JP7058781B1 - ピストンリング及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐熱性を有し且つ基材に対する優れた密着性を有するDLC膜を備えるピストンリングの製造方法を提供する。【解決手段】本開示に係るピストンリングの製造方法は以下の工程を含む。(A)密度1.70g/cm3以上の炭素材料で構成されたカソードにアーク電流を付与することによって炭素材料をイオン化させる工程。(B)水素原子が実質的に存在しない環境下、バイアス電圧を印加することによってピストンリング用の基材の表面にDLC膜を形成する工程。(A)工程を継続して実施した後、(A)工程を中断し、その後、(A)工程を再開することを繰り返すことによって、波長550nmの光を使用して測定される消衰係数が0.1~0.4であり且つナノインデンテーション硬さが16~26GPaであるDLC膜を形成する。【選択図】図1

Description

本開示は、ピストンリング及びその製造方法に関する。
自動車エンジンは燃費向上が求められ、例えば、摩擦損失を低減するため、低摩擦係数のDLC膜(diamond like carbon膜)を摺動面に被覆したピストンリングが一部のエンジンで適用されている。DLC膜は、炭素の結合として、ダイヤモンド結合(sp結合)とグラファイト結合(sp結合)とが混在したものである。DLC膜は、ダイヤモンドに類似した硬度、耐摩耗性及び化学的安定性を有するとともに、グラファイトに類似した固体潤滑性及び低摩擦係数を有することから、摺動部材の皮膜として好適である。
特許文献1はDLC膜及びDLC膜被膜物品に関する発明を開示している。この文献に記載の発明は、対象物に形成されるDLC膜の耐熱性を向上させるとともに、水素フリーで高硬度のDLC膜を提供すべくなされたものである。
国際公開2016/021671号
本発明者らは、上記特許文献1に記載のDLC膜をピストンリングの皮膜に適用可能であるか否かについて検討した。その結果、この文献に記載のDLC膜は耐熱性に優れる点は良好であるものの、厚さが薄すぎるとともに硬度が高すぎるために、ピストンリングの皮膜にそのまま適用することは困難であるとの結論に至った。特許文献1の[表7]には厚さが101~449nmの範囲のDLC膜を形成したことが記載されている。これに対し、ピストンリングの皮膜の厚さは5~20μm程度であることが好ましい。また、特許文献1に記載のDLC膜は「ta-Cの構造」を有する。この構造のDLC膜は特許文献1の段落[0020]に記載されているとおり、ナノインデンテーション硬さが40~100GPaであって高い硬度を有する反面、欠けやすく、基材に対する密着性が不十分であるという課題がある。
本開示は、優れた耐熱性を有し且つ基材に対する優れた密着性を有するDLC膜を備えるピストンリング及びその製造方法を提供する。
本開示に係るピストンリングの製造方法は以下の工程を含む。
(A)密度1.70g/cm以上の炭素材料で構成されたカソードにアーク電流を付与することによって炭素材料をイオン化させる工程。
(B)水素原子が実質的に存在しない環境下、バイアス電圧を印加することによってピストンリング用の基材の表面にDLC膜を形成する工程。
本開示に係る製造方法においては、(A)工程を継続して実施した後、(A)工程を中断し、その後、(A)工程を再開することを繰り返すことによって、波長550nmの光を使用して測定される消衰係数が0.1~0.4であり且つナノインデンテーション硬さが16~26GPaであるDLC膜を形成する。
上記製造方法によれば、カソードの材料として、密度1.70g/cm以上の炭素材料を使用するとともに、(A)工程を定期的に中断することによってカソードの温度を定期的に下げることにより、耐熱性に優れ且つ基材に対する優れた密着性を有するDLC膜を形成することができる。なお、「消衰係数」はDLC膜中の存在する微細な欠陥の量が反映される物性であり、この値が小さければ欠陥が少ないことを意味する。微細な欠陥が少ないDLC膜は耐熱性(高温での耐酸化性)に優れる。「ナノインデンテーション硬さ」はDLC膜の基材に対する密着性に影響を与える物性であり、この値が大きすぎると靭性が不十分であることに起因して亀裂が生じやすく、基材から剥離しやすくなる傾向にある。
上記製造方法において、DLC膜の成膜の進行に伴って、(A)工程におけるアーク電流を連続的又は段階的に小さくしてもよい。このようにしてDLC膜を成膜することで、DLC膜の表面近傍の欠陥をより少なくすることができ、耐熱性を更に高めることができる。
本開示に係るピストンリングは、基材と、基材の表面の少なくとも一部を覆うように設けられたDLC膜とを備え、このDLC膜は水素含有量が5原子%未満であるとともに、波長550nmの光を使用して測定される消衰係数が0.1~0.4であり且つナノインデンテーション硬さが16~26GPaである。このDLC膜は、優れた耐熱性を有し且つ基材に対する優れた密着性を有する。DLC膜の厚さは、例えば、3~20μmである。DLC膜のID/IG強度比は好ましくは0.4以上である。この値が0.4以上であると、DLC膜における過剰量のsp成分に起因する欠けを抑制できる傾向にある。ここでいう「ID/IG強度比」はアルゴンイオンレーザーを用いてラマン分光装置で測定されたラマンスペクトルの1260~1460cm-1の範囲に観測されるDバンドのピーク面積強度(ID)と1480~1680cm-1の範囲に観測されるGバンドのピーク面積強度(IG)の強度比を意味する。
本開示におけるDLC膜は耐熱性に優れるため、基材に対してDLC膜を形成した後、上限350℃の条件の熱処理(例えば、めっき処理)を実施することができる。例えば、本開示に係るピストンリングは、DLC膜で構成された外周面と、めっき層で構成された側面と、めっき層で構成された内周面とを備える態様であってもよい。これにより、ピストンリングの外周面以外の領域の耐摩耗性を安価に向上させることができる。
本開示によれば、優れた耐熱性を有し且つ基材に対する優れた密着性を有するDLC膜を備えるピストンリング及びその製造方法が提供される。
図1は本開示に係るピストンリングの一実施形態を模式的に示す断面図である。 図2は本開示に係るピストンリングの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<ピストンリング>
図1は本実施形態に係るピストンリングを模式的に示す断面図である。図1に示すピストンリング10は、内燃機関(例えば、自動車エンジン)用圧力リングである。圧力リングは、例えば、ピストンの側面に形成されたリング溝に装着される。圧力リングは、エンジンの熱負荷の高い環境に晒されるリングである。本実施形態に係るピストンリングは、圧力リングに限定されず、オイルリングにも適用できる。
ピストンリング10は環状であり、例えば、外径が40~300mmである。ここでいう「環状」とは、必ずしも閉じた円を意味するものではなく、ピストンリング10は合口部を有していてもよい。また、ピストンリング10は、平面視で真円状でもよいし、楕円状でもよい。ピストンリング10は図1に示す断面において略矩形であり、摺動面10Fは外側に膨らんだ丸みを帯びていてもよい。
ピストンリング10は、基材1と、基材1の外周面(摺動面10Fに対応する表面)に設けられたDLC膜5とを備える。基材1は、耐熱性を有する合金からなる。合金の具体例として、ばね鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼などが挙げられる。基材1は、表面に窒化層が形成されたものであってもよい。ピストンリング10は、基材1とDLC膜5の間に中間層(不図示)が形成された構成であってもよい。中間層は、例えば、Cr、Ti、Co、V、Mo、Si及びWからなる群から選択された一つ以上の元素を含む材質で構成されている。中間層の材質は上記元素の炭化物、窒化物又は炭窒化物であってもよい。中間層の厚さは、例えば、0.1~20μmである。
DLC膜5は摺動面10Fを構成している。DLC膜5は、水素含有量が5原子%未満であり、好ましくは2原子%未満であり、更に好ましくは1原子%未満であり、水素を実質的に含有していなくてもよい。DLC膜5の水素含有量が5原子%未満であれば、DLC膜5の表面炭素原子のダングリングボンドが水素で終端されないため、潤滑油中のOH基をもつ油性剤構成分子がDLC膜5の表面に吸着しやすく、これにより極めて低い摩擦係数を示すことが確認されている。DLC膜5の水素含有量は、ラザフォード後方散乱分光法(Rutherford Backscattering Spectrometry、RBS)、水素前方散乱分光法(Hydrogen Forward Scattering、HFS)によって測定することができる。
DLC膜5は、波長550nmの光を使用して測定される消衰係数が0.1~0.4である。この値が0.4以下のDLC膜は欠陥が少なく、優れた耐熱性を有する傾向にある。なお、この値が0.1未満のDLC膜は製造が難しく、密着性も悪くなる虞がある。この値は、好ましくは0.1~0.3であり、より好ましくは0.1~0.2である。DLC膜5は、ナノインデンテーション硬さが16~26GPaである。この値が16GPa以上であることでDLC膜5が優れた耐摩耗性を有する傾向にあり、他方、26GPa以下であることでDLC膜5が基材1や中間層に対する優れた密着性を有する傾向にある。この値は、好ましくは18~24GPaであり、より好ましくは20~23GPaである。ナノインデンテーション硬さが上記範囲であることで、DLC膜5を比較的厚く形成することができるとともに応力による欠けを抑制できる。
DLC膜5の厚さは、例えば、3~20μmの範囲である。DLC膜5の厚さが3μm以上であれば摩滅しにくく、他方、20μm以下であれば膜中の内部応力が過度に大きくなることを抑制でき、欠けや剥離の発生を抑制しやすい。ピストンリング10の生産性や耐久性の観点から、DLC膜5の厚さは、好ましくは5~15μmであり、より好ましくは5~12μmである。
DLC膜5のsp比率は、例えば、0.5~0.8である。DLC膜5のsp比率が0.5以上であることで、膜の柔軟性が向上して密着性が良くなる傾向にあり、他方、0.8を超えると膜の強度が低下し耐熱性が低下する傾向にある。この値は、好ましくは0.6~0.7である。なお、ここでいう「sp比率」はDLC膜におけるsp結合及びsp結合に対するsp結合の比(sp/(sp+sp))を示すものであり、電子エネルギー損失分光法(Electron Energy Loss Spectroscopy、EELS)によって得られるスペクトルに基づいて算出される値を意味する。
DLC膜5のID/IG強度比は好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.6~1.3である。この値が0.4以上であると、DLC膜5における過剰量のsp成分に起因する欠けを抑制できる傾向にある。
DLC膜5は、耐熱性の観点から、その表面に至る線状の欠陥(密度が局所的に低い部分)が少ないことが好ましい。このような欠陥の少ないDLC膜5は、例えば、以下の手法を一つ又は二つ以上を組み合わせて採用することで形成することができる。
・フィルタードカソード真空アーク(FCVA)方式の装置を使用し、上記欠陥の核となるドロップレットを低減する。
・FCVA方式のアーク電流を定期的に停止することによって定期的にカソードの温度を低下させる。
・DLC膜5の成膜の進行に伴って、アーク電流を連続的又は段階的に小さくする。
・密度が所定値以上の炭素材料をカソードに使用する。
<ピストンリングの製造方法>
FCVA方式の装置を使用してピストンリングの製造方法を説明する。本実施形態に係る製造方法は以下の工程を含む。
(A)密度1.70g/cm以上の炭素材料で構成されたカソードにアーク電流を付与することによって炭素材料をイオン化させる工程。
(B)水素原子が実質的に存在しない環境下、バイアス電圧を印加することによって基材1の表面にDLC膜が形成されていく工程。
20~60分にわたって(A)工程を継続して実施した後、1~10分にわたって(A)工程を中断し、その後、(A)工程を再開することを繰り返すことによって、波長550nmの光を使用して測定される消衰係数が0.1~0.4であり且つナノインデンテーション硬さが16~26GPaであるDLC膜5を形成する。DLC膜5の厚さに応じて、(A)工程の実施と中断を繰り返す回数を決定すればよい。
上記製造方法によれば、カソードの材料として、密度1.70g/cm以上の炭素材料を使用するとともに、定期的に(A)工程を中断することによってカソードの温度を定期的に下げることによって耐熱性に優れ且つ基材1に対する優れた密着性を有するDLC膜5を形成することができる。
[(A)工程]
この工程では、炭素材料で構成されたカソードにアーク電流を付与することによって炭素材料をイオン化させる。炭素材料の密度は1.70g/cm以上であり、好ましくは1.76g/cm以上であり、より好ましくは1.80~1.95g/cmである。この値が1.76g/cm以上であることで、DLC膜5における欠陥の数を十分に少なくすることができ、優れた耐熱性を有するDLC膜5を形成できる。この値が、1.76g/cm以上、特に1.80g/cm以上であることで放電時にカソードから放出されるドロップレットが少なくなり、DLC膜中へのドロップレット取り込み、すなわちDLC膜の欠陥が少なくなる傾向にある。
上述のとおり、(A)工程を20~60分にわたって継続して実施した後、1~10分にわたって(A)工程を中断し、その後、(A)工程を再開することを繰り返すことによって、所定の厚さのDLC膜5が形成される。このとき、DLC膜5の成膜の進行に伴って、上述のとおり、(A)工程におけるアーク電流を連続的又は段階的に小さくしてもよい。
(A)工程においてアーク電流を連続的又は段階的に小さくする傾斜をさせる場合、(A)工程を開始及び再開する際のアーク電流値A1は、好ましくは100~200Aである。(A)工程を中断及び終了する際のアーク電流値A2は、アーク電流値A1に対して20~100Aの範囲で小さくすることが好ましい。この範囲でアーク電流値A1をアーク電流値A2まで小さくすることで、DLC膜5における欠陥をより少なくすることができ、より一層優れた耐熱性を有するDLC膜5を得ることができる。
[(B)工程]
この工程では、水素原子が実質的に存在しない環境下、バイアス電圧を印加することによって基材1の表面にDLC膜が形成されていく。(B)工程におけるバイアス電圧は、例えば、1000~2500Vでパルス状に印加する。(B)工程におけるバイアス電圧を1800V以上でパルス状に印加することで適度な硬さのDLC膜5を安定的に形成できる傾向にある。
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、FCVA方式の装置を使用してDLC膜5を形成する場合を例示したが、VA(真空アーク)方式の装置を使用してDLC膜5を形成してもよい。
上記実施形態においては、(B)工程を経てピストンリング10を得る場合を例示したが、(B)工程後、ピストンリング10に対して250~350℃の温度が加わる処理(例えば、Niめっき処理、Crめっき処理などのめっき処理)を実施してもよい。DLC膜5は耐熱性に優れるため、このような処理が施されてもDLC膜5の性能が低下することを抑制できる。例えば、(B)工程を経て得られたピストンリング10の表面(DLC膜5の表面を除く)に対してニッケルめっきを施してもよい。図2に示すピストンリング20は、DLC膜5で構成された摺動面10F(外周面)と、ニッケルめっき層6でそれぞれ構成された側面11,12と、ニッケルめっき層6で構成された内周面13とを備える。ニッケルめっき層6を設けることで、ピストンリング20の外周面以外の領域の耐摩耗性を安価に向上させることができる。
以下、本開示の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
FCVA(フィルタードカソード真空アーク)方式の装置を使用し、以下のようにしてピストンリングを製造した。まず、予め洗浄した基材(SUP10相当材)を治具にセットした。蒸発源にグラファイトカソードを備えたアークイオンプレーティング装置を準備した。この装置の自公転テーブルの自転軸に上記治具を取り付けた後、装置のチャンバ内を1×10-3Pa以下の真空雰囲気とした。チャンバ内にArガスを導入するとともに、基材にバイアス電圧を加えてグロー放電により基材表面をクリーニングした。その後、グラファイトカソードの蒸発源を放電させて炭素イオンを発生させた。放電時には炭素イオンの他にドロップレットと呼ばれる中性粒子が放出されるため、これを除去するための磁気フィルターを介して炭素イオンのみを基材まで輸送し、基材の表面上にDLC膜を形成した。なお、FCVA方式、すなわち前述の磁気フィルターを備える装置であっても、カソードから放出される一部のドロップレット粒子は、磁気フィルター内を反射して基材に到達するため、使用するカソードの密度が1.70g/cm以上で且つ、定期的に(A)工程を中断することによってカソードから放出するドロップレット量を抑え、欠陥の少ないDLC皮膜を形成し、実施例に係るピストンリングを得た。表1に本実施例の成膜条件を示す。
(実施例2,3及び比較例1~4)
表1又は表2に示す成膜条件でDLC膜を形成したことの他は実施例1と同様にして、実施例2,3及び比較例1~4に係るピストンリングを得た。
(比較例5)
VA(真空アーク)方式の装置を使用し、以下のようにしてピストンリングを製造した。まず、予め洗浄した基材(SUP10相当材)を治具にセットした。蒸発源にグラファイトカソードを備えたアークイオンプレーティング装置を準備した。この装置の自公転テーブルの自転軸に上記治具を取り付けた後、装置のチャンバ内を1×10-3Pa以下の真空雰囲気とした。チャンバ内にArガスを導入するとともに、基材にバイアス電圧を加えてグロー放電により基材表面をクリーニングした。その後、グラファイトカソードの蒸発源を放電させて基材の表面上にDLC膜を形成し、比較例5に係るピストンリングを得た。表2に本比較例の成膜条件を示す。
[測定]
実施例及び比較例に係るピストンリングの以下の特性を測定した。結果を表1,2に示す。
(1)DLC膜の厚さ
ピストンリングを切断し、断面観察によってDLC膜の厚さを測定した。
(2)DLC膜の硬度(ナノインデンテーション硬さ)
試験装置(エリオニクス製、型番:ENT-1100a)を使用し、50mNの試験荷重にてナノインデンテーション法によってDLC膜の硬度を測定した。
(3)DLC膜のID/IG強度比
ラマン分光光度計(レニショー製、型番:inViaReflex、レーザー:532nm)を使用し、DLC膜のID/IG強度比を測定した。
(4)DLC膜の消衰係数
測定装置(HORIBA製、型番:AutoSE、入射角度69.95度、測定時間15秒、視野面積250μm×250μm)にて、光の波長:550nmにおけるDLC膜の消衰係数を測定した。
[評価]
実施例及び比較例に係るピストンリングの以下の項目について評価した。
(1)DLC膜の耐熱性(硬度低下率)
上記のナノインデンテーション硬さ(初期硬さ)と、熱処理後のナノインデンテーション硬さ(熱処理後硬さ)をそれぞれ測定した。熱処理条件は以下のとおりとした。
・加熱炉:大気炉
・温度:300℃
・加熱時間:100時間
下記式から硬度低下率を算出した。この値が5%以下である場合、DLC膜は優れた耐熱性を有すると判断した。
(硬度低下率)=[(初期硬さ)-(熱処理後硬さ)]/(初期硬さ)×100
(2)基材に対するDLC膜の密着性
密着性評価試験としてロックウエルCスケール圧子を使用し、荷重150kgfの条件にて、DLC皮膜表面に圧痕を形成し、圧痕周辺部の剥離の状況により、密着性を評価した。
A:剥離なし
B:軽微な剥離あり
C:大規模な剥離あり
Figure 0007058781000002
Figure 0007058781000003
本開示によれば、優れた耐熱性を有し且つ基材に対する優れた密着性を有するDLC膜を備えるピストンリングの製造方法が提供される。
1…基材、5…DLC膜、6…ニッケルめっき層、10,20…ピストンリング、10F…摺動面、11,12…側面、13…内周面。

Claims (6)

  1. (A)密度1.70g/cm以上の炭素材料で構成されたカソードにアーク電流を付与することによって炭素材料をイオン化させる工程と、
    (B)水素原子が実質的に存在しない環境下、バイアス電圧を印加することによってピストンリング用の基材の表面にDLC膜を形成する工程と、
    を含み、
    (A)工程を継続して実施した後、(A)工程を中断し、その後、(A)工程を再開することを繰り返すことによって、波長550nmの光を使用して測定される消衰係数が0.1~0.4であり且つナノインデンテーション硬さが16~26GPaであるDLC膜を形成する、ピストンリングの製造方法。
  2. 前記DLC膜の成膜の進行に伴って、(A)工程における前記アーク電流を連続的又は段階的に小さくする、請求項1に記載のピストンリングの製造方法。
  3. 基材と、
    前記基材の表面の少なくとも一部を覆うように設けられたDLC膜と、
    を備え、
    前記DLC膜は、水素含有量が5原子%未満であるとともに、波長550nmの光を使用して測定される消衰係数が0.1~0.4であり且つナノインデンテーション硬さが16~26GPaである、ピストンリング。
  4. 前記DLC膜の厚さが3~20μmである、請求項3に記載のピストンリング。
  5. 前記DLC膜のID/IG強度比が0.4以上である、請求項3又は4に記載のピストンリング。
  6. 前記DLC膜で構成された外周面と、
    めっき層で構成された側面と、
    めっき層で構成された内周面と、
    を備える、請求項3~5のいずれか一項に記載のピストンリング。

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