以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(電子写真感光体)
図1は、本発明の電子写真感光体の第1実施形態を示す模式断面図である。図1に示す電子写真感光体1は、導電性基体2上に、下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層6がこの順で積層された構造を有している。また、電子写真感光体1は、電荷発生層5及び電荷輸送層6から構成されている機能分離型の感光層3を備えるものである。ここで、電荷輸送層6は感光体3における表面層、すなわち導電性基体2から最も遠い側に配置される層であり、上記した条件を満たす特定のフッ素樹脂粒子を含有している。
導電性基体2は、従来から使用されているものを採用でき、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等;導電性付与剤を塗布、または含浸させた紙及びプラスチックフィルム等が挙げられる。また、導電性基体2の表面に対して、必要に応じて、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができる。導電性基体2の表面処理としては、例えば、陽極酸化処理、薬品処理、着色処理、砂目立て及び液体ホーニング等の乱反射処理などが挙げられる。
また、導電性基体2上の欠陥を被覆する又は導電性基体2を保護するために、導電性基体2上に更に導電層を設けることも可能である。このような導電層は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体;酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物;カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質、及びこれら導電性物質で表面を被覆した導電性粉体などの導電性材料を、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などの熱可塑性樹脂;ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化樹脂又は光硬化樹脂などのバインダ樹脂に分散し、更に必要に応じて添加剤を加えて得られる塗布液を導電性基体2上に塗布することによって形成することができる。
下引き層4は、例えば、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及びメラミン樹脂などの高分子樹脂化合物;ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、珪素などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して、或いは重縮合物として用いることができる。これらの中でも、ジルコニウムもしくは珪素を含有する有機金属化合物は、残留電位が低いこと、環境による電位変化が少ないこと、及び、繰り返し使用による電位の変化が少ないことなどの電気特性に優れているので好ましい。
ジルコニウムを含有する有機化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド若しくはイソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
珪素を含有する有機化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのなかでも、特に好ましく用いられる珪素を含有する有機化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン若しくは3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
電荷発生層5は、電荷発生材料を適当な結着樹脂中に分散した状態で形成されるものである。電荷発生材料としては、フタロシアニン顔料、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料若しくはキナクリドン顔料等を使用することができる。また、これらの電荷発生材料は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
上記の電荷発生材料のうち、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン若しくはチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が、優れた画像を得る観点から好ましい。
上記フタロシアニン顔料のうち、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)の少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)の少なくとも7.7°、9.3°、16.9°、17.5°、22.4°及び28.8°に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)の少なくとも7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)の少なくとも9.6°、24.1°及び27.2°に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を使用することが好ましい。
電荷発生層5における結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の材料を使用することができる。例えば、好ましい結着樹脂としては、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂若しくはポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることが可能である。
また、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、10:1〜1:10の範囲が望ましい。さらに、電荷発生層5を形成する際に、電荷発生材料の分散に使用される溶剤としては、結着樹脂を溶解するものを適当に選択することができる。電荷発生材料を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等の方法を用いることができる。
また、電荷発生層5の膜厚は、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2.0μmであることがより好ましい。
電荷輸送層6は、上述したように本実施形態における表面層となるので、電荷輸送材料及び結着樹脂に加えて、特定のフッ素系樹脂粒子を含有するものである。
フッ素系樹脂粒子は、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも16〜18°の範囲に半値幅0.26以下の回折ピークを示すものであり、且つ、粒子径1μm以下である粒子の割合がフッ素系樹脂粒子の総粒子数に対して80%以上であることが必要である。
ここで、フッ素系樹脂粒子のXRD測定方法について説明する。先ず、フッ素系樹脂粒子を加圧成形(圧力:400kgf/cm2)により錠剤(20mmφ、厚み約2mm)に成形する。そして、この錠剤について粉末X線回折方式によりXRD測定を行う。具体的には、XRD測定装置として「ミニフレックス」(理学電気(株)製、商品名)を用い、X線管電圧出力:30kV、X線管電流出力:15mA、走査範囲:5.0〜25.0°の条件を選択できる。
フッ素系樹脂粒子は、乳化重合により作製されたものであることが好ましい。乳化重合法を用いることにより、上記したXRD測定値を満たすフッ素系樹脂粒子をより容易且つより確実に得ることができる。
乳化重合によりフッ素系樹脂粒子を作製する方法として、4フッ化エチレン樹脂粒子を得る場合を例に具体的に説明する。まず、耐圧オートクレーブに水、開始剤、乳化剤、フッ素系界面活性剤等を仕込み、脱気を行う。その後、原料であるテトラフルオロエチレンを連続的に投入しながら、例えば0〜150℃、1〜50気圧の条件下で攪拌して反応を進行させる。反応終了後、得られたラテックスを凝析、洗浄し、次いで乾燥することにより4フッ化エチレン樹脂粒子が得られる。このようにしてCuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において18°付近に回折ピークを有する4フッ化エチレン樹脂粒子が得られる。ここでそのピークの半値幅を0.26以下とするためには、乳化重合の反応速度を制御すればよく、具体的には、昇温温度、反応温度、反応圧力、反応時間等を適宜調整することにより可能となる。昇温速度は、緩やかに上昇させることが好ましく、例えば、0.5〜5℃/分が好ましい範囲として挙げられる。また、反応温度としては、10〜150℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。さらに、反応圧力としては、1〜40kgf/cm2が好ましい。
また、フッ素系樹脂粒子の総数は、一次粒子の個数及び二次粒子の個数を合わせた個数であり、合計粒子径1μm以下である粒子には一次粒子及び二次粒子の両方が含まれる。
ここで、電荷輸送層6(表面層)に含有されるフッ素系樹脂粒子の粒子径1μm以下である粒子の割合の算出方法について説明する。まず、TEM若しくはSEM(走査型電子顕微鏡)などのnmオーダーからμmオーダーの物質を観察可能な従来の顕微鏡を用いて、通常の方法により、感光体の電荷輸送層6(表面層)を撮影して、その写真を得る(図6はTEM写真)。次いで、得られた写真の所定範囲内(図6では33μm×27μm(写真のタテ×ヨコ))に存在が認められるフッ素樹脂粒子の、(A)粒子径1μm以下の一次粒子の個数、(B)粒子径が1μmを超える一次粒子の個数を、(C)粒子径1μm以下の二次粒子の個数、及び(D)粒子径が1μmを超える二次粒子の個数をそれぞれ勘定する。この際、二次粒子に含まれる一次粒子は、上記(A)及び上記(B)の数として勘定しない。
次に、上記で得られる(A)粒子径1μm以下の一次粒子の個数をNA、(B)粒子径が1μmを超える一次粒子の個数をNB、(C)粒子径1μm以下の二次粒子の個数をNC及び(D)粒子径が1μmを超える二次粒子の個数をNDとすれば、下記一般式(1)によってフッ素系樹脂粒子の粒子径1μm以下である粒子の含有割合R(%)が算出される。
R(%)=(NA+NC)/(NA+NB+NC+ND)×100 …(1)
また、本実施形態において、電荷輸送層6(表面層)に含有されるフッ素系樹脂粒子の一次粒子の平均粒径(個数平均)は、0.05〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。フッ素系樹脂粒子の一次粒子の平均粒径(個数平均)が、0.05μm未満であると、製造時における分散が困難となる傾向にあり、一方、1μmを越えると、表面層において露光光がフッ素系樹脂粒子により、遮蔽されることによる画質欠陥が生じる傾向にある。
また、フッ素系樹脂粒子を構成する樹脂としては、4フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、6フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、2フッ化2塩化エチレンの重合体及びこれらの共重合体が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記のフッ素系樹脂のうち、4フッ化エチレンの重合体、フッ化ビニリデンの重合体、4フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体が好ましい。
また、本実施形態においては、フッ素系樹脂粒子を構成する樹脂として4フッ化エチレンの重合体を用いる場合、フッ素系樹脂粒子の融点が320〜334℃であることが好ましい。なお、融点は、ASTM 0459に基づいて測定された値を採用する。4フッ化エチレン樹脂粒子の融点が、320℃未満であると、結晶性が不十分となる傾向にあり、一方、334℃を超えると、表面層において均一に分散させることが困難となる傾向にある。従って、融点が上記範囲の4フッ化エチレン樹脂粒子を用いることにより、繰り返し使用した場合であっても濃度ムラやかぶり等の画質欠陥を十分に抑制できる電子写真感光体をより確実に得ることができる。
また、本実施形態においては、フッ素系樹脂粒子を構成する樹脂として4フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)を用いる場合、フッ素系樹脂粒子の融点が300〜310℃であることが好ましい。なお、融点は、ASTM 0459に基づいて測定された値を採用する。PFA粒子の融点が、300℃未満であると、結晶性が不十分となる傾向にあり、一方、310℃を超えると、表面層において均一に分散させることが困難となる傾向にある。従って、融点が上記範囲のPFA粒子を用いることにより、繰り返し使用した場合であっても濃度ムラやかぶり等の画質欠陥を十分に抑制できる電子写真感光体をより確実に得ることができる。
更に、フッ素系樹脂粒子を構成する樹脂として4フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)を用いる場合、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において16°付近の回折ピークの半値幅が0.26以下であるものを用いることが好ましい。このようなPFA粒子を用いることにより、繰り返し使用した場合であっても濃度ムラやかぶり等の画質欠陥を十分に抑制できる電子写真感光体をより確実に得ることができる。
フッ素系樹脂粒子の電荷輸送層6(表面層)中における含有割合は、電荷輸送層6(表面層)の固形成分の全質量に対して、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。この含有割合が1質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による表面層のトナーに対する摩擦力の低減効果が得られ難くなる傾向にある。一方、この含有割合が40質量%を超えると電荷輸送層6(表面層)の光通過性の低下及び表面層の機械的強度の低下が起こりやすくなる傾向にある。
電荷輸送層6(表面層)には、フッ素系樹脂粒子の分散助剤がさらに含有されることが好ましい。このような分散助剤は、電荷輸送層6(表面層)を形成するための塗布液を調製する場合にフッ素系樹脂粒子の分散安定性を向上させるため、および塗膜形成時の凝集を防止するための機能を有している。分散助剤としては、フッ素系グラフトポリマー及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。これらのうち、フッ素系クシ型グラフトポリマーを用いることが好ましい。フッ素系クシ型グラフトポリマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマーと、パーフルオロアルキルエチルメタクリレートとをグラフト重合させて得られる樹脂が挙げられる。
分散助剤の配合割合については、例えば、フッ素系グラフトポリマーを用いる場合、フッ素系樹脂粒子の質量に対する割合が、1.5〜2.5質量%であると好ましく、1.6〜2.2質量%であるとより好ましい。この含有割合が1.5質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散液としての作用が十分でなくなる。一方、この含有割合が2.5質量%を超えると繰り返し使用による残留電位の上昇が生じてくる。
電荷輸送層6(表面層)に含有される電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、および上記した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電荷輸送層6(表面層)に含有される結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
電荷輸送物質と結着樹脂との配合比(質量比)は、電気特性及び膜強度の低下を十分に抑制する観点から10:1〜1:5であると好ましい。
また、電荷輸送層6(表面層)には、機械的強度の向上のために無機粒子が含まれていてもよい。無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸銅、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ニッケル、アンチモン、二酸化マンガン、酸化クロム、酸化錫、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウムが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有できる。上記の無機粒子のうち、無機シリカを用いることが好ましい。
無機シリカ粒子は、化学炎CVD法により製造されるものが好ましく、具体的には、クロルシランガスを酸素−水素混合ガス又は炭化水素−酸素混合ガスの高温火炎中で気相反応させて得られるシリカ微粒子が好ましい。
また、上記の無機粒子は、疎水化されたものが好ましい。疎水化処理剤としては、例えばシロキサン化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高分子脂肪酸又はその金属塩等が用いられる。シロキサン化合物としては、ジヒドロキシポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。また、シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
電荷輸送層6(表面層)に含有させる無機粒子は、その一次粒子の粒径が0.005〜2.0μmであることが好ましく、0.01〜1.0μmであることがより好ましい。この粒径が、0.005μmを下回ると、表面層の機械的強度の向上効果が得られ難くなる傾向にあり、分散時の凝集が進みやすくなる傾向にある。一方、粒径が、2μmを上回ると、表面層の表面粗さが大きくなり、クリーニングブレードの摩耗、損傷などによりクリーニング特性が悪化し、画像ボケが発生し易くなる傾向にある。
電荷輸送層6(表面層)の層厚は、5〜50μmであると好ましく、10〜40μmであるとより好ましい。
図2は本発明の電子写真感光体の別の好適な実施形態を模式的に示す要部断面図である。図2に示した電子写真感光体21においては、導電性基体2上に下引き層4、電荷発生層5、電荷輸送層26及び保護層7がこの順で積層されて感光層23が構成されている。これらのうち、導電性基体2、下引き層4及び電荷発生層5については、上述した図1に示した電子写真感光体に備えられるものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
本実施形態にかかる電荷輸送層26は、上述した電子写真感光体1における電荷輸送層6とは異なり、電子写真感光体21の表面層とはならない。したがって、電荷輸送層26は、電荷輸送物質と結着樹脂を含有していればよく、フッ素系樹脂粒子若しくはフッ素系グラフトポリマーを含有する必要はない。また、フッ素系樹脂粒子を含有する場合であっても、フッ素系樹脂粒子の粒子径1μm以下である粒子の含有割合が、そのフッ素系樹脂粒子の総数に対して80%以上となる必要はない。ただし、電荷輸送層26がこれらの条件を満足するものであってもよい。さらに、電荷輸送層26は、必要に応じて、公知の電荷輸送層が含有する物質を適宜含んでもよい。
電荷輸送層26は、上記以外の材料等については、上述した電荷輸送層6と同様であるので、詳細な説明は省略する。
保護層7は、本実施形態において電子写真感光体21の表面層に相当するので、フッ素系樹脂粒子とフッ素系グラフトポリマーとを含有するものである。保護層7に含有されるフッ素系樹脂粒子及びフッ素系グラフトポリマーの種類及び含有割合、並びにフッ素系樹脂粒子の平均一次粒子径及び粒子径分布については、上述した電子写真感光体1の電荷輸送層6に含有されるものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
保護層7は、本発明の表面層として機能するほか、電子写真感光体21の帯電時の電荷輸送層26の化学的変化を防止したり、感光層23の機械的強度を更に改善するために用いられる。この保護層7は、上記フッ素系樹脂粒子及びフッ素系グラフトポリマーのほかに絶縁性樹脂(結着樹脂)を構成成分とするいわゆる絶縁性樹脂保護層であってもよく、又は、この絶縁性樹脂の中に導電性物質(抵抗調整剤)を添加したいわゆる低抵抗保護層であってもよい。
上記導電性物質(抵抗調整剤)は特に限定されるものではなく、例えば、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン若しくは酸化インジウム等の金属酸化物、酸化スズとアンチモン若しくは硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛若しくは硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛若しくは硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したものなどが挙げられる。
この保護層7に用いる絶縁性樹脂(結着樹脂)としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂若しくはポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられる。あるいは、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
保護層7の層厚は、0.1〜10μmであると好ましく、0.5〜7μmであるとより好ましい。
(電子写真感光体の製造方法)
次に、本発明の電子写真感光体の製造方法の好適な実施形態について説明する。なお、本発明の電子写真感光体の製造方法は、感光層以外の電子写真感光体の他の構成要素の製造工程における手順やその際の条件は特に限定されず、例えば、公知の薄膜製造技術を用いることができる。
まず、導電性基体が準備される。この導電性基体が金属パイプである場合、その表面は未処理のままであってもよいが、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト若しくはウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
次に、必要に応じて、上記導電性基体上に中間層が形成される。中間層は、上述した構成材料を有機溶剤中に混合して塗布液を調製し、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、更に乾燥することにより形成される。
中間層形成用の塗布液に用いられる有機溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン若しくはクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール若しくはn−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン若しくは2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム若しくは塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール若しくはジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル若しくは酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。また、これらの溶剤は1種を単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法若しくはカーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
次いで、必要に応じて、上記導電性基体若しくは中間層上に下引き層が形成される。下引き層は、上述した導電性物質の粒子を有機溶剤中で結着樹脂に分散して塗布液を調製し、該塗布液を導電性基体若しくは中間層上に塗布し、更に乾燥することにより形成される。
上記塗布液に用いられる有機溶剤としては、公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。
より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール若しくはn−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン若しくはシクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル若しくはジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロルメタン、ジクロルエタン、四塩化炭素若しくはトリクロルエチレンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド若しくはN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、酢酸メチル、酢酸エチル若しくは酢酸n−ブチルなどのエステル類、或いはベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン若しくはジクロルベンゼンなどの芳香族類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの分散に用いる有機溶剤は1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かすことができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
下引き層形成用の塗布液中の導電性物質の粒子と結着樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
上記塗布液には電気特性向上、環境安定性向上若しくは画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル若しくはアントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン若しくは2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール若しくは2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物又は3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系又はアゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物あるいはシランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
導電性物質の粒子を結着樹脂中に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル若しくは横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル若しくは高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突若しくは液−壁衝突させて分散する衝突方式のもの、又は高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式のものなどが挙げられる。
下引き層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
続いて、必要に応じて、中間層が下引き層上に形成されてもよい。その形成方法は、導電性基体上に形成されるのに代わって、下引き層上に形成される以外は、上述した方法と同様のものを採用することができるので、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、電荷発生層を、導電性基体、中間層若しくは下引き層の上に形成する。該電荷発生層は、電荷発生物質、後述の有機溶剤、結着樹脂、その添加剤(例えば、電荷発生物質の分散助剤等)等を混合して電荷発生層形成用の塗布液を調製し、これを導電性基体、中間層若しくは下引き層の上に塗布し、更に乾燥することにより得られる。
上記塗布液に含まれる溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン若しくはクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール若しくはn−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン若しくは2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム若しくは塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール若しくはジエチルエーテル等の環状若しくは直鎖状エーテル系溶剤、又は、酢酸メチル、酢酸エチル若しくは酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤を用いることができる。また、これらの溶剤は1種を単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かすことができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
電荷発生物質を塗布液中で分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル若しくは横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル若しくは高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式のものや、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式のものなどが挙げられる。
電荷発生層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法若しくはカーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
次いで、電荷輸送層を電荷発生層上に形成する。電荷輸送層を表面層とする場合(例えば図1に示した電子写真感光体1)は、上記したフッ素系樹脂粒子、上記した電荷輸送材料、上記した結着樹脂、及び有機溶剤を混合して得られる塗布液を用いて電荷輸送層を形成する。以下、この場合の電荷輸送層の形成方法について説明する。
まず、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも16〜18°の範囲に半値幅0.26以下の回折ピークを示すフッ素系樹脂粒子を準備する。このようなフッ素系樹脂粒子は、上述した乳化重合法により得ることができる。
また、本実施形態の電子写真感光体の製造方法においては、上記フッ素系樹脂粒子に予め照射量50C/kg〜1×105C/kgのガンマ線を照射している必要がある。このようなフッ素系樹脂粒子を用いることにより、塗布液中にフッ素系樹脂粒子を分散させる際のせん断力によってフッ素系樹脂粒子のフィブリル化が発生することを防止することができる。そして、この塗布液によれば、形成された電荷輸送層に含有されるフッ素系樹脂粒子の粒子径1μm以下である粒子の含有割合を、フッ素系樹脂粒子の総数に対して80%以上とすることが可能となる。したがって、繰り返し使用した場合であっても濃度ムラやかぶり等の画質欠陥を十分に抑制できる電子写真感光体が得られる。上記照射量が、50C/kg未満であると、分散時にフッ素系樹脂粒子のフィブリル化が発生することを十分に防止できない。一方、上記照射量が、1×105C/kgを超えると、フッ素系樹脂粒子の結晶性が低下し、へき開が起き難くなり、表面層の摩擦係数の低減効果が十分に得られない。なお、本実施形態において上記照射量は、フッ素系樹脂粒子の上記半値幅が0.26を超えないように調整されていることが好ましい。
また、本実施形態においては、フッ素系樹脂粒子を構成する樹脂として4フッ化エチレンの重合体を用いる場合、フッ素系樹脂粒子の融点が320〜334℃であることが好ましい。なお、融点は、ASTM 0459に基づいて測定された値を採用する。4フッ化エチレン樹脂粒子の融点が、320℃未満であると、結晶性が不十分となる傾向にあり、一方、334℃を超えると、表面層において均一に分散させることが困難となる傾向にある。従って、融点が上記範囲の4フッ化エチレン樹脂粒子を用いることにより、繰り返し使用した場合であっても濃度ムラやかぶり等の画質欠陥を十分に抑制できる電子写真感光体をより確実に得ることができる。
また、本実施形態においては、フッ素系樹脂粒子を構成する樹脂として4フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)を用いる場合、フッ素系樹脂粒子の融点が300〜310℃であることが好ましい。なお、融点は、ASTM 0459に基づいて測定された値を採用する。PFA樹脂粒子の融点が、300℃未満であると、結晶性が不十分となる傾向にあり、一方、310℃を超えると、表面層において均一に分散させることが困難となる傾向にある。従って、融点が上記範囲のPFA粒子を用いることにより、繰り返し使用した場合であっても濃度ムラやかぶり等の画質欠陥を十分に抑制できる電子写真感光体をより確実に得ることができる。
フッ素系樹脂粒子の融点は、例えば、フッ素系樹脂粒子を製造する際の乳化重合での昇温温度、反応温度、反応圧力、反応時間等を適宜調整すること、及び、フッ素系樹脂粒子に対するガンマ線の照射条件を上記範囲内において適宜調整することなどを組み合わせることにより、上記の好適な範囲に設定することが可能である。
更に、フッ素系樹脂粒子を構成する樹脂として4フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)を用いる場合、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において16°付近の回折ピークの半値幅が0.26以下であるものを用いることが好ましい。このようなPFA粒子を用いることにより、繰り返し使用した場合であっても濃度ムラやかぶり等の画質欠陥を十分に抑制できる電子写真感光体をより確実に得ることができる。
次に、上述のフッ素系樹脂粒子、電荷輸送材料、結着樹脂及び有機溶剤を混合して塗布液を得る(塗布液調製工程)。
ここで、塗布液にフッ素系樹脂粒子を良好に分散させるための分散助剤を添加することが好ましい。分散助剤としては、フッ素系グラフトポリマー及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。これらのうち、フッ素系クシ型グラフトポリマーを用いることが好ましい。フッ素系クシ型グラフトポリマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマーと、パーフルオロアルキルエチルメタクリレートとをグラフト重合させて得られる樹脂が挙げられる。
分散助剤の配合割合については、例えば、フッ素系グラフトポリマーを用いる場合、フッ素系樹脂粒子の質量に対する割合が、1.5〜2.5質量%であると好ましく、1.6〜2.2質量%であるとより好ましい。この含有割合が1.5質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散液としての作用が十分でなくなる。一方、この含有割合が2.5質量%を超えると繰り返し使用による残留電位の上昇が生じてくる。
さらに、必要に応じて、上述した無機粒子などの添加物を混合してもよい。
また、上記有機溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン若しくはクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール若しくはn−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン若しくは2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム若しくは塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール若しくはジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル若しくは酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤などを用いることができる。これらの有機溶剤は1種を単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。混合する際、使用される有機溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かすことができる有機溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
混合方法としては、フッ素系樹脂粒子を塗布液中に高分散させるために、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル若しくは横型サンドミル等のメディア分散機、攪拌、超音波分散機、ロールミル若しくは高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機などの分散装置を利用した方法が挙げられる。
これらのなかで、上述したような条件を満足するようにフッ素系樹脂粒子を電荷輸送層中に分散させるため、メディアレス分散機である高圧ホモジナイザーを用いる方法を採用すると好ましい。このような高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式のものが挙げられる。
さらに、フッ素系樹脂粒子の分散性を向上させるために、有機溶剤中に結着樹脂及びフッ素系グラフトポリマーを溶解させた溶液と共に、フッ素系樹脂粒子を高圧ホモジナイザー内で流通させる圧力は、300kg/cm2以上700kg/cm2未満に設定するとより好ましい。この圧力を300kg/cm2未満に設定して流通する場合は、1μmを超える粒子径を有する二次粒子が生成しやすくなる傾向にある。したがって、この場合、上記電荷輸送層中のフッ素系樹脂粒子の粒子径1μm以下である粒子の含有割合が、フッ素系樹脂粒子の総数に対して80%以上になり難い傾向にある。一方、この圧力を700kg/cm2以上に設定して流通する場合も、1μmを超える粒子径を有する二次粒子が生成しやすくなる傾向にある。したがって、この場合も、上記電荷輸送層中のフッ素系樹脂粒子の粒子径1μm以下である粒子の含有割合が、フッ素系樹脂粒子の総数に対して80%以上になり難い傾向にある。その結果、感光体を繰り返し使用した場合に、濃度ムラやかぶり等の画質欠陥を十分に抑制することが困難となる傾向にある。
また、上記塗布液を得るためには、高圧ホモジナイザーにより2回以上処理されることが好ましく、4〜8回処理されるとより好ましい。高圧ホモジナイザーによる処理が2回未満では、所望の電子写真感光体を得ることが困難になり、8回を超える回数だけ処理しても、上記回数の範囲で処理されることによる得られる効果と比較して差異があまり生じないため、時間、労力及びコストを過剰に消費することになる。
なお、高圧ホモジナイザーとして、上述したものの他に、高圧状態で分散液を液−液衝突若しくは液−壁衝突させて分散する衝突方式のものなども用いることができる。
次に、上記塗布液調製工程により得られるフッ素系樹脂粒子を分散させた塗布液を、電荷発生層上に塗布して上記有機溶媒を除去することにより、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも16〜18°の範囲に半値幅0.26以下の回折ピークを示し、且つ、総粒子数に占める粒子径1μm以下の粒子の割合が80%以上のフッ素系樹脂粒子を含有する電荷輸送層(表面層)を形成する(表面層形成工程)。塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法若しくはカーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。
電荷輸送層を表面層とする場合は、以上をもって、電子写真感光体が完成する。
また、電荷輸送層の上にさらに保護層を形成する場合、すなわち電荷輸送層を表面層として形成しない場合は、フッ素系樹脂粒子を電荷輸送層の必須成分としない。したがって、この場合は、まず、少なくとも上述した電荷輸送材料と結着樹脂と有機溶剤と、必要に応じて上述した無機粒子などのその他の添加剤とを混合する。次いで、得られた混合物を上述した分散装置を用いて適宜分散させ、電荷発生層上に上述した方法を用いて塗布し乾燥することにより電荷輸送層を得る。
次いで、この電荷輸送層上に、上述したフッ素系樹脂粒子を含有する保護層(表面層)を形成することによって、電子写真感光体が得られる。この場合、まず、上述したフッ素系樹脂粒子を準備する。フッ素系樹脂粒子を準備する工程は、表面層として電荷輸送層を形成させる際に採用されるものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。次いで、少なくとも、上述したフッ素系樹脂粒子、結着樹脂及び有機溶剤を混合して塗布液を得る(塗布液調製工程)。この際、必要に応じて、上述した導電性物質(抵抗調整剤)などの添加物を混合してもよい。
有機溶剤としては、公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。
より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール若しくはn−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン若しくはシクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル若しくはジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロルメタン、ジクロルエタン、四塩化炭素若しくはトリクロルエチレンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド若しくはN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、酢酸メチル、酢酸エチル若しくは酢酸n−ブチルなどのエステル類、或いはベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン若しくはジクロルベンゼンなどの芳香族類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの有機溶剤は1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かすことができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。これらのなかで、電荷輸送層を溶解し難い有機溶剤を用いると好ましい。
上記塗布液調製工程において用いられる分散方法、好ましい分散方法及びより好ましい分散方法としては、表面層として電荷輸送層を形成させる際に採用されるものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、上記塗布液調製工程により得られるフッ素系樹脂粒子を分散させた塗布液を、電荷輸送上に塗布して乾燥することにより保護層を得る。その塗布方法は表面層として電荷輸送層を形成させる際に採用されるものと同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
上記感光層中には、画像形成装置中で発生するオゾンや窒素酸化物、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する観点から、酸化防止剤、光安定剤若しくは熱安定剤などの添加剤を、必要に応じて添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン若しくはスピロインダノン又はそれらの誘導体、有機硫黄化合物、或いは有機リン化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート若しくはテトラメチルピペン等の誘導体があげられる。また、表面の平滑性を向上させるために、表面層中にシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することもできる。
(電子写真装置)
次に、本発明の電子写真装置の好適な実施形態について説明する。
図3は、本発明の電子写真装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。図3に示す電子写真装置200は、本発明の電子写真感光体1と、電子写真感光体1を接触帯電方式により帯電させる帯電装置208と、帯電装置208に接続された電源209と、帯電装置208により帯電される電子写真感光体207を露光して静電潜像を形成する露光装置210と、露光装置210により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置211と、現像装置211により形成されたトナー像を被転写媒体に転写する転写装置212と、クリーニング装置213と、除電器214と、定着装置215とを備える。なお、図3には示していないが、トナーを現像装置211に供給するトナー供給装置も備えている。また、本実施形態とは別の実施形態において、除電器214が設けられていなくてもよい。
図3に示した帯電装置208は、感光体1の表面に導電性部材(帯電ロール)を接触させて感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。
導電性部材としては、芯材の外周面に弾性層、抵抗層、保護層等を設けたものが好適に用いられる。導電性部材の形状は、ブラシ状、ブレード状、ピン電極状、あるいはローラー状等のいずれであってもよい。
芯材の材質としては、導電性を有するもの、例えば、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム若しくはニッケル等が用いられる。また、導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
弾性層の材質としては、導電性あるいは半導電性を有するもの、例えば、ゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものが使用可能である。ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。導電性粒子あるいは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO若しくはMgO等の金属酸化物が用いることができる。これらの材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
抵抗層および保護層の材質としては結着樹脂に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したものである。結着樹脂としてはアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP若しくはPET等のポリオレフィン樹脂、又はスチレンブタジエン樹脂等が用いられる。導電性粒子あるいは半導電性粒子としては弾性層と同様のカーボンブラック、金属若しくは金属酸化物が用いられる。また、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等を用いることができる。
これらの導電性部材を用いて感光体1を帯電させる際には、導電性部材に電圧が印加されるが、かかる印加電圧は直流電圧、直流電圧に交流電圧を重畳したもののいずれでもよい。なお、本実施形態において示した帯電ロールの他、帯電ブラシ、帯電フィルム若しくは帯電チューブなどを用いて接触帯電方式による帯電を行ってもよい。また、コロトロン若しくはスコロトロンを用いた非接触方式による帯電を行ってもよい。
露光装置210としては、電子写真感光体1の表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。これらの中でも、非干渉光を露光可能な露光装置を用いると、電子写真感光体1の導電性基体と感光層との間での干渉縞を防止することができる。
現像装置211としては、一成分系、ニ成分系等の正規または反転現像剤を用いた従来公知の現像装置等を用いることができる。
転写装置212としては、ローラー状の接触帯電部材の他、ベルト、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、あるいはコロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等が挙げられる。
クリーニング装置213は、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着した残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング装置としては、図示したクリーニングブレードを用いたものの他、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等の手法を用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
また、本実施形態の電子写真装置は、図3に示したように、除電器(イレーズ光照射装置)214、像定着装置215等の除電装置をさらに備える。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次の画像形成サイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画像品質をより高めることができる。
図4は本発明の電子写真装置について、他の実施形態の基本構成を示す概略構成図である。図4に示す電子写真装置220は中間転写方式の電子写真装置であり、ハウジング300内において4つの電子写真感光体301a〜301d(例えば、電子写真感光体301aがイエロー、電子写真感光体301bがマゼンタ、電子写真感光体301cがシアン、電子写真感光体301dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト309に沿って相互に並列に配置されている。
ここで、電子写真装置220に搭載されている電子写真感光体301a〜301dは、それぞれ本発明の電子写真感光体(例えば電子写真感光体1)である。
電子写真感光体301a〜301dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール302a〜302d、現像装置304a〜304d、1次転写ロール310a〜310d、クリーニングブレード315a〜315dが配置されている。現像装置304a〜304dのそれぞれにはトナーカートリッジ305a〜305dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール310a〜310dはそれぞれ中間転写ベルト309を介して電子写真感光体301a〜301dに当接している。
さらに、ハウジング300内の所定の位置にはレーザー光源(露光装置)303が配置されており、レーザー光源303から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体301a〜301dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体301a〜301dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト309上に重ねて転写される。
中間転写ベルト309は駆動ロール306、バックアップロール308及びテンションロール307により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール313は、中間転写ベルト309を介してバックアップロール308と当接するように配置されている。バックアップロール308と2次転写ロール313との間を通った中間転写ベルト309は、例えば駆動ロール306の近傍に配置されたクリーニングブレード316により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
また、ハウジング300内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)311が設けられており、トレイ311内の紙などの被転写媒体317が移送ロール312により中間転写ベルト309と2次転写ロール313との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール314の間に順次移送された後、ハウジング300の外部に排紙される。
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト309を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト309のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合中間転写体の基材として用いる樹脂材料としては、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。さらに、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いることができる。
弾性材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等を1種類、又は2種類以上をブレンドしてなる材料を用いることができる。これらの基材に用いる樹脂材料及び弾性材料に、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤やイオン伝導性を有する導電剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて添加する。この中でも、機械強度に優れる点で、導電剤を分散させたポリイミド樹脂を用いることが好ましい。上記の導電剤としては、カーボンブラック、金属酸化物、ポリアニリン等の導電性ポリマーを用いることができる。中間転写体として中間転写ベルト409のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの厚さは50〜500μmが好ましく、60〜150μmがより好ましいが、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。
例えば、導電剤を分散させたポリイミド樹脂からなるベルトは、特開昭63−311263号公報に記載されているように、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液中に導電剤として5〜20質量%のカーボンブラックを分散させ、分散液を金属ドラム上に流延して乾燥した後、ドラムから剥離したフィルムを高温下に延伸してポリイミドフィルムを形成し、さらに適当な大きさに切り出してエンドレスベルトとすることにより製造することができる。
上記フィルム成形は、一般には、導電剤を分散したポリアミド酸溶液の成膜用原液を円筒金型に注入して、例えば、100〜200℃に加熱しつつ500〜2000rpmの回転数で円筒金型を回転させながら、遠心成形法によりフィルム状に成膜し、次いで、得られたフィルムを半硬化した状態で脱型して鉄芯に被せ、300℃以上の高温でポリイミド化反応(ポリアミド酸の閉環反応)を進行させて本硬化させることにより行うことができる。また、成膜原液を金属シート上に均一な厚みに流延して、上記と同様に100〜200℃に加熱して溶媒の大半を除去し、その後300℃以上の高温に段階的に昇温してポリイミドフィルムを形成する方法もある。また、中間転写体は表面層を有していてもよい。
また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
なお、本発明にかかる被転写媒体とは、電子写真感光体上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体から直接、紙等の被転写媒体に転写する場合は、紙等が被転写媒体である。また、中間転写体を用いる場合には、中間転写体が被転写媒体である。
(プロセスカートリッジ)
次に、本発明のプロセスカートリッジの好適な実施形態について説明する。
図5は、本発明の電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体1とともに、帯電装置208、現像装置211、クリーニング装置(クリーニング手段)213、露光のための開口部217、及び、除電露光のための開口部218に取り付けレール219を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写装置212と、定着装置215と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。
上述した電子写真装置220及びプロセスカートリッジ300は、本発明の電子写真感光体を備えることによって、トナーが感光体の表面層上に残存することを十分に抑制することができるので、高い画質(画像品質)の画像を得ることができ、その画質の安定性を向上させることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<下引き層形成用塗布液の調製>
酸化亜鉛「SMZ−017N」(テイカ社製、商品名)100質量部とトルエン500質量部とを攪拌混合し、これにシランカップリング剤「A1100」(日本ユニカー社製、商品名)2質量部を添加し、更に5時間攪拌した。次いで、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間の焼き付けを行い、表面処理酸化亜鉛を得た。得られた表面処理酸化亜鉛を蛍光X線により分析した結果、Si元素強度は亜鉛元素強度の1.8×10−4であった。
続いて、上記で得られた表面処理酸化亜鉛35質量部と、硬化剤であるブロック型ポリイソシアネート「スミジュール3175」(住友バイエルンウレタン社製、商品名)15質量部と、ブチラール樹脂「BM−1」(積水化学社製、商品名)6質量部と、2−ブタノン44質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散処理を行った。次いで、得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質重量部及び「トスパール130」(GE東芝シリコーン社製、商品名)17質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。
<電荷発生層形成用塗布液の調製>
電荷発生材料として、Cu−kα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°の位置に回折ピークを有する塩化ガリウムフタロシアニンを準備した。そして、これを15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂「VMCH」(日本ユニオンカーバイト社製、商品名)10質量部およびn−ブチルアルコール300質量部を混合した混合物を、サンドミルにて4時間分散することにより電荷発生層形成用塗布液を得た。なお、X線回折スペクトルの測定は、粉末法によりCuKα特性X線を用いて、以下の条件で行った。
使用測定器:理学電機社製X線回折装置Miniflex
X線管球:Cu
管電流:15mA
スキャン速度:5.0deg./min
サンプリング間隔:0.02deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):35deg.
ステップ角度(2θ):0.02deg.
<電荷輸送層(表面層)形成用塗布液の調製>
先ず、乳化重合により得られた4フッ化エチレン樹脂粒子に照射量2×102C/kgの条件でガンマ線を照射したものを準備した。この4フッ化エチレン樹脂粒子は、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において18°付近に回折ピークを有し、その半値幅は0.235であった。また、融点は332℃であった。なお、半値幅についてはガンマ線照射前後で変化はなかった。そして、ガンマ線照射後の4フッ化エチレン樹脂粒子8質量部と、分散助剤としてフッ素系グラフトポリマー(GF300、東亜合成株式会社製)0.16質量部と、テトロヒドロフラン49質量部と、トルエン21質量部とを十分に攪拌混合して、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を調製した。なお、本実施形態において、4フッ化エチレン樹脂粒子のX線回折スペクトルの測定は、粉末法によりCuKα特性X線を用いて、以下の条件で行った。
使用測定器:理学電機社製X線回折装置Miniflex
X線管球:Cu
管電流:15mA
スキャン速度:5.0deg./min
サンプリング間隔:0.02deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):35deg.
ステップ角度(2θ):0.02deg.
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン20重量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン231質量部及びトルエン99質量部に十分溶解混合した。続いて、これに上記で得られた4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液78質量部を添加し、攪拌混合した後、更に、微細な流路を備える貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー「LA−33S」(ナノマイザー株式会社製、商品名)を用いて、圧力500kgf/cm2の条件で分散処理を4回繰返すことにより、電荷輸送層(表面層)形成用塗布液1を得た。
<電子写真感光体の作製>
30mmφのアルミニウム基体を準備し、このアルミニウム基体上に、上記で得られた下引層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。続いて、これを160℃で、100分間乾燥し硬化することにより、膜厚20μmの下引層を形成した。
次に、形成した下引層上に、上記で得られた電荷発生層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。続いて、これを乾燥することにより、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次に、形成した電荷発生層上に、上記で得られた電荷輸送層(表面層)形成用塗布液1を浸漬塗布法により塗布した。続いて、これを乾燥することにより膜厚26μmの電荷輸送層(表面層)を形成し、実施例1の電子写真感光体を得た。
得られた電子写真感光体の電荷輸送層(表面層)の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、画像解析装置「SPICCA」(日本アビオニクス株式会社、商品名)により解析したところ、4フッ化エチレン樹脂粒子は、ほぼ一次粒子として分散していた。また、その一次粒子の平均粒径は0.2μmであり、観察された4フッ化エチレン樹脂粒子は、一次粒子又は二次粒子にかかわらず、全て粒子径1μm以下であった。
(実施例2)
<電荷輸送層(表面層)形成用塗布液の調製>
先ず、乳化重合により得られた4フッ化エチレン樹脂粒子に照射量2×102C/kgの条件でガンマ線を照射したものを準備した。この4フッ化エチレン樹脂粒子は、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において18°付近に回折ピークを有し、その半値幅は0.212であった。また、融点は331℃であった。なお、半値幅についてはガンマ線照射前後で変化はなかった。そして、ガンマ線照射後の4フッ化エチレン樹脂粒子10質量部と、分散助剤としてフッ素系グラフトポリマー(GF300、東亜合成株式会社製)0.20質量部と、テトロヒドロフラン49質量部と、トルエン21質量部とを十分に攪拌混合して、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を調製した。
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン20重量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン231質量部及びトルエン99質量部に十分溶解混合した。続いて、これに上記で得られた4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液78質量部を添加し、攪拌混合した後、更に、微細な流路を備える貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー「LA−33S」(ナノマイザー株式会社製、商品名)を用いて、圧力500kgf/cm2の条件で分散処理を4回繰返すことにより、電荷輸送層(表面層)形成用塗布液2を得た。
<電子写真感光体の作製>
電荷輸送層(表面層)形成用塗布液1の代わりに、上記で得られた電荷輸送層(表面層)形成用塗布液2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の電子写真感光体を得た。
得られた電子写真感光体の電荷輸送層(表面層)の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、画像解析装置「SPICCA」(日本アビオニクス株式会社、商品名)により解析したところ、4フッ化エチレン樹脂粒子の一次粒子の平均粒径(個数平均)は0.2μmであり、粒子径1μm以下の粒子の含有割合は、観察された4フッ化エチレン樹脂粒子の総数に対して98%であった。なお、粒子径1μm以下の粒子については、一次粒子であるか又は二次粒子であるかを問わない。また、一次粒子の個数を勘定する際に、二次粒子を構成する一次粒子は勘定されない。
(実施例3)
<電荷輸送層(表面層)形成用塗布液の調製>
先ず、乳化重合により得られた4フッ化エチレン樹脂粒子に照射量2×102C/kgの条件でガンマ線を照射したものを準備した。この4フッ化エチレン樹脂粒子は、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において18°付近に回折ピークを有し、その半値幅は0.259であった。また、融点は329℃であった。なお、半値幅についてはガンマ線照射前後で変化はなかった。そして、ガンマ線照射後の4フッ化エチレン樹脂粒子12質量部と、分散助剤としてフッ素系グラフトポリマー(GF300、東亜合成株式会社製)0.24質量部と、テトロヒドロフラン49質量部と、トルエン21質量部とを十分に攪拌混合して、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を調製した。
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン20重量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン231質量部及びトルエン99質量部に十分溶解混合した。続いて、これに上記で得られた4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液78質量部を添加し、攪拌混合した後、更に、微細な流路を備える貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー「LA−33S」(ナノマイザー株式会社製、商品名)を用いて、圧力500kgf/cm2の条件で分散処理を4回繰返すことにより、電荷輸送層(表面層)形成用塗布液3を得た。
<電子写真感光体の作製>
電荷輸送層(表面層)形成用塗布液1の代わりに、上記で得られた電荷輸送層(表面層)形成用塗布液3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の電子写真感光体を得た。
得られた電子写真感光体の電荷輸送層(表面層)の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、画像解析装置「SPICCA」(日本アビオニクス株式会社、商品名)により解析したところ、4フッ化エチレン樹脂粒子の一次粒子の平均粒径(個数平均)は0.2μmであり、粒子径1μm以下の粒子の含有割合は、観察された4フッ化エチレン樹脂粒子の一次粒子及び二次粒子の総数に対して90%であった。なお、粒子径1μm以下の粒子は、一次粒子であるか又は二次粒子であるかを問わない。また、一次粒子の個数を勘定する際に、二次粒子を構成する一次粒子は勘定されない。
(比較例1)
<電荷輸送層(表面層)形成用塗布液の調製>
先ず、乳化重合により得られた、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において18°付近に回折ピークを有し、その半値幅が0.235である4フッ化エチレン樹脂粒子を準備した。なお、この4フッ化エチレン樹脂粒子の融点は335℃であった。そして、この4フッ化エチレン樹脂粒子8質量部と、分散助剤としてフッ素系グラフトポリマー(GF300、東亜合成株式会社製)0.16質量部と、テトロヒドロフラン49質量部と、トルエン21質量部とを十分に攪拌混合して、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を調製した。
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン20重量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン231質量部及びトルエン99質量部に十分溶解混合した。続いて、これに上記で得られた4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液78質量部を添加し、攪拌混合した後、更に、微細な流路を備える貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー「LA−33S」(ナノマイザー株式会社製、商品名)を用いて、圧力500kgf/cm2の条件で分散処理を4回繰返すことにより、電荷輸送層(表面層)形成用塗布液4を得た。
<電子写真感光体の作製>
電荷輸送層(表面層)形成用塗布液1の代わりに、上記で得られた電荷輸送層(表面層)形成用塗布液4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を得た。
得られた電子写真感光体の電荷輸送層(表面層)の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、画像解析装置「SPICCA」(日本アビオニクス株式会社、商品名)により解析したところ、4フッ化エチレン樹脂粒子の一次粒子の平均粒径(個数平均)は0.2μmであり、粒子径1μm以下の粒子の含有割合は、観察された4フッ化エチレン樹脂粒子の一次粒子及び二次粒子の総数に対して60%であった。なお、粒子径1μm以下の粒子は、一次粒子であるか又は二次粒子であるかを問わない。また、一次粒子の個数を勘定する際に、二次粒子を構成する一次粒子は勘定されない。
(比較例2)
<電荷輸送層(表面層)形成用塗布液の調製>
先ず、乳化重合により得られた4フッ化エチレン樹脂粒子に照射量2×102C/kgの条件でガンマ線を照射したものを準備した。この4フッ化エチレン樹脂粒子は、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において18°付近に回折ピークを有し、その半値幅は0.320であった。また、融点は332℃であった。なお、半値幅についてはガンマ線照射前後で変化はなかった。そして、この4フッ化エチレン樹脂粒子8質量部と、分散助剤としてフッ素系グラフトポリマー(GF300、東亜合成株式会社製)0.16質量部と、テトロヒドロフラン49質量部と、トルエン21質量部とを十分に攪拌混合して、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を調製した。
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン20重量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)60質量部とを、テトロヒドロフラン231質量部及びトルエン99質量部に十分溶解混合した。続いて、これに上記で得られた4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液78質量部を添加し、攪拌混合した後、更に、微細な流路を備える貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー「LA−33S」(ナノマイザー株式会社製、商品名)を用いて、圧力500kgf/cm2の条件で分散処理を4回繰返すことにより、電荷輸送層(表面層)形成用塗布液5を得た。
<電子写真感光体の作製>
電荷輸送層(表面層)形成用塗布液1の代わりに、上記で得られた電荷輸送層(表面層)形成用塗布液5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を得た。
得られた電子写真感光体の電荷輸送層(表面層)の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、画像解析装置「SPICCA」(日本アビオニクス株式会社、商品名)により解析したところ、4フッ化エチレン樹脂粒子の一次粒子の平均粒径(個数平均)は0.2μmであり、粒子径1μm以下の粒子の含有割合は、観察された4フッ化エチレン樹脂粒子の一次粒子及び二次粒子の総数に対して98%であった。なお、粒子径1μm以下の粒子は、一次粒子であるか又は二次粒子であるかを問わない。
[電子写真感光体の評価]
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた電子写真感光体について、以下の方法により画質評価を行った。
電子写真装置(富士ゼロックス社製フルカラープリンター「DocuCenter Color 400 CP」と同様の構造を有する改造プリンター)に上記で得られた電子写真感光体を装着し、28℃、85%RHの環境下において、モノクロモードで、50000枚のプリント試験を実施した。なお、上記プリンターは、装着した電子写真感光体上の残留する未転写トナーをブレードクリーニング方式で回収し、現像器に戻るように改造したものであった。トナーに関しては、上記富士ゼロックス社製フルカラープリンター「DocuCentre Color 400 CP」純正のトナーを使用した。
その初期と50000枚時点での画像についてソリッド部及び背景部の画質を目視で評価した。これらの結果を下記表1に示す。
表1に示すように、実施例1〜3の電子写真感光体によれば、50000枚プリント後であってもソリッド部及び背景部の両方において良好な画質を得ることができることが確認された。一方、1μm以下のフッ素系樹脂粒子の含有割合が60%である比較例1の電子写真感光体では、40000枚プリント時から感光体の表面層の磨耗に起因すると考えられるソリッド部での筋状濃度むらが発生し、50000枚プリント時からクリーニング不良に起因すると考えられるかぶりが発生した。また、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)において18°付近の回折ピークの半値幅が0.320であるフッ素系樹脂粒子を表面層に含有する比較例2の電子写真感光体では、45000枚プリント時からクリーニング不良に起因すると考えられるかぶりが発生した。
1,21…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層、4…下引層、5…電荷発生層、6…電荷輸送層、7…保護層、200,220…電子写真装置、208…帯電装置、209…電源、210…露光装置、211…現像装置、212…転写装置、213…クリーニング装置、214…除電器、215…定着装置、216…トナー供給装置、217…露光のための開口部、218…除電露光のための開口部、219…取り付けレール、300…プロセスカートリッジ、400…ハウジング、402a〜402d…帯電ロール、403…レーザー光源(露光装置)、404a〜404d…現像装置;405a〜405d…トナーカートリッジ、406…駆動ロール、407…テンションロール、408…バックアップロール、409…中間転写ベルト、410a〜410d…1次転写ロール、411…トレイ(被転写媒体トレイ)、412…移送ロール、413…2次転写ロール、414…定着ロール、415a〜415d…クリーニングブレード、416…クリーニングブレード、417、500…被転写媒体。