JP2011068940A - 硬質膜の成膜方法および硬質膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材2の表面に形成された中間層3と表面層4とからなる硬質膜1の成膜方法であって、該成膜方法は、基材2上に金属系材料を主体とする中間層3を形成する中間層形成工程と、中間層3の上にDLCを主体とする表面層4を形成する表面層形成工程とを有し、中間層形成工程および表面層形成工程において、中間層3および表面層4は、スパッタリングガスとしてArガスを用いたUBMS装置を使用し、上記表面層形成工程は、上記装置内の真空度が0.2〜0.9Paであり、基材2に印加するバイアス電圧が70〜400Vである条件下で、炭素供給源となるターゲットから生じる炭素原子を、中間層3上に堆積させてDLCを主体とする表面層4を形成する工程である。
【選択図】図1
Description
この工程は、基材上に金属系材料を主体とする中間層を形成する工程である。金属系材料としては、基材2との密着性を増すため、基材2に超硬合金材料または鉄系材料を用いる場合には、該基材2と相性のよい、Cr、Al、W、Ta、Mo、Nb、Si、Tiから選択される1種類以上の金属を含むことが好ましい。より好ましいのはCrおよびWである。
この工程は、中間層の上に所定条件でDLCを主体とする表面層を形成する工程である。具体的には、UBMS装置内(チャンバー内)の真空度が0.2〜0.9Paであり、基材2に印加するバイアス電圧が70〜400Vである条件で、炭素供給源となるターゲットから生じる炭素原子を、中間層3上に堆積させてDLCを主体とする表面層4を形成する工程である。UBMS装置内の真空度、および基材に印加するバイアス電圧のいずれかが、上記範囲外であると、硬質膜において上述の物性を得ることができない。UBMS装置内の真空度は、0.25〜0.82Paであることがより好ましい。また、基材に印加するバイアス電圧は100〜400Vであることがより好ましい。
(1)基材材質:SUS440Cまたは超硬合金
(2)基材寸法;鏡面(Ra=0.005μm程度の)30mm角、厚さ5mm
(3)UBMS装置:神戸製鋼所製;UBMS202/AIP複合装置
(4)スパッタリングガス:Arガス
(5)中間層形成条件
Cr層:5×10−3Pa程度まで真空引きし、ヒータで基材をベーキングして、Arプラズマにて基材表面をエッチング後、UBMS法にてCr層を形成した。
WC−C層:5×10−3Pa程度まで真空引きし、ヒータで基材をベーキングして、Arプラズマにて基材表面(または上記Cr層表面)をエッチング後、WCと黒鉛に印加するスパッタ電力を調整し、WCとCの組成比を傾斜させた。
表1に示す基材をアセトンで超音波洗浄した後、乾燥した。乾燥後、基材をUBMS/AIP複合装置(UBMS202/AIP複合装置:神戸製鋼所製)に取り付けた後、上述の中間層形成条件にて表1に示すCr層および/またはWC−C層を形成した。その上に表1に示す成膜条件にて表面層であるDLC膜を成膜し、硬質膜を有する試験片を得た。なお、表1における「真空度」は上記装置における成膜チャンバー内の真空度である。得られた試験片を以下に示す摩耗試験、硬度試験および膜厚試験に供し、比摩耗量、動摩擦係数、押し込み硬さおよび膜厚を測定した。結果を表1に併記する。
得られた試験片を、図2に示す摩擦試験機用いて摩擦試験を行なった。図2(a)は正面図を、図2(b)は側面図を、それぞれ表す。表面粗さRaが0.01μm以下であり、ビッカース硬度Hvが780であるSUJ2焼入れ鋼を相手材7として回転軸5に取り付け、試験片6をアーム部8に固定して所定の荷重9を図面上方から印加して、ヘルツの最大接触面圧0.5GPa、室温(25℃)下、0.05m/sの回転速度で30分間、試験片6と相手材7との間に潤滑剤を介在させることなく、相手材7を回転させたときに、相手材7と試験片6との間に発生する摩擦力をロードセル10により検出する。比摩耗量が150×10−10mm3/(N・m)未満の場合、耐摩耗性に優れると評価して「○」印を、150×10−10mm3/(N・m)以上、300×10−10mm3/(N・m)以下の場合、耐摩耗性に劣ると評価して「△」印を、300×10−10mm3/(N・m)をこえる場合、耐摩耗性に著しく劣ると評価して「×」印を、それぞれ記録する。また、動摩擦係数を記録する。
得られた試験片の押し込み硬さをアジレントテクノロジー社製:ナノインデンタ(G200)を用いて測定した。測定結果を表1に併記する。なお、測定値は表面粗さの影響を受けない深さ(硬さが安定している箇所)の平均値を示しており、各試験片10箇所ずつ測定している。例えば、図3に示す測定例(実施例3)の場合、深さ0.12μmの位置硬さが安定しているため、この深さの硬さ23GPaを採用する。
得られた試験片の膜厚を表面形状・表面粗さ測定器(テーラーホブソン社製:フォーム・タリサーフPGI830)を用いて測定した。膜厚は成膜部の一部にマスキングを施し、非成膜部と成膜部の段差から膜厚を求めた。
日本電子工業社製:ラジカル窒化装置を用いて表1に示すプラズマ窒素処理が施された基材(ビッカース硬さHv1000)をアセトンで超音波洗浄した後、乾燥した。乾燥後、基材をUBMS/AIP複合装置(UBMS202/AIP複合装置:神戸製鋼所製)に取り付けた後、上述の中間層形成条件にて表1に示すCr層およびWC−C層を形成した。その上に表1に示す成膜条件にて表面層であるDLC膜を成膜し、硬質膜を有する試験片を得た。得られた試験片を以下に示す摩耗試験、硬度試験および膜厚試験に供し、比摩耗量、動摩擦係数、押し込み硬さおよび膜厚を測定した。結果を表1に併記する。
2 基材
3 中間層
3a 金属層
3b 金属−炭素層
4 表面層
5 回転軸
6 試験片
7 相手材
8 アーム部
9 荷重
10 ロードセル
11 バイアス電源
12 基材
13 膜(層)
14a 内側磁石
14b 外側磁石
15 ターゲット
16 磁力線
16a 基材まで達する磁力線
17 Arイオン
18 イオン化されたターゲット
19 高密度プラズマ
20 AIP蒸発源材料
21 円盤
22 基材
23、24 スパッタ蒸発源材料(ターゲット)
Claims (14)
- 基材の表面に形成された中間層と表面層とからなる硬質膜の成膜方法であって、
該成膜方法は、前記基材上に金属系材料を主体とする中間層を形成する中間層形成工程と、この中間層の上にダイヤモンドライクカーボンを主体とする表面層を形成する表面層形成工程とを有し、
前記中間層形成工程および前記表面層形成工程において、前記中間層および前記表面層は、スパッタリングガスとしてアルゴンガスを用いたアンバランスド・マグネトロン・スパッタリング装置を使用し、
前記表面層形成工程は、前記装置内の真空度が0.2〜0.9Paであり、前記基材に印加するバイアス電圧が70〜400Vである条件下で、炭素供給源となるターゲットから生じる炭素原子を、前記中間層上に堆積させて前記ダイヤモンドライクカーボンを主体とする表面層を形成する工程であることを特徴とする成膜方法。 - 前記硬質膜は、表面粗さRa:0.01μm以下、ビッカース硬度Hv:780であるSUJ2焼入れ鋼を相手材として、ヘルツの最大接触面圧0.5GPaの荷重を印加して接触させ、0.05m/sの回転速度で30分間、前記相手材を回転させたときの該硬質膜の比摩耗量が150×10−10mm3/(N・m)未満であり、かつ、押し込み硬さの平均値と標準偏差値との合計が25〜45GPaであることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
- 前記表面層形成工程において、前記基材に印加するバイアス電圧を連続的または段階的に上昇させながら前記ダイヤモンドライクカーボンを主体とする表面層を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の成膜方法。
- 前記表面層形成工程における炭素供給源として、黒鉛ターゲットを用いることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の成膜方法。
- 前記表面層形成工程における炭素供給源として、前記黒鉛ターゲットと、炭素水素系ガスとを併用することを特徴とする請求項4記載の成膜方法。
- 前記炭化水素系ガスが、メタンガスであることを特徴とする請求項5記載の成膜方法。
- 前記アルゴンガスの前記装置内への導入量100に対する前記炭化水素系ガスの導入量の割合が、1以上、5以下であることを特徴とする請求項5または請求項6記載の成膜方法。
- 前記基材が、超硬合金材料または鉄系材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の成膜方法。
- 前記中間層形成工程の前に、前記鉄系材料からなる前記基材の中間層形成表面に窒化処理を施す工程を有することを特徴とする請求項8記載の成膜方法。
- 前記窒化処理が、プラズマ窒化処理であることを特徴とする請求項9記載の成膜方法。
- 前記窒化処理後の前記基材における中間層形成表面の硬さが、ビッカース硬さでHv1000以上であることを特徴とする請求項9または請求項10記載の成膜方法。
- 前記中間層形成工程において、少なくともクロムまたはタングステンを含む金属系材料を用いて前記中間層を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項記載の成膜方法。
- 請求項1ないし請求項12のいずれか一項記載の成膜方法により成膜されることを特徴とする硬質膜。
- 前記硬質膜は、摺動部材の摺動面に使用されるものであることを特徴とする請求項13記載の硬質膜。
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