JP3907813B2 - 常温蒸散式製剤の薬剤保持体及び薬剤蒸散方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸散性の有効成分を、ヒーター等の加熱装置を使用することなく、常温で空気中に放出する製剤の立体型薬剤保持体及び薬剤蒸散方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有効成分を加熱装置等を使用することなく、常温で蒸散させる場合、その保持体は非常に広い蒸散面積が必要となり、一枚のシートを用いた場合には実用化の上での大きな制約事項となる。これを解決するための手段としては、見掛けの大きさを小さくし、有効成分の蒸散面積を大きくとることができる構造、例えば多孔構造が考えられる。しかしながら、多孔構造の薬剤保持体の場合、個々の孔の空間が小さく、空気の流れが抑制されるため、有効成分の蒸散が抑えられてしまい、目的とする効果を充分に発揮させることができない。そこで、従来、ファンによって薬剤保持体に向けて送風して有効成分を蒸散させるファン方式が開発されている。
【0003】
例えば、特開平7−111850号公報には、積層ダンボールからなる保持体に殺虫・防虫剤を含浸させ、これをファンの吸込口側に取り付け、ファンで保持体の孔に送風して有効成分を蒸散させる態様のファン式殺虫・防虫方法が開示されている。
しかしながら、一般にファン方式の場合、有効成分の蒸気圧と保持体の材質、厚み及びファンの出力によって蒸散が左右され、様々な条件下において利用可能な薬剤保持体を開発することが必要である。また、ファンを使用しない場合においても、前記したように有効成分の蒸散が抑えられてしまい、目的とする効果を充分に発揮させることができなくなることから、最適な薬剤保持体の構造を開発することが望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
常温蒸散式製剤の薬剤保持体の構造として、二次元的構造の例としては前記したシート形状があり、また、三次元的構造の例としてはハニカム状、格子状、網目状等のセル壁で構成された立体状構造体が考えられる。
これら薬剤保持体の解決すべき課題について述べると、シート形状の課題としては、前述したとおり製剤の占有面積が大きいことであり、それを解決するための立体状構造体、例えばハニカム構造体の課題は、シート製剤と同じ条件で蒸散させたときの有効成分の蒸散量がシート製剤に比べて低く、目的とする効果が充分に得られないことである。例えば、蒸散性殺虫剤を含浸・保持させたシートとハニカム構造体を同じ条件で比較した場合、アカイエカに対するノックダウン効力について調査した結果を示す後述する表1から明らかなように、試験開始10分後のノックダウン率が、シート100%に対してハニカム構造体の場合には14%と明らかに劣っていることが分かる。これはハニカム構造体が、空間を無数のセル壁で区切る構造であるため、一つ一つの空間が小さくなり、空気の流れが抑制されることで、有効成分の蒸散が抑えられるためであると考えられる。
【0005】
本発明は、前記したような薬剤保持体としてのシート形状の課題である占有面積、つまり非常に広い蒸散面積が必要であるという問題を解決すると共に、ハニカム構造体の課題である有効成分の蒸散量の低下、つまり目的とする効力が充分に得られないという問題を解決することを目的とするものである。
より特定的な本発明の目的は、殺虫、防虫(忌避)、害虫成長制御等を目的とする常温蒸散式製剤において、ヒーター等の加熱装置を用いることなく、有効成分の蒸散量を対象とする害虫、使用場所、使用時間等にあわせて任意に調整し、安定した効力を発揮させることができる薬剤保持体及び薬剤蒸散方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、殺虫剤、防虫剤、忌避剤、害虫成長抑制剤及び殺虫効力増強剤よりなる群から選ばれた薬剤有効成分を立体状構造体に含浸・保持させ、常温で自然に蒸散させる製剤の薬剤保持体であって、個々にセル壁によって囲まれた多数の細長いハニカム状又は格子状のセルを有する立体状構造体を上記セル壁で構成すると共に、該立体状構造体の略中央部に、上記セル壁で囲まれる各セルとは別個の空間を設けることを特徴とする薬剤保持体が提供される。
好適な態様においては、立体状構造体がハニカム構造体であって、その略中央部に設ける空間の体積が、該空間を含めた立体状構造体全体の見掛けの体積に対して30〜85%であり、また、ハニカム構造体の各セルの開口面積が1cm2以上であることが好ましい。
さらに本発明によれば、有効成分の蒸散を強制的に促進する薬剤蒸散方法も提供される。すなわち、上記立体状構造体からなる薬剤保持体の前記空間にファンを設け、有効成分の蒸散を促進することを特徴とする薬剤蒸散方法が提供される。好適な態様においては、立体状構造体の風の出口部での風速が、0.1m/秒以上となるように調整する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の薬剤保持体は、薬剤を含浸・保持できる材料から作製された前記ハニカム状又は格子状のセル壁で立体状構造体を構成すると共に、その略中央部に上記セル壁で囲まれる各セルとは別個の空間を形成することによって、一つ一つのセルへの通気が促進され、それによって有効成分の蒸散量が増大し、長期間に亘って有効成分を安定して蒸散させることを可能としたものであり、結果的に目的とする効力を向上させることができる。
本発明の薬剤保持体の代表例として、図1及び図2にハニカム構造体の一実施態様を示す。図1はハニカム構造体1を2分割した状態、図2は全体外観を示している。
ハニカム構造体1は、セル壁2によって囲まれる各セル3が、中心軸線Xに対して垂直に、球体外周面に向って平行に配列された全体的に球状の構造体に構成され、かつ、その中央部に各セルとは別個の空間(以下、内部空間という)4が形成されている。従って、各セル3の殆ど大部分が内部空間4と連通状態にあり、空気の流れが抑制されないようにされている。薬剤は、スプレー法、浸漬法等の任意の方法により、セル壁2に含浸・保持される。
【0008】
前記図1及び図2に示すハニカム構造体1の製造は、半分割したリング状のシート(図1の中心軸線Xの右側(又は左側)のリング状部分)を積層する際に、帯状の接着部分Aを各セルの所望の大きさに応じた適宜の間隔で平行に、しかも先の層間と後の層間で段違い状態となるように順次接着しながら多数枚積層し、得られた積層体の中心軸線X側の端縁を接着した後、積層体を拡げて両側のシートを接着することにより行うことができ、図2に示すような全体的に球状のハニカム構造体が得られる。あるいは、半円形のシート(又は矩形のシート)を上記と同様に接着しながら積層し、得られた積層体の内部空間に相当する半円形部分(矩形のシートを用いた場合には、さらに外周より外の部分)を打抜き除去することによって、半分割リング状の積層体を製造することもできる。また、帯状の接着部分Aが球の中心から放射状になるように配列することにより、各セルが全て内部空間と連通し、かつ、内部空間から球状外周面に向って放射状に配列されたハニカム構造体とすることもできる。
【0009】
本発明の薬剤保持体は、図1及び図2に示すようなハニカム構造に限定されるものではなく、種々の構造、形態に構成することができる。例えば、前記図1において接着部分Aを細くした場合には格子状のセルとなる。また、格子状、網目状等任意の模様となるように多数の透孔を形成したシートを積層することもできる。さらに、立体状構造体の外観も、図示のような球状に限られず、円柱体、立方体、ピラミッド形、その他の多角体など任意の立体形状とすることができる。
保持体の構成材質としては、例えば紙、不織布、織物、フィルムなどを挙げることができ、使用する薬剤を含浸もしくは塗布できるものであれば全て使用可能であり、有効成分に応じて適宜選択すればよい。
【0010】
本発明の保持体に保持させる有効成分としては、従来より殺虫、防虫、忌避、害虫成長制御、効力増強等を目的として用いられている各種薬剤を一種以上適用することができる。
例えば殺虫を目的として使用する場合、従来より用いられている各種蒸散性殺虫剤を用いることができ、ピレスロイド系殺虫剤、カーバメート系殺虫剤、有機リン系殺虫剤等を挙げることができる。一般に安全性が高いことからピレスロイド系殺虫剤が好適に用いられており、それらの具体例として以下のものが例示できる。
‐一般名;化学名(商品名、メーカー)
‐アレスリン;3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル dl−シス/トランス−クリサンテマート(ピナミン、住友化学工業(株))
‐dl・d−T80−アレスリン;3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−シス/トランス−クリサンテマート(ピナミンフォルテ、住友化学工業(株))
‐dl・d−T−アレスリン;3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−トランス−クリサンテマート(バイオアレスリン)
‐d・d−T−アレスリン;d−3−アリル−2−メチルシクロペンタ−2−エン−4−オン−1−イル d−トランス−クリサンテマート(エスビオール)
‐d・d−T80−プラレトリン;d−2−メチル−4−オキソ−3−プロパルギルシクロペント−2−エニル d−シス/トランス−クリサンテマート(エトック、住友化学工業(株))
‐フタルスリン;N−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミド)−メチルdl−シス/トランス−クリサンテマート(ネオピナミン、住友化学工業(株))
‐d−T80−フタルスリン;(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−インドリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート(ネオピナミンフォルテ、住友化学工業(株))
‐レスメトリン;5−ベンジル−3−フリルメチル dl−シス/トランス−クリサンテマート(クリスロン、住友化学工業(株))
‐d・d−T80−レスメトリン;5−ベンジル−3−フリルメチル d−シス/トランス−クリサンテマート(クリスロンフォルテ、住友化学工業(株))
‐ペルメトリン;3−フェノキシベンジル dl−シス/トランス−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシラート(エクスミン、住友化学工業(株))
‐フェノトリン;3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート(スミスリン、住友化学工業(株))
‐フェンバレレート;α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2−(4−クロロフェニル)−3−メチルブチレート(スミサイジン、住友化学工業(株))
‐シペルメトリン;α−シアノ−3−フェノキシベンジル dl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(アグロスリン、住友化学工業(株))
‐シフェノトリン;α−シアノ−3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート(ゴキラート、住友化学工業(株))
‐エンペントリン;1−エチニル−2−メチルペント−2−エニル d−シス/トランス−クリサンテマート(ベーパースリン、住友化学工業(株))
‐テラレスリン;2−アリル−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン−4−イル−2,2,3,3,テトラメチル−シクロプロパンカルボキシラート(ノックスリン、住友化学工業(株))
‐イミプロスリン;2,4−ジオキソ−1−(プロプ−2−イニル)−イミダゾリジン−3−イルメチル(1R)−シス/トランス−クリサンテマート(プラール、住友化学工業(株))
‐エトフェンプロックス;2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル
【0011】
また、その他の薬剤(殺虫剤、忌避剤、効力増強剤、害虫成長制御剤など)として以下のものが例示できる。
‐アセタミプロリド;N′−[(6−クロロ−3−ピリジイル)メチル]−N2 −シアノ−N′−メチルアセトンアミジイン(モスピラン)
‐ダイアジノン;(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオホスフェート(ダイアジノン)
‐フェニトロチオン、MEP;O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート(スミチオン)
‐ピリダフェンチオン;O,O−ジメチル−O−(3−オキソ−2−フェニル−2H−ピリダジン−6−イル)ホスホロチオエート(オフナック)
‐マラソン;ジメチルジカルベトキシエチルジチオホスフェート(マラソン)
‐イミダクロプリド;1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン(ハチクサン)
‐DDVP;O,O−ジメチル−O−(2,2−ジクロロ)ビニルホスフェート
‐ベンジルベンゾエート
‐イソボニールチオシアノアセテート(IBTA)
‐デヒドロ酢酸
‐ピペロニルブトキサイド(P.B.)
‐パラオキシ安息香酸
‐サリチル酸フェニル
‐S−421
‐N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(サイネピリン222)
‐N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)
‐ピリプロキシフェン;4−フェノキシフェニル(RS)−2−(2−ピリジルオキシ)プロピルエーテル(スミラブ)
【0012】
また、本発明に用いる薬剤には、安定性向上効果、共力効果、付加機能の追加等を目的として、前記した成分の他に一種以上の、例えば、2,6−ジブチル−3−メチルフェノール(BHT)、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸ナトリウム、dl−α−トコフェノール(ビタミンE)等の酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ケイ皮アルデヒド、ベンズアルデヒド等の防虫・防黴剤、安息香酸エチル、サフロール、イソサフロール、オイゲノール、シトロネロール、アネトール、L−カルボン等の防虫香料、ジャスミン、パインアップルオイル、ベンジルアセテート等各種香料及び調合香料などの芳香剤、消臭剤や着色剤など、また蒸散調整剤として各種溶剤などを使用することができる。
【0013】
本発明の保持体を用いた製剤を使用する場所は、一般家屋に限ること無く、例えば車、テント、犬小屋、ハウス、工場なども挙げられる。使用する場所の大きさに応じて保持体の見掛けの体積を設定し、必要な効力レベルに応じて内部空間の占める割合を設定すればよい。
本発明の保持体を使用し、所望の効力を更に向上させるための方法としては、ゴム、バネ、永久磁石あるいはモーターなどを使用して保持体全体を駆動し通気を促進させる方法や、内部空間にファンを設け強制的に通気を促進させるといった方法も考えられる。その場合、保持体全体の見掛けの体積が小さくても良好な効力が得られる。
【0014】
上記のように強制的に通気を促進させる薬剤蒸散方法の一実施態様としてその内部構造を図3に示す。
図3に示す強制通気方式の薬剤蒸散装置は、内部空間4aを有する中空円柱状のハニカム構造体1aを用いた例を示している。容器11上に配設されたハニカム構造体1aは、セル壁2aによって囲まれるハニカム状の各セル3aが内部空間4aから外周にかけて連通するように構成されており、その内部空間4aにはファン5が回転自在に配設されている。ファン5は、対称的に平行に配列された4枚の羽根8の上端にリング状の羽根固定部材6が、また下端に回転板7が固定された構造を有し、回転板7の中心は容器11内に収容されているモーター10の回転軸9に取り付けられている。モーター10への電力供給方式は、例えば乾電池を容器11内に収容する内部電源方式や配線コードを接続する外部電源方式のいずれでもよい。
【0015】
上記薬剤蒸散装置の場合、スイッチ(図示せず)を入れてモーター10を駆動させ、ファン5を回転させると、上部より流入した空気を、ファン5により内部空間4aから外周に向って各セル3a内を強制的に通気させることができるので、ハニカム構造体1aに含浸されている有効成分の蒸散を促進することができ、また有効成分の蒸散量はファンの風力(回転数、羽根のサイズ、数、形状等)によって任意に調節できる。なお、本発明を実施する際には、ファン及び薬剤保持体への接触及び異物混入を避けるため、一つ以上の通気口を設けた外殻容器が必要である。
【0016】
強制的に通気を促進させる薬剤蒸散方式は、前記図3に示すものに限られるものではなく、種々の構造とすることができる。例えば、前記ハニカム構造体1aは、中空の円柱状体の他、立方体、五角柱状、六角柱状等の任意の多角柱状体とすることができる。また、前記図1及び図2に示す球状のハニカム構造体を半分割した半球状の構造とし、これを内部空間内にファンが配置されるように、例えば図3に示すファン5を覆うように容器11上に配置したドーム状構造とすることもできる。この場合、下方からハニカム構造体の内部空間内に空気が流入するように容器あるいはさらに下部回転板に吸気孔を形成すればよい。
【0017】
前記のようにハニカム構造体の内部に設けた空間内にファンを設置する場合、有効成分の蒸散量は、設ける内部空間の体積やセルの開口面積以上に、ファンの風力に左右される。すなわち、立体状構造体の風の出口部での風速が、0.1m/秒以上であることが条件となる。そして、ファンを駆動する動力源としては、モーター、ゼンマイ、ゴム等が考えられるが、長期に渡って安定した効力を得るためにはモーターを使用することが好ましい。ファンの材質としては、プラスチックや厚紙等、特に限定されるものではないが、軽量な材質を選択したほうがエネルギー効率の向上の点で好ましい。
【0018】
【実施例】
前記したように、本発明は、ハニカム構造体の内部に空間を設けることによって一つ一つのセルへの通気が促進され、有効成分の蒸散量が向上し、結果的に効力が向上するものであるが、その効果を具体的に確認した試験例及び実施例を以下に示し、本発明について具体的に説明する。ただし、本発明がこれらの試験例や実施例のみに限定されるものでないことはもとよりである。
【0019】
試験例1
下記表1に示すように、保持体として表面積及び材質を揃えた図1及び図2に示すようなハニカム構造体を使用し、内部空間のある場合と無い場合のそれぞれについてアカイエカに対するノックダウン効力を調査し、比較した。試験は、各ハニカム構造体及び一枚のシートにテラレスリンをそれぞれa.i.(active ingredient )で2.5g塗布した各サンプルを使用し、25℃恒温条件下の8畳の閉鎖空間において約100個体のアカイエカ雌成虫に対するノックダウン効力を調査することによって行った。その結果を表1に示す。
【表1】
表1に示されるように、直径30cmの球状のハニカム構造体の内部に直径26cmの空間を設け通気を促進させることにより、同じ蒸散面積を有する直径14cmのハニカム構造体(内部空間なし)に比べて、効力が14%から100%へと飛躍的に向上した。このことから、有効成分の蒸散量は、蒸散面を通過する空気の流れによる影響が大きいと考えられた。そこで、次の試験例2では立体内部に設ける空間の割合を変化させ、その効力に及ぼす影響について調査した。
【0020】
試験例2
表2に示すように、ハニカム構造体の見掛けの体積を同じくし、内部空間の割合を変化させた以外は前記試験例1と同様にして、アカイエカに対する効力試験を行った。その結果を表2及び図4に示す。
【表2】
上記表2及び図4から明らかなように、内部空間の比率が30〜85%の範囲のとき、長期間使用上有効と考えられるレベルの効力を維持することが可能である。また、効力の持続日数は効力レベルと反比例の関係にあり、一方、効力レベルは内部空間の割合が30〜85%の範囲内にある場合に内部空間の割合と比例関係にある。従って、効力レベル及び製剤の使用期間は、内部空間の割合を30〜85%の範囲で調整することにより、外観イメージを崩すことなく任意に設定可能である。
また、立体内部に92%の内部空間を有するハニカム構造体の効力が、それ以下の割合の内部空間を有するものに比較して劣っている原因は、表面積の低下による効力への影響が内部空間の影響を上回ったためであると考えられる。
さらに、有効成分の蒸散量に影響を及ぼす要因には、立体の内部に設ける空間の他に、ハニカム構造体に形成されたセルの開口面積があるので、以下の試験例3においてはこの点について調査した。
【0021】
試験例3
ハニカム構造体の見掛けの体積を14130cm3 に固定し、内部空間の体積比とセルの開口面積を表3に示すように変化させた以外は前記試験例1と同様にして、アカイエカに対する効力を比較した。その結果を表3及び図5に示す。
【表3】
上記表3及び図5に示されるように、セルの開口面積が1cm2 以下の場合、有効成分の蒸散量が開口面積により抑制され、内部空間の変化による効力レベルの調整が不可能であるということが明らかとなった。
【0022】
実施例1
紙を材質とした直径20cmのハニカム状の球体の中心部に直径14cmの球状の内部空間を設けた保持体を作製した。得られた保持体に、テラレスリンをa.i.で2.5g塗布し、試験サンプルを得た。本サンプルを使用し、25℃恒温条件下の8畳の閉鎖空間において約100個体のアカイエカ雌成虫に対するノックダウン効力を経時的に調査した。
【0023】
実施例2
紙を材質とした直径30cmのハニカム状の球体の中心部に直径26cmの球状の内部空間を設けた保持体を作製した。得られた保持体にエトックをa.i.で2.5g塗布し、試験サンプルを得た。本サンプルを使用し、25℃恒温条件下の8畳の閉鎖空間において約100個体のアカイエカ雌成虫に対するノックダウン効力を経時的に調査した。
【0024】
実施例3
実施例3と同様の保持体にテラレスリンをa.i.で5g塗布し、試験サンプルを得た。本サンプルを使用し、25℃恒温条件下の8畳の閉鎖空間において約100個体のアカイエカ雌成虫に対するノックダウン効力を経時的に調査した。
【0025】
実施例4及び5
実施例3と同様の保持体にピナミンフォルテ又はべーパースリンをそれぞれa.i.で10g塗布し、試験サンプルを得た。各サンプルを使用し、25℃恒温条件下の8畳の閉鎖空間において約100個体のアカイエカ雌成虫に対するノックダウン効力を経時的に調査した。
上記実施例1〜5の結果を表4に示す。
【表4】
【0026】
試験例4
前記図3に示す構造を有し、表5に示す種々の外周直径の中空円柱状のハニカム構造体1aの内部空間4aの中にファン5を設置し、モーター10(マブチモーター(株)製、RF−320CH)によってそれを駆動した場合の、8畳の閉鎖空間におけるアカイエカ雌成虫に対するノックダウン効力について調査した。なお、比較例として市販の液体式電気蚊取器を使用し、同条件での効力を調査した。
本試験は、ファンと内部空間の大きさを統一し、セル3aの風の出口部での風速を0.1及び0.05m/秒の2段階に調整した上で、外周直径を変化させた場合の効力を調査したものである。その結果を表5に示す。
【表5】
表5に示されるように、ファンとハニカム構造体の内部に設ける空間の直径を統一し、外周直径を調整した場合、風の出口部風速が0.1m/秒以上であれば、その大きさに比例して効力は上がり、何れも比較例である液体式電気蚊取器に勝るものとなる。しかし、風速が0.1m/秒を下回った場合には、最も効力の高いものであっても比較例に劣るものとなる。これは風速が0.1m/秒を下回った場合、空間全体に有効成分を充分に供給するのに時間を要するためであると考えられる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明の薬剤保持体は、シート形状の非常に広い蒸散面積が必要であるという問題とハニカム構造体の課題である有効成分の蒸散量の低下、つまり目的とする効力が充分に得られないという問題を同時に解決したものであって、薬剤を含浸・保持できる材料から作製された前記ハニカム状又は格子状のセル壁で立体状構造体を構成すると共に、その内部に空間を形成することによって、一つ一つのセルへの通気が促進され、それによって有効成分の蒸散量が増大し、長期間に亘って有効成分を安定して蒸散させることを可能としたものであり、殺虫、防虫(忌避)、害虫成長制御等を目的とする常温蒸散式製剤において、ヒーター等の加熱装置を用いることなく、使用する蒸散性の有効成分に応じた所望の効力を安定して発揮させることができる。また、薬剤保持体のサイズを適宜選定することにより、有効成分の蒸散量を対象とする害虫、使用場所、使用時間等にあわせて任意に調整することができる。さらに、立体状構造体の内部空間にファンを設け、風の出口部での風速が0.1m/秒以上となるように調整することにより、含浸されている有効成分の蒸散を促進でき、また有効成分の蒸散量を任意に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬剤保持体の一実施態様であるハニカム構造体の断面図である。
【図2】図1に示すハニカム構造体の斜視図である。
【図3】本発明の薬剤保持体を用いた強制通気方式の薬剤蒸散装置の一実施態様を示す部分破断概略斜視図である。
【図4】アカイエカ雌成虫に対するノックダウン効果の持続性に及ぼすハニカム構造体の内部空間体積比の影響を示すグラフである。
【図5】アカイエカ雌成虫のノックダウン率に及ぼすハニカム構造体のセルの開口面積の影響を示すグラフである。
【符号の説明】
1,1a ハニカム構造体
2,2a セル壁
3,3a セル
4,4a 内部空間
5 ファン
6 羽根固定部材
7 回転板
8 羽根
10 モーター
A 接着部分
X 中心軸線
Claims (5)
- 殺虫剤、防虫剤、忌避剤、害虫成長抑制剤及び殺虫効力増強剤よりなる群から選ばれた薬剤有効成分を立体状構造体に含浸・保持させ、常温で自然に蒸散させる製剤の薬剤保持体であって、個々にセル壁によって囲まれた多数の細長いハニカム状又は格子状のセルを有する立体状構造体を上記セル壁で構成すると共に、該立体状構造体の略中央部に、上記セル壁で囲まれる各セルとは別個の空間を設けることを特徴とする薬剤保持体。
- 立体状構造体がハニカム構造体であり、その略中央部に設ける空間の体積が、該空間を含めた立体状構造体全体の見掛けの体積に対して30〜85%であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤保持体。
- ハニカム構造体の各セルの開口面積が1cm2以上であることを特徴とする請求項2に記載の薬剤保持体。
- 請求項1に記載の立体状構造体からなる薬剤保持体の前記空間にファンを設け、有効成分の蒸散を促進することを特徴とする薬剤蒸散方法。
- 立体状構造体の風の出口部での風速が、0.1m/秒以上であることを特徴とする請求項4に記載の薬剤蒸散方法。
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-
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