JP5488971B2 - 害虫忌避積層シート状物 - Google Patents

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Description

本発明は害虫忌避剤を揮散させる、積層されたシート状物に関する。
香料や抗菌防カビ剤、防虫剤などの揮散性薬剤のうち液体であるものは、そのままでは利用がしにくいため、何らかの担持体に担持させたり、包装体でくるんだり、シート材料に塗布又は含浸、積層させたりといった形で徐放性を付与して利用されている。その中でも、シート材料によってシート状にしたものは、接着剤を塗布して様々なところに貼り付けて利用でき、種々の形態が検討されている。
例えば、特許文献1には、ロジンエステル、樹脂酸、脂肪酸エステル又はEVAからなる樹脂と揮散性薬剤を混練した混合溶液を塗布又は含浸させた、アリルイソチオシアネートからなる揮散性薬剤の含浸層の両面に透過規制層を設け、この透過規制層のシートの少なくとも一方に高湿度状態において、揮散性薬剤の揮散ガスの透過性を付与した感湿性の素材からなるシートにより形成された薬剤揮散放出シートが記載されている。
また、特許文献2には、揮発性薬剤徐放化シートの製造方法として、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂等の接着剤となり得る樹脂を、イソチオシアン酸エステル類や植物性香料、防腐剤、有機リン系又は芳香族系防虫剤などの揮発性薬剤に溶解させて得られる溶液を、揮発性薬剤不透過性フィルムに塗布した後、塗布面上に揮発性薬剤透過フィルムを貼着する製造方法が開示されている([0008][0009])。
さらに、特許文献3には、ラベンダー油やヒバ油などの害虫忌避成分と、ポリオレフィンやロジン、テルペン、スチレン、パラフィン、ワックスなどの樹脂からなる接着剤とを混合した害虫忌避層を、害虫忌避成分の透過を制御する透過制御層と、害虫忌避成分の透過を防ぐバリア層とで挟み、バリア層の反対側に粘着剤層を設けて接着可能にした害虫忌避粘着シートが記載されている(請求項1、6,8、[0047])。
特許第3405907号公報 特開2000−343640号公報 登録実用新案第3149381号公報
ところで、蚊取り線香や虫除けスプレーなどの防虫剤として有用であるピレスロイド系薬剤は、主として菊酸構造を有するが、多くの樹脂と反応して活性を失いやすかったり、樹脂にトラップされて揮散性が著しく低下するという問題がある。特許文献1に記載された樹脂のうち、樹脂酸や脂肪酸エステルとは反応してしまって活性が失われ、ロジンエステルとの組み合わせでは徐放性が著しく低下してしまう。これは特許文献2及び3に記載の薬剤をピレスロイド系薬剤に変えた場合も同様である。すなわち、従来の手法を単純に転用したのでは徐放性シートとしては効果が不十分なものとなってしまった。
そこでこの発明は、ピレスロイド系薬剤を用いて、常温で、揮散性に優れ、かつ長期間の使用が可能である高い徐放性を発揮できる害虫忌避シートを得ることを目的とする。
この発明は、二層のシート層で薬剤含有樹脂層を挟んだ積層シート状物について、
シート層の少なくとも一方に、ピレスロイド系薬剤について透過性を有する薬剤透過シート層を使用し、
上記薬剤含有樹脂層として、25℃における蒸気圧が0.001Pa以上であるピレスロイド系薬剤と、エチレン共重合樹脂、合成ゴム樹脂、又はその両方を含有するホットメルト樹脂とを質量混合比5:95〜50:50で熱溶融液状化して混合した混合物を常温で固形状にしたものとすることで、上記の課題を解決したのである。
すなわち、エチレン共重合樹脂と合成ゴム樹脂との少なくとも一方を、ピレスロイド系薬剤を固定しシート層を接着させる接着剤に含めて用いることで、ピレスロイド系薬剤が変質を起こす可能性を十分に低く抑えることができる。ここで、エチレン共重合樹脂とは、エチレンと、エチレンと共重合反応を起こすビニル基やビニリデン基などの不飽和炭素結合を有する他のモノマーとの共重合樹脂を意味し、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合樹脂(すなわち、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合樹脂)、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合樹脂などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」又は「メタクリル」を示す。その中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又はエチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂を30質量%以上含むと、特にその効果が好適に発揮され望ましい。変質を抑えて保持されたピレスロイド系薬剤は、樹脂層中の含有量と薬剤透過シート層の透過性によって制御されながら徐放できる。
薬剤含有樹脂層を挟む二層のシート層は、両方ともが薬剤透過シート層であってもよいし、一方がピレスロイド系薬剤について非透過性かつ非吸着性であってもよい。一方が非透過性かつ非吸着性とし、その薬剤非透過シート層の薬剤含有樹脂層と反対側の面に粘着剤層を設け、その上に粘着剤と剥離可能なセパレータを貼り合わせることで、シールとしても利用できる。貼り付けた側の面と反対側の面からピレスロイド系薬剤が徐放されることとなる。
なお、上記ピレスロイド系薬剤の放出を妨げないように、上記粘着剤層を設けていない上記シート層の外側表面の一部をインクなどで覆うグラビア印刷などは可能である。また、この印刷に用いる染料としてアントラキノン系染料を用いると、この染料の色が上記ピレスロイド系薬剤の揮散に伴って消失するインジケータ機能付きの害虫忌避積層シートとして用いることができる。これは、上記ピレスロイド系薬剤が徐々に揮散するに伴い、染料が揮発すること、および気化した薬剤が上記染料に接触することで染料の酸化が促進されるからと考えられる。
さらに別のインジケータとしての利用形態としては、アントラキノン系染料を上記ピレスロイド系薬剤の0.01〜5重量%混合して薬剤含有樹脂層を形成した形態が挙げられる。これは、上記ピレスロイド系薬剤の揮散とともに、染料の結晶化、染料の揮発、上記同様の染料の酸化が関連して色が消失していくと考えられる。表面に印刷する場合と比べて、上記染料が上記薬剤含有樹脂に包まれることで紫外線による退色が起こりにくくなるので耐光性が高く、特に太陽光の当たる場所に設置する際にも、光による退色ではなく、上記ピレスロイド系薬剤の揮散の終了をより正確に示すことができる。
また、シート状物とはフィルム、メッシュ又はシートをいい、厚みを特に限定しないものである。具体的な厚みは調整すべき徐放性の程度と、積層シート状物全体に必要とする強度に応じて決定する。シート層も同様に、厚みを特に限定しない。
この発明にかかる害虫忌避積層シート状物を用いると、含有するピレスロイド系薬剤を変質させることなく1ヶ月以上の期間に亘って放出を続けさせることができる。含有させるピレスロイド系薬剤の含有量を十分に確保し、薬剤透過シート層の透過性を低くすることで、徐放期間を長く調整することができる。
この積層シート状物を幟や暖簾、旗としたり、接着剤を用いて窓や壁、自動販売機等の設置物などに貼り付けたりすることで、ショーウインドウや展示ブース、コンビニエンスストア、その他の小売店などの場所で、様々な形で使用できる。無色透明であるようにシート層と薬剤含有樹脂層を調製して窓ガラスに貼り付けると、存在を主張することなく利用できる。逆に、シート状物の一部又は全面に印刷して広告媒体やカラーフィルターとすることもできる。また、薬剤を保持する薬剤含有樹脂層の前後をシート層で覆い、薬剤透過性シート層を介して放出されるため、利用中に薬剤と直接触れるおそれが無い。また、どのようなシート層を用いた場合でも、上記ピレスロイド系薬剤はエチレン共重合樹脂、合成ゴム樹脂、又はその両方と混合されることで、水と直接に接触して変質することを抑制できるので、十分な耐水性を有することとなる。
さらに、表面の印刷層や上記薬剤含有樹脂層にアントラキノン系染料を用い、上記ピレスロイド系薬剤の揮散の終了の前後に色が消失するように調整しておくことで、薬剤の揮散の終了を利用者が目視で確認でき、使用者が適切な時期に交換できるようにすることができる。
樹脂層の両面が透過層で覆われた実施形態の断面図 樹脂層の両面が有孔透過層で覆われた実施形態の断面図 樹脂層の両面が透過層と非透過層とで覆われた実施形態の断面図 図3の実施形態に粘着剤層とセパレータを追加した実施形態の断面図 図4の実施形態を窓ガラスに貼り付けた際の実施形態の断面図
以下、この発明の実施形態について詳細に説明する。
この発明は、同種又は異種である二層のシート層で薬剤含有樹脂層を挟んだ積層構造を有し、防虫効果を発揮する害虫忌避積層シート状物である。
まず、上記薬剤含有樹脂層について説明する。この樹脂層は、有効成分であるピレスロイド系薬剤と、接着剤となるホットメルト樹脂とを熱溶融液状化した混合物を積層し、冷却して常温で固形状としたものである。なお、常温で固形状とは、30℃以下の温度で流動性が無いことをいう。
上記ピレスロイド系薬剤としては、種々のものが使用可能であるが、その使用時の昆虫忌避の効果及び使用性などから、25℃で蒸気圧が0.001Pa以上のものであることが必要である。常温において蒸気圧が0.001Pa未満であると、揮散が遅すぎて防虫効果が不十分となってしまうからである。一方、蒸気圧が高いものであれば、後述するシート層の選択によって放出速度を制御できるので、上限は特に制限されるものではない。ただし、シート層の選択次第ではこの発明にかかる害虫忌避積層シート状物の厚みや強度が大きく制限されることになるので、現実的な選択として、25℃における蒸気圧が、0.1Pa以下であるものが好ましい。
具体的には、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(トランスフルトリン)、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(プロフルトリン)、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(メトフルトリン)、4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、4−プロパルギル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル 2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート(エンペントリン)などが挙げられる。また、これら化合物の各種の異性体も使用可能である。さらに、これらのうち2種以上の薬剤を混合して用いることもできる。これらのうち、利用されるシーンで存在すると考えられる昆虫類その他の節足動物に対して忌避効果を発揮するものであればよい。特に飛翔する習性のある昆虫類に対して効果の高いものが望ましい。
なお、後述する薬剤含有樹脂層に色消失性の染料を含むインジケータ付き害虫忌避積層シート状物として用いる場合には、上記ピレスロイド系薬剤を用いると、染料の色を消失させる効果が適当であり望ましい。また、表面に、色を消失する染料を用いて印刷紙、インジケータ付き害虫忌避積層シート状物として用いる場合も、上記ピレスロイド系薬剤を用いると、染料の色を消失させる効果が適当であり望ましい。
次に、上記ホットメルト樹脂とは、加熱によって熱溶融液状化可能であり、冷却すると再び固形状になることで、接着剤として利用可能な樹脂である。上記の二層のシート層を接着させる樹脂としては、樹脂層に揮発性のピレスロイド系薬剤を含むので、溶媒を揮発させる必要のないホットメルト樹脂が好適である。この発明において用いる上記ホットメルト樹脂はエチレン共重合樹脂、合成ゴム樹脂、又はその両方を含む。エチレン共重合樹脂とは、エチレンと、エチレンと共重合を起こすビニル基やビニリデン基などの不飽和炭素結合を有するモノマーとの共重合樹脂であり、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は上記ピレスロイド系薬剤との反応性が低いため、混合しても上記ホットメルト樹脂が上記ピレスロイド系薬剤と反応しにくく、上記ピレスロイド系薬剤を長期間に亘って保存できる。また、揮散を妨げる副作用はロジンより少ない。さらに、後述するシート層との間で薬剤を高い含有率で保持することができ、且つ、十分な接着強度を発揮できる。
上記のエチレン共重合樹脂の中でも特に、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又はエチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂を30質量%以上含むと、上記ピレスロイド系薬剤との反応がより低くなるためよく、40質量%以上含むと好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂が全てを占めるものであるとより好ましい。なお、エチレン共重合樹脂の、エチレン単量体成分と酢酸ビニルやメタクリル酸メチルモノマーなどの他の単量体成分とのモル比は、5:95〜95:5であると好ましい。この範囲を外れると、エチレン共重合樹脂ではなく、単独重合体の性質が強くなりすぎ、発明の効果を発揮し得なくなるおそれがある。
一方、上記合成ゴム樹脂とは、スチレン−ブタジエン−スチレン(以下、「SBS」と略する)ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体が挙げられる。
なお、上記合成ゴム樹脂の割合が増えると、シート断面でのブロッキングが生じやすくなるため、上記合成ゴム樹脂を単独で用いるよりも、上記エチレン共重合樹脂と併用してブロッキングを抑える方が好ましい。
上記ホットメルト樹脂としては、上記エチレン共重合樹脂及び上記合成ゴム系樹脂、以外に、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ロジンエステル系樹脂、パラフィンワックス樹脂を、その他の成分として含んでもよい。ただし、熱溶融工程での上記ピレスロイド系薬剤との相溶性、上記ピレスロイド系薬剤及び接着剤そのものの温度安定性、接着強度が好適なものである必要がある。
なお、後述するインジケータ付き害虫忌避積層シート状物に用いる場合は、上記ホットメルト樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又はエチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂を用いると、混合する染料を太陽光から保護する耐光性の点から望ましい。
上記ホットメルト樹脂の軟化点は、70℃以上であると好ましい。軟化点が70℃未満であると、高温環境で保管した時に、ブロッキングやデラミネーション、積層シート状物断面からの樹脂のブリードアウトなどが起こる可能性がある。一方で、軟化点が180℃以下であることが好ましい。軟化点が180℃を超えると、ほとんどの場合、熱溶融温度が230℃を超えてしまい、上記樹脂層を形成させるために熱溶融液状にする際に、上記ピレスロイド系薬剤が反応して薬効が失われる可能性が無視できないものとなってしまう。なお、ここで軟化点は環球法による。
上記薬剤含有樹脂層を形成する上記ピレスロイド系薬剤と上記ホットメルト樹脂との質量混合比は、5:95〜50:50であるのが好ましく、10:90〜40:60であるとより好ましい。5:95よりも上記ピレスロイド系薬剤が少ないと、揮散量が絶対的に不足してしまい、害虫忌避効果が不十分となるからである。一方で、50:50よりも上記ホットメルト樹脂が少ないと、接着力が不十分になってしまうおそれが高くなる。
さらに、上記薬剤含有樹脂層には、上記ピレスロイド系薬剤と上記ホットメルト樹脂の他に、上記ピレスロイド系薬剤を変質させず、かつ揮散を著しく妨げないものであれば、その他の各種成分を追加してもよい。例えば、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、光沢剤、分散剤、香料、顔料、染料などが挙げられる。これらの成分は、上記の熱溶融液状化した混合物を調製する際に混合しておくとよい。
この染料としてアントラキノン系染料を用いると、上記ピレスロイド系薬剤の揮散とともに上記染料の色を徐々に消失させることができるので、害虫忌避積層シート状物に含まれる上記ピレスロイド系薬剤の放出終了を示すインジケータ付き害虫忌避積層シート状物とすることができる。アントラキノン系染料としては、1,4−ジイソプロピルアミノアントラキノン、1,4−ジブチルアミノアントラキノン、1,4−ジアリールアミノアントラキノンなどが挙げられる。上記染料の含有量は、上記ピレスロイド系薬剤に対して0.01〜5重量%であると望ましい。染料が多すぎると上記ピレスロイド系薬剤が揮散しても染料の色が残ってしまい、一方で少なすぎるとそもそも色が視認できない。この範囲で、染料の色の消失と、上記ピレスロイド系薬剤の揮散の終了とのタイミングが合うように量を調整する。
次に、シート層について説明する。
上記薬剤含有樹脂層を挟む二層のシート層は、少なくとも一方が、上記ピレスロイド系薬剤の薬効を十分に発揮しうる程度の速度で透過しうる薬剤透過シート層からなる必要がある。両面ともに薬剤を非透過では上記ピレスロイド系薬剤を放出できず、徐放材として意味がない。このため、少なくも二層のうちの一方が上記ピレスロイド系薬剤について透過性である必要があり、二層ともが透過性であってもよい。
図1は、薬剤含有樹脂層2が、薬剤透過シート層からなる透過層1に挟まれている害虫忌避積層シート状物の実施形態の断面図である。図中矢印は上記ピレスロイド系薬剤の揮散方向を示す。すなわち、害虫忌避積層シート状物の両面から上記ピレスロイド系薬剤を放出するものである。
このような薬剤透過シート層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸などの生分解性の樹脂や、塩化ビニルなどの各種のフィルムが例示される。またこれらの樹脂を、上記薬剤含有樹脂層に溶融押出塗工して薬剤透過シート層としたものや、上記薬剤含有樹脂層と共に共押出して薬剤透過シート層としたものが例示される。樹脂としては、これらの中でもピレスロイド系薬剤が浸透、透過することができるポリオレフィン系樹脂が好ましい。
上記薬剤透過シート層は、その厚みを変えることにより、上記ピレスロイド系薬剤が浸透、透過する速度を制御することができる。上記ピレスロイド系薬剤の含有量にもよるが、ほとんどの場合、10〜100μmであるとよく、20〜70μmであるとより好ましい。10μmより薄いフィルムを使用すると、熱溶融させた混合物をコーティングする際に変形したり破れたりする可能性や、保管中及び使用中にピンホールが開いたり破れたりする可能性が無視できないものとなる。一方で、100μmより厚いと、透明性が損なわれたり、剛性が高くなりすぎたりする。また、過剰に厚くても透過の役に立たないため、無駄となってしまう。
これらの薬剤透過シート層としてポリオレフィンを使用し、上記ピレスロイド系薬剤として、エンペントリンとプロフルトリンを用いた場合には、1ヶ月〜4ヶ月程度の使用期間を設定できるので特に好ましい。このポリオレフィンからなるシート層としては、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどが例示される。これらの上記ピレスロイド系薬剤は、上記薬剤透過シート層に浸透、透過して表面から揮発する。
また、上記薬剤透過シート層は、揮散性を適宜変更するため、前後の面を貫く孔を人為的に空けた有孔シート(有孔フィルムを含む。以下同じ)を用いることも出来る。この孔の直径は適宜調整できるものであるが、100〜500μm程度の間で調整するとよい。なお、このような有孔シートとする場合には、上記薬剤透過シート層を構成する樹脂自体が薬剤非透過性であっても、孔を通じて上記ピレスロイド系薬剤を透過できるので、材料選択の幅が広がる。ただし、樹脂自体が透過性である有孔ポリオレフィン系シートを用いる方が、調整が容易であり利用しやすい。
上記薬剤透過シート層として上記有孔シートを使用し、メトフルトリンやトランスフルトリンを用いた場合には、同様に1ヶ月〜4ヶ月程度の使用期間を設定でき、特に好ましい。これらの薬剤は、シートから浸透・透過することに加えて、孔の部分からも揮発することで十分な徐放性を確保する。上記有孔シートを有孔透過層1’として用い、樹脂層2の両面を覆った場合の実施形態を図2に示す。上記と同様、図中矢印は上記ピレスロイド系薬剤の揮散方向を示す。ただし、このような形態に限らず、上記有孔シートが、孔の部分のみで上記ピレスロイド系薬剤を透過し、シート状部分は一切透過しない形態でもよい。
さらに、上記薬剤透過シート層としては、種々の不織布を用いることができる。このような不織布の材質としては、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、又はそれらの混抄品などを例示することが出来、いずれを用いても、1ヶ月〜4ヶ月程度の範囲で揮散期間を設定できる。
この上記薬剤透過シート層からなる透過層1(1’)は、少なくとも一つが外気に触れている。表面を別の樹脂等で覆ってしまうと、上記ピレスロイド系薬剤の有効な徐放ができなくなる場合があるためである。ただし、一部のみを覆っていて、一部が外気に曝されているのであれば、この発明にかかる害虫忌避積層シート状物として利用可能である。このため、表面の一部に印刷を施すことも可能である。
一方、上記の二層のシート層のうち、一方は、上記ピレスロイド系薬剤について非透過性かつ非吸着性である薬剤非透過性シート層であってもよい。なお、非透過性とは完全に透過させないものだけではなく、わずかに透過するものの上記ピレスロイド系薬剤の薬効を発揮する程度の量までは透過しないものも含む。片面のみから上記ピレスロイド系薬剤を揮散させようとする場合、反対面からの揮散を防ぐと有用である。図3は、薬剤含有樹脂層2の一方の面が透過層1に覆われ、他方の面が薬剤非透過性シート層からなる非透過層3に覆われた実施形態の断面図を示す。
上記薬剤非透過性シート層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル製シートや、アクリロニトリル、アルミ箔、ポリアミドなどからなるシートを挙げることができる。
上記薬剤非透過性シート層の厚さは、10μm以上であると好ましく、20μm以上であるとより好ましい。10μm未満では薄すぎて上記の材質であっても上記ピレスロイド系薬剤を透過させてしまうおそれがあり、強度が不足して傷を生じ、その傷から上記ピレスロイド系薬剤を揮散させてしまう可能性が無視できなくなる。一方、厚ければその分透過性はより低くなるので、透過の点から特に上限は無いが、厚すぎると透明性が低下し、無駄に重量が増加したり、剛性が高くなったりするため、100μm以下であると好ましく、70μm以下であるとより好ましい。
害虫忌避積層シート状物の大きさとしては、適宜選択して使用することが出来るが、使用する場所により、0.1m×1m〜0.2m×10m程度の大きさとして使用できる。特に、0.1m×1m〜0.2m×3m程度の害虫忌避積層シート状物にコンビニエンスストア等のロゴを印刷し、帯状にすることで、害虫忌避用のシート状物と認識されにくく、且つ薬剤を広範囲に揮散させることができ、より好ましい。
この発明にかかる害虫忌避積層シート状物に印刷を施す場合には、上記薬剤非透過性シート層に印刷することが好ましい。非透過層が染料や顔料で覆われても、徐放性を妨げるものではないからである。
一方で、上記ピレスロイド系薬剤の揮散に合わせて徐々に色彩が失われるアントラキノン系染料を用いて、外気に接する上記薬剤透過性シート層の表面に印刷することで、インジケータ付き害虫忌避積層シート状物とすることができる。この場合、上記粘着剤層とは反対側の上記薬剤透過性シート層の表面に前記の染料で印刷する。すると、上記ピレスロイド系薬剤の揮散に伴って、上記薬剤透過性シート層を透過した上記ピレスロイド系薬剤が上記染料と接触することで、徐々に上記染料の色が失われていく。この染料の色が消えるタイミングと、上記ピレスロイド系薬剤の揮散が終了するタイミングとが概ね一致するように、上記ピレスロイド系薬剤及び上記染料の種類と量を調整しておくことで、インジケータ付きの害虫忌避積層シート状物とすることができる。このタイミングを合わせる基準としては、上記ピレスロイド系薬剤の面積当たりの揮散終了までの累積透過量1mg/cmに対して上記染料を0.001〜0.1mg/cm塗工しておくとほぼタイミングが一致する。
これらの上記シート層と上記薬剤含有樹脂とから、この発明にかかる害虫忌避積層シート状物を形成させる方法としては、上記シート層の一方に、熱溶融液状化させた上記薬剤含有樹脂混合物を塗工し、その混合物が固まる前に、上記シート層の他方を積層させる一般的な方法を用いることができる。最初に塗工する上記シート層は、上記薬剤透過性シート層でも上記薬剤非透過性シート層でもよいが、シワが発生し難いなどの理由から上記薬剤非透過性シート層に塗工する方が好ましい。また、薬剤非透過性シート層の上に、薬剤含有樹脂層を溶融押出塗工しその上に薬剤透過シート層を溶融押出塗工する製法や、薬剤含有樹脂層と薬剤透過シート層を共押出する製法も可能である。
この発明にかかる害虫忌避積層シート状物は、上記シート層の一方を上記薬剤非透過性シート層とした上で、さらに、その上記薬剤非透過性シート層からなる非透過層3の、上記薬剤含有樹脂層2と反対側の面に、粘着剤からなる粘着剤層4を設け、その上にさらに、その粘着剤と剥離可能なセパレータ5を貼り付けた実施形態とすることが出来る。この実施形態の断面図を図4に示す。この実施形態にかかる害虫忌避積層シート状物は、上記セパレータ5を剥がして、上記粘着剤層4の接着効果により各種の硝子面や壁面、布帛などに貼り付けることができる。セパレータ5を剥離して窓ガラス6の表面に取り付けた際の実施形態を図5に示す。なお、樹脂層2と粘着剤層4との間が薬剤透過性シート層からなるものであると、上記ピレスロイド系薬剤が粘着剤層4の粘着剤を変質させるおそれがあるため、好ましくない。
これらに使用される粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤など各種の粘着剤が例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。ただし、これらの粘着剤は、上記ピレスロイド系薬剤が吸着しても変質しないものが必要である。また、粘着剤の代わりに両面粘着テープを使用することも可能である。またセパレータについては、紙やフィルム材質のものなど一般的なセパレータとして各種のセパレータが例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、上記粘着剤層にも、上記樹脂層と同様に、その他の成分を含有させてもよい。例えば、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、光沢剤、分散剤、香料、顔料、染料などが挙げられる。
この発明にかかる害虫忌避積層シート状物を使用すれば、設置箇所の周辺から、通常生息する各種の害虫を忌避させることができる。一般的な対象生物として、蚊類、蚋、ユスリカ類、ハエ類、チョウバエ類、イガ類やヤスデ、ヨトウムシ、サシバエ、サンドフライ、ヌカカ、シラミ、ヒメカツオブシムシ、ナンキンムシ、ユスリカ、シミ、ゲジゲジ、カメムシ、ワラジムシ、ダンゴムシ、ムカデ、ナメクジ等や例えば、匍匐害虫であるゴキブリ類、アリ類(クロアリ、アカアリ、アミメアリ等を含む)、チャタテムシ、シバンムシ、コクゾウムシ、カツオブシムシ、ダニ類等が例示される。
この発明にかかる害虫忌避積層シート状物を保管するにあたっては、その周囲を包装密封することで、密封した容器内の上記ピレスロイド系薬剤の蒸気圧を飽和させ、それ以上の上記樹脂層2からの揮散を防ぐことができる。
また、上記樹脂層に色彩が消失する染料を含めたものや、薬剤透過性シート層の表面に色彩が消失する染料で印刷したものからなるインジケータ付き害虫忌避積層シート状物を保管するにあたっては、太陽光線などの紫外線を遮光する包装中で保管することが好ましい。用いる染料が紫外線により退色し、インジケータとしての色消失の時期と揮散完了とのタイミングがずれてしまうおそれがあるためである。
以下、実施例によりこの発明をより具体的に示す。
まず、用いる薬剤について列挙する。
<ピレスロイド系薬剤>
・プロフルトリン(25℃蒸気圧0.01Pa)
・エンペントリン(25℃蒸気圧0.014Pa)
・トランスフルトリン(25℃蒸気圧0.002Pa)
・メトフルトリン(25℃蒸気圧0.001Pa)
・フェノトリン(25℃蒸気圧0.00002Pa)
<接着樹脂>
・エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤(アロンエバーグリップリミテッド製:エバーグリップ PK222、軟化点79℃ エチレン−酢酸ビニル共重合体含有率:40%、表中「EVA1」と略記。)
・エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤(アロンエバーグリップリミテッド製:エバーグリップ 292、エチレン−酢酸ビニル共重合体含有率:45% 軟化点105℃ 表中「EVA2」と略記。)
・エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂(住友化学(株)製:WH303 軟化点:146℃ 表中「EMMA」と略記。)
・ロジンエステル(荒川化学工業(株)製:AA−G、表中「ロジン」と略記、軟化点86℃)
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製:Himic2095、軟化点98℃)
・合成ゴム接着剤(旭化成(株)製:SBSブロック共重合体:タフプレンA、軟化点96℃
<薬剤非透過性シート層>
・ポリエチレンテレフタレート製フィルム(ユニチカ(株)製:エンブレット、厚さ25μm、「PET−A」と略記する。)
・ポリエチレンテレフタレート製フィルム(ユニチカ(株)製:エンブレット、厚さ50μm、「PET−B」と略記する。)
・ポリブチレンテレフタレート製フィルム(オージーフィルム(株)製:PBT、厚さ50μm、「PBT」と略記する。)
・アクリロニトリル製フィルム(タマポリ(株)製:ハイトロンBX、厚さ50μm、「AN」と略記する。)
<薬剤透過性シート層>
・ポリエチレン製フィルム(東洋紡績(株)製:リックス、厚さ50μm、「PE50」と略記する。)
・ポリエチレン製フィルム(東洋紡績(株)製:リックス、厚さ30μm、「PE30」と略記する)
・ポリプロピレン製フィルム(東洋紡績(株)製:パイレン、厚さ30μm、「PP30」と略記する。)
・ポリプロピレン製フィルム(東洋紡績(株)製:パイレン、厚さ50μm、「PP50」と略記する。)
・有孔ポリプロピレン製フィルム(ニダイキ(株)製:機孔I、厚さ30μm、直径250μmの孔が25cm当たり200個空いている、「有孔PP30」と略記する。)
・ポリエチレンテレフタレート製不織布 (ユニセル(株)製:RT−0113W、目付60g/m 厚さ120μm、「不織布」と略記する。
<アントラキノン系染料>
染料〔SUMIPLAST BLUE OA((株)永廣堂本店製)
<接着剤の種類と薬剤変質の検証>
実施の前に、薬剤含有樹脂層を形成する接着剤について検証する参考試験を行った。
(参考例1)
軟化点が79℃であるエチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤と、ピレスロイド系薬剤であるプロフルトリンとを質量混合比77:23として、130℃にまで加熱溶融させて混合して、PET−Aの表面に塗工した。薬剤含有樹脂の固化後、ピレスロイド系薬剤が変質することなく揮散され、昆虫忌避効果を発揮した。
(参考例2)
軟化点が146℃であるエチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂と、ピレスロイド系薬剤であるトランスフルトリンとを質量混合比77:23として、190℃にまで加熱溶融させて混合して、PET−Aの表面に塗工した。薬剤含有樹脂の固化後、ピレスロイド系薬剤が変質することなく揮散され、昆虫忌避効果を発揮した。
<接着強度の検証>
ピレスロイド系薬剤による接着剤の効果の減衰具合を検証するため、下記のそれぞれの接着剤とプロフルトリンとを混合したものを、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(厚さ25μm)に塗工してポリエチレン製フィルム(厚さ50μm)を貼り合せ、JIS K6854に従って接着強度を測定した。また、その時の最大荷重を接着強度とした(単位;N/25mm)。
まず、エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤とプロフルトリンとを90:10、70:30、60:40、50:50、40:60の質量比で混合したところ、それぞれの剥離強度は、4N、2.1N、1.2N、0.5N、0.1Nとなり、50:50よりもプロフルトリンが少ない場合には、十分な接着強度を発揮した。
また、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂とプロフルトリンとを上記と同様の質量比で混合したところ、それぞれの接着強度は50:50よりもプロフルトリンが少ない場合には、十分な接着強度を発揮した。
また、合成ゴム接着剤とプロフルトリンとを上記と同様の質量比で混合したところ、それぞれの接着強度は50:50よりもプロフルトリンが少ない場合には、十分な接着強度を発揮した。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤と合成ゴム接着剤の混合物とプロフルトリンとを上記と同様の質量比で混合したところ、それぞれの接着強度は50:50よりもプロフルトリンが少ない場合には、十分な接着強度を発揮した。
次に、ロジンエステルとプロフルトリンとを上記と同様の質量比で混合したところ、それぞれの接着強度はすべて0.5N以下となり、いずれも接着強度が不十分となった。 さらに、パラフィンワックスとプロフルトリンとを上記と同様の質量比で混合したところ、それぞれの接着強度は0.5N以下となり、いずれも接着強度が不十分となってしまった。
上記の検証を踏まえて、この発明の実施例について検討する。試験は薬剤揮散試験と忌避効力試験の二つとし、それぞれの積層シート状物について検討した。
参考例313,比較例1〜4)
<第一の試験・薬剤揮散>
下記作製のそれぞれの防虫シート(害虫忌避積層シート状物)を25mの部屋(床面積10m、高さ2.5m)に置き、防虫シートに当てる風速を1m/秒として30日間揮散させた。防虫シートの揮散率をシートの重量減少量または溶剤にアセトンを用いたソックスレー抽出法により定期的に測定した。
<第一の試験・忌避効力>
容積0.027mの容器2個を長さ50cmの筒状ネットでつなぐ。一方の容器Aにはマウスを固定し、筒状ネット内に下記作製のそれぞれの防虫シートを設置し、他方の容器Bに供試虫としてアカイエカ雌成虫を30匹放した。防虫シートに当てる風速を0.5m/秒として2時間静置後、容器Aに侵入した供試虫数を計測し、次式(1)により忌避率を求めた。
・忌避率(%)=(防虫シートを設置しなかった場合の侵入数−防虫シートを設置した場合の侵入数)/防虫シートを設置しなかった場合の侵入数×100 ……(1)
表1に記載の薬剤非透過性シート層の表面に、表1に示すピレスロイド系薬剤と接着剤樹脂との混合物を加熱溶融して混合したものをホットメルトコーターまたは溶融押出コーターにより塗工し、その上に薬剤透過性シート層を貼った。なお、比較例1,2は薬剤透過性シート層を貼らずに樹脂を塗工したものであり、比較例3は薬剤非透過性シート層を使用せず、薬剤透過性シート層の表面に樹脂を塗工したものである。参考例3、8、10、11、12は樹脂にEVA1を使用し130℃で、参考例5はEVA2を使用し130℃で塗工し、参考例4は樹脂にEMMAを使用し、190℃で塗工した。また、参考例6参考例3の樹脂をSBSに変更したものであり、参考例7参考例5の接着剤の半分をSBSに変更したものである。さらに、参考例12は薬剤非透過性シート層を用いず、二枚の薬剤透過性シート層を使用し、その一方の表面にピレスロイド系薬剤を塗布した後、その上に他方の薬剤透過性シート層を貼ったものである。参考例13参考例5の接着剤の20%をロジンに変更したものである。その結果を表1に示す。
Figure 0005488971
薬剤透過性シート層を使用せず、薬剤含有樹脂層の片面のみが薬剤非透過性シート層で覆われた比較例1では、有効成分が直ぐに揮散してしまい、害虫の忌避率では、使用開始直後は忌避率が高い結果が得られたが、10日後では効果が低下する結果となった。また、薬剤のみで接着樹脂を用いなかった比較例2も、すぐに薬剤が揮散してしまった。さらに、接着樹脂をロジンとした比較例3でも、同様に薬剤がすぐに揮散してしまった。さらにまた、揮散性の低いピレスロイド系薬剤であるフェノトリンを用いた比較例4については、最初から効果が低く、実用性がなかった。
参考例1416、比較例5)
<第二の試験・薬剤揮散>
上記参考例3と同様の手順により、成分のみを表2に記載のように変更したそれぞれの防虫シートを作製し、工場事務所出入り口(幅1m、高さ2.1m)の窓に貼り付け、60日間揮散させ、定期的に揮散率を測定した。
表2に示す上記の防虫シートを工場事務所出入り口(幅1m、高さ2.1m)の窓に貼り付け、60日間揮散させた。定期的に、夜間、出入り口付近に市販の粘着トラップを設置し、1晩経過後の捕虫数を確認し、次式により飛翔害虫の忌避率を求めた。
・忌避率(%)=(防虫シートを設置しなかった場合の捕虫数−防虫シートを設置した場合の捕虫数)/防虫シートを設置しなかった場合の捕虫数×100
製造手順は上記参考例3と同一の手順により行った。ただし、比較例5は薬剤透過性シート層を貼らずに樹脂塗布したものである。その結果を表2に示す。参考例はいずれも60日経過後も忌避効果を発揮したが、比較例5は10日で忌避効果が尽きてしまった。
Figure 0005488971
<第三の試験・インジケータ機能(樹脂混合)>
(実施例
上記の参考例9において、ピレスロイド系薬剤に対して染料が0.5重量%となるように、染料を混合して樹脂層を形成させ、積層シート状物を作製した。薬剤の揮散期間に亘って色彩変化を観察したところ約90日間で青色が退色し、不織布原色の白色に戻った。これは薬剤の揮散終了時期と同じであった。
参考例17
ピレスロイド系薬剤に対して、染料が0.01重量%以下となる0.005重量%とした以外は実施例と同様にして積層シート状物を作製し、同様の観察を行ったところ、初期色が薄く、90日後に青色が退色した時との差が小さかった。
(実施例
ピレスロイド系薬剤に対して染料が5重量%以上となる7重量%とした以外は実施例と同様にして積層シート状物を作製し、同様の観察を行ったところ、90日後薬剤が揮散した後でも青色が消えなかった。
<第四の試験・インジケータ機能(表面印刷)>
(実施例
上記の参考例9で得られた積層シート状物の表面に、染料を用いて、累積透過量1mg/cmに対して0.01mg/cmとなるように塗工印刷した。薬剤の揮散期間に亘って色彩変化を観察したところ約90日間で青色が退色し、不織布原色の白色に戻った。これは薬剤の揮散終了時期と同じであった。
参考例18
染料塗工量を0.001mg/cm以下の0.0005mg/cmとした以外は実施例と同様の手順により印刷された積層シート状物を作製し、同様の観察を行ったところ、初期色が薄く、90日後に青色が退色した時との差が小さかった。
参考例19
染料塗工量を0.1mg/cm以上の0.2mg/cmとした以外は実施例と同様の手順により印刷された積層シート状物を作製し、同様の観察を行ったところ、90日後薬剤が揮散した後でも青色が消えなかった。
1 透過層
1’ 有孔透過層
2 薬剤含有樹脂層
3 非透過層
4 粘着剤層
5 セパレータ
6 窓ガラス

Claims (2)

  1. 同種又は異種である二層のシート層の間に薬剤含有樹脂層を有する積層シート状物であって、
    上記薬剤含有樹脂層は、25℃における蒸気圧が0.001Pa以上であるピレスロイド系薬剤とエチレン共重合樹脂、合成ゴム樹脂、又はその両方を含有するホットメルト樹脂とを質量混合比5:95〜50:50で混合、熱溶融液状化した混合物を、一方の上記シート層上に積層させて形成させたものであり、かつ、その上に他方の上記シート層を積層させることで、上記の二枚のシート層に挟まれて上記薬剤含有樹脂層が常温で固形状となったものであり、
    上記シート層の少なくとも一方が上記ピレスロイド系薬剤について透過性を有する薬剤透過性シート層であり、
    外気に接する上記薬剤透過性シート層の表面上に、上記ピレスロイド系薬剤の面積当たりの揮散終了までの累積透過量1mg/cm に対して0.001〜0.1mg/cm のアントラキノン系染料により印刷がされた、
    上記ピレスロイド系薬剤の揮散に伴い、上記染料による上記印刷の色が消失することで、上記ピレスロイド系薬剤の揮散が終了したことを視覚で確認可能としたインジケータ付き害虫忌避積層シート状物。
  2. 同種又は異種である二層のシート層の間に薬剤含有樹脂層を有する積層シート状物であって、
    上記薬剤含有樹脂層は、25℃における蒸気圧が0.001Pa以上であるピレスロイド系薬剤とエチレン共重合樹脂を含有するホットメルト樹脂とを質量混合比5:95〜50:50で混合し、かつ上記ピレスロイド系薬剤の0.01〜5重量%となるアントラキノン系染料を混合し、熱溶融液状化した混合物を、一方の上記シート層上に積層させて形成させたものであり、かつ、その上に他方の上記シート層を積層させることで、上記の二枚のシート層に挟まれて上記薬剤含有樹脂層が常温で固形状となったものであり、
    上記エチレン共重合樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又はエチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂であり、
    上記ホットメルト樹脂全体の30質量%以上が上記エチレン共重合樹脂であり、
    上記シート層の少なくとも一方が上記ピレスロイド系薬剤について透過性を有する薬剤透過性シート層であり、
    上記ピレスロイド系薬剤の揮散に伴い、上記染料により上記薬剤含有樹脂層が呈する色が消失することで、上記ピレスロイド系薬剤の揮散が終了したことを視覚で確認可能としたインジケータ付き害虫忌避積層シート状物。
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