされた化合物の導入率を計算する。
(1)一般式(II)〜(IV)で表わされた化合物
本発明に用いられる下記一般式(II)〜(IV)で表わされた化合物は、上記一般式(I)で表わされた化合物のYの基と反応可能なものであって、本発明の複合体の作製に用い得るものであれば特段の限定なく使用できる。
上記一般式(II)において、Mはケイ素(Si)が好ましく、R1は炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。また、R2のアリール基が有してもよい置換基には、例えば、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアルキルチオ、シアノ、ハロゲン、炭素数1〜8のアシル、炭素数1〜8のアシルオキシ、ヒドロキシ、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル、ニトロ、アミノ、及びジ(炭素数1〜8のアルキル)アミノ基等が挙げられる。R2はメチル基またはフェニル基が好ましく、nは3または4が好ましい。
本発明の複合体の作製時に用いる上記一般式(II)〜(IV)で表わされた化合物の量については、後述するように複合体中の有機物の含有量が好適なものとなるように、適宜調節して用いることができる。
本発明に用いられる下記一般式(V)で表わされた化合物は、上記一般式(I)で表わされた化合物のYの基と反応可能なものであって、本発明の複合体の作製に用い得るものであれば特段の限定なく使用できる。
上記R3、R4、R5及びR6のアリール基及びXのアルキレン基またはアリーレン基が有してもよい置換基には、例えば、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアルキルチオ、シアノ、ハロゲン、炭素数1〜8のアシル、炭素数1〜8のアシルオキシ、ヒドロキシ、炭素数1〜12のアルコキシカルボニル、ニトロ、アミノ、及びジ(炭素数1〜8のアルキル)アミノ基等が挙げられる。
本発明の複合体の作製時に用いる上記一般式(V)で表わされた化合物の量については、後述するように複合体中の有機物の含有量が好適なものとなるように、適宜調節して用いることができる。
上記一般式(II)〜(IV)で表わされた化合物の一種以上と上記一般式(V)で表わされた化合物の一種以上とを組み合わせて用いる場合における、これらの化合物の総量は、後述するように複合体中の有機物の含有量が好適なものとなるように、適宜調節して用いることができる。
本発明の複合体は、上記高分子化合物誘導体と、上記一般式(II)〜(V)で表される化合物の一種以上と、を反応させてなる。本発明の複合体における上記高分子化合物誘導体の含有量は、光学異性体の分離能力の観点から、複合体全量に対して10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%が特に好ましい。
[数1]
高分子化合物誘導体の含有量(重量%)= A−B(100−A)/(100−B)
上記Aは、複合体における有機物の含有量(重量%)を示し、上記Bは、複合体の作製に用いた上記一般式(II)で表わされた化合物に由来する有機物の含有量(重量%)を示す。
[数2]
高分子化合物誘導体の含有量(重量%)= A−C(100−A)/(100−C)
上記Aは、複合体における有機物の含有量(重量%)を示し、上記Cは、複合体の作製に用いた上記一般式(V)で表わされた化合物に由来する有機物の含有量(重量%)を示す。
[数3]
高分子化合物誘導体の含有量(重量%)= A−{B[a/(a+b)]+C[b/(a+b)]}(100−A)/〔100−{B[a/(a+b)]+C[b/(a+b)]}〕
上記Aは、複合体における有機物の含有量(重量%)を示し、上記Bは、複合体の作製に用いた上記一般式(II)で表わされた化合物に由来する有機物の含有量(重量%)を示し、上記Cは、複合体の作製に用いた上記一般式(V)で表わされた化合物に由来する有機物の含有量(重量%)を示し、a及びbは、それぞれ、複合体の作製時に混合される上記一般式(II)で表わされた化合物と上記一般式(V)で表わされた化合物のモル比を示す。
なお、上記一般式(II)〜(IV)で表わされた化合物と上記一般式(V)で表わされた化合物をそれぞれ二種以上用いる場合でも、各化合物に由来する有機物の含有量を同様の方法で算出し、各化合物のモル比を用いて上記と同様の計算方法により、複合体における有機物の含有量を算出することができる。
本発明の複合体は、例えば、上記高分子化合物誘導体と、上記一般式(II)〜(V)で表される化合物の一種以上とを、あらかじめ酸と混合し部分架橋を行い、これらを界面活性剤水溶液に滴下することによって作製することができる。
本発明は、上記高分子化合物誘導体と上記一般式(II)〜(V)で表された化合物の一種以上とを反応させてなる複合体の具体的な一つの形態としてビーズを提供する。本発明におけるビーズとは、ほぼ球状又は球状の形状の粒子であり、例えば20個程度の粒子の最長直径と最短直径とを測定したときに、最長直径と最短直径との比の平均値が1.0〜5.0、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.3となる形状を有する。本発明において、ビーズの粒子形状や粒径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された画像から求めることが可能である。
なお、以下の記載において、本願発明で得られるビーズのことを「ハイブリッドビーズ」と称することもある。
上記本発明によるビーズは、有機溶媒に溶解している上記一般式(I)で表わされた化合物で修飾された多糖誘導体等の高分子化合物誘導体と、上記一般式(II)〜(V)で表された化合物の一種以上とを、充分に攪拌している界面活性剤水溶液やメタノール等のプロトン供与性溶媒を含む溶媒に徐々に加えて架橋反応を起こさせて、不溶部を単離して得られる。ここで用いられる有機溶媒は、多糖誘導体等の高分子化合物誘導体と上記一般式(II)〜(V)で表された化合物の一種以上とが溶解するものであればいかなるものであってもよいが、特に疎水性のものが好ましい。また、親水性のものであっても、疎水性の溶媒と混合して使用することが可能である。
また、プロトン供与性溶媒としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、シクロヘキサノール、メタノール等が挙げられる。
本発明の複合体は、上述の操作を経ることによりビーズとして作製されることが好ましく、これを光学異性体用分離剤として用いることができる。上記ビーズをHPLCや超臨界流体クロマトグラフィーの光学異性体用分離剤として用いる場合には公知の方法(例えばスラリー法など)によりカラムに充填して用いることができる。
以下、本発明を具体化した実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1−1)アルコキシシリル基を有するセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメートの合成
乾燥させたセルロース4.00g(24.7mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド120ml、脱水ピリジン60ml、塩化リチウム8.00gの混合溶液に溶解させた。
得られた溶解物に3,5−ジメチルフェニルイソシアナート9.08g(61.8mmol)を加え80℃で15時間反応させた後、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン0.52g(2.1mmol)を加え、80℃で12時間反応させ、さらに3,5−ジメチルフェニルイソシアナート9.08g(61.8mmol)を加え80℃で11時間反応させた。ピリジン可溶部をメタノール中に滴下し、不溶部として回収した後、真空乾燥を行い、アルコキシシリル基を導入したセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメート誘導体A、13.13gを得た。下記に記載の分析により、3,5−ジメチルフェニルイソシアナートとアルコキシシリル基の導入率がそれぞれ97.7%、2.3%であることを確認した(図6参照)。
1H NMRスペクトル(400 MHz、Gemini−2000(Varian社製)、DMSO-d6中、80℃)から求めた、シリル基を導入したセルロース誘導体の3,5−ジメチルフェニル基のフェニル基のプロトンと、3−トリエトキシシリルプロピル基のケイ素に直接結合しているメチレンプロトンの比から、高分子化合物誘導体におけるシリル基の導入率を算出し、これを高分子化合物誘導体における3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランの導入率とした。図6に当該誘導体−Aの1H NMRスペクトルを示す。該1H NMRスペクトルから、フェニル基のプロトン由来のシグナルが6.0〜7.0ppm付近に、シリル基に結合したメチレンのプロトン由来のシグナルが0.5ppm付近に出ていることが分かる。1H NMRの結果から、3,5−ジメチルフェニルイソシアナートと3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランの導入率がそれぞれ97.7%、2.3%であることが確認された。
誘導体A 250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)4ml、水1ml及びクロロトリメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶媒30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱したあと、80℃の水浴で加熱した0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで攪拌しながら滴下した。滴下後、80℃で一時間撹拌をおこない、得られた懸濁液を20μmのフィルターに通し粒子径の大きいビーズを除いた。フィルターを通した後の懸濁液を吸引ろ過することによりハイブリッドビーズを回収し、水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズ368mgを得た。この操作を繰り返し粒径10μm程度のハイブリッドビーズ−A−1を回収した。得られたハイブリッドビーズ−A−1の熱重量分析(SSC−5200、セイコー電子工業)を行ったところ、有機物の割合が45重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
乾燥させたハイブリッドビーズA−1、2.1gをエタノール/水/クロロトリメチルシラン(21ml/5.25ml/0.35ml)に分散させ、100℃のオイルバスで還流しながら1時間反応を行いビーズ内の架橋を行った。このようにして得られたハイブリッドビーズA−2、2.0gをトルエン/ピリジン/クロロトリメチルシラン/ヘキサメチルジシラザン(16.7ml/16.7ml/0.31ml/0.64ml)に分散させ、80℃のオイルバスで30分間反応を行い残されたシラノール基をエンドキャップした。得られたハイブリッドビーズA−3を1.95gアセトンで洗浄したところ、セルロース誘導体が28mg溶け出したが、有機物の割合は45重量%のままであった(熱重量分析により確認)。アセトンで洗浄後のビーズをハイブリッドビーズA−4とする。得られたビーズについて走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM−5600、JEOL社製)による観察を行った結果、アセトンに含浸処理後でもビーズの大きさや表面の状態に変化が見られないことがわかった。ハイブリッドビーズA−4のアセトンで洗浄前後のSEM画像を図2に示す。
得られたハイブリッドビーズA−4を粒径分別後、長さ25cm、内径0.2cmのステンレス−スチール製のカラムにスラリー法により充填しカラム−1を得た。
カラム−1の理論段数(N)はN=850であった。
上記の操作で得られたカラム−1(カラム温度:約20℃)を用いて、図4に記載の10種類のラセミ体(1〜10)の光学分割を行った。HPLCは製品名PU−980、日本分光社製のものを用いた。溶離液にはヘキサン/2−プロパノール(90/10、v/v)を用いて、流速は0.2ml/minとし、UV検出器(波長:254nm、製品名:UV−970、日本分光社製)と旋光検出器(製品名:OR−990、日本分光社製)を用いてピークの検出、同定を行った。なお、理論段数Nはベンゼンのピークから、また溶離液がカラムを素通りする時間t0は1,3,5−トリ−tert−ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。なお、光学分割能の評価に用いたHPLC及び検出器等の条件については、下記の実施例及び比較例においても上記と同じ条件を用いた。
カラム−1の光学分割結果を表1に示す。表中の値は容量比k1'と分離係数αで、かっこの中の符号は先に溶出したエナンチオマーの旋光性である。
なお、容量比k1'、分離係数αは下式で定義される。以下の実施例及び比較例においても同じ式を用いて容量比及び分離係数を算出した。
[数4]
容量比k1'
k1'=[(対掌体の保持時間)−(t0)]/t0
[数5]
分離係数α
α=(より強く保持される対掌体の容量比)/(より弱く保持される対掌体の容量比)
上記の操作で得られたカラム−1を用いて、図4に示すラセミ体11(ワルファリン)のSFCによる光学分割を行った。SFC装置として、ポンプは製品名PU−2080とPU−2086、日本分光社製、カラム恒温槽は製品名CO−1560、日本分光社製、背圧制御器は製品名880−81、日本分光社製のものを用いた。溶離液には、二酸化炭素を用い、モディファイヤーとしてエタノールを添加した。流速は、それぞれ0.5ml/min、0.1ml/minとし、カラム温度は40℃に、背圧は100kg/cm2に設定した。ピークの検出、同定はUV検出器(波長:254nm、製品名:UV−2075、日本分光社製)を用いて行った。カラム−1の光学分割結果を図5に示す。また、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)で使用する前と後のビーズA−4のSEM画像を図3に示す。
(2−1)アルコキシシリル基を有するセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメートの合成
乾燥させたセルロース4.00g(24.7mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド120ml、脱水ピリジン60ml、塩化リチウム8.00gの混合溶液に溶解させた。
得られた溶解物に3,5−ジメチルフェニルイソシアナート9.08g(61.8mmol)を加え80℃で15時間反応させた後、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン0.34g(1.4mmol)を加え、80℃で12時間反応させ、さらに3,5−ジメチルフェニルイソシアナート9.08g(61.8mmol)を加え80℃で11時間反応させた。ピリジン可溶部をメタノール中に滴下し、不溶部として回収した後、真空乾燥を行い、アルコキシシリル基を導入したセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメート誘導体B、13.29gを得た。1H NMRの結果から、3,5−ジメチルフェニルイソシアナートとアルコキシシリル基の導入率が、それぞれ98.6%、1.4%であることを確認した(図7参照)。
誘導体B250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)3.5ml、水1ml及びクロロトリメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶媒30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱したあと、80℃の水浴で加熱した0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで攪拌しながら滴下した。滴下後、80℃で1時間撹拌をおこない、得られた懸濁液を20μmのフィルターに通し粒子径の大きいビーズを除いた。フィルターを通した後の懸濁液を吸引ろ過することによりハイブリッドビーズを回収し、水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズ285mgを得た。この操作を繰り返し粒径10μm程度のハイブリッドビーズ−B−1を回収した。得られたハイブリッドビーズ−B−1の熱重量分析を行ったところ、有機物の割合が55重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
乾燥させたハイブリッドビーズB−1、0.75gをエタノール/水/クロロトリメチルシラン(7.5ml/1.9ml/0.13ml)に分散させ、100℃のオイルバスで還流しながら1時間反応を行いビーズ内の架橋を行った。このようにして得られたハイブリッドビーズB−2、0.6gをトルエン/ピリジン/クロロトリメチルシラン/ヘキサメチルジシラザン(5.0ml/5.0ml/1.25ml/0.07ml)に分散させ、110℃のオイルバスで15分間反応を行い残されたシラノール基をエンドキャップした。得られたビーズをハイブリッドビーズB−3とする。ハイブリッドビーズB−3のSEM画像を図2に示す。
得られたハイブリッドビーズB−3を粒径分別後、長さ25cm、内径0.2cmのステンレス−スチール製のカラムにスラリー法により充填しカラム−2を得た。
カラム−2の理論段数(N)はN=1100であった。
上記の操作で得られたカラム−2を用いて、図4に示す10種類のラセミ体(1〜10)の光学分割を行った。溶離液にはヘキサン/2−プロパノール(90/10、v/v)を用いて、流速は0.2ml/minとし、UV検出器と旋光検出器を用いてピークの検出、同定を行った。なお、理論段数Nはベンゼンのピークから、また溶離液がカラムを素通りする時間t0は1,3,5−トリ−tert−ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。カラム−2の光学分割結果を表1に示す。表中の値は容量比k1'と分離係数αで、かっこの中の符号は先に溶出したエナンチオマーの旋光性である。
(3−1)アルコキシシリル基を有するセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメートの合成
乾燥させたセルロース0.50g(3.09mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド15ml、脱水ピリジン7.5ml、塩化リチウム1.00gの混合溶液に溶解させた。
得られた溶解物に3,5−ジメチルフェニルイソシアナート1.13g(7.72mmol)を加え80℃で6時間反応させた後、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン84mg(0.34mmol)を加え、80℃で13時間反応させ、さらに3,5−ジメチルフェニルイソシアナート1.36g(9.26mmol)を加え80℃で7時間反応させた。ピリジン可溶部をメタノール中に滴下し、不溶部として回収した後、真空乾燥を行い、アルコキシシリル基を導入したセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメート誘導体C1.65gを得た。1H NMRの結果から、3,5−ジメチルフェニルイソシアナートとアルコキシシリル基の導入率が、それぞれ97.3%、2.7%であることを確認した(図8参照)。
誘導体C 250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)2.25ml、水1ml及びクロロトリメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶媒30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱したあと、80℃の水浴で加熱した0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで攪拌しながら滴下した。滴下後、80℃で1時間撹拌をおこない、得られた懸濁液を20μmのフィルターに通し粒子径の大きいビーズを除いた。フィルターを通した後の懸濁液を吸引ろ過することによりハイブリッドビーズを回収し、水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズ297mgを得た。この操作を繰り返し粒径3〜10μm程度のハイブリッドビーズ−C−1を回収した。得られたハイブリッドビーズ−C−1の熱重量分析を行ったところ、有機物の割合が62重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
乾燥させたハイブリッドビーズC−1 0.85gをエタノール/水/クロロトリメチルシラン(9.0ml/2.25ml/0.15ml)に分散させ、100℃のオイルバスで還流しながら1時間反応を行いビーズ内の架橋を行った。このようにして得られたハイブリッドビーズC−20.7gをトルエン/ピリジン/クロロトリメチルシラン/ヘキサメチルジシラザン(5.0ml/5.0ml/0.08ml/1.30ml)に分散させ、110℃のオイルバスで30分間反応を行い残されたシラノール基をエンドキャップした。得られたビーズをハイブリッドビーズC−3とする。ハイブリッドビーズC−3のSEM画像を図2に示す。
得られたハイブリッドビーズC−3を粒径分別後、長さ25cm、内径0.2cmのステンレス−スチール製のカラムにスラリー法により充填しカラム−3を得た。
カラム−3の理論段数(N)はN=200であった。
上記の操作で得られたカラム−3を用いて、図4に示す10種類のラセミ体(1〜10)の光学分割を行った。溶離液にはヘキサン/2−プロパノール(90/10、v/v)を用いて、流速は0.2ml/minとし、UV検出器と旋光検出器を用いてピークの検出、同定を行った。なお、理論段数Nはベンゼンのピークから、また溶離液がカラムを素通りする時間t0は1,3,5−トリ−tert−ブチルベンゼンの溶出時間から求めた。カラム−3の光学分割結果を表1に示す。表中の値は容量比k1'と分離係数αで、かっこの中の符号は先に溶出したエナンチオマーの旋光性である。
高分子化合物誘導体を用いない場合のビーズにおける有機物の含有量を算出するため、以下の実験を行った。
テトラエトキシシラン(TEOS)5ml、水1ml及びクロロトリメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶媒30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱したあと、80℃の水浴で加熱した0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで攪拌しながら滴下した。滴下後、80℃で一時間撹拌をおこなった。得られた懸濁液を吸引ろ過することによりシリカゲル−1を回収し、水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、シリカゲル−1360mgを得た。得られたシリカゲル−1の熱重量分析(SSC−5200、セイコー電子工業)を行ったところ、有機物の割合が10重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
(5−1)アルコシキシリル基を有するセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメートの合成
乾燥させたセルロース4.00g(24.7mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド120ml、脱水ピリジン60ml、塩化リチウム8.00gの混合溶液に溶解させた。
得られた溶解物に3,5−ジメチルフェニルイソシアナート9.08g(61.8mmol)を加え、80℃で11時間反応させた後、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン0.38g(1.56mmol)を加え、80℃で12時間反応させ、さらに3,5−ジメチルフェニルイソシアナート12.7g(86.4mmol)を加え、80℃で10時間反応させた。ピリジン可溶部をメタノール中に滴下し、不溶部として回収した後、真空乾燥を行いアルコシキシリル基を導入したセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメート誘導体D12.9gを得た。3,5−ジメチルフェニルイソシアナートとアルコキシシリル基の導入率は、それぞれ98.3%、1.7%であった。
誘導体D250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)3ml、水1ml及びクロロメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶液30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱した後、80℃の水浴で加熱した0.4%塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで撹拌しながら滴下した。滴下後、80℃で一時間撹拌を行い、得られた懸濁液を吸引ろ過することにより、回収し、ハイブリッドビーズを水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズD−1、1452mgを得た。この操作を繰り返し粒径10μm程度のハイブリッドビーズD−2を回収した。得られたハイブリッドビーズD−2の熱重量測定(SSC−5200、セイコー電子工業)を行ったところ、有機物の割合が28重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
乾燥させたハイブリッドビーズD−2、1.0gをトルエン/ピリジン/クロロトリメチルシラン/ヘキサメチルジシラザン(15ml/15ml/0.20ml/0.42ml)に分散させ、80℃のオイルバスで30分間反応を行い、残されたシラノール基をエンドキャップした。得られたハイブリッドビーズD−3を水とメタノールで洗浄し、最終生成物(ハイブリッドビーズD−4)を1.02g得た。ハイブリッドビーズD−4の有機物の割合は30%であった。
得られたハイブリッドビーズD−4を(1−4)と同様の方法にて充填し、カラム−4を得た。
上記操作で得られたカラム−4を用いて、(1−5)と同様の方法にて光学分割能の評価を行った。評価結果を表2に示す。
誘導体D250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)2ml、水1ml及びクロロメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶液30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱した後、80℃の水浴で加熱した0.4%塩化トリメチルオクタデシルアンモニウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで撹拌しながら滴下した。滴下後、80℃で一時間撹拌を行い、得られた懸濁液を吸引ろ過することにより回収し、ハイブリッドビーズを水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズD−5、1054mgを得た。この操作を繰り返し粒径10μm程度のハイブリッドビーズD−6を回収した。得られたハイブリッドビーズD−6の熱重量測定(SSC−5200、セイコー電子工業)を行ったところ、有機物の割合が35重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
乾燥させたハイブリッドビーズD−6、3.0gをトルエン/ピリジン/ヘキサメチルジシラザン(15ml/15ml/8.9ml)に分散させ、80℃のオイルバスで15時間反応を行い、残されたシラノール基をエンドキャップした。得られたハイブリッドビーズD−7を水とメタノールで洗浄し、最終生成物(ハイブリッドビーズD−8)を2.89g得た。ハイブリッドビーズD−8の有機物の割合は34%であった。
得られたハイブリッドビーズD−8を粒径分別後、長さ25cm、内径0.46cmのステンレス−スチール製のカラムにスラリー法により充填しカラム−5を得た。
上記操作で得られたカラム−5を用いて、図4に示す10種類のラセミ体(1〜10)の光学分割を行った。溶離液にはヘキサン/2−プロパノール(90/10、v/v)を用いて、流速は1.0ml/minとし、(1−5)と同様のUV検出器と旋光検出器を用いてピークの検出、同定を行った。評価結果を表2に示す。
(7−1)アルコシキシリル基を有するアミロース3,5−ジメチルフェニルカルバメートの合成
乾燥させたアミロース1.50g(9.26mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド45ml、脱水ピリジン22.5ml、塩化リチウム3.00gの混合溶液に溶解させた。
得られた溶解物に3,5−ジメチルフェニルイソシアナート3.41g(23.2mmol)を加え、80℃で6時間反応させた後、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン0.16g(0.65mmol)を加え、80℃で13時間反応させ、さらに3,5−ジメチルフェニルイソシアナート3.41g(23.2mmol)を加え、80℃で10時間反応させた。ピリジン可溶部をメタノール中に滴下し、不溶部として回収した後、真空乾燥を行いアルコシキシリル基を導入したアミロース3,5-ジメチルフェニルカルバメート誘導体E、5.40gを得た。3,5−ジメチルフェニルイソシアナートとアルコキシシリル基の導入率は、それぞれ98.3%、1.7%であった。
誘導体E250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)4ml、水1ml及びクロロメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶液30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱した後、80℃の水浴で加熱した0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで撹拌しながら滴下した。滴下後、80℃で一時間撹拌を行い、得られた懸濁液を20μmのフィルターも通し粒子径の大きいビーズを除いた。フィルターを通した後の懸濁液を吸引ろ過することにより回収し、ハイブリッドビーズを水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズE−1、775mgを得た。この操作を繰り返し粒径10μm程度のハイブリッドビーズE−2を回収した。得られたハイブリッドビーズE−2の熱重量測定(SSC−5200、セイコー電子工業)を行ったところ、有機物の割合が31重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
乾燥させたハイブリッドビーズE−2、0.75gをエタノール/水/クロロトリメチルシランの混合溶液9.5ml(6/1.5/0.1(v/v/v))に分散させ、100℃のオイルバスで還流しながら1時間反応を行いビーズ内の架橋を行った。このようにして得られたハイブリッドビーズE−3、0.70gをトルエン/ピリジン/クロロトリメチルシラン/ヘキサメチルジシラザン(5.8ml/5.8ml/0.28ml/0.14ml)に分散させ、80℃のオイルバスで30分間反応を行い、残されたシラノール基をエンドキャップした。得られたハイブリッドビーズE−4を水とメタノールで洗浄し、最終生成物(ハイブリッドビーズE−5)を0.68g得た。
得られたハイブリッドビーズE−5を(1−4)と同様の方法にて充填し、カラム−6を得た。
上記操作で得られたカラム−6を用いて、(1−5)と同様の方法にて光学分割能の評価を行った。評価結果を表3に示す。
誘導体E250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)3ml、水1ml及びクロロメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶液30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱した後、80℃の水浴で加熱した0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで撹拌しながら滴下した。滴下後、80℃で一時間撹拌を行い、得られた懸濁液を20μmのフィルターも通し粒子径の大きいビーズを除いた。フィルターを通した後の懸濁液を吸引ろ過することにより回収し、ハイブリッドビーズを水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズE−6、0.61mgを得た。この操作を繰り返し粒径10μm程度のハイブリッドビーズE−7を回収した。得られたハイブリッドビーズE−7の熱重量測定(SSC−5200、セイコー電子工業)を行ったところ、有機物の割合が48重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
乾燥させたハイブリッドビーズE−7、0.60gをエタノール/水/クロロトリメチルシランの混合溶液7.6ml(6/1.5/0.1(v/v/v))に分散させ、100℃のオイルバスで還流しながら1時間反応を行いビーズ内の架橋を行った。このようにして得られたハイブリッドビーズE−8、0.58gをトルエン/ピリジン/クロロトリメチルシラン/ヘキサメチルジシラザン(4.8ml/4.8ml/0.18ml/0.09ml)に分散させ、80℃のオイルバスで30分間反応を行い、残されたシラノール基をエンドキャップした。得られたハイブリッドビーズE−9を水とメタノールで洗浄し、最終生成物(ハイブリッドビーズE−10)を0.55g得た。
上記操作で得られたカラム−7を用いて、(1−5)と同様の方法にて光学分割能の評価を行った。評価結果を表3に示す。
(9―1)アルコシキシリル基を有するセルロース3,5−ジメチルフェニルカルバメートの合成
乾燥させたセルロース8.00g(49.4mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド240ml、脱水ピリジン120ml、塩化リチウム16.0gの混合溶液に溶解させた。
得られた溶解物に3,5−ジメチルフェニルイソシアナート18.2g(124mmol)を加え、80℃で6時間反応させた後、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン0.73g(2.97mmol)を加え、80℃で12時間反応させ、さらに3,5−ジメチルフェニルイソシアナート25.4g(173mmol)を加え、80℃で8時間反応させた。ピリジン可溶部をメタノール中に滴下し、不溶部として回収した後、真空乾燥を行いアルコシキシリル基を導入したセルロース3,5-ジメチルフェニルカルバメート誘導体F、25.1gを得た。3,5-ジメチルフェニルイソシアナートとアルコキシシリル基の導入率は、それぞれ98.3%、1.7%であった。
誘導体F250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)1ml、1,2−ビストリエトキシシリルエタン(BTSE)0.83mlを水1ml及びクロロメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶液30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱した後、80℃の水浴で加熱した0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで撹拌しながら滴下した。滴下後、80℃で一時間撹拌を行い、得られた懸濁液を吸引ろ過することにより回収し、ハイブリッドビーズを水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズF−1、680mgを得た。この操作を繰り返し粒径10μm程度のハイブリッドビーズF−2を回収した。得られたハイブリッドビーズF−2の熱重量測定(SSC−5200、セイコー電子工業)を行ったところ、有機物の割合が48重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
得られたハイブリッドビーズF−2を(1−4)と同様の方法にて充填し、カラム−8を得た。
上記操作で得られたカラム−8を用いて、(1−5)と同様の方法にて光学分割能の評価を行った。評価結果を表4に示す。
誘導体F250mg、テトラエトキシシラン(TEOS)1.5ml、1,2−ビストリエトキシシリルエタン(BTSE)0.42mlを水1ml及びクロロメチルシラン0.5mlをテトラヒドロフラン/1−ヘプタノール(4/1、v/v)混合溶液30mlに溶かした。この溶液を、80℃で9時間加熱した後、80℃の水浴で加熱した0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500mlへディスパーザーでシャフト回転数1100rpmで撹拌しながら滴下した。滴下後、80℃で一時間撹拌を行い、得られた懸濁液を吸引ろ過することにより回収し、ハイブリッドビーズを水とメタノールで洗浄した。洗浄後、真空乾燥を行い、ハイブリッドビーズF−3、547mgを得た。この操作を繰り返し粒径10μm程度のハイブリッドビーズF−4を回収した。得られたハイブリッドビーズF−4の熱重量測定(SSC−5200、セイコー電子工業)を行ったところ、有機物の割合が55重量%であることが確認された。ビーズの調製には、6枚羽根型ディスパーザーシャフトと、1リットルビーカーを用いた。
得られたハイブリッドビーズF−4を(1−4)と同様の方法にて充填し、カラム−9を得た。
上記操作で得られたカラム−9を用いて、(1−5)と同様の方法にて光学分割能の評価を行った。評価結果を表4に示す。
Claims (11)
- セルロースまたはアミロースの水酸基の一部が下記一般式(I)で表された化合物で修飾されてなるセルロースまたはアミロース誘導体と、下記一般式(II)〜(V)で表わされた化合物の一種以上と、を反応させてなる、形態がビーズである複合体。
たは炭素数1〜12のアルキルを示し、R2は、炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、nは1〜4の整数を示し、pは1〜3の整数を示し、qは1または2の整数を示す。)
- 前記一般式(I)で表される化合物が、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルジエトキシメチルシラン、2−イソシアナートエチルトリエトキシシラン、4−イソシアナートフェニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン又は3−チオシアナートプロピルトリエトキシシランである、請求項1に記載の複合体。
- 前記一般式(I)で表される化合物の、セルロースまたはアミロースの水酸基への導入率が1.0〜35%である、請求項1又は2に記載の複合体。
- 前記一般式(I)で表わされた化合物で修飾された水酸基以外の水酸基の少なくとも一部が、更に、光学異性体に作用する官能基を有する化合物で修飾されてなり、
前記光学異性体に作用する官能基を有する化合物が、下記一般式(VI)又は(VII)で表わされた原子団を含む化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
- 前記一般式(I)で表わされた化合物で修飾された水酸基以外の水酸基の少なくとも一部に、前記光学異性体に作用する官能基を有する化合物が、ウレタン結合、尿素結合、エステル結合又はエーテル結合を介して導入されてなる、請求項4に記載の複合体。
- 前記光学異性体に作用する官能基を有する化合物が、3,5−ジメチルフェニルイソシアナートである、請求項4に記載の複合体。
- 前記セルロースまたはアミロース誘導体の含有量が、複合体全量に対し10〜90重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合体。
- 前記一般式(II)で表わされた化合物が、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラヘキシルオキシシラン、トリエトキシメチルシラン及びトリエトキシフェニルシランからなる群から選ばれた1つ以上であ
ることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。 - 前記一般式(V)で表わされた化合物が、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,1−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,1−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、2,2−ビス(トリメトキシシリル)プロパン、2,2−ビス(トリエトキシシリル)プロパン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン及び1,2−ビストリエトキシシリルエタンからなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合体。
- セルロースまたはアミロースの水酸基の一部が下記一般式(I)で表された化合物で修飾されてなるセルロースまたはアミロース誘導体と、下記一般式(II)〜(V)で表わされた化合物の一種以上とが有機溶媒に溶解した溶液を作製する工程と、該溶液を界面活性剤水溶液又はプロトン供与性溶媒に攪拌しながら滴下する工程とを含む、形態がビーズである複合体の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合体を含む光学異性体用分離剤。
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