以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図のプリンタは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)用の4つの作像プロセス部1Y、C、M、Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY、C、M、Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。Yトナー像を生成するためのY用の作像プロセス部1Yを例にすると、これは図2に示すような構成になっている。そして、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる感光体2Yの周囲に、クリーニング装置100Y、除電手段3Y、帯電ローラ4Y、光書込装置5Y、現像装置6Yなどを有している。
感光体2Yに接触あるいは所定の間隙を介して対向するように配設された帯電ローラ4Yには、不図示の帯電バイアス電源から帯電バイアスが印加される。そして、帯電ローラ4Yは、図中反時計回り方向に回転しながら感光体2Yとの間に放電を生じせしめることで、感光体2Yの表面を一様帯電せしめる。帯電ローラ4Yの代わりに、帯電ブラシを当接させてもよい。また、感光体2Yを一様帯電せしめる帯電手段として、スコロトロンチャージャーのように、チャージャー方式によって感光体2Yを一様帯電せしめるものを用いてもよい。
帯電ローラ4Yとしては、硬質の導電性材料でローラ部が形成されたものを、微小ギャップを介して感光体2Yに対向させたものであって、次に説明する構成を有するものであることが望ましい。即ち、その軸線方向の寸法がプリンタの出力可能な最大画像幅(A4横通紙の機械ならば約290[mm])よりも少し長く設定され、軸線方向の両端部に、それぞれ中央部よりも大きな径で且つ絶縁性のスペーサとしてのギャップコロ部を有する。かかる構成では、両端のギャップコロ部を感光体2Yの軸線方向の両端部に存在する非画像形成領域に当接させることで、自らの中央部と感光体2Yとの間に5〜100[μm]程度(より望ましくは20〜65[μm])の微小ギャップを容易に形成することができる。なお、本実施形態では、55[μm]となるように設定した。
帯電ローラ4Yによって一様帯電せしめられた感光体2Yの表面は、光書込装置5Yから発せられる走査光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。この光書込装置5Yは、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて変調したレーザー光あるいはLED光を照射するものである。
現像手段たる現像装置6Yは、周知の技術により、感光体2Y表面に担持された静電潜像にYトナーを付着させることで、静電潜像を現像してYトナー像を得る。このYトナー像は、後述する中間転写ベルト21に一次転写される。
クリーニング装置100Yは、一次転写工程を経た後の感光体2Y表面に付着している転写残トナーを除去する。なお、本実施形態のクリーニング装置100Yでは、クリーニングブレード52Yよりも感光体回転方向下流側の感光体2Yの表面に接触摺擦するようにクリーニングブラシ53Yを配している。さらにクリーニングブラシ53Yに接触してトナー回収ローラ54Yを配し、トナー回収ローラ54Yからゴムブレード57Yによってトナーを除去する構成を適用している。クリーニング装置100Yによって、クリーニング処理が施された感光体2Y表面は、図示しない除電ランプ等の除電手段3Yによって除電されて、次の画像形成に備えられる。
先に示した図1において、他色用の作像プロセス部1C、M、Kにおいても、同様にして感光体2C、M、K上にC、M、Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト21上に中間転写される。
作像プロセス部1Y、C、M、Kの図中下方には、像担持体たる中間転写ベルト21を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット20が配設されている。転写手段たる転写ユニット20は、中間転写ベルト21の他、駆動ローラ22、従動ローラ23、4つの一次転写ローラ24Y、C、M、K、二次転写ローラ25、図示しないベルトクリーニング装置などを備えている。
中間転写ベルト21は、そのループ内側に配設された駆動ローラ22と従動ローラ23とによって張架されながら、駆動ローラ22の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。
4つの一次転写ローラ24Y、C、M、Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト21を感光体2Y、C、M、Kとの間に挟み込んでY、C、M、K用の一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト21の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。転写体たる中間転写ベルト21は、その無端移動に伴ってY、C、M、K用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体2Y、C、M、K上のY、C、M、Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト21のループ外側には、図示しない電源から出力される二次転写バイアスが印加される二次転写ローラ25が配設されており、これはベルトループ内側の駆動ローラ22との間に中間転写ベルト21を挟み込んで二次転写ニップを形成している。
転写ユニット20の下方には、図示しない給紙カセットが配設されている。この給紙カセット内には、転写体たる記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、一番上の記録紙Pを所定のタイミングで図示しない給紙路に送り出す。この給紙路の末端には、レジストローラ対31が配設されている。レジストローラ対31は、記録紙Pを互いに当接しながら回転するローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを中間転写ベルト21上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに向けて送り出す。
中間転写ベルト21上に形成された4色トナー像は、二次転写バイアスが印加される二次転写ローラ25と接地された駆動ローラ22との間に形成される二次転写電界や、ニップ圧の影響により、二次転写ニップ内で記録紙Pに一括二次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、従動ローラ23との間に中間転写ベルト21を挟み込んでいる図示しないベルトクリーニング装置によって除去される。
二次転写ニップの上方には、図示しない定着装置が配設されている。この定着装置は、電子写真方式の画像形成装置で周知になっているように、加圧や加熱によってトナー像を記録紙Pに定着せしめるものである。
なお、感光体2Y、C、M、K上のY、M、C、Kトナーは、Y、C、M、K用の一次転写ニップにおいて、自らと逆極性の一次転写バイアスが印加されることで、逆極性の電荷注入を受けてしまう場合がある。このため、感光体2Y、C、M、K上の転写残トナーの中には、正規極性トナー粒子と逆帯電トナー粒子とが混在している。
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、4つの作像プロセス部1Y、C、M、Kが、像担持体たる感光体2Y、C、M、Kの無端移動する表面にトナー像を形成するトナー像形成手段として機能している。また、4つの作像プロセス部1Y、C、M、Kと転写ユニット20との組合せが、像担持体たる中間転写ベルト21の無端移動する表面にトナー像を形成するトナー像形成手段ととして機能している。
トナーとしては、粒子に添加剤が含有せしめられたものを用いている。この添加剤としては、従来から公知のものを使用することができる。具体的には、Si、Ti、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、In、Ga、Ni、Mn、W、Fe、Co、Zn、Cr、Mo、Cu、Ag、V、Zr等の酸化物や複合酸化物等である。特に、Si、Ti、Alの酸化物であるシリカ、チタニア、アルミナなどが好適である。添加剤の添加量は、母体粒子100重量部に対して0.5から1.8重量部であることが好ましく、特に好ましくは、0.7から1.5重量部である。
また、トナーとしては、処理剤を用いた表面処理を施したものを用いることが望ましい。かかる表面処理に用いる処理剤としては、有機系シラン化合物などが好ましい。例えば、メチルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のアルキルクロロシラン類、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルメトキシシラン類である。また、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル等でもよい。表面処理方法としては、有機シラン化合物を含有する溶液中に添加剤を漬積し乾燥させる方法、添加剤に有機シラン化合物を含有する溶液を噴霧し乾燥させる方法等が挙げられる。
また、トナーとしては、体積平均粒径の範囲が3[μm]から7[μm]であるものを用いることが望ましい。
また、2成分現像剤を用いる場合の、磁性キャリアとしては、粒子径20[μm]から200[μm]程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど、従来から公知のものを使用することができる。本プリンタでは、金属又は樹脂からなるコア中にフェライト等の磁性材料を含有し、且つ表層にシリコーン樹脂等による被覆が施された平均粒径55[μm]のものを用いている。表層の被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。また、ポリビニル樹脂、ポリビニリデン系樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂等でもよい。また、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂などでもよい。また、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体などでもよい。また、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂などでもよい。なお、必要に応じて導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。かかる導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛などを用いることができる。これらの導電粉としては、平均粒子径1[μm]以下のものが好ましい。平均粒子径が1[μm]よりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になるからである。
感光体2Y、C、M、Kに形成された静電潜像を現像する現像装置6Y、C、M、Kには一般的に感光体にトナーを供給する部材として、それぞれ、現像ローラ61Y、C、M、Kを有する。また、現像ローラ62Y、C、M、Kに、現像装置6Y、C、M、Kの各現像剤収容部を形成するケース7Y、C、M、Kに収容された現像剤を供給する供給ローラ62Y、C、M、Kも有している。現像ローラはトナーを像担持体へ受け渡す機能を有するため、トナーに対して大きな付着力を持つことは好ましくない。ゆえに本発明を好適に用いることができる。
現像ローラ61Y、C、M、Kは、一成分トナーを摩擦により帯電させるために外周部がゴム等の摩擦係数の低い弾性材により形成されたローラ部と、このローラ部の中心を貫通する金属製の軸部とからなる。
弾性材に用いられる材料としては、弾性材ゴム、エラストマー等の弾性部材が挙げられ、具体的には、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム等を用いることができる。また、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム等でもよい。また、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
外周部がゴム等の摩擦係数の低い弾性材により形成されたローラ部と、このローラ部の中心を貫通する金属製の軸部とからなるローラ、また表面が金属からなるローラ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属も用いられる。上記現像ローラの表面には、経時品質を安定化させるために適宜コ−ト材料を被覆されることがある。表層コート材料は、帯電がトナーと逆極性でも良いし、トナーを所望の極性に摩擦帯電する機能を持たせない場合は同極性でも良い。前者の表層コート材料としては、シリコン、アクリル、ポリウレタン等の樹脂、ゴムを含有する材料を挙げることができる。また後者の表層コート材料としては、フッ素を含有する材料を挙げることができる。フッ素を含んだいわゆるテフロン(登録商標)系材料は表面エネルギーが低く、離型性が優れるため、経時におけるトナーフィルミングが極めて発生しにくい。また、上記表層コート材料に用いることができる一般的な樹脂材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニールエーテル(PFA)等を用いることができる。また、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等でもよい。また、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等を挙げることができる。これに導電性を得るために適宜カ−ボンブラック等の導電性材料を含有させることが多い。更に均一に現像ローラコートできるように、他の樹脂を混ぜ合わせることもある。
ここで、現像ローラ61の表面とトナー1個体との間で生じる付着力を、100[nN]以下にできる現像ローラ61の構成の一例として、現像ローラ61の表面に1[μm]以下の凹凸を設ける手段を以下に説明する。また、作像プロセス部1Y、C、M、Kは、作像する現像剤の色がそれぞれ異なるだけで、基本的な構成、動作は同様であるので、以下の説明では、各色を示す符号(Y、C、M、K)を省略して説明する。
現像ローラ61の表面に1[μm]以下の凹凸を設ける手段には種々の方法がある。その代表的な方法の例として以下の(1)〜(4)について図3〜10を用いて説明する。いずれの方式も、上述した方法で現像ローラを作製した後に、最終工程として用いるものである。また、現像ローラ表面に1[μm]以下の凹凸を設ける手段の説明では、他の説明との混同をさけるため、現像ローラを現像ローラ80として説明する。
現像ローラ80の表面に凹凸を設ける方法としては、現像ローラ80の表面上に凸部を付加する方法と、現像ローラ80の表面に穴あけ加工を施して凹部を設ける方法の2通りがある。いずれの方法でも、現像ローラ80の表面に設けられる凹凸の最終的な周期としては、500[nm]間隔、望ましくは50[nm]間隔とし、凹凸の高さは10[nm]以上1000[nm]以下とするのが良い。
(1)インクジェット法
現像ローラ80の表面に微細な凹凸を設ける手法としては、現像ローラ80の表面に微小なインク(液滴)を吹き付けて、そのインク(液滴)により現像ローラ80の表面に凸部を形成するインクジェット方式の方法がある。より具体的には、図3に示すように、インク(液滴)が噴出されるノズル82が設けられたヘッド81を、図4(a)に示すように現像ローラ長手方向に一端側から他端側に移動させる。そして、ヘッド81を移動させつつ、現像ローラ表面にヘッド81のノズル82から周期的にインク(液滴)を噴出することで、現像ローラ表面にインク(液滴)による微細な凸部が複数形成される。ヘッド81が現像ローラ長手方向の一端側から他端側に移動し終えたら、図4(b)に示すように現像ローラ80を周方向に回転させる。その後、図4(c)に示すようにヘッド81を現像ローラ長手方向の前記他端側から前記一端側に移動させつつ、現像ローラ表面にヘッド81のノズル82から周期的にインク(液滴)を噴出して、現像ローラ表面にインク(液滴)による微細な凸部を複数形成する。以後、図4(d)や図4(e)に示すように、このような動作を繰り返すことで、最終的に現像ローラ表面全体に微細な凹凸を設けることができる。
現像ローラ80に吹き付けるインク(液滴)は、大きさが数[μm]から数十[μm]程度の開口を持つノズル82から噴出される。このノズル82はインクで充てんされた微小な圧力室につながっており、この圧力室に極めて大きな圧力を発生させてインクをノズル82から噴出させる。圧力発生源としてはピエゾ素子を用いたピエゾ方式と熱による液体の沸騰現象を用いたバブル方式とがある。
使用できるインク(液滴)は、圧力発生源の種類により異なるが、ピエゾ方式のヘッド81では数十[mPa・s]以下であることが要求される。その他の条件としては、ヘッド81内で固化や析出物を出さない、乾燥による目詰まりを起こさない等がある。
また、インク(液滴)中には、ナノ粒子90を独立分散されている。ナノ粒子90に金属系のものを用いる場合は、有機物でナノ粒子90をコートした状態で用いる。これは、金属の表面が活性であるために凝集し易い傾向にあるためである。より具体的なナノ粒子90としては、数[nm]〜数十[nm]の大きさのAu、Ag、Ni、Mn、SiO2等を用いることが可能である。これらのナノ粒子90の大きさが、現像ローラ表面に設けられる微細な凹凸の最終的なサイズに大きく寄与する。
インクは、無溶媒系と溶媒系とに大別される。無溶媒系とは揮発性の溶媒を含まない機能性インクで、インク全体が揮発性材料として機能する。この無溶媒系の機能性インクの例としては、液晶材料、紫外線効果樹脂、及び、熱硬化性樹脂等がある。溶媒系の機能性インクは、揮発性の溶媒に機能性材料を溶解または分散させ、溶媒を乾燥プロセスで除去することで機能性材料91の薄膜を得る(図5参照)。
また、現像ローラ80の表面に凹凸を設ける加工を施す加工時間を短くするために、現像ローラ80の表面にインク(液滴)によって付加したい凸部の周期と同じサイズのヘッド81を複数用意する。そして、その複数のヘッド81を図6に示すように現像ローラ80の長手方向の幅にアレイ状に連ねて現像ローラ長手方向に長尺なラインヘッド83を構成する。このようにラインヘッド83を構成するとで、上述したようなヘッド81の現像ローラ長手方向の移動を略し、現像ローラ80を周方向に回転させつつラインヘッド83のノズル82からインク(液滴)を現像ローラ表面に噴出させて、現像ローラ表面に凸部を形成する加工工程を行なうことも可能である。このようにヘッド81を現像ローラ80の長手方向の幅にアレイ状に連ねた構成を採用した場合には、ヘッドの作製コストが上がるが、現像ローラ80の加工時間は短くすることができるため、現像ローラ80に量産性が見込める場合はこの手法が有利となる。
(2)溶液浸漬法
溶液浸漬法では、図7に示すように、溶媒92にナノ粒子93が分散された溶液94に現像ローラ80を浸し、溶液94から現像ローラ80を取り出した後、現像ローラ80を乾燥させることで、現像ローラ表面の全面に一度で微細な凹凸を設けることができる。上述したインクジェット法に比べて、現像ローラ80の表面に設けられる凹凸の周期を制御するのは難しくなるが、インクジェット法のようなヘッド81を複数回、現像ローラ長手方向に移動させる必要がないため、加工時間を短くすることが可能となる。
溶液浸漬法で用いることができる具体的な溶媒92やナノ粒子93としては、基本的に上述したインクジェット法と同じものを用いることができる。この手法の場合、現像ローラ表面に設けられる微細な凹凸の周期は、溶媒92の粘土や、その溶媒92に混合させるナノ粒子93の濃度などに依存する。また、加工後の現像ローラ表面の凹凸ムラは、溶液94中のナノ粒子93のナノオーダーの分散状態に依存するので、溶液94をよく撹拌するとともに、撹拌した後の溶液94中に現像ローラ80を浸すまでの時間も管理すべきである。
(3)リソグラフィー法
リソグラフィーによっても、現像ローラ表面に微細な凹凸を設けることができる。図8は現像ローラ80の現像ローラ長手方向の断面図であり、具体的には、図8に示すように、現像ローラ80の表面に感光性樹脂(レジスト)84を塗布した後、露光により感光性樹脂(レジスト)84の改質させた部分87を溶媒で除去する。このように処理することで、感光性樹脂(レジスト)84に凹部89が形成され、現像ローラ表面に微細な凹凸のパターンを設けることができる。また、感光性樹脂84の改質させた部分87を溶媒で除去するのではなく、感光性樹脂84の改質させなかった部分88を溶媒で除去することで、現像ローラ80の表面に微細な凹凸のパターンを設けることもできる。感光性樹脂84の改質させた部分(露光部分)87を溶媒で除去する方法はポジ型と呼ばれ、感光性樹脂の改質させなかった部分(非露光部分)88を溶媒で除去する方法はネガ型と呼ばれている。
ポジ型の感光性樹脂(レジスト)84の材料としては、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソ−1−ナフタレンスルホン酸のようなナフトキノンジアジド化合物が用いることができる。また、ネガ型の感光性樹脂(レジスト)材料としては、ビスアジド化合物が用いることができる。実際にどのような材料を使用するかは、現像ローラ80の表層に用いる材料と感光性樹脂(レジスト)84との親和性で決定する。半導体やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)のような平坦な基板に塗布する場合は、通常、平滑性を重視してスピンコータで塗布する。しかし、本実施形態では液槽に現像ローラ80を一定時間浸すディッピング方式、もしくは、現像ローラ80の表面にスプレーで直接、感光性樹脂(レジスト)84を吹き付けることで、現像ローラ80上に感光性樹脂(レジスト)84の層を設ける。
リソグラフィーは、露光の光源の種類で、パターニングの精度が決まる。本実施形態のようにサブミクロンからナノオーダーの凹凸を現像ローラ表面に作製したい場合は、ArFレーザーやF2レーザー、極端紫外線(EUV)、更には、電子線を用いる必要がある。露光の際には、加工したいパターン周期のマスクを介して露光をするが、加工時間が長くなるというデメリットはあるものの電子線リソグラフィーでは、マスク無しで露光することが可能である。
露光後の感光性樹脂(レジスト)84の除去には、KOH、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、NH4F・HF・H2Oの水溶液、HF・H2Oの水溶液を用いるが、具体的な種類は感光性樹脂(レジスト)84の材料の種類による。また、この溶液が、感光性樹脂(レジスト)84の除去後に微量でも現像ローラ表面に残存すると、実機使用時に現像ローラ表面に担持されたトナーが溶液によって溶融されてしまう。そのため、感光性樹脂(レジスト)84の除去後に、専用リンスや純水で現像ローラ表面をしっかり洗うことが肝要である。
(4)レーザーアブレーション法
レーザーアブレーション(レーザーによるドライ加工)によっても、現像ローラ80の表面に微細な凹凸を設けることができる。レーザーアブレーションは、加工対象にレーザーを照射させて、対象表面を熱的、もしくは、化学的に分解させ、更には、その分解されたフラグメントが蒸発することで、現像ローラ80の表面に穴あけ加工を施す手法である。このレーザーアブレーションは、上述したリソグラフィーのように、現像・露光・乾燥といった複数の工程を経ず、単一の工程で加工できることが特徴である。レーザーアブレーションは、様々な光源で開発がされているが、特に、本実施形態のようにサブミクロンの凹凸を現像ローラ表面に作製したい場合は、レーザー照射による熱的拡散は可能な限り抑制すべきであり、そのためにはパルス長は短い方が有利である。近年の研究で、フェムト秒レーザーでアブレーションが起こる閾値近傍の低フルーエンス(エネルギー密度)で照射すると、レーザー波長の1/10〜1/5と非常に小さい周期的微細構造が形成されることがわかっており、数十[nm]オーダーの加工は十分に可能である。
レーザーアブレーションによる現像ローラ80の表面に微細な凹凸を設ける加工の順序としては、上述したようなインクジェット法と同じであり、まず現像ローラ80の表面の現像ローラ長手方向に穴あけ加工を施す。その後、現像ローラ80を周方向に回転させて、穴あけ加工が施されていない現像ローラ80の表面の現像ローラ長手方向に穴あけ加工を施す、という作業を繰り返す。本手法の場合、図9に示すように現像ローラ80の表面に穴あけ加工を施して凹凸を設けている。そのため、図10に示すように現像ローラ80の表面にインク(液滴)を吹き付けてインク(液滴)による凸部を形成して現像ローラ80の表面に凹凸を設けるインクジェット法とは凹凸の関係が異なるが、凹凸の周期Tや高さhは同じ条件である。
ここで、従来技術の問題点についてより詳細に説明する。近年、電子写真方式を利用した複写機やレーザープリンタなどの画像形成装置は、画質、印刷速度の向上、機械サイズの小型化等、多様な点で著しい進歩を遂げている。電子写真方式は、光導電性物質を利用し、感光体上に電気的潜像を形成する工程と、潜像をトナーを用いて現像する現像工程と、紙等の記録媒体にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱等により、トナー画像を定着する定着工程を有している。そして、これらの工程のなかで画像形成に直接関わる現像工程は、画像形成装置を高機能化する上で非常に重要である。
一般に、電子写真における現像方式においては、トナーのみを現像剤として用いる一成分現像方式と、トナーとキャリアとを現像剤として用いる二成分現像方式とがある。
一成分現像方式は、これらのトナーを現像ローラに移動させて搬送し、トナー層規制部材によってトナーを摩擦帯電すると同時にトナーの層の厚みを規制し、現像ローラ上の薄層状態のトナーを電気的な力により現像するものである。この現像ローラと潜像担持体とがお互いに対向した現像領域において、潜像担持体に形成された静電潜像をトナーによって可視像化している。ここで、所定濃度の高品質な可視像を形成するには、充分に帯電した多量のトナーを現像領域に搬送し、かかるトナーによって潜像を可視像化する必要がある。
一方、二成分現像方式は、トナーとキャリアとを攪拌することによってトナーに適正な帯電量をもたせる。この方式は、マグネットローラの外側に回転可能な非磁性スリーブを設けた現像ローラにより、現像剤を潜像担持体まで搬送し、潜像を現像する方式である。二成分現像方式においては、キャリアがトナーの帯電、搬送の役割を担っており、それらの混合比や攪拌状態が画像形成に大きく関わることが知られている。
何れの現像方式でも、慢性課題の一つとして、トナーを保持する現像ローラ、もしくは、キャリアの表面汚染がある。現像ローラやキャリアなどは、マシン使用中、常に、トナーと接触・摺擦しているため、その表面にトナー成分が付着し剥がれない状態になることがある。このような状態になると、本来、現像ローラやキャリアなどが持つトナーを帯電させる機能が低下するだけでなく、現像ローラ表面やキャリア表面などの汚染が酷い状態になると、トナーを保持することすらできなくなる。この結果、画像ムラの発生や、ベタ画像中での白スジの発生等の不具合が起こる。
このような現像ローラ表面やキャリア表面などがトナーで汚染させる現象はトナーフィルミングと呼ばれるが、近年のトナー開発のトレンドにより、トナーフィルミングは特に大きな課題となっている。
その理由としては、トナーのワックス含有化である。近年の画像形成装置は、部品点数削減のため、紙にトナーを定着させる定着工程での定着ローラへのワックス塗布を、トナーを介して行うようになりつつある。そのため、トナー粒子内部にワックスを含有させたワックス含有トナーが使用されるようになっている。ワックスは分子量が小さいため、粘性が低く、それ故に、通常の樹脂材料よりも、更に、現像ローラ表面やキャリア表面の汚染を引き起こし易くなってきている。
また、他の理由としては、トナーの小粒径化である。近年、高画質化の為のトナーの小粒径化が進んできているが、トナーの粒径が小さくなると、1個のトナーの単位体積あたりにかかるストレスが大きくなるため、トナーの劣化の進行速度は大きくなる。故に、現像ローラ表面やキャリア表面にトナーが付着しやすくなり、トナーフィルミングが起こりやすくなる。
現像ローラのトナーフィルミングを抑制する為に、従来より様々な手法が提案されているが、何れの方法も根本的な解決には至っていないのが実情である。以下、一成分現像の現像ローラのトナーフィルミングを抑制する従来の発明を記す。主な発明としては、現像ローラ以外の条件を改良する発明と現像ローラ自体を改良する発明の2通りある。
前者については、例えば、特開2002−351133号公報では、用いるトナー中の微粉トナー率を制限するというような方法が提案されているが、そもそもトナーの粒径が小さくなりつつあるというトレンドの中では、その効果は限定的である。また、特開平8−44169号公報では、現像ローラの下方側に下シール材を設け、この下シール材に除電用電圧を印加することで、現像ローラ上のトナーを回収し易いようする方法の構成が開示されている。しかし、トナーの除電は必ずしも容易なものではなく、特に複数層のトナーが重なった個所においては除電効率が低くなる為、その効果は限定的である。
一方、後者のように現像ローラそのものの特性を変えることで、フィルミングを抑制しようという提案も多数ある。より具体的には、現像ローラ表面の離型性を向上させて、トナーが現像ローラに付着しにくくしようというものである。
特開2006−227447号公報(特許文献2)では、現像ローラ表面を構成する部材としてシリコーン系の化合物を用い、現像ローラ表面の表面粗さを規定することで、現像ローラ表面にトナーフィルミングが生じるのを抑制するという構成が開示されている。また、特開平11−282248号公報(特許文献1)では、トナーが付き難い樹脂系材料とゴム系材料とをブレンドした部材を現像ローラ表面を構成する部材として用いることで、現像ローラ表面の低摩擦係数化を図り現像ローラ表面にトナーフィルミングが生じるのを抑制するという構成が開示されている。
しかしながら、何れの文献に開示された構成もその効果は限定的である。理由は主に二つある。まず一つ目の理由は、最終的に達成したい現像ローラ表面からのトナーの離型性を直接的に評価、管理できていないことである。例えば、特開平11−282248号公報(特許文献2)ではトナーフィルミング低減の達成方法として、現像ローラ表面を低摩擦係数な状態にすることを挙げているが、摩擦係数は摩擦対象物により大きく変化する。したがって、必ずしも現像ローラ表面からのトナーの離型性につながるものにはならない。もう一つの理由は、これらの処方、評価方法がマクロ的なものである、ということである。というのも、現像ローラ表面上のほとんどの領域が上記離型性の良い状態であったとしても、現像ローラ表面上で部分的に上記離型性の悪い領域が存在していると、その離型性の悪い領域がトリガーとなってトナーフィルミングが進行してしまうからである。
上述した従来技術の問題点に鑑み、本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、現像ローラ表面に対する1個のトナーの付着力を測定し、その測定した付着力によって現像ローラ表面からのトナーの離型性を的確に判断できることを見出した。そして、現像ローラ表面に対する1個のトナーの付着力を100[nN]以下にすることで、現像ローラ表面にトナーフィルミングが発生するのを抑えることができることも見出した。さらに、現像ローラ表面上に安定的に微粒子を供給していくことで、トナーの現像ローラ表面への付着力を、より確実に低くすることができ、長期に亘り現像ローラ表面に対する1個のトナーの付着力を100[nN]以下に維持することができることも見出した。
ここで、現像剤担持体表面とトナー1個体との間で生じる付着力が100[nN]以下とすることで、現像剤担持体表面にトナーフィルミングが発生するのを抑えることができることを見い出すに至った、実験の一例を以下に説明する。
[実験例]
本実験例は図18に示す現像装置6を用いて、随時、シリカをユニット内に補給することで、シリカを現像ローラ表面に供給し、現像ローラ表面の低付着力化を実現した例である。
<現像ローラ表面シリカ量とフィルミングの関係について>
現像ローラ表面にシリカを供給したときの現像ローラ表面の付着力と現像ローラ表面のフィルミング状態を示す。本実験結果から、シリカ供給により、現像ローラ表面の付着力を低い状態にでき、その結果から、現像ローラ表面のフィルミングを防止できる事がわかる。
[実験概要]
・実験装置:IPSiO SP C220改造機
・画像出力条件:画像濃度5[%]チャートで6000枚出力
<カートリッジ内トナー条件>
・トナー種:ワックス含有粉砕トナー(平均粒径7[μm])
・添加剤条件:小径シリカ(10[nm])1部、大径シリカ(50[nm])2部
・トナー容量:180[g]
・トナー色:シアン
<現像ローラ条件>
芯金であるφ6[mm]のアルミニウムに、3[mm]厚の弾性ゴム層を形成した。また、現像ローラ表面上のトナー量を制御するために、径20[μm]の粗さ粒子を現像ローラの表面に埋め込んである(現像ローラ表面粗さRa:1.8[μm])。
<シリカ供給条件>
・供給シリカ種:粒径の異なる2種類(小径10[nm]、大径100[nm])のシリカを供給
・供給シリカ量:2000枚出力毎に小径シリカ0.5[g]、大径シリカ1.0[g]を供給
・現像ローラ表面上のシリカ配置状態確認方法:出力枚数6000枚後の現像ローラ表面を電子顕微鏡を用い、20000倍の条件で現像ローラ表面の状態を評価した。
ただし、シリカ供給機構を作動させない条件では、フィルミングを発生している為、現像ローラ表面上への直接のシリカ供給状態を把握できるように、フィルミングが発生していない領域を選択して観察した結果である。
<現像ローラ付着力評価条件>
・評価方法:原子間力顕微鏡を用いたトナー付着力評価方法で評価した。より具体的には、画像出力後の現像ローラ表面を芯金から引き剥がし、約10[mm]角へ切り出して測定を行った。
・原子間力顕微鏡(AFM):走査型プローブ顕微鏡SPI4000、多機能型ユニット
・SPA400(SIIナノテクノロジー(株)製)
・付着力測定方法:フォースカーブ法
・測定モード:コンタクトモード
・カンチレバー:オリンパス(株)社製 標準窒化シリコンカンチレバーOMCL−R
C800PSA、バネ定数:0.76[N/m]
・計測エリア:4[μm]角
・測定点数:縦方向7×横方向7=49点
・最大負荷条件:カンチレバー先端と試料表面の押し付け強さ50[nN]狙いで設定
・カンチレバー先端のトナー粒径:6.5[μm]
・トナー種類:(株)リコー社製 PxPトナーの試作品、及び、外部添加剤を用いていないPxPトナーの試作品
<現像ローラフィルミング評価条件>
・評価方法:出力枚数6000枚後に、レーザー顕微鏡観察とサックイン法による帯電量評価を実施した。
なお、帯電量評価は、帯電・現像バイアスを印加した状態で、1分間駆動させた後に測定した。また、現像ローラ単体の劣化状態を評価するために、現像ローラ以外の部品とトナーは未使用のものを使用する。
・レーザー顕微鏡:キーエンス社製 VK8500(測定倍率:20倍、50倍)
・観察はローラ中央部と両端部の計3箇所でおこなった。フィルミングの有無は、使用したトナーの色が現像ローラ表面上に着色されているか否かで判断した。
以下に、実験結果の詳細を説明する。
図19、図20、図21から、本発明によってシリカ供給機構が機能していることがわかる。すなわち、図19に示すように未使用の現像ローラ表面には、荷電制御のカーボン粒子が点在している以外は基本的に平坦な表面であるのに対し、図20に示すようにシリカ供給機構を作動させた現像ローラ表面では、現像ローラ表面に均一且つ隙間無くシリカが配置されていることがわかる。一方、図21に示すようにシリカ供給機構を作動させていない場合の現像ローラ表面は、トナー粒子から遊離したシリカが部分的に付着してはいるものの、元々の現像ローラ表面が露出している領域が大きい。
図17、図22、図23は、これらの現像ローラ表面の付着力である。シリカ供給機構を作動させた現像ローラ61では、図17に示すように全ての測定位置で付着力が100[nN]以下となる低付着力の状態を達成できていることがわかる。一方、シリカ供給機構を作動させないと、図23に示すように部分的に付着力が100[nN]を超える大きな領域が存在する。図22に示した未使用品の現像ローラ表面の付着力の測定結果から明らかなように、本実験で使用した現像ローラ61の表面はトナーとの間で生じる付着力が100[nN]を超える材料からなるものであるので、図23に示された付着力が100[nN]を超える高付着力の領域は、元々の現像ローラ表面を構成する材料が露出している領域である。
更に、図24は、トナー表面に外部添加剤を添加していないトナーをカンチレバー先に取り付けたプローブで、シリカ供給機構を作動させた現像ローラ61の付着力を測定した結果である。トナー表面に外部添加剤を添加していないトナーでは、その付着力は非常に大きくなるが、そのようなトナーを用いてもシリカ供給機構を作動させた現像ローラ表面の付着力は低い状態におさえることができている。長時間使用すると、現像装置6内のトナーはその外部添加剤の埋没、剥がれた状態になり、かつ、フィルミングが起こり易くなる。図24は、そのようなトナーが現像装置6内に存在していたとしても、シリカ供給機構を作動させていれば、現像ローラ表面とトナーとの間の付着力を小さくし、かつ、フィルミングの発生を抑制できることを示している。
表1にシリカ供給機構を作動させた場合と作動させない場合それぞれにおける現像ローラ表面のフィルミング状態の評価結果を示す。
シリカ供給機構を作動させないと現像ローラ表面にトナー樹脂が数百[μm]の大きさで海島状に付着しているのに対して、シリカ供給機構を作動させると部分的に削れてはいるものの現像ローラ表面にトナー樹脂の付着はなかった。また、シリカ供給機構を作動させると、現像ローラ61の重要な機能であるトナー帯電機能も低下しなかった。
以上の実験結果から、現像ローラ表面に対する1個のトナーの付着力を測定し、その測定した付着力によって現像ローラ表面からのトナーの離型性を的確に判断できることがわかる。そして、現像ローラ表面に対する1個のトナーの付着力を100[nN]以下にすることで、現像ローラ表面にトナーフィルミングが発生するのを抑えることができることもわかる。さらに、現像ローラ表面上に安定的に微粒子を供給していくことで、トナーの現像ローラ表面への付着力を、より確実に低くすることができ、長期に亘り現像ローラ表面に対する1個のトナーの付着力を100[nN]以下に維持することができることもわかる。
以下、本発明の特徴部である、現像ローラ表面上に安定的に微粒子を供給していく構成についての一例を説明する。ここで説明する例は、上記実験例のシリカ供給機構に換え、現像剤担持体である現像ローラの表面に微粒子を安定的、且つ、長期に亘り供給する構成を提供するものである。
図11は、本発明を具現化するための現像装置6の一例を示している。また、本実施形態の現像装置6で使用する現像剤には、現像剤ローラ61の表面とトナーとの付着力を低減するために外部添加する微粒子として、無機微粒子である粒径が1[μm]以下のシリカを予め添加している。
現像装置6には、トナーからなる一成分現像剤を収容する現像剤収容部8を形成するケース7内に、上部側の現像剤収容部8aと下部側の現像剤収容部bとに区切る、現像剤供給量の調整機構としての現像剤区切り部材9を備えている。また、上部側の現像剤収容部8aには、トナーの攪拌部材であるアジテータ64とスクリュー65が設けられている。また、下部側の現像剤収容部bには、現像剤担持体である現像剤ローラ61及び現像剤ローラ61への現像剤を供給する供給ローラ62が設けられている。そして、現像剤区切り部材9は、ケース7の内壁面における供給ローラ62の近傍で、且つ、現像剤ローラ61から離れた側の壁面から現像剤ローラ61が設けられた側のケース7の内壁面から所定量だけ後退した位置まで延伸して設けられている。
通常、現像を始めて行う折には、現像剤収容部8における上部側の現像剤収容部8aのアジテータ64とスクリュー65とを覆い隠す位置まで現像剤が収容されている。収容されている現像剤は、感光体2上の静電潜像の現像動作にともなうトナーの消費と、外部添加されているシリカの現像動作に伴う消費により少なくなっていく。また、現像ローラ61上に供給さシリカ量は、現像ローラ61に付着しているシリカの一部が現像ローラ61の現像装置6外に露出している部分から離反すること、及び現像剤収容部8の最下部の隅部等に滞留してしまうことでも少なくなってしまう。
まず、本実施形態の特徴である現像剤収容部8内に設けた現像剤供給量の調整機構としての現像剤区切り部材9を説明する前に、現像剤区切り部材9を備えていない場合の、現像剤収容部8内の現像剤の流れについて図12(a)を用いて説明する。
図12(a)は、現像剤供給量の調整機構としての現像剤区切り部材9を備えていない場合の、現像剤収容部8の下方部分の現像剤の流れ示した概念図である。この図で示すように、現像剤収容部8の上部でアジテータ64で攪拌された現像剤が、スクリュー65とケース7の現像ローラ61側の内壁面との間から、現像ローラ61及び供給ローラ62の現像剤供給領域近傍まで搬送される。そして、搬送された現像剤の一部は、供給ローラ62と現像ローラ61のニップ部の擦動により、現像ローラに保持・搬送され、感光体2の現像領域に供給され、消費される。
現像動作により消費されずに現像ローラ61上に残った現像剤は、現像ローラ61の回転に伴い、現像剤収容部8内に戻される。ここで、現像剤収容部8内に戻されただけでは現像ローラ61上から離反せず付着した状態のままの現像剤も、供給ローラ62とのニップ部入り口で擦動されることにより、離反した状態となり、現像剤収容部8の下部に戻される。
そして、現像剤収容部8の下部に戻された現像剤は、供給ローラ62の回転とのスクリュー65の回転によるトナーの流れにより、スクリュー65とケース7の現像ローラ61から離れた側の内壁面との間から、アジテータ64が攪拌動作を行っている領域に搬送される。
このような現像剤の現像剤収容部8内での流れにおいて、現像剤に外部添加されているシリカはトナーの粒子よりも小さい。そのため、トナー表面に付着していないシリカは、上述した現像剤収容部8の上部から現像剤供給領域近傍に搬送される折、トナー粒子の間隙を通り、現像ローラ61表面上に必要量以上のシリカが供給されてしまう。
その結果、図13で示す破線のグラフのように、現像ローラ61表面上に供給されるシリカは、感光体2上の静電潜像の現像動作の初期には必要量以に現像ローラ61上に供給される。そして、時間がたつにつれ現像ローラ61上のシリカ量が少なくなってしまう。この現象は、現像動作に伴うトナーの消費に伴うシリカの消費、及び現像ローラ61に付着していたシリカの一部が現像装置6外で離反することで、現像剤供給領域に搬送されるシリカ量が少なくなっていくためである。
そして、現像ローラ61表面上に供給されるシリカ量が、現像動作の初期には必要以上に供給され、時間の経過についれ、顕著に少なくなってくる。そのため、長期に亘り、現像ローラ61表面上に微粒子として、無機微粒子である粒径が1[μm]以下のシリカを安定的に供給しつづけることはできない。
その結果、図14で示す破線のグラフのように、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力が、初期には必要量以に現像ローラ61上に供給されることで、フルミングが発生する付着直を下回ることができる。しかし、時間がたつにつれ現像ローラ61上に供給されるシリカ量が少なくなることで、フルミングが発生する付着力を上回ってしまう。
別途、現像剤にシリカを補給する構成、又は現像ローラ61への現像剤供給領域に直接、シリカを搬送する構成を設けない限り、トナーの現像ローラ表面への付着力を、より確実に低減することが難しくなってしまう。
そこで、本実施形態では、特に複雑な構成を用いることなく、現像剤収容部8内に現像剤供給量の調整機構としての現像剤区切り部材9を設けている。このような構成とすることで、上述した現像動作の初期には必要量以上のシリカが現像ローラ61上に供給され、時間の経過とともに現像ローラ61上に供給されるシリカが少なくなってしまうという問題を解決している。以下にその詳細について説明する。
まず、本実施形態の特徴である現像剤収容部8内に現像剤供給量の調整機構としての現像剤区切り部材9を設けた場合の、現像剤収容部8(8a、8b)内の現像剤の流れについて図12(b)を用いて説明する。
図12(b)は、現像剤供給量の調整機構としての現像剤区切り部材9を備えている場合の、現像剤収容部8の下方部分の現像剤の流れ示した概念図である。この図で示すように、本実施形態の現像剤収容部8は、現像剤区切り部材9により、アジテータ64とスクリュー65が設けられている上部側の現像剤収容部8aと、現像剤ローラ61及び供給ローラ62が設けられている下部側の現像剤収容部bに区切られている。そして、現像剤収容部8aと現像剤収容部bとは、現像剤ローラ61が設けられた側のケース7の内壁面から所定量だけ離れた位置まで設けられている連通部で繋がっている。また、通常、現像を始めて行う折には、現像剤収容部8aに設けられたアジテータ64とスクリュー65とを覆い隠す位置まで現像剤が収容されている。
このような構成をとることで、本実施形態の現像剤収容部8内の現像剤の流れは、図12(b)で示すように、現像剤収容部b内の現像剤は基本的には、上部側の現像剤収容部8a内に還流することはない。そして、現像剤収容部b内に満たされている現像剤の一部は、現像ローラ61への現像剤供給領域で供給ローラ62と現像ローラ61のニップ部の擦動により、現像ローラ61表面上に保持され、感光体2の現像領域に供給されて消費される。
現像動作により消費されずに現像ローラ61上に残った現像剤は、現像ローラ61の回転に伴い、現像剤収容部8b内に戻される。ここで、現像剤収容部8b内に戻されただけでは現像ローラ61上から離反せず付着した状態のままの現像剤も、供給ローラ62とのニップ部入り口で擦動されることにより、離反した状態となり、現像剤収容部8bの下部に戻される。
そして、現像剤収容部8bの下部に戻された現像剤は、供給ローラ62の回転によるトナーの流れにより、供給ローラ62の現像ローラ61から離れた側の内壁面との間を通って、現像ローラ61への現像剤供給領域を含む現像剤収容部8bの上部の領域に還流される。
現像剤収容部8b内の現像剤の流れが上述したようになることで、現像剤収容部8b内の現像動作に伴う現像剤が消費された量だけ、現像剤収容部8aから現像剤区切り部材9で区切られていない連通部を介して現像剤が補給されることとなる。
ここで、現像剤収容部8a内に収容されている現像剤は、上述した連通部でしか、現像剤収容部8b内の現像剤と接していないため、トナーの空隙を通って現像剤収容部8b内に移動してしまうシリカの量は非常に少ない。したがって、現像剤収容部8a内の現像剤に外部添加されたシリカ量が、現像動作の初期には必要以上に供給され、時間の経過についれ、顕著に少なくなっていくことはない。
よって、現像剤収容部8aから補給される現像剤に外部添加されたシリカが一定量(現像剤収容部8a内のシリカ含有率の分)づつ補給することができる。そして、図13で示す実線のグラフのように、現像動作による現像剤の消費に伴う現像ローラ61表面上に供給されるシリカ量の減少を防ぎ、長期に亘り、現像ローラ61上のシリカ量を必要量以上とすることができる。
このようにして、本実施形態では、特に複雑な構成を用いることなく、現像剤収容部8内に現像剤区切り部材9を設けることで、長期に亘り現像ローラ61表面上に、無機微粒子である粒径が1[μm]以下のシリカを安定的に供給することができる。
その結果、図14で示す実線のグラフのように、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力は、フルミングが発生する付着力より確実に下回ることができ、長期に亘りフルミングが発生の防止することができる。
以上、本実施形態では、現像剤ローラ61の表面とトナーとの付着力を低減するための外部添加する微粒子として、無機微粒子である粒径が1[μm]以下のシリカを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、1[μm]以下の樹脂微粒子であってもよい。ここで重要なことは、画像形成に悪影響を及ぼさず、現像剤ローラ61の表面上にサブミクロン単位の凹凸を満遍なく形成でき、現像剤ローラ61の表面とトナーとの付着力を低減できることである。
[変形例1]
また、本実施形態で用いる供給ローラ62の表層材料を離型性の良い材料でできた供給ローラとすることで、一度、現像ローラ61上に配置させたシリカを剥ぎ取ることを防ぐことで、現像ローラ61上のシリカを長く残らせることもできる。
現像ローラ61上のシリカを長く残らせることで、さらに、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力が、長期に亘りフルミングが発生する付着力を、より確実に下回ることができる。
供給ローラ62の表層材料を離型性の良い材料でできた供給ローラとするには、例えば、フッ素系材料、シリコン系材料で供給ローラをコートすることで達成できる。ここで、トナーの帯電性を考慮すると、フッ素系材料よりもシリコン系材料の方がより好適である。
ここで、供給ローラ62をシリコン系材料でコートする方法だが、一般的なシリコンコート剤の使用で現像ローラからシリカ粒子を剥ぎ取らないという効果は十分に発揮できる。そのため、具体的なコート剤は、コストや機械寿命等のマシンスペックと、割れや密着度といった耐久性を考慮して決定する。
[変形例2]
本実施形態で用いる現像装置6のケース7内の、現像ローラ61を除いた全ての部材の現像剤が接する表面を、トナー母体表面よりも離型性が良くすることで、ケース7内の全てのシリカが、トナーを介して、効率よく現像ローラ61上に搬送されるようにできる。
ケース7内の全てのシリカが、トナーを介して、効率よく現像ローラ61上に搬送されるようにすることで、さらに、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力が、長期に亘りフルミングが発生する付着力を、より確実に下回ることができる。
現像装置6のケース7内の、現像ローラ61を除いた全ての部材の現像剤が接する表面を、トナー母体表面よりも離型性が良くするには、例えば、各部材をフッ素系材料、又はシリコン系材料で供給ローラをコートすることで達成できる。つまり、フッ素系材料、又はシリコン系材料でスクリュー65、アジテータ64、ケース7の内壁等をコートすることで達成できる。また、変形例1の供給ローラ62と同様に、トナーの帯電性を考慮すると、フッ素系材料よりもシリコン系材料の方がより好適である。
また、変形例1の供給ローラ62と同様な理由により、具体的なコート剤は、コストや機械寿命等のマシンスペックと、割れや密着度といった耐久性を考慮して決定する。
[参考例]
図15は、本発明を具現化するための他の一例である参考例の現像装置6の構成を示している。また、本参考例の現像装置6で使用する現像剤には、現像剤ローラ61の表面とトナーとの付着力を低減するための外部添加する微粒子として、上述した実施形態と同様に、無機微粒子である粒径が1[μm]以下のシリカを予め添加している。
本参考例の構成が、上述した実施形態の構成と異なる点は、現像剤収容部8内に現像剤区切り部材9を設ける代わりに、供給ローラ62(スポンジローラ)に無機微粒子である粒径が1[μm]以下のシリカを予め埋め込んだ点である。したがって、以下、上述した実施形態と同様な点についての説明は省略する。
上述した実施形態との異なる点は、より具体的には、実施形態が上述した構成により、長期に亘り現像ローラ61の表面上にシリカを供給できるようにしていた。それに対し、本参考例では、供給ローラ62の軸部を除く部分をスポンジ材とし、図16に示すように、その表面及び内部にシリカをむことで、埋め込んだシリカと予め現像剤に外部添加しているシリカとを、現像ローラ61の表面上に供給することできる。そして、上述した実施形態と同様に、長期に亘り現像ローラ61の表面上にシリカを供給することができる。以下に詳細に説明する。
供給ローラ62の現像ローラと接する外周面だけではなく、スポンジ材の内部にも、分散性の高い状態でシリカを埋め込む。すると、供給ローラ62の外周面には、埋め込まれたシリカの一部が凸部を形成した状態となる。また、供給ローラの回転にともない、供給ローラの外周面に接した現像剤に予め混合しているシリカの一部も、既に埋め込まれているシリカの凸部を避けるように、分散性の高い状態で新たに供給ローラの表面に付着する。
そして、現像剤供給領域での現像ローラ61と供給ローラ62の摺擦により、スポンジ材に埋め込まれているシリカと、現像剤から新たに付着したシリカとがスポンジ材の外周面から、現像ローラの表面に剥がされるようにして分散性の高い状態で供給される。
また、供給ローラ62の、現像ローラ61に供給されたシリカが剥がされた凹部分には、スポンジ部材の内部に埋め込まれているシリカ、または予め現像剤に外部添加されているシリカが補充されて再度表面に埋め込まれた状態となる。これは供給ローラ62が回転することで、現像剤供給領域の圧迫が解除されて生じるスポンジ部材の負圧により、スポンジ部材の内部に埋め込まれているシリカ、または予め現像剤に外部添加されているシリカが補充されるものである。
このようにして、シリカが現像ローラ61の表面上に満遍なく供給されることで、実施例1と同様に、現像剤収容部8内の現像剤に外部添加されたシリカ量が、現像動作の初期には必要以上に供給され、時間の経過についれ、顕著に少なくなっていくことはない。
したがって、実施例1と同様に、特に複雑な構成を用いることなく、供給ローラ62のスポンジ材の表面及び内部にシリカをむことで、長期に亘り現像ローラ61表面上に、無機微粒子である粒径が1[μm]以下のシリカを安定的に供給することができる。よって、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力は、フルミングが発生する付着力より確実に下回ることができ、長期に亘りフルミングが発生を防止することができる。さらに、現像ローラ上のシリカの分散性が良くなれば、必要最低限のシリカ量で付着力を低減でき、コスト削減とシリカ供給過多による帯電の不安定性といった不具合を避けることができる。
ここで、シリカ埋込型供給ローラ62の製造方法について説明する。シリカ埋込型供給ローラ62の作製方法は、主に二通りの方法がある。一つは、接着剤を介して供給ローラ表面にシリカ粒子を保持させる方法であり、もう一つは、予めシリカ粒子を分散した樹脂液を用意し、その樹脂液を供給ローラ表面にコートする方法である。
前者の方法に関しては、供給ローラ62の表面への接着剤の塗布とシリカ粒子の塗布を複数回、繰り返しておこなうことが重要である。接着剤の塗布とシリカ粒子の塗布を1度しかおこなわないと、実機稼動後、短時間でシリカ粒子の供給が終わってしまうため、これらの作業を複数回繰り返すことが必要である。ここで用いる接着剤は、特に種類は限定されないが、あまり強度が強過ぎない方が良い。マシン使用中に適度に削れ、もしくは、剥がれが起こり、シリカ粒子が供給されるようにするためである。シリカ粒子の塗布は、シリカ粒子を満たした容器に接着剤を塗布した供給ローラ62を入れるか、もしくは、エアーガンのようなものを転用して、シリカ粒子を供給ローラ62に吹き付けることで、十分に塗布できる。
また、後者の方法に関しては、溶融状態で樹脂液中にシリカ粒子を分散させ、供給ローラ62に吹きつけた後、冷却させることで樹脂液を硬化させるというプロセスを取る。樹脂液の種類は、特に限定されるものでは無いが、低粘度の樹脂液を用いることが重要である。樹脂液中に十分にシリカ粒子を分散させるためである。
以上、本参考例について説明してきたが、実施形態で、上述した変形例等が本参考例に適用できることは言うまでもない。
上述した実施形態及び参考例の構成が、機能しているか否かを判断するためには、後述するようにトナー1個体を4[μm]角という狭い領域で位置をずらしながら付着力を測定することが大変、効果的である。というのも、トナーフィルミングは現像ローラ表面の僅かな領域の離型性が悪いだけで発生しうるからである。この手法により、現像ローラ表面に隙間無くシリカを配給できているかがわかる。
ここで、現像ローラ表面内の付着力の特性値分布の取得を、トナー1個体との付着力測定により行うことが重要であることについて説明する。従来より知られているトナーなどの粉体の付着力測定方法の多くは、集団としての粉体と部材との付着力を測定している。しかし、集団としての粉体は粒子径や形状などの分布を持つので、部材表面の特性値の分布を繰り返し精度を維持して評価することができない。例えば、「M.Takeuchi,A. Onose,M.Anzai,R.Kojima and K.Kawai:Proc. IS&T 7th Int.Congress Adv. Non−Impact Printing Technology,21991,vol.1,pp.200−208」で用いられている遠心力を用いて付着力を測定する方法は、粉体を付着させた試料基板を用意して、その試料基板から粉体が離れる遠心力を評価している。ところが、この方法では上述した理由から部材表面の特性値の分布を評価することはできない。そのため、本実施形態では常に同じ粒子(トナー1個体)で付着力を測定することで、部材表面上の付着力の面内分布を繰り返し精度を維持して評価を行う。
現像ローラ表面に対するトナー1個体の付着力の測定は、現像ローラ表面の複数箇所、例えば4[μm]角のエリア内で7×7=49の点数の位置で行う。このような測定間隔で評価すれば、仮に部分的に離型性の悪い領域があっても、漏れなく検出することができる。
なお、この付着力測定には、例えば、原子間力顕微鏡を用いておこなえる。以下に、原子間力顕微鏡とそれを用いた付着力測定方法の概要を述べる。ただし、トナー等の粉体1個体と現像ローラ61などの部材との付着力測定方法は、部材上の複数の位置で付着力測定が可能であればよく、原子間力顕微鏡を用いた方法には限らない。特開2001−183289号公報に記載されている方法を応用しても可能である。
原子間力顕微鏡(AFM)の動作原理については多くの公知の文献(例えばAppl.Phys. Lett.56号1758頁(1990年))がある。窒化ケイ素や2酸化ケイ素などの物質表面を有する針(プローブチップ、以下、チップともいう。)を先端に有するカンチレバーを用いて、チップを測定試料表面に近付けて、試料表面間とプローブチップの間にはたらく力(表面間力)を、フォトダイオードの反射を用いてカンチレバーの反りあるいは撓みとして測定し、シグナルとしてフィードバック制御に結び付け、チップと試料表面との間の距離をピエゾ素子によって制御するというのが代表的な非接触型AFMの動作原理である。
原子間力顕微鏡を用いて付着力を測定する際は、カンチレバーを装飾しなければならない。具体的には、エポキシ樹脂等の接着剤で、カンチレバー先端に対象の粉体を取り付ける。取り付ける作業は、特開2002−62253号公報に記載されているような専用機器を用いるか、もしくは、原子間力顕微鏡(AFM)によっても、取り付けることができる。
また、原子間力顕微鏡で付着力を測定する方法は、主に二通りの方法がある。
一つは、フォースカーブ法、もしくは、フォースディスタンスカーブ法という方法である。具体的な測定行為としては、カンチレバー先端と試料表面の離間、接触、離間を連続しておこなう。カンチレバー先端と試料表面の離間の瞬間のカンチレバーのたわみ量から、カンチレバーと試料表面の付着力を測定する方法である(例えば、特開2002―62253号公報)。
もう一つは、パルスフォースモード法という方法で、フォースカーブ法を応用したものである(例えばAppl.Phys. Lett.18号2632頁(1997年))。概念としては、フォースカーブ法がある一点でおこなう測定であるのに対して、パルスフォースモード法は、二次元領域内でフォースカーブ法を連続的におこなう測定である。具体的には、試料表面上を0.1[Hz]から10[Hz]程度でスキャンしながら、垂直方向に試料台を100[Hz]から1000[Hz]程度で振動させることで、カンチレバー先端と試料表面の接触、離間を連続的におこなう。
試料の測定領域条件は500[nm]から10000[nm]の領域設定で評価をおこなうのが好適である。付着力分布評価時に、領域が小さすぎる場合、付着力の局所的な偏りの影響が大きくなり、付着力分布から判別を行うのに適した標準偏差が得られないため適正な判別が行えない。評価対象にも依存するが、具体的には500[nm]以上の領域に設定するのが良い。
また、付着力測定装置として、原子間力顕微鏡を用いる場合、あまりに大きな領域設定は、設定できない。機種にもよるが、例えば、パルスフォースモード法での最大の設定領域は、数千[nm]から10000[nm]である。また、原子間力顕微鏡は、試料台の移動速度(もしくは、カンチレバーの移動速度)が最大で高々、数千[nm/s]である。故に、あまりに大きな領域設定になると、測定時間が長くなり過ぎるため、あまり好ましくない。
付着力分布を構成する、データ数は7×7=49点以上とするのが好ましい。データ数が少なすぎるとデータに偏りが生じやすくなってしまう可能性が高くなる。付着力測定装置として、原子間力顕微鏡を用いる場合、あまりに大きなデータ数とするのは測定が困難であるので256×256=65536点以下とするのが好ましい。
以上、本実施形態によれば、潜像担持体である感光体2上の潜像を少なくともトナーからなる現像剤によって現像する現像装置6に設けられ無端移動可能な表面に現像剤を担持し感光体に対向する現像領域へ搬送する現像剤担持体である現像ローラ61を備えている。そして、現像ローラ61の表面とトナー1個体との間で生じる付着力が100[nN]以下である。このような構成であることより、上述した実験例から明らかなように、現像ローラ表面とトナー1個体との間で生じる付着力が100[nN]以下であることで、現像ローラ表面にトナーフィルミングが生じるのを抑制することができる。そして、現像剤収容部8に現像剤供給量の調整機構である現像剤区切り部材9を備えることで、現像動作による現像剤の消費に伴う現像ローラ61表面上に供給される微粒子の減少を防ぎ、長期に亘り、現像ローラ61上の微粒子を必要量以上とすることができる。したがって、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力は、フルミングが発生する付着力より確実に下回ることができ、長期に亘りフルミングの発生を防止することができる。
また、本実施形態によれば、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力が、原子間力顕微鏡を用いて現像ローラ61の表面とトナー1個体との間で生じる付着力を測定する測定手段で測定した値であることが望ましい。これは、上述した測定手段においては、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力の測定位置を自由に且つ微小にずらしながら変えられるため、現像ローラ61の表面上のあらゆる箇所の付着力を測定することができるからである。
また、本実施形態によれば、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力を、格子状に位置をずらしながら測定したものであり、その測定間隔が1[μm]以下であることで、現像ローラ61の表面上の僅かな領域も逃さず、あらゆる箇所の付着力を測定することができる。
また、本実施形態によれば、現像ローラ61表面に1[μm]以下の凹凸を設けてあることで、現像ローラ61表面とトナーとの間で生じる付着力を小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、現像ローラ61表面に1[μm]以下の粒子が複数配置されていることで現像ローラ61表面に1[μm]以下の凹凸を設けることができ、現像ローラ61表面とトナーとの間で生じる付着力を小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、現像剤供給ローラ61の表層が、離型性の良い材料からなることで、一度、現像ローラ61上に配置させたシリカを剥ぎ取ることを防ぐことで、現像ローラ61上のシリカを長く残らせることもできる。よって、現像ローラ61上のシリカを長く残らせることで、さらに、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力を、長期に亘りフルミングが発生する付着力より、確実に下回ることができる。
また、本実施形態によれば、現像剤を収容するケース7内の現像ローラ61を除いた全ての部材の、現像剤と接する表面が、トナー母体表面よりも離型性が良い材料からなる。このことにより、ケース7内の全てのシリカが、トナーを介して、効率よく現像ローラ61上に搬送されるようにできる。よって、現像ローラ61の表面とトナーとの付着力を、長期に亘りフルミングが発生する付着力より、より確実に下回ることができる。
また、本実施形態によれば、現像ローラ61表面に供給される微粒子が1[μm]以下の粒子が無機微粒子であることで、粒子として用いることができる材料の選択の幅を広くすることができる。
また、本実施形態によれば、無機微粒子がシリカである。シリカはトナーの添加剤として利用されているため特に大きな不具合が生じることがない。
また、本実施形態によれば、現像ローラ61表面に供給される微粒子が1[μm]以下の粒子が樹脂微粒子であることで、研磨効果が少ないため、粒子により現像装置6内の各部材が傷付けられるのを抑えることができる。
また、本実施形態によれば、潜像を担持する感光体2と、感光体2上に担持された潜像を少なくともトナーからなる現像剤によって現像する現像装置6とを備えた画像形成装置において、現像装置6として上述した現像装置6を用いる。このことにより、現像ローラ61表面にトナーフィルミングが生じるのを抑制でき、画像ムラの発生や、ベタ画像中での白スジなどの発生などの不具合が起こるのを抑えられ、良好な画像形成を行うことができる。