JP2013087325A - 硬質炭素膜及びその形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬質炭素膜、特に潤滑油中で使用された場合に低摩擦や耐摩耗性等が優れた摺動特性を有する硬質炭素膜とその形成方法を提供する。
【解決手段】基材1表面上に中間層2を介して形成されている硬質炭素膜3であって、前記中間層2は金属層あるいは金属窒化物層、金属炭化物層のいずれか1層または2層以上からなり、かつ前記硬質炭素膜3は1層または2層以上からなり、前記中間層表面が粒平均直径0.1μm〜0.5μmの粒状の凹凸からなり、かつ平均凹凸高さ2nm〜5nmの微細な凹凸を有する硬質炭素膜。
【選択図】図1

Description

本発明は硬質炭素膜、特に潤滑油中で使用された場合に低摩擦や耐摩耗性等が優れた摺動特性を有する硬質炭素膜とその形成方法に関する。
近年、特に自動車分野において、エンジン基材やその他機械基材等摺動性を有する部材への硬質炭素膜の適用の適用が盛んに行われるようになってきた。
この硬質炭素膜は、一般的にダイアモンドライクカーボン(DLC)、無定形炭素、i−カーボン、ダイヤモンド状炭素など、様々な名称で呼ばれている。そして、硬質炭素膜は、構造的には結晶ではなく非晶質に分類され、ダイヤモンド結晶に見られるような単結合(C−C)とグラファイト結晶に見られるような二重結合(C=C)とが混在していると考えられ、製法によってはC−Hのように水素を含有するもの(水素含有DLC膜あるいはa−C:Hと呼ぶ。
)や水素をほとんど含有しないもの(水素非含有DLC膜と呼ぶ。)もある。
そして、硬質炭素膜の物性的な特徴としては、ダイヤモンド結晶のような高硬度、高耐摩耗性、高固体潤滑性、優れた化学的安定性などが挙げられる。また、非晶質であるために平坦性に優れ、相手材料との直接接触における低摩擦性も備えている。
これらの特性を活かして、硬質炭素膜は、従来から耐摩耗部材、摺動部材、電気・電子部材、成型・金型部材等の各種摺動部材への被膜として利用されている。しかし、これらの特性については、成膜条件、摺動条件、相手材料により大きく変動するため、硬質炭素膜の組成、非晶質の構造、表面粗さ等を制御することにより、低摩擦性や耐摩耗性等の摺動特性を向上させることが検討されている。
また、このような硬質炭素膜は潤滑油中で使用される場合があり、潤滑油中の使用では、硬質炭素膜自体の摺動特性に加え、潤滑油の構成も相手材との摺動特性に大きく影響する。
ところで、硬質炭素膜が形成された部材表面と摺動の相手材の表面は、いずれも完全に平坦ではなく、ある程度の凹凸が表面に存在しており、摺動時にはこの凹凸に起因して摩擦が起こる。そこで、潤滑油中での摺動においては、相手材の摩耗を促進する極圧剤を潤滑油に添加することにより凹凸に起因する摩擦を緩和させることが一般に行われている。
すなわち、硬質炭素膜表面に凹凸を持たせることによって、接触面積が小さくなり、油だまりができることから、摺動部材の摩擦係数の低減を期待して、多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1にはエンジン摺動部材の摺動面となる部材の面を、うねり(幅200〜400μm 、高さ3〜5μm)とマイクロディンプル(0.2〜2μm の凹凸)形状を持たせた部材面に形成し、この部材面上にダイアモンドカーボン膜を含む硬質膜を形成することによって、耐焼付性と耐摩耗性のすぐれた摺動面を形成させることができると記載されている。
また、特許文献2には、油潤滑下で低い摩擦係数を確保するため、部材の表面にスパッタリング法により、ダイアモンドカーボン膜を形成した摺動部材に直径0.1〜1.0μm 、深さ10〜30nmの微小な凹部を集合させた表面形状を有した摺動部材が記載されている。
また、特許文献3には内燃機関のシリンダとピストンの双方または一方に微細な凹凸(深さは0.5〜30μm)有した面に硬質炭素膜を有し、低摩擦特性、耐摩耗性を向上させることが記載されている。
さらに、特許文献4には、摩擦低減のため、部材上に形成されるDLC膜であって、中心線平均粗さRaで0.01〜0.2μm の微細な凹凸を有し、互いに独立した微小開孔を有し、この微小開孔の合計面積が10%以下であるダイアモンドライクカーボン膜が記載されている。
特開2001−280494号公報 特開2004−339564号公報 特開2005−69008号公報 特開2010−126419号公報
上記特許文献1でのマイクロディンプル凹凸形成方法では、うねりは部材表面をショットピーニング、切削加工、研磨加工、塑性加工などで形成し、マイクロディンプルは微粒子ピーニング等で生成さている。特許文献3では、部材表面の微細溝加工はマスクブラスト加工によって形成している。
このような表面微小凹凸の形成方法では、部材形状によっては、形成できない部分があり、部材の部位によって微細な凹凸の高さにバラツキが出るなどの問題がある。
また、特許文献2においては、微細な凹凸形成はスパッタリング法によるダイアモンドライクカーボン膜形成工程初期に部材へ印加するバイアス電圧を調整して行っているが、この方法では、バイアス電圧を低下させるとダイアモンドライクカーボン膜の硬度が低下するため、表面の高硬度のダイアモンドカーボン膜が摩耗して、ダイアモンドライクカーボン膜形成工程初期の膜が露出した時、すぐさま摩滅してしまう恐れがある。
さらに、特許文献4に記載の微細な凹凸の形成は、部材へのダイアモンドライクカーボン膜形成後にショットピーニングによって行っており、このショットピーニングによって膜の破壊や剥離が生じ易いなどの問題がある。
そこで、本発明は、部材(本願では以下基材と呼ぶ。)表面や基材表面への硬質炭素膜形成後に微細な凹凸を上記した機械的方法(ショットピーニングや切削加工等)、あるいはスパッタリング法による硬質炭素膜形成中に基材へのバイアス電圧印加条件等によって形成するのではなく、基材表面に金属膜、あるいはそれらの窒化物膜、炭化物膜を中間層とし、その中間層が粒状からなる微細な凹凸を有するように形成した後、硬質炭素膜を形成することによって、微細な凹凸を有する硬質炭素膜を提供することを課題とし、さらに、その形成方法を提供することを課題とする。
以上の課題を解決するため、本発明は、基材表面上に中間層を介して形成されている硬質炭素膜であって、前記中間層は金属層あるいは金属窒化物層、金属炭化物層より選択されたいずれか1層または2層以上よりなり、前記中間層表面は粒状からなる微細な凹凸を有することを特徴としている。
また、前記中間層の表面は平均直径0.1μm〜0.5μmの密集した粒状の凹凸からなり、かつ平均凹凸高さ2nm〜5nmの微細な凹凸を有することを特徴としている。
また、前記硬質炭素膜の表面は平均直径0.3μm〜1.3μmの密集した粒状の凹凸からなり、かつ平均凹凸高さ6nm〜95nmの微細な凹凸を有することを特徴としている。
また、本発明は、前記中間層の前記金属層、前記金属窒化物層、前記炭化物層の金属がTi、Cr、W、Si、Geから選択されたいずれかであることを特徴としている。
また、本発明は、前記硬質炭素膜が水素を含有し、かつX線散乱スペクトルにおいてグラファイト結晶ピークを持つことを特徴としている。
さらに、本発明は基材表面に、スパッタリング法により前記中間層を形成することを特徴としている。
基材表面に金属膜、あるいはそれらの窒化物膜、炭化物膜を中間層とし、その中間層表面がスパッタリング法によって微細な凹凸を有するように形成した後、硬質炭素膜を形成する。したがって、該硬質炭素膜は微細な凹凸を有するため、アンカー効果によって中間層と硬質炭素膜の密着性が向上し、優れた潤滑油中の低摩擦、耐摩耗性を示す硬質炭素膜及びその形成方法を提供することができる。
また、微細な凹凸は機械的な方法で形成する必要がないので、製造コストが安くなるという効果を奏する。
本発明に係る中間層を介して硬質炭素膜を被覆した基材の断面模式図である。 本発明に係る中間層を被覆した基材表面の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明に係る中間層上に硬質炭素膜を被覆した基材表面の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明に係る硬質炭素膜を被覆する装置の一例で、陰極PIGプラズマCVD装置の概略図である。 本発明に係る硬質炭素膜のX線スペクトルの測定例である。 図5に示したX線スペクトルの微分スペクトルである。
以下、本発明の実施の形態について添付の図に基づいて説明する。
(1)硬質炭化物膜が被覆された基材の形態
図1は本発明に係る中間層を介して硬質炭素膜を被覆した基材(硬質炭素膜被覆部材)の断面模式図を示す。
1は基材、2は中間層、3は硬質炭素膜である。中間層及び硬質炭素膜の表面に粒状からなる凹凸が形成されている。
基材1に、基材1と硬質炭素膜3との密着性をよくするため、中間層2が設けられ、図2の走査型電子顕微鏡像に示すように、微細な凹凸4が中間層2表面に形成され、その上層に硬質炭素膜3が形成される。前記中間層2の凹凸4は密集した粒状からなっている。
そして、硬質炭素膜3表面の走査型電子顕微鏡像を図3に示すが、硬質炭素膜3表面は中間層2表面の微細な凹凸4が、硬質炭素膜形成によって、結合・成長して、さらに、表面の粒が大きくなり、高低差のより大きな微細な凹凸4´が形成されることが確認できた。なお、図1中の5、5´はそれぞれ中間層表面及び硬質炭素膜表面の凹凸高さである。
中間層2表面の微細な凹凸4がアンカー効果により、中間層2と硬質炭素膜3との密着性が確保される。
潤滑油下での摺動においては、硬質炭素膜3表面の微細な凹凸4´の凹部が油だまりになり、従って、低摩擦特性が得られ、耐摩耗性に効果を発揮する。
基材1としては、金属系またはセラミックス系の基材を用いることができ、例えば鉄、熱処理鋼、超硬合金、ステンレス鋼、ニッケル、銅、アルミニウム合金、チタン合金、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素の基材が挙げられる。
中間層2としては、例えばTi、Cr、W、Si、Geより選択された金属層、あるいはこれらの窒化物層、炭化物層を挙げることができ、それらのいずれか1層又は2層以上が設けられる。中間層2の厚さは0.1μm〜2.0μm程度である。0.1μm未満では機能不十分で硬質炭素膜の密着力が悪く、2.0μmを超えると、中間層は比較的低硬度なので、負荷時に中間層内部で破壊が生じ剥離する可能性が高いからである。
さらに、硬質炭素膜3は1層又は2層以上設けられるが、その構造は特に限定されない。プラズマCVD法で形成される水素含有DLC膜、真空アーク蒸着法で形成される水素非含有DLC膜であってもよいが、真空アーク蒸着法特有の巨大粒子(ドロプレットと呼ばれる。)が付着しない点で前者の方が望ましい。そして、特に、X線散乱スペクトルにおいてグラファイト結晶ピークを持つ硬質炭素膜が低摩擦・高耐摩耗性という点で望ましい。
また、1層又は2層以上の硬質炭素膜はSiなどの金属を含有した硬質炭素膜でもよいし、その上層に水素含有DLC膜あるいは水素非含有DLC膜を被覆してもよい。
さらに、粒状の凸部での面圧が高くなるので、硬質炭素膜の破壊・剥離を生じさせないために膜硬度は10GPa以上、膜内部応力は2.0GPa以下であることが望ましい。
硬質炭素膜3の厚さは0.1μm〜20μm程度である。0.1μm未満では負荷時に摩耗でただちに消滅するため低摩擦、耐摩耗性効果が低下し、20μmを超えると硬質炭素膜の内部応力が高くなり剥離が生じやすくなるからである。
(2)中間層及び硬質炭素膜の形成方法
次に、基材1上に本発明に係る硬質炭素膜を形成する方法について説明する。
最初に、基材1上に中間層2として、例えばTi金属層はカソード(ターゲット)にTiを用い、Arガス等不活性ガスのプラズマ中のイオンによるスパッタリング法を用いて形成する。その後、硬質炭素膜3を形成する。
カソードに印加するバイアス電圧(スパッタ電圧)を適正に調整すると、中間層2表面に粒状で微細な凹凸が形成される。
中間層2として、窒化物層あるいは炭化物層とする場合は、それぞれ、N
ガスやCHガス等の炭化水素系ガスを導入して、反応性スパッタリング法により形成すればよい。
中間層2及び硬質炭素被膜3を形成するための具体的な装置としては、例えば、スパッタ源を備えた陰極PIGプラズマCVD装置が挙げられる。図4にスパッタ源を備えた陰極PIGプラズマCVD装置の概略を示す。
図4において、10はチャンバー、11は基材、12は基材ホルダー、13は陰極PIGプラズマ源、14は電極、15はコイル、16はカソード、17はガス導入口、18はガス排出口、19はバイアス電源A、20はバイアス電源B(スパッタ電源)である。そして、21はチャンバー10内に形成された陰極PIGプラズマである。なお、カソードの背後には図示しない磁石が配置されて、スパッタ源となっている。
最初に、基材11をホルダー12に支持させてチャンバー10内に配置する。次いで、ガス導入口17よりArガスを注入すると共に、陰極PIGプラズマ源13、電極14、コイル15を用いて、プラズマ21を発生、安定させる。プラズマ中のArイオンをバイアス電源A19にて印加した負のバイアス電圧により基材11へ引きつけ、表面エッチングを行って基材表面を洗浄する。その後、基材11をカソードに向け、基材11への負のバイアス電圧の印加を停止し、例えば、金属からなるカソード16に負のバイアス電圧(スパッタ電圧)を印加すると、Arガスのプラズマ21中のArイオンが照射されてカソード16の原子をスパッタリングし、基材11表面に中間層の金属層を形成する。その後、陰極PIGプラズマ源13により、ガス導入口17より注入されたアセチレン等の原料ガスを分解、反応させることにより、硬質炭素膜を所定の厚さになるまで形成させる。
なお、この場合に形成された硬質炭素膜は水素含有炭素膜である。
また、中間層と硬質炭素膜を上記のような単独のチャンバーの装置ではなく、インライン型、マルチチャンバー型の装置で実施してもよいことはいうまでもない。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例)
基材11として、中間層・硬質炭素膜表面の粒状凹凸直径や凹凸高さ評価及び摩擦・摩耗特性評価用にSCM420、硬質炭素膜の構造分析用にシリコンウエハを用いた。基材11を前処理した後、中間層及び硬質炭素膜を形成した。
前処理として、アルカリ洗浄液にて10分間超音波洗浄した後、120℃にて充分乾燥させた。その後、基材を図4に示す陰極PIGプラズマCVD装置のチャンバー内へセットし、2×10−3Paまで真空引きした。
基材11をセットし、チャンバー10を真空引きした後、チャンバー10内にArガスを注入して、チャンバー10内の圧力を0.3Paに調整した。その後、プラズマ源13に直流電力を印加して、Arプラズマ10を生成させ、Arイオンによる基材11の表面エッチングを放電電流10A、コイル電流8Aおよび基材へパルス電圧550Vを印加して10分間行った。その後の基材へのTi中間層、硬質炭素膜の形成を以下の処理条件で実施した。
<中間層形成条件>
カソード:Ti
放電用ガス:アルゴンガス
ガス流量:80sccm
チャンバー内圧:0.4Pa
カソードに印加する直流電力:6kW
基材に印加する負バイアス電圧(パルス電圧):50V、100V、200Vの3条件
膜厚:0.5μm(膜厚を0.3〜1.5μmに変化させた場合の負バイアス電圧(パルス電圧)は50V一定)
<硬質炭素膜形成条件>
放電用ガス:アルゴンガス、アセチレンガス
ガス流量:アルゴンガス 40sccm、アセチレンガス 300sccm
チャンバー内圧:0.2Pa
基板に印加する負バイアス電圧(パルス電圧):550V
これら条件下でTi中間層上に3μmの硬質炭素膜を形成した。
(比較例)
比較例として、上記した中間層形成条件のうち基材にバイアス電圧を印加しない(他の形成条件は同一)で、中間層を0.5μm形成し、上記硬質炭素膜形成条件と同一の条件で、基材上に硬質炭素膜を形成した。
(中間層及び硬質炭素膜の評価)
上記実施例及び比較例で得られた中間層及び硬質炭素膜について、硬質炭素膜の構造分析、それぞれの表面の粒状凹凸の平均直径、平均凹凸高さ、摩擦係数及び耐摩耗性の評価を行った。
<硬質炭素膜の構造分析>
上記実施例および比較例で得られた各硬質炭素膜について、X線エネルギー:15keV、検出器スキャン範囲:5〜140°、スキャンステップ:0.1°、積算時間:20秒/ステップ、各試験体は基板から剥離&キャピラリに充填という測定条件の下、X線回折測定を行った。
図5は得られたX線スペクトルの一例で、図6は図5において、ピーク強度が弱い場合にも主な結晶ピークの存在を確認できる微分スペクトルである。
実施例及び比較例の各硬質炭素膜とも、図5、図6に示した結果と同じようなスペクトルがみられ、非晶質の硬質炭素膜において、結晶ピークが検出され、グラファイト結晶の存在が確認でき、本発明の硬質炭素膜は非晶質の硬質炭素膜にグラファイト結晶が混在している構造のものであることが明らかとなった。
<中間層及び硬質炭素膜表面の粒状凹凸直径と凹凸高さの評価>
粒状凹凸の直径は走査型電子顕微鏡によりランダムに20点測定して、その値を平均して平均粒状凹凸直径とした。また、凹凸高さは走査型プローブ顕微鏡(SPM)(島津製作所製:型式SPM−9700)を用いて5箇所測定し、その値を平均して平均凹凸高さとした。
<摩擦係数、耐摩耗性の評価>
SRV摩擦摩耗試験機(Optimol社製)を用い、硬質炭素膜被覆材をSCM420(ディスク:直径24mm×厚さ7.9mm)、相手材(シリンダー:直径15mm×長さ22mm)をFCD700とし、100℃、潤滑油下にて、荷重:50N、振幅1.5mm、往復振動数50Hzの条件下で5分間なじみ運転を実施した後、荷重400N、振幅1.5mm、往復振動数50Hzの条件下で60分間本試験を行い、摩擦係数は60分後の摩擦係数を求めた。
そして、耐摩耗性は上記60分後の摩擦痕の深さを触針式の表面形状測定器(株式会社小阪研究所製:型式SMB−9)にて測定し評価した。
表1は上記のような評価方法で、上記実施例及び比較例の中間層及び硬質炭素膜表面の粒状凹凸直径と凹凸高さ及び中間層と硬質炭素膜を被覆した基材の摩擦係数及び耐摩耗性の特性評価を行った結果を示す。
中間層表面の粒状凹凸の平均直径が0.1μm〜0.5μmで、平均凹凸高さが2nm〜5nmの場合に、また硬質炭素膜表面の粒状凹凸の平均直径が0.3μm〜1.3μmで、平均凹凸高さが6nm〜95nmの場合に比較例に較べて、低摩擦係数、及び高耐摩耗性が得られている。
これは中間層表面の粒状凹凸平均直径が0.1μm、平均凹凸高さが2nm未満、かつ硬質炭素膜表面の凹凸となる粒状凹凸平均直径が0.3μm、平均凹凸高さが6nm未満では膜表面に油だまりができず、摺動部で油切れし易いためであり、中間層表面の粒状凹凸の平均直径が0.5μm、平均凹凸高さが5nmより大きく、かつ硬質炭素膜表面の粒状凹凸の平均直径が1.3μm、平均凹凸高さが95nmより大きくなると凹凸が摺動の抵抗を大きくし、摩擦係数が高くなるためであると考えられる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態に限定されるものではなく、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の硬質炭素膜は、潤滑油中で使用される低摩擦摺動部材、耐摩耗性部材、あるいは離型材を用いて使用される成型・金型部材等の各種部材への被膜として利用される。
1、11 基材
2 中間層
3 硬質炭素膜
4 中間層表面の粒状の微細な凹凸
4´ 硬質炭素膜表面の粒状の微細な凹凸
5、5´ 凹凸高さ
10 チャンバー
12 基材ホルダー
13 陰極PIGプラズマ源
14 電極
15 コイル
16 カソード
17 ガス導入口
18 ガス排出口
19 バイアス電源A
20 バイアス電源B(スパッタ電源)
21 チャンバー内に生成した陰極PIGプラズマ

Claims (6)

  1. 基材表面上に中間層を介して形成されている硬質炭素膜であって、前記中間層は金属層あるいは金属窒化物層、金属炭化物層より選択されたいずれか1層または2層以上よりなり、(かつ前記硬質炭素膜は1層または2層以上からなり、)前記中間層表面が粒状からなる微細な凹凸を有することを特徴とする硬質炭素膜。
  2. 前記中間層の表面は平均直径0.1μm〜0.5μmの密集した粒状の凹凸からなり、かつ平均凹凸高さ2nm〜5nmの微細な凹凸を有することを特徴とする請求項1に記載の硬質炭素膜。
  3. 前記硬質炭素膜の表面は平均直径0.3μm〜1.3μmの密集した粒状の凹凸からなり、かつ平均凹凸高さ6nm〜95nmの微細な凹凸を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬質炭素膜。
  4. 前記金属層、前記金属窒化物層、前記炭化物層の金属がTi、Cr、W、Si、Geから選択されたいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の硬質炭素膜。
  5. 前記硬質炭素膜が水素を含有し、かつX線散乱スペクトルにおいてグラファイト結晶ピークを持つことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の硬質炭素膜。
  6. 前記中間層をスパッタリング法により形成することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の硬質炭素膜の形成方法。









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