JP2004191869A - 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性及びトナーに対する脱着性に優れ、繰返して使用しても残留電位の上昇を充分に防止可能であり、優れた画質の画像を得ることのできる電子写真感光体及びこの製造方法、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置の提供。
【解決手段】電子写真感光体100は2以上の層が積層された構造を有しており、2以上の層には、これらの層のうちの一端に配置される導電性支持体3と、電荷発生材料を含む感光層6とが少なくとも含まれている。また、層3から最も離れた他端に配置される最外部の層(層2)には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、フッ素含有樹脂からなる粒子は、当該粒子の原料のフッ素含有樹脂粉体を、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて洗浄する溶剤洗浄処理と、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により洗浄する水洗浄処理とを経て形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】電子写真感光体100は2以上の層が積層された構造を有しており、2以上の層には、これらの層のうちの一端に配置される導電性支持体3と、電荷発生材料を含む感光層6とが少なくとも含まれている。また、層3から最も離れた他端に配置される最外部の層(層2)には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、フッ素含有樹脂からなる粒子は、当該粒子の原料のフッ素含有樹脂粉体を、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて洗浄する溶剤洗浄処理と、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により洗浄する水洗浄処理とを経て形成されている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真感光体は、高速、かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザビームプリンター等の分野において非常に多く利用されている。これら画像形成装置において用いられる電子写真感光体として、従来からのセレン、セレンーテルル合金、セレンーヒ素合金、硫化カドミウム等無機光導電材料を用いた電子写真感光体に比べ、安価で製造性、安全性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を電荷発生物質として含有した電子写真感光体が主流を占める様になってきている。
【0003】
このような電子写真感光体の構成としては、導電性支持体上に形成する感光層として電荷発生物質及び電荷輸送物質を併有するいわゆる単層型の感光層を有するものと、露光により電荷を発生する電荷発生層とその電荷を輸送する電荷輸送層とからなる2層構造のいわゆる機能分離型の感光層を有するものとがある。特に、上記の構成を有する電子写真感光体の中でも、機能分離型積層有機感光体は、電子写真特性の点で優れており、種々の提案が成され実用化されている。
【0004】
そして、上記のような電子写真感光体の製造方法としては、上記感光層の構成成分を溶剤に分散又は溶解した塗布液を調製し、次いで、これを導電性支持体の被塗布面(例えば、感光層の形成される面)上に塗布する方法が従来一般に広く用いられている。
【0005】
ところで、有機感光体は無機感光体に比べ、一般に機械的強度が劣っており、クリーニングブレードや、現像ブラシ、用紙などの機械的外力による摺擦傷、摩耗により感光体の寿命が短いという問題があった。更に、エコロジーの観点から近年使用されてきている接触帯電方式を用いたシステムでは、コロトロンによる帯電方式に比べて大幅に感光体の摩耗が増加することも問題となっている。この結果、感光体の感度が低減し画像濃度が低下したり、帯電電位が低下し画像にかぶりが生じたりするという問題があった。従って、十分な機械的な外力、電気的な外力に対する優れた耐久性を有する感光体の開発が望まれていた。
【0006】
一方、電子写真方式の画像形成方法では、化石資源の利用削減の点から、転写の際に生じる残留トナーの廃棄が問題となっている。廃棄トナーの問題を回避するためには残留トナー量を極力少なくすることが重要であり、そのためにはトナーの転写効率を上げることが必要となる。
【0007】
また、廃棄トナーを発生させないという観点から、クリーニング工程を設けずに、転写残留トナーを現像と同時に現像装置に回収するクリーナーレス方式が提案されている。クリーナーレス方式において、転写効率が不十分であった場合、感光体表面に残留したトナーがプリントアウトされてしまうポジゴーストや、感光体表面に残留したトナーの遮光効果によるネガゴーストが発生する。従って、トナーの転写効率を上げることは、従来のクリーナーを有する方式においても、クリーナーレス方式においても重要である。
【0008】
トナーの転写効率を上げる方法としては、感光体表面に直接付着しているトナー粒子を効率的に転写することが重要であり、そのためには、トナーと感光体との間の付着力を下げることが有効である。つまり、トナーをそれが付着した表面から円滑かつ確実に脱着することのできる感光体が要求されている。トナーに対する離型性が十分でない場合には、転写工程で一部のトナーが残ることによって、画像の欠陥が発生したり、トナー成分や用紙の含有成分が感光体表面に付着することによって、トナーフィルミングと呼ばれる現象が発生することとなる。
【0009】
上記の画像欠陥の発生やトナーフィルミングの発生を防止するための技術としては、従来から、感光体の表面層(トナーが付着されることになる感光体の最上部に位置する層を示し、例えば、感光体の構造によっては感光層に相当する場合や、感光層上に形成された保護層に相当する場合がある。本明細書中では、以下、「最外部の層」という。)中にフッ素系樹脂粉体を分散する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。フッ素系樹脂粉体の分散により、最外部の層(表面層)の摩擦係数が減少し、摩耗やキズに対する耐久性(耐摩耗性)が向上するとともに、トナーの脱着性が向上することにより、クリーニング性が向上することが知られている。
【0010】
更に、上述のフッ素系樹脂粉体には、通常、この粉体を製造する時に使用される原料(樹脂を構成するモノマー)、低分子量のオリゴマー、触媒、開始剤、安定剤、乳化剤等の未反応物、及びフッ素系樹脂分解物が残留物として付着している。この残留物が付着したままの状態のフッ素系樹脂粉体を最外部の層(表面層)中に分散させると、残留電位の上昇によりいわゆるカブリが発生するなど電子写真特性が低下することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
この電子写真特性の低下を防止するための技術としては、フッ素系樹脂粉体を最外部の層(表面層)に含有させる前に、有機溶剤を用いて予め洗浄することにより残留物を低減させる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開昭63−221355号公報
【特許文献2】
特開平1−255862号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上述の特許文献1に記載の感光体はもとより特許文献2に記載の感光体であっても、繰返して使用した場合の残留電位の上昇を充分に防止できておらず、優れた画質の画像を得るには未だ充分なものではないことを見出した。特に、高温高湿の環境下での繰返使用時における残留電位の上昇は著しく、画像の濃度低下が生じ易くなる。
【0014】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性及びトナーに対する脱着性に優れ、繰返して使用しても残留電位の上昇を充分に防止可能であり、優れた画質の画像を得ることのできる電子写真感光体及びこの製造方法、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特許文献2に記載のように有機溶剤を用いて予めフッ素系樹脂粉体を洗浄しても、フッ素系樹脂粉体に付着した水溶性の残留物を充分に低減することができておらず、然も、この水溶性の残留物{特にフッ化水素(フッ化水素酸)等の水溶性の含フッ素化合物や水溶性の界面活性剤等の乳化剤}が、感光体を繰返して使用した場合の残留電位の上昇に大きな影響を及ぼしていることを見出した。そして、本発明者らは、有機溶剤のみならず水によりフッ素系樹脂粉体を洗浄することが優れた画質の画像を得る上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0016】
すなわち、本発明は、導電性支持体と、導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
フッ素含有樹脂からなる粒子は、当該粒子の原料となるフッ素含有樹脂粉体を、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて洗浄する溶剤洗浄処理と、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により更に洗浄する水洗浄処理と、を経て形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0017】
また、本発明は、導電性支持体と、導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
フッ素含有樹脂からなる粒子は、当該粒子の原料となるフッ素含有樹脂粉体を、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤と水とを含む混合液を用いて洗浄する洗浄処理を経て形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0018】
上述のように、「フッ素含有樹脂粉体」に対して、有機溶剤で洗浄した後に、更に水で洗浄する2段階の洗浄処理(溶剤洗浄処理及び水洗浄処理)を施すか、又は、有機溶剤と水とを含む混合液で洗浄する1段階の洗浄処理を施すことにより、フッ素含有樹脂粉体に付着している疎水性の残留物とともに、先に述べた水溶性の残留物{特に、製造過程で副生するフッ化水素(フッ化水素酸)等の水溶性の含フッ素化合物や、製造時に混入する水溶性の界面活性剤等の乳化剤}を充分に低減することができる。
【0019】
そのため、上記の何れかの処理を施した「フッ素含有樹脂からなる粒子」を感光体の最外部の層に分散させることにより、優れた耐磨耗性とトナーの脱着性を得ることができる。然も、感光体を繰返して使用した場合でも、残留電位の上昇を充分に防止することができる。その結果、本発明の感光体は優れた画質の画像を得ることができる。
【0020】
ここで、本発明において、「フッ素含有樹脂からなる粒子」とは、上述の2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理を施した後に得られる粒子を示し、「フッ素含有樹脂粉体」とは上述の2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理を施す前の状態にある上記「フッ素含有樹脂からなる粒子」の原料となる粒子を示す。また、上述の2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理は、それぞれ複数回繰り返してもよい。
【0021】
更に、本発明において、感光層は、導電性支持体の先に述べた被塗布面の上方に形成されていればよい(配置されていればよい)。従って、例えば、導電性支持体の被塗布面上に感光層が接触した状態で配置されていたもよく、導電性支持体の被塗布面と感光層との間に他の層(例えば、後述する下引層等)が配置されていてもよい。
【0022】
また、本発明において、「最外部の層」とは、トナーが付着されることになる感光体の最上部に位置する層を示す。例えば、感光体の構造によっては感光層に相当する場合、感光層上に形成された保護層に相当する場合がある。また、感光層が、電荷発生層と電荷輸送層とから構成されたいわゆる機能分離型の感光層の場合であって感光層が感光体の最上部に位置する構成の場合には、電荷発生層及び電荷輸送層のうちのトナーが付着されることになる層が最外部の層となる。
【0023】
更に、先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、上述した本発明の電子写真感光体のうち、1段階の洗浄処理を行ってフッ素含有樹脂からなる粒子を得る場合の混合液については、混合液中の水の含有率が50質量%以上であることが好ましい。
【0024】
また、先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、上述した本発明の電子写真感光体の何れにおいても、フッ素含有樹脂からなる粒子を得る場合の処理に使用する有機溶剤について、有機溶剤は、水に対する相溶性を有していることが好ましい。
【0025】
更に、先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、上記有機溶剤が、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及び、ケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒であることが好ましく、メタノールであることがより好ましい。
【0026】
また、本発明は、導電性支持体と、導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、水溶性の含フッ素化合物を少なくとも含むフッ素含有樹脂粉体を原料とするフッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
最外部の層中の含フッ素化合物の含有量が下記式(1)の条件を満たしていること特徴とする電子写真感光体を提供する。
(Y/X)≦2.0・・・(1)
[式(2)中、Xは最外部の層に含まれる固形成分の全質量を示し、Yは最外部の層に含まれる全ての含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量を示す。]
【0027】
水溶性の含フッ素化合物を少なくとも含むフッ素含有樹脂粉体を原料として用いた場合、水溶性の含フッ素化合物を完全に除去することができなくとも、最外部の層中の含フッ素化合物の含有量を上述の式(1)の条件を満たすように調節することにより、優れた耐磨耗性とトナーの脱着性を得ることができ、然も、繰返して使用した場合でも残留電位の上昇が充分に防止することのできる感光体を構成することができる。含フッ素化合物の含有量の調節方法としては、先に述べた2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理を「フッ素含有樹脂粉体」施す方法が好ましい。
【0028】
ここで、「最外部の層に含まれる全ての含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量Y」とは、以下の手法により測定されるフッ化物イオン(F-)の質量を示す。
【0029】
即ち、先ず、感光体から剥離した最外部の層の一部(又は全部)をトルエンを用いて溶解しトルエン溶液とする。次いで、得られるトルエン溶液に、脱イオン水を添加することにより、トルエン溶液からなる有機層と脱イオン水からなる水層とに分離する。そして、最外部の層の中に含まれる水溶性の物質(水溶性の含フッ素化合物を含む)を水層へ抽出する。次に、この水層の一部を分析試料としてサンプリングし、イオンクロマトグラフィー分析装置(後述の実施例1を参照)を用いてこの分析試料から生成するフッ化物イオン(F-)を定量する。そして、このフッ化物イオンが最外部の層の中に含まれる水溶性の含フッ素化合物(フッ化水素等)から生成したものと仮定し、最外部の層の固形成分の質量と、採取した最外部の層の部分の固形成分の質量と、サンプリングした分析試料の質量を考慮して、最外部の層中に含まれると仮定したフッ化物イオン(F-)の質量Yを算出する。
【0030】
ここで、(Y/X)が2.0ppmを超えると、繰返して使用した場合の残留電位の上昇を充分に防止することができなくなる。
【0031】
また、本発明においては、上記の含フッ素化合物はフッ化水素であってもよい。更に、本発明においては、先に述べたように、最外部の層が感光層であってもよい。
【0032】
また、本発明においては、感光層が、前記電荷発生物質を含んでおり露光により電荷を発生する電荷発生層と、前記電荷発生層において発生する電荷を輸送する電荷輸送層とから構成されており、かつ、最外部の層が電荷発生層及び前記電荷発生層の何れか一方であってもよい。
【0033】
更に、本発明においては、感光層上に当該感光層を保護する保護層が設けられており、最外部の層が保護層であってもよい。
【0034】
また、本発明は、2以上の層が積層された構造を有しており、2以上の層には、当該2以上の層のうちの一端に配置される導電性支持体と、電荷発生材料を含む感光層とが少なくとも含まれており、かつ、2以上の層のうちの導電性支持体から最も離れた他端に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されている電子写真感光体の製造方法であって、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する溶剤洗浄処理と、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により更に洗浄する水洗浄処理とからなる工程を経てフッ素含有樹脂からなる粒子を作製すること、を特徴とする電子写真感光体の製造方法を提供する。
【0035】
更に、本発明は、2以上の層が積層された構造を有しており、2以上の層には、当該2以上の層のうちの一端に配置される導電性支持体と、電荷発生材料を含む感光層とが少なくとも含まれており、かつ、2以上の層のうちの導電性支持体から最も離れた他端に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されている電子写真感光体の製造方法であって、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤と水とを含む混合液を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する洗浄処理工程を経てフッ素含有樹脂からなる粒子を作製すること、を特徴とする電子写真感光体の製造方法を提供する。
【0036】
上記の何れかの電子写真感光体の製造方法によれば、先に述べた、優れた画質の画像を得ることのできる本発明の電子写真感光体を容易かつ確実に得ることができる。先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、上述した本発明の電子写真感光体の製造方法の何れにおいても、フッ素含有樹脂からなる粒子を得る場合の処理に使用する有機溶剤について、有機溶剤は、水に対する相溶性を有していることが好ましい。
【0037】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0038】
本発明のプロセスカートリッジも、先に述べた本発明の電子写真感光体を搭載しているので優れた画質の画像を得ることができる。
【0039】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0040】
本発明の画像形成装置も、先に述べた本発明の電子写真感光体を搭載しているので優れた画質の画像を得ることができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0042】
なお、本発明の電子写真感光体の製造方法は、電子写真感光体の最外部の層を形成する工程において、フッ素含有樹脂粉体を、2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理を行って作製したフッ素含有樹脂からなる粒子を含有させた感光層形成用塗布液を調製して使用すればよく、感光層以外の電子写真感光体の他の構成要素の製造工程における手順やその際の条件は特に限定されず、例えば、公知の薄膜製造技術を用いることができる。そのため、本発明の電子写真感光体の製造方法の好適な実施形態については、その主要部となる感光層の形成工程の説明を以下の本発明の電子写真感光体の各実施形態の感光層の説明において行うこととする。
【0043】
図1は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態の基本構成を示す断面図である。図1に示すように、電子写真感光体100は、導電性支持体3と、下引き層4と、感光層6とから構成されている。この電子写真感光体100は、先に述べた本発明の電子写真感光体の製造方法により製造されるものである。
【0044】
導電性支持体3は、導電性を有していれば特に限定されるものはなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属ドラムを使用することができる。また、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン・ニッケルークロム・ステンレス鋼・銅ーインジウム等の金属を蒸着することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状のもの使用できる。
【0045】
更には、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着するか、又は金属箔をラミネートすることによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物のもの使用できる。また、この他にも、カーボンブラック・酸化インジウム・酸化錫ー酸化アンチモン粉・金属粉・沃化銅等をバインダー樹脂に分散し、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に塗布することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物なども使用することができる。
【0046】
ここで、金属パイプ基材を導電性支持体3として用いる場合、その表面は素管のままであっても、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理などの処理を行なうことが好ましい。表面処理を行ない基材表面を粗面化することによりレーザビームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0047】
下引き層4は、導電性を有する粒子(金属粒子、導電性を有する金属酸化物粒子、導電性を有する炭素材料粒子等)と、バインダー樹脂とを少なくとも含んでいる。そして、下引き層4は、感光層6の帯電時において、導電性支持体3から感光層6への電荷の注入を阻止する機能及び感光体リークを防止する機能を有する。また、この下引き層4は、感光層6を導電性支持体3に対して一体的に接着保持せしめる接着層としても機能する。更に、この下引き層4は、導電性支持体3の光反射を防止する機能を有する場合もある。
【0048】
下引き層4の層厚は感光体リークを阻止する観点から、15μm以上であることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。但し、十分なリーク耐性を有しており上述のリーク欠陥の発生が懸念されないような場合には、下引き層の層厚は15μmより薄く設定することが可能であり、この場合には0.1μm程度の薄膜まで適用可能である。また、下引層4は、ビッカース強度が35以上とされていることが好ましい。
【0049】
また、下引層の表面粗さはモアレ像防止のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)からλに調整される。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加することもできる。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。更に、表面粗さ調整のために下引層を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0050】
また、下引き層4に使用されるバインダー樹脂は、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などを用いることができる。
【0051】
中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。なお、金属酸化物粒子とバインダ樹脂との配合比率は所望の電子写真感光体の特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0052】
また、下引き層4に使用される金属酸化物粒子は、所望の電子写真感光体の特性を得られる範囲で任意に選択することができ、2種以上の金属酸化物粒子を混合して用いることもできる。導電性を有する粒子(金属粒子、導電性を有する金属酸化物粒子、導電性を有する炭素材料粒子等)としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粒子や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性を有する金属酸化物粒子や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末等の導電性を有する炭素材料粒子が挙げられる。
【0053】
導電性を有する金属酸化物粒子としては、粒径が平均粒子径0.5μm以下の微粒子が好ましく用いられる。ここでいう粒径とは、平均1次粒径を意味する。下引層4はリーク耐性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要であり、そのため金属酸化物微粒子としては102〜1011Ω・cm程度の粉体抵抗が必要である。中でも上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子を用いるのが好ましい。なお、上記範囲の下限よりも金属酸化物微粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。また、金属酸化物微粒子は2種以上混合して用いることもできる。
【0054】
更に、この金属酸化物粒子に対しては、下引き層4に含有させる前に、加水分解性の官能基を有する有機金属化合物(加水分解性有機金属化合物)等により表面処理を予め行い使用することも可能である。金属酸化物微粒子へカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体抵抗を制御することができる。カップリング剤としては所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができる。具体的なカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0055】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法或いは湿式法を用いることができる。乾式法にて表面処理を施す場合には金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接或いは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加或いは噴霧する際には50℃以上の温度で行われることが好ましい。添加或いは噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。
【0056】
焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。乾式法においては金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に加熱乾燥して表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水を処理前に除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。
【0057】
湿式法としては、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌或いは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去した後、更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においても金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水除去方法として、乾式法と同様の加熱乾燥の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が実施できる。金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であることが必須である。
【0058】
電子写真特性は表面処理処理後に金属酸化物微粒子に付着している量によって影響され、シランカップリング剤の場合、その付着量は蛍光X線分析におけるSi強度と該金属酸化物の主たる金属元素強度から求められる。蛍光X線分析における好ましいSi強度は該金属酸化物の主たる金属元素強度の1.0×10-5〜1.0×10-3の範囲である。この範囲を下回った場合、かぶり等の画質欠陥が発生しやすく、この範囲を上回った場合残留電位の上昇による濃度低下が発生しやすい。
【0059】
次に下引き層4の形成方法について説明する。この下引き層4は、金属酸化物粒子を先に述べたバインダー樹脂中に分散させて得られる塗布液を導電性支持体3上に浸漬塗布法やスプレー塗布法等の公知の技術により塗布することにより形成することができる。
【0060】
下引き層4の形成用の塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。
【0061】
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロルメタン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエチレンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル類、或いはあベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独或いは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0063】
金属酸化物粒子をバインダー樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。更にこの下引き層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0064】
下引層形成用塗布液には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾールや2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0065】
シランカップリング剤は金属酸化物微粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に塗布液に添加して用いることもできる。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例として、金属酸化物微粒子の表面処理に用いるカップリング剤の具体例と同様なものを用いることができる。
【0066】
上述のジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0067】
上述のチタニウムキレート化合物の例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0068】
上述のアルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0069】
なお、これらジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物は単独に或いは複数の化合物の混合物或いは重縮合物として用いることができる。
【0070】
次に、感光層6について説明する。図1に示すように、感光層6は電荷発生層1と電荷輸送層2とから構成されている。この電子写真感光体100の場合、電荷輸送層2が先に述べた最外部の層に相当し、その内部には、フッ素樹脂からなる粒子が分散されている。
【0071】
電荷発生層1に含有される顔料(電荷発生物質)は特に限定されず、公知の顔料又は染料を使用することができる。
【0072】
赤外光を利用する感光体では、例えば、フタロシアニン顔料、スクアリリウム顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン顔料、ジチオケトピロロピロール顔料を使用することができる。また、可視光レーザを利用する感光体では、例えば、縮合多環顔料、ビスアゾ顔料、ペリレン顔料、トリゴナルセレン、色素増感した金属酸化物等を使用することができる。また、非晶質セレン・結晶性セレン・セレンーテルル合金・セレンーヒ素合金・その他のセレン化合物及びセレン合金、酸化亜鉛・酸化チタン 等の無機系光導電体を使用してもよい。また、これらの電荷発生物質は、1種又は2種以上を組み合せて使用できる。
【0073】
上述した顔料の中では、優れた画像を得られることから、フタロシアニン顔料(フタロシアニン系化合物)を使用することが好ましい。これにより、特に高感度で、繰り返し使用しても良好な画質を安定して得ることのできる電子写真感光体を構成することが容易にできる。
【0074】
フタロシアニン系化合物は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることができる。特に、フタロシアニン系化合物としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン及びフタロシアニン(無金属フタロシアニン)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0075】
より具体的には、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2゜)が少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜の位置に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2゜)が少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜の位置に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2゜)が少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜の位置に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2゜)が少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜の位置に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を使用することが好ましい。
【0076】
更に、このような顔料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティング或いはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕或いは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。
【0077】
電荷発生層1に含有されるバインダー樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の材料を使用することができる。例えば、好ましいバインダー樹脂としては、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。
【0078】
電荷発生層1用のバインダー樹脂としては、顔料の分散性の観点から、特にポリビニルアセタール樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。なお、上記のバインダー樹脂は、単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。また、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、10:1〜1:10の範囲が望ましい。
【0079】
更に、電荷発生層1の層厚は、良好な電気特性と画質を与えるために任意に設定することが可能であるが、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2.0μmであることが好ましい。
【0080】
電荷発生層1は、顔料(電荷発生物質)、後述の溶剤、バインダー樹脂、その添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等を混合して電荷発生層形成用塗布液を調製し、これを下引き層4上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0081】
更に、電荷発生層1を形成するための塗布液に含まれる2種の溶剤は、公知の有機溶剤を任意に組み合せてよい。例えば、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤、また、これらの溶剤は単独或いは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0082】
電荷発生層1の形成用の塗布液を調製するには、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等とともに混合する。顔料を液中に高分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。更に、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
【0083】
電荷発生層1の形成用の塗布液を下引き層4上に塗布する場合の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、突き上げコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0084】
次に電荷輸送層2について説明する。電荷輸送層2には、フッ素樹脂からなる粒子と、電荷輸送物質と、バインダー樹脂とが少なくとも含有されている。
【0085】
このフッ素樹脂からなる粒子は、原料となるフッ素樹脂粉体に対して以下の2つの工程の何れかにより作製したものである。なお、先に述べたように、このフッ素含有樹脂粉体中には、通常、この粉体を製造する時に使用される原料(樹脂を構成するモノマー)、低分子量のオリゴマー、触媒、開始剤、安定剤、乳化剤等の未反応物、及び、フッ素系樹脂分解物が残留物として付着している。そして、上記の残留物を充分に除去したフッ素樹脂からなる粒子を得ることができる。特に以下の2つの工程の何れかで作製することにより、従来においては充分に除去することのできなかった水溶性の残留物{特にフッ化水素(フッ化水素酸)等の水溶性の含フッ素化合物や水溶性の界面活性剤等の乳化剤}を十分に除去することができる。
【0086】
すなわち、フッ素樹脂からなる粒子は、(i)フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する溶剤洗浄処理と、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により更に洗浄する水洗浄処理とからなる工程、又は、(ii)フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤と水とを含む混合液を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する洗浄処理工程を経て作製されている。洗浄処理後は、ろ過によりフッ素樹脂からなる粒子を得る。
【0087】
(i)及び(ii)の工程の何れにおいても、洗浄に使用するフッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤は、水に対する相溶性を有していることが好ましい。これにより、先に述べた残留物を効率よく除去することができる。特に、有機溶剤は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及び、ケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒であることが好ましい。これらの溶媒は水に対する相溶性を有しているからである。
【0088】
フッ素含有樹脂粉体の湿潤・洗浄する有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、或いはこれらの混合溶剤等を用いることができる。この中でも、特にメタノールが特に好ましい。
【0089】
また、(ii)の工程において、洗浄液を水と有機溶剤との混合液とする場合、混合液の使用量としては、フッ素含有樹脂粉体1質量部に対して、1〜200質量部の範囲であることが好ましく、3〜100質量部の範囲であることがより好ましい。また、混合液中の、水と有機溶剤との質量比は、水の質量:有機溶剤の質量=10:90〜99.5:0.5の範囲であることが好ましく、50:50〜99:1の範囲であることがより好ましい。
【0090】
なお、(i)の工程における水洗浄処理を行う場合、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体から完全に有機溶剤を除去せずに、フッ素含有樹脂粉体を有機溶剤で濡れた状態にしておき、その状態で水を加えることが好ましく、加えた後の液中の水と有機溶剤との質量比も水の質量:有機溶剤の質量=10:90〜99.5:0.5の範囲であることが好ましく、50:50〜99:1の範囲であることがより好ましい。
【0091】
また、先に述べたように、電荷輸送層2(最外部の層)中の含フッ素化合物の含有量は、下記式(1)で表される条件を満たすように調節されていることが好ましい。式(1)中、Xは最外部の層に含まれる固形成分の全質量を示し、Yは最外部の層に含まれる全ての含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量を示す。
(Y/X)≦2.0ppm・・・(1)
【0092】
上記の条件を満たす電荷輸送層2を形成する方法としては、(i)又は(ii)の工程を1回以上繰り返し行う方法や、(i)及び(ii)の工程を組み合せて1回以上繰り返し行う方法等が挙げられる。
【0093】
また、(i)及び(ii)の工程において、洗浄液(有機溶剤、水、水と有機溶剤との混合液)にフッ素含有樹脂粉体を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。更に、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
【0094】
洗浄した溶剤の分離方法として、加圧ろ過、吸引ろ過、遠心ろ過、フィルタプレス、デカント、セラミックフィルタ等の方法が利用できる。分離後の脱溶剤工程は、必要に応じて乾燥を行っても行わなくてもよい。乾燥方法として、真空乾燥機、電気炉、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉等が挙げられる。また、脱溶剤のための乾燥温度としては、フッ素含有樹脂粉体が熱分解しない温度以下で、かつ、水及び有機溶剤が揮発するのに必要な温度で十分である。
【0095】
フッ素含有樹脂からなる粒子の電荷輸送層2(最外部の層)中における含有率は、電荷輸送層2(最外部の層)の固形成分の全質量に対して、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。この含有率が1質量%未満ではフッ素含有樹脂からなる粒子の分散による改質効果を充分に得ることができなくなる傾向が大きくなる。一方、この含有率が40質量%を超えると電荷輸送層2(最外部の層)の光通過性が低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じてくるおそれがある。
【0096】
また、フッ素含有樹脂からなる粒子の構成材料となるフッ素含有樹脂は、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及び、これらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなることが好ましく、四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂からなることがより好ましい。
【0097】
フッ素含有樹脂からなる粒子の一次粒径は0.05〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることが好ましい。一次粒径が0.05μm未満となると電荷輸送層2を形成するための塗布液又はこれから得られる電荷輸送層2中におけるフッ素含有樹脂からなる粒子の分散性が低下し、凝集が進行しやすくなる傾向にある。一方、フッ素含有樹脂からなる粒子の一次粒径が1μmを超えると、画質欠陥が発生し易くなる。
【0098】
電荷輸送層2に含有される電荷輸送物質は、特に限定されるものではなく、公知の物質を使用することができる。
【0099】
例えば、2,5-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5-トリフェニル-ピラゾリン、1-[ピリジル-(2)]-3-(p-ジエチルアミノスチリル)-5-(p-ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P-メチル)フェニルアミン、N,N’-ビス(3,4-ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン、ジベンジルアニリン、9,9-ジメチル-N,N’-ジ(p-トリル)フルオレノン-2-アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3-(4’ジメチルアミノフェニル)-5,6-ジ-(4’-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアジン等の1,2,4-トリアジン誘導体、4-ジエチルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、4-ジフェニルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、[p-(ジエチルアミノ)フェニル](1-ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2-フェニル-4-スチリル-キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6-ヒドロキシ-2,3-ジ(p-メトキシフェニル)-ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p-(2,2-ジフェニルビニル)-N,N’-ジフェニルアニリン等のα-スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N-エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質等が挙げられる。
【0100】
更には、電荷輸送物質は、以上例示した化合物の基本構造を主鎖又は側鎖に有する重合体等も挙げられる。そして、これらの電荷輸送物質は、1種又は2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0101】
また、電荷輸送層2に含有されるバインダー樹脂は特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるが、電機絶縁性のフィルムを形成することが可能な樹脂が好ましい。
【0102】
例えば、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂。シリコン−アルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。
【0103】
そして、これらのバインダー樹脂は、単独又は2種類以上混合して用いることができる。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送物質との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れているので好ましく用いられる。
【0104】
また、バインダー樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)は電気特性低下、膜強度低下に考慮しつつ任意に設定することができる。この電荷輸送層2の層厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることが好ましい。
【0105】
電荷輸送層2は、上述のフッ素含有樹脂からなる粒子と、電荷輸送物質と、有機溶剤と、バインダー樹脂とを少なくとも含む塗布液を調製し、これを電荷発生層1上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0106】
電荷輸送層2の形成用の塗布液を調製するには、フッ素含有樹脂からなる粒子と、電荷輸送物質と、有機溶剤と、バインダー樹脂とを混合する。電荷輸送層2の形成用の塗布液に用いる溶剤としては、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤、また、これらの溶剤は単独或いは2種以上混合して用いることができる。
【0107】
これらの溶剤を混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶剤であればいかなるものでも使用することが可能である。また、電荷輸送物質とバインダー樹脂との配合比は、電荷輸送物質の質量:バインダー樹脂の質量=10:1〜1:5が好ましい。
【0108】
また、電荷輸送層2には、以下の無機粒子を更に添加してもよい。無機粒子の構成材料としては、例えば、アルミナ、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸銅、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ニッケル、アンチモン、二酸化マンガン、酸化クロム、酸化錫、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウムが挙げられ、これらの構成材料からなる粒子を、2以上組み合せて使用してもよい。これらの中では、シリカからなる無機粒子が好ましく用いられる。
【0109】
このシリカからなる無機粒子としては、化学炎CVD法により製造される粒子が好ましい。具体例としてはクロルシランガスを酸素−水素混合ガス又は炭化水素−酸素混合ガスの高温火炎中で気相反応させて得られるシリカ微粒子が好ましい。
【0110】
また、無機粒子としては、上記の他に、粒子表面を疎水化したものが好ましい。疎水化処理剤としては、例えばシロキサン化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高分子脂肪酸又はその金属塩等が用いられる。シロキサン化合物としては、ポリジメチルシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又、シランカップリング剤としては、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0111】
また、無機粒子の一次粒径は0.005〜2.0μmであることが好ましく、0.01〜1.0μmがより好ましい。無機粒子の一次粒径が0.005μm未満であると感光体100表面の十分な機械的強度が得られず、また、電荷輸送層2を形成するための塗布液又はこれから得られる電荷輸送層2中におけるフッ素含有樹脂からなる粒子の分散性が低下し、凝集が進行しやすくなる傾向にある。一方、無機粒子の一次粒径が2μmを超えると感光体100の表面粗さが大きくなり、クリーニングブレードが摩耗、損傷してクリーニング特性が悪化し、画像ボケが発生し易くなる。
【0112】
電荷輸送層2中の無機粒子の含有率は、電荷輸送層2の全質量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。この含有率が0.1質量%未満では無機粒子の分散による改質効果を充分に得ることができなくなる傾向が大きくなる。一方、この含有率が30質量%を超えると繰返し使用による残留電位の上昇が生じる傾向が大きくなる。
【0113】
電荷輸送層2(最外部の層)中にフッ素樹脂からなる粒子(必要に応じて更に無機粒子)を分散させる方法としては、電荷輸送層2を形成するための塗布液にフッ素樹脂からなる粒子(必要に応じて更に無機粒子)を分散させる方法が挙げられる。より具体的には、溶媒にバインダー樹脂、電荷輸送材料を溶解した溶液を調製し、この溶液中にフッ素樹脂からなる粒子(必要に応じて更に無機粒子)を分散する方法が挙げられる。このとき、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機を利用して分散作業を行う。更に、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散作業を行ってもよい。
【0114】
また、塗布液中(ひいては電荷輸送層2中)のフッ素樹脂からなる粒子の分散安定性を向上させる観点と、液状の塗膜を形成し、これを乾燥させて電荷輸送層2とする過程においてフッ素樹脂からなる粒子の凝集を防止する観点から、分散助剤を塗布液中に少量添加することも有効である。分散助剤としては、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。中でも、フッ素系ポリマー更にはフッ素系クシ型グラフトポリマーが分散助剤として有効であり、フッ素系クシ型グラフトポリマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂が好ましい。
【0115】
電荷輸送層2を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、突き上げコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0116】
また、感光体100が搭載される画像形成装置(例えば後述の図2に示す画像形成装置200を参照)中で発生するオゾンや窒素酸化物、或いは光、熱による感光体100の劣化を防止する目的で、感光層6(電荷発生層1及び/又は電荷輸送層2)中には、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体があげられる。また、感光体100の電荷輸送層2(最外部の層)の表面の平滑性を向上させる目的で、電荷輸送層2(最外部の層)中にシリコーンオイル等のレベリング剤を添加してもよい。
【0117】
以上、本発明の感光体及びその製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0118】
例えば、本発明の感光体は、感光層を単層構造としてもよい。この場合の感光層は、図1に示した感光体100における電荷発生層1と電荷輸送層2に含有される電荷発生物質と電荷輸送物質をはじめとする物質を合わせて含有する層となる。
【0119】
また、このように感光層6が単層型の場合、バインダー樹脂としては、正孔輸送性材料との相溶性の観点から、特にポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂が好ましく用いられる。更に、これらの樹脂のポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーの中から選択して使用してもよい。なお、上記のバインダー樹脂は、単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。
【0120】
この感光層6も、上述した電荷輸送物質、上述した第1実施形態の電子写真感光体100における電荷発生層1の形成に用いる電荷発生層形成用塗布液に用いた溶剤と同様の溶剤、バインダー樹脂等を混合して感光層形成用塗布液を調製し、上述の電子写真感光体100の場合と同様の方法により導電性支持体3上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0121】
更に、本発明の感光体は、感光層上に保護層(図示せず)を更に配置した構成を有していていてもよい。この場合にはこの保護層が最外部の層に相当する。そして、この保護層(最外部の層)中にフッ素含有樹脂からなる粒子が分散される。
その製造方法は、先に述べた電荷輸送層2を形成するための塗布液ではなく、保護層を形成するための塗布液中にフッ素含有樹脂からなる粒子を分散させること以外は、先に述べた感光体100と同様である。
【0122】
保護層は、電子写真感光体の帯電時の電荷輸送層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度を更に改善する為に用いられる。この保護層としては、絶縁性樹脂からなるいわゆる絶縁性樹脂保護層、又は、この絶縁性樹脂の中に抵抗調整剤を添加したいわゆる低抵抗保護層がある。この保護層は、例えば、導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させた塗布液を感光層上に塗布することにより形成される。
【0123】
この導電性材料は特に限定されるものではなく、例えば、N,N'-ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したものが挙げられる。
【0124】
この保護層に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
【0125】
この保護層を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0126】
また、保護層を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、先に述べた感光体100における下引き層4を形成するための塗布液に含まれるものと同様の溶剤を単独或いは2種以上混合して用いることができるが、できるだけこの塗布液が塗布される感光層6を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0127】
更に、本発明の感光体は、感光層と導電性支持体との間、或いは、感光層と下引き層との間に必要に応じて中間層(図示せず)を配置した構成を有していてもよい。この中間層は、感光体の電気特性の向上、画質の向上、感光層の接着性向上のために設けられるものである。
【0128】
この中間層の構成材料は特に限定されず、バインダー樹脂、有機物質或いは無機物質の粉末、電子輸送性物質等から任意に選択することができる。
【0129】
中間層のバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0130】
そして、これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。更にこれらの中でも、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0131】
上記のシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0132】
これらの中でも特に好ましく用いられるシリコン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0133】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0134】
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0135】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0136】
中間層を形成するための塗布液に使用される溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤、また、これらの溶剤は単独或いは2種以上混合して用いることができる。これらを混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0137】
また、中間層を形成するための塗布液の調製する際に、微粉末状の物質を添加する場合には樹脂成分を溶解した溶液中に添加して分散処理が行われる。この分散処理方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。
【0138】
更に、この中間層は導電性支持体3上に中間層を形成するための塗布液を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。このときの塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0139】
また、中間層42中には、先に説明した電子輸送性物質、電子輸送性顔料等を含有させることも低残留電位化や環境安定性の観点から有効である。更に、中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、層厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす。そのため、中間層の層厚は0.1〜3μmであることが好ましい。更に、中間層は下引き層として先に述べた下引層の代わりに使用してもよい。
【0140】
以上説明した本発明の電子写真感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザビームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザファクシミリなどの画像形成装置や、このような画像形成装置に備えれられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また、本発明の電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤或いは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また本発明の電子写真感光体は帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式の画像形成装置に搭載されても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【0141】
次に、本発明の本発明の電子写真感光体を搭載した画像形成装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0142】
図2は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。より具体的には、図2に示す画像形成装置200は中間転写方式の画像形成装置(例えば、いわゆるタンデム型のデジタルカラープリンター等)であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
【0143】
ここで、画像形成装置200に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。例えば、先に述べた電子写真感光体100が搭載されている。
【0144】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d(電子写真感光体を帯電させる帯電手段)、現像装置404a〜404d(露光手段により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段)、1次転写ロール410a〜410d(現像手段により形成されたトナー像を被転写媒体に転写する転写手段)、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0145】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源(帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0146】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0147】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、更には相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0148】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合中間転写体の基材として用いる樹脂材料としては、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。更に、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いることができる。
【0149】
弾性材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等を1種類、又は2種類以上をブレンドしてなる材料を用いることができる。これらの基材に用いる樹脂材料及び弾性材料に、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤やイオン伝導性を有する導電剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて添加する。この中でも、機械強度に優れる点で、導電剤を分散させたポリイミド樹脂を用いることが好ましい。上記の導電剤としては、カーボンブラック、金属酸化物、ポリアニリン等の導電性ポリマーを用いることができる。
【0150】
中間転写体として中間転写ベルト409のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの厚さは50〜500μmが好ましく、60〜150μmがより好ましいが、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。
【0151】
例えば、導電剤を分散させたポリイミド樹脂からなるベルトは、特開昭63-311263号公報に記載されているように、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液中に導電剤として5〜20重量%のカーボンブラックを分散させ、分散液を金属ドラム上に流延して乾燥した後、ドラムから剥離したフィルムを高温下に延伸してポリイミドフィルムを形成し、更に適当な大きさに切り出してエンドレスベルトとすることにより製造することができる。
【0152】
上記フィルム成形は、一般には、導電剤を分散したポリアミド酸溶液の成膜用原液を円筒金型に注入して、例えば、100〜200℃に加熱しつつ500〜2000rpmの回転数で円筒金型を回転させながら、遠心成形法によりフィルム状に成膜し、次いで、得られたフィルムを半硬化した状態で脱型して鉄芯に被せ、300 ℃以上の高温でポリイミド化反応(ポリアミド酸の閉環反応)を進行させて本硬化させることにより行うことができる。また、成膜原液を金属シート上に均一な厚みに流延して、上記と同様に100〜200℃に加熱して溶媒の大半を除去し、その後300℃以上の高温に段階的に昇温してポリイミドフィルムを形成する方法もある。また、中間転写体は表面層を有していても良い。
【0153】
また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
【0154】
更に、図3は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、クリーニング装置(クリーニング手段)13、露光のための開口部18、及び、除電露光のための開口部17を取り付けレール16を用いて組み合せ、そして一体化したものである。
【0155】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。また、
【0156】
なお、本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジにおいて、帯電手段(帯電用部材)は、従来から公知のコロトロン、スコロトロンによる非接触方式や、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電チューブ等による接触帯電方式を採用することができる。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、或いはローラー状等何れでもよいが、特にローラー状部材が好ましい。通常、ローラー状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0157】
ローラー状部材は、感光体に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能する。しかし、ローラー部材に何らかの駆動手段を取り付け、感光体とは異なる周速度で回転させ、帯電させても良い。芯材の材質としては導電性を有するもので、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。またその他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
【0158】
弾性層の材質としては導電性或いは半導電性を有するもので、一般にはゴム材に導電性粒子或いは半導電性粒子を分散したものである。ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。
【0159】
導電性粒子或いは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO-Al2O3、SnO2-Sb2O3、In2O3-SnO2、ZnO- TiO2、MgO- Al2O3、FeO-TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いることができ、これらの材料は単独或いは2種以上混合して用いても良い。
【0160】
抵抗層および保護層の材質としては結着樹脂に導電性粒子或いは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したもので、抵抗率としては103〜1014Ωcmであることが好ましく、105〜1012Ωcmであることがより好ましく、107〜1012Ωcmであることが更に好ましい。また膜厚としては0.01〜1000μmであることが好ましく、0.1〜500μmであることがより好ましく、0.5〜100μmであることが更に好ましい。
【0161】
バインダー樹脂としてはアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン 樹脂等が用いられる。
【0162】
導電性粒子或いは半導電性粒子としては弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が用いられる。また必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0163】
これらの導電性部材を用いて感光体を帯電させる方法としては、導電性部材に電圧を印加するが、印加電圧は直流電圧、或いは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vが好ましく、特に100〜1500Vが好ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800V、好ましくは800〜1600V、更に好ましくは1200〜1600Vが好ましい。交流電圧の周波数は50〜20000Hz、好ましくは100〜5000Hzである。
【0164】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0165】
以下に示す手順により図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する実施例1〜実施例4並びに比較例1及び比較例2の電子写真感光体を作製した。
【0166】
(実施例1)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。先ず、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:「エスレックBM−S」、積水化学社製)4質量部を、n−ブチルアルコール170質量部に溶解した。次に、得られた溶液に有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を添加して、混合撹拌し、下引き層形成用の塗布液を得た。
【0167】
この塗布液を、ホーニング処理により粗面化された30mmφのアルミニウム支持体(導電性支持体)の上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った。その後、得られた積層体の温度を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)に調節した恒温恒湿槽中に入れて、20分間、加湿硬化促進処理を行った。次に、得られた積層体を熱風乾燥機に入れて170℃で10分間乾燥させ、アルミニウム支持体上に下引き層(層厚:1.0μm)を形成した。
【0168】
次に、下引き層上に2層構造の感光層を形成した。まず、電荷発生物質として塩化ガリウムフタロシアニン15質量部、バインダー樹脂となる塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:「VMCH」、日本ユニカー社製)10質量部、n−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を電荷発生層形成用の塗布液として下引き層上に浸漬塗布し、乾燥して、電荷発生層(層厚:0.2μm)を形成した。
【0169】
次にフッ素含有樹脂粉体として四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:「ルブロンL2」、ダイキン工業社製)20質量部を準備し、これにメタノール20質量部を加えて湿潤させた(溶剤洗浄処理)。その後、更に脱イオン水60gを混合し、メカニカルスターラーを用いて攪拌した(水洗浄処理)。そして、10分間攪拌した後、吸引ろ過処理を行うと共に乾燥させ、メタノール及び水を取り除き、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子(フッ素含有樹脂からなる粒子)を得た。
【0170】
次に、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン20重量とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万)60質量部と、をテトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した。その後、得られた溶液に、上述の四フッ化エチレン樹脂からなる粒子10質量部を加えて更に混合した。
【0171】
次いで、この混合液を、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーを用いて更に分散を進行させることにより、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子が充分に分散された電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。次に、得られた塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布し、乾燥することにより、電荷輸送層(膜厚:26μm)を形成した。
【0172】
この感光体の電荷輸送層(最外部の層)を剥離し、得られた切片1質量部を9質量部のトルエンに溶解した。次に、このトルエン溶液10質量部に脱イオン水10質量部を混合し、二層(トルエン層と水層)に分離した。水溶性の残留物を含む水層を分離抽出し、イオンクロマトグラフィー分析装置(商品名:「IC7000」、横河アナリティカルシステムズ社製)を用いて、この水層(水溶液)中のアニオン成分を定量分析した。その結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=1.1ppmであることが確認された。
【0173】
なお、分析装置に搭載するカラムとしては、アニオン側カラム:商品名:「ICS-A23」、アニオン側ガードカラム:「ICS-A2G」、アニオン側サプレッサ:「ELS-SA1」、何れも横河アナリティカルシステムズ社製を使用した。また、分析条件は、カラムオーブンの温度:40℃、溶離液:3.0×10-3mol/LのNa2CO3水溶液、溶離液の流量:1.0mL/min、試料導入量:50μL、とした。
【0174】
(実施例2)
電荷輸送層を下記の手順及び条件で形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。即ち、フッ素含有樹脂粉体として四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:「ルブロンL2」、ダイキン工業社製)20質量部を準備し、これにメタノール20質量部を加えて湿潤させた(溶剤洗浄処理)。その後、更に脱イオン水120gを混合し、メカニカルスターラーを用いて攪拌した(水洗浄処理)。そして、10分間攪拌した後、吸引ろ過処理を行うと共に乾燥させ、メタノール及び水を取り除き、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子(フッ素含有樹脂からなる粒子)を得た。
【0175】
次に、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン20重量とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万)60質量部と、をテトロヒドロフラン260質量部及びトルエン110質量部に十分に溶解混合した。その後、得られた溶液に、上述の四フッ化エチレン樹脂からなる粒子10質量部を加えて更に混合した。
【0176】
次いで、この混合液を、高圧ホモジナイザーを用いて更に分散を進行させることにより、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子が充分に分散された電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。次に、得られた塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布し、乾燥することにより、電荷輸送層(膜厚:26μm)を形成した。
【0177】
この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=0.6ppmであることが確認された。
【0178】
(実施例3)
フッ素含有樹脂からなる粒子を作製する際の手順及び条件を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。即ち、フッ素含有樹脂粉体として四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:「ルブロンL2」、ダイキン工業社製)20質量部を準備し、これにメタノール20質量部を加えて湿潤させた(溶剤洗浄処理)。その後、更に脱イオン水180gを混合し、メカニカルスターラーを用いて攪拌した(水洗浄処理)。そして、10分間攪拌した後、吸引ろ過処理を行うと共に乾燥させ、メタノール及び水を取り除き、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子(フッ素含有樹脂からなる粒子)を得た。
【0179】
この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=0.5ppmであることが確認された。
【0180】
(実施例4)
下引層を形成する際の手順及び条件を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。即ち、酸化亜鉛(テイカ社製試作品,平均粒子径:70μm)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:「KBM603」,信越化学社製)1.5質量部を添加し、5時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
【0181】
次に、得られた表面処理後の酸化亜鉛60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート 商品名:「スミジュール3175」,住友バイエルンウレタン社製)15質量部と、ブチラール樹脂(商品名:「BM-1」、積水化学社製)15質量部と、メチルエチルケトン85質量部とを含む混合液を調製した。次に、この混合液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
【0182】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部と、シリコーンオイル(商品名:「SH29PA」東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部とを添加し、下引き層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて30mmφのアルミニウム支持体上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い下引き層(層厚:20μm)を形成した。
【0183】
この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=1.1ppmであることが確認された。
【0184】
(比較例1)
実施例1において使用した四フッ化エチレン樹脂粉体を洗浄処理せずに使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=3.0ppmであることが確認された。
【0185】
(比較例2)
実施例1において使用した四フッ化エチレン樹脂粉体の洗浄処理の手順及び条件を、以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。即ち、フッ素含有樹脂粉体として四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:「ルブロンL2」、ダイキン工業社製)20質量部を準備し、これにメタノール200質量部を加え、メカニカルスターラーを用いて攪拌した。そして、10分間攪拌した後、吸引ろ過処理を行うと共に乾燥させ、メタノール及び水を取り除き、有機溶剤のみで洗浄処理した四フッ化エチレン樹脂からなる粒子を得た。
【0186】
この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=2.7ppmであることが確認された。
【0187】
[電子写真感光体の電子写真特性評価試験]
(1)使用初期の特性評価(初期電位測定)
実施例1〜実施例4並びに比較例1及び比較例2の電子写真感光体を図2と同様の構造を有する接触帯電装置、中間転写装置を有するフルカラープリンター(商品名:Docu Print C620、富士ゼロックス社製)に搭載し、A4サイズの紙に、モノクロの画像をプリントするプリントテストを行った。
【0188】
なお、このテストは、20℃、50%RH(相対湿度)の環境下、グリッド印加電圧−700Vの接触帯電装置で各電子写真感光体を帯電させたときの各電子写真感光体の表面の電位A[V](帯電電位)を測定した。次に、780nmの半導体レーザを用いて、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせ、このときの各電子写真感光体の表面の電位B[V](露光後電位)を測定した。続いて、放電させてから3秒後各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面の電位C[V](除電後残留電位)を測定した。
【0189】
ここで、電位Aの値が高いほど、電子写真感光体の受容電位が高いので、コントラストを高く取ることができることになる。また、電位Bの値が低いほど高感度な電子写真感光体であることになる。更に、電位Cの値が低いほど残留電位が少なく、画像メモリーやいわゆるかぶりが少ない電子写真感光体と評価される。これらの結果を表1に示す。
【0190】
(2)繰り返し使用後の特性評価
28℃、85%RH(相対湿度)の環境下としたこと以外は、上述の(1)で説明した操作と同様の操作によりプリントテストを1万回繰り返し、1万枚プリント直後における帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0191】
【表1】
【0192】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子写真感光体によれば、耐摩耗性及びトナーに対する脱着性に優れ、繰返して使用しても残留電位の上昇を充分に防止可能な優れた画質の画像を得ることができる。また、本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、耐摩耗性及びトナーに対する脱着性に優れ、繰返して使用しても残留電位の上昇を充分に防止可能な最外部の層を形成できるので、優れた画質の画像を得ることができる電子写真感光体を容易かつ確実に構成することができる。更に、本発明によれば、本発明の電子写真感光体を搭載することにより、優れた画質の画像を得ることのできるプロセスカートリッジ及び画像形成装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態の基本構成を示す断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…電荷発生層、3…導電性支持体、4…下引き層、6…感光層、17…除電露光のための開口部、18…露光のための開口部、100…電子写真感光体、200…画像形成装置、300…プロセスカートリッジ、400・・・ハウジング、401a〜401d・・・電子写真感光体、402a〜402d・・・帯電ロール、403・・・レーザ光源(露光装置)、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d・・・トナーカートリッジ、406・・・駆動ロール、407・・・テンションロール、408・・・バックアップロール、409・・・中間転写ベルト、410a〜410d・・・1次転写ロール、411・・・トレイ(被転写体トレイ)、412・・・移送ロール、413・・・2次転写ロール、414・・・定着ロール、415a〜415d・・・クリーニングブレード、416・・・クリーニングブレード、500・・・被転写媒体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年電子写真感光体は、高速、かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザビームプリンター等の分野において非常に多く利用されている。これら画像形成装置において用いられる電子写真感光体として、従来からのセレン、セレンーテルル合金、セレンーヒ素合金、硫化カドミウム等無機光導電材料を用いた電子写真感光体に比べ、安価で製造性、安全性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を電荷発生物質として含有した電子写真感光体が主流を占める様になってきている。
【0003】
このような電子写真感光体の構成としては、導電性支持体上に形成する感光層として電荷発生物質及び電荷輸送物質を併有するいわゆる単層型の感光層を有するものと、露光により電荷を発生する電荷発生層とその電荷を輸送する電荷輸送層とからなる2層構造のいわゆる機能分離型の感光層を有するものとがある。特に、上記の構成を有する電子写真感光体の中でも、機能分離型積層有機感光体は、電子写真特性の点で優れており、種々の提案が成され実用化されている。
【0004】
そして、上記のような電子写真感光体の製造方法としては、上記感光層の構成成分を溶剤に分散又は溶解した塗布液を調製し、次いで、これを導電性支持体の被塗布面(例えば、感光層の形成される面)上に塗布する方法が従来一般に広く用いられている。
【0005】
ところで、有機感光体は無機感光体に比べ、一般に機械的強度が劣っており、クリーニングブレードや、現像ブラシ、用紙などの機械的外力による摺擦傷、摩耗により感光体の寿命が短いという問題があった。更に、エコロジーの観点から近年使用されてきている接触帯電方式を用いたシステムでは、コロトロンによる帯電方式に比べて大幅に感光体の摩耗が増加することも問題となっている。この結果、感光体の感度が低減し画像濃度が低下したり、帯電電位が低下し画像にかぶりが生じたりするという問題があった。従って、十分な機械的な外力、電気的な外力に対する優れた耐久性を有する感光体の開発が望まれていた。
【0006】
一方、電子写真方式の画像形成方法では、化石資源の利用削減の点から、転写の際に生じる残留トナーの廃棄が問題となっている。廃棄トナーの問題を回避するためには残留トナー量を極力少なくすることが重要であり、そのためにはトナーの転写効率を上げることが必要となる。
【0007】
また、廃棄トナーを発生させないという観点から、クリーニング工程を設けずに、転写残留トナーを現像と同時に現像装置に回収するクリーナーレス方式が提案されている。クリーナーレス方式において、転写効率が不十分であった場合、感光体表面に残留したトナーがプリントアウトされてしまうポジゴーストや、感光体表面に残留したトナーの遮光効果によるネガゴーストが発生する。従って、トナーの転写効率を上げることは、従来のクリーナーを有する方式においても、クリーナーレス方式においても重要である。
【0008】
トナーの転写効率を上げる方法としては、感光体表面に直接付着しているトナー粒子を効率的に転写することが重要であり、そのためには、トナーと感光体との間の付着力を下げることが有効である。つまり、トナーをそれが付着した表面から円滑かつ確実に脱着することのできる感光体が要求されている。トナーに対する離型性が十分でない場合には、転写工程で一部のトナーが残ることによって、画像の欠陥が発生したり、トナー成分や用紙の含有成分が感光体表面に付着することによって、トナーフィルミングと呼ばれる現象が発生することとなる。
【0009】
上記の画像欠陥の発生やトナーフィルミングの発生を防止するための技術としては、従来から、感光体の表面層(トナーが付着されることになる感光体の最上部に位置する層を示し、例えば、感光体の構造によっては感光層に相当する場合や、感光層上に形成された保護層に相当する場合がある。本明細書中では、以下、「最外部の層」という。)中にフッ素系樹脂粉体を分散する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。フッ素系樹脂粉体の分散により、最外部の層(表面層)の摩擦係数が減少し、摩耗やキズに対する耐久性(耐摩耗性)が向上するとともに、トナーの脱着性が向上することにより、クリーニング性が向上することが知られている。
【0010】
更に、上述のフッ素系樹脂粉体には、通常、この粉体を製造する時に使用される原料(樹脂を構成するモノマー)、低分子量のオリゴマー、触媒、開始剤、安定剤、乳化剤等の未反応物、及びフッ素系樹脂分解物が残留物として付着している。この残留物が付着したままの状態のフッ素系樹脂粉体を最外部の層(表面層)中に分散させると、残留電位の上昇によりいわゆるカブリが発生するなど電子写真特性が低下することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
この電子写真特性の低下を防止するための技術としては、フッ素系樹脂粉体を最外部の層(表面層)に含有させる前に、有機溶剤を用いて予め洗浄することにより残留物を低減させる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開昭63−221355号公報
【特許文献2】
特開平1−255862号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上述の特許文献1に記載の感光体はもとより特許文献2に記載の感光体であっても、繰返して使用した場合の残留電位の上昇を充分に防止できておらず、優れた画質の画像を得るには未だ充分なものではないことを見出した。特に、高温高湿の環境下での繰返使用時における残留電位の上昇は著しく、画像の濃度低下が生じ易くなる。
【0014】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性及びトナーに対する脱着性に優れ、繰返して使用しても残留電位の上昇を充分に防止可能であり、優れた画質の画像を得ることのできる電子写真感光体及びこの製造方法、並びに、これを備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特許文献2に記載のように有機溶剤を用いて予めフッ素系樹脂粉体を洗浄しても、フッ素系樹脂粉体に付着した水溶性の残留物を充分に低減することができておらず、然も、この水溶性の残留物{特にフッ化水素(フッ化水素酸)等の水溶性の含フッ素化合物や水溶性の界面活性剤等の乳化剤}が、感光体を繰返して使用した場合の残留電位の上昇に大きな影響を及ぼしていることを見出した。そして、本発明者らは、有機溶剤のみならず水によりフッ素系樹脂粉体を洗浄することが優れた画質の画像を得る上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0016】
すなわち、本発明は、導電性支持体と、導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
フッ素含有樹脂からなる粒子は、当該粒子の原料となるフッ素含有樹脂粉体を、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて洗浄する溶剤洗浄処理と、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により更に洗浄する水洗浄処理と、を経て形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0017】
また、本発明は、導電性支持体と、導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
フッ素含有樹脂からなる粒子は、当該粒子の原料となるフッ素含有樹脂粉体を、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤と水とを含む混合液を用いて洗浄する洗浄処理を経て形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0018】
上述のように、「フッ素含有樹脂粉体」に対して、有機溶剤で洗浄した後に、更に水で洗浄する2段階の洗浄処理(溶剤洗浄処理及び水洗浄処理)を施すか、又は、有機溶剤と水とを含む混合液で洗浄する1段階の洗浄処理を施すことにより、フッ素含有樹脂粉体に付着している疎水性の残留物とともに、先に述べた水溶性の残留物{特に、製造過程で副生するフッ化水素(フッ化水素酸)等の水溶性の含フッ素化合物や、製造時に混入する水溶性の界面活性剤等の乳化剤}を充分に低減することができる。
【0019】
そのため、上記の何れかの処理を施した「フッ素含有樹脂からなる粒子」を感光体の最外部の層に分散させることにより、優れた耐磨耗性とトナーの脱着性を得ることができる。然も、感光体を繰返して使用した場合でも、残留電位の上昇を充分に防止することができる。その結果、本発明の感光体は優れた画質の画像を得ることができる。
【0020】
ここで、本発明において、「フッ素含有樹脂からなる粒子」とは、上述の2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理を施した後に得られる粒子を示し、「フッ素含有樹脂粉体」とは上述の2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理を施す前の状態にある上記「フッ素含有樹脂からなる粒子」の原料となる粒子を示す。また、上述の2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理は、それぞれ複数回繰り返してもよい。
【0021】
更に、本発明において、感光層は、導電性支持体の先に述べた被塗布面の上方に形成されていればよい(配置されていればよい)。従って、例えば、導電性支持体の被塗布面上に感光層が接触した状態で配置されていたもよく、導電性支持体の被塗布面と感光層との間に他の層(例えば、後述する下引層等)が配置されていてもよい。
【0022】
また、本発明において、「最外部の層」とは、トナーが付着されることになる感光体の最上部に位置する層を示す。例えば、感光体の構造によっては感光層に相当する場合、感光層上に形成された保護層に相当する場合がある。また、感光層が、電荷発生層と電荷輸送層とから構成されたいわゆる機能分離型の感光層の場合であって感光層が感光体の最上部に位置する構成の場合には、電荷発生層及び電荷輸送層のうちのトナーが付着されることになる層が最外部の層となる。
【0023】
更に、先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、上述した本発明の電子写真感光体のうち、1段階の洗浄処理を行ってフッ素含有樹脂からなる粒子を得る場合の混合液については、混合液中の水の含有率が50質量%以上であることが好ましい。
【0024】
また、先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、上述した本発明の電子写真感光体の何れにおいても、フッ素含有樹脂からなる粒子を得る場合の処理に使用する有機溶剤について、有機溶剤は、水に対する相溶性を有していることが好ましい。
【0025】
更に、先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、上記有機溶剤が、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及び、ケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒であることが好ましく、メタノールであることがより好ましい。
【0026】
また、本発明は、導電性支持体と、導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、水溶性の含フッ素化合物を少なくとも含むフッ素含有樹脂粉体を原料とするフッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
最外部の層中の含フッ素化合物の含有量が下記式(1)の条件を満たしていること特徴とする電子写真感光体を提供する。
(Y/X)≦2.0・・・(1)
[式(2)中、Xは最外部の層に含まれる固形成分の全質量を示し、Yは最外部の層に含まれる全ての含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量を示す。]
【0027】
水溶性の含フッ素化合物を少なくとも含むフッ素含有樹脂粉体を原料として用いた場合、水溶性の含フッ素化合物を完全に除去することができなくとも、最外部の層中の含フッ素化合物の含有量を上述の式(1)の条件を満たすように調節することにより、優れた耐磨耗性とトナーの脱着性を得ることができ、然も、繰返して使用した場合でも残留電位の上昇が充分に防止することのできる感光体を構成することができる。含フッ素化合物の含有量の調節方法としては、先に述べた2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理を「フッ素含有樹脂粉体」施す方法が好ましい。
【0028】
ここで、「最外部の層に含まれる全ての含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量Y」とは、以下の手法により測定されるフッ化物イオン(F-)の質量を示す。
【0029】
即ち、先ず、感光体から剥離した最外部の層の一部(又は全部)をトルエンを用いて溶解しトルエン溶液とする。次いで、得られるトルエン溶液に、脱イオン水を添加することにより、トルエン溶液からなる有機層と脱イオン水からなる水層とに分離する。そして、最外部の層の中に含まれる水溶性の物質(水溶性の含フッ素化合物を含む)を水層へ抽出する。次に、この水層の一部を分析試料としてサンプリングし、イオンクロマトグラフィー分析装置(後述の実施例1を参照)を用いてこの分析試料から生成するフッ化物イオン(F-)を定量する。そして、このフッ化物イオンが最外部の層の中に含まれる水溶性の含フッ素化合物(フッ化水素等)から生成したものと仮定し、最外部の層の固形成分の質量と、採取した最外部の層の部分の固形成分の質量と、サンプリングした分析試料の質量を考慮して、最外部の層中に含まれると仮定したフッ化物イオン(F-)の質量Yを算出する。
【0030】
ここで、(Y/X)が2.0ppmを超えると、繰返して使用した場合の残留電位の上昇を充分に防止することができなくなる。
【0031】
また、本発明においては、上記の含フッ素化合物はフッ化水素であってもよい。更に、本発明においては、先に述べたように、最外部の層が感光層であってもよい。
【0032】
また、本発明においては、感光層が、前記電荷発生物質を含んでおり露光により電荷を発生する電荷発生層と、前記電荷発生層において発生する電荷を輸送する電荷輸送層とから構成されており、かつ、最外部の層が電荷発生層及び前記電荷発生層の何れか一方であってもよい。
【0033】
更に、本発明においては、感光層上に当該感光層を保護する保護層が設けられており、最外部の層が保護層であってもよい。
【0034】
また、本発明は、2以上の層が積層された構造を有しており、2以上の層には、当該2以上の層のうちの一端に配置される導電性支持体と、電荷発生材料を含む感光層とが少なくとも含まれており、かつ、2以上の層のうちの導電性支持体から最も離れた他端に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されている電子写真感光体の製造方法であって、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する溶剤洗浄処理と、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により更に洗浄する水洗浄処理とからなる工程を経てフッ素含有樹脂からなる粒子を作製すること、を特徴とする電子写真感光体の製造方法を提供する。
【0035】
更に、本発明は、2以上の層が積層された構造を有しており、2以上の層には、当該2以上の層のうちの一端に配置される導電性支持体と、電荷発生材料を含む感光層とが少なくとも含まれており、かつ、2以上の層のうちの導電性支持体から最も離れた他端に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されている電子写真感光体の製造方法であって、フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤と水とを含む混合液を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する洗浄処理工程を経てフッ素含有樹脂からなる粒子を作製すること、を特徴とする電子写真感光体の製造方法を提供する。
【0036】
上記の何れかの電子写真感光体の製造方法によれば、先に述べた、優れた画質の画像を得ることのできる本発明の電子写真感光体を容易かつ確実に得ることができる。先に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、上述した本発明の電子写真感光体の製造方法の何れにおいても、フッ素含有樹脂からなる粒子を得る場合の処理に使用する有機溶剤について、有機溶剤は、水に対する相溶性を有していることが好ましい。
【0037】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0038】
本発明のプロセスカートリッジも、先に述べた本発明の電子写真感光体を搭載しているので優れた画質の画像を得ることができる。
【0039】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0040】
本発明の画像形成装置も、先に述べた本発明の電子写真感光体を搭載しているので優れた画質の画像を得ることができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0042】
なお、本発明の電子写真感光体の製造方法は、電子写真感光体の最外部の層を形成する工程において、フッ素含有樹脂粉体を、2段階の洗浄処理又は1段階の洗浄処理を行って作製したフッ素含有樹脂からなる粒子を含有させた感光層形成用塗布液を調製して使用すればよく、感光層以外の電子写真感光体の他の構成要素の製造工程における手順やその際の条件は特に限定されず、例えば、公知の薄膜製造技術を用いることができる。そのため、本発明の電子写真感光体の製造方法の好適な実施形態については、その主要部となる感光層の形成工程の説明を以下の本発明の電子写真感光体の各実施形態の感光層の説明において行うこととする。
【0043】
図1は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態の基本構成を示す断面図である。図1に示すように、電子写真感光体100は、導電性支持体3と、下引き層4と、感光層6とから構成されている。この電子写真感光体100は、先に述べた本発明の電子写真感光体の製造方法により製造されるものである。
【0044】
導電性支持体3は、導電性を有していれば特に限定されるものはなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属ドラムを使用することができる。また、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン・ニッケルークロム・ステンレス鋼・銅ーインジウム等の金属を蒸着することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状のもの使用できる。
【0045】
更には、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着するか、又は金属箔をラミネートすることによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物のもの使用できる。また、この他にも、カーボンブラック・酸化インジウム・酸化錫ー酸化アンチモン粉・金属粉・沃化銅等をバインダー樹脂に分散し、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に塗布することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物なども使用することができる。
【0046】
ここで、金属パイプ基材を導電性支持体3として用いる場合、その表面は素管のままであっても、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理などの処理を行なうことが好ましい。表面処理を行ない基材表面を粗面化することによりレーザビームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0047】
下引き層4は、導電性を有する粒子(金属粒子、導電性を有する金属酸化物粒子、導電性を有する炭素材料粒子等)と、バインダー樹脂とを少なくとも含んでいる。そして、下引き層4は、感光層6の帯電時において、導電性支持体3から感光層6への電荷の注入を阻止する機能及び感光体リークを防止する機能を有する。また、この下引き層4は、感光層6を導電性支持体3に対して一体的に接着保持せしめる接着層としても機能する。更に、この下引き層4は、導電性支持体3の光反射を防止する機能を有する場合もある。
【0048】
下引き層4の層厚は感光体リークを阻止する観点から、15μm以上であることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。但し、十分なリーク耐性を有しており上述のリーク欠陥の発生が懸念されないような場合には、下引き層の層厚は15μmより薄く設定することが可能であり、この場合には0.1μm程度の薄膜まで適用可能である。また、下引層4は、ビッカース強度が35以上とされていることが好ましい。
【0049】
また、下引層の表面粗さはモアレ像防止のために、使用される露光用レーザ波長λの1/4n(nは上層の屈折率)からλに調整される。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加することもできる。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。更に、表面粗さ調整のために下引層を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0050】
また、下引き層4に使用されるバインダー樹脂は、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などを用いることができる。
【0051】
中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく用いられる。なお、金属酸化物粒子とバインダ樹脂との配合比率は所望の電子写真感光体の特性を得られる範囲で任意に設定できる。
【0052】
また、下引き層4に使用される金属酸化物粒子は、所望の電子写真感光体の特性を得られる範囲で任意に選択することができ、2種以上の金属酸化物粒子を混合して用いることもできる。導電性を有する粒子(金属粒子、導電性を有する金属酸化物粒子、導電性を有する炭素材料粒子等)としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粒子や、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性を有する金属酸化物粒子や、カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末等の導電性を有する炭素材料粒子が挙げられる。
【0053】
導電性を有する金属酸化物粒子としては、粒径が平均粒子径0.5μm以下の微粒子が好ましく用いられる。ここでいう粒径とは、平均1次粒径を意味する。下引層4はリーク耐性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要であり、そのため金属酸化物微粒子としては102〜1011Ω・cm程度の粉体抵抗が必要である。中でも上記抵抗値を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子を用いるのが好ましい。なお、上記範囲の下限よりも金属酸化物微粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。また、金属酸化物微粒子は2種以上混合して用いることもできる。
【0054】
更に、この金属酸化物粒子に対しては、下引き層4に含有させる前に、加水分解性の官能基を有する有機金属化合物(加水分解性有機金属化合物)等により表面処理を予め行い使用することも可能である。金属酸化物微粒子へカップリング剤による表面処理を行うことで、粉体抵抗を制御することができる。カップリング剤としては所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができる。具体的なカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのカップリング剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0055】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法或いは湿式法を用いることができる。乾式法にて表面処理を施す場合には金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接或いは有機溶媒または水に溶解させたカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加或いは噴霧する際には50℃以上の温度で行われることが好ましい。添加或いは噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。
【0056】
焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。乾式法においては金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に加熱乾燥して表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水を処理前に除去することによって、金属酸化物微粒子表面に均一にカップリング剤を吸着させることができる。
【0057】
湿式法としては、金属酸化物微粒子を溶剤中に攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、カップリング剤溶液を添加し攪拌或いは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去した後、更に100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においても金属酸化物微粒子をカップリング剤による表面処理前に表面吸着水を除去することができる。この表面吸着水除去方法として、乾式法と同様の加熱乾燥の他に、表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法等が実施できる。金属酸化物微粒子に対する表面処理剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であることが必須である。
【0058】
電子写真特性は表面処理処理後に金属酸化物微粒子に付着している量によって影響され、シランカップリング剤の場合、その付着量は蛍光X線分析におけるSi強度と該金属酸化物の主たる金属元素強度から求められる。蛍光X線分析における好ましいSi強度は該金属酸化物の主たる金属元素強度の1.0×10-5〜1.0×10-3の範囲である。この範囲を下回った場合、かぶり等の画質欠陥が発生しやすく、この範囲を上回った場合残留電位の上昇による濃度低下が発生しやすい。
【0059】
次に下引き層4の形成方法について説明する。この下引き層4は、金属酸化物粒子を先に述べたバインダー樹脂中に分散させて得られる塗布液を導電性支持体3上に浸漬塗布法やスプレー塗布法等の公知の技術により塗布することにより形成することができる。
【0060】
下引き層4の形成用の塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。
【0061】
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、クロロホルム、ジクロルメタン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエチレンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル類、或いはあベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独或いは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0063】
金属酸化物粒子をバインダー樹脂中に分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。更にこの下引き層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0064】
下引層形成用塗布液には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾールや2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0065】
シランカップリング剤は金属酸化物微粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に塗布液に添加して用いることもできる。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例として、金属酸化物微粒子の表面処理に用いるカップリング剤の具体例と同様なものを用いることができる。
【0066】
上述のジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0067】
上述のチタニウムキレート化合物の例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0068】
上述のアルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0069】
なお、これらジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物は単独に或いは複数の化合物の混合物或いは重縮合物として用いることができる。
【0070】
次に、感光層6について説明する。図1に示すように、感光層6は電荷発生層1と電荷輸送層2とから構成されている。この電子写真感光体100の場合、電荷輸送層2が先に述べた最外部の層に相当し、その内部には、フッ素樹脂からなる粒子が分散されている。
【0071】
電荷発生層1に含有される顔料(電荷発生物質)は特に限定されず、公知の顔料又は染料を使用することができる。
【0072】
赤外光を利用する感光体では、例えば、フタロシアニン顔料、スクアリリウム顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン顔料、ジチオケトピロロピロール顔料を使用することができる。また、可視光レーザを利用する感光体では、例えば、縮合多環顔料、ビスアゾ顔料、ペリレン顔料、トリゴナルセレン、色素増感した金属酸化物等を使用することができる。また、非晶質セレン・結晶性セレン・セレンーテルル合金・セレンーヒ素合金・その他のセレン化合物及びセレン合金、酸化亜鉛・酸化チタン 等の無機系光導電体を使用してもよい。また、これらの電荷発生物質は、1種又は2種以上を組み合せて使用できる。
【0073】
上述した顔料の中では、優れた画像を得られることから、フタロシアニン顔料(フタロシアニン系化合物)を使用することが好ましい。これにより、特に高感度で、繰り返し使用しても良好な画質を安定して得ることのできる電子写真感光体を構成することが容易にできる。
【0074】
フタロシアニン系化合物は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった感度が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型でも用いることができる。特に、フタロシアニン系化合物としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン及びフタロシアニン(無金属フタロシアニン)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0075】
より具体的には、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2゜)が少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜の位置に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2゜)が少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜の位置に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2゜)が少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜の位置に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、Cukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2゜)が少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜の位置に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を使用することが好ましい。
【0076】
更に、このような顔料は、公知の方法で製造される顔料結晶を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造することができる。また、公知の方法で製造される顔料結晶を、アシッドペースティング或いはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕或いは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御することもできる。
【0077】
電荷発生層1に含有されるバインダー樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知の材料を使用することができる。例えば、好ましいバインダー樹脂としては、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。
【0078】
電荷発生層1用のバインダー樹脂としては、顔料の分散性の観点から、特にポリビニルアセタール樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。なお、上記のバインダー樹脂は、単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。また、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、10:1〜1:10の範囲が望ましい。
【0079】
更に、電荷発生層1の層厚は、良好な電気特性と画質を与えるために任意に設定することが可能であるが、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2.0μmであることが好ましい。
【0080】
電荷発生層1は、顔料(電荷発生物質)、後述の溶剤、バインダー樹脂、その添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等を混合して電荷発生層形成用塗布液を調製し、これを下引き層4上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0081】
更に、電荷発生層1を形成するための塗布液に含まれる2種の溶剤は、公知の有機溶剤を任意に組み合せてよい。例えば、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤、また、これらの溶剤は単独或いは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0082】
電荷発生層1の形成用の塗布液を調製するには、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等とともに混合する。顔料を液中に高分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。更に、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
【0083】
電荷発生層1の形成用の塗布液を下引き層4上に塗布する場合の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、突き上げコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0084】
次に電荷輸送層2について説明する。電荷輸送層2には、フッ素樹脂からなる粒子と、電荷輸送物質と、バインダー樹脂とが少なくとも含有されている。
【0085】
このフッ素樹脂からなる粒子は、原料となるフッ素樹脂粉体に対して以下の2つの工程の何れかにより作製したものである。なお、先に述べたように、このフッ素含有樹脂粉体中には、通常、この粉体を製造する時に使用される原料(樹脂を構成するモノマー)、低分子量のオリゴマー、触媒、開始剤、安定剤、乳化剤等の未反応物、及び、フッ素系樹脂分解物が残留物として付着している。そして、上記の残留物を充分に除去したフッ素樹脂からなる粒子を得ることができる。特に以下の2つの工程の何れかで作製することにより、従来においては充分に除去することのできなかった水溶性の残留物{特にフッ化水素(フッ化水素酸)等の水溶性の含フッ素化合物や水溶性の界面活性剤等の乳化剤}を十分に除去することができる。
【0086】
すなわち、フッ素樹脂からなる粒子は、(i)フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する溶剤洗浄処理と、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により更に洗浄する水洗浄処理とからなる工程、又は、(ii)フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤と水とを含む混合液を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する洗浄処理工程を経て作製されている。洗浄処理後は、ろ過によりフッ素樹脂からなる粒子を得る。
【0087】
(i)及び(ii)の工程の何れにおいても、洗浄に使用するフッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤は、水に対する相溶性を有していることが好ましい。これにより、先に述べた残留物を効率よく除去することができる。特に、有機溶剤は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、及び、ケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒であることが好ましい。これらの溶媒は水に対する相溶性を有しているからである。
【0088】
フッ素含有樹脂粉体の湿潤・洗浄する有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、或いはこれらの混合溶剤等を用いることができる。この中でも、特にメタノールが特に好ましい。
【0089】
また、(ii)の工程において、洗浄液を水と有機溶剤との混合液とする場合、混合液の使用量としては、フッ素含有樹脂粉体1質量部に対して、1〜200質量部の範囲であることが好ましく、3〜100質量部の範囲であることがより好ましい。また、混合液中の、水と有機溶剤との質量比は、水の質量:有機溶剤の質量=10:90〜99.5:0.5の範囲であることが好ましく、50:50〜99:1の範囲であることがより好ましい。
【0090】
なお、(i)の工程における水洗浄処理を行う場合、溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体から完全に有機溶剤を除去せずに、フッ素含有樹脂粉体を有機溶剤で濡れた状態にしておき、その状態で水を加えることが好ましく、加えた後の液中の水と有機溶剤との質量比も水の質量:有機溶剤の質量=10:90〜99.5:0.5の範囲であることが好ましく、50:50〜99:1の範囲であることがより好ましい。
【0091】
また、先に述べたように、電荷輸送層2(最外部の層)中の含フッ素化合物の含有量は、下記式(1)で表される条件を満たすように調節されていることが好ましい。式(1)中、Xは最外部の層に含まれる固形成分の全質量を示し、Yは最外部の層に含まれる全ての含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量を示す。
(Y/X)≦2.0ppm・・・(1)
【0092】
上記の条件を満たす電荷輸送層2を形成する方法としては、(i)又は(ii)の工程を1回以上繰り返し行う方法や、(i)及び(ii)の工程を組み合せて1回以上繰り返し行う方法等が挙げられる。
【0093】
また、(i)及び(ii)の工程において、洗浄液(有機溶剤、水、水と有機溶剤との混合液)にフッ素含有樹脂粉体を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用できる。更に、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
【0094】
洗浄した溶剤の分離方法として、加圧ろ過、吸引ろ過、遠心ろ過、フィルタプレス、デカント、セラミックフィルタ等の方法が利用できる。分離後の脱溶剤工程は、必要に応じて乾燥を行っても行わなくてもよい。乾燥方法として、真空乾燥機、電気炉、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉等が挙げられる。また、脱溶剤のための乾燥温度としては、フッ素含有樹脂粉体が熱分解しない温度以下で、かつ、水及び有機溶剤が揮発するのに必要な温度で十分である。
【0095】
フッ素含有樹脂からなる粒子の電荷輸送層2(最外部の層)中における含有率は、電荷輸送層2(最外部の層)の固形成分の全質量に対して、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましい。この含有率が1質量%未満ではフッ素含有樹脂からなる粒子の分散による改質効果を充分に得ることができなくなる傾向が大きくなる。一方、この含有率が40質量%を超えると電荷輸送層2(最外部の層)の光通過性が低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じてくるおそれがある。
【0096】
また、フッ素含有樹脂からなる粒子の構成材料となるフッ素含有樹脂は、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及び、これらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなることが好ましく、四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂からなることがより好ましい。
【0097】
フッ素含有樹脂からなる粒子の一次粒径は0.05〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることが好ましい。一次粒径が0.05μm未満となると電荷輸送層2を形成するための塗布液又はこれから得られる電荷輸送層2中におけるフッ素含有樹脂からなる粒子の分散性が低下し、凝集が進行しやすくなる傾向にある。一方、フッ素含有樹脂からなる粒子の一次粒径が1μmを超えると、画質欠陥が発生し易くなる。
【0098】
電荷輸送層2に含有される電荷輸送物質は、特に限定されるものではなく、公知の物質を使用することができる。
【0099】
例えば、2,5-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5-トリフェニル-ピラゾリン、1-[ピリジル-(2)]-3-(p-ジエチルアミノスチリル)-5-(p-ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P-メチル)フェニルアミン、N,N’-ビス(3,4-ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン、ジベンジルアニリン、9,9-ジメチル-N,N’-ジ(p-トリル)フルオレノン-2-アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3-(4’ジメチルアミノフェニル)-5,6-ジ-(4’-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアジン等の1,2,4-トリアジン誘導体、4-ジエチルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、4-ジフェニルアミノベンズアルデヒド-1,1-ジフェニルヒドラゾン、[p-(ジエチルアミノ)フェニル](1-ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2-フェニル-4-スチリル-キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6-ヒドロキシ-2,3-ジ(p-メトキシフェニル)-ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p-(2,2-ジフェニルビニル)-N,N’-ジフェニルアニリン等のα-スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N-エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物、2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質等が挙げられる。
【0100】
更には、電荷輸送物質は、以上例示した化合物の基本構造を主鎖又は側鎖に有する重合体等も挙げられる。そして、これらの電荷輸送物質は、1種又は2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0101】
また、電荷輸送層2に含有されるバインダー樹脂は特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるが、電機絶縁性のフィルムを形成することが可能な樹脂が好ましい。
【0102】
例えば、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂。シリコン−アルキッド樹脂、フェノールーホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。
【0103】
そして、これらのバインダー樹脂は、単独又は2種類以上混合して用いることができる。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送物質との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れているので好ましく用いられる。
【0104】
また、バインダー樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)は電気特性低下、膜強度低下に考慮しつつ任意に設定することができる。この電荷輸送層2の層厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることが好ましい。
【0105】
電荷輸送層2は、上述のフッ素含有樹脂からなる粒子と、電荷輸送物質と、有機溶剤と、バインダー樹脂とを少なくとも含む塗布液を調製し、これを電荷発生層1上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0106】
電荷輸送層2の形成用の塗布液を調製するには、フッ素含有樹脂からなる粒子と、電荷輸送物質と、有機溶剤と、バインダー樹脂とを混合する。電荷輸送層2の形成用の塗布液に用いる溶剤としては、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤、また、これらの溶剤は単独或いは2種以上混合して用いることができる。
【0107】
これらの溶剤を混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶剤であればいかなるものでも使用することが可能である。また、電荷輸送物質とバインダー樹脂との配合比は、電荷輸送物質の質量:バインダー樹脂の質量=10:1〜1:5が好ましい。
【0108】
また、電荷輸送層2には、以下の無機粒子を更に添加してもよい。無機粒子の構成材料としては、例えば、アルミナ、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸銅、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ニッケル、アンチモン、二酸化マンガン、酸化クロム、酸化錫、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウムが挙げられ、これらの構成材料からなる粒子を、2以上組み合せて使用してもよい。これらの中では、シリカからなる無機粒子が好ましく用いられる。
【0109】
このシリカからなる無機粒子としては、化学炎CVD法により製造される粒子が好ましい。具体例としてはクロルシランガスを酸素−水素混合ガス又は炭化水素−酸素混合ガスの高温火炎中で気相反応させて得られるシリカ微粒子が好ましい。
【0110】
また、無機粒子としては、上記の他に、粒子表面を疎水化したものが好ましい。疎水化処理剤としては、例えばシロキサン化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高分子脂肪酸又はその金属塩等が用いられる。シロキサン化合物としては、ポリジメチルシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又、シランカップリング剤としては、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0111】
また、無機粒子の一次粒径は0.005〜2.0μmであることが好ましく、0.01〜1.0μmがより好ましい。無機粒子の一次粒径が0.005μm未満であると感光体100表面の十分な機械的強度が得られず、また、電荷輸送層2を形成するための塗布液又はこれから得られる電荷輸送層2中におけるフッ素含有樹脂からなる粒子の分散性が低下し、凝集が進行しやすくなる傾向にある。一方、無機粒子の一次粒径が2μmを超えると感光体100の表面粗さが大きくなり、クリーニングブレードが摩耗、損傷してクリーニング特性が悪化し、画像ボケが発生し易くなる。
【0112】
電荷輸送層2中の無機粒子の含有率は、電荷輸送層2の全質量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。この含有率が0.1質量%未満では無機粒子の分散による改質効果を充分に得ることができなくなる傾向が大きくなる。一方、この含有率が30質量%を超えると繰返し使用による残留電位の上昇が生じる傾向が大きくなる。
【0113】
電荷輸送層2(最外部の層)中にフッ素樹脂からなる粒子(必要に応じて更に無機粒子)を分散させる方法としては、電荷輸送層2を形成するための塗布液にフッ素樹脂からなる粒子(必要に応じて更に無機粒子)を分散させる方法が挙げられる。より具体的には、溶媒にバインダー樹脂、電荷輸送材料を溶解した溶液を調製し、この溶液中にフッ素樹脂からなる粒子(必要に応じて更に無機粒子)を分散する方法が挙げられる。このとき、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機を利用して分散作業を行う。更に、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散作業を行ってもよい。
【0114】
また、塗布液中(ひいては電荷輸送層2中)のフッ素樹脂からなる粒子の分散安定性を向上させる観点と、液状の塗膜を形成し、これを乾燥させて電荷輸送層2とする過程においてフッ素樹脂からなる粒子の凝集を防止する観点から、分散助剤を塗布液中に少量添加することも有効である。分散助剤としては、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。中でも、フッ素系ポリマー更にはフッ素系クシ型グラフトポリマーが分散助剤として有効であり、フッ素系クシ型グラフトポリマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂が好ましい。
【0115】
電荷輸送層2を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、突き上げコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0116】
また、感光体100が搭載される画像形成装置(例えば後述の図2に示す画像形成装置200を参照)中で発生するオゾンや窒素酸化物、或いは光、熱による感光体100の劣化を防止する目的で、感光層6(電荷発生層1及び/又は電荷輸送層2)中には、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機リン化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペン等の誘導体があげられる。また、感光体100の電荷輸送層2(最外部の層)の表面の平滑性を向上させる目的で、電荷輸送層2(最外部の層)中にシリコーンオイル等のレベリング剤を添加してもよい。
【0117】
以上、本発明の感光体及びその製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0118】
例えば、本発明の感光体は、感光層を単層構造としてもよい。この場合の感光層は、図1に示した感光体100における電荷発生層1と電荷輸送層2に含有される電荷発生物質と電荷輸送物質をはじめとする物質を合わせて含有する層となる。
【0119】
また、このように感光層6が単層型の場合、バインダー樹脂としては、正孔輸送性材料との相溶性の観点から、特にポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂が好ましく用いられる。更に、これらの樹脂のポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーの中から選択して使用してもよい。なお、上記のバインダー樹脂は、単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。
【0120】
この感光層6も、上述した電荷輸送物質、上述した第1実施形態の電子写真感光体100における電荷発生層1の形成に用いる電荷発生層形成用塗布液に用いた溶剤と同様の溶剤、バインダー樹脂等を混合して感光層形成用塗布液を調製し、上述の電子写真感光体100の場合と同様の方法により導電性支持体3上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。
【0121】
更に、本発明の感光体は、感光層上に保護層(図示せず)を更に配置した構成を有していていてもよい。この場合にはこの保護層が最外部の層に相当する。そして、この保護層(最外部の層)中にフッ素含有樹脂からなる粒子が分散される。
その製造方法は、先に述べた電荷輸送層2を形成するための塗布液ではなく、保護層を形成するための塗布液中にフッ素含有樹脂からなる粒子を分散させること以外は、先に述べた感光体100と同様である。
【0122】
保護層は、電子写真感光体の帯電時の電荷輸送層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度を更に改善する為に用いられる。この保護層としては、絶縁性樹脂からなるいわゆる絶縁性樹脂保護層、又は、この絶縁性樹脂の中に抵抗調整剤を添加したいわゆる低抵抗保護層がある。この保護層は、例えば、導電性材料を適当なバインダー樹脂中に含有させた塗布液を感光層上に塗布することにより形成される。
【0123】
この導電性材料は特に限定されるものではなく、例えば、N,N'-ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したものが挙げられる。
【0124】
この保護層に用いるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
【0125】
この保護層を形成するための塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0126】
また、保護層を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、先に述べた感光体100における下引き層4を形成するための塗布液に含まれるものと同様の溶剤を単独或いは2種以上混合して用いることができるが、できるだけこの塗布液が塗布される感光層6を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0127】
更に、本発明の感光体は、感光層と導電性支持体との間、或いは、感光層と下引き層との間に必要に応じて中間層(図示せず)を配置した構成を有していてもよい。この中間層は、感光体の電気特性の向上、画質の向上、感光層の接着性向上のために設けられるものである。
【0128】
この中間層の構成材料は特に限定されず、バインダー樹脂、有機物質或いは無機物質の粉末、電子輸送性物質等から任意に選択することができる。
【0129】
中間層のバインダー樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。
【0130】
そして、これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。更にこれらの中でも、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0131】
上記のシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N-ビス(β-ヒドロキシエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0132】
これらの中でも特に好ましく用いられるシリコン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0133】
ジルコニウムキレート化合物としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0134】
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0135】
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0136】
中間層を形成するための塗布液に使用される溶媒としては、公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤、また、これらの溶剤は単独或いは2種以上混合して用いることができる。これらを混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0137】
また、中間層を形成するための塗布液の調製する際に、微粉末状の物質を添加する場合には樹脂成分を溶解した溶液中に添加して分散処理が行われる。この分散処理方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。
【0138】
更に、この中間層は導電性支持体3上に中間層を形成するための塗布液を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。このときの塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0139】
また、中間層42中には、先に説明した電子輸送性物質、電子輸送性顔料等を含有させることも低残留電位化や環境安定性の観点から有効である。更に、中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、層厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす。そのため、中間層の層厚は0.1〜3μmであることが好ましい。更に、中間層は下引き層として先に述べた下引層の代わりに使用してもよい。
【0140】
以上説明した本発明の電子写真感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザビームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザファクシミリなどの画像形成装置や、このような画像形成装置に備えれられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また、本発明の電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤或いは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また本発明の電子写真感光体は帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式の画像形成装置に搭載されても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【0141】
次に、本発明の本発明の電子写真感光体を搭載した画像形成装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0142】
図2は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。より具体的には、図2に示す画像形成装置200は中間転写方式の画像形成装置(例えば、いわゆるタンデム型のデジタルカラープリンター等)であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401d(例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
【0143】
ここで、画像形成装置200に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。例えば、先に述べた電子写真感光体100が搭載されている。
【0144】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d(電子写真感光体を帯電させる帯電手段)、現像装置404a〜404d(露光手段により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段)、1次転写ロール410a〜410d(現像手段により形成されたトナー像を被転写媒体に転写する転写手段)、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0145】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源(帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザ光を帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0146】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0147】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、更には相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0148】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト409を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト409のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。ベルト状とする場合中間転写体の基材として用いる樹脂材料としては、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンテレフタレート(PAT)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。更に、樹脂材料と弾性材料をブレンドして用いることができる。
【0149】
弾性材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等を1種類、又は2種類以上をブレンドしてなる材料を用いることができる。これらの基材に用いる樹脂材料及び弾性材料に、必要に応じて、電子伝導性を付与する導電剤やイオン伝導性を有する導電剤を1種類又は2種類以上を組み合わせて添加する。この中でも、機械強度に優れる点で、導電剤を分散させたポリイミド樹脂を用いることが好ましい。上記の導電剤としては、カーボンブラック、金属酸化物、ポリアニリン等の導電性ポリマーを用いることができる。
【0150】
中間転写体として中間転写ベルト409のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの厚さは50〜500μmが好ましく、60〜150μmがより好ましいが、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。
【0151】
例えば、導電剤を分散させたポリイミド樹脂からなるベルトは、特開昭63-311263号公報に記載されているように、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液中に導電剤として5〜20重量%のカーボンブラックを分散させ、分散液を金属ドラム上に流延して乾燥した後、ドラムから剥離したフィルムを高温下に延伸してポリイミドフィルムを形成し、更に適当な大きさに切り出してエンドレスベルトとすることにより製造することができる。
【0152】
上記フィルム成形は、一般には、導電剤を分散したポリアミド酸溶液の成膜用原液を円筒金型に注入して、例えば、100〜200℃に加熱しつつ500〜2000rpmの回転数で円筒金型を回転させながら、遠心成形法によりフィルム状に成膜し、次いで、得られたフィルムを半硬化した状態で脱型して鉄芯に被せ、300 ℃以上の高温でポリイミド化反応(ポリアミド酸の閉環反応)を進行させて本硬化させることにより行うことができる。また、成膜原液を金属シート上に均一な厚みに流延して、上記と同様に100〜200℃に加熱して溶媒の大半を除去し、その後300℃以上の高温に段階的に昇温してポリイミドフィルムを形成する方法もある。また、中間転写体は表面層を有していても良い。
【0153】
また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
【0154】
更に、図3は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、クリーニング装置(クリーニング手段)13、露光のための開口部18、及び、除電露光のための開口部17を取り付けレール16を用いて組み合せ、そして一体化したものである。
【0155】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。また、
【0156】
なお、本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジにおいて、帯電手段(帯電用部材)は、従来から公知のコロトロン、スコロトロンによる非接触方式や、帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電チューブ等による接触帯電方式を採用することができる。接触帯電方式は、感光体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより感光体表面を帯電させるものである。導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、或いはローラー状等何れでもよいが、特にローラー状部材が好ましい。通常、ローラー状部材は外側から抵抗層とそれらを支持する弾性層と芯材から構成される。更に必要に応じて抵抗層の外側に保護層を設けることができる。
【0157】
ローラー状部材は、感光体に接触させることにより特に駆動手段を有しなくとも感光体と同じ周速度で回転し、帯電手段として機能する。しかし、ローラー部材に何らかの駆動手段を取り付け、感光体とは異なる周速度で回転させ、帯電させても良い。芯材の材質としては導電性を有するもので、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。またその他導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。
【0158】
弾性層の材質としては導電性或いは半導電性を有するもので、一般にはゴム材に導電性粒子或いは半導電性粒子を分散したものである。ゴム材としてはEPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等が用いられる。
【0159】
導電性粒子或いは半導電性粒子としてはカーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO-Al2O3、SnO2-Sb2O3、In2O3-SnO2、ZnO- TiO2、MgO- Al2O3、FeO-TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物が用いることができ、これらの材料は単独或いは2種以上混合して用いても良い。
【0160】
抵抗層および保護層の材質としては結着樹脂に導電性粒子或いは半導電性粒子を分散し、その抵抗を制御したもので、抵抗率としては103〜1014Ωcmであることが好ましく、105〜1012Ωcmであることがより好ましく、107〜1012Ωcmであることが更に好ましい。また膜厚としては0.01〜1000μmであることが好ましく、0.1〜500μmであることがより好ましく、0.5〜100μmであることが更に好ましい。
【0161】
バインダー樹脂としてはアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン 樹脂等が用いられる。
【0162】
導電性粒子或いは半導電性粒子としては弾性層と同様のカーボンブラック、金属、金属酸化物が用いられる。また必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
【0163】
これらの導電性部材を用いて感光体を帯電させる方法としては、導電性部材に電圧を印加するが、印加電圧は直流電圧、或いは直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vが好ましく、特に100〜1500Vが好ましい。交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800V、好ましくは800〜1600V、更に好ましくは1200〜1600Vが好ましい。交流電圧の周波数は50〜20000Hz、好ましくは100〜5000Hzである。
【0164】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0165】
以下に示す手順により図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する実施例1〜実施例4並びに比較例1及び比較例2の電子写真感光体を作製した。
【0166】
(実施例1)
以下の手順にて図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する感光体を作製した。先ず、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:「エスレックBM−S」、積水化学社製)4質量部を、n−ブチルアルコール170質量部に溶解した。次に、得られた溶液に有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を添加して、混合撹拌し、下引き層形成用の塗布液を得た。
【0167】
この塗布液を、ホーニング処理により粗面化された30mmφのアルミニウム支持体(導電性支持体)の上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った。その後、得られた積層体の温度を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)に調節した恒温恒湿槽中に入れて、20分間、加湿硬化促進処理を行った。次に、得られた積層体を熱風乾燥機に入れて170℃で10分間乾燥させ、アルミニウム支持体上に下引き層(層厚:1.0μm)を形成した。
【0168】
次に、下引き層上に2層構造の感光層を形成した。まず、電荷発生物質として塩化ガリウムフタロシアニン15質量部、バインダー樹脂となる塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(商品名:「VMCH」、日本ユニカー社製)10質量部、n−ブチルアルコール300質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を電荷発生層形成用の塗布液として下引き層上に浸漬塗布し、乾燥して、電荷発生層(層厚:0.2μm)を形成した。
【0169】
次にフッ素含有樹脂粉体として四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:「ルブロンL2」、ダイキン工業社製)20質量部を準備し、これにメタノール20質量部を加えて湿潤させた(溶剤洗浄処理)。その後、更に脱イオン水60gを混合し、メカニカルスターラーを用いて攪拌した(水洗浄処理)。そして、10分間攪拌した後、吸引ろ過処理を行うと共に乾燥させ、メタノール及び水を取り除き、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子(フッ素含有樹脂からなる粒子)を得た。
【0170】
次に、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン20重量とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万)60質量部と、をテトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した。その後、得られた溶液に、上述の四フッ化エチレン樹脂からなる粒子10質量部を加えて更に混合した。
【0171】
次いで、この混合液を、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーを用いて更に分散を進行させることにより、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子が充分に分散された電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。次に、得られた塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布し、乾燥することにより、電荷輸送層(膜厚:26μm)を形成した。
【0172】
この感光体の電荷輸送層(最外部の層)を剥離し、得られた切片1質量部を9質量部のトルエンに溶解した。次に、このトルエン溶液10質量部に脱イオン水10質量部を混合し、二層(トルエン層と水層)に分離した。水溶性の残留物を含む水層を分離抽出し、イオンクロマトグラフィー分析装置(商品名:「IC7000」、横河アナリティカルシステムズ社製)を用いて、この水層(水溶液)中のアニオン成分を定量分析した。その結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=1.1ppmであることが確認された。
【0173】
なお、分析装置に搭載するカラムとしては、アニオン側カラム:商品名:「ICS-A23」、アニオン側ガードカラム:「ICS-A2G」、アニオン側サプレッサ:「ELS-SA1」、何れも横河アナリティカルシステムズ社製を使用した。また、分析条件は、カラムオーブンの温度:40℃、溶離液:3.0×10-3mol/LのNa2CO3水溶液、溶離液の流量:1.0mL/min、試料導入量:50μL、とした。
【0174】
(実施例2)
電荷輸送層を下記の手順及び条件で形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。即ち、フッ素含有樹脂粉体として四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:「ルブロンL2」、ダイキン工業社製)20質量部を準備し、これにメタノール20質量部を加えて湿潤させた(溶剤洗浄処理)。その後、更に脱イオン水120gを混合し、メカニカルスターラーを用いて攪拌した(水洗浄処理)。そして、10分間攪拌した後、吸引ろ過処理を行うと共に乾燥させ、メタノール及び水を取り除き、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子(フッ素含有樹脂からなる粒子)を得た。
【0175】
次に、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン20質量部と、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル-4-アミン20重量とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:4万)60質量部と、をテトロヒドロフラン260質量部及びトルエン110質量部に十分に溶解混合した。その後、得られた溶液に、上述の四フッ化エチレン樹脂からなる粒子10質量部を加えて更に混合した。
【0176】
次いで、この混合液を、高圧ホモジナイザーを用いて更に分散を進行させることにより、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子が充分に分散された電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。次に、得られた塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布し、乾燥することにより、電荷輸送層(膜厚:26μm)を形成した。
【0177】
この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=0.6ppmであることが確認された。
【0178】
(実施例3)
フッ素含有樹脂からなる粒子を作製する際の手順及び条件を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。即ち、フッ素含有樹脂粉体として四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:「ルブロンL2」、ダイキン工業社製)20質量部を準備し、これにメタノール20質量部を加えて湿潤させた(溶剤洗浄処理)。その後、更に脱イオン水180gを混合し、メカニカルスターラーを用いて攪拌した(水洗浄処理)。そして、10分間攪拌した後、吸引ろ過処理を行うと共に乾燥させ、メタノール及び水を取り除き、四フッ化エチレン樹脂からなる粒子(フッ素含有樹脂からなる粒子)を得た。
【0179】
この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=0.5ppmであることが確認された。
【0180】
(実施例4)
下引層を形成する際の手順及び条件を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。即ち、酸化亜鉛(テイカ社製試作品,平均粒子径:70μm)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(商品名:「KBM603」,信越化学社製)1.5質量部を添加し、5時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、150℃で2時間焼き付けを行った。
【0181】
次に、得られた表面処理後の酸化亜鉛60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート 商品名:「スミジュール3175」,住友バイエルンウレタン社製)15質量部と、ブチラール樹脂(商品名:「BM-1」、積水化学社製)15質量部と、メチルエチルケトン85質量部とを含む混合液を調製した。次に、この混合液38質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
【0182】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部と、シリコーンオイル(商品名:「SH29PA」東レダウコーニングシリコーン社製):0.01質量部とを添加し、下引き層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて30mmφのアルミニウム支持体上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い下引き層(層厚:20μm)を形成した。
【0183】
この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=1.1ppmであることが確認された。
【0184】
(比較例1)
実施例1において使用した四フッ化エチレン樹脂粉体を洗浄処理せずに使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=3.0ppmであることが確認された。
【0185】
(比較例2)
実施例1において使用した四フッ化エチレン樹脂粉体の洗浄処理の手順及び条件を、以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様の構成を有する電子写真感光体を作製した。即ち、フッ素含有樹脂粉体として四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:「ルブロンL2」、ダイキン工業社製)20質量部を準備し、これにメタノール200質量部を加え、メカニカルスターラーを用いて攪拌した。そして、10分間攪拌した後、吸引ろ過処理を行うと共に乾燥させ、メタノール及び水を取り除き、有機溶剤のみで洗浄処理した四フッ化エチレン樹脂からなる粒子を得た。
【0186】
この感光体の電荷輸送層を剥離し、実施例1と同様の手順でアニオン成分を定量した結果、この感光体の電荷輸送層は、(Y/X)=2.7ppmであることが確認された。
【0187】
[電子写真感光体の電子写真特性評価試験]
(1)使用初期の特性評価(初期電位測定)
実施例1〜実施例4並びに比較例1及び比較例2の電子写真感光体を図2と同様の構造を有する接触帯電装置、中間転写装置を有するフルカラープリンター(商品名:Docu Print C620、富士ゼロックス社製)に搭載し、A4サイズの紙に、モノクロの画像をプリントするプリントテストを行った。
【0188】
なお、このテストは、20℃、50%RH(相対湿度)の環境下、グリッド印加電圧−700Vの接触帯電装置で各電子写真感光体を帯電させたときの各電子写真感光体の表面の電位A[V](帯電電位)を測定した。次に、780nmの半導体レーザを用いて、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせ、このときの各電子写真感光体の表面の電位B[V](露光後電位)を測定した。続いて、放電させてから3秒後各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面の電位C[V](除電後残留電位)を測定した。
【0189】
ここで、電位Aの値が高いほど、電子写真感光体の受容電位が高いので、コントラストを高く取ることができることになる。また、電位Bの値が低いほど高感度な電子写真感光体であることになる。更に、電位Cの値が低いほど残留電位が少なく、画像メモリーやいわゆるかぶりが少ない電子写真感光体と評価される。これらの結果を表1に示す。
【0190】
(2)繰り返し使用後の特性評価
28℃、85%RH(相対湿度)の環境下としたこと以外は、上述の(1)で説明した操作と同様の操作によりプリントテストを1万回繰り返し、1万枚プリント直後における帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0191】
【表1】
【0192】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子写真感光体によれば、耐摩耗性及びトナーに対する脱着性に優れ、繰返して使用しても残留電位の上昇を充分に防止可能な優れた画質の画像を得ることができる。また、本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、耐摩耗性及びトナーに対する脱着性に優れ、繰返して使用しても残留電位の上昇を充分に防止可能な最外部の層を形成できるので、優れた画質の画像を得ることができる電子写真感光体を容易かつ確実に構成することができる。更に、本発明によれば、本発明の電子写真感光体を搭載することにより、優れた画質の画像を得ることのできるプロセスカートリッジ及び画像形成装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態の基本構成を示す断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…電荷発生層、3…導電性支持体、4…下引き層、6…感光層、17…除電露光のための開口部、18…露光のための開口部、100…電子写真感光体、200…画像形成装置、300…プロセスカートリッジ、400・・・ハウジング、401a〜401d・・・電子写真感光体、402a〜402d・・・帯電ロール、403・・・レーザ光源(露光装置)、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d・・・トナーカートリッジ、406・・・駆動ロール、407・・・テンションロール、408・・・バックアップロール、409・・・中間転写ベルト、410a〜410d・・・1次転写ロール、411・・・トレイ(被転写体トレイ)、412・・・移送ロール、413・・・2次転写ロール、414・・・定着ロール、415a〜415d・・・クリーニングブレード、416・・・クリーニングブレード、500・・・被転写媒体。
Claims (12)
- 導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
前記フッ素含有樹脂からなる粒子は、当該粒子の原料となるフッ素含有樹脂粉体を、前記フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて洗浄する溶剤洗浄処理と、前記溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により更に洗浄する水洗浄処理と、を経て形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体。 - 導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
前記フッ素含有樹脂からなる粒子は、当該粒子の原料となるフッ素含有樹脂粉体を、前記フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤と水とを含む混合液を用いて洗浄する洗浄処理を経て形成されていること、
を特徴とする電子写真感光体。 - 前記フッ素含有樹脂粉体中に水溶性の含フッ素化合物が少なくとも含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 前記最外部の層中の前記含フッ素化合物の含有量が下記式(1)で表される条件を満たすように調節されていることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
(Y/X)≦2.0ppm・・・(1)
[式(1)中、Xは前記最外部の層に含まれる固形成分の全質量を示し、Yは前記最外部の層に含まれる全ての前記含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量を示す。] - 導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、
前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、水溶性の含フッ素化合物を少なくとも含むフッ素含有樹脂粉体を原料とするフッ素含有樹脂からなる粒子が含有されており、かつ、
前記最外部の層中の前記含フッ素化合物の含有量が下記式(1)の条件を満していること特徴とする電子写真感光体。
(Y/X)≦2.0ppm・・・(1)
[式(1)中、Xは前記最外部の層に含まれる固形成分の全質量を示し、Yは前記最外部の層に含まれる全ての前記含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量を示す。] - 前記フッ素含有樹脂が、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及び、これらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体。
- 導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、かつ、前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されている電子写真感光体の製造方法であって、
前記フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する溶剤洗浄処理と、前記溶剤洗浄処理後に得られるフッ素含有樹脂粉体を水により更に洗浄する水洗浄処理とからなる工程を経て前記フッ素含有樹脂からなる粒子を作製すること、
を特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 導電性支持体と、前記導電性支持体上に設けられた電荷発生材料を含む感光層と、を少なくとも有しており、かつ、前記導電性支持体から最も離れた位置に配置される最外部の層には、フッ素含有樹脂からなる粒子が含有されている電子写真感光体の製造方法であって、
前記フッ素含有樹脂を濡らすことの可能な有機溶剤と水とを含む混合液を用いて原料となるフッ素含有樹脂粉体を洗浄する洗浄処理工程を経て前記フッ素含有樹脂からなる粒子を作製すること、
を特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 前記フッ素含有樹脂粉体中に水溶性の含フッ素化合物が少なくとも含有されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記最外部の層中の前記含フッ素化合物の含有量を、下記式(1)で表される条件を満たすように調節することを特徴とする請求項9に記載の電子写真感光体の製造方法。
(Y/X)≦2.0ppm・・・(1)
[式(1)中、Xは前記最外部の層に含まれる固形成分の全質量を示し、Yは前記最外部の層に含まれる全ての前記含フッ素化合物から生成すると仮定したフッ化物イオンの全質量を示す。] - 請求項1〜6のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体と、
帯電手段、現像手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 請求項1〜6のうちの何れか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電される前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
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