JP3955151B2 - 常温蒸散性薬剤の薬剤保持体並びにそれを用いた薬剤蒸散方法及び装置 - Google Patents

常温蒸散性薬剤の薬剤保持体並びにそれを用いた薬剤蒸散方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱装置を用いることなく、常温で一種以上の有効成分を持続的に空気中に放出する常温蒸散性薬剤の薬剤保持体並びにそれを用いた薬剤蒸散方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、常温で有効成分を空気中に放出するタイプの薬剤保持体及び薬剤蒸散方法としては種々のものが提案されている。例えば、特開平9−289855号公報には、貫通穴を有し(表面積/体積)が1〜20cm-1の範囲内にある担体に、常温揮散性の防虫性化合物が保持されてなる防虫材が、また特開平9−308421号公報には、折り畳み可能な紙製の穴を多数有する筒状材に、常温蒸散性の殺虫性化合物が保持されてなる防虫材が開示されている。また実開昭61−182273号公報、特開平5−68459号公報、特開平7−111850号公報、特開平8−147号公報等にはファンによって有効成分を空気中に放出する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記したような従来の技術は、常温で有効成分を空気中に放出するという点において、加熱という高エネルギーを使用することなく効果を発揮する利点があり、非常に有効な手段である。ただし、実施に当たっては種々の課題を解決する必要がある。例えば常温蒸散製剤の場合、加熱といった高エネルギーを使用しないため、加熱蒸散方式よりも薬剤保持体が概して大きくなる傾向にある。このことは、有効成分に光のあたる可能性や埃の溜まる可能性を増加させ、有効成分の分解や蒸散抑制といった現象を引き起こす。これは長期にわたる使用を困難にすると共に、経済的に不利である。また薬剤保持体を露出させた場合、有効成分が手などに付着する機会を増加させ、有効成分のロスや安全性の悪化の点で問題である。また、異なった有効成分が単一構造の保持体上に混在した物は、有効成分の蒸散が最も蒸気圧の低い成分により抑制されるといった現象が起き、有効性の確保という点で経済的に不利である。
【0004】
本発明は、上記のような従来技術の問題に鑑みなされたものであり、その基本的な目的は、ヒーター等の加熱装置を用いることなく、殺虫、防虫(忌避)、害虫成長制御等を目的として有効成分を常温で持続的にかつ効率的に空気中に放出できる安全性や利便性に優れた常温蒸散性薬剤の薬剤保持体並びにそれを用いた薬剤蒸散方法及び装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、数種の効力を同時にかつ効果的に発揮でき、しかも使用が簡便な薬剤保持体並びにそれを用いた薬剤蒸散方法及び装置を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、有効成分の蒸散速度を調整でき、また効力増強を図ることができる薬剤保持体を用いた薬剤蒸散方法及び装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、常温で一種以上の有効成分を持続的に空気中に放出する常温蒸散性薬剤の薬剤保持体が提供され、その基本的な構成は、殺虫剤、防虫剤、忌避剤、害虫成長抑制剤及び殺虫効力増強剤よりなる群から選ばれた常温蒸散性薬剤を保持する多数のセル壁を有し、且つ個々に上記セル壁によって囲まれた多数のセルを有する立体状構造体を、互いに接することのないように所定の間隔をあけて互いに離間した少なくとも内外二層の多重構造としたことを特徴としている。
また、使用に利便性のある好適な態様の薬剤保持体は、折り畳み自在に構成され、開いたときに多数のセルを有する少なくとも内外二層の多重構造の立体状構造体となることを特徴としている。
このような薬剤保持体は、種々の形態、態様で用いることができ、例えば、上記多重構造の最外層を常温蒸散性薬剤を保持しない保護層とすることができ、また多重構造の各層にそれぞれ作用又は蒸気圧の異なる常温蒸散性薬剤を保持させることもできる。また、これらの構成を組み合わせ、例えば少なくとも内外三層の多重構造の立体状構造体からなり、最外層を常温蒸散性薬剤を保持しない保護層とし、内部の各層にそれぞれ作用又は蒸気圧の異なる常温蒸散性薬剤を保持させることもできる。さらに、上記立体状構造体の内部略中央部に、上記セル壁で囲まれる各セルとは別個の内部空間を有し、又は折り畳み自在の構成の場合には開いたときに立体状構造体の内部略中央部に、上記セル壁で囲まれる各セルとは別個の内部空間が形成されるような構造とすることもできる。
【0006】
さらに本発明によれば、前記のような薬剤保持体を用いた薬剤蒸散方法及び装置も提供される。
すなわち、前記したような薬剤保持体は、使用箇所に放置(折り畳み自在な薬剤保持体の場合には開いた状態で放置)して、保持される常温蒸散性の有効成分が常温で自然に蒸散させるにまかせた状態で使用することもできるが、強制的に有効成分の蒸散を促進する態様で用いることもできる。すなわち、前記したような薬剤保持体を振動もしくは開閉させ、有効成分の蒸散を促進することもできるし、内部空間が形成される立体状構造体の場合、薬剤保持体の内部空間にファンを設け、有効成分の蒸散を促進することもできる。
さらにこのような薬剤蒸散方法を実施するために、本発明によれば、前記のような薬剤保持体と、該薬剤保持体を振動もしくは開閉させる手段との組み合わせからなる薬剤蒸散装置、又は、内部空間が形成される立体状構造の薬剤保持体と、該薬剤保持体の内部空間内に配置されるファンを備えた送風装置との組み合わせからなる薬剤蒸散装置も提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の薬剤保持体は、前記したような課題を解決し、長期にわたり効力を持続させるために、ハニカム状、格子状、網目状等の常温蒸散性薬剤を保持する多数のセル壁を有する立体状構造体を、互いに接することのないように所定の間隔をあけて互いに離間した少なくとも内外二層の多重構造としたことを基本的特徴としている。このような多重構造の立体状構造体とすることにより、種々の形態で利用することが可能となる。
第一の利用形態は、薬剤保持体の最外層を、有効成分を保持させない保護層とすることである。これによって、最外層の保護層は、内部の有効成分保持層に光が直接照射されたり埃が付着するのを防止するバリヤー層として機能し、有効成分の分解や蒸散抑制といった現象が著しく低減する。
【0008】
また、最外層を保護層とすることにより、薬剤保持体に含浸・保持されている薬剤が手などに付着することもなく、有効成分の損失防止や安全性の向上の点でも有利である。このような効果は、薬剤保持体を折り畳み自在に構成することによっても得ることができる。
本発明の薬剤保持体は、立体状構造に固定された態様も含み、例えば、最外層の保護層を全く形状の異なる構造の網状の枠とすることも上記効果を発揮する上で有効であるが、保護層と有効成分保持層が一体となって同時に開閉可能な構造の折り畳み自在に構成することが利便性の点で有利である。
【0009】
第二の利用形態は、多重構造の各層にそれぞれ作用又は蒸気圧の異なる常温蒸散性薬剤を保持させ、数種の効力を同時に発揮させることである。
本発明の保持体構造が有利な点は、有効成分保持層が互いに接することのない多重構造であるため、異なった作用又は蒸気圧を有する有効成分を保持させ、各々の作用を充分に発揮させることが可能な点である。単一構造の保持体に多種の有効成分を保持させた場合、例えば蒸気圧の異なる複数種の物質を混合して用いると、蒸気圧の高い易蒸散性物質の蒸散が蒸気圧の低い難蒸散性物質によって抑制されるといった現象が起こり、性能を充分に発揮することができない。それに対し、本発明の保持体構造であれば、長期にわたって安定して効力を発揮する持続成分と、使用初期を中心に大きな効力を発揮する即効性成分の双方を確実に蒸散させることが可能である。また、複数の有効成分保持層を構造体中心から同心円上に配する構造とした場合、内部ほど通気が悪く蒸散量が低下するので、内部に易蒸散性成分を、通気のよい外部に難蒸散性成分を保持させ、双方の成分の蒸散量を調整することが可能となる。これにより効力を長期にわたって持続させることが可能となるほか、数種の効果を同時に発揮させ、効力の増強を図ることが可能となる。なお、このような利用形態においても、最外層を有効成分を保持しない保護層とすることができ、また好ましいが、最外層に蒸気圧の高い易蒸散性成分を保持させ、この成分が蒸散した後に保護層として利用する態様も可能である。
【0010】
また、多重構造体の目付けを10g/m2 から200g/m2 の範囲で調整することで、構造すなわち含浸部位による有効成分の蒸散量をさらに任意にコントロールすることが可能となる。例えば図4に示す構造の保持体で、蒸気圧の異なる有効成分を含浸させ同量蒸散させたい場合、難蒸散性成分の保持部(例えば12−1の部分)には目付け20g/m2 のシート状部材を用い、易蒸散性成分の保持部(例えば12−2の部分)には目付け70g/m2 のシート状部材を用いることで、面積を変更することなく同じ蒸散量を得ることが可能となる。なお、常温蒸散製剤における蒸散量と目付けの間に比例関係があることは、図18より明らかである。図18に示す有効成分蒸散量は、下記表1に示す各目付けの紙(3×3cm)に有効成分としてテラレスリンをそれぞれ9mg塗布し、30℃の恒温室に設置し、48時間後に回収して残量をガスクロマトグラフィーにて化学分析し、初期仕込量との差を蒸散量として測定する試験を3回繰り返した結果の平均値を示している。結果を表1にも併せて示す。本製剤の実施上好適な範囲は、保持体の強度及び薬剤保持能力の点で10g/m2 以上とし、最低必要な蒸散量を確保する上で200g/m2 以下とした。なお、この関係は保持体の材質及び有効成分の種類により相対的に左右されない。
【表1】
Figure 0003955151
【0011】
ところで、ハニカム状等の立体状構造体の場合、空間を多数のセル壁で区切る構造であるため、一つ一つの空間が小さくなり、空気の流れが抑制されることで有効成分の蒸散が抑えられ易くなる。そこで、一つ一つのセルへの通気がスムーズに行え、有効成分を比較的に高い蒸散量で放出させることが望まれる場合には、立体状構造体の内部に空間を設けることが好ましい。
また、立体状構造体の空間内部にファンを設け、通気を強制的に促進する方法も効力増強のための手段としては有効である。ファン方式においても、多重構造にすることによる効力の安定化、数種の有効成分の併用による効力の増強といった前記したような利点が得られる。その他、ゴム、バネ、永久磁石、モーターなどを使用して本構造体全体を振動させたり開閉したりする駆動方式も、効力増強手段として有効である。
【0012】
本発明の薬剤保持体に保持させる有効成分としては、従来より殺虫、防虫、忌避、害虫成長制御、効力増強等を目的として用いられている各種薬剤を一種以上適用することができる。
例えば殺虫を目的として使用する場合、従来より用いられている各種蒸散性殺虫剤を用いることができ、ピレスロイド系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、有機リン系殺虫剤等を挙げることができる。一般に安全性が高いことからピレスロイド系殺虫剤が好適に用いられており、それらの具体例として以下のものが例示できる。
‐一般名;化学名(商品名、メーカー)
‐アレスリン;3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル dl−シス/トランス−クリサンテマート(ピナミン、住友化学工業(株))
‐dl・d−T80−アレスリン;3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−シス/トランス−クリサンテマート(ピナミンフォルテ、住友化学工業(株))
‐dl・d−T−アレスリン;3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−トランス−クリサンテマート(バイオアレスリン)
‐d・d−T−アレスリン;d−3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−トランス−クリサンテマート(エスビオール)‐d・d−T80−プラレトリン;d−2−メチル−4−オキソ−3−プロパルギルシクロペント−2−エニル d−シス/トランス−クリサンテマート(エトック、住友化学工業(株))
‐フタルスリン;N−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミド)−メチルdl−シス/トランス−クリサンテマート(ネオピナミン、住友化学工業(株))
‐d−T80−フタルスリン;(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−インドリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート(ネオピナミンフォルテ、住友化学工業(株))
‐レスメトリン;5−ベンジル−3−フリルメチル dl−シス/トランス−クリサンテマート(クリスロン、住友化学工業(株))
‐d・d−T80−レスメトリン;5−ベンジル−3−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート(クリスロンフォルテ、住友化学工業(株))
‐ペルメトリン;3−フェノキシベンジル dl−シス/トランス−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシラート(エクスミン、住友化学工業(株))
‐フェノトリン;3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート(スミスリン、住友化学工業(株))
‐フェンバレレート;α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチレート(スミサイジン、住友化学工業(株))
‐シペルメトリン;α−シアノ−3−フェノキシベンジル dl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(アグロスリン、住友化学工業(株))
‐シフェノトリン;α−シアノ−3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート(ゴキラート、住友化学工業(株))
‐エンペントリン;1−エチニル−2−メチルペント−2−エニル d−シス/トランス−クリサンテマート(ベーパースリン、住友化学工業(株))
‐テラレスリン;2−アリル−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン−4−イル−2,2,3,3,テトラメチル−シクロプロパンカルボキシラート(ノックスリン、住友化学工業(株))
‐イミプロスリン;2,4−ジオキソ−1−(プロプ−2−イニル)−イミダゾリジン−3−イルメチル(1R)−シス/トランス−クリサンテマート(プラール、住友化学工業(株))
‐エトフェンプロックス;2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル
‐トランスフルスリン;d−トランス−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート
【0013】
また、その他の薬剤(殺虫剤、忌避剤、効力増強剤、害虫成長制御剤など)として以下のものが例示できる。
‐アセタミプロリド;N′−[(6−クロロ−3−ピリジイル)メチル]−N2 −シアノ−N′−メチルアセトンアミジイン(モスピラン)
‐ダイアジノン;(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオホスフェート(ダイアジノン)
‐フェニトロチオン、MEP;O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート(スミチオン)
‐ピリダフェンチオン;O,O−ジメチル−O−(3−オキソ−2−フェニル−2H−ピリダジン−6−イル)ホスホロチオエート(オフナック)
‐マラソン;ジメチルジカルベトキシエチルジチオホスフェート(マラソン)‐イミダクロプリド;1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン(ハチクサン)
‐DDVP;O,O−ジメチル−O−(2,2−ジクロロ)ビニルホスフェート
‐ベンジルベンゾエート
‐イソボニールチオシアノアセテート(IBTA)
‐デヒドロ酢酸
‐ピペロニルブトキサイド(P.B.)
‐パラオキシ安息香酸
‐サリチル酸フェニル
‐S−421
‐N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(サイネピリン222)
‐N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)
‐ピリプロキシフェン;4−フェノキシフェニル(RS)−2−(2−ピリジルオキシ)プロピルエーテル(スミラブ)
【0014】
また、本発明に用いる薬剤には、安定性向上効果、共力効果、付加機能の追加等を目的として、前記した成分の他に一種以上の、例えば、2,6−ジブチル−3−メチルフェノール(BHT)、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェノール(ビタミンE)等の酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ケイ皮アルデヒド、ベンズアルデヒド等の防虫・防黴剤、安息香酸エチル、サフロール、イソサフロール、オイゲノール、シトロネロール、アネトール、L−カルボン等の防虫香料、ジャスミン、パインアップルオイル、ベンジルアセテート等各種香料及び調合香料などの芳香剤、消臭剤や着色剤など、また蒸散調整剤として各種溶剤などを使用することができる。
【0015】
保持体の構成材質としては、例えば紙、不織布、織物、フィルムなどを挙げることができ、使用する薬剤を保持もしくは塗布できるものであれば全て使用可能であり、有効成分に応じて適宜選択すればよい。特に最外層の材質は、透明フィルムなどにすることで、内部の有効成分保持層を見易くすることができる。例えば、有効成分保持層が、有効成分の蒸散と共に顕色する色素を利用したインジケーター機能を有する場合、その色調変化を見易くすることができる。このようなインジケーター機能を有する薬効指示性組成物は、例えば電子供与性呈色性有機化合物(色素)と顕色剤とにさらに揮散性減感性薬剤を存在せしめることによって、揮散性減感性薬剤が充分に残存している間は上記薬剤の減感作用が顕色剤の作用に勝り、発色を抑えるが、上記薬剤が揮散して残存率が低くなると、顕色剤と電子供与性呈色性有機化合物との反応が始まり、呈色し始め、さらに上記薬剤が完全に揮散して残存しなくなった時に電子供与性呈色性有機化合物特有の色調を呈する発色原理を薬効表示に応用したものである。従って、上記反応過程と揮散性減感性薬剤の揮散過程とが対応し、上記組成物の色調の変化により視覚的に揮散性減感性薬剤の薬効残存状態及びその終点を正確に知ることができる。このような薬効指示性組成物は既に公知であり、常温揮散性減感性の殺虫剤や防虫剤等の種々の分野で応用されているので、その詳細な説明は省略する(例えば、前掲特開平8−147号参照)。
【0016】
本発明の保持体を用いた製剤を使用する場所は、一般家屋に限ること無く、例えば車、テント、畜舎、犬舎、ハウス、工場なども挙げられる。使用する場所の大きさや対象害虫、及び必要な効力レベルに応じて有効成分を選定し、保持体の面積を決定すればよい。また、屋外であっても製剤の周辺部であれば効力を発揮することが可能である。設置方法については、吊り下げ型、置き型等、特に限定されるものではなく、使用場面に応じて適宜選択すればよい。
【0017】
【実施例】
以下、添付図面に示す実施例を説明しつつ、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明の薬剤保持体の代表例として、図1乃至図3に多重構造のハニカム構造体の一実施例を示す。図1はハニカム構造体1を2分割した状態、図2は全体外観、図3は折り畳んだ状態を示している。
ハニカム構造体1は、セル壁2によって囲まれる各セル3が、中心軸線Xに対して垂直に、球体外周面に向って平行に配列された全体的に球状の構造体に構成されているが、外層4と内層5の二重構造であり、内外層間には所定間隔の空隙部6が形成されて互いに直に接しないようにされ、かつ、その中央部に内部空間7が形成されている。従って、各セル3の殆ど大部分が内部空間7と連通状態にあり、空気の流れが抑制されないようにされている。
薬剤はスプレー法、浸漬法等の任意の方法により内層5のセル壁2に含浸・保持される。一方、外層4は無処理で薬剤を保持しておらず、有効成分保持層である内層5の保護層として機能するが、前記したように、内層5に保持される有効成分と作用や蒸気圧の異なる有効成分を含浸・保持するようにしてもよい。
【0018】
前記図1及び図2に示すハニカム構造体1の製造は、半円形の支持シート8の上に、内層5及び外層4を構成するそれぞれ半分割した小リング状及び大リング状の複数枚の薬剤保持シート(図1の中心軸線Xの右側(又は左側)の大小リング状部分)を図1に示すような所定の間隔で配置・積層する際に、帯状の接着部分Aを各セルの所望の大きさに応じた適宜の間隔で平行に、しかも先の保持シート間と後の保持シート間で段違い状態となるように順次接着しながら多数枚積層し、得られた積層体の中心軸線X側の端縁を接着し、最後に他方の表面の支持シート9を接着することにより行い、これによって図3に示すような積層体が得られる。使用に際しては、両側の支持シート8、9を開いて積層体を拡げ、両側の支持シート8、9を接合することにより、図2に示すような全体的に球状のハニカム構造体を組み立てることができる。両側の支持シート8、9の接合は、一方の支持シート(8又は9)の先端辺縁部所定箇所に両面粘着テープを貼着したり、接着剤を塗布するなど、適宜の方法により行うことができる。なお、帯状の接着部分Aが球の中心から放射状になるように配列することにより、各セルが全て内部空間7と連通し、かつ、内部空間から球状外周面に向って放射状に配列されたハニカム構造体とすることもできる。
【0019】
薬剤の蒸散を促進するためには、目付けの小さい保持シートを用いるのが好ましく、その場合、シートは概してコシの弱いものとなることが多い。従って、保持体全体の形状を維持するためには、支持シートにコシの強い材質を選択する方が好ましい。コシの強い支持シートは、概して目付けが大きく、薬剤が移行した場合、蒸散量が抑えられる可能性がある。それを回避するための手段としては、支持シートと薬剤保持シートとの間にバリア層を設けることが考えられ、具体的には、支持シートにガスバリア性のフィルムやアルミ箔等をラミネートするといった方法が好ましい。
【0020】
本発明の薬剤保持体は、図1乃至図3に示すようなハニカム構造に限定されるものではなく、種々の構造、形態に構成することができる。例えば、前記図1において接着部分Aを細くした場合には格子状のセルとなる。また、格子状、網目状等任意の模様となるように多数の透孔を形成したシートを積層することもできる。さらに、立体状構造体の外観も、図示のような球状に限られず、円柱体、立方体、ピラミッド形、その他の多角体など任意の立体形状とすることができる。
【0021】
図4は、前記図1乃至図3に示すハニカム構造体の変形例を示す。このハニカム構造体1aは、外層4aと内層5aとの間の空隙部6aと、内部空間7aとの間を連通する空隙部11が、中心軸線Xに対して垂直方向に内層5a全体に形成され、内層5aが12−1層と12−2層に二分割されている点において、図1乃至図3に示すハニカム構造体1と異なるが、他の構成は同様である。なお、図4は両側の支持シート8a、9aを180度開いた状態で示している。
一方、図5は三層構造のハニカム構造体1bの実施例を示している。すなわち、外層4bと内層5bの間に中間層13が配設された多重構造を有し、各層間にそれぞれ空隙部6b、14が形成されている点において、図1乃至図3に示すハニカム構造体と異なる。なお、図5も両側の支持シート8b、9bを180度開いた状態で示している。このハニカム構造体1bの場合、外層4bは有効成分を保持しない保護層とし、中間層13及び内層5bに作用もしくは蒸気圧の異なる2種の有効成分を含浸・保持させることが好ましい。
【0022】
図6乃至図8は、本発明の薬剤保持体の他の実施例を示している。このハニカム構造体1cは、空隙部6cにより互いに直に接しないように離間されたハニカム構造の外層4cと内層5cを有し、全体的に略楕円球状の立体形状を有するが、折り畳んだ状態を示す図7からわかるように、前記図1乃至図5に示すハニカム構造体とは異なり内部には空間は形成されない。また、両側の支持シート8c、9cの一端部は突出されて把持部15が形成されている。
このハニカム構造体1cは、含浸・保持されている有効成分の蒸散量を多くしたい場合には、図6に示すように組み立てた後、把持部15を握って振って用いることもできるが、図9に示すように把持部15に弾性線状部材16の一端部を固定し、他端部を支持台17の支持部18に嵌め込み、図9に示すように支持されているハニカム構造体1cを押して首振り運動させ、全体的にゆっくり振動させながら用いることができる。あるいはまた、把持部15を必要に応じて適当な連結部材を介して振動装置もしくは開閉装置(図示せず)に取り付け、ハニカム構造体1cを振動もしくは開閉させながら用いることもできる。
【0023】
図10及び図11は、それぞれ前記図6乃至図8に示すハニカム構造体の変形例を示し、それぞれ折り畳んだ状態で示している。
前記図6乃至図8に示すハニカム構造体1cの場合、組み立てられた状態では2枚の支持シート8c、9cが重ね合わされるので(図8参照)、この部分で空隙部6cの連通状態が遮断されることになり、各セル3の通気状態が充分でない場合がある。そこで、図10に示すハニカム構造体1dでは、両側の支持シート8d(9dは図示せず)の空隙部6dと対応する箇所に複数(図示の例では各3個)の通気孔19を形成して、重ね合わされる支持シート8d、9dの両側を連通するように構成されている。
一方、図11に示すハニカム構造体1eでは、上記通気孔19の他に、両側の支持シート8e(9eは図示せず)及びそれらの間に積層されるセル壁を構成する多数のシートの一辺(中心軸線)中間部に略半円形状の切欠き20を設け、この切欠き20部分により、組み立てたときにハニカム構造体1eの中心部に内部空間が形成されるように構成されている。
【0024】
図12は、通気を促進するためにハニカム構造体を全体的に振動させる態様の一実施例を示している。
この薬剤蒸散装置は、図1乃至図3に示すハニカム構造体と同様に、空隙部6fを介して離間された外層4fと内層5fの二重構造からなり、内部に空間7fが形成されたハニカム構造体1fと、上記内部空間7fに配設される駆動装置21とからなる。なお、ハニカム構造体1fは、両側の支持シート8f、9fを180度開いた状態で示されている。
駆動装置21は、図13に示すように、駆動軸22と、一端部が該駆動軸22に回動自在に取り付けられ、他端部に永久磁石24が取り付けられた振子23と、該振子23の揺動軌跡に近接して配設される電磁石25とから構成される。符号26は電磁石25を励磁するための乾電池である。駆動軸22は、図12に示されるように、ハニカム構造体1fの相対する支持シート8f、9fの中心軸線側端縁部間の隙間に配座され、両支持シート8f、9fを接合することにより駆動装置は内部空間7f内に収容される。
【0025】
この薬剤蒸散装置の場合、電磁石25の励磁と消磁が繰り返されることにより、振子23が揺動運動を行い、それによってハニカム構造体1fが全体的に駆動し、通気が促進されることによってセル壁に含浸・保持されている有効成分の蒸散が促進される。なお、振動装置21のスイッチ(図示せず)をハニカム構造体1fの外部に導出することにより、所望の時にハニカム構造体1fを振動させるようにすることもできる。
薬剤保持体全体を駆動する動力源としては、上記実施例のように電磁石と永久磁石を利用した振り子の他、モーター、ゼンマイ、ゴムなどが考えられるが、長期に亘る使用を考えた場合の利便性の点ではモーターか電磁石の振り子が好ましく、電池等を利用する場合は消費電力の点で電磁石振り子が好ましい。
【0026】
図14は、強制的に通気を促進させるためにファンを用いた薬剤蒸散装置の一実施例を示している。
図14に示す強制通気方式の薬剤蒸散装置は、空隙部6gを介して離間された外層4gと内層5gの二重構造からなり、内部空間7gを有する中空円柱状のハニカム構造体1gを用いた例を示している。容器36上に配設されたハニカム構造体1gは、外層4gと内層5gの各層において、セル壁2によって囲まれるハニカム状の各セル3が内部空間7gから外周にかけて連通するように構成されており、その内部空間7gにはファン30が回転自在に配設されている。ファン30は、対称的に平行に配列された4枚の羽根31の上端にリング状の羽根固定部材32が、また下端に回転板33が固定された構造を有し、回転板33の中心は容器36内に収容されているモーター35の回転軸34に取り付けられている。モーター35への電力供給方式は、例えば乾電池を容器36内に収容する内部電源方式や配線コードを接続する外部電源方式のいずれでもよい。
【0027】
上記薬剤蒸散装置の場合、スイッチ(図示せず)を入れてモーター35を駆動させ、ファン30を回転させると、上部より流入した空気を、ファン30により内部空間7gから外周に向って各セル3内を強制的に通気させることができるので、ハニカム構造体1gに含浸されている有効成分の蒸散を促進することができ、また有効成分の蒸散量はファンの風力(回転数、羽根のサイズ、数、形状等)によって任意に調節できる。なお、上記蒸散装置を用いる際には、ファン及び薬剤保持体への接触及び異物混入を避けるため、一つ以上の通気口を設けた外殻容器が必要である。また、ファンへの接触回避のため器具全体を逆転させ、下部より空気を取り入れる方法も考えられる。
【0028】
強制的に通気を促進させる薬剤蒸散方式は、前記図14に示すものに限られるものではなく、種々の構造とすることができる。例えば、前記ハニカム構造体1gは、中空の円柱状体の他、立方体、五角柱状、六角柱状等の任意の多角柱状体とすることができる。また、前記図1乃至図5に示す球状のハニカム構造体を半分割した半球状の構造とし、これを内部空間内にファンが配置されるように、例えば図14に示すファン30を覆うように容器36上に配置したドーム状構造とすることもできる。この場合、下方からハニカム構造体の内部空間内に空気が流入するように容器36あるいはさらに下部回転板33に吸気孔を形成すればよい。
【0029】
前記のようにハニカム構造体の内部に設けた空間内にファンを設置する場合、有効成分の蒸散量は、設ける内部空間の体積やセルの開口面積以上に、ファンの風力に左右される。高い有効成分蒸散量を確保する場合、立体状構造体の風の出口部での風速は、0.1m/秒以上であることが好ましい。そして、ファンを駆動する動力源としては、モーター、ゼンマイ、ゴム等が考えられるが、長期に亘って安定した効力を得るためにはモーターを使用することが好ましい。ファンの材質としては、プラスチックや厚紙等、特に限定されるものではないが、軽量な材質を選択したほうがエネルギー効率の向上の点で好ましい。
【0030】
以下、本発明の効果を具体的に確認した試験例を示す。
試験例1
薬剤保持体として、多数のセルを有し折り畳み可能な紙製の球状構造体(通称「デングリ」と呼ばれる玩具)を用い、図1及び図2に示すような外周部に保護層を設けた多重構造のハニカム構造体と、保護層を設けない単一構造のハニカム構造体をそれぞれ作製した。なお、双方のハニカム構造体の内部には、通気を促進するための空間を設けた。具体的な寸法を表2に示す。そして、それぞれの薬剤保持体(多重構造のものの場合には内層)に有効成分としてテラレスリンを1g、酸化防止剤として2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)及び紫外線吸収剤として2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェノール)ベンゾフェノン各々0.01gを含有する薬剤を塗布してサンプルを作製した。
これらのサンプルは散乱光の当たる窓際に設置し、10日間隔で30日間の効力推移を調査した。効力評価は、アカイエカ雌成虫に対するノックダウン効果を調査することで行った。効力試験は、25±3℃の8畳の居室にアカイエカ雌成虫を100個体放飼した後、サンプルを上記のように設置し、設置後からの供試虫のノックダウン個体数を経時的にカウントすることで行い、結果はその数値をブリス(Bliss)のプロビット法(Probit法)によりKT50値に換算した。その結果を図15に示す。
【0031】
【表2】
Figure 0003955151
図15から分かるとおり、多重ハニカム構造の薬剤保持体の場合、効力低下は極めて緩やかであるが、保護層の無い単一ハニカム構造の薬剤保持体の場合には、設置後10日目を過ぎてから効力が急激に低下している。これは保護層を設けることで、有効成分の光分解や埃による蒸散抑制が緩和された結果であると考えられる。
【0032】
試験例2
図5に示す球状三重ハニカム構造の薬剤保持体を作製し、中間層13に蒸気圧が相対的に低く蚊に対して高い効力を有するテラレスリンを、内層5bに蒸気圧が相対的に高くハエに対して高い効力を有するベーパースリンを塗布してサンプルを作製した。なお、三重ハニカム構造体の外層4bは、何も塗布せず保護層とし、内層5bの中心部には通気を促進するための空間を設けた。また、比較のために内部空間を設けた球状単一ハニカム構造体に上記2種類の有効成分を混合して塗布したサンプルも作製した。具体的な寸法を表3に示す。
作製した各サンプルを用い、イエバエとアカイエカに対する効力を試験例1と同様の方法で調査した。その結果を20分後のノックダウン率として図16に示す。
【0033】
【表3】
Figure 0003955151
本試験の結果によると、有効成分を混合して処理した場合、蒸気圧が高くよく蒸散するはずのベーパースリンの蒸散が蒸気圧の低いテラレスリンにより抑制され、イエバエに対する効力が悪い結果となった。
【0034】
試験例3
図4に示す球状二重ハニカム構造の薬剤保持体を作製し、二分割した中間層5aの一方の層12−1に蒸気圧が相対的に高く即効的に効力を発揮するテラレスリンを、他方の層12−2に蒸気圧が相対的に低く遅効的に効力を発揮するエトックを塗布し、サンプルを作製した。なお、外層4aは、何も塗布せず保護層とし、またハニカム構造体の中心部には通気を促進するための空間7aを設けた。また、比較のために内部空間を設けた球状単一ハニカム構造体に上記2種類の有効成分を混合して塗布したサンプルも作製した。各ハニカム構造体の寸法は前記試験例1に用いたものと同じである。
作製した各サンプルを用い、食品工場における実地効力を調査した。実地効力は、工場内に設置した光トラップに捕獲された個体数を、処理から経日的にモニターすることで行った。比較サンプルについては、前年に同程度の害虫の発生が観測された別の食品工場に設置して行った。
効力は前年の捕獲個体数を基に比率を算出して評価した。その結果を図17に示す。
図17によると、多重ハニカム構造体であれば初期に比較サンプル以上に害虫の生息密度を低減させることが可能であり、長期に亘り安定した効力を維持していることが分かる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ヒーター等の加熱装置を用いることなく、殺虫、防虫(忌避)、害虫成長制御等を目的として有効成分を常温で長期間持続的にかつ効率的に空気中に放出できる安全性に優れた常温蒸散性薬剤の薬剤保持体並びにそれを用いた薬剤蒸散方法及び装置が提供される。
本発明の薬剤保持体は、常温蒸散性薬剤を保持する多数のセル壁を有し、所定の間隔をあけて互いに離間した少なくとも二層の多重構造の立体状構造体からなり、また折り畳み自在に構成されているため、利便性に優れると共に、種々の形態で利用することが可能となる。例えば、薬剤保持体の最外層を、有効成分を保持させない保護層とすることにより、最外層の保護層は、内部の有効成分保持層に光が直接照射されたり埃が付着するのを防止するバリヤー層として機能し、有効成分の分解や蒸散抑制といった現象が著しく低減する。また、多重構造の各層にそれぞれ作用又は蒸気圧の異なる常温蒸散性薬剤を保持させ、数種の効果を同時に発揮させることができる。
また、最外層を保護層としたり、薬剤保持体を折り畳み自在に構成することにより、薬剤保持体に含浸・保持されている薬剤が手などに付着することもなく、有効成分の損失防止や安全性の向上を図ることができる。しかも、薬剤保持体のサイズを適宜選定することにより、有効成分の蒸散量を対象とする害虫、使用場所、使用時間等にあわせて任意に調整することができる。
さらに、薬剤保持体自体を駆動させたり、開閉させたり、あるいはまた立体状構造体の内部空間にファンを設けることにより、含浸されている有効成分の蒸散を促進でき、効力増強を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬剤保持体の一実施例である球状多重ハニカム構造体の断面図である。
【図2】図1に示す球状多重ハニカム構造体の斜視図である。
【図3】図1に示す球状多重ハニカム構造体の組立前の積層状態を示す側面図である。
【図4】本発明の球状多重ハニカム構造体の他の実施例を180度開いた状態で示す平面図である。
【図5】本発明の球状多重ハニカム構造体の別の実施例を180度開いた状態で示す平面図である。
【図6】本発明の薬剤保持体の別の実施例である楕円状多重ハニカム構造体の斜視図である。
【図7】図6に示す楕円状多重ハニカム構造体の組立前の積層状態を示す平面図である。
【図8】図6に示す楕円状多重ハニカム構造体の組立前の積層状態を示す側面図である。
【図9】図6に示す楕円状多重ハニカム構造体の使用例を示す斜視図である。
【図10】本発明の楕円状多重ハニカム構造体の他の実施例の組立前の積層状態を示す平面図である。
【図11】本発明の楕円状多重ハニカム構造体の別の実施例の組立前の積層状態を示す平面図である。
【図12】本発明の薬剤保持体を用いた薬剤蒸散装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図13】図12に示す薬剤蒸散装置に用いた振動装置の概略構成図である。
【図14】本発明の薬剤保持体を用いた強制通気方式の薬剤蒸散装置の一実施例を示す部分破断概略斜視図である。
【図15】試験例1において測定したアカイエカ雌成虫に対するノックダウン効果(KT50値)の持続性に及ぼすハニカム構造の影響を示すグラフである。
【図16】試験例2において測定した20分後ノックダウン率に及ぼすハニカム構造の影響を示すグラフである。
【図17】試験例3において測定した食品工場での害虫生息密度(捕獲個体数の前年比)に及ぼすハニカム構造の影響を示すグラフである。
【図18】有効成分蒸散量と保持体の目付けの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g ハニカム構造体
2 セル壁
3 セル
4,4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g 外層
5,5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g 内層
6,6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,11,14 空隙部
7,7a,7b,7f,7g 内部空間
8,8a,8b,8c,8d,8e,8f,9,9a,9b,9c,9f 支持シート
13 中間層
15 把持部
16 弾性線状部材
19 通気孔
20 切欠き部
21 駆動装置
23 振子
25 電磁石
30 ファン
31 羽根
32 羽根固定部材
33 回転板
35 モーター
A 接着部分
X 中心軸線

Claims (11)

  1. 殺虫剤、防虫剤、忌避剤、害虫成長抑制剤及び殺虫効力増強剤よりなる群から選ばれた常温蒸散性薬剤を保持する多数のセル壁を有し、且つ個々に上記セル壁によって囲まれた多数のセルを有する立体状構造体を、互いに接することのないように所定の間隔をあけて互いに離間した少なくとも内外二層の多重構造としたことを特徴とする薬剤保持体。
  2. 折り畳み自在に構成され、開いたときに多数のセルを有する少なくとも内外二層の多重構造の立体状構造体となることを特徴とする請求項1に記載の薬剤保持体。
  3. 前記多重構造の最外層を常温蒸散性薬剤を保持しない保護層とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤保持体。
  4. 多重構造の各層にそれぞれ作用又は蒸気圧の異なる常温蒸散性薬剤を保持させることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤保持体。
  5. 少なくとも内外三層の多重構造の立体状構造体からなり、最外層を常温蒸散性薬剤を保持しない保護層とし、内部の各層にそれぞれ作用又は蒸気圧の異なる常温蒸散性薬剤を保持させることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤保持体。
  6. 薬剤保持体の目付けを10g/mから200g/mの範囲で調整し、有効成分蒸散量を調整することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の薬剤保持体。
  7. 前記立体状構造体の内部略中央部に、上記セル壁で囲まれる各セルとは別個の内部空間を有し、又は折り畳み自在の構成の場合には開いたときに立体状構造体の内部略中央部に、上記セル壁で囲まれる各セルとは別個の内部空間が形成されるような構造を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薬剤保持体。
  8. 前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の薬剤保持体を振動もしくは開閉させ、有効成分の蒸散を促進することを特徴とする薬剤蒸散方法。
  9. 前記請求項7に記載の薬剤保持体の内部空間にファンを設け、有効成分の蒸散を促進することを特徴とする薬剤蒸散方法。
  10. 前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載の薬剤保持体と、該薬剤保持体を振動もしくは開閉させる手段との組み合わせからなる薬剤蒸散装置。
  11. 前記請求項7に記載の薬剤保持体と、該薬剤保持体の内部空間内に配置されるファンを1つ以上備えた送風装置との組み合わせからなる薬剤蒸散装置。
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