JP5483384B2 - Dlc膜及びdlcコート金型 - Google Patents

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Description

本発明は、硬度、摺動性などの特性に加えて、耐熱性や耐凝着性(耐融着性、耐溶着性)に優れ、しかも極めて平坦な表面を備えたダイヤモンドライクカーボン(Diamond−like Carbon:以下、「DLC」と略記する)膜と、このようなDLC膜を保護膜として備えた金型、とりわけ高温耐久性に優れ、高い面精度・平坦性・硬度が要求されるレンズ成形用の金型として好適に用いられるDLCコート金型に関するものである。
一般に、金型は、1対の金属製の型から成り、これらの間に成形しようとする材料を配置し、型と型とをプレスして圧力をかけ、必要に応じて加熱して利用される。
例えば、ガラスレンズ成形用金型の場合、温度400〜700℃、圧力20〜1,000kgfという条件で使用される場合が多い。中でも、温度500〜600℃、圧力50〜300kgfが一般的である。
通常、このような金型の成形面には保護膜が形成されるが、この保護膜に要求される性能としては、プレス温度に耐える耐熱性を有すること、プレス圧力に耐える硬度を有すること、凹凸がなく光学的に実用可能な面精度・平坦性を有すること、被成形物質が保護膜表面と融着しないこと、被成形物質と保護膜との摺動性が高いことが挙げられる。
上記のようなガラスレンズ成形用金型に適用される保護膜としては、従来、耐熱性及び硬度の観点から、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、プラチナなどの貴金属系や、レニウムなどの遷移金属元素系膜、ビスマスなどの典型金属元素、これらの合金・混合金属・窒化物・炭化物・炭窒化物・酸化物(以上まとめて、金属系保護膜)、あるいはDLC膜などが利用されてきた(例えば、特許文献1〜3参照。)。
特開平6−191864号公報 特開昭63−103836号公報 特開平8−301625号公報
しかしながら、上記した従来の保護膜では、耐久性が十分でなかったり、生産コストが高かったりした。
例えば、金属系の保護膜は、スパッタ法で形成されており、貴金属であるが故に、スパッタターゲットは極めて高価であると共に、成膜に利用されないスパッタ消費物質の回収が困難であり、保護膜加工コストを大幅に引き上げていた。また、金属系保護膜を金型基材の表面から除去するには、研磨するしか方法がなく、基材の形状を元の形状に戻すことができないため、基材部分を元の形状としては再使用(リユース)することができないという問題がある。
これに対し、DLC膜は、離型性に優れ、摩擦係数が低く、しかも硬くて耐摩耗性が高く、化学的にも安定であることから、保護膜としての利用価値が高い。しかも、DLC膜は酸素プラズマやフッ素プラズマでアッシングすることによって除去(除膜)できるため、金型基材を元の形状に再生することができるので、金型基材を元の形状のまま繰り返しリユース(再使用)が可能という利点がある。
しかし、従来のDLC膜としては、a−C、ta−C:H、あるいはa−C:Hに分類されるDLCが利用されており、中でもa−C:Hが最も多く利用されており、これらの膜では、耐熱性が不十分であり、剥離が生じやすく、耐融着性が不十分であるばかりでなく、表面の平坦性や,平滑性、面精度についても十分とは言えないという問題があった。
本発明は、従来のDLC膜における保護膜としての上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、高温耐久性を始めとする保護膜として要求される種々の特性、特に耐熱性や耐融着性、表面平坦性に優れたDLC膜と、このようなDLC膜を備えたDLCコート金型を提供することにある。
本発明者らは、上記課題の解決に向けて、DLCの種類や膜表面形状、膜性状、成膜方法、成膜条件などについて、鋭意検討を繰り返した結果、金型保護用のDLC膜としての表面平坦度及び物性の適正範囲を見出し、本発明を完成するに到った。
本発明は上記知見に基づくものであって、本発明のDLC膜は、ta−Cに分類されるDLCから成り、つまり、sp/(sp+sp)構造比が0.5〜0.9、水素含有量が0〜5原子%、ナノインデンテーション硬さが40〜100GPa、密度が2.7〜3.4g/cmであるDLC膜であり、基材上に成膜された表面に対する針先端曲率半径2μmの触針式表面形状測定器による測定送り0.01mmの表面走査検出において、基材の成膜前における被成膜面の算術平均粗さRa(S)に対するDLC膜面の算術平均粗さRa(D)の絶対値変化量ΔRa(=|Ra(S)−Ra(D)|)が0.75nm以下であり、且つ当該DLC膜面における高さ又は深さが20nm以上の凹凸の数が単位走査距離及び単位膜厚あたり0.0002〜0.01個/単位走査距離(mm)/単位膜厚(nm)であることを特徴とする。
そして、このような成膜状態を可能にするDLC膜自体の物性として、本発明のDLC膜は、可視光レーザを用いたラマン分光スペクトルにおいて、1000〜1200cm−1間にピークを有する特性バンドを持ち、Dバンド(グラファイトの結晶端での非対称性によるA1gモードとその縮退したモードの重ね合わせのバンドであり、ラマンスペクトルのピークが1360cm−1付近に表れるバンド)とGバンド(グラファイトの面内の振動のE2gモードとその縮退したモードの重ね合わせのバンドであり、ラマンスペクトルのピークが1560cm−1付近に表れるバンド)のピーク強度比及び面積強度比が0.2以下であり、且つ当該特性バンドとDバンドとのピーク強度比及び面積強度比が0.5以上であることが望ましいまた、波長600nm〜700nmの範囲における屈折率が2.5〜2.8であると共に、消衰係数が0.2以下であることが望ましい。なお、該特性バンドは、本発明におけるDLCにおいて初めて知見したものである。
また、本発明のDLCコート金型は、本発明の上記DLC膜を基材上に備えていることを特徴としている。
本発明によれば、基材上に成膜されるDLC膜をta−Cから成るものとし、つまりsp構造比や水素含有量、ナノインデンテーション硬さ、密度がta−Cに特徴付けられる範囲にあると共に、触針式表面形状測定による成膜前の基材面の算術平均粗さに対する成膜後の膜面の算術平均粗さの変化量、さらには同じく触針式表面形状測定による膜面の単位操作距離(mm)及び単位膜厚(nm)当たりの凹凸数がそれぞれ好適範囲となるように特定したため、耐熱性、硬度、摺動性、非融着性に優れると共に、面精度、平滑性に優れたDLC膜となり、各種成形用金型、とりわけレンズの成形用金型の保護膜に適用することによって、これら金型の耐用寿命を向上させることができる。
以下、本発明のDLC膜と、このようなDLC膜を保護膜として備えたDLCコート金型について、成膜方法と共にさらに詳細に説明する。
本発明のDLC膜は、ta−Cに分類されるDLCから成り、つまり、sp/(sp+sp)構造比が0.5〜0.9、水素含有量が0〜5原子%、ナノインデンテーション硬さが40〜100GPa、密度が2.7〜3.4g/cmであるDLC膜であって、基材上に成膜された膜表面に対する針先端曲率半径2μmの触針式表面形状測定器による測定送り0.01mmの表面走査検出において、成膜前における基材の被成膜面の算術平均粗さRa(S)に対するDLC膜面の算術平均粗さRa(D)の絶対値変化量ΔRa(=|Ra(S)−Ra(D)|)が0.75nm以下であり、さらに当該DLC膜面における高さ又は深さが20nm以上である凹凸数が単位走査距離(mm)及び単位膜厚(nm)あたり0.01個/mm/nm以下のものであって、例えば各種材料の成形用金型、すなわちガラス成形金型、樹脂(プラスチック)成形金型、ゴム成形金型、セラミック成形金型、薬剤成形用金型、圧粉成形用金型、プレス金型、鍛造金型、鋳造金型、射出成形金型、ブロー成形金型、圧縮成形金型、真空成形金型、押出金型、中でも、高温耐久性と共に、成形面に高い面精度や平坦性が要求されるレンズ成形用金型の保護膜として好適に用いることができるが、必ずしもこのような金型用のみに限定されず、このような高温耐久性や平滑性が要求される種々の物品の保護膜として広く利用することができる。
まず、本発明に用いるDLCについて、一般的な特性や成膜方法について、以下に説明する。
すなわち、DLC膜は、本来、硬くて、耐摩耗性に富み、しかも摩擦係数が低く、化学的にも安定であって、高摺動性膜としての利用価値が高い。なお、DLCはi−C(iカーボン)と呼ばれることもある。
このようなDLC膜は、実質的に水素を含まず、sp(ダイヤモンド構造)成分の多いta−C(tetrahederal amorphous Carbon;テトラヘドラルアモルファスカーボン)及びsp成分が少なく、sp(グラファイト構造)成分の多いa−C(amorphous Carbon;アモルファスカーボン)と、水素含有のDLCであるta−C:H及びa−C:Hの四つに分類される。
これらのDLCの中で、ta−Cが最も硬く、高密度であると共に、接触する固体相手材との融着性が低いという特徴を有していることから、本発明のDLC膜においては、ta−Cから成るものとする。従って、ta−C膜の性状として一般的に知られているように、そのsp/(sp+sp)構造比が0.5〜0.9、水素含有量が0〜5原子%、ナノインデンテーション硬さが40〜100GPa、密度が2.7〜3.4g/cmであることが必要である。
sp/(sp+sp)構造比が0.5に満たない場合は、sp成分が多いことを意味し、a−Cに分類されるDLCとなり、実質的にta−Cとは言えなくなり、密度が低くなって硬度が低下し、保護膜としての硬さ、耐摩耗性、耐熱性、耐融着性などが劣化する。また、当該構造比が0.9より大きい場合は、ダイヤモンド結晶に近づいてしまい、ダイヤモンド結晶に起因して表面粗さが大きくなり、摺動性が低下し(摩擦係数が大きくなり)、面精度や平坦性が低下してしまい、保護膜として利用できなくなってしまう。
ナノインデンテーション硬さは、市販のナノインデンター装置(超微小硬度計)を用いたナノインデンテーション測定法によって測定することができ、この値が40GPaに満たない場合には、a−Cに分類されるDLC膜となり、膜としての強度が損なわれ、金型の保護膜としての硬度、耐熱性、耐摩耗が得られない傾向がある。十分な硬さがない場合、金型へ傷が入りやすい。ナノインデンテーション硬さは高い方がよいが、100GPaを超えると、ダイヤモンド結晶膜になってしまい、前述の問題が生じる。
密度は、X線装置を用いたX線反射率測定(XRR;X−ray reflectivity)で求められる。密度が2.7g/cm未満では、膜がa−Cに分類されるDLCとなり、前述と同様な問題が生じる。また、3.4g/cmを超えると、ダイヤモンド結晶膜となり、やはり、前述と同様な問題が生じる。ちなみにダイヤモンドの密度は、約3.5g/cmである。従って、本発明のDLC膜は、密度が2.7g/cm以上、3.4g/cm以下(2.7〜3.4g/cm)が必要である。望ましくは、2.9〜3.2g/cmの範囲が、硬さと平坦性を同時に備えるため、より好適である。
また、密度の相対的評価は、オージェ電子分光(AES:Auger Electron Spectroscopy)装置や透過型電子顕微鏡装置に付属の電子エネルギー損失分光法(EELS:Electron Energy−Loss Spectroscopy)に従い、広域電子エネルギー損失微細構造(EELFS:energy−loss fine structure)解析法によって求められるEELSスペクトルの中のバレンスプラズモン(Valence plasmon)スペクトルのピーク位置から判断できる。
つまり、ta−Cに分類されるDLCのバレンスプラズモンスペクトルのピーク位置は29eV〜33eVであり、この数値が大きいほど電子密度が高い、すなわち原子の密度が高いことを示している。ちなみにダイヤモンドのプラズモンスペクトルのピーク位置は約33.7eVである。また、同スペクトルは、X線吸収スペクトルの吸収端付近であるXANESスペクトルからも求められる。
なお、sp/(sp+sp)構造比は、X線吸収端近傍微細構造解析法(NEXAFS:Near−Edge X−ray Absorption Fine Structure)によって求められる。このNEXAFSの測定は容易ではないが、ナノインデンテーション硬さが40〜100GPaで、かつ、密度が2.7〜3.4g/cmであるDLC膜は、当該構造比が0.5〜0.9であるDLC膜であることとは同義であることは周知であり、あえて測定の必要はない。なお、また、sp/(sp+sp)構造比はNMR(核磁気共鳴法)でも求められることが知られている。
一般に、DLCの成膜法としては、イオン化蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法、プラズマイオン注入成膜法、ホローカソードアーク蒸着法、真空アーク蒸着法などが用いられるが、上記ta−Cを形成するには、真空アーク蒸着法を用いることが必要となる。
真空アーク蒸着法以外の成膜方法、例えば、イオン化蒸着法、CVD法では、原料に炭化水素ガスを用いるため、原理的に水素を含む場合がほとんどであり、多くの場合、a−C:Hしか形成できない。また、スパッタ法の場合、形成できるのはa−Cである。
真空アーク蒸着法は、真空中におけるアーク放電(真空アーク放電)によって発生させた真空アークプラズマ(真空アーク放電プラズマ)を利用して薄膜を形成する方法であり、アークイオンプレーティング法、アークPVD法、陰極アーク蒸着法、陰極真空アーク法、アーク蒸着法などとも呼ばれているが、真空アーク蒸着法は、ta−C,a−C,ta−C:H,a−C:Hといった各種のDLC膜をプロセス制御によって作り分けることができる唯一の方法でもある。
なお、真空アーク蒸着法には、陰極物質を蒸発させる陰極アーク放電法と陽極物質を蒸発させる陽極アーク放電法があるが、一般に陽極物質を蒸発させることは困難であり、本明細書において、真空アーク蒸着法とは、特に断らない限り陰極アーク放電法を意味するものとする。同様に、真空アークと称した場合も、特記しない限り陰極アークを示すものとする。
上記真空アークプラズマは、アーク放電において陰極と陽極の間に発生するプラズマであり、陰極表面上に存在する陰極点から陰極材料が蒸発し、この陰極蒸発物質により形成されるプラズマである。一般に、陽極は不活性であり、蒸発しない。また、雰囲気ガスとして反応性ガス及び/又は不活性ガス(例えば、希ガス)を導入した場合には、反応性ガス及び/又は不活性ガスも同時にイオン化される。
真空アーク蒸着法によりDLC膜を形成する場合、プロセスチャンバ内へ水素ガスやアセチレン,メタン,エチレン,ベンゼンなどの炭化水素系物質を導入することによって、水素を含有するta−C:Hやa−C:Hが形成されるが、プロセスチャンバ内へガスを何も導入しなければ、水素を実質的に含有しないa−Cやta−Cを形成することができる。
基板に印加するバイアス電圧を変えることによって、これらのいずれかを形成することができ、ta−C又はta−C:Hを形成するには、バイアス電圧を0〜−200V、より好適には−50〜−150V、更に好適には−100V±20Vとすることによってta−C又はa−C:Hを形成することができる。装置内へガスを何も導入しなければ、水素を実質的に含有しないta−Cを形成できる。また、バイアス電圧が−200V以下(絶対値で言うと、200V以上)では、a−C又はa−C:Hとなる。
なお、バイアス電圧波形は、直流、直流パルス、交流パルス、RFのいずれであってもよい。直流パルスや交流パルスは、マイナス側だけに電圧を出力する単極性(ユニポーラ)でも、マイナス側とプラス側に交互に電圧を出力する双極性(バイポーラ)でもよい。バイポーラパルスの場合、プラス側の絶対値出力電圧は、前述の好適バイアス電圧に従うマイナス側の絶対値出力電圧より小さいことが望ましい。RFバイアスの場合、RF電圧の平均値である自己バイアスが上記の値となればよい。
装置内へガスを何も導入せず、バイアスを印加しない場合、膜はta−Cに分類される膜が形成されるが、その中でも比較的柔らかく、密度の低い膜になる。
また、炭化水素ガスを導入した場合は、バイアスを印加しない場合、すなわち、浮遊電位の場合、a−C:Hとなる。
本発明のDLC膜は、実質的に水素を含有しないta−Cから成り、水素含有量は「0」であることが望ましく、その成膜に際しては、プロセスチャンバ内に水素を含むガスを導入しないことは言うまでもないが、もともと真空チャンバ内壁や電極内に付着・吸着していたガスやゴミ、あるいは水などがプロセス中に脱離して膜内に混入することがあるため、水素含有量を完全になくすことは困難である。但し、5原子%を超えない限り、保護膜としての密度や硬さ、耐熱性、低摩擦性(摺動性)、耐摩耗性、耐融着性(耐凝着性)などへの実質的な影響がないことから、DLC膜の水素含有量を5原子%以下に抑える必要がある。しかし、水素含有量は0原子%により近い方が、より優れた特性となり、より望ましいDLC膜であることは言うまでもない。また、水素含有量がより少ない方が基材との密着性がよい。
装置内壁(真空チャンバ内壁)や電極内のガスや水分は、装置内(チャンバ内)を100℃以上に加熱したり、成膜プロセス前に、真空アークプラズマを空打ち(成膜することなく、プラズマを発生させること。つまり、シャッターで成膜しないようにしたり、プラズマを曲げずに直進させたりすること。)したりすることによって除去することができる。また、このような真空アークプラズマの空打ちは、ゲッター作用により不純物ガスを除去でき、真空度を上げ、清浄なプロセス空間を得るのにも有効である。
このように、DLC膜を実質的に水素を含有しない(0〜5原子%)ta−Cから成るものとし、sp/(sp+sp)構造比やナノインデンテーション硬さ、密度を上記した範囲とすることによって、DLC本来の摺動性や硬度などの性能を確保あるいは増強することができ、耐プレス性(高圧プレスに耐えること)、摺動性・低摩擦性(被成形材料が金型の表面に沿って流動すること)、耐熱性(高温プレスに耐えること)や非融着性・耐凝着性(被成形材料が付着凝固しないこと)に優れた保護膜とすることができる。
一方、金型において特に重要なのは、金型表面の平坦性である。そこで、DLC成膜面の平滑性について、各種の成膜装置を用いて繰り返し検討した結果、成膜面の平滑性を損なう原因がプラズマの発生時に陰極から副生する陰極材料粒子(以下、「ドロップレット」という)にあることを見出すに到った。
すなわち、一般に、真空アーク放電では、陰極点から陰極材料イオン、電子、陰極材料中性粒子(原子及び分子)といった真空アークプラズマ構成粒子が放出されると同時に、サブミクロンから最大数百ミクロンの大きさのドロップレットが放出され、このようなドロップレットが基材表面に付着すると、基材表面に形成されるDLC膜の均一性や平坦性が失われることになる。なお、ドロップレット対策としてフィルタを備えていない従来の真空アーク蒸着で成膜したta−Cの場合、電子顕微鏡で表面を観察したところ、0.5μmから5μm程度のドロップレットが付着していた。更になお,後述するフィルタードアーク蒸着で形成したta−C膜の場合、電子顕微鏡で表面を観察すると、凹凸の直径は、0.3μmから2μmの範囲であり、0.3μm〜0.8μmものが9割を占めていた。
DLCをコートした金型において、ドロップレットが付着すると、コート内にそのまま残存している場合はもとより、成膜後に膜表面をラップ処理などにより研磨して除去した場合でも、面精度が低い(表面粗さが大きい)ものとなり、成形品の性能劣化、例えばレンズの場合には、表面における散乱が大きくなって、光学性能の低下を招き、成形品の製品としての品質が低くなる。
また、ガラスレンズのモールドプレス成形の場合、ドロップレットが付着していると、当該ドロップレットはグラファイト構造(sp構造)を呈しており、グラファイト構造は耐熱性が低いため、ドロップレットを起点として膜の高温劣化が始まり、成形するガラス材料(プリフォームガラス)の凝着が始まる。さらに、ドロップレットがガラスレンズの側に付着してしまうことにもなる。
さらに、ドロップレットを除去した膜の場合、ドロップレットの抜けた穴にプリフォームガラスが凝着したり、この穴を通ってプリフォームガラスが金型に直接凝着したりしてしまう現象が生じる。
また、ドロップレットには、黒鉛状態の場合やアモルファス状態のものがあるが、いずれの状態でもダングリングボンドを多く含んでいる(ラマンスペクトルにおいてDバンドの強度が比較的強い)ことから、耐熱性に劣り、高温での耐久性に問題が生じる。そして、ドロップレットが高温において黒鉛化し始めると、これに伴ってその周囲の膜も黒鉛化し出すことになり、DLC膜中の黒鉛成分が多くなると、硬度が低下して、高温に耐えることができず、その表面も粗いものとなる。
そこで、このようなドロップレットが発生しない成膜法として、例えばフィルタードアーク蒸着法(磁気フィルタ法)を適用することによって、その限界的な表面粗さや成膜面の凹凸数を調査した結果、基材の成膜前における被成膜面の算術平均粗さRa(S)に対するDLC膜面の算術平均粗さRa(D)の絶対値変化量ΔRa(=|Ra(S)−Ra(D)|)、すなわち両者の算術平均粗さの差が0.75nm以下であって、しかも当該DLC膜面に存在する凹凸数、つまり20nm以上の高さ又は深さを有する凹凸の数が単位走査距離(mm)及び単位膜厚(nm)あたり0.01個/mm・nm以下(凹凸最大許容数)であれば、このようなDLC膜を精密研磨を施した基材上に成膜して成る金型による成形品の面精度が良好なものとなり、DLC膜の早期剥離を防止することができる一方、上記算術平均粗さの差が0.75nm超えたり、凹凸数が0.01個/mm/nmを超えたりした場合には、成形品、例えばガラスレンズの光学性能の低下を招くことを見出すに到った。
なお、ここで言う算術平均粗さ及び凹凸数については、市販品として一般的な針先端曲率半径2μmの触針式表面形状測定器を用いて、測定送り0.01mmの条件で行った表面走査検出による値を意味するものとするが、触針の先端曲率によって検出できる凹凸のサイズが異なる。そこで、参考のために、触針の先端曲率については、0.5μm〜3μmの範囲の先端曲率を有する市販の触針を用いた場合の凹凸の許容数について表1に示す。
Figure 0005483384
ここで、上記フィルタードアーク蒸着法とは、真空アークプラズマを湾曲したドロップレット捕着ダクト(プラズマ磁気輸送ダクトと同一)を通して基材が配置された処理部に輸送するものであって、この方法によれば、発生したドロップレットは、ダクト内周壁に付着捕獲(捕着・捕集)され、ダクト出口ではドロップレットをほとんど含まないプラズマ流が得られる。また、ダクトに沿って配置された磁石により湾曲磁界を形成し、この湾曲又は屈曲磁界によりプラズマ流を湾曲させ、プラズマを効率的にプラズマ加工部に移動させるようになっている。
なお、フィルタードアーク蒸着法は、別名、フィルタードアークイオンプレーティング,フィルタード陰極アーク蒸着,フィルタード真空アーク蒸着法、フィルタード陰極真空アーク(FCVA;Feltered Cathodic Vacuum Arc)、磁気フィルタ法、プラズマ磁気輸送法などとも呼ばれる。
本発明においては、特に、黒鉛ドロップレットの除去効率が高いT字状フィルタードアーク蒸着(T−FAD)法(特許第3865570号明細書、Surface and Coatings Technology,vol.163,p.368(2003)参照)や、X字状フィルタードアーク蒸着(X−FAD)法(特開2007−9303号公報参照)を用いることが望ましい。これらの方法はフィルタードアーク蒸着法の一種である。
通常のフィルタードアーク蒸着法では、図1(A)に示すように、発生したドロップレットを分岐がなく連続したプラズマ磁気輸送ダクト(ドロップレット捕着ダクトと同一)においてドロップレットを捕着する。金属陰極の場合、ドロップレットは溶融(つまり、液体状)しており、ドロップレットはダクト壁に到達すると、そこに固着するため、通常のフィルタードアーク蒸着装置でも、ドロップレットの除去は可能である。
しかしながら、DLCを成膜するための黒鉛陰極の場合、固体状のドロップレットが発生する。固体ドロップレットは固体表面で反射するため、連続した形状のダクトでは、ダクト自体がドロップレットのガイドになってしまい、図1(B)に示すように、成膜チャンバまで輸送されてしまう。
そこで、ドロップレットが発生する陰極の正面に延長ダクトを設け、延長ダクトでドロップレットを捕集し、真空アークプラズマ発生部と延長ダクトと成膜チャンバとを結ぶように形成された分岐を持つT字状ダクトにおいて、プラズマを90度に曲げて成膜チャンバに輸送する方法、すなわち、図1(C)に示すようなT字状フィルタードアーク蒸着(T−FAD)装置を用いるようにすることが望ましい。
この方法では、T字ダクトはドロップレットの成膜チャンバへのガイドとはならず、延長ダクトでドロップレットを捕集することができる。
一方、X字状フィルタードアーク蒸着(X−FAD)法とは、図1(D)に示すようなX字状フィルタードアーク蒸着(X−FAD)装置を用いて成膜する手法である。
この装置は、T−FAD装置に、プラズマ流の輸送方向(基板方向)に対し、もう一つの蒸発源あるいはプラズマ発生源をクランク状に配置接続した形状の装置である(特開2007−9303号公報参照)。DLCの生成には、この装置のT字ダクトの部分が利用される。
上記膜面に存在する凹凸形状については、成形材料が凹部に融着したり、凹部を介して金型基材と直接融着したりする可能性があることから、凸部よりも凹部の存在の方が深刻であり、この意味から、凸部の数については、単位走査距離(mm)及び単位膜厚(nm)あたり0.01個/mm・nm)以下が好ましいのに対し、深さ20nm以上の凹部については、0.005個/mm・nm以下とすることが望ましい。
本発明のDLC膜は、ta−Cから成るものであって、sp構造比が高く、低水素含有量、高密度、高硬度のものであって、成形に耐える十分な耐熱性を備えたものであるが、具体的な耐熱性の指標として、550℃の空気又は窒素ガス又は希ガス中に1時間暴露した場合、及び750℃の窒素ガス又は希ガス中に1時間暴露した場合に、波長400〜700nmの範囲における光の最大反射率の暴露前後の変化量(暴露後の反射率−暴露前の反射率)の絶対値がそれぞれ10%以内であることが望ましい。
すなわち、上記光の最大反射率の暴露前後における変化量の絶対値が10%を超えた場合には、黒鉛化又は酸化による膜厚の減少が始まっていることを意味し、それだけ耐熱性が低いことを示していることに他ならない。
本発明のDLC膜としては、可視光を光源としたラマン分光分析で得られたラマンスペクトル分布(パターン)において、1100cm−1±100nmにピークを有する特性スペクトルバンドを有し、このピークがsp−sp混成バンドと区別できる状態で現れるものを好適に用いることができる。
すなわち、図2は、フィルタードアーク蒸着装置によって成膜したta−Cのラマンスペクトル(ラマンシフト)波形の一例を示すものであって、図から明らかなように、波数850〜1900cm−1におけるラマンスペクトルは、3つのバンド波形の合成スペクトルであって、そのうちの2つは従来から知られているGバンド及びDバンドであり、もう一つは、1100cm−1にピークを持つバンドスペクトル(以下、「Sバンド」と称する)である。
なお、図2は、波長532nmの半導体グリーンレーザを用いた計測結果を示したが、他の可視光レーザを用いても差し支えない。例えば、波長632.8nmのHe−Neレーザでも同様な結果を得ている。
当該Sバンドと、従来から知られているGバンド(ピーク波長1580cm−1±100nm)及びDバンド(ピーク波長1360cm−1±100nm)とのピーク強度比及び面積強度比について、D/G比がそれぞれ0.2以下であると共に、S/D比がそれぞれ0.5以上であるものを用いることができる。
このとき、DバンドとGバンドのピーク強度比及び面積強度比D/Gが0.2を超えると、膜が柔らかくなり、十分な硬度が得られず、また耐熱性も低くなると共に、当該SバンドとDバンドとのピーク強度比及び面積強度比S/Dが0.5に満たないと、a−Cに分類される膜となり、膜が柔らかくなり、膜としての強度が損なわれ、金型の保護膜としての硬度、耐熱性、耐摩耗が得られないと同時に、ドロップレットの残存量が多く、金型保護膜としての表面粗さが得られないという不具合が生じる。なお、S/D比については、それぞれ1.0以上であることがより好ましい。
なお、当該Sバンドの発生する波数範囲前後において、紫外光レーザ(3.82eV以上=325nm以下)を用いた場合には、sp構造中のC−C結合に起因するバンドスペクトル(通常、Tバンドと呼ばれる)が、約1000〜1150cm−1の間にピークを持って現れることが知られている。例えば、波長244nmのレーザを用いたラマン分光の場合、ta−Cでは、約1100cm−1にピークを持つバンドとしてTバンドのラマンスペクトルが現れる。しかしながら、これまで、可視光レーザでは当該Tバンドは観察できないとされている。その理由は、可視光レーザに対するsp構造の感度は、sp構造の感度に対して1/50〜1/230程度であるからである。従って、sp構造の検出はフォトンエネルギーの高い紫外光レーザが必要であるとされている。
一方、今回新たに発見したSバンドは、従来の紫外光レーザで検出されているTバンドのピークと一致するため、SバンドはTバンドと同質であり、sp構造を示すものと判断できる。従って、可視光レーザによるラマン分光でSバンド=Tバンドが検出できたことは、sp構造からなるドロップレットを極限まで除去でき、かつ、sp構造成分が極めて多いことを意味している。すなわち、可視光レーザによるラマン分光でSバンドが検出できれば、ドロップレットを極限まで除去し、凹凸のない極めて平坦なDLC膜であり、かつ、sp/(sp+sp)構造比が0.5〜0.9、水素含有量が0〜5原子%、ナノインデンテーション硬さが40〜100GPa、密度が2.7〜3.4g/cmのDLC膜であることを示すことは言うまでもない。
また、本発明のDLC膜としては、波長600nm〜700nmの範囲における屈折率が2.5〜2.8の範囲内であると共に、消衰係数が0.2以下のものをも、例えば金型用の保護膜として好適に用いることができる。
屈折率は密度と強い関係を持ち、構造を保ったまま物体を圧縮すると、屈折率は増加する。すなわち、同じ構造の物質であれば、密度の高いものほど屈折率が高いことになる。従って、ta−Cに分類されるDLCにおいては、その中でも屈折率が高いDLCほど密度が高く、硬く、金型保護膜として利用するのに好適である。
一方、消衰係数は吸収に関連する係数であり、一般に、膜自体の物性の他、数値が大きいほど、膜中の不純物(ゴミ)が多いことを意味している。特に、真空アーク蒸着で成膜したta−Cの場合、吸収が大きいということは、ドロップレットの付着が多く、引いては、ドロップレットの付着や脱離による表面の凹凸が多くなることを意味する。
消衰係数は、0.2より大きい場合、ドロップレットの付着および脱離による表面の凹凸数が大きいか、または、膜のsp/(sp+sp)構造比が0.5未満となり、グラファイト成分を多く含み、膜が柔らかいことを示している。また、膜密度が高いほど、つまり、sp/(sp+sp)構造比が0.5を超えて大きいほど、膜が透明になるため、消衰係数が小さくなる。従って、当該消衰係数が0.2を超えた場合には、ドロップレットに起因する凹凸が多いこと、または、sp/(sp+sp)構造比が小さく膜が柔らかいことなどから、保護膜用のDLCとしての強度、耐熱性、耐融着性、表面平滑度に劣ることになる。
従って、屈折率が2.5以上で、かつ、消衰係数が0.2以下のDLCは、ナノインデンテーション硬さが40〜100GPa、密度が2.7〜3.4g/cmという性状を持ち、かつ、ドロップレットの付着と脱離に起因する起因する凹凸が極限まで少ないということと同等の意味を呈する。ただし、屈折率が2.8を超えるということは、膜中に金属などのCより原子核の大きな不純物が取り込まれていることを意味し、不純物が含まれるta−Cは硬度が減少するため、金型保護膜として好ましくない。消衰係数は、より好ましくは、0.05以下がよりよい。
本発明のDLCコート金型は、ta−Cから成り、上記特性を備えた本発明のDLC膜を基材上に備えたものであって、例えば、ガラス成形金型、樹脂成形金型、ゴム成形金型、セラミック成形金型、薬剤成形用金型、圧粉成形用金型、プレス金型、鍛造金型、鋳造金型、射出成形金型、ブロー成形金型、圧縮成形金型、真空成形金型、あるいは押出金型に適用することができ、とりわけ、直径0.001mm以上、厚さ0.001mm以上のガラス製又は樹脂製の球面レンズ又は非球面レンズ成形用の金型にも好適に用いることができる。
また、このときのDLC膜の成膜には、ドロップレットを金型基材に付着させない方法を適用する必要があり、例えばフィルタードアーク蒸着装置、特にT字状フィルタードアーク方式、あるいはX字状フィルタードアーク方式による装置を用いることが望ましい。
なお、本発明のDLCコート金型におけるDLC膜のコート厚さとしては、1nm〜2μm程度とすることが望ましい。DLC膜の厚さが1nm未満では、金型用の保護膜としての十分に機能させることができず、逆にDLC膜厚が2μmを超えた場合には、DLC膜の内部応力が高くなりすぎ、基材との密着性が得られず、DLC膜の剥離が生じやすいことによる。
また、本発明のDLCコート金型におけるDLC膜の表面粗さとしては、算術平均粗さRaで1〜50nm以下であることが望ましい。
DLCコート金型は、金型の性能として、表面粗さがRaで50nmより大きいと成形品(製品・製造物)の表面粗さが低下する。Raが1nmより小さい場合、基材自体の研磨・仕上げ加工が困難である。なお、特にレンズ金型の場合、Raが20nm以下であることがより好ましい。
一方、上記DLCを構成するta−Cは極めて固い代わりに、内部応力が極めて高いという特性を持つ。そのため、成膜される金型基材との密着性が悪くなる傾向が生じる。
したがって、この高い内部応力を緩和して、基材との高い密着性を確保するために、基材とDLC膜との間に、Cr,Ti,W,Si,SiCなどの金属膜や炭化物膜、金属間化合物膜を中間層(応力緩衝膜、バッファ膜、あるいは接着層)として挟むことができる。なお、このような中間層は、上記機能の他に、基材表面に成膜されたDLCを除膜する場合の除膜ストップ層としての機能を期待することもできる。
また、基材中に含まれるバインダー原料の溶出を防ぐ、バリア層としての役目を果たすこともできる。バインダー原料の一部は、例えばカーボンナノチューブの成長触媒として用いられるCoのように炭素と結合しやすいものもあり、バインダーが溶出するとDLC膜の劣化が早くなるという不都合が生じる。
このような、中間層としては、一般に、上記したような金属膜や、非金属固体膜、窒化物膜、窒化水素化物膜、酸化物膜、酸化水素化物膜、酸化炭化物膜、酸化炭化水素化物膜、窒化酸化物膜、窒化酸化水素化物膜、窒化炭化物膜、窒化炭化水素化物膜、窒化酸化炭化物膜、窒化酸化炭化水素化物膜から成る単独膜、あるいはこれらの任意の組合せから成る複合膜を用いることができる。
また、上記中間層としては、水素含有DLC膜や、実質的に水素を含有しない(0〜5原子%)DLC膜、金属含有DLC膜、ボロン含有DLC膜、シリコン含有DLC膜から成る中間層、又はこれらを任意に組合せた複合膜から成る中間層、あるいはこれらの中間層に、上記した金属、非金属固体、窒化物、窒化水素化物、酸化物、酸化水素化物、酸化炭化物、酸化炭化水素化物、窒化酸化物、窒化酸化水素化物、窒化炭化物、窒化炭化水素化物、窒化酸化炭化物及び窒化酸化炭化水素化物から成る群より選ばれた少なくとも1種が混在する中間層を用いることができる。
なお、これら中間層の厚さとしては、0.1〜500nm程度とすることが望ましい。すなわち、中間層の厚さが0.1nmに満たないと、中間層としての機能を十分に果たすことができない一方、500nmを超えると、中間層の成膜にコストと時間が掛かりすぎ、生産性が悪いという不都合が生じることがあることによる。
さらに、上記中間層は、単独の材料からなる単層の場合の他、多種類の材料から成る多層や混合層、さらには濃度勾配を備えた傾斜層とすることができる。
また、当該中間層の表面粗さとしては、算術平均粗さRaで、0.1〜50nmの範囲内とすることが望ましい。すなわち、中間層の表面粗さが50nmを超えると、その上に成膜されるDLC膜の表面平滑度が損なわれる傾向があり、すなわち金型として利用可能な表面粗さの範囲を超える傾向にあり、0.1nmに満たない場合は、この数値を実現する金型基材自体の研磨・仕上げ加工が困難であるという不具合が生じることがあることによる。なお、当該中間層の表面粗さは、より好ましくは0.1〜20nmである。
そして、上記のようなDLC膜から成る中間層を成膜するに際しては、最上層のDLC膜と同様に、フィルタードアーク蒸着装置、とりわけT字状フィルタードアーク方式(T−FAD)、あるいはX字状フィルタードアーク方式(X−FAD)による装置を用いることが望ましい。T−FADやX−FADで中間層を形成するには、DLC膜形成の場合に蒸発源である陰極材料に黒鉛を用いたが、その代わりに金属陰極を用いればよい。又、黒鉛陰極や金属陰極を用いた上、金属有機ガス(シリコン含有有機ガスも含む)を導入して中間層を形成することもできる。
本発明のDLCコート金型に用いられる基材としては、超硬合金、炭素鋼、高合金工具鋼、高速度工具鋼、合金鋼、プリハードン鋼、ステンレス鋼、アルミ鋼、りん青銅、シリコン、金属、セラミックス、ニューセラミックス,炭素、黒鉛及び準黒鉛のうちのいずれかを用いることができる。
なお、当該金型基材の被成膜面における成膜前の表面粗さとしては、算術平均粗さRaで、0.1〜50nmの範囲内とすることが望ましい。すなわち、被成膜面の表面粗さが50nmを超えると、その上に成膜されるDLC膜の表面平滑度が損なわれることがあり、0.1nmに満たない場合は、この数値を実現する金型基材自体の研磨・仕上げ加工が困難であるという不具合が生じることがあることによる。当該金型基材の被成膜面における成膜前の表面粗さとは、より好ましくは0.1〜20nmである。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、DLC膜の凹凸については、ドロップレットの付着や脱落が主因ではあるが、その他、基材のハンドリング中のゴミの付着や脱離も、DLC膜の凹凸の副因であることは言うまでもない。従って、本発明を実施するに際しては、DLC膜の凹凸の数を減らすための方法として、金型基材の前洗浄を十分に行うこと、フィルタードアーク蒸着装置内部のクリーニングを十分に行うことに配慮すると共に、必要に応じてフィルタードアーク蒸着装置自体をクリーンルーム内に設置し、洗浄および装置への導入も同じクリーンルーム内で行うようにした。
また、これらフィルタードアーク蒸着法において、ドロップレットの発生を極力抑え、ドロップレットに起因する凹凸数を少なくする観点から、プラズマ磁気輸送ダクト内にバッフルやオリフィス板を設ける、陽極形状を変更してドロップレットの反射方向が回収ダクトに向かうようにするなどの装置上の工夫、プロセスチャンバ内へ進入したプラズマを電磁界によって屈曲させ、プラズマの進入軸とオフセットした位置で成膜するなどのプラズマ制御による工夫、あるいは、アーク電流の大きさや波形を勘案しドロップレットの発生自体を抑制するような成膜条件を採用することが重要である。
(実施例1)
T字状フィルタードアーク蒸着装置(表中には「FAD」と略記する)と、ドロップレットをフィルタリングする機能を持たない、すなわちフィルター無しの通常の真空アーク蒸着装置(表中には「NFA」と略記する)を用い、精密研磨済みの2種類の超硬合金、すなわち一般品の超硬A(凸:なし、凹:多少あり)と、精密金型用の超硬B(凸:なし、凹:極微小)を基材として、この上に表2に示す条件によって4種類のDLC膜をそれぞれ成膜し、都合17種類のDLC成膜基材を得た。
なお、特性評価時の基材の場合には、成膜面は平らでレンズ成形用の加工はしていない。一方、実際のレンズ成形試験(モールドプレス試験)は、レンズ成形用の加工を施した基材上に、特性評価時と同じ成膜条件で成膜したものを用いて試験した。
Figure 0005483384
そして、得られた成膜基材について、各DLC膜のsp/(sp+sp)構造比、水素含有量、ナノインデンテーション硬さ、密度を測定すると共に、以下の評価を行ない、その結果を表3及び表4に示す。
〔1〕表面形状
先端曲率半径2μmのダイヤモンド触針を用いた触針式表面形状測定機(パナソニック製UA3P、Z軸方向分解能3nm、最小検出量20nm)を使用し、図3に示すように、縦横5mm四方を走査間隔0.1mm刻みで全長510mmを計側し、基材の被成膜面及び上記により成膜されたDLC膜表面の算術平均粗さRaと、高さあるいは深さが20nm以上の凹凸数を求めた。なお、測定間隔は10μm(測定送り0.01mm)とした。
〔2〕高温暴露試験
上記により得られたDLC成膜基材を550℃及び750℃の窒素雰囲気中(酸素濃度2%程度)にそれぞれ1時間放置した。
〔3〕分光反射率特性
レンズ反射率測定機(オリンパス製USPM−RU)及びマルチ測光システム(大塚電子製MCPD−2000)を用いて、380〜780nmの波長域におけるDLC膜の反射率特性を上記高温暴露試験前後について測定し、暴露前の400〜700nmの波長範囲内における最大反射率に対する暴露後の最大反射率の変化率を算出した。また、光学シミュレーションにより、屈折率と消衰係数も算出した。
〔4〕レンズ成形試験
上記各DLC膜を備えたガラスレンズ成形用金型を用い、ガラス材料(プリフォームガラス:ガラス転移点527℃、軟化点619℃)を使用して、成形時の加熱温度を580℃、プレス荷重を250kgfとして、窒素雰囲気で成形した。
そして、ガラスレンズのプレス成形試験を繰り返し、DLC膜が剥離することなく、金型表面へのガラス材料の付着や成形されたレンズの表面形状の変化を引き起こすことなく成形可能な回数を調査した。
Figure 0005483384
Figure 0005483384
表3,4の結果から明らかなように、T字状フィルタードアーク蒸着装置(FAD)によって、所定の水素含有量や構造比、硬さ、密度を備えたta−Cから成り、所定の表面粗さ、凹凸数の膜面を備えた本発明のDLC膜を備えた金型では、耐久成形性能に優れることが確認されたのに対し、ta−Cであっても通常の真空アーク蒸着装置(NAF)によって成膜したものでは、成形品の表面の平坦性が劣り、ガラスの付着も発生しやすく、剥離に至った。ta−C以外のDLC膜においては、耐久性能が充分ではなかった。いずれのDLC膜も、FADで形成したta−Cと比べると、硬さや密度、sp構成比、水素含有量、表面の平坦性などにおいて劣り、耐久性能に欠けることが判明した。
なお、図4(a)及び(b)は、表3及び4に示したDLC膜の代表例として、サンプルNo.6と12の表面状態を比較して、示したものであって、通常のフィルタ無しの真空アーク蒸着装置(NAF)によって成膜されたサンプルNo.6(図4(a))に較べて、T字状フィルタードアーク蒸着装置(FAD)を用いたサンプルNo.12(図4(b))のDLC膜の表面平坦性が格段に優れていることが認められる。
また、図5(a)及び(b)は、同じく上記実施例の代表例として、サンプルNo.13及びサンプルNo.15の高温暴露前後におけるDLC膜の反射率の変化を図示したものであって、波長400〜700nmの範囲内での最大反射率の値は、図5(a)に示したサンプルNo.13(ta−C)の場合には、加熱前の最大反射率が約46%、加熱後の最大反射率が約41%であって、反射率が約5%低下している。
これに対して、図5(b)に示したサンプルNo.15(a−C)の場合には、加熱前が約33%、加熱後が約20%であって、反射率が10%以上も低下していることになる。ここで、反射率が低下するということは、膜が黒っぽくなる、言い換えると黒鉛化又は酸化による膜厚の減少が始まることを意味しており、変化率が小さいほど耐熱性が高いことになる。
なお、雰囲気ガスを空気として同様な試験(550℃、1時間)を行ったところ、本発明のta−Cの加熱前後の反射率の変化量(加熱後の反射率−加熱前の反射率)は、−1%〜−10%であったのに対し、a−C、ta−C:H、a−C:Hの場合の変化量は、それぞれ、約−15%〜−20%、約−30%〜−40%、約−40%〜50%であった。希ガス雰囲気でも同様な結果が得られた。
(実施例2)
超硬Aから成る基材の上に、上記同様の蒸着装置を用いて、同様の条件のもとに種類の異なるDLC膜をそれぞれ成膜し、表5に示すように都合6種類のDLC成膜基材を作製した。
そして、レーザラマン分光光度計(JASCO製NRS−1000)を用い、1800gr/mmの回折格子を使用して、レーザ強度80mW、ビーム径4μmの半導体レーザ(波長:532nm)によって、各DLC膜について、ラマンスペクトルを求め、各バンドの波形を解析すると共に、上記実施例1と同様にレンズ成形試験を実施した。その結果を表5に併せて示す。
Figure 0005483384
このように、ピーク強度及び面積強度のS/D比がいずれも0.5以上で、D/G比がいずれも0.2以下であるサンプルNo.19及び20のDLC膜を備えた金型においては、耐久成形性能に優れる一方、ta−C以外のDLC膜や、ta−Cであっても通常の真空アーク蒸着装置によって成膜したものにおいては、ピーク強度及び面積強度のS/D比やD/G比を上記範囲内に調整することができず、このようなDLC膜を備えた金型では、十分な耐久性が得られないことが確認された。
(実施例3)
超硬Aから成る基材の上に、上記T字状フィルタードアーク蒸着装置及びフィルタ無しの真空アーク蒸着装置を用いて、同様の条件のもとにta−Cから成るDLC膜を約140nmの厚さにそれぞれ成膜し、表6に示すように、サンプルNo.24及び25のDLC成膜基材を作製した。
Figure 0005483384
図6は、上記したレンズ反射率測定機及びマルチ測光システムを用いて、380〜780nmの波長域における両DLC膜の反射率特性を同様に調査した結果を示すものであって、フィルタ無しの真空アーク蒸着装置(NFA)により成膜したサンプルNo.24のDLC膜の反射率は、黒鉛ドロップレットの付着によって吸収が多くなり、フィルタードアーク蒸着法(FAD)によって成膜したサンプルNo.25のDLC膜に較べて低くなることが確認された。
そして、これらの結果から光学定数を求めたところ、表6に併せて示すように、波長500〜700nmにおいて、サンプルNo.25のDLC膜は、屈折率nが2.7±0.1で、消衰係数kが0.03〜0.09である一方、サンプルNo.24のDLC膜の屈折率nが2.6±0.1で、消衰係数kが0.3〜0.5であった。
ここで、消衰係数が大きいということは、膜中の不純物(ゴミ)が多く、凹凸が多いことを意味しており、フィルタのない真空アーク蒸着装置によって成膜したサンプルNo.24のDLC膜の場合、膜に対する不純物であるドロップレットが多く付着することにより、消衰係数が大きく、つまりこれは当該ドロップレットに起因する膜表面における凹凸形状が大きいことを示している。
また、これらDLC膜を備えた金型を用いて、上記実施例と同様のレンズ成形試験を実施した結果、屈折率が低く、消衰係数が大きいサンプルNo.24のDLC膜を備えた金型では、十分な耐久性が得られないことが確認された。
なお、ta−Cは高絶縁性であるが、a−Cは導電性であり、ta−Cを500℃以上の温度で高温加熱し続けたり、繰り返し加熱したりすると、いずれやがてはa−Cに変化するという性状を利用すると、抵抗値の変化で、成膜したDLCが金型保護膜として利用可能であるかどうか、及びta−C膜の黒鉛化による劣化状況を簡易的に評価できる。
本発明のta−Cの膜のシート抵抗は1MΩ/cm以上である。これが劣化すると、例えば、サンプルNo.19のta−Cの場合、レンズ成形試験前の膜抵抗が約10MΩ/cmであるのに対して、試験後の膜抵抗は約80Ω/cmであった。また、サンプルNo.21のa−Cのレンズ成形試験前の膜抵抗は約200Ω/cmであり、試験後の膜抵抗は約20Ω/cmであった。従って、実際の使用においては、膜のシート抵抗が大凡数百Ω/cmより小さくなって時点でプレスを終了し、金型を交換するのがよい。
なお、本発明のDLC膜は金型保護膜以外の利用も可能であり、たとえば、アルミニウム合金・マグネシウム合金などに対する切削工具(転削工具、旋削工具、穴あけ工具)の保護膜、自動車部品その他の摺動が必要な部品表面への保護膜・摺動膜、熱的バリア膜(耐熱膜)、軸受けの摺動性耐摩耗性保護膜、各種ノズル内の耐摩耗性保護膜、バイオ適合性保護膜、細胞成長促進膜、などへの応用が可能であることは言うまでもない。特に、水素フリーの硬質DLCが求められるドライ切削工具や潤滑剤による潤滑面を持つ摺動部材、バイオチップ、などでの利用ができる。
(a)〜(d)は各種フィルタードアーク蒸着法の構成及び原理を示す概略説明図である。 フィルタードアーク蒸着法によって成膜したta−Cから成るDLC膜の可視光レーザのラマンスペクトルの一例を示すグラフである。 触針式表面形状測定機による表面形状測定時の走査パターンを示す説明図である。 (a)一般の真空アーク蒸着装置により成膜されたDLC膜の表面形状を示すグラフである。(b)フィルタードアーク蒸着法により成膜されたDLC膜の表面形状を示すグラフである。 (a)ta−Cから成るDLC膜における高温暴露試験前後の反射率の変化を比較して示すグラフである。(b)a−Cから成るDLC膜における高温暴露試験前後の反射率の変化を比較して示すグラフである。 フィルタードアーク蒸着法により成膜されたDLC膜の反射率を一般の真空アーク蒸着装置により成膜されたDLC膜と比較して示すグラフである。

Claims (16)

  1. 基材上に成膜されたDLC膜であって、ta−Cに分類されるDLCから成り、sp/(sp+sp)構造比が0.5〜0.9、水素含有量が0〜5原子%、ナノインデンテーション硬さが40〜100GPa、密度が2.7〜3.4g/cmであって、針先端曲率半径2μmの触針式表面形状測定器による測定送り0.01mmの表面走査検出において、上記基材の成膜前における被成膜面の算術平均粗さRa(S)に対するDLC膜面の算術平均粗さRa(D)の絶対値変化量ΔRa(=|Ra(S)−Ra(D)|)が0.75nm以下であると共に、当該DLC膜面における高さ又は深さが20nm以上の凹凸の数が単位走査距離及び単位膜厚あたり0.0002〜0.01個/単位走査距離(mm)/単位膜厚(nm)であることを特徴とするDLC膜。
  2. 上記膜面における凹凸のうち、高さ20nm以上の凸部の数が単位走査距離及び単位膜厚あたり0.01個/単位走査距離(mm)/単位膜厚(nm)以下であることを特徴とする請求項1に記載のDLC膜。
  3. 上記膜面における凹凸のうち、深さ20nm以上の凹部の数が単位走査距離及び単位膜厚あたり0.001個/単位走査距離(mm)/単位膜厚(nm)以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のDLC膜。
  4. 温度550℃の空気又は窒素ガス又は希ガス中1時間の暴露試験において、波長400〜700nmの範囲における光の最大反射率の暴露前後の変化量の絶対値が10%以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のDLC膜。
  5. 温度750℃の窒素ガス又は希ガス中1時間の暴露試験において、波長400〜700nmの範囲における光の最大反射率の暴露前後の変化量の絶対値が10%以内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに1つの項に記載のDLC膜。
  6. 可視光レーザを用いたラマン分光スペクトルにおいて、1000〜1200cm−1間にピークを有する特性バンドを持ち、DバンドとGバンドのピーク強度比及び面積強度比が0.2以下であり、且つ当該特性バンドとDバンドとのピーク強度比及び面積強度比が0.5以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに1つの項に記載のDLC膜。
  7. 波長600nm〜700nmの範囲における屈折率が2.5〜2.8であると共に、消衰係数が0.2以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに1つの項に記載のDLC膜。
  8. 請求項1〜7のいずれかに1つの項に記載のDLC膜を基材上に備えたことを特徴とするDLCコート金型。
  9. DLC保護膜付き金型の表面粗さが算術平均粗さRaで1〜50nmであることを特徴とする請求項8に記載のDLCコート金型。
  10. 上記DLC膜と基材との間に、0.1〜500nmの厚さを有する金属膜、非金属固体膜、窒化物膜、窒化水素化物膜、酸化物膜、酸化水素化物膜、酸化炭化物膜、酸化炭化水素化物膜、窒化酸化物膜、窒化酸化水素化物膜、窒化炭化物膜、窒化炭化水素化物膜、窒化酸化炭化物膜及び窒化酸化炭化水素化物膜から成る群より選ばれた少なくとも1種の膜から成る中間層を備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載のDLCコート金型。
  11. 上記DLC膜と基材との間に、0.1〜500nmの厚さを有する水素含有DLC膜、実質的に水素を含有しないDLC膜、金属含有DLC膜、ボロン含有DLC膜及びシリコン含有DLC膜から成る群より選ばれた少なくとも1種の膜から成る中間層、又は当該中間層に金属、非金属固体、窒化物、窒化水素化物、酸化物、酸化水素化物、酸化炭化物、酸化炭化水素化物、窒化酸化物、窒化酸化水素化物、窒化炭化物、窒化炭化水素化物、窒化酸化炭化物及び窒化酸化炭化水素化物から成る群より選ばれた少なくとも1種が混在する中間層を備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載のDLCコート金型。
  12. 上記中間層のDLC膜が陰極の正面の延長ダクトでドロップレットを捕集し、真空アークプラズマ発生部と延長ダクトと成膜チャンバとを結ぶように形成された分岐を持つダクトにおいて、プラズマを曲げて成膜チャンバに輸送するフィルタードアーク蒸着装置により成膜されていることを特徴とする請求項11に記載のDLCコート金型。
  13. 上記DLC膜が陰極の正面の延長ダクトでドロップレットを捕集し、真空アークプラズマ発生部と延長ダクトと成膜チャンバとを結ぶように形成された分岐を持つダクトにおいて、プラズマを曲げて成膜チャンバに輸送するフィルタードアーク蒸着装置により成膜されていることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1つの項に記載のDLCコート金型。
  14. 上記基材が超硬合金、炭素鋼、高合金工具鋼、高速度工具鋼、合金鋼、プリハードン鋼、ステンレス鋼、アルミ鋼、りん青銅、シリコン、金属、セラミックス、ニューセラミックス,炭素、黒鉛及び準黒鉛のいずれかであることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1つの項に記載のDLCコート金型。
  15. ガラス成形金型、樹脂成形金型、ゴム成形金型、セラミック成形金型、薬剤成形用金型、圧粉成形用金型、プレス金型、鍛造金型、鋳造金型、射出成形金型、ブロー成形金型、圧縮成形金型、真空成形金型及び押出金型のいずれかであることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1つの項に記載のDLCコート金型。
  16. ガラス製又は樹脂製であって、直径0.001mm以上、厚さ0.001mm以上の球面レンズ又は非球面レンズの成形用金型であることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1つの項に記載のDLCコート金型。
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