JP7349082B2 - 水素含有カーボン膜 - Google Patents
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工具鋼から選ばれた1種類からなる基材を、耐摩耗性および耐溶着性を高めるために、水素含有量が5原子%以下で実質的に水素を含まないDLC膜で被覆した工具が記載されている。また、同様な工具であって基材がWC基超硬合金である工具が、特開2003-62706号公報(特許文献2)に記載されている。被覆に水素フリーのDLC膜を用いる理由として、特許文献1の段落0011には、「通常、硬質炭素中の水素原子は大気中において約350℃の温度以上で膜中から脱離することが知られており、水素が脱離した後に硬質炭素被膜はグラファイトに変態し、硬度が極端に低下する。このような被膜は過酷な切削環境下で使用することが困難である・・」と記載されている。同様の記載は、特許文献2の段落0011にも存在する。したがって、特許文献1及び特許文献2には、切削工具等を被覆する水素を含有するDLC膜であって、水素の脱離温度が高いために、過酷な切削環境下等でも使用できるDLC膜については一切記載されず、示唆すらされていない。
従って、本発明の課題は、加熱時の水素ガス脱離温度を特定することにより、過酷な環境下で使用することができる切削工具や金型や光学部品等の物品の保護膜であって、低摩擦性、低摩耗性、低攻撃性といった機械的特性を有する、水素含有DLC膜を提供することである。本発明の更なる課題は、切削工具等の物品の保護膜であって、ダイヤモンドの基材、又は、多結晶ダイヤモンドからなるダイヤモンド膜で被覆された基材、の上に形成された水素含有DLC膜を提供することである。本発明の更なる課題は、加熱時の水素ガス脱離温度を特定することにより、自立膜として用いることのできる水素含有DLC膜を提供することである。
カーボン膜である。
素を含む非晶質のカーボン膜(DLC膜)である。
従来、高耐熱性が求められる条件下で保護膜や離型膜としての用途に利用できるDLCは、水素フリーのta-C又はa-Cに限られていた。本発明者は、成膜装置や成膜条件の工夫により本形態の水素含有カーボン膜を製造し、上記の高耐熱用途に利用可能とした。
ーザー光照射においては、照射強度80kW/cm2で損傷を受けず、波長785nmの近赤外光のCWレーザー光照射においては、照射強度1.6×103kW/cm2で損傷を受けず、波長532nmの可視光のCWレーザー光照射においては、照射強度765kW/cm2では損傷を受けず、1.4×103kW/cm2で損傷を受ける、ことを確かめるステップを有することを特徴とする判別方法を提供できる。
一般に、基材の表面に形成されたDLC膜のレーザー光損傷特性は、基材の反射率の影響を受ける。基材の反射率が高い場合には、DLC膜に入射したレーザー光は、DLC膜と基材の境界面で反射して再び膜内を進行するので、DLC膜は入射光と前記反射光を重ね合わせた光により損傷を受ける可能性があるからである。例えば、ダイヤモンドの表面に形成されたDLC膜が、ある強度と波長のレーザー光により損傷を受けなくても、同じ条件でWC基超硬合金の表面に形成されたDLC膜が、同じ強度と波長のレーザー光により損傷を受ける、ということが起こり得る。基材について「屈折率0.1以上、消衰係数1.0以上」との限定を行ったのは、基材の反射特性を明確にするためである。
一般に、DLC膜のラマン分光スペクトルの形状は、sp3構成比や水素含有量により異なり、更に、入射するレーザー光の波長によっても異なる。本発明者は、可視光レーザー光及び近赤外光レーザー光を入射した際のラマン分光スペクトルの形状を利用して、本発明のカーボン膜を判別する方法を見出した。判別の対象膜である水素含有非晶質カーボン膜に対して、上記可視光レーザー光でラマン分光を行った際に上記ダイヤモンドのスペクトルが検出されないことから、対象膜はta-Cではないとわかる。更に、上記近赤外レーザー光でラマン分光を行った際に上記ダイヤモンドのスペクトルが検出されることから、対象膜はa-Cではないとわかる。したがって、対象膜は、実質的に水素を含有するDLC膜(ta-C:H又はa-C:H)である。ここで更に、可視光レーザー光でラマン分光を行った際の強度比ID/IGとGピーク位置により、対象膜の判別を行う。水素含有DLC膜の上記強度比ID/IGは、水素含有量が増えるほど大きくなり、又、sp3構成比が減るほど大きくなる傾向がある。また、水素含有量が5~20%の範囲内にある水素含有DLC膜の上記Gピーク位置は、水素含有量にはあまりよらず、sp3構成比が増えるほど大きくなる傾向がある。したがって、対象膜の上記強度比ID/IGが0.5以下
であり、かつ上記Gピーク位置が1545cm-1以上であるならば、対象膜の水素含有量がおよそ10%以下であり、且つsp3構成比がおよそ40at.%以上であることがわかる。加えて、対象膜の上記強度比ID/IGが0.2以上であり、かつ上記Gピーク位置が1570cm-1以下であるならば、対象膜の水素含有量がおよそ5%以上であり、且つsp3構成比がおよそ60at.%未満であることがわかる。ゆえに、対象膜が本発明に係るカーボン膜であると判別できる。
した後に、基材を水に浸漬させると、犠牲層が溶解して、目的膜は基材から分離される。この目的膜を多孔基板ですくい上げることで自立膜が得られる。ところで、DLCの自立膜は、高い内部応力をもつから、基材から分離された自立膜状態では、DLC膜自体がその内部応力を支持できずに、膜のしわや破れが生じやすい。この膜の自己崩壊がDLC自立膜の最大の懸念事項となっている。本発明に係るカーボン膜は、実質的に水素を含有し、sp3構成比もおよそ40~60%の範囲内にあるから、硬質の水素フリーDLC膜(ta-C)に比べて内部応力がやや低く、膜の自己崩壊を起こしにくい。したがって、本発明に係るカーボン膜は、基材から分離された自立膜としての用途、特に耐熱性が要求される用途に好適に利用することができる。
(真空アーク蒸着装置) 試料の作製、つまりカーボン膜の成膜には、黒鉛陰極を用いたT字型フィルタードアーク蒸着(T-FAD)装置を用いた。T-FADは、真空アーク蒸着法の一種である。真空中のアーク放電においては、陰極材料の表面に1個もしくは数個の陰極点が形成され、陰極材料が激しく蒸発する。陰極点は高温となるため、多量の熱電子が同時に放出される。陰極点からの蒸発物質はこの熱電子によって、蒸発直後にイオン化される。このイオンは電位差によって加速され、陽極(通常は成膜チャンバ本体)の方向へと向かう。
膜のsp3構成比が低いものから順にC2H4、C2H2、H2である。これは、ガスとの衝突によりC+イオンのエネルギーが減少するからである。なお、導入ガスなしの場合、水素フリーDLC膜を成膜できるが、チャンバ壁面に水分等が付着していると水素含有DLCになりかねないので注意が必要である。本発明に係るカーボン膜は、明示的にガスを導入して成膜される、実質的に水素を含有する水素含有DLC膜であり、水素の含有率は概ね5at.%以上である。
(動機) 耐熱性の高いカーボン膜の組成や作製方法を知るために、昇温脱離ガス分析(TDS分析, Thermal Desorption Spectroscopy)を行った。
(試料作製) TDS分析の対象とする試料(#1~#10)は、上記T-FAD装置により、基材であるシリコンウェハ(n型Si基板)の<100>面に膜厚400nmを目標として成膜したカーボン膜である。成膜条件である雰囲気(ガス種、ガス流量、プロセス圧力)と基板バイアスは、図1の表図に示した通りである。また、比較のため、成膜し
ないシリコンウェハそのもの(試料#0とする)についてもTDS分析を行った。試料#1~#3は水素フリーカーボン膜であり、試料#4~#10は水素含有カーボン膜である。試料#5と#6が本発明に係るカーボン膜の実施試料であり、他は比較試料である。
(質量分析条件) QMSのイオン化電圧を50eVに、質量サンプリング速度を200ms/amuに、測定間隔を4sに、測定質量数範囲を1~60amuに、測定モードをトレンドモードに、それぞれ設定した。ここで「amu」は統一原子質量単位を意味するものとする。
図(2B)は、水素フリーカーボン膜を成膜した比較試料#2についての同様な質量分析の結果を示すグラフ図である。比較試料#0と同様に、いずれの分子量においても特定の温度にガス放出のピークは見られない。
図(2C)は、水素含有カーボン膜を成膜した実施試料#5についての同様なグラフ図である。分子量2(水素H2)について、ガス放出のピークが検出された。検出ピークの温度は950℃、検出開始温度は930℃、検出終了温度は980℃である。他の分子量(炭化水素CnHm)については特定の温度にガス放出のピークは見られない。
図(2D)は、水素含有カーボン膜を成膜した比較試料#8についての同様なグラフ図である。分子量2(水素H2)について、ガス放出のピークが検出された。検出ピークの温度は720℃、検出開始温度は670℃、検出終了温度は800℃である。他の分子量(炭化水素CnHm)については特定の温度にガス放出のピークは見られない。
細構造(NEXAFS; Near Edge X-ray Absorption Fine Structure)法により装置(ニュースバルBL09A,国立研究開発法人理化学研究所)を用いて計測した。各波長における屈折率と消衰係数は、分光反射率測定器(USPM-RU-2, オリンパス)で計測した反射率を、光学薄膜解析ソフトFilmStarでフィッティングすることにより算出した。強度比ID/IGとGピーク位置(cm-1)は、可視光顕微ラマン分光計測により求めたが、その方法と使用装置は、ダイヤモンド基板上に成膜したカーボン膜について後述するものと同様である。
(動機) ドリルをどのようなカーボン膜で被覆すればCFRPのような難削材に対して高品位な加工面を得ることができるのかを知るために、穿孔切削試験を行った。
(試料ドリルの作製) まず、切削試験に用いるドリル(以下、試料ドリルと呼ぶ)について説明する。カーボン膜で被覆してなる試料ドリル(#1~#10;簡単のためTDS分析における試料と同一の記号を用いる)は、基材とする市販のドリルD-STAD-1915(CFRP用ダイヤコート超硬トリプルアングルドリル、オーエスジー(株)、ドリル径4.864mm,溝長39mm,全長89mm,シャンク径4.864mm,先端角120°,シンニング有,先端部長さ8.2mm,ダイヤモンド膜厚16μm)のボディを含む部分の表面に、上記のT-FAD装置により膜厚500nmを目標としてカーボン膜を成膜してなるドリルである。成膜条件は、図1の表図に示した条件と同一である。また、比較のため、カーボン膜を成膜しない市販のドリルD-STAD-1915そのもの(試料ドリル#0とする)を用いた切削試験も行った。
(被削材)被削材として、CFRP(平織のクロス材,炭素繊維:PAN系,樹脂:熱硬化性樹脂,厚さ5mm,層数13)を用いた。
ここで、形状パラメータの定義は次の通りである。図(4B)は撮影された画像を模式的に示している。白い円形の領域が穿孔であり、その周囲の灰色の領域が剥離箇所である。白い円形の領域に突出している灰色の部分がバリである。図で、Dmaxは全剥離箇所が含まれる最小の同心円の直径を、Dnomは穿孔の名目上の直径を、それぞれ表す。また、Amax=π(Dmax/2)2は全剥離箇所が含まれる最小の同心円の面積を、Anom=π(Dnom/2)2は穿孔の名目上の面積を、それぞれ表す。加えて、ADelは剥離箇所の面積であり、穴に伸びた未切断部分(バリ)の面積を含めるものとする。
更に、剥離率の3つの指標である剥離範囲率FD、剥離面積率DF、合成剥離率Fdaの定義は次の通りである。
FD = (Dmax-Dnom)/Dnom ,
DF = ADel/Anom ,
Fda = FD + (FD 2-FD)・ADel/(Amax-Anom) 。
部品のかどのエッジにおける、幾何学的形状の外側の残留物)が全く見られず、極めて高品位な加工面が得られている。一方、比較例については、カーボン膜を成膜していない試料ドリル#0と、水素フリーカーボン膜を成膜した試料ドリル#2と、水素ガス脱離温度の低い試料ドリル#8と、のいずれについてもバリが生じており、特にZ軸送りが高速になるほど、バリが生じやすいことが分かる。
2次元的な指標である剥離面積率に注目すれば、試料ドリル#5、#6、#8が優れており、他の試料ドリルの半分以下の剥離面積率となっている。1次元的な指標である剥離範囲率に注目すれば、試料ドリル#6、#5が優れており、試料ドリル#8は最も優れた試料ドリル#6の5割も大きい剥離範囲率となっている。したがって、両者を総合した観点からは、試料ドリル#6と#5による加工面の品位が優れている。合成剥離率を見ても、これら2つの試料ドリルの合成剥離率が他より小さい。
本発明に係るカーボン膜を成膜した試料ドリル(#5、#6)が、カーボン膜を成膜していないダイアコートドリルそのものである試料ドリル(#0)より、加工面の品位において優れている点も興味深い。本発明に係るカーボン膜を成膜することにより、ダイヤモンド膜の表面の平坦性を改善し、被切削材に対する攻撃性を緩和できること等が、その原因として考えられる。
(動機) 本発明に係るカーボン膜を比較例に係るカーボン膜から区別する光学的性質を見出すために、レーザー耐性試験を行った。
(試料作製) レーザー耐性試験の対象とする試料(#1(WC)~#10(WC))は、上記T-FAD装置により、基材であるWC基超硬基板の表面に膜厚500nmを目標として成膜したカーボン膜である。成膜条件である雰囲気(ガス種、ガス流量、プロセス圧力)と基板バイアスは、図1の表図に示した通りである。
度との関係を以下の表2に示す。ここでレーザー強度とは、レーザーパワーを、測定点における円形のスポットの面積で割った値をいう。なお、各波長のレーザー光のスポット径(半径)は、紫外光が2μm、可視光と近赤外光が1μmである。また、各波長のレーザー光の照射時間は、紫外光が露光時間100s/回,照射回数4回であり、可視光が露光時間60s/回,照射回数4回であり、近赤外光が露光時間60s/回,照射回数6回である。
試料#2(WC)は、いずれの波長のレーザー光についても損傷痕は認められない。よって、損傷がないものと評価する。なお、図示していないが、ラマンスペクトルにも違いが見られない。
試料#5(WC)は、紫外光と近赤外光では損傷痕が認められないが、可視光レーザー光については、レーザー強度1.4×103kW/cm2の場合にのみ損傷痕が認められる(ただし、ラマンスペクトルの違いは明瞭ではない)。よって、可視光レーザー光についての損傷閾値は、1.4×103kW/cm2未満で、かつ、765kW/cm2より大きい。
試料#7(WC)は、紫外光と近赤外光では損傷痕が認められないが、可視光レーザー光については、レーザー強度765kW/cm2以上の場合に損傷痕が認められる(ラマンスペクトルにも違いが認められる)。よって、可視光レーザー光についての損傷閾値は、765kW/cm2未満で、かつ、380kW/cm2より大きい。
反射若しくは透過したレーザー光が、入射レーザー光と重ね合されて定常波電界が生じる。薄膜デザインソフト(EF calc)を用いて1次元モデルにより計算した、そのような定常波電界の一例を図13に示す。図(13A)は、試料#10(WC)に上記紫外光レーザー光を入射した場合に生じる電界Eの2乗の空間分布を示す。電界は、入射レーザー光の電界の振幅E0で規格化している。同じく可視光レーザー光を入射した場合が図(13B)であり、同じく近赤外光レーザー光を入射した場合が図(13C)である。上記の意味で規格化した、カーボン膜内の電界の2乗の値の最大値は、紫外で1.3、可視で0.6、近赤外で0.6であり、紫外でもっとも高い。表3に示したように、レーザー強度が10kW/cm2の場合、試料#10(WC)のカーボン膜には、紫外の照射時のみ損傷痕が見られ、可視と近赤外の照射時は損傷痕が見られない。これは、カーボン膜の熱的破壊が電界の大きさと関係するからであると考えられる。また、損傷しやすいカーボン膜と空気との界面付近で電界の2乗が大きな値をとる場合にも、損傷が生じやすいと考えられる。
(動機) 本発明に係るカーボン膜を比較例に係るカーボン膜から区別する、更なる光学的性質を見出すために、ラマン分光分析を行った。
(試料作製)ラマン分光分析の対象とする試料(#1(Dia)~#10(Dia))は、基材であるダイヤモンド基板(ダイヤモンド厚10μm)の<100>面に、上記T-FAD装置により、膜厚500nmを目標としてカーボン膜を成膜したものである。成膜条件である雰囲気(ガス種、ガス流量、プロセス圧力)と基板バイアスは、図1の表図に示した通りである。また、カーボン膜を成膜しないダイヤモンド基板そのものを、試料#0(Dia)で表す。
試料#2(Dia)と#3(Dia)はいずれも水素フリーカーボン膜である。試料#2(Dia)にはNDピークが認められるが、試料#3(Dia)にはNDピークが認められない。これは、前者がsp3結合に富んだta-Cであるのに対して、後者がsp3結合に乏しいa-Cであるからである。水素含有カーボン膜である試料#5(Dia)と#8(Dia)にも、NDピークは認められない。
。白丸はダイヤモンド基板に成膜した試料、黒丸はSi基板に成膜した試料を表す。図(17A)から、水素含有カーボン膜については水素含有量が増えると強度比ID/IGが増えることがわかる。また、ダイヤモンド基板に成膜したカーボン膜のほうが、Si基板に成膜したカーボン膜より、強度比ID/IGが大きい。図(17B)から、水素含有カーボン膜については、水素含有量が増えるとGピーク位置が一旦減って、水素含有量が10~15at.%を超えたあたりから再び増えることがわかる。また、水素フリーカーボン膜のGピーク位置は、sp3構成比が大きいほど大きくなることがわかる。
(動機) 本発明に係るカーボン膜の機械的性質や光学的性質を更に明らかにするため、種々の測定や実験データの整理を行った。
(光学定数によるカーボン膜の分類) 図10は本発明者が提案する、屈折率と消衰係数によるカーボン膜の大まかな光学分類を示す。
たカーボン膜のデータを示す。強度比ID/IG及びGピーク位置は、sp3構成比の指標である。
ガス流量が多いほど強度比ID/IGが大きい傾向がある。ガス種については、強度比ID/IGの大きいものから順に、C2H4,C2H2,H2である。これは、C+イオンがガスとの衝突によりエネルギーを失うほど膜のsp3構成比が減るからである。また、ガス流量が多いほどGピーク位置が小さくなる傾向がある。ガス種については、Gピーク位置の小さいものから順に、C2H4,C2H2,H2である。これも、C+イオンがガスとの衝突によりエネルギーを失うほど膜のsp3構成比が減るからである。
負のバイアス電圧の絶対値が大きいほど強度比ID/IGが大きい傾向がある。ガス種については、強度比ID/IGの大きいものから順に、H2,C2H2,C2H4,ガスなしである。これは、ガスなしの場合、バイアス電圧による加速によってC+イオンがエネルギー過剰となってsp3結合を形成しにくくなること、及び、C+イオンがガスとの衝突によりエネルギーを失うほど膜のsp3構成比が増えるからである。また、負のバイアス電圧の絶対値が大きいほどGピーク位置が小さくなる傾向がある。ガス種については、Gピーク位置の小さいものから順に、C2H4,C2H2,H2,ガスなしである。これも、上記と同様、sp3構成比の違いが反映している。
11 熱電対 12 試料台中心
13 石英試料台 14 石英窓
15 石英円盤 16 ゴールド楕円ミラー
17 赤外線ランプ 18 ピラニゲージ
19 電離真空計 MV,RV,LV バルブ
TMP,RP ポンプ QMS マスフィルタ型ガス分析計
GLC グラファイトライクカーボン
PLC ポリマーライクカーボン
GraphiteO グラファイト(α黒鉛)
Graphiteex グラファイト(β黒鉛)
Claims (12)
- 基材の表面の少なくとも一部を保護し、
炭素を主成分とし、5at.%以上かつ10at.%以下の水素を含有し、sp2混成軌道成分を有する炭素とsp3混成軌道成分を有する炭素とを併せもち、
膜密度が2.6g/cm3以上3.1g/cm3未満であり、
真空中で加熱したときに、含有される水素の脱離が800℃以上で生じることを特徴とするカーボン膜。 - 真空中で加熱したときに、炭化水素の脱離が1000℃以下で生じない請求項1に記載のカーボン膜。
- 前記基材がダイヤモンドであるか、又は、前記基材はその表面にダイヤモンド膜が形成された基材であり、当該基材の表面の少なくとも一部を保護する請求項1又は2に記載のカーボン膜。
- 波長546nmの光に対する屈折率が2.4以上2.7以下であり、消衰係数が0.1以上0.2以下である請求項1~3のいずれかに記載のカーボン膜。
- sp2混成軌道成分を有する炭素とsp3混成軌道成分を有する炭素の構成比sp3/(sp3+sp2)が40%以上60%未満である請求項1~4のいずれかに記載のカーボン膜。
- 屈折率0.1以上、消衰係数1.0以上の基材の表面に形成された水素含有非晶質カーボン膜が、請求項1に記載のカーボン膜であるか否かを判別する判別方法であり、該水素含有非晶質カーボン膜が、
波長324nmの紫外光のCW(連続波)レーザー光照射においては、照射強度80kW/cm2で損傷を受けず、
波長785nmの近赤外光のCWレーザー光照射においては、照射強度1.6×103kW/cm2で損傷を受けず、
波長532nmの可視光のCWレーザー光照射においては、照射強度765kW/cm2では損傷を受けず、1.4×103kW/cm2で損傷を受ける、
ことを確かめるステップを有することを特徴とする判別方法。 - ダイヤモンドの表面に形成された水素含有非晶質カーボン膜が、請求項1に記載のカーボン膜であるか否かを判別する判別方法であり、
該水素含有非晶質カーボン膜に対し、
照射強度3.8×102kW/cm2の可視光レーザー光でラマン分光を行った際、ラマンシフトが1329~1338cm-1のダイヤモンドのスペクトルが検出されず、
照射強度8.9×102kW/cm2の近赤外光レーザー光でラマン分光を行った際、ラマンシフトが1329~1338cm-1のダイヤモンドのスペクトルが検出され、
上記可視光レーザー光でラマン分光を行った際、DLCスペクトルにおいて、DピークとGピークの強度比ID/IGが0.2以上0.5以下であり、かつ、Gピーク位置が1545cm-1以上1570cm-1以下である、
ことを確かめるステップを有することを特徴とする判別方法。 - 窒素、酸素、ホウ素、アルゴン、ケイ素、リン、硫黄、アンチモン、セレン、テルル、フッ素、塩素、アスタチン、遷移金属の各元素、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモン、鉛、ビスマスからなる群から選ばれた1つ以上の元素を含有する請求項1~5のいずれかに記載のカーボン膜。
- 前記基材が、工具、金型、刃物、摺動部材、又は装飾品である請求項1~5、8のいずれかに記載のカーボン膜。
- 前記基材が光学部品である請求項1~5、8のいずれかに記載のカーボン膜。
- 請求項9又は10に記載のカーボン膜により表面の少なくとも一部が保護されていることを特徴とする物品。
- 基材から分離された自立膜である請求項1又は2に記載のカーボン膜。
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