以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図2は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図のプリンタは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)用の4つの作像プロセス部1Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。Yトナー像を生成するためのY用の作像プロセス部1Yを例にすると、これは図3に示すような構成になっている。そして、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる感光体2Yの周囲に、クリーニング装置100Y、除電手段3Y、帯電ローラ4Y、光書込装置5Y、現像装置6Yなどを有している。
感光体2Yに接触あるいは所定の間隙を介して対向するように配設された帯電ローラ4Yには、不図示の帯電バイアス電源から帯電バイアスが印加される。そして、帯電ローラ4Yは、図中反時計回り方向に回転しながら感光体2Yとの間に放電を生じせしめることで、感光体2Yの表面を一様帯電せしめる。帯電ローラ4Yの代わりに、帯電ブラシを当接させてもよい。また、感光体2Yを一様帯電せしめる帯電手段として、スコロトロンチャージャーのように、チャージャー方式によって感光体2Yを一様帯電せしめるものを用いてもよい。
帯電ローラ4Yとしては、硬質の導電性材料でローラ部が形成されたものを、微小ギャップを介して感光体2Yに対向させたものであって、次に説明する構成を有するものであることが望ましい。即ち、その軸線方向の寸法がプリンタの出力可能な最大画像幅(A4横通紙の機械ならば約290[mm])よりも少し長く設定され、軸線方向の両端部に、それぞれ中央部よりも大きな径で且つ絶縁性のスペーサとしてのギャップコロ部を有するものである。かかる構成では、両端のギャップコロ部を感光体2Yの軸線方向の両端部に存在する非画像形成領域に当接させることで、自らの中央部と感光体2Yとの間に5〜100[μm]程度(より望ましくは20〜65[μm])の微小ギャップを容易に形成することができる。なお、本実施形態では、55[μm]となるように設定した。
帯電ローラ4Yによって一様帯電せしめられた感光体2Yの表面は、光書込装置5Yから発せられる走査光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。この光書込装置5Yは、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて変調したレーザー光あるいはLED光を照射するものである。
現像手段たる現像装置6Yは感光体2Yに対向する現像領域で、周知の技術により、感光体2Y表面に担持された静電潜像にYトナーを付着させることで、静電潜像を現像してYトナー像を得る。このYトナー像は、後述する中間転写ベルトに一次転写される。
クリーニング装置100Yは、一次転写工程を経た後の感光体2Y表面に付着している転写残トナーを除去する。なお、本実施形態のクリーニング装置では、クリーニングブレードよりも感光体回転方向下流側の感光体表面に接触摺擦するようにクリーニングブラシを配し、さらにクリーニングブラシに接触してトナー回収ローラを配し、トナー回収ローラからゴムブレードによってトナーを除去する構成を適用している。クリーニング装置100Yによって、クリーニング処理が施された感光体2Y表面は、図示しない除電ランプ等の除電手段3Yによって除電されて、次の画像形成に備えられる。
先に示した図2において、他色用の作像プロセス部1C,M,Kにおいても、同様にして感光体2C,M,K上にC,M,Kトナー像が形成されて、中間転写ベルト21上に中間転写される。
作像プロセス部1Y,C,M,Kの図中下方には、像担持体たる中間転写ベルト21を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット20が配設されている。転写手段たる転写ユニット20は、中間転写ベルト21の他、駆動ローラ22、従動ローラ23、4つの一次転写ローラ24Y,C,M,K、二次転写ローラ25、図示しないベルトクリーニング装置などを備えている。
中間転写ベルト21は、そのループ内側に配設された駆動ローラ22と従動ローラ23とによって張架されながら、駆動ローラ22の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。
4つの一次転写ローラ24Y,C,M,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト21を感光体2Y,C,M,Kとの間に挟み込んでY,C,M,K用の一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト21の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。転写体たる中間転写ベルト21は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体2Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト21のループ外側には、図示しない電源から出力される二次転写バイアスが印加される二次転写ローラ25が配設されており、これはベルトループ内側の駆動ローラ22との間に中間転写ベルト21を挟み込んで二次転写ニップを形成している。
転写ユニット20の下方には、図示しない給紙カセットが配設されている。この給紙カセット内には、転写体たる記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、一番上の記録紙Pを所定のタイミングで図示しない給紙路に送り出す。この給紙路の末端には、レジストローラ対31が配設されている。レジストローラ対31は、記録紙Pを互いに当接しながら回転するローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを中間転写ベルト21上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに向けて送り出す。
中間転写ベルト21上に形成された4色トナー像は、二次転写バイアスが印加される二次転写ローラ25と接地された駆動ローラ22との間に形成される二次転写電界や、ニップ圧の影響により、二次転写ニップ内で記録紙Pに一括二次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、従動ローラ23との間に中間転写ベルト21を挟み込んでいる図示しないベルトクリーニング装置によって除去される。
二次転写ニップの上方には、図示しない定着装置が配設されている。この定着装置は、電子写真方式の画像形成装置で周知になっているように、加圧や加熱によってトナー像を記録紙に定着せしめるものである。
なお、感光体2Y,C,M,K上のY,M,C,Kトナーは、Y,C,M,K用の一次転写ニップにおいて、自らと逆極性の一次転写バイアスが印加されることで、逆極性の電荷注入を受けてしまう場合がある。このため、感光体2Y,C,M,K上の転写残トナーの中には、正規極性トナー粒子と逆帯電トナー粒子とが混在している。
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、4つの作像プロセス部1Y,C,M,Kが、潜像担持体たる感光体2Y,C,M,Kの無端移動する表面にトナー像を形成するトナー像形成手段として機能している。また、4つの作像プロセス部部1Y,C,M,Kと転写ユニット20との組合せが、像担持体たる中間転写ベルト21の無端移動する表面にトナー像を形成するトナー像形成手段ととして機能している。
次に、クリーニング装置に設けられたトナー回収ローラ上のトナーをゴムブレードで除去するときのトナーの付着度合の影響について記す。
従来より、トナー回収ローラなどの部材へのトナーの付着特性を付着力の平均値である摩擦力や摩擦係数のみ評価する評価方法が散見された。ここで、摩擦力はトナーを部材上からずらすのに必要な力であり、例えば、回転駆動する部材上に多量に存在するトナーをブレードで同時に殺ぎ落とす際に生じる部材の駆動トルクの変化等を測定し、それから換算した平均的な負荷を摩擦力とみなす方法が従来技術として知られている。
ところが、本願出願人が実際に摩擦係数に対する除去現象の検証を行ってみると図4に示すように摩擦係数が小さいにも関わらず、トナー回収ローラからトナー除去が良好に行われない場合があった。
ここで図4は、ローラ表面に部材1乃至部材4を用いたトナー回収ローラの摩擦係数とクリーニング性能との関係を示したものである。なお、部材1はPVDFチューブ+UVコート、部材2はセラミックハードタイプC1、部材3はステンレス鋼、及び、部材4はPVDFチューブである。
図中横軸のトナー回収ローラの摩擦係数は、一般に知られているオイラーベルト法によって測定したものであり、トナー回収ローラまわりに紙を巻きつけ、一端に錘を付けて一定速度で紙を巻き上げ、紙が始動し始める荷重を読み取り、換算式によって算出したものである。また、図中縦軸はクリーニングブレードによってクリーニングが行われた後のトナー回収ローラ上にどれだけトナーが残留したのかを表した残IDであり、この残IDが大きいほどトナー回収ローラにトナーが多く残留することを示す。
図4から、部材1と部材2とにおいて、部材1よりも摩擦係数が大きい部材2のほうが残IDが大きいことがわかる。そのため、従来より摩擦係数の大きさによってクリーニング性能の評価が行なわれていた。ところが、部材3及び部材4に着目してみると、これら両方の摩擦係数は部材1の摩擦係数と同じような値であるが、部材3及び部材4の残IDは、部材2の残IDよりも大きいことがわかる。すなわち、部材3及び部材4は摩擦力が部材2より小さいにも関わらずトナー回収ローラからトナー除去が良好に行われていない。つまり、摩擦係数とクリーニング性との間には相関性が認められないことがわかる。
これについて考察してみると、一般に摩擦係数を測定するときには、上述したオイラーベルト法などのように、1個のトナーが接触する部材の箇所の面積よりも遥かに広い面積の部材の箇所の平均化された表面状態における摩擦係数が測定される。ところが、上記接触する箇所、例えば数μm2の範囲における表面状態と上記広い面積の部材の箇所、例えば数mm2の範囲における表面状態とは必ずしも同じではない。例えば、上記広い面積の部材の箇所全体では表面状態が凸凹した状態であったとしても、上記接触する箇所全体では表面がうねった状態となる。そのため、その測定した摩擦係数は厳密に言うと1個のトナーにとって上記接触する箇所における摩擦係数とは異なったものとなる。よって、上記広い面積の部材の箇所における摩擦係数が小さくても、実際にトナーが接触している上記接触する箇所における摩擦係数ではないので、その結果、適切なクリーニング条件を設定できず部材からのトナー除去不良が生じる場合があると考えられる。したがって、摩擦係数によってトナー回収ローラのクリーニング性を的確に判断するのは困難であると考えられる。そのため、付着現象を説明する手法として今ひとつ信頼の置くことが出来なかった。
また、上述した表面状態において、上述した理由から特開平9−15979号公報などのように単に部材表面の表面粗さを規定しただけでは、部材からのトナー除去不良を改善するのが困難な場合が生じ得ると考えられる。
そこで、本願発明者らは、トナー回収ローラに対する1個のトナーの付着特性を評価することが、トナー回収ローラのクリーニング性を的確に判断するのに重要であると考えた。そのため、トナー回収ローラに対する1個のトナーの付着力を測定し、その測定した付着力からトナー回収ローラのクリーニング性を的確に判断できるか否かの検証を行った。
ここで、トナー回収ローラ表面内の付着力の特性値分布の取得を、トナー1個体との付着力測定により行うことが重要であることについて説明する。従来より知られているトナーなどの粉体の付着力測定方法の多くは、集団としての粉体と部材との付着力を測定しているが、集団としての粉体は粒子径や形状などの分布を持つので、部材表面の特性値の分布を繰り返し精度を維持して評価することができない。例えば、「M.Takeuchi,A. Onose,M.Anzai,R.Kojima and K.Kawai:Proc. IS&T 7th Int.Congress Adv. Non−Impact Printing Technology,21991,vol.1,pp.200−208」で用いられている遠心力を用いて付着力を測定する方法は、粉体を付着させた試料基板を用意して、その試料基板から粉体が離れる遠心力を評価している。ところが、この方法では上述した理由から部材表面の特性値の分布を評価することはできない。そのため、本実施形態では常に同じ粒子(トナー1個体)で付着力を測定することで、部材表面上の付着力の面内分布を繰り返し精度を維持して評価を行う。
図1は、図4で示した部材1乃至部材4において、トナー回収ローラに対するトナー1個体の付着力をトナー回収ローラ表面の複数箇所、詳しくは図5に示すような2[μm]角のエリア内で7×7=49の点数の位置、で測定したものである。
なお、この付着力測定には、例えば、原子間力顕微鏡を用いておこなえる。以下に、原子間力顕微鏡とそれを用いた付着力測定方法の概要を述べる。ただし、トナー等の粉体1個体とトナー回収ローラなどの部材との付着力測定方法は、部材上の複数の位置で付着力測定が可能であればよく、原子間力顕微鏡を用いた方法には限らない。特開2001−183289号公報に記載されている方法を応用しても可能である。
原子間力顕微鏡(AFM)の動作原理については多くの公知の文献(例えばAppl.Phys. Lett.56号1758頁(1990年))がある。窒化ケイ素や2酸化ケイ素などの物質表面を有する針(プローブチップ、以下、チップともいう。)を先端に有するカンチレバーを用いて、チップを測定試料表面に近付けて、試料表面間とプローブチップの間にはたらく力(表面間力)を、フォトダイオードの反射を用いてカンチレバーの反りあるいは撓みとして測定し、シグナルとしてフィードバック制御に結び付け、チップと試料表面との間の距離をピエゾ素子によって制御するというのが代表的な非接触型AFMの動作原理である。
原子間力顕微鏡を用いて付着力を測定する際は、カンチレバーを装飾しなければならない。具体的には、エポキシ樹脂等の接着剤で、カンチレバー先端に対象の粉体を取り付ける。取り付ける作業は、特開2002−62253号公報に記載されているような専用機器を用いるか、もしくは、AFMによっても、取り付けることができる。
また、原子間力顕微鏡で付着力を測定する方法は、主に二通りの方法がある。
一つは、フォースカーブ法、もしくは、フォースディスタンスカーブ法という方法である。具体的な測定行為としては、カンチレバー先端と試料表面の離間、接触、離間を連続しておこなう。カンチレバー先端と試料表面の離間の瞬間のカンチレバーのたわみ量から、カンチレバーと試料表面の付着力を測定する方法である(例えば、特開2002―62253号公報)。
もう一つは、パルスフォースモード法という方法で、フォースカーブ法を応用したものである(例えばAppl.Phys. Lett.18号2632頁(1997年))。概念としては、フォースカーブ法がある一点でおこなう測定であるのに対して、パルスフォースモード法は、二次元領域内でフォースカーブ法を連続的におこなう測定である。具体的には、試料表面上を0.1[Hz]から10[Hz]程度でスキャンしながら、垂直方向に試料台を100[Hz]から1000[Hz]程度で振動させることで、カンチレバー先端と試料表面の接触、離間を連続的におこなう。
試料の測定領域条件は500[nm]から10000[nm]の領域設定で評価をおこなうのが好適である。付着力分布評価時に、領域が小さすぎる場合、付着力の局所的な偏りの影響が大きくなり、付着力分布から判別を行うのに適した標準偏差が得られないため適正な判別が行えない。評価対象にも依存するが、具体的には500[nm]以上の領域に設定するのが良い。
また、付着力測定装置として、原子間力顕微鏡を用いる場合、あまりに大きな領域設定は、設定できない。機種にもよるが、例えば、パルスフォースモード法での最大の設定領域は、数千[nm]から10000[nm]である。また、原子間力顕微鏡は、試料台の移動速度(もしくは、カンチレバーの移動速度)が最大で高々、数千[nm/s]である。故に、あまりに大きな領域設定になると、測定時間が長くなり過ぎるため、あまり好ましくない。
付着力分布を構成する、データ数は7×7=49点以上とするのが好ましい。データ数が少なすぎるとデータに偏りが生じやすくなってしまう可能性が高くなる。付着力測定装置として、原子間力顕微鏡を用いる場合、あまりに大きなデータ数とするのは測定が困難であるので256×256=65536点以下とするのが好ましい。
また、このようにして測定した付着力の平均と分散とを各部材ごとに表1に示した。
表1と図4とから部材2よりも付着力の平均が小さい部材1は残IDも部材2より小さいことがわかる。ところが、部材2よりも付着力の平均が小さい部材3及び部材4の残IDは部材2よりも大きいことがわかる。つまり、摩擦係数とクリーニング性との関係と同じように、付着力の平均と残IDとの間、すなわち付着力の平均とクリーニング性との間には相関関係が認められない。
そこで、本件発明者らは付着力のバラツキ(度数分布の分布状態)に着目して検討を行った。つまり、トナー回収ローラ上における何れの箇所においても付着力の強さが同じようになるのか否かに着目した。なお、ここでは付着力のバラツキ(度数分布の分布状態)として表1に示すように分散を用いて行ったが、標準偏差を用いても行っても良い。
表1と図4とから、残IDが小さい部材1及び部材2においては分散も小さく、残IDが大きい部材3及び部材4においては分散が大きいことがわかる。つまり、上記複数箇所で測定した付着力の値が付着力の平均近傍に集まっているものではトナー回収ローラ上における何れの箇所においても同じような強さの付着力となる。そのため、トナー回収ローラ用クリーニングブレードによるクリーニングがトナー回収ローラ上の何れの箇所でも安定に行なわれるのでクリーニング性が良好となり、その結果、残IDが小さくなったと考えられる。また、付着力の平均から大きく離れているものでは、トナー回収ローラ上の箇所によって付着力が大きく異なる。そのため、トナー回収ローラ用クリーニングブレードによるクリーニングがトナー回収ローラ上の一部の箇所で安定して行われなくなりクリーニング性が低下して、その結果、残IDが大きくなったと考えられる。このことから、上記複数箇所で測定した付着力の分散(標準偏差)、すなわち付着力のバラツキ度合い(度数分布の分布状態)からトナー回収ローラのクリーニング性を的確に判断することが可能である。
なお、本発明を適用できる部材は、ほぼ一様な表面状態を備えていればトナー回収ローラに限らず、どのような部材においても構わないが、図2に示す潜像担持体、帯電手段、現像手段と転写手段のいずれかを少なくとも備える画像形成装置に搭載される部材、例えば、後述するように現像手段が有する現像ローラなどに適用できる。特に機構上トナーとの接触が行われる潜像担持体、現像部、中間転写体、クリーニング部やトナーの付着が望まれない帯電部に本発明を用いることによりトナーが付着しにくい部材の開発を効率的に行うことができるようになる。以下に、本実施形態に係る画像形成装置に用いた各部材について詳細を記載する。
<電子写真感光体>
本発明に用いられる画像形成装置に搭載される部材のひとつとして潜像担持体の説明を行う。
本発明に用いられる潜像担持体には電子写真感光体を用いることができる。電子写真感光体はトナー画像を記録紙または中間転写体に転写するため、トナーに対して大きな付着力を持つことは好ましくない。ゆえに本発明を好適に用いることができる。
電子写真感光体としては、導電性支持体上に少なくとも中間層、感光層を有していれば、上記以外のその他の層が形成されていてもよい。例えば、図6に示す感光層が電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)より構成される機能分離型タイプの電子写真感光体について説明する。
導電性支持体としては、体積抵抗1010[Ω・cm]以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記導電性支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
次に中間層について説明する。
中間層は接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。
中間層は、一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に感光層を、溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。特に、アルキド−メラミン樹脂が中間層として求められる機能の多くを満たすことができ好ましい。また、無機顔料として酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。特に酸化チタンは可視光および近赤外光にほとんど吸収がなく白色であり、電子写真感光体の高感度化に好ましい。これらの中間層は、適当な溶媒を用いて、慣用される塗工法によって形成することができるが、電子写真感光体の帯電性能向上のために中間層の塗工液中に少なくともエチレングリコールモノイソプロピルエーテルが好ましくは0.1[wt%]以上3[wt%]以下含有されていることが望まれる。
更に、かかる中間層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。
この他に、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けてもよい。
中間層の膜厚は約0.1[μm]から10[μm]好ましくは1[μm]から5[μm]とするのが適当である。
次に電荷発生層について説明する。
電荷発生層は電荷発生材料としては公知のものが用いることができ、例えば、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。 本発明で用いられるフタロシアニン顔料としては、無金属フタロシアニンまたは金属フタロシアニンが挙げられ、モーザーおよびトーマスの「フタロシアニン化合物」(ラインホールド社、1963)等に記載されている合成法、及び他の適当な方法によって得られるものを使用する。
金属フタロシアニンの一例としては、銅、銀、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、インジウム、ナトリウム、リチウム、チタン、錫、鉛、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルトなどを中心金属にもつものが挙げられる。また、フタロシアニンの中心核には前記金属原子の代わりに、三価以上の原子価を有するハロゲン化金属が存在していても良い。なお、フタロシアニンは各種結晶形が知られているが、α型、β型、Y型、ε型、τ型、X型などの結晶形、及び非晶形など公知のものが使用できる。
中でも、中心金属にチタンを有するチタニルフタロシアニン(以下TiOPc)が特に感度が高く優れた特性を示しており、より望ましい。
次に電荷輸送層について説明する。
前述のように、電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電荷輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20から300重量部、好ましくは40から150重量部が適当である。また、上述のように耐久性の点で電荷輸送層の膜厚は30[μm]以上が必要である。また電荷輸送層の膜厚を極端に厚くした場合、解像度が低下する不具合があるため、30[μm]から50[μm]とすることが好ましい。ここで用いられる溶剤としては、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒の使用が望ましく、具体的には、テトラヒドロフランやジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテルやトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、及びそれらの誘導体が良好に用いられる。
本発明の感光体においては、感光層保護、及び低表面摩擦係数維持の目的で、保護層を最表層に設けてもよい。保護層に使用される結着樹脂としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリール樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアリレート、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
また、感光体の保護層には、耐摩耗性を向上する目的でフィラ−材料を添加してもよい。フィラーとしては有機性フィラーと無機性フィラーがあるが、フィラーの硬度の点から無機性フィラーを用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。このような無機性フィラ−材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをド−プした酸化錫、錫をド−プした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。
これらのフィラーは少なくとも1種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3[wt%]から30[wt%]が適しており、5[wt%]から20[wt%]がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。
用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなど、電荷輸送層23で使用されるすべての溶剤を使用することができる。
また、保護層に電荷輸送層で挙げた電荷輸送物質を添加することは残留電位の低減及び画質向上に対して有効かつ有用である。
保護層の形成法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の従来方法を用いることができるが、特に塗膜の均一性の面からスプレーコートがより好ましい。
保護層の厚さは自由に設定可能であるが、保護層膜厚が著しく増加すると、画質が若干劣化する傾向が認められるため、必要最小限度の膜厚に設定することが好ましい。0.1〜10[μm]程度が適当である。
<トナーの説明>
トナーとしては、粒子に添加剤が含有せしめられたものを用いている。この添加剤としては、従来から公知のものを使用することができる。具体的には、Si、Ti、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、In、Ga、Ni、Mn、W、Fe、Co、Zn、Cr、Mo、Cu、Ag、V、Zr等の酸化物や複合酸化物等である。特に、Si、Ti、Alの酸化物であるシリカ、チタニア、アルミナなどが好適である。添加剤の添加量は、母体粒子100重量部に対して0.5から1.8重量部であることが好ましく、特に好ましくは、0.7から1.5重量部である。
また、トナーとしては、処理剤を用いた表面処理を施したものを用いることが望ましい。かかる表面処理に用いる処理剤としては、有機系シラン化合物などが好ましい。例えば、メチルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のアルキルクロロシラン類、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルメトキシシラン類である。また、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル等でもよい。表面処理方法としては、有機シラン化合物を含有する溶液中に添加剤を漬積し乾燥させる方法、添加剤に有機シラン化合物を含有する溶液を噴霧し乾燥させる方法等が挙げられる。
また、トナーとしては、体積平均粒径の範囲が3[μm]から7[μm]であるものを用いることが望ましい。
<トナーの形状について>
数1はトナーの形状係数SF1の計算式を示している。形状係数SF1とは、図7に示すように、球状物質の形状における丸さの割合を示す数値であり、球状物質を二次元平面上に投影してできる楕円状図形の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで割って、100π/4を乗じた値で表される。
つまり数1によって定義されるものである。
本発明においては形状係数SF1が100から150となる球形トナーであることが好ましい。
<キャリアの説明>
磁性キャリアCとしては、粒子径20[μm]から200[μm]程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど、従来から公知のものを使用することができる。本プリンタでは、金属又は樹脂からなるコア中にフェライト等の磁性材料を含有し、且つ表層にシリコーン樹脂等による被覆が施された平均粒径55[μm]のものを用いている。表層の被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。また、ポリビニル樹脂、ポリビニリデン系樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂等でもよい。また、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂などでもよい。また、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体などでもよい。また、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂などでもよい。なお、必要に応じて導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。かかる導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛などを用いることができる。これらの導電粉としては、平均粒子径1[μm]以下のものが好ましい。平均粒子径が1[μm]よりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になるからである。
<トナー回収ローラ>
クリーニング部に用いるクリーニング方式のひとつに、潜像担持体(主に感光体)の表面膜削れを軽減しこれら小粒径トナー/球形トナークリーニング時にも確実なクリーニング性を備えたブラシクリーニング方式がある。これには、感光体表面に接触摺擦するようにクリーニングブラシを配し、さらにクリーニングブラシに接触して回収ローラを配し、回収ローラからゴムブレードなどの手段でトナーを除去する構成がある。回収ローラ、あるいは回収ローラとブラシ両方に電圧を印加し、静電気力でクリーニングするため、球形トナー使用時に有利である。
トナーが付着しにくい回収ローラはトナー除去時に有利であるため回収ローラは本発明を好適に適用できる部材である。
ローラの材質は体積抵抗1010[Ω・cm]以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属や、導電性の軸の表面に抵抗層を有する構造とされる。抵抗層の材質としてはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
<帯電部>
帯電部材の一種としてローラ方式を用いた帯電ローラがある。帯電ローラにより潜像担持体を一様に帯電させるがこのとき帯電ローラに汚れが付着していると潜像担持体の帯電にムラが生じ画像形成装置より出力される画像の乱れの原因となる。帯電ローラのに付着する汚れはトナーであることが大多数であるため帯電ローラはトナーが付着しにくいことが好ましい。ゆえに本発明を好適に用いることができる。
帯電部材は、芯金のステンレス上に、イオン導電性のゴム層を形成している。ゴム層の抵抗は、抵抗値で104[Ω]から108[Ω]程度である。ローラのゴム硬度はJIS−Aで40[°]以上が良く、望ましくは70[°]以上が良い。また、ゴム以外の導電性を持つものでもよく、エラストマー、樹脂等があげられる。これらも、ゴム硬度に相当する程度の硬さであることが望ましい。樹脂を用いた場合、材料に弾性を持たないため、空隙を正確に維持しやすい、つまり、軸方向で感光体との間に空隙の違い等が生じにくいメリットがある。表層には、抵抗値が1010[Ω]程度の抵抗値を持つ表面層を形成している。これは、感光体にピンホール等抵抗値の低い部分が存在した場合に、集中して電流が流れる現象を防止するためで、この表面層を設けたことでピンホールへの電流の集中を防いでいる。表層の抵抗値は、1010[Ω]以上であれば良い。
<現像部>
感光体に形成された静電潜像を現像する現像部には一般的に感光体にトナーを供給する部材として現像ローラを有する。現像ローラはトナーを潜像担持体へ受け渡す機能を有するため、トナーに対して大きな付着力を持つことは好ましくない。ゆえに本発明を好適に用いることができる。
<一成分現像の場合の現像ローラ>
現像ローラは、一成分トナーを摩擦により帯電させるために外周部がゴム等の摩擦係数の低い弾性材により形成されたローラ部と、このローラ部の中心を貫通する金属製の軸部とからなる。
弾性材に用いられる材料としては、弾性材ゴム、エラストマー等の弾性部材が挙げられ、具体的には、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
<二成分現像の場合の現像ローラ>
一成分と同様に外周部がゴム等の摩擦係数の低い弾性材により形成されたローラ部と、このローラ部の中心を貫通する金属製の軸部とからなるローラ、また表面が金属からなるローラ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属も用いられる。上記現像ローラの表面には、経時品質を安定化させるために適宜コ−ト材料を被覆されることがある。表層コート材料は、帯電がトナー10と逆極性でも良いし、トナーを所望の極性に摩擦帯電する機能を持たせない場合は同極性でも良い。前者の表層コート材料としては、シリコン、アクリル、ポリウレタン等の樹脂、ゴムを含有する材料を挙げることができる。また後者の表層コート材料としては、フッ素を含有する材料を挙げることができる。フッ素を含んだいわゆるテフロン(登録商標)系材料は表面エネルギーが低く、離型性が優れるため、経時におけるトナーフィルミングが極めて発生しにくい。また、上記表層コート材料に用いることができる一般的な樹脂材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニールエーテル(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)等を挙げることができる。これに導電性を得るために適宜カ−ボンブラック等の導電性材料を含有させることが多い。更に均一に現像ローラ402にコートできるように、他の樹脂を混ぜ合わせることもある。
<中間転写体>
中間転写体はトナー画像を記録紙に転写するため、トナーに対して大きな付着力を持つことは好ましくない。ゆえに本発明を好適に用いることができる。
図8は、本発明を適用できる画像形成装置に用いる中間転写体の一例の縦断面図である。画像形成装置に用いる中間転写体は、少なくとも基層、弾性層、表面のコート層から構成される。中間転写体は、硬度の低い弾性層を設け、転写ニップ部でトナー層や平滑性の悪い用紙に対して変形できるようにしている。中間転写体表面が局部的な凸凹に追従して変形できるために、過度にトナー層に対して転写圧を高めることなく、良好な密着性が得られ、文字の転写中抜けがなく、また、平滑性の悪い用紙等に対してもソリッド部等における転写ムラのない、均一性に優れた転写画像を得ることができるものである。弾性層に用いられる材料としては、弾性材ゴム、エラストマー等の弾性部材が挙げられ、具体的には、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
弾性層の厚さは、硬度及び層構成にもよるが、0.07[mm]から0.3[mm]の範囲が好ましい。0.3[mm]以上と厚いと、クリーニングブレードの押圧力により撓んだり、また、クリーニングブレードが中間転写体の中に押し込まれ、中間転写体の滑らかな移動を妨げる。又、0.07[mm]以下と薄いと、二次転写ニップ部で中間転写体10上のトナーに対する圧力が高くなり、転写中抜けが発生しやすくなり、さらに、トナーの転写率が低下する。
また、弾性層の硬度は、10≦HS≦65(JIS−A)であることが好ましい。中間転写体の層厚によって最適な硬度は異なるものの、硬度が10[°]JIS−Aより低いと転写中抜けが生じやすい。これに対して硬度が65[°」JIS−Aより高いものは、ローラヘの張架が困難となり、また、長期の張架によって延伸するために耐久性が無く早期の交換が必要になる。
また、中間転写体の基層は、伸びの少ない樹脂で構成している。具体的に、基層に用いられる材料としては、ポリカーボネート、フツ素樹脂(ETFE、PVDF等)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ピニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではない。
また、基層に伸びの大きなゴム材料に帆布などの伸びを防止する材料で構成された芯体層をつくりその上に弾性層12を形成する方法等を用いることができる。このときの、芯体層に用いられる伸びを防止する材料としては、例えば、綿、絹、などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、ポリフロロエチレン繊維、フエノール繊維などの合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、鉄繊維、銅繊維等の金属繊維からなる群より選ばれる1種あるいは2種以上を用い、糸状あるいは織布状のものを使用することができる。もちろん、上記材料に限定されるものではない。上記の糸は1本または複数のフィラメントを撚ったもの、片撚糸、諸撚糸、双糸等、どのような撚り方であってもよい。また、例えば上記材料群から選択された材質の繊維を混紡してもよい。もちろん糸に適当な導電処理を施して使用することもできる。一方織布は、メリヤス織り等どのような織り方の織布でも使用可能であり、もちろん交織した織布も使用可能であり、導電処理を施すことも可能である。
さらに、中間転写体表面のコート層は、弾性層の表面を例えばフッ素樹脂等をコーティングするためのものであり、平滑性のよい層からなるものである。コート層に用いられる材料としては、特に制限はないが、一般的に、中間転写体表面へのトナーの付着カを小さくして二次転写性を高める材料が用いられる。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上、又は、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、たとえばフッ素材脂、フッ素化合物、フッ化炭素、酸化チタン、シリコンカーバイド等の粒子を1種類あるいは2種類以上、又は必要に応じて粒径を変えたものを分散させて使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことで表面にフッ素層を形成させ、表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
また、必要に応じて、基層11、弾性層12又はコート層13は、抵抗を調整する目的で、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等を用いることができる。ここで、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。ただし、上記材料に限定されるものではない。
[変形例]
次に、実施形態に係るプリンタにおける一部構成を他の構成に変更した変形例のプリンタについて説明する。
図9は、変形例に係るプリンタを示す概略構成図であり、所謂リボルバタイプのフルカラープリンタである。同図において、このプリンタは、潜像担持体たる感光体を1つだけ備えている。この感光体2の回りには、クリーニング装置100、除電手段3、帯電ローラ4、光書込装置5、4つの現像装置6Y,C,M,Kが配設されている。
4つの現像装置6Y,C,M,Kはぞれぞれ、図示しない移動機構によって個別に往復移動せしめられる。具体的には、自らの現像スリーブを感光体2に接触又は近接させる現像位置と、これよりも感光体2から遠ざかる待避位置との間を往復移動せしめられる。そして、現像位置にあるものだけが、感光体2上の静電潜像を現像する。
除電手段3、帯電ローラ4、光書込装置5の構成は、上述した実施形態に係る作像プロセス部1Yのものと同様である。
感光体2表面には、まず、Y用の静電潜像が形成され、これはY用の現像装置6YによってYトナー像に現像される。そして、中間転写ベルト21に一次転写される。以降、中間転写ベルト21が3周分無端移動する間に、感光体2表面にC,M,Kトナー像が順次形成され、中間転写ベルト21上のYトナー像に順次重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に4色トナー像が形成される。
中間転写ベルト21の下方に配設された二次転写ローラ25は、図示しない接離機構によってベルトに対して接離するようになっている。そして、中間転写ベルト21上が複数周回に渡って無端移動してベルト表面にY,C,M,Kトナー像が順次重ね合わせられる工程においては、二次転写ローラ25はベルト表面から離間している。その後、重ね合わせ転写によってベルト表面に4色トナー像が形成されると、二次転写ローラ25がベルトに当接して二次転写ニップを形成する。そして、この二次転写ニップにおいて、ベルト表面上の4色トナー像が記録紙Pに一括二次転写される。
クリーニング装置100Yは、一次転写工程を経た後の感光体2Y表面に付着している転写残トナーを除去する。なお、本実施形態のクリーニング装置では、クリーニングブレードよりも感光体回転方向下流側の感光体表面に接触摺擦するようにクリーニングブラシを配し、さらにクリーニングブラシに接触してトナー回収ローラを配し、トナー回収ローラからゴムブレードによってトナーを除去する構成を適用している。
このような画像形成装置においても言うまでもなく本発明を用いることで、上述した同様の効果を得ることができる。
以下、本発明を適用した他の画像形成装置として、電子写真複写機(以下、単に複写機100という)に適用した実施形態について説明する。
図10は、本実施形態に係る複写機の要部を示す概略構成図である。複写機100は、単一色の複写を行うものであり、図示しない画像読み取り部で読み取った画像データに基づいてモノクロ画像形成を行う。
まず、複写機100全体の構成について説明する。
図10に示すように、複写機100は、潜像担持体としてのドラム状の感光体101を備えている。感光体1の周囲には帯電手段としての帯電ローラ3、潜像をトナー像化するトナー像形成手段である現像手段としての現像装置106が配置されている。また、現像装置106により形成されたトナー像を記録媒体としての転写紙に転写する転写手段としての転写ローラ115、転写後の感光体101表面に残留するトナーをクリーニングするクリーニング装置であるクリーニング装置120、感光体101表面を除電する除電ランプ102等が配置されている。また、除電ランプ102と帯電ローラ103との間には、除電ランプの光を遮光する遮光板140が設けられている。
帯電ローラ103は、感光体101表面に所定の距離で非接触で配置され、感光体101の表面を所定の極性、所定の電位に帯電するものである。複写機100では、感光体101の表面をマイナス極性に一様に帯電させる。帯電ローラ103によって一様帯電された感光体101の表面は、図示しない露光装置から画像データに基づいてレーザー光104が照射され静電潜像が形成される。
なお、複写機100においては、感光体101と現像装置106とを複写機本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジとして一体に構成している。図11に、感光体101と現像装置106とからなるプロセスカートリッジの概略構成を示す。現像装置106は、感光体表面にトナーを搬送するトナー搬送部材としての現像ローラ200、現像ローラ表面のトナーの層厚を規制するトナー規制部材としての層規制部材202、トナーを現像ローラ106の表面に供給するトナー供給部材としての供給ローラ203、トナー収容部201に収納されたトナーからなる一成分現像剤を供給ローラ203側に送る撹拌パドル204,205を具備している。
現像ローラ200には、弾性ゴム層を被覆したローラが用いられ、さらに表面にはトナーと逆の極性に帯電しやすい材料から成る表面コート層が設けられる。弾性ゴム層は、層規制部材202との当接部での圧力集中によるトナー劣化を防止するために、JIS−Aで60度以下の硬度に設定される。表面粗さはRaで0.1〜3.0μmに設定され、必要量のトナーが表面に保持される。また現像ローラ200には感光体101との間に電界を形成させるための現像バイアスが印加されるので、弾性ゴム層は103[Ω]〜1010[Ω]の抵抗値に設定される。現像ローラ200は図11に示すように時計回りの方向に回転し、表面に保持したトナーを層規制部材202及び感光体101との対向位置へと搬送する。
層規制部材202は供給ローラ203と現像ローラ200の当接位置よりも現像ローラ回転方向下流側の現像ローラ200よりも低い位置に設けられている。層規制部材202としては、ステンレス鋼やリン青銅等の金属板バネ材料を用い、自由端側を現像ローラ表面に10〜40[N/m]の押圧力で当接させたもので、その押圧下を通過したトナーを薄層化するとともに摩擦帯電によって電荷を付与する。さらに層規制部材202には摩擦帯電を補助するために、現像バイアスに対してトナーの帯電極性と同方向にオフセットさせた値の規制バイアスが印加される。
現像ローラ200の表面を構成するゴム弾性体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、これらの2種以上のブレンド物などが挙げられる。これらの中でも、エピクロルヒドリンゴムとアクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ゴムとのブレンドゴムが好ましく用いられる。
現像ローラ200は、例えば、導電性シャフトの外周にゴム弾性体を被覆することにより製造される。導電性シャフトは、例えば、ステンレス鋼などの金属で構成される。
次に、複写機100における画像形成動作を説明する。
複写機100では、図示しない操作部のコピースタートボタンが押されると、図示しない画像読み取り部で原稿の読み取りが開始される。帯電ローラ103、現像ローラ200、転写ローラ115及び詳細は後述するクリーニングブラシ123に、それぞれ所定の電圧又は電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段としての感光体駆動モータ(不図示)により感光体101が図中矢印A方向に回転駆動される。感光体101の回転駆動と同時に、現像ローラ200、転写ローラ115、供給ローラ203、攪拌パドル204,205、及び、トナー排出スクリュ119、クリーニングブラシ123、トナー回収ローラ124も所定の方向に回転駆動される。
感光体101が図中矢印A方向に回転すると、まず感光体表面が、帯電装置の帯電ローラ103によって例えば−700[V]の電位に帯電される。そして、図示しない露光装置から画像信号に対応したレーザー光4が感光体1上に照射され、レーザー光104が照射された部分の感光体1上の電位が例えば−120[V]に低下され、静電潜像が形成される。
静電潜像の形成された感光体1は、現像装置106との対向部の現像領域で現像ローラ200上に保持された現像剤で感光体101表面を摺擦される。このとき、現像ローラ200上の負帯電トナーは、現像ローラ108に印加された例えば−450[V]の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。このように、感光体101上に形成された静電潜像は、現像装置106によって負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。なお、これまで、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
感光体101上に形成されたトナー像は、図示しない給紙部から下レジストローラ111と上レジストローラ112との対向部を経て、ガイド板113、114にガイドされて感光体101と転写ローラ115との間に形成される転写領域に給紙される転写紙に転写される。このとき、転写紙は下レジストローラ111と上レジストローラ112との対向部で画像先端と同期を取り供給される。また、転写紙への転写時には、転写ローラ115に、例えば+10[μA]に定電流制御された転写バイアスが印加される。トナー像が転写された転写紙は、分離手段としての分離爪116によって感光体1011から分離され、搬送ガイド板141にガイドされて図示しない定着手段としての定着装置へ搬送される。そして、定着装置を通過する事により、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙上に定着されて、転写紙は機外に排出される。一方、転写後の感光体101の表面は、クリーニング装置120で転写後の残留トナーが除去され、さらに除電ランプ102で除電される。
ここで、従来から知られている感光体表面にクリーニングブレードを当接させて感光体表面をクリーニングするブレードクリーニング方式について説明する。
画像形成装置においては、より高精度および高精細な画像が形成できるよう、高解像度を有することが要求されている。その達成手段の1つとしてより粒径を小さくしたトナーを用いることがあげられる。また、転写率向上のためにトナーの形状を不定形からより球に近い形状のものが使われるようになってきている。しかしながら、従来から知られているブレードクリーニング方式では、小粒径トナーや球径のトナーをクリーニングすることは粒径が小さい事や、形状が球形である事から、すり抜けやすくクリーニング不良が発生しクリーニングが困難な状況である。なお、ブレードクリーニング方式で球形トナーをクリーニングする場合でも、感光体表面にクリーニングブレードを押し付けるときの線圧を極端に高くすれば(具体的には線圧:100[gf/cm]以上)クリーニングできるが、その分感光体ドラム、クリーニングブレードの寿命が極端に短くなる。例えば、通常の線圧(20[gf/cm])での感光体寿命(感光層が1/3程度削れる時の寿命)はΦ30で約10万枚、クリーニングブレード寿命(削れてクリーニング不良が発生する時の寿命)約12万枚である。一方、高い線圧(100[gf/cm])の時は、感光体の寿命は約2万枚、でクリーニングブレードの寿命は約2万枚程度である。
しかしながら小粒径トナーや、球形トナーを用いると画像品質が良くなるので、本実施形態の複写機100では、小粒径トナーや球形トナーのクリーニング時にも良好なクリーニング性を備え、かつ、感光体の表面膜削れを軽減できる機械的な摺擦を抑えたクリーニング方式である静電ブラシクリーニング方式を適用している。また、他のクリーニング方式としてクリーナレス方式等を用いた場合でも同様の効果が得られる。
[実験1]
実験1においては、測定対象として表面層が異なる3種類の現像ローラであるローラ1、ローラ2及びローラ3を用いた。ローラ1、ローラ2及びローラ3は、芯金であるアルミニウムローラに表面層として弾性ゴム層が形成されている。そして、評価の際は、それぞれの表面層をアルミニウムローラから引き剥がし約10[mm]角へ切り出し、上述したフォースカーブ法を用いて表面層(弾性ゴム層の表面)に対するトナー1個体の付着力を原子間力顕微鏡(AFM)での測定を行った。
次に、実験条件を示す。
・計測条件(フォースカーブ法):原子間力顕微鏡(AFM):走査型プローブ顕微鏡SPI4000、多機能型ユニットSPA400(SIIナノテクノロジー(株)製)
・測定モード:AFMモード
・カンチレバー:オリンパス(株)社製 標準窒化シリコンカンチレバーOMCL−RC800PSA、バネ定数:0.76[N/m]
・測定点数:200nm間隔で、縦方向10×横方向10=100点
・最大負荷条件:カンチレバー先端と試料表面の押し付け強さ50[nN]狙いで設定
・カンチレバー先端のトナー粒径:6[μm]
・トナー種類:(株)リコー社製 PxPトナーの試作品
なお、このときに使用したトナーとシリコン基板との付着力を測定すると30[nN]であった。シリコン基板は、デシケーター等を用いて、少なくとも湿度50[%]以下の環境で保管した。また、測定前に、原子間力顕微鏡を用いて、表面粗さRaが1[nm]以下であることを確認した(図16参照)。全ての付着力測定は、全く同一のトナーが取り付けられた、同一のプローブで行った。
図12にローラ1の測定結果、図13にローラ2の測定結果、及び、図14にローラ3の測定結果を示す。また、これらの測定結果をもとに作成した付着力の度数分布を図15に示す。
[実験2]
ローラ1、ローラ2及びローラ3を図10に示す複写機100にそれぞれ搭載し画像を出力した。
画像出力動作時の条件を下に示す。
・複写機:リコー製 試験機
・出力枚数:A4横 1000枚
・実験環境:27[℃]55[%]
・出力画像:5[%]チャート
上述したような実験条件及び画像出力条件で画像の出力を行った後に、ハーフトーンの画像を出力した。ローラ1では正常な画像であり、ローラ2及びローラ3ではローラにトナーのフィルミングが生じたことによる縦白スジのある不良画像であった。また、各ローラをキーエンス社製レーザー顕微鏡VK8700で観察すると、ローラ2及びローラ3の表面には、トナーフィルミングが進行していることがわかった。
[実験3]
ローラ1、ローラ2及びローラ3の表面層の摩擦係数をオイラーベルト法により測定した。その結果を表3に示す。
[評価例1]
本件発明者らは、鋭意検討をおこなった結果、現像ローラ表面上で測定しうる付着力の上限値であるX+Yがある閾値を超えなければ、現像ローラの表面にトナーフィルミングが起こりにくいことを明らかにした。具体的には、現像ローラの付着力測定値において、付着力平均値をX、標準偏差をY、及び、トナーとシリコン基板との間の付着力をZとしたときに数2の関係を満たすことで付着力のばらつきが付着力平均値に対して一定の範囲内におさまり、現像ローラの表面上における何れの箇所においても付着力の強さが同じようになることを見出した。そして、現像ローラの表面にトナーフィルミングが起こりにくいことを明らかにした。そのため、評価例1においては、これに着目して評価を行った。
なお、シリコン基板での付着力測定値で正規化するのは、プローブ先のトナー種による付着力差を無くし、常に同じ条件で評価するためである。
実験1で測定した付着力測定値から、ローラ1、ローラ2及びローラ3のそれぞれの付着力平均値Xは、ローラ1が67.5[nN]、ローラ2が142.7[nN]、及び、ローラ3が295.0[nN]であった。
また、ローラ1、ローラ2及びローラ3のそれぞれの付着力の標準偏差Yは、ローラ1が34.6[nN]、ローラ2が78.8[nN]、及び、130.6[nN]であった。
また、実験1で述べたように、トナーとシリコン基板との間の付着力Zは30[nN]であった。なお、上述したようにローラ1、ローラ2及びローラ3に対して同一のトナーが取り付けられた同一のプローブを用いて実験を行っているため、付着力Zの値は各ローラに対して同じ値、すなわち、30[nN]を用いる。
そして、ローラ1、ローラ2及びローラ3における付着力平均値Xと標準偏差Yと足したものと、トナーとシリコン基板との間の付着力Zを5倍したものとの関係を、ローラ1においては数3、ローラ2においては数4及びローラ3においては数5のようになる。
表4に、ローラ1、ローラ2及びローラ3のそれぞれ上記した付着力平均値、標準偏差、及び、各種算出結果などを示す。
ローラ1においては、表4や数3からわかるように、数6に示した関係を示している。これにより、上述したように付着力のばらつきが一定の範囲内におさまり、ローラ1の表面上における何れの箇所においても付着力の強さが同じようになるので、ローラ1の表面上の何れの箇所においても供給ローラによってローラ1上のトナーを良好に掻き取ることができたものと考えられる。よって、上述した実験2の結果のようにトナーフィルミングが生じることなくスジ状の異常画像が出力されなかったと考えられる。
ローラ2及びローラ3におていは、表4や数4及び数5からわかるように、数6に示した関係を満たしていない。これにより、付着力のばらつきが一定の範囲内に収まらないため、ブレードの表面上の箇所によって付着力の強さが大きく異なり、上記表面上の一部の箇所で供給ローラによるトナーの掻き取りが良好に行われなかったと考えられる。よって、上述した実験2の結果のようにトナーフィルミングが生じスジ状の異常画像が出力されたと考えられる。
また、オイラー法による摩擦係数測定結果である表12と付着力測定の結果である表11とを比較すると、摩擦係数と付着力の大小とに相関が無いことがわかる。具体的には、摩擦係数はローラ1が最も大きいのに対して、付着力はローラ1が最も小さい。このことから、本実施形態で行った付着力測定が、従来の部材表面評価法(オイラー法)に対して、より直接的な評価法となり得ることを示す。
[実験4]
実験4では、測定対象として表面層が異なる4種類の現像ローラであるローラ11、ローラ12、ローラ13、及び、ローラ14を用いた。ローラ11、ローラ12、ローラ13、及び、ローラ14は、芯金であるアルミニウムローラに表面層として、弾性ゴム層が形成されている。そして、評価の際は、それぞれの表面層をアルミニウムローラから引き剥がし約10[mm]角へ切り出し、フォースカーブ法を用いて表面層(弾性ゴム層の表面)に対するトナー1個体の付着力を原子間力顕微鏡(AFM)での測定を行った。なお、実験4では、実験1とは別のプローブ、すなわち、使用したトナー種は実験1と同じであるが実験1で用いたトナーとは別のトナーを用いて新たに作製したプローブを使用して付着力を評価した。
次に、実験条件を示す。
・計測条件(フォースカーブ法):原子間力顕微鏡(AFM):走査型プローブ顕微鏡SPI4000、多機能型ユニットSPA400(SIIナノテクノロジー(株)製)
・測定モード:AFMモード
・カンチレバー:オリンパス(株)社製 標準窒化シリコンカンチレバーOMCL−RC800PSA、バネ定数:0.76[N/m]
・測定点数:200[nm]間隔で、縦方向10×横方向10=100点
・最大負荷条件:カンチレバー先端と試料表面の押し付け強さ50[nN]狙いで設定
・カンチレバー先端のトナー粒径:5.5[μm]
・トナー種類:(株)リコー社製 PxPトナーの試作品
なお、このときに使用したトナーとシリコン基板との付着力を測定すると10[nN]であった。実験4で使用したトナーと実験1で使用したトナーのトナー種は同じであっても、実際に、カンチレバー先端に付けたトナーが実験1と実験4とでは異なるため、トナーとシリコン基板との付着力も実験1とは異なる。
また、シリコン基板は、デシケーター等を用いて、少なくとも湿度50[%]以下の環境で保管した。また、測定前に、原子間力顕微鏡を用いて、表面粗さRaが1nm以下であることを確認した。全ての付着力測定は、全く同一のトナーが取り付けられた、同一のプローブで行った。
図17にローラ11の測定結果、図18にローラ12の測定結果、図19にローラ13の測定結果、及び、図20にローラ14の測定結果を示す。
[実験5]
ローラ11、ローラ12、ローラ13及びローラ14を図10に示す複写機100にそれぞれ搭載し画像を出力した。
画像出力動作時の条件を下に示す。
・複写機:リコー製 試験機
・出力枚数:A4横 1000枚
・実験環境:27[℃]55[%]
・出力画像:5[%]チャート
上述したような実験条件及び画像出力条件で画像の出力を行った後に、ハーフトーンの画像を出力した。ローラ11では正常な画像であり、ローラ12、ローラ13及びローラ14ではローラ表面にトナーフィルミングが生じたことによる縦白スジのある不良画像であった。また、各ローラをキーエンス社製レーザー顕微鏡VK8700で観察すると、ローラ12、ローラ13及びローラ14の表面には、トナーフィルミングが進行していることがわかった。
[評価例2]
本件発明者らは、評価例1で記載したように現像ローラの付着力測定値において、付着力平均値をX、標準偏差をY、及び、トナーとシリコン基板との間の付着力をZとしたときに数6の関係を満たすことで付着力のばらつきが付着力平均値に対して一定の範囲内におさまり、現像ローラの表面上における何れの箇所においても付着力の強さが同じようになることを見出した。そして、現像ローラのトナーフィルミングが進行しにくいことを明らかにした。そのため、評価例2においては、これに着目して評価を行った。
なお、シリコン基板での付着力測定値で正規化するのは、プローブ先のトナー種による付着力差を無くし、常に同じ条件で評価するためである。
実験4で測定した付着力測定値から、ローラ11、ローラ12、ローラ13及びローラ14のそれぞれの付着力平均値Xは、ローラ11が19.0[nN]、ローラ12が42.0[nN]、ローラ13が174.0[nN]、及び、ローラ14が313.0[nN]であった。
また、ローラ11、ローラ12、ローラ13及びローラ14のそれぞれの付着力の標準偏差Yは、ローラ11が12.0[nN]、ローラ12が33.0[nN]、ローラ13が35.0[nN]、及び、70.0[nN]であった。
また、実験4で述べたように、トナーとシリコン基板との間の付着力Zは10[nN]であった。なお、上述したようにローラ11、ローラ12、ローラ13及びローラ14に対して同一のトナーが取り付けられた同一のプローブを用いて実験を行っているため、付着力Zの値は各ローラに対して同じ値、すなわち、10[nN]を用いる。
そして、ローラ11、ローラ12、ローラ13及びローラ14における付着力平均値Xと標準偏差Yと足したものと、トナーとシリコン基板との間の付着力Zを5倍したものとの関係が、ローラ11については数7、ローラ12については数8、ローラ13については数9及びローラ14については数10のようになる。
表21に、ローラ11、ローラ12、ローラ13及びローラ14のそれぞれ上記した付着力平均値、標準偏差、及び、各種算出結果などを示す。
ローラ1においては、表6や数7からわかるように数6に示した関係を示している。これにより、上述したように付着力のばらつきが一定の範囲内におさまり、ローラ11の表面上における何れの箇所においても付着力の強さが同じようになるので、ローラ11の表面上の何れの箇所においても供給ローラによってローラ11上のトナーを良好に掻き取ることができたものと考えられる。よって、上述した実験5の結果のようにトナーフィルミングが生じることなくスジ状の異常画像が出力されなかったと考えられる。
ローラ12、ローラ13及びローラ14においては、表6や数8、数9及び数10からわかるように数6に示した関係を満たしていない。これにより、付着力のばらつきが一定の範囲内に収まらないため、ブレードの表面上の箇所によって付着力の強さが大きく異なり、上記表面上の一部の箇所で供給ローラによるトナーの掻き取りが良好に行われなかったと考えられる。よって、上述した実験5の結果のようにトナーフィルミングが生じスジ状の異常画像が出力されたと考えられる。
このように評価例2においても、評価例1と同様の方法でトナーの付着力からローラ表面のフィルミングの進行のし易さを予測できることがわかる。また、同一種のトナーであっても製造バラツキにより付着力の絶対値は異なり得るが、シリコン基板で正規化することで異なるプローブであっても同等の評価が可能なことがわかる。
以上のことから、付着力平均値に加えて標準偏差を用いて現像ローラの表面に対するトナーの付着の度合を評価することで、より自然現象に即した付着度合を判断することができることがわかる。つまり、画像形成装置などにおいてトナーなどの粉体の付着度合に関する異常現象の多くは、部材表面上の全ての位置で起こるわけではない。異常現象は、付着力の極端に大きい領域、もしくは、小さい領域でおこる。したがって、ある一点での特性値や、ある領域内の平均値のみでは、異常現象を感度良く検出できないからである。すなわち、測定対象の部材表面にある一点の特性値で評価するのではなく、測定対象部材の一定範囲内の表面における付着力の面内分布を測定して、その分布の平均値と標準偏差とで評価するほうが、より自然界の付着現象に即しているからである。
以上、本実施形態によれば、現像ローラと粉体1個体であるトナー1個体との間で生じる付着力を現像ローラ表面の複数箇所にて測定し、その測定した付着力の度数分布の分布状態から現像ローラ表面における上記付着力の分布を判断する。例えば、上記度数分布のばらつき度合いが小さければ、現像ローラ表面における上記付着力は現像ローラ表面の何れの箇所においても同じような強さで分布していると判断する。逆に、上記度数分布のばらつき度合いが大きければ、現像ローラ表面における上記付着力は現像ローラ表面の箇所ごとに強さが大きく異なって分布していると判断する。このように現像ローラ表面における上記付着力の分布を判断することができることで、例えば、次のような予測が可能となる。上記付着力が現像ローラ表面の何れの箇所においても同じような強さで分布していると判断した場合、上記強さが現像ローラ表面から粉体を除去可能な強さであれば、現像ローラ表面の何れの箇所からもトナーが除去可能であると予測することが可能となる。また、上記付着力が現像ローラ表面の箇所ごとに強さが大きく異なって分布していると判断した場合、現像ローラ表面に上記付着力が強すぎて現像ローラ表面からトナーを除去することができない箇所が存在する恐れがあると予測することが可能となる。よって、現像ローラ表面からトナーを良好に除去可能か否かを予測することができる。
また、本実施形態によれば、上記分布状態は、上記測定した付着力の分散または標準偏差で表されるものである。これにより、上記測定した付着力の度数分布から上記測定した付着力の平均値に対するばらつき度合いを容易に把握することができる。
また、本実施形態によれば、上記分布状態は、所定の付着力における上記測定した付着力の累積度数または累積相対度数で表されるものである。これにより、上記所定の付着力以下に上記測定した付着力の度数がどれだけ集まっているのかを容易に把握することができる。
また、本実施形態によれば、現像ローラ表面における上記付着力の分布の判断に上記測定した付着力の平均値も用いることで、より精度良く上記付着の傾向を判断することができる。
また、本実施形態によれば、上記平均値をX、上記標準偏差または上記分散の平方根をY、及び、上記粉体であるトナーとシリコン基板との付着力をZとしたとき、X+Y<5Zを満たすか判断することで、上記測定した付着力のばらつきが上記平均値に対して一定の範囲内におさまるので、例えば、上述したようにトナーフィルミングが生じ難い優れた現像ローラを判別することができる。
また、本実施形態によれば、上記シリコン基板の表面粗さが1[nm]以下であることで、トナーとシリコン基板との間で生じる付着力の測定精度を高くすることができる。
また、本実施形態によれば、上記付着力は、原子間力顕微鏡において深針先に取り付けたトナー1個体と現像ローラ表面との付着力を測定したものである。これにより、トナー1個体と現像ローラ表面との付着力を精度良く、また効率よく測定することができる。
また、各実施形態によれば、上記粉体がトナーであることで、トナーが付着しにくい現像ローラや、特定の現像ローラに対して付着しにくいトナーを判別することができる。
また、本実施形態によれば、上記トナーの粒径が、1[μm]以上20[μm]以下であることで、トナーが付着しにくい現像ローラや特定の現像ローラに対して付着しにくいトナーを高精度で判別することができる。