JP5498866B2 - 自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造 - Google Patents
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Description
このような車体において、車両を軽量化しかつ重心高を下げて走行性能を向上するため、ルーフパネルを車体の他部とは異なった材料とする場合がある。
例えば、スチール製モノコックボディに、アルミニウム系合金製のルーフパネルや、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製のルーフパネルを取り付けることが知られている。
これに対し、樹脂製ルーフパネルの接着に用いる接着剤を、通常のものよりも接着剤層を薄くできるものとして、材料の板厚の差を吸収することも考えられるが、この場合には新規な接着剤の開発、評価が必要となって開発工数が増加してしまう。
本発明の課題は、既存の車体に対する変更が軽微でありかつ外観及びシール性能が良好な自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造を提供することである。
請求項1の発明は、ウインドウガラスの上端部に沿って配置され、前記ウインドウガラスを支持する支持面部が形成された車体のレール部に、前記レール部とは異なった材料で形成されたルーフパネルを取り付ける自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造であって、前記ルーフパネルは、繊維強化樹脂によって形成されるとともに、前記ルーフパネルの前記レール部に沿った端部に、外表面部に対して下方へ折り返し、中子を巻き込んだ折返部が形成され、前記レール部は、前記ウインドウガラスと前記レール部の前記支持面部との間に挟まれて配置される第1の面部、及び、前記第1の面部に対して車室内側に凹んだ位置に配置され前記ルーフパネルの前記折返部の下面部と接合される第2の面部が形成されたルーフパネル取付部材を有し、前記ルーフパネル取付部材の前記第2の面部と前記ルーフパネルの前記折返部の下面部とを、接着剤及び機械的締結手段によって固定したことを特徴とする自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造である。
請求項3の発明は、前記ルーフパネルにはルーフアンテナが取り付けられ、前記ルーフパネルは導電性を有する繊維を含有する繊維強化樹脂によって形成され、前記機械的締結手段及び前記ルーフパネル取付部材は、前記ルーフパネルの前記繊維と前記レール部とを電気的に導通させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造である。
(1)ウインドウガラスとレール部の支持面部との間に挟まれて配置される第1の面部、及び、第1の面部に対して車室内側に凹んだ位置に配置されルーフパネルの折返部の下面部と接合される第2の面部が形成されたルーフパネル取付部材が設けられることによって、第1の面部と第2の面部の高さの差でルーフパネルの折返部とウインドウガラスとの厚さの差を吸収し、これらの表面を最適な位置関係に配置することができる。
また、ウインドウガラスとレール部の支持面部との間には、通常の板金製ルーフ車のルーフパネル前端部に代えてルーフパネル取付部材の第1の面部が挟まれることから、板金製ルーフ車とウインドウガラスの高さが異なることもない。
このようなルーフパネル取付部材を板金製ルーフ車と共用のレール部の上部に固定することによって、既存の車体構造にほとんど変更を加えることなく異種材料ルーフパネルを適用することができる。
また、ルーフパネルの折返部とルーフパネル取付部材の第2の面部との間においては、接着剤やシール剤の塗布幅、塗布厚さを十分に確保することが容易であり、高いシール性能を得ることができる。
さらに、第2の面部とルーフパネルの折返部の下面部とを、接着剤及び機械的締結手段によって固定したことによって、ルーフパネルの固定強度を高めるとともに、接着剤が硬化するまでの間ルーフパネルを良好に位置決めし、取付精度を高めることができる。
(2)機械的締結手段を接着剤よりもルーフパネルの中央部側に配置したことによって、外部から水などが機械的締結手段に到達することを防止して、機械的締結手段の腐食等を防止し、耐久性を向上できる。
(3)機械的締結手段はルーフパネルの導電性を有する繊維とレール部とを電気的に導通させることによって、ルーフパネルを車体にアースすることが可能となり、ルーフアンテナ使用時のノイズ抑制や感度向上を図ることができる。また、このような機械的締結手段を接着剤の内側に配置することによって、水等の侵入を防止し、異種材料の電位差に起因する電蝕の影響を低減することができる。
実施例の自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造は、例えば鋼板モノコック構造を有する乗用車等の自動車に、例えば炭素繊維強化樹脂(CFRP)製のコンポジットルーフパネルを取り付けるものである。
Bピラー3は、フロントドア開口の後端部とリアドア開口の前端部との間に配置された柱状部(センターピラー)である。
Cピラー4は、リアドア開口の後端部とリアクオーターガラスの前端部との間に配置された柱状部である。
Dピラー5は、リアクオーターガラスの後端部に沿って配置された柱状部である。
ルーフサイドレール10の構成については、後に詳しく説明する。
ルーフフロントレール20の構成については、後に詳しく説明する。
ルーフクロスメンバ41は、左右のBピラー3の上端部間にわたして配置されている。
ルーフクロスメンバ42は、Bピラー3とCピラー4との中間部に配置されている。
ルーフクロスメンバ43は、左右のCピラー4の上端部間にわたして配置されている。
フロントガラス50の上端部には、防水等のため、例えばゴム製のウェザーストリップ51が嵌めこまれている。ウェザーストリップ51のリップの一部は、ルーフパネル60の前端部にも当接している。
ルーフパネル60は、炭素繊維からなる織物を所定の枚数だけ積層させ、金型内に配置した後、マトリックス樹脂を含浸させて硬化させたCFRPコンポジット製のものである。成形は本方法(RTM法またはVaRTM法)に限らず、公知の如何なる成型方法であっても良い。例えば、予めマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグを材料に用いるオートクレーブ法やプレス成型法も適用可能である。
ルーフパネル60の側端部、前端部、後端部は、それぞれルーフサイドレール10、ルーフフロントレール20、ルーフリアレール30に固定される。
図2に示すように、ルーフサイドレール10は、アウタパネル11、インナパネル12、レインホースメント13等を備えて構成されている。
アウタパネル11は、ルーフサイドレール10の上部を構成するパネルであり、車両の外表面に露出する車両外板の一部を構成するものである。
インナパネル12は、ルーフサイドレール10の下部を構成するパネルである。
アウタパネル11及びインナパネル12は、ルーフサイドレール10の車幅方向内側における上部、及び、車幅方向外側における下部において、フランジ部をスポット溶接することによって接合され、閉断面を構成する。
レインホースメント13は、ルーフサイドレール10の内部に配置された補剛用のパネルであって、その両端部は、アウタパネル11とインナパネル12とが溶接されるフランジ部においてこれらの間隔に挟み込まれ、3枚重ねの状態で溶接されている。
以上の構成によってルーフサイドレール10の車幅方向内側に形成されたフランジ部14は、ルーフパネル60の側端部が取り付けられる座部として機能する。
フランジ部61は、ルーフサイドレール10のフランジ部14の上面に載せられ、固定される。
フランジ部61の下面とルーフサイドレール10のフランジ部14の上面との間には、ルーフパネル60の車体に対する高さを位置決めするためのスペーサSが部分的に挟み込まれる。
また、図2に示すように、シール剤を兼ねた接着剤Gは、スペーサSの車幅方向外側において、フランジ部14とフランジ部61とを接着しかつこれらの間をシールしている。
なお、フランジ部61の上部には、ルーフパネル60の他部とルーフサイドレール10のアウタパネル11から一段落ち込んだ溝部が形成されるが、この溝部内には装飾用の部材であるモールMが取り付けられている。
ボルトBは、フランジ部61、フランジ部14、及び、これらの間に挟まれスペーサを兼ねたワッシャWのボルト穴を貫通するように、上方から挿入されている。
ボルトBは、車室内側に設けられる図示しないナットと協働して、フランジ部61とフランジ部14とを締結し固定する。
また、ボルトBが設けられる箇所には、フランジ部61の上面に金属製の補強プレートPが配置される。
図4に示すように、ルーフフロントレール20は、ロワパネル21、アッパパネル22等を備えて構成されている。
ロワパネル21は、アッパパネル22に対して板厚のスチールプレス成形品であって、ルーフフロントレール20の強度を主に負担する部分である。
アッパパネル22は、ロワパネル21の上部に固定されるスチールプレス成形品である。アッパパネル22は、本発明にいうルーフパネル取付部材として機能する。
なお、車両の車種バリエーションにおいて、スチールプレス成形品のルーフパネルを有する車両(以下、「スチールルーフ車」と称する)の場合には、アッパパネル22は省略される。
前端部のフランジ部21aは、スチールルーフ車の場合にはルーフパネル前端部のフランジ部がスポット溶接によって固定される。また、フロントガラス50は、ルーフパネルのフランジ部21aの上面に、接着剤Gによって固定される。フランジ部21aは、フロントガラス50を支持する、本発明にいう支持面部として機能する。
凹部21cの底面部には、車室内の天井部を構成する例えば樹脂製のルーフトリムTが、例えば樹脂製のファスナFによって取り付けられている。
折返部62は、ルーフパネル60の製造時に、炭素繊維織物を車両下方側へ折返し、樹脂製の中子63を巻き込んで、端縁部を中子63の後方側でルーフパネル60の裏面に重ねて、金型上で硬化させることによって形成されている。
中子63は、図4に示すように、ルーフパネル60の製品状態においても、折返部62の内部に残存している。すなわち、折返部62は、中子63が内部に存在するサンドイッチ構造となる。
折返部62の前端縁部は、車両の外方に突起が形成されないよう、所定のRをつけて丸められた形状となっている。また、折返部62の表面は、金型に当接した状態で硬化することから、金型の表面形状が転写され滑らかに仕上げられている。また、製品外表面に金型を用い、内面側をフィルムなどで代用するVaRTM法やオートクレーブ法では、折返部62の表面に当て板や置き子と呼ばれる簡易型を用いることで同様に滑らかな表面を得ることができる。
また、折返部62の下面部は、ルーフフロントレール20のアッパパネル22の凹部22cに、接着剤Gによって接着され固定されている。
また、接着剤Gの前方側には、弾性部材によって形成されたシール部材64が折返部62の前端縁部と凹部22cの前端部との間に挟まれた状態で配置されている。
リベットRは、ルーフフロントレール20のロワパネル21の凹部21cに形成されたサービスホール21dを介して下方から挿入され、アッパパネル22の凹部22cと、折返部62の下面部とを、間にスペーサを兼ねたワッシャWを挟んだ状態で締結する。
リベットRが設けられる箇所においては、折返部62の内面には、金属製の補強板62aが固定されている。
また、ルーフパネル60の後端部付近には、例えばラジオ放送受信用の図示しないルーフアンテナが取り付けられる。
先ず、ルーフ部を除いた車体1を、スチールプレス成形パネルを集成し、スポット溶接することによって組み立てる。車体1を塗装及び乾燥させた後、図1に示すシールラインLに沿って、シール剤を兼ねた接着剤Gをガンによって塗布する。このシールラインLは、ルーフパネル60の外周縁部に沿って一周連続して配置され、いわゆる一筆書きが可能となっている。
その後、必要な箇所にワッシャW及びスペーサSを配置し、ルーフパネル60を車体1に載せる。
なお、ルーフパネル60と車体1には、例えば一方から突き出したピン及び他方に形成された凹部のような位置決め用の係合手段が設けられ、ルーフパネル60の搭載にあたっては、これが活用される。
そして、ルーフフロントレール20の所定箇所にリベットRを打ち込み、ルーフサイドレール10の所定箇所をボルトB及びナットで締結する。
最後に、フロントガラス50、モールM、ルーフトリムTなどを取り付けて、車体1のルーフ部の組立は完了する。
(1)フロントガラス50とルーフフロントレール20のロワパネル21のフランジ部21aとの間に挟まれて配置されるフランジ部22a、及び、フランジ部22aに対して車室内側に凹んだ位置に配置されルーフパネル60の折返部62の下面部と接合される凹部22cが形成されたアッパパネル22が設けられることによって、フランジ部22aと凹部22cの高さの差でルーフパネル60の折返部62とフロントガラス50との厚さの差を吸収し、これらの表面を最適な位置関係に配置することができる。
また、フロントガラス50とフランジ部21aとの間には、スチールルーフ車のルーフパネル前端部に代えてアッパパネル22のフランジ部22aが挟まれることから、スチールルーフ車とフロントガラス50の高さが変化することがない。
このようなアッパパネル22をスチールルーフ車と共用のロワパネル21の上部に固定することによって、車体1の構造にほとんど変更を加えることなくスチールルーフ車とカーボンルーフ車とを作り分けることができる。
また、ルーフパネル60の折返部62とアッパパネル22の凹部22cとの間においては、接着剤Gの塗布幅、塗布厚さを十分に確保することが容易であり、新規な接着剤を開発することなく高いシール性能を得ることができる。
(2)アッパパネル22の凹部22cとルーフパネル60の折返部62の下面部とを、接着剤G及びこれよりもルーフパネル60の中央部側に配置されたリベットR、ワッシャWによって固定したことによって、ルーフパネル60の固定強度を高めるとともに、接着剤Gが硬化するまでの間ルーフパネル60を良好に位置決めし、取付精度を高めることができる。
(3)リベットRはルーフパネル60の炭素繊維と車体1とを電気的に導通させることによって、ルーフパネル60を車体1にアースすることが可能となり、ルーフアンテナ使用時のノイズ抑制や感度向上を図ることができる。また、このようなリベットRを接着剤Gの内側に配置することによって、水等の侵入を防止し、材料の電位差に起因する電蝕の影響を低減することができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施例の自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造は、例えば乗用車のルーフパネルの前部に適用されるものであったが、本発明はこれに限らず、側部や後部、さらに乗用車以外の自動車にも適用することができる。
(2)実施例ではルーフパネルの折返部が閉断面を有する構成となっているが、必ずしも閉断面とする必要はなく、また、折返部の製法も特に限定されない。
(3)実施例では折返部を固定する機械的締結手段としてリベットを用いているが、これに限らず例えばボルトナットやクリップ等の他種の機械的締結手段を用いてもよい。
(4)実施例では車体がスチール製でありルーフパネルがCFRP製であるが、これに限らず、例えば車体をアルミニウム系合金によって形成したり、ルーフパネルをガラス繊維強化樹脂等の樹脂系材料やその他の材料によって形成してもよい。
3 Bピラー 4 Cピラー
5 Dピラー 10 ルーフサイドレール
11 アウタパネル 12 インナパネル
13 レインホースメント 14 フランジ部
20 ルーフフロントレール 21 ロワパネル
21a,22b フランジ部 21c 凹部
21d サービスホール 22 アッパパネル
22a、22b フランジ部 22c 凹部
30 ルーフリアレール
41,42,43 ルーフクロスメンバ
50 フロントガラス 51 ウェザーストリップ
60 ルーフパネル 61 フランジ部
62 折返部 62a 補強板
63 中子 64 シール部材
G 接着剤 S スペーサ
W ワッシャ B ボルト
R リベット T ルーフトリム
F ファスナ M モール
P 補強プレート
Claims (3)
- ウインドウガラスの上端部に沿って配置され、前記ウインドウガラスを支持する支持面部が形成された車体のレール部に、前記レール部とは異なった材料で形成されたルーフパネルを取り付ける自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造であって、
前記ルーフパネルは、繊維強化樹脂によって形成されるとともに、前記ルーフパネルの前記レール部に沿った端部に、外表面部に対して下方へ折り返し、中子を巻き込んだ折返部が形成され、
前記レール部は、前記ウインドウガラスと前記レール部の前記支持面部との間に挟まれて配置される第1の面部、及び、前記第1の面部に対して車室内側に凹んだ位置に配置され前記ルーフパネルの前記折返部の下面部と接合される第2の面部が形成されたルーフパネル取付部材を有し、
前記ルーフパネル取付部材の前記第2の面部と前記ルーフパネルの前記折返部の下面部とを、接着剤及び機械的締結手段によって固定したこと
を特徴とする自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造。 - 前記機械的締結手段は、前記接着剤よりも前記ルーフパネルの中央部側に配置されたこと
を特徴とする請求項1に記載の自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造。 - 前記ルーフパネルにはルーフアンテナが取り付けられ、
前記ルーフパネルは導電性を有する繊維を含有する繊維強化樹脂によって形成され、
前記機械的締結手段及び前記ルーフパネル取付部材は、前記ルーフパネルの前記繊維と前記レール部とを電気的に導通させること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用異種材料ルーフパネルの取付構造。
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