JP2004348092A - 電子写真感光体及びこれを用いたカラー画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】カラー画像を繰り返し形成する場合であっても色ムラの発生を十分に防止することが可能な電子写真感光体及びカラー画像形成装置が提供すること。
【解決手段】本発明の電子写真感光体1は、導電性基体2上に単層型の感光層3が形成された電子写真感光体であって、感光層3がガリウムフタロシアニンを含有することを特徴とする。この場合、感光層3においてガリウムフタロシアニンの正孔輸送性が高いことにより光感度が高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。また、感光層3が単層構造であることにより、光励起により正孔が発生しその正孔が表面に向けて移動しても、同極性の移動電荷との反発が十分に防止され、感光体における解像度を十分に高くすることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の電子写真感光体1は、導電性基体2上に単層型の感光層3が形成された電子写真感光体であって、感光層3がガリウムフタロシアニンを含有することを特徴とする。この場合、感光層3においてガリウムフタロシアニンの正孔輸送性が高いことにより光感度が高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。また、感光層3が単層構造であることにより、光励起により正孔が発生しその正孔が表面に向けて移動しても、同極性の移動電荷との反発が十分に防止され、感光体における解像度を十分に高くすることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及びこれを用いたカラー画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体を用いたカラー画像形成技術は、近年における高感度でかつ耐久性の高い電子写真感光体の実用化により、印刷業界等の高画質の画像形成技術が要求される市場においても広く利用されるようになっている。このような画像形成技術を適用したカラー画像形成装置の一例として、下記特許文献1に記載のものが知られている。同文献には、電子写真感光体を複数有するいわゆるタンデム型カラー画像形成装置が開示され、この電子写真感光体においては、アルミニウム等の導電性基体の外周面上にチタニルフタロシアニン等の電荷発生物質を含有する単層型感光層が形成されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−330975号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の画像形成装置においては、以下のような問題が生じていた。すなわち、上述したチタニルフタロシアニンが用いられた電子写真感光体の特性は使用環境により大きく変化するため、湿度や気温が変化した場合に電子写真感光体上に形成されたトナー像に濃度ムラが発生しやすいという問題があった。その結果、この電子写真感光体を複数用いたカラー画像形成装置によりカラー画像を繰り返し形成した場合に、カラー画像に色ムラが生じるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、カラー画像を繰り返し形成する場合であっても色ムラの発生を十分に防止することが可能な電子写真感光体及びカラー画像形成装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に単層型の感光層が形成された電子写真感光体であって、感光層がガリウムフタロシアニンを含有することを特徴とする。
【0007】
本発明の電子写真感光体によれば、感光層においてガリウムフタロシアニンの正孔輸送性が高いことにより光感度が高くなるとともに、ガリウムフタロシアニンの環境特性が極めて安定であることにより、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。また、感光層が単層構造であることにより、光励起により正孔が発生しその正孔が表面に向けて移動しても、同極性の移動電荷との反発が十分に防止され、感光体における解像度を十分に高くすることができる。
【0008】
上記ガリウムフタロシアニンは、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°、10.0°、25.2°、28.0°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、又はブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.3°、16.5°、25.4°、28.1°に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニンであることが好ましい。この場合、温度や湿度等が変化する環境においても、感光体の光感度の変化がより十分に防止されるため、この感光体をカラー画像形成装置の感光体として使用し、現像するときに感光体表面にトナー像を形成しても、濃度ムラの発生をより十分に防止することができる。
【0009】
上記感光層上には、表面保護層がさらに形成されていることが好ましい。この場合、感光層を表面保護層で保護することにより電子写真感光体表面の耐摩耗性を向上させたり、感光体の帯電時における感光層の化学変化を防止することができる。
【0010】
ここで、表面保護層は電荷輸送材料を含有することが好ましい。この場合、感光層上に表面保護層が形成された場合であっても表面保護層における電荷の蓄積が防止され、電子写真感光体の感度を維持することができる。
【0011】
上記表面保護層は抵抗制御用微粒子を含有することが好ましい。この場合、感光層上に表面保護層が形成された場合であっても表面保護層における電荷の蓄積を防止され、電子写真感光体の感度を維持することができる。
【0012】
また、本発明のカラー画像形成装置は、上述した電子写真感光体を複数有し、電子写真感光体に形成される像を画像出力媒体に転写してカラー画像を形成することを特徴とする。本発明のカラー画像形成装置によれば、本発明の電子写真感光体において温度変化や湿度変化による光感度の変化が十分に防止されるため、温度や湿度等が変化する環境においてカラー画像を繰り返し形成しても、色ムラの発生を十分に防止することができる。また、本発明の電子写真感光体において解像度を十分に高くすることができるため、極めて画質の高いカラー画像を形成することができる。また、本発明の電子写真感光体を複数有するカラー画像形成装置によってカラー画像を繰り返し形成しても、1つの電子写真感光体を有するカラー画像形成装置と比較して暗減衰による色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0013】
上記カラー画像形成装置の解像度は、1200dpi以上であってもよい。温度や湿度等が変化する環境下で、1200dpi以上の解像度を有するカラー画像形成装置によりカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、本発明のカラー画像形成装置は、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0014】
上記カラー画像形成装置の解像度は、2000dpi以上であってもよい。温度や湿度等が変化する環境下で、2000dpi以上の解像度を有するカラー画像形成装置によりカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、本発明のカラー画像形成装置は、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0015】
上記カラー画像形成装置は、電子写真感光体から転写されるトナー像を画像出力媒体に転写する中間転写体を更に有することが好ましい。この場合、装置内の部品配置の自由度が大きくなるという利点を有する。
【0016】
上記中間転写体は、樹脂組成物で構成される表面層を有し、樹脂組成物がフッ素系樹脂材料を含むことが好ましい。上記フッ素系樹脂材料は、摩擦帯電列において極性がマイナス側にある。このため、中間転写体の表面層上のマイナス電荷をもったトナーをプラスに帯電させ、逆極性のトナー、即ちマイナス電荷をもったトナーを減少させることができる。従って、逆極性のトナーの転写時における飛散が十分に防止され、中間転写体から画像出力媒体に転写する時の転写効率の低下を十分に防止することができる。よって、高品質のカラー画像を安定して得ることができる。
【0017】
上記樹脂組成物中には、導電剤として、フッ素化カーボンが分散されていることが好ましい。フッ素化カーボンは、フッ素系樹脂材料との密着性に優れており、且つフッ素系樹脂中に均一に分散させることができる。このため、表面層を、抵抗バラツキの少ない、経時的安定性に優れたものとすることができる。
【0018】
本発明のカラー画像形成装置においては、上記電子写真感光体が、導電性基体と感光層との間に、金属酸化物微粒子を分散した硬化膜層からなる下引層を更に有することが好ましい。この場合、下引き層の抵抗値が適度に調整され、残留電荷の蓄積が防止される。また硬化膜中に金属酸化物微粒子を分散した塗膜を下引層にすることによって、上層の電荷発生層や電荷輸送層塗布形成時に下引層が溶解したり、分散物が溶剤により凝集を引き起こし塗膜の変形を生じることがなくなる。
【0019】
本発明のカラー画像形成装置においては、導電性基体が、導電性基材の表面を陽極酸化してなることが好ましい。この場合、導電性基体の表面層が、陽極酸化膜であり、この陽極酸化膜は、高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この導電性基体を用いた電子写真感光体をカラー画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止することができるとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象を防止することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
(電子写真感光体及びその製造方法)図1〜3はそれぞれ本発明の電子写真感光体の一実施形態を概略的に示す部分断面図であり、電子写真感光体1を基体2及び感光層3の積層方向に沿った平面で切断したものである。図1〜3に示した電子写真感光体1はいずれもいわゆる単層型感光体であり、各感光体には電荷発生機能と電荷輸送機能を併せ持つ感光層3が設けられている。
【0021】
より詳しくは、図1に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に感光層3が設けられており、図2に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に下引層4、感光層3がこの順で積層されて構成されており、図3に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に下引層4、感光層3、表面保護層5がこの順で積層されて構成されている。
【0022】
以下、電子写真感光体1の各構成要素について詳述する。
【0023】
導電性基体2としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、導電性基体2の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
【0024】
また、導電性基体2として金属製パイプ基体を用いる場合、当該パイプ基体の表面は素管のままのものであってもよいが、予め表面処理により基体表面を粗面化しておくことも可能である。かかる粗面化により、露光光源としてレーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に、感光体内部で発生し得る干渉光による木目状の濃度ムラを防止することができる。表面処理としては、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等が挙げられる。
【0025】
特に、感光層との密着性向上や成膜性向上の点で、以下のようにアルミニウム基体の表面に陽極酸化処理を施したものがよく用いられる。
【0026】
以下、陽極酸化処理が施された導電性基体2の製造方法について説明する。
【0027】
まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)で構成される導電基材を用意する。次にこの導電基材に対し陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10〜20%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm2、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
【0028】
このようにして成膜された基体の表面層である陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高く、表面が非常に不安定であるため、作製後の経時変化が存在し陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすくなっている。この物性値の変化を防止するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが行われる。封孔処理の方法には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。これらの方法のうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最もよく用いられる。
【0029】
このようにして封孔処理が行われた陽極酸化皮膜の表面には、封孔処理により付着した金属塩等が過剰に残留している。このような金属塩等が基体の陽極酸化皮膜上に過剰に残存すると、陽極酸化皮膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまう傾向にあるため、この基体を電子写真感光体に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生原因になる。
【0030】
そこで、封孔処理に引き続き、封孔処理により付着した金属塩等を除去するために陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。洗浄処理は純水により基体の洗浄を1回行うことでも構わないが、多段階の洗浄工程により基体の洗浄を行うのが好ましい。この際、最終の洗浄工程における洗浄液としては、可能な限りきれいな(脱イオンされた)ものが用いられる。また、多段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことがよりさらに好ましい。
【0031】
以上のようにして形成される基体上の陽極酸化皮膜の膜厚は、3〜15μm程度とする。多孔質陽極酸化皮膜の多孔質形状の極表面に沿ってバリア層といわれる層が存在する。バリア層の膜厚は本実施形態にかかる電子写真感光体1においては10〜1000Åとする。
【0032】
以上のようにして、陽極酸化処理された導電性基体2が得られる。
【0033】
このように得られた導電性基体2において、陽極酸化処理により基体の表面層として形成された陽極酸化皮膜は高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この導電性基体2を用いた電子写真感光体を画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止することができるとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象を防止することができる。また、陽極酸化皮膜に封孔処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の作成後における物性値の経時変化を防止することができる。また、封孔処理後に基体の洗浄を行うことにより、封孔処理により基体表面に付着した金属塩等を除去することができ、この導電性基体2を電子写真感光体に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生を十分に防止することができる。
【0034】
次に、下引層4について説明する。
【0035】
下引層4を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。 これらの中でも、ジルコニウムもしくはもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため好ましく使用される。また、有機金属化合物は単独・混合で、或いは上述の結着樹脂と混合して用いることが可能である。
【0036】
有機シリコン化合物(シリコン原子を含有する有機金属化合物)としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が好ましく使用される。
【0037】
有機ジルコニウム化合物(ジルコニウムを含有する有機金属化合物)としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0038】
有機チタン化合物(チタンを含有する有機金属化合物)としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0039】
有機アルミニウム化合物(アルミニウムを含有する有機金属化合物)としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0040】
また、下引層4を形成するための下引き層形成用塗布液に用いる溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することができる。
【0041】
下引層4の形成は、まず、下引層用塗布剤および溶剤を分散及び混合して調合された下引層形成用塗布液を用意し、導電性基体2に塗布することにより行う。下引層形成用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。下引層4を形成する場合には、膜厚は0.1〜3μmとなるように形成する。このような膜厚とすることにより、電気的な障壁を過剰に強くすることなく減感及び繰り返しによる電位の上昇を防止することができる。
【0042】
このようにして導電性基体2上に下引層4を形成することにより、上層塗布時の濡れ性の改善を図ることができるとともに、電気的なブロキング層としての機能を十分に果たすことができる。
上記により形成された下引層4の表面粗さは、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)倍(nは上層の屈折率)〜1倍程度の粗度を有するように調整することが好ましい。表面粗さの調整は、下引層形成用塗布液中に樹脂粒子を添加することにより行われる。これにより電子写真感光体1をカラー画像形成装置に用いた場合に、レーザ光源による干渉縞像を十分に防止することができる。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さの調整のために下引層を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることができる。なお、正帯電構成のカラー画像形成装置における電子写真感光体1では、レーザ入射光は極表面近傍で吸収され、さらに感光層3中で散乱されるため、表面粗さの調整を施さなくとも良い。
【0043】
また、下引層形成用塗布液に、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を加えることも好ましい。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0044】
ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
ジルコニウムキレート化合物の具体例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0046】
チタニウムキレート化合物の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0047】
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0048】
これらの添加物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0049】
また、上述した下引層形成用塗布液には、少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめることが好ましい。本発明の電子写真感光体1に使用可能な電子受容性物質の具体例としては、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が電子輸送性向上の点でより好ましく用いられる。これにより、感光層2における光感度の向上や残留電位の低減を図るとともに、繰り返し使用した場合の光感度の疲労を低減することができ、電子写真感光体1をカラー画像形成装置に用いて形成したトナー像の濃度ムラを十分に防止することができる。
【0050】
また、上述した下引層用塗布剤の代わりに下記のような分散型下引層用塗布剤を用いることも好ましい。これにより、適度に塗膜の抵抗値を調整することにより残留電荷の蓄積を防ぐことができるとともに、より大きな膜厚を持つことで感光体の耐リーク性、とくに接触帯電時のリークの防止を図ることができる。
【0051】
この分散型下引層用塗布剤としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質等を結着樹脂に分散したものが挙げられる。導電性金属酸化物としては、粒径が平均粒子径0.5μm以下の金属酸化物微粒子が好ましく用いられる。これ以上粒径が大きすぎると局部的な導電路形成を起こしやすく、電流のリークが発生しやすいため、かぶりの発生や帯電器からの大電流のリークの原因となってしまう。ここでいう粒径とは、平均1次粒径を意味する。下引層4はリーク耐性の向上のために適切な抵抗を得ることが必要であり、そのため金属酸化物微粒子が1×102〜1×1011Ω・cm程度の粉体抵抗を有することが好ましい。なお、上記範囲の下限よりも金属酸化物微粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こす傾向にある。従って、中でも上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子がより好ましく用いられる。また、金属酸化物微粒子は2種以上混合して用いることもできる。さらに、金属酸化物微粒子にカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体の抵抗を制御することができる。この際使用可能なカップリング剤としては上述の下引層形成用塗布液と同様の材料を用いることができる。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0052】
この金属酸化物微粒子の表面処理においては、公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
【0053】
乾式法を用いる場合においては、まず、金属酸化物微粒子を加熱乾燥して表面吸着水を除去する。表面吸着水を除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。次に、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。カップリング剤を添下あるいは噴霧する際には、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加あるいは噴霧した後、カップリング剤を硬化させ金属酸化物微粒子と堅固な化学反応を起こさせるため、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
【0054】
湿式法を用いる場合においては、乾式法と同様に、まず、金属酸化物微粒子の表面吸着水を除去する。この表面吸着水を除去する方法として、乾式法と同様の加熱乾燥の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が実施できる。次に、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
【0055】
金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であることが必須である。電子写真特性は表面処理処理後に金属酸化物微粒子に表面処理剤が付着している量によって影響される。シランカップリング剤の場合、その付着量は蛍光X線分析におけるSi強度と使用されている金属酸化物の主たる金属元素強度から求められる。この蛍光X線分析におけるSi強度は用いられる金属酸化物の主たる金属元素強度の1.0×10−5〜1.0×10−3倍の範囲であることが好ましい。この範囲を下回った場合、かぶりなどの画質欠陥が発生しやすく、この範囲を上回った場合残留電位の上昇による濃度低下が発生しやすい。
【0056】
分散型下引層用塗布剤に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂であるフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。このような樹脂中に上記金属酸化物微粒子が分散されていると、下引き層の抵抗値が適度に調製され、残留電荷の蓄積が十分に防止される。また上層の塗布溶剤に不溶な樹脂であるフェノール樹脂等に金属酸化物微粒子を分散したものを下引層にすることによって、上層の電荷発生層や電荷輸送層塗布形成時に下引層が溶解したり、分散物が溶剤により凝集を引き起こし塗膜の変形を生じることがなくなる。なお、上記のような樹脂によって、硬化膜を構成する樹脂が構成されている。分散型下引層形成用塗布液中の金属酸化物微粒子と結着樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0057】
上述した方法により表面処理された金属酸化物微粒子を結着樹脂に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が用いた方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0058】
この分散型下引層用塗布剤により下引層4を形成する方法は、上述した下引層4を形成する方法と同様に行う。
【0059】
次に、感光層3について説明する。
【0060】
本実施形態に係る電子写真感光体1における感光層3は、電荷発生機能と電荷輸送機能を併せ持つ単層型の感光層である。
【0061】
感光層3を形成するため結着樹脂として用いられる材料としては、ビスフェノールZやビスフェノールA、ビスフェノールCなどのビスフェノール類を骨格とする各種ポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0062】
ポリカーボネート樹脂としては、上述の構造のものを含めて各種の変性体を用いることが可能である。特に下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。式中、Aは、−CR11R12−、アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO2−を表し、R11〜R110及びR21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は環状炭化水素基を表す。R11とR12とは、互いに結合して環状炭化水素基を形成してもよい。前記Aで表されるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
【化1】
【0063】
前記R11〜R110で表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキル基、及び炭素原子数3〜12の分岐状のアルキル基が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
【0064】
前記R11〜R110で表される環状炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素原子数3〜10の環状炭化水素基が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0065】
また、ポリカーボネート樹脂は、これらの成分が複数個合わさった共重合体構造を有していても構わない。
【0066】
また、上述した結着樹脂は単独、あるいは2種以上をブレンドまたは共重合して使用できる。結着樹脂の粘度平均分子量は5,000〜200,000、好ましくは15,000〜100,000の粘度平均分子量のものが用いられる。分子量が低すぎると感光層の機械的強度が弱くなり磨耗ライフが短くなり、分子量が高すぎると塗液の粘度が高くなりすぎて良好な塗膜を形成するための塗布液が得られない。
【0067】
感光層3を形成するため電荷発生材料としては、ガリウムフタロシアニンが用いられる。単層型感光層の電子写真感光体1をカラー型画像形成装置において露光する場合には、電子写真感光体1の表面で光励起されたキャリアのうち正孔が感光層中を移動して導電性基体2まで到達し光減衰が行われることになる。従って、電荷発生材料として正孔輸送性が高いガリウムフタロシアニンを用いることにより電子写真感光体1の光感度が高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、ガリウムフタロシアニンが好適に使用される。
【0068】
なお、電荷発生材料としては、オキシチタニウムフタロシアニンも広く知られているが、オキシチタニウムフタロシアニンは顔料中に水分を含有することにより高い光感度を発現することが示されており、ガリウムフタロシアニンに比べて、使用する環境による影響がより大きい。単層型の感光層3においては、顔料の含有量が積層型感光層に比べて多くなるため、オキシチタニウムフタロシアニンに比して環境依存度が極めて小さいガリウムフタロシアニンを電荷発生材料として使用することにより、電子写真感光体1により、一層安定した電気特性や画質を維持することが可能となる。
【0069】
上記ガリウムフタロシアニンは、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°、10.0°、25.2°、28.0°のブラッグ角(2θ)に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、若しくはブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.3°、16.5°、25.4°、28.1°に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニンを用いることが好ましい。なお、X線回折スペクトルの回折ピークに対応するブラッグ角は、上記角度2θに対して±0.2°の範囲までは異なっていてもよい。ヒドロキシガリウムフタロシアニンは正孔の移動性を示すμτ積は1×10−8cm/V、クロロガリウムフタロシアニンは0.4×10−8cm/Vであり、電子のμτ積に比べて2桁高い値を示しおり、正孔輸送性が極めて高い。従って、電荷発生材料としてこれらの材料を用いることにより電子写真感光体1の光感度がより高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化がより十分に防止される。
【0070】
また、上述した電荷発生材料には、光源のスペクトルにあわせて所望の領域に吸収波長を有するように、他の電荷発生材料と混合して使用できる。混合する電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物又はセレン合金、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等の無機系光導電体及びこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニンなどの各種フタロシアニン顔料、ナフタロシアニン顔料、スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、トリスアゾ系、ントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料又は染料が用いられる。また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン顔料ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られている。
感光層3を形成するため電荷輸送材料としては、従来公知の電子輸送材料、及び正孔輸送材料が挙げられる。単層型の感光層3においては、電荷輸送材料として電子輸送材料と正孔輸送材料をブレンドして含有させることが好ましいが、高いインダクション効果を狙った光減衰曲線を有する感光体においては、電子輸送材料を用いないほうがその効果を顕著に得られる可能性があるため、電子輸送材料を用いない場合もある。
【0071】
電子輸送材料としては、ジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の、電子受容性を有する種々の化合物が挙げられる。特に、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノンなどのキノン誘導体が好適に使用される。本実施形態においては、電子輸送材料は1種のみを使用する他、2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0072】
正孔輸送材料としては、例えばN,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物や、縮合多環式化合物が挙げられる。正孔輸送材料は1種のみならず、2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0073】
また、感光層4を形成する感光層形成用塗布液に用いる溶媒としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独で、または2種以上ブレンドして用いられる。さらに、これらの溶媒には、電荷発生材料や電荷輸送材料等の分散性や感光層表面の平滑性を良くするために、界面活性剤やレベリング剤等を混合して使用してもよい。
【0074】
感光層3の形成は、まず、電荷発生材料、電荷輸送材料、結着樹脂および溶剤を分散及び混合して調合された感光層形成用塗布液を用意し、導電性基体2に塗布することにより行う。感光層形成用塗布液の分散及び混合の方法は、公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシエーカー、超音波分散機等を用いて分散ブレンドすることにより行う。感光層形成用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。このようにして形成した感光層3の膜厚は5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。薄すぎる場合には磨耗により帯電電位が低下し十分な感光体の寿命が得られなくなり、また、厚すぎる場合には十分な電荷の輸送性が得られなくなり残留の電位の高い感光体となってしまい画質が悪化する。結着樹脂に対する電荷発生材料の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜30重量部であることがより好ましい。結着樹脂に対する電子輸送材料の添加量は、結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、10〜80重量部であることがより好ましい。結着樹脂に対する正孔輸送材料の添加量は、結着樹脂100重量部に対して5〜500重量部であることが好ましく、25〜200重量部であることがさらに好ましい。電子輸送材料と正孔輸送材料とをブレンドして使用する場合、結着樹脂に対する電子輸送材料及び正孔輸送材料の総添加量は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部であることが好ましく、30〜200重量部であることがさらに好ましい。感光体中を電荷が良好に流れるためには電子輸送と正孔輸送の両方の能力を有することが望ましいため、電子輸送材料と正孔輸送材料が上記の範囲で配合される。上記範囲外で配合すると、正孔あるいは電子に対して十分な輸送性が得られない。
【0075】
なお、上述した感光層形成用塗布液には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、ラジカル補足剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えば、テルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0076】
また、その他、感光層形成用塗布液には、画像形成装置におけるオゾンや酸化性ガスの発生、あるいは光 ・ 熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加する事ができる。
【0077】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル フェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル 4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル フェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル 6−t−ブチル フェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル フェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチル エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルなどが挙げられる。ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。有機イオウ系酸化防止剤としてジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプト ベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチル フェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
【0078】
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤(2次酸化防止剤)は、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
【0079】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
【0080】
ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシ ベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0081】
安定剤としては、2−(−2’−ヒドロキシ−5’メチル フェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル 5’−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル 5’−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチル フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ 3’,5’−ジ−t−アミル フェニル−)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
その他の光安定剤としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル 3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチル−ジチオカルバメートなどが挙げられる。
次に、表面保護層5について説明する。
【0082】
本発明の電子写真感光体には、図3に示したように、必要に応じて表面保護層5を形成することができる。本実施形態における表面保護層5は、結着樹脂に抵抗制御用微粒子を分散した抵抗制御型の表面保護層である。
【0083】
抵抗制御用微粒子としては、カーボンブラックや金属、金属酸化物などを用いることができる。金属酸化物の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン被覆酸化スズ、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したものが挙げられる。また、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物などを抵抗制御用微粒子の調整剤として用いることができる。
【0084】
また、これらの抵抗制御用微粒子としての金属酸化物は、必要に応じて分散性等諸特性の改善のためシランカップリング剤やチタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤などの有機化合物で表面処理を行うことも可能である。
【0085】
なお、本実施形態において用いられる抵抗制御用微粒子は、100nm以下の粒径の金属酸化物を用いることが好ましい。これにより、表面保護層5が透明性に富み、厚膜を形成しても透過率の低下が少ないために感度の減少が少ない。このため、電子写真感光体の光感度を低下させることなく厚膜化が可能であり、電子写真感光体の長寿命化が一層可能となる。
【0086】
表面保護層5を形成するための結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物などが挙げられる。外部から電子写真感光体1に貫入する導電性異物を表面保護層5で阻止するために、ビッカース硬度で30以上の硬度を有する樹脂が好ましく用いられる。
【0087】
表面保護層5を形成するための溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン、アルコール等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、できるだけこの塗布液が塗布される感光層を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0088】
表面保護層5の形成は、抵抗制御用微粒子、結着樹脂及び溶剤を分散及び混合して調合された表面保護層形成用塗布液を用意し、導電性基体2に形成された感光層3上に塗布することにより行う。分散配合の方法は、上述した下引層4形成の方法と同様の方法で行う。また、表面保護層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、リングコーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。この場合に形成される保護層5の厚みは0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。抵抗制御用微粒子は結着樹脂に分散して成膜されるが、表面保護層が適当な塗膜抵抗を得るために、抵抗制御用微粒子の含有率が固形分中に10〜60体積%であることが好ましく、20〜50体積%であることがより好ましい。
【0089】
このように感光層3を表面保護層5で保護することにより電子写真感光体1表面の耐摩耗性を向上させたり、現像剤と電子写真感光体1のマッチングを向上させたり、感光体の帯電時における感光層の化学変化を防止することができる。
【0090】
また、本実施形態にて用いられる抵抗制御用微粒子の代わりに表面保護層用電荷輸送材料を用いることもできる。表面層用電荷輸送材料としては、ポリマー成分中に電荷輸送性機能を織り込んだ高分子電荷輸送剤、シリコーンハードコート剤等の強靭なコート剤中に低分子の電荷輸送剤を分子分散させるなどして電荷輸送機能機能をもたせた樹脂成分が挙げられる。ポリマー成分中に電荷輸送機能を織り込んだ表面保護層の具体例としては、シリコーンポリマー中に電荷輸送材料機能基を織り込んだ表面保護層の例が挙げられる。高分子電荷輸送剤としては、ポリビニカルバゾール等の電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物、特開平5−232727号公報等に開示されているような電荷輸送能を有する基を主鎖に含む高分子化合物、又はポリシラン等が挙げられる。また、高分子電荷輸送剤として、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックよりなるブロック共重合体またはグラフト共重合体を使用することもできる。高分子電荷輸送剤は、トリアリールアミン構造を繰り返し単位として含有することが電荷輸送能と機械的特性の向上の点で好ましく、また、トリアリールアミン構造がペンダント型ではなく、主鎖中に含有していることがさらに好ましい。ペンダント型であると、ペンダント同士が会合し、電荷トラップを形成し電荷輸送性を悪化する場合が多いが、主鎖中に含有されていることでこのような問題を回避することできる。さらに、前記トリアリールアミン構造が下記一般式(2)または(3)で表される構造の少なくとも1種以上を繰り返し単位として含有するのが好ましい。
【化2】
[式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示し、L1は枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、m及びnは、それぞれ0または1から選ばれる整数を意味する。]
【化3】
[式中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、L2は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示す。]
【0091】
前記一般式(2)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基から選ばれ、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0092】
X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。X1の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、メチレンジフェニル基、シクロヘキシリデンジフェニル基、オキシジフェニル基、チオジフェニル基等、およびこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、またはハロゲン置換体等が挙げられ、この中でも特に置換もしくは未置換のビフェニレン基が電荷輸送性の点で、特に好ましい。
【0093】
X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基から選ばれ、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基等、およびこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、またはハロゲン置換体等が挙げられる。
【0094】
L1は、枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、シロキサン結合等から選ばれる結合基を含み、且つ炭素数が20以下であるものが好ましい。その具体例としては、下記式(3−1)〜(3−8)のものが挙げられる。
【0095】
上記一般式(3)中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基から選ばれ、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、炭素数1〜12個のアルキル基またはアルコキシ基、ジアリールアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0096】
L2は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、炭素数が20以下のものが好ましい。その具体例としては、下記式(3−9)〜(3−13)のものが挙げられる。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0097】
また、前記一般式(1)中のL1または一般式(2)中のL2がエステル結合を有する場合が、機械的特性及び電荷輸送能の点で特に好ましい。
【0098】
この表面保護層用電荷輸送材料を用いる場合の結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
(カラー画像形成装置)
図4は本発明のカラー画像形成装置の好適実施形態を示す概略図である。
図4に示すカラー画像形成装置101はいわゆる中間転写方式のカラー画像形成装置であり、4つの画像形成ユニット120a、120b、120c、120dを備えており、4つの画像形成ユニット120a、120b、120c、120dは、中間転写体108の一部に沿って並列に配置されている。
【0099】
ここで、各画像形成ユニット(120a〜120d)は、電子写真感光体(1a〜1d)を備えており、電子写真感光体(1a〜1d)は上述した電子写真感光体1で構成されている。
【0100】
電子写真感光体1a〜1dは所定の方向(紙面上は反時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転可能であり、各電子写真感光体(1a〜1d)に対しては、その回転方向に沿って帯電手段(103a〜103d)、反転現像手段(102a〜102d)、1次転写手段(104a〜104d)、電子写真感光体クリーナ(106a〜106d)が順次配置されている。反転現像手段102a〜102dにはトナーカートリッジ(図示せず)に収容されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写手段104a〜104dはそれぞれ中間転写体108を介して電子写真感光体1a〜1dに当接している。
【0101】
なお、反転現像手段102a〜102dは、図4ではY、M、C、Kのトナー色の順に配置されているが、これは、例えば、M、Y、C、Kなどシステムの画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
【0102】
さらに、カラー画像形成装置101の所定の位置には像露光手段107が配置されている。像露光手段107から出射されたレーザ光がレーザ光105a〜105dに分岐されて、各画像形成ユニット120a,120b,120c,120dにおける帯電後の電子写真感光体1a〜1dの表面に照射されるようになっている。これにより、電子写真感光体1a〜1dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写体108上に重ねて転写される。
【0103】
中間転写体108は駆動ロール114、バックアップロール113及びテンションロール115により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく電子写真感光体1a〜1dと同じ周速度で回転可能となっている。また、2次転写手段109は、中間転写体108を介してバックアップロール113と当接するように配置されている。バックアップロール113と2次転写手段109との間を通過した中間転写体108は、例えば駆動ロール114の近傍に配置されたクリーニングブレード(図示せず)により表面を清浄化された後、次の画像形成プロセスに供される。
【0104】
また、カラー画像形成装置101内の所定の位置にはトレイ(画像出力媒体トレイ)111が設けられており、トレイ111内の紙などの画像出力媒体112が中間転写体108と2次転写手段109との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール110の間に順次移送された後、カラー画像形成装置101の外部に排紙される。 このようなカラー画像形成装置101においては、各画像形成ユニット120a〜120dにより、異なる色のトナー像が中間転写体108に重畳転写され、カラートナー像が形成される。そして、このカラートナー像は、2次転写手段109による接触帯電作用により中間転写体108から画像出力媒体112に転写され、定着ロール110によりカラートナー像が画像出力媒体112に定着され、カラー画像が形成される。
【0105】
このカラー画像の形成時においては、各電子写真感光体1a〜1dにおいて、電荷発生材料として正孔輸送性が高いガリウムフタロシアニンが用いられることにより電子写真感光体1a〜1dの光感度が高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。このため、カラー画像形成装置101によれば、電子写真感光体1a〜1dにおいて温度変化や湿度変化による光感度の変化が十分に防止される。
【0106】
このため、温度や湿度等が変化する環境においてカラー画像を繰り返し形成しても、色ムラの発生を十分に防止することができる。即ちカラー画像形成装置101は、画像の繰り返し安定性に優れ、多数枚のカラー画像を連続して出力しても、安定した画質の画像を形成することができる。従って、このカラー画像形成措置101は、軽印刷の用途にも十分に使用可能である。
またカラー画像形成装置101においては、解像度を十分に高くし得る電子写真感光体1a〜1dが使用されているため、カラー画像形成装置101により、極めて画質の高いカラー画像を形成することができる。
【0107】
更に、カラー画像形成装置101によれば、カラー画像を繰り返し形成しても、1つの電子写真感光体を有するカラー画像形成装置と比較して暗減衰による色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0108】
なお、カラー画像形成装置101の解像度は1200dpi以上に設定しても良い。カラー画像形成装置101は、解像度を十分に向上させることができ且つ環境安定性に優れた電子写真感光体1a〜1dを備えているため、温度や湿度等が変化する環境下で、1200dpi以上の解像度に設定されてカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0109】
カラー画像形成装置101の解像度は2000dpi以上に設定しても良い。この場合、温度や湿度等が変化する環境下で、2000dpi以上の解像度に設定されてカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0110】
以下、カラー画像形成装置101における各構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0111】
[帯電手段]
帯電手段103a〜103dは、電子写真感光体1a〜1dの表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる部分である。
【0112】
帯電手段103a〜103dとしては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器、帯電ローラーを電子写真感光体近傍で用いる非接触方式のローラー帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの公知の帯電器が挙げられる。
【0113】
これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。接触型帯電器によると、電子写真感光体1a〜1dの表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより電子写真感光体1a〜1dの表面を帯電させることができる。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、あるいはローラー状等何れでもよいが、特にローラー状が好ましい。このようなローラー状部材は通常、外側の抵抗層とそれらを支持する内部の弾性層と芯材から構成される。さらに必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
ローラー状部材は、電子写真感光体1a〜1dに接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも電子写真感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段103として機能する。また、ローラー状部材に何らかの駆動手段を取り付け、電子写真感光体1a〜1dとは異なる周速度で回転させ、電子写真感光体1a〜1dを帯電させても良い。
【0114】
芯材の材質としては導電性を有するもので、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。またその他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
【0115】
弾性層の材質としては導電性あるいは半導電性を有するもので、ゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものが挙げられる。ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等を用いることができる。導電性粒子あるいは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物を用いることができ、これらの材料は単独あるいは2種以上混合して用いても良い。
【0116】
抵抗層および保護層としては、結着樹脂に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したものが挙げられる。抵抗層および保護層の抵抗率は通常、103〜1014Ωcmであり、105〜1012Ωcmであることが好ましく、107〜1012Ωcmであることがさらに好ましい。また、抵抗層および保護層の膜厚は0.01〜1000μmとし、0.1〜500μmとするのが好ましく、0.5〜100μmとするのがさらに好ましい。結着樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂等が挙げられる。導電性粒子あるいは半導電性粒子としては、弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が挙げられる。また、抵抗層および保護層には、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する方法としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0117】
これらの導電性部材を用いて電子写真感光体1a〜1dを帯電させるには、導電性部材に電圧を印加するが、その際の印加電圧は直流電圧、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。直流電圧の範囲としては、要求される電子写真感光体1a〜1dの帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vであることが好ましく、100〜1500Vであることがさらに好ましい。直流電圧に交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧は通常、400〜1800Vとし、800〜1600Vとすることが好ましく、1200〜1600Vとすることがさらに好ましい。この際の交流電圧の周波数は50〜20,000Hzとし、100〜5,000 Hzとすることが好ましい。
【0118】
[像露光手段]
像露光手段107としては、原稿画像を色分解して結像露光する光学系露光装置や、原稿画像情報の時系列電気デジタル画素信号を生成しその信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系露光装置等が挙げられる。光学系露光装置としては、特に制限はなく、例えば、前記電子写真感光体1a〜1dの表面に、半導体レーザー光、LED光、液晶シャッタ光等を、所望の像様に露光できる光学系露光機器などが挙げられる。光源の波長は電子写真感光体1a〜1dの分光感度領域にあるものが使用され、半導体レーザーの波長として、780nm付近に発振波長を有する近赤外レーザー、600nm台の発振波長を有するレーザー、400〜450nm近傍に発振波長を有する青色レーザー等が利用できる。またカラー画像の形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も好適に使用することができる。この像露光手段107により、電子写真感光体1a〜1dの表面が露光され静電潜像が形成される。
【0119】
[反転現像手段]
反転現像手段102a〜102dは、像露光手段107により電子写真感光体1a〜1d上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する部分である。反転現像手段102a〜102dとしては、例えば、磁性若しくは非磁性のトナーを接触あるいは非接触させて現像する一般的な現像器が挙げられる。現像手段102a〜102dとしては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トナーをブラシ、ローラ、ゴムブレード等を用いて前記電子写真感光体に付着させる機能を有する公知の現像器などが挙げられる。
【0120】
次に、上述した反転現像手段において用いられるトナーについて説明する。本実施形態に係るトナーは、トナー粒子とその他の外添剤からなり、トナー粒子は、結着樹脂と着色剤と雛型剤と必要応じてシリカや帯電制御剤が混合されたものである。
【0121】
トナー粒子は、所望の形状指数と粒径を満足する範囲のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、結着樹脂と着色剤、雛型剤、必要に応じて帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法により得られるもの;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法で得られるもの;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、雛型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法により得られるもの;結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法により得られるもの;結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法により得られるもの等が挙げられる。また上記方法で得られたトナー粒子をコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法など、公知の方法により得られたものを使用することができる。これらの製造方法で得られたもののうち、形状制御、粒度分布制御の観点から、水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法によるものが好ましく、乳化重合凝集法によるものがさらに好ましい。
【0122】
湿式製法でトナー粒子を製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。本発明におけるトナー粒子は、磁性材料を内包する磁性トナー粒子および磁性材料を含有しない非磁性トナー粒子のいずれであってもよい。
【0123】
結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα一メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロベニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等をあげることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレット、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.1.ピグメント・レッド57:1、C. I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
【0124】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルテバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が挙げられる。
【0125】
また、トナー粒子には必要に応じて帯電制御剤が添加されてもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が挙げられる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。
【0126】
トナー粒子は、上述した結着樹脂と着色剤と雛型剤を含むが、必要に応じてシリカや上述した帯電制御剤が混合されたものが使用される。トナー粒子の平均粒径は2〜12μmとし、3〜9μmとすることが好ましい。また、トナー粒子の平均形状指数(ML2/A)が115〜140のものを用いることが好ましい。これにより高い現像感度及び転写性が得られ、高画質の画像を得ることができる。
【0127】
また、上記のトナー粒子に添加される外添剤としては、滑性粒子、無機微粒子、有機微粒子、複合微粒子、その他の無機酸化物が挙げられる。
【0128】
滑性粒子は、感光体表面に潤滑性を付与するためのものである。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用でき、これらを単独で使用するか、あるいは併用しても良い。滑性粒子の平均粒径としては0.1〜10μmの範囲とし、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量はトナー100重量部に対して0.05〜2.0重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましい。
【0129】
また、トナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機微粒子、有機微粒子、該有機微粒子に無機微粒子を付着させた複合微粒子などを加えることができる。このうち、研磨性に優れる点において無機微粒子が特に好ましい。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。上記無機微粒子に対しては、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンセンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ一メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルシシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などで処理を行っても良い。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理されたものも好ましく使用される。
【0130】
有機微粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0131】
これら無機微粒子や有機微粒子の粒子径としては、小さすぎると研磨能力に欠け、また、大きすぎると電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなるため、平均粒子径で5nm〜1000nmとし、5nm〜800nmとすることが好ましく、5nm〜700nmとすることがさらに好ましい。また、滑性粒子の添加量との和が0.6重量%以上であることが好ましい。
【0132】
また、トナーには、その他の無機酸化物を添付することができる。無機酸化物は、粉体流動性、帯電制御等の点で、1次粒径が40nm以下の小径の無機酸化物を用いることが好ましく、付着力低減や帯電制御の点で、それより大径の無機酸化物をさらに添加することが好ましい。これらの無機酸化物としては、公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行うためにシリカと酸化チタンを併用して添加することが好ましい。また、小径の無機微粒子については、分散性、粉体流動性を上げるために表面処理することが好ましい。
【0133】
上記のトナー粒子と外添剤を混合する方法としては、トナー粒子及び外添剤をヘンジェルミキサーあるいはVブレンダー等で混合することによって製造する方法を使用することができる。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて混合することも可能である。
【0134】
上述した方法によって得られたトナーには、使用に際してキャリアを混合して使用する。キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉またはそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが挙げられる。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
反転現像手段102a〜102dによって電子写真感光体1a〜1dを現像する際には安定剤を添加して使用することもできる。安定剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系酸化防止剤、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤が挙げられる。なかでも、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系酸化防止剤が特に好ましく、構造としては広く公知のものが使用できる。
【0135】
電子写真感光体1a〜1dの表面に、外部より安定剤を含有する物質を接触させる方法としては、トナー中に含有させる方法;ステアリン酸亜鉛やワックスなどに添加しトナーに加える方法;キャリア表面に安定剤を所望により樹脂と一緒に塗布、あるいは、機械的に付着させる方法、などが挙げられる。また、シリカ、酸化チタンなどの外添剤表面などに添加してもよい。ゴムブレード中に成型時に混合してもよい。また、ステアリン酸亜鉛やワックスなどの潤滑剤中に安定剤を練りこみ、ブラシ、ローラなどにより供給してもよく、中間転写体108、帯電手段103にブラシ、ローラなどを用いて安定剤を供給し、電子写真感光体1a〜1dの表面に供給してもよい。
【0136】
トナーに粉体として安定剤を添加する場合には、安定剤の粒子径は0.01〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.8μmであることがより好ましい。トナーに添加する安定剤の量はトナー100重量部に対して0.01〜3重量部とし、0.02〜2重量部とすることが帯電の安定性からより好ましい。また、トナーを形成する結着樹脂中に直接混合してもよい。混合する量は、トナー100重量部に対して0.01〜5重量部とし、0.02〜3重量部とすることが帯電の安定性からより好ましい。
【0137】
キャリアや無機外添剤の表面に安定剤を付着させる方法としては、安定剤をキャリアや外添剤の無機粉体1部に対し0.01〜0.2部、好ましくは0.1〜0.1部加え、ボールミルや、ヘンジェルミキサーあるいはVブレンダー等で機械的に混合する方法;安定剤を必要によっては樹脂とともに適当な溶剤に溶解させ、これに無機粉体を混合し、乾燥させるなどのWet法を用いてもよい。
【0138】
潤滑剤に安定剤を混合する方法としては、潤滑剤1部に対し、安定剤を0.01〜1部、好ましくは0.02〜0.8部加えて加熱融解して解砕し、所望の形に成型する。必要によっては、安定剤を0.05〜1μmに微粒子化し、これをトナーに添加してもよい。この際、安定剤の添加量は、トナー1部に対し0.0001〜0.05部が好ましく、0.005〜0.03部がより好ましい。電子写真感光体1a〜1dの表面への安定剤の供給量としては、画像の安定性が得られる範囲であればいかなる量でも構わないが、多すぎると表面への堆積物が多く、少なすぎると効果が充分に得られないため、実際にマシン内にて画像安定性をテストし、決定される。
[1次転写手段]
1次転写手段104a〜104dは、反転現像手段102a〜102dにより前記電子写真感光体1a〜1d上に形成したトナー像を中間転写体108に1次転写する部分である。中間転写体108が、電子写真感光体1a〜1dとの界面(ニップ部)を通過する過程で、1次転写手段104a〜104dから中間転写体108に印加される1次転写電圧により電界が形成される。この電界により、中間転写体108の外周面に順次、トナー像が1次転写される。なお、電子写真感光体1a〜1dから中間転写体108に印加される1次転写電圧は、トナーとは逆極性(+)でバイアス電源から印加される。
【0139】
1次転写手段104a〜104dとしては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器などのそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明のカラー画像形成装置101においては、転写帯電器のほか、剥離帯電器等を併用することもできる。また、1次転写時において、1次転写手段104a〜104dから電子写真感光体1a〜1dに付与される転写電流には、通常直流電流が使用されるが、本発明においては更に交流電流を重畳させて使用してもよい。1次転写手段104a〜104dにおける設定条件としては、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、1次転写電流としては+100〜+400μA、1次転写電圧としては+500〜+2000Vと設定することができる。
【0140】
[中間転写体]
<表面微小硬度>
中間転写体108は、転写面の表面微小硬度が10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
【0141】
表面微小硬度とは、金属材料の硬さ測定等に広く用いられているビッカース硬さのように、くぼみの対角線長さを求めるという方法はとらず、圧子が試料にどれだけ侵入したかを測定する方法によって求めることができる。図5に示すように、圧子50に加える試験荷重をP(mN)、圧子50の試料である中間転写体108への侵入量(押し込み深さ)をD(μm)とした時、表面微小硬度DHは一般に、下記式(6)で定義される。
DH≡αP/D2 ・・・(6)
【0142】
式(6)中、αは圧子形状に依る定数であり、圧子として三角錐圧子を使用した場合は、α=3.8584である。
【0143】
この表面微小硬度DHは、上記式(6)に示すように、圧子を押し込んで行く過程の荷重Pと、押し込み深さDとから得られる硬さであり、試料の塑性変形だけでなく、弾性変形をも含んだ状態での材料の強度特性を表すものである。なおかつ、その計測面積は微小であり、トナーの粒径に近い範囲で、より正確な硬度の測定が可能になる。本発明者らは、ここで得られた表面微小硬度DHと、ライン画像が中抜けするホロキャラクターの発生レベルに極めて正確な相関があることを見出した。即ち、中間転写体108の転写面の表面微小硬度が好ましくは10以下、より好ましくは8以下の場合には、2次転写手段109としてのバイアスローラの押圧力によって中間転写体108の転写面の変形が起こり、これにより中間転写体108上のトナーに集中していた押圧力が分散される。このため、トナーは凝集せず、ホロキャラクター等の画質欠陥を十分に防止することができる。
【0144】
尚、中間転写体108の転写面における表面微小硬度は、具体的には、下記の方法によって求められる。即ちまず、転写面を構成する材料のシートを5mm角程度に切り、その小片を瞬間接着剤で硝子板に固定する。そして、この小片の表面の表面微小硬度を超微小硬度計DUH−201S(株式会社島津製作所製)を用いて、下記測定条件で測定する。こうして、表面微小硬度を求めることができる。
測定環境:23℃、55%RH
使用圧子:三角錐圧子
試験モード:3(軟質材料試験)
試験荷重:0.70gf
負荷速度:0.0145gf/sec
保持時間:5sec
【0145】
(表面層)
また、図6に示すように、中間転写体108は、樹脂組成物で構成される表面層130を有し、この樹脂組成物がフッ素系樹脂材料を含むことが好ましい。ここで、フッ素系樹脂材料とは、フッ素原子を含む樹脂のことを言う。
【0146】
フッ素系樹脂材料は、摩擦帯電列において極性がマイナス側にある。このため、中間転写体108の表面層130上のマイナス電荷をもったトナーをプラスに帯電させ、逆極性のトナー、即ちマイナス電荷をもったトナーを減少させることができる。従って、逆極性のトナーの転写時における飛散が十分に防止され、中間転写体108から画像出力媒体に転写する時の転写効率の低下を十分に防止することができる。よって、高品質のカラー画像を安定して得ることができる。
【0147】
上記フッ素系樹脂材料は、非粘着性を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。このようなフッ素系樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンと、これと共重合可能な少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体(例えばエチレン、プロピレンなどのオレフィン類、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレン、ビニルフルオライドなどのハロゲン化オレフィン類、パーフルオロアルキルビニルエーテル類など)との共重合体、あるいはポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどが挙げられる。中でも、非粘着性を有し且つ分散性が良好である点から、フッ素系樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。あるいは、同様の理由から、フッ素系樹脂材料として、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル又はこれらの1種以上の混合物との共重合体が好ましい。なお、フッ素系樹脂材料として、この共重合体を用いる場合、その共重合体の製造に際して、テトラフルオロエチレンと共重合可能なモノマーは、テトラフルオロエチレンに対し40モル%以下用いられる。
【0148】
樹脂組成物は、フッ素系樹脂材料を主成分として含むことが好ましい。ここで、主成分とは、フッ素系樹脂材料が樹脂組成物中に30重量%以上含有されていることを言う。
【0149】
樹脂組成物中には導電剤が分散されていてもよい。導電剤は、導電性もしくは半導電性の微粉末として使用でき、所望の電気抵抗を安定して得ることができるものであれば特に制限されないが、導電剤としては、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示できる。これらは単独であるいは併用して使用してもよい。導電剤としては、上記カーボンブラックをフッ素ガスによりフッ素化したフッ素化カーボンが好ましく用いられる。フッ素化カーボンは、フッ素系樹脂材料との密着性に優れており、且つフッ素系樹脂材料中に均一に分散させることができる。このため、表面層130を、抵抗バラツキの少ない、経時的安定性に優れたものとすることができる。
【0150】
このようなフッ素化カーボンは、特開平07−149448号公報に記載されている方法によって製造することができる。フッ素化カーボンは、ポリ(カーボンモノフルオライド)を主成分とするものである。フッ素化カーボンは、平均粒径1μm以下、好ましくは0.1μm以下のカーボンブラックをフッ素ガスによりフッ素化してなるものであることが好ましい。これにより、フッ素樹脂中での分散性が良くなる。カーボンブラックとして適するものは上記平均粒径を有するカーボンブラックである。カーボンブラックのうち特に、導電性カーボンブラックと一般に称されているものが好ましく用いられる。ここで、導電性カーボンブラックは、平均粒径が小さい(平均粒径0.1μm以下)、表面積が大きい(N2 表面積50m2/g以上)、ストラクチャーが発達している(吸油量100cc/g以上)、不純物が少ない(灰分0.1%未満)、グラファイト化が進んでいる、というファクターで定義されるものであり、比較的少ない配合量で材料に導電性を付与できるため、広く使用されているものである。導電性カーボンブラックの具体例としては、例えばケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(以上、ケッチェンブラックインターナショナル(株))、ブラックパールズ2000、バルカンXC−72、CSX−99(以上、キャブラック(株))、デンカブラック(電気化学工業(株))、コンダクテックス950(コロンビアカーボン(株))などが挙げられる。
【0151】
フッ素系樹脂材料及びフッ素系樹脂材料中に分散されるフッ素化カーボンを含む樹脂組成物は、適宜、水または有機溶剤に分散ないし溶解した形態で液状組成物を塗布した後、乾燥して、フッ素化カーボンを含むフッ素系樹脂組成物として使用することもできる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、酢酸アミルエステル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0152】
フッ素化カーボンの添加量は、フッ素化カーボンの種類とフッ素化度により変わるため一概には言えないが、中間転写体108の表面層130における体積抵抗率が1×108〜1×1014Ωcmとなるようにすればよい。さらに、表面層130は、必要に応じて導電剤以外の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば密着性向上剤(有機樹脂粉末など)、潤滑性付与剤(フッ素系オイルなど)、耐摩耗性向上剤(無機セラミックス粉体など)、増粘剤、造膜剤、界面活性剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、導電性と非粘着性を損なわない範囲内で、適宜選定すればよい。
【0153】
表面層130に用いる樹脂組成物としては、非粘着性を有し且つカーボンブラックの分散性が良いという点から、4フッ化エチレン樹脂を成分とするフッ素系樹脂材料中にフッ素化カーボンを分散させたものが好ましい。この樹脂組成物の具体例としては、フッ素化カーボンを添加してなる4フッ化エチレン樹脂を主なる樹脂組成物とするダイキン工業(株)製の導電性塗料TD−C2102−A、NF−7035−Aなどが挙げられる。
【0154】
<表面層の摩擦係数>
中間転写体108においては、表面層130の摩擦係数が0.5以下であることが好ましく、0.2〜0.4であることがより好ましい。該摩擦係数が0.5を超えると、中間層として弾性層131が設けられている場合に、感光体1a〜1dとの間に発生する応力により感光体1a〜1dとのステックスリップによる転写面に微小な変形が生じ、細部の転写画質が悪くなることがある。
【0155】
摩擦係数は、図7に示すような摩擦係数測定器HEIDON−14(HEIDON社製)を用いて測定することができる。図7に示す摩擦係数測定器は、鋼球(直径3mm)303、零点調整用天秤304、ロードセル305及び重り(100g)306を備えている。この摩擦係数測定器を用いて摩擦係数を測定する場合、まず中間転写体108の表面層130を構成する材料からなる厚さ20μmの膜301を作製し、これを固定台302の上にセットする。そして、重り306により、鋼球303を介して膜301に荷重100gを加え、その状態で固定台302を移動速度0.1cm/秒で移動させる。このとき、ロードセル305の表示により、摩擦係数を知ることができる。
【0156】
<表面層の体積抵抗率>
中間転写体108の表面層130については、その体積抵抗率が1×108〜1×1013Ωcmであることが好ましく、1×109〜1×1012Ωcmであることがより好ましい。この体積抵抗率が1×108Ωcm未満である場合には、電子写真感光体1a〜1dから中間転写体108に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、体積抵抗率が1×1013Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体108の表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。体積抵抗率を上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0157】
表面層130の体積抵抗率は、図8に示す三菱油化(株)製ハイレスターIPのHRプローブを用い、JIS K6991に従って測定することができる。この体積抵抗率の測定方法について、図8(a)及び(b)を用いて説明する。図8(a)は、ハイレスターIPの一例を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。図8(a)及び(b)に示すように、ハイレスターIPは、第1電圧印加電極A’と第2電圧印加電極B’とを備えている。第1電圧印加電極A’は、円柱状電極部C’と、該円柱状電極部C’の外径よりも大きい内径を有し円柱状電極部C’と同心状に設けられるリング状電極部D’とを備えており、円柱状電極部C’は、円柱状ブロックを介してリング状電極部D’と一体化されている。このハイレスターIPを用いて表面層130の体積抵抗率を測定する場合、まず第1電圧印加電極A’の円柱状電極部C’及びリング状電極部D’と、第2電圧印加電極B’とで表面層130を挟み、第1電圧印加電極A’における円柱状電極部C’と第2電圧印加電極B’との間に電圧V(V)を印加したときに表面層130を流れる電流I(A)を測定し、下記式(7):
ρv=19.6×(V/I)×t・・・(7)
(上記式(7)中、tは、表面層130の厚さを表す)
により、表面層130の体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。
【0158】
(弾性層)
また、図6に示すように、中間転写体108は上記表面層130のほか、弾性材料から構成される弾性層131と、基材132とを備えており、弾性層131が基材132と表面層130とによって挟まれるように構成されている。
【0159】
弾性層131を構成する弾性材料は、JISA硬度が40〜70°であることが好ましい。JISA硬度が40°未満では、加工性が悪くなり、厚みのバラツキが大きくなる傾向があり、70°を超えると、表面微小硬度が硬くなる傾向がある。弾性材料は、1×108Ωcm〜1×1013Ωcmの範囲の体積抵抗率を有することが好ましい。この体積抵抗率が1×108Ωcm未満である場合には、電子写真感光体1a〜1dから中間転写体108に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、体積抵抗率が1×1013Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体108の表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。体積抵抗率を上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0160】
上記弾性材料は、JISA硬度及び/又は体積抵抗率が上記範囲内にある材料であれば特に限定されず、このような弾性材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは1種類で、又は2種類以上をブレンドして用いることができる。弾性材料には、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤やイオン伝導性を付与する導電剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
【0161】
弾性材料として用いるゴム生地としては、液状や糊状のものではなく、未加硫ゴムの固形状シートが好ましく用いられる。未加硫ゴムとしては、キャレンダーロール等で精度良くシート状に分出して得られる生地が使用される。未加硫ゴムの固形状シートを基材132と貼り合せてシームレスに一体成形することで、基材132と弾性層131からなる密着性に優れた2層構成の貼り合せベルトを得ることができる。
【0162】
(基材)
<基材のヤング率>
基材132のヤング率Eと中間転写体としての中間転写ベルトの駆動時の外乱(負荷変動)によるベルトの変位量Δlとの関係は、下記式(8)で表すことができる。
Δl=P・l・β/(t・w・E)・・・(8)
【0163】
上記式(8)中、Δlは中間転写ベルトの変位量(μm)、Pは負荷(N)、lは2本のテンションロール間の中間転写ベルトの長さ(mm)、βは係数、tは中間転写ベルトの厚さ(mm)、wは中間転写ベルトの幅(mm)、Eは基材132のヤング率(N/mm2)を表す。
【0164】
上記式(8)より、ベルト駆動時の外乱(負荷変動)による中間転写ベルトの伸び・縮み(変位量)Δlは、基材132のヤング率Eと中間転写ベルトの厚さtに逆比例する。基材132の材料として、高ヤング率の材料を用いると、ベルト駆動時の外乱(負荷変動)による中間転写ベルトの変位量Δlが少なくなり、駆動時の応力に対するベルト変形が小さくなり、良好な画質を安定して得ることができる。但し、ベルトの厚さtが大きくなると、駆動系ロールなどのベルト屈曲部でのベルトの外側表面の変形量が大きくなり、良好な画質を得られ難く、また、ベルトの外側と内側との変形量が大きくなり、局部的な繰り返し応力のためにベルトが破断するなどの問題が生じる場合がある。
【0165】
基材132のヤング率Eは、中間転写ベルトの厚さtによっても異なるが、通常、2000MPa以上であり、3500MPa以上であることが好ましく、4000MPa以上であることがより好ましい。このように基材132のヤング率Eが3500MPa以上であると、中間転写体108の基材132としての機械特性が満足される。
【0166】
<基材に用いる樹脂材料>
基材132に用いる樹脂材料は、基材132のヤング率を3500MPa以上にすることが可能なものであれば特に限定されず、このような樹脂材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなる樹脂などを挙げることができる。
【0167】
<基材のポリイミド樹脂>
基材132に用いる樹脂材料としては、機械特性に優れることから、ポリイミド樹脂が好ましい。このポリイミド樹脂としては、例えば芳香族テトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させて得られるものが用いられる。
【0168】
上記芳香族テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−アゾベンゼンテトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルポキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)ヘキサフオロプロパン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合してもよい。また、上記芳香族ジアミン成分は、特に制限はなく、m−フェニルジアミン、p−フェニルジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4’−ジアミノナフタレビフェニル、ベンジジン、3,3−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(オキシ−p,p’−ジアニリン;ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミンフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0169】
上記有機極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド等が挙げられる。これらの有機極性溶媒には、必要に応じて、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類を混合することができる。これらの溶剤も、単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0170】
上記ポリイミド樹脂としては、芳香族テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、且つ、芳香族ジアミン成分として、p−フェニレンを用いてなる重合体を主成分とするポリイミド樹脂が好ましい。このポリイミド樹脂は剛直となり、基材のヤング率を6000MPa以上とすることができ、基材132の機械特性を十分に満足することができる。
【0171】
<基材用導電剤>
上記基材132に用いる樹脂材料がポリイミド樹脂である場合、樹脂材料においては、ポリイミド樹脂中に導電剤(以下、基材用導電剤と言う)が分散されていることが好ましい。この場合、体積抵抗率を所望の抵抗領域に制御できるという利点がある。
【0172】
基材用導電剤は、導電性もしくは半導電性の微粉末が使用でき、所望の電気抵抗を安定して得ることができるものであれば特に制限されないが、このような基材用導電剤としては、例えばケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が挙げられる。これらは単独で用いても、あるいは併用してもよい。
【0173】
中でも、カーボンブラック、特に酸化処理カーボンブラックが、ポリイミド樹脂組成物中に均一に分散させることができる点で好ましい。さらに酸化処理カーボンブラックは、そのpHが5.0以下であることがより好ましい。この酸化処理カーボンブラックは、表面にカルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基などの酸素含有官能基を有するため、ポリイミド樹脂中への分散性が良好であり、良好な分散安定性が得られるため、中間転写体108の抵抗バラツキを小さくすることができる。また、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が十分に防止され、電気抵抗が経時的に安定化される。
【0174】
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで製造することができる。この場合、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等が付与される。この酸化処理は、カーボンブラックを高温雰囲気下で空気と接触させて反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、又は高温下で空気酸化した後、低い温度下でオゾン酸化する方法などにより行うことができる。具体的には、酸化処理カーボンブラックは、空気酸化法の一つとしてのコンタクト法により製造することができる。コンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸化処理カーボンブラックは、ガスまたはオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。酸化処理カーボンブラックを製造する場合、カーボンブラックに対して上記の処理を施した後、必要に応じて、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。なお、上述したように、酸化処理カーボンブラックはコンタクト法で製造することができるが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pHで且つ低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施すことでpHを調整することができる。このため、ファーネス法を用いた製造で得られる酸化処理カーボンブラックに対し、後工程処理によりpHが5以下となるように調節された酸化処理カーボンブラックも、酸化処理カーボンブラックというものとする。
【0175】
上記酸化処理カーボンブラックのpH値は、上述したように5.0以下であることが好ましいが、より好ましくは4.5以下であり、特に好ましくは4.0以下である。
【0176】
なお、酸化処理カーボンブラックのpHは、酸化処理カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で電位を計測して、KClとの電位差よりpHに換算することにより求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度及び処理時間等の条件によって調整することができる。
【0177】
上記酸化処理カーボンブラックは、1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3.5〜15重量%の揮発成分を含む。揮発成分の含有率が1重量%未満である場合には、表面に付着する酸素含有官能基の効果がなくなり、樹脂材料への分散性が低下することがある。一方、揮発成分の含有率が25重量%より高い場合には、樹脂材料に分散させる際に揮発成分が分解するか、或いは、表面の酸素含有官能基に吸着された水などが多くなること等によって、得られる基材の外観が悪くなるなどの問題が生じることがある。従って、揮発成分を上記範囲とすることで、樹脂材料中への分散をより良好とすることができる。この揮発成分は、酸化処理カーボンブラックを950℃で7分間加熱したときに出てくる有機揮発成分(カルボキシル基、、水酸基、キノン基、ラクトン基等)の割合により求めることができる。
【0178】
上記酸化処理カーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
【0179】
上記のような酸化処理カーボンブラックは、一般的なカーボンブラックに比べ、前述したように表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂材料中への分散性がよいため、導電剤としての添加量を高くすることが好ましい。これにより、中間転写体中のカーボンブラックの量が多くなるため、上記電気抵抗値の面内バラツキを抑えることができる等の酸化処理カーボンブラックを用いることの効果を最大限に発揮することができる。
【0180】
具体的には、基材に用いる樹脂材料中の酸化処理カーボンブラックの含有率は、10〜30重量%であることが好ましい。この含有率が10重量%未満であると電気抵抗の均一性が低下し、体積抵抗率の面内ムラや電界依存性が大きくなることがある。一方、含有率が30重量%を超えると所望の抵抗値が得られ難くなる。さらに、樹脂材料中の酸化処理カーボンブラックの含有率は18〜30重量%であることがより好ましい。この場合、酸化処理カーボンブラックの持つ効果を最大限に発揮させることができ、体積抵抗率の面内ムラや電界依存性を顕著に向上させることができる。
【0181】
上記基材132においては、カーボンブラックが2種類以上含まれてもよい。この場合、これらのカーボンブラックは実質的に互いに導電性の異なるものであると好ましく、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性が異なるものを用いる。このように導電性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを優先的に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して体積抵抗率を調整すること等が可能である。このように2種類以上のカーボンブラックを含有させる場合も、そのうちの少なくとも1種類を酸化処理カーボンブラックとすることによって、両方のカーボンブラックの混合や分散性を高めることができる。
【0182】
中間転写体108は、少なくとも表面層130と、弾性層131と、基材132とを有する3層以上の複数の層からなり、表面層130が、108〜1013Ωcmの体積抵抗率を有する樹脂材料で構成され、弾性層131は、JISA硬度40〜70°の弾性材料から構成され、基材132は、導電剤が分散され且つヤング率が3500MPa以上の樹脂材料で構成されると共に、表面層130における転写面109aの表面微小硬度が10以下であることが好ましい。この中間転写体108の構成によれば、単一の材料構成では得られない可とう性と剛性のバランスを満足することができる。加えて、転写面109aの表面硬度が低くかつ高体積抵抗であることによって、ライン画像が中抜けするホロキャラクターや、トナーが飛び散るブラーなどの画質欠陥の発生が十分に防止され、高画質のカラー画像を安定して得ることができる。
【0183】
中間転写体108において、表面層130及び弾性層131の合計の厚さの割合は、中間転写体108の厚さの10〜80%であることが好ましい。表面層130及び弾性層131の厚さが上記範囲内であれば、基材132に用いる樹脂材料に影響されずに、中間転写体108上のトナーに集中していた押圧力が分散される。このため、トナーが凝集せず、ライン画像が中抜けするホロキャラクター等の画質欠陥の発生が十分に防止される。
【0184】
<中間転写体の厚さ>
中間転写体108の厚さは、好ましくは0.05〜0.5mmであり、より好ましくは0.06〜0.30mmであり、さらに好ましくは0.06〜0.15mmである。中間転写体108の厚さが0.05mm未満の場合には、中間転写体(ベルト)として必要な機械特性を満足させることが難しくなり、0.5mmを超える場合には、ロール屈曲部での変形によって、表面の応力が表面層130に集中して、表面層130にクラックが発生するなどの問題が生じる場合がある。
【0185】
<中間転写体の体積抵抗率>
中間転写体108の体積抵抗率は1×108〜1×1013Ωcmであることが好ましく、1×109〜1×1012Ωcmであることがより好ましい。この体積抵抗率が1×108ΩCm未満である場合には、電子写真感光体から中間転写体108に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、体積抵抗率が1×1013Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体108の表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、体積抵抗率を上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。なお、中間転写体の体積抵抗率は、表面層130の体積抵抗率を測定する場合と同様にして測定することができる。
【0186】
なお、上記構成の中間転写体は、転写電圧による抵抗の低下がなく、経時による形状の変形等の問題がなく、かつ、電界依存性がなく、環境による電気抵抗の変化が少ないという優れた性質を有する。従って、上記中間転写体がベルト形状の場合、その中間転写体は、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置に用いる用紙搬送ベルトとしても用いることができる。
【0187】
中間転写体108は、表面層130、弾性層131及び基材132の3層に限定されず、さらに多層化することもできる。
【0188】
基材132のシームレスベルトを製造する場合、例えばポリアミド酸溶液を、円筒状金型の外周面に浸漬塗布する方式や、内周面に塗布する方式や更に遠心する方式、或いは注形型に充填する方式などの適宜な方式でリング状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベル卜状に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する方法などの方法により行うことができる(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)。シームレスベルトの製造に際しては、型の離型処理や脱泡処理などの適宜な処理を施すことができる。
【0189】
[2次転写手段]
2次転写手段109は、中間転写体108上のトナー像を一括して、あるいは中間転写体108を用いない場合は電子写真感光体1a〜1d上のトナーを順次、紙などの画像出力媒体112に2次転写する部分である。
【0190】
2次転写手段109としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、例えば、1次転写手段104a〜104dとして例示した接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器、コロトロン転写帯電器などが挙げられる。これらの中でも、1次転写手段104a〜104dと同様に接触型転写帯電器が好ましい。また、2次転写時に、2次転写手段109から中間転写体108に付与される転写電流には、通常直流電流が使用されるが、本発明においては更に交流電流を重畳させて使用してもよい。2次転写手段109における設定条件としては、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、2次転写電流としては+100〜+400μA、2次転写電圧としては+2000〜+5000Vと設定することができる。
【0191】
[その他の構成要素]
カラー画像形成装置101のその他の構成要素としては、電子写真感光体1a〜1dに対して光除電を行う光除電手段(図示せず)、画像出力媒体112に2次転写したトナー像を定着する定着ロール110、電子写真感光体1a〜1dをクリーニングする電子写真感光体クリーナ106、中間転写体108をクリーニングするクリーニングブレード(図示せず)などが挙げられる。
【0192】
光除電手段としては、例えば、タングステンランプ、LEDなどが挙げられ、光除電手段において用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光などが挙げられる。光除電手段において使用される照射光強度としては、通常、電子写真感光体1a〜1dの半減露光感度を示す光量の数倍〜30倍程度になるように出力設定される。
【0193】
定着ロール110としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ロール定着器、オーブン定着器などが挙げられる。
【0194】
図9は本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す概略図である。
【0195】
図9に示すカラー画像形成装置201は中間転写体を含まないカラー画像形成装置であり、図4に示すカラー画像形成装置と同様に、4つのドラム状の電子写真感光体2a〜2d(例えば、電子写真感光体2aがイエロー、電子写真感光体2bがマゼンタ、電子写真感光体2cがシアン、電子写真感光体2dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が用紙搬送用ベルト206に沿って相互に並列に配置されている。
【0196】
ここで、カラー画像形成装置201に搭載されている電子写真感光体2a〜2dはそれぞれ上述した電子写真感光体1で構成されている。
【0197】
そして、電子写真感光体2a〜2dのそれぞれは所定の方向(紙面上は時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転可能であり、その回転方向に沿ってスコロトロン帯電器(202a〜202d)、像露光手段(203a〜203d)、反転現像手段(204a〜204d)、転写帯電器(211a〜211d)、電子写真感光体クリーナー(205a〜205d)が配置されている。
【0198】
像露光手段203a〜203d、反転現像手段204a〜204d、転写帯電器211a〜211d、電子写真感光体クリーナー205a〜205dとしては、図4に示すカラー画像形成装置における像露光手段107、反転現像手段102a〜102d、1次転写手段104a〜104dと同様なものを使用することができる。また、カラー画像形成装置201においては、電子写真感光体2a〜2dの表面を帯電させる手段として、スコロトロン帯電器202a〜202dを使用する。反転現像手段204a〜204dのそれぞれにはトナーカートリッジ(図示せず)に収容されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーが供給可能であり、また、転写帯電器211a〜211dはそれぞれ用紙搬送用ベルト206を介して電子写真感光体2a〜2dに当接している。
【0199】
なお、反転現像手段204a〜204dは、図9ではY、M、C、Kのトナー色の順に配置されているが、これは、例えば、M、Y、C、Kなどシステムの画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
【0200】
これにより、図4におけるカラー画像形成装置101と同様にして、電子写真感光体2a〜2dの回転工程において帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程が順次行われる。
【0201】
用紙搬送用ベルト106はロール207、208、209、210により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく電子写真感光体2a〜2dと同じ周速度で回転可能となっている。
【0202】
また、カラー画像形成装置201内の所定の位置にはトレイ(画像出力媒体トレイ)213が設けられており、トレイ213内の紙などの画像出力媒体212が電子写真感光体2a〜2dと転写帯電器211a〜211dとの間、さらには相互に2つのロールが当接する定着器215の間に順次移送された後、カラー画像形成装置201の外部に排紙される。これにより、画像出力媒体112上に電子写真感光体2a〜2dに形成されたトナー像を順次転写することによってカラー画像が形成され、そのカラー画像が定着される。
【0203】
このようなカラー画像形成装置201においては、異なる色のトナー像が画像出力媒体212に重畳転写され、カラートナー像が形成される。そして、このカラートナー像は、定着ロール215により画像出力媒体212に定着されてラー画像とされる。
【0204】
このカラー画像の形成時においては、各電子写真感光体2a〜2dにおいて、電荷発生材料として正孔輸送性が高いガリウムフタロシアニンが用いられることにより電子写真感光体2a〜2dの光感度が高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。このため、カラー画像形成装置201によれば、電子写真感光体2a〜2dにおいて温度変化や湿度変化による光感度の変化が十分に防止される。
【0205】
このため、温度や湿度等が変化する環境においてカラー画像を繰り返し形成しても、色ムラの発生を十分に防止することができる。即ちカラー画像形成装置201は、画像の繰り返し安定性に優れ、多数枚のカラー画像を連続して出力しても、安定した画質の画像を形成することができる。従って、このカラー画像形成措置201は、軽印刷の用途にも十分に使用可能である。
【0206】
またカラー画像形成装置201においては、解像度を十分に高くし得る電子写真感光体2a〜2dが使用されているため、カラー画像形成装置201により、極めて画質の高いカラー画像を形成することができる。
【0207】
更に、カラー画像形成装置201によれば、カラー画像を繰り返し形成しても、1つの電子写真感光体を有するカラー画像形成装置と比較して暗減衰による色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0208】
なお、カラー画像形成装置201の解像度は1200dpi以上に設定しても良い。カラー画像形成装置201は、解像度を十分に向上させることができ且つ環境安定性に優れた電子写真感光体1a〜1dを備えているため、温度や湿度等が変化する環境下で、1200dpi以上の解像度に設定されてカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0209】
カラー画像形成装置201の解像度は2000dpi以上に設定しても良い。この場合、温度や湿度等が変化する環境下で、2000dpi以上の解像度に設定されてカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0210】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0211】
(実施例1)
酸化亜鉛(MZ300:テイカ社製:比表面積値30m2/g)60重量部と硬化剤 (ブロック化イソシアネート スミジュール3175:住友バイエルンウレタン社製) 15重量部とブチラール樹脂 BM−1 (積水化学社製)15重量部をメチルエチルケトン85重量部に溶解した溶液38重量部とメチルエチルケトン25重量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005重量部、シリコーンオイルSH29PA(東レダウコーニングシリコーン社製)0.01重量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mmΦ、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、20分の乾燥硬化を行い厚さ5μmの下引層を得た。
【0212】
電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°, 25.1°,28.1°において明瞭な回折ピークが得られるヒドロキシガリウムフタロシアニン3重量部、電子輸送材料として3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノン40重量部、正孔輸送材料としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン80重量部、バインダー樹脂として、ビスフェノールZタイプのポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000) 150重量部、さらに4フッ化エチレン樹脂粒子10重量部を加えテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミル中で24時間分散あるいは溶解させ、単層型感光層形成用塗布液を調合した。そして、この塗布液を、下引き層付きのアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、110℃、30分間の熱風乾燥を行い、膜厚25μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を作製した。
【0213】
一方、以下のようにして、中間転写体として、基材、弾性層及び表面層からなる3層構成ベルトを作製した。
【0214】
基材は次のようにして作製した。まず3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)とからなるポリアミド酸のN−メチル−2ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産製ユーワニスS(固形分18wt%)に、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%))をポリイミド樹脂固形分100質量部に対して15質量部添加して、ボールミルで6時間室温で混合し、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得た。次いで、このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に、厚さが0.3mmとなるように塗布し、円筒状金型を1500rpmで15分間回転させて金型内面に、均一な厚みを有する展開層を得た。続いて、金型を250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間あてた後、上記展開層を、150℃で60分間加熱し、常温に冷却した後、金型より剥離した。次いで、剥離した展開層を、鉄芯の外側に被覆し、更に400℃で1時間加熱して、溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行った。その後室温に戻して鉄芯から剥離した。こうして、厚さ0.05mmの半導電性のベルト状基材を得た。このベルト状基材について体積抵抗率およびヤング率を測定したところ、体積抵抗率は3×1010Ωcmであり、ヤング率は6000MPaであった。
【0215】
一方、弾性層は次のようにして作製した。まずNBRとEPDMを重量比で4:6にブレンドしたゴム材料(NE40;日本合成ゴム(株)製)100重量部に対してアセチレンブラック(前記粒状アセチレンブラック)を7重量部およびサーマルブラック(前記アサヒサーマルFT)を20重量部の割合で配合し、この配合物を3本ロールで混練した。こうして得られた混練物をキャレンダーロールにてシート状に加工し、厚さ0.2mmのシート状弾性層を得た。このシート状弾性層をベルト状基材上に圧接し、圧力5.5kg/cm2の加圧下に温度150℃で60分間加熱して弾性層を加硫し、2層構成のベルトを得た。こうして得られた弾性層について、硬度及び体積抵抗率を測定したところ、硬度はJISA硬度で70度、体積抵抗率は5×1010Ωcmであった。
【0216】
そして、上記2層構成のベルトのうち弾性層の表面上に、フッ素化カーボンを添加してなるフッ素樹脂系導電性塗料(NF−7035−A、ダイキン工業(株)製)を厚さが20μmとなるように塗布し150℃で10分加熱して2層構成ベルトの外側に表面層を形成した。こうして基材、弾性層及び表面層からなる3層構成ベルトを得た。このとき、得られた表面層について体積抵抗率、表面微小硬度および摩擦係数を測定したところ、表面層の体積抵抗率は1×1011Ωcmであり、表面微小硬度は4であり、摩擦係数は0.4であった。
【0217】
他方、カラー画像形成装置として、富士ゼロックス製カラードキュテック60を用意し、この画像形成装置の帯電器を正帯電のスコロトロン帯電器と交換し、現像剤を正帯電用の現像剤と交換した。また、このカラー画像形成装置の中間転写体を、上記3層構成ベルトに交換した。
【0218】
そして、この画像形成装置の感光体を、上記感光体に交換し、暗部電位(VH )が+650Vになるように帯電器の条件を調整した後、露光部電位(VL )が300Vになるように露光量を調整した。そして、カラー画像形成装置において露光装置のビーム径を変更することによりカラー画像の解像度を1200dpiに設定し、プロセススピードを264mm/secに設定して、10000枚のカラー画像を形成した。
【0219】
(実施例2)
4部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)を溶解したn−ブチルアルコール170部、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30部及び有機シラン化合物の混合物(γ−アミノプロピルトリエトキシシシラン)3部を混合し、攪拌し、下引層形成用塗布液を得た。この下引層形成用塗布液を、鏡面切削した直径84mmφのアルミニウム製(JIS1050)の前記導電性基体上に塗布し、室温で5分間風乾を行った後、50℃で7分間の導電性基体の昇温を行い、50℃で85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れ、10分間、加湿硬化促進処理を行った後、熱風乾燥機に入れて135℃で10分間乾燥を行った。以上により、導電性基体上に下引層を形成した。
【0220】
電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン3重量部、電子輸送材料としてブドキシカルボニル−フルオレニデン−マロノニトリル40重量部、正孔輸送剤としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン80重量部、バインダー樹脂として、ビスフェノールZタイプのポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000) 150重量部、をテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミル中で24時間分散あるいは溶解させ、単層型感光層形成用塗布液を調合した。そして、この塗布液を、下引き層付きのアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、110℃、30分間の熱風乾燥を行い、膜厚25μmの単層構造の感光層を有する電子写真感光体を作製した。
【0221】
また、さらに感光層上に電荷注入阻止補助層を形成した。電荷注入阻止補助層の形成は、有機ジルコニウム化合物(松本製薬製ZA60)80重量部、シランカップリング剤(信越シリコーン製KBM503)20重量部をブタノールに溶解し、膜厚0.05μmの塗膜を形成することにより行った。
【0222】
さらに、以下のようにして、低抵抗表面保護層を形成した。即ち酸化スズ粉末(三菱マテリアル製S1)45重量部、ポリエステル樹脂(関西ペイント製レタンクリアー)48重量部をボールミルで24時間分散したのち硬化剤7重量部を加えた組成物を塗布形成した後、135℃、60分で乾燥硬化し、2μmの保護層を得た。
【0223】
そして、電子写真感光体として、上記のようにして作製した電子写真感光体を用いた以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
【0224】
(実施例3)
直径84mmΦのアルミニウム支持体表面の鏡面研磨仕上げを行い、脱脂洗浄、水洗浄を行った後、液温10℃、硫酸15vol%の電解浴に浸し、電解電圧15Vにて30分間陽極酸化皮膜処理を行った。更に、水洗浄を行った後、7%の酢酸ニッケル水溶液(50℃)にて封孔処理を行った。その後純水によるこすり洗浄を経て7μmの陽極酸化皮膜が形成された導電性基体を得た。この陽極酸化膜のバリア層膜厚は150Åであった。
【0225】
電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°, 25.1°,28.1°において明瞭な回折ピークが得られるヒドロキシガリウムフタロシアニン3重量部、電子輸送材料として3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノン40重量部、正孔輸送剤としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン80重量部、バインダー樹脂として、ビスフェノールZタイプのポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)150重量部、さらにテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミル中で24時間分散あるいは溶解させ、単層型感光層形成用塗布液を調合した。そして、この塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、110℃、30分間の熱風乾燥を行い、膜厚25μmの単層構造の感光層を形成した。
【0226】
次に下記式(4)に示す化合物2部、及び下記式(5)に示す化合物2部をイソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部、蒸留水3部に溶解させ、イオン交換樹脂(0.5部)を加え室温で24時間加水分解させてから、イオン交換樹脂をろ過分離後、アルミニウムトリスアセチルアセトナートを0.1部、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)を0.4部加えてコーティング液を生成した。このコーティング液を感光層上に塗布し、その後150℃で1時間の乾燥を行うことにより厚さ3μmの保護層を得た。こうして電子写真感光体を作製した。
【化17】
【化18】
【0227】
そして、電子写真感光体として、上記のようにして作製した電子写真感光体を用いた以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
【0228】
(実施例4)
実施例3と全く同様にして、陽極酸化皮膜が形成された導電性基体を得た後、単層型感光層を形成した。
【0229】
さらに実施例2と全く同様にして、感光層上に電荷注入阻止補助層を形成した。さらに、以下のようにして、低抵抗表面保護層を形成した。即ち酸化スズ粉末(三菱マテリアル製S1)45重量部、ポリエステル樹脂(関西ペイント性レタンクリアー)48重量部をボールミルで24時間分散したのちレタンシンナーを追加し、硬化剤7重量部を加えた組成物をスプレー塗布により形成し、135℃、60分で乾燥硬化した2μmの保護層を得た。こうして電子写真感光体を作製した。
【0230】
そして、電子写真感光体として、上記のようにして作製した電子写真感光体を用いた以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
【0231】
(比較例1)
直径84mmφ、長さ340mmの鏡面アルミニウムパイプ(JIS1050)を用意し、4部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)を溶解したn−ブチルアルコール170部、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30部及び有機シラン化合物の混合物(γ−アミノプロピルトリエトキシシシラン)3部を混合し、攪拌し、下引層形成用塗布液を得た。この下引層形成用塗布液を、ホーニング処理により粗面化された直径84mmφのアルミニウム製の導電性基体上に塗布し、室温で5分間風乾を行った後、50℃で7分間の導電性基体の昇温を行い、50℃で85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れ、10分間、加湿硬化促進処理を行った後、熱風乾燥機に入れて135℃で10分間乾燥を行った。以上により、導電性基体上に下引層を形成した。
【0232】
次に、電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも9.7°, 24.2°,27.3°において明瞭な回折ピークが得られるオキシチタニウムフタロシアニン3重量部を用いたこと以外は実施例3と同様にして単層型感光層を形成した。
【0233】
一方、以下のようにして、中間転写体としての半導電性ベルトを作製した。
即ち、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%))に代えて、アセチレンブラック(電気化学工業社製pH5.7、揮発分0.89%)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.08mmの基材を作製し、これを中間転写体とした。この中間転写体について、表面微小硬度、摩擦係数、体積抵抗率及びヤング率を測定したところ、表面微小硬度はJISA硬度で40度であり、摩擦係数は0.5であり、体積抵抗率は2×1010Ωcmであり、ヤング率は6000MPaであった。
【0234】
そして、電子写真感光体として、上記のようにして作製した電子写真感光体を用い、中間転写体として、上記のようにして作製した中間転写体を用い且つカラー画像形成装置の解像度を600dpiとした以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
(実施例5)
中間転写体として、比較例1のものを用いた以外は実施例1と全く同様にしてカラー画像を形成した。
【0235】
(比較例2)
電子写真感光体として、比較例1の電子写真感光体を用いた以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
【0236】
(画像評価)
実施例1〜5及び比較例1〜2に係るカラー画像形成装置で得られたカラー画像について、次のようにして、初期の画像濃度(1枚印字後の画像濃度)、10000枚印字後の画像濃度、画像解像度の実測値及び転写効率を測定した。結果を表1に示す。ここで、画像濃度については、初期濃度を1.4に設定した画像濃度測定用チャート紙の該当部分を読み取ることにより測定した。また画像解像度は、光学顕微鏡を用いて実測した。更に転写効率は、トナー量を粘着テープに転写して重量を計測することによって、転写前のトナー量(A)と残トナー量(B)を計測し、下記式:
転写効率(%)={(A−B)/A}×100)
に基づいて転写効率を算出した。
【0237】
また初期の画像濃度と10000枚印字後の画像濃度との差を濃度むらとして、以下の基準によりカラー画像の評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1の濃度むらの項目において、括弧中に濃度差を併記した。
○・・・濃度差が0.1未満
△・・・濃度差が0.1以上0.3未満
×・・・濃度差が0.3以上
【0238】
更に、得られたカラー画像(1枚目のカラー画像)について、目視でかぶりを確認し、かぶりの程度については、以下の基準により評価を行った。結果を表1に示す。
○・・・かぶりが確認されず
△・・・実用上問題はないが、ややかぶりが確認された
×・・・実用上問題あり
【表1】
【0239】
表1に示す結果より、実施例1〜4によれば、濃度むらが小さく、かぶりもほとんど確認されないことから、本発明のカラー画像形成装置により、繰り返しカラー画像を形成しても画像再現性が極めて高く色ムラの発生が十分に防止できることが分かった。これに対し、表1に示す結果より、比較例1〜2によれば、濃度むらが大きく、かぶりが実用上使用できない程度に現れていることから、繰り返しカラー画像を形成した場合には、画像再現性が十分でなく、色ムラの発生も十分に防止できないことが分かった。
【0240】
また、表1に示すように、実施例1〜4によれば、カラー画像形成装置の画像解像度を高く設定して1200dpiとし、、カラー画像を10000枚連続して出力しても、画像の再現性が極めて良好であった。これに対し、比較例1〜2の結果によれば、カラー画像形成装置の画像解像度を低く設定して600dpiとしても、カラー画像を10000枚連続して出力した場合、画像再現性が十分でないことが分かった。
【0241】
更に、表1に示す結果より、実施例1の方が、実施例5の場合よりも転写効率が高くなることが分かった。これより、中間転写体として、フッ素系樹脂材料を含む表面層を備えた中間転写体を用いる方が、表面層を有しない中間転写体を用いる場合に比べて転写効率に優れることが分かった。
【0242】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、単層構造で且つガリウムフタロシアニンを含有する感光層を備えるため、カラー画像を繰り返し形成する場合であっても色ムラの発生を十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の一実施形態を概略的に示す部分断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の他の実施形態を概略的に示す部分断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の他の実施形態を概略的に示す部分断面図である。
【図4】本発明のカラー画像形成装置の好適実施形態を示す概略図である。
【図5】中間転写体に圧子を差し込んでいる状態を示す概略図である。
【図6】中間転写体の一例を示す部分側面図である。
【図7】摩擦係数を測定する摩擦係数測定器の一例を示す概略図である。
【図8】(a)は表面層の体積抵抗率を測定する装置であるハイレスターIPの平面図、(b)は、(a)の縦断面図である。
【図9】本発明のカラー画像形成装置の他の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1,1a〜1d,2a〜2d…電子写真感光体、2…導電性基体、3…感光層、5…表面保護層、108…中間転写体、112,212…画像出力媒体。
【0001】
本発明は、電子写真感光体及びこれを用いたカラー画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体を用いたカラー画像形成技術は、近年における高感度でかつ耐久性の高い電子写真感光体の実用化により、印刷業界等の高画質の画像形成技術が要求される市場においても広く利用されるようになっている。このような画像形成技術を適用したカラー画像形成装置の一例として、下記特許文献1に記載のものが知られている。同文献には、電子写真感光体を複数有するいわゆるタンデム型カラー画像形成装置が開示され、この電子写真感光体においては、アルミニウム等の導電性基体の外周面上にチタニルフタロシアニン等の電荷発生物質を含有する単層型感光層が形成されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−330975号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の画像形成装置においては、以下のような問題が生じていた。すなわち、上述したチタニルフタロシアニンが用いられた電子写真感光体の特性は使用環境により大きく変化するため、湿度や気温が変化した場合に電子写真感光体上に形成されたトナー像に濃度ムラが発生しやすいという問題があった。その結果、この電子写真感光体を複数用いたカラー画像形成装置によりカラー画像を繰り返し形成した場合に、カラー画像に色ムラが生じるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、カラー画像を繰り返し形成する場合であっても色ムラの発生を十分に防止することが可能な電子写真感光体及びカラー画像形成装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に単層型の感光層が形成された電子写真感光体であって、感光層がガリウムフタロシアニンを含有することを特徴とする。
【0007】
本発明の電子写真感光体によれば、感光層においてガリウムフタロシアニンの正孔輸送性が高いことにより光感度が高くなるとともに、ガリウムフタロシアニンの環境特性が極めて安定であることにより、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。また、感光層が単層構造であることにより、光励起により正孔が発生しその正孔が表面に向けて移動しても、同極性の移動電荷との反発が十分に防止され、感光体における解像度を十分に高くすることができる。
【0008】
上記ガリウムフタロシアニンは、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°、10.0°、25.2°、28.0°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、又はブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.3°、16.5°、25.4°、28.1°に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニンであることが好ましい。この場合、温度や湿度等が変化する環境においても、感光体の光感度の変化がより十分に防止されるため、この感光体をカラー画像形成装置の感光体として使用し、現像するときに感光体表面にトナー像を形成しても、濃度ムラの発生をより十分に防止することができる。
【0009】
上記感光層上には、表面保護層がさらに形成されていることが好ましい。この場合、感光層を表面保護層で保護することにより電子写真感光体表面の耐摩耗性を向上させたり、感光体の帯電時における感光層の化学変化を防止することができる。
【0010】
ここで、表面保護層は電荷輸送材料を含有することが好ましい。この場合、感光層上に表面保護層が形成された場合であっても表面保護層における電荷の蓄積が防止され、電子写真感光体の感度を維持することができる。
【0011】
上記表面保護層は抵抗制御用微粒子を含有することが好ましい。この場合、感光層上に表面保護層が形成された場合であっても表面保護層における電荷の蓄積を防止され、電子写真感光体の感度を維持することができる。
【0012】
また、本発明のカラー画像形成装置は、上述した電子写真感光体を複数有し、電子写真感光体に形成される像を画像出力媒体に転写してカラー画像を形成することを特徴とする。本発明のカラー画像形成装置によれば、本発明の電子写真感光体において温度変化や湿度変化による光感度の変化が十分に防止されるため、温度や湿度等が変化する環境においてカラー画像を繰り返し形成しても、色ムラの発生を十分に防止することができる。また、本発明の電子写真感光体において解像度を十分に高くすることができるため、極めて画質の高いカラー画像を形成することができる。また、本発明の電子写真感光体を複数有するカラー画像形成装置によってカラー画像を繰り返し形成しても、1つの電子写真感光体を有するカラー画像形成装置と比較して暗減衰による色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0013】
上記カラー画像形成装置の解像度は、1200dpi以上であってもよい。温度や湿度等が変化する環境下で、1200dpi以上の解像度を有するカラー画像形成装置によりカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、本発明のカラー画像形成装置は、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0014】
上記カラー画像形成装置の解像度は、2000dpi以上であってもよい。温度や湿度等が変化する環境下で、2000dpi以上の解像度を有するカラー画像形成装置によりカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、本発明のカラー画像形成装置は、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0015】
上記カラー画像形成装置は、電子写真感光体から転写されるトナー像を画像出力媒体に転写する中間転写体を更に有することが好ましい。この場合、装置内の部品配置の自由度が大きくなるという利点を有する。
【0016】
上記中間転写体は、樹脂組成物で構成される表面層を有し、樹脂組成物がフッ素系樹脂材料を含むことが好ましい。上記フッ素系樹脂材料は、摩擦帯電列において極性がマイナス側にある。このため、中間転写体の表面層上のマイナス電荷をもったトナーをプラスに帯電させ、逆極性のトナー、即ちマイナス電荷をもったトナーを減少させることができる。従って、逆極性のトナーの転写時における飛散が十分に防止され、中間転写体から画像出力媒体に転写する時の転写効率の低下を十分に防止することができる。よって、高品質のカラー画像を安定して得ることができる。
【0017】
上記樹脂組成物中には、導電剤として、フッ素化カーボンが分散されていることが好ましい。フッ素化カーボンは、フッ素系樹脂材料との密着性に優れており、且つフッ素系樹脂中に均一に分散させることができる。このため、表面層を、抵抗バラツキの少ない、経時的安定性に優れたものとすることができる。
【0018】
本発明のカラー画像形成装置においては、上記電子写真感光体が、導電性基体と感光層との間に、金属酸化物微粒子を分散した硬化膜層からなる下引層を更に有することが好ましい。この場合、下引き層の抵抗値が適度に調整され、残留電荷の蓄積が防止される。また硬化膜中に金属酸化物微粒子を分散した塗膜を下引層にすることによって、上層の電荷発生層や電荷輸送層塗布形成時に下引層が溶解したり、分散物が溶剤により凝集を引き起こし塗膜の変形を生じることがなくなる。
【0019】
本発明のカラー画像形成装置においては、導電性基体が、導電性基材の表面を陽極酸化してなることが好ましい。この場合、導電性基体の表面層が、陽極酸化膜であり、この陽極酸化膜は、高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この導電性基体を用いた電子写真感光体をカラー画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止することができるとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象を防止することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
(電子写真感光体及びその製造方法)図1〜3はそれぞれ本発明の電子写真感光体の一実施形態を概略的に示す部分断面図であり、電子写真感光体1を基体2及び感光層3の積層方向に沿った平面で切断したものである。図1〜3に示した電子写真感光体1はいずれもいわゆる単層型感光体であり、各感光体には電荷発生機能と電荷輸送機能を併せ持つ感光層3が設けられている。
【0021】
より詳しくは、図1に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に感光層3が設けられており、図2に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に下引層4、感光層3がこの順で積層されて構成されており、図3に示した電子写真感光体1においては、導電性基体2上に下引層4、感光層3、表面保護層5がこの順で積層されて構成されている。
【0022】
以下、電子写真感光体1の各構成要素について詳述する。
【0023】
導電性基体2としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。また、導電性基体2の形状は、ドラム状、シート状、プレート状のいずれであってもよい。
【0024】
また、導電性基体2として金属製パイプ基体を用いる場合、当該パイプ基体の表面は素管のままのものであってもよいが、予め表面処理により基体表面を粗面化しておくことも可能である。かかる粗面化により、露光光源としてレーザービーム等の可干渉光源を用いた場合に、感光体内部で発生し得る干渉光による木目状の濃度ムラを防止することができる。表面処理としては、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング等が挙げられる。
【0025】
特に、感光層との密着性向上や成膜性向上の点で、以下のようにアルミニウム基体の表面に陽極酸化処理を施したものがよく用いられる。
【0026】
以下、陽極酸化処理が施された導電性基体2の製造方法について説明する。
【0027】
まず、基体として純アルミ系あるいはアルミニウム合金(例えば、JIS1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金)で構成される導電基材を用意する。次にこの導電基材に対し陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行うが、硫酸浴による処理がよく用いられる。陽極酸化処理は、例えば、硫酸濃度:10〜20%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm2、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の条件で行われるが、これに限定するものではない。
【0028】
このようにして成膜された基体の表面層である陽極酸化皮膜は、多孔質であり、又絶縁性が高く、表面が非常に不安定であるため、作製後の経時変化が存在し陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすくなっている。この物性値の変化を防止するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが行われる。封孔処理の方法には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。これらの方法のうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最もよく用いられる。
【0029】
このようにして封孔処理が行われた陽極酸化皮膜の表面には、封孔処理により付着した金属塩等が過剰に残留している。このような金属塩等が基体の陽極酸化皮膜上に過剰に残存すると、陽極酸化皮膜上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまう傾向にあるため、この基体を電子写真感光体に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生原因になる。
【0030】
そこで、封孔処理に引き続き、封孔処理により付着した金属塩等を除去するために陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。洗浄処理は純水により基体の洗浄を1回行うことでも構わないが、多段階の洗浄工程により基体の洗浄を行うのが好ましい。この際、最終の洗浄工程における洗浄液としては、可能な限りきれいな(脱イオンされた)ものが用いられる。また、多段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことがよりさらに好ましい。
【0031】
以上のようにして形成される基体上の陽極酸化皮膜の膜厚は、3〜15μm程度とする。多孔質陽極酸化皮膜の多孔質形状の極表面に沿ってバリア層といわれる層が存在する。バリア層の膜厚は本実施形態にかかる電子写真感光体1においては10〜1000Åとする。
【0032】
以上のようにして、陽極酸化処理された導電性基体2が得られる。
【0033】
このように得られた導電性基体2において、陽極酸化処理により基体の表面層として形成された陽極酸化皮膜は高いキャリアブロッキング性を有している。そのため、この導電性基体2を用いた電子写真感光体を画像形成装置に装着して反転現像(ネガ・ポジ現像)を行う場合に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止することができるとともに、接触帯電時に生じやすい接触帯電器からの電流リーク現象を防止することができる。また、陽極酸化皮膜に封孔処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の作成後における物性値の経時変化を防止することができる。また、封孔処理後に基体の洗浄を行うことにより、封孔処理により基体表面に付着した金属塩等を除去することができ、この導電性基体2を電子写真感光体に用いて画像を形成した場合に地汚れの発生を十分に防止することができる。
【0034】
次に、下引層4について説明する。
【0035】
下引層4を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。 これらの中でも、ジルコニウムもしくはもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため好ましく使用される。また、有機金属化合物は単独・混合で、或いは上述の結着樹脂と混合して用いることが可能である。
【0036】
有機シリコン化合物(シリコン原子を含有する有機金属化合物)としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が好ましく使用される。
【0037】
有機ジルコニウム化合物(ジルコニウムを含有する有機金属化合物)としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0038】
有機チタン化合物(チタンを含有する有機金属化合物)としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0039】
有機アルミニウム化合物(アルミニウムを含有する有機金属化合物)としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0040】
また、下引層4を形成するための下引き層形成用塗布液に用いる溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。また、これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することができる。
【0041】
下引層4の形成は、まず、下引層用塗布剤および溶剤を分散及び混合して調合された下引層形成用塗布液を用意し、導電性基体2に塗布することにより行う。下引層形成用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。下引層4を形成する場合には、膜厚は0.1〜3μmとなるように形成する。このような膜厚とすることにより、電気的な障壁を過剰に強くすることなく減感及び繰り返しによる電位の上昇を防止することができる。
【0042】
このようにして導電性基体2上に下引層4を形成することにより、上層塗布時の濡れ性の改善を図ることができるとともに、電気的なブロキング層としての機能を十分に果たすことができる。
上記により形成された下引層4の表面粗さは、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)倍(nは上層の屈折率)〜1倍程度の粗度を有するように調整することが好ましい。表面粗さの調整は、下引層形成用塗布液中に樹脂粒子を添加することにより行われる。これにより電子写真感光体1をカラー画像形成装置に用いた場合に、レーザ光源による干渉縞像を十分に防止することができる。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。また、表面粗さの調整のために下引層を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることができる。なお、正帯電構成のカラー画像形成装置における電子写真感光体1では、レーザ入射光は極表面近傍で吸収され、さらに感光層3中で散乱されるため、表面粗さの調整を施さなくとも良い。
【0043】
また、下引層形成用塗布液に、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を加えることも好ましい。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0044】
ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
ジルコニウムキレート化合物の具体例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0046】
チタニウムキレート化合物の具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0047】
アルミニウムキレート化合物の具体例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0048】
これらの添加物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
【0049】
また、上述した下引層形成用塗布液には、少なくとも1種の電子受容性物質を含有せしめることが好ましい。本発明の電子写真感光体1に使用可能な電子受容性物質の具体例としては、無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が電子輸送性向上の点でより好ましく用いられる。これにより、感光層2における光感度の向上や残留電位の低減を図るとともに、繰り返し使用した場合の光感度の疲労を低減することができ、電子写真感光体1をカラー画像形成装置に用いて形成したトナー像の濃度ムラを十分に防止することができる。
【0050】
また、上述した下引層用塗布剤の代わりに下記のような分散型下引層用塗布剤を用いることも好ましい。これにより、適度に塗膜の抵抗値を調整することにより残留電荷の蓄積を防ぐことができるとともに、より大きな膜厚を持つことで感光体の耐リーク性、とくに接触帯電時のリークの防止を図ることができる。
【0051】
この分散型下引層用塗布剤としては、アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの金属粉体や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末などの導電性物質等を結着樹脂に分散したものが挙げられる。導電性金属酸化物としては、粒径が平均粒子径0.5μm以下の金属酸化物微粒子が好ましく用いられる。これ以上粒径が大きすぎると局部的な導電路形成を起こしやすく、電流のリークが発生しやすいため、かぶりの発生や帯電器からの大電流のリークの原因となってしまう。ここでいう粒径とは、平均1次粒径を意味する。下引層4はリーク耐性の向上のために適切な抵抗を得ることが必要であり、そのため金属酸化物微粒子が1×102〜1×1011Ω・cm程度の粉体抵抗を有することが好ましい。なお、上記範囲の下限よりも金属酸化物微粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こす傾向にある。従って、中でも上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子がより好ましく用いられる。また、金属酸化物微粒子は2種以上混合して用いることもできる。さらに、金属酸化物微粒子にカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体の抵抗を制御することができる。この際使用可能なカップリング剤としては上述の下引層形成用塗布液と同様の材料を用いることができる。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0052】
この金属酸化物微粒子の表面処理においては、公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
【0053】
乾式法を用いる場合においては、まず、金属酸化物微粒子を加熱乾燥して表面吸着水を除去する。表面吸着水を除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。次に、金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。カップリング剤を添下あるいは噴霧する際には、50℃以上の温度で行われることが好ましい。カップリング剤を添加あるいは噴霧した後、カップリング剤を硬化させ金属酸化物微粒子と堅固な化学反応を起こさせるため、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。焼き付けは、所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
【0054】
湿式法を用いる場合においては、乾式法と同様に、まず、金属酸化物微粒子の表面吸着水を除去する。この表面吸着水を除去する方法として、乾式法と同様の加熱乾燥の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が実施できる。次に、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
【0055】
金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であることが必須である。電子写真特性は表面処理処理後に金属酸化物微粒子に表面処理剤が付着している量によって影響される。シランカップリング剤の場合、その付着量は蛍光X線分析におけるSi強度と使用されている金属酸化物の主たる金属元素強度から求められる。この蛍光X線分析におけるSi強度は用いられる金属酸化物の主たる金属元素強度の1.0×10−5〜1.0×10−3倍の範囲であることが好ましい。この範囲を下回った場合、かぶりなどの画質欠陥が発生しやすく、この範囲を上回った場合残留電位の上昇による濃度低下が発生しやすい。
【0056】
分散型下引層用塗布剤に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂であるフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。このような樹脂中に上記金属酸化物微粒子が分散されていると、下引き層の抵抗値が適度に調製され、残留電荷の蓄積が十分に防止される。また上層の塗布溶剤に不溶な樹脂であるフェノール樹脂等に金属酸化物微粒子を分散したものを下引層にすることによって、上層の電荷発生層や電荷輸送層塗布形成時に下引層が溶解したり、分散物が溶剤により凝集を引き起こし塗膜の変形を生じることがなくなる。なお、上記のような樹脂によって、硬化膜を構成する樹脂が構成されている。分散型下引層形成用塗布液中の金属酸化物微粒子と結着樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0057】
上述した方法により表面処理された金属酸化物微粒子を結着樹脂に分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が用いた方法が挙げられる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0058】
この分散型下引層用塗布剤により下引層4を形成する方法は、上述した下引層4を形成する方法と同様に行う。
【0059】
次に、感光層3について説明する。
【0060】
本実施形態に係る電子写真感光体1における感光層3は、電荷発生機能と電荷輸送機能を併せ持つ単層型の感光層である。
【0061】
感光層3を形成するため結着樹脂として用いられる材料としては、ビスフェノールZやビスフェノールA、ビスフェノールCなどのビスフェノール類を骨格とする各種ポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0062】
ポリカーボネート樹脂としては、上述の構造のものを含めて各種の変性体を用いることが可能である。特に下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。式中、Aは、−CR11R12−、アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、又は−SO2−を表し、R11〜R110及びR21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は環状炭化水素基を表す。R11とR12とは、互いに結合して環状炭化水素基を形成してもよい。前記Aで表されるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
【化1】
【0063】
前記R11〜R110で表されるアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素原子数1〜12の直鎖状のアルキル基、及び炭素原子数3〜12の分岐状のアルキル基が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
【0064】
前記R11〜R110で表される環状炭化水素基は、置換基を有していてもよく、炭素原子数3〜10の環状炭化水素基が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0065】
また、ポリカーボネート樹脂は、これらの成分が複数個合わさった共重合体構造を有していても構わない。
【0066】
また、上述した結着樹脂は単独、あるいは2種以上をブレンドまたは共重合して使用できる。結着樹脂の粘度平均分子量は5,000〜200,000、好ましくは15,000〜100,000の粘度平均分子量のものが用いられる。分子量が低すぎると感光層の機械的強度が弱くなり磨耗ライフが短くなり、分子量が高すぎると塗液の粘度が高くなりすぎて良好な塗膜を形成するための塗布液が得られない。
【0067】
感光層3を形成するため電荷発生材料としては、ガリウムフタロシアニンが用いられる。単層型感光層の電子写真感光体1をカラー型画像形成装置において露光する場合には、電子写真感光体1の表面で光励起されたキャリアのうち正孔が感光層中を移動して導電性基体2まで到達し光減衰が行われることになる。従って、電荷発生材料として正孔輸送性が高いガリウムフタロシアニンを用いることにより電子写真感光体1の光感度が高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、ガリウムフタロシアニンが好適に使用される。
【0068】
なお、電荷発生材料としては、オキシチタニウムフタロシアニンも広く知られているが、オキシチタニウムフタロシアニンは顔料中に水分を含有することにより高い光感度を発現することが示されており、ガリウムフタロシアニンに比べて、使用する環境による影響がより大きい。単層型の感光層3においては、顔料の含有量が積層型感光層に比べて多くなるため、オキシチタニウムフタロシアニンに比して環境依存度が極めて小さいガリウムフタロシアニンを電荷発生材料として使用することにより、電子写真感光体1により、一層安定した電気特性や画質を維持することが可能となる。
【0069】
上記ガリウムフタロシアニンは、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°、10.0°、25.2°、28.0°のブラッグ角(2θ)に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、若しくはブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.3°、16.5°、25.4°、28.1°に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニンを用いることが好ましい。なお、X線回折スペクトルの回折ピークに対応するブラッグ角は、上記角度2θに対して±0.2°の範囲までは異なっていてもよい。ヒドロキシガリウムフタロシアニンは正孔の移動性を示すμτ積は1×10−8cm/V、クロロガリウムフタロシアニンは0.4×10−8cm/Vであり、電子のμτ積に比べて2桁高い値を示しおり、正孔輸送性が極めて高い。従って、電荷発生材料としてこれらの材料を用いることにより電子写真感光体1の光感度がより高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化がより十分に防止される。
【0070】
また、上述した電荷発生材料には、光源のスペクトルにあわせて所望の領域に吸収波長を有するように、他の電荷発生材料と混合して使用できる。混合する電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他のセレン化合物又はセレン合金、アモルファスシリコン、硫化カドミウム等の無機系光導電体及びこれらを色素増感したもの、無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,銅フタロシアニン,錫フタロシアニンなどの各種フタロシアニン顔料、ナフタロシアニン顔料、スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、トリスアゾ系、ントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の各種有機顔料又は染料が用いられる。また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン顔料ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られている。
感光層3を形成するため電荷輸送材料としては、従来公知の電子輸送材料、及び正孔輸送材料が挙げられる。単層型の感光層3においては、電荷輸送材料として電子輸送材料と正孔輸送材料をブレンドして含有させることが好ましいが、高いインダクション効果を狙った光減衰曲線を有する感光体においては、電子輸送材料を用いないほうがその効果を顕著に得られる可能性があるため、電子輸送材料を用いない場合もある。
【0071】
電子輸送材料としては、ジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の、電子受容性を有する種々の化合物が挙げられる。特に、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノンなどのキノン誘導体が好適に使用される。本実施形態においては、電子輸送材料は1種のみを使用する他、2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0072】
正孔輸送材料としては、例えばN,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物や、縮合多環式化合物が挙げられる。正孔輸送材料は1種のみならず、2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0073】
また、感光層4を形成する感光層形成用塗布液に用いる溶媒としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独で、または2種以上ブレンドして用いられる。さらに、これらの溶媒には、電荷発生材料や電荷輸送材料等の分散性や感光層表面の平滑性を良くするために、界面活性剤やレベリング剤等を混合して使用してもよい。
【0074】
感光層3の形成は、まず、電荷発生材料、電荷輸送材料、結着樹脂および溶剤を分散及び混合して調合された感光層形成用塗布液を用意し、導電性基体2に塗布することにより行う。感光層形成用塗布液の分散及び混合の方法は、公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシエーカー、超音波分散機等を用いて分散ブレンドすることにより行う。感光層形成用塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布法、リング塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いることができる。このようにして形成した感光層3の膜厚は5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。薄すぎる場合には磨耗により帯電電位が低下し十分な感光体の寿命が得られなくなり、また、厚すぎる場合には十分な電荷の輸送性が得られなくなり残留の電位の高い感光体となってしまい画質が悪化する。結着樹脂に対する電荷発生材料の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜30重量部であることがより好ましい。結着樹脂に対する電子輸送材料の添加量は、結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、10〜80重量部であることがより好ましい。結着樹脂に対する正孔輸送材料の添加量は、結着樹脂100重量部に対して5〜500重量部であることが好ましく、25〜200重量部であることがさらに好ましい。電子輸送材料と正孔輸送材料とをブレンドして使用する場合、結着樹脂に対する電子輸送材料及び正孔輸送材料の総添加量は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部であることが好ましく、30〜200重量部であることがさらに好ましい。感光体中を電荷が良好に流れるためには電子輸送と正孔輸送の両方の能力を有することが望ましいため、電子輸送材料と正孔輸送材料が上記の範囲で配合される。上記範囲外で配合すると、正孔あるいは電子に対して十分な輸送性が得られない。
【0075】
なお、上述した感光層形成用塗布液には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、ラジカル補足剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えば、テルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0076】
また、その他、感光層形成用塗布液には、画像形成装置におけるオゾンや酸化性ガスの発生、あるいは光 ・ 熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤などの添加剤を添加する事ができる。
【0077】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル フェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル 4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチル フェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチル−フェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル 6−t−ブチル フェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル フェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチル エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルなどが挙げられる。ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,3,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。有機イオウ系酸化防止剤としてジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプト ベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチル フェニル)−フォスフィートなどが挙げられる。
【0078】
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤(2次酸化防止剤)は、フェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
【0079】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
【0080】
ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシ ベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシ ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0081】
安定剤としては、2−(−2’−ヒドロキシ−5’メチル フェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(−2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル 5’−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル 5’−メチルフェニル−)−5−クロロ ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル−)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチル フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ 3’,5’−ジ−t−アミル フェニル−)−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
その他の光安定剤としては、2,4,ジ−t−ブチルフェニル 3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチル−ジチオカルバメートなどが挙げられる。
次に、表面保護層5について説明する。
【0082】
本発明の電子写真感光体には、図3に示したように、必要に応じて表面保護層5を形成することができる。本実施形態における表面保護層5は、結着樹脂に抵抗制御用微粒子を分散した抵抗制御型の表面保護層である。
【0083】
抵抗制御用微粒子としては、カーボンブラックや金属、金属酸化物などを用いることができる。金属酸化物の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン被覆酸化スズ、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したものが挙げられる。また、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物などを抵抗制御用微粒子の調整剤として用いることができる。
【0084】
また、これらの抵抗制御用微粒子としての金属酸化物は、必要に応じて分散性等諸特性の改善のためシランカップリング剤やチタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤などの有機化合物で表面処理を行うことも可能である。
【0085】
なお、本実施形態において用いられる抵抗制御用微粒子は、100nm以下の粒径の金属酸化物を用いることが好ましい。これにより、表面保護層5が透明性に富み、厚膜を形成しても透過率の低下が少ないために感度の減少が少ない。このため、電子写真感光体の光感度を低下させることなく厚膜化が可能であり、電子写真感光体の長寿命化が一層可能となる。
【0086】
表面保護層5を形成するための結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物などが挙げられる。外部から電子写真感光体1に貫入する導電性異物を表面保護層5で阻止するために、ビッカース硬度で30以上の硬度を有する樹脂が好ましく用いられる。
【0087】
表面保護層5を形成するための溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン、アルコール等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、できるだけこの塗布液が塗布される感光層を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0088】
表面保護層5の形成は、抵抗制御用微粒子、結着樹脂及び溶剤を分散及び混合して調合された表面保護層形成用塗布液を用意し、導電性基体2に形成された感光層3上に塗布することにより行う。分散配合の方法は、上述した下引層4形成の方法と同様の方法で行う。また、表面保護層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、リングコーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。この場合に形成される保護層5の厚みは0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。抵抗制御用微粒子は結着樹脂に分散して成膜されるが、表面保護層が適当な塗膜抵抗を得るために、抵抗制御用微粒子の含有率が固形分中に10〜60体積%であることが好ましく、20〜50体積%であることがより好ましい。
【0089】
このように感光層3を表面保護層5で保護することにより電子写真感光体1表面の耐摩耗性を向上させたり、現像剤と電子写真感光体1のマッチングを向上させたり、感光体の帯電時における感光層の化学変化を防止することができる。
【0090】
また、本実施形態にて用いられる抵抗制御用微粒子の代わりに表面保護層用電荷輸送材料を用いることもできる。表面層用電荷輸送材料としては、ポリマー成分中に電荷輸送性機能を織り込んだ高分子電荷輸送剤、シリコーンハードコート剤等の強靭なコート剤中に低分子の電荷輸送剤を分子分散させるなどして電荷輸送機能機能をもたせた樹脂成分が挙げられる。ポリマー成分中に電荷輸送機能を織り込んだ表面保護層の具体例としては、シリコーンポリマー中に電荷輸送材料機能基を織り込んだ表面保護層の例が挙げられる。高分子電荷輸送剤としては、ポリビニカルバゾール等の電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物、特開平5−232727号公報等に開示されているような電荷輸送能を有する基を主鎖に含む高分子化合物、又はポリシラン等が挙げられる。また、高分子電荷輸送剤として、電荷輸送性ブロックと絶縁性ブロックよりなるブロック共重合体またはグラフト共重合体を使用することもできる。高分子電荷輸送剤は、トリアリールアミン構造を繰り返し単位として含有することが電荷輸送能と機械的特性の向上の点で好ましく、また、トリアリールアミン構造がペンダント型ではなく、主鎖中に含有していることがさらに好ましい。ペンダント型であると、ペンダント同士が会合し、電荷トラップを形成し電荷輸送性を悪化する場合が多いが、主鎖中に含有されていることでこのような問題を回避することできる。さらに、前記トリアリールアミン構造が下記一般式(2)または(3)で表される構造の少なくとも1種以上を繰り返し単位として含有するのが好ましい。
【化2】
[式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示し、L1は枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、m及びnは、それぞれ0または1から選ばれる整数を意味する。]
【化3】
[式中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、L2は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示す。]
【0091】
前記一般式(2)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基から選ばれ、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0092】
X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる。X1の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、メチレンジフェニル基、シクロヘキシリデンジフェニル基、オキシジフェニル基、チオジフェニル基等、およびこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、またはハロゲン置換体等が挙げられ、この中でも特に置換もしくは未置換のビフェニレン基が電荷輸送性の点で、特に好ましい。
【0093】
X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基から選ばれ、具体的には、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基等、およびこれらのメチル置換体、エチル置換体、メトキシ置換体、またはハロゲン置換体等が挙げられる。
【0094】
L1は、枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、シロキサン結合等から選ばれる結合基を含み、且つ炭素数が20以下であるものが好ましい。その具体例としては、下記式(3−1)〜(3−8)のものが挙げられる。
【0095】
上記一般式(3)中、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基から選ばれ、該アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。また、置換基としては、炭素数1〜12個のアルキル基またはアルコキシ基、ジアリールアミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0096】
L2は芳香族環構造を有する3価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれ、上記の好ましい特性の少なくとも1つを発揮するかぎり任意であるが、炭素数が20以下のものが好ましい。その具体例としては、下記式(3−9)〜(3−13)のものが挙げられる。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0097】
また、前記一般式(1)中のL1または一般式(2)中のL2がエステル結合を有する場合が、機械的特性及び電荷輸送能の点で特に好ましい。
【0098】
この表面保護層用電荷輸送材料を用いる場合の結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
(カラー画像形成装置)
図4は本発明のカラー画像形成装置の好適実施形態を示す概略図である。
図4に示すカラー画像形成装置101はいわゆる中間転写方式のカラー画像形成装置であり、4つの画像形成ユニット120a、120b、120c、120dを備えており、4つの画像形成ユニット120a、120b、120c、120dは、中間転写体108の一部に沿って並列に配置されている。
【0099】
ここで、各画像形成ユニット(120a〜120d)は、電子写真感光体(1a〜1d)を備えており、電子写真感光体(1a〜1d)は上述した電子写真感光体1で構成されている。
【0100】
電子写真感光体1a〜1dは所定の方向(紙面上は反時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転可能であり、各電子写真感光体(1a〜1d)に対しては、その回転方向に沿って帯電手段(103a〜103d)、反転現像手段(102a〜102d)、1次転写手段(104a〜104d)、電子写真感光体クリーナ(106a〜106d)が順次配置されている。反転現像手段102a〜102dにはトナーカートリッジ(図示せず)に収容されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写手段104a〜104dはそれぞれ中間転写体108を介して電子写真感光体1a〜1dに当接している。
【0101】
なお、反転現像手段102a〜102dは、図4ではY、M、C、Kのトナー色の順に配置されているが、これは、例えば、M、Y、C、Kなどシステムの画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
【0102】
さらに、カラー画像形成装置101の所定の位置には像露光手段107が配置されている。像露光手段107から出射されたレーザ光がレーザ光105a〜105dに分岐されて、各画像形成ユニット120a,120b,120c,120dにおける帯電後の電子写真感光体1a〜1dの表面に照射されるようになっている。これにより、電子写真感光体1a〜1dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写体108上に重ねて転写される。
【0103】
中間転写体108は駆動ロール114、バックアップロール113及びテンションロール115により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく電子写真感光体1a〜1dと同じ周速度で回転可能となっている。また、2次転写手段109は、中間転写体108を介してバックアップロール113と当接するように配置されている。バックアップロール113と2次転写手段109との間を通過した中間転写体108は、例えば駆動ロール114の近傍に配置されたクリーニングブレード(図示せず)により表面を清浄化された後、次の画像形成プロセスに供される。
【0104】
また、カラー画像形成装置101内の所定の位置にはトレイ(画像出力媒体トレイ)111が設けられており、トレイ111内の紙などの画像出力媒体112が中間転写体108と2次転写手段109との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール110の間に順次移送された後、カラー画像形成装置101の外部に排紙される。 このようなカラー画像形成装置101においては、各画像形成ユニット120a〜120dにより、異なる色のトナー像が中間転写体108に重畳転写され、カラートナー像が形成される。そして、このカラートナー像は、2次転写手段109による接触帯電作用により中間転写体108から画像出力媒体112に転写され、定着ロール110によりカラートナー像が画像出力媒体112に定着され、カラー画像が形成される。
【0105】
このカラー画像の形成時においては、各電子写真感光体1a〜1dにおいて、電荷発生材料として正孔輸送性が高いガリウムフタロシアニンが用いられることにより電子写真感光体1a〜1dの光感度が高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。このため、カラー画像形成装置101によれば、電子写真感光体1a〜1dにおいて温度変化や湿度変化による光感度の変化が十分に防止される。
【0106】
このため、温度や湿度等が変化する環境においてカラー画像を繰り返し形成しても、色ムラの発生を十分に防止することができる。即ちカラー画像形成装置101は、画像の繰り返し安定性に優れ、多数枚のカラー画像を連続して出力しても、安定した画質の画像を形成することができる。従って、このカラー画像形成措置101は、軽印刷の用途にも十分に使用可能である。
またカラー画像形成装置101においては、解像度を十分に高くし得る電子写真感光体1a〜1dが使用されているため、カラー画像形成装置101により、極めて画質の高いカラー画像を形成することができる。
【0107】
更に、カラー画像形成装置101によれば、カラー画像を繰り返し形成しても、1つの電子写真感光体を有するカラー画像形成装置と比較して暗減衰による色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0108】
なお、カラー画像形成装置101の解像度は1200dpi以上に設定しても良い。カラー画像形成装置101は、解像度を十分に向上させることができ且つ環境安定性に優れた電子写真感光体1a〜1dを備えているため、温度や湿度等が変化する環境下で、1200dpi以上の解像度に設定されてカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0109】
カラー画像形成装置101の解像度は2000dpi以上に設定しても良い。この場合、温度や湿度等が変化する環境下で、2000dpi以上の解像度に設定されてカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0110】
以下、カラー画像形成装置101における各構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0111】
[帯電手段]
帯電手段103a〜103dは、電子写真感光体1a〜1dの表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる部分である。
【0112】
帯電手段103a〜103dとしては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器、帯電ローラーを電子写真感光体近傍で用いる非接触方式のローラー帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの公知の帯電器が挙げられる。
【0113】
これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。接触型帯電器によると、電子写真感光体1a〜1dの表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより電子写真感光体1a〜1dの表面を帯電させることができる。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、あるいはローラー状等何れでもよいが、特にローラー状が好ましい。このようなローラー状部材は通常、外側の抵抗層とそれらを支持する内部の弾性層と芯材から構成される。さらに必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
ローラー状部材は、電子写真感光体1a〜1dに接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも電子写真感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段103として機能する。また、ローラー状部材に何らかの駆動手段を取り付け、電子写真感光体1a〜1dとは異なる周速度で回転させ、電子写真感光体1a〜1dを帯電させても良い。
【0114】
芯材の材質としては導電性を有するもので、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。またその他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
【0115】
弾性層の材質としては導電性あるいは半導電性を有するもので、ゴム材に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散したものが挙げられる。ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等を用いることができる。導電性粒子あるいは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物を用いることができ、これらの材料は単独あるいは2種以上混合して用いても良い。
【0116】
抵抗層および保護層としては、結着樹脂に導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したものが挙げられる。抵抗層および保護層の抵抗率は通常、103〜1014Ωcmであり、105〜1012Ωcmであることが好ましく、107〜1012Ωcmであることがさらに好ましい。また、抵抗層および保護層の膜厚は0.01〜1000μmとし、0.1〜500μmとするのが好ましく、0.5〜100μmとするのがさらに好ましい。結着樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂等が挙げられる。導電性粒子あるいは半導電性粒子としては、弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が挙げられる。また、抵抗層および保護層には、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する方法としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0117】
これらの導電性部材を用いて電子写真感光体1a〜1dを帯電させるには、導電性部材に電圧を印加するが、その際の印加電圧は直流電圧、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。直流電圧の範囲としては、要求される電子写真感光体1a〜1dの帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vであることが好ましく、100〜1500Vであることがさらに好ましい。直流電圧に交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧は通常、400〜1800Vとし、800〜1600Vとすることが好ましく、1200〜1600Vとすることがさらに好ましい。この際の交流電圧の周波数は50〜20,000Hzとし、100〜5,000 Hzとすることが好ましい。
【0118】
[像露光手段]
像露光手段107としては、原稿画像を色分解して結像露光する光学系露光装置や、原稿画像情報の時系列電気デジタル画素信号を生成しその信号に対応して変調されたレーザービームを出力するレーザースキャナによる走査露光系露光装置等が挙げられる。光学系露光装置としては、特に制限はなく、例えば、前記電子写真感光体1a〜1dの表面に、半導体レーザー光、LED光、液晶シャッタ光等を、所望の像様に露光できる光学系露光機器などが挙げられる。光源の波長は電子写真感光体1a〜1dの分光感度領域にあるものが使用され、半導体レーザーの波長として、780nm付近に発振波長を有する近赤外レーザー、600nm台の発振波長を有するレーザー、400〜450nm近傍に発振波長を有する青色レーザー等が利用できる。またカラー画像の形成のためにはマルチビーム出力が可能なタイプの面発光型のレーザー光源も好適に使用することができる。この像露光手段107により、電子写真感光体1a〜1dの表面が露光され静電潜像が形成される。
【0119】
[反転現像手段]
反転現像手段102a〜102dは、像露光手段107により電子写真感光体1a〜1d上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する部分である。反転現像手段102a〜102dとしては、例えば、磁性若しくは非磁性のトナーを接触あるいは非接触させて現像する一般的な現像器が挙げられる。現像手段102a〜102dとしては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トナーをブラシ、ローラ、ゴムブレード等を用いて前記電子写真感光体に付着させる機能を有する公知の現像器などが挙げられる。
【0120】
次に、上述した反転現像手段において用いられるトナーについて説明する。本実施形態に係るトナーは、トナー粒子とその他の外添剤からなり、トナー粒子は、結着樹脂と着色剤と雛型剤と必要応じてシリカや帯電制御剤が混合されたものである。
【0121】
トナー粒子は、所望の形状指数と粒径を満足する範囲のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、結着樹脂と着色剤、雛型剤、必要に応じて帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法により得られるもの;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法で得られるもの;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、雛型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法により得られるもの;結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法により得られるもの;結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法により得られるもの等が挙げられる。また上記方法で得られたトナー粒子をコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法など、公知の方法により得られたものを使用することができる。これらの製造方法で得られたもののうち、形状制御、粒度分布制御の観点から、水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法によるものが好ましく、乳化重合凝集法によるものがさらに好ましい。
【0122】
湿式製法でトナー粒子を製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。本発明におけるトナー粒子は、磁性材料を内包する磁性トナー粒子および磁性材料を含有しない非磁性トナー粒子のいずれであってもよい。
【0123】
結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα一メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロベニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等をあげることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレット、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.1.ピグメント・レッド57:1、C. I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
【0124】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルテバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が挙げられる。
【0125】
また、トナー粒子には必要に応じて帯電制御剤が添加されてもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が挙げられる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。
【0126】
トナー粒子は、上述した結着樹脂と着色剤と雛型剤を含むが、必要に応じてシリカや上述した帯電制御剤が混合されたものが使用される。トナー粒子の平均粒径は2〜12μmとし、3〜9μmとすることが好ましい。また、トナー粒子の平均形状指数(ML2/A)が115〜140のものを用いることが好ましい。これにより高い現像感度及び転写性が得られ、高画質の画像を得ることができる。
【0127】
また、上記のトナー粒子に添加される外添剤としては、滑性粒子、無機微粒子、有機微粒子、複合微粒子、その他の無機酸化物が挙げられる。
【0128】
滑性粒子は、感光体表面に潤滑性を付与するためのものである。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用でき、これらを単独で使用するか、あるいは併用しても良い。滑性粒子の平均粒径としては0.1〜10μmの範囲とし、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量はトナー100重量部に対して0.05〜2.0重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましい。
【0129】
また、トナーには、電子写真感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機微粒子、有機微粒子、該有機微粒子に無機微粒子を付着させた複合微粒子などを加えることができる。このうち、研磨性に優れる点において無機微粒子が特に好ましい。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。上記無機微粒子に対しては、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンセンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ一メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルシシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などで処理を行っても良い。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理されたものも好ましく使用される。
【0130】
有機微粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
【0131】
これら無機微粒子や有機微粒子の粒子径としては、小さすぎると研磨能力に欠け、また、大きすぎると電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなるため、平均粒子径で5nm〜1000nmとし、5nm〜800nmとすることが好ましく、5nm〜700nmとすることがさらに好ましい。また、滑性粒子の添加量との和が0.6重量%以上であることが好ましい。
【0132】
また、トナーには、その他の無機酸化物を添付することができる。無機酸化物は、粉体流動性、帯電制御等の点で、1次粒径が40nm以下の小径の無機酸化物を用いることが好ましく、付着力低減や帯電制御の点で、それより大径の無機酸化物をさらに添加することが好ましい。これらの無機酸化物としては、公知のものを使用できるが、精密な帯電制御を行うためにシリカと酸化チタンを併用して添加することが好ましい。また、小径の無機微粒子については、分散性、粉体流動性を上げるために表面処理することが好ましい。
【0133】
上記のトナー粒子と外添剤を混合する方法としては、トナー粒子及び外添剤をヘンジェルミキサーあるいはVブレンダー等で混合することによって製造する方法を使用することができる。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて混合することも可能である。
【0134】
上述した方法によって得られたトナーには、使用に際してキャリアを混合して使用する。キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉またはそれ等の表面に樹脂コーティングを施したものが挙げられる。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
反転現像手段102a〜102dによって電子写真感光体1a〜1dを現像する際には安定剤を添加して使用することもできる。安定剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系酸化防止剤、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤が挙げられる。なかでも、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系酸化防止剤が特に好ましく、構造としては広く公知のものが使用できる。
【0135】
電子写真感光体1a〜1dの表面に、外部より安定剤を含有する物質を接触させる方法としては、トナー中に含有させる方法;ステアリン酸亜鉛やワックスなどに添加しトナーに加える方法;キャリア表面に安定剤を所望により樹脂と一緒に塗布、あるいは、機械的に付着させる方法、などが挙げられる。また、シリカ、酸化チタンなどの外添剤表面などに添加してもよい。ゴムブレード中に成型時に混合してもよい。また、ステアリン酸亜鉛やワックスなどの潤滑剤中に安定剤を練りこみ、ブラシ、ローラなどにより供給してもよく、中間転写体108、帯電手段103にブラシ、ローラなどを用いて安定剤を供給し、電子写真感光体1a〜1dの表面に供給してもよい。
【0136】
トナーに粉体として安定剤を添加する場合には、安定剤の粒子径は0.01〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.8μmであることがより好ましい。トナーに添加する安定剤の量はトナー100重量部に対して0.01〜3重量部とし、0.02〜2重量部とすることが帯電の安定性からより好ましい。また、トナーを形成する結着樹脂中に直接混合してもよい。混合する量は、トナー100重量部に対して0.01〜5重量部とし、0.02〜3重量部とすることが帯電の安定性からより好ましい。
【0137】
キャリアや無機外添剤の表面に安定剤を付着させる方法としては、安定剤をキャリアや外添剤の無機粉体1部に対し0.01〜0.2部、好ましくは0.1〜0.1部加え、ボールミルや、ヘンジェルミキサーあるいはVブレンダー等で機械的に混合する方法;安定剤を必要によっては樹脂とともに適当な溶剤に溶解させ、これに無機粉体を混合し、乾燥させるなどのWet法を用いてもよい。
【0138】
潤滑剤に安定剤を混合する方法としては、潤滑剤1部に対し、安定剤を0.01〜1部、好ましくは0.02〜0.8部加えて加熱融解して解砕し、所望の形に成型する。必要によっては、安定剤を0.05〜1μmに微粒子化し、これをトナーに添加してもよい。この際、安定剤の添加量は、トナー1部に対し0.0001〜0.05部が好ましく、0.005〜0.03部がより好ましい。電子写真感光体1a〜1dの表面への安定剤の供給量としては、画像の安定性が得られる範囲であればいかなる量でも構わないが、多すぎると表面への堆積物が多く、少なすぎると効果が充分に得られないため、実際にマシン内にて画像安定性をテストし、決定される。
[1次転写手段]
1次転写手段104a〜104dは、反転現像手段102a〜102dにより前記電子写真感光体1a〜1d上に形成したトナー像を中間転写体108に1次転写する部分である。中間転写体108が、電子写真感光体1a〜1dとの界面(ニップ部)を通過する過程で、1次転写手段104a〜104dから中間転写体108に印加される1次転写電圧により電界が形成される。この電界により、中間転写体108の外周面に順次、トナー像が1次転写される。なお、電子写真感光体1a〜1dから中間転写体108に印加される1次転写電圧は、トナーとは逆極性(+)でバイアス電源から印加される。
【0139】
1次転写手段104a〜104dとしては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器などのそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明のカラー画像形成装置101においては、転写帯電器のほか、剥離帯電器等を併用することもできる。また、1次転写時において、1次転写手段104a〜104dから電子写真感光体1a〜1dに付与される転写電流には、通常直流電流が使用されるが、本発明においては更に交流電流を重畳させて使用してもよい。1次転写手段104a〜104dにおける設定条件としては、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、1次転写電流としては+100〜+400μA、1次転写電圧としては+500〜+2000Vと設定することができる。
【0140】
[中間転写体]
<表面微小硬度>
中間転写体108は、転写面の表面微小硬度が10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
【0141】
表面微小硬度とは、金属材料の硬さ測定等に広く用いられているビッカース硬さのように、くぼみの対角線長さを求めるという方法はとらず、圧子が試料にどれだけ侵入したかを測定する方法によって求めることができる。図5に示すように、圧子50に加える試験荷重をP(mN)、圧子50の試料である中間転写体108への侵入量(押し込み深さ)をD(μm)とした時、表面微小硬度DHは一般に、下記式(6)で定義される。
DH≡αP/D2 ・・・(6)
【0142】
式(6)中、αは圧子形状に依る定数であり、圧子として三角錐圧子を使用した場合は、α=3.8584である。
【0143】
この表面微小硬度DHは、上記式(6)に示すように、圧子を押し込んで行く過程の荷重Pと、押し込み深さDとから得られる硬さであり、試料の塑性変形だけでなく、弾性変形をも含んだ状態での材料の強度特性を表すものである。なおかつ、その計測面積は微小であり、トナーの粒径に近い範囲で、より正確な硬度の測定が可能になる。本発明者らは、ここで得られた表面微小硬度DHと、ライン画像が中抜けするホロキャラクターの発生レベルに極めて正確な相関があることを見出した。即ち、中間転写体108の転写面の表面微小硬度が好ましくは10以下、より好ましくは8以下の場合には、2次転写手段109としてのバイアスローラの押圧力によって中間転写体108の転写面の変形が起こり、これにより中間転写体108上のトナーに集中していた押圧力が分散される。このため、トナーは凝集せず、ホロキャラクター等の画質欠陥を十分に防止することができる。
【0144】
尚、中間転写体108の転写面における表面微小硬度は、具体的には、下記の方法によって求められる。即ちまず、転写面を構成する材料のシートを5mm角程度に切り、その小片を瞬間接着剤で硝子板に固定する。そして、この小片の表面の表面微小硬度を超微小硬度計DUH−201S(株式会社島津製作所製)を用いて、下記測定条件で測定する。こうして、表面微小硬度を求めることができる。
測定環境:23℃、55%RH
使用圧子:三角錐圧子
試験モード:3(軟質材料試験)
試験荷重:0.70gf
負荷速度:0.0145gf/sec
保持時間:5sec
【0145】
(表面層)
また、図6に示すように、中間転写体108は、樹脂組成物で構成される表面層130を有し、この樹脂組成物がフッ素系樹脂材料を含むことが好ましい。ここで、フッ素系樹脂材料とは、フッ素原子を含む樹脂のことを言う。
【0146】
フッ素系樹脂材料は、摩擦帯電列において極性がマイナス側にある。このため、中間転写体108の表面層130上のマイナス電荷をもったトナーをプラスに帯電させ、逆極性のトナー、即ちマイナス電荷をもったトナーを減少させることができる。従って、逆極性のトナーの転写時における飛散が十分に防止され、中間転写体108から画像出力媒体に転写する時の転写効率の低下を十分に防止することができる。よって、高品質のカラー画像を安定して得ることができる。
【0147】
上記フッ素系樹脂材料は、非粘着性を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。このようなフッ素系樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンと、これと共重合可能な少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体(例えばエチレン、プロピレンなどのオレフィン類、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレン、ビニルフルオライドなどのハロゲン化オレフィン類、パーフルオロアルキルビニルエーテル類など)との共重合体、あるいはポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどが挙げられる。中でも、非粘着性を有し且つ分散性が良好である点から、フッ素系樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。あるいは、同様の理由から、フッ素系樹脂材料として、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル又はこれらの1種以上の混合物との共重合体が好ましい。なお、フッ素系樹脂材料として、この共重合体を用いる場合、その共重合体の製造に際して、テトラフルオロエチレンと共重合可能なモノマーは、テトラフルオロエチレンに対し40モル%以下用いられる。
【0148】
樹脂組成物は、フッ素系樹脂材料を主成分として含むことが好ましい。ここで、主成分とは、フッ素系樹脂材料が樹脂組成物中に30重量%以上含有されていることを言う。
【0149】
樹脂組成物中には導電剤が分散されていてもよい。導電剤は、導電性もしくは半導電性の微粉末として使用でき、所望の電気抵抗を安定して得ることができるものであれば特に制限されないが、導電剤としては、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示できる。これらは単独であるいは併用して使用してもよい。導電剤としては、上記カーボンブラックをフッ素ガスによりフッ素化したフッ素化カーボンが好ましく用いられる。フッ素化カーボンは、フッ素系樹脂材料との密着性に優れており、且つフッ素系樹脂材料中に均一に分散させることができる。このため、表面層130を、抵抗バラツキの少ない、経時的安定性に優れたものとすることができる。
【0150】
このようなフッ素化カーボンは、特開平07−149448号公報に記載されている方法によって製造することができる。フッ素化カーボンは、ポリ(カーボンモノフルオライド)を主成分とするものである。フッ素化カーボンは、平均粒径1μm以下、好ましくは0.1μm以下のカーボンブラックをフッ素ガスによりフッ素化してなるものであることが好ましい。これにより、フッ素樹脂中での分散性が良くなる。カーボンブラックとして適するものは上記平均粒径を有するカーボンブラックである。カーボンブラックのうち特に、導電性カーボンブラックと一般に称されているものが好ましく用いられる。ここで、導電性カーボンブラックは、平均粒径が小さい(平均粒径0.1μm以下)、表面積が大きい(N2 表面積50m2/g以上)、ストラクチャーが発達している(吸油量100cc/g以上)、不純物が少ない(灰分0.1%未満)、グラファイト化が進んでいる、というファクターで定義されるものであり、比較的少ない配合量で材料に導電性を付与できるため、広く使用されているものである。導電性カーボンブラックの具体例としては、例えばケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(以上、ケッチェンブラックインターナショナル(株))、ブラックパールズ2000、バルカンXC−72、CSX−99(以上、キャブラック(株))、デンカブラック(電気化学工業(株))、コンダクテックス950(コロンビアカーボン(株))などが挙げられる。
【0151】
フッ素系樹脂材料及びフッ素系樹脂材料中に分散されるフッ素化カーボンを含む樹脂組成物は、適宜、水または有機溶剤に分散ないし溶解した形態で液状組成物を塗布した後、乾燥して、フッ素化カーボンを含むフッ素系樹脂組成物として使用することもできる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、酢酸アミルエステル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0152】
フッ素化カーボンの添加量は、フッ素化カーボンの種類とフッ素化度により変わるため一概には言えないが、中間転写体108の表面層130における体積抵抗率が1×108〜1×1014Ωcmとなるようにすればよい。さらに、表面層130は、必要に応じて導電剤以外の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば密着性向上剤(有機樹脂粉末など)、潤滑性付与剤(フッ素系オイルなど)、耐摩耗性向上剤(無機セラミックス粉体など)、増粘剤、造膜剤、界面活性剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、導電性と非粘着性を損なわない範囲内で、適宜選定すればよい。
【0153】
表面層130に用いる樹脂組成物としては、非粘着性を有し且つカーボンブラックの分散性が良いという点から、4フッ化エチレン樹脂を成分とするフッ素系樹脂材料中にフッ素化カーボンを分散させたものが好ましい。この樹脂組成物の具体例としては、フッ素化カーボンを添加してなる4フッ化エチレン樹脂を主なる樹脂組成物とするダイキン工業(株)製の導電性塗料TD−C2102−A、NF−7035−Aなどが挙げられる。
【0154】
<表面層の摩擦係数>
中間転写体108においては、表面層130の摩擦係数が0.5以下であることが好ましく、0.2〜0.4であることがより好ましい。該摩擦係数が0.5を超えると、中間層として弾性層131が設けられている場合に、感光体1a〜1dとの間に発生する応力により感光体1a〜1dとのステックスリップによる転写面に微小な変形が生じ、細部の転写画質が悪くなることがある。
【0155】
摩擦係数は、図7に示すような摩擦係数測定器HEIDON−14(HEIDON社製)を用いて測定することができる。図7に示す摩擦係数測定器は、鋼球(直径3mm)303、零点調整用天秤304、ロードセル305及び重り(100g)306を備えている。この摩擦係数測定器を用いて摩擦係数を測定する場合、まず中間転写体108の表面層130を構成する材料からなる厚さ20μmの膜301を作製し、これを固定台302の上にセットする。そして、重り306により、鋼球303を介して膜301に荷重100gを加え、その状態で固定台302を移動速度0.1cm/秒で移動させる。このとき、ロードセル305の表示により、摩擦係数を知ることができる。
【0156】
<表面層の体積抵抗率>
中間転写体108の表面層130については、その体積抵抗率が1×108〜1×1013Ωcmであることが好ましく、1×109〜1×1012Ωcmであることがより好ましい。この体積抵抗率が1×108Ωcm未満である場合には、電子写真感光体1a〜1dから中間転写体108に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、体積抵抗率が1×1013Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体108の表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。体積抵抗率を上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0157】
表面層130の体積抵抗率は、図8に示す三菱油化(株)製ハイレスターIPのHRプローブを用い、JIS K6991に従って測定することができる。この体積抵抗率の測定方法について、図8(a)及び(b)を用いて説明する。図8(a)は、ハイレスターIPの一例を示す平面図、(b)は(a)の縦断面図である。図8(a)及び(b)に示すように、ハイレスターIPは、第1電圧印加電極A’と第2電圧印加電極B’とを備えている。第1電圧印加電極A’は、円柱状電極部C’と、該円柱状電極部C’の外径よりも大きい内径を有し円柱状電極部C’と同心状に設けられるリング状電極部D’とを備えており、円柱状電極部C’は、円柱状ブロックを介してリング状電極部D’と一体化されている。このハイレスターIPを用いて表面層130の体積抵抗率を測定する場合、まず第1電圧印加電極A’の円柱状電極部C’及びリング状電極部D’と、第2電圧印加電極B’とで表面層130を挟み、第1電圧印加電極A’における円柱状電極部C’と第2電圧印加電極B’との間に電圧V(V)を印加したときに表面層130を流れる電流I(A)を測定し、下記式(7):
ρv=19.6×(V/I)×t・・・(7)
(上記式(7)中、tは、表面層130の厚さを表す)
により、表面層130の体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。
【0158】
(弾性層)
また、図6に示すように、中間転写体108は上記表面層130のほか、弾性材料から構成される弾性層131と、基材132とを備えており、弾性層131が基材132と表面層130とによって挟まれるように構成されている。
【0159】
弾性層131を構成する弾性材料は、JISA硬度が40〜70°であることが好ましい。JISA硬度が40°未満では、加工性が悪くなり、厚みのバラツキが大きくなる傾向があり、70°を超えると、表面微小硬度が硬くなる傾向がある。弾性材料は、1×108Ωcm〜1×1013Ωcmの範囲の体積抵抗率を有することが好ましい。この体積抵抗率が1×108Ωcm未満である場合には、電子写真感光体1a〜1dから中間転写体108に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、体積抵抗率が1×1013Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体108の表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。体積抵抗率を上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0160】
上記弾性材料は、JISA硬度及び/又は体積抵抗率が上記範囲内にある材料であれば特に限定されず、このような弾性材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは1種類で、又は2種類以上をブレンドして用いることができる。弾性材料には、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤やイオン伝導性を付与する導電剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
【0161】
弾性材料として用いるゴム生地としては、液状や糊状のものではなく、未加硫ゴムの固形状シートが好ましく用いられる。未加硫ゴムとしては、キャレンダーロール等で精度良くシート状に分出して得られる生地が使用される。未加硫ゴムの固形状シートを基材132と貼り合せてシームレスに一体成形することで、基材132と弾性層131からなる密着性に優れた2層構成の貼り合せベルトを得ることができる。
【0162】
(基材)
<基材のヤング率>
基材132のヤング率Eと中間転写体としての中間転写ベルトの駆動時の外乱(負荷変動)によるベルトの変位量Δlとの関係は、下記式(8)で表すことができる。
Δl=P・l・β/(t・w・E)・・・(8)
【0163】
上記式(8)中、Δlは中間転写ベルトの変位量(μm)、Pは負荷(N)、lは2本のテンションロール間の中間転写ベルトの長さ(mm)、βは係数、tは中間転写ベルトの厚さ(mm)、wは中間転写ベルトの幅(mm)、Eは基材132のヤング率(N/mm2)を表す。
【0164】
上記式(8)より、ベルト駆動時の外乱(負荷変動)による中間転写ベルトの伸び・縮み(変位量)Δlは、基材132のヤング率Eと中間転写ベルトの厚さtに逆比例する。基材132の材料として、高ヤング率の材料を用いると、ベルト駆動時の外乱(負荷変動)による中間転写ベルトの変位量Δlが少なくなり、駆動時の応力に対するベルト変形が小さくなり、良好な画質を安定して得ることができる。但し、ベルトの厚さtが大きくなると、駆動系ロールなどのベルト屈曲部でのベルトの外側表面の変形量が大きくなり、良好な画質を得られ難く、また、ベルトの外側と内側との変形量が大きくなり、局部的な繰り返し応力のためにベルトが破断するなどの問題が生じる場合がある。
【0165】
基材132のヤング率Eは、中間転写ベルトの厚さtによっても異なるが、通常、2000MPa以上であり、3500MPa以上であることが好ましく、4000MPa以上であることがより好ましい。このように基材132のヤング率Eが3500MPa以上であると、中間転写体108の基材132としての機械特性が満足される。
【0166】
<基材に用いる樹脂材料>
基材132に用いる樹脂材料は、基材132のヤング率を3500MPa以上にすることが可能なものであれば特に限定されず、このような樹脂材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなる樹脂などを挙げることができる。
【0167】
<基材のポリイミド樹脂>
基材132に用いる樹脂材料としては、機械特性に優れることから、ポリイミド樹脂が好ましい。このポリイミド樹脂としては、例えば芳香族テトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させて得られるものが用いられる。
【0168】
上記芳香族テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−アゾベンゼンテトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルポキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルポキシフェニル)ヘキサフオロプロパン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合してもよい。また、上記芳香族ジアミン成分は、特に制限はなく、m−フェニルジアミン、p−フェニルジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4’−ジアミノナフタレビフェニル、ベンジジン、3,3−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(オキシ−p,p’−ジアニリン;ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミンフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0169】
上記有機極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド等が挙げられる。これらの有機極性溶媒には、必要に応じて、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類を混合することができる。これらの溶剤も、単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0170】
上記ポリイミド樹脂としては、芳香族テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、且つ、芳香族ジアミン成分として、p−フェニレンを用いてなる重合体を主成分とするポリイミド樹脂が好ましい。このポリイミド樹脂は剛直となり、基材のヤング率を6000MPa以上とすることができ、基材132の機械特性を十分に満足することができる。
【0171】
<基材用導電剤>
上記基材132に用いる樹脂材料がポリイミド樹脂である場合、樹脂材料においては、ポリイミド樹脂中に導電剤(以下、基材用導電剤と言う)が分散されていることが好ましい。この場合、体積抵抗率を所望の抵抗領域に制御できるという利点がある。
【0172】
基材用導電剤は、導電性もしくは半導電性の微粉末が使用でき、所望の電気抵抗を安定して得ることができるものであれば特に制限されないが、このような基材用導電剤としては、例えばケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が挙げられる。これらは単独で用いても、あるいは併用してもよい。
【0173】
中でも、カーボンブラック、特に酸化処理カーボンブラックが、ポリイミド樹脂組成物中に均一に分散させることができる点で好ましい。さらに酸化処理カーボンブラックは、そのpHが5.0以下であることがより好ましい。この酸化処理カーボンブラックは、表面にカルボキシル基、水酸基、キノン基、ラクトン基などの酸素含有官能基を有するため、ポリイミド樹脂中への分散性が良好であり、良好な分散安定性が得られるため、中間転写体108の抵抗バラツキを小さくすることができる。また、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が十分に防止され、電気抵抗が経時的に安定化される。
【0174】
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで製造することができる。この場合、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等が付与される。この酸化処理は、カーボンブラックを高温雰囲気下で空気と接触させて反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、又は高温下で空気酸化した後、低い温度下でオゾン酸化する方法などにより行うことができる。具体的には、酸化処理カーボンブラックは、空気酸化法の一つとしてのコンタクト法により製造することができる。コンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸化処理カーボンブラックは、ガスまたはオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。酸化処理カーボンブラックを製造する場合、カーボンブラックに対して上記の処理を施した後、必要に応じて、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。なお、上述したように、酸化処理カーボンブラックはコンタクト法で製造することができるが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pHで且つ低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施すことでpHを調整することができる。このため、ファーネス法を用いた製造で得られる酸化処理カーボンブラックに対し、後工程処理によりpHが5以下となるように調節された酸化処理カーボンブラックも、酸化処理カーボンブラックというものとする。
【0175】
上記酸化処理カーボンブラックのpH値は、上述したように5.0以下であることが好ましいが、より好ましくは4.5以下であり、特に好ましくは4.0以下である。
【0176】
なお、酸化処理カーボンブラックのpHは、酸化処理カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で電位を計測して、KClとの電位差よりpHに換算することにより求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度及び処理時間等の条件によって調整することができる。
【0177】
上記酸化処理カーボンブラックは、1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3.5〜15重量%の揮発成分を含む。揮発成分の含有率が1重量%未満である場合には、表面に付着する酸素含有官能基の効果がなくなり、樹脂材料への分散性が低下することがある。一方、揮発成分の含有率が25重量%より高い場合には、樹脂材料に分散させる際に揮発成分が分解するか、或いは、表面の酸素含有官能基に吸着された水などが多くなること等によって、得られる基材の外観が悪くなるなどの問題が生じることがある。従って、揮発成分を上記範囲とすることで、樹脂材料中への分散をより良好とすることができる。この揮発成分は、酸化処理カーボンブラックを950℃で7分間加熱したときに出てくる有機揮発成分(カルボキシル基、、水酸基、キノン基、ラクトン基等)の割合により求めることができる。
【0178】
上記酸化処理カーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
【0179】
上記のような酸化処理カーボンブラックは、一般的なカーボンブラックに比べ、前述したように表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂材料中への分散性がよいため、導電剤としての添加量を高くすることが好ましい。これにより、中間転写体中のカーボンブラックの量が多くなるため、上記電気抵抗値の面内バラツキを抑えることができる等の酸化処理カーボンブラックを用いることの効果を最大限に発揮することができる。
【0180】
具体的には、基材に用いる樹脂材料中の酸化処理カーボンブラックの含有率は、10〜30重量%であることが好ましい。この含有率が10重量%未満であると電気抵抗の均一性が低下し、体積抵抗率の面内ムラや電界依存性が大きくなることがある。一方、含有率が30重量%を超えると所望の抵抗値が得られ難くなる。さらに、樹脂材料中の酸化処理カーボンブラックの含有率は18〜30重量%であることがより好ましい。この場合、酸化処理カーボンブラックの持つ効果を最大限に発揮させることができ、体積抵抗率の面内ムラや電界依存性を顕著に向上させることができる。
【0181】
上記基材132においては、カーボンブラックが2種類以上含まれてもよい。この場合、これらのカーボンブラックは実質的に互いに導電性の異なるものであると好ましく、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性が異なるものを用いる。このように導電性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを優先的に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して体積抵抗率を調整すること等が可能である。このように2種類以上のカーボンブラックを含有させる場合も、そのうちの少なくとも1種類を酸化処理カーボンブラックとすることによって、両方のカーボンブラックの混合や分散性を高めることができる。
【0182】
中間転写体108は、少なくとも表面層130と、弾性層131と、基材132とを有する3層以上の複数の層からなり、表面層130が、108〜1013Ωcmの体積抵抗率を有する樹脂材料で構成され、弾性層131は、JISA硬度40〜70°の弾性材料から構成され、基材132は、導電剤が分散され且つヤング率が3500MPa以上の樹脂材料で構成されると共に、表面層130における転写面109aの表面微小硬度が10以下であることが好ましい。この中間転写体108の構成によれば、単一の材料構成では得られない可とう性と剛性のバランスを満足することができる。加えて、転写面109aの表面硬度が低くかつ高体積抵抗であることによって、ライン画像が中抜けするホロキャラクターや、トナーが飛び散るブラーなどの画質欠陥の発生が十分に防止され、高画質のカラー画像を安定して得ることができる。
【0183】
中間転写体108において、表面層130及び弾性層131の合計の厚さの割合は、中間転写体108の厚さの10〜80%であることが好ましい。表面層130及び弾性層131の厚さが上記範囲内であれば、基材132に用いる樹脂材料に影響されずに、中間転写体108上のトナーに集中していた押圧力が分散される。このため、トナーが凝集せず、ライン画像が中抜けするホロキャラクター等の画質欠陥の発生が十分に防止される。
【0184】
<中間転写体の厚さ>
中間転写体108の厚さは、好ましくは0.05〜0.5mmであり、より好ましくは0.06〜0.30mmであり、さらに好ましくは0.06〜0.15mmである。中間転写体108の厚さが0.05mm未満の場合には、中間転写体(ベルト)として必要な機械特性を満足させることが難しくなり、0.5mmを超える場合には、ロール屈曲部での変形によって、表面の応力が表面層130に集中して、表面層130にクラックが発生するなどの問題が生じる場合がある。
【0185】
<中間転写体の体積抵抗率>
中間転写体108の体積抵抗率は1×108〜1×1013Ωcmであることが好ましく、1×109〜1×1012Ωcmであることがより好ましい。この体積抵抗率が1×108ΩCm未満である場合には、電子写真感光体から中間転写体108に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、体積抵抗率が1×1013Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写体108の表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、体積抵抗率を上記範囲とすることで、トナーが飛散したり、除電機構を必要とする問題を解消することができる。なお、中間転写体の体積抵抗率は、表面層130の体積抵抗率を測定する場合と同様にして測定することができる。
【0186】
なお、上記構成の中間転写体は、転写電圧による抵抗の低下がなく、経時による形状の変形等の問題がなく、かつ、電界依存性がなく、環境による電気抵抗の変化が少ないという優れた性質を有する。従って、上記中間転写体がベルト形状の場合、その中間転写体は、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置に用いる用紙搬送ベルトとしても用いることができる。
【0187】
中間転写体108は、表面層130、弾性層131及び基材132の3層に限定されず、さらに多層化することもできる。
【0188】
基材132のシームレスベルトを製造する場合、例えばポリアミド酸溶液を、円筒状金型の外周面に浸漬塗布する方式や、内周面に塗布する方式や更に遠心する方式、或いは注形型に充填する方式などの適宜な方式でリング状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベル卜状に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する方法などの方法により行うことができる(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)。シームレスベルトの製造に際しては、型の離型処理や脱泡処理などの適宜な処理を施すことができる。
【0189】
[2次転写手段]
2次転写手段109は、中間転写体108上のトナー像を一括して、あるいは中間転写体108を用いない場合は電子写真感光体1a〜1d上のトナーを順次、紙などの画像出力媒体112に2次転写する部分である。
【0190】
2次転写手段109としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、例えば、1次転写手段104a〜104dとして例示した接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器、コロトロン転写帯電器などが挙げられる。これらの中でも、1次転写手段104a〜104dと同様に接触型転写帯電器が好ましい。また、2次転写時に、2次転写手段109から中間転写体108に付与される転写電流には、通常直流電流が使用されるが、本発明においては更に交流電流を重畳させて使用してもよい。2次転写手段109における設定条件としては、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、2次転写電流としては+100〜+400μA、2次転写電圧としては+2000〜+5000Vと設定することができる。
【0191】
[その他の構成要素]
カラー画像形成装置101のその他の構成要素としては、電子写真感光体1a〜1dに対して光除電を行う光除電手段(図示せず)、画像出力媒体112に2次転写したトナー像を定着する定着ロール110、電子写真感光体1a〜1dをクリーニングする電子写真感光体クリーナ106、中間転写体108をクリーニングするクリーニングブレード(図示せず)などが挙げられる。
【0192】
光除電手段としては、例えば、タングステンランプ、LEDなどが挙げられ、光除電手段において用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光などが挙げられる。光除電手段において使用される照射光強度としては、通常、電子写真感光体1a〜1dの半減露光感度を示す光量の数倍〜30倍程度になるように出力設定される。
【0193】
定着ロール110としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ロール定着器、オーブン定着器などが挙げられる。
【0194】
図9は本発明の画像形成装置の他の実施形態を示す概略図である。
【0195】
図9に示すカラー画像形成装置201は中間転写体を含まないカラー画像形成装置であり、図4に示すカラー画像形成装置と同様に、4つのドラム状の電子写真感光体2a〜2d(例えば、電子写真感光体2aがイエロー、電子写真感光体2bがマゼンタ、電子写真感光体2cがシアン、電子写真感光体2dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が用紙搬送用ベルト206に沿って相互に並列に配置されている。
【0196】
ここで、カラー画像形成装置201に搭載されている電子写真感光体2a〜2dはそれぞれ上述した電子写真感光体1で構成されている。
【0197】
そして、電子写真感光体2a〜2dのそれぞれは所定の方向(紙面上は時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転可能であり、その回転方向に沿ってスコロトロン帯電器(202a〜202d)、像露光手段(203a〜203d)、反転現像手段(204a〜204d)、転写帯電器(211a〜211d)、電子写真感光体クリーナー(205a〜205d)が配置されている。
【0198】
像露光手段203a〜203d、反転現像手段204a〜204d、転写帯電器211a〜211d、電子写真感光体クリーナー205a〜205dとしては、図4に示すカラー画像形成装置における像露光手段107、反転現像手段102a〜102d、1次転写手段104a〜104dと同様なものを使用することができる。また、カラー画像形成装置201においては、電子写真感光体2a〜2dの表面を帯電させる手段として、スコロトロン帯電器202a〜202dを使用する。反転現像手段204a〜204dのそれぞれにはトナーカートリッジ(図示せず)に収容されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナーが供給可能であり、また、転写帯電器211a〜211dはそれぞれ用紙搬送用ベルト206を介して電子写真感光体2a〜2dに当接している。
【0199】
なお、反転現像手段204a〜204dは、図9ではY、M、C、Kのトナー色の順に配置されているが、これは、例えば、M、Y、C、Kなどシステムの画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
【0200】
これにより、図4におけるカラー画像形成装置101と同様にして、電子写真感光体2a〜2dの回転工程において帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程が順次行われる。
【0201】
用紙搬送用ベルト106はロール207、208、209、210により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく電子写真感光体2a〜2dと同じ周速度で回転可能となっている。
【0202】
また、カラー画像形成装置201内の所定の位置にはトレイ(画像出力媒体トレイ)213が設けられており、トレイ213内の紙などの画像出力媒体212が電子写真感光体2a〜2dと転写帯電器211a〜211dとの間、さらには相互に2つのロールが当接する定着器215の間に順次移送された後、カラー画像形成装置201の外部に排紙される。これにより、画像出力媒体112上に電子写真感光体2a〜2dに形成されたトナー像を順次転写することによってカラー画像が形成され、そのカラー画像が定着される。
【0203】
このようなカラー画像形成装置201においては、異なる色のトナー像が画像出力媒体212に重畳転写され、カラートナー像が形成される。そして、このカラートナー像は、定着ロール215により画像出力媒体212に定着されてラー画像とされる。
【0204】
このカラー画像の形成時においては、各電子写真感光体2a〜2dにおいて、電荷発生材料として正孔輸送性が高いガリウムフタロシアニンが用いられることにより電子写真感光体2a〜2dの光感度が高くなるとともに、温度変化や湿度変化等による光感度の変化が十分に防止される。このため、カラー画像形成装置201によれば、電子写真感光体2a〜2dにおいて温度変化や湿度変化による光感度の変化が十分に防止される。
【0205】
このため、温度や湿度等が変化する環境においてカラー画像を繰り返し形成しても、色ムラの発生を十分に防止することができる。即ちカラー画像形成装置201は、画像の繰り返し安定性に優れ、多数枚のカラー画像を連続して出力しても、安定した画質の画像を形成することができる。従って、このカラー画像形成措置201は、軽印刷の用途にも十分に使用可能である。
【0206】
またカラー画像形成装置201においては、解像度を十分に高くし得る電子写真感光体2a〜2dが使用されているため、カラー画像形成装置201により、極めて画質の高いカラー画像を形成することができる。
【0207】
更に、カラー画像形成装置201によれば、カラー画像を繰り返し形成しても、1つの電子写真感光体を有するカラー画像形成装置と比較して暗減衰による色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0208】
なお、カラー画像形成装置201の解像度は1200dpi以上に設定しても良い。カラー画像形成装置201は、解像度を十分に向上させることができ且つ環境安定性に優れた電子写真感光体1a〜1dを備えているため、温度や湿度等が変化する環境下で、1200dpi以上の解像度に設定されてカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0209】
カラー画像形成装置201の解像度は2000dpi以上に設定しても良い。この場合、温度や湿度等が変化する環境下で、2000dpi以上の解像度に設定されてカラー画像を繰り返し形成する場合であっても、色ムラの発生を十分に防止することができる。
【0210】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0211】
(実施例1)
酸化亜鉛(MZ300:テイカ社製:比表面積値30m2/g)60重量部と硬化剤 (ブロック化イソシアネート スミジュール3175:住友バイエルンウレタン社製) 15重量部とブチラール樹脂 BM−1 (積水化学社製)15重量部をメチルエチルケトン85重量部に溶解した溶液38重量部とメチルエチルケトン25重量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005重量部、シリコーンオイルSH29PA(東レダウコーニングシリコーン社製)0.01重量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mmΦ、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、160℃、20分の乾燥硬化を行い厚さ5μmの下引層を得た。
【0212】
電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°, 25.1°,28.1°において明瞭な回折ピークが得られるヒドロキシガリウムフタロシアニン3重量部、電子輸送材料として3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノン40重量部、正孔輸送材料としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン80重量部、バインダー樹脂として、ビスフェノールZタイプのポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000) 150重量部、さらに4フッ化エチレン樹脂粒子10重量部を加えテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミル中で24時間分散あるいは溶解させ、単層型感光層形成用塗布液を調合した。そして、この塗布液を、下引き層付きのアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、110℃、30分間の熱風乾燥を行い、膜厚25μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を作製した。
【0213】
一方、以下のようにして、中間転写体として、基材、弾性層及び表面層からなる3層構成ベルトを作製した。
【0214】
基材は次のようにして作製した。まず3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)とからなるポリアミド酸のN−メチル−2ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産製ユーワニスS(固形分18wt%)に、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%))をポリイミド樹脂固形分100質量部に対して15質量部添加して、ボールミルで6時間室温で混合し、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得た。次いで、このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に、厚さが0.3mmとなるように塗布し、円筒状金型を1500rpmで15分間回転させて金型内面に、均一な厚みを有する展開層を得た。続いて、金型を250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間あてた後、上記展開層を、150℃で60分間加熱し、常温に冷却した後、金型より剥離した。次いで、剥離した展開層を、鉄芯の外側に被覆し、更に400℃で1時間加熱して、溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行った。その後室温に戻して鉄芯から剥離した。こうして、厚さ0.05mmの半導電性のベルト状基材を得た。このベルト状基材について体積抵抗率およびヤング率を測定したところ、体積抵抗率は3×1010Ωcmであり、ヤング率は6000MPaであった。
【0215】
一方、弾性層は次のようにして作製した。まずNBRとEPDMを重量比で4:6にブレンドしたゴム材料(NE40;日本合成ゴム(株)製)100重量部に対してアセチレンブラック(前記粒状アセチレンブラック)を7重量部およびサーマルブラック(前記アサヒサーマルFT)を20重量部の割合で配合し、この配合物を3本ロールで混練した。こうして得られた混練物をキャレンダーロールにてシート状に加工し、厚さ0.2mmのシート状弾性層を得た。このシート状弾性層をベルト状基材上に圧接し、圧力5.5kg/cm2の加圧下に温度150℃で60分間加熱して弾性層を加硫し、2層構成のベルトを得た。こうして得られた弾性層について、硬度及び体積抵抗率を測定したところ、硬度はJISA硬度で70度、体積抵抗率は5×1010Ωcmであった。
【0216】
そして、上記2層構成のベルトのうち弾性層の表面上に、フッ素化カーボンを添加してなるフッ素樹脂系導電性塗料(NF−7035−A、ダイキン工業(株)製)を厚さが20μmとなるように塗布し150℃で10分加熱して2層構成ベルトの外側に表面層を形成した。こうして基材、弾性層及び表面層からなる3層構成ベルトを得た。このとき、得られた表面層について体積抵抗率、表面微小硬度および摩擦係数を測定したところ、表面層の体積抵抗率は1×1011Ωcmであり、表面微小硬度は4であり、摩擦係数は0.4であった。
【0217】
他方、カラー画像形成装置として、富士ゼロックス製カラードキュテック60を用意し、この画像形成装置の帯電器を正帯電のスコロトロン帯電器と交換し、現像剤を正帯電用の現像剤と交換した。また、このカラー画像形成装置の中間転写体を、上記3層構成ベルトに交換した。
【0218】
そして、この画像形成装置の感光体を、上記感光体に交換し、暗部電位(VH )が+650Vになるように帯電器の条件を調整した後、露光部電位(VL )が300Vになるように露光量を調整した。そして、カラー画像形成装置において露光装置のビーム径を変更することによりカラー画像の解像度を1200dpiに設定し、プロセススピードを264mm/secに設定して、10000枚のカラー画像を形成した。
【0219】
(実施例2)
4部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)を溶解したn−ブチルアルコール170部、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30部及び有機シラン化合物の混合物(γ−アミノプロピルトリエトキシシシラン)3部を混合し、攪拌し、下引層形成用塗布液を得た。この下引層形成用塗布液を、鏡面切削した直径84mmφのアルミニウム製(JIS1050)の前記導電性基体上に塗布し、室温で5分間風乾を行った後、50℃で7分間の導電性基体の昇温を行い、50℃で85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れ、10分間、加湿硬化促進処理を行った後、熱風乾燥機に入れて135℃で10分間乾燥を行った。以上により、導電性基体上に下引層を形成した。
【0220】
電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン3重量部、電子輸送材料としてブドキシカルボニル−フルオレニデン−マロノニトリル40重量部、正孔輸送剤としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン80重量部、バインダー樹脂として、ビスフェノールZタイプのポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000) 150重量部、をテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミル中で24時間分散あるいは溶解させ、単層型感光層形成用塗布液を調合した。そして、この塗布液を、下引き層付きのアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、110℃、30分間の熱風乾燥を行い、膜厚25μmの単層構造の感光層を有する電子写真感光体を作製した。
【0221】
また、さらに感光層上に電荷注入阻止補助層を形成した。電荷注入阻止補助層の形成は、有機ジルコニウム化合物(松本製薬製ZA60)80重量部、シランカップリング剤(信越シリコーン製KBM503)20重量部をブタノールに溶解し、膜厚0.05μmの塗膜を形成することにより行った。
【0222】
さらに、以下のようにして、低抵抗表面保護層を形成した。即ち酸化スズ粉末(三菱マテリアル製S1)45重量部、ポリエステル樹脂(関西ペイント製レタンクリアー)48重量部をボールミルで24時間分散したのち硬化剤7重量部を加えた組成物を塗布形成した後、135℃、60分で乾燥硬化し、2μmの保護層を得た。
【0223】
そして、電子写真感光体として、上記のようにして作製した電子写真感光体を用いた以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
【0224】
(実施例3)
直径84mmΦのアルミニウム支持体表面の鏡面研磨仕上げを行い、脱脂洗浄、水洗浄を行った後、液温10℃、硫酸15vol%の電解浴に浸し、電解電圧15Vにて30分間陽極酸化皮膜処理を行った。更に、水洗浄を行った後、7%の酢酸ニッケル水溶液(50℃)にて封孔処理を行った。その後純水によるこすり洗浄を経て7μmの陽極酸化皮膜が形成された導電性基体を得た。この陽極酸化膜のバリア層膜厚は150Åであった。
【0225】
電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°, 25.1°,28.1°において明瞭な回折ピークが得られるヒドロキシガリウムフタロシアニン3重量部、電子輸送材料として3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジフェノキノン40重量部、正孔輸送剤としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン80重量部、バインダー樹脂として、ビスフェノールZタイプのポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)150重量部、さらにテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミル中で24時間分散あるいは溶解させ、単層型感光層形成用塗布液を調合した。そして、この塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム素管上にディップコート法にて塗布し、110℃、30分間の熱風乾燥を行い、膜厚25μmの単層構造の感光層を形成した。
【0226】
次に下記式(4)に示す化合物2部、及び下記式(5)に示す化合物2部をイソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部、蒸留水3部に溶解させ、イオン交換樹脂(0.5部)を加え室温で24時間加水分解させてから、イオン交換樹脂をろ過分離後、アルミニウムトリスアセチルアセトナートを0.1部、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)を0.4部加えてコーティング液を生成した。このコーティング液を感光層上に塗布し、その後150℃で1時間の乾燥を行うことにより厚さ3μmの保護層を得た。こうして電子写真感光体を作製した。
【化17】
【化18】
【0227】
そして、電子写真感光体として、上記のようにして作製した電子写真感光体を用いた以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
【0228】
(実施例4)
実施例3と全く同様にして、陽極酸化皮膜が形成された導電性基体を得た後、単層型感光層を形成した。
【0229】
さらに実施例2と全く同様にして、感光層上に電荷注入阻止補助層を形成した。さらに、以下のようにして、低抵抗表面保護層を形成した。即ち酸化スズ粉末(三菱マテリアル製S1)45重量部、ポリエステル樹脂(関西ペイント性レタンクリアー)48重量部をボールミルで24時間分散したのちレタンシンナーを追加し、硬化剤7重量部を加えた組成物をスプレー塗布により形成し、135℃、60分で乾燥硬化した2μmの保護層を得た。こうして電子写真感光体を作製した。
【0230】
そして、電子写真感光体として、上記のようにして作製した電子写真感光体を用いた以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
【0231】
(比較例1)
直径84mmφ、長さ340mmの鏡面アルミニウムパイプ(JIS1050)を用意し、4部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)を溶解したn−ブチルアルコール170部、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30部及び有機シラン化合物の混合物(γ−アミノプロピルトリエトキシシシラン)3部を混合し、攪拌し、下引層形成用塗布液を得た。この下引層形成用塗布液を、ホーニング処理により粗面化された直径84mmφのアルミニウム製の導電性基体上に塗布し、室温で5分間風乾を行った後、50℃で7分間の導電性基体の昇温を行い、50℃で85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れ、10分間、加湿硬化促進処理を行った後、熱風乾燥機に入れて135℃で10分間乾燥を行った。以上により、導電性基体上に下引層を形成した。
【0232】
次に、電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも9.7°, 24.2°,27.3°において明瞭な回折ピークが得られるオキシチタニウムフタロシアニン3重量部を用いたこと以外は実施例3と同様にして単層型感光層を形成した。
【0233】
一方、以下のようにして、中間転写体としての半導電性ベルトを作製した。
即ち、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%))に代えて、アセチレンブラック(電気化学工業社製pH5.7、揮発分0.89%)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.08mmの基材を作製し、これを中間転写体とした。この中間転写体について、表面微小硬度、摩擦係数、体積抵抗率及びヤング率を測定したところ、表面微小硬度はJISA硬度で40度であり、摩擦係数は0.5であり、体積抵抗率は2×1010Ωcmであり、ヤング率は6000MPaであった。
【0234】
そして、電子写真感光体として、上記のようにして作製した電子写真感光体を用い、中間転写体として、上記のようにして作製した中間転写体を用い且つカラー画像形成装置の解像度を600dpiとした以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
(実施例5)
中間転写体として、比較例1のものを用いた以外は実施例1と全く同様にしてカラー画像を形成した。
【0235】
(比較例2)
電子写真感光体として、比較例1の電子写真感光体を用いた以外は実施例1と同様にしてカラー画像を形成した。
【0236】
(画像評価)
実施例1〜5及び比較例1〜2に係るカラー画像形成装置で得られたカラー画像について、次のようにして、初期の画像濃度(1枚印字後の画像濃度)、10000枚印字後の画像濃度、画像解像度の実測値及び転写効率を測定した。結果を表1に示す。ここで、画像濃度については、初期濃度を1.4に設定した画像濃度測定用チャート紙の該当部分を読み取ることにより測定した。また画像解像度は、光学顕微鏡を用いて実測した。更に転写効率は、トナー量を粘着テープに転写して重量を計測することによって、転写前のトナー量(A)と残トナー量(B)を計測し、下記式:
転写効率(%)={(A−B)/A}×100)
に基づいて転写効率を算出した。
【0237】
また初期の画像濃度と10000枚印字後の画像濃度との差を濃度むらとして、以下の基準によりカラー画像の評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1の濃度むらの項目において、括弧中に濃度差を併記した。
○・・・濃度差が0.1未満
△・・・濃度差が0.1以上0.3未満
×・・・濃度差が0.3以上
【0238】
更に、得られたカラー画像(1枚目のカラー画像)について、目視でかぶりを確認し、かぶりの程度については、以下の基準により評価を行った。結果を表1に示す。
○・・・かぶりが確認されず
△・・・実用上問題はないが、ややかぶりが確認された
×・・・実用上問題あり
【表1】
【0239】
表1に示す結果より、実施例1〜4によれば、濃度むらが小さく、かぶりもほとんど確認されないことから、本発明のカラー画像形成装置により、繰り返しカラー画像を形成しても画像再現性が極めて高く色ムラの発生が十分に防止できることが分かった。これに対し、表1に示す結果より、比較例1〜2によれば、濃度むらが大きく、かぶりが実用上使用できない程度に現れていることから、繰り返しカラー画像を形成した場合には、画像再現性が十分でなく、色ムラの発生も十分に防止できないことが分かった。
【0240】
また、表1に示すように、実施例1〜4によれば、カラー画像形成装置の画像解像度を高く設定して1200dpiとし、、カラー画像を10000枚連続して出力しても、画像の再現性が極めて良好であった。これに対し、比較例1〜2の結果によれば、カラー画像形成装置の画像解像度を低く設定して600dpiとしても、カラー画像を10000枚連続して出力した場合、画像再現性が十分でないことが分かった。
【0241】
更に、表1に示す結果より、実施例1の方が、実施例5の場合よりも転写効率が高くなることが分かった。これより、中間転写体として、フッ素系樹脂材料を含む表面層を備えた中間転写体を用いる方が、表面層を有しない中間転写体を用いる場合に比べて転写効率に優れることが分かった。
【0242】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、単層構造で且つガリウムフタロシアニンを含有する感光層を備えるため、カラー画像を繰り返し形成する場合であっても色ムラの発生を十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の一実施形態を概略的に示す部分断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の他の実施形態を概略的に示す部分断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の他の実施形態を概略的に示す部分断面図である。
【図4】本発明のカラー画像形成装置の好適実施形態を示す概略図である。
【図5】中間転写体に圧子を差し込んでいる状態を示す概略図である。
【図6】中間転写体の一例を示す部分側面図である。
【図7】摩擦係数を測定する摩擦係数測定器の一例を示す概略図である。
【図8】(a)は表面層の体積抵抗率を測定する装置であるハイレスターIPの平面図、(b)は、(a)の縦断面図である。
【図9】本発明のカラー画像形成装置の他の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1,1a〜1d,2a〜2d…電子写真感光体、2…導電性基体、3…感光層、5…表面保護層、108…中間転写体、112,212…画像出力媒体。
Claims (13)
- 導電性基体上に単層型の感光層が形成された電子写真感光体であって、
前記感光層がガリウムフタロシアニンを含有することを特徴とする電子写真感光体。 - 前記ガリウムフタロシアニンは、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.6°、10.0°、25.2°、28.0°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン、又はブラッグ角(2θ±0.2°)において少なくとも7.3°、16.5°、25.4°、28.1°に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニンであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層上に表面保護層がさらに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 前記表面保護層は電荷輸送材料を含有することを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
- 前記表面保護層は抵抗制御用微粒子を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体を複数有し、前記電子写真感光体に形成されるトナー像を画像出力媒体に転写してカラー画像を形成することを特徴とするカラー画像形成装置。
- 解像度が1200dpi以上であることを特徴とする請求項6に記載のカラー画像形成装置。
- 解像度が2000dpi以上であることを特徴とする請求項6に記載のカラー画像形成装置。
- 前記電子写真感光体から転写されるトナー像を前記画像出力媒体に転写する中間転写体を更に有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のカラー画像形成装置。
- 前記中間転写体が、樹脂組成物で構成される表面層を有し、前記樹脂組成物がフッ素系樹脂材料を含むことを特徴とする請求項9に記載のカラー画像形成装置。
- 前記樹脂組成物中に、導電剤として、フッ素化カーボンが分散されていることを特徴とする請求項10に記載のカラー画像形成装置。
- 前記電子写真感光体が、前記導電性基体と前記感光層との間に、金属酸化物微粒子を分散した硬化膜層からなる下引層を更に有することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載のカラー画像形成装置。
- 前記導電性基体が、導電性基材の表面を陽極酸化してなることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載のカラー画像形成装置。
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