以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は画像形成装置の好適な一実施形態を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置100は、ケーシング102で覆われており、その上面は排出トレイ部104を兼用している。ケーシング102内には、その中央部に電子写真感光体106が配設されている。この電子写真感光体106の周囲には、直上部やや右寄りから反時計回りに、電子写真感光体106の表面を一様に帯電するための帯電装置108、露光装置として露光光源に自己走査型LED(以下、「SLED」という)を用いた光源アレイ110、現像装置116、中間転写ベルト122及びクリーニング装置124が配設されている。
ここで、電子写真感光体106は、導電性支持体及び該導電性支持体上に形成された感光層を有し、当該感光層は、前記導電性支持体から最も遠い位置に、有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子と、フッ素含有有機系粒子とを含有する最表面層を有する。さらに、上記最表面層は、ダイナミック硬度の平均値が22.2〜29.1の範囲であり、下記式(1)で定義されるダイナミック硬度のバラツキCVが1.5%以上7.0%以下である。
CV=[A]/[B]×100 …(1)
[式(1)中、A及びBは、ベルコビッチ型圧子で最表面層のダイナミック硬度[N/m2]を0.25mm間隔で30箇所測定したときの、標準偏差(σ)及び平均値をそれぞれ示す。]
最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVが7.0%を超えた場合、画出しの繰り返しによる感光体キズの発生が顕著となったり、ハーフトーンでの濃度低下(フィルミング)が発生したりする。また、当該バラツキCVが1.5%未満の場合には、感光体の磨耗量が大きくなり、画像品質の長期維持性に問題が発生する。更に、高画質化の観点から、最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVは、1.8%以上6.5%以下であることが好ましい。
なお、本発明でいう「最表面層のダイナミック硬度」とは、ベルコビッチ型圧子(稜間角115°、先端曲率半径0.07μmのダイアモンド三角錐圧子)を電子写真感光体の感光層の最表面層に対して垂直に3mNの応力で押し込んだときの押込み深さから、下記式(2)に基づき算出される値を言う。
DH=3.8584×(P/D2)…(2)
式(2)中、DHは最表面層ダイナミック硬度[N/m2]、Pは押込み荷重[N](P=3×10−3[N])、Dは押込み深さ[m]を表す。ここで、ダイアモンド圧子は、微小硬度測定装置(島津製作所社製、「DUH−201」)に装着されているものであり、押込み深さは圧子の変位から、押込み荷重は圧子につけたロードセルから読み取る。
なお、最表面層ダイナミック硬度測定の更に具体的な条件は以下のとおりである。測定対象の電子写真感光体としては10mm角に切断したものを用い、超微小硬度計の測定モードとしては、圧子押込み測定モード(押込み速さ:0.45mN/sec)を使用する。そして、上記圧子を押込み荷重3mNで押し込み、3mNの圧力を2秒間保持し、このときの圧子の変位を押込み深さとする。
なお、電子写真感光体106の詳細については、後述する。
現像装置116は、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の各色のトナータンク112を装備し、回転することで、順次各色のトナーロール114を電子写真感光体106と対応させることが可能なロータリ現像装置である。また、中間転写ベルト122は、複数のローラ120に巻き掛けられて図1の矢印A方向に駆動するものであり、一次(中間)転写体として機能する。
現像装置116により電子写真感光体106の外周面上に形成されたトナー像が中間転写ベルト122に転写されると、潤滑剤供給装置により電子写真感光体106の外周面に潤滑剤が供給され、当該外周面のうち転写されたトナー像を担持していた領域がクリーニング装置124により清浄化される。なお、潤滑剤供給装置は、クリーニング装置124に一体的に備えられていてもよく、別個に備えられていてもよい。
中間転写ベルト122の下端部は、画像形成用紙(以下、単に「用紙」という)126の搬送経路の一部となっており、この下端部において、用紙126は、中間転写ベルト122とローラ118との間に挟持搬送されるようになっている。
用紙126の搬送経路には、複数のローラ118が配設され、給紙トレイ128に積み重ねられた最上層の用紙126が枚葉装置130によって取り出され、上記中間転写体124の下端部で接触しながら搬送され、定着部132を介して上記排出トレイ部104へ送り出されるようになっている。
なお、中間転写ベルトの搬送路の一部に対向する位置には、濃度センサ134が設けられ、例えばテスト用パッチ(色、濃度の見本)の濃度を検出するようになっている。次に、光源アレイ110について詳述する。
図2に示されるように、光源アレイ110は、電子写真感光体106の軸線方向に沿って複数のチップ状のLED150が配列されたLEDアレイ(発光素子アレイ)152をさらに複数個直列に配列することで構成されている。なお、LED150の発光点は、千鳥状に配列していることが好ましい。この光源アレイ110は、同一のケーシング154内に治められた駆動回路156(図3参照)によって点灯制御され、画像データに応じて光ビームを走査する。
図3には、光源アレイ110の駆動回路156の詳細が示されている。駆動回路156は、基本的には図10に示す単体の駆動回路の組み合わせである。ここでは、サイリスタ10等の詳細についての説明は省略する。
SLEDを点灯させるトリガとしては、電圧VSが抵抗158を介して点P1(点Pに続く数字は、複数配列されたLEDの順番を示す)に印加されるようになっている。この点P1を含め全ての段の点P(1〜N(Nは正の整数))は、それぞれ抵抗160を介して、ベース線161に接続されている。ベース線161は、初段で所定の電圧を維持し、各段に行くに従い、所定電位(Vf)ずつ低下する電位(Φga)とされるようになっている。
また、点P(1〜N)は、LED150のアノード側に接続されている。なお、LED150のカソード側は後述する階調信号線163に接続されている。
ここでΦgaの駆動回路は、図4に示されるように、上記濃度センサ134からの検出信号に基づいて、APC(オートパワーコントロール)162によるに光量指示値を受けて定電流駆動されるようになっている(定電流駆動回路)。すなわち、光量指示値は、DAコンバータ164でアナログ値に変換され、抵抗166を介して第1のコンパレータ168のマイナス側入力端に接続されている。この第1のコンパレータ168のプラス側入力端はアース(GND)されている。また、第1のコンパレータ168の出力端とマイナス側入力端とは抵抗170を介して接続されている。これにより、第1のコンパレータ168の出力は、光量指示値によって変化し、所定の電圧となる。
ここで、この出力電圧を第2のコンパレータ172のプラス側入力端に接続し、マイナス側入力端を抵抗174を介して基準の電圧源VSSと接続し、さらに、第2のコンパレータ172の出力端をMOS型トランジスタ176へ接続することで、このMOS型トランジスタ176には、一定の電流が流れることになる。
なお、図4では、Φgaの駆動回路を、定電流駆動回路178としたが、図5に示されるような定電圧駆動回路180でもよい。回路構成は図4の第1のコンパレータ168の出力を用いればよいため、同一の符号を付して構成の説明を省略する。
図3に示されるように、奇数段のトランジスタQ2のエミッタは第1の制御線(V1)182に接続され、偶数段のトランジスタQ2のエミッタは第2の制御線(V2)184に接続されている。また、各段の点P(1〜N)は、LED150の一端に接続され、このLED150の他端は各段の階調信号となるパルス波を出力する階調信号線163に接続されている。この階調信号線163がローレベル(L)のときに、上記点P(1〜N)が所定の電位となっていれば、LEDは点灯する。
図6には、階調信号線163に送られるパルス波形の生成回路200が示されている。画像処理部202から出力される階調信号(12ビット)は、積算器204に入力される。画像処理部202は、例えば、記録媒体や通信回線等から送られてきた様々な形式の画像を本実施の形態の画像形成装置100に対応する形式に変換処理する。この積算器204には、補正データ保持部206に保持された補正データ(4ビット)も入力されており、各LED150の発光点むら等が補正される。
積算器で補正データが加味された補正階調信号はDAコンバータ208によってアナログ信号に変換され(濃度信号)、コンパレータ210のプラスが入力端へ入力される。
一方、タイミング生成部212から出力される制御信号線V1(Φ1)、V2(Φ2)には、それぞれ分岐線182A、184Aが接続され、これらの分岐線182A、184AはOR回路186へ入力する。このため、OR回路186の出力は、V1及びV2の何れか一方がアクティブのとき(ここで、ローレベル)出力がアクティブとなる。このアクティブとなった時期に同期して三角波発生回路188では、三角波が生成され、コンパレータ210のマイナス側入力端に入力されるようになっている。
この動作が図7のタイムチャートに示されている。すなわち、V1(Φ1)、V2(Φ2)のORをとった信号に応じて三角波が形成される。このとき、各三角波間には、スペースaが生じ、これが、奇数LED及び偶数LEDの点灯タイミングにおいて、それぞれ順次1個ずつ点灯させるためのインタバルとなる。
この三角波に濃度信号を重ね合わせ、三角波における濃度信号より高いレベルの範囲が実際の点灯時間となり、階調信号線163に送るパルス波形を生成することができる。
また、図8は図3のLED駆動回路の動作タイミングチャートであり、図9は図3のLED駆動回路のLED発光状態を示す特性図である。ここでは、その詳細については省略する。
次に、帯電装置108について詳述する。帯電装置108の帯電方式は、従来から公知のコロトロン、スコロトロンによる非接触方式を好ましく採用することができる。しかし、画像形成装置を小型化するためには、ロール型の接触帯電器を用いることが好ましい。画像形成装置100は、上記特定の電子写真感光体106を使用することから、電子写真感光体106へのストレスが大きい接触帯電を用いた場合においても、特に優れた耐久性を示す。
接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、又はローラ状等の何れでもよいが、特にローラ状部材が好ましい。通常、ローラ状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。さらに必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
ローラ状部材は、電子写真感光体106に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも電子写真感光体106と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能する。しかし、ローラ部材に何らかの駆動手段を取り付け、電子写真感光体106とは異なる周速度で回転させ、帯電させてもよい。
芯材の材質としては導電性を有するもので、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。また、その他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。弾性層の材質としては導電性又は半導電性を有するもので、一般にはゴム材に導電性粒子又は半導電性粒子を分散したものである。
ゴム材としては、EPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。
導電性粒子又は半導電性粒子としては、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いることができ、これらの材料は単独又は2種以上混合して用いてもよい。
ローラ状部材の抵抗層及び保護層としては、例えば、結着樹脂に導電性粒子又は半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したものが用いられる。抵抗層及び保護層の抵抗率は、103Ω・cm以上1014Ω・cm以下が好ましく、105Ω・cm以上1012Ω・cm以下がより好ましく、107Ω・cm以上1012Ω・cm以下が更に好ましい。また、膜厚としては、0.01μm以上1000μm以下が好ましく、0.1μm以上500μm以下がより好ましく、0.5μm以上100μm以下が更に好ましい。
結着樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂等が用いられる。
導電性粒子又は半導電性粒子としては、弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が用いられる。また、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。
これらの層を形成する手段としてはブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等を用いることができる。
これらの導電性部材を用いて電子写真感光体106を帯電させる際には、導電性部材に電圧を印加するが、印加電圧は直流電圧、又は直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正又は負の50V以上2000V以下であることが好ましく、100V以上1500V以下であることがより好ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400V以上1800V以下であることが好ましく、800V以上1600V以下であることがより好ましく、1200V以上1600V以下であることが更に好ましい。交流電圧の周波数は、50Hz以上20000Hz以下であることが好ましく、100Hz以上5000Hz以下であることがより好ましい。
現像装置116で用いられる現像剤は、一成分系、二成分系のいずれであってもよく、また、正規現像剤、反転現像剤のいずれであってもよい。
また、画像形成装置100は、電子写真感光体106上のトナー像を用紙126に直接転写するものであってもよく、電子写真感光体106上のトナー像を中間転写体に転写した後、さらに被転写媒体に転写する中間転写方式のものであってもよい。なお、中間転写体としては、図1に示した画像形成装置100では中間転写体としてベルト形状の中間転写ベルト122を用いているが、ドラム形状等の中間転写体を用いてもよい。
さらに、図1に示した画像形成装置100は、電子写真感光体106を少なくとも含んで構成されるプロセスカートリッジを備えるものであってもよい。かかるプロセスカートリッジを用いることによって、メンテナンスをより簡便に行うことができる。
次に、電子写真感光体106について詳述する。
図11は、電子写真感光体106の一例を示す模式断面図である。図11に示す電子写真感光体106は、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。そして、感光層3は、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。図11に示す電子写真感光体106では、感光層3の導電性支持体2から最も遠い位置に設けられている電荷輸送層6が、有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子と、フッ素含有有機系粒子とを含有する最表面層であり、ダイナミック硬度の平均値が22.2〜29.1の範囲であることを満たし、上述した上記式(1)で定義されるダイナミック硬度のバラツキCVが1.5%以上7.0%以下であることを満たす。
図11に示す電子写真感光体106は、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6がこの順序で積層された感光層3を有しているが、電子写真感光体106はこれに限られたものではない。
例えば、感光層3は、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6、保護層がこの順序で積層されたものであってもよく、導電性支持体2上に、下引層4、電荷輸送層6、電荷発生層5、保護層がこの順序で積層されたものであってもよい。この場合、保護層が、本発明に係る最表面層である。
また、図11に示す電子写真感光体106は、電荷発生層5と電荷輸送層6とに機能が分離された感光層3を備えるものであるが、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層)に含有するものとしてもよい。すなわち、感光層3が、導電性支持体2上に、下引層4、単層型感光層がこの順序で積層された構造を有していてもよい。この場合、単層型感光層が、本発明に係る最表面層である。なお、単層型感光層を用いた場合においても、単層型感光層上に保護層を設けることもできる。但し、単層型感光層上に保護層を設ける場合、保護層が、本発明に係る最表面層となる。
なお、上述の実施形態では下引層4がある例を示したが、下引層4を設けない構成とすることができる。
以下、代表例として図11に示す電子写真感光体106に基づいて、各要素について説明する。
導電性支持体2としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属;アルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム;導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、プラスチックフィルム;等を用いることができる。
導電性支持体2の形状は特に限定されず、例えば、ドラム状、シート状及びプレート状であってよい。なお、導電性支持体2には、注入阻止、接着性改善、干渉縞防止などの目的で、陽極酸化処理、ベーマイト処理、ホーニング処理等を施してもよい。
下引層4は、感光層3の帯電の際に、導電性支持体2から感光層3への電荷の注入を阻止するとともに、感光層3を導電性支持体2に対して一体的に接着保持せしめる接着層としての作用を有するものである、また、下引層4は、場合によっては導電性支持体2の光の反射防止作用等示すことができる。かかる効果を有し、高画質な画像を維持する観点から、本発明に係る電子写真感光体は下引層を備えていることが好ましい。
下引層4の構成材料としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。また、下引層4の構成材料として、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることもできる。
上記の化合物は、単独若しくは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いることができる。中でも、上層(本実施形態では電荷発生層5)の形成に用いられる溶剤(後述)に不溶な樹脂が好ましく、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。さらに、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が好ましい。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
下引層4中には、感光体特性向上のために、導電性物質を含有させることができる。導電性物質としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の金属酸化物等が挙げられるが、所望の感光体特性が得られるのであれば、公知のいかなるものでも使用することができる。
上記金属酸化物は、表面処理を施すことができる。金属酸化物表面に表面処理を施すことで、抵抗値の制御、分散性制御、感光体特性向上を図ることができる。表面処理剤としては、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。なお、これらの化合物は1種を単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、1種又は複数種の化合物を重縮合したものを用いてもよい。中でもシランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない、画質特性に優れるなど性能上優れている。シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物及びアルミニウムキレート化合物としては、例えば、前述した例と同じ物質が挙げられる。
表面処理の方法としては、公知のいかなる方法も使用可能であるが、例えば、乾式法又は湿式法などを用いることができる。
乾式法としては、例えば、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、表面処理剤を直接又は有機溶媒に溶解させて滴下する方法や、表面処理剤又は有機溶媒に溶解させた表面処理剤を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧する方法が挙げられる。なお、滴下又は噴霧は用いられる有機溶媒の沸点以下の温度で行われることが好ましい。用いられる有機溶媒の沸点より高い温度で滴下又は噴霧した場合、処理の途中で有機溶媒が蒸発し、表面処理剤が局部的に凝集して均一な処理ができにくくなる傾向がある。このようにして表面処理された金属酸化物粒子には、さらに100℃以上で焼き付けを行うこともできる。焼き付けの温度及び時間は、所望の電子写真特性が得られる範囲で任意に調整できる。
湿式法としては、例えば、金属酸化物微粒子と溶剤とを混合し、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により金属酸化物微粒子を分散した分散液に、表面処理剤を添加し攪拌又は分散し、さらに、溶剤を除去する方法が挙げられる。溶剤の除去方法としては、例えば、ろ過、蒸留などが挙げられる。ただし、ろ過により溶剤を除去した場合、例えば、未反応のシランカップリング剤等の表面処理剤が流出しやすく、所望の特性を得るための表面処理剤量を制御し難くなる傾向があるため、溶剤の除去方法としては、蒸留が好ましい。溶剤を除去した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けの温度及び時間は、所望の電子写真特性が得られる限りにおいて任意の範囲とすることができる。なお、湿式法を用いた場合、金属酸化物微粒子に含まれる水分を、金属酸化物微粒子を溶剤中で攪拌加熱したり、溶剤と共沸させたりすることによって除去することができる。
下引層4中の金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は、所望の電子写真特性が得られる量であればいかなる量でも用いることができる。また、下引層4中に用いられる金属酸化物微粒子と樹脂との割合は、所望の電子写真特性が得られる割合であれば任意に設定できる。
金属酸化物微粒子若しくは表面処理された金属酸化物微粒子には、分散性の観点から、電子受容物質を付与することが好ましい。電子受容物質としては、所望の特性が得られるものであればいかなるものでも使用可能であるが、金属酸化物微粒子若しくは表面処理された金属酸化物微粒子と反応可能な基を有するものが好ましく用いられ、水酸基を有する化合物がより好ましく用いられる。特に、水酸基を有するアントラキノン構造を基本骨格とするアクセプター性化合物が好ましく用いられる。水酸基を有するアントラキノン構造を基本骨格とする化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。電子受容物質として更に具体的には、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノンなどが特に好ましく用いられる。
下引層4は、光散乱性の向上等の目的により、各種の有機又は無機微粉末などの光散乱性物質を更に含んでいてもよい。かかる微粉末の好ましい例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料や、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料や、テフロン(登録商標)樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が挙げられる。これらの微粉末の粒径は、0.01μm以上2μm以下であることが好ましい。下引層4が当該微粉末を含有する場合、その含有量は、下引層4に含まれる固形分全量に対して、質量比で10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
下引層4は、例えば、上述の材料を所定の溶媒に溶解及び/又は分散させた下引層形成用塗布液を、導電性支持体上に塗布し、乾燥することで形成できる。
下引層形成用塗布液には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料等が挙げられる。
下引層形成用塗布液に、前述の導電性物質や光散乱物質等の微粉末を混入させる場合には、樹脂成分を溶解した溶液中に微粉末を添加して分散処理が行うことが好ましい。微粉末を樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等が挙げられる。
また、下引層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
下引層4の膜厚は、0.01μm以上50μm以下であることが好ましく、0.05μm以上30μm以下であることがより好ましい。
電荷発生層5は、電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フラトシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域のレーザー露光に対しては、金属及又は無金属フタロシアニン顔料が好ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、特開平5−140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン等がより好ましい。
結着樹脂は、例えば、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。結着樹脂はまた、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。
好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1乃至1:10の範囲内であることが好ましい。
電荷発生層5は、例えば、電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤中に分散した電荷発生層形成用塗布液を塗布することにより形成できる。
電荷発生層形成用塗布液に用いられる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。なお、これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、例えば、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等が挙げられる。これらの分散方法は、分散による電荷発生材料の結晶型の変化を防止することができる。また、この分散の際には、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下とすることが好ましく、0.3μm以下とすることがより好ましく、0.15μm以下とすることが更に好ましい。
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。このようにして得られる電荷発生層5の厚みは、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。
電荷輸送層6は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成される層であり、有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子と、フッ素含有有機系粒子とを含有する。絶縁性無機粒子を有機化合物で表面処理することで、抵抗値の制御、分散性制御、感光体特性向上が可能となる。
絶縁性無機粒子としては、所望の感光体特性が得られるものであれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化マグネシウム粒子が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、二酸化ケイ素粒子及びアルミナ粒子が好ましく、電子写真感光体の電気特性の観点からは、二酸化ケイ素粒子が好ましい。
なお、絶縁性無機粒子の分散性向上の観点から、絶縁性無機粒子の比表面積は50m2/g以上300m2/g以下が好ましく、70m2/g以上200m2/g以下がより好ましい。
ここで、比表面積は、一般に使用される方法で測定される。具体的には、例えば、透過法又は気体吸着法によって測定される。気体吸着法を用いた測定装置としては、流動式比表面積自動測定装置フローソーブIII2305/2310(島津製作所)、自動比表面積測定装置ジェミニ2360/2375(島津製作所)、自動比表面積/細孔分布測定装置トライスター3000などが挙げられるが、特に測定装置を限定するものではない。
表面処理に用いられる有機化合物に特に制限はないが、例えば、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物及びアルミニウムキレート化合物としては、例えば、前述した例と同じ化合物が挙げられる。それ以外の有機化合物としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルシラン等のシラン含有化合物やジメチルシロキサン等を用いることができる。なお、これらの化合物は単独若しくは複数の化合物の混合物又は重縮合物として用いることができる。中でも、芳香族系官能基を有する化合物が好ましい。このような、化合物を用いることで、ダイナミック硬度のバラツキを小さくすることができる。
有機化合物による表面処理は、公知のいかなる方法で行ってもよいが、例えば、乾式法又は湿式法などにより行われる。
乾式法としては、例えば、絶縁性無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、有機化合物を直接又は有機溶媒に溶解させて滴下する方法や、当該有機化合物を直接又は有機溶媒に溶解させて乾燥空気や窒素ガスとともに絶縁性無機粒子に噴霧する方法が挙げられる。なお、滴下又は噴霧は用いられる有機溶媒の沸点以下の温度で行われることが好ましい。用いられる有機溶媒の沸点より高い温度で滴下又は噴霧した場合、処理の途中で溶液が蒸発し、有機化合物が局部的に固まってしまい均一な処理ができにくくなる傾向がある。このようにして表面処理された絶縁性無機粒子には、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けの温度及び時間は、所望の電子写真特性が得られる限りにおいて任意の範囲とすることができる。
湿式法としては、例えば、絶縁性無機粒子と溶剤とを混合し、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により絶縁性無機粒子を分散した分散液に、有機化合物を添加し攪拌又は分散し、さらに、溶剤を除去する方法が挙げられる。溶剤の除去方法としては、例えば、ろ過、蒸留などが挙げられる。ろ過により溶剤を除去した場合、例えば、未反応のシランカップリング剤等の有機化合物が流出しやすく、所望の特性を得るための有機化合物量を制御し難くなる傾向があるため、溶剤の除去方法としては、蒸留が好ましい。溶剤を除去した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けの温度及び時間は、所望の電子写真特性が得られる限りにおいて任意の範囲とすることができる。なお、湿式法を用いた場合、絶縁性無機粒子に含まれる水分を、絶縁性無機粒子を溶剤中で攪拌加熱したり、溶剤と共沸させたりすることによって除去することができる。
絶縁性無機粒子に有機化合物で表面処理を施す場合、有機化合物の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定することができる。
有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子の含有量は、電荷輸送層6に含まれる固形分全量を基準として0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。この含有量が0.3質量%未満であると、絶縁性無機粒子による光散乱効果や感光体の長寿命化が不十分となる傾向があり、この含有量が10質量%を超えると、光照射による電位変化が大きくなり、感光体にキズがつきやすく画質が悪化しやすい傾向にある。
フッ素含有有機系粒子としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びこれらの樹脂を構成する単量体の2種以上からなる共重合体の粒子が挙げられる。フッ素含有有機系粒子の平均一次粒径は、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。平均一次粒径が0.05μm未満であると、分散時の凝集が起こりやすくなる傾向があり、平均一次粒径が1μmを超えると、形成する画像の画質欠陥が発生し易くなる傾向がある。なお、これらのフッ素含有有機系粒子は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、電荷輸送層6中のフッ素含有有機系粒子の含有量は、電荷輸送層6に含まれる固形分全量を基準として0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。この含有量が1質量%未満であると、フッ素系樹脂による改質効果が不十分となり、感光体の長寿命化が不十分となる傾向があり、この含有量が40質量%を超えると、光通過性の低下や繰返し使用による残留電位の上昇が起こりやすくなる傾向がある。
電荷輸送層6に用いられる電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質;クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質;又は上記化合物から水素原子等を除いた残基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電荷輸送層6に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電荷輸送層6は、例えば、上述の電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶媒に溶解及び/又は分散させ、そこに有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子及びフッ素含有有機系粒子を分散させて電荷輸送層形成用塗布液を調製した後、かかる塗布液を、電荷発生層5上に塗布し乾燥することによって形成することができる。
電荷輸送層形成用塗布液に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状又は直鎖状エーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤等が挙げられる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は10:1乃至1:5が好ましい。
有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子及びフッ素含有有機系粒子を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コロイドミル、衝突式メディアレス分散機(ナノマイザー)、貫通式メディアレス分散機等の方法が挙げられる。
なお、分散処理は、3回以上15回以下施すことが好ましく、3回以上12回以下施すことがより好ましい。この回数が3回以下の場合には、ダイナミック硬度のばらつきCVが大きくなる傾向にあり、15回以上になると電気的な長期維持性が低下する傾向がある。
また、塗布液を調製する際に、フッ素系樹脂の分散安定性を向上させ、且つ塗膜形成時の凝集を防止する観点から、塗布液には分散助剤を更に添加することが好ましい。かかる分散助剤としては、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。特にフッ素化グラフトポリマーが好ましい。フッ素化グラフトポリマーを含有させる場合、その含有量は、電荷輸送層6に含まれる固形分全量を基準として、0.01質量%以上0.06質量%以下であることが好ましい。この含有量が0.01質量%以下の場合にはダイナミック硬度のバラツキCVが大きくなる傾向にあり、この含有量が0.06質量%以上の場合には、感光体を長期にわたり使用した場合に残留電位が高くなる傾向がある。
電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、スプレー塗布法、ロールコータ塗布法、グラビアコータ塗布法等が挙げられる。また、電荷輸送層6の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましい。
本実施形態においては、電荷輸送層6のダイナミック硬度のバラツキVCを上記所定の範囲内にするために、絶縁性無機粒子の表面処理剤である有機化合物、上記塗布液の分散処理回数、上記フッ素化グラフトポリマーの添加量などを制御因子とすることが好ましい。
感光層3には、画像形成装置100中で発生するオゾンやNOX、又は光や熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を含有させてもよい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等が挙げられる。
光安定剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体が挙げられる。
また、電子写真感光体の表面の平滑性を向上させる目的で、電子写真感光体における最表面層にシリコーンオイル等のレベリング剤を含有させてもよい。
また、上述したように、感光層3は電荷輸送材料及び電荷発生材料を同一の層に含有する単層構造を有するものであってもよい。この場合、電荷輸送材料としては、機能分離型感光層における電荷輸送層に使用されるものと同様のものを、電荷発生材料としては、機能分離型感光層における電荷発生層に使用されるものと同様のものを用いることができる。また、その他の成分についても機能分離型感光層における電荷発生層及び電荷輸送層に用いられる成分と同様のものを用いることができる。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記各層と同様のものを用いることができる。また、有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子及びフッ素含有有機系粒子の含有量及び分散方法については、上述した電荷輸送層6と同様の条件とすることが好ましい。なお、単層型感光層の膜厚は、5μm以上50μm以下程度が好ましく、10μm以上40μm以下がより好ましい。
さらに、上述したように、電子写真感光体は保護層を備えるものであってもよい。この場合、保護層が、上述した有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子及びフッ素含有有機系粒子を含む。なお、保護層は、硬化性樹脂及び電荷輸送材料を含む公知の樹脂硬化膜、又は導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成された公知の膜などから構成することができる。
以上、本発明の構成を備える画像形成装置100について説明したが、このような画像形成装置100は、本発明の構成を備えない画像形成装置と比較して、画質及び長期維持性に優れる。なお、画像形成装置100によれば、従来のような光拡散層を設けることなく画質を改善することができ、さらに、長期にわたる使用、特に高温高湿の環境の使用における、画質濃度の低下及び感光体キズによる画質ムラ等の発生を抑制することが可能である。また、画像形成装置100によれば、光量や画像濃度を実際に測定し、得られた値から露光方法を補正する煩雑な方法によらずとも濃度ムラを十分低減することができる。
なお、画像形成装置100が、良好な画像を長期に亘って形成できる理由を発明者らは以下のように推測している。有機化合物で表面処理された絶縁性無機粒子及びフッ素含有有機系粒子を含む電荷輸送層6が設けられていることにより、光拡散層としての機能と耐高温高湿性とが得られ、さらにはダイナミック硬度のバラツキが所定の範囲に設定されていることにより、最表面層の磨耗は十分抑制されながらも、クリーニングブレードの欠け及びフィルミングの発生を十分に防止できる効果が得られ、最表面層の磨耗による電気特性の低下、フィルミングに起因する画質劣化、及び、クリーニングブレードの欠けに起因する感光体キズやトナーのすり抜けを十分抑制できたためと考えられる。
また、本発明の画像形成装置は、上述の形態に限定されるものではない。本発明の画像形成装置は、例えば、図1に示したものの他、白黒画像用の画像形成装置やタンデム式のカラー画像形成装置としてもよい。次に、タンデム式のカラー画像形成装置について説明する。なお、「タンデム式画像形成装置」とは、以下の画像形成ユニットを2以上有する画像形成装置をという。
図12は、本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態を示す概略構成図である。図12に示す画像形成装置200は、帯電装置402a〜402d、露光装置403、及び現像装置404a〜404dを少なくとも備える画像形成ユニットを2以上有するタンデム式画像形成装置である。なお、帯電装置402a〜402dは、接触帯電方式の帯電装置であり、転写装置は中間転写方式を採用する構成を有している。
より具体的には、このタンデム式画像形成装置200は、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。また、この画像形成装置200には、さらに、クリーニング手段415a〜415dが備わっている。
ここで、画像形成装置200に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、先に述べた電子写真感光体106と同様の構成を有する。
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d(電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置)、現像装置404a〜404d(露光装置により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置)、1次転写ロール410a〜410d{現像装置により形成されたトナー像を後述の中間転写ベルト409(中間転写体)に1次転写するための転写装置}、クリーニングブレード415a〜415d(クリーニング手段)が配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409(1次転写像を被転写媒体500に転写する中間転写体)を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
さらに、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源となる露光装置403(帯電装置により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光装置)が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。なお、この露光装置403は、露光光源として上述したSLEDを備える。
これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
上記帯電装置(帯電用部材)402a〜402dは、ローラ状の接触帯電部材を備えるもので、感光体401a〜401dの表面に接触するように配置され、感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。帯電装置にはアルミニウム、鉄、銅等の金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化ケイ素、金属酸化物等の金属酸化物粒子を分散したもの等を用いることができる。
この金属酸化物としては、例えば、ZnO、SnO2、TiO2、In2O3、MoO3等、又はこれらの複合酸化物が挙げられる。また、帯電装置402a〜402dにはエラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて導電性を付与したものを使用してもよい。
さらに、帯電装置402a〜402dにはその表面に被覆層を設けてもよい。被覆層を形成する材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等が単独、又は併用して用いられる。また、エマルジョン樹脂系材料、たとえば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いることもできる。
これらの樹脂にはさらに抵抗率を調整するために、導電剤粒子を分散してもよいし、劣化を防止するために酸化防止剤を含有させることもできる。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂にレベリング剤又は界面活性剤を含有させることもできる。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラ状、ブレード状、ベルト状、ブラシ状等が挙げられる。
さらに、帯電装置402a〜402dの電気抵抗値は、102Ωcm以上1014Ωcm以下の範囲であることが好ましく、102Ωcm以上1012Ωcm以下の範囲であることがより好ましい。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。又、直流+交流の形(直流電圧と交流電圧とを重畳したもの)で印加することもできる。
また、転写装置410a〜410dとしては、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
また、上記現像装置404a〜404dとしては、一成分系、二成分系等の正規又は反転現像剤を用いた従来公知の現像装置等を用いることができる。このような現像剤のうち画質の向上という理由から、二成分現像剤を用いる二成分現像方式を用いて行うことが好ましい。この場合、静電潜像の可視化のために用いる現像剤は、トナーとキャリアとで構成される。また、使用されるトナーの形状は特に制限されず、例えば粉砕法による不定形トナーや重合法による球形トナーが好適に使用される。
また、上記クリーニング手段415a〜415dは、転写工程後の電子写真感光体401a〜401dの表面に付着する残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体401a〜401dは上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニング手段415a〜415dとしては、クリーニングブレード、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができるが、これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
また、上記中間転写ベルト409は以下の手順で製造することができる。すなわち、略等モルのテトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体とジアミンとを所定の溶媒中で重合反応させてポリアミド酸溶液を得る。このポリアミド酸溶液を円筒状金型に供給・展開して膜(層)形成を行った後、さらにイミド転化を行うことによって、ポリイミド樹脂からなる中間転写ベルト409を得ることができる。
かかるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が例示される。
また、ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ピペラジン、H2N(CH2)3O(CH2)2O(CH2)NH2、H2N(CH2)3S(CH2)3NH2、H2N(CH2)3N(CH3)2(CH2)3NH2等が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点から極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等の低分子量のものがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、中間転写ベルト409の膜抵抗を調整するために、ポリイミド樹脂中にカーボンを分散してもよい。カーボンの種類は特に限定されないが、カーボンブラックの酸化処理によりその表面に酸素含有官能基(カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)が形成された酸化処理カーボンブラックを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂中に酸化処理カーボンブラックを分散すると、電圧を印可したときに酸化処理カーボンブラックに過剰な電流が流れるため、ポリイミド樹脂が繰返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくくなる。また、酸化処理カーボンブラックはその表面に形成された酸素含有官能基によりポリイミド樹脂中への分散性が高いので、抵抗バラツキを小さくすることができると共に電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起こりにくくなる。従って、転写電圧による抵抗低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、さらに環境による抵抗の変化の少ない、用紙走行部が白く抜けること等の画質欠陥の発生が抑制された高画質を得ることができる中間転写ベルトを得ることができる。
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを高温雰囲気下で空気と接触、反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、高温下での空気酸化後、低温下でオゾン酸化する方法等により得ることができる。
また、酸化処理カーボンとしては、三菱化学製のMA100(pH3.5、揮発分1.5%)、同,MA100R(pH3.5、揮発分1.5%)、同MA100S(pH3.5、揮発分1.5%)、同#970(pH3.5、揮発分3.0%)、同MA11(pH3.5、揮発分2.0%)、同#1000(pH3.5、揮発分3.0%)、同#2200(pH3.5,揮発分3.5%)、同MA230(pH3.0、揮発分1.5%)、同MA220(pH3.0、揮発分1.0%)、同#2650(pH3.0、揮発分8.0%)、同MA7(pH3.0、揮発分3.0%)、同MA8(pH3.0、揮発分3.0%)、同OIL7B(pH3.0、揮発分6.0%)、同MA77(pH2.5、揮発分3.0%)、同#2350(pH2.5、揮発分7.5%)、同#2700(pH2.5、揮発分10.0%)、同#2400(pH2.5、揮発分9.0%);デグサ社製のプリンテックス150T(pH4.5、揮発分10.0%)、同スペシャルブラック350(pH3.5、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック100(pH3.3、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック250(pH3.1、揮発分2.0%)、同スペシャルブラック5(pH3.0、揮発分15.0%)、同スペシャルブラック4(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック4A(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック550(pH2.8、揮発分2.5%)、同スペシャルブラック6(pH2.5、揮発分18.0%)、同カラーブラックFW200(pH2.5、揮発分20.0%)、同カラーブラックFW2(pH2.5、揮発分16.5%)、同カラーブラックFW2V(pH2.5、揮発分16.5%);キャボット社製MONARCH1000(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1300(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1400(pH2.5、揮発分9.0%)、同MOGUL−L(pH2.5、揮発分5.0%)、同REGAL400R(pH4.0、揮発分3.5%)、等の市販品を用いてもよい。また、このような酸化処理カーボンとしては、pH4.5以下であり、揮発分1.0%以上であるものが好ましい。
上記の酸化処理カーボンは、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性の相違により導電性が異なるがこれらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、実質的に導電性の異なるものを2種以上組み合わせて用いることが好ましい。このように物性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを優先的に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して表面抵抗率を調整すること等が可能である。
これら酸化処理カーボンブラックの含有量は、ポリイミド樹脂に対して10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、12質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。当該含有量が10質量%未満であると、電気抵抗の均一性が低下し、耐久使用時の表面抵抗率の低下が大きくなる場合があり、一方、50質量%を超えると、所望の抵抗値が得られにくく、また、成型物として脆くなるため好ましくない。
2種類以上の酸化処理カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液の製造方法としては、溶媒中に2種類以上の酸化処理カーボンブラックを予め分散した分散液中に上記酸二無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合する方法、2種類以上の酸化処理カーボンブラックを各々溶媒中に分散させ2種類以上のカーボンブラック分散液を作製し、この分散液に酸無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合させた後、各々のポリアミド酸溶液を混合する方法等が挙げられる。
中間転写ベルト409は、このようにして得られたポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給・展開して被膜とし、加熱によりポリアミド酸をイミド転化させることにより得られる。かかるイミド転化の際には、所定の温度で0.5時間以上保持することによって、良好な平面度を有する中間転写ベルトを得ることができる。
ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給する際の供給方法としては、ディスペンサーによる方法、ダイスによる方法等が挙げられる。ここで、円筒上金型としては、その内周面が鏡面仕上げされたものを用いることが好ましい。
また、金型に供給されたポリアミド酸溶液から被膜を形成する方法としては、加熱しながら遠心成形する方法、弾丸状走行体を用いて成形する方法、回転成形する方法等が挙げられ、これらの方法により均一な膜厚の被膜が形成される。
このようにして形成された被膜をイミド転化させて中間転写ベルトを成形する方法としては、(i)金型ごと乾燥機中に入れ、イミド転化の反応温度まで昇温する方法、(ii)ベルトとして形状を保持できるまで溶媒の除去を行った後、金型内面から被膜を剥離して金属製シリンダ外面に差し替えた後、このシリンダごと加熱してイミド転化を行う方法等が挙げられる。本発明においては、得られる中間転写ベルトの表面のダイナミック硬度が上記の条件を満たせば上記(i)、(ii)のいずれの方法でイミド転化を行ってもよいが、方法(ii)によりイミド転化を行うと、平面度及び外表面精度が良好な中間転写体を効率よく且つ確実に得ることができるので好ましい。以下、方法(ii)について詳述する。
方法(ii)において、溶媒を除去する際の加熱条件は、溶媒を除去できれば特に制限されないが、加熱温度は80℃以上200℃以下であることが好ましく、加熱時間は0.5時間以上5時間以下であることが好ましい。このようにしてベルトとしてそれ自身形状を保持することができるようになった成形物は金型内周面から剥離されるが、かかる剥離の際に金型内周面に離型処理を施してもよい。
次いで、ベルト形状として保持できるまで加熱・硬化させた成形物を、金属製シリンダ外面に差し替え、差し替えたシリンダごと加熱することにより、ポリアミド酸のイミド転化反応を進行させる。かかる金属製シリンダとしては、線膨張係数がポリイミド樹脂よりも大きいものが好ましく、また、シリンダの外径をポリイミド成形物の内径より所定量小さくすることで、ヒートセットを行うことができ均一な膜厚でムラのない無端ベルトを得ることができる。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)は、1.2μm以上2.0μm以下であることが好ましい。金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が1.2μm未満であると、金属製シリンダ自身が平滑過ぎるため、得られる中間転写ベルトにおいてベルトの軸方向に対する収縮による滑りが発生しないため、延伸がこの工程で行われ、膜厚のバラツキや平面度の精度の低下が発生する傾向にある。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が2.0μmを超えると、金属製シリンダ外面がベルト状中間転写体の内面に転写し、さらには外面に凹凸を発生させ、これにより画像不良が発生しやすくなる傾向にある。なお、本実施形態でいう表面粗度とはJIS B601に準じて測定されるRaをいう。
また、イミド転化の際の加熱条件としては、ポリイミド樹脂の組成にもよるが、加熱温度が220℃以上280℃以下、加熱時間が0.5時間以上2時間以下であることが好ましい。このような加熱条件でイミド転化を行うと、ポリイミド樹脂の収縮量がより大きくなるため、ベルトの軸方向についての収縮を緩やかに行うことにより、膜厚バラツキや平面度の精度の低下を防ぐことができる。
このようにして得られたポリイミド樹脂からなる中間転写ベルトの外面の表面粗度(Ra)は、1.5μm以下であることが好ましい。中間転写体の表面粗度(Ra)が1.5μmを超えるとがさつき等の画像欠陥が発生しやすくなる傾向にある。なお、がさつきの発生は、転写の際に印加される電圧や剥離放電による電界がベルト表面の凸部に局所的に集中して凸部表面が変質することによって、新たな導電経路の発現により抵抗が低下し、その結果得られる画像の濃度低下が起こることに起因すると本発明者らは推察する。
このようにして得られる中間転写ベルト409はシームレスベルトであることが好ましい。このシームレスベルトの場合、中間転写ベルト409の膜厚はその使用目的に応じて適宜決定しうるが、強度や柔軟性等の機械的特性の点から、20μm以上500μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であることがより好ましい。また、中間転写ベルト409の表面抵抗は、その表面抵抗率(Ω/□)の常用対数値(logΩ/□)が8以上15以下であることが好ましく、11以上13以下であることがより好ましい。なお、ここでいう表面抵抗率とは、22℃、55%RH環境下で100Vの電圧を印加し、電圧印可開始時から10秒後に測定される電流値に基づいて得られる値をいう。ここで、「表面抵抗[Ω/□]」とは、「薄膜ハンドブック(オーム社刊)」p.896に記載の「表面抵抗」と同義であり、面状の抵抗体を正方形に切り出して対向する2辺間の抵抗で表わしたものを示す。この表面抵抗は、抵抗分布が一様ならば正方形の寸法に無関係である。
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409はクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙等の被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
このように電子写真感光体401a〜401dの回転工程において、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を順次行うことによって画像形成が繰り返し行われる。ここで、電子写真感光体401a〜401dは、上述した電子写真感光体106であり、リーク防止性と電気特性との双方が充分に高水準で達成されたものであるため、接触帯電装置402a〜402dと共に用いた場合であってもかぶり等の画質欠陥を生じることなく良好な画質を得ることが可能となる。従って、本実施形態により、長期にわたり繰り返し使用される場合であっても、感光体におけるピンホールリークの発生が充分に防止され、画質の優れたカラー画像を高速で形成できる画像形成装置200が実現される。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図12に示した装置は、電子写真感光体401a〜401dと接触帯電装置402a〜402dとを含んで構成されるプロセスカートリッジを備えるものであってもよい。かかるプロセスカートリッジを用いることによって、メンテナンスをより簡便に行うことができる。
また、本発明の画像形成装置は除電光照射装置等の除電装置をさらに備えていてもよい。これにより、電子写真感光体が繰り返し使用される場合に、電子写真感光体の残留電位が次のサイクルに持ち込まれる現象が防止されるので、画質をより高めることができる。
次に、本実施形態のプロセスカートリッジについて説明する。プロセスカートリッジは、電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電した電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置、並びに電子写真感光体をクリーニングするクリーニング装置から選ばれる少なくとも1種と、を備えるものである。
図13は、プロセスカートリッジの好適な一実施形態を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体307とともに、帯電装置308、現像装置311、中間転写体320(中間転写装置)、クリーニング装置313、露光のための開口部318、及び、除電露光のための開口部317を取り付けレール316を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。また、プロセスカートリッジ300は、転写装置312の転写方式が、トナー像を中間転写体320を介して被転写媒体500に転写する中間転写方式を採用する構成を有している。なお、電子写真感光体307は先に述べた電子写真感光体106と同様の構成を有する。
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写装置312と、定着装置315と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
なお、本実施形態のプロセスカートリッジにおいて、帯電装置308(帯電用部材)は、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電チューブ等による接触帯電方式を採用することができる。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、或いはローラ状等何れでもよいが、特にローラ状部材が好ましい。通常、ローラ状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
上述した本実施形態のプロセスカートリッジに使用される現像装置311について具体的に説明すると、現像装置311としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器等が挙げられる。また、トナーとしては、機械的な粉砕法や化学重合で作られる。トナーの形状としては不定形なものから球形のものが挙げられる。
上述した本実施形態のプロセスカートリッジに使用される中間転写装置320について具体的に説明すると、中間転写装置320としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明においては、上記転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。
上述した本実施形態のプロセスカートリッジに使用されるクリーニング装置313について具体的に説明すると、クリーニング装置313としては、特に制限はなく、それ自体公知のクリーニング装置等を用いればよい。例えば、ウレタン製のブレードやクリーニングブラシ等が挙げられる。
上述した本実施形態のプロセスカートリッジに使用される除電装置(光除電装置)について具体的に説明すると、光除電装置としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。本実施形態においては、開口部317からこのような光除電装置からの光を取り込み、感光体を除電する。
このような本実施形態のプロセスカートリッジは、先に述べた自己走査型LEDを有する露光装置が搭載された画像形成装置に装着されるものであり、上記電子写真感光体を搭載していることにより、画像の高画質化、画像形成速度の高速化、並びに、感光体の長寿命化を達成することができる。なお、プロセスカートリッジ300は、開口部318の代わりに露光装置を備えていてもよく、その場合は露光光源として上述したSLEDを備えることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔感光体1〜15の作製〕
[感光体1]
感光体1は、導電性支持体としてのアルミニウム基材上に、下引層、電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に形成して作製した。以下、詳細に説明する。
(下引層の形成)
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100質量部をテトラヒドロ500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理された酸化亜鉛顔料を得た。
上記で得られた表面処理酸化亜鉛顔料100質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合した後、アリザリン1質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥して、アリザリン付与酸化亜鉛顔料を得た。
そして、アリザリン付与酸化亜鉛顔料60質量部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175:住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部とブチラール樹脂(BM−1:積水化学社製)15質量部とをメチルエチルケトン85質量部に溶解した。こうして得られた溶液38質量部とメチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて1.5時間分散させて、分散液を得た。
得られた分散液に、触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、シリコーン樹脂粒子トスパール145(GE東芝シリコーン社製)40質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃で40分乾燥硬化させ、厚さ15.5μmの下引層を形成した。
(電荷発生層の形成)
電荷発生材料として、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液に、n−酢酸ブチル175質量部及びメチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。この電荷発生層形成用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温で乾燥して、厚みが0.17μmの電荷発生層を形成した。
(電荷輸送層の形成)
4フッ化エチレン樹脂粒子(ルブロンL2、ダイキン工業社製)1質量部及びフッ素系グラフトポリマー(GF300、東亜合成社製)0.02質量部を、テトラヒドロフラン5質量部、トルエン2質量部とともに十分攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を得た。次に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部、及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40000)6質量部を、テトラヒドロフラン23質量部及びトルエン10質量部に混合溶解した後、上記4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を加えて、更に攪拌混合した。
上記の混合液に、トリメチルシランで表面処理された二酸化ケイ素粒子(比表面積50m2/g)を1質量部添加し、攪拌混合した後、微細な流露を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(ナノマイザー株式会社製、商品名LA−33S)を用いて、400kgf/cm2まで昇圧しての分散処理を5回繰り返し、表面処理二酸化ケイ素粒子と4フッ化エチレン樹脂粒子とを含む分散液を得た。なお、表面処理された二酸化ケイ素粒子は、二酸化ケイ素粒子(比表面積50m2/g)100質量部に、トリメチルシランを1.25質量部吹き付け、120℃で3.5時間焼き付ける乾式法によって用意した。
上記の分散液に、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合して、電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布して115℃で40分間乾燥し、膜厚35μmの電荷輸送層を形成し、感光体1を得た。
[感光体2]
電荷輸送層形成用塗布液の調製において、比表面積が90m2/gの二酸化ケイ素粒子を用いたこと以外は、感光体1と同様にして感光体2を作製した。
[感光体3]
電荷輸送層形成用塗布液の調製において、比表面積が200m2/gの二酸化ケイ素粒子を用いたこと以外は、感光体1と同様にして感光体3を作製した。
[感光体4]
電荷輸送層形成用塗布液の調製における二酸化ケイ素粒子の表面処理剤として、トリメチルシランに代えてジメチルシロキサン(D4:環状体)を1.2質量部用いたこと以外は、感光体1と同様にして感光体4を作製した。
[感光体5]
表面処理二酸化ケイ素粒子と4フッ化エチレン樹脂粒子とを含む分散液を調製する際の分散処理を10回としたこと以外は、感光体1と同様にして感光体5を作製した。
[感光体6]
電荷輸送層形成用塗布液の調製において、フッ素系グラフトポリマーの配合量を、4フッ化エチレン樹脂粒子1質量部に対して0.03質量部としたこと以外は、感光体1と同様にして感光体6を作製した。
[感光体7]
絶縁性無機粒子として二酸化ケイ素粒子に代えて比表面積が50m2/gのアルミナ粒子を100質量部用いたこと以外は、感光体1と同様にして感光体7を作製した。
[感光体8]
電荷輸送層形成用塗布液の調製において、二酸化ケイ素粒子に対して表面処理を施さなかったこと以外は、感光体1と同様にして感光体8を作製した。
[感光体9]
表面処理二酸化ケイ素粒子と4フッ化エチレン樹脂粒子とを含む分散液を調製する際の分散処理を2回としたこと以外は、感光体1と同様にして感光体9を作製した。
[感光体10]
表面処理二酸化ケイ素粒子と4フッ化エチレン樹脂粒子とを含む分散液を調製する際の分散処理を20回としたこと以外は、感光体1と同様にして感光体10を作製した。
[感光体11]
電荷輸送層形成用塗布液の調製において、フッ素系グラフトポリマーを配合しなかったこと以外は、感光体1と同様にして感光体11を作製した。
[感光体12]
電荷輸送層形成用塗布液の調製において、フッ素系グラフトポリマーの配合量を、4フッ化エチレン樹脂粒子1質量部に対して0.07質量部としたこと以外は、感光体1と同様にして感光体11を作製した。
[感光体13]
まず、下引層及び電荷発生層を感光体1と同様にして形成した後、以下のように電荷輸送層を形成して感光体13を作製した。
(電荷輸送層の形成)
4フッ化エチレン樹脂粒子1質量部及びフッ素系グラフトポリマー0.02質量部を、テトラヒドロフラン5質量部及びトルエン2質量部とともに十分攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を得た。次に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部、及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40000)6質量部を、テトラヒドロフラン23質量部及びトルエン10質量部に混合溶解した後、上記4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を加えて攪拌混合した。これを、微細な流路を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(ナノマイザー株式会社製、商品名LA−33S)を用いて、400kgf/cm2まで昇圧しての分散処理を5回繰り返し、4フッ化エチレン樹脂粒子分散液を得た。さらに、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合して電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布して115℃で40分間乾燥し、膜厚35μmの電荷輸送層を形成し、感光体13を得た。
[感光体14]
まず、下引層及び電荷発生層を感光体1と同様にして形成した後、以下のように電荷輸送層を形成して感光体14を作製した。
[感光体15]
電荷輸送層形成用塗布液の調製における二酸化ケイ素粒子の表面処理剤として、トリメチルシランに代えてフェニルトリメトキシシランを1.5質量部用いたこと以外は、感光体1と同様にして感光体15を作製した。
(電荷輸送層の形成)
電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部、及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40000)6質量部を、テトラヒドロフラン23質量部及びトルエン10質量部に混合溶解した。
上記の混合液に、トリメチルシランで表面処理された二酸化ケイ素粒子(比表面積50m2/g)1質量部を添加し、攪拌混合した後、微細な流露を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(ナノマイザー株式会社製、商品名LA−33S)を用いて、400kgf/cm2まで昇圧しての分散処理を5回繰り返し、分散液を得た。なお、表面処理された二酸化ケイ素粒子は、二酸化ケイ素粒子(比表面積50m2/g)100質量部に、トリメチルシランを1.25質量部吹き付け、120℃で3.5時間焼き付ける乾式法によって用意した。
上記分散液に、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合して電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布して115℃で40分間乾燥し、膜厚35μmの電荷輸送層を形成し、感光体14を得た。
感光体1〜15の作製条件のうち主なものを表1に示す。
〔実施例1〜8、比較例1〜7〕
[実施例1]
(感光体1の最表面層のダイナミック硬度バラツキCV)
以下の手順により、感光体1のダイナミック硬度を、0.25mm間隔で30箇所測定した。
ベルコビッチ型圧子(稜間角115°、先端曲率半径0.07μmのダイアモンド三角錐圧子)を装着した超微小硬度計(島津製作所社製、「DUH−201」)に上記の感光体を10mm角に切断後セットし、圧子押込み測定モード(押し込み速さは、0.45mN/sec)にて、最表面層(本実施例では電荷輸送層)のダイナミック硬度を測定した。測定は、感光層の最表面層側から上記圧子を押込み荷重3mNで押し込み、3mNの圧力を1秒間保持し、その後、圧子にかかる圧力を0mNに戻す(圧力の開放速度は0.45mN/sec)ことにより行った。
そして、圧子を押し込み荷重3mNで押込んだときの押込み深さから下記式(2)を用いて硬度を計算し、この計算値を最表面層のダイナミック硬度とした。なお、押込み深さは圧子の変位から、押込み荷重は圧子に接続したロードセルから読み取った。
DH=3.8584×(P/D2)…(2)
式(2)中、DHは最表面層のダイナミック硬度[N/m2]、Pは押込み荷重[N]、Dは押込み深さ[m]を表す。
そして、最表面層のダイナミック硬度の測定値(0.25mm間隔、30箇所)を用い、下記式(1)で定義されるダイナミック硬度のバラツキCVを計算した。
CV=[A]/[B]×100 …(1)
[式(1)中、A及びBは、ベルコビッチ型圧子で最表面層のダイナミック硬度[N/m2]を0.25mm間隔で30箇所測定したときの、標準偏差(σ)及び平均値をそれぞれ示す。]
その結果、感光体1の最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVは4.7%であった。なお、当該ダイナミック硬度の平均値及びバラツキCV値を表2に示す。
(画像形成装置の作製及び評価)
LEDを光源とするDocuCentre−III/C3300に感光体1を装着し、この画像形成装置を用いて画像形成試験を行い、濃度ムラ、フィルミング、感光体キズ、及び膜磨耗量について実機評価した。画像形成試験は、30℃85%程度の環境で、富士ゼロックス製PPC用紙(L)を用いて実施した。
濃度ムラは、約400000サイクルの印字テスト後の画質(20%ハーフトーン再現性)を、以下の評価基準に基づいて評価した。
「○」:問題なし。
「△」:僅かにハーフトーンの濃度異常が見られる(スペックの厳しいカラー機などでは実使用上も問題あり)。
「×」:ハーフトーンの濃度異常が見られる(実使用上問題あり)。
フィルミングは、約400000サイクルの印字テスト後にレーザー顕微鏡(OLYMPUS製 OLS1100)で形態観察(50倍)を行い、感光体上に残ったトナー量で評価した。まず、感光体全域を大まかに観察し、最も残留トナーが多い位置(縦200μm×横250μm)で、画像エリア中の残留トナーのエリアカバレッジが1%以下の場合には「○」、1%以上3%以下の場合には「△」、3%以上の場合には「×」と判断した。
感光体キズは、フィルミングと同様に、約400000サイクルの印字テスト後にレーザー顕微鏡(OLYMPUS製 OLS1100)で形態観察(50倍)を行い、10点平均粗さRzで評価を行った。Rzが2.5μm以下の場合には「○」、2.5μm以上3μm以下の場合は「△」、3μm以上の場合には「×」と判断した。
実施例1においては、残留トナーがほとんど見られず、また、Rzは、2.2μmとなった。
膜磨耗量は、400000サイクル後の電子写真感光体の磨耗量を評価指標とした。具体的には、電子写真プロセスを400000サイクル繰り返したときの、電子写真感光体の1000サイクル当たりの平均摩耗量を求め、これを膜磨耗量とした。なお、実施例1における感光体1の磨耗量は12nmで良好であった。
(電気特性評価)
上述の評価に加え、400000サイクル後の表面電位VLの変化量より電気特性を評価した。具体的には、DocuCentre−III/C3300の現像位置に電位測定プローブを取り付ける改造を行い、感光体の帯電電位を700V、SELDによって2.8mJ/m2の光で露光した後の感光体電位(表面電位)をサイクルテストの前後で測定し、差分(ΔVL)を評価した。結果を表2に示す。なお、感光体1のΔVLは−5.3Vであった。
[実施例2〜8]
それぞれ感光体2〜7及び15を用いて、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表2に示す。最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVはすべて1.5%以上7.0%以下であり、濃度ムラ、フィルミング、感光体キズ、膜磨耗量、及び電気特性評価の結果はすべて良好であった。
[比較例1]
感光体8を用い、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表2に示す。最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVは12.7%であった。また、形態観察からフィルミングの発生および感光体キズが確認された。また、電気特性は大きくサイクルダウンした。
[比較例2]
感光体9を用い、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表2に示す。最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVは7.6%であった。
[比較例3]
感光体10を用い、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表2に示す。感光体10は、磨耗量が28nmと非常に大きく、長期維持性に劣る(感光体の交換頻度が高くなる)ものであった。
[比較例4]
感光体11を用い、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表2に示す。形態観察からフィルミングの発生およびキズが確認された。
[比較例5]
感光体12を用い、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表2に示す。最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVは1.0%であった。磨耗量は17mと大きくなり、また、ΔVL=27.4Vと大きくサイクルアップし長期維持性に問題が発生した。
[比較例6]
感光体13を用い、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表2に示す。最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVは1.4%であった。感光体13は、磨耗量が32nmと非常に大きく、長期維持性に劣る(感光体の交換頻度が高くなる)ものであった。
[比較例7]
感光体14を用い、実施例1と同様にして評価を実施した。結果を表2に示す。最表面層のダイナミック硬度のバラツキCVは11.8%であった。形態観察からフィルミングの発生が観察された。