JP2005320279A - 薬剤保持体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 複数の単層シートを接合した複層シートから構成される薬剤保持材からなり、油溶性の蒸散性薬剤を保持及び/又は蒸散させる薬剤保持体、又は単層シート又は複数の単層シートを接合した複層シートから構成され、かつ、油溶性の蒸散性薬剤を保持及び/又は蒸散させる薬剤保持材と、該薬剤保持材を支持シートに接合してなる薬剤保持体であって、上記薬剤保持材及び/又は支持シートが合成樹脂材料から作製されているか又は合成樹脂層を含み、上記接合に用いる接着剤が(メタ)アクリル酸エステル系接着剤である。好適な薬剤保持体は、1枚又は複数枚の単層シートを局所的に接合して多層化及び/又は立体化した構造体である。
【選択図】 図2
Description
また、ファンによって薬剤を空気中に放出する方式の製剤(特許文献3〜6参照)や、加温(微加熱)によって薬剤を空気中に放出する方式の製剤(特許文献7〜9参照)も知られている。
一般に、接着剤に求められる性能の一つは、「接着剤によって形作られた製品が、身の回りに存在するあらゆる化学物質や溶剤などによって、軟化や破壊等による接着強度の低下が生じない」ことである。そして、身の回りに存在する化学物質や溶剤は、概して油性系のものが多く、結果として一般的に使用されている接着剤は耐水性能を有するものが多い。
(a)接着剤の溶解、破壊による被着体の剥離、脱落、強度低下。
(b)接着剤の膨潤、軟化による被着体の強度低下、剥離、脱落。
(c)接着剤への移行、吸着による薬剤の損失。
(d)接着剤との化学反応による薬剤の分解、変性。
本発明の薬剤保持体の第二の態様は、単層シート又は複数の単層シートを接合した複層シートから構成され、かつ、油溶性の蒸散性薬剤を保持及び/又は蒸散させる薬剤保持材と、該薬剤保持材を支持シートに接合してなる薬剤保持体であって、上記薬剤保持材及び/又は支持シートが合成樹脂材料から作製されているか又は合成樹脂層を含み、上記接合に用いる接着剤が(メタ)アクリル酸エステル系接着剤であることを特徴としている。
前記いずれの態様においても、好適には、上記(メタ)アクリル酸エステル系接着剤は、一般式:CH2=C(R1)COOR2(但し、R1は水素原子又はメチル基を表わし、R2は炭素数1〜8のアルキル基又はシアノ基を表わす。)で示される化合物の1種又は2種以上を含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
また、前記複層シート間の薬剤の移行や、多層化及び/又は立体化した構造体の或る領域から他の領域への薬剤の移行を防止するために、これらを構成する複数のシートの少なくとも1層に、油溶性の薬剤の移行を阻止又は抑制できるバリアー性材料を用いることもできる。これによって、薬剤面への接触を抑制することのみならず、複層シートの表裏シートに異なる薬剤を含浸・保持させたり、また多層化及び/又は立体化した構造体の一部領域と他の領域に異なる薬剤を含浸・保持させたりする態様とすることができる。
本発明に係る薬剤保持体においては、前記油溶性の蒸散性薬剤を蒸散させる手段として、風力蒸散方式、70℃以下の加温(微加熱)蒸散方式もしくは自然蒸散方式、又はこれらの組合せを採用することができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル系接着剤は水溶性接着剤であるため、従来の油溶性接着剤使用に伴う問題、即ち薬剤の接着剤中への移行や吸着あるいは接着剤との化学反応による分解、変性等を有効に阻止又は抑制できる。そのため、接合部分の接合強度低下や剥離等の問題を生ずることがなく、特に1枚又は複数枚の単層シートを接着剤によって局所的に接着して多層化及び/又は立体化した構造体の場合、使用初期から長期間に亘って充分な薬量で薬剤を蒸散することができる。また、薬剤保持材を種々の装飾品に加工することができるため、携帯用や室内のインテリア等にも使用することができ、製品設計が飛躍的に行い易くなる。
まず、油溶性薬剤を保持及び/又は蒸散させるための具体的な構造体としては、2枚以上のシートを接着剤によって貼り合わせた複層のラミネートシート状構造体、単層又は複層のシートの両端を接着剤によって貼り合わせた円筒、角筒、星型筒などの筒状構造体、2枚のシートの片側、又は3枚のシートの真ん中のシートを波形に折り曲げて山折りの稜線部分だけに接着剤を付けて他のシートに貼り合わせたダンボール状構造体、開いたときに多数のセルを形成するよう、平行に一定の間隔で接着剤を塗布した多数のシートを一枚ずつ交互にずらしつつ接着したハニカム状構造体などが例示できる。薬剤保持体の他の立体的な構造体の例については、後に図面を参照しながら説明する。
接着剤の適用形態としては、フィラメント状、ウェブ状、ネット状、ポイント状、散点状、全面塗布などが例示でき、所望の接着面積と接着強度に応じて選択すればよい。
・一般名;化学名(商品名、メーカー)
*アレスリン;dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル dl−シス/トランス−クリサンテマート(ピナミン、住友化学工業(株))
*dl・d−T80−アレスリン;dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−シス/トランス−クリサンテマート(ピナミンフォルテ、住友化学工業(株))
*dl・d−T−アレスリン;dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(バイオアレスリン)
*d・d−T−アレスリン;d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(エスビオール)
*d・d−T80−プラレトリン;(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)−2−シクロペンテニル (+)−シス/トランス−クリサンテマート(エトック、住友化学工業(株))
*レスメトリン;5−ベンジル−3−フリルメチル dl−シス/トランス−クリサンテマート(クリスロン、住友化学工業(株))
*dl・d−T80−レスメトリン;5−ベンジル−3−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート(クリスロンフォルテ、住友化学工業(株))
*エンペントリン;1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル dl−シス/トランス−3−(2,2−ジメチルビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート(ベーパースリン、住友化学工業(株))
*テラレスリン;dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル−d1−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチル−シクロプロパンカンボキシラート(ノックスリン、住友化学工業(株))
*トランスフルスリン;d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート
*メトフルトリン;2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート
*2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート
*2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート
*2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル3−(2−クロロ−2−フルオロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート
*プロフルトリン;2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート
*1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル3−(2−クロロ−2−フルオロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート
上記化合物及び/又はこれらの異性体及び/又は類縁体から選ばれた少なくとも1種以上を用いることが好ましいが、必要に応じて以下の害虫防除成分を単独で又は組み合わせて用いることになんら制限はされない。
*フタルスリン;N−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミド)−メチル dl−シス/トランス−クリサンテマート(ネオピナミン、住友化学工業(株))
*dl・d−T80−フタルスリン;(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−インドリル)メチル dl−シス/トランス−クリサンテマート(ネオピナミンフォルテ、住友化学工業(株))
*フラメトリン;5−プロパギル−2−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート(ピナミンD、住友化学工業(株))
*ペルメトリン;3−フェノキシベンジル dl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート(エクスミン、住友化学工業(株))
*フェノトリン;3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート(スミスリン、住友化学工業(株))
*イミプロスリン;2,4−ジオキソ−1−(プロプ−2−イニル)−イミダゾリジン−3−イルメチル(1R)−シス/トランス−クリサンテマート(プラール、住友化学工業(株))
*フェンバレレート;α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチレート(スミサイジン、住友化学工業(株))
*シペルメトリン;α−シアノ−3−フェノキシベンジル dl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(アグロスリン、住友化学工業(株))
*シフェノトリン;(±)α−シアノ−3−フェノキシベンジル (+)−シス/トランス−クリサンテマート(ゴキラート、住友化学工業(株))
*エトフェンプロックス;2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル(トレボン)
*テフルスリン;2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート
*フェンプロパトリン;α−シアノ−3−フェノキシベンジル シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシラート
*フェンフルスリン;2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル−dl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート
*1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート
*ダイアジノン;(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオホスフェート(ダイアジノン)
*フェニトロチオン、MEP;O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート(スミチオン)
*ピリダフェンチオン;O,O−ジメチル−O−(3−オキソ−2−フェニル−2H−ピリダジン−6−イル)ホスホロチオエート(オフナック)
*マラチオン;ジメチルジカルベトキシエチルジチオホスフェート(マラソン)
*ディプテレックス;O,O−ジメチル−2,2,2−トリクロロ−1−ハイドロオキシエチル ホスホネイト
*クロルピリホス;O,O−ジエチル−O−(3,5,6−トリクロル−2−ピリジル)−ホスホロチオエート
*フェンチオン;O,O−ジエチル−O−(3−メチル−4−メチルチオフェニル)−ホスホロチオエート(バイテックス)
*ジクロルボス;O,O−ジメチル−2,2−ジクロロビニルホスフェート(DDVP)
*プロペタンホス;O−[(E)−2−イソプロポキシカルボニル−1−メチルビニル]−O−メチルエチルホスホラミドチオエート(サフロチン)
*アベイト;O,O,O´,O´−テトラメチル−O,O´−チオジ−P−フェニレン ホスホロチオエート
*プロチオホス;ジチオリン酸O−2,4−ジクロロフェニル O−エチル S−プロピルエステル(トヨチオン)
*ホキシム;O,O−ジエチル−O−(α−シアノベンジリデンアミノ)チオホスフェート
*ピリプロキシフェン;2−[1−メチル−2−(4−フェノキシフェノキシ)エトキシ]ピリジン(スミラブ)
*メトプレン;11−メトキシ−3,7,11−トリメチル−2,4−ドデカジエノイックアシド−1−メチルエチルエステル
*フェノキシカルブ;エチル[2−(4−フェノキシフェノキシ)エチル]カーバメート
*ジフルベンズロン;1−(4−クロロフェニル)−3−(2,6−ジフロロベンゾイル)ウレア
*シロマジン;2−シクロプロピルアミノ−4,6−ジアミノ−s−トリアジン
*テフルベンズロン;N−[[(3,5−ジクロロ−2,4−ジフロロフェニル)アミノ]カルボニル]−2,6−ジフロロベンズアミド
*メトキサジアゾン;5−メトキシ−3−(2−メトキシフェニル)−O−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン(エレミック)
クロロニコチン系殺虫剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
*イミダクロプリド;1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン(ハチクサン)
*アセタミプロリド;(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトンアミジン(モスピラン)
*トリフルミゾール;(E)−4−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−N−(1−イミダゾール−1−イル−2−プロポキシエチリデン−O−トルイジン)
*ヘキサコナゾール;(R,S)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ヘキサン−2−オール(アンピル)
*硫黄(S)
*TPN;テトラクロロイソフタロニトリル(ダコニール)
*カルベンダゾール;2−(メトキシカルボニルアミノ)ベンゾイミダゾール(MBC)
*チオファメートメチル;1,2−ビス(3−メトキシカルボニル−2−チオウレイド)ベンゼン(トップジンM)
*プロシミドン;N−(3,5−ジクロロフェニル)−12−ジメチルシクロプロパン−1,2−ジカルボキシミド(スミレックス)
*ミクロブタニル;2−P−クロロフェニル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ヘキサンニトリル(ラリー)
*イソプロチオラン;ジイソプロピル−1,3−ジチオラン−2−イソデン−マロネート(フジワン)
*ケルセン;1,1−ビス(クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタノール
*キノメチオネート;6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカ−ボネート
*ヘキサチアゾクス;トランス−5−(4−クロロフェニル)−N−シクロヘキシル−4−メチル−2−オキソチアゾリジン−3−カルボキサミド
*N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)
*ジメチルフタレート
*ジブチルフタレート
*2−エチル−1,3−へキサンジオール
*1,4,4a,5a,6,9,9a,9b−オクタヒドロジベンゾフラン−4a−カルバルデヒド
*ジ−n−プロピル イソシンコメロネート
*p−ジクロロベンゼン
*ジ−n−ブチルサクシネート
*カプリン酸ジエチルアミド
*N−プロピルアセトアニリド
*β−ナフトール
*カンファー
*シトラール、シトロネラール、シトロネロール、オイゲノール、メチルオイゲノール、ゲラニオール、シンナミックアルデヒド、リナロール、ペリラアルデヒド、ネペタリック酸、メチルヘプテノン、デシルアルデヒド、ミルセン、酢酸ゲラニオール、チモール、リモネン、シネオール、ピネン、シメン、テルピネン、サビネン、エレメン、セドレン、エレモール、ビドロール、セドロール、ヒノキチオール、ツヤプリシン、トロポロイド、ヒノキチン、ツヨプセン、ボルネオール、カンフェン、テルピネオール、テルピニルエステル、ジペンテン、ファランドレン、シネオール、カリオレフィン、バニリン、フルフラール、フルフリルアルコール、ピノカルベオール、ピノカルボン、ミルテノール、ベルベノン、カルボン、オイデスモール、ピペリトン、ツエン、ファンキルアルコール、メチルアンスラニレート、ビサボレン、ベンガプトール、ノニルアルデヒド、ノニルアルコール、ヌートカトン、オクチルアルデヒド、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、ネロリドール、オシメン、アンスラニル酸メチル、インドール、ジャスモン、ベンツアルデヒド、プレゴン等
*上記の異性体及び/又は誘導体
*上記から選ばれる少なくとも1つ以上を含有する精油
*ブチルカービトル 6−プロピル−ピペロニル エーテル(商品名ピペロニルブトキサイド)
*オクタクロロジプロピルエーテル(商品名S−421)
*イソボルニルチオシアナアセテート(商品名IBTA)
*N−オクチルビシクロヘプテンカルボキシイミド(商品名サイネピリン222)
*(2−エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ(2,2,2)オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(商品名サイネピリン500)
薬剤保持体の形態としては、先に例示した複層シート状構造体及びダンボール状構造体、ハニカム状構造体などの立体状構造の他、複層シート状構造体に格子状、網目状等の任意の模様となる多数の透孔を形成することもできる。また、三次元構造としては、断面がハニカム状、格子状、網目状等のセル壁で構成される球状、楕円球状、円柱状、円筒状、円錐状、四角錐状(ピラミッド状)、立方体状、直方体状等の立体状構造体の他に、シート材を造花、折り鶴、吹流し等に加工した立体状構造体などが挙げられる。
以下、立体状構造体の幾つかの例を添付図面を参照しながら説明する。
ハニカム構造体1は、セル壁2によって囲まれる各セル3が、中心軸線Xに対して垂直に、球体外周面に向って平行に配列された全体的に球状の構造体に構成され、かつ、その中央部に内部空間Sが形成されている。従って、各セル3の殆ど大部分が内部空間Sと連通状態にあり、空気の流れが抑制されないようにされている。薬剤は、スプレー法、浸漬法等の任意の方法により、セル壁2に含浸・保持される。
このように、薬剤を含浸・保持できる材料から作製されたハニカム状(又は格子状、網目状等)のセル壁で立体状構造体を構成すると共に、その内部に空間を形成することによって、一つ一つのセルへの通気が促進され、それによって有効成分の蒸散量が増大し、長期間に亘って有効成分を安定して蒸散させることができる。
特に、互いに接することのないように所定の間隔をあけて互いに離間した少なくとも内外二層の多重構造の立体状構造体とすることにより、種々の形態で利用することが可能となる。
第一の利用形態は、薬剤保持体の最外層を、有効成分を保持させない保護層とすることである。これによって、最外層の保護層は、内部の有効成分保持層に光が直接照射されたり埃が付着するのを防止するバリヤー層として機能し、有効成分の分解や蒸散抑制といった現象が著しく低減する。また、最外層を保護層とすることにより、薬剤保持体に含浸・保持されている薬剤が手などに付着することもなく、有効成分の損失防止や安全性の向上の点でも有利である。このような効果は、薬剤保持体を折り畳み自在に構成することによっても得ることができる。
本発明のこのような保持体構造が有利な点は、有効成分保持層が互いに接することのない多重構造であるため、異なった作用又は蒸気圧を有する有効成分を保持させ、各々の作用を充分に発揮させることが可能な点である。単一構造の保持体に多種の有効成分を保持させた場合、例えば蒸気圧の異なる複数種の物質を混合して用いると、蒸気圧の高い易蒸散性物質の蒸散が蒸気圧の低い難蒸散性物質によって抑制されるといった現象が起こり、性能を充分に発揮することができない。それに対し、多重構造の各層にそれぞれ作用又は蒸気圧の異なる常温蒸散性薬剤を保持させた保持体構造であれば、長期にわたって安定して効力を発揮する持続成分と、使用初期を中心に大きな効力を発揮する即効性成分の双方を確実に蒸散させることが可能である。また、複数の有効成分保持層を構造体中心から同心円上に配する構造とした場合、内部ほど通気が悪く蒸散量が低下するので、内部に易蒸散性成分を、通気のよい外部に難蒸散性成分を保持させ、双方の成分の蒸散量を調整することが可能となる。これにより効力を長期にわたって持続させることが可能となるほか、数種の効果を同時に発揮させ、効力の増強を図ることが可能となる。なお、このような利用形態においても、例えば少なくとも三層の多重構造の立体状構造体からなり、最外層を常温蒸散性薬剤を保持しない保護層とし、内部の各層にそれぞれ作用又は蒸気圧の異なる常温蒸散性薬剤を保持させることもできるが、最外層に蒸気圧の高い易蒸散性成分を保持させ、この成分が蒸散した後に保護層として利用する態様も可能である。
ハニカム構造体1は、セル壁2によって囲まれる各セル3が、中心軸線Xに対して垂直に、球体外周面に向って平行に配列された全体的に球状の構造体に構成されているが、外層4と内層5の二重構造であり、内外層間には所定間隔の空隙部6が形成されて互いに直に接しないようにされ、かつ、その中央部に内部空間Sが形成されている。従って、各セル3の殆ど大部分が内部空間Sと連通状態にあり、空気の流れが抑制されないようにされている。
薬剤はスプレー法、浸漬法等の任意の方法により内層5のセル壁2に含浸・保持される。一方、外層4は無処理で薬剤を保持しておらず、有効成分保持層である内層5の保護層として機能するが、前記したように、内層5に保持される有効成分と作用や蒸気圧の異なる有効成分を含浸・保持するようにしてもよい。
一方、図6は三層構造のハニカム構造体1bの実施態様を示している。すなわち、外層4bと内層5bの間に中間層13が配設された多重構造を有し、各層間にそれぞれ空隙部6b、14が形成されている点において、図3及び図4に示すハニカム構造体と異なる。なお、図6も両側の支持シート7b、8bを180度開いた状態で示している。このハニカム構造体1bの場合、外層4bは有効成分を保持しない保護層とし、中間層13及び内層5bに作用もしくは蒸気圧の異なる2種の有効成分を含浸・保持させることが好ましい。
このハニカム構造体1cは、含浸・保持されている有効成分の蒸散量を多くしたい場合には、図7に示すように組み立てた後、把持部15を握って振って用いることもできるが、図10に示すように把持部15に弾性線状部材16の一端部を固定し、他端部を支持台17の支持部18に嵌め込み、図10に示すように支持されているハニカム構造体1cを押して首振り運動させ、全体的にゆっくり振動させながら用いることができる。あるいはまた、把持部15を必要に応じて適当な連結部材を介して振動装置もしくは開閉装置(図示せず)に取り付け、ハニカム構造体1cを振動もしくは開閉させながら用いることもできる。
前記図7乃至図9に示すハニカム構造体1cの場合、組み立てられた状態では2枚の支持シート7c、8cが重ね合わされるので(図9参照)、この部分で空隙部6cの連通状態が遮断されることになり、各セル3の通気状態が充分でない場合がある。そこで、図11に示すハニカム構造体1dでは、両側の支持シート7d(8dは図示せず)の空隙部6dと対応する箇所に複数(図示の例では各3個)の通気孔19を形成して、重ね合わされる支持シート7d、8dの両側を連通するように構成されている。
一方、図12に示すハニカム構造体1eでは、上記通気孔19の他に、両側の支持シート7e(8eは図示せず)及びそれらの間に積層されるセル壁を構成する多数のシートの一辺(中心軸線)中間部に略半円形状の切欠き20を設け、この切欠き20部分により、組み立てたときにハニカム構造体1eの中心部に内部空間が形成されるように構成されている。
このような薬剤蒸散方法を実施するための装置の幾つかの例を図面を参照しながら説明する。
この薬剤蒸散装置は、図3及び図4に示すハニカム構造体と同様に、空隙部6fを介して離間された外層4fと内層5fの二重構造からなり、内部に空間Sが形成されたハニカム構造体1fと、上記内部空間7fに配設される駆動装置21とからなる。なお、ハニカム構造体1fは、両側の支持シート7f、8fを180度開いた状態で示されている。
駆動装置21は、図14に示すように、駆動軸22と、一端部が該駆動軸22に回動自在に取り付けられ、他端部に永久磁石24が取り付けられた振子23と、該振子23の揺動軌跡に近接して配設される電磁石25とから構成される。符号26は電磁石25を励磁するための乾電池である。駆動軸22は、図13に示されるように、ハニカム構造体1fの相対する支持シート7f、8fの中心軸線側端縁部間の隙間に配座され、両支持シート7f、8fを接合することにより駆動装置は内部空間S内に収容される。
薬剤保持体全体を駆動する動力源としては、上記実施態様のように電磁石と永久磁石を利用した振り子の他、モーター、ゼンマイ、ゴムなどが考えられるが、長期に亘る使用を考えた場合の利便性の点ではモーターか電磁石の振り子が好ましく、電池等を利用する場合は消費電力の点で電磁石振り子が好ましい。
図15に示す強制通気方式(風力蒸散方式)の薬剤蒸散装置は、内部空間Sを有する中空円柱状のハニカム構造体1gを用いた例を示している。容器36上に配設されたハニカム構造体1gは、セル壁2によって囲まれるハニカム状の各セル3が内部空間Sから外周にかけて連通するように構成されており、その内部空間Sにはファン30が回転自在に配設されている。ファン30は、対称的に平行に配列された4枚の羽根31の上端にリング状の羽根固定部材32が、また下端に回転板33が固定された構造を有し、回転板33の中心は容器36内に収容されているモーター35の回転軸34に取り付けられている。モーター35への電力供給方式は、例えば乾電池を容器36内に収容する内部電源方式や、配線コードを接続する外部電源方式のいずれでもよい。
図16に示す強制通気方式(風力蒸散方式)の薬剤蒸散装置は、空隙部6hを介して離間された外層4hと内層5hの二重構造からなり、内部空間Sを有する中空円柱状のハニカム構造体1hを用いた例を示している。容器36上に配設されたハニカム構造体1hは、外層4hと内層5hの各層において、セル壁2によって囲まれるハニカム状の各セル3が内部空間Sから外周にかけて連通するように構成されており、その内部空間Sには図15に示す実施態様と同様にファン30が回転自在に配設されている。
この装置40は、中空円筒体41内に回転自在に配設されたロール42に、蒸散性薬剤を含浸・保持するシート状の薬剤保持材45が巻回された構造を有し、薬剤保持材45の下端縁は中空円筒体41の下部に軸線方向に形成されたスリット状開口部(図示せず)から突出している。薬剤保持材45の下端縁には支持シート(補強シート)46が貼着されており、薬剤保持材45が全体的に中空円筒体41内部に収納されたときに、支持シート46がスリット状開口部に密接・シールして、薬剤蒸散が起こらないように構成されている。
上記薬剤保持材45としては、前記したような複層シート材、又は波形シート材の片面又は両側面に不織布を貼り合わせたダンボール状シート材などを用いることができる。
この薬剤蒸散装置50は、枠体51の後側に軸流ファン52を備えており、この軸流ファン52はモータ53により回転される。符号54はモータ駆動用のAC電源である。薬剤を保持する薬剤保持材55は枠体51の前面に取り付けられ、軸流ファン52の回転による送風によって強制的に薬剤の蒸散が行われる。ここで用いられる薬剤保持材としても、前記したような複層シート材、又は波形シート材の片面又は両側面に不織布を貼り合わせたダンボール状シート材などを用いることができる。
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートした厚紙を台紙(支持シート)とし、紙を薬剤保持材とするか、あるいは(2)厚紙を台紙(支持シート)とし、紙を薬剤保持材として、各実施例の場合にはそれぞれ表1に示す成分を主成分として含有する接着剤を用いて接着し、各比較例の場合にはホットメルト接着し、J1S K6854に従ってサンプルを作成した(サンプルの幅:2.5cm、接着面:サンプルの一端から1.5cmの長さ分)。
各サンプルの薬剤保持材に、薬剤としてメトフルトリン(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート)又はプロフルトリン(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート)、酸化防止剤としてBHT、溶剤としてn−パラフィンを混合した溶液を塗布した。塗布後、40℃、75%R.H.の条件下で1ヶ月放置した後、J1S K6854に従って接着強度を測定した。判定基準は以下の通りである。結果を表1に併せて示す。
○:接着強度の低下は認められなかった。
△:接着強度の低下が若干認められた。
×:接着強度の低下が明らかに認められた(容易に剥離)。
2 セル壁
3 セル
4,4a,4b,4c,4d,4e,4f,4h 外層
5,5a,5b,5c,5d,5e,5f,5h 内層
6,6a,6b,6c,6d,6e,6f,6h,11,14 空隙部
7,7a,7b,7c,7d,7e,7f,8,8a,8b,8c,8f 支持シート
13 中間層
15 把持部
16 弾性線状部材
19 通気孔
20 切欠き部
21 駆動装置
23 振子
25 電磁石
30 ファン
31 羽根
32 羽根固定部材
33 回転板
35 モーター
40 自動巻取ロールスクリーン方式薬剤蒸散装置
41 中空円筒体
43 ラチェット解除ボタン
45,55 薬剤保持材
50 送風装置
A 接着部分
S 内部空間
X 中心軸線
Claims (6)
- 複数の単層シートを接合した複層シートから構成される薬剤保持材からなり、油溶性の蒸散性薬剤を保持及び/又は蒸散させる薬剤保持体であって、上記薬剤保持材が合成樹脂材料から作製されているか又は合成樹脂層を含み、上記接合に用いる接着剤が(メタ)アクリル酸エステル系接着剤であることを特徴とする薬剤保持体。
- 単層シート又は複数の単層シートを接合した複層シートから構成され、かつ、油溶性の蒸散性薬剤を保持及び/又は蒸散させる薬剤保持材と、該薬剤保持材を支持シートに接合してなる薬剤保持体であって、上記薬剤保持材及び/又は支持シートが合成樹脂材料から作製されているか又は合成樹脂層を含み、上記接合に用いる接着剤が(メタ)アクリル酸エステル系接着剤であることを特徴とする薬剤保持体。
- 前記(メタ)アクリル酸エステル系接着剤が、一般式:CH2=C(R1)COOR2(但し、R1は水素原子又はメチル基を表わし、R2は炭素数1〜8のアルキル基又はシアノ基を表わす。)で示される化合物の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤保持体。
- 前記薬剤保持材が、1枚又は複数枚の単層シートを局所的に接合して多層化及び/又は立体化した構造体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薬剤保持体。
- 前記油溶性の蒸散性薬剤を蒸散させる手段が、風力蒸散方式、70℃以下の加温蒸散方式もしくは自然蒸散方式、又はこれらの組合せからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬剤保持体。
- 前記薬剤保持材の複数のシートの少なくとも1層が、油溶性の蒸散性薬剤の移行を阻止又は抑制できるバリア−性材料からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の薬剤保持体。
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