JP2020200803A - ピストンリング - Google Patents
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Abstract
Description
はヤング率が350GPa以下であることが好ましいとされ、このようなヤング率により、耐摩耗性及び耐剥離性に優れることを言及している。
自動車は走行に伴い、そのエンジンの内部にデポジットと呼ばれる堆積物が生成する。デポジットは、通常、燃料やエンジン潤滑油の不完全燃焼生成物等の堆積物である。近年の省燃費性向上のために、ガソリンエンジンにおいても、排気ガスを燃焼室内に再循環するEGR(Exhaust Gas Recirculation system)の導入や、直噴化により、エンジン潤滑油中に溶け込むデポジットの量が増加する傾向にある。
また、燃焼ガス中には、未燃の燃料に由来する炭化水素の他、酸化物や炭化物などが共存し、これらの物質からもデポジットが生成され、エンジン潤滑油中に滞留することになる。
本発明は、エンジン潤滑油下で使用され、外周摺動面にDLC被膜を有するピストンリングであって、前記DLC被膜は、透過型電子顕微鏡(TEM)に電子エネルギー損失分光法(EELS)を組み合わせたTEM−EELSで測定されるsp2成分比が0.5以上0.85以下であり、ナノインデンテーション法により測定される被膜の硬さが12GPa以上26GPa以下であり、且つヤング率が250GPa以下である、ピストンリング、である。
mにおいて2.3以上2.6以下であることが好ましく、被膜の硬さが20GPa以下であることが好ましく、Ti、Cr又はSiを含む下地層を備えることが好ましく、膜厚が1μm以上であることが好ましい。
本実施形態に係るピストンリング10は、トップリング、セカンドリング、オイルリングの何れのピストンリングとして用いてもよい。なお、オイルリングに適用する場合は、オイルリング本体とコイルエキスパンダからなる2ピース構成オイルリングのオイルリング本体、及び2本のセグメント(サイドレールともいう)とエキスパンダ・スペーサからなる3ピース構成オイルリングのセグメント、のいずれにも適用することができる。
なお、本実施形態に係るピストンリング10は、アルミニウム合金製ピストンに装着され、鋳鉄製シリンダボアに対するピストンリングとして好ましく用いられる。
面にCr、Ti、またはSiを含む下地層13を備え、その上にDLC被膜12を有する。下地層13を備えることで、DLC被膜12とピストンリング基材11との密着性を向上させることができる。
下地層13の膜厚は0.2μm以上1.0μm以下であることが好ましい。このような膜厚とすることで、DLC被膜12とピストンリング基材11との密着性をより向上させることができる。尚、下地層13を備えることなく、ピストンリング基材11の平滑化加工された外周面に直接DLC被膜12を成膜してもよい。
DLC被膜12の成膜前におけるピストンリング基材11の外周面の平滑化加工の方法は特に限定されないが、研削加工またはバフ研磨加工を施し、表面粗さを調整することが好ましい。ピストンリング基材11の表面粗さは、JISB0601(2001)における最大高さRzで0.5μm以下に調整することが好ましい。
一般的にDLC被膜は、sp2の成分比(sp2/(sp2+sp3))が大きければグラファイトに似た物性となり、sp3の成分比(sp3/(sp2+sp3))が大きければダイヤモンドに似た物性となるので、その成分比を調整することにより、様々な特性をもつDLC被膜を作製することができる。
sp2成分比の測定は、TEM(日本電子製 電解放出形透過電子顕微鏡 JEM−2100F)と、EELS(Gatan製Model 863GIF Tridiem)を使用した。
(1)EELS分析装置によってEELSスペクトルを測定する。測定されたEELSスペクトルに対し、ピーク前を一次関数でフィットさせ、ピーク後を三次関数でフィットさせ、ピーク強度を規格化する。
(2)その後、ダイヤモンドのデータとグラファイトのデータを照らし合わせ、ピークの開始位置を揃えてエネルギー値の補正を行う。
(3)(2)の補正済みのデータに対し、280eV〜310eVの範囲内の全面積を求める。
(4)sp2ピーク成分を分離するため、280−295eVの範囲で2ピーク(sp2のπ*ピークと、CHやアモルファスを含むσ*ピーク)が存在するとみなし、ピーク分
離を行う。このうち285eV付近のピーク面積を求める(sp2ピーク面積)。
(5)上記(3)の面積に対する上記(4)の面積比を取る(sp2ピーク面積比)。この面積比について、グラファイトを100、ダイヤモンドを0とし、相対値からsp2の割合を求める。これをsp2成分比とする。
ビッカース硬さの測定は、フィッシャー・インストルメンツ製ナノインデンテーション測定器、型式HM−2000を使用し、ビッカース圧子を用いて、押し込み荷重500mN、最大押し込み荷重までの時間を30s(秒)として、押し込み硬さを測定した。
測定値は、一つのピストンリングの周方向において、ピストンリングの合い口反対側の位置と、両側90°を成す3箇所の各位置の被膜表面から抽出された3つの測定値の平均値とする。
ナノインデンテーション法での硬さ測定は、フィッシャー・インストルメンツ製ナノインデンテーション測定器、型式HM−2000を使用し、ビッカース圧子を用いて、押し込み荷重500mN、最大押し込み荷重までの時間を30s(秒)として、押し込み硬さを測定した。
測定値は、一つのピストンリングの周方向において、ピストンリングの合い口反対側の位置と、両側90°を成す3箇所の各位置の被膜表面から抽出された3つの測定値の平均値とする。
るヤング率が250GPa以下であることが好適であり、200GPa以下であることがより好ましく、180GPa以下であることが好ましい。ヤング率が250GPaを超えると、デポジットまたは摺動によって生じた摩耗粉やダスト等の異物がDLC被膜表面を通り抜ける際、DLC被膜の最表面層は脆性破壊が出現し損耗が増大する。一方、下限は特に限定されないが、ヤング率が120GPa以上であることで、膜内部の剥離が生じにくくなる。
ナノインデンテーション法でのヤング率測定は、フィッシャー・インストルメンツ製ナノインデンテーション測定器、型式HM−2000を使用し、ビッカース圧子を用いて、押し込み荷重500mN、最大押し込み荷重までの時間を30s(秒)の条件で行った。ヤング率は、荷重−押込み深さ曲線から求められる。なお、測定値は、ナノインデンテーション硬さ測定と同様の4つの測定値の平均値とする。
図2(A)は、実施形態(後述の実施例3)のDLC被膜成膜直後の断面SEM画像の一例を示し、図2(B)はマクロパーティクル部位を説明するための、図2(A)の画像を模式的に表した図を示す。
図2(A)中、画像中央の円で囲まれた中に、マクロパーティクルを起点(矢印a)として、被膜表面(矢印d)に向かい拡開するV字状の界面(図2(B)中の矢印bで表す)が一つ形成され、被膜表面(矢印d)には外部に突出する瘤(矢印c)が形成されている。このマクロパーティクルは成膜開始後の初期に形成され、成膜が終了するまでマクロパーティクルを起点としたV字状の界面が成長を続けることを示している。被膜中のV字状の界面の外側(マクロパーティクル部位の外側ともいう)は、被膜の正常部位であり、繰り返される模様が観察されない均質で平滑な面である。
図5中fで示す円では、マクロパーティクルがこのSEM画像上では比較的大きい単一のピットを形成している。このピットの形態に類するマクロパーティクルは、被膜の最表面に露出した場合には、被膜表面から観察してもピットとして出現し、表面の凹凸を形成することになると考えられる。
図5中gで示す円では、マクロパーティクルがこのSEM画像上では比較的大きいピットを複数形成している。このピットの形態に類するマクロパーティクルは、被膜の最表面に露出した場合には、被膜表面から観察しても複数のピットとして出現し、シリンダボアへの攻撃性に大きく作用すると考察される。
図6(A)の表面SEM画像の円で囲まれた中に、マクロパーティクルにより形成された表面に突出する直径2μmから3μmの大きめの瘤(写真上のドーム状の白い点)が3つ観察できる。この観察によれば、被膜断面のV字状界面は、被膜層内では円錐状に形成されていると言うことができる。特許文献1では、被膜表面で300μm2以上(マクロパーティクルの直径が20μm以上)の大きさのドロップレットの密度が600個/mm2以下であることを規定しているが、本実施形態では、マクロパーティクルが存在した場合でも、その直径は5μm以下の水準にある。
図6(B)の表面SEM画像には、全域にマクロパーティクルにより形成された瘤が連続していることが観察できる。図7(B)に図6(B)のDLC被膜表面における、測定倍率を縦5000倍、横100倍とした粗さ曲線を示す。瘤に相当する山は粗さ曲線で連続した凹凸を形成し、最大高さRzとして3.8μmの水準にある。
図8(B)に示すように、図4のDLC被膜表面は、最終仕上げとして表面平滑化加工により表面粗さを最大高さRz2.0μm以下で、粗さ曲線の表面が粗い状態に調整されている。
本実施形態のDLC被膜は、DLC被膜断面に存在するマクロパーティクルの数が低減されており、よって図7(B)のようなより平滑な摺動面形成が可能となり、シリンダボア材への攻撃性を低くすることができる。
マクロパーティクルの数の測定方法について説明する。マクロパーティクルの数の測定はSEM(日本電子製 JSM−7001F)を使用した。一つのピストンリングの周方向において、ピストンリングの合い口反対側の位置と、両側90°を成す3箇所を切断し、各切断位置から抽出された一つのピストンリングの周方向に直交する断面の10,000倍の断面SEM画像から、被膜の厚さ方向に直交する方向に10μmの幅で挟まれ、被膜の厚さ方向に被膜表面から被膜の厚さDμmまでの囲まれた領域において存在するマクロパーティクル数n個をカウントする。すると被膜断面1カ所における単位面積あたりのマクロパーティクル数N(個/μm2)は、N=n/(10D)となる。マクロパーティクル数Pは、10μm2当たりの数と定義し、一つのピストンリングの3箇所の平均値とする。この定義の意義は、被膜の厚さに係わらず、マクロパーティクル数Pを比較できることである。ここで、P=n/D(個/10μm2)である。
本実施形態では、10,000倍の断面SEM画像においてP=2(個/10μm2)以下が好ましく、P=1.5(個/10μm2)以下がより好ましい。
屈折率を測定する分光エリプソメータとしては、分光エリプソメータ(株式会社堀場製作所製 UVISEL)を用いることができる。
測定条件は、入射角度が70度、スポット径が短径1mmで長径3mmの楕円とする。
測定値は、一つのピストンリングの周方向において、ピストンリングの合い口反対側の位置と、両側90°を成す3箇所の各位置の被膜表面から抽出された3つの測定値の平均値とする。
本実施形態では自身の耐摩耗性が向上することから、膜厚が少なくとも1μmで適用可能であり、30μm以下であることが好まく、20μm以下であることがより好ましい。
は以下の実施例に限定されるものではない。
ピストンリング基材を装置内にセットした状態で、装置内を真空排気して減圧した後、基材を加熱した。その後に基材に対してパルスバイアス電圧を−500〜−1500Vの範囲で印加した状態で、アルゴンイオンによりイオンボンバードを行った。
次にアルゴンガス雰囲気下でスパッタリング方式を用い、ピストンリング基材に対してバイアス電圧を−50V〜−300Vの範囲に設定した後、下地層(接着層)としてTi被膜をピストンリング基材上に成膜した。
なお、第一のアモルファスカーボン層及び第二のアモルファスカーボン層の成膜に際しては、水素を含むプロセスガスを使用せずに実施した。また、第一のアモルファスカーボン層の厚みは2nmとし、第二のアモルファスカーボン層の厚みは398nmとした。そして1層の第一のアモルファスカーボン層と1層の第二のアモルファスカーボン層とを1組2層とし、この1組2層単位で繰り返し38組積層し、最終仕上げの表面平滑化加工後、厚さ15μmのDLC被膜を得た。
第一のアモルファスカーボン層及び第二のアモルファスカーボン層を、繰り返し25組積層し、最終仕上げの表面平滑化加工後、厚さ10μmのDLC被膜を得た以外は、実施例1と同様にして、DLC被膜を得た。
実施例1と同様に、下地層としてTi被膜をピストンリング基材上に成膜した。
次にTi被膜上にアモルファスカーボン層を成膜した。アモルファスカーボン層はピストンリング基材に対してパルスバイアス電圧を−2000V〜−3000Vの範囲内で印加した状態でカーボンターゲットを用いて、アーク電流50〜200Aで放電し、成膜した。なお、アモルファスカーボン層の成膜に際しては、水素を含むプロセスガスを使用せずに実施した。また、アモルファスカーボン層1層の厚みは400nmとし、13層繰り返し積層することで、最終仕上げの表面平滑化加工後、厚さ5μmのDLC被膜を得た。
アモルファスカーボン層1層の厚みは400nmとし、25層繰り返し積層することで、最終仕上げの表面平滑化加工後、厚さ10μmのDLC被膜を得た以外は、実施例3と同様にして、DLC被膜を得た。
ピストンリング基材をアークイオンプレーティング装置内にセットした状態で、装置内を真空排気して減圧した後、基材を加熱した。その後に基材に対してバイアス電圧を−500V〜−1000Vの範囲で印加した状態で、Crターゲットを用いて、アーク電流50A〜100Aで放電し、Crイオンボンバードを行った。
次にアークイオンプレーティングにて、ピストンリング基材に対してバイアス電圧を−10〜−100Vの範囲で印加した状態で、Crターゲットを用いて、アーク電流50〜
100Aで放電し、下地層としてCr被膜をピストンリング基材上に成膜した。
次にCr被膜上にアモルファスカーボン層を成膜した。アモルファスカーボン層はピストンリング基材に対してバイアス電圧を0V〜−100Vの範囲内で印加した状態でカーボンターゲットを用いて、アーク電流50A〜100Aで放電し、成膜することで、最終仕上げの表面平滑化加工後、アモルファスカーボン層厚みが5μmのDLC被膜を得た。
ピストンリング基材をアークイオンプレーティング装置内にセットした状態で、装置内を真空排気して減圧した後、厚み10μmのCrN層を被覆した。その後、厚み0.2μmのCr中間層を被覆した。245℃までヒータ加熱を行いながら、バイアス電圧−700V、アーク電流40Aで10分間アーク放電を行った後、バイアス電圧−170V、アーク電流40Aでアーク放電を行って合計膜厚0.5μmの黒色(膜密度が高い)のアモルファスカーボン硬質層と白色(膜密度が低い)のアモルファスカーボン硬質層を成膜した後に、一旦125℃まで冷却した。
その後、バイアス電圧を−1000V、アーク電流40Aで90秒間、アーク放電を行って白色の硬質炭素からなる密着層を成膜後、再びバイアス電圧−170V、アーク電流40Aでアーク放電を行って、245℃までヒータ加熱を行い、合計膜厚0.5μmの黒色の硬質層と白色の硬質層を成膜するという昇温と冷却の繰り返しサイクルを8回行い、最終仕上げの表面平滑化加工後、総膜厚5μmのDLC被膜を成膜した。
実施例1と同様に、下地層としてTi被膜をピストンリング基材上に成膜した。
次にTi被膜上にアモルファスカーボン層を成膜した。アモルファスカーボン層はピストンリング基材に対してパルスバイアス電圧を−3000V〜−3500Vの範囲内で印加した状態でカーボンターゲットを用いて、アーク電流50〜200Aで放電し、成膜した。なお、アモルファスカーボン層の成膜に際しては、水素を含むプロセスガスを使用せずに実施した。また、アモルファスカーボン層1層の厚みは400nmとし、38層繰り返し積層することで、最終仕上げの表面平滑化加工後、厚さ15μmのDLC被膜を得た。
実施例1と同様に、下地層としてTi被膜をピストンリング基材上に成膜した。
次にTi被膜上に第一のアモルファスカーボン層と、第二のアモルファスカーボン層とを交互に成膜して積層した。ここで第一のアモルファスカーボン層はスパッタリング方式を用い、ピストンリング基材に対してバイアス電圧を−50V〜−300Vの範囲内で印加した状態で、カーボンターゲットを用いてアルゴンガス雰囲気下にて成膜した。また、第二のアモルファスカーボン層は、ピストンリング基材に対してパルスバイアス電圧を−100V〜−500Vの範囲内で印加した状態でカーボンターゲットを用いて、アーク電流50〜200Aで放電し、成膜した。
なお、第一のアモルファスカーボン層及び第二のアモルファスカーボン層の成膜に際しては、水素を含むプロセスガスを使用せずに実施した。また、第一のアモルファスカーボン層の厚みは2nmとし、第二のアモルファスカーボン層の厚みは398nmとした。そして1層の第一のアモルファスカーボン層と1層の第二のアモルファスカーボン層とを1組2層とし、この1組2層単位で繰り返し13組積層し、最終仕上げの表面平滑化加工後、厚さ5μmのDLC被膜を得た。
図9に、ピンオンプレート式往復動摩擦摩耗試験の概要を示す。まず、マルテンサイト系ステンレス鋼を呼び径86mm、摺動方向の幅が1.2mmのピストンリング基材とし
、その外周面に上記各実施例、各比較例のDLC被膜を成膜し、外周摺動面を加工したピストンリングを準備した。該ピストンリングの合い口反対側の位置と、両側90°を成す3箇所の各位置の3箇所から、周長20mmのピストンリング部材を切り出し、供試した。切り出したピストンリング部材は最終仕上げを行い、最終仕上げ後のピストンリング部材の表面粗さは、粗さ曲線がプラトー形状であり、最大高さRz1.0μmとし、上試験片100とした。
下試験片110は、JIS FC250相当材であり、硬さがHRB100、炭化物析出が3%の片状黒鉛鋳鉄製シリンダボアを見立てた幅17mm、長さ70mm、厚さ14mmのプレートを作製し、最終表面仕上げを#600エメリーペーパーにより行って、表面粗さは最大高さRzで1.2μmであった。
<試験条件>
・ストローク:50mm
・荷重:50N
・速度:300cycle/min
・下試験片の温度:80℃(下試験片加熱用ヒータ122使用)
・試験時間:60min
<摩耗量の評価>
DLC被膜摩耗量比が40以下で、かつ、相手材摩耗量比が40以下:S
DLC被膜摩耗量比が50以下で、かつ、相手材摩耗量比が40以下:A
DLC被膜摩耗量比が50以下で、かつ、相手材摩耗量比が40超える:B
DLC被膜摩耗量比が50を超え、かつ、相手材摩耗量比が40以下:C
DLC被膜摩耗量比が50を超え、かつ、相手材摩耗量比が40超える:D
91〜0.105であった。一方で、別途摩耗試験において、新品のエンジン潤滑油を用い、清浄な摺動環境において往復動摩擦摩耗試験を行ったところ、実施例・比較例ともに摩擦係数は0.06前後の水準であった。すなわち、上述の摩擦摩耗試験は長期運転後の環境を想定して行ったところ、使用済みエンジン潤滑油に含有されるエンジン内部で生成されたデポジットの影響でアブレシブ摩耗が生じたため、摩擦係数が高くなったと考えられる。
試験方法は、JIS B2245:2016に準拠するロックウエル硬さCスケール測定に用いられる円すい形ダイヤモンド圧子を用いて、荷重150kgf(1471N)でDLC被膜表面に押し込み、荷重を除荷後、圧痕周りの被膜の剥離発生の有無を確認した。試験は各3回実施した。
マクロパーティクルが多く存在するDLC被膜は、表面平滑化加工後において被膜表面にピット(図8(B)の粗さ曲線における谷に相当)を多く形成することから、相手材摩耗量が多くなると同時に、自身の摩耗も進行した。
11、21 ピストンリング基材
12、22 DLC被膜
13、23 下地層
24 基材層
100 上試験片
110 下試験片
120 可動ブロック
122 下試験片加熱用ヒータ
Claims (7)
- エンジン潤滑油下で使用され、外周摺動面にDLC被膜を有するピストンリングであって、前記DLC被膜は、透過型電子顕微鏡(TEM) に電子エネルギー損失分光法(EELS)を組み合わせたTEM−EELSで測定されるsp2成分比が0.5以上0.85以下であり、ナノインデンテーション法により測定される被膜の硬さが12GPa以上26GPa以下であり、且つヤング率が250GPa以下である、ピストンリング。
- 前記DLC被膜のヤング率が200GPa以下である、請求項1に記載のピストンリング。
- 前記DLC被膜は、その厚さ方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した10,000倍の画像から観察されるマクロパーティクルの数が、10μm2当たり2個以下である請求項1または2に記載のピストンリング。
- 前記DLC被膜は、分光エリプソメータにより測定された屈折率が、波長550nmにおいて2.3以上2.6以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載のピストンリング。
- 前記DLC被膜は、被膜の硬さが20GPa以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載のピストンリング。
- 前記DLC被膜は、Ti、Cr又はSiを含む下地層を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載のピストンリング。
- 前記DLC被膜は、膜厚が1μm 以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載のピストンリング。
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