JP2004198819A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】中間転写機構を備える電子写真装置に搭載され、かつ、長期わたり繰り返し使用される場合であっても、作動環境の変動による電気特性の大きな変動が充分に防止されると共に該電気特性の経時的な低下が充分に防止され、優れた画質の画像を継続的に形成可能な電子写真感光体、並びに、この電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジ及び電子写真装置の提供。
【解決手段】電子写真感光体100は、アルミニウム基体3と、電荷発生物質を含む感光層6と、アルミニウム基体3と感光層6との間に配置される中間層4と、中間層4とアルミニウム基体3との間に配置される金属酸化物からなる酸化膜層2とを有する。そして、中間層4は、加水分解性の特性基を有する有機金属化合物を少なくとも含む塗布液を前記酸化膜層上に塗布することにより形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】電子写真感光体100は、アルミニウム基体3と、電荷発生物質を含む感光層6と、アルミニウム基体3と感光層6との間に配置される中間層4と、中間層4とアルミニウム基体3との間に配置される金属酸化物からなる酸化膜層2とを有する。そして、中間層4は、加水分解性の特性基を有する有機金属化合物を少なくとも含む塗布液を前記酸化膜層上に塗布することにより形成されている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中間転写体を用いて画像を被転写媒体上に形成する中間転写機構を備える電子写真装置に搭載される電子写真感光体、並びに、これを備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真感光体は、高速、かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザービームプリンター等の分野において多く利用されている。これら電子写真装置において用いられる電子写真感光体として、従来からの無機光導電材料を用いた電子写真感光体に比べ、安価で製造性及び安全性の点で優れた利点を有するフタロシアニン系の顔料等の有機光導電材料を電荷発生物質として含有した電子写真感光体が主流を占める様になってきている。
【0003】
このような感光体の中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と電荷を輸送する電荷輸送層とからなる感光層を有する機能分離型感光体は、感度・帯電性及びその繰り返し安定性等、電子写真特性の点で優れており、種々の構成の提案が成され、実用化されている。
【0004】
この機能分離型感光体の場合、現在ではアルミニウム基体等の導電性支持体層上に中間層(下引層)を形成し、その後、中間層上に電荷発生層及び電荷輸送層を順次形成する場合が多い。
【0005】
近年においては、環境問題などの社会的要求から、電子写真感光体の長寿命化が強く望まれており、長期間使用した場合(特に電子写真感光体の表面が摩耗した場合)における電気特性、耐リーク性能及び画質の低下を充分に防止でき、初期に得られる良好な画質の画像を継続的に形成可能な特性を有することが要求されている。
【0006】
特に、近年、電子写真装置においては、コロトロンに代わりオゾン発生が少ない接触帯電方式の帯電装置が用いられるようになってきている。そして、このことに伴い感光層中に異物が混入し易くなり、感光体に局所的な欠陥部位が発生する等の問題が起こり易くなっている。この場合、接触帯電時に感光体の欠陥部位に局所的に高電場がかかり、電気的なピンホールを生じ、これが画質欠陥となる。
特に、電子写真感光体が中間転写機構を備える電子写真装置に搭載された場合には、感光体と中間転写体との接触するため、長期にわたり繰り返し使用すると感光体の損傷が起こり易く、ピンホールリークが発生し易くなる。
【0007】
また、上記のピンホール(ピンホールリーク)は、電子写真装置の作動中において、該装置を構成する部材から発生する異物、ゴミ、キャリア粉等の導電性の異物が感光体に接触又は感光体中に貫入することによっても発生する場合があった。
【0008】
そのため、感光体を長期にわたり繰り返し使用した場合における環境安定性(作動環境に置かれた場合の耐久性)や得られる画像の画質の安定性を改善する観点から、感光層の性能向上のみならず感光層の下地となる中間層の性能向上(繰り返し使用による電荷蓄積性の少ない帯電特性に優れた中間層の開発)や、感光体の構成を変更するなどの様々な検討がなされている。
【0009】
このような試みとしては、導電性支持体層と中間層(下引層)との間に金属酸化物からなる層(酸化膜層)を設けることにより、ピンホールリークの発生による画質の低下を防止することを意図した技術が知られている。例えば、アルミニウム基体上に、酸化膜層、下引層(中間層に相当)、感光層(オキシチタニウムフタロシアニンを含有する)を順次積層した構成を有する電子写真感光体であって、アルミニウム基体を陽極酸化することにより上記酸化膜層を形成した電子写真感光体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、アルミニウム基体(アルミニウム支持体)上に、上記と同様にアルミニウム基体を陽極酸化することにより形成した酸化膜層、シランの加水分解生成物または縮合物からなる薄い親水性化層(中間層に相当)、光導電層(感光層に相当)を順次積層した構成を有する電子写真感光体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
【特許文献1】
特許2718066号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開昭63−50855号公報(請求項1及び2)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上述の特許文献1及び特許文献2に記載の感光体はじめとするアルミニウム基体上に酸化膜層、中間層を順次積層させた構造を有する従来の電子写真感光体では、ピンホールリークの発生による画質の低下を防止できるものの、長期にわたり繰り返し使用すると以下の問題が発生し、優れた画質の画像を継続して形成するには未だ充分なものではないことを見出した。
【0013】
すなわち、上述の酸化膜層を有する従来の電子写真感光体では、中間転写機構を備える電子写真装置に搭載された場合、長期にわたり繰返し使用すると、感光体の帯電時の電位(帯電電位)が初期値から低下する、或いは、いわゆる残留電位の上昇が起こる、などの電気的特性の低下を防止することが充分にできず、これにともなって画像濃度の低下等、画像の画質が低下する問題があった。
【0014】
更に、上述した従来の電子写真感光体では、中間転写機構を備える電子写真装置に搭載された場合、繰り返し使用すると、中間層のブロッキング(電荷注入制御)機能が不充分となる問題があった。またこの場合、繰り返し使用する場合の環境の変化(温度条件及び湿度条件の変化)にともなって中間層の膜抵抗値の変動幅が大きくなる等の感光体の電気特性の変動を充分に低減できず、初期の優れた画質の画像を継続して形成することが極めて困難となる問題があった。
【0015】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、中間転写機構を備える電子写真装置に搭載され、かつ、長期わたり繰り返し使用される場合であっても、作動環境の変動による電気特性の大きな変動が充分に防止されると共に該電気特性の経時的な低下が充分に防止され、優れた画質の画像を継続的に形成可能な電子写真感光体、並びに、この電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、例えば、特許文献1に記載の電子写真感光体のように樹脂を構成材料とする下引層(中間層)を設けると、樹脂の吸湿性により、繰り返し使用する場合の環境の変化(温度条件及び湿度条件の変化)にともなう中間層の膜抵抗値の変動を充分に低減できなくなっていることが、優れた画質の画像を長期にわたり継続して形成できないことに大きく影響していることを見出した。
【0017】
更に、本発明者らは、例えば、特許文献2のように、中間層としてシランの加水分解生成物または縮合物からなる薄い親水性化層を酸化膜層と感光層との間に配置した場合には、中間層の吸湿性が低くなるので中間層の膜抵抗値の変動を低減できる可能性があるものの、詳細なメカニズムについては明確に解明できていないが、これを長期にわたり繰返し使用すると、感光体の帯電時の電位(帯電電位)が初期値から低下する、或いは、いわゆる残留電位の上昇が起こる、などの電気的特性の低下を防止することが充分にできず、画像の画質が低下する問題が依然として解決できないことを見出した(後述の比較例3を参照)。
【0018】
そして、更に本発明者らは、加水分解性の材料を含む塗布液を用いて形成された中間層を採用することが上述の目的を達成可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0019】
すなわち、本発明は、中間転写体を用いて画像を被転写媒体上に形成する中間転写機構を備える電子写真装置に搭載される電子写真感光体であって、
アルミニウム基体と、
電荷発生物質を含む感光層と、
アルミニウム基体と感光層との間に配置される中間層と、
中間層とアルミニウム基体との間に配置されており、金属酸化物からなる酸化膜層と、
を少なくとも有しており、
中間層は、加水分解性の特性基を有する有機金属化合物を少なくとも含む塗布液を酸化膜層上に塗布することにより形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0020】
ここで、本発明において、加水分解性の特性基を有する有機金属化合物(以下、「加水分解性有機金属化合物」という)を構成する金属には、ケイ素は含まれないものとする。
【0021】
本発明の電子写真感光体によれば、上述の加水分解性の特性基を有する有機金属化合物を少なくとも含む塗布液を用いることにより、吸湿性の低い中間層を形成することができるので、繰り返し使用する場合の環境の変化(温度条件及び湿度条件の変化)にともなう中間層の膜抵抗値の変動を充分に低減することが可能となる。また、この中間層を酸化膜層上に配置することにより、長期にわたり繰返し使用しても、帯電時の電位(帯電電位)が初期値から低下する、或いは、いわゆる残留電位の上昇が起こる、などの電気的特性の低下を充分に防止することができる。そのため、本発明の電子写真感光体によれば、長期にわたり繰り返し使用しても優れた画質の画像を継続的に得ることができる。
【0022】
上述の塗布液を用いて形成した中間層を採用することにより、上述の効果をえること、特に長期にわたる繰り返し使用を行っても、帯電電位の低下等の電気特性の低下を充分に防止できることについての詳細な理由について明確には解明されていないが、本発明者らは、以下のように考えている。
【0023】
すなわち、本発明者らは、電子写真装置内での長期使用による電気的ストレスにより酸化膜表面が変質し、電荷注入阻止性能が低下することによるものと考えている。
【0024】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、中間転写手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0025】
上述した本発明の電子写真感光体を備えることにより、本発明のプロセスカートリッジは、長期にわたり繰り返し使用しても優れた画質の画像を継続的に得ることができる。
【0026】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、
電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を少なくとも備えており、
転写手段の転写方式が、トナー像を中間転写体に1次転写し、該中間転写体上の1次転写像を被転写媒体に2次転写する中間転写方式であること、
を特徴とする電子写真装置を提供する。
【0027】
上述した本発明の電子写真感光体を備えることにより、本発明の電子写真装置は、長期にわたり繰り返し使用しても優れた画質の画像を継続的に得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0029】
[第一実施形態]
図1は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、電子写真感光体100は、主として、アルミニウム基体3と、中間層4と、感光層6と、アルミニウム基体3と中間層4との間に配置された酸化膜層2とから構成されている。
【0030】
アルミニウム基体3は、アルミニウム板をポートホール法、マンドレル法等により押し出し管に加工、あるいは抽伸方法により円筒状とした後、引きぬき加工、インパクト加工、しごき加工等により所望の肉厚、外型寸法とすることにより形成されたものである。更に、必要に応じて切削加工などの2次加工が施されていてもよい。
【0031】
酸化膜層2は、金属酸化物からなるものであれば特に限定されないが、製造効率の観点から、酸化剤を含む酸性液体中においてアルミニウム基体3を陽極酸化することにより形成される陽極酸化膜であることが好ましい。また、酸化膜層2は、アルミニウム基体3にベーマイト処理を施して形成してもよい。
【0032】
この場合、アルミニウム基体3には、陽極酸化処理の前に効率よく陽極酸化を行うために脱脂洗浄処理を施すことが好ましい。この脱脂洗浄処理は十分な洗浄効果が得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸、アルカリ、有機溶剤、界面活性剤等の用いる処理や、電解法を用いる処理等の公知の技術を用いてよい。
【0033】
陽極酸化処理は、例えば、硫酸、リン酸、クロム酸、しゅう酸、ホウ酸、スルファミン酸などの酸性液にアルミニウム基体を浸漬浴させることにより行うことができる。ここで、使用する酸としては、特に硫酸が最も好ましく用いられる。
【0034】
硫酸を用いて陽極酸化処理を行う場合、硫酸濃度は20〜300g/L、液温は0℃〜50℃、溶存アルミニウム濃度は1〜30g/L、電解電圧は5〜30Vの範囲の条件が好ましく用いられる。また、得られる酸化膜層2の層厚は0.1〜20μmであることが好ましく、1〜15μmであることがより好ましい。
【0035】
得られる酸化膜層2には、膜の化学的安定性を向上させるための封孔処理を更に施してもよい。この封孔処理は処理後の酸化膜層2について所望の感光体特性(例えば、電気特性、画質特性等)が得られる方法であれば特に限定されず、いかなる方法でももちいることができるが、特に弗化ニッケルを含有水溶液中に浸漬させる方法、酢酸ニッケルを含有水溶液中に浸漬させる方法、蒸気浴による方法、沸騰水に浸漬させる方法等が好ましく用いられる。
【0036】
中間層4は、先に述べたように、加水分解性有機金属化合物を含む塗布液(以下、「中間層形成用塗布液」という)を用いて形成されている。そして、中間層4は、感光層6の帯電時において、アルミニウム基体3から感光層6への電荷の注入を阻止する機能を有する。また、この中間層4は、感光層6を酸化膜層2に対して一体的に接着保持せしめる接着層としても機能する。更に、この中間層4は、アルミニウム基体3の光反射を防止する機能を有していてもよい。
【0037】
ここで、上記の加水分解性有機金属化合物は先に述べた本発明の効果を得ることができるものであれば特に限定されないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、上記の加水分解性有機金属化合物を構成する金属原子は、ジルコニウム、チタン又はアルミニウムであることが好ましい。これらの金属原子をそれぞれ含む有機金属化合物の少なくとも1種が中間層4に含有されていれば、先に述べた本発明の効果をより確実に得ることができる。
【0038】
特に、ジルコニウムを構成元素とする加水分解性有機金属化合物を用いることが好ましく、この場合には、繰り返し使用による帯電電位の低下、残留電位の上昇をより確実に防止でき、環境変化に伴う電気特性の変動幅もより確実に低減できる。更に、同様の観点から、中間層形成用塗布液には、加水分解性有機金属化合物の他に、加水分解性の特性基を有する有機ケイ素化合物(以下、必要に応じて「加水分解性有機ケイ素化合物」という)が含まれていてもよい。
【0039】
ジルコニウムを構成元素とする加水分解性有機金属化合物(以下、必要に応じて「有機ジルコニウム化合物」という)としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0040】
チタンを構成元素とする加水分解性有機金属化合物(以下、必要に応じて「有機チタン化合物」という)としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0041】
アルミニウムを構成元素とする加水分解性有機金属化合物(以下、必要に応じて「有機アルミニウム化合物」という)としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0042】
加水分解性の特性基を有する有機ケイ素化合物(以下、必要に応じて「加水分解性有機ケイ素化合物」という)としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0043】
これらのなかでも特に好ましく用いられる加水分解性有機ケイ素化合物はビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0044】
また、中間層4には、加水分解性有機金属化合物の他に、成膜性向上、厚膜化を容易に行う観点から、バインダー樹脂を含有させてもよい。バインダー樹脂を含有させる場合、中間層形成用塗布液中にバインダー樹脂を添加すればよい。バインダー樹脂としては先に述べた中間層形成用塗布液と混合でき、中間層4を形成しうるものであればいかなるものでも用いることができるが、例えば、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0045】
更に、中間層4には、金属酸化物微粒子を含有させてもよい。金属酸化物微粒子としては所望の特性が得られるものであれば、公知のいかなるものでも用いることができるが、金属酸化物粒子は、酸化錫、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
【0046】
また、上記金属酸化物微粒子は表面処理が施されていてもよい。表面処理は加水分解性の特性基を有する有機化合物(先に述べた、加水分解性有機金属化合物及び/又は、加水分解性有機ケイ素化合物であってもよい。)が好ましく用いられる。なお、「表面処理」とは、金属酸化物粒子の表面に加水分解性の特性基を有する有機化合物を吸着させ、そこで加水分解性の特性基を加水分解反応させる処理を示す。この有機化合物としては所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができる。例えば、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0047】
より具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどのジルコニウムキレート化合物、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタニウムキレート化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などのアルミニウムキレート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの有機化合物は2種以上を任意に組み合せて使用してもよい。更に、これらの表面処理は複数回実施することも可能である。この複数回表面処理の場合、表面処理剤は同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
次に、金属酸化物粒子を表面処理する場合の金属酸化物粒子の表面処理方法について説明する。加水分解性の特性基を有する有機化合物による金属酸化物粒子の表面処理の方法は特に限定されず、例えば、乾式法、湿式法、気相法など公知の方法を使用してよい。
【0049】
例えば、乾式法に基づいて表面処理を行う場合の手順の一例を説明する。先ず、加水分解性有機金属化合物を金属酸化物粒子の表面に吸着させる。このとき、金属酸化物粒子Bをせん断力の大きなミキサで攪拌しながら、加水分解性の特性基を有する有機化合物を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させるか、或いは、加水分解性の特性基を有する有機化合物を溶剤(有機溶媒、水等)に溶解させた液を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させる。また、金属酸化物粒子に対して、加水分解性の特性基を有する有機化合物を溶剤(有機溶媒、水等)に溶解させた液を滴下するか又はこの有機化合物自体を直接的に滴下してもよい。これにより、金属酸化物粒子の表面に加水分解性の特性基を有する有機化合物が均一に吸着させられる。
【0050】
加水分解性の特性基を有する有機化合物を金属酸化物粒子の表面に吸着させる際に溶剤を使用する場合には、溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で、例えば、加水分解性の特性基を有する有機化合物を溶剤(有機溶媒、水等)に溶解させた液を噴霧すると、金属酸化物粒子の表面に加水分解性の特性基を有する有機化合物が均一に吸着される前に溶剤が蒸発し、加水分解性の特性基を有する有機化合物が局部的に凝集してしまい、好ましくない。
【0051】
そして、その後、100℃以上の温度で焼き付け処理を行う。これにより、加水分解性の特性基を有する有機化合物の加水分解反応を十分に進行させることができる。次に、必要に応じて、表面処理後の金属酸化物粒子を解砕する。これにより、金属酸化物粒子の凝集体を解砕することができるので、中間層4中における金属酸化物粒子の分散性を向上させることができる。
【0052】
次に、湿式法に基づいて表面処理を行う場合の手順の一例を説明する。先ず、金属酸化物粒子を溶剤中に、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散させ、次に、これに加水分解性の特性基を有する有機化合物を含む液を添加して攪拌し、表面処理反応を進行させる。その後、この液から蒸留により溶剤を留去する。ろ過による除去方法では未反応の加水分解性有機金属化合物が流出しやすく、所望の特性を得るための加水分解性有機金属化合物量をコントロールし難い欠点があり、好ましくない。
【0053】
また、溶剤除去後に得られる固形物を更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。また、乾式法と同様にこの湿式法においても、表面処理前に金属酸化物粒子の表面吸着水を除去してもよい。この表面吸着水除去方法としては、乾式法と同様に加熱乾燥による除去の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が挙げられる。
【0054】
更に、表面粗さ調整のために中間層4の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。また、表面粗さ調整のための粒子を添加してもよい。添加する粒子としては、樹脂の球状粒子などを用いることができる。
【0055】
中間層形成用塗布液を調整するための溶媒としては、中間層塗布溶剤としては、加水分解性有機金属化合物及び/又はバインダー樹脂を溶解可能な溶媒あればいかなるものでも用いることができる。更に、先に述べた金属酸化物粒子を含有させる場合には、これを分散可能な分散媒となり得るものが好ましい。例えばアルコール系溶剤、芳香族系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等から任意に選択することができる。
【0056】
例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0057】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0058】
中間層4中に金属酸化物粒子を含有させる場合には、金属酸化物粒子を中間層形成用塗布液中に分散させるが、この分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどを用いる方法が挙げられる。
【0059】
更にこの中間層4を酸化膜層2上に設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の公知の方法を用いることができる。
【0060】
中間層4は、層厚が大きすぎる場合には電荷のトラップサイトが増加し、感度の低下や繰り返し使用にともなう残留電位の上昇を引き起こしやすい。したがって、中間層4の層厚は0.1〜7μmの範囲に設定することが好ましい。
【0061】
次に、感光層6について説明する。図1に示すように、感光層6は電荷発生層61と電荷輸送層62とから構成されている。
【0062】
電荷発生層61に含有される顔料(電荷発生物質)は特に限定されず、公知の顔料を使用することができる。
【0063】
赤外光を利用する感光体では、例えば、フタロシアニン顔料、スクアリリウム顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン顔料、ジチオケトピロロピロール顔料を使用することができる。また、可視光レーザを利用する感光体では、例えば、縮合多環顔料、ビスアゾ顔料、ペリレン顔料、トリゴナルセレン、色素増感した金属酸化物等を使用することができる。
【0064】
上述した顔料の中では、優れた画像を得られることから、赤外光を利用する場合はフタロシアニン系顔料を使用することが好ましい。これにより、特に高感度で、繰り返し使用しても良好な画質を安定して得ることのできる電子写真感光体を構成することが容易にできる。
【0065】
フタロシアニン系顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることができる。特に、フタロシアニン系顔料の中でもヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン及びフタロシアニン(配位中心となる金属又は金属イオンを有しないもの)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0066】
クロロガリウムフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が7.4°,16.6°,25.5°,28.3°である位置に回折ピークを少なくとも有するものが好ましい。また、オキソチタニルフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が9.6°,24.1°,27.3°である位置に回折ピークを少なくとも有し、最大ピークを27.3°に有するものが好ましい。
【0067】
また、フタロシアニン顔料以外に、式(4)の配位中心となるGaに結合しているCl原子を−OH基に置換したヒドロキシガリウムフタロシアニンも好ましい。このようなヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°, 25.1°,28.1°である位置に回折ピークを少なくとも有するものが好ましい。
【0068】
更に、このような顔料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
【0069】
上記の湿式粉砕処理において使用される溶剤としては、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、更には数種の混合系、水とこれら有機溶剤の混合系が挙げられる。
【0070】
また、この溶剤は、顔料結晶に対して、1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部の範囲で使用する。更に、処理温度は、0℃〜溶剤の沸点、好ましくは10〜60℃の範囲で行う。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。
【0071】
そして磨砕助剤は顔料に対し0.5〜20倍、好ましくは1〜10倍用いればよい。また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。
【0072】
アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、濃度(質量パーセント濃度)70〜100%、好ましくは95〜100%のものが使用され、溶解温度は、−20〜100℃好ましくは−20〜60℃の範囲に設定される。濃硫酸の量は、顔料結晶の重量に対して、1〜100倍、好ましくは3〜50倍の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水あるいは、水と有機溶剤の混合溶剤、アンモニア水等が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0073】
また、顔料の含有量は、電荷発生層61の全質量に対して、10〜90質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。顔料の含有量がそれぞれ上記の数値範囲の下限値未満となると、十分な感度が得られにくくなる。一方、顔料の含有量がそれぞれ上記の数値範囲の上限値を超えると、帯電性の低下、感度の低下などの弊害が発生する傾向が大きくなる。
【0074】
電荷発生層61に含有されるバインダー樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、広範な絶縁性樹脂から選択して使用することができる。例えば、好ましいバインダー樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができる。
【0075】
また、電荷発生層61に含有されるバインダー樹脂は、絶縁性樹脂の他の樹脂として、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。
【0076】
電荷発生層61用のバインダー樹脂としては、顔料の分散性の観点から、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。なお、上記のバインダー樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を任意に選択して用いてもよい。
【0077】
また、顔料とバインダー樹脂との配合比(質量比)は、電荷発生層61の場合、10:1〜1:10の範囲が好ましい。顔料の質量に対してバインダー樹脂の質量が上記の配合比で示される値未満となると、成膜性が悪くなる等の弊害が発生する傾向が大きくなる。一方、顔料の質量に対してバインダー樹脂の質量が上記の配合比で示される値を超えると、膜中の含有量が相対的に少なくなるため十分な感度が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0078】
更に、電荷発生層61を形成するための塗布液に含まれる有機溶剤は、バインダー樹脂を溶かすことができる溶剤であり、かつ、顔料(電荷発生物質)の結晶型を変化させる影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、公知の有機溶剤を使用することができる。
【0079】
例えば、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等から任意で選択することができる。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。そして、これらの有機溶剤は単独で或いは2種以上を任意に混合して用いてもよい。
【0080】
更に、電荷発生層61の層厚は、良好な電気特性と画質を与えるために、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層61の厚みが0.05μm未満であると、十分な感度を与えることができない。一方、電荷発生層61の厚みが5μmを超えると、帯電性の不良などの弊害を生じさせ易い。
【0081】
電荷発生層61は、顔料(電荷発生物質)、有機溶剤、バインダー樹脂、添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等を混合して塗布液を調製し、これを中間層4上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。また、電荷発生層61は、電荷発生物質を中間層4上に真空蒸着することによっても形成することができる。
【0082】
電荷発生層61の形成用の塗布液を調製するには、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等とともに混合する。顔料を液中に高分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの分散方法を用いることができる。
【0083】
更に、成膜性の観点から、電荷発生層61を形成するための塗布液に含まれる顔料などの分散粒子の粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.15μm以下であることが更に好ましい。分散粒子の粒子径が0.5μmを超えると、電荷発生層61の成膜性が悪くなり、画質欠陥を生じ易い。
【0084】
電荷発生層61の形成用の塗布液を中間層4上に塗布する場合の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0085】
更に、感光層6の電気特性の安定性向上、画質欠陥防止等の観点から電荷発生物質には表面処理が施されていてもよい。この表面処理に使用する表面処理剤としてはカップリング剤等を用いることができるがこれに限定されるものではない。
【0086】
表面処理に用いるカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0087】
これらのなかでも特に好ましく用いられるシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0088】
また、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等の有機ジルコニウム化合物も用いることができる。
【0089】
更に、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等の有機チタン化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物も用いることができる。
【0090】
更に、電荷発生層61には電気特性向上、画質向上等のために上述した以外の種々の添加剤を添加することもできる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾールや2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0091】
上記シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
【0092】
上述したジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0093】
上述したチタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0094】
上述したアルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0095】
上述したシランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物等の添加物は各々単独に用いてもよく、或いは2以上を任意に組み合せて混合物として用いてもよく、同種及び/又は異なる種類のものを可能場合は反応重縮合物として用いてもよい。
【0096】
次に電荷輸送層62について説明する。電荷輸送層62に含有される電荷輸送物質は、特に限定されるものではなく、公知の物質を使用することができる。
【0097】
例えば、2,5-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5-トリフェニル-ピラゾリン、1-[ピリジル-(2)]-3-(p-ジエチルアミノスチリル)-5-(p-ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P-メチル)フェニルアミン、N,N’-ビス(3,4-ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン、ジベンジルアニリン、9,9-ジメチル-N,N’-ジ(p-トリル)フルオレノン-2-アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3-(4’ジメチルアミノフェニル)-5,6-ジ-(4’-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアジン等の1,2,4-トリアジン誘導体、4-ジエチルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、4-ジフェニルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、[p-(ジエチルアミノ)フェニル](1-ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2-フェニル-4-スチリル-キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6-ヒドロキシ-2,3-ジ(p-メトキシフェニル)-ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p-(2,2-ジフェニルビニル)-N,N’-ジフェニルアニリン等のα-スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N-エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質等が挙げられる。
【0098】
更には、電荷輸送物質は、以上例示した化合物の基本構造を主鎖又は側鎖に有する重合体等も挙げられる。そして、これらの電荷輸送材料は、各々単独で使用してもよく又は2種以上を任意に組み合せて使用してもよい。
【0099】
また、電荷輸送層62に含有されるバインダー樹脂は特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるが、電機絶縁性のフィルムを形成することが可能な樹脂が好ましい。
【0100】
例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂。シリコン−アルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。
【0101】
そして、これらのバインダー樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合せて混合して用いてもよい。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送物質との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れているので好ましく用いられる。
【0102】
また、バインダー樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)は電気特性低下、膜強度低下に考慮しつつ任意に設定することができる。この電荷輸送層62の層厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0103】
電荷輸送層62は、電荷輸送物質、有機溶剤、バインダー樹脂等を混合して塗布液を調製し、これを電荷発生層61上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0104】
電荷輸送層62の形成用の塗布液を調製するには、電荷輸送物質、有機溶剤、バインダー樹脂等とともに混合する。電荷輸送物質を液中に高分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの分散方法を用いることができる。
【0105】
更に、成膜性の観点から、電荷輸送層62を形成するための塗布液に含まれる顔料などの分散粒子の粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.15μm以下であることが更に好ましい。分散粒子の粒子径が0.5μmを超えると、電荷輸送層62の成膜性が悪くなり、画質欠陥を生じ易い。
【0106】
更に、電荷輸送層62の形成用の塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0107】
電荷輸送層62の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0108】
[第二実施形態]
図2は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。図2に示す電子写真感光体110は、感光層6を単層構造とした以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0109】
図2に示す感光層6は、図1に示した電荷発生層61と電荷輸送層62に含有される電荷発生物質と電荷輸送物質をはじめとする物質を合わせて含有する層である。
【0110】
感光層6がこのように単層型の場合には、電荷発生物質(顔料等)の含有量は、感光層6の全質量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。また、電荷発生物質の含有量が上記の数値範囲の下限値未満となると、十分な感度が得られにくくなる。一方、電荷発生物質の含有量が上記の数値範囲の上限値を超えると、帯電性の低下、感度の低下などの弊害が発生する傾向が大きくなる。
【0111】
また、このように感光層6が単層型の場合、バインダー樹脂としては、正孔輸送性材料との相溶性の観点から、特にポリカーボネート樹脂及びメタクリル樹脂が好ましく用いられる。更に、これらの樹脂のポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーの中から選択して使用してもよい。なお、上記のバインダー樹脂は、単独あるいは2種以上を任意に組み合せ混合して用いてもよい。
【0112】
この感光層6も、上述した電荷輸送物質、上述した電荷輸送物質、上述した有機溶剤、バインダー樹脂等を混合して塗布液を調製し、上述と同様の方法によりアルミニウム基体3上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0113】
[第三実施形態]
図3は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。図3に示す電子写真感光体120は、感光層6上に保護層5を備えること以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0114】
保護層5は、電子写真感光体120の帯電時の電荷輸送層62の化学的変化を防止したり、感光層6の機械的強度を更に改善する為に用いられる。この保護層5は、硬化性樹脂、電荷輸送物質(電荷輸送性を有する化合物)を含むシロキサン樹脂硬化膜、導電性材料等の材料を、バインダー樹脂中に含有させて形成された膜等から成る。この保護層5は、上記の材料を適当なバインダー樹脂中に含有させた塗布液を感光層6上に塗布することにより形成することができる。
【0115】
保護層5の構成材料として硬化性樹脂を使用する場合、硬化性樹脂は公知の感光体に使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シロキサン樹脂等が挙げられる。
【0116】
保護層5の構成材料として、シロキサン系化合物、特に、電荷輸送物質を含むシロキサン樹脂硬化膜を使用する場合、電荷輸送物質は、公知の感光体に使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、特開平10−95787号公報、特開平10−251277号公報、特開平11−32716号公報、特開平11−38656号公報、特開平11−236391号公報に示された化合物等が挙げられる。
【0117】
また、保護層5に電荷輸送物質を含有させる場合、特に好ましい電荷輸送物質としては、下記一般式(1):
F1[−D1−Si(OR2)a(R1)3-a]b…(1)
[式(1)中、F1は光機能性化合物(光キャリア(正孔又は電子)輸送能を有する化合物)から誘導される有機基を表し、D1は2価の基(可とう性サブユニット)を表し、R1は水素原子、アルキル基、及び、置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれる1種を表し、R2は水素、アルキル基、及び、トリアルキルシリル基からなる群より選ばれる1種を表し、aは1〜3の整数を表し、bは1〜4の整数を表す]
で表される化合物を挙げることができる。
【0118】
一般式(1)中、−Si(OR2)a(R1)3-aで表される部分は、加水分解性基を有する特性基(以下、「置換ケイ素基」という)として機能する。この置換ケイ素基は、隣接する他の置換ケイ素基があると、−Si−基の部分で互いに架橋反応を起こし、隣り合う−Si−基の間に酸素原子が架橋した−Si−O−Si−の結合を3次元的に形成する。即ち、この置換ケイ素基は、保護層5中にいわゆる無機ガラス質ネットワークを形成する役割を担う。
【0119】
上記一般式(1)中、F1で表される有機基としては、光キャリア(正孔又は電子輸送能を有するものであれば特に制限されない。例えば、具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、等の正孔輸送性を有する化合物の骨格、及び、キノン系化合物、フルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性を有する化合物の骨格を有する化合物を用いることができる。
【0120】
一般式(1)中、D1は、具体的には、光電特性を付与するためのF1の部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークの構築に寄与する置換ケイ素基とを結びつける働きを担う2価の基である。また、D1は、堅い反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークの部分に適度な可とう性を付与し、膜(保護層5)としての機械的強靱さを向上させるという働きを担う有機基構造を表す。D1として具体的には、−CnH2n−、−CnH2n-2−、−CnH2n-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、nは1〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、及び、これらの特性基を任意に組み合わせた構造を有する特性基、更にはこれらの特性基の構成原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。
【0121】
一般式(1)中、bは2以上であることが好ましい。bが2以上であると、一般式(1)で表される電荷輸送物質中にSi原子を2つ以上含むことになり、無機ガラス質ネットワークを形成し易くなり、機械的強度が向上する。
【0122】
一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。下記一般式(2)で表わされる化合物は、正孔輸送能を有する化合物(正孔輸送物資)であり、これを保護層5に含有させることは、特に保護層5における電気特性と機械強度特性の向上の観点から好ましい。
【0123】
【化1】
【0124】
[式(2)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のアリール基を表し、Ar5は置換又は未置換のアリール基又はアリーレン基を表し、kは0又は1を表し、Ar1〜Ar5のうちの1〜4つの特性基は下記一般式(3)で表される構造を有する。]
で表される有機基であることが好ましい。
【0125】
−Y1−Si(OR2)aR1 3-a…(3)
[式(3)中、a、R1及びR2はそれぞれ式(1)中のa、R1及びR2と同義であり、Y1は2価の基を示す。]
【0126】
ここで、Y1として具体的には、−CnH2n−、−CαH2α-2−、−CαH2α-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、nは1〜15の整数を表し、αは2〜15の整数を表す)、置換又は未置換の2価のアリール基、−N=CH−、−O−、及び、−COO−からなる群より選択される1種の2価の基を示す。また、Y1は、上記の群から選択される2価の基を任意に組み合わせた構造を有する特性基であってもよい。
【0127】
上記一般式(2)中のAr1〜Ar5としては、下記式(4)〜(10)のうちのいずれかであることが好ましい。
【0128】
【化2】
【0129】
【化3】
【0130】
【化4】
【0131】
【化5】
【0132】
【化6】
【0133】
【化7】
【0134】
−Ar−Z's−Ar−Xm …(10)
【0135】
ここで、式(4)〜(10)中、R5、R6及びR7は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表す。また、R9は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表す。
【0136】
更に、式(4)〜(10)中、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Xは一般式(3)で表される構造を有する特性基を表し、m及びsはそれぞれ0又は1を表し、q及びrは1〜10の整数を表し、tは1〜3の整数を表す。
【0137】
ここで、式(10)中のArとしては、下記式(11)又は(12)で表されるものが好ましい。
【0138】
【化8】
【0139】
【化9】
【0140】
式(11)、(12)中、R10及びR11はそれぞれ先に述べたR9と同義である。また、tは1〜3の整数を表す。
【0141】
また、式(10)中のZ'としては、下記式(13)又は(14)で表されるものが好ましい。
【化10】
【化11】
【0142】
また、先に述べたように、式(4)〜(10)中、Xは一般式(3)で表される構造を有する特性基を示すが、その特性基中のY1としては、先に述べた−CαH2α-2−、−CαH2α-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、αは2〜15の整数を表す)、−N=CH−、−O−、−COO−の他に、−S−、−(CH)β−(βは1〜10の整数を示す)、先に述べた一般式(11)、先に述べた一般式(12)、下記一般式(15)及び(16)で表される特性基が挙げられる。
【0143】
【化12】
【0144】
【化13】
【0145】
ここで、式(16)中、y及びzはそれぞれ1〜5の整数を表し、tは1〜3の整数を表し、先に述べたようにR9は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表す。
【0146】
また、先に述べたように、式(2)中のAr5は置換又は未置換のアリール基又はアリーレン基を表すが、k=0の時には、以下に示す構造群(I)の何れかに当てはまるものが好ましく、更には、構造群(II)の何れかに当てはまるものがより好ましい。
【0147】
[構造群(I)]
すなわち、式(2)中のAr5は、k=0の時には、先に述べた式(4)で表されるもののうちm=1の構造を有するもの、式(5)で表されるもののうちm=1の構造を有するもの、式(6)で表されるもののうちm=1の構造を有するもの、式(7)で表されるもののうちm=1の構造を有するもの、又は、式(10)で表されるもののうちm=1の構造を有するものが好ましい。
【0148】
[構造群(II)]
更に、式(2)中のAr5は、k=0の時には、先に述べた式(4)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するもの、式(5)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するもの、式(6)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するもの、式(7)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するもの、又は、式(10)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するものがより好ましい。
【0149】
また、式(2)中のAr5が、上記構造群(I)の何れか、更には、構造群(II)の何れかの構造をとる場合には、式(10)中のZは、下記一般式(17)〜(24)からなる群より選択される1種であることが好ましい。
【0150】
−(CH2)q− (17)
−(CH2CH2O)r− (18)
【0151】
【化14】
【0152】
【化15】
【0153】
【化16】
【0154】
【化17】
【0155】
【化18】
【0156】
【化19】
【0157】
ここで、式(17)〜(24)中、R12及びR13はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1〜10の整数を表し、tはそれぞれ1〜3の整数を表す。
【0158】
上記式(23)、(24)中のWとしては、下記(25)〜(33)で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。
【0159】
−CH2− …(25)
−C(CH3)2− …(26)
−O− …(27)
−S− …(28)
−C(CF3)2− …(29)
−Si(CH3)2− …(30)
【0160】
【化20】
【0161】
【化21】
【0162】
【化22】
【0163】
ここで、式(32)中、uは0〜3の整数を表す。
【0164】
また、一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開2001−83728号公報における表1〜表55に記載の化合物番号1〜274のものが使用できる。
【0165】
更に、一般式(1)で表される電荷輸送物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合せて併用してもよい。また、一般式(1)で表される電荷輸送物質と共に、硬化膜の機械的強度を更に向上させる目的で、下記一般式(I)で表される化合物を併用してもよい。
B{−Si(OR2)a(R1)3-a}γ …(I)
【0166】
ここで、式(I)中のa、R1及びR2はそれぞれ先に述べた式(1)中のa、R1及びR2と同義であり、Bは2価の有機基を表し、γは2以上の整数を表す。
【0167】
一般式(I)で表される化合物は、先に述べた加水分解性基を有する置換ケイ素基を有している化合物である。この一般式(I)で表される化合物は、置換ケイ素基の部位に含まれる−Si−基の部分が、一般式(1)で表される電荷輸送物質或いは隣接する他の一般式(I)で表される化合物の置換ケイ素基と反応し、隣り合う−Si−基の間に酸素原子が架橋した−Si−O−Si−の結合を3次元的に形成する。即ち、一般式(I)で表される化合物と一般式(1)で表される電荷輸送物質との置換ケイ素基の間で進行する加水分解反応により、保護層5中にいわゆる無機ガラス質ネットワークが形成される。
【0168】
一般式(1)で表される電荷輸送物質も先に述べたようにそれ自体のみで無機ガラス質ネットワークを有する硬化膜(保護層5)を形成することも可能であるが、一般式(I)で表される化合物は2個以上のアルコキシシリル基を有しているので硬化膜の架橋構造が3次元的に形成され易く、より強い機械強度を有するようになると考えられる。また、一般式(I)で表される化合物は、硬化膜の構成材料となることにより、一般式(1)で表される電荷輸送物質におけるD1部分と同様、硬化膜に適度な可とう性を与える役割もある。
【0169】
上記一般式(I)で表される化合物としては、下記一般式(34)〜(38)で表されるものが好ましい。なお、式(34)〜(38)中、T1及びT2はそれぞれ独立に枝分かれしていてもよい2価又は3価の炭化水素基を表す。また、Aは先に述べた加水分解性を有する置換ケイ素基を表す。h、i、jはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。また、式(34)〜(38)で表される化合物は、分子内のAの数が2以上となるように選ばれる。
【0170】
【化23】
【0171】
【化24】
【0172】
【化25】
【0173】
【化26】
【0174】
【化27】
【0175】
以下に、上記一般式(3)で表される化合物の好ましい例を表1に示す。なお、表1中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表す。
【0176】
【表1】
【0177】
保護層5の形成には、一般式(I)で表される化合物と共に、更に架橋反応可能な他の化合物を併用しても良い。このような化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコン系ハードコート剤を用いることができる。
【0178】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0179】
市販のハードコート剤としては、KP-85、CR-39、X-12-2208、X-40-9740、X-41-1007、KNS-5300、X-40-2239 (以上、信越シリコーン社製)、及びAY42-440、AY42-441、AY49-208 (以上、東レダウコーニング社製)、等が挙げられる。
硬化型表面層(保護層5)には、表面潤滑性を付与する目的でフッ素原子含有化合物を添加できる。表面潤滑性を向上させることによりクリーニング部材との摩擦係数が低下し、耐摩耗性を向上させることができる。また、感光体表面に対する放電生成物、現像剤及び紙粉等の付着を防止する効果も有し、感光体の寿命向上に役立つ。
【0180】
フッ素含有化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素原子含有ポリマーをそのまま添加するか、或いはそれらポリマーの微粒子を添加することができる。また、一般式(1)で表される化合物により形成される硬化膜(保護層5)の場合、フッ素含有化合物としては、アルコキシシランと反応できるものを添加し、架橋膜の一部として構成するのが望ましい。そのようなフッ素原子含有化合物の例として、(トリデカフルオロ -1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3-(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0181】
フッ素含有化合物の添加量としては、20質量%以下とすることが好ましい。これを越えると、架橋硬化膜(保護層5)の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0182】
硬化型表面層(保護層5)は十分な耐酸化性を有しているが、更に強い耐酸化性を付与する目的で、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系或いはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、等の公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0183】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、等が挙げられる。
【0184】
硬化型表面層(保護層5)には公知の塗膜形成に用いられるその他の添加剤を添加することも可能であり、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、界面活性剤、等公知のものを用いることができる。
【0185】
硬化型表面層(保護層5)を形成するためには、前述の各種材料、及び各種添加剤の混合物を感光層6の上に塗布し、加熱処理する。これにより、3次元的に架橋硬化反応を起こし、強固な硬化膜を形成する。加熱処理の温度は、下層である感光層6に影響しなければ特に制限はないが、室温〜200度、特に100〜160度に設定するのが好ましい。
【0186】
硬化型表面層(保護層5)の形成において、架橋硬化反応を行う際には無触媒で行なってもよいが、適切な触媒を用いてもよい。触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、等の酸触媒、アンモニア、トリエチルアミン等の塩基、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、オクエ酸第一錫等の有機錫化合物、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン化合物、有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0187】
保護層5に導電性材料を含有させる場合、例えば、導電性材料としては、N,N'-ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、これらの金属酸化物微粒子を被覆したものが挙げられる。
【0188】
この保護層5に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
【0189】
保護層5には酸化防止剤を含有させることができる。酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル フェノール、スチレン化フェノール、n-オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル 4'-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチル フェノール)、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート、4,4'-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチル-フェノール)、4,4'-チオ-ビス-(3-メチル 6-t-ブチル フェノール)、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート]-メタン、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル フェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチル エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0190】
ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-ベンジル-7,7,9,9-テトラメチル-3-オクチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]ウンデカン-2,4-ジオン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイミル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,3,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物等が挙げられる。
【0191】
有機イオウ系酸化防止剤としてジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3'-チオジプロピオネート、2-メルカプト ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0192】
有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4-ジ-t-ブチル フェニル)-フォスフィート等の公知の酸化防止剤の他、シロキサン樹脂と結合可能な水酸基、アミノ基、アルコキシシリル基等の官能基を有する酸化防止剤等が挙げられる。
【0193】
更に、保護層5にはシリカやPTFEのような微粒子を含有させることもできる。保護層5の厚みは1〜20μm、好ましくは1〜10μmが適当である。保護層5を硬化型表面層として形成する場合は、その層厚は0.5〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることより好ましい。
【0194】
更にこの保護層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0195】
塗布に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独或いは2種以上混合して用いることができるが、できるだけ下層を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。また、保護層5を硬化型表面層として形成する場合は、塗布を容易にするため、必要に応じて以下の溶剤を添加して用いることができる。具体的には、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、等の通常の有機溶剤を単独或いは2種以上混合して用いることができる。
【0196】
[第四実施形態]
図4は、本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。図4に示す電子写真感光体130は、感光層6を単層構造とし、感光層6上に保護層5を備える以外は図2に示した電子写真感光体110と同様の構成を有する。
【0197】
以上、本発明の電子写真感光体の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではない。
【0198】
例えば、本発明の電子写真感光体の感光層には、図1及び図3に示した感光体100及び120のように2層からなる構成の場合、図2及び図4に示した感光体110及び130のように単層構造の場合の何れにおいても、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤・光安定剤・熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。
【0199】
例えば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0200】
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル フェノール、スチレン化フェノール、n-オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル 4'-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチル フェノール)、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート、4,4'-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチル-フェノール)、4,4'-チオ-ビス-(3-メチル 6-t-ブチルフェノール)、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート]-メタン、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル フェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチル エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0201】
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-ベンジル-7,7,9,9-テトラメチル-3-オクチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]ウンデカン-2,4-ジオン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイミル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,3,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物などが挙げられる。
【0202】
有機イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3'-チオジプロピオネート、2-メルカプト ベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4-ジ-t-ブチル フェニル)-フォスフィートなどが挙げられる。
【0203】
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われフェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
【0204】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。例えば、ベンゾフェノン系光安定剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシ ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシ ベンゾフェノン、2,2'-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシ ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0205】
ベンゾトリアゾール系系光安定剤としては、2-(-2'-ヒドロキシ-5'メチル フェニル-)-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3'',4'',5'',6''-テトラ-ヒドロフタルイミド-メチル)-5'-メチルフェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(-2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル 5'-メチルフェニル-)-5-クロロ ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル 5'-メチルフェニル-)-5-クロロ ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-t-ブチルフェニル-)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチル フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ 3',5'-ジ-t-アミル フェニル-)-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0206】
その他の化合物としては、2,4,ジ-t-ブチルフェニル 3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチル-ジチオカルバメートなどがある。
【0207】
また、感光層6には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
【0208】
使用可能な電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o-ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。
【0209】
これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、−Cl,−CN,−NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましく用いられる。更に、本発明の感光層形成用塗布液には、塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
【0210】
以上説明した本発明の本発明の電子写真感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどの電子写真装置や、このような電子写真装置に備えられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また、本発明の電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また本発明の電子写真感光体は帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式の電子写真装置に搭載されても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【0211】
次に、本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0212】
図5は、本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。より具体的には、図5に示す電子写真装置200は中間転写方式の電子写真装置(例えば、いわゆるタンデム型のデジタルカラープリンター等)であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
【0213】
ここで、電子写真装置200に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。例えば、先に述べた電子写真感光体100が搭載されている。
【0214】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d(電子写真感光体を帯電させる帯電手段)、現像装置404a〜404d(露光手段により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段)、1次転写ロール410a〜410d{現像手段により形成されたトナー像を後述の中間転写ベルト409(中間転写体)に1次転写するための転写手段}、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409(1次転写像を被転写媒体500に転写する中間転写体)を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0215】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源(帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0216】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0217】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、更には相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0218】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合中間転写体の基材として用いる樹脂材料としては、従来公知の樹脂を用いることができる。
【0219】
例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。更に、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いることができる。
【0220】
特に、ポリイミド樹脂は、高ヤング率材料であることから、駆動時(支持ロール、クリーニングブレード等の応力)による変形が少ないので、色ズレ等の画像欠陥が生じにくい中間転写体となる。
【0221】
例えば、中間転写ベルト409は以下の手順で製造することができる。すなわち、略等モルのテトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体とジアミンとを所定の溶媒中で重合反応させてポリアミド酸溶液を得る。このポリアミド酸溶液を円筒状金型に供給・展開して膜(層)形成を行った後、さらにイミド転化を行うことによって、ポリイミド樹脂からなる中間転写ベルト409を得ることができる。
【0222】
かかるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0223】
【化28】
【0224】
ここで、式(39)中、Rは脂肪族鎖式炭化水素基、脂肪族環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基、並びにこれらの炭化水素基に置換基が結合した基からなる群より選ばれる4価の有機基を表す
【0225】
より具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物などが例示される。
【0226】
また、ジアミンの具体例としては、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジクロロベンジジン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3'−ジメチル4,4'−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3'−ジメチルベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ピペラジン、H2N(CH2)3O(CH2)2O(CH2)NH2、H2N(CH2)3S(CH2)3NH2、H2N(CH2)3N(CH3)2(CH2)3NH2などが挙げられる。
【0227】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点から極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等の低分子量のものがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0228】
本発明では、中間転写ベルト409の膜抵抗を調整するために、ポリイミド樹脂中にカーボンを分散してもよい。カーボンの種類は特に限定されないが、カーボンブラックの酸化処理によりその表面に酸素含有官能基(カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)が形成された酸化処理カーボンブラックを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂中に酸化処理カーボンブラックを分散すると、電圧を印可したときに酸化処理カーボンブラックに過剰な電流が流れるため、ポリイミド樹脂が繰返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくくなる。
【0229】
また、酸化処理カーボンブラックはその表面に形成された酸素含有官能基によりポリイミド樹脂中への分散性が高いので、抵抗バラツキを小さくすることができると共に電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起こりにくくなる。従って、転写電圧による抵抗低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、さらに環境による抵抗の変化の少ない、用紙走行部が白く抜けること等の画質欠陥の発生が抑制された高画質を得ることができる中間転写ベルトを得ることができる。
【0230】
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを高温雰囲気下で空気と接触、反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、高温下での空気酸化後、低温下でオゾン酸化する方法などにより得ることができる。
【0231】
また、酸化処理カーボンとして、三菱化学製のMA100(pH3.5、揮発分1.5%)、同,MA100R(pH3.5、揮発分1.5%)、同MA100S(pH3.5、揮発分1.5%)、同#970(pH3.5、揮発分3.0%)、同MA11(pH3.5、揮発分2.0%)、同#1000(pH3.5、揮発分3.0%)、同#2200(pH3.5,揮発分3.5%)、同MA230(pH3.0、揮発分1.5%)、同MA220(pH3.0、揮発分1.0%)、同#2650(pH3.0、揮発分8.0%)、同MA7(pH3.0、揮発分3.0%)、同MA8(pH3.0、揮発分3.0%)、同OIL7B(pH3.0、揮発分6.0%)、同MA77(pH2.5、揮発分3.0%)、同#2350(pH2.5、揮発分7.5%)、同#2700(pH2.5、揮発分10.0%)、同#2400(pH2.5、揮発分9.0%);デグサ社製のプリンテックス150T(pH4.5、揮発分10.0%)、同スペシャルブラック350(pH3.5、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック100(pH3.3、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック250(pH3.1、揮発分2.0%)、同スペシャルブラック5(pH3.0、揮発分15.0%)、同スペシャルブラック4(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック4A(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック550(pH2.8、揮発分2.5%)、同スペシャルブラック6(pH2.5、揮発分18.0%)、同カラーブラックFW200(pH2.5、揮発分20.0%)、同カラーブラックFW2(pH2.5、揮発分16.5%)、同カラーブラックFW2V(pH2.5、揮発分16.5%);キャボット社製MONARCH1000(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1300(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1400(pH2.5、揮発分9.0%)、同MOGUL-L(pH2.5、揮発分5.0%)、同REGAL400R(pH4.0、揮発分3.5%)、などの市販品を用いてもよい。
【0232】
このようにして得られる酸化処理カーボンブラックは、一部に過剰な電流が流れ、繰返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくく、更に、その表面に付着する酸素含有官能基の効果で、ポリイミド中への分散性が高く、抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起き難くなる。その結果、転写電圧による抵抗低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、更に環境による抵抗の変化の少ない、用紙走行部が白く抜けること等の画質欠陥の発生が抑制された高画質を得ることができる中間転写体となる。
【0233】
上記の酸化処理カーボンは、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性の相違により導電性が異なるがこれらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、実質的に導電性の異なるものを2種以上組み合わせて用いることが好ましい。このように物性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを優先的に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して表面抵抗率を調整すること等が可能である。
【0234】
酸化処理カーボンブラックとして具体的には、SPECIAL BLACK4(デグサ社製、pH3.0、揮発分:14.0%)、SPECIAL BLACK250(デグサ社製、pH3.1、揮発分:2.0%)等が挙げられる。
【0235】
これら酸化処理カーボンブラックの含有量は、ポリイミド樹脂に対して10〜50質量%が好ましく、より好ましくは12〜30質量%である。当該含有量が10質量%未満であると、電気抵抗の均一性が低下し、耐久使用時の表面抵抗率の低下が大きくなる場合があり、一方、50質量%を超えると、所望の抵抗値が得られにくく、また、成型物として脆くなるため好ましくない。
【0236】
2種類以上の酸化処理カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液の製造方法としては、溶媒中に2種類以上の酸化処理カーボンブラックを予め分散した分散液中に上記酸二無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合する方法、2種類以上の酸化処理カーボンブラックを各々溶媒中に分散させ2種類以上のカーボンブラック分散液を作製し、この分散液に酸無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合させた後、各々のポリアミド酸溶液を混合する方法、などが挙げられる。
【0237】
中間転写ベルト409は、このようにして得られたポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給・展開して被膜とし、加熱によりポリアミド酸をイミド転化させることにより得られる。かかるイミド転化の際には、所定の温度で0.5時間以上保持することによって、良好な平面度を有する中間転写ベルトを得ることができる。
【0238】
ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給する際の供給方法としては、ディスペンサーによる方法、ダイスによる方法などが挙げられる。ここで、円筒上金型としては、その内周面が鏡面仕上げされたものを用いることが好ましい。
【0239】
また、金型に供給されたポリアミド酸溶液から被膜を形成するとしては、加熱しながら遠心成形する方法、弾丸状走行体を用いて成形する方法、回転成形する方法などが挙げられ、これらの方法により均一な膜厚の被膜が形成される。
【0240】
このようにして形成された被膜をイミド転化させて中間転写ベルトを成形する方法としては、(i)金型ごと乾燥機中に入れ、イミド転化の反応温度まで昇温する方法、(ii)ベルトとして形状を保持できるまで溶媒の除去を行った後、金型内面から被膜を剥離して金属製シリンダ外面に差し替えた後、このシリンダごと加熱してイミド転化を行う方法などが挙げられる。本発明においては、得られる中間転写ベルトの表面のダイナミック硬度が上記の条件を満たせば上記(i)、(ii)のいずれの方法でイミド転化を行ってもよいが、方法(ii)によりイミド転化を行うと、平面度及び外表面精度が良好な中間転写体を効率よく且つ確実に得ることができるので好ましい。以下、方法(ii)について詳述する。
【0241】
方法(ii)において、溶媒を除去する際の加熱条件は、溶媒を除去できれば特に制限されないが、加熱温度は80〜200℃であることが好ましく、加熱時間は0.5〜5時間であることが好ましい。このようにしてベルトとしてそれ自身形状を保持することができるようになった成形物は金型内周面から剥離されるが、かかる剥離の際に金型内周面に離型処理を施してもよい。
【0242】
次いで、ベルト形状として保持できるまで加熱・硬化させた成形物を、金属製シリンダ外面に差し替え、差し替えたシリンダごと加熱することにより、ポリアミド酸のイミド転化反応を進行させる。かかる金属製シリンダとしては、線膨張係数がポリイミド樹脂よりも大きいものが好ましく、また、シリンダの外径をポリイミド成形物の内径より所定量小さくすることで、ヒートセットを行うことができ均一な膜厚でムラのない無端ベルトを得ることができる。
【0243】
また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)は、1.2〜2.0μmであることが好ましい。金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が1.2μm未満であると、金属製シリンダ自身が平滑過ぎるため、得られる中間転写ベルトにおいてベルトの軸方向に対する収縮による滑りが発生しないため、延伸がこの工程で行われ、膜厚のバラツキや平面度の精度の低下が発生する傾向にある。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が2.0μmを超えると、金属製シリンダ外面がベルト状中間転写体の内面に転写し、さらには外面に凹凸を発生させ、これにより画像不良が発生しやすくなる傾向にある。なお、本発明でいう表面粗度とはJIS B601に準じて測定されるRaをいう。
【0244】
また、イミド転化の際の加熱条件としては、ポリイミド樹脂の組成にもよるが、加熱温度が220〜280℃、加熱時間0.5〜2時間であることが好ましい。このような加熱条件でイミド転化を行うと、ポリイミド樹脂の収縮量がより大きくなるため、ベルトの軸方向についての収縮を緩やかに行うことにより、膜厚バラツキや平面度の精度の低下を防ぐことができる。
【0245】
このようにして得られたポリイミド樹脂からなる中間転写ベルトの外面の表面粗度(Ra)は、1.5μm以下であることが好ましい。中間転写体の表面粗度(Ra)が1.5μmを超えるとがさつき等の画像欠陥が発生しやすくなる傾向にある。なお、がさつきの発生は、転写の際に印加される電圧や剥離放電による電界がベルト表面の凸部に局所的に集中して凸部表面が変質することによって、新たな導電経路の発現により抵抗が低下し、その結果得られる画像の濃度低下が起こることに起因すると本発明者らは推察する。
【0246】
ポリイミド樹脂の組成にもよるが、イミド転化の際の加熱条件でこの領域において、最も収縮量が大きくなるため、ベルトの軸方向についての収縮を緩やかに行うことにより、層厚バラツキや平面度の精度の低下を防ぐことができる。このような加熱工程を経た中間転写体は、その平面度が5mm以下となるが、好ましくは、3mm以下が望ましい。平面度が5mm以下ではガサツキがなく、色ずれも少ない。しかしベルト端部が上下にハネている場合5mm以下でも中間転写体を使用中に破断する事はないが、周辺部材に接触したあとが残ることが希にある。更に、平面度が3mm以下になると中間転写体を使用中に周辺部材に接触する事もなく色ずれもほとんどなくなる。
【0247】
また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
【0248】
更に、図6は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、中間転写体20(中間転写体手段)、クリーニング装置(クリーニング手段)13、露光のための開口部18、及び、除電露光のための開口部17を取り付けレール16を用いて組み合せ、そして一体化したものである。また、プロセスカートリッジ300は、転写手段12の転写方式が、トナー像を中間転写体20に1次転写し、該中間転写体20上の1次転写像を被転写媒体に2次転写する中間転写方式であるを搭載していることを特徴とする。
【0249】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。また、
【0250】
なお、本発明の電子写真装置及びプロセスカートリッジにおいて、帯電手段(帯電用部材)は、従来から公知のコロトロン、スコロトロンによる非接触方式や、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電チューブ等による接触帯電方式を採用することができる。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、或いはローラー状等何れでもよいが、特にローラー状部材が好ましい。通常、ローラー状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0251】
ローラー状部材は、感光体に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能する。しかし、ローラー部材に何らかの駆動手段を取り付け、感光体とは異なる周速度で回転させ、帯電させても良い。芯材の材質としては導電性を有するもので、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。またその他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
【0252】
弾性層の材質としては導電性或いは半導電性を有するもので、一般にはゴム材に導電性粒子或いは半導電性粒子を分散したものである。ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。
【0253】
導電性粒子或いは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO-Al2O3、SnO2-Sb2O3、In2O3-SnO2、ZnO- TiO2、MgO- Al2O3、FeO-TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いることができ、これらの材料は単独或いは2種以上混合して用いても良い。
【0254】
抵抗層および保護層の材質としては結着樹脂に導電性粒子或いは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したもので、抵抗率としては103〜1014Ωcmであることが好ましく、105〜1012Ωcmであることがより好ましく、107〜1012Ωcmであることが更に好ましい。また膜厚としては0.01〜1000μmであることが好ましく、0.1〜500μmであることがより好ましく、0.5〜100μmであることが更に好ましい。
【0255】
バインダー樹脂としてはアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン 樹脂等が用いられる。
【0256】
導電性粒子或いは半導電性粒子としては弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が用いられる。また必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0257】
これらの導電性部材を用いて感光体を帯電させる方法としては、導電性部材に電圧を印加するが、印加電圧は直流電圧、或いは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vが好ましく、特に100〜1500Vが好ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800V、好ましくは800〜1600V、更に好ましくは1200〜1600Vが好ましい。交流電圧の周波数は50〜20000Hz、好ましくは100〜5000Hzである。
【0258】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される帯電手段について具体的に説明すると、帯電手段としては、特に制限はなく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器が挙げられる。これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。この帯電手段は、電子写真感光体に対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0259】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される露光手段について具体的に説明すると、露光手段としては、特に制限はなく、例えば、電子写真感光体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。
【0260】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される現像手段について具体的に説明すると、現像手段としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器等が挙げられる。又、トナーとしては、機械的な粉砕方や化学重合で作られる。トナーの形状としては不定形なものから球形のものが挙げられる。
【0261】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される第一転写手段(中間転写手段)について具体的に説明すると、第一転写手段(中間転写手段)としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明においては、上記転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。
【0262】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される第二転写手段について具体的に説明すると、第二転写手段としては、先に述べた第一転写手段として例示した転写ローラ等の接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等が挙げられる。これらの中でも、第一転写手段と同様に接触型転写帯電器が好ましい。転写ローラ等の接触型転写帯電器により強く押圧するようにすると、画像の転写状態を良好な状態に維持させることができる。また、中間転写体を案内するローラの位置で転写ローラ等の接触型転写帯電器を押圧すると、中間転写体から被転写体に対してトナー像を移転させる作用を良好な状態で行うことが可能になる。
【0263】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される光除電手段について具体的に説明すると、光除電手段としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。
【0264】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用されるクリーニング手段について具体的に説明すると、クリーニング手段としては、特に制限はなく、それ自体公知のクリーニング装置等を用いればよい。例えば、ウレタン製のブレードやクリーニングブラシ等が挙げられる。
【0265】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される定着手段について具体的に説明すると、定着手段としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
【0266】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0267】
以下に示す手順により図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する実施例1及び実施例2、並びに、比較例1〜比較例3の電子写真感光体を作製した。
【0268】
(実施例1)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0269】
先ず、円盤状のアルミニウム基体(直径:30φ、厚さ:1mm)を硫酸水溶液(濃度150g/L)中に浸漬し、アルミニウム基体を陽極として陽極酸化処理を行い、酸化膜層(層厚:7μm)を形成した。陽極酸化処理条件は、硫酸水溶液温度20度、1A/dm2×30分、電界電圧15Vとした。
【0270】
次に、加水分解性有機金属化合物としてのジルコニウム化合物(商品名:「オルガチックスZC540」、松本製薬工業社製):10質量部、シランカップリング剤としてのγ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:「A1110」、日本ユニカー社製):1質量部、i-プロピルアルコール:40質量部、n-ブチルアルコール:20質量部からなる中間層用塗布液を調製した。
【0271】
次に、この中間層用塗布液を、アルミニウム基体の酸化膜層上に浸漬コーティング法により塗布し、150℃において10分間加熱乾燥し、中間層(層厚:0.1μm)を形成した。
【0272】
次に、中間層上に2層構造の感光層を形成した。まず、電荷発生物質としてのCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン:15質量部、バインダー樹脂となる塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:「VMCH」、日本ユニカー社製):10質量部、n-ブチルアルコール:300質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間混合した。
【0273】
得られた分散液を電荷発生層形成用の塗布液として中間層上に浸漬塗布し、乾燥して、電荷発生層(層厚:0.2μm)を形成した。
【0274】
更に、N,N'-シ゛フェニル-N,N'-ヒ゛ス(3-・`ルフェニル)-[1、1']ヒ゛フェニル-4,4'-シ゛アミン:4質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万):6質量部とをクロロベンゼン:80質量部に加えて溶解した。得られた分散液を電荷輸送層形成用の塗布液として電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、40分の乾燥を行うことにより電荷輸送層(層厚:25μm)を形成した。これにより感光体を完成した。
【0275】
(実施例2)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0276】
先ず、実施例1と同様の手順及び条件で、円盤状のアルミニウム基体(直径:30φ、厚さ:1mm)に陽極酸化処理を施し、酸化膜層(層厚:7μm)を形成した。
【0277】
次に、n-ブチルアルコール170質量部にポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM-S、積水化学社製):4質量部を溶解した液を調製した。次に、この液に、加水分解性有機金属化合物としてアセチルアセトンジルコニウムブトキシド(商品名:「オルガチックスZC540」、松本製薬工業社製):30質量部、シランカップリング剤としてのγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:「A1110」、日本ユニカー社製):3質量部を添加して混合し、撹拌して中間層用塗布液を調製した。
【0278】
次に、この中間層用塗布液を、アルミニウム基体の酸化膜層上に塗布し、室温で5分間風乾を行った。その後、この積層体を80℃、絶対湿度:144g/kg(相対湿度:60%RH)の条件に保った恒温恒湿槽内にいれて20分間加湿処理を施し、中間層となる前の層の硬化促進を行った。次に、170℃、絶対湿度:4g/kgで10分間の硬化処理を行い、中間層(層厚:0.1μm)を形成した。
【0279】
次に、実施例1と同様の手順及び条件で電荷発生層と電荷輸送層とを順次形成し、電子写真感光体を作製した。
【0280】
(実施例3)
以下の手順にて図3に示した電子写真感光体120と同様の構成を有する感光体を作製した、
【0281】
先ず、実施例1と同様の手順及び条件で、円盤状のアルミニウム基体(直径:30φ、厚さ:1mm)に陽極酸化処理を施し、酸化膜層(層厚:7μm)を形成した。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、前記酸化膜層上に中間層、電荷発生層を形成した。
【0282】
次に、N,N'-シ゛フェニル-N,N'-ヒ゛ス(3-・`ルフェニル)-[1、1']ヒ゛フェニル-4,4'-シ゛アミン:4質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万):6質量部とをクロロベンゼン:80質量部に加えて溶解した。得られた分散液を電荷輸送層形成用の塗布液として電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、40分の乾燥を行うことにより電荷輸送層(層厚:22μm)を形成した。
【0283】
次に、下記式(40)で表される化合物2質量部、メチルトリメトキシシラン2質量部、テトラメトキシシラン0.5質量部及びコロイダルシリカ0.3質量部を、イソプロピルアルコール5質量部、テトラヒドロフラン3質量部及び蒸留水0.3質量部の混合液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:「アンバーリスト15E」)0.5質量部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。なお、式(40)中、「Me」はメチル基を示し、「i-Pr」はイソプロピル基を示す。
【0284】
【化29】
【0285】
次に、加水分解後の反応混合物からイオン交換樹脂を濾過分離し、その濾液に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(acac)3)0.1質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4質量部を加えて保護層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、170℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚約3μmの保護層を形成して感光体を得た。
【0286】
(実施例4)
以下の手順にて図3に示した電子写真感光体120と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0287】
先ず、実施例1と同様の手順及び条件で、円盤状のアルミニウム基体(直径:30φ、厚さ:1mm)に陽極酸化処理を施し、酸化膜層(層厚:7μm)を形成した。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、前記酸化膜層上に中間層、電荷発生層を形成した。
【0288】
次に、下記式(41)で表される化合物4質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万):6質量部とをクロロベンゼン:80質量部に加えて溶解した。得られた分散液を電荷輸送層形成用の塗布液として電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、40分の乾燥を行うことにより電荷輸送層(層厚:22μm)を形成した。なお、式(41)中、「Me」はメチル基を示す。
【0289】
【化30】
【0290】
次に、下記式(42)で表される化合物2質量部、メチルトリメトキシシラン2質量部、テトラメトキシシラン0.5質量部及びコロイダルシリカ0.3質量部を、イソプロピルアルコール5質量部、テトラヒドロフラン3質量部及び蒸留水0.3質量部の混合液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:「アンバーリスト15E」)0.5質量部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。なお、式(42)中、「Me」はメチル基を示す。
【0291】
【化31】
次に、加水分解後の反応混合物からイオン交換樹脂を濾過分離し、その濾液に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(acac)3)0.1質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4質量部を加えて保護層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、170℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚約3μmの保護層を形成して感光体を得た。
【0292】
(比較例1)
実施例1で用いたアルミニウム基体(鏡面切削アルミニウム基体)に陽極酸化処理を施さず、アルミニウム基体上に直接中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次設けた構成(酸化膜層を設けない構成)とした以外は、実施例1と同様の手順及び条件により電子写真感光体を作製した。
【0293】
(比較例2)
実施例1で配置した中間層を設けない構成とした以外は、実施例1と同様の手順及び条件により電子写真感光体を作製した。
【0294】
(比較例3)
実施例1で用いた陽極酸化処理を施したアルミニウム基体に陽極酸化処理を施さず、アルミニウム基体上にN-β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:「KBM602」、信越化学社製)のメタノール20質量%液を塗布することで形成された中間層を設けた以外は、実施例1と同様の手順及び条件により電子写真感光体を作製した。
【0295】
[電子写真感光体の電子写真特性評価試験]
(1)使用初期の特性評価(初期電位測定)
実施例1及び実施例2並びに比較例1〜比較例3の電子写真感光体をレーザープリンタ−スキャナー(商品名:「Docu Print C620」の改造機、富士ゼロックス社製)に搭載し、それぞれの電子写真感光体の電子写真特性を以下のように評価した。
【0296】
常温常湿(20℃、40%RH)環境下、グリッド印加電圧−700Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電させたときの各電子写真感光体の表面の電位A[V]を測定した。次に、780nmの半導体レーザーを用いて、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせ、このときの各電子写真感光体の表面の電位B[V]を測定した。続いて、放電させてから3秒後各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面の電位C[V]を測定した。
【0297】
ここで、電位Aの値が高いほど、電子写真感光体の受容電位が高いので、コントラストを高く取ることができることになる。また、電位Bの値が低いほど高感度な電子写真感光体であることになる。更に、電位Cの値が低いほど残留電位が少なく、画像メモリーやいわゆるカブリが少ない電子写真感光体と評価される。これらの結果を表2に示す。
【0298】
(2)繰り返し使用後の特性評価
上述の(1)で説明した操作を1万回繰り返し、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。これらの結果を表2に示す。
【0299】
(3)使用環境の変化に対する安定性評価
上記の操作を低温低湿(10℃、15%RH)、高温高湿(28℃、85%RH)の2つの異なる環境下で行い、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。そして、これらの異なる環境間での電位A〜電位Cの値の変動量(ΔA、ΔB、ΔC)を測定し、使用環境の変化に対する各電子写真感光体の安定性評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0300】
(4)1万枚プリント後の画質評価
実施例1及び実施例2並びに比較例1〜比較例3の電子写真感光体を図11と同様の構造を有する接触帯電装置、中間転写装置を有するフルカラープリンター(商品名:「Docu Print 2220」、富士ゼロックス社製)に搭載し、1万枚の紙への連続プリントテストを行った。
【0301】
そして1万枚プリント後の画質を、「異常なし」;良好な画質が得られた、「リーク発生」;感光体に絶縁破壊痕確認、「全面カブリ」;紙面全体(100mm×200mm)に微細な黒点(直径0.15mm以下)が多数(5000個以上)確認できた、「黒点多発」;紙面全体(100mm×200mm)に大きな黒点(直径0.2mm以上)が多数(100個以上)確認できた、とした評価基準のもとで評価した。これらの結果を表2に示す。
【0302】
【表2】
【0303】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1及び実施例2の感光体を用いた場合には、連続1万枚のプリントテストを行っても、リーク欠陥の発生も認められず、良好な画質の画像を継続して得ることが確認された。
【0304】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、中間転写機構を備える電子写真装置に搭載され、かつ、長期わたり繰り返し使用される場合であっても、作動環境の変動による電気特性の大きな変動が充分に防止されると共に該電気特性の経時的な低下が充分に防止され、優れた画質の画像を継続的に形成可能な電子写真感光体を提供することができる。そして、このような電子写真感光体を備えることにより、長期にわたり繰り返し使用しても優れた画質の画像を継続的に得ることのできるプロセスカートリッジ並びに電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
2…酸化膜層、3…アルミニウム基体、4…中間層、5…保護層、6…感光層、61…電荷発生層、62…電荷輸送層、7…電子写真感光体、8…帯電手段、9…電源、10…露光手段、11…現像手段、12…転写手段(2次転写体)、13…クリーニング装置、14…除電器、16…取り付けレール、17…除電露光のための開口部、18…露光のための開口部、20…中間転写体(1次転写体)、42…中間層、100,110,120,130…電子写真感光体、200…電子写真装置、300…プロセスカートリッジ、400・・・ハウジング、401a〜401d・・・電子写真感光体、402a〜402d・・・帯電ロール、403・・・レーザ光源(露光装置)、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d・・・トナーカートリッジ、406・・・駆動ロール、407・・・テンションロール、408・・・バックアップロール、409・・・中間転写ベルト、410a〜410d・・・1次転写ロール、411・・・トレイ(被転写体トレイ)、412・・・移送ロール、413・・・2次転写ロール、414・・・定着ロール、415a〜415d・・・クリーニングブレード、416・・・クリーニングブレード、500・・・被転写媒体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、中間転写体を用いて画像を被転写媒体上に形成する中間転写機構を備える電子写真装置に搭載される電子写真感光体、並びに、これを備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真感光体は、高速、かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザービームプリンター等の分野において多く利用されている。これら電子写真装置において用いられる電子写真感光体として、従来からの無機光導電材料を用いた電子写真感光体に比べ、安価で製造性及び安全性の点で優れた利点を有するフタロシアニン系の顔料等の有機光導電材料を電荷発生物質として含有した電子写真感光体が主流を占める様になってきている。
【0003】
このような感光体の中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と電荷を輸送する電荷輸送層とからなる感光層を有する機能分離型感光体は、感度・帯電性及びその繰り返し安定性等、電子写真特性の点で優れており、種々の構成の提案が成され、実用化されている。
【0004】
この機能分離型感光体の場合、現在ではアルミニウム基体等の導電性支持体層上に中間層(下引層)を形成し、その後、中間層上に電荷発生層及び電荷輸送層を順次形成する場合が多い。
【0005】
近年においては、環境問題などの社会的要求から、電子写真感光体の長寿命化が強く望まれており、長期間使用した場合(特に電子写真感光体の表面が摩耗した場合)における電気特性、耐リーク性能及び画質の低下を充分に防止でき、初期に得られる良好な画質の画像を継続的に形成可能な特性を有することが要求されている。
【0006】
特に、近年、電子写真装置においては、コロトロンに代わりオゾン発生が少ない接触帯電方式の帯電装置が用いられるようになってきている。そして、このことに伴い感光層中に異物が混入し易くなり、感光体に局所的な欠陥部位が発生する等の問題が起こり易くなっている。この場合、接触帯電時に感光体の欠陥部位に局所的に高電場がかかり、電気的なピンホールを生じ、これが画質欠陥となる。
特に、電子写真感光体が中間転写機構を備える電子写真装置に搭載された場合には、感光体と中間転写体との接触するため、長期にわたり繰り返し使用すると感光体の損傷が起こり易く、ピンホールリークが発生し易くなる。
【0007】
また、上記のピンホール(ピンホールリーク)は、電子写真装置の作動中において、該装置を構成する部材から発生する異物、ゴミ、キャリア粉等の導電性の異物が感光体に接触又は感光体中に貫入することによっても発生する場合があった。
【0008】
そのため、感光体を長期にわたり繰り返し使用した場合における環境安定性(作動環境に置かれた場合の耐久性)や得られる画像の画質の安定性を改善する観点から、感光層の性能向上のみならず感光層の下地となる中間層の性能向上(繰り返し使用による電荷蓄積性の少ない帯電特性に優れた中間層の開発)や、感光体の構成を変更するなどの様々な検討がなされている。
【0009】
このような試みとしては、導電性支持体層と中間層(下引層)との間に金属酸化物からなる層(酸化膜層)を設けることにより、ピンホールリークの発生による画質の低下を防止することを意図した技術が知られている。例えば、アルミニウム基体上に、酸化膜層、下引層(中間層に相当)、感光層(オキシチタニウムフタロシアニンを含有する)を順次積層した構成を有する電子写真感光体であって、アルミニウム基体を陽極酸化することにより上記酸化膜層を形成した電子写真感光体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、アルミニウム基体(アルミニウム支持体)上に、上記と同様にアルミニウム基体を陽極酸化することにより形成した酸化膜層、シランの加水分解生成物または縮合物からなる薄い親水性化層(中間層に相当)、光導電層(感光層に相当)を順次積層した構成を有する電子写真感光体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
【特許文献1】
特許2718066号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開昭63−50855号公報(請求項1及び2)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上述の特許文献1及び特許文献2に記載の感光体はじめとするアルミニウム基体上に酸化膜層、中間層を順次積層させた構造を有する従来の電子写真感光体では、ピンホールリークの発生による画質の低下を防止できるものの、長期にわたり繰り返し使用すると以下の問題が発生し、優れた画質の画像を継続して形成するには未だ充分なものではないことを見出した。
【0013】
すなわち、上述の酸化膜層を有する従来の電子写真感光体では、中間転写機構を備える電子写真装置に搭載された場合、長期にわたり繰返し使用すると、感光体の帯電時の電位(帯電電位)が初期値から低下する、或いは、いわゆる残留電位の上昇が起こる、などの電気的特性の低下を防止することが充分にできず、これにともなって画像濃度の低下等、画像の画質が低下する問題があった。
【0014】
更に、上述した従来の電子写真感光体では、中間転写機構を備える電子写真装置に搭載された場合、繰り返し使用すると、中間層のブロッキング(電荷注入制御)機能が不充分となる問題があった。またこの場合、繰り返し使用する場合の環境の変化(温度条件及び湿度条件の変化)にともなって中間層の膜抵抗値の変動幅が大きくなる等の感光体の電気特性の変動を充分に低減できず、初期の優れた画質の画像を継続して形成することが極めて困難となる問題があった。
【0015】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、中間転写機構を備える電子写真装置に搭載され、かつ、長期わたり繰り返し使用される場合であっても、作動環境の変動による電気特性の大きな変動が充分に防止されると共に該電気特性の経時的な低下が充分に防止され、優れた画質の画像を継続的に形成可能な電子写真感光体、並びに、この電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、例えば、特許文献1に記載の電子写真感光体のように樹脂を構成材料とする下引層(中間層)を設けると、樹脂の吸湿性により、繰り返し使用する場合の環境の変化(温度条件及び湿度条件の変化)にともなう中間層の膜抵抗値の変動を充分に低減できなくなっていることが、優れた画質の画像を長期にわたり継続して形成できないことに大きく影響していることを見出した。
【0017】
更に、本発明者らは、例えば、特許文献2のように、中間層としてシランの加水分解生成物または縮合物からなる薄い親水性化層を酸化膜層と感光層との間に配置した場合には、中間層の吸湿性が低くなるので中間層の膜抵抗値の変動を低減できる可能性があるものの、詳細なメカニズムについては明確に解明できていないが、これを長期にわたり繰返し使用すると、感光体の帯電時の電位(帯電電位)が初期値から低下する、或いは、いわゆる残留電位の上昇が起こる、などの電気的特性の低下を防止することが充分にできず、画像の画質が低下する問題が依然として解決できないことを見出した(後述の比較例3を参照)。
【0018】
そして、更に本発明者らは、加水分解性の材料を含む塗布液を用いて形成された中間層を採用することが上述の目的を達成可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0019】
すなわち、本発明は、中間転写体を用いて画像を被転写媒体上に形成する中間転写機構を備える電子写真装置に搭載される電子写真感光体であって、
アルミニウム基体と、
電荷発生物質を含む感光層と、
アルミニウム基体と感光層との間に配置される中間層と、
中間層とアルミニウム基体との間に配置されており、金属酸化物からなる酸化膜層と、
を少なくとも有しており、
中間層は、加水分解性の特性基を有する有機金属化合物を少なくとも含む塗布液を酸化膜層上に塗布することにより形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0020】
ここで、本発明において、加水分解性の特性基を有する有機金属化合物(以下、「加水分解性有機金属化合物」という)を構成する金属には、ケイ素は含まれないものとする。
【0021】
本発明の電子写真感光体によれば、上述の加水分解性の特性基を有する有機金属化合物を少なくとも含む塗布液を用いることにより、吸湿性の低い中間層を形成することができるので、繰り返し使用する場合の環境の変化(温度条件及び湿度条件の変化)にともなう中間層の膜抵抗値の変動を充分に低減することが可能となる。また、この中間層を酸化膜層上に配置することにより、長期にわたり繰返し使用しても、帯電時の電位(帯電電位)が初期値から低下する、或いは、いわゆる残留電位の上昇が起こる、などの電気的特性の低下を充分に防止することができる。そのため、本発明の電子写真感光体によれば、長期にわたり繰り返し使用しても優れた画質の画像を継続的に得ることができる。
【0022】
上述の塗布液を用いて形成した中間層を採用することにより、上述の効果をえること、特に長期にわたる繰り返し使用を行っても、帯電電位の低下等の電気特性の低下を充分に防止できることについての詳細な理由について明確には解明されていないが、本発明者らは、以下のように考えている。
【0023】
すなわち、本発明者らは、電子写真装置内での長期使用による電気的ストレスにより酸化膜表面が変質し、電荷注入阻止性能が低下することによるものと考えている。
【0024】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、中間転写手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0025】
上述した本発明の電子写真感光体を備えることにより、本発明のプロセスカートリッジは、長期にわたり繰り返し使用しても優れた画質の画像を継続的に得ることができる。
【0026】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、
電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を少なくとも備えており、
転写手段の転写方式が、トナー像を中間転写体に1次転写し、該中間転写体上の1次転写像を被転写媒体に2次転写する中間転写方式であること、
を特徴とする電子写真装置を提供する。
【0027】
上述した本発明の電子写真感光体を備えることにより、本発明の電子写真装置は、長期にわたり繰り返し使用しても優れた画質の画像を継続的に得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0029】
[第一実施形態]
図1は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、電子写真感光体100は、主として、アルミニウム基体3と、中間層4と、感光層6と、アルミニウム基体3と中間層4との間に配置された酸化膜層2とから構成されている。
【0030】
アルミニウム基体3は、アルミニウム板をポートホール法、マンドレル法等により押し出し管に加工、あるいは抽伸方法により円筒状とした後、引きぬき加工、インパクト加工、しごき加工等により所望の肉厚、外型寸法とすることにより形成されたものである。更に、必要に応じて切削加工などの2次加工が施されていてもよい。
【0031】
酸化膜層2は、金属酸化物からなるものであれば特に限定されないが、製造効率の観点から、酸化剤を含む酸性液体中においてアルミニウム基体3を陽極酸化することにより形成される陽極酸化膜であることが好ましい。また、酸化膜層2は、アルミニウム基体3にベーマイト処理を施して形成してもよい。
【0032】
この場合、アルミニウム基体3には、陽極酸化処理の前に効率よく陽極酸化を行うために脱脂洗浄処理を施すことが好ましい。この脱脂洗浄処理は十分な洗浄効果が得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸、アルカリ、有機溶剤、界面活性剤等の用いる処理や、電解法を用いる処理等の公知の技術を用いてよい。
【0033】
陽極酸化処理は、例えば、硫酸、リン酸、クロム酸、しゅう酸、ホウ酸、スルファミン酸などの酸性液にアルミニウム基体を浸漬浴させることにより行うことができる。ここで、使用する酸としては、特に硫酸が最も好ましく用いられる。
【0034】
硫酸を用いて陽極酸化処理を行う場合、硫酸濃度は20〜300g/L、液温は0℃〜50℃、溶存アルミニウム濃度は1〜30g/L、電解電圧は5〜30Vの範囲の条件が好ましく用いられる。また、得られる酸化膜層2の層厚は0.1〜20μmであることが好ましく、1〜15μmであることがより好ましい。
【0035】
得られる酸化膜層2には、膜の化学的安定性を向上させるための封孔処理を更に施してもよい。この封孔処理は処理後の酸化膜層2について所望の感光体特性(例えば、電気特性、画質特性等)が得られる方法であれば特に限定されず、いかなる方法でももちいることができるが、特に弗化ニッケルを含有水溶液中に浸漬させる方法、酢酸ニッケルを含有水溶液中に浸漬させる方法、蒸気浴による方法、沸騰水に浸漬させる方法等が好ましく用いられる。
【0036】
中間層4は、先に述べたように、加水分解性有機金属化合物を含む塗布液(以下、「中間層形成用塗布液」という)を用いて形成されている。そして、中間層4は、感光層6の帯電時において、アルミニウム基体3から感光層6への電荷の注入を阻止する機能を有する。また、この中間層4は、感光層6を酸化膜層2に対して一体的に接着保持せしめる接着層としても機能する。更に、この中間層4は、アルミニウム基体3の光反射を防止する機能を有していてもよい。
【0037】
ここで、上記の加水分解性有機金属化合物は先に述べた本発明の効果を得ることができるものであれば特に限定されないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、上記の加水分解性有機金属化合物を構成する金属原子は、ジルコニウム、チタン又はアルミニウムであることが好ましい。これらの金属原子をそれぞれ含む有機金属化合物の少なくとも1種が中間層4に含有されていれば、先に述べた本発明の効果をより確実に得ることができる。
【0038】
特に、ジルコニウムを構成元素とする加水分解性有機金属化合物を用いることが好ましく、この場合には、繰り返し使用による帯電電位の低下、残留電位の上昇をより確実に防止でき、環境変化に伴う電気特性の変動幅もより確実に低減できる。更に、同様の観点から、中間層形成用塗布液には、加水分解性有機金属化合物の他に、加水分解性の特性基を有する有機ケイ素化合物(以下、必要に応じて「加水分解性有機ケイ素化合物」という)が含まれていてもよい。
【0039】
ジルコニウムを構成元素とする加水分解性有機金属化合物(以下、必要に応じて「有機ジルコニウム化合物」という)としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
【0040】
チタンを構成元素とする加水分解性有機金属化合物(以下、必要に応じて「有機チタン化合物」という)としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。
【0041】
アルミニウムを構成元素とする加水分解性有機金属化合物(以下、必要に応じて「有機アルミニウム化合物」という)としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0042】
加水分解性の特性基を有する有機ケイ素化合物(以下、必要に応じて「加水分解性有機ケイ素化合物」という)としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0043】
これらのなかでも特に好ましく用いられる加水分解性有機ケイ素化合物はビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0044】
また、中間層4には、加水分解性有機金属化合物の他に、成膜性向上、厚膜化を容易に行う観点から、バインダー樹脂を含有させてもよい。バインダー樹脂を含有させる場合、中間層形成用塗布液中にバインダー樹脂を添加すればよい。バインダー樹脂としては先に述べた中間層形成用塗布液と混合でき、中間層4を形成しうるものであればいかなるものでも用いることができるが、例えば、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0045】
更に、中間層4には、金属酸化物微粒子を含有させてもよい。金属酸化物微粒子としては所望の特性が得られるものであれば、公知のいかなるものでも用いることができるが、金属酸化物粒子は、酸化錫、酸化チタン及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
【0046】
また、上記金属酸化物微粒子は表面処理が施されていてもよい。表面処理は加水分解性の特性基を有する有機化合物(先に述べた、加水分解性有機金属化合物及び/又は、加水分解性有機ケイ素化合物であってもよい。)が好ましく用いられる。なお、「表面処理」とは、金属酸化物粒子の表面に加水分解性の特性基を有する有機化合物を吸着させ、そこで加水分解性の特性基を加水分解反応させる処理を示す。この有機化合物としては所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができる。例えば、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0047】
より具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシドなどのジルコニウムキレート化合物、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタニウムキレート化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などのアルミニウムキレート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの有機化合物は2種以上を任意に組み合せて使用してもよい。更に、これらの表面処理は複数回実施することも可能である。この複数回表面処理の場合、表面処理剤は同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
次に、金属酸化物粒子を表面処理する場合の金属酸化物粒子の表面処理方法について説明する。加水分解性の特性基を有する有機化合物による金属酸化物粒子の表面処理の方法は特に限定されず、例えば、乾式法、湿式法、気相法など公知の方法を使用してよい。
【0049】
例えば、乾式法に基づいて表面処理を行う場合の手順の一例を説明する。先ず、加水分解性有機金属化合物を金属酸化物粒子の表面に吸着させる。このとき、金属酸化物粒子Bをせん断力の大きなミキサで攪拌しながら、加水分解性の特性基を有する有機化合物を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させるか、或いは、加水分解性の特性基を有する有機化合物を溶剤(有機溶媒、水等)に溶解させた液を乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させる。また、金属酸化物粒子に対して、加水分解性の特性基を有する有機化合物を溶剤(有機溶媒、水等)に溶解させた液を滴下するか又はこの有機化合物自体を直接的に滴下してもよい。これにより、金属酸化物粒子の表面に加水分解性の特性基を有する有機化合物が均一に吸着させられる。
【0050】
加水分解性の特性基を有する有機化合物を金属酸化物粒子の表面に吸着させる際に溶剤を使用する場合には、溶剤の沸点以下の温度で行うことが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で、例えば、加水分解性の特性基を有する有機化合物を溶剤(有機溶媒、水等)に溶解させた液を噴霧すると、金属酸化物粒子の表面に加水分解性の特性基を有する有機化合物が均一に吸着される前に溶剤が蒸発し、加水分解性の特性基を有する有機化合物が局部的に凝集してしまい、好ましくない。
【0051】
そして、その後、100℃以上の温度で焼き付け処理を行う。これにより、加水分解性の特性基を有する有機化合物の加水分解反応を十分に進行させることができる。次に、必要に応じて、表面処理後の金属酸化物粒子を解砕する。これにより、金属酸化物粒子の凝集体を解砕することができるので、中間層4中における金属酸化物粒子の分散性を向上させることができる。
【0052】
次に、湿式法に基づいて表面処理を行う場合の手順の一例を説明する。先ず、金属酸化物粒子を溶剤中に、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散させ、次に、これに加水分解性の特性基を有する有機化合物を含む液を添加して攪拌し、表面処理反応を進行させる。その後、この液から蒸留により溶剤を留去する。ろ過による除去方法では未反応の加水分解性有機金属化合物が流出しやすく、所望の特性を得るための加水分解性有機金属化合物量をコントロールし難い欠点があり、好ましくない。
【0053】
また、溶剤除去後に得られる固形物を更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。また、乾式法と同様にこの湿式法においても、表面処理前に金属酸化物粒子の表面吸着水を除去してもよい。この表面吸着水除去方法としては、乾式法と同様に加熱乾燥による除去の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が挙げられる。
【0054】
更に、表面粗さ調整のために中間層4の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。また、表面粗さ調整のための粒子を添加してもよい。添加する粒子としては、樹脂の球状粒子などを用いることができる。
【0055】
中間層形成用塗布液を調整するための溶媒としては、中間層塗布溶剤としては、加水分解性有機金属化合物及び/又はバインダー樹脂を溶解可能な溶媒あればいかなるものでも用いることができる。更に、先に述べた金属酸化物粒子を含有させる場合には、これを分散可能な分散媒となり得るものが好ましい。例えばアルコール系溶剤、芳香族系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等から任意に選択することができる。
【0056】
例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0057】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0058】
中間層4中に金属酸化物粒子を含有させる場合には、金属酸化物粒子を中間層形成用塗布液中に分散させるが、この分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどを用いる方法が挙げられる。
【0059】
更にこの中間層4を酸化膜層2上に設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の公知の方法を用いることができる。
【0060】
中間層4は、層厚が大きすぎる場合には電荷のトラップサイトが増加し、感度の低下や繰り返し使用にともなう残留電位の上昇を引き起こしやすい。したがって、中間層4の層厚は0.1〜7μmの範囲に設定することが好ましい。
【0061】
次に、感光層6について説明する。図1に示すように、感光層6は電荷発生層61と電荷輸送層62とから構成されている。
【0062】
電荷発生層61に含有される顔料(電荷発生物質)は特に限定されず、公知の顔料を使用することができる。
【0063】
赤外光を利用する感光体では、例えば、フタロシアニン顔料、スクアリリウム顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン顔料、ジチオケトピロロピロール顔料を使用することができる。また、可視光レーザを利用する感光体では、例えば、縮合多環顔料、ビスアゾ顔料、ペリレン顔料、トリゴナルセレン、色素増感した金属酸化物等を使用することができる。
【0064】
上述した顔料の中では、優れた画像を得られることから、赤外光を利用する場合はフタロシアニン系顔料を使用することが好ましい。これにより、特に高感度で、繰り返し使用しても良好な画質を安定して得ることのできる電子写真感光体を構成することが容易にできる。
【0065】
フタロシアニン系顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることができる。特に、フタロシアニン系顔料の中でもヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン及びフタロシアニン(配位中心となる金属又は金属イオンを有しないもの)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0066】
クロロガリウムフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が7.4°,16.6°,25.5°,28.3°である位置に回折ピークを少なくとも有するものが好ましい。また、オキソチタニルフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が9.6°,24.1°,27.3°である位置に回折ピークを少なくとも有し、最大ピークを27.3°に有するものが好ましい。
【0067】
また、フタロシアニン顔料以外に、式(4)の配位中心となるGaに結合しているCl原子を−OH基に置換したヒドロキシガリウムフタロシアニンも好ましい。このようなヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、Cukα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)の値が7.5°,9.9°,12.5°,16.3°,18.6°, 25.1°,28.1°である位置に回折ピークを少なくとも有するものが好ましい。
【0068】
更に、このような顔料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。
【0069】
上記の湿式粉砕処理において使用される溶剤としては、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、更には数種の混合系、水とこれら有機溶剤の混合系が挙げられる。
【0070】
また、この溶剤は、顔料結晶に対して、1〜200質量部、好ましくは10〜100質量部の範囲で使用する。更に、処理温度は、0℃〜溶剤の沸点、好ましくは10〜60℃の範囲で行う。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。
【0071】
そして磨砕助剤は顔料に対し0.5〜20倍、好ましくは1〜10倍用いればよい。また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。
【0072】
アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が好ましく、濃度(質量パーセント濃度)70〜100%、好ましくは95〜100%のものが使用され、溶解温度は、−20〜100℃好ましくは−20〜60℃の範囲に設定される。濃硫酸の量は、顔料結晶の重量に対して、1〜100倍、好ましくは3〜50倍の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水あるいは、水と有機溶剤の混合溶剤、アンモニア水等が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが好ましい。
【0073】
また、顔料の含有量は、電荷発生層61の全質量に対して、10〜90質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。顔料の含有量がそれぞれ上記の数値範囲の下限値未満となると、十分な感度が得られにくくなる。一方、顔料の含有量がそれぞれ上記の数値範囲の上限値を超えると、帯電性の低下、感度の低下などの弊害が発生する傾向が大きくなる。
【0074】
電荷発生層61に含有されるバインダー樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、広範な絶縁性樹脂から選択して使用することができる。例えば、好ましいバインダー樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができる。
【0075】
また、電荷発生層61に含有されるバインダー樹脂は、絶縁性樹脂の他の樹脂として、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択することもできる。
【0076】
電荷発生層61用のバインダー樹脂としては、顔料の分散性の観点から、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。なお、上記のバインダー樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を任意に選択して用いてもよい。
【0077】
また、顔料とバインダー樹脂との配合比(質量比)は、電荷発生層61の場合、10:1〜1:10の範囲が好ましい。顔料の質量に対してバインダー樹脂の質量が上記の配合比で示される値未満となると、成膜性が悪くなる等の弊害が発生する傾向が大きくなる。一方、顔料の質量に対してバインダー樹脂の質量が上記の配合比で示される値を超えると、膜中の含有量が相対的に少なくなるため十分な感度が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0078】
更に、電荷発生層61を形成するための塗布液に含まれる有機溶剤は、バインダー樹脂を溶かすことができる溶剤であり、かつ、顔料(電荷発生物質)の結晶型を変化させる影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではなく、公知の有機溶剤を使用することができる。
【0079】
例えば、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等から任意で選択することができる。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。そして、これらの有機溶剤は単独で或いは2種以上を任意に混合して用いてもよい。
【0080】
更に、電荷発生層61の層厚は、良好な電気特性と画質を与えるために、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層61の厚みが0.05μm未満であると、十分な感度を与えることができない。一方、電荷発生層61の厚みが5μmを超えると、帯電性の不良などの弊害を生じさせ易い。
【0081】
電荷発生層61は、顔料(電荷発生物質)、有機溶剤、バインダー樹脂、添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等を混合して塗布液を調製し、これを中間層4上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。また、電荷発生層61は、電荷発生物質を中間層4上に真空蒸着することによっても形成することができる。
【0082】
電荷発生層61の形成用の塗布液を調製するには、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等とともに混合する。顔料を液中に高分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの分散方法を用いることができる。
【0083】
更に、成膜性の観点から、電荷発生層61を形成するための塗布液に含まれる顔料などの分散粒子の粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.15μm以下であることが更に好ましい。分散粒子の粒子径が0.5μmを超えると、電荷発生層61の成膜性が悪くなり、画質欠陥を生じ易い。
【0084】
電荷発生層61の形成用の塗布液を中間層4上に塗布する場合の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0085】
更に、感光層6の電気特性の安定性向上、画質欠陥防止等の観点から電荷発生物質には表面処理が施されていてもよい。この表面処理に使用する表面処理剤としてはカップリング剤等を用いることができるがこれに限定されるものではない。
【0086】
表面処理に用いるカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0087】
これらのなかでも特に好ましく用いられるシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0088】
また、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等の有機ジルコニウム化合物も用いることができる。
【0089】
更に、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等の有機チタン化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物も用いることができる。
【0090】
更に、電荷発生層61には電気特性向上、画質向上等のために上述した以外の種々の添加剤を添加することもできる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾールや2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0091】
上記シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
【0092】
上述したジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0093】
上述したチタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0094】
上述したアルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0095】
上述したシランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物等の添加物は各々単独に用いてもよく、或いは2以上を任意に組み合せて混合物として用いてもよく、同種及び/又は異なる種類のものを可能場合は反応重縮合物として用いてもよい。
【0096】
次に電荷輸送層62について説明する。電荷輸送層62に含有される電荷輸送物質は、特に限定されるものではなく、公知の物質を使用することができる。
【0097】
例えば、2,5-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5-トリフェニル-ピラゾリン、1-[ピリジル-(2)]-3-(p-ジエチルアミノスチリル)-5-(p-ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P-メチル)フェニルアミン、N,N’-ビス(3,4-ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン、ジベンジルアニリン、9,9-ジメチル-N,N’-ジ(p-トリル)フルオレノン-2-アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3-(4’ジメチルアミノフェニル)-5,6-ジ-(4’-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアジン等の1,2,4-トリアジン誘導体、4-ジエチルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、4-ジフェニルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、[p-(ジエチルアミノ)フェニル](1-ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2-フェニル-4-スチリル-キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6-ヒドロキシ-2,3-ジ(p-メトキシフェニル)-ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p-(2,2-ジフェニルビニル)-N,N’-ジフェニルアニリン等のα-スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N-エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質等が挙げられる。
【0098】
更には、電荷輸送物質は、以上例示した化合物の基本構造を主鎖又は側鎖に有する重合体等も挙げられる。そして、これらの電荷輸送材料は、各々単独で使用してもよく又は2種以上を任意に組み合せて使用してもよい。
【0099】
また、電荷輸送層62に含有されるバインダー樹脂は特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるが、電機絶縁性のフィルムを形成することが可能な樹脂が好ましい。
【0100】
例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂。シリコン−アルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。
【0101】
そして、これらのバインダー樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合せて混合して用いてもよい。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送物質との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れているので好ましく用いられる。
【0102】
また、バインダー樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)は電気特性低下、膜強度低下に考慮しつつ任意に設定することができる。この電荷輸送層62の層厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0103】
電荷輸送層62は、電荷輸送物質、有機溶剤、バインダー樹脂等を混合して塗布液を調製し、これを電荷発生層61上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0104】
電荷輸送層62の形成用の塗布液を調製するには、電荷輸送物質、有機溶剤、バインダー樹脂等とともに混合する。電荷輸送物質を液中に高分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの分散方法を用いることができる。
【0105】
更に、成膜性の観点から、電荷輸送層62を形成するための塗布液に含まれる顔料などの分散粒子の粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.15μm以下であることが更に好ましい。分散粒子の粒子径が0.5μmを超えると、電荷輸送層62の成膜性が悪くなり、画質欠陥を生じ易い。
【0106】
更に、電荷輸送層62の形成用の塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0107】
電荷輸送層62の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0108】
[第二実施形態]
図2は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。図2に示す電子写真感光体110は、感光層6を単層構造とした以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0109】
図2に示す感光層6は、図1に示した電荷発生層61と電荷輸送層62に含有される電荷発生物質と電荷輸送物質をはじめとする物質を合わせて含有する層である。
【0110】
感光層6がこのように単層型の場合には、電荷発生物質(顔料等)の含有量は、感光層6の全質量に対して、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。また、電荷発生物質の含有量が上記の数値範囲の下限値未満となると、十分な感度が得られにくくなる。一方、電荷発生物質の含有量が上記の数値範囲の上限値を超えると、帯電性の低下、感度の低下などの弊害が発生する傾向が大きくなる。
【0111】
また、このように感光層6が単層型の場合、バインダー樹脂としては、正孔輸送性材料との相溶性の観点から、特にポリカーボネート樹脂及びメタクリル樹脂が好ましく用いられる。更に、これらの樹脂のポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーの中から選択して使用してもよい。なお、上記のバインダー樹脂は、単独あるいは2種以上を任意に組み合せ混合して用いてもよい。
【0112】
この感光層6も、上述した電荷輸送物質、上述した電荷輸送物質、上述した有機溶剤、バインダー樹脂等を混合して塗布液を調製し、上述と同様の方法によりアルミニウム基体3上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0113】
[第三実施形態]
図3は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。図3に示す電子写真感光体120は、感光層6上に保護層5を備えること以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0114】
保護層5は、電子写真感光体120の帯電時の電荷輸送層62の化学的変化を防止したり、感光層6の機械的強度を更に改善する為に用いられる。この保護層5は、硬化性樹脂、電荷輸送物質(電荷輸送性を有する化合物)を含むシロキサン樹脂硬化膜、導電性材料等の材料を、バインダー樹脂中に含有させて形成された膜等から成る。この保護層5は、上記の材料を適当なバインダー樹脂中に含有させた塗布液を感光層6上に塗布することにより形成することができる。
【0115】
保護層5の構成材料として硬化性樹脂を使用する場合、硬化性樹脂は公知の感光体に使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シロキサン樹脂等が挙げられる。
【0116】
保護層5の構成材料として、シロキサン系化合物、特に、電荷輸送物質を含むシロキサン樹脂硬化膜を使用する場合、電荷輸送物質は、公知の感光体に使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、特開平10−95787号公報、特開平10−251277号公報、特開平11−32716号公報、特開平11−38656号公報、特開平11−236391号公報に示された化合物等が挙げられる。
【0117】
また、保護層5に電荷輸送物質を含有させる場合、特に好ましい電荷輸送物質としては、下記一般式(1):
F1[−D1−Si(OR2)a(R1)3-a]b…(1)
[式(1)中、F1は光機能性化合物(光キャリア(正孔又は電子)輸送能を有する化合物)から誘導される有機基を表し、D1は2価の基(可とう性サブユニット)を表し、R1は水素原子、アルキル基、及び、置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれる1種を表し、R2は水素、アルキル基、及び、トリアルキルシリル基からなる群より選ばれる1種を表し、aは1〜3の整数を表し、bは1〜4の整数を表す]
で表される化合物を挙げることができる。
【0118】
一般式(1)中、−Si(OR2)a(R1)3-aで表される部分は、加水分解性基を有する特性基(以下、「置換ケイ素基」という)として機能する。この置換ケイ素基は、隣接する他の置換ケイ素基があると、−Si−基の部分で互いに架橋反応を起こし、隣り合う−Si−基の間に酸素原子が架橋した−Si−O−Si−の結合を3次元的に形成する。即ち、この置換ケイ素基は、保護層5中にいわゆる無機ガラス質ネットワークを形成する役割を担う。
【0119】
上記一般式(1)中、F1で表される有機基としては、光キャリア(正孔又は電子輸送能を有するものであれば特に制限されない。例えば、具体的には、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、等の正孔輸送性を有する化合物の骨格、及び、キノン系化合物、フルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性を有する化合物の骨格を有する化合物を用いることができる。
【0120】
一般式(1)中、D1は、具体的には、光電特性を付与するためのF1の部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークの構築に寄与する置換ケイ素基とを結びつける働きを担う2価の基である。また、D1は、堅い反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークの部分に適度な可とう性を付与し、膜(保護層5)としての機械的強靱さを向上させるという働きを担う有機基構造を表す。D1として具体的には、−CnH2n−、−CnH2n-2−、−CnH2n-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、nは1〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、及び、これらの特性基を任意に組み合わせた構造を有する特性基、更にはこれらの特性基の構成原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。
【0121】
一般式(1)中、bは2以上であることが好ましい。bが2以上であると、一般式(1)で表される電荷輸送物質中にSi原子を2つ以上含むことになり、無機ガラス質ネットワークを形成し易くなり、機械的強度が向上する。
【0122】
一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。下記一般式(2)で表わされる化合物は、正孔輸送能を有する化合物(正孔輸送物資)であり、これを保護層5に含有させることは、特に保護層5における電気特性と機械強度特性の向上の観点から好ましい。
【0123】
【化1】
【0124】
[式(2)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のアリール基を表し、Ar5は置換又は未置換のアリール基又はアリーレン基を表し、kは0又は1を表し、Ar1〜Ar5のうちの1〜4つの特性基は下記一般式(3)で表される構造を有する。]
で表される有機基であることが好ましい。
【0125】
−Y1−Si(OR2)aR1 3-a…(3)
[式(3)中、a、R1及びR2はそれぞれ式(1)中のa、R1及びR2と同義であり、Y1は2価の基を示す。]
【0126】
ここで、Y1として具体的には、−CnH2n−、−CαH2α-2−、−CαH2α-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、nは1〜15の整数を表し、αは2〜15の整数を表す)、置換又は未置換の2価のアリール基、−N=CH−、−O−、及び、−COO−からなる群より選択される1種の2価の基を示す。また、Y1は、上記の群から選択される2価の基を任意に組み合わせた構造を有する特性基であってもよい。
【0127】
上記一般式(2)中のAr1〜Ar5としては、下記式(4)〜(10)のうちのいずれかであることが好ましい。
【0128】
【化2】
【0129】
【化3】
【0130】
【化4】
【0131】
【化5】
【0132】
【化6】
【0133】
【化7】
【0134】
−Ar−Z's−Ar−Xm …(10)
【0135】
ここで、式(4)〜(10)中、R5、R6及びR7は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基もしくは炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されたフェニル基、または未置換のフェニル基、炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表す。また、R9は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表す。
【0136】
更に、式(4)〜(10)中、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Xは一般式(3)で表される構造を有する特性基を表し、m及びsはそれぞれ0又は1を表し、q及びrは1〜10の整数を表し、tは1〜3の整数を表す。
【0137】
ここで、式(10)中のArとしては、下記式(11)又は(12)で表されるものが好ましい。
【0138】
【化8】
【0139】
【化9】
【0140】
式(11)、(12)中、R10及びR11はそれぞれ先に述べたR9と同義である。また、tは1〜3の整数を表す。
【0141】
また、式(10)中のZ'としては、下記式(13)又は(14)で表されるものが好ましい。
【化10】
【化11】
【0142】
また、先に述べたように、式(4)〜(10)中、Xは一般式(3)で表される構造を有する特性基を示すが、その特性基中のY1としては、先に述べた−CαH2α-2−、−CαH2α-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、αは2〜15の整数を表す)、−N=CH−、−O−、−COO−の他に、−S−、−(CH)β−(βは1〜10の整数を示す)、先に述べた一般式(11)、先に述べた一般式(12)、下記一般式(15)及び(16)で表される特性基が挙げられる。
【0143】
【化12】
【0144】
【化13】
【0145】
ここで、式(16)中、y及びzはそれぞれ1〜5の整数を表し、tは1〜3の整数を表し、先に述べたようにR9は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表す。
【0146】
また、先に述べたように、式(2)中のAr5は置換又は未置換のアリール基又はアリーレン基を表すが、k=0の時には、以下に示す構造群(I)の何れかに当てはまるものが好ましく、更には、構造群(II)の何れかに当てはまるものがより好ましい。
【0147】
[構造群(I)]
すなわち、式(2)中のAr5は、k=0の時には、先に述べた式(4)で表されるもののうちm=1の構造を有するもの、式(5)で表されるもののうちm=1の構造を有するもの、式(6)で表されるもののうちm=1の構造を有するもの、式(7)で表されるもののうちm=1の構造を有するもの、又は、式(10)で表されるもののうちm=1の構造を有するものが好ましい。
【0148】
[構造群(II)]
更に、式(2)中のAr5は、k=0の時には、先に述べた式(4)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するもの、式(5)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するもの、式(6)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するもの、式(7)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するもの、又は、式(10)で表されるもののうちm=1でありかつXがメチル基の構造を有するものがより好ましい。
【0149】
また、式(2)中のAr5が、上記構造群(I)の何れか、更には、構造群(II)の何れかの構造をとる場合には、式(10)中のZは、下記一般式(17)〜(24)からなる群より選択される1種であることが好ましい。
【0150】
−(CH2)q− (17)
−(CH2CH2O)r− (18)
【0151】
【化14】
【0152】
【化15】
【0153】
【化16】
【0154】
【化17】
【0155】
【化18】
【0156】
【化19】
【0157】
ここで、式(17)〜(24)中、R12及びR13はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ1〜10の整数を表し、tはそれぞれ1〜3の整数を表す。
【0158】
上記式(23)、(24)中のWとしては、下記(25)〜(33)で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。
【0159】
−CH2− …(25)
−C(CH3)2− …(26)
−O− …(27)
−S− …(28)
−C(CF3)2− …(29)
−Si(CH3)2− …(30)
【0160】
【化20】
【0161】
【化21】
【0162】
【化22】
【0163】
ここで、式(32)中、uは0〜3の整数を表す。
【0164】
また、一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開2001−83728号公報における表1〜表55に記載の化合物番号1〜274のものが使用できる。
【0165】
更に、一般式(1)で表される電荷輸送物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合せて併用してもよい。また、一般式(1)で表される電荷輸送物質と共に、硬化膜の機械的強度を更に向上させる目的で、下記一般式(I)で表される化合物を併用してもよい。
B{−Si(OR2)a(R1)3-a}γ …(I)
【0166】
ここで、式(I)中のa、R1及びR2はそれぞれ先に述べた式(1)中のa、R1及びR2と同義であり、Bは2価の有機基を表し、γは2以上の整数を表す。
【0167】
一般式(I)で表される化合物は、先に述べた加水分解性基を有する置換ケイ素基を有している化合物である。この一般式(I)で表される化合物は、置換ケイ素基の部位に含まれる−Si−基の部分が、一般式(1)で表される電荷輸送物質或いは隣接する他の一般式(I)で表される化合物の置換ケイ素基と反応し、隣り合う−Si−基の間に酸素原子が架橋した−Si−O−Si−の結合を3次元的に形成する。即ち、一般式(I)で表される化合物と一般式(1)で表される電荷輸送物質との置換ケイ素基の間で進行する加水分解反応により、保護層5中にいわゆる無機ガラス質ネットワークが形成される。
【0168】
一般式(1)で表される電荷輸送物質も先に述べたようにそれ自体のみで無機ガラス質ネットワークを有する硬化膜(保護層5)を形成することも可能であるが、一般式(I)で表される化合物は2個以上のアルコキシシリル基を有しているので硬化膜の架橋構造が3次元的に形成され易く、より強い機械強度を有するようになると考えられる。また、一般式(I)で表される化合物は、硬化膜の構成材料となることにより、一般式(1)で表される電荷輸送物質におけるD1部分と同様、硬化膜に適度な可とう性を与える役割もある。
【0169】
上記一般式(I)で表される化合物としては、下記一般式(34)〜(38)で表されるものが好ましい。なお、式(34)〜(38)中、T1及びT2はそれぞれ独立に枝分かれしていてもよい2価又は3価の炭化水素基を表す。また、Aは先に述べた加水分解性を有する置換ケイ素基を表す。h、i、jはそれぞれ独立に1〜3の整数を表す。また、式(34)〜(38)で表される化合物は、分子内のAの数が2以上となるように選ばれる。
【0170】
【化23】
【0171】
【化24】
【0172】
【化25】
【0173】
【化26】
【0174】
【化27】
【0175】
以下に、上記一般式(3)で表される化合物の好ましい例を表1に示す。なお、表1中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表す。
【0176】
【表1】
【0177】
保護層5の形成には、一般式(I)で表される化合物と共に、更に架橋反応可能な他の化合物を併用しても良い。このような化合物として、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコン系ハードコート剤を用いることができる。
【0178】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0179】
市販のハードコート剤としては、KP-85、CR-39、X-12-2208、X-40-9740、X-41-1007、KNS-5300、X-40-2239 (以上、信越シリコーン社製)、及びAY42-440、AY42-441、AY49-208 (以上、東レダウコーニング社製)、等が挙げられる。
硬化型表面層(保護層5)には、表面潤滑性を付与する目的でフッ素原子含有化合物を添加できる。表面潤滑性を向上させることによりクリーニング部材との摩擦係数が低下し、耐摩耗性を向上させることができる。また、感光体表面に対する放電生成物、現像剤及び紙粉等の付着を防止する効果も有し、感光体の寿命向上に役立つ。
【0180】
フッ素含有化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素原子含有ポリマーをそのまま添加するか、或いはそれらポリマーの微粒子を添加することができる。また、一般式(1)で表される化合物により形成される硬化膜(保護層5)の場合、フッ素含有化合物としては、アルコキシシランと反応できるものを添加し、架橋膜の一部として構成するのが望ましい。そのようなフッ素原子含有化合物の例として、(トリデカフルオロ -1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3-(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0181】
フッ素含有化合物の添加量としては、20質量%以下とすることが好ましい。これを越えると、架橋硬化膜(保護層5)の成膜性に問題が生じる場合がある。
【0182】
硬化型表面層(保護層5)は十分な耐酸化性を有しているが、更に強い耐酸化性を付与する目的で、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系或いはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、等の公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0183】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2-t-ブチル-6-(3-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、等が挙げられる。
【0184】
硬化型表面層(保護層5)には公知の塗膜形成に用いられるその他の添加剤を添加することも可能であり、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、界面活性剤、等公知のものを用いることができる。
【0185】
硬化型表面層(保護層5)を形成するためには、前述の各種材料、及び各種添加剤の混合物を感光層6の上に塗布し、加熱処理する。これにより、3次元的に架橋硬化反応を起こし、強固な硬化膜を形成する。加熱処理の温度は、下層である感光層6に影響しなければ特に制限はないが、室温〜200度、特に100〜160度に設定するのが好ましい。
【0186】
硬化型表面層(保護層5)の形成において、架橋硬化反応を行う際には無触媒で行なってもよいが、適切な触媒を用いてもよい。触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、等の酸触媒、アンモニア、トリエチルアミン等の塩基、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、オクエ酸第一錫等の有機錫化合物、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン化合物、有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0187】
保護層5に導電性材料を含有させる場合、例えば、導電性材料としては、N,N'-ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、これらの金属酸化物微粒子を被覆したものが挙げられる。
【0188】
この保護層5に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
【0189】
保護層5には酸化防止剤を含有させることができる。酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル フェノール、スチレン化フェノール、n-オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル 4'-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチル フェノール)、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート、4,4'-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチル-フェノール)、4,4'-チオ-ビス-(3-メチル 6-t-ブチル フェノール)、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート]-メタン、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル フェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチル エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0190】
ヒンダードアミン系化合物ではビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-ベンジル-7,7,9,9-テトラメチル-3-オクチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]ウンデカン-2,4-ジオン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイミル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,3,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物等が挙げられる。
【0191】
有機イオウ系酸化防止剤としてジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3'-チオジプロピオネート、2-メルカプト ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0192】
有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4-ジ-t-ブチル フェニル)-フォスフィート等の公知の酸化防止剤の他、シロキサン樹脂と結合可能な水酸基、アミノ基、アルコキシシリル基等の官能基を有する酸化防止剤等が挙げられる。
【0193】
更に、保護層5にはシリカやPTFEのような微粒子を含有させることもできる。保護層5の厚みは1〜20μm、好ましくは1〜10μmが適当である。保護層5を硬化型表面層として形成する場合は、その層厚は0.5〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることより好ましい。
【0194】
更にこの保護層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0195】
塗布に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独或いは2種以上混合して用いることができるが、できるだけ下層を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。また、保護層5を硬化型表面層として形成する場合は、塗布を容易にするため、必要に応じて以下の溶剤を添加して用いることができる。具体的には、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、等の通常の有機溶剤を単独或いは2種以上混合して用いることができる。
【0196】
[第四実施形態]
図4は、本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。図4に示す電子写真感光体130は、感光層6を単層構造とし、感光層6上に保護層5を備える以外は図2に示した電子写真感光体110と同様の構成を有する。
【0197】
以上、本発明の電子写真感光体の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではない。
【0198】
例えば、本発明の電子写真感光体の感光層には、図1及び図3に示した感光体100及び120のように2層からなる構成の場合、図2及び図4に示した感光体110及び130のように単層構造の場合の何れにおいても、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤・光安定剤・熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。
【0199】
例えば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0200】
酸化防止剤の具体的な化合物例として、フェノール系酸化防止剤では2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル フェノール、スチレン化フェノール、n-オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル 4'-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチル フェノール)、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート、4,4'-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチル-フェノール)、4,4'-チオ-ビス-(3-メチル 6-t-ブチルフェノール)、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル ベンジル)イソシアヌレート、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート]-メタン、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル フェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチル エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0201】
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、8-ベンジル-7,7,9,9-テトラメチル-3-オクチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]ウンデカン-2,4-ジオン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイミル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,3,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物などが挙げられる。
【0202】
有機イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3'-チオジプロピオネート、2-メルカプト ベンズイミダゾールなどが挙げられる。有機燐系酸化防止剤としてトリスノニルフェニル フォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4-ジ-t-ブチル フェニル)-フォスフィートなどが挙げられる。
【0203】
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われフェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果を得ることができる。
【0204】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。例えば、ベンゾフェノン系光安定剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシ ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシ ベンゾフェノン、2,2'-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシ ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0205】
ベンゾトリアゾール系系光安定剤としては、2-(-2'-ヒドロキシ-5'メチル フェニル-)-ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3'',4'',5'',6''-テトラ-ヒドロフタルイミド-メチル)-5'-メチルフェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(-2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル 5'-メチルフェニル-)-5-クロロ ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル 5'-メチルフェニル-)-5-クロロ ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-t-ブチルフェニル-)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチル フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ 3',5'-ジ-t-アミル フェニル-)-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0206】
その他の化合物としては、2,4,ジ-t-ブチルフェニル 3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエート、ニッケル ジブチル-ジチオカルバメートなどがある。
【0207】
また、感光層6には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
【0208】
使用可能な電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o-ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、フタル酸などが挙げられる。
【0209】
これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、−Cl,−CN,−NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましく用いられる。更に、本発明の感光層形成用塗布液には、塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを微量添加することもできる。
【0210】
以上説明した本発明の本発明の電子写真感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどの電子写真装置や、このような電子写真装置に備えられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また、本発明の電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また本発明の電子写真感光体は帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式の電子写真装置に搭載されても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【0211】
次に、本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0212】
図5は、本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。より具体的には、図5に示す電子写真装置200は中間転写方式の電子写真装置(例えば、いわゆるタンデム型のデジタルカラープリンター等)であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
【0213】
ここで、電子写真装置200に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。例えば、先に述べた電子写真感光体100が搭載されている。
【0214】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d(電子写真感光体を帯電させる帯電手段)、現像装置404a〜404d(露光手段により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段)、1次転写ロール410a〜410d{現像手段により形成されたトナー像を後述の中間転写ベルト409(中間転写体)に1次転写するための転写手段}、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409(1次転写像を被転写媒体500に転写する中間転写体)を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0215】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源(帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0216】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0217】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、更には相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0218】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合中間転写体の基材として用いる樹脂材料としては、従来公知の樹脂を用いることができる。
【0219】
例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。更に、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いることができる。
【0220】
特に、ポリイミド樹脂は、高ヤング率材料であることから、駆動時(支持ロール、クリーニングブレード等の応力)による変形が少ないので、色ズレ等の画像欠陥が生じにくい中間転写体となる。
【0221】
例えば、中間転写ベルト409は以下の手順で製造することができる。すなわち、略等モルのテトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体とジアミンとを所定の溶媒中で重合反応させてポリアミド酸溶液を得る。このポリアミド酸溶液を円筒状金型に供給・展開して膜(層)形成を行った後、さらにイミド転化を行うことによって、ポリイミド樹脂からなる中間転写ベルト409を得ることができる。
【0222】
かかるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0223】
【化28】
【0224】
ここで、式(39)中、Rは脂肪族鎖式炭化水素基、脂肪族環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基、並びにこれらの炭化水素基に置換基が結合した基からなる群より選ばれる4価の有機基を表す
【0225】
より具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物などが例示される。
【0226】
また、ジアミンの具体例としては、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジクロロベンジジン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3'−ジメチル4,4'−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3'−ジメチルベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ピペラジン、H2N(CH2)3O(CH2)2O(CH2)NH2、H2N(CH2)3S(CH2)3NH2、H2N(CH2)3N(CH3)2(CH2)3NH2などが挙げられる。
【0227】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点から極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等の低分子量のものがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0228】
本発明では、中間転写ベルト409の膜抵抗を調整するために、ポリイミド樹脂中にカーボンを分散してもよい。カーボンの種類は特に限定されないが、カーボンブラックの酸化処理によりその表面に酸素含有官能基(カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)が形成された酸化処理カーボンブラックを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂中に酸化処理カーボンブラックを分散すると、電圧を印可したときに酸化処理カーボンブラックに過剰な電流が流れるため、ポリイミド樹脂が繰返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくくなる。
【0229】
また、酸化処理カーボンブラックはその表面に形成された酸素含有官能基によりポリイミド樹脂中への分散性が高いので、抵抗バラツキを小さくすることができると共に電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起こりにくくなる。従って、転写電圧による抵抗低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、さらに環境による抵抗の変化の少ない、用紙走行部が白く抜けること等の画質欠陥の発生が抑制された高画質を得ることができる中間転写ベルトを得ることができる。
【0230】
酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを高温雰囲気下で空気と接触、反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、高温下での空気酸化後、低温下でオゾン酸化する方法などにより得ることができる。
【0231】
また、酸化処理カーボンとして、三菱化学製のMA100(pH3.5、揮発分1.5%)、同,MA100R(pH3.5、揮発分1.5%)、同MA100S(pH3.5、揮発分1.5%)、同#970(pH3.5、揮発分3.0%)、同MA11(pH3.5、揮発分2.0%)、同#1000(pH3.5、揮発分3.0%)、同#2200(pH3.5,揮発分3.5%)、同MA230(pH3.0、揮発分1.5%)、同MA220(pH3.0、揮発分1.0%)、同#2650(pH3.0、揮発分8.0%)、同MA7(pH3.0、揮発分3.0%)、同MA8(pH3.0、揮発分3.0%)、同OIL7B(pH3.0、揮発分6.0%)、同MA77(pH2.5、揮発分3.0%)、同#2350(pH2.5、揮発分7.5%)、同#2700(pH2.5、揮発分10.0%)、同#2400(pH2.5、揮発分9.0%);デグサ社製のプリンテックス150T(pH4.5、揮発分10.0%)、同スペシャルブラック350(pH3.5、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック100(pH3.3、揮発分2.2%)、同スペシャルブラック250(pH3.1、揮発分2.0%)、同スペシャルブラック5(pH3.0、揮発分15.0%)、同スペシャルブラック4(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック4A(pH3.0、揮発分14.0%)、同スペシャルブラック550(pH2.8、揮発分2.5%)、同スペシャルブラック6(pH2.5、揮発分18.0%)、同カラーブラックFW200(pH2.5、揮発分20.0%)、同カラーブラックFW2(pH2.5、揮発分16.5%)、同カラーブラックFW2V(pH2.5、揮発分16.5%);キャボット社製MONARCH1000(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1300(pH2.5、揮発分9.5%)、同MONARCH1400(pH2.5、揮発分9.0%)、同MOGUL-L(pH2.5、揮発分5.0%)、同REGAL400R(pH4.0、揮発分3.5%)、などの市販品を用いてもよい。
【0232】
このようにして得られる酸化処理カーボンブラックは、一部に過剰な電流が流れ、繰返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくく、更に、その表面に付着する酸素含有官能基の効果で、ポリイミド中への分散性が高く、抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起き難くなる。その結果、転写電圧による抵抗低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、更に環境による抵抗の変化の少ない、用紙走行部が白く抜けること等の画質欠陥の発生が抑制された高画質を得ることができる中間転写体となる。
【0233】
上記の酸化処理カーボンは、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法による比表面積等の物性の相違により導電性が異なるがこれらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、実質的に導電性の異なるものを2種以上組み合わせて用いることが好ましい。このように物性の異なる2種類以上のカーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを優先的に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して表面抵抗率を調整すること等が可能である。
【0234】
酸化処理カーボンブラックとして具体的には、SPECIAL BLACK4(デグサ社製、pH3.0、揮発分:14.0%)、SPECIAL BLACK250(デグサ社製、pH3.1、揮発分:2.0%)等が挙げられる。
【0235】
これら酸化処理カーボンブラックの含有量は、ポリイミド樹脂に対して10〜50質量%が好ましく、より好ましくは12〜30質量%である。当該含有量が10質量%未満であると、電気抵抗の均一性が低下し、耐久使用時の表面抵抗率の低下が大きくなる場合があり、一方、50質量%を超えると、所望の抵抗値が得られにくく、また、成型物として脆くなるため好ましくない。
【0236】
2種類以上の酸化処理カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液の製造方法としては、溶媒中に2種類以上の酸化処理カーボンブラックを予め分散した分散液中に上記酸二無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合する方法、2種類以上の酸化処理カーボンブラックを各々溶媒中に分散させ2種類以上のカーボンブラック分散液を作製し、この分散液に酸無水物成分及びジアミン成分を溶解・重合させた後、各々のポリアミド酸溶液を混合する方法、などが挙げられる。
【0237】
中間転写ベルト409は、このようにして得られたポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給・展開して被膜とし、加熱によりポリアミド酸をイミド転化させることにより得られる。かかるイミド転化の際には、所定の温度で0.5時間以上保持することによって、良好な平面度を有する中間転写ベルトを得ることができる。
【0238】
ポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に供給する際の供給方法としては、ディスペンサーによる方法、ダイスによる方法などが挙げられる。ここで、円筒上金型としては、その内周面が鏡面仕上げされたものを用いることが好ましい。
【0239】
また、金型に供給されたポリアミド酸溶液から被膜を形成するとしては、加熱しながら遠心成形する方法、弾丸状走行体を用いて成形する方法、回転成形する方法などが挙げられ、これらの方法により均一な膜厚の被膜が形成される。
【0240】
このようにして形成された被膜をイミド転化させて中間転写ベルトを成形する方法としては、(i)金型ごと乾燥機中に入れ、イミド転化の反応温度まで昇温する方法、(ii)ベルトとして形状を保持できるまで溶媒の除去を行った後、金型内面から被膜を剥離して金属製シリンダ外面に差し替えた後、このシリンダごと加熱してイミド転化を行う方法などが挙げられる。本発明においては、得られる中間転写ベルトの表面のダイナミック硬度が上記の条件を満たせば上記(i)、(ii)のいずれの方法でイミド転化を行ってもよいが、方法(ii)によりイミド転化を行うと、平面度及び外表面精度が良好な中間転写体を効率よく且つ確実に得ることができるので好ましい。以下、方法(ii)について詳述する。
【0241】
方法(ii)において、溶媒を除去する際の加熱条件は、溶媒を除去できれば特に制限されないが、加熱温度は80〜200℃であることが好ましく、加熱時間は0.5〜5時間であることが好ましい。このようにしてベルトとしてそれ自身形状を保持することができるようになった成形物は金型内周面から剥離されるが、かかる剥離の際に金型内周面に離型処理を施してもよい。
【0242】
次いで、ベルト形状として保持できるまで加熱・硬化させた成形物を、金属製シリンダ外面に差し替え、差し替えたシリンダごと加熱することにより、ポリアミド酸のイミド転化反応を進行させる。かかる金属製シリンダとしては、線膨張係数がポリイミド樹脂よりも大きいものが好ましく、また、シリンダの外径をポリイミド成形物の内径より所定量小さくすることで、ヒートセットを行うことができ均一な膜厚でムラのない無端ベルトを得ることができる。
【0243】
また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)は、1.2〜2.0μmであることが好ましい。金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が1.2μm未満であると、金属製シリンダ自身が平滑過ぎるため、得られる中間転写ベルトにおいてベルトの軸方向に対する収縮による滑りが発生しないため、延伸がこの工程で行われ、膜厚のバラツキや平面度の精度の低下が発生する傾向にある。また、金属製シリンダ外面の表面粗度(Ra)が2.0μmを超えると、金属製シリンダ外面がベルト状中間転写体の内面に転写し、さらには外面に凹凸を発生させ、これにより画像不良が発生しやすくなる傾向にある。なお、本発明でいう表面粗度とはJIS B601に準じて測定されるRaをいう。
【0244】
また、イミド転化の際の加熱条件としては、ポリイミド樹脂の組成にもよるが、加熱温度が220〜280℃、加熱時間0.5〜2時間であることが好ましい。このような加熱条件でイミド転化を行うと、ポリイミド樹脂の収縮量がより大きくなるため、ベルトの軸方向についての収縮を緩やかに行うことにより、膜厚バラツキや平面度の精度の低下を防ぐことができる。
【0245】
このようにして得られたポリイミド樹脂からなる中間転写ベルトの外面の表面粗度(Ra)は、1.5μm以下であることが好ましい。中間転写体の表面粗度(Ra)が1.5μmを超えるとがさつき等の画像欠陥が発生しやすくなる傾向にある。なお、がさつきの発生は、転写の際に印加される電圧や剥離放電による電界がベルト表面の凸部に局所的に集中して凸部表面が変質することによって、新たな導電経路の発現により抵抗が低下し、その結果得られる画像の濃度低下が起こることに起因すると本発明者らは推察する。
【0246】
ポリイミド樹脂の組成にもよるが、イミド転化の際の加熱条件でこの領域において、最も収縮量が大きくなるため、ベルトの軸方向についての収縮を緩やかに行うことにより、層厚バラツキや平面度の精度の低下を防ぐことができる。このような加熱工程を経た中間転写体は、その平面度が5mm以下となるが、好ましくは、3mm以下が望ましい。平面度が5mm以下ではガサツキがなく、色ずれも少ない。しかしベルト端部が上下にハネている場合5mm以下でも中間転写体を使用中に破断する事はないが、周辺部材に接触したあとが残ることが希にある。更に、平面度が3mm以下になると中間転写体を使用中に周辺部材に接触する事もなく色ずれもほとんどなくなる。
【0247】
また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
【0248】
更に、図6は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、中間転写体20(中間転写体手段)、クリーニング装置(クリーニング手段)13、露光のための開口部18、及び、除電露光のための開口部17を取り付けレール16を用いて組み合せ、そして一体化したものである。また、プロセスカートリッジ300は、転写手段12の転写方式が、トナー像を中間転写体20に1次転写し、該中間転写体20上の1次転写像を被転写媒体に2次転写する中間転写方式であるを搭載していることを特徴とする。
【0249】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。また、
【0250】
なお、本発明の電子写真装置及びプロセスカートリッジにおいて、帯電手段(帯電用部材)は、従来から公知のコロトロン、スコロトロンによる非接触方式や、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電チューブ等による接触帯電方式を採用することができる。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、或いはローラー状等何れでもよいが、特にローラー状部材が好ましい。通常、ローラー状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0251】
ローラー状部材は、感光体に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能する。しかし、ローラー部材に何らかの駆動手段を取り付け、感光体とは異なる周速度で回転させ、帯電させても良い。芯材の材質としては導電性を有するもので、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。またその他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
【0252】
弾性層の材質としては導電性或いは半導電性を有するもので、一般にはゴム材に導電性粒子或いは半導電性粒子を分散したものである。ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。
【0253】
導電性粒子或いは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO-Al2O3、SnO2-Sb2O3、In2O3-SnO2、ZnO- TiO2、MgO- Al2O3、FeO-TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いることができ、これらの材料は単独或いは2種以上混合して用いても良い。
【0254】
抵抗層および保護層の材質としては結着樹脂に導電性粒子或いは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したもので、抵抗率としては103〜1014Ωcmであることが好ましく、105〜1012Ωcmであることがより好ましく、107〜1012Ωcmであることが更に好ましい。また膜厚としては0.01〜1000μmであることが好ましく、0.1〜500μmであることがより好ましく、0.5〜100μmであることが更に好ましい。
【0255】
バインダー樹脂としてはアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン 樹脂等が用いられる。
【0256】
導電性粒子或いは半導電性粒子としては弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が用いられる。また必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0257】
これらの導電性部材を用いて感光体を帯電させる方法としては、導電性部材に電圧を印加するが、印加電圧は直流電圧、或いは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vが好ましく、特に100〜1500Vが好ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800V、好ましくは800〜1600V、更に好ましくは1200〜1600Vが好ましい。交流電圧の周波数は50〜20000Hz、好ましくは100〜5000Hzである。
【0258】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される帯電手段について具体的に説明すると、帯電手段としては、特に制限はなく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器が挙げられる。これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。この帯電手段は、電子写真感光体に対し、通常、直流電流を印加するが、交流電流を更に重畳させて印加してもよい。
【0259】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される露光手段について具体的に説明すると、露光手段としては、特に制限はなく、例えば、電子写真感光体表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光源、或いはこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器等が挙げられる。
【0260】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される現像手段について具体的に説明すると、現像手段としては、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用い接触或いは非接触させて現像する公知の現像器等が挙げられる。又、トナーとしては、機械的な粉砕方や化学重合で作られる。トナーの形状としては不定形なものから球形のものが挙げられる。
【0261】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される第一転写手段(中間転写手段)について具体的に説明すると、第一転写手段(中間転写手段)としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。なお、本発明においては、上記転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。
【0262】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される第二転写手段について具体的に説明すると、第二転写手段としては、先に述べた第一転写手段として例示した転写ローラ等の接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等が挙げられる。これらの中でも、第一転写手段と同様に接触型転写帯電器が好ましい。転写ローラ等の接触型転写帯電器により強く押圧するようにすると、画像の転写状態を良好な状態に維持させることができる。また、中間転写体を案内するローラの位置で転写ローラ等の接触型転写帯電器を押圧すると、中間転写体から被転写体に対してトナー像を移転させる作用を良好な状態で行うことが可能になる。
【0263】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される光除電手段について具体的に説明すると、光除電手段としては、例えば、タングステンランプ、LED等が挙げられ、該光除電プロセスに用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられる。該光除電プロセスにおける照射光強度としては、通常、電子写真感光体の半減露光感度を示す光量の数倍乃至30倍程度になるよう出力設定される。
【0264】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用されるクリーニング手段について具体的に説明すると、クリーニング手段としては、特に制限はなく、それ自体公知のクリーニング装置等を用いればよい。例えば、ウレタン製のブレードやクリーニングブラシ等が挙げられる。
【0265】
上述した本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジに使用される定着手段について具体的に説明すると、定着手段としては、特に制限はなく、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
【0266】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0267】
以下に示す手順により図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する実施例1及び実施例2、並びに、比較例1〜比較例3の電子写真感光体を作製した。
【0268】
(実施例1)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0269】
先ず、円盤状のアルミニウム基体(直径:30φ、厚さ:1mm)を硫酸水溶液(濃度150g/L)中に浸漬し、アルミニウム基体を陽極として陽極酸化処理を行い、酸化膜層(層厚:7μm)を形成した。陽極酸化処理条件は、硫酸水溶液温度20度、1A/dm2×30分、電界電圧15Vとした。
【0270】
次に、加水分解性有機金属化合物としてのジルコニウム化合物(商品名:「オルガチックスZC540」、松本製薬工業社製):10質量部、シランカップリング剤としてのγ-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:「A1110」、日本ユニカー社製):1質量部、i-プロピルアルコール:40質量部、n-ブチルアルコール:20質量部からなる中間層用塗布液を調製した。
【0271】
次に、この中間層用塗布液を、アルミニウム基体の酸化膜層上に浸漬コーティング法により塗布し、150℃において10分間加熱乾燥し、中間層(層厚:0.1μm)を形成した。
【0272】
次に、中間層上に2層構造の感光層を形成した。まず、電荷発生物質としてのCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン:15質量部、バインダー樹脂となる塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:「VMCH」、日本ユニカー社製):10質量部、n-ブチルアルコール:300質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間混合した。
【0273】
得られた分散液を電荷発生層形成用の塗布液として中間層上に浸漬塗布し、乾燥して、電荷発生層(層厚:0.2μm)を形成した。
【0274】
更に、N,N'-シ゛フェニル-N,N'-ヒ゛ス(3-・`ルフェニル)-[1、1']ヒ゛フェニル-4,4'-シ゛アミン:4質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万):6質量部とをクロロベンゼン:80質量部に加えて溶解した。得られた分散液を電荷輸送層形成用の塗布液として電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、40分の乾燥を行うことにより電荷輸送層(層厚:25μm)を形成した。これにより感光体を完成した。
【0275】
(実施例2)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0276】
先ず、実施例1と同様の手順及び条件で、円盤状のアルミニウム基体(直径:30φ、厚さ:1mm)に陽極酸化処理を施し、酸化膜層(層厚:7μm)を形成した。
【0277】
次に、n-ブチルアルコール170質量部にポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM-S、積水化学社製):4質量部を溶解した液を調製した。次に、この液に、加水分解性有機金属化合物としてアセチルアセトンジルコニウムブトキシド(商品名:「オルガチックスZC540」、松本製薬工業社製):30質量部、シランカップリング剤としてのγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:「A1110」、日本ユニカー社製):3質量部を添加して混合し、撹拌して中間層用塗布液を調製した。
【0278】
次に、この中間層用塗布液を、アルミニウム基体の酸化膜層上に塗布し、室温で5分間風乾を行った。その後、この積層体を80℃、絶対湿度:144g/kg(相対湿度:60%RH)の条件に保った恒温恒湿槽内にいれて20分間加湿処理を施し、中間層となる前の層の硬化促進を行った。次に、170℃、絶対湿度:4g/kgで10分間の硬化処理を行い、中間層(層厚:0.1μm)を形成した。
【0279】
次に、実施例1と同様の手順及び条件で電荷発生層と電荷輸送層とを順次形成し、電子写真感光体を作製した。
【0280】
(実施例3)
以下の手順にて図3に示した電子写真感光体120と同様の構成を有する感光体を作製した、
【0281】
先ず、実施例1と同様の手順及び条件で、円盤状のアルミニウム基体(直径:30φ、厚さ:1mm)に陽極酸化処理を施し、酸化膜層(層厚:7μm)を形成した。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、前記酸化膜層上に中間層、電荷発生層を形成した。
【0282】
次に、N,N'-シ゛フェニル-N,N'-ヒ゛ス(3-・`ルフェニル)-[1、1']ヒ゛フェニル-4,4'-シ゛アミン:4質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万):6質量部とをクロロベンゼン:80質量部に加えて溶解した。得られた分散液を電荷輸送層形成用の塗布液として電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、40分の乾燥を行うことにより電荷輸送層(層厚:22μm)を形成した。
【0283】
次に、下記式(40)で表される化合物2質量部、メチルトリメトキシシラン2質量部、テトラメトキシシラン0.5質量部及びコロイダルシリカ0.3質量部を、イソプロピルアルコール5質量部、テトラヒドロフラン3質量部及び蒸留水0.3質量部の混合液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:「アンバーリスト15E」)0.5質量部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。なお、式(40)中、「Me」はメチル基を示し、「i-Pr」はイソプロピル基を示す。
【0284】
【化29】
【0285】
次に、加水分解後の反応混合物からイオン交換樹脂を濾過分離し、その濾液に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(acac)3)0.1質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4質量部を加えて保護層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、170℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚約3μmの保護層を形成して感光体を得た。
【0286】
(実施例4)
以下の手順にて図3に示した電子写真感光体120と同様の構成を有する感光体を作製した。
【0287】
先ず、実施例1と同様の手順及び条件で、円盤状のアルミニウム基体(直径:30φ、厚さ:1mm)に陽極酸化処理を施し、酸化膜層(層厚:7μm)を形成した。次に、実施例1と同様の手順及び条件で、前記酸化膜層上に中間層、電荷発生層を形成した。
【0288】
次に、下記式(41)で表される化合物4質量部と、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万):6質量部とをクロロベンゼン:80質量部に加えて溶解した。得られた分散液を電荷輸送層形成用の塗布液として電荷発生層上に浸漬塗布し、130℃、40分の乾燥を行うことにより電荷輸送層(層厚:22μm)を形成した。なお、式(41)中、「Me」はメチル基を示す。
【0289】
【化30】
【0290】
次に、下記式(42)で表される化合物2質量部、メチルトリメトキシシラン2質量部、テトラメトキシシラン0.5質量部及びコロイダルシリカ0.3質量部を、イソプロピルアルコール5質量部、テトラヒドロフラン3質量部及び蒸留水0.3質量部の混合液に溶解させ、さらにイオン交換樹脂(商品名:「アンバーリスト15E」)0.5質量部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。なお、式(42)中、「Me」はメチル基を示す。
【0291】
【化31】
次に、加水分解後の反応混合物からイオン交換樹脂を濾過分離し、その濾液に、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(acac)3)0.1質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4質量部を加えて保護層用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、170℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚約3μmの保護層を形成して感光体を得た。
【0292】
(比較例1)
実施例1で用いたアルミニウム基体(鏡面切削アルミニウム基体)に陽極酸化処理を施さず、アルミニウム基体上に直接中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次設けた構成(酸化膜層を設けない構成)とした以外は、実施例1と同様の手順及び条件により電子写真感光体を作製した。
【0293】
(比較例2)
実施例1で配置した中間層を設けない構成とした以外は、実施例1と同様の手順及び条件により電子写真感光体を作製した。
【0294】
(比較例3)
実施例1で用いた陽極酸化処理を施したアルミニウム基体に陽極酸化処理を施さず、アルミニウム基体上にN-β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:「KBM602」、信越化学社製)のメタノール20質量%液を塗布することで形成された中間層を設けた以外は、実施例1と同様の手順及び条件により電子写真感光体を作製した。
【0295】
[電子写真感光体の電子写真特性評価試験]
(1)使用初期の特性評価(初期電位測定)
実施例1及び実施例2並びに比較例1〜比較例3の電子写真感光体をレーザープリンタ−スキャナー(商品名:「Docu Print C620」の改造機、富士ゼロックス社製)に搭載し、それぞれの電子写真感光体の電子写真特性を以下のように評価した。
【0296】
常温常湿(20℃、40%RH)環境下、グリッド印加電圧−700Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電させたときの各電子写真感光体の表面の電位A[V]を測定した。次に、780nmの半導体レーザーを用いて、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせ、このときの各電子写真感光体の表面の電位B[V]を測定した。続いて、放電させてから3秒後各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面の電位C[V]を測定した。
【0297】
ここで、電位Aの値が高いほど、電子写真感光体の受容電位が高いので、コントラストを高く取ることができることになる。また、電位Bの値が低いほど高感度な電子写真感光体であることになる。更に、電位Cの値が低いほど残留電位が少なく、画像メモリーやいわゆるカブリが少ない電子写真感光体と評価される。これらの結果を表2に示す。
【0298】
(2)繰り返し使用後の特性評価
上述の(1)で説明した操作を1万回繰り返し、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。これらの結果を表2に示す。
【0299】
(3)使用環境の変化に対する安定性評価
上記の操作を低温低湿(10℃、15%RH)、高温高湿(28℃、85%RH)の2つの異なる環境下で行い、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。そして、これらの異なる環境間での電位A〜電位Cの値の変動量(ΔA、ΔB、ΔC)を測定し、使用環境の変化に対する各電子写真感光体の安定性評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0300】
(4)1万枚プリント後の画質評価
実施例1及び実施例2並びに比較例1〜比較例3の電子写真感光体を図11と同様の構造を有する接触帯電装置、中間転写装置を有するフルカラープリンター(商品名:「Docu Print 2220」、富士ゼロックス社製)に搭載し、1万枚の紙への連続プリントテストを行った。
【0301】
そして1万枚プリント後の画質を、「異常なし」;良好な画質が得られた、「リーク発生」;感光体に絶縁破壊痕確認、「全面カブリ」;紙面全体(100mm×200mm)に微細な黒点(直径0.15mm以下)が多数(5000個以上)確認できた、「黒点多発」;紙面全体(100mm×200mm)に大きな黒点(直径0.2mm以上)が多数(100個以上)確認できた、とした評価基準のもとで評価した。これらの結果を表2に示す。
【0302】
【表2】
【0303】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1及び実施例2の感光体を用いた場合には、連続1万枚のプリントテストを行っても、リーク欠陥の発生も認められず、良好な画質の画像を継続して得ることが確認された。
【0304】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、中間転写機構を備える電子写真装置に搭載され、かつ、長期わたり繰り返し使用される場合であっても、作動環境の変動による電気特性の大きな変動が充分に防止されると共に該電気特性の経時的な低下が充分に防止され、優れた画質の画像を継続的に形成可能な電子写真感光体を提供することができる。そして、このような電子写真感光体を備えることにより、長期にわたり繰り返し使用しても優れた画質の画像を継続的に得ることのできるプロセスカートリッジ並びに電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
2…酸化膜層、3…アルミニウム基体、4…中間層、5…保護層、6…感光層、61…電荷発生層、62…電荷輸送層、7…電子写真感光体、8…帯電手段、9…電源、10…露光手段、11…現像手段、12…転写手段(2次転写体)、13…クリーニング装置、14…除電器、16…取り付けレール、17…除電露光のための開口部、18…露光のための開口部、20…中間転写体(1次転写体)、42…中間層、100,110,120,130…電子写真感光体、200…電子写真装置、300…プロセスカートリッジ、400・・・ハウジング、401a〜401d・・・電子写真感光体、402a〜402d・・・帯電ロール、403・・・レーザ光源(露光装置)、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d・・・トナーカートリッジ、406・・・駆動ロール、407・・・テンションロール、408・・・バックアップロール、409・・・中間転写ベルト、410a〜410d・・・1次転写ロール、411・・・トレイ(被転写体トレイ)、412・・・移送ロール、413・・・2次転写ロール、414・・・定着ロール、415a〜415d・・・クリーニングブレード、416・・・クリーニングブレード、500・・・被転写媒体。
Claims (13)
- 中間転写体を用いて画像を被転写媒体上に形成する中間転写機構を備える電子写真装置に搭載される電子写真感光体であって、
アルミニウム基体と、
電荷発生物質を含む感光層と、
前記アルミニウム基体と前記感光層との間に配置される中間層と、
前記中間層と前記アルミニウム基体との間に配置されており、金属酸化物からなる酸化膜層と、
を少なくとも有しており、
前記中間層は、加水分解性の特性基を有する有機金属化合物を少なくとも含む塗布液を前記酸化膜層上に塗布することにより形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体。 - 前記酸化膜層は、酸化剤を含む酸性液体中において前記アルミニウム基体を陽極酸化することにより形成される陽極酸化膜であること、
を特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。 - 前記有機金属化合物を構成する金属原子が、ジルコニウム、チタン又はアルミニウムであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。 - 前記塗布液には、加水分解性の特性基を有する有機ケイ素化合物が更に含まれていること、
を特徴とする請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体。 - 前記有機ケイ素化合物がシランカップリング剤であること、を特徴とする請求項1〜4のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層に含有される前記電荷発生物質が、フタロシアニン系顔料であること、を特徴とする請求項1〜5のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記フタロシアニン系顔料が、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン及びフタロシアニンからなる群より選択される少なくとも1種であること、を特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層上に、前記感光層を保護するための保護層が更に配置されていること、を特徴とする請求項1〜6のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体。
- 前記保護層には、シロキサン系化合物が少なくとも含有されていること、を特徴とする請求項8に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜9のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体と、
帯電手段、現像手段、中間転写手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 前記帯電手段が、前記電子写真感光体に接触して該電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置であることを特徴とする請求項10に記載のプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜9のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電される前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を少なくとも備えており、
前記転写手段の転写方式が、前記トナー像を中間転写体に1次転写し、該中間転写体上の1次転写像を前記被転写媒体に2次転写する中間転写方式であること、
を特徴とする電子写真装置。 - 前記帯電手段が、前記電子写真感光体に接触して該電子写真感光体を帯電させる接触帯電装置であることを特徴とする請求項12に記載の電子写真装置。
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